説明

骨形態形成タンパク質(BMP)及びトランスフォーミング増殖因子−βタンパク質(TGF−β)の発現を細胞において誘導する方法

1以上の骨形態形成タンパク質又はトランスフォーミング増殖因子−βタンパク質の発現を細胞において誘導する方法について記載する。本方法には、プロモーターへ機能可能的に連結したLIM石灰化タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離核酸で細胞をトランスフェクトすることが含まれる。1以上の骨形態形成タンパク質は、BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7、又はこれらの組合せであり得る。トランスフォーミング増殖因子−βタンパク質は、トランスフォーミング増殖因子−β1タンパク質(TGF−β1)であり得る。トランスフェクションは、ウイルス又は裸のDNAの直接注射により、又はプラスミドのような非ウイルスベクターにより、ex vivo 又は in vivo で達成することができる。本方法を使用して、骨性細胞において骨形成を誘導して、プロテオグリカン及び/又はコラーゲンを産生することが可能な細胞(例、椎間板細胞)においてプロテオグリカン及び/又はコラーゲン産生を刺激することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明の分野は、遺伝物質で細胞をトランスフェクトする方法に概して関する。より具体的には、本発明の分野は、LIM石灰化(mineralization)タンパク質(LMP)をコードする核酸で細胞をトランスフェクトすることによって、1以上の骨形態形成タンパク質(BMP)及び/又はトランスフォーミング増殖因子−βタンパク質(TGF−β)の発現を誘導する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
骨芽細胞は、多能性の間葉幹細胞より分化すると考えられている。骨芽細胞の成熟化は、石灰化して骨を形成することができる細胞外マトリックスの分泌をもたらす。この複雑なプロセスの調節は、十分には理解されていないが、骨形態形成タンパク質(BMP)として知られる一群のシグナル伝達糖タンパク質が関与すると考えられている。これらのタンパク質は、胚の背側−腹側パターン形成、肢芽発生、及び成体動物における骨折修復に関与することが示されている。B. L. Hogan, Genes & Develop., 10, 1580 (1996)。このトランスフォーミング増殖因子−βスーパーファミリー分泌タンパク質の群は、多様な細胞種において、様々な分化の段階で、多様な活性を有するが、これらの近縁分子間の生理活性における違いは、明確にされていない(D. M. Kingsley, Trends Genet., 10, 16 (1994)。
【0003】
ラット頭蓋冠の骨芽細胞分化の誘導に対するBMP−6、BMP−2及びBMP−4の効果が検討された(Boden, et al., Endocrinology, 137, 3401 (1996))。分化の始動にBMPやグルココルチコイドを必要とする胎児ラット頭蓋冠の培養物において、グルココルチコイドは、骨芽細胞分化を高めるBMP−6 mRNA及びタンパク質の発現の10倍の誘導をもたらした(Boden, et al., Endocrinology, 138, 2920 (1997))。
【0004】
BMPは、in vivo での骨形成の刺激について検討されてきた。BMPや他の細胞外シグナル伝達分子で達成された初期の成功にもかかわらず、その使用には欠点がある。例えば、新しい骨の産生を高めるには、比較的多量の精製BMPが必要とされ、それによりそのような治療法の費用は増加する。さらに、BMPのような細胞外タンパク質は、宿主動物への導入後に分解を受けやすい。
【0005】
細胞内のシグナル又は調節分子も、骨誘導経路においてある役割を担う可能性がある。1群の細胞内調節分子は、LIMドメインとして知られる特徴的な構造モチーフを保有するLIMタンパク質である。LIMドメインは、2−アミノ酸スペーサーにより結合している2つの特殊なジンクフィンガーからなるシステインリッチの構造モチーフである。LIMドメインだけを有するタンパク質もあれば、多様な追加の機能性ドメインを含有するものもある。LIMタンパク質は多様な群を形成し、それには転写因子と細胞骨格タンパク質が含まれる。LIMドメインの主要な役割は、同じか又は異なるLIMドメインとの二量体の形成によるか、又は別個のタンパク質を結合させることによって、タンパク質−タンパク質相互作用に仲介することであるようだ。
【0006】
LIMホメオドメインタンパク質(LIMドメインとホメオドメイン配列の両方を有するタンパク質)において、LIMドメインは、負の調節要素として機能する。LIMホメオドメインタンパク質は、細胞系譜決定の制御と分化の調節に関与するが、LIMのみのタンパク質も同様の役割を有する可能性がある。LIMのみのタンパク質はまた、そのようなタンパク質をコードするいくつかの遺伝子が腫瘍遺伝子の染色体転座と関連しているので、細胞増殖の制御に関連しているかもしれない。
【0007】
ヒトや他の哺乳動物腫は、骨修復及び/又は再生のプロセスを必要とする疾患又は損傷を受けやすい。例えば、骨折の治療は、天然の骨修復機序を刺激することができて、それにより骨折した骨が治癒するのに必要とされる時間を短縮する、新しい治療方式によって改善されるだろう。骨粗鬆症のような全身の骨障害のある個体は、新たな骨組織の全身的な形成を産生する治療方式から利益を受けるだろう。そのような治療方式は、この疾患の特徴である骨量の損失より生じる骨折の発症を抑えることができるだろう。
【0008】
細胞内シグナル伝達分子を使用して新たな骨形成を誘導する治療方式を利用することは、望ましいであろう。遺伝子治療技術は、骨形成に仲介する細胞内シグナルをコードするヌクレオチド断片を骨形成前駆細胞(骨形成に関与する細胞)又は末梢血白血球へ導入することを可能にする。遺伝子治療は、いくつかの潜在的な利点を提供する:(1)標的療法タンパク質の産生に関連したコストがより低いこと;(2)細胞内シグナルの延長された発現を達成する能力により、細胞外の治療方式に比べて効果が高いこと;(3)標的細胞に対する効果が、治療タンパク質と相互作用するために利用可能な限定数の受容体によって限定されないこと;(4)トランスフェクトされた骨前駆細胞を、局在的な骨形成が必要とされる部位へ直接送達し得ること;並びに(5)治療を全身的に提供して、全身の骨形成を誘導し、骨粗鬆症や他の代謝性骨疾患への治療方式を提供し得ること。
【0009】
ヒトや他の哺乳動物は、椎間板変性、関連した腰痛、椎間板ヘルニア、及び脊椎狭窄を受けやすい。椎間板変性は、椎間板を生物機械的な損傷及び変性により罹りやすくさせる可能性がある、プロテオグリカンマトリックスの進行性損失と関連している。故に、例えば、髄核の細胞、繊維輪の細胞、椎間板の細胞といった適正な細胞によるプロテオグリカン及び/又はコラーゲンの合成を刺激する方法を有することは、望ましいであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の要約
本発明の1つの側面によれば、1以上の骨形態形成タンパク質又はトランスフォーミング増殖因子−βタンパク質(TGF−β)の発現を細胞において誘導する方法が提供される。該方法には、プロモーターへ機能可能的に連結したLIM石灰化タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離核酸で細胞をトランスフェクトすることが含まれる。本発明の方法により、BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7、TGF−β1、及びこれらの組合せからなる群より選択される1以上のタンパク質の発現を誘導することができる。本発明のこの側面による単離核酸は、配列番号25の全長へ相補的な核酸分子へ標準条件下にハイブリダイズすることができる核酸;及び/又は配列番号26の全長へ相補的な核酸分子へ高ストリンジェント条件下にハイブリダイズすることができる核酸分子であり得る。細胞は、どの体細胞でもよく、限定されないが、バフィーコート細胞、幹細胞、及び椎間板細胞が含まれる。
【0011】
本発明の第二の側面によれば、1以上の骨形態形成タンパク質又はトランスフォーミング増殖因子−βタンパク質を過剰発現する細胞が提供される。この細胞は、BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7、TGF−β1、及びこれらの組合せからなる群より選択される1以上のタンパク質を過剰発現する細胞であり得る。この細胞は、バフィーコート細胞、椎間板細胞、間葉幹細胞、又は多能性幹細胞であってよい。上記に示すような細胞と担体材料を含んでなるインプラントも提供される。本発明によりまた提供されるのは、上記に示すような細胞又はインプラントを哺乳動物へ導入することを含んでなる、骨形成を哺乳動物において誘導する方法と、上記に示すような細胞を哺乳動物の椎間板へ挿入することを含んでなる、椎間板疾患を哺乳動物において治療する方法である。
【0012】
本発明の追加の利点と新規な特徴は、一部は以下に続く記載において示され、そして一部は以下の検証によるか、又は本発明の実施から学ぶことによって当業者により明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
好ましい態様の詳細な説明
LMP−1は、初期の骨芽細胞分化に関連した新規のLIMドメインタンパク質である。発生中の胚の長骨の肥大性軟骨細胞に近接する間葉細胞においてLMP−1転写物がはじめて検出可能になるのは、軟骨原基の中央に骨芽細胞が出現する直前である(Boden, et al.,「LIMドメインタンパク質、LMP−1は、骨形成に及ぼすBMP−6の効果に仲介する(LMP-1, A LIM-Domain Protein, Mediates BMP-6 Effects on Bone Formation)」Endocrinology, 139, 5125-5134 (1998) を参照のこと)。LMP−1タンパク質は、その多くが様々な細胞種において増殖と分化に関与しているLIMドメインタンパク質の異質ファミリーのメンバーである。しかしながら、LIM−ドメインタンパク質の作用の正確な機序は、ほとんど理解されていない。Kong, et al.,「筋LIMタンパク質は、MyoDの活性を亢進することによって筋発生を促進する(Muscle LIM Protein Promotes Myogenesis by Enhancing the Activity of MyoD)」Mol. Cell. Biol., 17, 4750-4760 (1997);Sadler et al.,「ZyxinとcCRP:細胞骨格と結合した2つの相互作用性LIMドメインタンパク質(Zyxin and cCRP: The Interactive LIM Domain Proteins Associated with the Cytoskeleton)」J. Cell Bio., 119, 1573-1587 (1992);Salgia et al.,「ヒトパキシリン、P210(BCCR/ABL)によりリン酸化されるフォーカルアドヒージョンタンパク質の分子クローニング(Molecular Cloning of Human Paxillin, a Focal Adhesion Protein Phosphorylated by P210 (BCCR/ABL))」J. Biol. Chem., 270, 5039-5047 (1995);及び Way, et al.,「C. Elegans における接触受容体ニューロンの分化を特定するホメオボックス含有遺伝子、Mec−3(Mec-3, A Homeobox-Containing Gene that Specifies the Differentiation of the Touch Receptor Neurons in C. Elegans)」Cell, 54, 5-16 (1988) を参照のこと。
【0014】
LMP−1はLIMドメインタンパク質であるが、LIMドメインそのものは、骨芽細胞の分化には必要でないことが最近示された(Liu, et al.,「LIMドメインが骨を誘導するのに、LIM石灰化タンパク質の過剰発現は必要でない(Overexpressed LIM Mineralization Proteins do not Require LIM Domains to Induce Bone)」J. Bone Min. Res., 17, 406-414 (2002) を参照のこと)。LIM−1は、骨芽細胞分化を in vitro で、de novo 骨形成を in vivo で、ごく低い用量で誘導することが可能である、強力な細胞内シグナル伝達分子であると考えられている(Boden, et al., Endocrinology, 139, 5125-5134 (1998))。
【0015】
2つの別個の実験系からの結果は、LMP−1がいくつかのBMPの発現を誘導することを示している。LMP−1 cDNAの挿入後、in vitro では早くも48時間で、in vivo では72時間でBMP−4とBMP−7を検出することができる。in vivo 試験は、LMP−1を発現する移植バフィーコート細胞のほとんどが in vivo では1週間も生存しないことを示したが、骨形成細胞へ分化した宿主細胞の流入の証拠があった。種々の結果は、LMP−1が膜様の骨形成を明瞭な軟骨細胞分裂間期を伴わずに誘導することも示しているが、これはBMPの多くで共通している。
【0016】
発明者は、AdLMP−1で処理した細胞がLMP−1、BMP−2と、より少ない程度で、BMP−6及びTGF−β1のタンパク質を in vitro で産生することも示した。BMP−4とBMP−7は、LMP−1により誘導される追加分泌の骨誘導因子である。発明者が実施したアンチセンスオリゴヌクレオチド実験は、細胞内LMP−1がその骨誘導効果を他の細胞に及ぼすのにBMP−4とBMP−7が必要であることを示している。
【0017】
以下に記載するA549実験は、BMPがアデノウイルスそのものによっては誘導されなかったこと、そして非処理細胞でもBMPが発現されなかったことを示している。これらの実験はまた、骨芽細胞分化に関連しない2つのタンパク質(即ち、II型コラーゲンとMyoD)がLMP−1によって誘導されなかったことも示している。
【0018】
A549肺癌細胞を選んだのは、A549細胞が、骨芽細胞と違って、BMPの基底発現を有さないからである。
通常の静脈血由来のバフィーコート細胞の ex vivo 遺伝子治療への使用は、比較的新しい。Viggeswarapu, et al.,「LIM石灰化タンパク質−1のアデノウイルス送達は、in vitro 及び in vivo で新骨形成を誘導する(Adenoviral Delivery of LIM Mineralization Protein-1 Induces New-Bone Formation in vitro and in vivo)」J. Bone Joint Surg. Am., 83-A, 364-376 (2001) を参照のこと。LMP−1 cDNAでトランスフェクトされたバフィーコート細胞がどのくらい長い間 in vivo で生存して、BMPの合成、分泌、及び活性を高めるかを決定するために、CD−45抗原が使用された(Kurtin, et al.,「白血球共通抗原−モノクローナル抗体を使用するパラフィン切片における造血性及び非造血性新生物間の診断識別因子:免疫学的試験及び超構造定位法との相関性(Leukocyte Common Antigen--A Diagnostic Discriminant Between Hematopoietic and Nonhematopoietic Neoplasms in Paraffin Sections using Monoclonal Antibodies: Correlation with Immunologic Studies and Ultrastructural Localization)」Hum Pathol., 16, 353-365 (1985);及び Pulido et al.,「4つの異なるCD45抗原特異性の比較生化学及び組織分布試験(Comparative Biochemical and Tissue Distribution Study of Four Distinct CD45 Antigen Specificities)」J. Immunol., 140, 3851-3857 (1988) を参照のこと)。抗CD−45一次抗体と特異的に反応する細胞の数は累進的に減少し、移植後10日までに最小になった。抗CD−45染色の消失、7日目でインプラントの中央で細胞が脱落していること、そして骨形成の求心性パターンは、いずれも、移植した細胞(LMP−1 cDNAを発現するものが含まれる)が長い時間の間生存しないことを示唆し、LMP発現細胞が分泌因子(これが後続的に宿主の前駆細胞を動員して、成熟骨芽細胞へのその分化を変調させる)の誘導を介して骨形成プロセスに間接的に参画する可能性があることを示唆した。証拠の示すところでは、LMP−1は、いくつかの骨誘導タンパク質(BMP)の分泌が含まれるイベントのカスケードを開始させる。故に、LMP−1は、多くの細胞において発現されることなく有意な効果を及ぼして、in vivo で長い時間存続することができるので、理想的な治療候補物質である。
【0019】
発明者は、異所的に移植した末梢血バフィーコート細胞へのLMP−1 cDNAの ex vivo 遺伝子導入による骨誘導を実証した。故に、本発明は、LIM石灰化タンパク質をコードする核酸での非骨性細胞のトランスフェクションに関する。発明者は、LIM石灰化タンパク質をコードする核酸での椎間板細胞のような非骨性細胞のトランスフェクションが、プロテオグリカン、コラーゲン、そして他の椎間板成分及び組織の合成の増加をもたらし得ることを発見した。故に、発明者は、プロテオグリカン、コラーゲン、又は他の椎間板成分の損失と関連した椎間板疾患を治療する方法を提供する。
【0020】
発明者は、かつて、被刺激ラット頭蓋冠の骨芽細胞培養物よりLIM石灰化タンパク質(LMP)cDNA配列(10−4/RLMP)を単離した(配列番号1、配列番号2)(米国特許第6,300,127号)。この遺伝子をクローニングし、配列決定し、骨石灰化の効力を in vitro で高めるその能力をアッセイした。このタンパク質、RLMPは、骨マトリックスの石灰化と、並びに細胞の骨芽細胞系譜への分化に影響を及ぼすことが見出された。骨石灰化タンパク質(BMP)のような他の既知のサイトカインとは異なり、RLMPは、分泌タンパク質ではなく、むしろ細胞内のシグナル伝達分子である。故に、より少ない量のタンパク質で、細胞内シグナル伝達増幅と in vivo 適用へのより大きな特異性をもたらすことができる。好適な臨床適用には、骨折、骨欠損、骨移植における骨修復の亢進と、骨粗鬆症を表出する患者における正常なホメオスタシスが含まれる。
【0021】
ヒトLMP−1(HLMP−1)と命名される対応のヒトタンパク質のアミノ酸配列もクローニングされ、配列決定され、演繹されている(米国特許第6,300,127号)。実証されたヒトタンパク質は、骨石灰化の効力を in vitro と in vivo で高めた。
【0022】
HLMP−1sと呼ばれる、HLMP−1の末端切断(短い)バージョンも、発明者により特性決定された(米国特許第6,300,127号を参照のこと)。このタンパク質は、終止コドンを産生する点突然変異の結果であり、末端切断タンパク質をもたらす。HLMP−1sは、細胞培養と in vivo において発現されるとき、完全に機能的である。
【0023】
ヒト心臓cDNAライブラリーのPCR解析を使用して、2つの可変スプライス変異体(HLMP−2及びHLMP−3)を同定した(米国特許出願09/959,578号、2000年4月28日出願)。これらタンパク質のヌクレオチド配列は、HLMP−1配列の325〜444塩基対領域においてHLMP−1と異なる。HLMP−2配列は、この領域に119塩基対の欠失と17塩基対の挿入を有する。HLMP−1と比べて、HLMP−3をコードするヌクレオチド配列には欠失がないが、それはHLMP−2と同じ17塩基対の挿入を有し、これらの塩基対は、HLMP−1配列の塩基対444に対応する位置に挿入されている。
【0024】
LMPは、いくつかの生物学的プロセスを調節してそれに影響を及ぼすので、LMPの様々なスプライス変異体は、哺乳動物において、様々な組織の増殖、分化、及び/又は再生といった異なる生物学的機能を有すると予測される。例えば、ある形態のLMPは、骨だけでなく、筋肉、腱、靭帯、脊髄、末梢神経、及び軟骨においても発現されている。
【0025】
本発明は、プロモーターへ機能可能的に連結したLIM石灰化タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離核酸配列を提供すること;プロテオグリカンを産生することが可能な哺乳動物細胞へその単離核酸配列をトランスフェクトすること;そして、LIM石灰化タンパク質をコードするヌクレオチド配列を発現させて、それによりプロテオグリカン合成を刺激することによって、哺乳動物細胞においてプロテオグリカン又はコラーゲン、あるいはその両方の合成を刺激する方法を提供する。哺乳動物細胞は、椎間板細胞、繊維輪の細胞、又は髄核の細胞のような、非骨性細胞でよい。トランスフェクションは、ウイルス又は、例えばプラスミドのような裸のDNAの直接注射により、ex vivo 又は in vivo のいずれで起きてもよい。ある態様において、ウイルスは、組換えアデノウイルス、好ましくはAdHLMP−1である。
【0026】
本発明の別の態様は、LIM石灰化タンパク質をコードする単離核酸配列を含んでなる非骨性哺乳動物細胞を含む。非骨性哺乳動物細胞は、幹細胞(例、多能性幹細胞又は間葉幹細胞)でも、椎間板細胞、好ましくは、髄核の細胞又は繊維輪の細胞でもよい。
【0027】
異なる側面において、本発明は、LIM石灰化タンパク質をコードする単離核酸配列を非骨性哺乳動物細胞において発現させる方法へ向けられ、該方法は、プロモーターへ機能可能的に連結したLIM石灰化タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離核酸を提供すること;前記単離核酸配列を非骨性哺乳動物細胞へトランスフェクトすること;そして、LIM石灰化タンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列を発現させることを含んでなる。非骨性哺乳動物細胞は、幹細胞でも、椎間板細胞(例えば、髄核又は繊維輪の細胞)でもよい。トランスフェクションは、ウイルス、又は例えばプラスミドのような裸のDNAの直接注射により ex vivo 又は in vivo のいずれで起きてもよい。ウイルスは、組換えアデノウイルス、好ましくはAdHLMP−1であり得る。
【0028】
なお別の態様において、本発明は、プロモーターへ機能可能的に連結したLIM石灰化タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離核酸を提供すること;プロテオグリカンを産生することが可能な哺乳動物細胞へその単離核酸配列をトランスフェクトすること;そして、LIM石灰化タンパク質をコードするヌクレオチド配列を発現させることによってプロテオグリカン合成をその細胞において刺激することにより、椎間板変性を逆転させるか又は阻害することによって、椎間板変性を逆転、遅延、又は減速させることにより椎間板疾患を治療する方法へ向けられる。椎間板疾患は、腰痛、椎間板ヘルニア、又は脊椎狭窄をもたらす可能性があるので、該方法はこれらの症状を軽減することができる。哺乳動物細胞は、幹細胞又は椎間板細胞(例えば、繊維輪の細胞、又は髄核の細胞)のような非骨性細胞でよい。
【0029】
トランスフェクションは、ウイルス、又は例えばプラスミドのような裸のDNAの直接注射により ex vivo 又は in vivo のいずれで起きてもよい。ある態様において、ウイルスは、組換えアデノウイルス、好ましくはAdHLMP−1である。
【0030】
本発明は、本明細書においてLIM石灰化タンパク質、又はLMPと表記される新規の哺乳動物LIMタンパク質に関する。本発明は、より特別には、HLMP又はHLMP−1として知られるヒトLMP、又は、HLMP−2又はHLMP−3として知られている、ヒトLMPの可変スプライス変異体に関する。発明者は、これらのタンパク質が in vitro で増殖させた哺乳動物細胞において骨石灰化を亢進させることを発見した。哺乳動物において産生されるとき、LMPは、in vivo でも骨形成を誘導する。
【0031】
LIM石灰化タンパク質(例、LMP又はHLMP)をコードする核酸での骨髄細胞、骨形成前駆細胞、末梢血細胞、及び幹細胞(例、多能性幹細胞又は間葉幹細胞)の ex vivo トランスフェクションに続く、トランスフェクト細胞のドナーへの再移植は、多様な骨関連障害又は損傷を治療するのに適している。例えば、この方法を使用して、長骨骨折修復を高め、分節欠損部分に骨を産生し、骨移植代替物を骨折部分に提供し、腫瘍再構成又は脊椎融合を促進し、股関節、脊椎、又は手根部の骨粗鬆症のような、脆いか骨粗鬆症の骨への局所治療(注射による)を提供することができる。LMP又はHLMPをコードする核酸でのトランスフェクションはまた、トランスフェクトされた骨髄細胞を皮下注射して、骨折した長骨の修復を加速させること;長骨骨折の結合又は再結合の遅延、又は脊椎融合の偽関節症の治療、及び股関節又は膝関節の無血管壊死において新骨形成を誘導することに有用である。
【0032】
遺伝子治療の ex vivo 法だけでなく、LMP又はHLMPをコードする核酸配列を含んでなる組換えDNAベクターのトランスフェクションは、in vivo で達成することもできる。LMP又はHLMPをコードするDNA断片を、例えばアデノウイルスベクターのような適切なウイルスベクターへ挿入するとき、このウイルス構築体は、軟骨内の骨形成が望まれる部位へ直接注射することができる。直接の経皮注射を使用してLMP又はHLMP配列を導入することによって、骨髄細胞を入手する(ex vivo でトランスフェクトする)ため、又は新しい骨が必要とされる部位で患者へそれらを再移植するための外科的介入なしに、骨形成の刺激を達成することができる。Alden, et al. (Neurosurgical Focus (1998)) は、アデノウイルスベクターへクローニングしたBMP−2 cDNAを使用する遺伝子治療の直接注射法の有用性を実証した。
【0033】
HLMPをコードする核酸配列を含んでなる裸の、又は被包化されていない組換えプラスミドを適切な身体部位へ直接注射することによって in vivo 遺伝子治療を行うことも可能である。本発明のこの態様において、トランスフェクションが起こるのは、裸のプラスミドDNAが標的細胞により取り込まれるか又は内部化されるときである。ウイルス構築体を使用する in vivo 遺伝子治療の場合のように、裸のDNAの直接注射は、外科的介入をほとんど又はまったく必要としないという利点を提供する。内皮細胞マイトジェンVEGF(血管内皮増殖因子)をコードする裸のDNAを使用する直接的な遺伝子治療が、Baumgartner (Circulation, 97, 12, 1114-1123 (1998) によりヒト患者において成功裡に実証されている。
【0034】
椎間板への適用では、椎間板より細胞を採取すること、LMPをコードする核酸でこの細胞を in vitro でトランスフェクトすること、そしてこの細胞を椎間板へ導入することによって、ex vivo トランスフェクションを達成することができる。この細胞は、例えば、脊椎に適した外科的技術のような、当業者に知られたどの手段によっても椎間板から採取して、それへ戻し導入してよい。1つの態様において、細胞は、注射により椎間板へ導入する。
【0035】
また、本発明によれば、LIM石灰化タンパク質をコードする核酸で幹細胞(例えば、多能性幹細胞又は間葉幹細胞)を ex vivo でトランスフェクトして、例えば、注射により椎間板へ導入することができる。
【0036】
ex vivo でトランスフェクトした細胞は、担体と組み合わせて椎間板インプラントを形成させてもよい。次いで、トランスフェクトされた細胞を含んでなる担体を、被検者の椎間板へ移植することができる。好適な担体材料については既に記載されている(例えば、Helm et al.,「骨移植片は、脊椎関節固定術の促進の代用となる(Bone Graft Substitutes for the Promotion of Spinal Arthrodesis)」Neurosurg Focus, 10(4) (2001) を参照のこと)。担体は、好ましくは、脱塩骨マトリックス(DMB)のような生体適合性の有孔マトリックス、生体適合性の合成高分子マトリックス、又はタンパク質マトリックスを含む。好適なタンパク質には、例えば、コラーゲンのような細胞外マトリックスタンパク質が含まれる。LMPで ex vivo トランスフェクトされた細胞は、移植に先立って担体へ(即ち、有孔マトリックスの空孔の中へ)取り込ませることができる。
【0037】
同様に、細胞を in vivo でトランスフェクトする椎間板への適用では、当業者に知られた好適な方法を使用して、DNAを椎間板へ導入してよい。1つの態様において、核酸は、椎間板スペースへ直接注射する。
【0038】
アデノウイルスは、被感染細胞のゲノムへ取り込まれないので、アデノウイルスベクターを使用してLMPを骨形成細胞へ送達するときには、LMPの一過性発現が達成される。しかしながら、一過性発現は、本発明の目的を達成するのに十分である。しかしながら、標的細胞のゲノムへ取り込まれるベクターの使用により、LMPの安定発現を達成することができる。例えば、レトロウイルスベクターは、この目的に適している。
【0039】
LMPの安定発現は、骨粗鬆症及び骨形成不全症のような、様々な全身性の骨関連障害を治療するのに特に有用である。本発明のこの態様では、ウイルスベクターへの取込みのために調節可能プロモーターをLMPのポリヌクレオチド配列と組み合わせてよい。このようなプロモーターは、例えば、テトラサイクリンのような外因性の誘導剤への曝露により制御される配列を含む場合がある。
【0040】
このアプローチを使用して、有効量の外因性誘導剤を投与することによって、全身の新骨形成の刺激を達成する。望ましい骨量が達成されたならば、外因性誘導剤の投与を中止してよい。この方法は、例えば、骨粗鬆症の結果としての骨損失に換わるために、必要に応じて繰り返してよい。
【0041】
HLMPに特異的な抗体は、患者の細胞の骨誘導又は骨形成ポテンシャルをアッセイする方法における使用に特に適していて、骨修復が遅いか又は妨げられるリスク状態の患者を同定する手段を提供する。また、HLMP特異抗体は、例えば、骨粗鬆症のような骨変性疾患のリスク因子を同定するマーカーアッセイにおける使用に適している。
【0042】
よく知られた慣用法に従って、本発明の遺伝子治療ベクターは、LMPをコードするポリヌクレオチド配列の、クローニング又は発現ベクターを含んでなる核酸配列への連結により製造する。好ましいベクターは、LMPのDNA配列をクローニングして、発現させる手段を提供する。これらの組換えベクターを構築して解析するのに必要とされる方法は、分子生物学の当業者によく知られていて、例えば、Sambrook, et al.,「分子クローニング:実験マニュアルMolecular Cloning: A Laboratory Manial)」第2版、コールドスプリングハーバープレス(1988)、Davis, et al.,「分子生物学の基本方法Basic Methods in Molecular Biology)」、エルセヴィエ(1986)、及び Ausubel, et al.,「分子生物学の最新プロトコールCurrent Protocols in Molecular Biology)」、ウィリー・インターサイエンス(1988)に記載されている。
【0043】
LMP cDNA配列を増幅させる手段を提供するポリメラーゼ連鎖反応は、米国特許第4,800,159号(Mullis, et al.)に記載されている。DNA増幅用のキットは市販されていて、限定量の試料よりcDNA配列の多数のコピーを製造するのに必要な酵素及び関連試薬を含む。
【0044】
LIM石灰化タンパク質発現ベクターは、骨形成活性を有するLIM石灰化タンパク質の発現の鋳型を提供する、どのポリヌクレオチド配列を含んでもよい。保守的なアミノ酸置換や、アミノ末端メチオニン残基の出現のような他の修飾も、これらの置換及び修飾が当業者の技量内にあるので、本発明の範囲内にある。
【0045】
選択される宿主発現系に関連したリボソーム結合部位をキメラLMPコード配列の5’末端へ連結して合成遺伝子を形成して、これを発現ベクターへ挿入することができる。調節可能プロモーター、例えば、大腸菌lacプロモーターも、キメラコード配列の発現用に提供してよい。他の好適な調節可能プロモーターには、例えば、trp、tac、recA、T7、及びラムダプロモーターが含まれる。
【0046】
LMPをコードするDNAは、安定した形質転換体を形成するために、例えば、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、又はプロトプラスト融合のような、当業者に知られたどの手段によってレシピエント細胞へトランスフェクトしてもよい。リン酸カルシウム沈殿は、Graham, et al.(Virology, 52, 456 (1973)) の方法によって実施することができる。簡潔に言えば、100mmディッシュにプレート培養した0.5x10個の細胞につき、40〜50マイクログラムのDNAのアリコートをサケ精子又はウシ胸腺のDNAを担体として使用する。このDNAを0.5mlの2X Hepes溶液(280mM NaCl,50mM Hepes,及び1.5mM NaHPO,pH7.0)と混合して、これへ等量の2xCaCl(250mM CaCl及び10mM Hepes,pH7.0)を加える。30〜40分後に現れる、白い粒状の沈殿を細胞に滴下して均等に分配して、これを37℃で4〜16時間インキュベートする。培地を除去し、この細胞をPBS中15%グリセロールへ3分間曝露する。グリセロールを除去した後で、10%胎児ウシ血清を含有するダルベッコ最少必須培地(DMEM)で細胞に給餌する。
【0047】
DNAは、Kimura et al. (Virology, 49: 394 (1972)) 及び Sompayrac et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78, 7575 (1981)) のDEAE−デキストラン法、Potter (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 7161 (1984)) のエレクトロポレーション法、又は Sandri-Goddin, et al.(Molec. Cell. Biol., 1, 743 (1981)) に記載されるプロトプラスト融合法を使用してトランスフェクトしてもよい。
【0048】
本発明にはまた、本発明のLIM石灰化タンパク質をコードする核酸配列又はそれへの相補配列のいずれにも標準条件下でハイブリダイズする核酸分子が含まれる。「標準ハイブリダイゼーション条件」は、プローブのサイズ、核酸試薬のバックグラウンド及び濃度、並びにハイブリダイゼーションの種類に応じて変動するものである。例えば、in situでは、サザンブロット、又はDNA−RNAハイブリッドのハイブリダイゼーション(ノーザンブロット)を使用することができる。「標準ハイブリダイゼーション条件」の決定は、当業者の技術レベル内にある。そのような条件は、例えば、米国特許第5,580,775号(Fremeau, et al.)において、Southern, J. Mol. Biol., 98: 503 (1975) により、Alwine, et al., Meth. Enzymol., 68: 220 (1979)、及び Sambrook, et al.,「分子クローニング:実験マニュアルMolecular Cloning: A Laboratory Manial)」第2版、コールドスプリングハーバープレス、7.19-7.50(1989)により記載されている。
【0049】
標準ハイブリダイゼーション条件の1つの好ましいセットは、50%ホルムアミド、5XSSPE(150nM NaCl,10mM NaHPO[pH7.4],1mM EDTA[pH8.0])、5Xデンハルト溶液(100mlの水につき、20mg Focoll,20mg ポリビニルピロリドン、及び20mg BSA)、10%硫酸デキストラン、1% SDS、及び100マイクログラム/mlのサケ精子DNAにおいて42℃で2時間のプレハイブリダイゼーションを提供する。32P−標識cDNAプローブを加え、ハイブリダイゼーションを14時間進行させる。その後、このブロットを2X SSPE,0.1% SDS(22℃で20分間)と0.1X SSPE,0.1% SDS(65℃で1時間)で2回洗浄する。次いで、ブロットを乾燥させ、増感スクリーンの存在下にx線フィルムへ5日間曝露する。
【0050】
「高ストリンジェント条件」下で、プローブは、その標的配列へ、この2つの配列が実質的に同一であれば、ハイブリダイズする。標準ハイブリダイゼーション条件と同じように、高ストリンジェント条件は、当業者の特定のハイブリダイゼーション目的に従って決定される。
【0051】
本発明のひとつの側面によれば、LIM石灰化タンパク質をコードする核酸配列を含んでなる単離核酸分子が提供される。本発明による核酸分子は、配列番号25の全長へ相補的な核酸分子へ標準条件下でハイブリダイズする分子、配列番号26の全長へ相補的な核酸分子へ高ストリンジェント条件下でハイブリダイズする分子、又はその両方へハイブリダイズする分子であり得る。より具体的には、本発明による単離核酸分子は、HLMP−1、HLMP−1s、RLMP、HLMP−2、又はHLMP−3をコードする場合がある。
【0052】
本発明の別の側面には、上記核酸配列によりコードされるタンパク質が含まれる。なお別の態様において、本発明は、抗LMP抗体に基づいて、このようなタンパク質を同定することに関する。この態様では、細胞を溶解し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)によりタンパク質を分離することによって、ウェスタンブロット分析用にタンパク試料を調製する。タンパク質は、Ausubel, et al.,「分子生物学の最新プロトコールCurrent Protocols in Molecular Biology)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(1987)により記載されるエレクトロブロッティングによりニトロセルロースへ移す。即製の無脂肪乾燥ミルク(100ml PBS中1gm)でフィルターを封鎖した後で、このフィルターへ抗LMP抗体を加え、室温で1時間インキュベートする。フィルターをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で徹底的に洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)−抗体コンジュゲートとともに室温で1時間インキュベートする。このフィルターを再びPBSで徹底的に洗浄し、ジアミノベンチジン(DAB)を加えることによって抗原バンドを同定する。
【0053】
単一特異性抗体は、本発明における第一選択の試薬であり、LMPの発現に関連した特定の特徴を患者の細胞について解析するために特別に使用する。本明細書に使用する「単一特異性抗体」は、LMPについて均質な結合特性のある1以上の抗体分子種と定義される。本明細書に使用する「均質結合」は、上記に記載するように、LMPと関連するような、特異抗原又はエピトープへ結合する、抗体種の能力に関連する。LMPへの単一特異性抗体は、LMPに対して反応性の抗体を含有する哺乳動物の抗血清より精製するか、又は、Kohler, et al.(Nature, 256, 495-497 (1975) により記載される技術を使用して、LMPと反応性のモノクローナル抗体として調製する。LMP特異抗体は、免疫アジュバントを含むか又は含まない適正濃度のLMPで、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、又はウマのような動物を免疫化することによって産生する。初回の免疫化に先立って、免疫前血清を採取する。約0.1mg〜約1000mgのLMPと、所望されるならば、受容される免疫アジュバントを各動物に与える。受容されるアジュバントには、限定されないが、フロイント完全、フロイント不完全、ミョウバン沈降物、Corynebacterium parvum を含有する油中水型エマルジョン、及びtRNAのアジュバントが含まれる。初回の免疫化は、好ましくは、フロイント完全アジュバント中のLMPを皮下(SC)、腹腔内(IP)、又はその両方で多数の部位に注射することからなる。各動物を一定間隔で、好ましくは週ごとに出血させ、抗体力価を定量する。動物は、初回免疫後に追加免疫注射を受けても受けなくてもよい。追加免疫注射を受ける動物には、一般に、フロイント不完全アジュバント中の等量の抗原を同じ経路で投与する。追加免疫注射は、最高力価が得られるまで、約3週の間隔で与える。それぞれの追加免疫化から約7日後、又は単回免疫化から約1週後に、動物を出血させ、血清を採取し、アリコートを約−20℃で保存する。
【0054】
LMPと反応性のモノクローナル抗体(mAb)は、同系交配マウス、好ましくはBalb/cマウスをLMPで免疫化することによって調製する。上記に記載したように約0.5mlの受容されるアジュバントに取り込んだ等量の緩衝液又は生理食塩水中約0.1mg〜約10mg、好ましくは約1mgのLMPで、IP又はSC経路によりこのマウスを免疫化する。フロイント完全アジュバントが好ましい。このマウスは、0日目に初回免疫化を受け、約3〜30週の間安静にさせる。免疫化マウスに、リン酸緩衝化生理食塩水のような緩衝溶液中約0.1〜約10mgのLMPの1以上の追加免疫を静脈内(IV)経路により与える。抗体陽性マウス由来のリンパ球、好ましくは脾臓のリンパ球を、免疫化マウスより脾臓を取り出すことにより、当該技術分野で知られた標準手順によって入手する。この脾臓リンパ球を適切な融合パートナー、好ましくは骨髄腫細胞と、安定したハイブリドーマの形成を可能にする条件下に混合することによって、ハイブリドーマ細胞を産生する。融合パートナーには、限定されないが、マウス骨髄腫のP3/NS1/Ag4−1;MPC−11;S−194、及びSp2/0を含めてよく、Sp2/0が好ましい。抗体産生細胞と骨髄腫細胞を約1000の分子量のポリエチレングリコールにおいて、約30%〜約50%の濃度で融合させる。融合したハイブリドーマ細胞を、当該技術分野で知られた手順により、補充ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)でのヒポキサンチン、チミジン、及びアミノプテリン(HAT)における増殖により選択する。約14、18、及び21日目に増殖陽性ウェルより上清液を採取し、LMPを抗原として使用する固相イムノラジオアッセイ(SPIRA)のようなイムノアッセイにより抗体産生をスクリーニングする。また、オクタロニー沈降アッセイにおいてこの培養液を検査して、mAbのアイソタイプを決定する。抗体陽性ウェル由来のハイブリドーマ細胞を、MacPherson,(「軟寒天技術:組織培養の方法及び応用Soft Agar Techniques: Tissue Culture Methods and Applications)」Kruse and Paterson(監修)、アカデミック・プレス(1974)又は Harlow, et al.,「抗体:実験マニュアルAntibodies: A Laboratory Manual)」コールドスプリングハーバーラボラトリー(1988)により記載される軟寒天技術のような技術によってクローニングする。
【0055】
モノクローナル抗体は、プリスタンで抗原刺激したBalb/cマウスに、抗原刺激(priming)から約4日後に、約2x10〜約6x10のハイブリドーマ細胞のほぼ0.5mlを各マウスに in vivo 注射して産生してもよい。細胞移入後ほぼ8〜12日目に腹水を採取し、当該技術分野で知られた技術によりモノクローナル抗体を精製する。
【0056】
抗LMP mAbのin vitro 産生は、約2%の胎児ウシ血清を含有するDMEMにおいてハイブリドーマ細胞系を増殖させることによって行って、十分量の特異mAbを入手する。このmAbを当該技術分野で知られた技術により精製する。
【0057】
腹水又はハイブリドーマ培養液の抗体力価は、様々な血清学又は免疫学アッセイによって定量するが、これには、限定されないが、沈降法、受身凝集反応、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)技術、及びラジオイムノアッセイ(RIA)技術が含まれる。同様のアッセイを使用して、体液又は組織及び細胞抽出物中のLMPの存在を検出する。
【0058】
モノクローナル抗体を産生するための上記の方法を利用して、LMP、全長の新生LMPポリペプチド、又はこれらの変異体又は対立遺伝子体(alleles)に特異的な抗体を産生することができる。
【0059】
別の態様において、本発明は、HLMP−1の可変スプライス変異体へ向けられる。ヒト心臓cDNAのPCR解析により、HLMP−1配列の塩基対325と444の間の領域でHLMP−1と異なる、2つのHLMP可変スプライス変異体(HLMP−2及びHLMP−3と命名する)のmRNAが明らかになった。HLMP−2配列は、この領域に、119塩基対の欠失と17塩基対の挿入を有する。これらの変化はリーディングフレームを保存し、423アミノ酸のタンパク質を生じ、これは、HLMP−1に比べて、全体で34アミノ酸の損失を有する(40のアミノ酸が欠失して、6つの挿入アミノ酸が加わる)。HLMP−2は、HLMP−1に存在するc末端LIMドメインを含有する。
【0060】
HLMP−1と比べて、HLMP−3には欠失がないが、同じ17塩基対の挿入を444位に有する。この挿入はリーディングフレームを移動させ、塩基対459〜461で終止コドンを引き起こす。結果として、HLMP−3は、153アミノ酸のタンパク質をコードする。このタンパク質は、HLMP−1及びHLMP−2に存在するc末端LIMドメインを欠く。HLMP−2及びHLMP−3によりコードされるタンパク質の予測サイズをウェスタンブロット分析により確認した。
【0061】
この3つのスプライス変異体の組織分布のPCR分析により、これらが差示的に発現されて、特定のアイソフォームが異なる組織で優勢であることが明らかになった。HLMP−1は、白血球、脾臓、肺、胎盤、及び胎児肝臓において発現される優勢型であるようだ。HLMP−2は、骨格筋、骨髄、及び心臓組織において優勢なアイソフォームであるらしい。しかしながら、HLMP−3は、検査したどの組織でも優勢なアイソフォームではなかった。
【0062】
二次ラット骨芽細胞培養物におけるHLMP−3の過剰発現は、グルココルチコイド(272±7)とHLMP−1(232±200)で見られる効果に似た、骨結節形成(287±56)を誘導した。HLMP−3はC末端LIMドメインを欠くので、この領域は、骨誘導活性に必要とされない。
【0063】
しかしながら、HLMP−2の過剰発現は、骨結節形成を誘導しなかった(11±3)。これらのデータは、欠失される119塩基対によりコードされるアミノ酸が骨誘導に必要であることを示す。このデータはまた、HLMPスプライス変異体の分布が組織特異的な機能に重要であり得ることを示す。驚くべきことに、発明者は、二次ラット骨芽細胞培養物において、HLMP−2がステロイド誘導性の骨芽細胞形成を阻害することを示した。故に、HLMP−2は、骨形成が望まれない臨床状況において治療有用性を有するかもしれない。
【0064】
1997年7月22日に、pCMV2/RLMP(これは、インサート10−4クローン/RLMPのある、ベクターpRc/CMV2である)と表記したベクター中の10−4/RLMPの試料をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)(20852 メリーランド州ロックヴィル、パークローンドライブ、12301)に寄託した。この寄託物の培養受入れ番号は、209153である。1998年3月19日に、インサートHLMP−1のある、ベクターpHis−Aの試料をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託した。この寄託物の培養受入れ番号は、209698である。2000年4月14日に、プラスミドpHAhLMP−2(ヒト心筋cDNAよりHLMP−2で誘導したcDNAインサートのあるベクターpHisA)及びpHAhLMP−3(ヒト心筋cDNAよりHLMP−3で誘導したcDNAインサートのあるベクターpHisA)の試料をブタペスト条約の条件の下でATCC(アメリカ、20110−2209 バージニア州マナッサス、ユニバーシティBlvd.10801)に寄託した。これらの寄託物の受入れ番号は、それぞれPTA−1698とPTA−1699である。これらの寄託物は、ブダペスト条約により要求されるように、ATCCにおいて少なくとも30年間維持されて、それらを開示する特許の許諾に基づいて、公共へ利用可能になる。寄託物が利用可能であることは、政府決定により許諾される特許権の侵害において、本発明を実施する許可を構成与件しないと理解されるべきである。
【0065】
本発明の核酸、タンパク質、又は抗体を評価するときには、酵素アッセイ、タンパク精製、そして他の慣用の生化学の手法を利用する。DNA及びRNAは、それぞれサザンブロッティング及びノーザンブロッティングの技術により分析する。典型的には、分析する試料をゲル電気泳動法によりサイズ分画する。次いで、ゲル中のDNA又はRNAをニトロセルロース又はナイロンの膜へ移す。次いで、ゲル中の試料パターンの複製物であるブロットをプローブとハイブリダイズさせた。典型的には、プローブは、好ましくは32Pで放射標識するが、当業者に知られた他のシグナル産生分子でプローブを標識してもよい。次いで、オートラジオグラフィーのような検出システムにより、目的の特定バンドを視覚化することができる。
【0066】
本発明の好ましい態様を例示する目的のために、以下の非限定的な実施例を含める。これらの結果は、本発明のLIM石灰化タンパク質と、これらのタンパク質をコードする単離核酸分子を使用して骨形成を誘導するか又は亢進させることの実施可能性を実証する。
【実施例】
【0067】
実施例1:頭蓋冠細胞の培養
ラット骨芽細胞(「ROB」)としても知られるラット頭蓋冠細胞を、Boden, et al., (Endocrinology, 137, 8, 3401-3407 (1996)) により既に記載されたように、分娩前20日のラットより入手した。一次培養物を集密状態にまで増殖させ(7日)、トリプシン処理し、一次継代培養細胞として6ウェルプレートへ移した(1x10細胞/35mmウェル)。0日目で集密していた継代培養細胞を、さらに7日間増殖させた。0日目に開始して、培地を交換し、処理薬(Trm及び/又はBMP)を3又は4日ごとに層流フード下で適用した。標準の培養プロトコールは以下の通りであった:1〜7日目、MEM,10% FBS,50μg/ml アスコルビン酸、±刺激;8〜14日目、BGJb培地、10% FBS,5mM β−GlyP(石灰化を可能にするための無機リン酸の供給源として)。14日目に、骨結節形成及びオステオカルシン分泌のエンドポイント分析を実施した。この系において、試験したすべてのBMPについての用量応答曲線に対して中間範囲の効果を実証したパイロット実験に基づいて、BMPの用量を50ng/mlと選択した。
【0068】
実施例2:アンチセンス処理と細胞培養
膜様の骨形成時におけるLMP−1の潜在的な機能上の役割を探究するために、我々は、LMP−1 mRNAの翻訳を遮断するアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成し、グルココルチコイドにより始動される分化を受けている二次骨芽細胞培養物を処理した。RLMP発現の阻害は、推定の翻訳開始部位が含まれる25塩基対配列(配列番号42)に対応する高特異性のアンチセンスオリゴヌクレオチド(既知のラット配列に対して有意な相同性がない)を用いて達成した。対照培養物にはオリゴヌクレオチドも与えなかったか、又はそれらにはセンスオリゴヌクレオチドを与えた。リポフェクタミンの存在下(プレインキュベーション)及び非存在下で実験を行なった。簡潔に言えば、22μgのセンス又はアンチセンスRLMPオリゴヌクレオチドを、MEMにおいて室温で45分間インキュベートした。そのインキュベーションに続き、さらにMEM又はプレインキュベートしたリポフェクタミン/MEM(7% v/v;室温で45分間インキュベートした)のいずれかを加え、0.2μMのオリゴヌクレオチド濃度を達成した。生じる混合物を室温で15分間インキュベートした。次いで、MEM/アスコルビン酸塩/±Trmとオリゴヌクレオチド混合物を混合して、0.1μMの最終オリゴヌクレオチド濃度を達成した。
【0069】
適正なオリゴヌクレオチドの存在又は非存在下に細胞を培地(±刺激)とともにインキュベートした。はじめにリポフェクタミンとインキュベートした培養物は、4時間のインキュベーション(37℃;5% CO)の後で、リポフェクタミンもオリゴヌクレオチドも含有しない培地で再給餌した。培養物を24時間ごとに給餌することによって、オリゴヌクレオチドレベルを維持した。
【0070】
LMP−1アンチセンスオリゴヌクレオチドは、BMP−6オリゴヌクレオチドで見られる効果と同様に、石灰化した結節形成とオステオカルシンを用量依存的なやり方で阻害した。BMP−6アンチセンスオリゴヌクレオチド阻害がBMP−6の添加で逆転されるのに対し、この骨芽細胞分化におけるLMP−1アンチセンスの遮断は、外因性BMP−6の添加によりレスキューすることができず、骨芽細胞の分化経路において、LMP−1がBMP−6に対して上流位置にあることが確かめられた。LMP−1アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、一次ラット骨芽細胞培養物において自発的な骨芽細胞分化を阻害した。
【0071】
実施例3:石灰化骨結節形成の定量
実施例1及び2に従って調製したROBの培養物を、70%エタノール中で一晩固定して、ホン・コッサ銀染色で染色した。半自動コンピュータ化ビデオ画像解析システムを使用して、各ウェル中の結節数及び結節面積を定量した(Boden, et al., Endocrinology, 137, 8, 3401-3407 (1996))。次いで、これらの数値を使用して、結節あたりの面積の数値を計算した。この自動化法をマニュアル計数技術に対して検証すると、0.92の相関係数(p<0.000001)を示した。すべてのデータは、各条件で5又は6のウェルより計算する、平均±平均の標準誤差(S.E.M.)として表す。各実験は、様々な頭蓋冠調製物由来の細胞を使用して、少なくとも2回繰り返した。
【0072】
実施例4:オステオカルシン分泌の定量
Nanes, et al. (Endocrinology, 127: 588 (1990)) に記載のように、ラットオステオカルシンのC末端ノナペプチドに対して発明者が産生した単一特異性ポリクローナル抗体(Pab)での競合ラジオイムノアッセイを使用して、培養基中のオステオカルシンレベルを測定した。簡潔に言えば、1マイクログラムのノナペプチドをラクトペルオキシダーゼ法により1mCiの125I−Naでヨウ素化した。200glのアッセイ緩衝液(0.02Mリン酸ナトリウム、1mM EDTA,0.001%チメロサール、0.025% BSA)を含有する試験管に、細胞培養物より採取した培地、又はオステオカルシニン標準品(0〜12,000フェムトモル)をアッセイ緩衝液中100gl/管で入れた。次いで、Pab(1:40,000;100マイクロリットル)に続き、ヨウ素化ペプチド(12,000cpm;100マイクロリットル)を加えた。非特異結合を試験する試料も同様に調製したが、抗体を含めなかった。
【0073】
700マイクロリットルのヤギ抗ウサギIgGの添加に続く、4℃で18時間のインキュベーションによって、結合PAbと非結合(フリー)PAbを分離した。すべての試料を1200rpmで45分間遠心分離した後、上清をデカントし、沈殿をγ−計数管で計数した。オステオカルシン値をフェムトモル/100マイクロリットルで報告してから、この値を100で割ることによって、培地1mlあたりのピコモル数(3日目の産生)へ変換した。数値は、各条件につき5〜6ウェルの同一3検体定量の平均±S.E.M.として表した。各実験は、異なる頭蓋冠調製物由来の細胞を使用して、少なくとも2回で確認した。
【0074】
実施例5:Trm及びRLMPの in vitro 石灰化に及ぼす効果
非刺激細胞培養系における骨結節の産生全体に対しては、センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれも明瞭な効果がほとんどなかった。しかしながら、ROBをTrmで刺激するとき、RLMPに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、結節の石灰化を>95%阻害した。このオリゴヌクレオチド処理培養物へ外因性BMP−6を加えても、RLMP−アンチセンス−処理結節の石灰化をレスキューしなかった。
【0075】
オステオカルシンは、長いこと、骨石灰化と同義とされていて、オステオカルシンレベルが結節の産生及び石灰化と関連づけられてきた。RLMP−アンチセンスオリゴヌクレオチドは、オステオカルシン産生を有意に減少させるが、アンチセンス処理培養物における結節数は有意に変化していない。この事例では、外因性BMP−6の添加だけが、RLMP−アンチセンス−処理培養物におけるオステオカルシン産生を10〜15%レスキューした。このことは、RLMPの作用がBMPより下流にあって、より特異的であることを示唆する。
【0076】
実施例6:RNAの採取及び精製
4Mイソチオシアン酸グアニジン(GIT)溶液を使用して、ROB(実施例1及び2に従って、6ウェル培養皿において調製した)の同一2検体ウェルより細胞RNAを採取して、統計上の同一3検体を得た。簡潔に言えば、培養上清をウェルより吸引し、次いでこれに同一2検体ウェル採取につき0.6mlのGIT溶液を載せた。GIT溶液を加えた後で、プレートを5〜10秒間揺り動かした。試料は−70℃に保存して、7日以内にさらに処理した。
【0077】
Sambrook, et al.,「分子クローニング:実験マニュアルMolecular Cloning: a Laboratory Manial)」7.19章、第2版、コールドスプリングハーバープレス(1989)による標準法のわずかな変更により、RNAを精製した。簡潔に言えば、融解した試料に60マイクロリットルの2M酢酸ナトリウム(pH4.0)、550マイクロリットルのフェノール(水飽和)、及び150マイクロリットルのクロロホルム:イソアミルアルコール(49:1)を加えた。激しく撹拌した後で、試料を遠心分離し(10000xg;20分;4℃)、水相を新鮮な試験管へ移し、600マイクロリットルのイソプロパノールを加え、RNAを−20℃で一晩沈殿させた。
【0078】
この一晩のインキュベーションに続き、試料を遠心分離して(10000xg;20分)、上清を穏やかに吸引した。ペレットを400マイクロリットルのDEPC処理水に再懸濁し、フェノール:クロロホルム(1:1)で1回抽出し、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)で抽出し、40マイクロリットルの酢酸ナトリウム(3.0M;pH5.2)と1.0mlの無水エタノールの添加後、−20℃で一晩沈殿させた。細胞RNAを回収するために、試料を遠心分離して(10000xg;20分)、70%エタノールで1回洗浄し、5〜10分間空気乾燥させ、20μlのDEPC処理水に再懸濁した。分光光度測定法により定量される光学密度よりRNA濃度を算出した。
【0079】
実施例7:逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応
加熱した全RNA(全量10.5マイクロリットルのDEPC−HO中5マイクログラム、65℃で5分間)を、4マイクロリットルの5X MMLV−RT緩衝液、2マイクロリットルのdNTP、2マイクロリットルのdT17プライマー(10ピコモル/ml)、0.5マイクロリットルのRNAsin(40U/ml)、及び1マイクロリットルのMMLV−RT(200ユニット/マイクロリットル)を含有する試験管へ加えた。37℃で1時間、次いで95℃で5分間試料をインキュベートして、MMLV−RTを不活性化した。次いで、80マイクロリットルの水の添加により試料を希釈した。
【0080】
逆転写した試料(5マイクロリットル)を、標準法(全量50マイクロリットル)を使用するポリメラーゼ連鎖反応へ処した。簡潔に言えば、水と適正量のPCR緩衝液、25mM MgCl、dNTP、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)及び/又はBMP用のフォワード(forward)及びリバース(reverse)プライマー、32P−dCTP、及びTaqポリメラーゼを含有する試験管へ加えた。他に断らなければ、プライマーは、22サイクル(94℃,30”;58℃,30”;72℃,20”)で確実に作動するように標準化した。
【0081】
実施例8:ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)及びPhosphorImager解析によるRT−PCR産物の定量
RT−PCR産物に5マイクロリットル/試験管のローディング色素を加え、混合し、65℃で10分間加熱し、遠心分離した。各反応物より10マイクロリットルの試料を標準条件下でPAGE(12%ポリアクリルアミド:ビス;15V/ウェル;一定の電流)へ処した。次いで、ゲルをゲル保存緩衝液(10%(v/v)グリセロール、7%(v/v)酢酸、40%(v/v)メタノール、43%脱イオン水)において30分間インキュベートし、真空(80℃)で1〜2時間乾燥させ、電子増強リン光造影システムで6〜24時間発色させた。可視化バンドを解析した。バンドあたりのカウント数をグラフにプロットした。
【0082】
実施例9:差示ディスプレイPCR
グルココルチコイド(Trm,1nM)で刺激した細胞よりRNAを抽出した。加熱してDNアーゼ処理した全RNA(全量10.5マイクロリットルのDEPC−HO中5マイクログラム、65℃で5分間)を実施例7に記載のように逆転写したが、MMLV−RTプライマーとしては、H−T11M(配列番号4)を使用した。生じるcDNAを上記のようにPCR増幅したが、様々な市販のプライマーセット(例えば、H−T11G(配列番号4)、及びH−AP−10(配列番号5);GenHunter社、テネシー州ナッシュビル)を用いた。放射標識されたPCR産物を、DNA配列決定ゲル上でのゲル電気泳動により分画した。電気泳動の後で、生じるゲルを真空で乾燥させ、オートラジオグラフを一晩露出した。差示的に発現されたcDNAを表すバンドをゲルから切り出し、Conner, et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, 278 (1983)) に記載される方法を使用してPCRにより再増幅させた。PCR再増幅の産物をベクターPCR−11(TAクローニングキット;Invitrogen,カリフォルニア州カールスバッド)へクローニングした。
【0083】
実施例10:UMR106ラット骨肉腫細胞cDNAライブラリーのスクリーニング
UMR106ライブラリー(2.5x1010pfu/ml)を寒天プレート(LB寒天ボトム)上に5x10pfu/mlでプレートし、このプレートを37℃で一晩インキュベートした。フィルター膜をプレート上に2分間載せた。このフィルターを、取り出してすぐに変性させ、濯ぎ、乾燥させて、UVで架橋連結させた。次いで、このフィルターをプレハイブリダイゼーション緩衝液(2XPIPES[pH6.5],5%ホルムアルデヒド、1% SDS及び100μg/ml 変性サケ精子DNA)において42℃で2時間インキュベートした。ハイブリダイゼーションミックス/フィルター全体へ260塩基対の放射標識プローブ(配列番号3;ランダムプライミングによる32P標識化)を加え、42℃で18時間のハイブリダイゼーションを続けた。この膜を室温で1回(1xSSC,0.1% SDSで10分)、55℃で3回(0.1xSSC,0.1% SDSで15分)洗浄した。
【0084】
この膜を洗浄後、それらを上記のようにオートラジオグラフィーにより解析した。陽性クローンをプラーク精製した。この手順を第二のフィルターで4分間繰り返して、偽陽性クローンを最少にした。プラーク精製したクローンをラムダSK(−)ファージミドとしてレスキューした。クローニングしたcDNAを以下に記載のように配列決定した。
【0085】
実施例11:クローンの配列決定
クローニングしたcDNAインサートを標準法により配列決定した。簡潔に言えば、適正濃度の終止混合物、鋳型、及び反応混合物を適正なサイクル処理プロトコール(95℃,30秒;68℃,30秒;72℃,60秒;x25)へ処した。停止混合物を加えて、配列決定反応を終止させた。92℃で3分間加熱後、試料を変性6%ポリアクリルアミド配列決定ゲル(29:1 アクリルアミド:ビスアクリルアミド)上へロードした。試料を60ボルト、定電流で約4時間電気泳動した。電気泳動後、ゲルを真空で乾燥させて、オートラジオグラフ処理した。
【0086】
このオートラジオグラフをマニュアルで解析した。生じる配列を、国立バイオテクノロジー情報センター(NIH,メリーランド州ベセスダ;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)により維持されているデータベースに対して、デフォルト変数で設定したBLASTINプログラムを使用してスクリーニングした。この配列データに基づいて、新しい配列決定プライマーを製造し、この方法を繰り返して、遺伝子全体を配列決定した。両方の配向で少なくとも3回すべての配列を確認した。
【0087】
PCGENEソフトウェアパッケージ(バージョン16.0)を使用して、ヌクレオチド及びアミノ酸の配列も解析した。ヌクレオチド配列についての相同性百分率値を、以下の変数を使用するプログラムNALIGNにより計算した:非適合ヌクレオチドの重み、10;非適合ギャップの重み、10;考慮するヌクレオチドの最大数、50;及び、考慮するヌクレオチドの最小数、50。
【0088】
アミノ酸配列については、PALIGNを使用して相同性百分率値を計算した。オープンギャップコストとユニットギャップコストについて、ともに10の数値を選択した。
実施例12:RLMP cDNAのクローニング
実施例9に記載する差示ディスプレイPCR増幅産物は、ほぼ260塩基対のメジャーバンドを含んでいた。この配列を使用して、ラット骨肉腫(UMR 106)cDNAライブラリーをスクリーニングした。陽性クローンを入れ子プライマー解析へ処して、全長cDNAを増幅するのに必要なプライマー配列(配列番号11、12、29、30及び31)を得た。さらなる試験用に選択したこれら陽性クローンの1つをクローン10−4と命名した。
【0089】
入れ子プライマー解析により決定した、クローン10−4中の全長cDNAの配列解析は、クローン10−4が差示ディスプレイPCRにより同定される、元の260塩基対の断片を含有することを示した。クローン10−4(1696塩基対;配列番号2)は、457のアミノ酸(配列番号1)を有するタンパク質をコードする1371塩基対のオープンリーディングフレームを含有する。終止コドン、TGAは、ヌクレオチド1444−1446に出現する。ヌクレオチド1675〜1680と隣接のポリ(A)テールにあるポリアデニル化シグナルが3’非コード領域に存在した。配列番号1のアミノ酸位置113〜116及び257〜259に、2つの潜在的なN−グリコシル化部位、Asn−Lys−Thr及びAsn−Arg−Thrがそれぞれあった。アミノ酸位置191及び349に2つの潜在的なcAMP及びcGMP依存性プロテインキナーゼリン酸化部位、Ser及びThrがそれぞれ見出された。アミノ酸位置3、115、166、219、442に5つの潜在的なプロテインキナーゼCリン酸化部位、Ser又はThrがあった。アミノ酸位置272〜279に、1つの潜在的なATP/GTP結合部位モチーフA(P−ループ)、Gly−Gly−Ser−Asn−Asn−Gly−Lys−Thrを決定した。
【0090】
さらに、アミノ酸位置341〜391及び400〜451に、2つの高度に保存された推定LIMドメインを見出した。この新たに同定されたラットcDNAクローン中の推定LIMドメインは、他の既知のLIMタンパク質のLIMドメインとかなりの相同性を示した。しかしながら、他のラットLIMタンパク質との全体的な相同性は、25%未満であった。RLMP(10−4とも表記される)は、ヒトの不明(enigma)タンパク質に78.5%のアミノ酸相同性を有する(米国特許第5,504,192号を参照のこと)が、最も近縁のラット相同体、CLP−36及びRIT−18には、それぞれ24.5%及び22.7%のアミノ酸相同性しか有さない。
【0091】
実施例13:RLMP発現のノーザンブロット分析
実施例1及び2に従って調製した、ROB由来の30マイクログラムの全RNAを1%アガロース平板ゲルにおけるホルムアルデヒドゲル電気泳動によりサイズ分画し、ナイロン膜へ浸透圧でトランスブロットした。このブロットを、ランダムプライミングにより32P−dCTPで標識した全長10−4 cDNAの600塩基対EcoRI断片でプローブした。
【0092】
ノーザンブロット分析は、RLMPプローブとハイブリダイズする1.7kbのmRNA種を示した。RLMP mRNAは、BMP−6への曝露後24時間のROBにおいてほぼ3.7倍アップレギュレートされていた。BMP−2又はBMP−4で刺激したROBでは、24時間後にRMLP発現のアップレギュレーションは認められなかった。
【0093】
実施例14:統計学的手法
それぞれ報告される結節/オステオカルシンの結果について、代表的な実験からの5〜6ウェルのデータを使用して、平均±S.E.M.を計算した。各変数について最大値に正規化したデータでグラフを示して、結節数、石灰化面積、及びオステオカルシンの同時グラフ化を可能にすることができる。
【0094】
それぞれ報告されるRT−PCR、RNアーゼ保護アッセイ、又はウェスタンブロット分析について、代表的な実験の同一3検体試料からのデータを使用して、平均±S.E.M.を決定した。グラフは、0日目又は陰性対照のいずれかに正規化して示しても、対照値を超える増加倍率として表してもよい。
【0095】
Bonferroniの事後多重比較補正の片側分散分析を適宜使用して、統計学的有意差を評価した(D. V. Huntsberger,「分散分析、統計分散の要素(The Analysis of Variance, Elements of Stastical Variance)」P. Billingsley(監修)Allyn & Bacon社、マサチューセッツ州ボストン、298-330(1977)及び SigmaStat, Jandel Scientific, カリフォルニア州コルテ・マデラ)。有意差のα水準は、p<0.05と定義した。
【0096】
実施例15:ウェスタンブロット分析によるラットLIM石灰化タンパク質の検出
England, et al. (Biochim. Biophys. Acta, 623, 171 (1980)) 及び Timmer, et al.,(J. Biol. Chem., 268, 24863 (1993)) の方法に従って、ポリクローナル抗体を調製した。
【0097】
ヒーラ細胞をpCMV2/RLMPでトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞より、Hair, et al. (Leukemia Research, 20, 1 (1996)) の方法に従って、タンパク質を採取した。ネイティブRLMPのウェスタンブロット分析を Towbin, et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76: 4350 (1979)) に記載されるように実施した。
【0098】
実施例16:ラットLMPユニーク(RLMPU)由来ヒトPCR産物の合成
ラットLMP−1 cDNAの配列に基づいて、フォワード及びリバースのPCRプライマー(配列番号15及び16)を合成し、ユニークな223塩基対配列をラットLMP−1 cDNAよりPCR増幅した。同じPCRプライマーで、ヒトMG63骨肉腫細胞のcDNAより類似のPCR産物を単離した。
【0099】
T−75フラスコにおいて増殖させたMG63骨肉腫細胞よりRNAを採取した。培養上清を吸引により除去し、フラスコに3.0mlのGIT溶液を同一2検体で載せて、5〜10秒間渦状に振り、生じる溶液を1.5mlエッペンドルフ管へ移した(0.6ml/管で6つの管)。標準法(Sambrook, et al.,「分子クローニング:実験マニュアルMolecular Cloning: A Laboratory Manial)」7章19頁、コールドスプリングハーバープレス(1989)及びBoden, et al., Endocrinology, 138, 2820-2828 (1997) のわずかな変更によってRNAを精製した。簡潔に言えば、0.6mlの試料に60マイクロリットルの2.0M酢酸ナトリウム(pH4.0)、550マイクロリットルの水飽和フェノール、及び150マイクロリットルのクロロホルム:イソアミルアルコール(49:1)を加えた。これらの試薬の添加後、試料を激しく撹拌し、遠心分離し(10000xg;20分;4℃)、水相を新鮮な管へ移した。イソプロパノール(600マイクロリットル)を加え、RNAを一晩−20℃で沈殿させた。この試料を遠心分離し(10000xg;20分)、上清を穏やかに吸引した。ペレットを400マイクロリットルのDEPC処理水に再懸濁させ、フェノール:クロロホルム(1:1)で1回抽出し、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)で抽出し、40マイクロリットルの酢酸ナトリウム(3.0M;pH5.2)と1.0mlの無水エタノールにおいて−20℃で一晩沈殿させた。沈殿後、試料を遠心分離し(10000xg;20分)、70%エタノールで1回洗浄し、5〜10分間空気乾燥させ、20マイクロリットルのDEPC処理水に再懸濁させた。RNA濃度を光学密度より導いた。
【0100】
全RNA(全量10.5マイクロリットルのDEPC−HO中5マイクログラム)を65℃で5分間加熱してから、4マイクロリットルの5X MMLV−RT緩衝液、2マイクロリットルのdNTP、2マイクロリットルのdT17プライマー(10ピコモル/ml)、0.5マイクロリットルのRNAsin(40U/ml)、及び1マイクロリットルのMMLV−RT(200ユニット/マイクロリットル)を含有する試験管へ加えた。この反応物を37℃で1時間インキュベートした。その後、95℃で5分間加熱することによって、MMLV−RTを不活性化した。80マイクロリットルの水の添加により試料を希釈した。
【0101】
転写する試料(5マイクロリットル)を、Boden, et al., (Endocrinology, 138, 2820-2828 (1997)) 及び Ausubel, et al.,(ポリメラーゼ連鎖反応による希少DNAの定量(Quantitation of Rare DNAs by the Polymerase Chain Reaction)「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」15章31−1、ウィリー・アンド・サンズ、ニュージャージー州トレントン(1990)に記載されるような標準法(全量50マイクロリットル)を使用するポリメラーゼ連鎖反応へ処した。簡潔に言えば、水と適正量のPCR緩衝液(25mM MgCl、dNTP、フォワード及びリバースプライマー(RLMPUでは;配列番号15及び16))、32P−dCTP、及びDNAポリメラーゼを加えた。プライマーは、放射活性バンド検出用の22サイクルとスクリーニングプローブとして使用のPCR産物の増幅用の33サイクルで確実に作動するように設計した(94℃,30秒;58℃,30秒;72℃,20秒)。
【0102】
アガロースゲル精製したMG63骨肉腫由来PCR産物の配列決定により、RLMPU PCR産物に95%より多く相同な配列を得た。この配列をHLMPユニーク領域(HLMPU;配列番号6)と命名する。
【0103】
実施例17:逆転写酵素由来MG63 cDNAのスクリーニング
実施例7に記載のような特定プライマー(配列番号16及び17)を使用して、PCRでスクリーニングを実施した。717塩基対のMG63 PCR産物をアガロースゲル精製して、所与のプライマー(配列番号12、15、16、17、18、27、及び28)で配列決定した。両方向に少なくとも2回で配列を確定した。このMG63配列を互いに対して、次いで全長ラットLMP cDNA配列に対して並置して、部分的なヒトLMP cDNA配列(配列番号7)を得た。
【0104】
実施例18:ヒト心臓cDNAライブラリーのスクリーニング
ノーザンブロット実験に基づいて、ヒト心臓筋肉が含まれる、いくつかの異なる組織によって異なるレベルでLMP−1が発現されることが判明した。故に、ヒト心臓cDNAライブラリーを試験した。このライブラリーを寒天プレート(LB寒天ボトム)上に5x10pfu/mlでプレートし、プレートを37℃で一晩増殖させた。フィルター膜をプレート上に2分間載せた。その後で、このフィルターを変性させ、濯ぎ、乾燥させて、UVで架橋連結させ、プレハイブリダイゼーション緩衝液(2XPIPES[pH6.5];5%ホルムアルデヒド、1% SDS、100g/ml 変性サケ精子DNA)において42℃で2時間インキュベートした。放射標識化、LMPユニークの223塩基対プローブ(32P、ランダムプライマー標識化;配列番号6)を加え、42℃で18時間ハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションに続き、この膜を室温で1回(10分、1xSSC,0.1% SDS)、55℃で3回(15分、0.1xSSC,0.1% SDS)洗浄した。製造業者のプロトコール(ストラタジーン、カリフォルニア州ラホヤ)に従って、オートラジオグラフィーにより同定した、二重陽性のプラーク精製した心臓ライブラリークローンをラムダファージミドとしてレスキューした。
【0105】
陽性クローンの制限消化物より、様々なサイズのcDNAインサートを生じた。長さが600塩基対より大きいインサートを配列決定による初回スクリーニング用に選択した。これらのインサートを、実施例11に記載されるような標準法によって配列決定した。
【0106】
1つのクローン、7番はまた、配列番号11〜14、16、及び27に対応するプライマーを使用する自動化配列解析へ処した。これらの方法により得られた配列は、定常的に97〜100%相同であった。クローン7(心臓ライブラリー由来の部分ヒトLMP−1 cDNA;配列番号8)は、翻訳領域において、ラットLMP cDNA配列に87%より多く相同である配列を含有した。
【0107】
実施例19:全長ヒトLMP−1 cDNAの決定
MG63ヒト骨肉腫細胞cDNA配列とヒト心臓cDNAクローン7配列の重複領域を使用して、これら2つの配列を並置して、1644塩基対の完全なヒトcDNA配列を導いた。NALIGN(PCGENEソフトウェアパッケージのプログラム)を使用して、この2つの配列を並置した。この2つの配列の重複領域は、MG63 cDNA(配列番号7)中のヌクレオチド672での単一ヌクレオチド置換を除いて完全な相同性を有するほぼ360塩基対を構成し、クローン7は、対応するヌクレオチド516で「G」の代わりに「A」を有した(配列番号8)。
【0108】
MG63骨肉腫cDNAクローンの「G」置換を使用して、SEQIN(PCGENEの別のサブプログラム)を使用して、この2つの並置配列を結びつけた。生じる配列を配列番号9に示す。この新規のヒト由来配列のラットLMP−1 cDNAとの並置をNALIGNで達成した。この全長ヒトLMP−1 cDNA配列(配列番号9)は、ラットLMP−1 cDNA配列の翻訳部分に対して87.3%相同である。
【0109】
実施例20:ヒトLMP−1のアミノ酸配列の決定
ヒトLMP−1の推定アミノ酸配列をPCGENEサブプログラムのTRANSLで決定した。配列番号9中のオープンリーディングフレームは、457のアミノ酸(配列番号10)を含んでなるタンパク質をコードする。PCGENEサブプログラムのPalignを使用して、ヒトLMP−1アミノ酸配列がラットLMP−1アミノ酸配列に対して94.1%相同であることを見出した。
【0110】
実施例21:ヒトLMP cDNAの5’非翻訳領域の決定
cDNA末端の5’迅速増幅(5’RACE)プロトコールを使用して、MG63の全RNAの入れ子RT−PCRによって、MG63の5’cDNAを増幅した。この方法には、3’末端に2つの縮重ヌクレオチド位置があるロックドッキング(lock-docking)オリゴ(dT)プライマーを使用する第一鎖cDNA合成が含まれた(Chenchik, et al., CLONTECHniques, X:5 (1995);Borson et al., PC Methods Applic., 2, 144 (1993))。第二鎖合成は、Gubler, et al. (Gene, 2, 263 (1983)) の方法に従って、大腸菌DNAポリメラーゼI、RNアーゼH、及び大腸菌DNAリガーゼのカクテルで実施した。T4 DNAポリメラーゼでの平滑末端の創出後、二本鎖cDNAを断片(5’−CTAATACGACTCACTATAGGGCTCGAGCGGCCGCCCGGGCAGGT−3’)(配列番号19)へ連結した。RACEに先立って、アダプター連結cDNAをMarathon RACE反応に適した濃度へ希釈した(1:50)。次いで、アダプター連結二本鎖cDNAを特異的にクローニングされるように用意した。
【0111】
センスプライマーとしてのアダプター特異的オリゴヌクレオチド、5’−CCATCCTAATACGACTCACTATAGGGC−3’(API)(配列番号20)と実施例16に記載したユニーク領域(HLMPU)由来の遺伝子特異プライマー(GSP)を用いて、第一ラウンドのPCRを実施した。入れ子プライマーのGSP1−HLMPU(アンチセンス/リバースプライマー)(配列番号23)及びGSP2−HLMPUF(配列番号24)(実施例16を参照のこと;センス/フォワードプライマー)を使用して、第二ラウンドのPCRを実施した。PCRは、抗体仲介性であるが他の点では標準のホットスタート(hot-start)プロトコールを利用する市販キット(Advantage cDNA PCRコアキット;CloneTech Laboratories社、カリフォルニア州パロアルト)を使用して実施した。MG63 cDNAのPCR条件には、初回のホットスタート変性(94℃,60秒)に続く、94℃,30秒;60℃,30秒;68℃,4分;30サイクルが含まれた。入れ子PCR産物がほぼ230塩基対であるのに対し、第一ラウンドPCR産物は、ほぼ750塩基対の長さであった。この第一ラウンドPCR産物を線状化pCR2.1ベクター(3.9Kb)中へクローニングした。M13フォワード及びリバースプライマー(配列番号11;配列番号12)を使用して、このインサートを両方向で配列決定した。
【0112】
実施例22:5’UTR付き全長ヒトLMP−1 cDNAの決定
重複しているMG63ヒト骨肉腫細胞cDNA 5’−UTR配列(配列番号21)、MG63 717塩基対配列(実施例17;配列番号8)、及びヒト心臓cDNAクローン7配列(実施例18)を並置して、1704塩基対の新規ヒトcDNA配列(配列番号22)を導いた。この並置は、NALIGN(PCGENEとOmiga 1.0の両方;Intelligenetics)で達成した。重複配列は、全717塩基対領域(実施例17)のほとんどを100%相同性で構成した。並列配置の結合は、SEQINで達成した。
【0113】
実施例23:LIMタンパク質発現ベクターの構築
実施例17及び18に記載される配列で、pHIS−5ATG LMP−1s発現ベクターの構築を行った。717塩基対クローン(実施例17;配列番号7)をClaI及びEcoRVで消化した。小断片(約250塩基対)をゲル精製した。クローン7(実施例18;配列番号8)をClaI及びXbaIで消化して、1400塩基対断片をゲル精製した。単離した250塩基対及び1400塩基対の制限断片を連結させて、約1650塩基対の断片を形成した。
【0114】
クローン7における単一ヌクレオチド置換(717塩基対PCR配列と元のラット配列に関して)により、翻訳される塩基対672のところに終止コドンが生じた。この終止コドンのために、LMP−1sという名称の末端切断(短い)タンパク質がコードされた。これは、発現ベクター(配列番号32)において使用される構築体であった。配列番号32の5’RACE配列(配列番号21)との並置により、5’UTR付きの全長cDNA配列(配列番号33)を創出した。次いで、LMP−1sのアミノ酸配列(配列番号34)を223アミノ酸のタンパク質として演繹して、ウェスタンブロットにより(実施例15におけるように)、約23.7kDの予測分子量で泳動することを確かめた。
【0115】
このpHis−ATGベクター(Invitrogen,カリフォルニア州カールスバッド)をEcoRV及びXbaIで消化した。このベクターを回収してから、650塩基対の制限断片を線状化pHis−ATG中へ連結した。この連結産物をクローニングして、増幅した。pHis−ATG−LMP−1s発現ベクター(インサートHLMP−1s付きpHIS−Aとも表記される)を標準法により精製した。
【0116】
実施例24:LMP発現ベクターでの骨結節形成及び石灰化のin vitro 誘導
実施例1に従って、ラット頭蓋冠細胞を単離し、二次培養において増殖させた。培養物は、実施例1に記載されるように、非刺激であるか、又はグルココルチコイド(GC)で刺激した。実施例25に従って、Superfect試薬(Qiagen,カリフォルニア州バレンシア)トランスフェクションプロトコールの変法を使用して、各ベクターの3マイクログラム/ウェルを二次ラット頭蓋冠骨芽細胞培養物へトランスフェクトした。
【0117】
実施例3に記載されるように、ホン・コッサ染色により石灰化結節を視覚化した。ヒトLMP−1s遺伝子産物の過剰発現だけで、骨結節形成(約203結節/ウェル)を in vitro で誘導した。結節のレベルは、GC陽性対照(約412結節/ウェル)により誘導されるもののほぼ50%であった。他の陽性対照には、pHis−LMP−Rat発現ベクター(約152結節/ウェル)とpCMV2/LMP−Rat−Fwd発現ベクター(約206結節/ウェル)が含まれ、一方、陰性対照には、pCMV2/LMP−Rat−Rev発現ベクター(約2結節/ウェル)と非処理(NT)プレート(約4結節/ウェル)が含まれた。これらのデータは、このヒトcDNAがラットcDNAと少なくとも同じくらい骨誘導性であったことを証明する。この効果は、GC刺激で観察されるものより小さかったが、最も可能性があるのは、発現ベクターの最適下限用量のためであろう。
【0118】
実施例25:in vitro 及び in vivo でのLMP誘導性の細胞分化
クローン10−4(実施例12を参照のこと)中のラットLMP cDNAをNotI及びApaIでの37℃で一晩の二重消化により、このベクターより切り出した。ベクターのpCMV2 MCS(Invitrogen,カリフォルニア州カールスバッド)を同じ制限酵素で消化した。クローン10−4及びpCMV2由来の線状cDNA断片をともにゲル精製し、抽出し、T4リガーゼで連結した。この連結DNAをゲル精製し、抽出し、増幅用の大腸菌JM109細胞を形質転換するのに使用した。陽性の寒天コロニーを選択し、NotI及びApaIで消化し、この制限消化物をゲル電気泳動法により検証した。陽性クローンよりストック培養物を調製した。
【0119】
使用する制限酵素がXbaI及びHindIIIであること以外は類似の形式で、リバースベクターを調製した。これらの制限酵素を使用したので、クローン10−4由来のLMP cDNA断片は、pRc/CMV2中へ逆の(即ち、翻訳不能な)配向で挿入された。この産生した組換えベクターをpCMV2/RLMPと命名した。
【0120】
適正量のpCMV10−4(60nMの最終濃度[3マイクログラム]が最適である;この実験には、0〜600nM/ウェル[0〜30マイクログラム/ウェル]の範囲の最終濃度が好ましい)を最少イーグル培地(MEM)に再懸濁させて450マイクロリットルの最終容量として、10秒間激しく撹拌した。Superfectを加え(7.5マイクロリットル/mlの最終濃度)、この溶液を10秒間激しく撹拌してから、室温で10分間インキュベートした。このインキュベーションに続き、10% FBSを補充したMEM(1ml/ウェル;6ml/プレート)を加え、ピペット操作により混合した。
【0121】
次いで、生じる溶液を洗浄済みROB培養物上へ速やかにピペット操作した(1ml/ウェル)。5% COを含有する加湿気体において、この培養物を37℃で2時間インキュベートした。その後、この細胞を無菌PBSで1回穏やかに洗浄し、適正な通常のインキュベーション培地を加えた。
【0122】
結果は、pCMV10−4で誘導したすべてのラット細胞培養物における有意な骨結節形成を証明した。例えば、pCMV10−4でトランスフェクトされた細胞は、429結節/ウェルを産生した。Trmへ曝露した陽性対照培養物は、460結節/ウェルを産生した。対照的に、処理を受けなかった陰性対照は、1結節/ウェルを産生した。同様に、培養物をpCMV10−4(リバース)でトランスフェクトしたとき、結節は観察されなかった。
【0123】
in vivo での de novo 骨形成を実証するために、4〜5週齢の正常ラット(rnu/+;劣性無胸腺状態について異種接合)の後肢より骨髄を吸引した。この吸引した骨髄細胞をαMEMに洗浄し、遠心分離し、ペレットを10mM Tris(pH7.4)中0.83% NHClに再懸濁させることによって、RBCを溶解した。残る骨髄細胞をMEMで3回洗浄し、3x10細胞につき9マイクログラムのpCMV−LMP−1s(正又は負の配向)で2時間トランスフェクトした。次いで、このトランスフェクトした細胞をMEMで2回洗浄し、3x10細胞/mlの濃度で再懸濁させた。
【0124】
この細胞懸濁液(100マイクロリットル)を無菌ピペットより無菌の2x5mm I型ウシコラーゲンディスク(Sulzer Orthopaedics,コロラド州フィートリッジ)へ塗布した。このディスクを4〜5週齢の無胸腺ラット(rnu/rnu)の頭蓋、胸部、腹部、又は脊柱に外科的に皮下移植した。この動物を3〜4週目に犠牲にし、この時点でディスク又は外科領域を切り出し、70%エタノールに固定した。この固定化標本をX線撮影法により解析し、Goldner Trichromeで染色した5マイクロメートル厚の切片について、非脱灰化の組織学的検査を実施した。コラーゲンディスクの代わりに、徐活力化(グアニジン抽出)、ミネラル除去した骨マトリックス(Osteotech,ニュージャージー州シューズベリ)を使用する実験も実施した。
【0125】
X線撮影は、LMP−1sでトランスフェクトされた骨髄細胞を含有する元のコラーゲンディスクの形態に一致する、高レベルの石灰化骨形成を明らかにした。陰性対照(翻訳タンパク質をコードしないLMP−1s cDNAの負配向バージョンでトランスフェクトした細胞)においては、石灰化骨形成を観察せず、担体の吸収は、十分進行しているように見えた。
【0126】
組織学は、LMP−1sでトランスフェクトされたインプラント中の骨芽細胞に沿って並ぶ新たな骨小柱を明らかにした。陰性対照の担体の部分的な再吸収部位には、骨を認めなかった。
【0127】
18セット(9つの陰性対照pCMV−LMP−REVと9つの実験pCMV−LMP−1s)のインプラントを無胸腺ラットの腰椎及び胸椎の間で交替する部位へ加えた、さらなる実験のX線撮影は、0/9の陰性対照インプラントが脊椎の間の骨形成(脊椎融合)を明示することを証明した。pCMV−LMP−1s処理インプラントの9つすべては、脊椎の間にしっかりとした骨融合を明示した。
【0128】
実施例26:実施例2及び3で実証した配列からのpHIS−5’ATG LMP−1s発現ベクターの合成
717塩基対クローン(実施例17)をClaI及びEcoRV(ニューイングランドバイオロジカルズ、シティ、マサチューセッツ州)で消化した。小断片(約250塩基対)をゲル精製した。クローン番号7(実施例18)をClaI及びXbaIで消化した。その消化物より1400塩基対の断片をゲル精製した。単離した250塩基対及び1400塩基対のcDNA断片を標準法により連結して、約1650塩基対の断片を形成した。pHis−Aベクター(Invitrogen)をEcoRV及びXbaIで消化した。この線状化ベクターを回収し、キメラの1650塩基対cDNA断片へ連結した。この連結産物をクローニングして、標準法により増幅し、このphis−A−5’ATG LMP−1s発現ベクター(インサートHLMP−1s付きベクターpHis−Aとも表記される)を先に記載のようにATCCに寄託した。
【0129】
実施例27:pHis−5’ATG LMP−Is発現ベクターでの骨結節形成及び石灰化の in vitro 誘導
実施例1に従って、ラット頭蓋冠細胞を単離し、二次培養において増殖させた。培養物は、実施例1に従って、非刺激であるか、又はグルココルチコイド(GC)で刺激した。この培養物を、実施例25に記載されるように、3マイクログラムの組換えpHis−AベクターDNA/ウェルでトランスフェクトした。実施例3に従って、ホン・コッサ染色により石灰化結節を視覚化した。
【0130】
ヒトLMP−1s遺伝子産物の過剰発現だけで(即ち、GC刺激なしに)、有意な骨結節形成(約203結節/ウェル)を in vitro で誘導した。これは、GC陽性対照(約412結節/ウェル)に曝露された細胞により産生される結節の量のほぼ50%である。pHisA−LMP−Rat発現ベクター(約152結節/ウェル)とpCMV2/LMP−Rat−Fwd(約206結節/ウェル)でトランスフェクトした培養物でも同様の結果を得た。対照的に、陰性対照のpCMV2/LMP−Rat−Revは(約2結節/ウェル)を生じ、非処理プレートでは、約4結節/ウェルを認めた。これらのデータは、このヒトLMP−1 cDNAがこのモデル系においてラットLMP−1 cDNAと少なくとも同じくらい骨誘導性であったことを証明する。この実験における効果は、GC刺激で観察されるものより小さかったが、ある場合、この効果は匹敵していた。
【0131】
実施例28:LMPは、可溶性骨誘導因子の分泌を誘導する
実施例24に記載されるようなラット頭蓋冠骨芽細胞培養物におけるRLMP−1又はHLMP−1の過剰発現は、陰性対照において観察されるものより有意に大きい結節形成をもたらした。LIM石灰化タンパク質の作用機序を検討するために、条件付け培地を異なる時点で採取し、10倍へ濃縮し、無菌濾過し、新鮮な血清を含有する培地においてその元の濃度へ希釈し、非トランスフェクト細胞へ4日間適用した。
【0132】
RLMP−1又はHLMP−1sでトランスフェクトした細胞より4日目に採取した条件付け培地は、トランスフェクトした細胞中のRLMP−1の直接的な過剰発現とほぼ同じくらい結節形成を誘導するのに有効であった。負配向のRLMP−1又はHLMP−1でトランスフェクトした細胞からの条件付け培地は、結節形成に対して明らかな効果を及ぼさなかった。LMP−1でトランスフェクトした培養物より4日目以前に採取した条件付け培地も結節形成を誘導しなかった。これらのデータは、LMP−1の発現が可溶性因子の合成及び/又は分泌を引き起こし、これがトランスフェクション後4日目までは有効量で培養基に出現しなかったことを示唆する。
【0133】
rLMP−1の過剰発現が骨誘導因子の培地への分泌をもたらしたので、ウェスタンブロット分析を使用して、LMP−1タンパク質が培地に存在しているかどうかを決定した。LMP−1(QDPDEE)に特異的な抗体を使用してRLMP−1タンパク質の存在を評価して、慣用の手段により検出した。LMP−1タンパク質は、培養物の細胞層にのみ見出されて、培地には検出されなかった。
【0134】
標準の25%及び100%硫酸アンモニウムでのカットに続くDE−52陰イオン交換バッチクロマトグラフィー(100mM又は500mM NaCl)によって、この可溶性骨誘導因子の部分精製を達成した。高硫酸アンモニウム、高NaClの分画中に全活性を観察した。このような局在性は、単一の因子が培地を条件付ける原因であることの可能性と一致している。
【0135】
実施例29:低用量アデノウイルスにより仲介される腰椎融合での遺伝子治療
本試験は、正常、即ち免疫適格性のウサギにおける脊椎融合を促進する、LMP−1 cDNA(配列番号2)のアデノウイルス送達の最適量を決定した。
【0136】
Adeno−QuestTMKit(Quantum Biotechnologies社、モントリオール)を使用して、CMVプロモーターにより推進されるLMP−1 cDNA(配列番号2)を用いて、複製欠損性ヒト組換えアデノウイルスを構築した。β−ガラクトシダーゼ遺伝子を含有する市販(Quantum Biotechnologies社、モントリオール)の組換えアデノウイルスを対照として使用した。
【0137】
はじめに、0.025、0.25、2.5、又は25のプラーク形成単位(pfu)のウイルス/細胞の感染多重度(「MOI」)での60分の形質導入を使用して、ラット頭蓋冠骨芽細胞培養物において骨分化を誘導するのに最適のアデノウイルス送達LMP−1(「AdV−LMP−1」)濃度を決定するために、in vitro 用量応答実験を実施した。陽性対照培養物は、10Mグルココルチコイド(「GC」)への曝露から7日目までに分化した。陰性対照培養物は非処理のままとした。14日目に、石灰化した骨結節の数を培養物のホン・コッサ染色後に計数し、培地中へ分泌されたオステオカルシンのレベル(ピコモル/mL)をラジオイムノアッセイにより測定した(平均±SEM)。
【0138】
この実験の結果を以下の表1に示す。非処理の陰性対照培養物には、自発的な結節はほとんど形成されなかった。このデータは、0.25pfu/細胞に等しいMOIが骨結節を骨誘導するのに最も有効であり、陽性対照(GC)に匹敵するレベルに達することを示す。より低いかより高い用量のアデノウイルスは、それより有効でない。
【0139】
表1
【0140】
【表1】

【0141】
次いで、in vivo 実験を実施して、最適 in vitro 用量が、骨格成熟したニュージーランド白色ウサギにおいて横突起間の突起の脊椎融合を促進することが可能であるかどうかを判定した。9匹のウサギを麻酔して、18ゲージ針を使用して、顆間窩を介して遠位大腿骨より3ccの骨髄を吸引した。次いで、バフィーコートを単離し、AdV−LMP−1で10分の形質導入を実施して、この細胞を移植用手術室へ戻した。横突起の骨皮質剥離と、AdV−LMP−1(MOI=0.4)又はAdV−βGal(MOI=0.4)のいずれか一方で形質導入した800万〜1500万個の自己有核バフィーコート細胞を含有する担体(ウサギの徐活力化した骨マトリックス又はコラーゲンスポンジのいずれか一方)の挿入により、単一レベルの後外側方腰椎関節固定術を実施した。5週後にウサギを安楽死させ、手触診、単純X線、CTスキャン、及び非脱灰組織学により脊椎融合を評価した。
【0142】
AdV−LMP−1を受けた脊椎融合部位は、9匹のウサギ全部で、確実で連続した脊椎融合の塊を誘導した。対照的に、AdV−βGal、又は低用量のAdV−LMP−1(MOI=0.04)を受けた部位は、ほとんど、又はまったく骨を作らず、担体単独に匹敵する割合(<40%)で脊椎融合をもたらした。これらの結果は、手触診、CTスキャン、及び組織学による評価と一致していた。しかしながら、単純X線撮影法は、存在する骨の量を、特に対照部位において過大評価する場合があった。試験した担体材料のいずれでもLMP−1 cDNA送達と骨誘導は成功した。アデノウイルスベクターに対する全身性又は局所性の免疫応答の証拠はなかった。
【0143】
上記のデータは、これまでに検証されたウサギ脊椎融合モデルに一致した骨誘導を実証する。自己骨髄細胞を手術中 ex vivo 遺伝子導入(10分)で使用するプロトコールは、一晩の形質導入や数週間の培養における細胞膨張を必要とする他の方法よりも臨床的に実行可能な手順である。さらに、組換えアデノウイルスの最も有効な量(MOI=0.25)でも、他の遺伝子治療応用に報告されている用量(MOI=40〜500)より実質的に低かった。このことは、LMP−1が細胞内シグナル伝達分子であり、強力なシグナル増幅カスケードを有する可能性があるという事実によるものであると発明者は考える。さらに、細胞培養において骨を誘導したのと同じ濃度のAdV−LMP−1が in vivo でも有効であったという観察事実も、他の増殖因子の用量では、細胞培養から動物実験へ翻案されるときに増加が通常は求められることに照らせば、驚くべきことであった。以上をまとめると、上記の観察事実は、アデノウイルスを使用してLMP−1 cDNAを送達する局所の遺伝子治療が可能であり、低用量が必要とされることで、アデノウイルスベクターに対する免疫応答という負の効果を最小化する可能性があることを示している。
【0144】
実施例30:LMP−1 cDNAで造骨する遺伝子治療への末梢静脈血の有核細胞(バフィーコート)の使用
4匹のウサギにおいて、我々は上記(実施例29)のように脊椎融合手術を実施したが、但し、形質導入される細胞は、骨髄ではなくて、静脈血由来のバフィーコートであった。これらの細胞をAdLMP又はpHIS−LMPプラスミドでトランスフェクトして、骨髄細胞を使用したときと同等の成功した結果を得た。通常の静脈血細胞を遺伝子送達に使用するというこの発見は、遺伝子治療を臨床的により実行可能にする。なぜなら、全身麻酔下での痛ましい骨髄採取を回避して、1ミリリットルにつき2倍多い細胞の出発材料が得られるからである。
【0145】
実施例31:ヒトLMP−1スプライス変異体の単離
イントロン/エクソンmRNA転写物のスプライス変異体は、シグナル伝達及び細胞/組織発生において比較的一般的な調節機序である。様々な遺伝子のスプライス変異体は、タンパク質−タンパク質、タンパク質−DNA、タンパク質−RNA、及びタンパク質−基質の相互作用を改変することが示されてきた。スプライス変異体はまた、遺伝子発現の組織特異性を制御して、様々な形態(それ故に、機能)が様々な組織において発現されることを可能にする。スプライス変異体は、細胞における一般的な調節現象である。LMPスプライス変異体は、神経再生、筋肉再生、又は他の組織の発生のように、他の組織において諸効果をもたらす可能性があるかもしれない、
ヒト心臓cDNAライブラリーについてHLMP−1配列のスプライス変異体をスクリーニングするために、配列番号22の部分に対応する1対のPCRプライマーを調製した。標準技術を使用して合成したフォワードのPCRプライマーは、配列番号22のヌクレオチド35〜54に対応する。これは、以下の配列を有する:
5’GAGCCGGCATCATGGATTCC3’ (配列番号35)
配列番号22のヌクレオチド820〜839の逆相補体である、リバースのPCRプライマーは、以下の配列を有する:
5’GCTGCCTGCACAATGGAGGT3’ (配列番号36)
このフォワード及びリバースのプライマーを使用して、94℃30秒間、64℃30秒間、及び72℃1分、30回繰り返しのサイクル処理プロトコールに続き、72℃で10分インキュベーションを使用する標準技術によって、ヒト心臓cDNA(ClonTech,カタログ番号7404−1)についてHLMP−1に類似の配列をスクリーニングした。増幅cDNA配列をゲル精製して、配列決定のためにEmory DNA Sequence Core Facilityへ提出した。標準技術を使用してこのクローンを配列決定して、配列をPCGENE(Intelligenetics;プログラムSEQUIN及びNALIGN)で検証して、配列番号22に対する相同性を決定した。次いで、配列番号22に比較して推定される可変スプライス部位のある2つの相同ヌクレオチド配列を、IntelligeneticsのTRANSLプログラムで、そのそれぞれのタンパク産物へ翻訳した。
【0146】
これらの2つの新規ヒトcDNA配列の1つ(配列番号37)は、1456塩基対を含む:
【0147】
【化1】

【0148】
119塩基対断片の欠失(X間)と17塩基対断片(下線部分)の追加により引き起こされるリーディングフレームシフトにより、以下の導出アミノ酸配列(配列番号38)を有する末端切断遺伝子産物を生じる:
【0149】
【化2】

【0150】
【化3】

【0151】
この423アミノ酸のタンパク質は、上記に図示したヌクレオチド変化によるものである、強調した領域中の配列(アミノ酸94〜99)以外は、配列番号10に示すタンパク質に対して100%相同性を示す。
【0152】
第二の新規ヒト心臓cDNA配列(配列番号39)は、1575塩基対を含む:
【0153】
【化4】

【0154】
17塩基対断片(太字、イタリック、及び下線の部分)の追加により引き起こされるリーディングフレームシフトにより、位置565〜567(下線部)に初期翻訳終止コドンを生じる。
【0155】
導出アミノ酸配列(配列番号40)は、153アミノ酸からなる:
【0156】
【化5】

【0157】
このタンパク質は、配列番号10に対する100%相同性をアミノ酸94まで示すが、ここでこのヌクレオチド配列に図示される17塩基対断片の追加によりフレームシフトが生じる。アミノ酸94〜153では、このタンパク質は、配列番号10に相同ではない。配列番号10のアミノ酸154〜157は、ヌクレオチド配列に図示される初期の終止コドンにより、存在していない。
【0158】
実施例32:ゲノムHLMP−1ヌクレオチド配列
出願人は、HLMP−1発現に関連した推定調節要素が含まれる、HLMP−1をコードするゲノムDNA配列を同定した。全体のゲノム配列を配列番号41に示す。この配列は、AC023788(クローンRP11−564G9)(ゲノム配列決定センター、ワシントン医科大学校、ミズーリ州セントルイス)より導いた。
【0159】
HLMP−1の推定プロモーター領域は、配列番号41中のヌクレオチド2,660−8,733に及ぶ。この領域は、他のものの中でも、少なくとも10の潜在的なグルココルチコイド応答要素(「GRE」)(ヌクレオチド6148−6153、6226−6231、6247−6252、6336−6341、6510−6515、6552−6557、6727−6732、6752−6757、7738−7743、及び8255−8260)、ショウジョウバエの decapentaplegic(「SMAD」)結合部位に対する12の潜在的なSma−2相同体(ヌクレオチド3569−3575、4552−4558、4582−4588、5226−5232、6228−6234、6649−6655、6725−6731、6930−6936、7379−7384、7738−7742、8073−8079、及び8378−8384)、及び3つのTATAボックス(ヌクレオチド5910−5913、6932−6935、及び7380−7383)を含む。この3つのTATAボックス、GREの全部、及びSMAD結合要素(「SBE」)の8つは、配列番号41中のヌクレオチド5,841−8,733に及ぶ領域に集まっている。これらの調節要素は、例えば、骨形成のプロセスに関与するタンパク質をコードする外因性ヌクレオチド配列の発現を調節するために使用することができる。このことは、骨形成及び修復に関連する治療因子又は遺伝子、並びに組織分化及び発生に関連した因子又は遺伝子の全身投与を可能にするだろう。
【0160】
推定調節要素に加えて、HLMP−1をコードするヌクレオチド配列に対応する13のエクソンを同定した。これらのエクソンは、配列番号41中の以下のヌクレオチドに及ぶ。
【0161】
【化6】

【0162】
HLMP−2には、ヌクレオチド14887−14904に及ぶ、別のエクソン(エクソン5A)がある。
実施例33:椎間板細胞におけるHLMP−1の発現
LIM石灰化タンパク質−1(LMP−1)は、骨性及び非骨性の組織において細胞分化を指令することができる細胞内タンパク質である。本実施例は、椎間板細胞においてヒトLMP−1(HLMP−1)を発現することがプロテオグリカン合成を高めて、より軟骨細胞の表現型を促進することを実証する。さらに、細胞の遺伝子発現に及ぼすHLMP−1発現の効果を、アグリカン及びBMP−2遺伝子発現を測定することによって実証した。スプリーグ−ドーリーラットより、穏やかな酵素消化によって腰椎間板細胞を採取し、10% FBSを補充したDMEM/F12において単層で培養した。次いで,これらの細胞を約200,000細胞/ウェルで6つのウェルプレートへ分けて、約300,000細胞/ウェルに細胞が達するまで、約6日間培養した。培養基を1% DMEM/F12へ変更して、これを0日目とみなした。
【0163】
サイトメガロウイルス(「CMV」)プロモーターへ機能可能的に連結したHLMP−1 cDNAを含んでなる複製欠損5型アデノウイルスについては、例えば、米国特許第6,300,127号にすでに記載されている。この陰性対照アデノウイルスは、HLMP−1 cDNAがLacZ cDNAにより置換されること以外は、同一であった。陽性対照として、100ナノグラム/ミリリットルの濃度のBMP−2の継続存在下に非感染培養物をインキュベートした。
【0164】
0日目に、1% FBSを含有する300マイクロリットルの培地において、培養物を37℃で30分間アデノウイルスに感染させた。グリーン蛍光タンパク質(「GFR」)遺伝子を含有するアデノウイルス(「AdGFP」)で処理した細胞の蛍光標示式細胞分取器(「FACS」)分析を実施して、トランス遺伝子の発現に最適な用量範囲を決定した。この細胞を、ヒトLMP−1 cDNAを含有するアデノウイルス(AdHLMP−1)(0、100、300、1000、又は3000のMOIで)、又はLacZマーカー遺伝子を含有するアデノウイルス(AdLacZ、1000のMOI)(陰性対照)で処理した。感染後3日目と6日目に培養基を変えた。
【0165】
プロテオグリカン産生は、ジメチルメチレンブルー(「DMMB」)熱量測定アッセイを使用して、培養基(0、3、及び6日目)に存在する硫酸化グリコサミノグリカン(sGAG)を測定することによって評価した。
【0166】
アグリカン及びBMP−2 mRNAの定量では、細胞を6日目に採取して、Trizol技術によりmRNAを抽出した。逆転写酵素を使用してmRNAをcDNAへ変換し、リアルタイムPCRに使用して、それによりアグリカン及びBMP−2メッセージの相対産生量を決定した。アグリカン及びBMP−2用のリアルタイムプライマーは、先の実験において設計して、試験した。Cybergreen技術を使用した。標準曲線を使用して、mRNA産生量を定量した。
【0167】
トランスフェクトした細胞について、光学顕微鏡で細胞の形態を報告した。細胞は、AdHLMP−1(MOI 1000)処理ではより球状になったが、AdLacZ処理ではそうならなかった。AdLacZ感染は、細胞形態を有意に変化させなかった。
【0168】
ADGFPにより1000のMOIで感染させたラット椎間板細胞のFACS分析は、最高の百分率(45%)の細胞が感染したことを示した。
sGAG産生とAdhLMP−1 MOIの間には、用量依存性の増加があった。これらのデータを図1に見るが、これは、単層培養のラット椎間板細胞における、異なるMOIでのHLMP−1過剰発現後のsGAGの産生を示す。この結果は、0日目の非処理細胞へ正規化した。誤差のバーは、平均の標準誤差を表す。図1に示すように、3日目に観察されるsGAG産生は相対的に少なく、トランスフェクションと細胞のGAG産生の間にラグタイムがあることを示す。AdLacZでの処理は、sGAG産生を有意に変化させなかった。図1にまた見られるように、AdhLMP−1の最適用量は、1000のMOIでのものであり、6日目に非処理対照に対して260%のsGAG産生の亢進をもたらした。これより高いか又は低いAdhLMP−1の用量は、減少した応答をもたらす。
【0169】
AdhLMP−1投与量(MOI)のsGAG産生に及ぼす効果をさらに図2に例示する。図2は、異なるMOIのAdhLMP−1での処理後6日目のラット椎間板細胞のsGAGレベルを示すチャートである。図2よりわかるように、AdhLMP−1の最適用量は、1000のMOIであった。
【0170】
アグリカン及びBMP−2 mRNAの産生を図3に見る。この図は、HLMP−1の過剰発現後のアグリカン及びBMP−2 mRNAの増加を実証する。6日目のラット椎間板細胞より抽出したmRNAのリアルタイムPCRを実施して、250のMOIのADhLMP−1で処理した細胞と無処理(「NT」)細胞を比較した。図3のデータは、非処理試料に対する増加百分率として表される。図3に例示するように、AdhLMP−1処理に続いて、アグリカン及びBMP−2 mRNAの有意な増加を認めた。BMP−2発現の増加は、BMP−2が、プロテオグリカン合成のHLMP−1刺激に仲介する下流の遺伝子であることを示唆する。
【0171】
上記のデータは、椎間板細胞のプロテオグリカン合成を高めるのにAdhLMP−1でのトランスフェクションが有効であることを実証する。最高のトランス遺伝子発現をもたらすウイルスの用量(MOI 1000)はまた、sGAGの最高の誘導をもたらし、HLMP−1発現とsGAG誘導の間の相関性を示唆する。これらのデータは、HLMP−1遺伝子治療が椎間板におけるプロテオグリカン合成を高める方法であること、そしてHLMP−1が椎間板疾患を治療するための薬剤であることを示す。
【0172】
図4Aは、異なるMOIのAd−hLMP−1での感染後12時間のHLMP−1 mRNA発現を示すチャートである。図4Aでは、異なる用量(MOI)のAd−hLMP−1ウイルスで外因性LMP−1発現を誘導し、リアルタイムPCRで定量した。このデータは、比較目的のために、Ad−LMP−1 MOI 5からのHLMP−1 mRNAレベルへ正規化している。陰性対照群、無処理(「NT」)、又はAd−LacZ処理(「LacZ」)ではHLMP−1が検出されなかった。用量依存的な形式のHLMP−1 mRNAレベルは、25及び50のMOIでほぼ8倍のプラトーに達した。
【0173】
図4Bは、感染後3〜6日目の培地におけるsGAGの産生を示すチャートである。DMMBアッセイを使用して、感染後3〜6日の全sGAG産生を定量した。図4Bのデータは、対照(即ち、無処理)群へ正規化している。図4Bよりわかるように、sGAGには用量依存性の増加があり、25及び50のMOIで、対照に優る約3倍増のピークに達した。陰性対照、25のMOIでのAd−LacZは、sGAGの増加をもたらさない。図4Bにおいて、それぞれの結果は、3つの試料のSDを付した平均値として表される。
【0174】
図5は、sGAGの産生の経時変化を示すチャートである。図5からわかるように、25及び50のMOIでは、3日目にsGAG産生が有意に増加した。6日目に、AdLMP−1に応答したsGAG産生の用量依存性の増加があった。sGAG増加のプラトーレベルは、25のMOIで達成された。図5からまたわかるように、AdLacZ(「LacZ」)での処理は、sGAG産生を有意に変化させなかった。それぞれの結果を6〜9の試料についてのSDを付した平均値として表す。図5において、「**」は、P値が非処理対照に対して<0.01であるデータ点を示す。
【0175】
図6A及び6Bは、ラット繊維輪細胞におけるLMP−1過剰発現に対する遺伝子応答をアグリカン及びBMP−2についてそれぞれ示すチャートである。25のMOIのAd−LMP−1(「LMP−1」)での感染後3日目に、定量的リアルタイムPCRを実施した。図6A及び6Bからわかるように、アグリカン及びBMP−2の遺伝子発現は、非処理対照(「NT」)に比較して、Ad−LMP−1での感染後に有意に増加した。さらに、25のMOIのAdLacZ(「LacZ」)での処理は、非処理対照に比較して、アグリカン又はBMP−2の遺伝子発現をいずれも有意に変化させなかった。図6A及び6Bにおいて、それぞれの結果は、6つの試料についてのSDを付した平均値として表す。図6A及び6Bにおいて、「**」は、P値がP<0.01であるデータ点を示す。
【0176】
図7は、25のMOIのAdLMP−1で感染後のラット繊維輪細胞におけるHLMP−1 mRNAレベルの時間経過を示すグラフである。このデータは、18Sと過剰発現LMP−1プライマーの複製計数を使用する標準化の後で、5のMOIのAdLMP−1に優る増加倍率として表す。図7からわかるように、HLMP−1 mRNAは、感染後早くも12時間で有意にアップレギュレートされた。さらに、1日目と3日目の間には、発現レベルの顕著な増加があった。図7のそれぞれの結果は、6つの試料についてのSDを付した平均値として表す。
【0177】
図8は、HLMP−1過剰発現に応答したBMP及びアグリカンのmRNAレベルの変化を示すチャートである。BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7、及びアグリカンのmRNAレベルは、25のMOIのAd−hLMP−1での感染後の異なる時点でのリアルタイムPCRで決定した。図8からわかるように、BMP−2 mRNAは、AdLMP−1での感染後早くも12時間で有意にアップレギュレートされた。一方、アグリカン mRNAは、感染後3日目までアップレギュレートされなかった。それぞれの結果は、6つの試料についてのSDを付した平均値として表す。図8において、「**」は、非処理対照に対するAdLMP−1での感染についてP値が<0.01であるデータ点を示す。
【0178】
図9は、HLMP−1発現に応答したsGAG産生亢進の時間経過を示すグラフである。図9のデータでは、ラット繊維輪細胞を25のMOIのAd−hLMP−1で感染した。感染後3日ごとに培地を変えて、DMMBアッセイでsGAGを検定した。このデータは、sGAG産生が6日目にプラトーに達し、9日目でも実質的に維持されることを示す。
【0179】
図10は、sGAG産生におけるLMP−1仲介性の増加に対するノギン(BMPアンタゴニスト)の効果を示すチャートである。図10に見られるように、ラットの繊維輪細胞を25のMOIのAd−LMP−1で感染すると、産生されるsGAGが3日目と6日目の間で3倍増加した。この増加は、3200ng/ml及び800ng/mlの濃度のノギン(BMPアンタゴニスト)の添加により阻止された。しかしながら、図10に示すように、ノギンは、非感染細胞におけるsGAG産生を有意に改変しなかった。図10にまた見られるように、100ng/mlのrhBMP−2での刺激は、BMP−2の添加後3日目と6日目の間でsGAG産生の3倍増加をもたらした。800ng/mlのノギンは、この増加も阻止した。
【0180】
図11は、単層培養6日後の培地における、LMP−1のsGAGに対する効果を示すチャートである。このデータ点は、非処理細胞に優る増加倍率として表す。図11に示すように、CMVプロモーターの付いたLMP−1も、AAVベクターにより送達されるとき、単層のラット椎間板細胞によりグリコサミノグリカン合成を刺激するのに有効である。
【0181】
表2:SYBRグリーンのRT−PCR及びリアルタイムPCR用のプライマー配列
【0182】
【表2】

【0183】
表2中のGAPDHは、グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼを意味する。
表3:TaqMan(登録商標)のリアルタイムPCR用のプライマー及びプローブ配列
【0184】
【表3】

【0185】
TaqMan(登録商標)リボソームRNA制御試薬(パート番号4308329、アプライド・バイオシステムズ、カリフォルニア州フォスターシティ、アメリカ)を18SリボソームRNA(rRNA)遺伝子のフォワードプライマー、リバースプライマー、及びプローブに使用した。
【0186】
骨形成の機序−多重BMPの誘導の証拠
動物及び in vitro 試験により、比較的低い用量のアデノウイルス又はプラスミドベクターを使用するLIM石灰化タンパク質−1(LMP−1)cDNAの ex vivo 遺伝子移入での衝撃的で一貫した骨形成効果が実証されている(Boden, et al.,「Volvo基礎科学賞:新規骨誘導タンパク質(LMP−1)をコードするcDNAを用いた局所遺伝子治療による腰椎融合(Volvo Award in Basic Sciences: Lumbar Spine Fusion by Local Gene Thrapy with a cDNA Encoding a Novel Osteoinductive Protein (LMP-1))」Spine, 23, 2486-2492 (1998))。しかしながら、LMP−1の作用機序、形質導入された細胞がどのくらい長く生存するのかということ、あるいは、どの骨誘導増殖因子及び細胞が新しい骨及び骨芽細胞の分化の誘導に参画するのかということについて、ほとんどわかっていない(Boden, et al.,「LIMドメインタンパク質、LMP−1は、骨形成に及ぼすBMP−6の効果に仲介する(LMP-1, A LIM-Domain Protein, Mediates BMP-6 Effects on Bone Formation)」Endocrinology, 139, 5125-5134 (1998) 及び Boden, et al., Spine, 23, 2486-2492 (1998) を参照のこと)。さらに、骨形成の in vivo 機序(即ち、軟骨内か膜性か)も決定されていない。LMP−1作用の機序を理解することは、臨床現場におけるLMP−1誘導性の骨形成の最適制御と、さらに、骨芽細胞分化に関与する細胞内シグナル伝達経路の理解に有用であろう。
【0187】
LMP−1は、異種LIMドメインタンパク質ファミリーのメンバーであり、骨芽細胞分化と直接関連づけられた最初のメンバーである(Kong, et al.,「筋LIMタンパク質は、MyoDの活性を亢進することによって筋発生を促進する(Muscle LIM Protein Promotes Myogenesis by Enhancing the Activity of MyoD)」Mol. Cell. Biol., 17, 4750-4760 (1997))。LMP−1は、グルココルチコイドにより刺激されたラット頭蓋冠の骨芽細胞由来のメッセンジャーリボ核酸(mRNA)において同定され、その後、骨肉腫の相補性デオキシリボ核酸(cDNA)ライブラリーより単離された(Boden, et al., Endocrinology, 139, 5125-5134 (1998))。細胞表面受容体を介して作用する細胞外タンパク質であるBMPと異なり、LMP−1は、骨芽細胞分化に直接関与する細胞内シグナル伝達分子であると考えられている(Boden, et al., Spine, 20, 2626-2632 (1995);Cook et al.,「非ヒト霊長動物における分節欠損の治癒に及ぼす組換えヒト骨形態形成タンパク質−1の効果(Effect of Recombinant Human Osteogenic Protein-1 on Healing of Segmental Defects in Non-Human Primates)」J. Bone Joint Surg., 77-A, 734-750 (1995);Schimandle, et al.,「組換えヒト骨形態形成タンパク質−2(rhBMP−2)を用いた実験脊椎融合(Experimental Spinal Fusion with Recombinant Human Bone Morphogenetic Protein-2 (rhBMP-2))」Spine, 20, 1326-1337 (1995))。従って、LMP−1の治療使用は、そのcDNAの遺伝子移入を伴う場合がある。骨発生とのその関連性と抑制及び過剰発現実験の結果に基づいて、LMPは、その骨誘導活性を伝える可溶性因子の分泌を誘導し、骨芽細胞の in vitro 及び in vivo での分化及び成熟化に不可欠のレギュレーターであると考えられる。
【0188】
以下に記載するのは、1)LMP−1により誘導される分泌される骨誘導因子の候補物を同定する;2)LMP−1により誘導される骨形成の組織学的順序及び種類を記載する;及び3)LMP−1を過剰発現する移植細胞が in vivo でどのくらい長く生存するかを決定するために実施する試験である。
【0189】
この試験では、ヒト肺癌(A549)細胞を使用して、LMP−1過剰発現が骨形態形成タンパク質の発現を in vitro で誘導するかどうかを決定した。LMP−1又はLacZ cDNAを含有する組換え複製欠損ヒトアデノウイルス5型で培養A549細胞を感染させた。48時間後に免疫組織化学を使用して、細胞を分析した。最後に、上記2つのウイルスの1つを感染させたヒトバフィーコート細胞をロードしたコラーゲンディスクからなる皮下インプラントを16匹の無胸腺ラットへ与えた。ラットを一定間隔で安楽死させ、外植片を組織学及び免疫組織化学により分析した。
【0190】
材料と方法
フェーズ1:LMP−1で誘導される骨誘導因子の in vitro 検出
上記のように、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター付きのヒトLMP−1 cDNAを移入ベクターへクローニングして、引き続き、組換え複製欠損(E1、E3欠失)アデノウイルスへ移入した。
【0191】
ヒト肺癌細胞(A549)は、ヒト5型アデノウイルスによるその高感染性で知られている。これらの細胞を2ウェルチャンバスライド(Nalge Nunc International,イリノイ州ナパーヴィル)に50,000細胞/cmの密度でまき、10%胎児ウシ血清(FBS)を補充したF12 Kaighn培地(ギブコBRL)において繁殖させ、加湿5% COインキュベーターにおいて37℃で増殖させた。
【0192】
A549細胞を、10pfu/細胞の感染多重度(MOI)で、チャンバ上に37℃で30分間感染させた。10% FBS入りの培地を加え、この細胞を37℃で48時間増殖させた。この細胞に、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター(Boden, et al., Endocrinology, 139, 5125-5134 (1998) 及び Boden, et al., Spine, 23, 2486-2492 (1998))によりそれぞれ推進されるAdLMP−1(活性LMP)又はAdLacZ(Adβgal−アデノウイルス対照)のいずれかを感染させた。追加の陰性対照として、いくつかの細胞は、アデノウイルスで感染させなかった(無処理対照)。48時間後、チャンバスライド上の細胞を50%アセトン/50%メタノールにおいて2分間固定してから、LMP−1、BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7、TGF−β1、MyoD、及びII型コラーゲンに特異的な抗体を使用して、免疫組織化学(以下に記載する)により分析した。
【0193】
フェーズ2:骨形成の in vivo での組織学的順序
実験プロトコールは、施設内動物ケア及び使用委員会とヒト研究委員会により、検討されて承認された。ウサギ又はヒトの末梢血(3mL)を静脈穿刺により入手して、1200xgで10分間の簡略な遠心分離によりバフィーコート細胞を単離した。この細胞を計数し、1x10の細胞を4.0pfu/細胞のMOIで、37℃で10分間、アデノウイルス(AdLMP−1又はAdLacZ)に感染させた。感染後、この細胞を80μLの最終容量に再懸濁させて、7mmX7mmX3mmのコラーゲンディスク(ウシI型コラーゲン)へ適用した。
【0194】
4〜5週齢である16匹の無胸腺ラットを入手し(Harlan,インディアナ州インディアナポリス)、無菌条件に収容した。1〜2%イソフルランの吸入によりラットに麻酔をした。無胸腺ラットの胸部に4つの10mm皮膚切開を行い、鈍的剥離によりポケットを作り、細胞を含有するコラーゲンディスクを各ポケットへ移植した。インプラントは、AdLMP−1(2/ラット)又はAdLacZ(2/ラット)のいずれかを感染させたバフィーコート細胞をロードしたコラーゲンディスクより構成された。この皮膚を再吸収可能縫合で閉じた。各動物を移植後1、3、5、7、10、14、21及び28日目に犠牲にし、組織学と免疫組織化学により外植片を分析した。
【0195】
標本は、10%中性緩衝化ホルマリンにおいて24時間固定した。この標本を非脱灰又は脱灰切片化のために調製した。非脱灰切片用の標本は、格付け強度のエタノールにより脱水して、パラフィンに埋め込んだ。移植後21及び28日目の標本は、10%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液で3〜5日間脱灰した。脱灰化の後で、格付け強度のエタノールにより標本を脱水して、パラフィンに埋め込んだ。標本をミクロトーム(Reichert Jung GmbH,ハイデルベルグ、ドイツ)で5マイクロメートルの厚さに切断した。切片をヘマトキシリン及びエオシン染色、Goldnerの三色染色、並びに、BMP−4、BMP−7、CD−45、及びI型コラーゲンに特異的な抗体を使用する免疫組織化学試験へ処した。
【0196】
一次抗体の調製
抗LMP−1抗体:抗LMP−1抗体は、ヒトLMP−1の内部領域内にマッピングされる、アフィニティー精製されたウサギポリクローナル抗体であり、ウサギ及びヒト起源のLMP−1と反応する。この抗体をLMP−1タンパク質の同定に1:500又は1:1000の希釈で使用した。
【0197】
抗BMP−2、抗BMP−4、抗BMP−6、抗BMP−7、及び抗TGF−β1抗体:ポリクローナルのヤギ抗BMP−2、抗BMP−4、抗BMP−6、抗BMP−7、及び抗TGF−β1抗体(サンタクルス・バイオテクノロジー社、カリフォルニア州サンタクルス)は、マウス、ラット、及びヒトのBMPと交差反応する。抗BMP−2、抗BMP−4、及び抗BMP−6抗体は、ヒト起源のBMP−2、BMP−4、及びBMP−6のアミノ末端でマッピングされるエピトープに対して産生した。抗BMP−7抗体は、ヒトBMP−7の内部領域内にマッピングされる、アフィニティー精製されたヤギのポリクローナル抗体であった。抗TGF−β1抗体は、ヒトTGF−β1の前駆体型のカルボキシ末端にマッピングされる、アフィニティー精製されたヤギのポリクローナル抗体であった。これらの抗体は、1:100及び1:500又は1:1000の希釈で使用した。
【0198】
抗CD45抗体:モノクローナルマウス抗ヒト白血球共通抗原(LCA)、CD−45抗体(精製IgG1,κ;DAKO社、カリフォルニア州カーピンテリア)は、異なるエピトープに対して向けられた2つの抗体、PD7/26及び2B11からなる。PD7/26は、T細胞増殖因子で維持された、ヒト末梢血リンパ球より導いた。2B11は、T細胞リンパ腫又は白血病より単離した新生物細胞より導いた。いずれの抗体も、免疫蛍光法により試験するとき、94〜96%の範囲でリンパ球及び単球へ結合した。今回の試験では、この抗体をヒト白血球の同定のために1:100の希釈で使用した。
【0199】
抗I型コラーゲン抗体:モノクローナル抗I型コラーゲン抗体(マウスIgG1アイソタイプ;シグマケミカル社、ミズーリ州セントルイス)は、マウス骨髄腫細胞と、ウシ皮膚I型コラーゲンで免疫化したBALB/cマウス由来の脾臓細胞の融合によって産生したI型コラーゲンハイブリドーマより導いた。この抗体は、ヒト、ウシ、ウサギ、シカ、ブタ、及びラットのI型コラーゲンと反応し、1:100の希釈で使用した。
【0200】
抗II型コラーゲン抗体:ポリクローナルウサギ抗II型コラーゲン抗体(サンタクルス・バイオテクノロジー社、カリフォルニア州サンタクルス)は、ヒトII型コラーゲンのα1鎖のアミノ末端に対応するエピトープに対して産生した。この抗体は、マウス、ラット、及びヒト起源のII型コラーゲンα1鎖と反応し、1:1000の希釈で使用した。
【0201】
抗MyoD抗体:ポリクローナルウサギ抗MyoD抗体(サンタクルス・バイオテクノロジー社、カリフォルニア州サンタクルス)は、マウス起源の全長MyoDタンパク質を表すアミノ酸1〜318に対応するエピトープに対して産生した。この抗体は、マウス、ラット、及びヒト起源のMyoDと反応し(そして、ミオゲニン、Myf−5、又はMyf−6とは反応しない)、1:1000の希釈で使用した。
【0202】
免疫組織化学染色
標識化ストレプタビジン−ビオチン法(LSAB法)を使用して、染色手順を実施した。LMP−1、BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7、TGF−β1、CD45、MyoD、I型コラーゲン、及びII型コラーゲンに対する抗体での免疫染色に、キット(ユニバーサルLSABキット、ペルオキシダーゼ;DAKO社、カリフォルニア州カーピンテリア)を使用した。一次抗体を産生した動物によって、適正なビオチニル化二次抗体を使用した。0.3%過酸化水素を含有するメタノールで内因性ペルオキシダーゼを阻止した。5%正常ウサギ血清又は5%正常ヤギ血清のいずれかと1%ウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)とともに標本を室温で15分間インキュベートして非特異結合を回避してから、適正濃度の一次抗体とともに加湿チャンバに4℃で一晩置いた。PBSで3回、5分間の洗浄後、加湿チャンバにおいて室温で10分間、ビオチニル化二次抗体及びストレプタビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体とのインキュベーションに続き、3,3’−ジアミノベンチジンテトラクロリド(DAB;DAKO社、カリフォルニア州カーピンテリア)を使用して発色させた。最後に、この切片をヘマトキシリンにより対比染色した。陰性対照として、それぞれの一次抗体を、標本とのインキュベーションに先立って、対応する阻止ペプチド(サンタクルス・バイオテクノロジー社、カリフォルニア州サンタクルス)とともに室温で3時間インキュベートした。ある実験では、一次抗体単独、又は二次抗体単独を追加の陰性対照として使用した。
【0203】
結果
フェーズ1:LMP−1で誘導される骨誘導因子の in vitro 検出
図12A〜12Dに示すように、AdLMP−1で感染したA549細胞は、LMP−1タンパク質の強い細胞内染色を示した。図12A〜12Dは、AdLMP−1(図12A)、Adβgal(図12C)での感染後48時間のA549細胞、又は非処理細胞(図12D)中のLMP−1タンパク質についての免疫組織化学染色の顕微鏡写真である。図12A、12C及び12Dより見られるように、AdLMP−1で感染した細胞には、どの対照にも見られない(図12C及び12D)、特異的な細胞内反応が見られた(図12A)。一次抗体の阻止ペプチドへのプレ曝露が陽性の細胞内染色を消失させた(図12B)ので、非特異反応の可能性は棄却された。図12A〜12Dの顕微鏡写真は、X132の原寸大で撮影した。
【0204】
図13A〜13Fに示すように、AdLMP−1処理細胞では、特に細胞質において、BMP−2、BMP−4、及びBMP−7の強い染色を観察した。図13A〜13Fは、AdLMP−1(上パネル−図13A、13B及び13C)又はAdβgal(下パネル−図13D、13E、及び13F)での感染後48時間のA549細胞の免疫組織化学染色の顕微鏡写真である。AdLMP−1処理細胞には、Adβgal処理細胞(それぞれ、図13D、13E、及び13F)に存在しない、BMP−2(図13A)、BMP−4(図13B)、及びBMP−7(図13C)に特異的な細胞内染色があった。図13〜13Fの顕微鏡写真は、X132の原寸大で撮影した。
【0205】
図3A〜3Dに示すように、AdLMP−1で処理した細胞はまた、抗BMP−6及び抗TGF−β1抗体で陽性に染色した。図14A〜14Dは、AdLMP−1(上パネル−図14A及び14B)又はAdβgal(下パネル−図14C及び14D)のいずれかでの感染後48時間のA549細胞の免疫組織化学染色の顕微鏡写真である。AdLMP−1処理細胞には、Adβgal処理細胞(それぞれ、図14C及び14D)に存在しない、BMP−6(図14A)及びTGFβ−1(図14B)に特異的な細胞内染色があった。しかしながら、これらの反応は、他のBMPで見られるものよりやや強くなかった。Adβgal感染と非処理対照の両方で、細胞は、LMP−1、BMPのすべて、又はTGF−β1に特異的な反応をしなかった。各抗体の阻止ペプチドにより、この反応が特異的であることを確かめた。抗II型コラーゲン抗体や抗Myo抗体との特異反応もなかった(データ示さず)。図14A〜14Dの顕微鏡写真は、X132の原寸大で撮影した。
【0206】
フェーズ2:骨形成の in vivo での組織学的順序。組織学的検査−免疫組織化学染色
白血球の免疫定位。図15A〜15Dに示すように、移植後1及び3日目に、AdLMP−1(活性)及びAdβgal(対照)で処理したインプラントの両方の内部のバフィーコート調製物に抗CD45抗体により染色される細胞が多量に存在した。
【0207】
図15A〜15Dは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植後3日目(図15A及び15C)又は5日目(図15B及び15D)に切除した、AdLMP−1(上パネル−図15A及び15B)又はAdβgal(下パネル−図15C及び15D)で感染したヒトバフィーコート細胞中の白血球表面マーカーCD45の免疫組織化学染色の顕微鏡写真である。CD45抗原に特異的な染色のある細胞の数は、両方の処理群において速やかに減少した。この観察事実は、移植したヒト細胞がさほど長くは生存せず、骨形成は宿主細胞の流入に依存した可能性があることを示唆する。特異的な抗ヒトCD45反応で染色する細胞の数は、3日目以降、特にインプラントの中心で減少した。それでも5日目にはインプラントの周辺で陽性染色を観察したが、移植から10日後、抗CD45で染色する細胞はほとんどなかった。減少する染色のパターンは、活性インプラントと対照インプラントで同じであった。図15A〜15Dの顕微鏡写真は、X132の原寸大で撮影した。
【0208】
BMPの免疫定位。AdLMP−1処理インプラントでは、移植後3及び5日目に、免疫組織化学により、細胞内のコラーゲン線維で強いBMP−4(図16A〜16D)及びBMP−7(図17A〜17D)の染色が明らかにされた。
【0209】
図16A〜16Dは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植後3日目(図16A及び16C)又は5日目(図16B及び16D)に切除した、AdLMP−1(上パネル−図16A及び16B)又はAdβgal(下パネル−図16C及び16D)で感染したヒトバフィーコート細胞中のBMP−4の免疫組織化学染色の顕微鏡写真である。AdLMP−1処理細胞には、Adβgal処理細胞には存在しない、BMP−4に特異的な細胞内染色があった。図16A〜16Dの顕微鏡写真は、X132の原寸大で撮影した。
【0210】
図17A〜17Dは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植後3日目(図17A及び17C)又は5日目(図17B及び17D)に切除した、AdLMP−1(上パネル−図17A及び17B)又はAdβgal(下パネル−図17C及び17D)で感染したヒトバフィーコート細胞中のBMP−7の免疫組織化学染色の顕微鏡写真である。AdLMP−1処理細胞には、Adβgal処理細胞には存在しない、BMP−7に特異的な細胞内染色があった。図17A〜17Dの顕微鏡写真は、X132の原寸大で撮影した。
【0211】
図16A〜16D及び17A〜17Dよりわかるように、Adβgal(対照)インプラントの細胞には、BMP−4又はBMP−7に特異的な染色がなかった。さらに、AdLMP−1インプラントには、10日以降のどの時点でも、抗BMP−4及び抗BMP−7抗体での強い染色が見られた。BMP−4及びBMP−7の強い染色は2つの一時的なフェーズで観察された;第一フェーズは、早期の日(即ち、移植後3及び5日目)のバフィーコート細胞の限定数であり、そして第二フェーズは、10日目以降に、マトリックスにより囲まれる骨芽細胞様の細胞において見られ、これは、図18に示すように、移植されたバフィーコート細胞ではなく、応答している細胞である可能性がきわめて高い。
【0212】
図18は、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植後14日目に切除した、AdLMP−1で感染したヒトバフィーコート細胞中のBMP−7の免疫組織化学染色の高出力顕微鏡写真である。より早期の時点と比較して、より豊富なBMP−7の染色があり、これは今のところ、新しい骨マトリックスの形成のごく近傍にある細胞の大部分と関連づけられている。図18の顕微鏡写真は、X66の原寸大で撮影した。
【0213】
I型コラーゲンの免疫定位。AdLMP−1インプラントでは、移植後7、10、14、21、及び28日目に、抗I型コラーゲン抗体の強い染色が観察された。早期の時点では、骨芽細胞様細胞の付近とその細胞そのものの周辺で特異的な反応が見られた。Adβgalで処理した対照インプラントには、I型コラーゲンの染色がほとんどなかった。
【0214】
ヘマトキシリン及びエオシン染色と、Goldnerの三色染色
ウサギ又はヒトのいずれかのバフィーコート細胞を使用しても、結果は同じであった。重複を避けるために、以下の記載と対応する例示は、ヒトのドナー細胞についてのものである。図19A〜19Dに示すように、移植後1及び3日目に、Ad−NMPインプラントは、インプラントの周縁で細胞数を増やしていた。
【0215】
図19A〜19Dは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植後1日目(図19A及び19C)又は3日目(図19B及び19D)に切除した、AdLMP−1(上パネル−図19A及び19B)又はAdβgal(下パネル−図19C及び19D)で感染したヒトバフィーコート細胞の顕微鏡写真である。インプラントの周辺の細胞の密度は、いずれの時点でもAdLMP−1インプラントにおいてより高く、宿主細胞の遊走を示唆した。図19A〜19Dは、Goldner三色法を使用して、X33の原寸大で撮影した。
【0216】
Adβgal対照では、同じ時点(即ち、移植後1及び3日)で、周辺にはより少ない細胞しかなかった。これらの観察事実は、図20A及び20Bに示すように、LMP−1を発現する細胞のあるインプラントへ宿主細胞が遊走したことを示唆する。これらの細胞は、単球及び多形核球の混合物であった。図20A及び20Bは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植後1日目に切除した、AdLMP−1又はAdβgalで感染したヒトバフィーコート細胞の高出力顕微鏡写真である。図20Aに示すように、Adβgalで感染した細胞を含有するコラーゲン(C)インプラントの周辺には相対的にごくわずかの細胞(矢印)しかなかった。このインプラントの中心には、バフィーコート細胞と赤血球ゴーストを認めることができた。図20Bに示すように、有核細胞のコラーゲン(C)インプラントの周辺での密度はAdLMP−1インプラントにおいてより高く、周囲の柔組織からの宿主細胞の遊走を示唆した。この細胞には、単球、多形核細胞、及び組織球に見える細胞が含まれた。図20A及び20Bの顕微鏡写真は、ヘマトキシリン及びエオシンを使用して、X100(図20A)とX160(図20B)の原寸大で撮影した。
【0217】
図21A〜21Jは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植に続く様々な時点で切除した、AdLMP−1(上パネル−図21A〜21E)又はAdβgal(下パネル−図21F〜21J)で感染したヒトバフィーコート細胞の顕微鏡写真である。膜性の骨形成の進行は、7日目までに見られる石灰化マトリックスで明白であった(図21C)。Adβgalで感染させた細胞を含有するインプラントには、骨形成が見られなかった(図21F〜21J)。図21A〜21Jの顕微鏡写真は、Goldner三色法を使用して、X33の原寸大で撮影した。
【0218】
図21A〜21Eに示すように、コラーゲン繊維と関連したバフィーコート細胞は経時的により少なくなり、Adβgal処理インプラントの中心で生存している細胞の数は、移植後5日目までに減少した(図21C)。
【0219】
図22A〜22Cは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植に続く様々な時点で切除した、AdLMP−1で感染したヒトバフィーコート細胞の高出力顕微鏡写真である。図22Aからわかるように、移植後7日目には、AdLMP−1インプラントの周辺のコラーゲン繊維(C)の間にある骨芽細胞様細胞(矢印)に隣接して新たな石灰化骨マトリックス(B)が見られた。骨芽細胞様細胞を囲むマトリックス(矢先)の、典型的な類骨縫合を伴わず、特定の配向もない、速やかな石灰化があった。図22Bからわかるように、AdLMP−1インプラント全体に位置する空間には成熟した新骨が形成されて、コラーゲン骨格のほとんどは、28日目までに再吸収された。破骨細胞(OC)が一次無層骨(B)を再建しているのが見られる一方で、骨芽細胞(矢先)が骨様の新形成骨の表面を被覆しているのが見られた。最後に、図22Cからわかるように、骨髄基質(S)と血管(V)が含まれる骨(B)の内部では、造血性の骨髄組織が形成されているのが見られた。図22A〜22Cの顕微鏡写真は、Goldner三色法を使用して、X160の原寸大で撮影した。
【0220】
図22Aからわかるように、移植後7日目には、AdLMP−1インプラントの周辺のコラーゲン繊維の間にある骨芽細胞様細胞に隣接して新たな骨マトリックスが見られた。典型的な類骨縫合を伴わず、特定の配向もない、周囲マトリックスの速やかな石灰化があった。組織化された骨配向の不足は、これらが有意にロードされたわけではない皮下インプラントであるという事実に照らせば、驚くことではなかった。移植後10日目のAdLMP−1インプラントには、より多量の骨芽細胞様細胞が観察され、コラーゲン繊維間の空所へ増殖していた。移植後14日目までに、AdLMP−1インプラントの中心領域は骨芽細胞様の細胞に占められた。対照的に、Adβgal処理インプラントには、コラーゲンの空所に線維芽細胞様の細胞が充満していた。移植後21日で、AdLMP−1インプラントの中心領域のほとんど又はすべてにおいて、新骨マトリックスが石灰化されて、形成された。移植後28日では、AdLMP−1インプラントのほとんどの中心領域に位置する空間に成熟した新骨が形成されていた。破骨細胞が一次無層骨を再建しているのが見られる一方で、骨芽細胞が骨様の新形成骨の表面を被覆しているのが見られた(図22B)。この骨の内部では、造血性の骨髄組織も形成されているのが見られた(図22C)。Adβgal処理対照では、移植されたコラーゲンが28日までにほとんど再吸収されて、繊維組織で置き換えられた。
【0221】
上記に示したように、A549細胞での in vitro 実験は、AdLMP−1被感染細胞が上昇レベルのBMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7及びTGF−β1タンパク質を発現することを示した。AdLMP−1で感染したヒトバフィーコート細胞も、無胸腺ラットへの異所性移植後72時間で増加レベルのBMP−4及びBMP−7タンパク質を明示して、in vitro の仮説を確認した。
【0222】
上記の試験の結果に基づいて、それ故に、いくつかのBMPの合成と、分化して直接の膜性骨形成に参画する宿主細胞の動員にLMP−1の骨誘導特性が関与することが示された。従って、LMP−1 cDNAでの遺伝子治療は、新骨形成を誘導するために、多量の単一BMPの移植に代わる手段を提供する可能性がある。
【0223】
本発明によれば、1以上の骨形態形成タンパク質又はトランスフォーミング増殖因子−βタンパク質(TGF−β)の発現を細胞において誘導する方法が提供される。該方法には、
プロモーターへ機能可能的に連結したLIM石灰化タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離核酸で細胞をトランスフェクトすることが含まれる。本発明によれば、BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7、TGF−β1、及びこれらの組合せからなる群より選択される1以上のタンパク質の発現を含めることができる。単離核酸は、配列番号25の全長へ相補的な核酸分子へ標準条件下でハイブリダイズすることができる核酸;及び/又は配列番号26の全長に相補的な核酸分子へ高ストリンジェント条件下でハイブリダイズすることができる核酸分子であり得る。細胞は、バフィーコート細胞、幹細胞(例えば、間葉幹細胞又は多能性幹細胞)、又は椎間板細胞(例えば、髄核の細胞、又は繊維輪の細胞)であり得る。細胞は、ex vivo 又は、in vivo でトランスフェクトすることができる。例えば、細胞は、哺乳動物の椎間板への核酸の直接注射により in vivo でトランスフェクトしてよい。
【0224】
上記ヌクレオチド配列によりコードされるLIM石灰化タンパク質は、RLMP、HLMP−1、HLMP−1s、HLMP−2、又はHLMP−3であり得る。プロモーターは、サイトメガロウイルスプロモーターであり得る。本発明の1つの態様によれば、LIM石灰化タンパク質は、LMP−1タンパク質である。核酸は、ベクター(例えば、プラスミドのような発現ベクター)中にあってよい。ベクターは、アデノウイルス又はレトロウイルスのようなウイルスでもよい。本発明により使用することができる例示のアデノウイルスは、AdLMP−1である。
【0225】
本発明の第二の側面によれば、1以上の骨形態形成タンパク質又はトランスフォーミング増殖因子−βタンパク質を過剰発現する細胞が提供される。この細胞は、BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7、TGF−β1、及びこれらの組合せからなる群より選択される1以上のタンパク質を過剰発現する細胞であり得る。細胞は、バフィーコート細胞、椎間板細胞、間葉幹細胞、又は多能性幹細胞であり得る。上記に示すような細胞と担体材料を含んでなるインプラントも提供される。本発明によりまた提供されるのは、上記に示すような細胞又はインプラントを哺乳動物へ導入することを含んでなる、哺乳動物において骨形成を誘導する方法と、上記に示すような細胞を哺乳動物の椎間板へ導入することを含んでなる、哺乳動物において椎間板疾患を治療する方法である。
【0226】
本発明の文脈において、骨形態形成タンパク質又はトランスフォーミング増殖因子−βタンパク質の過剰発現は、その特定の細胞において通常存在するより高いレベルでそのタンパク質を発現する細胞に関連する(例えば、このタンパク質の発現は、プロモーターへ機能可能的に連結したLIM石灰化タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸でトランスフェクトされなかった細胞におけるレベルより高いレベルにある)。細胞は、1以上の骨形態形成タンパク質又はトランスフォーミング増殖因子−βタンパク質を通常発現する細胞であり得る。細胞は、1以上の骨形態形成タンパク質又はトランスフォーミング増殖因子−βタンパク質を通常は発現しない細胞であってもよい。
【0227】
上記の詳述は、本発明の原理を教示し、実施例を例示の目的で提供するが、当業者には、本開示を読むことより、本発明の真の範囲より逸脱することなく、形態及び細部において様々な変更をなし得ると理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0228】
【図1】図1は、示した感染多重度(MOI)でトランスフェクトしたラット椎間板細胞におけるHLMP−1の発現後の硫酸化グリコサミノグリカンの産生を例示するグラフである。
【図2】図2は、異なるMOIのAdHLMP−1での感染後6日目のラット椎間板細胞の用量応答を示すチャートである。
【図3】図3は、250ビリオン/細胞のMOIでのトランスフェクション後6日目の、AdHLMP−1トランスフェクトされたラット椎間板細胞によるアグリカン及びBMP−2 mRNAの発現を示すチャートである。
【図4】図4Aは、異なるMOIのAd−hLMP−1での感染後12時間のHLMP−1 mRNA発現を示すチャートである。図4Bは、感染後3〜6日目の培地におけるsGAGの産生を示すチャートである。
【図5】図5は、sGAGの産生の経時変化を示すチャートである。
【図6】図6Aは、ラット繊維輪細胞におけるLMP−1過剰発現に対するアグリカンについての遺伝子応答を示すチャートである。図6Bは、ラット繊維輪細胞におけるLMP−1過剰発現に対するBMP−2についての遺伝子応答を示すチャートである。
【図7】図7は、25のMOIのAdLMP−1で感染後のラット繊維輪細胞におけるHLMP−1 mRNAレベルの時間経過を示すグラフである。
【図8】図8は、HLMP−1過剰発現に応答したBMP及びアグリカンのmRNAレベルの変化を示すグラフである。
【図9】図9は、HLMP−1発現に応答したsGAG産生亢進の時間経過を示すグラフである。
【図10】図10は、sGAG産生のLMP−1仲介性の増加がノギン(noggin)により阻止されることを示すチャートである。
【図11】図11は、単層培養6日後の培地における、LMP−1のsGAGに対する効果を示すグラフである。
【図12】図12A〜12Dは、A549細胞中のLMP−1タンパク質についての免疫組織化学染色の顕微鏡写真である。
【図13】図13A〜13Fは、AdLMP−1(上パネル)又はAdβgal(下パネル)で感染後48時間のA549細胞の免疫組織化学染色の顕微鏡写真である。
【図14】図14A〜14Dは、AdLMP−1(上パネル)又はAdβgal(下パネル)のいずれかで感染後48時間のA549細胞の免疫組織化学染色の顕微鏡写真である。
【図15】図15A〜15Dは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植後3日目(図15A及び15C)又は5日目(図15B及び15D)に切除した、AdLMP−1(上パネル)又はAdβgal(下パネル)で感染したヒトバフィーコート細胞中の白血球表面マーカーCD45の免疫組織化学染色の顕微鏡写真である。
【図16】図16A〜16Dは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植後3日目(図16A及び16C)又は5日目(図16B及び16D)に切除した、AdLMP−1(上パネル)又はAdβgal(下パネル)で感染したヒトバフィーコート細胞中のBMP−4の免疫組織化学染色の顕微鏡写真である。
【図17】図17A〜17Dは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植後3日目(図17A及び17C)又は5日目(図17B及び17D)に切除した、AdLMP−1(上パネル)又はAdβgal(下パネル)で感染したヒトバフィーコート細胞中のBMP−7の免疫組織化学染色の顕微鏡写真である。
【図18】図18は、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植後14日目に切除した、AdLMP−1で感染したヒトバフィーコート細胞中のBMP−7の免疫組織化学染色の高出力顕微鏡写真である。
【図19】図19A〜19Dは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植後1日目(図19A及び19C)又は3日目(図19B及び19D)に切除した、AdLMP−1(上パネル)又はAdβgal(下パネル)で感染したヒトバフィーコート細胞の顕微鏡写真である。
【図20A】図20Aは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植後1日目に切除した、AdLMP−1又はAdβgalで感染したヒトバフィーコート細胞の高出力顕微鏡写真である。
【図20B】図20Bは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植後1日目に切除した、AdLMP−1又はAdβgalで感染したヒトバフィーコート細胞の高出力顕微鏡写真である。
【図21】図21A〜21Jは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植に続く様々な時点で切除した、AdLMP−1(上パネル−図21A〜21E)又はAdβgal(下パネル−図21F〜21J)で感染したヒトバフィーコート細胞の顕微鏡写真である。
【図22A】図22Aは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植に続く様々な時点で切除した、AdLMP−1で感染したヒトバフィーコート細胞の高出力顕微鏡写真である。
【図22B】図22Bは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植に続く様々な時点で切除した、AdLMP−1で感染したヒトバフィーコート細胞の高出力顕微鏡写真である。
【図22C】図22Cは、無胸腺ラットの胸部へのコラーゲンマトリックスの皮下移植に続く様々な時点で切除した、AdLMP−1で感染したヒトバフィーコート細胞の高出力顕微鏡写真である。
【配列表】
































【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の骨形態形成タンパク質又はトランスフォーミング増殖因子−βタンパク質の発現を細胞において誘導する方法であって:
プロモーターへ機能可能的に連結したLIM石灰化(mineralization)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離核酸で細胞をトランスフェクトすることを含んでなる、前記方法。
【請求項2】
LIM石灰化タンパク質が、BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7、TGF−β1、及びこれらの組合せからなる群より選択される1以上のタンパク質の発現を誘導する、請求項1の方法。
【請求項4】
LIM石灰化タンパク質が、RLMP、HLMP−1、HLMP−1s、HLMP−2、HLMP−3、又はこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
LIM石灰化タンパク質がHLMP−1である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
細胞が、幹細胞、椎間板細胞、髄核の細胞、繊維輪の細胞、及びバフィーコート細胞からなる群の間より選択される、請求項1の方法。
【請求項7】
単離核酸で細胞をトランスフェクトすることが、RLMP、HLMP−1、HLMP−1s、HLMP−2、HLMP−3、又はこれらの組合せからなる群より選択されるタンパク質をコードする単離核酸を含んでなる組換えアデノウイルスベクターでの細胞の感染を含む、請求項1の方法。
【請求項8】
骨形態形成タンパク質がBMP−4である、請求項1の方法。
【請求項9】
骨形態形成タンパク質がBMP−7である、請求項1の方法。
【請求項10】
トランスフェクトされる細胞が椎間インプラントを含む、請求項1の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【公表番号】特表2006−519622(P2006−519622A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509245(P2006−509245)
【出願日】平成16年3月7日(2004.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/007616
【国際公開番号】WO2005/023996
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(504228047)
【Fターム(参考)】