説明

骨再生のためのエリスロポイエチンおよびフィブロネクチン組成物

骨再生をその必要性のある対象において促進させる方法が開示される。該方法は、治療有効量のエリスロポエチンおよびフィブロネクチンを対象に投与し、それにより、骨再生を対象において促進させることを含み、(i)前記エリスロポエチンの前記治療有効量が、全身投与については約1μg/Kg〜50μg/Kgからなる群から選択され、局所投与については約0.1μg/ml〜50μg/mlからなる群から選択され、かつ、(ii)前記フィブロネクチンの前記治療有効量が、全身投与については約100μg/ml〜1000μg/mlからなる群から選択され、局所投与については約50μg/ml〜500μg/mlからなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチン組成物に関し、より具体的には、限定されないが、骨再生のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
骨再生ならびに骨折治癒は、多くの異なる細胞タイプおよび因子の協調した取り組みを必要とする複雑なプロセスである。それぞれの成分が寄与することが、これらの状況において最適化を達成するために不可欠である。骨傷害(例えば、疾患または骨折から生じる骨傷害など)は、効率的に、かつ、より重要なことではあるが、迅速に治癒させる必要がある。
【0003】
骨は動的な生体組織であり、骨マトリックスの再吸収および沈着によって絶えず補充されている。この堅い組織により身体が形成および支持され、同様にまた、一部の器官が保護される。この堅い組織はまた、ミネラルのための貯蔵部位として役立ち、また、血液細胞の発達および貯蔵のための媒体、すなわち、骨髄を提供する。骨は様々な形で生じ、また、複雑な内部構造および外部構造を有するために軽量であるが、強靱で硬い。
【0004】
骨を構成する1つのタイプの組織が、剛性およびハニカム様の三次元内部構造を骨に与える石灰化した骨性組織(これはまた、骨組織とも呼ばれる)である。骨性組織は、カルシウムヒドロキシルアパタイトと呼ばれる化学的配置でのリン酸カルシウムからほとんどが形成される比較的硬い軽量の複合物である。すべての骨が、骨性組織を構成する石灰化した有機マトリックスに埋め込まれる生細胞からなる。骨に見出される他のタイプの組織には、骨髄、骨内膜、骨膜、神経、血管および軟骨が含まれる。
【0005】
骨は、均一に詰まったものではなく、むしろ、いくらかの空間がその硬い構成要素の間に存在する。骨の硬い外側層が、その最小限の隙間および空間のためにそう呼ばれるが、緻密骨組織(これはまた、高密度骨または皮質骨ともいう)から構成され、したがって、骨にその滑らかな白色の固体外観を与える。この器官の内部を満たすものが、器官全体をより軽くし、血管および骨髄のための空間を可能にする桿状様構成要素およびプレート様構成要素の網状組織から構成される小柱状骨組織(海綿質骨または海綿骨とも呼ばれるオープンセルの多孔性網状組織)である。そのうえ、骨は本質的には脆いが、実際には、相当な程度の弾性が主にコラーゲンによってもたらされる。
【0006】
数タイプの細胞が骨を構成しており、そのような細胞には、骨芽細胞、骨細胞および破骨細胞が含まれる。これらの細胞を取り囲むものが、無機部分および有機部分を含むマトリックス(骨の主要構成成分)である。無機部分は主として結晶性ミネラル、塩およびカルシウム(これはヒドロキシアパタイトの形態で存在する)である。有機部分は主としてII型コラーゲンである。マトリックスの有機部分にはまた、様々な増殖因子、グリコサミノグリカン、オステオカルシン、オステオネクチン、骨シアロタンパク質および細胞接着因子が含まれる。骨のマトリックスを他の細胞のマトリックスから区別する主要なものの1つが、骨におけるマトリックスは硬いということである。
【0007】
骨の潜在的治癒力が、骨症(例えば、骨粗鬆症、骨軟化症、くる病)の場合であろうと、または骨折モデルもしくは癒合モデル(例えば、骨移植)の場合であろうと、様々な生化学的機構、生体力学的機構、細胞機構、ホルモン機構および病理学的機構によって影響を受ける。骨の沈着、再吸収および再構築が絶えず生じる状態では、治癒プロセスが促進される。例えば、骨折治癒は、組織をその元の物理的特性および機械的特性に回復させる一方で、様々な全身的因子および局所的因子によって影響を受ける。治癒が、異なるが、重複する3つの段階で生じる:1)初期の炎症段階、2)修復段階、および、3)後期の再構築段階[Tsiridis E.(2007)、Journal of Injury、(38)1:S11〜25;Kalfas IH他、Neurosurg Focus(2001)15;10(4):E1]。骨の機能は非常に多く、また複雑であるので、医師または他の医療従事者による臨床的ケアを必要とする多くの障害が存在する。
【0008】
エリスロポエチン(EPO)またはフィブロネクチン(FN)を骨再生のために使用するための様々なアプローチが試みられており、いくつかが下記において要約される。
【0009】
EPOを骨治癒のために投与することが、マウスの閉鎖大腿骨骨折モデルにおいてHolstein他によって記載されている[Holstein他、Life sciences(2007)80(10):893〜900]。その教示によれば、5000U/kgのEPOを骨折1日前から骨折後4日目まで毎日、i.p.注射することにより、石灰化骨および類骨の増大した割合が処置マウスにおいて高まった(EPOは、軟らかい仮骨から硬い仮骨への移行を高めた)。
【0010】
米国特許第7473678号は、骨、歯周組織、靱帯または軟骨の成長を、哺乳動物において血小板由来増殖因子(PDGF)を含む組成物を適用することによって促進させる方法を開示する。この組成物はさらに、EPOを含み得る。
【0011】
米国特許出願公開第20080031850号は、構造的組織(例えば、骨など)の再生を促進させるための造血性増殖因子(特に、エリスロポエチン(EPO)およびトロンボポエチン(TPO))の使用を開示する。
【0012】
米国特許第5264214号は骨修復用の組成物を開示する。記載される組成物は、合成された親水性ポリマーに化学的にコンジュゲートされたコラーゲンを含んでおり、EPOをさらに含み得る。そのうえ、このコラーゲンはタンパク質(例えば、FNなど)に架橋することができる。
【0013】
米国特許出願公開第20050191248号は、FNおよびEPOを含む、骨再生のための線維組織形成剤を教示する。
【発明の概要】
【0014】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、骨再生をその必要性のある対象において促進させる方法が提供され、該方法は、治療有効量のエリスロポエチンおよびフィブロネクチンを対象に投与し、それにより、骨再生を対象において促進させることを含み、(i)エリスロポエチンの治療有効量が、全身投与については約1μg/Kg〜50μg/Kgからなる群から選択され、局所投与については約0.1μg/ml〜50μg/mlからなる群から選択され、かつ、(ii)フィブロネクチンの治療有効量が、全身投与については約100μg/ml〜1000μg/mlからなる群から選択され、局所投与については約50μg/ml〜500μg/mlからなる群から選択される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、エリスロポエチンおよびフィブロネクチンを含む整形外科用移植片が提供される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の方法はさらに、治療有効量のPDGFを含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、PDGFの治療有効量が、全身投与については約10ng/ml〜100ng/mlからなる群から選択され、局所投与については約1ng/ml〜50ng/mlからなる群から選択される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、全身投与が、静脈内注入および骨内注入からなる群から選択される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、局所投与が、被覆されたインプラント、被覆された合成骨、および、被覆された骨移植片からなる群から選択される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、投与が、1日に少なくとも1回行われる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の方法はさらに、骨再生を促進させることができる少なくとも1つの化合物を投与することを含む。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、そのような少なくとも1つの化合物が、骨形態形成因子、骨形態形成タンパク質(BMP)、再吸収防止剤、骨形成因子、軟骨由来骨形態形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、形質転換増殖因子、ノギン系化合物、骨形成性成長ペプチド、成長ホルモン、エストロゲン系化合物、ビスホスホナート系化合物、スタチン系化合物、カルシトニン系化合物、ジヒドロキシビタミンD系化合物、カルシウム調製物および分化因子からなる群から選択される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、BMPは、BMP2、BMP4およびBMP7を含む。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、対象は、骨粗鬆症、骨折または骨欠損症、原発性または二次的な副甲状腺機能亢進症、変形性関節炎、歯周病または歯周欠損、骨溶解性骨疾患、形成外科手術後、整形外科埋め込み後および歯科埋め込み後からなる群から選択される医学的状態を有する。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、対象がヒトである。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチンの投与が同時に行われる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチンが共配合物に存在する。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチンが別個の配合物に存在する。
【0029】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0031】
【図1】図1は、骨芽細胞の増殖に対するエリスロポエチン(EPO)の影響を示す棒グラフである。初代骨芽細胞の細胞培養物を、無血清培地において24時間、ビヒクル(左側の棒)、2μg/mlの組換えEPO(中央の棒)または10μg/mlの組換えEPO(右側の棒)で処理し、その後、10μMのBrdUと37℃で60分間インキュベーションした。BrdU細胞を、BrdUに対して特異的なマウスモノクローナル抗体を使用して検出した。
【0032】
【図2】図2は、骨芽細胞の接着に対するEPOおよびフィブロネクチン(FN)またはII型コラーゲンの影響を示す棒グラフである。96ウェル組織培養プレートを100μg/mlのFN(黒塗りの棒)または125μg/mlのII型コラーゲン(斜線付きの棒)で被覆した。ビヒクル(左側の棒)、2μg/mlの組換えEPO(中央の棒)または10μg/mlの組換えEPO(右側の棒)で無血清培地において1時間処理された骨芽細胞を、37℃で1時間、組織培養プレートに接着させた。接着性細胞を固定し、染色し、OD590nmで調べた。それぞれのアッセイを6つの個別ウェルにおいて行い、3回の独立した実験で繰り返した。
【0033】
【図3A−B】図3A〜図3Bは、初代ヒト骨芽細胞(HOB)の増殖に対するEPOの影響を示す棒グラフである。図3Aは、EPO単独によるHOBの増殖を示し、図3Bは、EPOおよびFNの組合せによるHOBの増殖を示す。
【0034】
【図4】図4は、HOBの増殖に対する、EPO、PDGFまたは両者(すべてがFNを伴う)の影響を示す棒グラフである。
【0035】
【図5A−B】図5A〜図5Bは、HOBにおけるオステオカルシンおよびBMPの発現に対するEPOの影響を示す棒グラフである。図5Aは、オステオカルシンおよびBMPの発現に対するEPO単独の影響を示し、図5Bは、オステオカルシンおよびBMPの発現に対するEPOおよびFNの組合せの影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチン組成物に関し、より具体的には、限定されないが、骨再生のためのその使用に関する。
【0037】
本発明の原理および操作は、図面および付随する説明を参照してより良く理解されることができる。
【0038】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部、または、実施例によって例示される細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施、または、実行される。また、本明細書中において用いられる表現法および用語法は説明のためであって、限定として見なされるべきでないことを理解しなければならない。
【0039】
本発明を実施に移しているとき、本発明者は、エリスロポイエチン(EPO)およびフィブロネクチン(FN)の特定の濃度が骨芽細胞の増殖、接着およびその中の骨形態形成タンパク質(BMP)およびオステオカルシンの発現を著しく加速させることを発見している。これらの発見は、本発明の教示が、骨再生を促進する際に使用されることを示唆する。
【0040】
本明細書中下記および下記の実施例の節において示されるように、本発明者は、EPO、FNおよびPDGFのある特定の濃度が骨形成のために望ましいことを、労力を要する実験により発見している。本発明者は、EPOが骨芽細胞の増殖および細胞接着を用量依存的様式で促進させることを具体的に示している(図1〜図2)。そのうえ、EPOおよびFNの両方の存在下での骨芽細胞の成長により、これらの骨細胞による接着レベル(図2)、増殖レベル(図3A〜図3B)、ならびに、各種BMPおよびオステオカルシンの発現(図5A〜図5B)が著しく大きくなる。さらに、図4に示されるように、PDGFをEPOおよびFNに加えることにより、これらの細胞増殖が大幅に高まった。まとめると、これらの結果は、骨再生を促進させることにおける、EPO、FNおよびPDGFの有用性を実証している。
【0041】
したがって、本発明の1つの態様によれば、骨再生をその必要性のある対象において促進させる方法が提供され、該方法は、治療有効量のエリスロポエチンおよびフィブロネクチンを対象に投与し、それにより、骨再生を対象において促進させることを含み、エリスロポエチンの治療有効量が、全身投与については約1μg/Kg〜50μg/Kgからなる群から選択され、局所投与については約0.1μg/ml〜50μg/mlからなる群から選択され、かつ、フィブロネクチンの治療有効量が、全身投与については約100μg/ml〜1000μg/mlからなる群から選択され、局所投与については約50μg/ml〜500μg/mlからなる群から選択される。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「骨再生」は、(例えば、骨芽細胞の増殖による)骨の形成を促進させること、および、場合により骨の再吸収を阻害することをいう。
【0043】
骨再生に関連しての用語「促進する」は、骨組織、骨細胞、骨細胞分化、骨マトリックスなどの量を、骨再生を可能にする様式で増大させるプロセスを示す。したがって、本発明のいくつかの実施形態において、促進するとは、骨再生における少なくとも約10%、20%、50%、80%、100%またはそれより多い増大、または、骨吸収における少なくとも約10%、20%、50%、80%の阻止を示す。当業者は、様々な方法論およびアッセイが、骨再生の促進を評価するために使用できること、また、同様に、様々な方法論およびアッセイが、骨分解または吸収の阻止を評価するために使用され得ることを理解する。
【0044】
本明細書中で使用される場合、語句「骨組織」は、骨器官の堅い部分を構成する骨性組織をいう。骨組織の用語は、海綿状の骨性組織および緻密な骨性組織の両方を示す。
【0045】
どのようなタイプの骨であっても、本発明の教示に従って再生され得ることが理解される。そのような骨には、長骨(例えば、四肢の骨、指および足指の骨を含む)、短骨(例えば、手首および足首の骨)、扁平骨(例えば、頭蓋骨、胸骨)、不規則形骨(例えば、脊椎および股関節部の骨)および種子骨(例えば、膝蓋骨および豆状骨)が含まれる。
【0046】
本明細書中で使用される場合、語句「骨細胞」は、骨形成細胞(例えば、骨芽細胞など)、骨再吸収細胞(例えば、破骨細胞など)、マクロファージ、スカベンジャー細胞および骨始原体細胞(例えば、間質細胞、骨形成原細胞または骨再吸収細胞始原体など)をはじめとする、骨格組織の細胞(例えば、骨、軟骨、腱、靱帯、骨髄間質および結合組織の細胞など)をいう。
【0047】
本明細書中で使用される場合、語句「骨マトリックス」は、無機物(例えば、結晶性ミネラル、カルシウム塩およびヒドロキシルアパタイトなど)および有機物(例えば、コラーゲン(例えば、I型コラーゲン)、増殖因子、グリコサミノグリカン、オステオカルシン、オステオネクチン、骨シアロタンパク質および細胞接着因子など)からなる骨組織の細胞間物質をいう。
【0048】
本発明の組成物は、骨再生をその必要性のある対象において促進させることが想定される。
【0049】
本明細書中で使用される用語「対象」は、どのような段階および/または程度であっても、骨損傷を経験するか、または経験することがある任意の哺乳動物(例えば、ヒト、または馬(ウマ科)、牛、ヤギ、羊、豚、犬、猫、ラクダ、アルパカ、ラマ、ヤクを含むがそれらに限定されない飼育動物)(任意の年齢の雌雄(男女))を示す。
【0050】
本発明の組成物は、骨欠損に関連する何らかの疾患または状態を処置または防止するために使用され得ること、例えば、限定されないが、閉鎖骨折、開放骨折または非癒着性骨折において骨の欠損および欠乏を防止すること;骨量を危険性のある若年個体において増大させること;最大骨量を閉鎖骨折および開放骨折の整復において高めることによる若年個体における予防的処置;形成外科手術または形成外科手術後における骨治癒の促進;接合していない整形外科後インプラントおよび歯科インプラント中への骨内部成長の刺激;閉経期前の女性における最大骨量の上昇;成長不全の処置;原発性または二次的な副甲状腺機能亢進症の処置;骨溶解性骨疾患(例えば、ガンなど)の処置;歯周病および歯周欠損の処置、また、他の歯修復プロセス;伸延骨形成術時での骨形成における増大;ならびに、他の骨格障害(例えば、加齢による骨粗鬆症、閉経後の骨粗鬆症、グルココルチコイド誘導による骨粗鬆症、または、廃用性骨粗鬆症、および、関節炎、変形性関節炎、または、一方では骨の形成を刺激することから利益を受け、他方では骨の再吸収を阻害することから利益を受ける何らかの状態)の処置のために使用され得ることが理解される。本発明の薬剤はまた、骨の先天的、外傷誘導的または外科的切除(例えば、ガン処置のための外科的切除)の修復において、また、美容外科において有用であり得る。さらに、本発明の組成物は、軟骨の欠損または障害を制限または処置するために使用することができ、また、骨が損傷している創傷治癒または組織修復において有用であり得る。
【0051】
本発明の教示に従って処置され得るさらなる骨関連の疾患または状態には、骨嚢胞、骨棘突起(骨棘)、骨腫瘍、骨巨細胞腫、骨肉腫、頭蓋骨癒合症、進行性骨化性線維形成異常症、線維性異形成症、低ホスファターゼ症、クリッペルフェーユ症候群、代謝性骨疾患、変形性骨炎(または骨パジェット病)、嚢胞性線維性骨炎(または線維性骨炎、すなわち、骨レックリングハウゼン病)、恥骨骨炎、硬化性骨炎、硬化性腸骨骨炎、離断性骨軟骨炎、骨軟骨腫(骨腫瘍)、骨形成不全症、骨軟化症、骨髄炎、骨減少症、大理石骨病、骨萎縮性骨増殖症および腎性骨ジストロフィーが含まれる。
【0052】
本明細書中で使用される場合、語句「処置または防止する」は、骨欠乏症状の発達を遅らせること、および/または、発達するか、もしくは、発達することが予想されるそのような症状の重篤度における軽減をいう。これらはさらに、存在する骨欠乏症状または軟骨欠乏症状を改善すること、さらなる症状を防止すること、症状の根本的な代謝的原因を改善または防止すること、骨の再吸収を防止するか、もしくは逆転させること、および/または、骨の成長を促すことを含む。当業者は、様々な方法論およびアッセイが、状態の発達を評価するために使用できること、そして、同様に、様々な方法論およびアッセイが、状態の軽減、寛解または退行を評価するために使用され得ることを理解する。
【0053】
処置を、当該分野では広く知られているモデル(例えば、マウスおよびイヌの動物モデル)を使用して、常法的な実験法によって評価することができる。当該分野において知られているさらなるパラメーターを、例えば、骨のX線写真などによって、対象における骨再生を明らかにするために定量化することができる。
【0054】
述べられたように、本発明のこの態様による方法は、治療有効量のエリスロポイエチン(EPO)およびフィブロネクチン(FN)を対象に投与することによって達成される。
【0055】
本明細書中で使用される用語「エリスロポイエチン」は、哺乳動物(例えば、ヒト)のエリスロポイエチンタンパク質(交換可能に、ポリペプチドとともに使用される)またはその模倣体を示す(例えば、GenBankアクセション番号NP_000790に示されるもの)。エリスロポイエチンは、組換えDNA技術または固相技術を使用して合成することができる。エリスロポイエチンはまた市販されている(例えば、Cytolab/Peprotech、Rehovot、イスラエル;Arenesp、Amgen、Thousand Oaks、CA、アメリカ合衆国;およびEpogen、Amgen、Thousand Oaks、CA、アメリカ合衆国、Bristrol−Meyers Squibb、RocheおよびSanofi−Aventis)。エリスロポイエチンは、完全な糖タンパク質として、または、結合した糖を欠くタンパク質サブユニットのみとして使用することができる。本発明のエリスロポイエチンは、臨床適用のために使用されるので、好ましくは無菌であるか、または、考えられる混入因子(例えば、細菌または細菌成分)が、例えばフィルタによって除かれ得る。
【0056】
本明細書中で使用される用語「フィブロネクチン」は、哺乳動物(例えば、ヒト)のフィブロネクチンタンパク質(交換可能に、ポリペプチドとともに使用される)またはその模倣体を示す(例えば、GenBankアクセション番号NP_002017に示されるもの)。フィブロネクチンは、組換えDNA技術または固相技術を使用して合成することができる。フィブロネクチンはまた市販されている(例えば、Chemicon International Inc.、Temecula、CA、アメリカ合衆国)。本発明のフィブロネクチンは、臨床適用のために使用されるので、好ましくは無菌であるか、または、考えられる混入因子(例えば、細菌または細菌成分)が、例えばフィルタによって除かれ得る。
【0057】
模倣体の組成物が使用されるとき、FNおよびEPOの投薬量は、例えば、モル価に従うなどして較正されなければならないことが理解される。そのような較正は、当業者には日常的な計算である。
【0058】
本発明の医薬組成物は、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチンを共配合物において、または、2つの別個の組成物において含むことができる。共配合されないとき、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチンの投与は同時にまたは連続的に実施されてもよいことが理解される。
【0059】
本発明の教示のいくつかの実施形態によれば、エリスロポエチンおよびフィブロネクチンは全身投与または局所投与によって投与され得ることが理解される。
【0060】
本明細書中で使用される場合、語句「全身投与」は、本発明の組成物の経口投与、静脈内投与、腹腔内投与および筋肉内投与をいう。例示的な実施形態によれば、本発明の組成物は静脈内において行われる。別の例示的な実施形態によれば、本発明の組成物は、骨内注入によって、損傷した骨に直接に投与される。
【0061】
本明細書中で使用される場合、語句「局所投与」は、本発明の組成物を、損傷した骨の非常に近いところに適用することをいう。
【0062】
本発明の組成物はまた、骨インプラント(例えば、薬物溶出インプラント)、合成骨(例えば、薬物溶出代用物)、骨移植片、整形外科用の被覆されたインプラント(骨ネジ、チタンインプラントを含む)または他の固定デバイスに組成物を被覆するか、または埋め込むことによって、再生を必要としている骨に直接に送達してもよい。本発明の組成物は、当業者に知られているいずれかの方法を使用して、例えば、インプラントを、治療剤を含有する溶液に薄膜成長サイクルの間で入れることによって、または、所望される薬剤を過飽和溶液に溶解し、インプラントのリン酸カルシウム被覆の中に吸収させることによって、埋め込みデバイスの内部に被覆または埋め込んでもよい[例えば、Development in new materials−Journal Materials Research Innovations(1999)、Springer Berlin/Heidelberg Publishers、第3巻(3):179〜180、および、Pioletti他、Source:Current Drug Delivery(2008)、第5巻(1)、59頁を参照のこと]。
【0063】
本発明のインプラントの形態および形状は特に限定されない。インプラントは、任意の所望される形態または形状(例えば、スポンジ、メッシュ物、不織布製造物、ディスク、フィルム、スティック、粒子またはペーストなど)を取ることができる。本発明のインプラントは、他の材料との組合せで使用することができる。例えば、本発明の増殖因子はヒドロキシアパタイトの顆粒と混合することができ、得られた物を骨フィラーとして使用することができる。これらの形態および形状は、インプラントの用途に依存して好適に選択することができる。
【0064】
本発明の教示に従って適用されるエリスロポイエチンおよびフィブロネクチンの用量は変化し得ることが理解される。したがって、エリスロポイエチンは、処置される骨損傷の重篤度に依存して、全身投与については1μg/kg〜50μg/kgの間での用量で、または局所投与については100μg/ml〜1000μg/mlの間での用量で投与することができる。フィブロネクチンは、処置される骨損傷の重篤度に依存して、全身投与については、100μg/ml〜1000μg/mlの間での用量で、または局所投与については50μg/ml〜500μg/mlの間での用量で投与することができる。
【0065】
本発明の実施形態によれば、本発明のいくつかの組成物はさらに、治療有効量の血小板由来増殖因子(PDGF)を含み得る。
【0066】
本明細書中で使用される場合、用語「血小板由来増殖因子」は、例えば、GenBankアクセション番号NP_148983、同NP_002598などで示される哺乳動物(例えば、ヒト)のPDGFタンパク質(これはポリペプチドと交換可能に使用される)またはその模倣体をいう。PDGFは、組換えDNA技術または固相技術を使用して合成してもよい。PDGFはまた、市販されている(例えば、Sigma)。本発明のPDGFは臨床用途なので、本発明のPDGFは好ましくは無菌であるか、または、可能性のある混入因子から精製され得る(例えば、細菌または細菌成分から、例えば、フィルターなどによって精製され得る)。
【0067】
PDGFは、エリスロポエチンおよびフィブロネクチンに関して、共配合物または別個の組成物で配合され得ることが理解される。共配合されないとき、PDGFの投与はエリスロポエチンおよびフィブロネクチンに対して同時または連続して行われ得ることが理解される。
【0068】
本発明の教示によれば、対象に投与されるPDGFの用量は変化し得る。したがって、PDGFを、全身投与については10ng/ml〜100ng/mlの用量で投与することができ、または、局所投与については1ng/ml〜50ng/mlの用量で投与することができる。
【0069】
本発明の組成物は、それ自体で、あるいは、医薬組成物において対象に投与することができる。
【0070】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の調製物と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤など)との調製物を示す。組成物の目的は、対象に対する有効成分(例えば、EPO、FNおよびPDGF)の投与を容易にすることである。
【0071】
本明細書中で使用される用語「有効成分」は、意図される生物学的効果(すなわち、骨再生を促進すること)を担うエリスロポイエチン、フィブロネクチンおよびPDGF組成物を示す。
【0072】
以降、交換可能に使用されうる表現「生理学的に許容されるキャリア」および表現「医薬的に許容されるキャリア」は、生物に対する著しい刺激を生じさせず、投与された有効成分の生物学的な活性および性質を阻害しないキャリアまたは希釈剤を示す。アジュバントはこれらの表現に含まれる。
【0073】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、本発明の有効成分の投与をさらに容易にするために組成物(医薬組成物)に添加される不活性な物質を示す。
【0074】
本発明の医薬組成物にはまた、骨の形成を促進させ、かつ/または、骨の再吸収を阻害する1つ以上の化合物が含まれ得ることが理解され、例えば、骨形態形成因子、骨形態形成タンパク質(BMP1、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP10およびBMP15を含む)、副甲状腺ホルモン、ノギン、骨形成性成長ペプチド、再吸収防止剤、骨形成因子、軟骨由来骨形態形成タンパク質、成長ホルモン、サイトカイン(例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF)など)、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)、形質転換増殖因子、エストロゲン系化合物、ビスホスホナート系化合物、スタチン、カルシトニン、ジヒドロキシビタミンDおよびカルシウム調製物などがこの目的のために好ましい。
【0075】
薬物の配合および投与のための様々な技術が、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版に見出され得る(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0076】
本明細書中上記したように、好適な投与経路には、例えば、全身的様式が含まれ、これには、経口送達、直腸送達、経粘膜送達(特に、経鼻送達)、腸管送達または非経口送達(筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、髄腔内注射、直接の脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、鼻腔内注射または眼内注射を含む)が含まれる。本発明の組成物はまた、骨内注入により投与され得ることが理解される。
【0077】
あるいは、本発明の医薬組成物は、例えば、医薬組成物を直接に患者の骨組織領域に注入することにより、または、組成物を直接に患者の損傷した骨に近い組織領域に適用することにより、全身的様式ではなく、むしろ、局所的様式で投与してもよい。本発明の組成物の好適な投与経路には、例えば、局所投与(例えば、角質組織(例えば、皮膚、頭皮など)への局所投与)および粘膜投与(例えば、経口投与、膣投与、眼投与)が含まれ得る。
【0078】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られているプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥のプロセスによって製造されることができる。
【0079】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用されることができる調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容され得る担体を使用して従来の様式で配合されることできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0080】
注射の場合、医薬組成物の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合しうる緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な食塩緩衝液など)において配合されることができる。経粘膜投与の場合、浸透されるバリヤーに対して適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0081】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物をこの分野でよく知られている医薬的に許容され得る担体と組み合わせることによって容易に配合されることができる。そのような担体は、本発明の化合物が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物は、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、錠剤または糖衣錠コアを得るために、望ましい好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製されることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーである。もし望むなら、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤が加えられることができる。
【0082】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有しうる。色素または顔料は、活性化合物の量を明らかにするために、または活性化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えられることができる。
【0083】
経口使用されうる医薬組成物としては、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが挙げられる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分は、好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁されることができる。さらに、安定化剤が加えられることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0084】
口内投与の場合、組成物は、従来の方法で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0085】
鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投与量は、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定されることができる。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジは、化合物および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有して配合されることができる。
【0086】
本明細書中に記載される医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合されることができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供されることができる。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0087】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態の活性調製物の水溶液が含まれる。さらに、有効成分の懸濁物は、適切な油性または水性の注射用懸濁物として調製されることができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが挙げられる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために、有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0088】
あるいは、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、無菌の、パイロジェン不含水溶液)を使用前に用いて構成される粉末形態であることができる。
【0089】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合されることができる。
【0090】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物として、有効成分が、その意図された目的を達成するために有効な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、「治療有効量」は、処置されている対象の疾患(例えば、骨損傷)の症状を予防、緩和あるいは改善するために効果的であるか、または、処置されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分(例えば、EPO、FN、PDGF)の量を意味する。
【0091】
治療有効量の決定は、特に本明細書中で与えられた詳細な開示に照らすと、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0092】
本発明の方法において使用されるいかなる調製物についても、投与量または治療有効量は、生体外および細胞培養アッセイから最初に推定されることができる。例えば、投与量は、所望の濃度または力価を達成するために、動物モデルにおいて決定されることができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0093】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、生体外、細胞培養物、または実験動物における標準的な薬学的手法によって決定されることができる。これらの生体外、細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲を定めるために使用されることができる。投与量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化しうる。正確な配合、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択されることができる(例えば、Finglら、(1975)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1 p.1を参照のこと)。
【0094】
投薬量および投薬間隔を、生物学的影響を誘導または抑制するために十分である有効成分のレベル(最小有効濃度、MEC)に合わせて個々に調節することができる。MECはそれぞれの調製物について異なるが、インビトロデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投薬量は個体の特性および投与経路に依存する。様々な検出アッセイを、血漿中の濃度を求めるために使用することができる。
【0095】
本明細書中に記載される組成物の生物学的影響を評価するために本発明の教示に従って使用することができる動物モデルには、雌のSprague−Dawleyラットの長骨骨折のための動物モデルが含まれる。このモデルでは、臨界サイズの脛骨欠損がラットに導入される。
【0096】
組織の状態(例えば、骨損傷の面積、深さ、および程度)の重篤度および応答性に依存して、投薬は、単回または複数回投与で行うことができ、この場合、処置期間は、数日から数週または数ヶ月間まで、または治癒が達成されるまで、または豊富な骨が再生されるまで続く。好ましくは、本発明の組成物は少なくとも1日につき1回投与される。
【0097】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている患者、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存する。
【0098】
本発明の組成物は、所望されるならば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、ブリスターパックなど)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、通知が添付されていることがあり、その通知は、ヒトまたは動物への投与用の組成物の形態の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。医薬的に許容されるキャリア中に配合された本発明の調製物を含む組成物もまた、上記にさらに詳述されるように、調製され、適切な容器に入れられ、示される状態の処置についてラベル書きされることができる。
【0099】
本発明の組成物はインビボで利用されるので、組成物は好ましくは高純度であり、かつ、潜在的に有害な混入物を実質的に含まず、例えば、少なくともNational Food(NF)規格であり、一般には少なくとも分析規格であり、好ましくは少なくとも医薬品規格である。所与の化合物が使用前に合成されなければならないという点では、そのような合成またはその後の精製は好ましくは、合成または精製手順の間に使用され得る何らかの潜在的に混入し得る毒性の薬剤を実質的に含まない生成物をもたらさなければならない。
【0100】
さらなる因子を本発明の組成物(すなわち、上記のエリスロポイエチンおよびフィブロネクチン)に配合することができる。これらには、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:細胞外マトリックス成分(例えば、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲン、エラスチン)、増殖因子(例えば、FGF1、FGF2、IGF1、IGF2、PDGF、EGF、KGF、HGF、VEGF、SDF−1、GM−CSF、CSF、G−CSF、TGFα、TGFβ、NGFおよびECGF)、低酸素誘導因子(例えば、HIF−1αおよびHIF−1βならびにHIF−2)、ホルモン(例えば、インスリン、成長ホルモン(GH)、CRH、レプチン、プロラクチンおよびTSH)、血管形成因子(例えば、アンギオゲニンおよびアンギオポイエチン)、凝固および抗凝固因子[例えば、第I因子、第XIII因子、組織因子、カルシウム、vWF、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、フィブロネクチン、アンチトロンビン、ヘパリン、プラスミノーゲン、低分子量ヘパリン(Clixan)、高分子量キニノーゲン(HMWK)、プレカリクレイン、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1(PAI1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−2(PAI2)、ウロキナーゼ、トロンボモジュリン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、α2−アンチプラスミンおよびプロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)]、サイトカイン(IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、ならびに、INF−α、INF−βおよびINF−γ)、ケモカイン(例えば、MCP−1またはCCL2)、酵素(例えば、エンドグリコシダーゼ、エキソグリコシダーゼ、エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、ペプチダーゼ、リパーゼ、オキシダーゼ、デカルボキシラーゼ、ヒドラーゼ、コンドロイチナーゼ、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼAC、ヒアルロニダーゼ、ケラタナーゼ、へパラナーゼ、へパラナーゼスプライス変化体、コラゲナーゼ、トリプシン、カタラーゼ)、神経伝達物質(例えば、アセチルコリンおよびモノアミン)、神経ペプチド(例えば、サブスタンスP)、ビタミン(例えば、D−ビオチン、塩化コリン、葉酸、myo−イノシトール、ナイアシンアミド、D−パントテン酸、カルシウム塩、ピリドキサール.HCl、ピリドキシン.HCl、リボフラビン、チアミン.HCl、ビタミンB12、ビタミンE、
ビタミンC、ビタミンD、ビタミンB1〜6、ビタミンK、ビタミンAおよびビタミンPP)、炭水化物(例えば、単糖/二糖/多糖、これらには、グルコース、マンノース、マルトースおよびフルクトースが含まれる)、イオン、キレーター(例えば、Feキレーター、Caキレーター)、抗酸化剤(例えば、ビタミンE、ケルセチン、超酸化物スカベンジャー、スーパーオキシドジスムターゼ、H2O2スカベンジャー、フリーラジカルスカベンジャー、Feスカベンジャー)、脂肪酸(例えば、トリグリセリド、リン脂質、コレステロール、遊離脂肪酸および非遊離脂肪酸、脂肪アルコール、リノール酸、オレイン酸およびリポ酸)、抗生物質(例えば、ペニシリン、セファロスポリンおよびテトラサイクリン)、鎮痛剤、麻酔剤、抗菌剤、抗酵母剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、プロバイオティック剤、抗原虫剤、かゆみ止め剤、抗皮膚炎剤、制吐剤、抗炎症剤、抗高角質溶解剤、制汗剤、抗乾癬剤、抗脂漏剤、抗ヒスタミン剤、アミノ酸(例えば、必須アミノ酸および非必須アミノ酸(A〜Z)、特に、グルタミンおよびアルギニン)、塩(例えば、ピルビン酸塩および硫酸塩)、硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム)、ステロイド(例えば、アンドロゲン、エストロゲン、プロゲスタゲン、グルココルチコイドおよびミネラルコルチコイド)、カテコールアミン(例えば、エピネフリンおよびノルエピネフリン)、ヌクレオシドおよびヌクレオチド(例えば、プリンおよびピリミジン)、プロスタグランジン(例えば、プロスタグランジンE2)、ロイコトリエン、エリスロポイエチン(例えば、トロンボポイエチン)、プロテオグリカン(例えば、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸)、ヒドロキシアパタイト[例えば、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))]、ヘパトグロビン(Hp1−1、Hp2−2およびHp1−2)、スーパーオキシドジスムターゼ(例えば、SOD1/2/3)、一酸化窒素、一酸化窒素供与体(例えば、ニトロプルシド(Sigma Aldrich、St.Louis、MO、アメリカ合衆国))、グルタチオンペルオキシダーゼ、水和化合物(例えば、バソプレシン)、細胞(例えば、血小板)、細胞培地(例えば、M199、DMEM/F12、RPMI、Iscovs)、血清(例えば、ヒト血清、ウシ胎児血清)、緩衝剤(例えば、HEPES、重炭酸ナトリウム)、界面活性剤(例えば、Tween)、消毒剤、薬草、果実抽出物、野菜抽出物(例えば、キャベツ、キュウリ)、花抽出物、植物抽出物、フラビノイド(例えば、ザクロ果汁)、香辛料、葉(例えば、緑茶、カモミール)、ポリフェノール(例えば、赤ワイン)、ハチミツ、レクチン、マイクロ粒子、ナノ粒子(リポソーム)、ミセル、炭酸カルシウム(CaCO、例えば、沈降炭酸カルシウム、粉砕/微粉化炭酸カルシウム、albacar、PCC、GCC)、方解石、石灰石、破砕大理石、粉砕大理石、石灰、チョーク(白亜、シャンパンチョーク、フレンチチョーク)、ならびに、補因子(例えば、BH4(テトラヒドロビオブテリン))。
【0101】
本発明の組成物はまた、水素、アルキル基、アリール基、ハロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボアミド基、スルホンアミド基、アミノアシル基、アミド基、アミン基、ニトロ基、有機セレン化合物、炭化水素および環式炭化水素を含有する成分、物質、要素および材料を含有することができる。
【0102】
本発明の組成物は、例えば、ベンゾールペルオキシド、血管収縮剤、血管拡張剤、サリチル酸、レチノイン酸、アゼライン酸、乳酸、グリコール酸、ピルビン酸、タンニン、ベンジリデンカンファーおよびその誘導体、αヒドロキシイス、界面活性剤などの物質と組み合わせることができる。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、有効成分(すなわち、本発明のEPO、FN、PDGF組成物)の安定性(例えば、プロテアーゼ活性に対する安定性)および/または溶解性(例えば、生物学的流体(例えば、血液、消化液)における溶解性)を保ち、一方で、それらの生物学的活性を保ち、かつ、その半減期を延ばすポリエチレングリコール(例えば、PEG、SE−PEG)にバイオコンジュゲート化することができる。
【0104】
本発明の組成物は、骨治癒のための他の現在実施されている治療法、例えば、限定されないが、低強度パルス化超音波、高エネルギー体外衝撃波療法(ESWT)などとの組合せで使用され得ることが理解される。
【0105】
本発明の別の態様によれば、エリスロポエチンおよびフィブロネクチンを含む整形外科用移植片が提供される。
【0106】
本明細書中で使用される場合、用語「整形外科用移植片」は、骨移植のために使用され得るいずれかの同種移植片物、異種移植片物および合成物をいう。
【0107】
本明細書中で使用される場合、「同種移植片」は、ある生物種のドナーに由来し、それと同じ生物種のレシピエントに移植される組織(例えば、骨組織など)の移植片をいう。同種移植片組織は典型的には、死体ドナー(すなわち、死亡したドナー)に由来する。
【0108】
本明細書中で使用される場合、「異種移植片」は、ある生物種のドナーに由来し、別の生物種のレシピエントに移植される組織(例えば、骨組織など)の移植片をいう(例えば、ヒトに移植されるブタの骨)。
【0109】
本明細書中で使用される場合、「合成物」は人工的な移植片物をいい、例えば、セラミック移植片物(例えば、カルシウム系材料、リン酸カルシウム系材料、硫酸カルシウム系材料、リン酸カルシウムナトリウム系材料など)などをいう。
【0110】
エリスロポエチンおよびフィブロネクチンを含む本発明の組成物は、本明細書中上記で詳しく記載されるように、整形外科用移植片に埋め込まれ得るか、または、移植片に被覆され得ることが理解される。
【0111】
本出願から成熟する特許の有効期間中に、多くの関連するエリスロポイエチンおよびフィブロネクチン組成物が開発されることが予想され、したがって、エリスロポイエチンおよびフィブロネクチン組成物の用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を演繹的に包含することが意図される。
【0112】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0113】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0114】
用語「からなる(consisting of)」は、「含むが、それらに限定されない(including and limited to)」を意味する。
【0115】
用語「から本質的になる」は、さらなる成分、工程および/または部品が、特許請求される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部品を含み得ることを意味する。
【0116】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0117】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0118】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0119】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0120】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の各種の特徴は、別個にまたは適切なサブコンビネーションで、または本発明の他の実施形態において好適に提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0121】
本明細書の上記に詳述され、かつ添付の特許請求の範囲において特許請求される本発明の種々の実施形態および側面は、以下の実施例に実験的裏付けを見出す。
【実施例】
【0122】
上記説明とともに、本発明を非限定的な様式で例示する以下の実施例を参照する。
【0123】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学および組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技術は文献に詳細に説明されている。例えば以下の諸文献を参照されたい:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻、Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、米国メリーランド州バルチモア(1989);Perbal「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、米国ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク(1998);米国特許の第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号および同第5272057号に記載される方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」I〜III巻、Coligan,J.E.編(1994);Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク(1994);MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク(1980);利用可能な免疫アッセイ法は、特許と科学文献に広範囲にわたって記載されており、例えば:米国特許の第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号および同第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);これらの文献の全ては、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。それらの文献に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。それらの文献に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0124】
実施例1
エリスロポエチンおよびフィブロネクチンによる骨芽細胞の高まったインビトロ増殖および接着
材料および実験手順
骨芽細胞が濃縮された細胞の単離
胎児ラット頭蓋冠(FRC)の細胞培養物を、先に記載した技術[Aronow MA.J Cell Physiol.(1990)、143(2):213〜21]の改変法を使用して確立した。簡単に記載すると、妊娠21日目のSprague−Dawelyの胎児ラットからの前頭骨および頭頂骨をその骨膜および硬膜から剥がし、1mmの断片に切り刻み、滅菌PBSにより洗浄した。その後、頭蓋冠を、37℃で、それぞれ10分の4回のサイクルにわたって、振とうインキュベーターにおいてコラゲナーゼ/ディスパーゼ(Biological Industries)の溶液により連続して消化した。2〜5回目のサイクルまでの画分を集め、遠心分離し、培養培地に再懸濁した。細胞を75mmの培養ディッシュに置床し、コンフルエンスに近い状態にまで成長させた。骨芽細胞が濃縮された培養物の単離を確認するために、単離された細胞が、石灰化した骨小結節を形成し、かつ、アルカリホスファターゼを産生する能力を、標準的技術を使用して評価した。
【0125】
細胞培養
初代骨芽細胞の細胞培養物を、10%のウシ胎児血清(Biological Industries)、100IU/mlのペニシリン(Biological Industries)、50μg/mlのストレプトマイシン(Biological Industries)および100μg/mlのアンホテリシンB(Biological Industries)が補充されたDMEMを含む培養培地において成長させた。培地を2日毎に取り換え、細胞をトリプシン処理(0.05%トリプシン−EDTA、Biological Industries)の後で継代培養した。その後、細胞を5%CO−95%窒素ガスの混合物での加湿された組織インキュベーターにおいて成長させた。さらに、pH計を使用して、培地のpHを分析し、モニターした。こうして、すべての実験が7.4〜7.5のほぼ一定の中性pHで行われた。
【0126】
インビトロアッセイ
骨芽細胞の増殖に対するエリスロポエチン(EPO)の影響を調べるために、細胞を無血清培地において24時間、2μg/mlまたは10μg/mlの組換えEPO(Aranesp)またはビヒクルで処理し、その後、10μMのBrdU(BD Pharmingen)と37℃で60分間インキュベーションした。その後、BrdU細胞を、製造者のプロトコル(BD Pharmingen)によって記載されるように、BrdUに対するマウスモノクローナル抗体を使用して検出した。
【0127】
さらに、EPOまたはコントロール処理細胞のDNA含有量をフローサイトメトリーによって調べた。つまり、細胞をトリプシン処理し、RNase Aにより37℃で30分間消化し、ヨウ化プロピジウムにより室温で30分間染色し、FACScalibur装置(BD Biosciences、Palo Alto、CA、USA)により分析した。
【0128】
細胞接着アッセイについては、96ウェルプレートを最初に、100μg/mlのフィブロネクチン(FN、Chemicon Int.)または125μg/mlのII型コラーゲン(Sigma)で被覆した。2μg/mlまたは10μg/mlの組換えEPOまたはビヒクルで無血清培地において1時間処理された細胞を、FNまたはコラーゲンで被覆されたプレートに37℃で12時間接着させた。接着性細胞を、先に記載[Kawaguchi N.、J Cell Sci.(2003) 116(Pt 19):3893〜904]のように固定し、染色し、OD590nmで調べた。それぞれのアッセイを6つの個別ウェルにおいて行い、3回の独立した実験で繰り返した。
【0129】
結果
図1に示されるように、骨芽細胞のEPO処理によって、増殖が用量依存的様式で高まった。さらに、EPOおよびFNの両方を一緒に使用することにより、骨芽細胞の接着が用量依存的様式で高まった(図2)。EPOおよびFNの組合せは、EPOおよびII型コラーゲンと比較して、より大きい接着性を示した(図2)。
【0130】
実施例2
エリスロポエチンおよびフィブロネクチンはヒト骨芽細胞の増殖および接着を高めた
材料および実験手順
細胞培養
初代ヒト骨芽細胞(HOB)の凍結保存された二次培養物をPromoCell(PromoCell GmbH、Heidelberg、Germany)から得た。HOBの増殖に対する、エリスロポエチン(EPO)、フィブロネクチン(FN)およびPDGFの影響を評価した。簡単に記載すると、HOB細胞を、10%のFBSを含有する骨芽細胞成長培地(OGM、Cell System、USA)とともに穏やかに解凍した。細胞を60mmの組織培養プレートに1x10細胞/mlの密度で播種し、15%のFBS、ナトリウムペニシリンGおよび硫酸ストレプトマイシンが補充されたOGMにおいて12日間、37℃で、5%CO−95%窒素ガスの混合物での加湿インキュベーターにおいて培養した。培養培地を毎日取り換え、細胞を3回複製させた。8日目に、すべての非接着性細胞を培地交換とともに除去し、接着性細胞(HOB細胞)を4日までのさらなる期間にわって成長させた。その後の実験では培養の開始日を0日目として定義した。実験当日に、細胞溶解物を、タンパク質発現を明らかにするために集めた。
【0131】
[3H]−チミジン取り込みアッセイ
HOB細胞を、100μg/mlのフィブロネクチン(Chemicon Int.)で被覆された6ウェルプレートまたは被覆されていない6ウェルプレートに1x10細胞/mlの密度で播種した。HOB細胞を5日間成長させて、15%のFBSが補充されたOGMにおいて60%〜70%のコンフルエンスに到達させた。HOB細胞を、実験前の24時間、EPO(1μg/ml、5μg/mlおよび10μg/ml、Aranespから得られる)、5ngのPDGF(Sigma)または両者により処理した。細胞培養物をフェノールレッド非含有OGM(Cell−System、USA)および0.1%のFBSに入れた。24時間後、細胞を、7.5%のデキストラン−活性炭ストリップ処理FBSを含有するフェノールレッド非含有OGMに入れた。細胞を、培養の最後の24時間、10μCiの[3H]−チミジン(Shanghai、China)で標識し、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS、5分x3回)および10%トリクロロ酢酸(30分x1回)によりすすいだ。最後に、細胞を0.2mlの0.2mol/lのNaOHに溶解し、4℃で一晩放置した。放射能をシンチレーション計数によって求めた。
【0132】
オステオカルシン、BMP−2、BMP−4、BMP−7のレベルのアッセイ
オステオカルシン、BMP−2、BMP−4およびBMP−7の各Quantikine ELISAキット(R&D Systems)を使用して、HOBの培養培地におけるオステオカルシン、BMP−2、BMP−4、BMP−7のレベルを検出した。簡単に記載すると、細胞を、(上記で示すように、様々な濃度による)EPO、FNおよびPDGFで処理し、細胞培養培地を集め、検出用モノクローナル抗体で被覆された96ウェルマイクロタイタープレートに入れ、室温で2時間インキュベーションした。非結合物を洗浄緩衝液(50mM Tris、200mM NaClおよび0.2% Tween20)により除去し、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート化ストレプトアビジンを加えて、抗体に結合させた。西洋ワサビペルオキシダーゼにより、有色溶液への発色性基質(テトラメチルベンジジン)の変換が触媒され、色の強度が、サンプルに存在するタンパク質の量に比例した。それぞれのウェルの吸光度をOD450nmで測定した。結果を、非処理のコントロールと比較して、活性の変化割合として表した。
【0133】
統計学的分析
データを、平均±SEMとして、または、コントロールのパーセンテージとして表した。結果の統計学的比較を、分散分析(ANOVA)を使用して行った。コントロールの平均と、試験群の平均との間における有意差(P<0.05)をDunnett検定によって分析した。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【0134】
結果
結果(図3A)から明らかなように、EPO(5μg/mlまたは10μg/ml)によって、HOBの増殖が、FNでさらに処理されてない細胞において著しく増大した(それぞれ、P<0.01、P<0.05)。FN被覆プレート(図3B)では、EPO(1μg/ml、5μg/mlおよび10μg/ml)によりHOBの増殖が用量依存的様式で著しく増大した(それぞれ、P<0.05、P<0.01およびP<0.01)。HOBをFN被覆プレートでPDGF(5ng/ml)とともに培養した場合、HOBの増殖がEPOと同様な様式で著しく増大した(P<0.01)。しかしながら、細胞を(FN被覆プレートで)EPOおよびPDGFの組合せとともに培養した場合には相乗的な効果があり、HOBの増殖が、どちらかの化合物の単独よりも高いレベルに増大した(P<0.001)(図4)。
【0135】
骨形態形成タンパク質(BMP)(特に、2、4および7)は、骨組織の誘導、分化および増殖のための非常に重要な因子である。骨芽細胞におけるそれらの発現は、骨芽細胞の組織化および増殖において主要な役割を果たす。したがって、BMP−2、BMP−4およびBMP−7ならびにオステオカルシンの発現をHOBにおいて評価した。結果(図5A〜図5B)から明らかなように、BMP−2、BMP−4およびBMP−7ならびにオステオカルシンのタンパク質レベルが、EPOとともに培養されたHOBでは用量依存的様式で著しく増大(図5A)するが、より著しい増大が、EPOおよびFNの両方の存在下で培養された細胞について記録された(図5B)。
【0136】
本発明はその特定の実施形態によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0137】
本明細書中で言及した刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許または特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。見出しが使用される場合、それらは必ずしも限定するものとして解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨再生をその必要性のある対象において促進させる方法であって、該方法は、治療有効量のエリスロポエチンおよびフィブロネクチンを対象に投与し、それにより、骨再生を対象において促進させることを含み、
(i)前記エリスロポエチンの前記治療有効量が、全身投与については約1μg/Kg〜50μg/Kgからなる群から選択され、局所投与については約0.1μg/ml〜50μg/mlからなる群から選択され、かつ、
(ii)前記フィブロネクチンの前記治療有効量が、全身投与については約100μg/ml〜1000μg/mlからなる群から選択され、局所投与については約50μg/ml〜500μg/mlからなる群から選択される。
【請求項2】
治療有効量のPDGFをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PDGFの前記治療有効量が、全身投与については約10ng/ml〜100ng/mlからなる群から選択され、局所投与については約1ng/ml〜50ng/mlからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記全身投与が、静脈内注入および骨内注入からなる群から選択される、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記局所投与が、被覆されたインプラント、被覆された合成骨、および、被覆された骨移植片からなる群から選択される、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記投与が、1日に少なくとも1回行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
骨再生を促進させることができる少なくとも1つの化合物を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの化合物が、骨形態形成因子、骨形態形成タンパク質(BMP)、再吸収防止剤、骨形成因子、軟骨由来骨形態形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、形質転換増殖因子、ノギン系化合物、骨形成性成長ペプチド、成長ホルモン、エストロゲン系化合物、ビスホスホナート系化合物、スタチン系化合物、カルシトニン系化合物、ジヒドロキシビタミンD系化合物、カルシウム調製物および分化因子からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記BMPは、BMP2、BMP4およびBMP7を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記対象は、骨粗鬆症、骨折または骨欠損症、原発性または二次的な副甲状腺機能亢進症、変形性関節炎、歯周病または歯周欠損、骨溶解性骨疾患、形成外科手術後、整形外科埋め込み後および歯科埋め込み後からなる群から選択される医学的状態を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記対象はヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記エリスロポイエチンおよび前記フィブロネクチンの前記投与が同時に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記エリスロポイエチンおよび前記フィブロネクチンは共配合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記エリスロポイエチンおよび前記フィブロネクチンは別個の配合物に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
エリスロポエチンおよびフィブロネクチンを含む整形外科用移植片。

【図1】
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【図2】
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【図3A−B】
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【図4】
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【図5A−B】
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【公表番号】特表2011−510066(P2011−510066A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543624(P2010−543624)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000087
【国際公開番号】WO2009/093240
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(510042688)レメドー バイオメッド リミテッド (2)
【Fターム(参考)】