説明

骨固定装置

【課題】弾性材料でできた可撓性のある接続要素とともに用いることのできる骨固定装置を提供する。
【解決手段】骨固定装置は、骨または脊椎骨に固定されるべきシャンク(2)、および頭部(4)を含む固定要素(1)と、少なくとも2つの固定要素を接続するための接続要素(20)と、受部(6)とを含み、当該受部(6)は、当該受部において回動可能である頭部(4)を受ける第1の端部と、接続要素(20)を受けるための窪み(13)を含む第2の端部とを有し、当該骨固定装置はさらに、受部(6)に頭部を固定するよう当該頭部(4)に押付ける第1の押圧要素(17)と、接続要素を第1の押圧要素(17)に押当てるよう接続要素(20)に押付ける第2の押圧要素(23)とを含み、接続要素(20)に面する少なくとも第1の押圧要素(17)または第2の押圧要素(23)の表面の輪郭は、接続要素の表面の輪郭からずれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、骨の力学的安定化、特に脊椎の力学的安定化のための骨固定装置に関する。この発明は、弾性材料でできた可撓性のあるロッドと接続することのできる骨固定要素を含み、当該ロッドに対する当該固定要素の位置の多軸調整を可能にする。
【背景技術】
【0002】
通常金属でできている剛性のロッドと接続されるべき多軸骨ねじは、DE 43 07
576 C1から公知である。弾性材料でできた可撓性のあるロッドをこのような骨ねじとともに用いると、内部固定ねじによってロッドに加えられる圧力により弾性材料が変形し、結果としてその固定が緩むおそれがある。
【0003】
弾性材料でできた可撓性のあるロッドと骨ねじとを含む骨固定装置は、EP 1 364 622 A2およびEP 1 527 742 A1から公知である。ロッドおよび骨ねじの受部ならびにクロージャ要素は、形状適合接続を実現するために、幾何学的に対応するリブおよび溝をその表面に含む。固定前に、幾何学的に対応する形状のロッドと骨ねじとを位置合せしなければならない。これにより、調整が困難で時間のかかるものとなる。さらに、骨ねじの受部とシャフトとを単軸(同軸)で接続することにより、ロッドに対するシャフト位置の調整の可能性がさらに制限される。
【特許文献1】DE 43 07 576 C1
【特許文献2】EP 1 364 622 A2
【特許文献3】EP 1 527 742 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の目的は、弾性材料でできた可撓性のある接続要素とともに用いることができ、安全に固定しつつ同時にロッドに対する骨固定要素の位置の多軸調整を可能にする骨固定装置を提供することである。
【0005】
この目的は、請求項1に記載の骨固定装置によって解決される。さらなる展開例が従属請求項に提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
骨固定装置は、クロージャ要素を締める際中にロッドの弾性材料の変形により弾性ロッドと受部との間に形状適合接続がもたらされるという利点を有する。このことにより、ロッドの固定が改善され、さらに、当該ロッドに対する骨固定要素の位置が固定される。骨固定装置は、さらに、ロッドの長手方向の軸に沿った方向に当該ロッドの材料が移動するのを最小限にするという利点を有する。
【0007】
この発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面に関連して、実施例についての以下の詳細な説明を参照することによって、明らかとなり最良に理解されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1および図2に図示のとおり、骨固定装置は、骨ねじ山を備えたシャンク2と、一方の端部に先端3と、反対側の端部に球状の頭部4とを有し骨ねじの形状をした骨固定要素1を含む。捩じ込み式工具と係合させるための窪み5が、当該シャンクとは反対側の頭部4の側に設けられる。
【0009】
骨固定装置はさらに、第1の端部7と、当該第1の端部の反対側にある第2の端部8と、第1の端部および第2の端部の面と交差する長手方向の軸9とを有する受部6を含む。長手方向の軸9と同軸に設けられているボア10は、第1の端部7から、第2の端部8からの所定の距離まで延在する。第2の端部8には開口部11が設けられ、その直径は、ボア10の直径よりも小さい。球状の頭部4のための座部を形成する球状の部分12が、開口部10に隣接して設けられる。
【0010】
受部6はさらに、第1の端部7から始まり、当該第2の端部8から所定の距離まで第2の端部8の方向に延在するU字型の窪み13を有する。当該U字型の窪み13により、第1の端部7に向かって延在する2つの自由な脚部14、15が形成される。受部6は、当該脚部14、15において第1の端部7に隣接する雌ねじ16を含む。
【0011】
さらに、円筒形の構造を有する第1の押圧要素17が設けられ、その外径はボア10の内径よりもほんのわずかに小さく、このため、第1の押圧要素17を受部のボア10に差込んで、軸方向に動かすことができる。押圧要素17は、第2の端部8に向いているその下方側に球状の窪み18を含み、その半径は、骨ねじの球状の頭部4の半径に対応する(図3aおよび図5を参照)。第1の押圧要素17は、その反対側に、長手方向の軸9に対して横方向に延在する円筒形の窪み19を有する。この窪みの横方向の直径は、受部に受取られるべき円形の断面を有するロッド20が窪み19に挿入され、その中で横方向に案内され得るように選択される。円筒形の窪み19の深さは、組立てられた状態で当該ロッドが挿入されU字型の窪み13の底部に押当てられると第1の押圧要素17が頭部5に圧力を加えるように、選択される。さらに、当該深さは、好ましくは、ロッド20の直径の約半分である。
【0012】
図1、図3aおよび図5から分かるように、第1の押圧要素17はさらに、そこを通って捩じ込み式工具を案内するための同軸ボア21を有する。ロッド20を受ける第1の押圧要素17の表面に設けられるリブ状の突起22は、ロッド20の長手方向の軸Lに対して横方向に延在している。このような複数の突起22が設けられてもよいが、単一の突起でも十分である。当該突起は、ロッド20の滑らかな表面に押当てることができる構造化された形状を有し得る。図5から分かるように、同軸ボア21に嵌まり、円筒形の窪み19に向かってこれを閉じるキャップ40が設けられてもよい。
【0013】
図4aから図4cに図示のとおり、骨固定要素は、実質的に正方形の第1の端部24と第2の端部25とを備えた実質的に立方形の第2の押圧要素23を含む。第2の押圧要素の幅は、当該第2の押圧要素を受部6のU字型の窪み13に挿入できるようなものにされる。第2の押圧要素は両側に2つの突起26を含み、当該2つの突起26は、円筒のセグメントの形状であり、雌ねじ16によって制限される空間に嵌まり、第2の押圧要素が挿入されると当該雌ねじに沿って摺動する。
【0014】
第2の押圧要素23はさらに、第2の端部25から第1の端部24に向かって延在する円筒形の窪み27を含み、その円筒の軸は、円筒形の突起26の軸に対して垂直である。円筒形の突起26は、第2の端部側に下方エッジ26aを含む。円筒形の窪み27の直径はロッド20の直径に対応し、その深さは当該ロッド20の直径の半分または半分未満に対応する。第1の押圧要素と同様に、1つ以上のリブ状の突起28が設けられ、対向する円筒形の突起26間における窪み27の表面上に円周方向に延在している。突起28は、これらをロッド20の表面に押当てることを可能にする構造化された形状を有する。第2の押圧要素23はさらに同軸ボア29を有する。
【0015】
骨固定装置は、さらに、脚部14と15との間に捩じ込むことのできる内部ねじ30を含む。内部ねじ30は、第2の押圧要素23のボア29に嵌まる円筒形の突起31を含む
。雌ねじ16と内部ねじ30の協働するねじ山とは、公知のいかなるねじ山形状を有していてもよい。しかしながら、平坦なねじ山または負角のねじ山には、脚部14、15が広がらないという利点がある。
【0016】
受部6および第1の押圧要素17は、両側に対応するクリンプボア32、33を含み、これにより、ねじ1、受部6および第1の押圧要素17は、当該第1の押圧要素17が受部のU字型の窪み13と同軸のその円筒形の窪み19でもって方向付けされるように予め緩く組立てることができる。
【0017】
ロッド20は、部分的または完全に可撓性をもつように弾性材料でできている。好ましくは、当該ロッドは、生体適合性のあるプラスチック材料、たとえば、ポリウレタンまたはPEEKをベースにしたポリマーでできている。当該ロッドは好ましくは滑らかな面を有する。骨固定装置の他の部分は、周知の生体適合性材料、たとえばステンレス鋼またはチタンでできている。
【0018】
使用の際に、予め組立てられた骨固定装置の骨ねじ1が骨に捩じ込まれる。安定化構造をもたらすために、ロッドによって接続される少なくとも2つの骨固定装置が骨に固定される。その後、キャップ40が第1の押圧要素17aの同軸ボア21に挿入され、ロッド20が脚部14と15との間に挿入される。次いで、第1の押圧要素17および第2の押圧要素23が両側からロッド20を囲むように、当該第2の押圧要素が挿入される。骨ねじの角度位置を調節した後、内部ねじが、第2の押圧要素23の第1の端部24に接触するまで脚部の間に捩じ込まれる。内部ねじ30が締められると、第2の押圧要素23は、下方エッジ26aが上方肩部17aに当接するまで第1の押圧要素17の方に移動する。第1および第2の押圧要素17および23によって囲まれる空間の断面は、ロッド20の断面よりもわずかに小さい。こうして、ロッド20を構成する材料が移動し始めて、突起22、28をロッドに押当てることが可能となり、これにより、ロッドの一体構造を破壊することなくロッド20と第1および第2の押圧要素17および23との間に堅固な形状適合接続がもたらされる。キャップ40は、ロッド20の材料が同軸ボア21に入り込むのを防ぐ。同時に、第1の押圧要素17が第2の押圧要素23によって頭部4に押当てられて、その回転位置における摩擦によってねじ頭部が固定される。好ましくは、突起22、28は、ロッド20の長手方向Lに対して垂直に延在して、長手方向の動きに対してロッド20を固定する。
【0019】
ロッドの一体構造を破壊することなくロッドの表面に突起22、28を押当てることによってロッドを固定させると、二次的な調整が可能となる。
【0020】
上述の実施例の変形例が実現可能である。たとえば、リブ状の突起22、28が、2つの要素のうちの一方、すなわち第1の押圧要素または第2の押圧要素にしか設けられなくてもよい。第1および第2の押圧要素の表面にリブ状の突起を設けるのではなく、一方の押圧要素上に突起を形成し、対応する窪みをもう一方の押圧要素に形成することができる。これにより、突起がロッドの表面に押当てられるとずれてしまう材料が対応する窪みに入り込んで形状適合接続をもたらすことが可能となる。突起および窪みは、両方の押圧要素上に設けられてもよい。有利には、突起および窪みの体積は、材料が移動し終わった後、受部との接続領域におけるロッドの体積が以前とほぼ同じ大きさになるように、同様であるかまたは同じ大きさである。従って、2つの押圧要素の接触面は、ロッドを囲み材料が制御されずに移動するのを防ぐケージに相当し、こうして、ロッドの全長を維持する。これはロッドを安全に適所に保持する。突起および/または窪みは、リブ状の構造である必要はないが、形状適合固定の所望の機能を達成するいかなる形状であってもよい。
【0021】
ロッドは円形の断面を有する必要はなく、楕円形、長方形または正方形の断面を有して
いてもよい。キャップ40は、ロッドが十分な剛性を有する場合には省かれてもよい。ロッドの弾性は多様であり得る。ロッドには、大いに可撓性があってもよく、またはほとんど可撓性がなくてもよい。ロッド面は、テクスチャ加工されていてもよく、または構造化されていてもよい。
【0022】
内部ねじ30について、すべての公知の変形例を用いることができる。これはまた、外側リングまたはナットの用途を含む。
【0023】
上述の実施例においては、骨固定要素は上部から受部に差込まれる。しかしながら、骨固定要素はまた、それが可能となるよう受部が構成されている場合、受部の底部から差込まれてもよい。
【0024】
骨固定要素の頭部およびシャフトは、接続可能な別個の部品として構成されてもよい。
この発明は骨固定要素としてのねじに限定されず、骨フックまたは他のいかなる骨固定要素とも実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明に従った骨固定要素の分解斜視図である。
【図2】図1の骨固定装置を組立てられた状態で示す断面図である。
【図3a】下方押圧要素を下方から示す斜視図である。
【図3b】下方押圧要素を上方から示す斜視図である。
【図3c】下方押圧要素を示す側面図である。
【図4a】骨固定装置の上方押圧要素を下方から示す斜視図である。
【図4b】上方押圧要素を上部から示す斜視図である。
【図4c】上方押圧要素を示す側面図である。
【図5】下方押圧要素の変形された実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 骨固定要素、2 シャンク、3 先端、4 頭部、5 窪み、6 受部、7 第1の端部、8 第2の端部、9 長手方向の軸、10 ボア、11 開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨固定装置であって、
骨または脊椎骨に固定されるべきシャンク(2)、および頭部(4)を含む固定要素(1)と、
少なくとも2つの固定要素を接続するための接続要素(20)と、
受部(6)とを含み、前記受部(6)は、前記受部において回動可能である前記頭部(4)を受ける第1の端部と、前記接続要素(20)を受けるための窪み(13)を含む第2の端部とを有し、前記骨固定装置はさらに、
前記受部(6)に前記頭部を固定するよう前記頭部(4)に押付ける第1の押圧要素(17)と、
前記接続要素を前記第1の押圧要素(17)に押当てるよう前記接続要素(20)に押付ける第2の押圧要素(23)とを含み、
前記接続要素(20)に面する少なくとも前記第1の押圧要素(17)または前記第2の押圧要素(23)の表面の輪郭は、前記接続要素の表面の輪郭からずれている、骨固定装置。
【請求項2】
前記接続要素(20)は弾性材料でできている、請求項1に記載の骨固定装置。
【請求項3】
前記接続要素はロッドである、請求項1または2に記載の骨固定装置。
【請求項4】
前記接続要素(20)に面する前記第1および第2の押圧要素(17、23)の表面は、前記接続要素の表面の輪郭からずれている、請求項1から3のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項5】
前記輪郭からのずれは突起および/または窪みである、請求項1から4のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項6】
前記輪郭からのずれはリブ状またはピン状の構造を有する、請求項1から5のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項7】
前記第1の押圧要素(17)は、前記接続要素を受ける窪み(19)を含み、前記第2の押圧要素(23)は、前記接続要素に面する窪み(27)を含み、前記第2の押圧要素(23)に圧力が加えられると、前記窪みが、前記接続要素(20)を囲むケージ状の構造を形成する、請求項1から6のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項8】
前記ケージ状の構造の断面は、前記接続要素(20)の断面よりもわずかに小さい、請求項1から7のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項9】
前記窪み(13)を閉じ、前記第2の押圧要素(23)に押付けるクロージャ要素(30)が設けられる、請求項1から8のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項10】
前記第1の押圧要素(17)または前記第2の押圧接続要素(20)の輪郭のずれは、前記接続要素の長手方向に対して垂直な方向に延在する、請求項1から9のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項11】
前記突起および窪みの体積は、実質的に互いに類似している、請求項1から10のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項12】
前記第1の押圧要素(17)および前記第2の押圧要素(23)は接触面(17a、2
6a)を含み、これを介して前記第1の押圧要素(17)が前記第2の押圧要素(23)に直接圧力を加える、請求項1から11のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項13】
前記接続要素(20)に面する前記第1の押圧要素(17)の表面は、組立てられ締められた状態で、前記受部(6)の前記接続要素を受けるための前記窪み(13)の上方に延在する、請求項1から12のいずれかに記載の骨固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−136196(P2007−136196A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310229(P2006−310229)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(592232384)ビーダーマン・モテーク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクタ・ハフツング (57)
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN MOTECH GMBH
【Fターム(参考)】