駆動装置
【課題】ピエゾアクチュエータの動作開始時及び停止時に発生するメカニカルノイズを抑制する駆動装置。
【解決手段】圧電素子、圧電素子の一端に固定された駆動摩擦部材、圧電素子の他端に固定された固定部材、及び駆動摩擦部材に駆動摩擦部材の移動方向に相対的に移動可能に所定の摩擦力で係合された移動体を有するピエゾアクチュエータ1と、電源Vdrvの両端に直列に接続された複数の駆動素子Q1〜Q4を有し複数の駆動素子のオンオフ動作によりピエゾアクチュエータを駆動する駆動部FBと、ピエゾアクチュエータの特性を用いてピエゾアクチュエータを一定の移動速度で変化させるようにデューティを時間的に変化させる矩形波信号を生成し、矩形波信号を複数の駆動素子に印加する制御回路10とを有する。
【解決手段】圧電素子、圧電素子の一端に固定された駆動摩擦部材、圧電素子の他端に固定された固定部材、及び駆動摩擦部材に駆動摩擦部材の移動方向に相対的に移動可能に所定の摩擦力で係合された移動体を有するピエゾアクチュエータ1と、電源Vdrvの両端に直列に接続された複数の駆動素子Q1〜Q4を有し複数の駆動素子のオンオフ動作によりピエゾアクチュエータを駆動する駆動部FBと、ピエゾアクチュエータの特性を用いてピエゾアクチュエータを一定の移動速度で変化させるようにデューティを時間的に変化させる矩形波信号を生成し、矩形波信号を複数の駆動素子に印加する制御回路10とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾアクチュエータを駆動する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の駆動装置として、例えば特許文献1、特許文献2が知られている。特許文献1に記載された駆動装置は、FETを用いたスイッチ回路のみからなる第1回路〜第4回路で構成されたブリッジ回路からなる駆動回路と駆動回路の駆動を制御する制御回路とで構成される。ブリッジ回路の第1接続点間に電源が接続され、第2接続点間に圧電部材が接続される。圧電部材は極性を交互に反転させて電源電圧が印加され、電圧印加期間を異ならせることにより異なる期間で伸長動作と縮小動作とを繰り返す。抵抗等の電流制限素子を除去し、スイッチ回路のみで駆動回路を構成することにより駆動装置の簡素化、小型化を図っている。また、この駆動装置は、圧電部材を含むピエゾアクチュエータを矩形波で駆動することにより、ドライブ回路を大幅に簡略化できる。
【0003】
特許文献2に記載された駆動装置では、圧電素子にその一方側から駆動電圧を印加して充電する第1スイッチ及び第4スイッチからなる第1駆動回路と、圧電素子にその他方側から駆動電圧を印加して充電する第2スイッチ及び第3スイッチからなる第2駆動回路と、各駆動回路により圧電素子に充電された電荷を放電する第2スイッチ及び第4スイッチからなる放電回路とを備えている。第1駆動回路と第2駆動回路とを交互に駆動させるとともに、第1駆動回路の駆動期間と第2駆動回路の駆動期間との間に放電回路を駆動させる。即ち、この駆動装置は、第1及び第2駆動回路で電流方向を変えるときに、第2スイッチ及び第4スイッチをオンさせることにより、圧電素子を含むピエゾアクチュエータに蓄積された電荷を放電させ、消費電流を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−350482号公報
【特許文献1】特開2001−211669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ピエゾアクチュエータを駆動させると、定常動作状態では(駆動パルスは通常、可聴域以上のため)、音はしないが、ピエゾアクチュエータの動作開始時と動作停止時にはメカニカルノイズが発生する。
【0006】
近年、携帯電話のカメラ機能やディジタルスティルカメラには、ムービー機能が搭載されることが多くなり、動画撮影中のオートフォーカスやズーム動作によりピエゾアクチュエータから発生するメカニカルノイズが問題となっている。通常、マイクはピエゾアクチュエータと同一筐体内にあるため、ノイズを拾ってしまう。
【0007】
本発明の課題は、ピエゾアクチュエータの動作開始時及び停止時に発生するメカニカルノイズを抑制する駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の駆動装置は、圧電素子、該圧電素子の一端に固定された駆動摩擦部材、前記圧電素子の他端に固定された固定部材、及び前記駆動摩擦部材に該駆動摩擦部材の移動方向に相対的に移動可能に所定の摩擦力で係合された移動体を有するピエゾアクチュエータと、電源の両端に直列に接続された複数の駆動素子を有し前記複数の駆動素子のオンオフ動作により前記ピエゾアクチュエータを駆動する駆動部と、前記ピエゾアクチュエータの特性を用いて前記ピエゾアクチュエータを一定の移動速度で変化させるようにデューティを時間的に変化させる矩形波信号を生成し、該矩形波信号を前記複数の駆動素子に印加する制御回路とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御回路は、ピエゾアクチュエータの特性を用いてピエゾアクチュエータを一定の移動速度で変化させるようにデューティを時間的に変化させる矩形波信号を生成し、矩形波信号を複数の駆動素子に印加してピエゾアクチュエータを駆動する。このため、ピエゾアクチュエータが動作開始時及び停止時に滑らかに動作するようになり、動作開始時及び停止時に発生するメカニカルノイズを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る駆動装置の構成図である。
【図2】本発明の実施例1に係る駆動装置を駆動する矩形波のデューティとピエゾアクチュエータの移動速度との特性を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係る駆動装置のインパクト型ピエゾアクチュエータを示す図である。
【図4】実施例1に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形を示す図である。
【図5】実施例1に係る駆動装置の動作停止時の駆動波形とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形を示す図である。
【図6】図2に示す特性に対する逆関数曲線を示す図である。
【図7】ピエゾアクチュエータの動作開始時の最適な割合でデューティを変化させた時と一定の割合でデューティを変化させた時の速度変化曲線を示す図である。
【図8】実施例1に係る駆動装置内の制御回路の構成ブロック図である。
【図9】0.25〜0.5のデューティを50分割するときの各設定値を示す図である。
【図10】実施例1に係る駆動装置の動作開始時の速度変化を示す図である。
【図11】実施例1の変形例1に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形を示す図である。
【図12】実施例1の変形例2に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形を示す図である。
【図13】実施例1の変形例3に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形を示す図である。
【図14】本発明の実施例2に係る駆動装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態の駆動装置を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の実施例1に係る駆動装置の構成図である。図1に示す駆動装置は、ピエゾアクチュエータ1、フルブリッジ回路FB、制御回路10を有している。図1において、フルブリッジ回路FBは、MOSFETQ1〜Q4で構成される駆動部からなる。ピエゾアクチュエータ1を駆動する電源Vdrvとグランドとの間には、P型のMOSFETQ1(第1スイッチング素子)とN型のMOSFETQ3(第2スイッチング素子)との直列回路が接続されるとともに、P型のMOSFETQ2(第3スイッチング素子)とN型のMOSFETQ4(第4スイッチング素子)との直列回路が接続されている。
【0013】
P型のMOSFETQ1とN型のMOSFETQ3との接続点P1とP型のMOSFETQ2とN型のMOSFETQ4との接続点P2との間には、ピエゾアクチュエータ1が接続されている。なお、MOSFETに代えて、バイポーラトランジスタ、IGBT(絶縁型ゲートトランジスタ)等のスイッチング素子を用いても良い。
【0014】
ピエゾアクチュエータ1にはトラス型やインパクト型などがあるが、実施例1に係る駆動装置では、インパクト型ピエゾアクチュエータ1を例示して説明する。
【0015】
図3は本発明の実施例1に係る駆動装置のインパクト型ピエゾアクチュエータを示す図である。図3に示すピエゾアクチュエータは、圧電素子2と、圧電素子2の一端に固定された駆動摩擦部材3と、圧電素子2の他端に固定された固定部材5と、駆動摩擦部材3に駆動摩擦部材3の移動方向に相対的に移動可能に所定の摩擦力で係合された移動体7とを有している。移動体7は、所定の摩擦力以上の力が作用すると、駆動摩擦部材3の軸方向に移動可能となる。移動体7には撮影レンズ等(図示せず)が固着されている。
【0016】
制御回路10は、MOSFETQ1,Q2,Q3,Q4を駆動するための矩形波信号Q1G,Q2G,Q3G,Q4Gを生成し、これらの矩形波信号をMOSFETQ1,Q2,Q3,Q4のゲートに印加する。図2は実施例1に係る駆動装置を駆動する矩形波のデューティとピエゾアクチュエータの移動速度との特性を示す図である。矩形波信号Q1G,Q2G,Q3G,Q4Gは、図2に示す矩形波のデューティとピエゾアクチュエータ1の移動速度との特性を用いて、ピエゾアクチュエータ1の動作開始時及び動作停止時にピエゾアクチュエータ1が一定の速度で変化するようにデューティを時間毎に変化させた信号である。
【0017】
制御回路10は、図2に示すように、ピエゾアクチュエータ1を駆動する矩形波のデューティを動作開始時には概ね0.5から適正値(例えば0.25)へ徐々に変化させ、動作停止時にはデューティを適正値(例えば0.25)から概ね0.5に徐々に変化させる矩形波信号Q1G,Q2G,Q3G,Q4Gを生成する。この矩形波信号Q1G,Q2G,Q3G,Q4Gにより、ピエゾアクチュエータ1を滑らかに動作させ、動作開始時及び停止時に発生するメカニカルノイズを抑制することができる。
【0018】
図4は実施例1に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形(矩形波信号Q1G,Q2G,Q3G,Q4G)とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形(VP21)を示す図である。図4において、時刻T1において、制御回路10からの動作開始時の矩形波信号Q1G,Q4Gにより、MOSFETQ1とMOSFETQ4がオンし、ピエゾアクチュエータ1に印加される電圧は、+Vdrvとなる。
【0019】
時刻T2において、制御回路10からの矩形波信号Q2G,Q3Gにより、MOSFETQ2とMOSFETQ3がオンし、ピエゾアクチュエータ1に印加される電圧は、−Vdrvとなる。時刻T1,T2においては、矩形波信号Q1G〜Q4Gのデューティは0.5となり、繰出方向の速度と戻り方向の速度が同じであるため、ピエゾアクチュエータ1は動作しない。
【0020】
次に、時刻T3以降に徐々に矩形波信号Q1G〜Q4Gのデューティが徐々に小さくなり、これに伴ってピエゾアクチュエータ1も動作を開始する。時刻T9以降にピエゾアクチュエータ1の動作速度が最大となるデューティとなり、移動速度が最も早くなる。
【0021】
図5は、実施例1に係る駆動装置の動作停止時の駆動波形(矩形波信号Q1G,Q2G,Q3G,Q4G)とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形(Vp21)を示す図である。図5に示す動作停止時の矩形波信号Q1G〜Q4Gは、図4に示す動作開始時の矩形波信号Q1G〜Q4Gとは逆に小さいデューティを徐々に変化させて、デューティを0.5まで変化させる。これらの動作により、被駆動部材である移動体7は、ゆっくり動作を開始し、または動作を停止する。
【0022】
ここで、図2に示すデューティとピエゾアクチュエータ1の移動速度との関係を示す曲線の逆関数に沿ってデューティを変化させると、メカニカルノイズを抑制することができる。
【0023】
図6は、図2に示す特性に対する逆関数曲線を示す図である。図6に示す逆関数曲線に沿って、ピエゾアクチュエータ1の移動速度の変化が一定に増加又は減少させるようにデューティを時間毎に変化させた矩形波信号により、ピエゾアクチュエータ1を駆動すると、ピエゾアクチュエータ1は滑らかに動作を開始又は停止する。このため、動作開始時及び停止時に発生するメカニカルノイズを抑制することができる。
【0024】
また、簡易なデューティ変化方法として、一定の割合でデューティを増減する方法がある。この場合、メカニカルノイズを抑制する効果を十分に発揮するためには、前記最適なデューティ変化と同等とするため、変化させる時間を長く取る必要がある。図7に、ピエゾアクチュエータの動作開始時の最適な割合でデューティを変化させた時の速度変化曲線CV1と一定の割合でデューティを変化させた時の速度変化曲線CV2とを示す。
【0025】
図8は実施例1に係る駆動装置内の制御回路の構成ブロック図である。制御回路10は、矩形波信号をディジタル信号により生成するもので、メモリ11、コントローラ13、パルス発生器15を有している。メモリ11は、不揮発性メモリ等、例えばEEPROM等である。ピエゾアクチュエータ1のデューティと移動速度との関係を示す特性曲線の逆関数から、速度変化が等間隔となるように、予めデューティを計算し、メモリ11の下位アドレスから順番に格納させておく。このデューティの間隔により立ち上がり速度が変わる。
【0026】
コントローラ13は、ピエゾアクチュエータ1の動作開始時にメモリ11の下位アドレスから順に読出し、読み出された下位アドレスに応じて設定されたデューティ情報をパルス発生器15に出力する。パルス発生器15は、コントローラ13からのデューティ情報に応じたデューティを持つパルス信号を生成し、このパルス信号を矩形波信号Q1G〜Q4Gとして各MOSFETQ1〜Q4のゲートに出力する。
【0027】
なお、メモリ11の最上位アドレスに達したら、そのデューティを維持し、パルス信号の発生を続ける。
【0028】
コントローラ13は、動作停止時には、動作開始時とは逆にメモリ11の上位アドレスから下位アドレスまで順に読出し、デューティを生成させることにより、所望の動作を得ることができる。また、逆方向に動作させるときには、同様な動作でデューティを反転させれば良い。
【0029】
なお、ディジタル信号で制御する場合には、設定可能なデューティは離散的になる。しかし、ピエゾアクチュエータ1のパルス1個分の移動量は、非常に小さいため、最も近い設定可能なデューティで問題はない。具体的な例として、現在、ピエゾアクチュエータドライバで良く用いられているマスタークロックが10MHz、駆動周波数が50kHzの場合を考察する。マスタークロックが10MHzであるので、波形制御は、100nsの分解能となる。
【0030】
従って、駆動周波数が50kHzでの設定可能なデューティは、0.005ステップの201パターンとなる。図9は0.25〜0.5のデューティを50分割するときの各設定値を示す図である。図9において、左から1列目は、50分割した時間を示す。2列目は、デューティと移動速度との特性曲線の逆関数から速度変化が等間隔となるデューティを示す。3列目は、2列目のデューティ値に最も近い設定可能なデューティ値を示す。4列目は、メモリ値を示す。図9に示す例では、3列目の設定可能なデューティをメモリアドレスに変換すると、0.5は0、0.45は10、(中略)、0.25は50となる。
【0031】
5列目は、メモリアドレスを示す。メモリ11に予め4列目の値を5列目のメモリアドレスに従って、書き込んでおく。コントローラ13は、動作開始時には、メモリ11の下位アドレスから順にメモリ値を読み出す。メモリアドレスが0では、メモリ値が0であるので、コントローラ13は、Hレベル出力がマスタークロック100パルスでLレベル出力がマスタークロック100パルスの幅を持つ矩形波信号を生成するようにパルス発生器15に指示を出力する。
【0032】
次に、メモリアドレスが1では、メモリ値が10であるので、コントローラ13は、Hレベル出力がマスタークロック90パルス、Lレベル出力がマスタークロック110パルスの幅を持つ矩形波信号を生成するようにパルス発生器15に指示を出力する。
【0033】
以下、同様な処理を繰り返し、最上位メモリアドレスまで達したら、そのデューティを維持し、パルスの発生を続ける。動作停止時には、メモリ11の上位アドレスから下位アドレスまで順に読出し、所望の矩形波信号を生成することができる。図10に、実施例1に係る駆動装置の動作開始時の速度変化を示す。この例では、デューティを50分割したが、分割数を増やせばピエゾアクチュエータ1の立ち上がり速度が遅くなり、分割数を減らせば、ピエゾアクチュエータ1の立ち上がり速度が速くなる。ノイズの発生は、負荷や筐体の大きさ等で変化するので、適切な立ち上がり速度に設定する。
【0034】
次に、制御回路10により一定の割合でデューティを増減させるディジタル制御を説明する。この場合には、図8に示すメモリ11が不要となる。コントローラ13は、動作開始時には、デューティを0.5から順に減算させ、減算されたデューティ情報に応じたデューティを持つパルス信号を生成し、このパルス信号を矩形波信号Q1G〜Q4Gとして各MOSFETQ1〜Q4のゲートに出力する。所望のデューティに達したら、そのデューティを維持し、パルス信号の発生を続ける。
【0035】
ピエゾアクチュエータ1の動作停止時には、動作開始時とは逆にデューティ0.25から順に加算させ、加算されたデューティ情報に応じたデューティを持つパルス信号を生成し、パルス信号を矩形波信号Q1G〜Q4Gとして各MOSFETQ1〜Q4のゲートに出力する。また、逆方向にピエゾアクチュエータ1を動作させるときには、同様な動作でデューティを反転させれば良い。
【0036】
(変形例1)
実施例1の変形例1として、制御回路10が、図2に示すように、ピエゾアクチュエータ1を駆動する矩形波のデューティを動作開始時には概ね0から適正値へ、または概ね1から適正値へ、停止時には適正値から概ね0へ、または適正値から概ね1へ徐々に変化させる矩形波信号を生成して、矩形波信号を各MOSFETQ1〜Q4のゲートに出力しても良い。この変形例1の場合にも実施例1の効果と同様の効果が得られる。図11に、実施例1の変形例1に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形を示す。図11では、ピエゾアクチュエータ1の動作開始時には概ね0から適正値へ変化させている状態を示している。
【0037】
(変形例2)
実施例1の変形例2として、制御回路10が、図1に示すフルブリッジ回路のMOSFETQ1,Q4とMOSFETQ2,Q3とを交互にオンオフさせることによりピエゾアクチュエータ1に流れる電流の方向を変えるときに、ローサイドのMOSFETQ3,Q4とを同時にオンさせるタイミングを設けた矩形波信号を生成して、矩形波信号を各MOSFETQ1〜Q4のゲートに出力しても良い。
【0038】
図12に、実施例1の変形例2に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形(矩形波信号)とその時のピエゾアクチュエータ1の両端にかかる電圧波形を示す。図12において、時刻T15を含む時刻T15〜T16において、MOSFETQ3,Q4がオンされ、ピエゾアクチュエータ1に印加される電圧は0Vとなる。
【0039】
実施例1の変形例2の駆動装置によれば、実施例1の駆動装置の効果が得られるとともに、さらに、ピエゾアクチュエータ1に蓄積された電荷を放電させることができ、消費電流を削減することができる。
【0040】
(変形例3)
実施例1の変形例3として、制御回路10が図1に示すフルブリッジ回路のMOSFETQ1,Q4とMOSFETQ2,Q3とを交互にオンオフさせることによりピエゾアクチュエータ1に流れる電流の方向を変えるときに、全てのMOSFETQ1〜Q4とを同時にオフさせるタイミングを設けた矩形波信号を生成して、矩形波信号を各MOSFETQ1〜Q4のゲートに出力しても良い。
【0041】
図13に、実施例1の変形例3に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形を示す。図13において、時刻T18を含む時刻T17〜T19において、MOSFETQ1〜Q4がオフされ、ピエゾアクチュエータ1はハイインピーダンス状態となる。実施例1の変形例3の駆動装置によれば、実施例1の駆動装置の効果が得られる。
【実施例2】
【0042】
図14は本発明の実施例2に係る駆動装置の構成図である。図14に示す駆動装置は、ピエゾアクチュエータ1、ハーフブリッジ回路HB、制御回路10aを有している。図14において、ハーフブリッジ回路HBは、MOSFETQ1,Q2で構成される駆動部からなる。電源Vdrvとグランドとの間には、P型のMOSFETQ1とN型のMOSFETQ2との直列回路が接続されている。N型のMOSFETQ2のドレインとソースとの間には、ピエゾアクチュエータ1が接続されている。電源Vdrvは、図1に示す実施例1と同等の速度を得るためには電源Vdrvの電圧に比較して、約2倍の電圧が必要である。
【0043】
なお、MOSFETに代えて、バイポーラトランジスタ、IGBT(絶縁型ゲートトランジスタ)等のスイッチング素子でも良い。
【0044】
制御回路10aは、MOSFETQ1,Q2を駆動するための矩形波信号Q1G,Q2Gを生成し、MOSFETQ1,Q2のゲートに印加して、MOSFETQ1とMOSFETQ2とを交互にオンオフさせる。
【0045】
矩形波信号Q1G,Q2Gは、図2に示す矩形波のデューティとピエゾアクチュエータ1の移動速度との特性を用いて、ピエゾアクチュエータ1の動作開始時及び動作停止時にピエゾアクチュエータ1が一定の速度で変化するようにデューティを時間毎に変化させた信号である。
【0046】
このように構成された実施例2の駆動装置によれば、実施例1の駆動装置の動作と同様に動作し、同様な効果が得られる。
【0047】
なお、本発明は上述した実施例に係る駆動装置に限定されるものではない。実施例1,2の駆動装置では、ピエゾアクチュエータ1のデューティと移動速度との関係を示す特性が図2に示すような曲線であったが、本発明は、図2に示すようなピエゾアクチュエータ1の特性に限定されることなく、ピエゾアクチュエータ1の特性は、その他の特性であっても良い。この場合にも、制御回路10は、ピエゾアクチュエータ1の特性曲線の逆関数に沿って、ピエゾアクチュエータ1を一定の移動速度で変化させるようにデューティを時間的に変化させる矩形信号を生成して、各MOSFETのゲートに印加すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、携帯電話のカメラやディジタルスティルカメラなどの撮影装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 ピエゾアクチュエータ
2 圧電素子
3 駆動摩擦部材
5 固定部材
7 移動体
10,10a 制御回路
11 メモリ
13 コントローラ
15 パルス発生器
Q1〜Q4 MOSFET
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾアクチュエータを駆動する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の駆動装置として、例えば特許文献1、特許文献2が知られている。特許文献1に記載された駆動装置は、FETを用いたスイッチ回路のみからなる第1回路〜第4回路で構成されたブリッジ回路からなる駆動回路と駆動回路の駆動を制御する制御回路とで構成される。ブリッジ回路の第1接続点間に電源が接続され、第2接続点間に圧電部材が接続される。圧電部材は極性を交互に反転させて電源電圧が印加され、電圧印加期間を異ならせることにより異なる期間で伸長動作と縮小動作とを繰り返す。抵抗等の電流制限素子を除去し、スイッチ回路のみで駆動回路を構成することにより駆動装置の簡素化、小型化を図っている。また、この駆動装置は、圧電部材を含むピエゾアクチュエータを矩形波で駆動することにより、ドライブ回路を大幅に簡略化できる。
【0003】
特許文献2に記載された駆動装置では、圧電素子にその一方側から駆動電圧を印加して充電する第1スイッチ及び第4スイッチからなる第1駆動回路と、圧電素子にその他方側から駆動電圧を印加して充電する第2スイッチ及び第3スイッチからなる第2駆動回路と、各駆動回路により圧電素子に充電された電荷を放電する第2スイッチ及び第4スイッチからなる放電回路とを備えている。第1駆動回路と第2駆動回路とを交互に駆動させるとともに、第1駆動回路の駆動期間と第2駆動回路の駆動期間との間に放電回路を駆動させる。即ち、この駆動装置は、第1及び第2駆動回路で電流方向を変えるときに、第2スイッチ及び第4スイッチをオンさせることにより、圧電素子を含むピエゾアクチュエータに蓄積された電荷を放電させ、消費電流を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−350482号公報
【特許文献1】特開2001−211669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ピエゾアクチュエータを駆動させると、定常動作状態では(駆動パルスは通常、可聴域以上のため)、音はしないが、ピエゾアクチュエータの動作開始時と動作停止時にはメカニカルノイズが発生する。
【0006】
近年、携帯電話のカメラ機能やディジタルスティルカメラには、ムービー機能が搭載されることが多くなり、動画撮影中のオートフォーカスやズーム動作によりピエゾアクチュエータから発生するメカニカルノイズが問題となっている。通常、マイクはピエゾアクチュエータと同一筐体内にあるため、ノイズを拾ってしまう。
【0007】
本発明の課題は、ピエゾアクチュエータの動作開始時及び停止時に発生するメカニカルノイズを抑制する駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の駆動装置は、圧電素子、該圧電素子の一端に固定された駆動摩擦部材、前記圧電素子の他端に固定された固定部材、及び前記駆動摩擦部材に該駆動摩擦部材の移動方向に相対的に移動可能に所定の摩擦力で係合された移動体を有するピエゾアクチュエータと、電源の両端に直列に接続された複数の駆動素子を有し前記複数の駆動素子のオンオフ動作により前記ピエゾアクチュエータを駆動する駆動部と、前記ピエゾアクチュエータの特性を用いて前記ピエゾアクチュエータを一定の移動速度で変化させるようにデューティを時間的に変化させる矩形波信号を生成し、該矩形波信号を前記複数の駆動素子に印加する制御回路とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御回路は、ピエゾアクチュエータの特性を用いてピエゾアクチュエータを一定の移動速度で変化させるようにデューティを時間的に変化させる矩形波信号を生成し、矩形波信号を複数の駆動素子に印加してピエゾアクチュエータを駆動する。このため、ピエゾアクチュエータが動作開始時及び停止時に滑らかに動作するようになり、動作開始時及び停止時に発生するメカニカルノイズを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る駆動装置の構成図である。
【図2】本発明の実施例1に係る駆動装置を駆動する矩形波のデューティとピエゾアクチュエータの移動速度との特性を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係る駆動装置のインパクト型ピエゾアクチュエータを示す図である。
【図4】実施例1に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形を示す図である。
【図5】実施例1に係る駆動装置の動作停止時の駆動波形とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形を示す図である。
【図6】図2に示す特性に対する逆関数曲線を示す図である。
【図7】ピエゾアクチュエータの動作開始時の最適な割合でデューティを変化させた時と一定の割合でデューティを変化させた時の速度変化曲線を示す図である。
【図8】実施例1に係る駆動装置内の制御回路の構成ブロック図である。
【図9】0.25〜0.5のデューティを50分割するときの各設定値を示す図である。
【図10】実施例1に係る駆動装置の動作開始時の速度変化を示す図である。
【図11】実施例1の変形例1に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形を示す図である。
【図12】実施例1の変形例2に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形を示す図である。
【図13】実施例1の変形例3に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形を示す図である。
【図14】本発明の実施例2に係る駆動装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態の駆動装置を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の実施例1に係る駆動装置の構成図である。図1に示す駆動装置は、ピエゾアクチュエータ1、フルブリッジ回路FB、制御回路10を有している。図1において、フルブリッジ回路FBは、MOSFETQ1〜Q4で構成される駆動部からなる。ピエゾアクチュエータ1を駆動する電源Vdrvとグランドとの間には、P型のMOSFETQ1(第1スイッチング素子)とN型のMOSFETQ3(第2スイッチング素子)との直列回路が接続されるとともに、P型のMOSFETQ2(第3スイッチング素子)とN型のMOSFETQ4(第4スイッチング素子)との直列回路が接続されている。
【0013】
P型のMOSFETQ1とN型のMOSFETQ3との接続点P1とP型のMOSFETQ2とN型のMOSFETQ4との接続点P2との間には、ピエゾアクチュエータ1が接続されている。なお、MOSFETに代えて、バイポーラトランジスタ、IGBT(絶縁型ゲートトランジスタ)等のスイッチング素子を用いても良い。
【0014】
ピエゾアクチュエータ1にはトラス型やインパクト型などがあるが、実施例1に係る駆動装置では、インパクト型ピエゾアクチュエータ1を例示して説明する。
【0015】
図3は本発明の実施例1に係る駆動装置のインパクト型ピエゾアクチュエータを示す図である。図3に示すピエゾアクチュエータは、圧電素子2と、圧電素子2の一端に固定された駆動摩擦部材3と、圧電素子2の他端に固定された固定部材5と、駆動摩擦部材3に駆動摩擦部材3の移動方向に相対的に移動可能に所定の摩擦力で係合された移動体7とを有している。移動体7は、所定の摩擦力以上の力が作用すると、駆動摩擦部材3の軸方向に移動可能となる。移動体7には撮影レンズ等(図示せず)が固着されている。
【0016】
制御回路10は、MOSFETQ1,Q2,Q3,Q4を駆動するための矩形波信号Q1G,Q2G,Q3G,Q4Gを生成し、これらの矩形波信号をMOSFETQ1,Q2,Q3,Q4のゲートに印加する。図2は実施例1に係る駆動装置を駆動する矩形波のデューティとピエゾアクチュエータの移動速度との特性を示す図である。矩形波信号Q1G,Q2G,Q3G,Q4Gは、図2に示す矩形波のデューティとピエゾアクチュエータ1の移動速度との特性を用いて、ピエゾアクチュエータ1の動作開始時及び動作停止時にピエゾアクチュエータ1が一定の速度で変化するようにデューティを時間毎に変化させた信号である。
【0017】
制御回路10は、図2に示すように、ピエゾアクチュエータ1を駆動する矩形波のデューティを動作開始時には概ね0.5から適正値(例えば0.25)へ徐々に変化させ、動作停止時にはデューティを適正値(例えば0.25)から概ね0.5に徐々に変化させる矩形波信号Q1G,Q2G,Q3G,Q4Gを生成する。この矩形波信号Q1G,Q2G,Q3G,Q4Gにより、ピエゾアクチュエータ1を滑らかに動作させ、動作開始時及び停止時に発生するメカニカルノイズを抑制することができる。
【0018】
図4は実施例1に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形(矩形波信号Q1G,Q2G,Q3G,Q4G)とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形(VP21)を示す図である。図4において、時刻T1において、制御回路10からの動作開始時の矩形波信号Q1G,Q4Gにより、MOSFETQ1とMOSFETQ4がオンし、ピエゾアクチュエータ1に印加される電圧は、+Vdrvとなる。
【0019】
時刻T2において、制御回路10からの矩形波信号Q2G,Q3Gにより、MOSFETQ2とMOSFETQ3がオンし、ピエゾアクチュエータ1に印加される電圧は、−Vdrvとなる。時刻T1,T2においては、矩形波信号Q1G〜Q4Gのデューティは0.5となり、繰出方向の速度と戻り方向の速度が同じであるため、ピエゾアクチュエータ1は動作しない。
【0020】
次に、時刻T3以降に徐々に矩形波信号Q1G〜Q4Gのデューティが徐々に小さくなり、これに伴ってピエゾアクチュエータ1も動作を開始する。時刻T9以降にピエゾアクチュエータ1の動作速度が最大となるデューティとなり、移動速度が最も早くなる。
【0021】
図5は、実施例1に係る駆動装置の動作停止時の駆動波形(矩形波信号Q1G,Q2G,Q3G,Q4G)とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形(Vp21)を示す図である。図5に示す動作停止時の矩形波信号Q1G〜Q4Gは、図4に示す動作開始時の矩形波信号Q1G〜Q4Gとは逆に小さいデューティを徐々に変化させて、デューティを0.5まで変化させる。これらの動作により、被駆動部材である移動体7は、ゆっくり動作を開始し、または動作を停止する。
【0022】
ここで、図2に示すデューティとピエゾアクチュエータ1の移動速度との関係を示す曲線の逆関数に沿ってデューティを変化させると、メカニカルノイズを抑制することができる。
【0023】
図6は、図2に示す特性に対する逆関数曲線を示す図である。図6に示す逆関数曲線に沿って、ピエゾアクチュエータ1の移動速度の変化が一定に増加又は減少させるようにデューティを時間毎に変化させた矩形波信号により、ピエゾアクチュエータ1を駆動すると、ピエゾアクチュエータ1は滑らかに動作を開始又は停止する。このため、動作開始時及び停止時に発生するメカニカルノイズを抑制することができる。
【0024】
また、簡易なデューティ変化方法として、一定の割合でデューティを増減する方法がある。この場合、メカニカルノイズを抑制する効果を十分に発揮するためには、前記最適なデューティ変化と同等とするため、変化させる時間を長く取る必要がある。図7に、ピエゾアクチュエータの動作開始時の最適な割合でデューティを変化させた時の速度変化曲線CV1と一定の割合でデューティを変化させた時の速度変化曲線CV2とを示す。
【0025】
図8は実施例1に係る駆動装置内の制御回路の構成ブロック図である。制御回路10は、矩形波信号をディジタル信号により生成するもので、メモリ11、コントローラ13、パルス発生器15を有している。メモリ11は、不揮発性メモリ等、例えばEEPROM等である。ピエゾアクチュエータ1のデューティと移動速度との関係を示す特性曲線の逆関数から、速度変化が等間隔となるように、予めデューティを計算し、メモリ11の下位アドレスから順番に格納させておく。このデューティの間隔により立ち上がり速度が変わる。
【0026】
コントローラ13は、ピエゾアクチュエータ1の動作開始時にメモリ11の下位アドレスから順に読出し、読み出された下位アドレスに応じて設定されたデューティ情報をパルス発生器15に出力する。パルス発生器15は、コントローラ13からのデューティ情報に応じたデューティを持つパルス信号を生成し、このパルス信号を矩形波信号Q1G〜Q4Gとして各MOSFETQ1〜Q4のゲートに出力する。
【0027】
なお、メモリ11の最上位アドレスに達したら、そのデューティを維持し、パルス信号の発生を続ける。
【0028】
コントローラ13は、動作停止時には、動作開始時とは逆にメモリ11の上位アドレスから下位アドレスまで順に読出し、デューティを生成させることにより、所望の動作を得ることができる。また、逆方向に動作させるときには、同様な動作でデューティを反転させれば良い。
【0029】
なお、ディジタル信号で制御する場合には、設定可能なデューティは離散的になる。しかし、ピエゾアクチュエータ1のパルス1個分の移動量は、非常に小さいため、最も近い設定可能なデューティで問題はない。具体的な例として、現在、ピエゾアクチュエータドライバで良く用いられているマスタークロックが10MHz、駆動周波数が50kHzの場合を考察する。マスタークロックが10MHzであるので、波形制御は、100nsの分解能となる。
【0030】
従って、駆動周波数が50kHzでの設定可能なデューティは、0.005ステップの201パターンとなる。図9は0.25〜0.5のデューティを50分割するときの各設定値を示す図である。図9において、左から1列目は、50分割した時間を示す。2列目は、デューティと移動速度との特性曲線の逆関数から速度変化が等間隔となるデューティを示す。3列目は、2列目のデューティ値に最も近い設定可能なデューティ値を示す。4列目は、メモリ値を示す。図9に示す例では、3列目の設定可能なデューティをメモリアドレスに変換すると、0.5は0、0.45は10、(中略)、0.25は50となる。
【0031】
5列目は、メモリアドレスを示す。メモリ11に予め4列目の値を5列目のメモリアドレスに従って、書き込んでおく。コントローラ13は、動作開始時には、メモリ11の下位アドレスから順にメモリ値を読み出す。メモリアドレスが0では、メモリ値が0であるので、コントローラ13は、Hレベル出力がマスタークロック100パルスでLレベル出力がマスタークロック100パルスの幅を持つ矩形波信号を生成するようにパルス発生器15に指示を出力する。
【0032】
次に、メモリアドレスが1では、メモリ値が10であるので、コントローラ13は、Hレベル出力がマスタークロック90パルス、Lレベル出力がマスタークロック110パルスの幅を持つ矩形波信号を生成するようにパルス発生器15に指示を出力する。
【0033】
以下、同様な処理を繰り返し、最上位メモリアドレスまで達したら、そのデューティを維持し、パルスの発生を続ける。動作停止時には、メモリ11の上位アドレスから下位アドレスまで順に読出し、所望の矩形波信号を生成することができる。図10に、実施例1に係る駆動装置の動作開始時の速度変化を示す。この例では、デューティを50分割したが、分割数を増やせばピエゾアクチュエータ1の立ち上がり速度が遅くなり、分割数を減らせば、ピエゾアクチュエータ1の立ち上がり速度が速くなる。ノイズの発生は、負荷や筐体の大きさ等で変化するので、適切な立ち上がり速度に設定する。
【0034】
次に、制御回路10により一定の割合でデューティを増減させるディジタル制御を説明する。この場合には、図8に示すメモリ11が不要となる。コントローラ13は、動作開始時には、デューティを0.5から順に減算させ、減算されたデューティ情報に応じたデューティを持つパルス信号を生成し、このパルス信号を矩形波信号Q1G〜Q4Gとして各MOSFETQ1〜Q4のゲートに出力する。所望のデューティに達したら、そのデューティを維持し、パルス信号の発生を続ける。
【0035】
ピエゾアクチュエータ1の動作停止時には、動作開始時とは逆にデューティ0.25から順に加算させ、加算されたデューティ情報に応じたデューティを持つパルス信号を生成し、パルス信号を矩形波信号Q1G〜Q4Gとして各MOSFETQ1〜Q4のゲートに出力する。また、逆方向にピエゾアクチュエータ1を動作させるときには、同様な動作でデューティを反転させれば良い。
【0036】
(変形例1)
実施例1の変形例1として、制御回路10が、図2に示すように、ピエゾアクチュエータ1を駆動する矩形波のデューティを動作開始時には概ね0から適正値へ、または概ね1から適正値へ、停止時には適正値から概ね0へ、または適正値から概ね1へ徐々に変化させる矩形波信号を生成して、矩形波信号を各MOSFETQ1〜Q4のゲートに出力しても良い。この変形例1の場合にも実施例1の効果と同様の効果が得られる。図11に、実施例1の変形例1に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形を示す。図11では、ピエゾアクチュエータ1の動作開始時には概ね0から適正値へ変化させている状態を示している。
【0037】
(変形例2)
実施例1の変形例2として、制御回路10が、図1に示すフルブリッジ回路のMOSFETQ1,Q4とMOSFETQ2,Q3とを交互にオンオフさせることによりピエゾアクチュエータ1に流れる電流の方向を変えるときに、ローサイドのMOSFETQ3,Q4とを同時にオンさせるタイミングを設けた矩形波信号を生成して、矩形波信号を各MOSFETQ1〜Q4のゲートに出力しても良い。
【0038】
図12に、実施例1の変形例2に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形(矩形波信号)とその時のピエゾアクチュエータ1の両端にかかる電圧波形を示す。図12において、時刻T15を含む時刻T15〜T16において、MOSFETQ3,Q4がオンされ、ピエゾアクチュエータ1に印加される電圧は0Vとなる。
【0039】
実施例1の変形例2の駆動装置によれば、実施例1の駆動装置の効果が得られるとともに、さらに、ピエゾアクチュエータ1に蓄積された電荷を放電させることができ、消費電流を削減することができる。
【0040】
(変形例3)
実施例1の変形例3として、制御回路10が図1に示すフルブリッジ回路のMOSFETQ1,Q4とMOSFETQ2,Q3とを交互にオンオフさせることによりピエゾアクチュエータ1に流れる電流の方向を変えるときに、全てのMOSFETQ1〜Q4とを同時にオフさせるタイミングを設けた矩形波信号を生成して、矩形波信号を各MOSFETQ1〜Q4のゲートに出力しても良い。
【0041】
図13に、実施例1の変形例3に係る駆動装置の動作開始時の駆動波形とその時のピエゾアクチュエータの両端にかかる電圧波形を示す。図13において、時刻T18を含む時刻T17〜T19において、MOSFETQ1〜Q4がオフされ、ピエゾアクチュエータ1はハイインピーダンス状態となる。実施例1の変形例3の駆動装置によれば、実施例1の駆動装置の効果が得られる。
【実施例2】
【0042】
図14は本発明の実施例2に係る駆動装置の構成図である。図14に示す駆動装置は、ピエゾアクチュエータ1、ハーフブリッジ回路HB、制御回路10aを有している。図14において、ハーフブリッジ回路HBは、MOSFETQ1,Q2で構成される駆動部からなる。電源Vdrvとグランドとの間には、P型のMOSFETQ1とN型のMOSFETQ2との直列回路が接続されている。N型のMOSFETQ2のドレインとソースとの間には、ピエゾアクチュエータ1が接続されている。電源Vdrvは、図1に示す実施例1と同等の速度を得るためには電源Vdrvの電圧に比較して、約2倍の電圧が必要である。
【0043】
なお、MOSFETに代えて、バイポーラトランジスタ、IGBT(絶縁型ゲートトランジスタ)等のスイッチング素子でも良い。
【0044】
制御回路10aは、MOSFETQ1,Q2を駆動するための矩形波信号Q1G,Q2Gを生成し、MOSFETQ1,Q2のゲートに印加して、MOSFETQ1とMOSFETQ2とを交互にオンオフさせる。
【0045】
矩形波信号Q1G,Q2Gは、図2に示す矩形波のデューティとピエゾアクチュエータ1の移動速度との特性を用いて、ピエゾアクチュエータ1の動作開始時及び動作停止時にピエゾアクチュエータ1が一定の速度で変化するようにデューティを時間毎に変化させた信号である。
【0046】
このように構成された実施例2の駆動装置によれば、実施例1の駆動装置の動作と同様に動作し、同様な効果が得られる。
【0047】
なお、本発明は上述した実施例に係る駆動装置に限定されるものではない。実施例1,2の駆動装置では、ピエゾアクチュエータ1のデューティと移動速度との関係を示す特性が図2に示すような曲線であったが、本発明は、図2に示すようなピエゾアクチュエータ1の特性に限定されることなく、ピエゾアクチュエータ1の特性は、その他の特性であっても良い。この場合にも、制御回路10は、ピエゾアクチュエータ1の特性曲線の逆関数に沿って、ピエゾアクチュエータ1を一定の移動速度で変化させるようにデューティを時間的に変化させる矩形信号を生成して、各MOSFETのゲートに印加すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、携帯電話のカメラやディジタルスティルカメラなどの撮影装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 ピエゾアクチュエータ
2 圧電素子
3 駆動摩擦部材
5 固定部材
7 移動体
10,10a 制御回路
11 メモリ
13 コントローラ
15 パルス発生器
Q1〜Q4 MOSFET
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子、該圧電素子の一端に固定された駆動摩擦部材、前記圧電素子の他端に固定された固定部材、及び前記駆動摩擦部材に該駆動摩擦部材の移動方向に相対的に移動可能に所定の摩擦力で係合された移動体を有するピエゾアクチュエータと、
電源の両端に直列に接続された複数の駆動素子を有し前記複数の駆動素子のオンオフ動作により前記ピエゾアクチュエータを駆動する駆動部と、
前記ピエゾアクチュエータの特性を用いて前記ピエゾアクチュエータを一定の移動速度で変化させるようにデューティを時間的に変化させる矩形波信号を生成し、該矩形波信号を前記複数の駆動素子に印加する制御回路と、
を有することを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記デューティと前記ピエゾアクチュエータの移動速度の関係を示す特性の逆関数に沿って、前記ピエゾアクチュエータを一定の移動速度で変化させるようにデューティを時間的に変化させる矩形波信号を生成することを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記電源の両端にハイサイドの第1スイッチング素子とローサイドの第2スイッチング素子と直列に接続された第1直列回路と、前記電源の両端にハイサイドの第3スイッチング素子とローサイドの第4スイッチング素子と直列に接続された第2直列回路とを有するブリッジ回路からなり、
前記ピエゾアクチュエータは、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続点と前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子との接続点との間に接続され、
前記制御回路は、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子と前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子とを交互にオンオフさせることにより前記ピエゾアクチュエータに流れる電流の方向を変えるときに、前記第2スイッチング素子と前記第4スイッチング素子とを同時にオンさせるタイミングを設けた矩形波信号を生成することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記電源の両端にハイサイドの第1スイッチング素子とローサイドの第2スイッチング素子と直列に接続された第1直列回路と、前記電源の両端にハイサイドの第3スイッチング素子とローサイドの第4スイッチング素子と直列に接続された第2直列回路とを有するブリッジ回路からなり、
前記ピエゾアクチュエータは、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続点と前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子との接続点との間に接続され、
前記制御回路は、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子と前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子とを交互にオンオフさせることにより前記ピエゾアクチュエータに流れる電流の方向を変えるときに、前記第1スイッチング素子乃至前記第4スイッチング素子とを同時にオフさせるタイミングを設けた矩形波信号を生成することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の駆動装置。
【請求項1】
圧電素子、該圧電素子の一端に固定された駆動摩擦部材、前記圧電素子の他端に固定された固定部材、及び前記駆動摩擦部材に該駆動摩擦部材の移動方向に相対的に移動可能に所定の摩擦力で係合された移動体を有するピエゾアクチュエータと、
電源の両端に直列に接続された複数の駆動素子を有し前記複数の駆動素子のオンオフ動作により前記ピエゾアクチュエータを駆動する駆動部と、
前記ピエゾアクチュエータの特性を用いて前記ピエゾアクチュエータを一定の移動速度で変化させるようにデューティを時間的に変化させる矩形波信号を生成し、該矩形波信号を前記複数の駆動素子に印加する制御回路と、
を有することを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記デューティと前記ピエゾアクチュエータの移動速度の関係を示す特性の逆関数に沿って、前記ピエゾアクチュエータを一定の移動速度で変化させるようにデューティを時間的に変化させる矩形波信号を生成することを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記電源の両端にハイサイドの第1スイッチング素子とローサイドの第2スイッチング素子と直列に接続された第1直列回路と、前記電源の両端にハイサイドの第3スイッチング素子とローサイドの第4スイッチング素子と直列に接続された第2直列回路とを有するブリッジ回路からなり、
前記ピエゾアクチュエータは、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続点と前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子との接続点との間に接続され、
前記制御回路は、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子と前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子とを交互にオンオフさせることにより前記ピエゾアクチュエータに流れる電流の方向を変えるときに、前記第2スイッチング素子と前記第4スイッチング素子とを同時にオンさせるタイミングを設けた矩形波信号を生成することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記電源の両端にハイサイドの第1スイッチング素子とローサイドの第2スイッチング素子と直列に接続された第1直列回路と、前記電源の両端にハイサイドの第3スイッチング素子とローサイドの第4スイッチング素子と直列に接続された第2直列回路とを有するブリッジ回路からなり、
前記ピエゾアクチュエータは、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続点と前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子との接続点との間に接続され、
前記制御回路は、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子と前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子とを交互にオンオフさせることにより前記ピエゾアクチュエータに流れる電流の方向を変えるときに、前記第1スイッチング素子乃至前記第4スイッチング素子とを同時にオフさせるタイミングを設けた矩形波信号を生成することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−85480(P2012−85480A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231278(P2010−231278)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
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