説明

骨延長治療用装置

【課題】 体外から骨に固定した固定部の移動を制御可能にするとともに、上記固定部が外力によって移動することがなく、目的の位置を保持することができるようにする。
【解決手段】 ケーシング1内に、磁性体で構成した内接ギアリング14とこれに偏心して相対回転可能にした内接ギアリング14とを設け、外接ギア7と一体的に回転するスクリューシャフト9と、その回転に伴って軸方向に移動する移動体12とを設け、この移動体12及びケーシング1の外周にはそれぞれ一対の固定部材23,24を設けるとともに、内接ギアリング14を外接ギア7の所定の位置に接触させる方向の接触力を作用させる永久磁石17の磁力と、保持体18に設け複数の電磁石19〜21の磁力との合成力によって内接ギアリング14揺動させ、この揺動に応じて外接ギア7及びスクリューシャフト9を回転ささせ、この回転によって固定部材23,24の間隔を広げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、骨折等の治療に用いる骨延長治療用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人や動物が骨折などによって失った骨の部分は、自身の骨の延長によって再建することができるが、そのために必要な距離だけ骨を移動させて骨の延長を図る様々な骨延長治療用装置が従来から知られている。
例えば、特許文献1〜3に記載された装置は、何れも、間隔を広げたい一対の骨にそれぞれ固定部を固定し、その間をスクリューシャフトで連結するとともに、このスクリューシャフトの回転によって、一方の固定部を他方の固定部に対して移動させ、上記両固定部間の距離を広げようとするものである。
【0003】
そして、特許文献1の装置は、スクリューシャフトに設けた操作部を体外に露出させ、この操作部を手動で回転させることによって上記固定部を移動させるようにしている。
また、特許文献2,3の装置は、体内に埋設した移動機構に対し、着脱自在にした駆動機構を利用してスクリューシャフトを回転させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−043203号公報
【特許文献2】特開2007−307051号公報
【特許文献3】特表2009−542272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された治療用装置は手動操作部が常時体外に露出しているため、手などが触れてスクリューシャフトを不用意に回転させてしまう可能性がある。
また、特許文献2,3に記載の装置も、駆動機構を取り外した状態で、スクリューシャフトの回転を止めるストッパ機構を備えていないため、体内外からの外力によってスクリューシャフトが回転してしまうことがある。
このように、スクリューシャフトが外力によって回転してしまうと、骨の位置がずれてしまい、治療が計画通りに進まないだけでなく、患者に苦痛を与えることもある。
【0006】
この発明の目的は、体内に設けた部材を体外に露出させることなく、体外から骨に固定した固定部の移動を制御可能にするとともに、上記固定部が外力によって移動することがなく、目的の位置を保持することができる骨延長治療用装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ケーシング内に、内接リングと、この内接リングに対して偏心して一部を接触させた外接部材を設け、これら内接リングと外接部材とはそれらの一部を接触した状態で相対回転可能にし、かつ、これら内接リングあるいは外接部材のいずれか一方には、上記内接リングあるいは外接部材の自転を防止する自転防止機構を設け、いずれか他方の上記内接リングあるいは外接部材には、自転可能な内接リングあるいは外接部材と一体的に回転するスクリューシャフトを連結し、このスクリューシャフトに移動体を相対回転可能にかみ合わせるとともに、上記スクリューシャフトが回転したとき、上記移動体を、その回転を阻止しながらスクリューシャフトの軸方向に沿って移動させるためのガイド機構を備え、上記ケーシングの外側には骨に固定するための固定部を設け、上記移動体にも骨に固定する固定部を設け、この移動体に設けた固定部をケーシングの外方に突出させている。
【0008】
また、上記内接リングと外接部材とを互いに所定の箇所で接触させるために、内接リングあるいは外接部材のうちのいずれか一方に常時一定の力を作用させる接触力付与手段を設け、かつ、上記内接リングあるいは外接部材のいずれか一方を磁性体で構成し、さらに、上記ケーシングとは分離して別部材とした保持体を備え、この保持体をケーシングに対向させた状態で、上記ケーシングから離れる方向に複数の電磁石を設け、これら電磁石は、磁性体で構成した内接リングあるいは外接部材に対して上記接触力付与手段の力に抗する方向の力を作用させる構成にするとともに、これら複数の電磁石を制御する制御手段を設け、この制御手段は、上記電磁石が発揮する磁力と上記接触力付与手段が発揮する力とを合成した半径方向の合成力を周方向に順次変化させる機能を備え、この順次変化させた合成力で内接リングあるいは外接部材のいずれか一方を揺動させて上記スクリューシャフトを回転し、このスクリューシャフトの回転で上記移動体を移動させることによって上記一対の固定部の間隔を大きくしながら骨延長治療を実行する点に特徴を有する。
なお、上記揺動とは、内接リングあるいは外接部材の中心がエンドレスの軌跡を描いて移動し、内接リングあるいは外接部材が揺れ動く運動のことである。また、この発明では、上記中心が自転するものと自転しないものの両方を含む。
【0009】
第2の発明は、第1の発明を前提とし、上記内接リングには揺動可能にした自転防止機構を設け、順次変化させた上記合成力によって内接リングを揺動させ、外接部材を自転させる構成にした。
【0010】
第3の発明は、第1の発明を前提とし、上記内接リングには自転及び揺動を防止する機構を設け、順次変化させた上記合成力によって上記外接部材を揺動させながら自転させる構成にした。
【0011】
第4の発明は、第1の発明を前提とし、上記外接部材には自転及び揺動を防止する機構を設け、順次変化させた上記合成力によって上記内接リングを揺動させながら自転させる構成にした。
【0012】
第5の発明は、第1の発明を前提とし、上記外接部材には揺動可能にした自転防止機構を設け、順次変化させた上記合成力によって上記内接リングを自転させる構成にした。
【発明の効果】
【0013】
第1〜第5の発明では、ケーシング内に設けた内接リングと外接部材とを所定の箇所で接触させる方向の接触力を作用させる接触力付与手段を設けているので、内接リングあるいは外接部材に上記電磁石による磁力が作用していないときにも、内接リングと外接部材とを所定の箇所で接触させることができ、この接触力によって両部材の相対回転が阻止される。そのため、スクリューシャフトが外力によって容易に回転して、移動体に設けた固定部が移動することを防止できる。
【0014】
また、上記接触力付与手段による接触力を常時作用させているので、電磁石を円周方向に均等に設ける必要がない。そのため、電磁石をケーシングの外周において、上記接触力に抗する方向の力を発揮する一方に集中的に設けることができる。
そして、保持体には、上記保持体をケーシングに対向させたとき、複数の電磁石がケーシングから離れる方向に設け、保持体をケーシングに対向させて、電磁石を励磁すれば、磁性体で形成された内接リングあるいは外接部材に、直径方向外方へ向かう磁力を作用させるようにしている。
【0015】
しかも、上記電磁石を設けた保持体を、ケーシングと別部材としているので、ケーシングを体内に設け、必要なときにだけ上記保持体を体外からケーシングに対向させ、電磁石を制御することによって固定部を設けた移動体を移動させることができる。
【0016】
さらに、外接部材は内接リングに対して偏心して接触し、いずれかの部材が、その中心がエンドレスの軌道を描いて1周する1揺動ごとに、内接リングと外接部材の歯数の差、あるいは内接リングの内周と外接部材の外周の差分だけ一方の部材が自転するようにしているので、揺動に対するスクリューシャフトの回転量が小さくなる。
そのため、スクリューシャフトの回転に伴って移動する移動体の軸方向の移動量を細かく制御することが可能になる。特に、両部材の周長の差を小さくすればするほど、スクリューシャフトの回転量をより細かく制御でき、移動体の位置を精度よく制御できることになる。
【0017】
第2、第3の発明によれば、外接部材に連結したスクリューシャフトの回転によって移動体を移動させることができる。
第4、第5の発明によれば、内接リングに連結したスクリューシャフトの回転によって移動体を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は第1実施形態の斜視図である。
【図2】図2は第1実施形態の断面図である。
【図3】図3は上記図2のIII-III線断面図である。
【図4】図4は第2実施形態の斜視図である。
【図5】図5は第2実施形態の断面図である。
【図6】図6は上記図5のVI-VI線断面図である。
【図7】図7は上記図5のVII-VII線断面図である。
【図8】図8は第3実施形態の断面図である。
【図9】図9は第4実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜3に示した第1実施形態は、軸方向に所定の長さを保った筒状のケーシング1の一端側に、一対の軸保持部材2,3を、間隔を保ってはめる一方、ケーシング1の他端にも軸保持部材4をはめている。
一対の軸保持部材2,3のうち外側に位置する軸保持部材2には軸受5をはめ、軸保持部材4にも軸受6をはめている。
【0020】
上記のように軸保持部材2にはめた軸受5は、この発明の外接部材であって、外周にギアを形成した外接ギア7の軸部8を回転自在に支持し、この外接ギア7を上記軸保持部材2,3間に保持している。また、上記外接ギア7であって、上記軸部8とは反対側にはスクリューシャフト9の軸部10を一体に設けるとともに、この軸部10は軸保持部材2,3のうちの内側に位置する軸保持部材3に回転自在に支持されている。
一方、上記スクリューシャフト9の先端に設けた軸部11は、上記軸受6に回転自在に支持されている。
【0021】
上記のようにしたスクリューシャフト9のスクリューには移動体12を噛み合わせているが、この移動体12は、ケーシング1の軸方向に沿って形成したこの発明のガイド機構であるガイド孔13からケース1の外方に突出している。そして、上記スクリューシャフト9が回転したとき、上記移動体12はガイド孔13に規制されて回転を阻止されるので、スクリューシャフト9の回転にともなって、移動体12はスクリューシャフト9の軸方向に移動する。
【0022】
さらに、上記外接ギア7の周囲には、磁性体からなり、内周にギアを形成した内接ギアリング14を設けている。言い換えると、外接ギア7を内接ギアリング14内に組み込んでいる。そして、これら内接ギアリング14と外接ギア7とは互いに偏心させるとともに、内接ギアリング14は、その中心がエンドレスの移動軌跡を描く揺動が可能な構成にしている。また、内接ギアリング14の歯数に対して外接ギア7の歯数を少なくし、これら内接ギアリング14と外接ギアリング7とはそれらの一部が互いにかみ合って相対回転可能にしている。
なお、上記内接ギアリング14がこの発明の内接リングを構成する。
【0023】
上記のようにした内接ギアリング14は、揺動はするがその自転を防止する自転防止機構を設けているが、この自転防止機構は、内接ギアリング14の側面に設けた規制ピン15と、上記軸保持部材2に形成した規制穴16とによって構成される。
すなわち、上記規制穴16の内径は、規制ピン15の外径よりも大きくし、これら規制穴16および規制ピン15によって、内接ギアリング14の自転を防止すとともに、中心がエンドレスの軌跡を描く内接ギアリング14の揺動を許容する。
【0024】
さらに、上記ケーシング1の一箇所には、この発明の接触力付与手段である永久磁石17を設け、この永久磁石17の磁力を、磁性体である内接ギアリング14に作用させられるようにしている。
そして、上記永久磁石17の磁力が内接ギアリング14に作用すると、当該内接ギアリング14は永久磁石17側に引き寄せられ、永久磁石17とは反対側において、図3に示すように内接ギアリング14と外接ギア7とをかみ合わせる。
【0025】
一方、上記ケーシング1の外形に沿う凹部18aを備えた半円状の保持体18を設け、この保持体18には3つの電磁石19〜21を設けるとともに、これらいずれの電磁石19〜21を励磁させるタイミングを制御する図示していない制御手段を設けている。
なお、上記保持体18には、上記凹部18aをケーシング1に対向させた状態で、ケーシング1から離れる方向に電磁石19〜21を設けている。
また、上記スクリューシャフト9に噛み合わせた移動体12には、骨に固定するための固定部である固定部材23を設けるとともに、この固定部材23と同一直線状で対向するケーシング1の外側にも骨に固定するための固定部材24を設けている。これら各固定部材23,24は、それぞれビス孔23a,24aを備え、このビス孔23a,24aを利用し、上記固定部材23,24を骨にビス止めして用いる。
なお、図1では上記一対の固定部材23,24を省略している。
【0026】
次に、外接ギア7を回転させて、上記移動体12を軸方向に移動させる場合について説明する。
なお、この実施形態では、上記ケーシング1を患者の体内に設け、上記一対の固定部材23、24を、それぞれ、間隔を大きくしたい一対の骨にビス止めしている。
先ず、上記保持体18の凹部18aを、永久磁石17とは反対側においてケーシング1に対向させ、図3に示すように、永久磁石17と反対側における半円内に電磁石19〜21を集中的に等間隔で配置された状態にする。このように、保持体18の凹部18aを永久磁石17と反対側に対向させるために、上記ケーシング1を体内に設置する際に、永久磁石17を皮膚と反対側に位置させておく必要がある。
このとき、電磁石19〜21を非励磁状態に保っていれば、内接ギアリング14は、永久磁石17にひきつけられて、この永久磁石17とは反対側において、内接ギアリング14と外接ギア7とがかみ合う。
【0027】
上記の状態から制御手段を用いて、電磁石19〜21を円周方向に順に励磁させていけば、内接ギアリング14は、永久磁石17の吸引力と、励磁された電磁石19〜21の吸引力とによる半径方向の合成力が円周方向に変化していく。この変化する合成力によって、内接ギアリング14は、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動運動をする。内接ギアリング14が上記のように揺動運動すれば、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置が円周方向に順次ずれ、上記エンドレスの軌跡が1周する1揺動したとき、外接ギア7は、内接ギアリング14との歯数の差分だけ回転することになる。
【0028】
例えば、上記電磁石19〜21の全てが非励磁の図3の状態から、電磁石19のみを励磁すると、この電磁石19の磁力と上記永久磁石17の磁力との合成力は、上記電磁石19の磁力と上記永久磁石17との中間から外側に向かう力となって、上記電磁石19と上記永久磁石17との中間において上記内接ギアリング14をケーシング1側に引き付ける。次に、電磁石20を励磁すると、上記永久磁石17、電磁石19、及び電磁石20の磁力の合成力が、上記永久磁石17と電磁石19との合成力よりも、永久磁石17から離れた位置に作用して、内接ギアリング14を引き付ける。
さらに、電磁磁石21を励磁すれば、この電磁石21の磁力が加わった合成力が、永久磁石17と反対方向、すなわち電磁石20の方向に作用して、内接ギアリング14を引き付ける。
【0029】
次に、上記電磁石19を非励磁にすると、合成力の方向は電磁石20よりも電磁石21側に移動する。同様に電磁石20を非励磁、次に電磁石21を順次非励磁にすれば、上記合成力の方向は円周方向に移動し、全てが非励磁の図3の状態に戻る。このように、永久磁石17の磁力と、電磁石19〜21の磁力との合成力の方向が円周に沿って移動すると、この合成力の方向と反対側で接触する内接ギアリング14と外接ギア7との接触位置も移動し、その1周ごとに、上記外接ギア7が、内接ギアリング14との歯数の差分だけ回転することになる。
【0030】
また、上記のように電磁石19〜21を円周方向に順次励磁させていくが、このとき、いずれかの電磁石を同時に励磁させたり、それらの磁力の大きさを個々に制御したりすることによって、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置を無段階的に円周方向に移動させて、よりスムーズな回転力を得ることができる。
なお、上記電磁石の制御方法は、上記の例に限らず、よりスムーズな回転力を得るためには、様々な方法が考えられる。
上記のようにして外接ギア7が回転すれば、それにともなってスクリューシャフト9が回転するとともに、ガイド孔13で回転を規制された移動体12がスクリューシャフト9に沿って移動する。
【0031】
そして、スクリューシャフト9の回転方向に応じて移動体12を図の矢印x方向に移動させれば、移動体12に設けた固定部材23とケーシング1に設けた固定部材24との間隔が大きくなり、骨の間隔を広げることができる。上記外接ギア7及びスクリューシャフト9の回転方向は、上記電磁石19〜21の励磁タイミングによって制御可能である。
なお、図3では上記保持体18の凹部18aとケーシング1の外周とが密着して示されているが、この第1実施形態の装置を骨延長治療に使用する際には、上記凹部18aとケーシング1との間には患者の皮膚が介在する。
【0032】
また、この第1実施形態の骨延長治療用装置は、上記したように電磁石19〜21を非励磁状態にしているときに、接触力付与手段である上記永久磁石17の吸引力によって内接ギアリング14と外接ギア7とがかみ合っている。そのため、外力によって内接ギアリング14と外接ギア7とが相対回転することがなく、移動体12の位置を保持することができる。従って、移動体1に設けた固定部材23が移動して、一対の固定部材23,24の間隔が変わってしまうようなことがない。
【0033】
図4〜7に示した第2実施形態は、磁性体からなる内接ギアリング14が揺動回転する構成にしたもので、図5〜7は、電磁石19〜21の合成力が、永久磁石17の吸引力とは正反対に作用している状態を示している。
なお、上記揺動運動とは、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動運動をしながら自転する運動のことである。
この第2実施形態では、内接ギアリング14を、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動可能な状態でしかも自転可能にしてケーシング1に組み込んでいる。
【0034】
上記のようにした内接ギアリング14には、それよりも歯数を少なくした外接ギア7を、内接ギアリング14に対して偏心させて組み込んでいるが、この外接ギア7には軸部22を設け、この軸部22をケーシング1に固定している。なお、この軸部22とそれを固定したケーシング1とでこの発明の自転防止機構を構成するものである。
そして、上記内接ギアリング14にはスクリューシャフト9を一体に設けるとともに、このスクリューシャフト9の先端に設けた軸部11が、第1実施形態と同じように軸保持体4に設けた軸受6に支持されている。ただし、この軸受6の内径は軸部11の内径よりも大きくし、軸部11の中心が、内接ギアリング14の中心が描く移動軌跡と同じ軌跡を描いて揺動できるようにしている。
【0035】
上記スクリューシャフト9には移動体12を設けているが、この移動体12はスクリューシャフト9に直接はめた移動部12aとこの移動部12aに取付けた出力部12bとからなる。そして、出力部12bと移動部12aとの間には、すき間12cを形成し、このすき間12cの範囲内で移動部12aと出力部12bとが相対移動してスクリューシャフト9の揺動を吸収するようにしている。
さらに、上記出力部12bには、骨に固定するための固定部である固定部材23を設けるとともに、この固定部材23と同一直線状で対向するケーシング1の外側にも骨に固定するための固定部材24を設けている。これら各固定部材23,24は、それぞれビス孔23a,24aを備え、このビス孔23a,24aを利用し、上記固定部材23,24を骨にビス止めして使用する。
なお、図4では上記一対の固定部材23,24を省略している。
【0036】
なお、図中符号12dは出力部12bの側面に形成した溝で、この溝12dとガイド孔13の縁とがはまって、出力部12bがガイド孔13から抜け出るのを防止しながら、移動体12の回転を規制している。
また、凹部18aを有する保持体18に複数の電磁石19〜21を保持させている点は、第1実施形態とまったく同じである。
【0037】
このようにした第2実施形態においても、内接ギアリング14が、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動運動するとともに、内接ギアリング14と外接ギア7とが相対回転する原理は第1実施形態と同じである。
すなわち、上記保持体18を、この発明の接触力付与手段である永久磁石17とは反対側においてケーシング1に対向させ、図6に示すように、永久磁石17と反対側における半円内に電磁石19〜21を集中的に等間隔で配置された状態にする。
このとき、電磁石19〜21を非励磁状態に保っていれば、内接ギアリング14は、永久磁石17にひきつけられて、この永久磁石17とは反対側において、内接ギアリング14と外接ギア7とがかみ合う。
【0038】
上記の状態から制御手段を用いて、電磁石19〜21を円周方向に順に励磁させていけば、内接ギアリング14は、永久磁石17の吸引力と、励磁された電磁石19〜21の吸引力とによる半径方向の合成力が円周方向に変化していく。この変化する合成力によって、内接ギアリング14は、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動運動をする。内接ギアリング14が上記のように揺動運動すれば、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置が円周方向に順次ずれ、上記エンドレスの軌跡が1周する1揺動したとき、内接ギアリング14は、外接ギア7との歯数の差分だけ回転することになる。
【0039】
また、上記のように電磁石19〜21を円周方向に順次励磁させていくが、このとき、いずれかの電磁石を同時に励磁させたり、それらの励磁力を制御したりすることによって、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置を無段階的に円周方向に移動させて、よりスムーズに回転させることができる。
上記のように内接ギアリング14が揺動回転すれば、スクリューシャフト9も揺動回転するので、その回転にともなって移動体12がスクリューシャフト9に沿って移動する。なお、このときには、移動部12aも揺動するが、その揺動は上記すき間12cで吸収される。
【0040】
この第2実施形態においても、上記移動体12が図の矢印x方向、すなわちケーシング1に設けた固定部材24から離れる方向に移動するようにスクリューシャフト9の回転方向を制御して、各固定部材23,24に固定した骨の間隔を広げることができる。
なお、図6では上記保持体18の凹部18aとケーシング1の外周とが密着して示されているが、この第2実施形態の装置を骨延長治療に使用する際には、上記凹部18aとケーシング1との間には患者の皮膚が介在する。
【0041】
また、この第2実施形態の骨延長治療用装置も、上記したように電磁石19〜21を非励磁状態にしているときに、接触力付与手段である上記永久磁石17の吸引力によって内接ギアリング14と外接ギア7とがかみ合っている。そのため、外力によって内接ギアリング14と外接ギア7とが相対回転することがなく、移動体12の位置を保持することができる。従って、移動体1に設けた固定部材23が移動して、一対の固定部材23,24の間隔が変わってしまうようなことがない。
【0042】
図8に示した第3実施形態は、ケーシング1に内接ギアリング14を回転自在に組み込むとともに、この内接ギアリング14の一方の側面にスクリューシャフト9を一体に設けている。さらに、このスクリューシャフト9の先端の軸部11を、第1実施形態と同じ構成の軸受6に回転自在に支持させている。
【0043】
また、上記スクリューシャフト9には、第1実施形態と同じ移動体12を噛み合わせている。
そして、上記スクリューシャフト9に合わせた移動体12には、骨に固定するための固定部である固定部材23を設けるとともに、この固定部材23と同一直線状で対向するケーシング1の外側にも固定部である固定部材24を設けている。これら各固定部材23,24は、それぞれビス孔23a,24aを備え、このビス孔23a,24aを利用し、上記固定部材23,24を骨にビス止めして使用する点も、第1実施形態と同じである。
【0044】
一方、上記内接ギアリング14には、それよりも歯数を少なくした外接ギア7を、内接ギアリング14に対して偏心させて組み込むとともに、この外接ギア7には上記内接ギアリング14とは反対側である外側に突出させた揺動体7aを一体に設けている。
そして、上記揺動体7aの外径は外接ギア7よりも大きくし、その外接ギア7および揺動体7aの揺動過程で、当該揺動体7aがケーシング1に接触しながら揺動する大きさを保っている。
なお、上記外接ギア7および揺動体7aは一体的にしてそれら両者を磁性体で構成しているが、外接ギア7と揺動体7aとを別体にして、少なくとも揺動体7aのみを磁性体で構成してもよい。
【0045】
上記のようにした揺動体7aの外側すなわち外接ギア7とは反対側面に軸部8を設け、この軸部8を第1実施形態と同様の軸受5に支持させている。ただし、この軸受5の内径は軸部8の内径よりも大きくし、軸部8の中心が、外接ギア7の中心が描く移動軌跡と同じ軌跡を描いて揺動できるようにしている。
【0046】
さらに、上記揺動体7aには、揺動はするがその自転を防止する自転防止機構を設けている。この自転防止機構は、揺動体7aの側面に設けた規制ピン15と、上記軸保持部材2に形成した規制穴16とによって構成される。
すなわち、上記規制穴16の内径は、規制ピン15の外径よりも大きくし、これら規制穴16および規制ピン15によって、外接ギア7の自転を防止するとともに、中心がエンドレスの軌跡を描く外接ギア7の揺動を許容する。
【0047】
さらに、上記ケーシング1の一箇所であって、上記揺動体7aに対応する位置には、この発明の接触力付与手段である永久磁石17を設け、この永久磁石17の磁力を、磁性体である揺動体7aに作用させられるようにしている。
そして、上記永久磁石17の磁力が揺動体7aに作用すると、当該揺動体7aは永久磁石17側に引き寄せられ、この永久磁石17側において、内接ギアリング14と外接ギア7とをかみ合わせる。
【0048】
そして、第1実施形態と同じ構成にした保持体18の凹部18aを、永久磁石17とは反対側においてケーシング1に対向させ、永久磁石17と反対側における半円内に電磁石19〜21を集中的に等間隔で配置された状態にする。
このとき、電磁石19〜21を非励磁状態に保っていれば、上記したように外接ギア7は揺動体7aとともに永久磁石17にひきつけられて、この永久磁石17側において、内接ギアリング14と外接ギア7とをかみ合わせる。
【0049】
上記の状態から第1実施形態と同じ制御手段を用いて、電磁石19〜21を円周方向に順に励磁させていけば、外接ギア7は、永久磁石17の吸引力と、励磁された電磁石19〜21の吸引力とによる半径方向の合成力が円周方向に変化していく。この変化する合成力によって、外接ギア7は、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動運動をする。外接ギア7が上記のように揺動運動すれば、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置が円周方向に順次ずれ、上記エンドレスの軌跡が1周する1揺動したとき、内接ギアリング14は、外接ギア7との歯数の差分だけ回転することになる。
【0050】
また、上記のように電磁石19〜21を円周方向に順次励磁させていくが、このとき、いずれかの電磁石を同時に励磁させたり、それらの励磁力を制御したりすることによって、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置を無段階的に円周方向に移動させて、よりスムーズな回転力を得ることができる。
上記のように内接ギアリング14が回転すれば、スクリューシャフト9も回転するので、その回転にともなって移動体12がスクリューシャフト9に沿って移動する。
【0051】
この第3実施形態においても、上記移動体12が図の矢印x方向、すなわちケーシング1に設けた固定部材24から離れる方向に移動するようにスクリューシャフト9の回転方向を制御して、各固定部材23,24に固定した骨の間隔を広げることができる。
また、この第3実施形態の骨延長治療用装置も、上記したように電磁石19〜21を非励磁状態にしているときに、接触力付与手段である上記永久磁石17の吸引力によって内接ギアリング14と外接ギア7とがかみ合っている。そのため、外力によって内接ギアリング14と外接ギア7とが相対回転することがなく、移動体12の位置を保持することができる。従って、移動体1に設けた固定部材23が移動して、一対の固定部材23,24の間隔が変わってしまうようなことがない。
【0052】
図9に示した第4実施形態は、磁性体からなる外接ギア7が揺動回転する構成にしたもので、図9は、電磁石19〜21の合成力が、永久磁石17の吸引力とは正反対に作用している状態を示している。
なお、上記揺動運動とは、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動運動をしながら自転する運動のことである。
この第4実施形態では、ケーシング1に内接ギアリング14を組み込んで固定しているが、このように内接ギアリング14をケーシング1に固定する構造が、この発明の自転防止機構を構成することになる。
【0053】
上記ケーシング1に固定した内接ギアリング14には、それよりも歯数を少なくした磁性体からなる外接ギア7を、内接ギアリング14に対して偏心させて組み込み、第1実施形態と同様の原理のもとで、外接ギア7は内接ギアリング14に対して揺動回転可能にしている。
上記のようにした外接ギア7の外側面には軸部8を設け、この軸部8を第1実施形態と同様の軸受5に支持させている。ただし、この軸受5の内径は軸部8の内径よりも大きくし、軸部8の中心が、外接ギア7の中心が描く移動軌跡と同じ軌跡を描いて揺動できるようにしている。
【0054】
また、上記外接ギア7であって上記軸部8とは反対側面に揺動体7aを一体に設けているが、この揺動体7aの外径は外接ギア7よりも大きくし、その外接ギア7および揺動体7aが揺動回転する過程で、当該揺動体7aがケーシング1に接触しながら揺動回転できるようにしている。
なお、上記外接ギア7および揺動体7aは一体的にしてそれら両者を磁性体で構成しているが、外接ギア7と揺動体7aとを別体にして、少なくとも揺動体7aのみを磁性体で構成してもよい。
【0055】
また、上記揺動体7aの一方の側面すなわち上記軸部8とは反対側面にスクリューシャフト9を一体に設けている。さらに、このスクリューシャフト9の先端の軸部11を、第1実施形態と同じ構成の軸受6に回転自在に支持させている。ただし、この軸受6の内径は軸部11の内径よりも大きくし、軸部11の中心が、外接ギア7の中心が描く移動軌跡と同じ軌跡を描いて揺動回転できるようにしている。
【0056】
そして、上記スクリューシャフト9には、第2実施形態と同じ移動体12を噛み合わせている。
また、上記移動体12の出力部12bには、骨に固定するための固定部である固定部材23を設けるとともに、この固定部材23と同一直線状で対向するケーシング1の外側にも固定部である固定部材24を設けている。これら各固定部材23,24は、それぞれビス孔23a,24aを備え、このビス孔23a,24aを利用し、上記固定部材23,24を骨にビス止めして使用する点も、第2実施形態と同じである。
【0057】
さらに、上記ケーシング1の一箇所であって、上記揺動体7aに対応する位置には、この発明の接触力付与手段である永久磁石17を設け、この永久磁石17の磁力を、揺動体7aに作用させられるようにしている。
そして、上記永久磁石17の磁力が揺動体7aに作用すると、当該揺動体7aは永久磁石17側に引き寄せられ、この永久磁石17側において、内接ギアリング14と外接ギア7とをかみ合わせる。
【0058】
そして、第1実施形態と同じ構成にした保持体18の凹部18aを、永久磁石17とは反対側においてケーシング1に対向させ、永久磁石17と反対側における半円内に電磁石19〜21を集中的に等間隔で配置された状態にする。
このとき、電磁石19〜21を非励磁状態に保っていれば、上記したように外接ギア7は揺動体7aとともに永久磁石17にひきつけられて、この永久磁石17側において、内接ギアリング14と外接ギア7とをかみ合わせる。
【0059】
上記の状態から第1実施形態と同じ制御手段を用いて、電磁石19〜21を円周方向に順に励磁させていけば、外接ギア7は、永久磁石17の吸引力と、励磁された電磁石19〜21の吸引力とによる半径方向の合成力が円周方向に変化していく。この変化する合成力によって、外接ギア7は、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動回転運動をする。外接ギア7が上記のように揺動回転運動をすれば、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置が円周方向に順次ずれ、上記エンドレスの軌跡が1周する1揺動したとき、内接ギアリング14と外接ギア7とはその歯数の差分だけ相対回転することになる。
【0060】
また、上記のように電磁石19〜21を円周方向に順次励磁させていくが、このとき、いずれかの電磁石を同時に励磁させたり、それらの励磁力を制御したりすることによって、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置を無段階的に円周方向に移動させて、よりスムーズな回転力を得ることができる。
上記のように外接ギア7が揺動回転すれば、スクリューシャフト9も揺動回転するので、その回転にともなって移動体12がスクリューシャフト9に沿って移動する。
なお、移動体12の出力部12bと移動部12aとの間には、第2実施形態と同じすき間12cを形成しているので、このすき間12cの範囲内で移動部12aと出力部12bとが相対移動してスクリューシャフト9の揺動を吸収する。
【0061】
そして、この第4実施形態においても、上記移動体12が図の矢印x方向、すなわちケーシング1に設けた固定部材24から離れる方向に移動するようにスクリューシャフト9の回転方向を制御して、各固定部材23,24に固定した骨の間隔を広げることができる。
また、この第1実施形態の骨延長治療用装置は、上記したように電磁石19〜21を非励磁状態にしているときに、接触力付与手段である上記永久磁石17の吸引力によって内接ギアリング14と外接ギア7とがかみ合っている。そのため、外力によって内接ギアリング14と外接ギア7とが相対回転することがなく、移動体12の位置を保持することができる。従って、移動体1に設けた固定部材23が移動して、一対の固定部材23,24の間隔が変わってしまうようなことがない。
【0062】
上記第1〜第4実施形態の保持体18は、ケーシングの外周に対応した凹部18aを備えているので、この凹部18aとケーシングとの間に皮膚などがあったとしても、互いを対応させ易く、しかも、保持体18とケーシング1とを接近させることができる。従って、磁性体で形成した内接リングあるいは外接部材に対して電磁石の磁力をより効率的に作用させることができる。
但し、保持体18の形状は上記凹部18aを形成したものに限らない。例えば、板状の保持体から先端を突出させて複数の電磁石を設け、複数の電磁石が図示のように放射状に配置されるようにしてもよい。
【0063】
また、上記各実施形態において、内接ギアリング14あるいは外接ギア7を揺動させるために、電磁石19〜21の磁力を利用しているので、これら電磁石19〜21と磁性体で構成した内接ギアリング14あるいは外接ギア7とを直接接触させる必要がない。そのため、体内に設置したケーシング1内の部材を体外に露出させなくても、体外から磁力によってスクリュー軸9を回転させることができる。
さらに、上記電磁石19〜21を、ケーシング1と別部材とした保持部体18に設けているので、患者の体内に設けたケーシング1に対して、必要なときにのみ体外から保持体18をケーシング1に近づけることができる。
【0064】
なお、上記各実施形態では、接触力付与手段として永久磁石17の引力を利用したが、この永久磁石の斥力を利用してもよい。この場合には、例えば、図3に示した永久磁石17を、内接ギアリング14を挟んで直径方向反対側に設けるとともに、内接ギアリング14の周囲に永久磁石を設ける。そして、上記永久磁石17と、内接ギアリング14の永久磁石との間に斥力が発生するように、両永久磁石の磁極を配置する。
このようにすれば、電磁石19〜21を制御して、第1実施形態と同様に外接ギア7を回転させることができる。
【0065】
また、上記の場合には、永久磁石17も保持体18側に位置させられるので、永久磁石17と電磁石19〜21の全てを上記保持体18側にまとめることができ、保持体18とは反対側をスペース的に開放することができる。
なお、永久磁石の斥力を利用する考え方は、第2〜4実施形態の全てに利用できること当然である。
【0066】
さらに、接触力付与手段としてスプリングを用い、このスプリングの弾性力を利用して、押圧力あるいは引っ張り力を発揮させるようにしてもよい。そして、このスプリングの押圧力を利用する場合には、上記スプリングを上記電磁石19〜21とともに保持体18側にまとめることができる。
但し、上記接触力付与手段となる永久磁石やスプリングは、上記保持対18ではなくケーシング1側に取り付ける必要がある。このようにケーシング側に、接触力付与手段を取り付けることによって、ケーシング1から保持体18を分離した状態でも、内接ギアリング14及び外接ギア7に接触力を作用させることができる。
【0067】
また、上記各実施形態では、内接ギアリングおよび外接ギアというようにギアを用いたが、内接リングおよび外接部材として、お互いの摩擦力さえ維持できれば、どのようなものであってもよい。そして、ギアを備えていない内接リング及び外接部材であっても、上記接触力付与手段による接触力を作用させれば、電磁石19〜21の磁力を作用させていないときにでも、内接リング及び外接部材の接触箇所における摩擦力が大きくなり、外力によって容易に相対回転することはなくなる。つまり、不用意に固定部が移動することを防止できる。
【0068】
さらに、上記各実施形態では、内接ギアリング14と外接ギア7の何れかを、電磁石19〜21の吸引力を利用して揺動させることによって、スクリューシャフト9を連結した部材を回転させているので、内接ギアリング14あるいは外接ギア7の中心が上記エンドレスの移動軌跡を描いて1周する1揺動ごとに、スクリューシャフト9が両ギアの歯数差分だけ回転することになる。そのため、電磁石19〜21を順次励磁させて移動する両ギアの接触位置の移動に比べて、上記スクリューシャフト9の回転量が小さくなる。
従って、回転量を細かく制御することができ、結果として移動体12の位置も精度よく制御できる。
この点は、内接リング及び外接部材がギアを備えていない場合にも同様にいえることである。すなわち、内接リングと外接リングとのいずれかが1揺動するごとに、内接リングの内周と外接部材の外周との差分だけ、両部材が相対回転することになるので、スクリューシャフトの回転量を細かく制御できる。特に、内接リングの内周と外接部材の外周との差を小さくすれば、移動体の位置、すなわち固定部の位置決め精度をさらに上げることができる。
【0069】
なお、この発明の骨延長治療用装置は、骨折に限らず、隣り合う骨の間隔を広げることが必要なさまざまな治療に有用である。例えば、生まれつき特定の骨の寸法が小さいために不都合が生じる場合、その骨を途中で切断し、切断部分に隙間を作ることによって骨の成長を促す治療を行なうことがある。このような治療においても、骨の切断部分の隙間を作るために上記骨延長治療装置を用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 ケーシング
7 (外接部材である)外接ギア
9 スクリューシャフト
12 移動体
14 (内接リングである)内接ギアリング
15 (自転防止機構を構成する)規制ピン
16 (自転防止機構を構成する)規制穴
17 (接触力付与手段である)永久磁石
18 保持体
19 電磁石
20 電磁石
21 電磁石
23 固定部材
24 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に、内接リングと、この内接リングに対して偏心して一部を接触させた外接部材を設け、これら内接リングと外接部材とはそれらの一部を接触した状態で相対回転可能にし、かつ、これら内接リングあるいは外接部材のいずれか一方には、上記内接リングあるいは外接部材の自転を防止する自転防止機構を設け、いずれか他方の上記内接リングあるいは外接部材には、自転可能な内接リングあるいは外接部材と一体的に回転するスクリューシャフトを連結し、このスクリューシャフトに移動体を相対回転可能にかみ合わせるとともに、上記スクリューシャフトが回転したとき、上記移動体を、その回転を阻止しながらスクリューシャフトの軸方向に沿って移動させるためのガイド機構を備え、上記ケーシングの外側には骨に固定するための固定部を設け、上記移動体にも骨に固定する固定部を設け、この移動体に設けた固定部をケーシングの外方に突出させ、また、上記内接リングと外接部材とを互いに所定の箇所で接触させるために、内接リングあるいは外接部材のうちのいずれか一方に常時一定の力を作用させる接触力付与手段を設け、かつ、上記内接リングあるいは外接部材のいずれか一方を磁性体で構成し、さらに、上記ケーシングとは分離して別部材とした保持体を備え、この保持体をケーシングに対向させた状態で、上記ケーシングから離れる方向に複数の電磁石を設け、これら電磁石は、磁性体で構成した内接リングあるいは外接部材に対して上記接触力付与手段の力に抗する方向の力を作用させる構成にするとともに、これら複数の電磁石を制御する制御手段を設け、この制御手段は、上記電磁石が発揮する磁力と上記接触力付与手段が発揮する力とを合成した半径方向の合成力を周方向に順次変化させる機能を備え、この順次変化させた合成力で内接リングあるいは外接部材のいずれか一方を揺動させて上記スクリューシャフトを回転し、このスクリューシャフトの回転で上記移動体を移動させることによって上記一対の固定部の間隔を大きくしながら骨延長治療を実行する骨延長治療用装置。
【請求項2】
内接リングには揺動可能にした自転防止機構を設け、順次変化させた上記合成力によって内接リングを揺動させ、外接部材を自転させる構成にした請求項1に記載の骨延長治療用装置。
【請求項3】
内接リングには自転及び揺動を防止する機構を設け、順次変化させた上記合成力によって上記外接部材を揺動させながら自転させる構成にした請求項1に記載の骨延長治療用装置。
【請求項4】
外接部材には自転及び揺動を防止する機構を設け、順次変化させた上記合成力によって上記内接リングを揺動させながら自転させる構成にした請求項1に記載の骨延長治療用装置。
【請求項5】
外接部材には揺動可能にした自転防止機構を設け、順次変化させた上記合成力によって上記内接リングを自転させる構成にした請求項1に記載の骨延長治療用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−20065(P2012−20065A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162115(P2010−162115)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000110206)トックベアリング株式会社 (83)
【Fターム(参考)】