説明

骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセット

【課題】 使用者が通常のヘッドホンを装着するのと変わらない動作でヘッドセットを装着でき、周囲の騒音の影響などを受けずに受信者にとって聞き取りやすい音を発する構造をした骨伝導マイクロホン内臓ヘッドセットを提供する。
【解決手段】 人の耳を覆うことができるイヤーカップ5の開放端側にイヤーパット1が取り付けられ、上記イヤーパッド1内に骨伝道マイクロホンを構成する圧電素子3が取り付けられ、上記圧電素子3は、イヤーパット1を構成するクッション材2で支えられ、耳周辺の皮膚に押し当てられるように配置され、イヤーカップ5とイヤーパット1の間にバッフル板15が介在し、イヤーパッド1はバッフル板15に着脱可能であり、バッフル板15に取り付けられているコネクタ12に圧電素子3から引き出された電線11が接続されている骨伝導マイクロホン内臓ヘッドセットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の発生音を身体の骨を通して集音する骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話、医療分野や軍事産業など、様々な分野で骨伝導を応用したマイクロホンが用いられている。通常人間が音を感知する機構は、音源から生じる空気の振動圧が中耳に存在する鼓膜を振動させ、聴覚に関与する聴覚神経系などを経由して、振動を脳への信号として伝達するというものである。このようにして感知される音を気導音という。
【0003】
これに対し骨伝導は、振動子を頭部に当接し、頭蓋骨の一部を振動させることにより、音を感知させるものであり、これを骨導音と称する。骨導音は、前記のように気導音と音の伝達機構が異なる。そこで、周囲の騒音で音が聞き取り難い場合や、鼓膜などの聴覚を司る器官の一部の障害のために音が聞こえ難い場合に、骨伝導を利用したマイクロホンやスピーカーなどが有用になる。
【0004】
従来の骨伝導マイクロホンは、骨伝導マイクユニット部分をネックバンドやアームで咽喉部に固定したり、ヘッドバンド、ヘッドセットの先端、その先に付けたアームの先端に固定して頬骨やこめかみなどに側圧で押し当てたり、骨伝導マイクロホンユニットの部分を手で持って押し当てたりして、できるだけ周囲の騒音の影響を受けないような形で通話に用いられている。
【0005】
しかしながら、従来の骨伝導マイクロホンは、その骨伝導マイクユニットを音響伝導効率のよい骨伝導部分に押し当てるため、専用のアームやネックバンド、ヘッドバンドが必要であった。そのため、装着するためには手間がかかり邪魔になることが多かった。また、ヘッドホンなどと共用する場合でも、ヘッドホンと骨伝導マイクロホンは別々にセットしなければならず煩雑なものであった。
【0006】
骨伝導マイクロホンをヘッドバンドやネックバンド、アームの先端に取り付けるとその取り付け用の各バンドやアームが周辺の騒音で共振して骨伝導マイクユニットに周囲の騒音を伝えてしまい明瞭な通話ができにくい。骨伝導マイクユニットを、ゴムなどを介在させることによりヘッドバンドやアームから音響的に切り離し、ユーザーが自分の手で口の近くに押えて通話するタイプの骨伝導マイクロホンもある。このタイプの骨伝導マイクロホンによれば、音質はよいが手で押さえるために手がほかの事に使えないという問題があった。
【0007】
ところで、騒音が大きい場所では、骨伝導マイクロホン及びヘッドセットなどによって構成され、各々が接続コードにより接続された無線通信装置により通信が行われている。高騒音下において使用される無線通信装置は、無線機、ヘッドセット、骨伝導マイクロホンと別々に構成され、各々が接続コードなどにより接続されているため、使用者の操作性、作業性を損ない、骨伝導マイクロホンやヘッドセットの装脱着を困難にしていた。
【0008】
そこで特許文献1では、ヘッドセット内に、無線送受信回路基板、スピーカー、骨伝導マイクロホンを内蔵し、アンテナ線をヘッドバンドに沿って固定配置し、ヘッドセットと一体化構造にすることが開示されている。無線送受信回路に双方向通信もしくは音声送信制御回路(VOX)を採用することにより、使用者の操作性、作業性の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平7−16219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1記載の発明では、無線送受信回路に双方向通信もしくは音声送信制御回路(VOX)が採用され、周囲からの騒音がバンドやアームを伝わってきても相手に伝わらないように骨伝導マイクロホンの周波数特性をコントロールすることができるが、骨伝導マイクの明瞭度が悪くなるため通信手段としては問題があった。また、双方向通信もしくは音声送信制御回路(VOX)は、骨伝導マイクロホンの機能性を劣化させてしまうため、周囲の騒音の影響を受けなくても、受信者にとって聞き取りにくい問題があった。
【0011】
本発明は、使用者が通常のヘッドホンを装着するのと変わらない動作でヘッドセットを装着することができ、周囲の騒音の影響などを受けることなく、ユーザーにとって聞き取りやすい音を発することができる骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、人の耳を覆うことができるイヤーカップの開放端側にイヤーパットが取り付けられ、上記イヤーパット内に骨伝導マイクロホンを構成する圧電素子が取り付けられ、上記圧電素子は、イヤーパットを構成するクッション材で支えられ、耳周辺の皮膚に押し当てられるように配置され、イヤーカップとイヤーパットの間にバッフル板が介在し、イヤーパットはバッフル板に着脱可能であり、バッフル板に取り付けられているコネクタに圧電素子から引き出された電線が接続されている骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセットを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、使用者が通常のヘッドホンを装着するのと変わらない動作でヘッドセットを装着でき、周囲の騒音の影響などを受けずに受信者にとって聞き取りやすい音を発する構造をした骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセットの実施例を概略的に示す斜視図である。
【図2】上記実施例の内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るヘッドセットの実施例を、図面を参照しながら説明する。
図1において、ヘッドセットは、イヤーパッド1、クッション2、骨伝導マイクを構成する圧電素子3、カバー4、イヤーカップ5、ハンガー6、マイクロホン接続コード9で構成されている。イヤーパッド1は、ユーザーの耳介10を囲むことができる大きさのリング状に形成されている。符号7は耳珠を、8は耳珠外側を示している。本実施例にかかるヘッドセットは、上記のように構成されたヘッドホンユニットを2個一対として左右に有していて、この一対のユニットがハンガー6で連結されている。図1は片方のヘッドホンユニットのみを示している。
【0016】
イヤーパッド1は、イヤーカップ5の開放端側に、着脱自在に取り付けられている。骨伝導マイク用圧電素子3は、イヤーパッド1を構成するクッション2の表面に張り付けられている。ユーザーがその頭部にヘッドセットを装着したとき、前記ハンガー6の弾性力により、左右のヘッドホンユニットのイヤーパッド1がユーザーの側頭部に押し付けられる。これによって骨伝導マイク用圧電素子3は、ユーザーの耳の一部をなす耳珠7または耳珠外側8、すなわち耳珠7周辺に押し付けられるように、カバー4とクッション2の間に配置されている。
【0017】
一方のヘッドホンユニットのイヤーカップ5からはマイクロホン接続コード9が引き出されている。ハンガー6が人体すなわちユーザーの頭部をまたぎ、ハンガー6の弾性力で一対のヘッドホンユニットがユーザーの左右の側頭部を挟み込むようにしてヘッドセットが装着される。一対のヘッドホンユニットの側圧で骨伝導マイク用圧電素子3は、イヤーパッド1を構成するクッション2で支えられ、カバー4を介して人体の耳の耳珠外側8または耳珠7に強く押し付けられる。
【0018】
上記ヘッドセットの装着状態において、人が言葉を発すると、その音声が喉や咽喉に繋がっている頬骨などから、鼻と、口内に繋がっている外耳道を介して、耳珠7及びその下部にある骨に伝わり、音声に合わせて振動する。振動がカバー4を通して骨伝導マイク用圧電素子3に伝わり、上記圧電素子3は、振動を電気信号に変換する。この電気信号を、上記コード9を通して送り出す。骨伝導マイク用圧電素子3は、クッション2によりイヤーカップ5や、バッフル板5から来る外部振動から隔離されており、かつ圧電素子であるため空気の振動に対しては感度が悪く、その音を集音しにくい。そのため、周囲の騒音やヘッドホンの音声出力に影響を受けることなく、ユーザー自身の発生した音声だけを明瞭に相手に伝えることができる。また、外部にマイクを装着しなくとも、ヘッドセットを頭部に装着しただけで使用できるため、外部の人にはマイクが見えず、あたかも通常のヘッドホンのように見せることができる。
【0019】
図2は、上記実施例にかかるヘッドセット内蔵骨伝導マイクロホンの内部構造を示す断面図である。図2において、ヘッドセット内蔵骨伝導マイクロホンの内部は、図1について説明したように、ヘッドパッド1、クッション2、骨伝導マイク用圧電素子3、カバー4、イヤーカップ5、マイクロホンコード9を有するとともに、マイク接続コード11、接続コネクタ12、内部接続コード13、マイクアンプ基板及び電源14、バッフル板15、ドライブユニット16を有している。
【0020】
クッション2、骨伝導マイク用圧電素子3、カバー4、マイク接続コード11を備えてなるイヤーパッド1は、カバー4によりイヤーパッド1の背面側外周部に形成された折り返し部がバッフル板15の外周縁部に被せられることによってバッフル板15に取り付けられている。バッフル板15のイヤーパッド1取り付け面とは反対側の面には、イヤーカップ5が取り付けられている。バッフル板15の中心部に形成されている孔にはドライブユニット16が取り付けられている。ドライブユニット16はスピーカーと同じ構造で、音声信号により駆動されて音波を発し、ユーザーの外耳道に向けて気導音を伝える。
【0021】
図1で説明したように、骨伝導マイク用圧電素子3は、カバー4とクッション2の間に配置されている。骨伝導マイク用圧電素子3から出力を取り出すためのマイク接続コード11が、バッフル板15やイヤーカップ5からの振動を骨伝導マイク用圧電素子3に伝達しないように緩みをつけて配線されている。接続コード11は、バッフル板15に取り付けられている接続コネクタ12を介して、イヤーカップ5内の内部接続コード13に接続されている。この接続コード13を介して、マイクロホンアンプ基板及びマイクロホンアンプを動作させるための電源14に、骨伝導マイク用圧電素子3が接続されている。マイクロホンコード9は、マイクロホンアンプと電源14によって増幅された音声を外部に出力する。
【0022】
上記のように構成されていることにより、イヤーパッド1は、外部の振動が骨伝導マイクロホン3に伝わらない構造のもとにイヤーカップ5と着脱自在となっている。また、イヤーカップ5がマイクロホンアンプ9を内蔵しているため、外部の振動の影響や、無線通話による音質の低下の影響を受けることなくマイクロホンコード9を介してコンパクトな形で音声通話をすることが可能となる。
【0023】
以上は、本発明に係るヘッドセット内蔵骨伝導マイクロホンを図示の実施例に基づいて説明したものであり、その具体的な構成は、これに限定されるものでない。例えば、マイクロホンアンプ基板と電源14をイヤーカップ5に内蔵することは任意である。骨伝導用圧電素子3の出力を増幅するアンプやそのアンプに使用する電源が必要な場合は、それらをイヤーカップ5の内部に配置してもよいし、別のケースに内蔵して骨伝導用圧電素子のついたヘッドホンと接続してもよい。直接通信機器のマイク入力端子と接続して通信機器のマイクアンプを使用してもよい。また、接続の間にトークスイッチを取り付けることによりヘッドセットを装着するときの雑音を相手に伝えないようにすることもできる。
【0024】
カバー4は、クッション2全体を覆うタイプでも骨伝導マイク用圧電素子3の表面のみを覆うタイプでもよい。その場合は、クッション2自身がイヤーパッド1を構成することになる。
本発明にかかるヘッドセットを防音保護具すなわちイヤーマフとして機能させることができる。したがって、骨伝導マイクロホンを備えたイヤーマフが得られることになる。
環境騒音を集音するマイクロホンを備え、このマイクロホンで変換される環境騒音信号の逆位相のキャンセル信号を生成するアクティブノイズキャンセル機能を付加し、アクティブノイズキャンセルヘッドホンあるいは、アクティブノイズキャンセルイヤーマフなどとして構成することもできる。
骨伝導マイク用圧電素子3は、ヘッドセットの左右のヘッドホンユニット双方に存在していてもよく、片方のみでもよい。
骨伝導マイク用圧電素子3からイヤーカップ5までの間に、骨伝導マイク用圧電素子3の出力信号を切断することができるスイッチを設けることもできる。
【0025】
以上のような構成にすることで、使用者が通常のヘッドホンを装着するのと変わらない動作で骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセットを装着でき、かつ周囲からはヘッドホンだけでマイクがあるとは分からないようにすることができる。イヤーパッドのクッションで、周辺騒音の伝達を遮断し、自分の声だけを相手に明瞭に伝えることができる。ヘッドホンをするだけで常に一定の場所に押し当てることができ、装着が安定していると同時に、操作が手軽な骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセットを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明による骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセットは、音楽再生機器や携帯電話の通話、騒音遮断通信、難聴者向けの通話用具などに利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 イヤーパッド
2 クッション
3 骨伝導マイク用圧電素子
4 クッション
5 イヤーカップ
6 ハンガー
7 耳珠
8 耳珠外側
9 マイクロホン接続コード
10 耳介
11 マイク接続コード
12 接続コネクタ
13 内部接続コード
14 マイクアンプ基板及び電源
15 バッフル板
16 ドライブユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の耳を覆うことができるイヤカップの開放端側にイヤパッドが取り付けられ、
上記イヤパッド内に骨伝導マイクロホンを構成する圧電素子が取り付けられ、
上記圧電素子は、イヤパッドを構成するクッション材で支えられ、耳周辺の皮膚に押し当てられるように配置され、
イヤカップとイヤパッドの間にバッフル板が介在し、イヤパッドはバッフル板に着脱可能であり、バッフル板に取り付けられているコネクタに圧電素子から引き出された電線が接続されている骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセット。
【請求項2】
圧電素子は、イヤパッドを構成するクッション材の表面に貼り付けられている請求項1記載の骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセット。
【請求項3】
圧電素子は、イヤパッドを構成するクッション材と、上記クッション材を覆うカバーとの間に配置されている請求項1または2のいずれかに記載の骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセット。
【請求項4】
圧電素子は、耳珠周辺に押し付けられるようにイヤパッドに配置されている請求項1、2または3のいずれかに記載の骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセット。
【請求項5】
上記圧電素子から引き出された電線がイヤカップの内部を通り、イヤカップから引き出されているマイクロホンコードまたはイヤカップに取り付けられているコネクタに接続されている請求項1乃至4のいずれかに記載の骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセット。
【請求項6】
圧電素子から引き出された電線はイヤカップ内に弛みを持たせて配置されている請求項1乃至5のいずれかに記載の骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセット。
【請求項7】
イヤカップは、圧電素子の出力信号を増幅するマイクロホンアンプを内蔵している請求項1乃至6のいずれかに記載の骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセット。
【請求項8】
イヤカップは、マイクロホンアンプを動作させるための電源を内蔵している請求項7記載の骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセット。
【請求項9】
マイクロホンアンプを動作させるための電源を外部から供給する配線を有する請求項7記載の骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセット。
【請求項10】
バッフル板にはヘッドホンユニットが取り付けられている請求項1乃至9のいずれかに記載の骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセット。
【請求項11】
イヤマフとして機能することができる請求項1乃至10のいずれかに記載の骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセット。
【請求項12】
環境騒音を集音するマイクロホンを備え、このマイクロホンで変換される環境騒音信号の逆位相のキャンセル信号を生成してヘッドホンユニットに入力するアクティブノイズキャンセルヘッドホンを構成している請求項10または11のいずれかに記載の骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセット。
【請求項13】
圧電素子からイヤカップまでの間に、圧電素子の出力信号を切断することができるスイッチが設けられている請求項1乃至12のいずれかに記載の骨伝導マイクロホン内蔵ヘッドセット。

【図1】
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【図2】
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