説明

骨付き腿肉の脱骨方法及び装置

家畜屠体の骨付き腿肉の自動脱骨装置において、ワークwを吊下搬送するクランプ装置12を、サーボモータ104と、サーボモータ104の出力軸に連結されたネジ軸106と、ネジ軸106に螺合された昇降ブロック108とで構成し、ワークwの下降及び次処理ステーションへの搬送を、昇降軸70に装着された昇降ローラ92を走行路94に走行させることにより行なう。また、昇降軸70に設けられた揺動ローラ84をカム板170180,182に接触させ、昇降軸70を所定角度自転させ、丸刃カッタ22、64に対面させることにより、該丸刃カッタの移動経路を略直線状にでき、移動機構を簡素化かつ低コスト化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉用家畜屠体の骨付き腿肉、例えば、食鶏屠体の骨付き腿肉の筋入れから骨肉分離までを自動化した脱骨方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、食用鳥獣の飼育、屠殺、及び屠体の解体処理は、需要の増大と共に大規模となり、各処理工程の自動化が進められている。
家畜屠体のうち食鶏屠体の解体処理は、屠殺から放血、脱羽、洗浄を行なう一次解体工程と、一次解体工程を経た屠体を冷却した後、各部位別に分割及び脱骨を行なうことにより、正肉や副産物を生産し、包装保管する二次解体工程とに大きく分けることができる。
【0003】
一次解体工程では、屠殺から脱羽、洗浄まで自動化が行なわれ、その間はほとんど無人で処理されている。二次解体工程でも、屠体の上下半身分離から、腿肉や胸肉等の各部位の分割や、分割した各部位の脱骨の自動化が進んでいる。これによって、解体作業の省力化が図られ、人手による作業と同様に歩留まりが向上してきている。
【0004】
特許文献1には、食鶏腿肉の脱骨装置による脱骨処理の前工程として必要な筋入れ工程を自動化した技術が開示されている。この技術は、多数の骨付き腿肉の足首をクランプ装置で吊下搬送し、筋入れステーションで一旦停止し、骨付き腿肉を固定した状態で筋入れを行なうものである。筋入れステーションでは、筋入れナイフによって形成される筋入れ切り下げ面に対して、骨付き腿肉の姿勢保持を正確に行なうことによって、筋入れナイフを骨表面に正確に沿わせることで、歩留まりを向上させている。
【0005】
特許文献2には、食鶏等の食肉用屠体の骨付き腿肉を対象とし、自動化された腿肉分離手段が開示されている。この手段は、骨付き腿肉の足首をクランプ装置で吊下搬送し、複数の処理ステーションで停止する断続歩進運動を行う。特許文献2の図9に図示されているように、クランプ装置の搬送経路は、円形の搬送経路をなしている。この円形経路に沿って複数の処理ステーションを配置し、筋入れ工程や、骨に結合した腱を切断しながら腿肉分離を行なう腿肉分離工程を行なっている。
【0006】
ここで、腱切断は、骨付き腿肉の搬送経路の近傍に骨の横断方向に向けて配置された丸刃カッタを用い、この丸刃カッタを骨付き腿肉に接近させ、骨から腱を切断するようにしている。特許文献2の図10に図示されているように、腿肉分離工程は、一対のセパレータ(押え板)で骨部を挟持し、クランプ装置を上昇させることにより、腿肉の引き剥がしを行なうようにしている。また、大腿骨末端の位置を検出することで、腿肉引き剥がし終了時点の正確な位置決めを可能とし、引き剥がしに次いで、大腿骨頭末端の筋切断により腿肉を大腿骨頭より完全分離させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−149001号公報
【特許文献2】特開2002−10732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された筋入れ装置では、筋入れナイフ及びその駆動装置を含む筋入れナイフユニットを鉛直方向に上下動させて筋入れを行なっている。そのため、大きな重量の筋入れナイフユニットを移動させる必要があるため、大きな動力を必要とし、移動機構が大型化するという問題がある。従って、筋入れナイフユニットの駆動装置としてエアシリンダを用いた場合、圧縮空気の圧力を十分大きくしないと、筋入れナイフユニットを設定高さまで精度良く上昇できなくなるおそれがある。
【0009】
また、特許文献1では、筋入れナイフを骨付き腿肉の湾曲方向内側面に沿って、足首付近から大腿骨末端まで下降させているが、このような単純な動作では、膝関節に強固に結合している腱の結合部位に筋入れナイフを到達できず、腿肉分離が円滑に行なわれない。そのため、歩留まりが向上しないという問題がある。
また、特許文献1では、筋入れ装置が脱骨装置本体と隣接して設けられており、筋入れ装置が大型化し、大きなスペースを占めているため、脱骨装置全体が大型化している。
【0010】
特許文献2に開示された腿肉分離手段は、筋入れ工程は具体的に記述されていない。おそらくオペレータが手動で行なうものと推量される。
また、腿肉分離工程で、丸刃カッタを用いて、骨に結合している腱を切断する場合、丸刃カッタを二次元の平面上で円弧状に複雑な経路を辿って腱付着部位に到達させる必要がある。そのため、丸刃カッタを移動させる制御機構を複雑かつ高コストになるという問題がある。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、食鶏屠体等の骨付き腿肉の自動化された脱骨を行なうに際し、骨付き腿肉の搬送機構を簡素化し、所要動力を低減させて低コストにすることを第1の目的とする。
次に、切断刃を骨付き腿肉に接近させて骨付き腿肉を切断する際に、切断刃の移動機構を簡素化かつ低コスト化することを第2の目的とする。
また、自動化された筋入れ工程で、膝関節に結合している腱の切断を確実に行なって、肉の歩留まりを向上することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するため、本発明の骨付き腿肉の脱骨方法は、
骨付き腿肉を足首を介してクランプ装置で吊下搬送しながら、複数の処理ステーション間を断続歩進させ、各処理ステーションで、切断刃を骨に沿わせて腿肉を長手方向に切断する筋入れ工程、又はミートセパレータを用いて肉部を上方から押え、切断刃で腱を切断しながら骨付き腿肉を相対的に上方に引き上げて肉部を引き剥す肉分離工程を行なう骨付き腿肉の脱骨方法において、
送り機構によって処理ステーション間を断続歩進され、下端に前記クランプ装置が装着されクランプ装置の上方に昇降ローラが装着された昇降軸と、処理ステーションに設けられ、駆動モータと、該駆動モータの出力軸に連結されたネジ軸と、該ネジ軸に螺合した昇降台とからなる上昇装置と、処理ステーション間に架設されクランプ装置の移動方向に向かって下降する走行路と、を用意し、
処理ステーションで前記昇降ローラを前記昇降台上に載置し、該昇降台を上昇させ骨付き腿肉を上昇させて前記筋入れ工程又は肉分離工程を行い、
骨付き腿肉の自重により昇降ローラを前記走行路に沿って走行させ、前記クランプ装置を下降させながら次の処理ステーションに搬送するようにしたものである。
【0013】
本発明方法では、処理ステーションで前記上昇装置によりクランプ装置を上昇させて、筋入れ工程と肉分離工程とを行なう。また、骨付き腿肉等の自重を利用して、昇降軸に装着された昇降ローラを前記走行路に沿って走行させ、クランプ装置を下降させながら次の処理ステーションに送るようにしている。
これによって、骨付き腿肉の上昇装置及び処理ステーション間の搬送機構を簡素化でき、該駆動モータの所要動力を低減させて低コストにすることができる。なお、駆動モータとしてサーボモータ等を用いることにより、クランプ装置の高さ位置制御を精度良く行なうことができる。
【0014】
本発明方法において、切断刃が配設された処理ステーションにおいて、前記昇降軸が軸中心に自転可能に構成され、該昇降軸を設定角度だけ自転させる自転機構を用意し、該自転機構により昇降軸を自転させ、骨付き腿肉の切断部位を切断刃に対して対面させると共に、切断刃を直線状の移動経路に沿って該切断部位に接近させ、骨付き腿肉の切断部位を切断するようにするとよい。
このように、昇降軸を自転させ、骨付き腿肉の切断部位を切断刃に対面させることにより、切断刃を該切断部位に直線状の移動経路に沿って接近させることができる。そのため、移動経路を単純化できるので、切断刃の移動機構を簡素化かつ低コスト化できる。
【0015】
本発明方法において、肉分離工程を行なう処理ステーションにおいては、前記切断刃として水平方向に配置された丸刃からなる腱切断刃を用い、該腱切断刃を直線状の移動経路を取って骨付き腿肉の切断部位に接近させるようにする。こうして、骨に付着した腱を切断できる。
【0016】
本発明方法において、処理ステーションが筋入れ工程を行なう処理ステーションであり、該筋入れ工程が、切断刃を骨の内側面に沿わせながら切断刃に対して骨付き腿肉を相対的に上昇させ、足首付近から膝関節上部まで筋入れを行なう下腿筋入れステップと、切断刃が膝関節に接近した時前記自転機構で昇降軸を一時的に自転させ、切断刃を骨内側面から膝関節の腱付着部に回り込ませて腱を切断した後、クランプ装置を逆回転させて切断刃を骨の内側面に戻す膝関節筋入れステップと、切断刃を骨の内側面に沿わせながら切断刃に対して骨付き腿肉を相対的に上昇させ、膝関節下部から大腿端部まで筋入れを行なう大腿筋入れステップと、からなるものであるとよい。
【0017】
このように、骨付き腿肉が上昇して切断刃が膝関節に接近した時、クランプ装置を設定角度だけ自転させ、切断刃を骨内側面から膝関節の腱付着部に回り込ませて腱を切断するようにしているので、膝関節に強固に付着した腱を膝関節から確実に分離できる。そのため、その後に行なわれる腿肉分離工程を円滑にでき、肉の歩留まりを向上できる。
また、筋入れナイフユニットを上昇させず、クランプ装置を上昇させるようにしているので、大重量の筋入れナイフユニットの昇降装置をなくすことができる。このように、小重量のクランプ装置を上昇させるようにしているので、筋入れステーションを簡素化かつ低コスト化できると共に、骨付き腿肉を設定高さに精度良く位置決めできるようになる。
【0018】
また、筋入れ工程において、骨付き腿肉が上昇中に骨付き腿肉の下端部を検出し、この検出高さと該検出高さで骨付き腿肉の下端部を検出した時の骨付き腿肉の上昇ストロークとから骨付き腿肉の骨の全長を求め、最終腿肉分離工程において、測定された骨付き腿肉の骨の全長に応じて、肉部を押えるミートセパレータに対するクランプ装置の上昇ストロークを決定するようにするとよい。
これによって、骨付き腿肉の大きさに固体差があっても、最終骨分離工程において、固定差に応じてクランプ装置の上昇ストロークを調整できるので、骨と腿肉の分離を確実に行なうことができる。
【0019】
前記本発明方法の実施に直接使用可能な本発明の骨付き腿肉の脱骨装置は、
骨付き腿肉を足首を介して吊下搬送するクランプ装置と、複数の処理ステーション間に該クランプ装置を断続歩進させる送り機構とを備え、処理ステーションで、切断刃を骨に沿わせて腿肉を長手方向に切断する筋入れ工程、又はミートセパレータを用いて肉部を上方から押え、切断刃で腱を切断しながら骨付き腿肉を相対的に上方に引き上げて肉部を引き剥す肉分離工程を行なう骨付き腿肉の脱骨装置において、
下端に前記クランプ装置が装着されクランプ装置の上方に昇降ローラが装着された昇降軸と、処理ステーションに設けられ、駆動モータと、該駆動モータの出力軸に連結されたネジ軸と、該ネジ軸に螺合した昇降台とからなる上昇装置と、処理ステーション間に架設されクランプ装置の移動方向に向かって下降する走行路と、を備え、
処理ステーションで前記昇降ローラを前記昇降台上に載置し、昇降台を上昇させ骨付き腿肉を上昇させて前記筋入れ工程又は肉分離工程を行い、
骨付き腿肉の自重により昇降ローラを前記走行路に通し、前記クランプ装置を下降させながら次の処理ステーションに搬送するように構成したものである。
【0020】
本発明装置では、処理ステーションで前記上昇機構によりクランプ装置を上昇させて、筋入れ工程と肉分離工程とを行なう。また、骨付き腿肉の自重を利用して昇降軸に装着された昇降ローラを前記走行路に沿って走行させ、上昇したクランプ装置を下降させながら次の処理ステーションに送るようにしている。
そのため、骨付き腿肉の上昇機構及び処理ステーション間の搬送機構を簡素化でき、該駆動モータの所要動力を低減させて低コストにすることができる。なお、駆動モータとしてサーボモータ等を用いることにより、クランプ装置の高さ位置制御を精度良く行なうことができる。
【0021】
本発明装置において、切断刃が配設された処理ステーションにおいて、前記昇降軸が軸中心に自転可能に構成され、昇降軸を設定角度だけ自転させる自転機構を備え、該自転機構により昇降軸を自転させ、骨付き腿肉の切断部位を切断刃に対して対面させ、切断刃を直線状の移動経路に沿って該切断面に接近させ、切断部位を切断するように構成するとよい。このように、昇降軸を自転させ、骨付き腿肉の切断部位を切断刃に対面させることにより、切断刃を該切断部位に接近させる移動経路を直線とすることができる。そのため、移動経路を単純化できるので、切断刃の移動機構を簡素化かつ低コスト化できる。
【0022】
本発明装置において、前記昇降軸は、前記送り機構に固設されたガイドバーと、該ガイドバーに沿って上下に摺動する摺動ブラケットと、該摺動ブラケットの内部に回動可能に配置され下端に前記クランプ装置が装着された回動軸と、からなり、前記自転機構は、該回動軸に取り付けられた揺動ローラと、処理ステーションに設けられ、クランプ装置が上昇して切断刃が膝関節に接近した時該揺動ローラを押して該回動軸を設定角度だけ自転させるカム部材と、クランプ装置がさらに上昇して該揺動ローラが該カム部材から離れた時に該揺動ローラを元の位置に復帰させるバネ部材と、からなるように構成するとよい。
【0023】
昇降軸を前記構成とし、回転軸に取り付けられた揺動ローラを処理ステーションに設けられカム部材で押すようにしたことにより、自転機構がすべて機械部品で構成でき、専用の駆動装置や複雑な電気的制御装置を不要にできる。そのため、自転機構を低コスト化でき、また、電気的制御装置を用いない分故障が低減し、信頼性を向上できる。
【0024】
本発明装置において、肉分離工程を行なう処理ステーションにおいては、切断刃として水平方向に配置された丸刃からなる腱切断刃を用い、該腱切断刃を直線状の移動経路を通って骨付き腿肉の切断部位に接近させるようにする。こうして、腱切断刃の移動経路を単純化できるので、腱切断刃の移動機構を簡素化かつ低コスト化できる。
【0025】
本発明装置において、処理ステーションが筋入れ工程を行なう筋入れステーションであり、該筋入れステーションにおいて、骨付き腿肉に向かって進退可能な切断刃と、該切断刃の進退方向に対面して配置された姿勢保持板と、該姿勢保持板に対して骨付き腿肉の平坦面を押し付け固定する押え部材と、を備え、前記自転機構が前記昇降軸を上昇途中で設定角度だけ自転させるものであり、押え部材によって骨付き腿肉を姿勢保持板に押し付けた状態で切断刃を骨付き腿肉の足首付近に挿入させ、クランプ装置を上昇させて切断刃を骨の内側面に沿わせながら筋入れを行なうと共に、切断刃が膝関節に接近した時自転機構で昇降軸を一時的に自転させ、切断刃を骨内側面から膝関節の腱付着部に回り込ませて腱を切断するように構成するとよい。
【0026】
このように、前記自転機構により、切断刃が膝関節に接近した時クランプ装置を設定角度だけ自転させ、切断刃を骨内側面から膝関節の腱付着部に回り込ませて腱を切断するようにしているので、膝関節に強固に付着した腱を確実に分離できる。そのため、その後に行なわれる腿肉分離工程を円滑にでき、肉の歩留まりを向上できる。また、前記自転機構を用いるため、切断刃が膝関節に接近した時、精度良くクランプ装置を自転させて、膝関節に付着した腱を切断できる。
【0027】
また、筋入れナイフユニットを上昇させず、クランプ装置を上昇させて筋入れを行なうため、大きな重量の筋入れナイフユニットを昇降させる昇降装置が不要になる。そのため、筋入れステーションを簡素化かつ低コスト化できると共に、骨付き腿肉を設定位置に精度良く昇降できるようになる。
【0028】
本発明装置において、骨付き腿肉を投入する投入ステーションに隣接配置され中心軸を中心に断続回転する回転体と、該回転体の外周に等間隔に配置され骨付き腿肉の足首が懸垂される凹部を有する複数の懸垂ブラケットと、該懸垂ブラケットに懸垂された骨付き腿肉が投入ステーションに対面する位置に来た時、該骨付き腿肉を投入ステーションのクランプ装置に押し出して該クランプ装置に載架させるプッシャーと、を備えるとよい。
【0029】
このように、懸垂ブラケットとクランプ装置の動作を同期させることによって、懸垂ブラケットからクランプ装置への骨付き腿肉の移し替えを確実に行なうことができ、かつこの移し替えを自動化できる。また、骨付き腿肉を脱骨装置のクランプ装置に懸垂する投入ステーションの構成を簡素化できる。
なお、懸垂ブラケットに骨付き腿肉を懸垂させる手段は、オペレータが手で骨付き腿肉を懸垂させてもよく、あるいは搬送コンベアで骨付き腿肉を懸垂ブラケット付近まで搬送し、移し替え装置により自動的に骨付き腿肉を懸垂ブラケットに懸垂させるようにしてもよい。
【0030】
本発明装置において、前記ガイドバーを支持するベース部材に装着され、軸中心に回動可能に軸支されたブレーキシューと、該ブレーキシューに対し前記回動軸を押圧する方向に弾性力を付勢するバネ部材と、処理ステーション間のブレーキシューの移動経路に設けられ、該ブレーキシューを該バネ体の弾性力に抗して回動軸から離れた位置に保持するブレーキ解除レールと、を備えるとよい。
【0031】
これによって、回動軸が処理ステーションにある間、回動軸をブレーキシューで押圧しているので、回動軸の落下を防止できる。また、回動軸が処理ステーション間を移動する間は、ブレーキシューが回動軸から離れるので、回動軸を下降できるようになる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の第2形態の方法によれば、骨付き腿肉を足首を介してクランプ装置で吊下搬送しながら、複数の処理ステーション間を断続歩進させ、各処理ステーションで、切断刃を骨に沿わせて腿肉を長手方向に切断する筋入れ工程、又はミートセパレータを用いて肉部を上方から押え、切断刃で腱を切断しながら骨付き腿肉を相対的に上方に引き上げて肉部を引き剥す肉分離工程を行なう骨付き腿肉の脱骨方法において、送り機構によって処理ステーション間を断続歩進され、下端に前記クランプ装置が装着されクランプ装置の上方に昇降ローラが装着された昇降軸と、処理ステーションに設けられ、駆動モータと、該駆動モータの出力軸に連結されたネジ軸と、該ネジ軸に螺合した昇降台とからなる上昇装置と、処理ステーション間に架設されクランプ装置の移動方向に向かって下降する走行路と、を用意し、処理ステーションで前記昇降ローラを前記昇降台上に載置し、該昇降台を上昇させ骨付き腿肉を上昇させて前記筋入れ工程又は肉分離工程を行い、骨付き腿肉の自重により昇降ローラを前記走行路に沿って走行させ、前記クランプ装置を下降させながら次の処理ステーションに搬送するようにしたので、骨付き腿肉の上昇装置及び処理ステーション間の搬送機構を簡素化でき、該駆動モータの所要動力を低減させて低コストにすることができる。
【0033】
また、本発明装置によれば、骨付き腿肉を足首を介して吊下搬送するクランプ装置と、複数の処理ステーション間に該クランプ装置を断続歩進させる送り機構とを備え、処理ステーションで、切断刃を骨に沿わせて腿肉を長手方向に切断する筋入れ工程、又はミートセパレータを用いて肉部を上方から押え、切断刃で腱を切断しながら骨付き腿肉を相対的に上方に引き上げて肉部を引き剥す肉分離工程を行なう骨付き腿肉の脱骨装置において、下端に前記クランプ装置が装着されクランプ装置の上方に昇降ローラが装着された昇降軸と、処理ステーションに設けられ、駆動モータと、該駆動モータの出力軸に連結されたネジ軸と、該ネジ軸に螺合した昇降台とからなる上昇装置と、処理ステーション間に架設されクランプ装置の移動方向に向かって下降する走行路と、を備え、処理ステーションで前記昇降ローラを前記昇降台上に載置し、昇降台を上昇させ骨付き腿肉を上昇させて前記筋入れ工程又は肉分離工程を行い、骨付き腿肉の自重により昇降ローラを前記走行路に通し、前記クランプ装置を下降させながら次の処理ステーションに搬送するように構成したので、前記本発明方法と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を食鶏屠体の脱骨に適用した一実施形態に係る脱骨装置の全体構成図である。
【図2A】前記実施形態の第1処理ステーション(投入ステーション)から第2処理ステーション(筋入れステーション)までの処理工程を示す工程図である。
【図2B】前記実施形態の第3〜第5処理ステーションの処理工程を示す工程図である。
【図2C】前記実施形態の第6〜第8処理ステーションの処理工程を示す工程図である。
【図2D】前記実施形態の第9〜第10処理ステーションの処理工程を示す工程図である。
【図3】前記実施形態の脱骨装置を展開して示す正面図である。
【図4】前記脱骨装置の第2処理ステーション(筋入れステーション)周辺を示す斜視図である。
【図5】前記脱骨装置の昇降バー70の側面図である。
【図6】図4中のA方向から視た正面図である。
【図7】図4中のB−B線に沿う断面図である。
【図8】前記脱骨装置の第2処理ステーション(筋入れステーション)の正面図である。
【図9】前記第2処理ステーション(筋入れステーション)の平面図である。
【図10】前記第2処理ステーション(筋入れステーション)での筋入れ工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0036】
本発明方法及び装置を食鶏屠体の骨付き腿肉の脱骨処理に適用した一実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。まず、図1及び図2A〜2Dにより、脱骨処理の全体工程の概略を説明する。図2Aに示すように、食鶏屠体の骨付き腿肉(以下「ワーク」という。)wは、足首f、下腿骨k及び大腿骨jからなる骨部と、骨部を取り巻く肉部mとからなる。下腿骨kと上腿骨jとは膝関節hで結合されている。
【0037】
図1及び図4に示すように、脱骨装置10は、ワーク投入から骨部と肉部の最終分離までの各処理ステーションが円形に配置されている。ワークwを吊下したクランプ装置12は、昇降軸70を構成するガイドバー72を介して円形の送り環78に接続されている。送り環78は矢印a方向に断続回転するため、クランプ装置12は、回転中心Oを中心に円軌跡を描きながら、各処理ステーション間を移動し、各処理ステーションで停止する。各処理ステーションにおけるクランプ装置12の昇降は、サーボモータ104によって行なわれる。
【0038】
図3に示すように、脱骨装置10の上部及び下部には、円形の支持桁11が配設され、該支持桁11に、サーボモータ104や、走行路94を構成する外板15等を支持する支持フレーム13が固設されている。なお、図5には、支持桁11の図示は省略されている。
【0039】
図1は、左足用脱骨装置を図示したものである。左足用脱骨装置は、第1から第10までの処理ステーションが矢印a方向に、第1処理ステーション(投入ステーション)から順々に配置される。一方、右足用脱骨装置の場合は、各処理ステーションが矢印b方向に第1処理ステーション(投入ステーション)から順々に配置される。
【0040】
ワークwは、第1処理ステーション(投入ステーション)に設けられた投入装置14を介して、クランプ装置12に載架される。投入装置14は、垂直軸16aを中心に断続回転する回転体16と、回転体16の外周面に等間隔に配置された4個の懸垂ブラケット18と、クランプ装置12に対面する位置に設けられたプッシャ20とからなる。回転体16は、90度ずつ回転する断続回転を行い、その動きはクランプ装置12の断続歩進と同期している。懸垂ブラケット18には、外側に開口しワークwが懸垂される凹部18aがもうけられている。
【0041】
凹部18aにワークwを懸垂させる手段は、オペレータが手で凹部18aにワークwを懸垂させるようにしてもよいし、あるいはワークwを図示省略のコンベアで第1処理ステーション(投入ステーション)まで運び、ワークwを図示省略の載架装置により自動的に凹部18aに載架するようにしてもよい。
【0042】
ワークwが懸垂された懸垂ブラケット18は、断続回転してクランプ装置12に対面する位置に達し、ここでプッシャ20によりクランプ装置12に向かって押し出され、クランプ装置12に移し替えられる。
図4に示すように、クランプ装置12は、昇降軸70を構成する回動軸76の下端に装着されている。クランプ装置12は、ワークwの足首fが挿入される溝124を有するクランプ本体122と、該溝124を開閉するチャック126からなる。チャック126は、図示省略の制御装置により自動的に動作される。
【0043】
ワークwがクランプ装置12に移し替えられた後、チャック126が自動的に作動し、溝124の入口を閉鎖する。その後、クランプ装置12は、歩進して第2処理ステーション(筋入れステーション)に達し、そこで停止する。第2処理ステーション(筋入れステーション)では、ワークwに筋入れナイフを刺した後、骨に沿わせて長手方向に筋入れナイフを切り下げて肉部mを切断する筋入れ工程が行なわれる。切断と同時に、ワークwの全長が測定される。
【0044】
次に、クランプ装置12が第3処理ステーション(足首カットステーション)に移動する。ここには、切断面が水平方向に配置された一対の丸刃カッタ22が配置されている。該丸刃カッタ22がクランプ装置12に吊下されたワークwに接近し、足首fに付着した腱を切断する。
次に、ワークwは第4処理ステーション(内分離小骨筋カットステーション)に移動する。第4処理ステーション(内分離小骨筋カットステーション)には、固定セパレータ26と、固定セパレータ26に対して接近又は離隔可能な方向に移動可動セパレータ28とからなるミートセパレータ24が設けられている。ここで、固定セパレータ26と可動セパレータ28で肉部mを両側から押さえ、クランプ装置12を引き上げながら、丸刃カッタ30で小骨筋カットを行なう。
【0045】
小骨筋とは、下腿骨kの側面に沿って下腿骨kに付着しているマッチ棒くらいの小骨の延長線上(足首側)にある筋である。第4処理ステーション(内分離小骨筋カットステーション)で肉部mを剥す時に小骨筋が切れていると、下腿骨kから小骨が剥がれてしまい、下腿骨kと大腿骨jの中間部(膝関節h)で脱臼してしまう。そのため、第3処理ステーション(足首カットステーション)でわざと小骨筋を切断せずに、第4処理ステーション(内分離小骨筋カットステーション)での肉部mの引き剥がし後に切断するようにしている。
【0046】
次に、ワークwは第5処理ステーション(膝関節露出ステーション)に移動する。ここでは、固定セパレータ34と可動セパレータ36とからなるミートセパレータ32で肉部mを押さえながら、ワークwを引き上げて膝関節hを露出させる。
次に、第5処理ステーション(膝関節露出ステーション)から第6処理ステーション(膝関節位置測定・X筋カットステーション)への移動経路中で、クランプ装置12を引き下げる。ワークwが第6処理ステーション(膝関節位置測定・X筋カットステーション)に到達した後で、クランプ装置12を引き上げ、この動作中、測定具38で膝関節hの位置を測定すると共に、カッタ40でX筋を切断する。
【0047】
X筋とは、膝関節hにある筋であり、膝関節hと肉部mとを引き離すために、X筋を切断する必要がある。X筋の切断は、第6処理ステーション(膝関節位置測定・X筋カットステーション)で行なう膝関節位置の測定後、第7処理ステーション(膝関節筋カットステーション)への移動中に行なう。
【0048】
次に、ワークwを第7処理ステーション(膝関節筋カットステーション)に移動させ、ここで、膝関節hに付着した筋肉をカットする。第6処理ステーション(膝関節位置測定・X筋カットステーション)で測定した膝関節hの位置から、ワークwの引き上げ量を決定し、固定セパレータ44及び可動セパレータ46からなるミートセパレータ42で肉部mを押えながら、ワークwを引き上げる。これによって、膝関節hが露出し、露出した膝関節hに付着した筋肉を3枚の丸刃カッタ48でカットする。
【0049】
第8処理ステーション(軟骨カットステーション)では、固定セパレータ52及び可動セパレータ54からなるミートセパレータ50で肉部mを押えながら、ワークwを引き上げる。この引き上げ量は、第6処理ステーション(膝関節位置測定・X筋カットステーション)で測定した膝関節hの位置から決定する。そして、3枚の丸刃カッタ56で、膝関節hの直下に位置した軟骨をカットする。
【0050】
次に、第9処理ステーション(最終引き剥がしステーション)では、肉部mの最終引き剥がしを行なう。ここでは、固定セパレータ60及び可動セパレータ62からなるミートセパレータ58で肉部mを押えながらワークwを引き上げる。これによって、大腿骨jから肉部mを引き剥がすことができる。そして、クランプ装置12を90度回転させた後、90度逆回転させ、この動作中に大腿骨jの骨頭末端に付着した腱を丸刃カッタ64で切断する。こうして、骨部から肉部mを分離し、分離された肉部mは、図示省略の排出路に落下して排出される。
【0051】
第10処理ステーション(肉部骨部最終分離ステーション)では、クランプ装置12のチャック126を作動させてクランプ装置12を開放し、肉部mが分離した骨部をクランプ装置12から落下させる。骨部は、肉部mとは別な排出路に落下し、排出される。
【0052】
次に、第2処理ステーション(筋入れステーション)で行なわれる筋入れ工程を、図3〜図10により詳しく説明する。図4は、ワークwを吊下したクランプ装置12が第2処理ステーション(筋入れステーション)に位置した状態を示す。
【0053】
図4〜図6に示すように、昇降軸70は、上下方向に配置された一対のガイドバー72と、ガイドバー72に沿って摺動可能な摺動ブラケット74と、摺動ブラケット74の内側に同心状に配置された回動軸76とから構成されている。回動軸76の下端にクランプ装置12が装着されている。ガイドバー72の上端は、送り環78に固着され、送り環78は図示省略の駆動装置によって所定角度ずつ断続回転する。ガイドバー72の下端は、固定具88を介して、環状ベース部材90(図5,6参照)に固定されている。なお、図4では、環状ベース部材90は省略されている。
【0054】
第1〜第10の各処理ステーションは、回転中心Oに対して等角度に配置されている。そのため、クランプ装置12は、ひとつの回転動作毎に次の処理ステーションに移動する。図4には、1個のクランプ装置12のみ図示されているが、実際の装置では、各処理ステーションに夫々1個のクランプ装置12が位置するように、送り環78に複数の昇降軸70が等間隔で固定されている。
【0055】
回動軸76の上端には、コイルバネ80が巻装され、コイルバネ80の近傍で、回動軸76にアーム82を介して揺動ローラ84が取り付けられている。コイルバネ80の一端は、摺動ブラケット74と一体の止め金86に係止している。これによって、回動軸76には、軸回りにコイルバネ80の弾性力が付勢されている。
【0056】
揺動ローラ84の下方で、摺動ブラケット74に昇降ローラ92が装着されている。また、各処理ステーション間には、昇降ローラ92が走行するガイド溝が形成された走行路94が設けられている。クランプ装置12が各処理ステーション間を移動するときに、昇降ローラ92が走行路94を走行することによって、クランプ装置12の上下方向位置が規制される。
【0057】
図7において、環状ベース90の上面には、軸受95が設けられ、軸受95には、基部96及び基部96と一体形成されたブレーキシュー96aがピン98を中心に回動自在に装着されている。ブレーキシュー96aは、やや斜め上方に向けられ、基部96には、ブレーキシュー96aを回動軸76の外周面に押圧する方向に弾性力を付勢するコイルバネ100が装着されている。これによって、クランプ装置12が各処理ステーションに位置している時、回動軸76の落下を防止している。
【0058】
図4において、各処理ステーションで、ワークwを上昇させる手段は、主として、サーボモータ104を駆動装置とする手段が用いられる。各処理ステーションにサーボモータ104が設けられ、サーボモータ104の出力軸にネジ軸106が連結されている。ネジ軸106には昇降ブロック108が螺合し、ネジ軸106の回転により、昇降ブロック108が上昇する。
【0059】
各処理ステーションで、昇降ローラ92が走行路94を走行して、昇降ブロック108の上面に達すると、サーボモータ104が駆動して昇降ブロック108が上昇し、昇降ブロック108と共に昇降ローラ92が上昇する。昇降ローラ92が上昇すると、昇降ローラ92と一体の摺動ブラケット74及び回動軸76が上昇して、ワークwが上昇する。サーボモータ104の回転数に応じて昇降ブロック108の上昇量が決まる。
【0060】
回動軸76の上昇中は、ブレーキシュー96aが回動軸76に押圧されているので、回動軸76の落下を防止できる。基部96の上面にはローラ102が設けられている。図3に示すように、走行路94が矢印a方向に向かって下降方向に配置されている領域の下方には、下側の支持桁11にガイドレール110が固定されている。この領域で昇降ローラ92が走行路94を走行する時、ローラ102がガイドレール110の下面に入り込み、ガイドレール110により基部96が下方に押し下げられる。基部96が押し下げられると、ブレーキシュー96aが回動軸76から離れて、回動軸76の下降が自由になる。これによって、昇降ローラ92が走行路94を下方向に走行できるようになる。
【0061】
図3に示すように、第2処理ステーション(筋入れステーション)に限らず、クランプ装置12の移動方向に向かって走行路94が下降する方向に配置された領域では、走行路94の下方でガイドレール110が支持桁11に固定されている。これらのガイドレール110によって、昇降ローラ92が走行路94に入る前に、ブレーキシュー96aが回動軸76から離れ、回動軸76の下降が自由になり、クランプ装置12の下降が可能になる。
【0062】
次に、図8〜図10により、第2処理ステーション(筋入れステーション)での筋入れ工程を具体的に説明する。まず、図8及び図9において、平坦面を有する姿勢保持板112がワークwの搬送路を遮るように垂直方向に設けられている。クランプ装置12によって吊下されたワークw(左足)は、第1処理ステーション(投入ステーション)から搬送され、姿勢保持板112に接して止まる。なお、図8において、ワークwが右足の場合は、骨部の曲がりは垂直線に対して対称な方向を向く。
【0063】
姿勢保持板112の右側には、基台114に固定されたケーシング116が設けられている。ケーシング116の内部にエアシリンダ118が収容され、エアシリンダ118のピストンロッド118aに右プッシャー130が接続されている。また、姿勢保持板112の左側には、基台132に固定されたケーシング134が設けられている。ケーシング134の内部にエアシリンダ138が収容され、エアシリンダ138のピストンロッド138aには、左プッシャー140が接続されている。
【0064】
また、右プッシャー130の下方には、下プッシャー142が設けられ、下プッシャー142は回動軸144に接続されている。回動軸144は、図示省略のエアシリンダを駆動源として回動し、下プッシャー142をワークwに対して接近又は離隔させる。
ワークwが姿勢保持板112に接して停止すると、右プッシャー130、左プッシャー140及び下プッシャー142がワークwに向かって接近し、ワークwを3方向から押えて、姿勢保持板112に押し付け固定する。
【0065】
また、図9に示すように、姿勢保持板112と対面する位置に、押え板146が上下方向に配置されている。押え板146はアーム150に接続され、回動軸148を中心に回動可能になっている。アーム150は駆動装置152によって回動軸148を回動する方向に駆動される。
ワークwが姿勢保持板112に接して停止すると、押え板146がワーク側に向かって回動し、ワークwの一方の平坦面を押圧し、ワークwの他方の平坦面を姿勢保持板112に押し付け固定する。
【0066】
また、左プッシャー140の下方には、アーム156の先端に取り付けられた測定板154が設けられている。第1アーム156は第2アーム158に接続され、第2アーム158には枝アーム160が一体に取り付けられている。第2アーム158と枝アーム160の接続部は、ハウジング172内に配置された回動軸162を中心に回動可能になっている。第2アーム158の他端は、ハウジング172内に収容されたエアシリンダ164のピストンロッド164aと接続されている。測定板154は、エアシリンダ164によって、ワークwに対し接近又は離隔可能に移動する。
【0067】
また、クランプ装置12の直下に位置して、ワークwに向かって筋入れナイフ168が配置されている。筋入れナイフ168は、図示省略の駆動装置によってワークwに向かって進退可能になっている。
【0068】
かかる構成において、ワークwが姿勢保持板112に接して停止した後、右プッシャー130、左プッシャー140及び下プッシャー142がワークwに向かって接近し、ワークwを3方向から押える。同時に、押え板146がワーク側に向かって回動し、ワークwの平坦面を押圧してワークwを姿勢保持板112に押し付け固定する。
その後、筋入れナイフ168がワークwの足首付近に刺し込まれ、ワークwは、クランプ装置12によって上昇する。これによって、図8中の矢印cで示すように、筋入れナイフ168が骨の内側面に沿って下降し、骨と肉部mとを分離する。
【0069】
図4に示すように、第2処理ステーション(筋入れステーション)の外板15には、カム板180が設けられている。図10に示すように、カム170には、曲面状のカム面170aが形成されている。カム面170aは、後述するように、揺動ローラ84がカム面170aに当って設定角度だけ回動するように成形されている。揺動ローラ84、カム170及びコイルバネ80等によって、自転機構171が構成されている。
【0070】
筋入れナイフ168が膝関節h付近に達した時、揺動ローラ84がカム板170のカム面170aに当って設定角度α(例えば30度)だけ回動軸76を回動させる。これによって、筋入れナイフ168は、図8中の矢印dで示す軌跡を辿る。即ち、筋入れナイフ168は、膝関節hの裏側面に沿って移動し、該裏側面に付着している腱を切断する。
【0071】
図10は、クランプ装置12の上昇に伴って筋入れナイフ168が膝関節hに達する前後の状態をS01→S04に順を追って示している。図10のS01は、揺動ローラ84がカム面170aに接した瞬間を示している。揺動ローラ84がカム面170aに接した後、回動軸76は、最大角度αまで回転する。クランプ装置12の上昇により、図10のS04で、揺動ローラ84がカム面170aから外れ、回動軸76はコイルバネ80の弾性力で元の位置まで逆回転する。
【0072】
筋入れナイフ168が膝関節hの下方に達した時、揺動ローラ84がカム面170aから外れるので、コイルバネ80の弾性力により回動軸76が元の位置まで逆回転する。これによって、筋入れナイフ168は、膝関節hの下方で骨部の内側面に戻り、そこから下降し、矢印eに沿ってワークwの骨部の内側面の肉部mを切断する。
【0073】
また、図8に示すように、ハウジング172の下部に非接触センサ166が設けられている。ワークwが姿勢保持板112に固定された後、測定板154が、エアシリンダ164の駆動によりワークwに接近して、ワークwに接触する。ワークwの上昇と共に、測定板154は、ワークwに接しながら前方に移動し、測定板154がワークwの下端に達した時、枝アーム160が非接触センサ166に最接近するように構成されている。
枝アーム160が非接触センサ166に最接近した時に、測定板154がワークwの下端に接している時であり、この時間が非接触センサ166で検出され、この検出信号がワーク全長測定手段174に送られる。
【0074】
一方、サーボモータ104の回転数をエンコーダ176で検出し、この検出値がワーク全長測定手段174に送られる。この検出値から昇降ローラ92の高さ位置(上昇ストローク)がわかる。ワーク全長測定手段174で、非接触センサ166が枝アーム160を検出した時点における昇降ローラ92の高さ位置(ワークwの上昇ストローク)と、測定板154の位置とから、ワークwの骨の全長が求められる。こうして求めたワークwの骨の全長が上昇ストローク決定手段178に送られる。
【0075】
上昇ストローク決定手段178では、この検出値が大、中、小の分類のいずれに属するかを判定する。そして、判定した分類に対応した上昇ストロークを決定し、第9処理ステーション(最終引き剥がしステーション)で、その上昇ストローク分だけクランプ装置12を上昇させて、骨と肉部mを分離する。
【0076】
図1及び図3に示すように、第3処理ステーション(足首カットステーション)及び第9処理ステーション(最終引き剥がしステーション)と第10処理ステーション(肉部骨部最終分離ステーション)との間には、カム板180及びカム板182が設けられている。第2処理ステーション(筋入れステーション)で、ワークwが上昇中に筋入れが行なわれ、その後、上昇したクランプ装置12が第3処理ステーション(足首カットステーション)側に移動し始めた時、ローラ102がガイドレール110の下面に入り込むことによって、ブレーキシュー96aが回動軸76から離れる。これでクランプ装置12の下降が自由になり、昇降ローラ92が走行路94を走行し、クランプ装置12が下降する。
【0077】
図1に示すように、クランプ装置12が第3処理ステーション(足首カットステーション)を走行中、揺動ローラ84がカム板180に接して押され、回動軸76から所定角度自転する。これによって、ワークwの足首付近の腱切断部位が一対の丸刃カッタ22に対面する。その後、丸刃カッタ22は該腱切断部位に直線状の移動経路を辿って接近し、足首fに付着した腱を切断する。その後、クランプ装置12が移動し、揺動ローラ84はカム板180から離れる。揺動ローラ84がカム板180から離れると、コイルバネ80の弾性力により、自転前の状態に逆回転する。
【0078】
第9処理ステーション(最終引き剥がしステーション)から第10処理ステーション(肉部骨部最終分離ステーション)にクランプ装置12が移動する間も、同様に、揺動ローラ84をカム板182に接触させて、クランプ装置12を90°自転させる。この状態で、切断部位が丸刃カッタ64に対面する。次に、丸刃カッタ22を該切断部位に接近させ、大腿骨jの骨頭末端に付着した腱を切断する。
【0079】
本実施形態によれば、クランプ装置12の上昇装置を、サーボモータ104と、サーボモータ104の出力軸に連結されたネジ軸106と、ネジ軸106に螺合した昇降ブロック108とで構成し、クランプ装置12の下降は、処理ステーション間に設けられた走行路94に昇降ローラ92を走行させるようにしているので、ワークwの昇降機構及び搬送機構を簡素化できると共に、サーボモータ104の所要動力を低減させて低コスト化できる。また、駆動モータとしてサーボモータ104を用いたことにより、ワークwの高さ位置制御を精度良くできる。
【0080】
また、クランプ装置12を所定角度自転させ、切断部位を丸刃カッタ22又は64に対面させることができるので、該丸刃カッタの移動経路を略直線状にできる。そのため、該丸刃カッタの移動経路を単純化できるので、移動機構を簡素化かつ低コスト化できる。
【0081】
また、大きな重量の筋入れナイフユニットを昇降させず、骨付き腿肉を昇降させるようにしているので、筋入れナイフユニットの昇降装置をなくすことができる。そのため、筋入れステーションを簡素化かつ低コスト化できる。また、特許文献1に開示された脱骨装置のように、筋入れステーションを脱骨装置本体と別置きとすることなく、脱骨装置10に組み込んでいるので、脱骨装置全体をコンパクトにできる。
【0082】
また、筋入れナイフ168が膝関節hに達した時、クランプ装置12を設定角度だけ自転させ、筋入れナイフ168を骨内側面から膝関節hの腱付着部に回り込ませて腱を切断するようにしているので、膝関節hに強固に付着した腱を確実に分離できる。そのため、その後行なわれる骨と腿肉の分離を円滑にでき、肉の歩留まりを向上できる。
【0083】
また、第2処理ステーション(筋入れステーション)で、ワークwの骨の全長を検出し、この検出値が大、中、小の分類のいずれに属するかを判定し、最終引き剥がし第9処理ステーション(最終引き剥がしステーション)でのクランプ装置12の上昇量を決定しているので、ワーク長に固体差があっても、骨肉分離を確実に行なうことができる。また、ワーク長を大、中、小の3分類としているので、制御が簡単になり、制御装置を低コストにできる。
【0084】
また、自転機構171が、揺動ローラ84、コイルバネ80やカム170等からなる機械的機構のみで構成されているので、複雑な電気的制御装置が不要になり、精度良くクランプ装置12を自転できると共に、低コスト化できる。
また、投入装置14を備えたことにより、脱骨装置10のワーク投入部の構成を簡素化できると共に、ワークwをクランプ装置12に確実に懸垂させることができる。
【0085】
さらに、各処理ステーションで、サーボモータ104によりクランプ装置12を上昇させている間、ブレーキシュー96aを回動軸76に押圧させて回動軸76の落下を防止できる。また、クランプ装置12が各処理ステーション間を移動している間は、ガイドレール110によって、ブレーキシュー96aによる押圧を解除するようにしているので、昇降ローラ92が走行路94を円滑に走行でき、クランプ装置12の下降を円滑に行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、家畜屠体の骨付き腿肉を自動脱骨する装置において、骨付き腿肉の搬送機構を簡素化し、所要動力を低減させて低コスト化できると共に、切断時の切断刃の移動機構を簡素化かつ低コスト化できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱骨装置により骨付き腿肉を脱骨する脱骨方法であって、
骨付き腿肉を足首を介してクランプ装置で吊下する工程、
複数の処理ステーション間を断続搬送する工程、
各処理ステーションで、切断刃を骨に沿わせて腿肉を長手方向に切断する筋入ステップ、又はミートセパレータを用いて肉部を上方から押え、切断刃で腱を切断しながら骨付き腿肉を相対的に上方に引き上げて肉部を引き剥す肉分離ステップを行なう工程とを有し、
前記脱骨装置が、送り機構によって処理ステーション間を断続搬送され、下端に前記クランプ装置が装着されクランプ装置の上方に昇降ローラが装着された昇降軸と、処理ステーションに設けられ、駆動モータと、該駆動モータの出力軸に連結されたネジ軸と、該ネジ軸に螺合した昇降台とからなる上昇装置と、処理ステーション間に架設されクランプ装置の移動方向に向かって下降する走行路とを備え、
処理ステーションで前記昇降ローラを前記昇降台上に載置し、該昇降台を上昇させ骨付き腿肉を上昇させて前記筋入れ工程又は肉分離工程を行い、
骨付き腿肉の自重により昇降ローラを前記走行路に沿って走行させ、前記クランプ装置を下降させながら次の処理ステーションに搬送するようにしたことを特徴とする骨付き腿肉の脱骨方法。
【請求項2】
切断刃が配設された処理ステーションにおいて、前記昇降軸が軸中心に自転可能に構成され、該昇降軸を設定角度だけ自転させる自転機構を脱骨装置がさらに有し、
該自転機構により昇降軸を自転させ、骨付き腿肉の切断部位を前記切断刃に対して対面させると共に、
切断刃を直線状の移動経路に沿って該切断部位に接近させ、骨付き腿肉の切断部位を切断するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の骨付き腿肉の脱骨方法。
【請求項3】
前記切断刃が水平方向に配置された丸刃からなる腱切断刃であり、該腱切断刃で骨に付着した腱を切断するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の骨付き腿肉の脱骨方法。
【請求項4】
前記処理ステーションの少なくともひとつが筋入れを行なう処理ステーションであり、
該筋入れ工程が、切断刃を骨の内側面に沿わせながら切断刃に対して骨付き腿肉を相対的に上昇させ、足首付近から膝関節上部まで筋入れを行なう下腿筋入れステップと、切断刃が膝関節に接近した時前記自転機構で昇降軸を一時的に自転させ、切断刃を骨内側面から膝関節の腱付着部に回り込ませて腱を切断した後、クランプ装置を逆回転させて切断刃を骨の内側面に戻す膝関節筋入れステップと、切断刃を骨の内側面に沿わせながら切断刃に対して骨付き腿肉を相対的に上昇させ、膝関節下部から大腿端部まで筋入れを行なう大腿筋入れステップと、からなることを特徴とする請求項2に記載の骨付き腿肉の脱骨方法。
【請求項5】
前記筋入れ工程において、骨付き腿肉が上昇中に骨付き腿肉の下端部を検出し、この検出高さと該検出高さで骨付き腿肉の下端部を検出した時の骨付き腿肉の上昇ストロークとから骨付き腿肉の骨の全長を求め、
最終腿肉分離工程において、測定された骨付き腿肉の骨の全長に応じて、肉部を押えるミートセパレータに対するクランプ装置の上昇ストロークを決定するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の骨付き腿肉の脱骨方法。
【請求項6】
切断刃を骨に沿わせて腿肉を長手方向に切断する筋入れ工程とミートセパレータを用いて肉部を上方から押え、切断刃で腱を切断しながら骨付き腿肉を相対的に上方に引き上げて肉部を引き剥す肉分離工程との少なくともひとつを行なう複数の処理ステーションと、
骨付き腿肉を足首を介して吊下搬送するクランプ装置と、
複数の処理ステーション間に該クランプ装置を断続歩進させる送り機構と、
下端に前記クランプ装置が装着されクランプ装置の上方に昇降ローラが装着された昇降軸と、
処理ステーションに設けられ、駆動モータと、該駆動モータの出力軸に連結されたネジ軸と、該ネジ軸に螺合した昇降台とからなる上昇装置と、
処理ステーション間に架設されクランプ装置の移動方向に向かって下降する走行路とを備える脱骨装置であって、
前記処理ステーションで前記昇降ローラを前記昇降台上に載置し、昇降台を上昇させ骨付き腿肉を上昇させて前記筋入れ工程又は肉分離工程を行い、
骨付き腿肉の自重により昇降ローラを前記走行路に通し、前記クランプ装置を下降させながら次の処理ステーションに搬送するように構成したことを特徴とする骨付き腿肉の脱骨装置。
【請求項7】
切断刃が配設された処理ステーションにおいて、前記昇降軸が軸中心に自転可能に構成され、昇降軸を設定角度だけ自転させる自転機構を備え、
該自転機構により昇降軸を自転させ、骨付き腿肉の切断部位を前記切断刃に対して対面させ、切断刃を直線状の移動経路に沿って該切断面に接近させ、切断部位を切断するように構成したことを特徴とする請求項6に記載の骨付き腿肉の脱骨装置。
【請求項8】
前記昇降軸は、前記送り機構に固設されたガイドバーと、該ガイドバーに沿って上下に摺動する摺動ブラケットと、該摺動ブラケットの内部に回動可能に配置され下端に前記クランプ装置が装着された回動軸と、からなり、
前記自転機構は、前記回動軸に取り付けられた揺動ローラと、処理ステーションに設けられ、クランプ装置が上昇して切断刃が膝関節に接近した時該揺動ローラを押して該回動軸を設定角度だけ自転させるカム部材と、クランプ装置がさらに上昇して該揺動ローラが該カム部材から離れた時に該揺動ローラを元の位置に復帰させるバネ部材と、からなることを特徴とする請求項7に記載の骨付き腿肉の脱骨装置。
【請求項9】
前記切断刃が水平方向に配置された丸刃からなる腱切断刃であり、該腱切断刃で骨に付着した腱を切断するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の骨付き腿肉の脱骨装置。
【請求項10】
前記処理ステーションの少なくともひとつが筋入れ工程を行なう筋入れステーションであり、該筋入れステーションにおいて、骨付き腿肉に向かって進退可能な切断刃と、該切断刃の進退方向に対面して配置された姿勢保持板と、該姿勢保持板に対して骨付き腿肉の平坦面を押し付け固定する押え部材と、を備え、前記自転機構が前記昇降軸を上昇途中で設定角度だけ自転させるものであり、
押え部材によって骨付き腿肉を姿勢保持板に押し付けた状態で切断刃を骨付き腿肉の足首付近に挿入させ、クランプ装置を上昇させて切断刃を骨の内側面に沿わせながら筋入れを行なうと共に、切断刃が膝関節に接近した時自転機構で昇降軸を一時的に自転させ、切断刃を骨内側面から膝関節の腱付着部に回り込ませて腱を切断するように構成したことを特徴とする請求項7に記載の骨付き腿肉の脱骨装置。
【請求項11】
骨付き腿肉を投入する投入位置に隣接配置され中心軸を中心に断続回転する回転体と、該回転体の外周に等間隔に配置され骨付き腿肉の足首が懸垂される凹部とを有する複数の懸垂ブラケットと、
該懸垂ブラケットに懸垂された骨付き腿肉が投入位置に対面する位置に来た時、該骨付き腿肉を投入ステーションのクランプ装置に押し出して該クランプ装置に載架させるプッシャーと、を備えたことを特徴とする請求項6に記載の骨付き腿肉の脱骨装置。
【請求項12】
前記ガイドバーを支持するベース部材に装着され、軸中心に回動可能に軸支されたブレーキシューと、
該ブレーキシューに対し前記回動軸を押圧する方向に弾性力を付勢するバネ部材と、
処理ステーション間のブレーキシューの移動経路に設けられ、該ブレーキシューを該バネ体の弾性力に抗して回動軸から離れた位置に保持するブレーキ解除レールと、を備えたことを特徴とする請求項8に記載の骨付き腿肉の脱骨装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−507101(P2013−507101A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517956(P2012−517956)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【国際出願番号】PCT/JP2011/001380
【国際公開番号】WO2011/121899
【国際公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】