説明

駐輪装置

【課題】2段式又はそれ以上の複数段式にして上下の空間を有効に利用できると共に容易に操作できる駐輪装置を提供する。
【解決手段】駐輪装置10は、停止位置に置かれた自転車12を保持しておく保持具20と、この保持具20に保持され自転車12を保持具20と共に停止位置から収納位置まで移動させる移動機構50とを備えている。保持具20は、自転車12のハンドル12aに引っ掛けてこれを吊るすハンドル用フック22と、自転車12の後輪12bを吊るす後輪用フック24とを備えている。保持具20によれば、ハンドル用フック22と後輪用フック24とで自転車12を吊るした状態で保持しておける。ハンドル用フック22と後輪用フック24はJの字状のものであり、保持板26に回動自在に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下方向に並んだ複数の収納位置それぞれに自転車を収納しておく駐輪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車を収納しておく駐輪装置が駅前等に設置されていることがある。この駐輪装置としては、上段・下段の2段ラック式の駐輪装置が多く見受けられる。この2段ラック式の駐輪装置では、上段に自転車を収納するためには、上段のラックを手前に引いて下ろし、この引き下ろしたラックに自転車の前輪を持ち上げて溝に嵌め込み、続いて、後輪を持ち上げながら自転車を溝上で前方に移動させながら溝に嵌め込む。この嵌め込みに続いて、ラックの後端を肩ぐらいの高さまで持ち上げて、ラックを前方に押し込むことにより自転車を所定の収納位置に収納する。
【0003】
このように2段ラック式の駐輪装置では、自転車を上段に収納するためには力を必要とし、収納に手間も時間も要する。このため、上端を利用する利用客は少ないといわれている。このような問題を解決するために、自転車を斜めにした状態で駐輪させておく技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−024877
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の技術では、自転車を斜めにした状態で駐輪させておくので、上下の空間を有効に利用できない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、2段式又はそれ以上の複数段式にして上下の空間を有効に利用できると共に容易に操作できる駐輪装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の駐輪装置は、上下方向に並んだ複数の収納位置それぞれに自転車を収納しておく駐輪装置において、
(1)自転車を保持しておく保持具と、
(2)該保持具に保持された自転車を該保持具と共に前記停止位置から前記収納位置まで移動させる移動機構とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
ここで、
(3)前記保持具は、
(3−1)自転車のハンドルを吊るすハンドル用フックと、
(3−2)自転車の後輪を吊るす後輪用フックとを備え、
(3−3)前記ハンドル用フックと前記後輪用フックとで自転車を吊るした状態で保持しておくものであってもよい。
【0008】
また、
(4)前記保持具は、所定の停止位置とその上方の間の上下方向、及び前記停止位置の上方と前記収納位置の間の前後方向のいずれかに選択的に移動するものであってもよい。
【0009】
さらに、
(5)前記移動機構は、
(5−1)前記複数の収納位置のうち上段の収納位置から前記停止位置の上方まで延びるベースフレームと、
(5−2)該ベースフレームの長手方向両端部の間に掛け渡されると共に、その途中部分に前記保持具が取り付けられた紐状部材とを備えてもよい。
【0010】
さらにまた、
(6)前記紐状部材の長手方向一端が掛け渡されて該紐状部材を回転させる、前記収納位置の上方に配置されたモータと、
(7)前記紐状部材の長手方向他端が掛け渡された、前記停止位置の上方に配置されたスプロケットとを備えてもよい。
【0011】
さらにまた、
(8)前記モータは、前記収納位置の上方から前記停止位置の上方に向かう方向及びこの逆方向に往復動するものであってもよい。
【0012】
さらにまた、
(9)前記スプロケットの回転を制動する制動器を備えてもよい。
【0013】
さらにまた、
(10)前記保持具は、
(10−1)前記モータが、前記収納位置の上方に停止して前記紐状部材を回転させているときは、この回転に伴って前記前後方向のみに移動するものであり、
(10−2)前記モータが、前記収納位置の上方の位置から前記停止位置の上方の位置に近づいた位置に停止しているときは、前記上下方向のみに移動するものであってもよい。
【0014】
なお、ここでいう紐状部材とは、チェーンやワイヤなどをいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明の駐輪装置によれば、停止位置(通常は、最下段の収納位置の手前の位置)に自転車を停止させておき、この自転車を保持具で保持し、この保持具と共に自転車を移動機構によって停止位置から収納位置まで移動させられる。従って、停止位置から収納位置に自転車を収納する際に移動機構を用いるので人力はほとんど必要無く、自転車を短時間で収納できる。このため、停止位置から自転車を収納位置に安心且つ安全に、しかも容易に収納できることとなる。また、2段式以上の複数段にして上下の空間を有効に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、上下2段式の駐輪装置に実現された。
【実施例1】
【0017】
図1を参照して、実施例1の駐輪装置を説明する。
【0018】
図1(a)は、本発明の駐輪装置の一例を示す側面図であり、(b)は、保持具を傾斜させた状態を示す側面図である。
【0019】
駐輪装置10は、上下方向(矢印A方向)に並んだ複数の収納位置それぞれに自転車を収納しておくものであり、ここでは、2段の収納位置を有する(図6等参照)駐輪装置の例を挙げる。この駐輪装置10によれば、停止位置(図2の自転車12が置かれた位置であって、最下段の収納位置の手前の位置)に置かれた自転車12は上段の収納位置(図6の自転車12が置かれた位置であって、最下段の収納位置の上方の位置)に人力をほとんど使わずに容易に且つ安心・安全に収納される。駐輪装置10は、停止位置に置かれた自転車12を保持しておく保持具20と、この保持具20に保持された自転車12を保持具20と共に停止位置から収納位置まで移動させる移動機構50とを備えている。
【0020】
保持具20は、自転車12のハンドル12aに引っ掛けてこれを吊るすハンドル用フック22と、自転車12の後輪12bを吊るす後輪用フック24とを備えている。保持具20によれば、ハンドル用フック22と後輪用フック24とで自転車12を吊るした状態で保持しておける。ハンドル用フック22と後輪用フック24はJの字状のものであり、保持板26に回動自在に取り付けられている。保持板26は、自転車12の長さよりもやや短いものであり、後述するベースフレーム52に並行に延びている(矢印B方向に延びている)。
【0021】
保持板26の長手方向一端部(矢印B方向の下流側部分)にはハンドル用フック22の上端部が所定角度だけ回転できるように固定されている。換言すれば、ハンドル用フック22に何も引っ掛けていないときは、ハンドル用フック22は少しの力で容易に揺れる。保持板26の長手方向他端部(矢印B方向の上流側部分)にはチェーン28などの上端部が固定されており、このチェーン28などの下端部に後輪用フック24の上端部が固定されている。即ち、後輪用フック24はチェーン28などを介して保持板26の長手方向他端部に吊り下げられている。保持板26の上面にはローラ(滑車)32,34が固定されている。ローラ32は、ハンドル用フック22の上端部よりも矢印B方向のやや上流側に位置しており、ローラ34は、チェーン28の上端部よりも矢印B方向のやや下流側に位置している。2つのローラ32,34にはワイヤ54(本発明にいう紐状部材の一例である)が掛けられている。2つのローラ32,34はワイヤ54の上に位置しており、ワイヤ54上を転がることができる。
【0022】
後輪用フック24を下方に引くことにより、2つのローラ32,34がワイヤ54上を滑って、(b)に示すようにローラ34が下がると共にローラ32が上がり、保持板28が傾斜してハンドル用フック22がやや上がる。この逆に、ハンドル用フック22を下方に引くことにより、2つのローラ32,34がワイヤ54上を滑って、ローラ32が下がると共にローラ34が上がり、(b)に示す状態とは反対の状態に保持板28が傾斜して後輪用フック24がやや上がる。従って、自転車12の高さや長さが変わっても、ハンドル用フック22と後輪用フック24で自転車12を確実に引っ掛けて保持できる。
【0023】
移動機構50は、上段の収納位置(図6の自転車12が置かれた位置)から停止位置(図2の自転車12が置かれた位置)の上方まで延びる(矢印B方向に延びる)ベースフレーム52を備えている。ベースフレーム52の長手方向一端部(矢印B方向の下流側部分)には、上記のワイヤ54を回転させるモータ56が配置されている。モータ56の回転軸(図示せず)にワイヤ54が掛けられており、モータ56が駆動することにより、ワイヤ54が矢印B方向及びこの反対方向に選択的に回転する。また、モータ56は、矢印B方向及びこの反対方向に選択的に移動できるように、ベースフレーム52に取り付けられている。モータ54は、自転車12が上段の収納位置に収納されているときは、この収納位置の上方に位置している。一方、自転車12を上段の収納位置から取り出して停止位置に下ろすときは、モータ56は上段の収納位置の上方から停止位置の上方に向けて移動し、図2に示すように、モータ54はベースフレーム52の長手方向中央部に到達する。
【0024】
ベースフレーム52の長手方向他端部(矢印B方向の上流側部分)には、ワイヤ54が掛けられたスプロケット58が配置されている。スプロケット58が配置されている位置は、停止位置の上方に相当する。スプロケット58はワイヤ54の回転に伴って回転するが、スプロケット58の回転を制動する(スプロケット58を回転させないようにする)制動器(図示せず)が移動機構50には備えられている。この制動器は、後述するタイミングで作動し、制動器が作動しているときはスプロケット58は回転せず、ワイヤ54も回転はしない。
【0025】
ワイヤ54のうち2つのローラ32,34に掛けられている部分の近傍部分は、2つのローラ62,64に掛けられている。2つのローラ62,64は一本の連結棒66に回転自在に固定されており、連結棒66の長さに相当する距離だけ2つのローラ62,64は常に離れている。矢印B方向の上流側から見た場合、ワイヤ54は、ローラ64の上面(ローラ64が回転しているときは上面は常に変わる、他のローラ62,32,34についても同様である)に接触し、続いて、斜めに下がってローラ34の下面に接触し、ローラ32の下面に接触し、続いて、斜めに上がってローラ62の上面に接触する。
【0026】
ベースフレーム52の長手方向一端部にはモータ56が配置されており、長手方向他端部にはスプロケット58が配置されているので、ワイヤ54は、ベースフレーム52の長手方向両端部の間に掛け渡されることとなる。また、ワイヤ54の途中部分に保持具20が取り付けられていることとなる。上記した駐輪装置10の動きについて、図2から図6までを参照して説明する。
【0027】
図2は、停止位置にある自転車を吊上げる直前の状態を示す側面図である。図3は、自転車を停止位置から少しだけ吊上げた状態を示す側面図である。図4は、自転車を停止位置から完全に吊上げた状態を示す側面図である。図5は、完全に吊上げた自転車を上段の収納位置に移動させている途中の状態を示す側面図である。図6は、完全に吊上げた自転車を上段の収納位置に収納させた状態を示す側面図である。
【0028】
図1に示すように上段の収納位置に自転車が収納されておらず停止位置に自転車12が位置している状態から、この自転車12を上段の収納位置に収納するためには、先ず、スイッチボックス70の「収納1」ボタンを押す。これにより、駐輪装置10の電源がONとなり(投入され)、上記の制動器によってスプロケット58を制動する(ロックする)と共に、モータ56が手前に向けて(矢印B方向の上流側に向けて)移動し始める。このモータ56の手前への移動に伴って、図2に示すように、矢印B方向におけるワイヤ54の長さが短くなり(図2のL1とL2の合計の長さ)、その分(図2のL1=L2の長さ)だけ、保持具20が降下する。保持具20の降下に伴ってハンドル用フック22と後輪用フック24も降下するので、図2に示すように、ハンドル用フック22を自転車12のハンドル12aに引っ掛け、後輪用フック24を自転車12の後輪12bに引っ掛ける。この場合、自転車12の形や大きさに応じて、図1(b)に示すように、ハンドル用フック22又は後輪用フック24を引き下げる。なお、図2に示す位置にモータ56が到達したときにこのモータ56を検知するセンサ(図示せず)が移動機構50には備えられており、このセンサがモータ56を検知することによりモータ56の移動は止まる。
【0029】
上記のように保持具20で自転車12を保持した状態で、スイッチボックス70の「収納2」ボタンを押す。これにより、スプロケット58はロックされたまま、モータ56が矢印B方向に移動し始め、矢印B方向におけるワイヤ54の長さが長くなるので、図3に示すように保持具20と共に自転車12は吊上げられていく。モータ56が、ベースフレーム52上のホームポジション(図1に示す位置)まで戻ったときにモータ56の移動が停止する。このホームポジション近傍には、モータ56を検知するセンサ(図示せず)が取り付けられており、このセンサがモータ56を検知することにより、モータ56がホームポジションで停止すると共にスプロケット58のロックが解除されてスプロケット58は回転できるようになる。モータ56が停止したときは、図4に示すように、自転車12は保持具20で保持されたまま完全に吊上げられた状態となる。
【0030】
モータ56がホームポジションで停止した後、続いて、モータ56が回転し始める。この回転によってワイヤ54が矢印C方向に回転し、図5に示すように、自転車12は上段の収納位置に向かって移動する。図6に示すように、自転車12が上段の収納位置に到達したときは、モータ56の回転が停止して、自転車12が上段の収納位置に収納されることとなる。上段の収納位置の近傍には、自転車12を検知するセンサ(図示せず)が取り付けられており、このセンサが自転車12を検知することにより、電源が切れてモータ56の回転が停止するようになっている。
【0031】
上記したように、「収納1」ボタンを押して、ハンドル用フック22と後輪用フック24を自転車12に引っ掛け、「収納2」ボタンを押すことにより、停止位置に位置する自転車12を上段の収納位置に収納できるので、人力はほとんど必要無く、自転車12を短時間で上段に収納できる。このため、停止位置から自転車を収納位置に安心且つ安全に、しかも容易に収納できることとなる。また、2段式以上の複数段にして上下の空間を有効に利用できる。
【0032】
上段の収納位置に収納された自転車12を取り出して停止位置に移動させる動作は、上記とは反対の動作となる。この取り出しの際は、先ず、スイッチボックス70の「取出1」ボタンを押す。これにより、電源がONとなり、モータ56は回転できるが矢印B方向及びその反対方向には移動できず、また、スプロケット58は回転できる状態となる。この移動できない(固定された)状態のモータ56が回転し始めてワイヤ54が矢印C方向とは反対の方向に回転し始める。この回転に伴って保持具20と共に自転車12は矢印B方向の上流側に移動して、図4に示すように、停止位置の上方に到達する。この停止位置の上方には、自転車12(又は保持具20)を検知するセンサ(図示せず)が取り付けられており、このセンサが自転車12(又は保持具20)を検知したときにモータ56の回転が停止するようになっている。また、モータ56の回転が停止すると同時に、スプロケット58はロックされて回転できない状態となり、続いて、モータ56が矢印B方向とは反対方向に移動し始める。この移動に伴って、図2や図3で説明した動作とは逆に、保持具20と自転車12が降下する。モータ56が、図2で示す位置に到達したときは上記のセンサがモータ56を検知してモータ56の移動が止まる。このとき自転車12は地面Gに到達しており、ハンドル用フック22と後輪用フック24を自転車12から取り外す。なお、自転車12の大きさや形状によっては、後輪又は前輪が先に地面に到達することもあるが、この場合は、図1(b)に示したように、保持板26が傾斜するので、ハンドル用フック22又は後輪用フック24が不用意に外れない。また、図示していないが、自転車12のスタンドを立てたまま収納できて取り出せるので、自転車12が接地後に倒れずに安全である。
【0033】
ハンドル用フック22と後輪用フック24を自転車12から取り外した後は、スイッチボックス70の「取出2」ボタンを押す。これにより、モータ56が矢印B方向に移動し始めて、自転車12を保持していない(空の)保持具20が上昇し、モータ56がホームポジションに到達した時点で保持具20が上昇し終わって電源がOFFとなり、一連の動作が終了する。
【0034】
上記の例では、スイッチボックス70の4つのボタンを順に押して駐輪装置10を作動させるタイプを説明したが、1つのボタンだけを備えたスイッチボックスを用いて、各動作が終了したところで、この1つのボタンを再び押すことにより次の作動に移るタイプもある。このタイプでは、後に押すボタンによる動作は、前に押したボタンによる作動が終了するまでは、実行されないようになっている。なお、異常事態のために緊急停止スイッチを備えてもよい。
【実施例2】
【0035】
図7を参照して、駐輪装置の他の例を説明する。
【0036】
図7は、駐輪装置の他の例を示す側面図である。
【0037】
実施例2の駐輪装置100は、実施例1の駐輪装置10の廉価版であり、保持具120の昇降は電動であるが、矢印B方向及びその反対方向への保持具120の移動は手動としたタイプである。
【0038】
駐輪装置100は、上下方向(矢印A方向)に並んだ複数の収納位置それぞれに自転車を収納しておくものであり、ここでは、2段の収納位置を有する(図6等参照)駐輪装置の例を挙げる。この駐輪装置100によれば、停止位置(図2のように自転車12が置かれた位置であって、最下段の収納位置の手前の位置)に置かれた自転車12は上段の収納位置(図6のように自転車12が置かれた位置であって、最下段の収納位置の上方の位置)にわずかの人力で容易に且つ安心・安全に収納される。駐輪装置100は、停止位置に置かれた自転車12を保持しておく保持具120と、この保持具120に保持され自転車12を保持具120と共に停止位置から収納位置まで移動させる移動機構150とを備えている。
【0039】
保持具120は、自転車12のハンドル12aに引っ掛けてこれを吊るすハンドル用フック122と、自転車12の後輪12bを吊るす後輪用フック124とを備えている。保持具120によれば、ハンドル用フック122と後輪用フック124とで自転車12を吊るした状態で保持しておける。ハンドル用フック122と後輪用フック124はJの字状のものであり、保持板126に回動自在に取り付けられている。保持板126は、自転車12の長さよりもやや短いものである。
【0040】
保持板126の長手方向一端部(矢印B方向の下流側部分)にはハンドル用フック122の上端部が所定角度だけ回転できるように固定されている。換言すれば、ハンドル用フック122に何も引っ掛けていないときは、ハンドル用フック122は少しの力で容易に揺れる。保持板126の長手方向他端部(矢印B方向の上流側部分)にはチェーン128などの上端部が固定されており、このチェーン128などの下端部に後輪用フック124の上端部が固定されている。即ち、後輪用フック124はチェーン128などを介して保持板126の長手方向他端部に吊り下げられている。
【0041】
保持板126の上方には、この保持板126を昇降させるホイストユニット180が配置されており、保持具120は、このホイストユニット180に吊り下げられている。ホイストユニット180は、ローラ182,184、ホイストモータ186、ホイスト台車188などから構成される周知のものである。ホイスト台車188は、移動機構150のワイヤ(又はチェーン)154の途中部分に固定されている。ホイストモータ186は、ホイストスイッチ170を操作することにより回転する。ホイストスイッチ170には、保持具126を上昇させるときに押す「上」ボタンと、保持具126を下降させるときに押す「下」ボタンとが配置されている。
【0042】
移動機構150は、上段の収納位置(図6のように自転車12が置かれた位置)から停止位置(図2のように自転車12が置かれた位置)の上方まで延びる(矢印B方向に延びる)ガイドレール152を備えている。ガイドレール152は、ホイスト台車188を矢印B方向及びその反対方向に案内する。ガイドレール152の長手方向一端部(矢印B方向の下流側部分)には、ワイヤ154が回転自在に掛けられたスプロケット(又はローラ)156が配置されている。ガイドレール152の長手方向他端部(矢印B方向の上流側部分)には、ワイヤ54が回転自在に掛けられたスプロケット158が配置されている。スプロケット158が配置されている位置は、停止位置の斜め上方に相当する。ワイヤ154は、ガイドレール152の長手方向両端部の間のやや上に掛け渡されることとなる。スプロケット158にはロープ(又は移動鎖)160の上端部が掛けられており、このロープ160を矢印D方向に回転させることによりスプロケット158が矢印E方向に回転するので、ホイストユニット180は矢印B方向とは反対の方向に移動する。この逆に、ロープ160を矢印D方向とは反対の方向に回転させることによりスプロケット158が矢印E方向とは反対の方向に回転するので、ホイストユニット180は矢印B方向に移動する。
【0043】
上記した駐輪装置100の動きについて説明する。
【0044】
図7に示すように上段の収納位置に自転車が収納されておらず停止位置に自転車12が位置している状態から、この自転車12を上段の収納位置に収納するためには、先ず、ホイストスイッチ170の「下」ボタンを押す。これにより、保持具120が降下する。保持具120の降下に伴ってハンドル用フック122と後輪用フック124も降下する。ハンドル用フック122と後輪用フック124が適宜の位置(これらを自転車12に引っ掛けられる位置)まで降下したときは、「下」ボタンを押すことを止めて、保持具120を一旦停止させる。この状態で、図2に示すと同様に、ハンドル用フック122を自転車12のハンドル12aに引っ掛け、後輪用フック124を自転車12の後輪12bに引っ掛ける。
【0045】
続いて、保持具120で自転車12を保持した状態で、ホイストスイッチ170の「上」ボタンを押す。「上」ボタンを押し続けることにより、図4に示すと同様に、自転車12は保持具120で保持されたまま完全に吊上げられた状態となる。続いて、ロープ(又は移動鎖)160を矢印D方向とは反対の方向に人力で回す。これにより、保持具120と共に自転車12は矢印B方向に移動して収納位置に到達する。
【0046】
上記したように、ホイストスイッチ170の「上」ボタンと「下」ボタンを選択的に押し、保持具120で自転車12を保持し、ロープ160を人力で動かすだけで、自転車12を停止位置から収納位置に移動できるので、わずかな人力で自転車12を短時間で上段に収納できる。このため、停止位置から自転車を収納位置に安心且つ安全に、しかも容易に収納できることとなる。また、2段式以上の複数段にして上下の空間を有効に利用できる。
【0047】
上段の収納位置に収納された自転車12を取り出して停止位置に移動させる動作は、上記とは反対の動作となる。この取り出しの際は、先ず、ロープ160を矢印D方向に人力で回し、図6に示すと同様に上段の収納位置にある自転車12を、図4に示すと同様に停止位置の上方に移動させる。続いて、ホイストスイッチ170の「下」ボタンを押し続けて自転車12を接地させる。ハンドル用フック122と後輪用フック124を自転車12から取り外し、ホイストスイッチ170の「下」ボタンを押し続けて保持具120を、図7に示す位置まで上昇させる。保持具120が、図7に示す位置に到達した時点で駐輪装置100の電源がOFFとなって取り出し作業は終了する。
【0048】
以上説明したように駐輪装置100では、ロープ160を人力で動かす必要があるが、駐輪装置10に比べて簡易な構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(a)は、本発明の駐輪装置の一例を示す側面図であり、(b)は、保持部を傾斜させた状態を示す側面図である。
【図2】停止位置にある自転車を吊上げる直前の状態を示す側面図である。
【図3】自転車を停止位置から少しだけ吊上げた状態を示す側面図である。
【図4】自転車を停止位置から完全に吊上げた状態を示す側面図である。
【図5】完全に吊上げた自転車を上段の収納位置に移動させている途中の状態を示す側面図である。
【図6】完全に吊上げた自転車を上段の収納位置に収納させた状態を示す側面図である。
【図7】駐輪装置の他の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0050】
10,100 駐輪装置
12,14 自転車
20,120 保持具
22,122 ハンドル用フック22
24,124 後輪用フック
28 チェーン
50,150 移動機構
52 ベースフレーム
54 ワイヤ
56 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に並んだ複数の収納位置それぞれに自転車を収納しておく駐輪装置において、
自転車を保持しておく保持具と、
該保持具に保持された自転車を該保持具と共に前記停止位置から前記収納位置まで移動させる移動機構とを備えたことを特徴とする駐輪装置。
【請求項2】
前記保持具は、
自転車のハンドルを吊るすハンドル用フックと、
自転車の後輪を吊るす後輪用フックとを備え、
前記ハンドル用フックと前記後輪用フックとで自転車を吊るした状態で保持しておくものであることを特徴とする請求項1に記載の駐輪装置。
【請求項3】
前記保持具は、
所定の停止位置とその上方の間の上下方向、及び前記停止位置の上方と前記収納位置の間の前後方向のいずれかに選択的に移動するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の駐輪装置。
【請求項4】
前記移動機構は、
前記複数の収納位置のうち上段の収納位置から前記停止位置の上方まで延びるベースフレームと、
該ベースフレームの長手方向両端部の間に掛け渡されると共に、その途中部分に前記保持具が取り付けられた紐状部材とを備えたことを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の駐輪装置。
【請求項5】
前記紐状部材の長手方向一端が掛け渡されて該紐状部材を回転させる、前記収納位置の上方に配置されたモータと、
前記紐状部材の長手方向他端が掛け渡された、前記停止位置の上方に配置されたスプロケットとを備えたことを特徴とする請求項4に記載の駐輪装置。
【請求項6】
前記モータは、
前記収納位置の上方から前記停止位置の上方に向かう方向及びこの逆方向に往復動するものであることを特徴とする請求項5に記載の駐輪装置。
【請求項7】
前記スプロケットの回転を制動する制動器を備えたことを特徴とする請求項5又は6に記載の駐輪装置。
【請求項8】
前記保持具は、
前記モータが、前記収納位置の上方に停止して前記紐状部材を回転させているときは、この回転に伴って前記前後方向のみに移動するものであり、
前記モータが、前記収納位置の上方の位置から前記停止位置の上方の位置に近づいた位置に停止しているときは、前記上下方向のみに移動するものであることを特徴とする請求項5、6、又は7に記載の駐輪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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