説明

駆動装置、レンズ鏡筒、および、撮像装置

【課題】圧電素子を備えている振動アクチュエータを駆動する場合に生じる音を低減させることができる駆動装置を提供する。
【解決手段】圧電素子を備えている振動アクチュエータを駆動する駆動装置が、圧電素子を駆動する場合、第1の期間において第1の時定数で圧電素子を駆動し、第1の期間に続く第2の期間において、第1の時定数よりも時定数の値が小さい第2の時定数で圧電素子を駆動する駆動部、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、レンズ鏡筒、および、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、撮像装置のレンズ鏡筒などにおいて、圧電素子を備えている振動アクチュエータを駆動する駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−149368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す駆動装置にあっては、圧電素子を備えている振動アクチュエータを駆動する場合に、圧電素子を備えている振動アクチュエータから音が生じてしまう可能性があるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、圧電素子を備えている振動アクチュエータを駆動する場合に生じる音を低減させることができる駆動装置、レンズ鏡筒、および、撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、圧電素子を備えている振動アクチュエータを駆動する駆動装置であって、前記圧電素子を駆動する場合、第1の期間において第1の時定数で前記圧電素子を駆動し、前記第1の期間に続く第2の期間において、前記第1の時定数よりも時定数の値が小さい第2の時定数で前記圧電素子を駆動する駆動部、を備えていることを特徴とする駆動装置である。
【0007】
また、この発明は上記に記載の駆動装置、を備えることを特徴とするレンズ鏡筒である。
【0008】
また、この発明は、上記に記載のレンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒を介して結像された像を撮像する撮像部と、を備えていることを特徴とする撮像装置である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、圧電素子を備えている振動アクチュエータを駆動する場合に生じる音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施形態による制御装置を備える撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の一実施形態による制御装置の構成と動作を説明する説明図である。
【図3】この発明の一実施形態による制御装置の構成の効果を説明するための、対比対象となる制御装置の構成と動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の一実施形態による録音装置を備える撮像装置100、および、この撮像装置100に取り付けられるレンズ鏡筒400の構成を示す概略ブロック図である。
【0012】
本実施形態に係る撮像装置100には、レンズ鏡筒400が交換可能に取り付けられる。たとえば、撮像装置100が、レンズ鏡筒400が取り付けられる取り付け部を備えている。また、この取り付け部は、撮像装置100とレンズ鏡筒400とを電気的に接続する電気接続部を備えている。この電気接続部を介して、撮像装置100とレンズ鏡筒400とは、電気的な情報および信号を送受信することができる。
【0013】
次に、レンズ鏡筒400の構成について説明する。一例としてのレンズ鏡筒400は、複数のレンズ(光学系)410と、振動アクチュエータ420と、駆動部430とを備えている。複数のレンズ410は、たとえば、ズームレンズ114と、焦点調整レンズ(以下、AF(Auto Focus)レンズという)112と、手振れ防止用レンズ(以下、VR(Vibration Reduction)レンズという)113とを備えている。
【0014】
このレンズ鏡筒400は、ズームレンズ114、VRレンズ113、および、AFレンズ112を通過した光学像を、撮像装置100が備える後述する撮像素子119の受光面に導く。
【0015】
振動アクチュエータ420は、圧電素子を備えている。振動アクチュエータ420の圧電素子が駆動部430から駆動されることにより、振動アクチュエータ420は、ズームレンズ114、VRレンズ113、または、AFレンズ112などの位置を光軸方向に変位させる。
【0016】
次に、撮像装置100の構成について説明する。撮像装置100は、撮像部110と、CPU(Central processing unit)190と、操作部180、画像処理部140と、表示部150と、記憶部160と、バッファメモリ部130と、通信部170と、マイク230と、A/D(Analog/Digital)変換部240と、音信号処理部250と、バス300と、を備えている。
【0017】
撮像部110は、撮像素子119と、A/D変換部120とを含み、設定された撮像条件(例えば絞り値、露出値等)に従ってCPU190により制御され、レンズ鏡筒400が備える光学系による光学像を撮像素子119に結像させて、A/D変換部120によってデジタル信号に変換された当該光学像に基づく画像データを生成する。ここで、レンズ鏡筒400が備える光学系とは、ズームレンズ114、VRレンズ113、および、AFレンズ112などの複数のレンズである。
【0018】
撮像素子119は、例えば、受光面に結像した光学像を電気信号に変換して、A/D変換部120に出力する。
【0019】
また、撮像素子119は、操作部180を介して撮影指示を受け付けた際に得られる画像データを、撮影された静止画の撮影画像データとして、A/D変換部120や画像処理部140を介して、記憶媒体200に記憶させる。
【0020】
一方、撮像素子119は、たとえば、操作部180を介して撮像指示を受け付けていない状態において、連続的に得られる画像データをスルー画データとして、A/D変換部120や画像処理部140を介して、CPU190および表示部150に出力する。
【0021】
A/D変換部120は、撮像素子119によって変換された電子信号をアナログ/デジタル変換し、この変換したデジタル信号である画像データを出力する。
【0022】
操作部180は、例えば、電源スイッチやシャッターボタン、その他の操作キーを含み、ユーザによって操作されることでユーザの操作入力を受け付け、CPU190に出力する。
【0023】
画像処理部140は、記憶部160に記憶されている画像処理条件を参照して、バッファメモリ130、または、記憶媒体200に記録されている画像データに対して画像処理をする。
【0024】
表示部150は、例えば液晶ディスプレイであって、撮像部110によって得られた画像データや、操作画面等を表示する。
【0025】
記憶部160は、CPU190によってシーン判定の際に参照される判定条件や、撮像条件等を記憶する。
【0026】
マイク230は、音を収音し、収音した音に応じた音信号を出力する。この音信号は、アナログ信号である。A/D変換部240は、マイク230から入力されたアナログ信号である音信号を、デジタル信号である音信号に、アナログデジタル変換する。このマイク230とA/D変換部240とにより、収音された音がデジタル信号である音信号に、すなわち、音波が電気信号に変換される。
【0027】
音信号処理部250は、A/D変換部240によりデジタル信号に変換された音信号に対して、たとえば、音声データの形式を変更する処理やデータを圧縮する処理などの音信号処理を実行し、この音信号処理した音信号を記憶媒体200に記憶させる。
【0028】
なお、音信号処理部250により音信号処理された音信号が記憶媒体200に記憶される場合、撮像素子119により撮像された画像データと、時間的に関係付けられて記憶されてもよいし、音信号を含む動画として記憶されてもよい。
【0029】
バッファメモリ部130は、撮像部110によって撮像された画像データや、音信号処理部250により変換された音信号等を、一時的に記憶する。
【0030】
通信部170は、カードメモリ等の取り外しが可能な記憶媒体200と接続され、この記憶媒体200への情報の書込み、読み出し、あるいは消去を行う。
【0031】
記憶媒体200は、撮像装置100に対して着脱可能に接続される記憶部であって、例えば、撮像部110によって生成された(撮影された)画像データや、音信号処理部250により音信号処理された音信号を記憶する。
【0032】
CPU190は、撮像装置全体を制御するが、一例としては、操作部180から入力される操作入力に基づいて、駆動部430を介して振動アクチュエータ420を駆動する駆動制御信号を生成し、生成した駆動制御信号を駆動部430に出力する。このようにしてCPU190は、この駆動制御信号に基づいて、駆動部430を介してズームレンズ114、または、AFレンズ112の位置を制御する。
【0033】
バス300は、撮像部110と、CPU190と、操作部180と、画像処理部140と、表示部150と、記憶部160と、バッファメモリ部130と、通信部170と、音信号処理部250とに接続され、各部から出力されたデータ等を転送する。また、このバス300には、取り付け部の電気接点部を介して、レンズ鏡筒400が備える各部が接続されている。
【0034】
なお、レンズ鏡筒400はCPUなどの制御部440を備えていてもよい。この場合、たとえば、この制御部が、駆動制御信号を駆動部430に出力し、駆動部430を介してVRレンズ113に位置を制御してもよい。これにより、レンズ鏡筒400において、手ぶれを防止することができる。また、レンズ鏡筒400はCPUなどの制御部440を備えている場合には、CPU190からの駆動制御信号は制御部440を介して制御部440に入力されてもよい。
【0035】
ここで、上記に説明した振動アクチュエータ420について説明する。振動アクチュエータ420においては、圧電素子などの電気機械変換素子に、ある特定の周波数の電気信号が入力されることにより、この電気機械変換素子が振動する。電気機械変換素子は、この振動によって励振される金属部材を有している。そして、電気機械変換素子と金属部材とを振動子として、この振動子は、相対運動部材と加圧接触させてある。ここでいう相対運動部材とは、振動アクチュエータ420が位置を変位させる対象であり、たとえば図1のズームレンズ114、AFレンズ112、または、VRレンズ113のことである。
【0036】
この振動子から発生した振動波、例えば超音波振動などは、加圧接触されている相対運動部材に摩擦接触により伝達される。これにより、相対運動部材を摩擦駆動することができる。なお、振動子には、鉄系やステンレス系などの金属部材が用いられ、相対運動部材にはアルミニウムや表面処理されたアルマイト、もしくは、アルミナなどのセラミックが用いられている。一例としての振動アクチュエータ420は、このようにして構成されている。
【0037】
上記に説明した駆動部430は、CPU190からの駆動制御信号、または、制御部440からの駆動制御信号に基づいて、圧電素子を備えている振動アクチュエータ420を駆動する場合に、次のようにして振動アクチュエータ420を駆動する。
【0038】
駆動部430は、圧電素子を駆動する場合、第1の期間において第1の時定数で圧電素子を駆動し、第1の期間に続く第2の期間において、第1の時定数よりも時定数の値が小さい第2の時定数で圧電素子を駆動する。この第1の期間とは、たとえば、圧電素子の時定数τに基づいた期間である。第1の期間の一例としては、時定数τの2倍の値となる期間などの、予め定められている期間のことである。
【0039】
このように、駆動部430は、圧電素子を駆動する第1の期間においては、その後の第2の期間よりも、圧電素子をゆっくりと駆動し、ソフトスタートさせる。すなわち、圧電素子を駆動する初期の段階(駆動開始時)では、その後の段階に対比して、圧電素子をゆっくりと駆動し、ソフトスタートさせる。これにより、振動アクチュエータ420の圧電素子を駆動する初期の段階(駆動開始時)において、振動アクチュエータ420が備えている圧電素子への突発的な電流や電圧の印加を低減させることができる。そのために、圧電素子を備えている振動アクチュエータ420を駆動する場合に生じる音を低減させることができる。
【0040】
そのため、たとえば、マイク230を介して収音した音を記憶する場合などにおいて、振動アクチュエータ420から生じる音を録音する可能性を減じることもできる。
【0041】
また、撮像装置100を用いるユーザによっては、振動アクチュエータ420を駆動する場合に生じる音が気になる場合がある。これに対しても、上記に説明したように、振動アクチュエータ420を駆動する場合に生じる音を低減させることができる。よって、ユーザに対して、振動アクチュエータ420を駆動する場合に生じる音が気にさせる可能性を、低減させることができる。これにより、ユーザに、撮像装置100を快適に用いてもらえることができる。
【0042】
なお、図1において、振動アクチュエータ420と駆動部430とが、ズームレンズ114、AFレンズ112、または、VRレンズ113を駆動させる駆動装置に対応する。
【0043】
次に、図2を用いて、図1を用いて説明した振動アクチュエータ420の等価回路と駆動部430の構成との一例について説明する。
図2(a)に示されるように、振動アクチュエータ420は、共振周波数付近においての等価回路として、直列接続されている等価コイルLm、等価コンデンサCm、および、等価抵抗Rmと、これら直列接続されている構成(等価コイルLm、等価コンデンサCm、および、等価抵抗Rm)と並列に接続されている制動コンデンサCdとから構成されている。なお、この制動コンデンサCdは、振動アクチュエータ420が備える圧電素子の中における制動容量のことである。
【0044】
また、図2(a)に示されるように、駆動部430は、ドライバ部Dと、トランジスタTR1と、トランジスタTR2と、トランスTと、コイルLcと、スイッチSWと、コンデンサCとから構成されている。このトランジスタTR1とトランジスタTR2とは、一例としては、NPN型のバイポーラトランジスタである。
【0045】
ドライバ部Dの第1の端子D1は、バス300を介してCPU190に、または、制御部440に接続されており、制御駆動信号が入力される。ドライバ部Dの第2の端子D2は、トランジスタTR1のベース端子に接続されている。また、ドライバ部Dの第3の端子D3は、トランジスタTR2のベース端子に接続されている。トランジスタTR1のコレクタ端子は電源VDDに接続され、トランジスタTR1のエミッタ端子はトランスTの一次巻線の一方の端子に接続されている。トランジスタTR2のコレクタ端子はトランスTの一次巻線の他方の端子に接続されており、トランジスタTR1のエミッタ端子は接地されている。
【0046】
トランスTの二次巻線の一方の端子は、コイルLcを介して、スイッチSWの一方の端子と、振動アクチュエータ420の一方の端子とに接続されている。また、スイッチSWの他方の端子と、コンデンサCの一方の端子とが接続されている。また、トランスTの二次巻線の他方の端子は、コンデンサCの他方の端子と、振動アクチュエータ420の他方の端子とともに、接地されている。
【0047】
なお、振動アクチュエータ420の一方の端子と他方の端子とは、直列接続されている等価コイルLm、等価コンデンサCm、および、等価抵抗Rmと、これら直列接続されている構成と並列に接続されている制動コンデンサCdとの2つの接続点のうち、一方の接続点P1と他方の接続点P2とのことである。
【0048】
図2(a)はスイッチSWがオンにされている状態の構成図であり、図2(b)はスイッチSWがオフにされている状態の構成図である。この図2(a)と図2(b)とに示されるように、スイッチSWがオンにされている状態においては、振動アクチュエータ420に対して、コンデンサCが並列に接続されている。よって、この場合には、駆動部430により駆動対象とされる回路の静電容量Ctotalの値は、次の式1となる。
【0049】
Ctotal=Cd+C …(式1)
【0050】
なお、Cdは制動コンデンサCdの静電容量の値であり、CはコンデンサCの静電容量の値である。
【0051】
逆に、スイッチSWがオフにされている状態においては、振動アクチュエータ420に対して、コンデンサCが並列に接続されていない。よって、この場合には、駆動部430により駆動対象とされる回路の静電容量Ctotalの値は、次の式2となる。
【0052】
Ctotal=Cd …(式2)
【0053】
この図2の場合には、駆動部430が振動アクチュエータ420を駆動する場合に、スイッチSWがオンになっている場合には、式1により示される静電容量Ctotalに応じた時定数(第1の時定数に対応)に基づいて、駆動部430が振動アクチュエータ420を駆動する。逆に、駆動部430が振動アクチュエータ420を駆動する場合に、スイッチSWがオフになっている場合には、式2により示される静電容量Ctotalに応じた時定数(第2の時定数に対応)に基づいて、駆動部430が振動アクチュエータ420を駆動する。
【0054】
次に、図2(c)を用いて、駆動部430が振動アクチュエータ420を駆動する場合の動作の一例について説明する。ここでは、時刻0から、駆動部430が振動アクチュエータ420を、駆動し始めたものとして説明する。
【0055】
まず、時刻0から時刻t2までの第1の期間において、駆動部430は、スイッチSWをオンにしている状態で、振動アクチュエータ420を駆動する。次に、時刻t2以降の第2の期間において、駆動部430は、スイッチSWをオフにしている状態で、振動アクチュエータ420を駆動する。
【0056】
すなわち、時刻0から時刻t2までの第1の期間において、駆動部430は、式1により示される静電容量Ctotalに応じた時定数(第1の時定数に対応)に基づいて、振動アクチュエータ420を駆動する。次に、時刻t2以降の第2の期間において、駆動部430は、式2により示される静電容量Ctotalに応じた時定数(第2の時定数に対応)に基づいて、振動アクチュエータ420を駆動する。
【0057】
これにより、時刻0から時刻t2までの第1の期間において、時刻の経過に従い、第1の時定数に応じて、振動アクチュエータ420に印加される電圧が徐々に上昇していく。そして、時刻t2以降は、振動アクチュエータ420には、ほぼ一定の電圧が印加される。
【0058】
ここで、図2(c)に示した本実施形態の場合の効果を説明するために、図3を用いて、図2の駆動部430に対比して、駆動部430がスイッチSWとコンデンサCとを備えていない場合について説明する。なお、この図3において、図2と対応する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
この図3の場合は、時刻0からの全ての期間において、駆動部430は、式2により示される静電容量Ctotalに応じた時定数(第2の時定数に対応)に基づいて、振動アクチュエータ420を駆動する。
【0060】
ここで、第2の時定数の値は、第1の時定数の値に対比して小さい(短い)。そのため、図3(c)に示されるように、時刻0から、時刻t2よりも短い時刻t1までの期間において、時刻の経過に従い、第2の時定数に応じて、振動アクチュエータ420に印加される電圧が徐々に上昇していく。そして、時刻t1以降は、振動アクチュエータ420には、ほぼ一定の電圧が印加される。
【0061】
このように、図3(c)の場合には、時刻0から、時刻t2よりも短い時刻t1までの期間において、振動アクチュエータ420に印加される電圧が徐々に上昇していく。そのため、図2(c)の場合に対比して、図3(c)の場合は、振動アクチュエータ420に印加される電圧が急峻である。そのために、図3(c)の場合は、図2(c)の場合に対比して、圧電素子を備えている振動アクチュエータ420を駆動する場合に音が生じる可能性がある。
【0062】
すなわち、図3(c)の場合に対比して、図2(c)の場合は、振動アクチュエータ420に印加される電圧がゆるやかである。そのために、図2(c)の場合は、図c(c)の場合に対比して、圧電素子を備えている振動アクチュエータ420を駆動する場合に生じる音を低減させることができる。
【0063】
図2と図3とを用いて説明したように、駆動部430は、圧電素子を駆動する場合、第1の期間において第1の時定数で圧電素子を駆動し、第1の期間に続く第2の期間において、第1の時定数よりも時定数の値が小さい第2の時定数で圧電素子を駆動する。これにより、振動アクチュエータ420の圧電素子を駆動する初期の段階(駆動開始時)において、振動アクチュエータ420が備えている圧電素子への突発的な電流や電圧の印加を低減させることができる。そのために、圧電素子を備えている振動アクチュエータ420を駆動する場合に生じる音を低減させることができる。
【0064】
なお、図2(a)の場合のスイッチSWがオンにされている状態においては、振動アクチュエータ420に対して、コンデンサCが並列に接続されている。この場合、回路的には、振動アクチュエータ420の直前に、コンデンサ型のローパスフィルタ形式の回路が挿入されていることになる。
【0065】
よって、上記に図2を用いた説明について別の表現をすると、上述した第1の期間においては、振動アクチュエータ420の直前に、このローパスフィルタ形式の回路が挿入されることになる。この場合、振動アクチュエータ420を駆動させる電流iは、次の式3で示される過渡的な電流となる。
【0066】
i=Vin/R−(Vin/R)e−(1/RC)t …(式3)
【0067】
ただし、Vinは入力電圧、Rは回路中の抵抗(等価抵抗Rmの抵抗値)、Cは静電容量(静電容量Ctotalの値)、tは時刻を示している。この式3における第2項目は、過渡電流を示している。また、この第2項目のうち、1/RCは時定数τに対応する。
【0068】
ここで、図2(a)に示されるように、スイッチSWがオンにされている状態であり、動アクチュエータ420に対して、コンデンサCが並列に接続されている場合、振動アクチュエータ420を駆動させる電流iは、式1で示されるCtotal(=Cd+C)に対応する時定数τ1(=R(Cd+C))に基づいた過渡的な電流となる。
【0069】
そして、駆動部430は、スイッチSWがオンにされている状態で振動アクチュエータ420を駆動させ始めてから、時定数τ1の2倍の期間が経過した後、スイッチSWがオフにする。すなわち、時定数τ1の2倍の期間が、上述した第1の期間に対応する。
【0070】
このようにすることにより、時定数τ1の2倍までの期間(第1の期間)において、時定数τ1に基づいて、振動アクチュエータ420を駆動させる電流iは徐々に定常値(Vin/R)となる。そして、その後の期間(第2の期間)においては、時定数τ2(=RCd)に基づいたものとなる。ここで、振動アクチュエータ420を駆動させる速度は、振動アクチュエータ420に入力される電流(または電圧)についての時定数の値に比例する。よって、第2の期間においては、駆動部430は、時定数τ1の場合に対比して時定数τ2(τ2<τ1)の場合には、振動アクチュエータ420を速やかに駆動させることができる。
【0071】
よって、駆動部430は、第1の期間において、圧電素子を備えている振動アクチュエータ420を駆動する場合に生じる音を低減させることができ、かつ、第2の期間において、振動アクチュエータ420を速やかに駆動させることができる。
【0072】
なお、スイッチSWのオンとオフとは、次のようにして、駆動部430により制御されてもよい。たとえば、駆動部430が、第1の時定数で圧電素子が駆動され始めてからの時間を計測する計時部を備えている。そして、駆動部430は、圧電素子を駆動する場合、第1の時定数で圧電素子を駆動した後、計時部により計測された時間が第1の期間以上になった場合、第2の時定数で圧電素子を駆動する。この第1の期間とは、上記に説明したように、時定数τ1の2倍に対応する期間である。
【0073】
また、たとえば、駆動部430が、駆動部430が圧電素子を駆動する制御信号を検出する検出部を備えている。そして、駆動部430は、圧電素子を駆動する場合、第1の時定数で圧電素子を駆動した後、検出部により検出された制御信号の信号レベルが、第1の期間に対応する予め定められている値以上となった場合、第2の時定数で圧電素子を駆動する。
【0074】
たとえば、検出部は、駆動部430が圧電素子を駆動する制御信号として、図2(c)に示されるように、振動アクチュエータ420に印加される電圧を測定して検出する。そして、この場合、図2(c)に示されるように、時定数τ1の2倍に対応する時刻における電圧値、または、過渡的な電圧を経過した後の定常値となる電圧値(たとえば、第2の期間における電圧値)を、予め定められている値としてもよい。なお、検出部は電流を検出してもよい。この場合、たとえば、式3における第1項目(Vin/R)の電流値を、予め定められている値としてもよい。
【0075】
なお、上記の説明においては、スイッチSWのオンとオフとにより、振動アクチュエータ420に対して並列に接続されているコンデンサCの容量値を変更した。これに限られるものではなく、たとえば、スイッチSWとコンデンサCとに替えて、バリアブルコンデンサを用いてもよい。この場合、駆動部430は、バリアブルコンデンサに対して、第1の期間においては所定の容量値となるようにし、第2の期間においては容量値が0になるように、バリアブルコンデンサの容量値を変更する。このようにしても、図2の場合と同様の効果を奏する。
【0076】
なお、駆動部430は、圧電素子を駆動する場合、時定数の値が異なる複数の第1の時定数のうちから選択された第1の時定数で圧電素子を駆動した後、第2の時定数で圧電素子を駆動してもよい。
【0077】
たとえば、スイッチSWとコンデンサCと同様に、複数のスイッチSW1・・・SWnと複数のコンデンサC1・・・Cn(nは2以上の自然数)とが、振動アクチュエータ420に対して並列に接続されていてもよい。この複数のコンデンサC1・・・Cnは、それぞれの容量値が異なるものとする。そして、この複数のスイッチSW1・・・SWnのうち、いずれか1つのスイッチが、上述した第1の期間において、オンにされる。そして、第2の期間においては、全てのスイッチがオフとされる。
【0078】
また、スイッチSWとコンデンサCとに替えて、バリアブルコンデンサを用いる場合には、駆動部430は、バリアブルコンデンサに対して、第1の期間においては、設定可能な容量値の中から選択した容量値を有するようにし、第2の期間においては、容量値が0になるように、バリアブルコンデンサの容量値を変更する。
【0079】
これにより、たとえば第1の期間において、振動アクチュエータ420に印加される電圧の立ち上りを、図2(c)の場合に対比して、より緩やかにすることや、より急峻にすることができる。
【0080】
ここで、たとえば、撮像装置100による撮影モードが、動画を撮像するモードである場合には、緩やかな方が望ましく、静止画を撮像するモードである場合には、急峻な方が望ましい場合がある。このような場合でも、上記構成により、撮像モードに応じて、振動アクチュエータ420に印加される電圧の立ち上りを変更することができる。また、ユーザの好みに応じて、振動アクチュエータ420に印加される電圧の立ち上りを変更することもできる。
【0081】
また、上記の図2の説明においては、圧電素子を駆動する場合の時定数を変更する場合に、コンデンサCを用いた構成の場合について説明したが、時定数を変更する構成は、コンデンサCを用いた構成に限られるものでない。たとえば、コイルを用いてもよいし、コイルとコンデンサとの組み合わせを用いてもよい。
【0082】
なお、上記の説明においては、撮像装置100にレンズ鏡筒400が交換可能に取り付けられる場合について説明したが、撮像装置100とレンズ鏡筒400とは一体として構成されていてもよい。
【0083】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0084】
100…撮像装置、110…撮像部、400…レンズ鏡筒、420…振動アクチュエータ、430…駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を備えている振動アクチュエータを駆動する駆動装置であって、
前記圧電素子を駆動する場合、第1の期間において第1の時定数で前記圧電素子を駆動し、前記第1の期間に続く第2の期間において、前記第1の時定数よりも時定数の値が小さい第2の時定数で前記圧電素子を駆動する駆動部、
を備えていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記第1の時定数で前記圧電素子が駆動され始めてからの時間を計測する計時部、
を備えており、
前記駆動部は、
前記圧電素子を駆動する場合、前記第1の時定数で前記圧電素子を駆動した後、前記計時部により計測された時間が前記第1の期間以上になった場合、前記第2の時定数で前記圧電素子を駆動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記駆動部が前記圧電素子を駆動する制御信号を検出する検出部を備えており、
前記駆動部は、
前記圧電素子を駆動する場合、前記第1の時定数で前記圧電素子を駆動した後、前記検出部により検出された制御信号の信号レベルが、前記第1の期間に対応する予め定められている値以上となった場合、前記第2の時定数で前記圧電素子を駆動する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動部は、
前記圧電素子を駆動する場合、時定数の値が異なる複数の前記第1の時定数のうちから選択された前記第1の時定数で前記圧電素子を駆動した後、前記第2の時定数で前記圧電素子を駆動する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の駆動装置、
を備えることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項5に記載のレンズ鏡筒と、
前記レンズ鏡筒を介して結像された像を撮像する撮像部と、
を備えていることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−124995(P2012−124995A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271703(P2010−271703)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】