駆動装置
【課題】駆動装置において、微動モード時の騒音を抑制する。
【解決手段】振動型アクチュエータは、圧電素子と、圧電素子に設けられた駆動子と、駆動子に支持された可動体とを有する。制御装置は、圧電素子に周波数が同じ第1及び第2電圧を供給する。制御装置により圧電素子に第1電圧とこの第1電圧と位相差が90度の第2電圧を供給することにより、圧電素子を伸縮振動と2次モードの屈曲振動とが合成された振動をさせ、この振動により駆動子を略楕円運動させて可動体を移動させる。制御装置は、微動モード時には、第1電圧と第2電圧との位相差を90度と0度よりも大きく90度よりも小さい範囲内の所定角度との間で切り換える。
【解決手段】振動型アクチュエータは、圧電素子と、圧電素子に設けられた駆動子と、駆動子に支持された可動体とを有する。制御装置は、圧電素子に周波数が同じ第1及び第2電圧を供給する。制御装置により圧電素子に第1電圧とこの第1電圧と位相差が90度の第2電圧を供給することにより、圧電素子を伸縮振動と2次モードの屈曲振動とが合成された振動をさせ、この振動により駆動子を略楕円運動させて可動体を移動させる。制御装置は、微動モード時には、第1電圧と第2電圧との位相差を90度と0度よりも大きく90度よりも小さい範囲内の所定角度との間で切り換える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種電気機器等に用いられる、圧電素子(電気機械変換素子)を備えた振動型アクチュエータが知られている(例えば、特許文献1参照)。この圧電素子は、圧電体と電極とを交互に積層してなる。そして、前記振動型アクチュエータでは、電極に電圧を印加することにより圧電素子を振動させ、これにより、可動体を移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−115583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、可動体を精度よく位置決めする場合、可動体を高速移動させる粗動モードから可動体を微動させる微動モードに切り換えるが、この微動モードに用いる駆動方式として、いわゆるバースト駆動方式がある。
【0005】
しかしながら、このバースト駆動方式では、所定周期(バースト周期。例えば100Hz)毎に圧電素子が振動したりその振動が止まったりするので、騒音が発生する。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、駆動装置において、微動モード時の騒音を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その課題を解決するために、本発明は、圧電素子に供給される2相の電圧の位相差を、90度と、0度よりも大きく90度よりも小さい範囲内、又は90度よりも大きく180度以下の範囲内の所定角度との間で切り換える。具体的には、本発明は、圧電素子と、該圧電素子に設けられた駆動子と、該駆動子に支持された可動体とを有する振動型アクチュエータと、前記圧電素子に周波数が同じ第1及び第2電圧を供給する制御装置とを備え、前記制御装置により前記圧電素子に前記第1電圧と該第1電圧と位相差が90度の第2電圧を供給することにより、前記圧電素子を伸縮振動と屈曲振動とが合成された振動をさせ、該振動により前記駆動子を略楕円運動させて前記可動体を移動させる駆動装置であって、前記制御装置は、微動モード時には、前記第1電圧と前記第2電圧との位相差を、90度と、0度よりも大きく90度よりも小さい範囲内、又は90度よりも大きく180度以下の範囲内の所定角度との間で切り換えるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、微動モード時に、圧電素子に供給される2相の電圧の位相差を、90度と、0度よりも大きく90度よりも小さい範囲内、又は90度よりも大きく180度以下の範囲内の所定角度との間で切り換えるので、圧電素子が常に振動し、微動モード時の騒音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】振動型アクチュエータの斜視図である。
【図2】(a)は、圧電素子の斜視図であり、(b)は、圧電素子の分解斜視図である。
【図3】圧電体層の上側主面を示す図である。
【図4】1次モードの伸縮振動の変位図である。
【図5】2次モードの屈曲振動の変位図である。
【図6】圧電素子の動作を示す概念図である。
【図7】振動型アクチュエータの制御装置のブロック図である。
【図8】ドライバーの構成図である。
【図9】通常モード及び微動モードの説明図である。
【図10】位相差の変化を示す図である。
【図11】駆動子の移動軌跡を示す図である。
【図12】位相ずれと可動体の移動速度との関係を示す図であり、(a)は、可動体の負荷が軽い場合の図であり、(b)は、可動体の負荷が重い場合の図である。
【図13】位相差の変化を示す図である。
【図14】位相差の変化を示す図である。
【図15】位相差の変化を示す図である。
【図16】通常モード及び微動モードの説明図である。
【図17】振動型アクチュエータの変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
−振動型アクチュエータの構成−
図1及び図2に示すように、振動型アクチュエータは、略直方体状の圧電素子12(例えば、長さ6.0mm×幅1.7mm×厚み2.4mmのもの)を備えている。この圧電素子12は、互いに対向する一対の主面と、この主面と直交して圧電素子12の主面の長手方向に延びる、互いに対向する一対の端面と、これらの主面及び端面の両方と直交して圧電素子12の主面の短手方向に延びる、互いに対向する一対の側面とを有している。主面、端面及び側面が圧電素子12の外面を構成し、端面及び側面が圧電素子12の周囲面を構成している。本実施形態では、主面、端面及び側面のうち主面が最大の面積を有している。
【0012】
圧電素子12は、3つの支持部13a〜13cを介してケース11に収容支持されている。圧電素子12の一方の端面には、屈曲振動の腹の部分に駆動子8,8が設けられており、これらの駆動子8,8は平板状の可動体9を支持している。圧電素子12の他方の端面(駆動子8,8が設けられた端面とは反対側の端面)の支持体13bは、駆動子8,8を可動体9に押圧している。これにより、駆動子8,8の先端部と可動体9との摩擦力が高められ、圧電素子12の振動が駆動子8,8を介して確実に可動体9に伝搬される。
【0013】
圧電素子12は、略矩形状の圧電体層1(例えば、厚み100umのもの)と内部電極層2とを交互に積層してなるものである。この圧電体層1は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛などのセラミック材料からなる絶縁体層であり、例えば24層積層されている。内部電極層2は、積層方向(圧電素子12の厚み方向)に圧電体層1を介して交互に配された給電電極層(プラス電極層)3及び共通電極層(マイナス電極層)4からなる。
【0014】
給電電極層3は、圧電体層1の上側主面に設けられた第1給電電極層3aと、上側主面にこの第1給電電極層3aが設けられた圧電体層1とは異なる圧電体層1の上側主面に設けられた第2給電電極層3bとからなる。そして、給電電極層3は、第1給電電極層3a及び第2給電電極層6bが積層方向に交互に配されてなる。
【0015】
第1給電電極層3aは、圧電体層1の上側主面をその長手方向L及び短手方向Sにそれぞれ2等分してなる4つの領域A1〜A4(図3参照)にそれぞれ設けられた4つの分割電極3c,3c,…と、これらの4つの分割電極3c,3c,…のうち圧電体層1の上側主面の第1対角線方向D1に対向する2つの領域A1,A3にそれぞれ形成された一対の分割電極3c,3cを互いに接続する接続電極3dとを有している。
【0016】
第2給電電極層3bは、前記4つの領域A1〜A4にそれぞれ設けられた4つの分割電極3c,3c,…と、これらの4つの分割電極3c,3c,…のうち圧電体層1の上側主面の第2対角線方向D2に対向する2つの領域A2,A4にそれぞれ形成された一対の分割電極3c,3cを互いに接続する接続電極3dとを有している。
【0017】
各分割電極3cは略矩形状の電極であり、積層方向から見て共通電極層4と重なっている。つまり、各分割電極3cは、共通電極層4と圧電体層1を挟んで対向している。各分割電極3cには、その長手方向中央部から圧電素子12の端面に向かって延びる引出電極3eが設けられている。この各引出電極3eは、積層方向から見て共通電極層4と重なっていない。つまり、各引出電極3eは、共通電極層4と対向していない。このため、圧電体層1の各引出電極3eに対向する部分には電界が生じない。つまり、この部分は圧電的に不活性な部分となる。各分割電極3cは、引出電極3eを介して外部電極7a,7bに接続されている。これらの外部電極7a,7bは、圧電素子12の両端面にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0018】
共通電極層4は、圧電体層1の上側主面のほぼ全面に亘って設けられた略矩形状の共通電極4aを有している。この共通電極4aには、その長手方向中央部から圧電素子12の両端面に向かってそれぞれ延びる引出電極4b,4bが設けられている。共通電極4aは、引出電極4b,4bを介して外部電極7gに接続されている。この外部電極7gは、圧電素子12の両端面にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0019】
そして、圧電体層1は、図2の矢印で示すように、第1給電電極層3a又は第2給電電極層3b側から共通電極層4側へと分極されている。
【0020】
ところで、圧電素子12の伸縮振動の共振周波数及び屈曲振動の共振周波数は、それぞれ圧電素子12の材料や形状等により決定される。そして、圧電素子12の材料や形状等は、伸縮振動の共振周波数及び屈曲振動の共振周波数が略一致するように決められている。本実施形態では、圧電素子12の材料や形状等は、1次モードの伸縮振動の共振周波数及び2次モードの屈曲振動の共振周波数が略一致するように決定されている。
【0021】
−振動型アクチュエータの動作−
以下、振動型アクチュエータの動作について説明する。図4は、1次モードの伸縮振動の変位図であり、図5は、2次モードの屈曲振動の変位図であり、図6は、圧電素子12の動作を示す概念図である。なお、図4〜図6においては、圧電素子12の主面はその紙面と平行な位置関係にある。
【0022】
ワイヤー(図示せず)及び外部電極7を介して、給電電極層3の領域A1,A3の分割電極3c,3cと共通電極層4の共通電極4aとの間に、前記共振周波数近傍の周波数の正弦波の基準交流電圧(以下、第1電圧という)を印加し、給電電極層3の領域A2,A4の分割電極3c,3cと共通電極層4の共通電極4aとの間に、第1電圧とほぼ同じ大きさ・周波数の正弦波の交流電圧(以下、第2電圧という)を印加する。これにより、領域A1,A3の分割電極3c,3cに同位相の電圧が加わり、領域A2,A4の分割電極3c,3cに同位相の電圧が加わる。第1電圧と第2電圧との位相差が0度の場合、圧電素子12には図4に示す1次モードの伸縮振動が誘起される。一方、その位相差が180度の場合、圧電素子12には図5に示す2次モードの屈曲振動が誘起される。
【0023】
また、給電電極層3の領域A1,A3の分割電極3c,3cと共通電極層4の共通電極4aとの間に、共振周波数近傍の周波数の正弦波の第1電圧を印加し、給電電極層3の領域A2,A4の分割電極3c,3cと共通電極層4の共通電極4aとの間に、位相が第1電圧と90度又は−90度だけ異なる、第1電圧とほぼ同じ大きさ・周波数の正弦波の第2電圧を印加すると、圧電素子12には、図4に示す1次モードの伸縮振動と図5に示す2次モードの屈曲振動とが調和的に誘起される。
【0024】
そして、圧電素子12の形状が、図6(a)〜(d)に示すような順で変化する。その結果、圧電素子12に設けられた駆動子8,8が、図6の紙面を貫く方向から見て略楕円運動する。つまり、圧電素子12の伸縮振動及び屈曲振動の合成振動により駆動子8,8が楕円運動する。この楕円運動により駆動子8,8に支持された可動体9が圧電素子12との間で相対運動して、図1に示す矢印A又は矢印Bの方向に移動する。
【0025】
ここで、伸縮振動の伸縮方向は、圧電素子12の主面の長手方向、つまり、可動体9の移動方向であり、屈曲振動の振動方向は、駆動子8,8が可動体9を支持する方向である。圧電素子12の積層方向は、伸縮振動の伸縮方向及び屈曲振動の振動方向の両方と垂直な方向である。
【0026】
−振動型アクチュエータの制御−
以下、振動型アクチュエータの制御について説明する。図7は、振動型アクチュエータの制御装置のブロック図である。可動体9の位置を検出する位置検出部21からの位置情報に基づいて、速度指令部22は可動体9の移動速度を決定し、その速度情報を制御部23に伝達する。制御部23は、速度指令部22からの速度情報に基づいて、第1及び第2電圧の周波数、並びに第1電圧と第2電圧との位相差を決定し、その周波数情報を周波数発生部24に伝達し、その位相差情報を位相差演算部25に伝達する。位相差演算部25は、制御部23からの位相差情報とバースト周期発生部26からのバースト情報とに基づいて、モードに応じて位相差を決定し、その位相差情報を位相差発生部27に伝達する。周波数発生部24から発生した所定周波数の正弦波電圧が、ドライバー28を通じて圧電素子12に第1電圧として印加される。周波数発生部24から発生した電圧は、位相差発生部27により位相がずらされ、ドライバー29を通じて圧電素子12に第1電圧と周波数が同じで位相が異なる第2電圧として印加される。
【0027】
図8は、ドライバー28,29の構成図である。2つのハーフブリッジの構成により、同図に示すCH1、CH2には、Vddの電源電圧(例えば5V)と0Vの独立している矩形波が印加される。そして、振動型アクチュエータ(コンデンサー)Cとこれに直列接続された抵抗Lがローパスフィルターを構成し、このローパスフィルターにより矩形波の高周波成分を除去することで、電源電圧近傍と0Vの正弦波を得ている。
【0028】
図9は、通常モード及び微動モードの説明図である。可動体9の所望の移動速度が所定速度(例えば50mm/s)以上である通常モード時は、周波数発生部24では、前記共振周波数(例えば270kHz)よりも高い駆動周波数を発生させる。そして、可動体9の移動速度を増加したいときには、駆動周波数を低くする一方、可動体9の移動速度を減少したいときには、駆動周波数を高くする。つまり、可動体9の移動速度が大きいほど、駆動周波数を低くする。
【0029】
以上のように、通常モード時は、可動体9の移動速度に応じて駆動周波数を制御しながら、第1及び第2電圧を常時供給するようになっている。
【0030】
一方、可動体9の所望の移動速度が前記所定速度よりも小さい微動モード時(可動体9をゆっくり動かす間欠駆動時)は、周波数発生部24では、共振周波数よりも若干高い固定駆動周波数(通常モードの最高周波数と同じ周波数。例えば276kHz)を発生させる。バースト周期発生部26では、図10に示す所定周期(バースト周期)として、駆動周波数の5分の1以下の周波数、例えば、10Hz〜100kHzの周波数を発生させるのが望ましく、10Hz〜200Hz又は20kHz〜100kHzの周波数(可聴周波数帯域外の周波数)を発生させるのがより望ましい。本実施形態では、所定周期を100Hz(10ms)としている。そして、この所定周期毎に第1電圧と第2電圧との位相差を90度と0度(所定角度)との間で切り換える。具体的には、位相差を0度から90度まで時間に比例するように滑らかに変化させた後、90度に保ち、それから、位相差を90度から0度まで時間に比例するように滑らかに変化させた後、0度に保つ。つまり、1所定周期中に、位相差を0度と90度との間で台形状に変化させた後、0度に維持する。位相差を0度から90度まで変化させるのに要する時間は約1msである。
【0031】
ここで、所定周期において、位相差を0度と90度との間で台形状に変化させる期間を第1所定期間(バーストON期間)、位相差を0度に保つ期間を第2所定期間(バーストOFF期間)とすると、可動体9の移動速度を増加したいときには、第1所定期間を長くして第2所定期間を短くする一方、可動体9の移動速度を減少したいときには、第1所定期間を短くして第2所定期間を長くする。つまり、可動体9の移動速度が大きいほど、第2所定期間を短くする。
【0032】
以上のように、微動モード時は、第1電圧と第2電圧との位相差を制御しながら、第1及び第2電圧を絶えず供給するようになっている。
【0033】
駆動子8,8の移動軌跡を図11に示す。第2電圧の位相が第1電圧に対し90度ずれているときは、駆動子8,8は、長径又は短径が可動体9の移動方向とほぼ一致する、時計回りの楕円運動をし、本実施形態では、可動体9が図1に示す矢印Aの方向(右方向)に移動する。位相ずれが270度(第1電圧と第2電圧との位相差が90度)のときは、駆動子8,8が逆に反時計回りに楕円回転することで、可動体9が図1に示す矢印Bの方向(左方向)に移動する。位相ずれが0度又は180度のときは、駆動子8,8は斜めに直線運動し、可動体9は移動しない。これらを利用して、駆動子8,8を間欠的に楕円運動させることで、可動体9を微動させる。なお、位相ずれが45度のときは、駆動子8,8は、長径及び短径が可動体9の移動方向からずれた楕円運動をする。このとき、可動体9は、位相ずれが90度のときと比較して、ゆっくり矢印Aの方向に進む。これと同様のことは、位相ずれが135度、225度、又は315度(第1電圧と第2電圧との位相差が45度又は135度)のときも言える。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、通常のバースト駆動と比較して、圧電素子12が常に動いていることにより、圧電素子12が動き出すときに発生するバースト騒音が軽減される。さらに、第1電圧と第2電圧との位相差を徐々に変化させることで、バースト騒音がさらに軽減されるのに加えて、位相の急激な変化による圧電素子12の異常振動も抑えられ、高い信頼性が実現できる。その上、駆動周波数を通常モードの最高周波数と同じ、比較的高い周波数にすることにより、圧電素子12の振幅が抑えられ、バースト騒音がより一層軽減される。
【0035】
前記位相ずれと可動体9の移動速度との関係を図12に示す。可動体9の負荷(重さ)が軽い場合は、同図(a)に示すように、位相ずれが変わるに従って可動体9の移動速度は連続的に変化するが、可動体9の負荷(重さ)が重い場合は、同図(b)に示すように、0度近傍、180度近傍で不感帯を生じる。このことより、位相差バースト駆動時の位相差を90度と0度との間ではなく、90度と0度よりも大きい所定角度との間で変更することで、圧電素子12の変化が小さくなり、圧電素子12への衝撃が小さくなるので、高信頼性が得られる。また、バースト騒音に関しても、その衝撃が小さくなる分、低減できる。さらに、前記第2所定期間中の駆動子8,8の運動軌跡が直線状ではなく、若干楕円状になるので、駆動子8,8の可動体9との接触範囲が広がり、可動体9の耐久性が向上する。
【0036】
なお、本実施形態では、微動モード時は、所定周期毎に第1電圧と第2電圧との位相差を90度と0度との間で切り換えているが、図13に示すように、位相差を、90度と、0度よりも大きく90度よりも小さい範囲内、又は90度よりも大きく180度以下の範囲内の所定角度との間で変更してもよい。位相差を90度と180度との間で切り換えると、本実施形態と同様の作用・効果が得られる。位相差を90度と45度又は135度との間で切り換えると、上述のように、長径及び短径が可動体9の移動方向からずれた楕円運動をするので、可動体9の寿命が延びる。
【0037】
また、本実施形態では、位相差を0度から90度まで及び90度から0度まで時間に比例するように変化させているが、これに限らない。例えば、図14に示すように、位相差を0度から90度まで及び90度から0度まで急激に変化させてもよいし、図15に示すように、位相差を0度から90度まで及び90度から0度まで段階的に変化させてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、微動モード時は、第1及び第2電圧の固定駆動周波数を通常モード時の最高周波数と同じにしているが、図16に示すように、第1及び第2電圧の固定駆動周波数を通常モード時の最高周波数よりも低くしてもよい。この場合、効率が良くなる。
【0039】
(その他の実施形態)
圧電素子12の構成は、前記実施形態のものに限らない。例えば、共通電極層4の代わりに、給電電極層3と同じく、4つの分割電極を有する電極層を設けてもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、分割電極3cを略矩形状の電極としたが、これに限らず、例えば、これらを振動による応力の分布に応じた形状のものとしてもよい。
【0041】
また、前記実施形態では、ワイヤーによる給電について説明したが、導電性ゴムによる給電、フレキシブル基板による給電や、コンタクトピンによる給電など、他の給電方法を用いてもよい。これらにより、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
また、前記実施形態では、振動型アクチュエータの駆動力が付与されて駆動される可動体9は平板状であるが、これに限られるものではなく、可動体9の構成としては任意の構成を採用できる。例えば、図17に示すように、可動体は所定の軸X回りに回動可能な円板体9であり、振動型アクチュエータの駆動子8,8が円板体9の側周面9aに当接するように構成されていてもよい。かかる構成の場合、振動型アクチュエータを駆動すると、駆動子8,8の略楕円運動によって、円板体9が所定の軸X回りに回動させられる。
【0043】
また、前記実施形態では、駆動子8,8を圧電素子12の一方の端面に設けた構成について説明したが、圧電素子12の一方の側面に形成してもよい。この場合、1次モードの伸縮振動の伸縮方向は、駆動子8,8が可動体9を支持する方向となり、2次モードの屈曲振動の振動方向は、可動体9の移動方向となる。
【0044】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施できる。
【0045】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本発明にかかる駆動装置は、微動モード時の騒音を抑制するための用途等について適用できる。
【符号の説明】
【0047】
8 駆動子
9 可動体
12 圧電素子
21 位置検出部(制御装置)
22 速度指令部(制御装置)
23 制御部(制御装置)
24 周波数発生部(制御装置)
25 位相演算部(制御装置)
26 バースト周期発生部(制御装置)
27 位相差発生部(制御装置)
28,29 ドライバー(制御装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種電気機器等に用いられる、圧電素子(電気機械変換素子)を備えた振動型アクチュエータが知られている(例えば、特許文献1参照)。この圧電素子は、圧電体と電極とを交互に積層してなる。そして、前記振動型アクチュエータでは、電極に電圧を印加することにより圧電素子を振動させ、これにより、可動体を移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−115583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、可動体を精度よく位置決めする場合、可動体を高速移動させる粗動モードから可動体を微動させる微動モードに切り換えるが、この微動モードに用いる駆動方式として、いわゆるバースト駆動方式がある。
【0005】
しかしながら、このバースト駆動方式では、所定周期(バースト周期。例えば100Hz)毎に圧電素子が振動したりその振動が止まったりするので、騒音が発生する。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、駆動装置において、微動モード時の騒音を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その課題を解決するために、本発明は、圧電素子に供給される2相の電圧の位相差を、90度と、0度よりも大きく90度よりも小さい範囲内、又は90度よりも大きく180度以下の範囲内の所定角度との間で切り換える。具体的には、本発明は、圧電素子と、該圧電素子に設けられた駆動子と、該駆動子に支持された可動体とを有する振動型アクチュエータと、前記圧電素子に周波数が同じ第1及び第2電圧を供給する制御装置とを備え、前記制御装置により前記圧電素子に前記第1電圧と該第1電圧と位相差が90度の第2電圧を供給することにより、前記圧電素子を伸縮振動と屈曲振動とが合成された振動をさせ、該振動により前記駆動子を略楕円運動させて前記可動体を移動させる駆動装置であって、前記制御装置は、微動モード時には、前記第1電圧と前記第2電圧との位相差を、90度と、0度よりも大きく90度よりも小さい範囲内、又は90度よりも大きく180度以下の範囲内の所定角度との間で切り換えるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、微動モード時に、圧電素子に供給される2相の電圧の位相差を、90度と、0度よりも大きく90度よりも小さい範囲内、又は90度よりも大きく180度以下の範囲内の所定角度との間で切り換えるので、圧電素子が常に振動し、微動モード時の騒音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】振動型アクチュエータの斜視図である。
【図2】(a)は、圧電素子の斜視図であり、(b)は、圧電素子の分解斜視図である。
【図3】圧電体層の上側主面を示す図である。
【図4】1次モードの伸縮振動の変位図である。
【図5】2次モードの屈曲振動の変位図である。
【図6】圧電素子の動作を示す概念図である。
【図7】振動型アクチュエータの制御装置のブロック図である。
【図8】ドライバーの構成図である。
【図9】通常モード及び微動モードの説明図である。
【図10】位相差の変化を示す図である。
【図11】駆動子の移動軌跡を示す図である。
【図12】位相ずれと可動体の移動速度との関係を示す図であり、(a)は、可動体の負荷が軽い場合の図であり、(b)は、可動体の負荷が重い場合の図である。
【図13】位相差の変化を示す図である。
【図14】位相差の変化を示す図である。
【図15】位相差の変化を示す図である。
【図16】通常モード及び微動モードの説明図である。
【図17】振動型アクチュエータの変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
−振動型アクチュエータの構成−
図1及び図2に示すように、振動型アクチュエータは、略直方体状の圧電素子12(例えば、長さ6.0mm×幅1.7mm×厚み2.4mmのもの)を備えている。この圧電素子12は、互いに対向する一対の主面と、この主面と直交して圧電素子12の主面の長手方向に延びる、互いに対向する一対の端面と、これらの主面及び端面の両方と直交して圧電素子12の主面の短手方向に延びる、互いに対向する一対の側面とを有している。主面、端面及び側面が圧電素子12の外面を構成し、端面及び側面が圧電素子12の周囲面を構成している。本実施形態では、主面、端面及び側面のうち主面が最大の面積を有している。
【0012】
圧電素子12は、3つの支持部13a〜13cを介してケース11に収容支持されている。圧電素子12の一方の端面には、屈曲振動の腹の部分に駆動子8,8が設けられており、これらの駆動子8,8は平板状の可動体9を支持している。圧電素子12の他方の端面(駆動子8,8が設けられた端面とは反対側の端面)の支持体13bは、駆動子8,8を可動体9に押圧している。これにより、駆動子8,8の先端部と可動体9との摩擦力が高められ、圧電素子12の振動が駆動子8,8を介して確実に可動体9に伝搬される。
【0013】
圧電素子12は、略矩形状の圧電体層1(例えば、厚み100umのもの)と内部電極層2とを交互に積層してなるものである。この圧電体層1は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛などのセラミック材料からなる絶縁体層であり、例えば24層積層されている。内部電極層2は、積層方向(圧電素子12の厚み方向)に圧電体層1を介して交互に配された給電電極層(プラス電極層)3及び共通電極層(マイナス電極層)4からなる。
【0014】
給電電極層3は、圧電体層1の上側主面に設けられた第1給電電極層3aと、上側主面にこの第1給電電極層3aが設けられた圧電体層1とは異なる圧電体層1の上側主面に設けられた第2給電電極層3bとからなる。そして、給電電極層3は、第1給電電極層3a及び第2給電電極層6bが積層方向に交互に配されてなる。
【0015】
第1給電電極層3aは、圧電体層1の上側主面をその長手方向L及び短手方向Sにそれぞれ2等分してなる4つの領域A1〜A4(図3参照)にそれぞれ設けられた4つの分割電極3c,3c,…と、これらの4つの分割電極3c,3c,…のうち圧電体層1の上側主面の第1対角線方向D1に対向する2つの領域A1,A3にそれぞれ形成された一対の分割電極3c,3cを互いに接続する接続電極3dとを有している。
【0016】
第2給電電極層3bは、前記4つの領域A1〜A4にそれぞれ設けられた4つの分割電極3c,3c,…と、これらの4つの分割電極3c,3c,…のうち圧電体層1の上側主面の第2対角線方向D2に対向する2つの領域A2,A4にそれぞれ形成された一対の分割電極3c,3cを互いに接続する接続電極3dとを有している。
【0017】
各分割電極3cは略矩形状の電極であり、積層方向から見て共通電極層4と重なっている。つまり、各分割電極3cは、共通電極層4と圧電体層1を挟んで対向している。各分割電極3cには、その長手方向中央部から圧電素子12の端面に向かって延びる引出電極3eが設けられている。この各引出電極3eは、積層方向から見て共通電極層4と重なっていない。つまり、各引出電極3eは、共通電極層4と対向していない。このため、圧電体層1の各引出電極3eに対向する部分には電界が生じない。つまり、この部分は圧電的に不活性な部分となる。各分割電極3cは、引出電極3eを介して外部電極7a,7bに接続されている。これらの外部電極7a,7bは、圧電素子12の両端面にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0018】
共通電極層4は、圧電体層1の上側主面のほぼ全面に亘って設けられた略矩形状の共通電極4aを有している。この共通電極4aには、その長手方向中央部から圧電素子12の両端面に向かってそれぞれ延びる引出電極4b,4bが設けられている。共通電極4aは、引出電極4b,4bを介して外部電極7gに接続されている。この外部電極7gは、圧電素子12の両端面にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0019】
そして、圧電体層1は、図2の矢印で示すように、第1給電電極層3a又は第2給電電極層3b側から共通電極層4側へと分極されている。
【0020】
ところで、圧電素子12の伸縮振動の共振周波数及び屈曲振動の共振周波数は、それぞれ圧電素子12の材料や形状等により決定される。そして、圧電素子12の材料や形状等は、伸縮振動の共振周波数及び屈曲振動の共振周波数が略一致するように決められている。本実施形態では、圧電素子12の材料や形状等は、1次モードの伸縮振動の共振周波数及び2次モードの屈曲振動の共振周波数が略一致するように決定されている。
【0021】
−振動型アクチュエータの動作−
以下、振動型アクチュエータの動作について説明する。図4は、1次モードの伸縮振動の変位図であり、図5は、2次モードの屈曲振動の変位図であり、図6は、圧電素子12の動作を示す概念図である。なお、図4〜図6においては、圧電素子12の主面はその紙面と平行な位置関係にある。
【0022】
ワイヤー(図示せず)及び外部電極7を介して、給電電極層3の領域A1,A3の分割電極3c,3cと共通電極層4の共通電極4aとの間に、前記共振周波数近傍の周波数の正弦波の基準交流電圧(以下、第1電圧という)を印加し、給電電極層3の領域A2,A4の分割電極3c,3cと共通電極層4の共通電極4aとの間に、第1電圧とほぼ同じ大きさ・周波数の正弦波の交流電圧(以下、第2電圧という)を印加する。これにより、領域A1,A3の分割電極3c,3cに同位相の電圧が加わり、領域A2,A4の分割電極3c,3cに同位相の電圧が加わる。第1電圧と第2電圧との位相差が0度の場合、圧電素子12には図4に示す1次モードの伸縮振動が誘起される。一方、その位相差が180度の場合、圧電素子12には図5に示す2次モードの屈曲振動が誘起される。
【0023】
また、給電電極層3の領域A1,A3の分割電極3c,3cと共通電極層4の共通電極4aとの間に、共振周波数近傍の周波数の正弦波の第1電圧を印加し、給電電極層3の領域A2,A4の分割電極3c,3cと共通電極層4の共通電極4aとの間に、位相が第1電圧と90度又は−90度だけ異なる、第1電圧とほぼ同じ大きさ・周波数の正弦波の第2電圧を印加すると、圧電素子12には、図4に示す1次モードの伸縮振動と図5に示す2次モードの屈曲振動とが調和的に誘起される。
【0024】
そして、圧電素子12の形状が、図6(a)〜(d)に示すような順で変化する。その結果、圧電素子12に設けられた駆動子8,8が、図6の紙面を貫く方向から見て略楕円運動する。つまり、圧電素子12の伸縮振動及び屈曲振動の合成振動により駆動子8,8が楕円運動する。この楕円運動により駆動子8,8に支持された可動体9が圧電素子12との間で相対運動して、図1に示す矢印A又は矢印Bの方向に移動する。
【0025】
ここで、伸縮振動の伸縮方向は、圧電素子12の主面の長手方向、つまり、可動体9の移動方向であり、屈曲振動の振動方向は、駆動子8,8が可動体9を支持する方向である。圧電素子12の積層方向は、伸縮振動の伸縮方向及び屈曲振動の振動方向の両方と垂直な方向である。
【0026】
−振動型アクチュエータの制御−
以下、振動型アクチュエータの制御について説明する。図7は、振動型アクチュエータの制御装置のブロック図である。可動体9の位置を検出する位置検出部21からの位置情報に基づいて、速度指令部22は可動体9の移動速度を決定し、その速度情報を制御部23に伝達する。制御部23は、速度指令部22からの速度情報に基づいて、第1及び第2電圧の周波数、並びに第1電圧と第2電圧との位相差を決定し、その周波数情報を周波数発生部24に伝達し、その位相差情報を位相差演算部25に伝達する。位相差演算部25は、制御部23からの位相差情報とバースト周期発生部26からのバースト情報とに基づいて、モードに応じて位相差を決定し、その位相差情報を位相差発生部27に伝達する。周波数発生部24から発生した所定周波数の正弦波電圧が、ドライバー28を通じて圧電素子12に第1電圧として印加される。周波数発生部24から発生した電圧は、位相差発生部27により位相がずらされ、ドライバー29を通じて圧電素子12に第1電圧と周波数が同じで位相が異なる第2電圧として印加される。
【0027】
図8は、ドライバー28,29の構成図である。2つのハーフブリッジの構成により、同図に示すCH1、CH2には、Vddの電源電圧(例えば5V)と0Vの独立している矩形波が印加される。そして、振動型アクチュエータ(コンデンサー)Cとこれに直列接続された抵抗Lがローパスフィルターを構成し、このローパスフィルターにより矩形波の高周波成分を除去することで、電源電圧近傍と0Vの正弦波を得ている。
【0028】
図9は、通常モード及び微動モードの説明図である。可動体9の所望の移動速度が所定速度(例えば50mm/s)以上である通常モード時は、周波数発生部24では、前記共振周波数(例えば270kHz)よりも高い駆動周波数を発生させる。そして、可動体9の移動速度を増加したいときには、駆動周波数を低くする一方、可動体9の移動速度を減少したいときには、駆動周波数を高くする。つまり、可動体9の移動速度が大きいほど、駆動周波数を低くする。
【0029】
以上のように、通常モード時は、可動体9の移動速度に応じて駆動周波数を制御しながら、第1及び第2電圧を常時供給するようになっている。
【0030】
一方、可動体9の所望の移動速度が前記所定速度よりも小さい微動モード時(可動体9をゆっくり動かす間欠駆動時)は、周波数発生部24では、共振周波数よりも若干高い固定駆動周波数(通常モードの最高周波数と同じ周波数。例えば276kHz)を発生させる。バースト周期発生部26では、図10に示す所定周期(バースト周期)として、駆動周波数の5分の1以下の周波数、例えば、10Hz〜100kHzの周波数を発生させるのが望ましく、10Hz〜200Hz又は20kHz〜100kHzの周波数(可聴周波数帯域外の周波数)を発生させるのがより望ましい。本実施形態では、所定周期を100Hz(10ms)としている。そして、この所定周期毎に第1電圧と第2電圧との位相差を90度と0度(所定角度)との間で切り換える。具体的には、位相差を0度から90度まで時間に比例するように滑らかに変化させた後、90度に保ち、それから、位相差を90度から0度まで時間に比例するように滑らかに変化させた後、0度に保つ。つまり、1所定周期中に、位相差を0度と90度との間で台形状に変化させた後、0度に維持する。位相差を0度から90度まで変化させるのに要する時間は約1msである。
【0031】
ここで、所定周期において、位相差を0度と90度との間で台形状に変化させる期間を第1所定期間(バーストON期間)、位相差を0度に保つ期間を第2所定期間(バーストOFF期間)とすると、可動体9の移動速度を増加したいときには、第1所定期間を長くして第2所定期間を短くする一方、可動体9の移動速度を減少したいときには、第1所定期間を短くして第2所定期間を長くする。つまり、可動体9の移動速度が大きいほど、第2所定期間を短くする。
【0032】
以上のように、微動モード時は、第1電圧と第2電圧との位相差を制御しながら、第1及び第2電圧を絶えず供給するようになっている。
【0033】
駆動子8,8の移動軌跡を図11に示す。第2電圧の位相が第1電圧に対し90度ずれているときは、駆動子8,8は、長径又は短径が可動体9の移動方向とほぼ一致する、時計回りの楕円運動をし、本実施形態では、可動体9が図1に示す矢印Aの方向(右方向)に移動する。位相ずれが270度(第1電圧と第2電圧との位相差が90度)のときは、駆動子8,8が逆に反時計回りに楕円回転することで、可動体9が図1に示す矢印Bの方向(左方向)に移動する。位相ずれが0度又は180度のときは、駆動子8,8は斜めに直線運動し、可動体9は移動しない。これらを利用して、駆動子8,8を間欠的に楕円運動させることで、可動体9を微動させる。なお、位相ずれが45度のときは、駆動子8,8は、長径及び短径が可動体9の移動方向からずれた楕円運動をする。このとき、可動体9は、位相ずれが90度のときと比較して、ゆっくり矢印Aの方向に進む。これと同様のことは、位相ずれが135度、225度、又は315度(第1電圧と第2電圧との位相差が45度又は135度)のときも言える。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、通常のバースト駆動と比較して、圧電素子12が常に動いていることにより、圧電素子12が動き出すときに発生するバースト騒音が軽減される。さらに、第1電圧と第2電圧との位相差を徐々に変化させることで、バースト騒音がさらに軽減されるのに加えて、位相の急激な変化による圧電素子12の異常振動も抑えられ、高い信頼性が実現できる。その上、駆動周波数を通常モードの最高周波数と同じ、比較的高い周波数にすることにより、圧電素子12の振幅が抑えられ、バースト騒音がより一層軽減される。
【0035】
前記位相ずれと可動体9の移動速度との関係を図12に示す。可動体9の負荷(重さ)が軽い場合は、同図(a)に示すように、位相ずれが変わるに従って可動体9の移動速度は連続的に変化するが、可動体9の負荷(重さ)が重い場合は、同図(b)に示すように、0度近傍、180度近傍で不感帯を生じる。このことより、位相差バースト駆動時の位相差を90度と0度との間ではなく、90度と0度よりも大きい所定角度との間で変更することで、圧電素子12の変化が小さくなり、圧電素子12への衝撃が小さくなるので、高信頼性が得られる。また、バースト騒音に関しても、その衝撃が小さくなる分、低減できる。さらに、前記第2所定期間中の駆動子8,8の運動軌跡が直線状ではなく、若干楕円状になるので、駆動子8,8の可動体9との接触範囲が広がり、可動体9の耐久性が向上する。
【0036】
なお、本実施形態では、微動モード時は、所定周期毎に第1電圧と第2電圧との位相差を90度と0度との間で切り換えているが、図13に示すように、位相差を、90度と、0度よりも大きく90度よりも小さい範囲内、又は90度よりも大きく180度以下の範囲内の所定角度との間で変更してもよい。位相差を90度と180度との間で切り換えると、本実施形態と同様の作用・効果が得られる。位相差を90度と45度又は135度との間で切り換えると、上述のように、長径及び短径が可動体9の移動方向からずれた楕円運動をするので、可動体9の寿命が延びる。
【0037】
また、本実施形態では、位相差を0度から90度まで及び90度から0度まで時間に比例するように変化させているが、これに限らない。例えば、図14に示すように、位相差を0度から90度まで及び90度から0度まで急激に変化させてもよいし、図15に示すように、位相差を0度から90度まで及び90度から0度まで段階的に変化させてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、微動モード時は、第1及び第2電圧の固定駆動周波数を通常モード時の最高周波数と同じにしているが、図16に示すように、第1及び第2電圧の固定駆動周波数を通常モード時の最高周波数よりも低くしてもよい。この場合、効率が良くなる。
【0039】
(その他の実施形態)
圧電素子12の構成は、前記実施形態のものに限らない。例えば、共通電極層4の代わりに、給電電極層3と同じく、4つの分割電極を有する電極層を設けてもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、分割電極3cを略矩形状の電極としたが、これに限らず、例えば、これらを振動による応力の分布に応じた形状のものとしてもよい。
【0041】
また、前記実施形態では、ワイヤーによる給電について説明したが、導電性ゴムによる給電、フレキシブル基板による給電や、コンタクトピンによる給電など、他の給電方法を用いてもよい。これらにより、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
また、前記実施形態では、振動型アクチュエータの駆動力が付与されて駆動される可動体9は平板状であるが、これに限られるものではなく、可動体9の構成としては任意の構成を採用できる。例えば、図17に示すように、可動体は所定の軸X回りに回動可能な円板体9であり、振動型アクチュエータの駆動子8,8が円板体9の側周面9aに当接するように構成されていてもよい。かかる構成の場合、振動型アクチュエータを駆動すると、駆動子8,8の略楕円運動によって、円板体9が所定の軸X回りに回動させられる。
【0043】
また、前記実施形態では、駆動子8,8を圧電素子12の一方の端面に設けた構成について説明したが、圧電素子12の一方の側面に形成してもよい。この場合、1次モードの伸縮振動の伸縮方向は、駆動子8,8が可動体9を支持する方向となり、2次モードの屈曲振動の振動方向は、可動体9の移動方向となる。
【0044】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施できる。
【0045】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本発明にかかる駆動装置は、微動モード時の騒音を抑制するための用途等について適用できる。
【符号の説明】
【0047】
8 駆動子
9 可動体
12 圧電素子
21 位置検出部(制御装置)
22 速度指令部(制御装置)
23 制御部(制御装置)
24 周波数発生部(制御装置)
25 位相演算部(制御装置)
26 バースト周期発生部(制御装置)
27 位相差発生部(制御装置)
28,29 ドライバー(制御装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、該圧電素子に設けられた駆動子と、該駆動子に支持された可動体とを有する振動型アクチュエータと、
前記圧電素子に周波数が同じ第1及び第2電圧を供給する制御装置とを備え、
前記制御装置により前記圧電素子に前記第1電圧と該第1電圧と位相差が90度の第2電圧を供給することにより、前記圧電素子を伸縮振動と屈曲振動とが合成された振動をさせ、前記振動により前記駆動子を略楕円運動させて前記可動体を移動させる駆動装置であって、
前記制御装置は、微動モード時には、前記第1電圧と前記第2電圧との位相差を、90度と、0度よりも大きく90度よりも小さい範囲内、又は90度よりも大きく180度以下の範囲内の所定角度との間で切り換えるように構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の駆動装置において、
前記制御装置は、前記微動モード時には、所定周期毎に前記位相差の切換えを行うように構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の駆動装置において、
前記制御装置は、前記微動モード時には、前記位相差が90度と前記所定角度との間で徐々に変化するように前記位相差の切換えを行うように構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の駆動装置において、
前記所定角度は、180度であることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の駆動装置において、
前記所定角度は、45度又は135度であることを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の駆動装置において、
前記制御装置は、前記微動モード時には、前記可動体の所望の移動速度が大きいほど、前記位相差を前記所定角度に保つ期間を短くするように構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の駆動装置において、
前記制御装置は、通常モード時には、前記可動体の所望の移動速度が大きいほど、前記第1及び第2電圧の周波数を低くする一方、前記微動モード時には、該第1及び第2電圧の周波数を前記通常モード時の最高周波数と同じにするように構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の駆動装置において、
前記制御装置は、通常モード時には、前記可動体の所望の移動速度が大きいほど、前記第1及び第2電圧の周波数を低くする一方、前記微動モード時には、該第1及び第2電圧の周波数を前記通常モード時の最高周波数よりも低くするように構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項1】
圧電素子と、該圧電素子に設けられた駆動子と、該駆動子に支持された可動体とを有する振動型アクチュエータと、
前記圧電素子に周波数が同じ第1及び第2電圧を供給する制御装置とを備え、
前記制御装置により前記圧電素子に前記第1電圧と該第1電圧と位相差が90度の第2電圧を供給することにより、前記圧電素子を伸縮振動と屈曲振動とが合成された振動をさせ、前記振動により前記駆動子を略楕円運動させて前記可動体を移動させる駆動装置であって、
前記制御装置は、微動モード時には、前記第1電圧と前記第2電圧との位相差を、90度と、0度よりも大きく90度よりも小さい範囲内、又は90度よりも大きく180度以下の範囲内の所定角度との間で切り換えるように構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の駆動装置において、
前記制御装置は、前記微動モード時には、所定周期毎に前記位相差の切換えを行うように構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の駆動装置において、
前記制御装置は、前記微動モード時には、前記位相差が90度と前記所定角度との間で徐々に変化するように前記位相差の切換えを行うように構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の駆動装置において、
前記所定角度は、180度であることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の駆動装置において、
前記所定角度は、45度又は135度であることを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の駆動装置において、
前記制御装置は、前記微動モード時には、前記可動体の所望の移動速度が大きいほど、前記位相差を前記所定角度に保つ期間を短くするように構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の駆動装置において、
前記制御装置は、通常モード時には、前記可動体の所望の移動速度が大きいほど、前記第1及び第2電圧の周波数を低くする一方、前記微動モード時には、該第1及び第2電圧の周波数を前記通常モード時の最高周波数と同じにするように構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の駆動装置において、
前記制御装置は、通常モード時には、前記可動体の所望の移動速度が大きいほど、前記第1及び第2電圧の周波数を低くする一方、前記微動モード時には、該第1及び第2電圧の周波数を前記通常モード時の最高周波数よりも低くするように構成されていることを特徴とする駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−110228(P2012−110228A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−50659(P2012−50659)
【出願日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【分割の表示】特願2007−122284(P2007−122284)の分割
【原出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【分割の表示】特願2007−122284(P2007−122284)の分割
【原出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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