骨折骨または疾患骨の治療に関する手術的プロトコルにおいて使用される改良された膨張可能なデバイス
【課題】本発明は、骨内、特に椎体内(これのみに限らない)に腔または経路を形成するか、形成された腔股は経路を拡大することを課題とする。もう1つの重要な課題は、治療的物質をより良い方法で骨に投与することである。
【解決手段】軟組織を通して、海綿骨によって少なくとも一部分が占められる内部容積を有する骨に至るアクセス経路を形成するようなサイズにつくられかつ構成された第1手段と、該海綿骨において拡張するようなサイズに作られかつ構成された拡張することができる構造と、該海綿骨に該拡張することができる構造を導入するために、該アクセス経路を通して通過するようなサイズに作られかつ構成された第2手段であって、該拡張することができる構造は、該第2手段を除去する際に該海綿骨内に残しておかれる、第2手段と、を備える、システム。
【解決手段】軟組織を通して、海綿骨によって少なくとも一部分が占められる内部容積を有する骨に至るアクセス経路を形成するようなサイズにつくられかつ構成された第1手段と、該海綿骨において拡張するようなサイズに作られかつ構成された拡張することができる構造と、該海綿骨に該拡張することができる構造を導入するために、該アクセス経路を通して通過するようなサイズに作られかつ構成された第2手段であって、該拡張することができる構造は、該第2手段を除去する際に該海綿骨内に残しておかれる、第2手段と、を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「骨の固定に関する手術的プロトコルにおいて使用される改良された膨張可能なデバイス」と称する1994年1月26日付けの米国特許出願第08/188,224号の一部継続出
願である、1995年6月7日付けの米国特許出願第08/485,394号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、ヒトまたはその他の動物の骨格系の骨疾患の手術的治療における改良に関するものであって、さらに詳細に述べると、かかる骨疾患の治療において使用する膨張可能なバルーン様デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
骨粗しょう症、虚血壊死、及び骨癌は、骨の骨折または崩壊を起こしやすい骨疾患である。米国では毎年200万件の骨折が報告されており、うち約130万件は骨粗しょう症によるものである。一方、虚血壊死及び骨癌による骨折は非常にまれである。これらの疾患は従来ほとんど顧みられなかった骨の問題の原因となっており、その結果、変形や慢性の合併症を起こしている。
【0004】
感染している骨、治癒が思わしくない骨、または重度の外傷により骨折した骨の切開手術のような骨治療のためのその他の多くの整形外科的手技の結果も改良することが可能である。現在のところ、疾患の骨または外傷を受けた骨を取り除き、移植骨や人工骨のような物質を受け入れるべく、通常金属製の標準的器具を用いて骨を準備している。しかし、患者の残りの骨と挿入物質との間の隙間のために、治癒が遅れたり阻害されている。
【0005】
抗生物質や骨の成長因子のような治療的物質は、適切な骨領域との接触を最適に維持するような方法で、これまで骨に投与されてきたことがない。抗生物質、骨成長因子、及びその他の薬剤は、合併症を防止し治癒を早める。これらの薬剤は現在、乾燥粉末か液体の形で治療骨の周囲に配置されたり、あるいはゲルか分解可能なプラスチック・ポリマーの形に処方され、欠陥領域(骨の空洞)に投与されている。この方法で投与した場合、薬剤はただちに(または薬剤の運搬物質の分解に伴い)血液やその他の体液で洗い流される可能性がある。また、ゲルやポリマーの形で投与できる治療物質の量は、骨の欠陥によってできた腔のために限られるかもしれない。
【0006】
(発明の背景)
米国特許出願第4,969,888号及び5,108,404号は、骨粗しょう症及び非骨粗しょう症を含めたヒト及びその他の動物の骨格系の骨折やその他の疾患を固定するための装置及び方法を開示している。その装置及び方法は、椎体の圧縮骨折、コリーズ骨折、及び近位上腕骨骨折の固定に使用するのに特に適しているが、これのみに限定されない。
【0007】
上記の2つの特許に開示された方法には、術者またはヘルスケア提供者が行なうことのできる一連のステップで、骨折または疾患の骨(骨粗しょう症の骨、骨粗しょう症の骨折した骨幹端や骨端、骨粗しょう症の椎体、骨折した骨粗しょう症の椎体、腫瘍、特に円形細胞腫による椎体の骨折、長骨骨端の虚血壊死、特に近位大腿骨・遠位大腿骨・近位上腕骨の虚血壊死、内分泌の疾患に原因する欠陥を含むが、以上のみに限定されない)内に空洞を形成することが含まれている。
【0008】
この方法にはさらに、皮膚の切開(切開口は通常1ケ所であるが、吸引用のはけ口を設ける場合、2ケ所目の小さな切開が必要な場合もある)に続いて、軟組織を通して骨に至るガイド・ピンを配置することが含まれる。
【0009】
この方法にはさらに、骨に空洞または経路を形成するため、治療を受ける骨に穴をあけ、かつ膨張可能なバルーン様デバイスを空洞または経路に挿入することが含まれる。膨張可能なデバイスを膨らませることにより、海綿骨及び骨髄が皮質壁の内側表面に対して圧縮されるため、空洞または経路がさらに拡大される。次に、膨張可能なデバイスを完全に凋ませた後、骨から取り出す。必要であれば、最初により小型の膨張可能なデバイス(開始バルーン)を使用して、骨髄の圧縮を開始し、続いて海綿骨及び骨髄内の空洞または経路の形成を開始する。空洞または経路が形成された後、空洞または経路内により大型の膨張可能なデバイスを挿入して、骨髄をあらゆる方向にさらに圧縮する。
【0010】
メタクリル酸メチル・セメントや合成人工骨のような流動性で生体適合性の充填物質を空洞もしくは経路に導き、骨を構造的に支持できる状態まで固まらせる。この後者のステップに続いて、挿入したデバイスを体内から取り除き、皮膚の切開部位を包帯でおおう。
【0011】
前述の特許の装置及び方法は、骨の固定に十分なプロトコルを提供する一方、治療する骨の皮質壁の内側表面に対して骨髄及び(または)柱骨及び(または)海綿骨を圧縮させることは、これまで特許に記載されたことのない技術で、かかる特許が記載する従来の膨張可能なデバイスでは正しい制御ができなかった技術的特徴をさらに組み入れた膨張可能なデバイスを使用することにより、著しく改良できることがわかった。また、前述の特許の装置及び方法を意外な方法で使用して、治療的物質を投与できることもわかった。さらに、前述の特許の装置及び方法を、従来記載されなかったような方法で適合させて切開手術を改良し、骨の固定、融合、除去を行ない、かつこれらの術中に治療的物質を投与できることもわかった。したがって、前述の装置及び方法ならびに新たな方法を使用した膨張可能なデバイスの形、構造及びサイズを改良する必要性が求められており、本発明はかかる必要性を満足させるものである。
【0012】
(患者内に使用するためのバルーン製造の従来技術)
バルーン製造に関する従来の技術を精査すると、上腕動脈か大腿動脈を通じて患者の心臓血管系に挿入されるガイディング・カテーテルの形成については、相当な量の背景情報が蓄積されていることを示している。しかし、骨に使用される膨張可能なデバイスに関しては開示がきわめて少なく、椎体及び長骨内で骨髄を圧縮するための膨張可能なデバイスに至っては開示がまったく見られない。
【0013】
膨張可能なカテーテルの場合、バルーンが治療を受ける病巣に正しく配置されるまで、カテーテルは患者内を進められる。バルーンに、X線不透過性液を4大気圧以上の液圧で送り込んで膨らませ、病巣のプラークを圧縮することにより、動脈管空を広げる。次にバルーンを凋ませ、続いて拡張された動脈の血流が回復するようバルーンを動脈から取り除く。
【0014】
かかるカテーテルの利用法の解説は、米国特許出願第5,163,989号に記載され、明確に開示されている。血管形成カテーテル手技に関するその他の詳細、及びかかる手技に使用されるバルーンの詳細については、米国特許出願第4,323,071号、4,332,254号、4,439,185号、4,168,224号、4,516,672号、4,538,622号、4,554,929号、及び4,616,652号に記載されている。
【0015】
プリズム形のバルーン形成に、鋳型を用いた押出し加工も用いられているが、この技術で血管形成カテーテルに適したバルーンを形成するには、バルーン内部表面のきわめて精密な加工が必要である。しかし、この押出し加工技術はバルーン製品に型割線を残すため、バルーン自体の壁がもろくなる意味で限界がある。
【0016】
特許5,163,989は、カテーテルのバルーンに型割線の全くない成型膨張カテーテルのための鋳型及び技法を開示している。技法には、熱した成型内部表面が管状のプラスチック素材で圧縮されるよう、該プラスチック素材を膨らますことが伴う。膨張可能なデバイスを好適なサイズと形に成型した後、冷却して凋ませ、型から取り出す。特許は、本発明のバルーンがプリズム様バルーンの形成に特に適していると同時に、広範なサイズと形のバルーンを形成するためにも使用できると記載している。
【0017】
本特許、すなわち米国特許出願第4,706,670号に関して、カテーテル技術の特別な改良点は、内部及び外部管が連続した螺旋形の微細繊維で形成され補強された同軸カテーテルを使用していることである。かかる微細繊維は互いに交差して、バルーン軸を長軸方向に短縮させる一方、軸の動く部分を伸長させる。バルーンの編み方の長さと角度、および微細繊維の動く部分を適切にバランスさせることにより、長さの違いを相殺させることができる。したがって、内部管と外部管の位置は必要に応じて調整することができ、バルーンを血管内の希望する位置に保つことができる。
【0018】
患者の骨格を治療するための他の膨張可能なデバイスの挿入に関する他の開示には以下のものが含まれる。
【0019】
米国特許出願第4,313,434号は、凋ませた柔軟なバルーン袋を骨髄腔に挿入して、バルーン袋を膨らませ、治癒が起こるまで長骨の内部を密閉し、次にバルーンを取り出し、バルーンを取り出した開口部を埋めることによって長骨を固定することに関する。
【0020】
米国特許出願第5,102,413号は、膨張可能なバルーンを使用して、骨折した長骨の固定用金属棒を固定する方法を開示している。
【0021】
バルーン及び人工装具の固定用セメントの使用を開示している他の参考文献には、米国特許出願第5,147,366号、4,892,550号、4,697,584号、4,562,598号、及び4,399,814号がある。
【0022】
オランダの特許NL901858は、前以て形成した腔内にセメントを染み込ませたバッグを挿入して膨らませ、固まらせることによる骨折修復の手段を開示している。
【0023】
前述の従来技術の精査から、骨内の腔の形成に使用される膨張可能なデバイスに関する実質的情報はほとんどないか、或いは全然ないと結論付けることができる。適切に充填した場合、骨を最適に支持する腔を形成するバルーンの形状については何も教示していない。バルーンは膨らませた場合、球形にならないことが望ましいが、球形にならないようにする方法については何も教示していない。現行の医療用バルーンは骨を圧縮することができるが、小さすぎて、しかも一般に間違った形状をしており、人体の椎体または長骨内に十分な腔を形成するには一般に強度が足りない。
【0024】
米国特許出願第4,969,888号及び5,108,404号は、海綿骨の圧縮にチェッカーの駒形のバルーンを開示しているが、このバルーンを膨らませた場合、どのようにしてその形状を維持するかについては情報を提供していない。増強された治療的物質を投与する方法も提供していない。
【0025】
米国特許出願第4,892,550号は、骨内に金属の人工装具を固定するための弾性バルーンについて説明している。米国特許出願第4,313,434号は、金属棒の代わりに用いるもので、骨折した長骨(大腿、脚、腕)の骨髄腔の内部に配置して、治癒中の骨を保護する収縮可能なバルーンについて記載している。
【0026】
したがって、骨折骨及び(または)疾患骨に使用する膨張可能なデバイス及びその方法に対するニーズは続いている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0027】
(発明の要旨)
本発明は、上述の特許4,969,888及び5,108,404のシステム及び方法の実施において使用されるバルーン様の膨張可能なデバイスまたはバルーン、これらのデバイスを使用する新たな方法、並びにその方法及びデバイスの新たな使用を意図している。かかる膨張可能なデバイス(以下時々「バルーン」と呼ぶ)は、骨が骨折している、いないにかかわらず、骨の内側皮質骨に対して海綿骨及び骨髄(髄質骨または小柱骨とも称される)を圧縮するための形状を有している。
【0028】
特に、本発明は骨折または崩壊しやすい骨の治療に使用するためのバルーンを意図している。バルーンは該骨に挿入するための膨張可能な非弾性バルーン本体からなる。本体は海綿骨内の腔を広げ、かつ内側皮質骨の少なくとも一部を元の位置に再建するための圧縮に十分なサイズに実質的に膨らませた場合、前もって決められた形状とサイズを有する。該骨に骨折または崩壊がない場合、十分に膨らませたバルーン本体が外側皮質骨の内側表面に実質的な圧力をかけないように、バルーン本体は前もって決められた該形状とサイズを形成するよう束縛されている。本文では「実質的な圧力」を「皮質骨をその通常の相対的配置以外の位置へ移動させるに足る圧力」と定義する。
【0029】
膨張可能なデバイス自体の形状のほかに、もう1つの重要な実施態様は、バルーン本体の適切な膨張を達成して骨髄全体を最適に圧縮できるようにバルーン壁を構成することである。バルーンの素材も、ガイド・ピンとカニューレを使用して骨内に素早く簡単に挿入できるようにバルーンを折り畳めるもので、しかも膨らませたとき高圧に耐え得るような好適なものを選ぶ。またバルーンは任意により、充填物の安定性を強化するため、バルーンを取り出した後の腔に残しておく隆起した部分かくぼみ部分を含んでもよい。また、任意により、膨張可能なデバイスに吸引カテーテルを内蔵させることもできる。この吸引カテーテルは、骨の内部でバルーンが膨らむ間、骨から押し出された脂肪または体液を取り除くために使用される。また、バルーン本体がカニューレ内にある間、バルーンを保護できるケブラー(Kevlar)、テトラフタル酸ポリエチレン(PET)、その他のポリマーまたは物質等の適切な素材からなる任意の保護スリーブで被うことにより、バルーン本体を皮質骨またはカニューレによる穿刺から保護することもできる。したがって、膨張可能なデバイスの主な目的は、骨、特に椎体(これのみに限らない)内の腔または経路の形成または拡張である。
【0030】
本発明の1つの実施態様は、骨内に腔を形成する手術プロトコルの有効性を高め、手術の実施に先立つ手術プロトコルの設計時間を最短にとどめ、かつ臨床の結果を改善するため、手術プロトコルの実施に使用される改良バルーン様の膨張可能なデバイスを提供することである。このバルーンは、海綿骨を最大限に圧縮するため、バルーンが挿入される骨の内側形状にほぼ似せて作られる。このバルーンは、特定の臨床的目標を達成するための付加的設計要素を有する。好適には、これらのバルーンは非弾性の素材からなり、かつ、以下の束縛(これのみに限らない)を含めたさまざまな束縛により、膨らませた時その定義された形状を保つ。さまざまな束縛とは、バルーン本体に非弾性の素材を使用すること、別々の素材部分の接着もしくは融合により、またはバルーン本体の対面の接着もしくは融合により形成されたバルーン本体の継ぎ目、バルーン本体の内側もしくは外側に接着された織物素材、バルーン本体の選択点に配置された紐もしくは帯、類似のまたは異なるサイズか形のバルーンを接着剤か熱融合によって互いに積み重ねること等である。前述の構造によって形成されたか、あるいは別の素材を接着して加えられた任意の隆起部分もしくはくぼみ部分は、充填材の安定性を増す。好適には、形成される腔の最低点に少なくとも1つの孔を設けるよう配置された任意の吸引デバイスにより、充填する前に腔を清掃することができる。
【0031】
本発明のもう1つの実施態様は、このバルーンの新しい使用及び、その使用の新しい方法を提供することである。骨に挿入する前に、バルーンに治療的物質でコーティングを施すことにより、バルーンを治療的物質の投与に使用することができることである。コーティングを施されたバルーンを骨の中で膨らませた時、海綿骨がバルーンによって圧縮されるに従い、治療的物質が該海綿骨内に圧し入れられる。これにより長時間投与が維持されるような方法で、好適量の治療的物質を直接治療部位に投与することが可能となる。バルーンはまた、小侵襲または切開手術中に、整形外科インプラント、骨移植片、人工骨、アクリル・セメント、骨充填材、骨成長因子、化学療法薬剤、抗生物質、その他の薬剤のためのより良いスペースの提供に使用することもできる。骨中の物質は、骨自体の治療を目的として使用するか、あるいは骨肉腫のような近くの構造物に薬剤を投与するための貯留場所として使用することができる。
【0032】
本発明のさらにもう1つの実施態様は、骨折骨または疾患骨に対し一時的に構造的支持を提供すため、バルーンを用いることである。この実施態様では、治療部位でバルーンを膨らませ、周囲の皮質骨が治癒するまでバルーンをそこに残しておくことにより、骨折骨または疾患骨を治療することができる。すなわち、骨折骨または疾患骨を支持するため、前述の実施態様で使用した生体適合性の充填材の代わりにバルーンを使用することである。本発明は、患者の体内の骨腔の外側にて膨らませたバルーンを密閉する方法が含まれる。密閉方法には、金属またはプラスチックのクリップ、膨張管のねじを外すことにより活性化するチェック・バルブ、バルーンの内部経路を密閉するプラグ等の使用が含まれる。前述の実施態様と同様、バルーンを骨に挿入して膨らませ、海綿骨の内側を圧縮して、その中に腔を設ける。次に、膨らませたバルーンを密閉し(例えば、膨張バルーンの開口部にプラグを挿入することにより)、膨張管を患者から抜き取り、最後に経皮切開部位を閉じる。バルーン内の液体圧によって骨が十分に支持されるため、骨の治癒が可能になる。バルーンは、外側の皮質骨の完全または少なくとも部分的治癒に必要な期間(通常約1日〜3ヶ月、好適には6〜8週間)、膨らませた形状のまま骨腔内に残しておいてもよい。本発明のこの実施態様では、バルーンは少なくとも以下の4つの機能を提供する。(1)骨の再整列。(2) 病気の内部海綿骨の除去または少なくとも1部の除去。(3) 圧縮された内部海綿骨からのカルシウムの追加による外部海綿骨の補強。外部海綿骨は外部皮質に吸収され、その1部を構成するようになる。(4)皮質骨が治癒する間、体内ギプスの役目をする。
【0033】
皮質骨が治癒したあと、術者は前と同じか別の経皮切開口を経由して、バルーンにアクセスし、クリップやプラグを取り除くことにより(チェック・バルブの場合は拡張管のねじをバルーンにはめることにより)、バルーンを凋ませることができる。多くの場合、皮質骨は圧縮された海綿骨からのカルシウムが追加されることにより治癒が起こり、十分に補強される。これらのケースではバルーンは骨腔から取り出される。止血、感染の防止、バルーン内への骨の成長を最低に抑えるため、かつ(または)バルーンを凋ませた時、骨からのバルーンの分離を容易にするため、バルーンの外側表面にゲルフォーム(Gelfoam)または抗生物質のようなコーティングを施してもよい。しかし、皮質骨がそれでもなお弱過ぎると術者が判断した場合(例えば、骨密度のスキャンやその他の手段で)、バルーンを取り出す前に、アクリル・セメント、人工骨、骨充填材、骨成長因子等の適切な支持物質を骨腔に挿入することができる。
【0034】
上述の特許の方法及びその改良は、海綿骨及び(または)柱骨及び(または)骨髄骨を有する骨格なら、いずれの骨格にも応用することが可能である。
【0035】
本発明は、以下を提供する。
【0036】
骨が骨折しているか否かにかかわらず、海綿骨及び髄(骨髄または柱骨としても公知)を骨の内側皮質に対して圧縮するために使用するバルーン(12)。バルーンは該骨内へ挿入するための膨張可能な非拡張性のバルーン本体からなる。本体は、骨折または崩壊がある場合、少なくとも海綿骨の一部を圧縮して、海綿骨内に腔を形成し、かつ外側皮質骨を元の位置に戻すための形及びサイズを有する。バルーンは外側皮質骨に対して過度の圧力をかけないよう束縛されている。バルーンの壁は、バルーン本体の正しい膨張が達成され、全骨髄が最適に圧縮されるようになっている。バルーンは骨内へ迅速に挿入できるよう、折りたためるようになっている。バルーンは吸引カテーテル(16)を備えるように作ることが可能である。バルーンはまた、治療的物質でコーティングされてもよい。このバルーンの主な目的は、骨内、特に椎体内(これのみに限らない)に腔または経路を形成するか、形成された腔股は経路を拡大することである。もう1つの重要な目的は、治療的物質をより良い方法で骨に投与することである。
【0037】
より具体的には、本発明は、以下を提供する。
1. 治療的物質を骨の治療部位へ投与する方法において、
中空で折り畳むことができ、膨らますことができるバルーンを提供することと、
治療的物質をバルーンの外側表面に塗布することと、
バルーンを骨内の腔へ挿入することと、
バルーンを膨らませて、治療的物質を骨に投与することからなることを特徴とする方法。
2. 項目1記載の方法において、さらに、
バルーンを十分な液体圧に膨らませて、少なくとも内部海綿骨の1部を圧縮することと、
治療的物質を圧縮された内部海綿骨に投与し、治療的物質を直接骨内に組込むことからなることを特徴とする方法。
3. 項目1記載の方法においてさらに、
患者の体の外側でバルーンを膨らませ、治療的物質を膨らませたバルーンの外側表面に塗布することを特徴とする方法。
4. 項目3記載の方法において、さらに、
バルーンを折りたたみ、経皮的侵入を通じてバルーン及び治療的物質を骨内の腔へ運搬することからなることを特徴とする方法。
5. 項目1記載の方法において、
塗布ステップがゲル処方薬をバルーンの外側表面に塗布することによって行なわれることを特徴とする方法。
6. 項目1記載の方法において、
塗布ステップがバルーンに粉末を塗布することによって行なわれることを特徴とする方法。
7. 項目2記載の方法において、
バルーンが骨内に腔を形成する方法と、さらに、骨の支持材料を腔内へ挿入することからなることを特徴とする方法。
8. 項目1記載の方法において、
治療的物質が充填材料からなることと、さらに、
バルーンを膨らませて充填材料を割れ目に投与することにより、骨折した骨の割れ目を埋めることからなることを特徴とする方法。
9. 項目1記載の方法において、
治療的物質が骨成長因子からなることを特徴とする方法。
10. 項目1記載の方法において、
治療的物質が抗生物質からなることを特徴とする方法。
11. 項目1記載の方法において、さらに、
バルーンを十分な液体圧に膨らまし、骨に過度の圧力をかけることなく、海綿骨の少なくとも70%を圧縮するステップからなることを特徴とする方法。
12. 項目1記載の方法において、さらに、
バルーンを十分な液体圧に膨らまし、骨に過度の圧力をかけることなく、海綿骨の少なくとも90%を圧縮するステップからなることを特徴とする方法。
13. 治療的物質を骨内の治療部位に投与するシステムにおいて、
凋んだ形状から膨張した形状に膨らませることができる柔軟な非弾性の素材と、
内部海綿骨の少なくとも一部を圧縮するため膨らませた形状において、前以て決められたサイズを持つバルーン本体と、
バルーンが前以て決められた形状以上に膨らむことを禁じる非弾性の素材と、
膨張液を本体内へ送り込むための外部表面及び内部経路を定義しているバルーン本体と、治療的物質をバルーンの外部表面に塗布するためのアプリケーターからなる中空のバルーン本体からなることを特徴とするシステム。
14. 項目13記載のシステムにおいて、
アプリケーターが、内部に治療的物質を貯蔵しておく小部屋を持つ容器と、
ゲル処方薬をバルーンの表面に一定量で供給するノズルからなることを特徴とするシステム。
15. 項目13記載のシステムにおいて、
アプリケーターが乾燥粉末ディスペンサーからなることを特徴とするシステム。
16. 項目13記載のシステムにおいて、
アプリケーターが、バルーンの外側表面に粉末薬剤を煙霧状に散布するための散布デバイスからなることを特徴とするシステム。
17. 項目13記載のシステムにおいて、
前以て決められたサイズの膨らませた形状のバルーン本体を選んで、内部海綿骨の実質的な部分を圧縮し、治療的物質を圧縮された海綿骨内へ直接組み込むことを特徴とするシステム。
18. 項目17記載のシステムにおいて、さらに、
バルーンを骨内のスペース内へ運搬するための手段と、
スペース内でバルーンを膨らませて治療的物質をバルーンに運搬するための手段からなることを特徴とするシステム。
19. 項目13記載のシステムにおいて、
治療的物質が、バルーンを膨らまして充填材料を割れ目に投与することにより、骨折した骨の割れ目を埋めるための充填材料からなることを特徴とするシステム。
20. 項目13記載のシステムにおいて、
治療的物質が骨成長因子からなることを特徴とするシステム。
21. 項目13記載のシステムにおいて、
治療的物質が抗生物質からなることを特徴とするシステム。
22. 項目13記載のシステムにおいて、
膨らませた形状のバルーン本体を或るサイズと形にして、骨に実質的な圧力をかけることなく治療部位の海綿骨の少なくとも70%を圧縮することを特徴とするシステム。
23. 項目13記載のシステムにおいて、
膨らませた形状のバルーン本体を或るサイズと形にして、骨に実質的な圧力をかけることなく治療部位の海綿骨の少なくとも90%を圧縮することを特徴とするシステム。
24. 項目13記載のシステムにおいて、
膨らませた形状及び凋ませた形状におけるバルーン本体が実質的に同じ形を有することを特徴とするシステム。
25. 患者の股関節部の治療に使用されるバルーンにおいて、
凋ませた形状から拡張させた形状へ膨らませることができる非弾性素材からなる中空で長円形のバルーン本体と、
膨張液を本体内へ導くための内部経路を特徴として持つバルーン本体からなり、かつ、
膨らませた形状においてバルーン本体が前以て決められたサイズを持ち、患者の大腿骨頭から大腿骨頚部を経て、近位大腿骨骨幹内へ延長しており、非弾性素材によって前以て決められたバルーン本体のサイズ以上にバルーンが膨らむことを防止していることを特徴とするバルーン。
26. 項目25記載のバルーンにおいて、
膨らませた形状のバルーン本体が、大腿骨頚部を経て大腿骨頭の1部分へ延長するようなサイズに作られた長く伸びた遠位部分と、
近位部分に対して直角方向に長く伸び、かつ膨らませた形状のとき大腿骨骨幹の一部内へ延長するようなサイズに作られた近位部分と、
遠位及び近位部分を互いに結び付けているアーチ形の部分を含むことを特徴とするバルーン。
27. 項目26記載のバルーンにおいて、さらに、
バルーン本体の近位部分を、近位及び遠位部分が実質的に互いに平行である導入形状から、近位部分が近位大腿骨骨幹内へ延長している有効形状へと偏らせるための手段を含むことを特徴とするバルーン。
28. 項目27記載のバルーンにおいて、さらに、
バルーン本体が凋んでいる時の導入形状において、バルーンの近位部分を支える束縛要素であり、バルーン本体を拡張した形状に膨らませた時、その束縛要素が近位部分を開放するように適合されている少なくとも1つの束縛要素からなることを特徴とするバルーン。
29. 項目25記載のバルーンにおいて、さらに、
膨らませた形状の時に前もって決められたサイズと形を有する長円形バルーン本体を取り囲んでいる1つかそれ以上の非弾性のリング要素からなることを特徴とするバルーン。
30. 項目29記載のバルーンにおいて、
支持要素が、長円形バルーン本体を取り囲んでいる1つかそれ以上の非弾性リングと、
リング要素を連結している少なくとも1つの非弾性軸帯からなることを特徴とするバルーン。
31. 項目25記載のバルーンにおいて、
膨らませた形状にあるバルーン本体が、大腿骨頭の端から約0.3〜0.7 cmのところからスタートし、小転子を約5〜7 cm過ぎた近位大腿骨骨幹内まで延長していることを特徴とするバルーン。
32. 項目25記載のバルーンにおいて、膨らませた形状にあるバルーン本体が、約10〜20cmの長さ及び約1.0〜2.5 cmの直径を持つことを特徴とするバルーン。
33. 患者の股関節部を治療する方法において、
大腿骨頚部を経て大腿骨頭の少なくとも一部まで達する経路を形成することと、
長円形のバルーン本体を経路内に配置することと、
長円形のバルーン本体を十分な液体圧に膨らませて、内部海綿骨の少なくとも一部を圧縮することと、
バルーンを膨らませるに従い、バルーン本体によって、大腿骨頭から大腿骨頚部を経て、下方の近位大腿骨骨幹まで伸びる腔を形成することからなることを特徴とする方法。
34. 項目33記載の方法において、
腔の形成ステップにおいて、外側大腿骨皮質から大腿骨頚部を経て、大腿骨頭へ達する実質的に直線の経路をドリルであけることが含まれることを特徴とする方法。
35. 項目34記載の方法において、
バルーンの配置ステップにおいて、長円形のバルーン本体を経皮的侵入を通じて、該直線経路内へ送り届けることが含まれることを特徴とする方法。
36. 項目34記載の方法において、さらに、
膨らますステップにおいて、バルーン本体の近位部分が近位大腿骨骨幹内の内部海綿骨を圧縮するように、バルーンの近位部分を近位大腿骨骨幹の方へ偏らせることからなることを特徴とする方法。
37. 項目33記載の方法において、さらに、
長円形のバルーン本体が、前もって決められたサイズ及び形以上に膨らむことを抑制しており、そのため皮質骨にバルーンによる過度の圧力がかかることを防止していることからなることを特徴とする方法。
38. 損傷を受けた骨を一時的に支持しかつ補強しているシステムにおいて、
凋ませた形状から拡張した形状へ膨らますことができる柔軟で非弾性の素材からなる中空のバルーン本体と、
膨らませた形状の時に前もって決められたサイズを持ち、外部皮質骨の補強のために、内部海綿骨の少なくとも一部を外部皮質骨内へ圧縮するべく選択されたバルーン本体と、
バルーンを膨らませた形状の時、外部皮質骨を一時的に支持することができるバルーン本体の非弾性素材と、
膨張液体をバルーン本体内へ通過させるため、内部経路を特徴として持つバルーン本体と、
バルーンを膨らませた形状の時、外部皮質骨のため一時的な支持構造を提供するため、バルーン本体の内部経路を密閉する方法からなることを特徴とするシステム。
39. 項目38記載のシステムにおいて、
密閉する手段が内部経路を密閉するよう該経路内に適合するプラグからなることを特徴とするシステム。
40. 項目38記載のシステムにおいて、
密閉する手段が内部経路を閉じて、バルーン内部の小部屋に液体を閉じ込めるためのクリップからなることを特徴とするシステム。
41. 項目38記載のシステムにおいて、
バルーン本体が内部海綿骨を外部皮質骨内へ圧縮することによって腔が形成され、密閉手段が腔の外側及び患者の体内にあることを特徴とするシステム。
42. 項目38記載のシステムにおいて、
損傷した骨が骨折した皮質骨であり、骨折した皮質骨が治癒するまで、バルーン本体が該皮質骨を支持することができることを特徴とするシステム。
43. 骨折した骨または崩壊した骨を一時的に支持し補強する方法において、
患者の内部海綿骨内に中空のバルーン本体を配置することと、
バルーン本体を十分な液体圧に膨らまして、内部海綿骨の少なくとも一部を圧縮し、その内部に腔を形成することと、
バルーン本体を患者内に密閉し、外部皮質骨に対して一時的な構造上の支持を提供することからなることを特徴とする方法。
44. 項目43記載の方法において、さらに、
外部皮質骨が治癒した後に該皮質骨を補強するため、内部海綿骨の大部分を外部皮質骨内へ圧縮することからなる方法。
45. 項目43記載の方法において、
膨らませるステップが膨張液を内部経路を通してバルーン本体内の内部小部屋へ送り込むことによって実施され、かつ液体を内部小部屋に閉じ込めるため、密閉ステップが内部経路にクリップを取り付けることからなることを特徴とする方法。
46. 項目43記載の方法において、
密閉ステップがバルーン本体の内部経路をプラグで密閉することからなることを特徴とする方法。
47. 項目43記載の方法において、さらに、
密閉ステップの後、バルーンを腔内に残しておき、皮質骨が治癒する間、内部ギプスとして役立たせることからなることを特徴とする方法。
からなることを特徴とする方法。
48. 項目47記載の方法において、さらに、
バルーンを凋ませ、バルーンを腔から取り出すことからなることを特徴とする方法。
【0038】
本発明のさまざまな実施例は以下のとおりである。
【0039】
1. バルーン膨張中に押し出される脂肪やその他の生成物を除去するため、任意の吸引カテーテルを内蔵するドーナツ形(トーラス形)のバルーン。
【0040】
2. 体腔形成のため、リング形のバルーン・セグメントに取り囲まれた球形の外形を有するバルーン。
【0041】
3. インゲンマメ(腎臓)の形状を有するバルーン。かかるバルーンは単層か、あるいは積み重ねた複数の層で構成されてもよい。この実施例ではインゲンマメ(腎臓)の形の代わりに、四角形か長方形でもよい。
【0042】
4. ほぼ大腿骨頭(すなわち、近位大腿骨端)の大きさの球形のバルーン。かかるバルーンは半球形でもよい。
【0043】
5. 橈骨遠位端(すなわち、遠位橈骨端及び骨幹端)の形状に似せたこぶ付きバナナ形または変形ピラミッド形のバルーン。
【0044】
6. 近位脛骨端の内側半分または外側半分の形状に似せた円筒の長円形。かかるバルーンは近位脛骨幹端の内側及び外側半分の形状に似せて構成してもよい。
【0045】
7. 近位上腕骨端および上腕骨幹端に似せた形状で、骨幹内の海綿骨を圧縮し骨幹を密閉しているプラグを具備する基部上のバルーン。かかるバルーンは円筒形でもよい。
【0046】
8. 大腿骨頭、頚部及び小転子の内部に似せたブーメラン形のバルーンで、腰の骨折を防止する処置を可能にする。
【0047】
9. 近位上腕骨または遠位橈骨の内部の大きさと形状に似せた円筒形のバルーン。
【0048】
10. 任意の吸引デバイスを具備するバルーン・デバイス。
【0049】
11. カテーテル内の各バルーンを任意にカバーしている穿刺保護用の保護シース。
【0050】
したがって本発明は、バルーン・デバイスが挿入される骨内の腔または経路の形成または拡大のための改良された膨張可能なデバイスを提供する。各デバイスの形状は、周囲の皮質骨及び隣接する内部構造によって範囲を制限され、かつ骨内の容積の約70〜90%を占めるように設計されるが、骨折には骨内の容積がわずかに40%のバルーンや最高99%のバルーンも実施可能である。一般に虚血壊死のようなある種のケースでは、骨折または崩壊が局所に限られている理由から、バルーンのサイズは治療を受ける骨領域の海綿骨量のわずか10%でも実施可能である。十分に膨らませたバルーンのサイズと形状は、特に厚く作られているバルーン本体の選択部分に付加された素材でさらに束縛されており、かつデバイスに形成された以下のような(これのみに限らない)内部的または外部的束縛も受けている。すなわち、メッシュ細工、バルーン本体の一部に張り付けられた素材の曲がり方もしくは巻き方、接着剤で内側の特定の位置に固定されているか、外側へ通されている連続もしくは非連続の糸、そして、2つの本体部分を接合させた際、または本体の対面を接着剤か熱で接着させた際に形成されるバルーン本体の継ぎ目等である。バルーンの球形部分は、バルーン本体の構造に非弾性の素材を使用して束縛してもよいし、あるいは前述のような束縛手段を加えてもよい。バルーンの素材は、テトラフタル酸ポリエチレン(PET)、ケブラー(Kevlar)または他の特許医療バルーン材などの非弾性材が好適である。適切な束縛手段が組み入れられれば、バルーンはシリコン等の半弾性材かラテックスのような弾性素材で作ることもできる。束縛手段は、米国特許出願第4,706,670号に説明した素材等、柔軟で非弾性で引張りの強い素材から作ることができる。バルーン壁の厚さは、一般に1インチの1000分の2から1000分の25の範囲か、あるいは250〜400psiまでの圧力に耐え得る厚さにする。
【0051】
本発明の経皮的椎体増強の1つの重要な目的は、椎体内に腔を形成することができ、その形状が骨の支持に最適なバルーンを提供することである。もう1つの重要な目的は、できれば高さを維持するため、椎体の最上部を元の位置に再建することである。しかし上述の2つの目的は、椎体の皮質壁を破砕するか、あるいはすでに骨折した骨を動かすかのいずれかの方法によって、椎体側面の外径を変えずに達成しなければならない。この特徴は椎骨を脊髄の方へ押しやる可能性があり、この状態は望ましくない。
【0052】
本発明は下に説明する膨張可能なデバイスの設計によって、これらの目的を満足させている。かかるデバイスを膨らますことにより、カルシウムを含む軟らかい海綿骨は、硬い皮質骨の内側を被う薄い外皮の中へ圧縮され、大きな腔を形成する。
【0053】
同時に、軟骨内の生物学的構成要素(赤血球、骨先祖細胞)は押し出され、処置中に洗い流すことにより取り除かれる。体は骨折のない場合の椎体の内部形状を再生するが、内部容積の約70〜90%で再生をストップする。本発明のバルーンは非弾性であるため、最大限に膨らませても前もって決められた形と大きさにしか再生されない。しかし、従来のバルーンは膨らませると球形になる。球形では各椎体表面上に単一の接触点しかできないため、固まった骨セメントは脊椎を十分に支持できない(四角形内の円形または円筒内の球形と同じ)。本発明のバルーンは、バルーンを希望する形状に保つ束縛手段を含めることにより椎体の平坦な表面を再現する。これにより椎体表面と骨セメント間の接触が最適になり、脊椎が補強される。さらに、これらの腔を満たす骨セメントの量により、適切な圧縮力に必要とされる厚いセメントの外被(4mm以上) が形成される。必要ではないが、もう1つの有用な特徴として、圧縮された海綿骨の内層に跡を残すバルーンの隆起部がある。その結果できた骨セメントの「指」により安定性が補強される。
【0054】
椎体の海綿骨を最適に圧縮するバルーンは、前述したバルーン・タイプのうち、1、2、3としてリストしたバルーンである。これらのバルーンは椎体の形状に似せて設計されている。バルーンは骨の内部容積の70〜90%を占めるものが選ばれるため、椎体の側面に無理な圧力をかけることはなく、したがって椎体は通常のサイズ以上には拡がらない(骨折、無骨折にかかわらず)。しかし、バルーンは無骨折の椎体の高さを有するので、崩壊した椎体の最上部を元の位置に再建することが可能である。いずれのタイプのバルーンも積み重ねることができ、また柔軟性及び(または)束縛を与えるため、タイプ1、2、3のいずれのバルーンを含めた積み重ねの場合も、形状及び(または)大きさをミックスすることができる。本発明の経皮的近位上腕骨増強の主な目的は、近位上腕骨の支持に最適な形状を有する腔を近位上腕骨内に形成することである。もう1つの重要な目的は、上腕骨頭と上腕骨幹が骨折で離れた場合、両者を再整列させることである。上述の2つの目的は、主として海綿骨(皮質骨ではなく)を圧縮することにより達成することが必要である。皮質骨に対する無理な圧縮は皮質骨の骨折を招くおそれがあり、肩の骨折を悪化させることが考えられる。
【0055】
本発明は以下に述べる膨張可能なデバイスの設計によって、これらの目的を満足させる。かかるデバイスを膨らませると、上腕骨の骨端及び骨幹端の皮質壁に対して海綿骨が圧縮される結果、腔が形成される。ある種の症例では、骨折の位置次第で、バルーンまたは膨張可能なデバイスを使用して、上腕骨の骨幹の近位部分の中へ腔を延長することができる。
【0056】
「基部上の球」様バルーン(前述のバルーン・タイプの7)の設計のせいで、このバル
ーンにより形成される腔は、近位上腕骨の皮質壁の内側の形を再現するか、それに近似した形になる。「基部上の球様バルーン」によって形成される腔のおおよその容積は、主として近位上腕骨の骨端及び骨幹端の容積の70〜90%であるが、骨幹の一部を含めることもある。その形状は上腕骨頭の形に近似する。「基部」は遠位骨幹端または近位骨幹の骨の「プラグ」内へ柱骨を圧縮するよう設計されている。この骨のプラグは注入可能な物質が上腕骨の骨幹内へ流れ込むのを防止する結果、臨床的な結果が改善される。また「基部」のない球形を使用してもかまわない。代りの方法として、バルーンは、上腕骨頭頂の一端がカテーテルに取り付けられ、もう一端がプラグの機能を果たす肥満した円筒様の形状でもよい。また円筒は、上腕骨内の端の径がプラグの機能を果たす端の径より大きくなるように形成することができる。
【0057】
本発明の経皮的遠位橈骨増強の主な目的は、遠位橈骨の支持に最適な形状を有する腔を遠位橈骨内に形成することである。もう1つの重要な目的は、骨折が finger trap により部分的に再整列された後、骨折の再整列を細かく調整することである。この2つの目的は、主として海綿骨(皮質骨ではなく)を圧縮することによって達成することが必要である。皮質骨に対する過度の圧縮は皮質骨の骨折を招くおそれがあり、症状を悪化させることが考えられる。
【0058】
本発明は、すでに述べたか、あるいは以下に述べる膨張可能なデバイスの設計によって、これらの目的を満足させている。
【0059】
「こぶ付きバナナ」の設計、または変形ピラミッドの設計(前述のバルーン・タイプの5)は、遠位橈骨の形状に似せてあるため、このバルーンで形成される腔も、遠位橈骨に近似する。この「こぶ付きバナナ」タイプのバルーンで形成される腔のおおよその容積は、遠位橈骨の骨端及び骨幹端の容積の約70〜90%であるが、遠位橈骨の骨幹の或る部分を含めることもある。かかるデバイスを膨らませると、遠位橈骨の骨端及び骨幹端の皮質壁に対して海綿骨を圧縮する結果、腔が形成される。ある種のケースでは、骨折の位置次第で、骨に似たバルーンまたは膨張可能なデバイスを使用して、橈骨の骨幹の遠位部分の中へ腔を延長することができる。
【0060】
本発明の経皮的大腿骨頭(または上腕骨頭)増強の主な目的は、大腿骨頭の支持に最適な形状を有する腔を大腿骨頭(または上腕骨頭)内に形成することである。もう1つの重要な目的は、大腿骨頭内の虚血(または防腐処置を施した)壊死骨の圧縮または虚血壊死骨の支持を助けることである。この目的には、大腿骨頭の球形を改良するため、虚血壊死骨を大腿骨頭内の元の位置に再建して再整列することを含めることができる。これらの目的は、主として大腿骨頭内の海綿骨を圧縮することによって達成することが必要である。
【0061】
本発明は、すでに述べたか、あるいは以下に述べる膨張可能なデバイスの設計によって、これらの目的を満足させている。
【0062】
球形の骨に似たバルーンの設計(前述のバルーン・タイプの4)は、大腿骨頭の形状に
似せてあるため、このバルーンで形成される腔も大腿骨頭に近似する(この膨張可能なデバイスの球形は上腕骨にも似せてあり、上腕骨内の腔形成にも適切であることに留意)。かかるデバイスを膨らませて、大腿骨頭をその内側皮質壁に対して圧縮する結果、腔が形成される。ある種のケースでは、虚血壊死の程度次第で、大腿骨頭内に大きい腔か、または小さい腔を形成すことができる。また或る種のケースでは、虚血壊死の領域が小さい場合、小さなバルーンを利用して大腿骨頭の総容積のわずか10%〜15%の腔を形成することが可能である。大腿骨頭の虚血壊死の領域が大きい場合は、大きなバルーンを利用して、大腿骨頭の総容積の80%〜90%の腔を形成できるような一段と大きい腔を形成することもできる。
【0063】
半球形のバルーンは大腿骨(上腕骨)頭の上半分の形状に似せて作られ、大腿骨頭の残りを妨げることなく、虚血壊死または軽度の骨折領域内の海綿骨を圧縮する方法を提供する。これにより、将来必要になるかもしれない関節の完全置き換えが容易になる。
【0064】
股関節部の経皮的増強は、股関節の骨折が起こる大腿骨内の脆い海綿骨を圧縮し、適当な支持材と置き換えることにより、股関節部の骨折を防止するように設計される。股関節部の経皮的増強の主な目的は、大腿骨頭、大腿骨頚部、及び小転子内に腔を形成することである。これにより、疾患海綿骨は圧縮され、適当な支持材と置き換えられるため、股関節の骨折を防止することができる。この処置で形成される腔は、通常大腿骨頭から小転子を規定量だけ超える位置まで延長されるが、それ以上延長されることはない。股関節の骨折が患者に影響を及ぼさない大転子の位置まで腔を延長してはならない。その理由は、股関節の骨折が患者に影響を及ぼす小転子内へのバルーンの延長を妨げるからである。バルーンは皮質骨の内側を押さずに、海綿骨のみをできるだけ十分に圧縮することが必要である。皮質骨の内側を押した場合、(骨折防止の代わりに)骨折を起こすおそれがある。
【0065】
本発明は、すでに述べたか、あるいは以下に述べる膨張可能なデバイスであって、バルーンを適切に向けておくため、そのデバイスをカテーテル上に配置することを含めて、特別な特徴を有するデバイスを提供することによって、これらの目的を満足させている。
【0066】
股関節部の経皮的増強の主な目的は、内側または外側脛骨プラトーの支持に最適な形状を有する腔を近位脛骨内に形成することである。もう1つの重要な目的は、脛骨プラトー骨折、特に骨片が通常の位置より下(または下部)に陥没した骨折の骨折片の再整列を助けることである。この2つの目的は、主として海綿骨(皮質骨ではなく)を圧縮することによって達成することが必要である。皮質骨に対する過度の圧縮は脛骨プラトーの骨折を悪化させることが考えられる。
【0067】
本発明は以下に述べる膨張可能なデバイスの設計によって、これらの目的を満足させている。かかるデバイスを膨らますと、内側または外側脛骨プラトーの皮質壁に対して海綿骨を圧縮する結果、腔が形成される。
【0068】
「長円形円筒」様バルーン(前記のバルーン・タイプ6)の設計のせいで、このバルーンで形成される腔は、内側または外側脛骨プラトーの皮質壁の形状を再現するか、それに近似する。長円形の円筒様バルーンによって形成される腔のおおよその容積は、脛骨の内側半分または外側半分の近位骨端骨の50〜90%である。
【0069】
損傷、疾患または他の治療の性質の理由から、切開手術中に本発明のデバイスで骨を治療するのが好適であろう。さらに、経皮または切開手術の目的は、疾患または損傷骨を流れない素材(骨充填材またはある種の薬剤等)に置き換えることであってもよい。
【0070】
本発明は以下に述べる本発明のシステムと方法によって、これらの目的を満足させている。
【0071】
本発明のその他の目的は、発明の図示ために添付した図面を説明している以下の明細書を読み進むに従い明らかになるであろう。
【実施例】
【0072】
(好適な実施態様の詳細な説明)
(椎体用バルーン)
本発明のバルーンの最初の実施例(図1)は、番号10が概略的に示しており、テトラフタル酸ポリエチレン(PET)またはケブラー(Kevlar)のような柔軟な素材からなる1対の中空で膨張可能な非拡張性の部分12及び14を有するバルーン本体11を含んでいる。部分12及び14の間には、脂肪及びその他の残骸物を管16内へ吸引し、遠隔の廃棄場所まで運搬するための吸引管16が配備されている。カテーテル管16は、吸引源(図示されていない)から管16の開放端へ吸引力を応用できるよう、1つかそれ以上の吸引口を持つ。
【0073】
部分12及び14は、接着剤で接着されている。接着剤は適当なタイプなら何でもよい。部分12及び14は、図1に示すように、ドーナツ型をしており、部分12及び14へ通じ、かつ部分12及び14からそれぞれ延長し、膨張用の加圧された液体源へと通じる管18及び20を有する。液体は無菌で生体適合性であればいずれの溶液でもよい。液体によるバルーン10、特にその部分12及び14の膨張は、図2の椎骨22のような治療を受ける骨内にバルーンを凋ませた状態で(図8)挿入した後に行なう。前述の特許出願第4,969,888号及び5,108,404号は、治療を受ける骨内へバルーンを挿入するためのガイト・ピン及びカニューレの使用を開示している。この方法では、バルーンを凋ませて管内へ挿入し、カテーテルで皮質骨内へ運搬した後にバルーンを膨らます。
【0074】
図8は、凋ませたバルーン10がカニューレ26によって骨内に挿入されるところを示している。カニューレ26内のバルーンは凋まされており、カテーテル21に手で力を加えながらカニューレの中を押し進められる。カテーテル21は経路28内へ延長しており、経路28は骨の内部へ延長している。カテーテルはわずかに柔軟性を有するが、骨の内部へ力を加えて押入れるに足る硬さを持っている。骨内に挿入されたら、管88内へ液体を送り込んでバルーンを膨らます。管88の放出口は部分12及び14に連結されている。
【0075】
使用においては、バルーン10は始めに凋ませておき、バルーンで満たされる骨をバルーンを受け入れるべくドリルで準備した後、凋ませたバルーンをカニューレ26を通して崩壊した状態の骨内へ力を加えて押し入れる。骨は図2に示している。骨の骨折または崩壊がまったくない場合、骨内のバルーンは好適には、骨髄及び(または)海綿骨への圧力が最小になるような方位に向けられる。かかる圧力によって、骨髄及び(または)海綿骨は皮質骨の内壁対して押さえられるため、治療を受ける骨の骨髄は圧縮され、骨髄の代わりに生体適合で流動性の骨材質を充填する腔がさらに拡張される。
【0076】
次に、骨髄及び(または)海綿骨を圧縮するため、バルーンを腔内で膨らませる。骨髄及び(または)海綿骨が圧縮されたらバルーンを凋ませ、腔から抜き取る。バルーンの膨張と圧縮が行なわれる間、脂肪及びその他の残骸物は、カテーテル管16に吸引圧をかけることにより、部分12及び14の間ならびに周囲のスペースから吸引される。この処置及び骨髄の圧縮を行なった後、バルーンを凋ませ、カテーテル21を力を加えて腔から抜き取る。
【0077】
本発明の膨張可能なデバイスの第2の実施例は、番号60が概略的に示しており、図4及び5に示されている。バルーン60は中空になっており、管64を通じて加圧された膨張用液体
を受け入れる中央の球形部分62を含む。球形部分には球形の外部表面66があり、部分68を膨らますための管セグメント70を有するリング形の部分68で囲まれた外部表面を持つ。ペアの経路69は部分62と68を結んでいる。吸引管セグメント72は、バルーン60で生成された骨腔からの液体及び残骸物を吸引する。
【0078】
本明細書に開示されたバルーン・スリーブ71、バルーン60及びすべてのバルーンは入手可能である。バルーン・スリーブ71(図9)は置き換えられるように外部管71a内に配備されており、バルーン60の挿入に用いることができる。スリーブ71は、バルーンの損傷を防止するため、椎骨22(図9A)の開口部71Cの内壁を押している弾性の指71bを持つ。バルーン・スリーブを取り除くと同時に、加圧された液体が管64に向かって流れ、皮質骨内の骨髄を圧縮するよう部分62及び68を膨らます。次に、バルーン60を凋ませ、骨腔から取り出す。
【0079】
図6及び6Aは、図1及び2に示したタイプの変形ドーナツ形バルーン80のいくつかの図を示している。ただし、バルーン80のドーナツ形は互いにステッチで留められてはいない。図6のバルーン80は、第1の中空部分84及び第2の中空部分85からなるナシ形の凸状外部表面82を持つ。管88は、2つの部分が骨の髄質腔へ挿入された後に分管90及び92を介して液体を2つの部分へ導き、その部分を膨らますためのものである。カテーテル管16は、バルーン80の2つの部分の間のスペース96内へ挿入される。2つの部分84及び85は、接着剤によりその対面で接着されている。
【0080】
図6Aは、バルーン80の2つの部分の間のスペースまたは開口部96内へカテーテル管16が挿入されている方法を示している。
【0081】
図7は、膨張液をバルーン80内へ導いた後、バルーンの正しい配置を決めるため、膨張材で満たされたバルーンのX線撮影ができるように、バルーン80内へ造影剤を注入する管88を示している。管16は図6にも示してあり、管88の外壁表面に或る種の適当な方法で取り付けられている。
【0082】
本発明のさらにもう1つの実施例は、図3に示している。これは図1に類似しているが、ドーナツ形ではなく、丸くて膨張可能なデバイス109を含む。このデバイスは膨らますことができ、糸状の束縛手段117を有する3つのバルーン・ユニット110、112及び114を有する。この束縛手段は、バルーン・ユニットの長軸に対してバルーン・ユニットが直角方向へ拡張するのを防止する。束縛手段の素材は、バルーンの素材と同じか類似の素材で、ある程度の弾力性はあっても、実質的には拡張能力のないようなものからなる。
【0083】
管システム115は、加圧された液体をバルーン・ユニット110、112、及び114へ導き、凋ませた状態で骨内に配置したバルーン・ユニットを液体で膨らますためのものである。バルーンを正しく膨らませて骨髄を圧縮した後、バルーンを凋ませ、治療する骨から力を加えて外へ取り出す。束縛手段の助けにより、両端の側面77及び79は、実質的に平坦であり互いに平行である。
【0084】
図10は、もう1つの膨張可能なバルーンを示している。このデバイスはインゲンマメ形のバルーン本体130で、1対のインゲンマメ形側面132を持ち、バルーン130を図11に示す骨136内に押し入れるため、その側面は折り畳まれるように適合されており、また連続的端面134と共動するように適合されている。管138は、バルーンを膨らませて、バルーンが図11の椎体136に示す寸法及び位置になるように膨張液をバルーン内へ送り込むのに用いられる。デバイス130は、骨の骨折も崩壊もない場合、海綿骨を圧縮する。上述の動作はバルーンの側面及び端面によって制限される。
【0085】
図12は、インゲンマメの形状を有し、かつ膨張液をバルーン内へ送り込み、バルーンを膨らますのに用いる管142を備えるバルーン140を示す。バルーンは当初、1つの小部屋からなる袋であるが、袋はカーブした線または帯に沿って熱シールを施し、接着線144を形成することができる。これにより、図13に示すインゲンマメ形状を有する横に並んだ小部屋146が形成される。四角または三角のバルーンには、140に見られるものと類似のパターンの帯で、直線のものが応用される。素材はプラスチックに類似し、熱で形成できる標準的な医療用バルーン材であるため、熱シールを施すことによって袋の側面の熔接が起こる。
【0086】
図14は、図12のバルーンを含んでおり、椎骨147に挿入された場合の二重積み重ねバルーン140を示す椎体147の透視図である。
【0087】
図15は、図10に類似しているが、糸状の束縛手段である房が付いている点が異なる。この房は膨張可能なデバイスの側面152の間に延長し、それらを結ぶことによって側面の互いからの拡張を制限している結果、側面は一般的に平行を保っている。管88は上述した方法で、インゲンマメ形状のバルーンを膨張液で満たすために用いられる。
【0088】
椎体バルーン用の寸法は、広範囲にわたる種類のものがある。腰椎体及び胸椎体のための椎体バルーンの高さ(図11のH)は、典型的に0.5 cmから3.5 cmの範囲にわたる。腰椎体及び胸椎体のための椎体バルーンの前方から後方までの寸法 (図11のA)は0.5cmから3.5cmの範囲にわたる。胸椎体のための椎体バルーンの左側から右側までの寸法(図11のL)は0.5 cmから3.5 cmの範囲にわたる。最適の椎体バルーンは、独立した管システムを通して各要素を別々に膨らませることができる異なる高さの2つかそれ以上の要素を積み重ねたバルーンである。十分に膨らませた場合の積み重ねバルーンを合計した高さは、上記に特定した高さの範囲内でなければならない。かかる設計にすることによって、周囲の組織を傷つけることなく骨折した椎体を段階的に元の高さに再建することができ、また同じバルーンをより広範囲の椎体サイズに使用することができる。
【0089】
一定の椎体のための適切なバルーンの最終的な選択は、たとえばいくつかの要素に基づく。一定の椎体のためのバルーンの前から後までの(A-P)寸法は、椎体のCTスキャンまたはX線写真を見て選択する。A-P寸法は、椎体の前皮質の内部皮質壁から、後皮質の内部皮質壁までを測る。一般に、適切なバルーンのA-P寸法は、この測定値より5〜7ミリメートル少ない。
【0090】
一定の椎体のための適切なバルーンのサイドからサイドまでの寸法は、治療を受ける椎体のCTスキャンまたはX線写真を見て選択する。サイドからサイドまでの距離は椎体の側面の内部皮質壁を測定する。一般に、適切なバルーンのサイドからサイドまでの寸法は、この測定値より5〜7ミリメートル少ない。また腰椎体のサイドからサイドまでのバルーン寸法はA-P(前から後までの)寸法より広い傾向にある。胸椎骨の場合、サイドからサイドまでの寸法とA-P寸法はほぼ同じである。
【0091】
一定の椎体のための適切な椎体バルーンの高さは、治療を受ける椎体の上方及び下方の椎体のCTスキャンまたはX線写真を見て選択する。治療を受ける椎体の上方及び下方の椎体の高さを測定し平均する。この平均値は選んだ椎体バルーンの適切な高さを決定するのに用いられる。
【0092】
(長骨用バルーン)
本発明のバルーンを使用して治療できる長骨には、遠位橈骨(手首の大きい方の腕骨)、近位脛骨プラトー(膝の直ぐ下の脚の骨)、近位上腕骨(肩の腕上端)、及び近位大腿骨頭(股関節の脚骨)がある。
【0093】
(遠位橈骨用バルーン)
遠位橈骨用としては、遠位橈骨152内のバルーン160を示しており、バルーンはピラミッドに近似しているが、より厳密にはこぶ付きバナナの形状と考えられる。このこぶ付きバナナは、遠位橈骨内の腔内部の大部分を満たし、皮質骨158の内部表面156に対して海綿骨154を軽く圧縮している。前述した球形橈骨バルーンも、遠位橈骨158用として適当なサイズに形成できることに注目していただきたい。
【0094】
バルーン160は、円錐形の下部分159を持ち、遠位橈骨152の中空スペース内を下方向へ延長している。この円錐形部分159は、遠位中央部分161に近づくにつれて横断面が大きくなる。バルーン160の横断面は、中央の位置(図17B)に示されており、この位置はバルーンの最も広い位置に近い。番号162を付したバルーンの上部端は、バルーンを膨らますため液体をバルーン内へ導き、皮質骨の内部表面に対して海綿骨を圧縮するため、カテーテル88に向かって細くなっている。バルーン160の形状は、糸による束縛手段165で形成される房によって決められ制限を受けている。これらの束縛手段の使用は任意であり、バルーン本体160を一段と補強してくれるが、希望の形状を達成するのに不可欠なものではない。バルーンは椎骨に関して説明した方法と同様にして、遠位橈骨に配置したり遠位橈骨から取り出したりすることができる。
【0095】
バルーンの近位端(すなわち肘に最も近い部分)は円筒形で、寸法は0.5 x 0.5 cmから1.8 x 1.8 cmまでさまざまである。
【0096】
遠位橈骨バルーンの長さは1.0 cmから12.0 cmまでさまざまである。
【0097】
遠位橈骨バルーンの内側(正中線に近い)から外側(正中線から離れた)までの最も広い寸法(遠位橈骨と遠位尺骨の関節部かその付近)は、1.0 cmから2.5 cmまでさまざまである。遠位橈骨バルーンの遠位の前から後までの奥行寸法は0.5 cmから3.0 cmまでさまざまである。
【0098】
(近位上腕骨骨折用バルーン)
遠位橈骨の一定の骨折を治療する適切なバルーン・サイズの選択は、遠位橈骨及び骨折の位置のX線写真観察による測定値によって行なう。
【0099】
近位上腕骨169の場合、図18が示すバルーン166は球形であり、基部を持つ設計のものである。このバルーンは近位上腕骨169内の海綿骨168を圧縮する。埋め込みまたはラミネート及び(または)巻かれたメッシュ170を用いてバルーン166のネック172を形成し、また骨幹の始まる部分で、2つ目のメッシュを用いて基部172aの底を内部皮質壁の形状に一致するよう形成することができる。これらの束縛手段により、バルーン本体の強度が一段と向上するが、形状はバルーン本体の成型によって達成することができる。これは図18に示すように、バルーン166を取り囲む圧縮された領域に示すような形状に海綿骨を圧縮するためである。皮質骨173は下部174で相対的に広くなっており、上部端175では薄い壁になっている。バルーン166は供給管177を有しており、その管を通して加圧された液体をバルーン内へ送り込んでバルーンを膨らまし、近位上腕骨の海綿骨を軽く圧縮する。バルーンは椎骨に関して説明した方法と同じ方法で、近位上腕骨に挿入したり、近位上腕骨から取り出したりできる。
【0100】
近位上腕骨の骨折用バルーンは以下のようにさまざまである。
【0101】
バルーンの球形になった末端部は、1.0 x 1.0 cmから3.0 x 3.0 cmまでさまざまである。
【0102】
近位上腕骨骨折バルーンのネック部は、0.8 x 0.8 cmから3.0 x 3.0 cmまでさまざまである。
【0103】
近位上腕骨骨折バルーンの基部または遠位部分の幅は、0.5 x 0.5 cmから2.5 x 2.5 cmまでさまざまである。
【0104】
バルーンの長さは4.0cmから14.0 cmまでさまざまである。
【0105】
一定の近位上腕骨骨折を治療するための適切なバルーンの選択は、近位上腕骨のX線写真で測定した骨折の大きさや位置によって行なう。
【0106】
近位上腕骨169内の使用に適合されたもう1つのバルーンは、図18Aに示す円筒形バルーン225である。図18の供給管177のように、円筒形バルーン225はバルーンに液体を注入す
るための膨張管226を備えている。227は典型的な肩骨折を示す。円筒は一様な円周のものでもよいし、片方の端がもう片方より広くてもよい。広い方の端には、上腕骨頭168aの海綿骨168を圧縮するため、拡張管226が取り付けられている。形状を維持するための適切な束縛手段は、一定の間隔で周囲に配置された複数の非弾性帯(228はその1つ)である。
一様な幅の円筒の場合、束縛帯は通常同じ直径を有する。片方の端がもう片方の端より広い円筒の場合、各帯は直径が次第に大きくなる。
【0107】
バルーンの長さは、通常基部上の球体と同じ長さで、好適には4〜14 cmの範囲にあり、幅は通常0.5〜2.5 cmの範囲内のものがよい。術者は治療を受ける上腕骨の普通のX線写真を使用する。必要な長さは、挿入部位の内側上腕骨頭から骨折部位の約3cm下までの距離を測定して決める。直径は上腕骨幹(バルーンの長さの最も狹い部分)の皮質の内側直径より少なくとも0.5 cm短い。
【0108】
(近位脛骨プラトー骨折用バルーン)
脛骨骨折は図19Aに示すとおりである。19Aでは、バルーン180は脛骨183の片側182に配置される。バルーンは膨らませたとき、バルーン180を取り囲む層184内の海骨綿を圧縮する。バルーンの横断面を図19Cに示す。図19Cのバルーンは1組の対面185及び187を持ち、束縛手段188によって相互に結ばれている。糸の形状あるいは適切な構造の柔軟な要素ならなんでもよい。この束縛手段の主な目的は、面185及び187が事実上互いに平行になり、球形にならないようにするためである。管190は、液体をバルーンに導き入れたり、バルーンから導き出したりするため、バルーン180に連結されている。束縛手段の端は図19B及び図19Dに示し、数字191を付している。バルーンは、椎骨に関して説明した方法と同じ方法で、脛骨に挿入したり、脛骨から取り出したりする。図19Bは、実質的に円形のバルーン形状を示しているが、図19Dは実質的に楕円形のバルーンを示している。
【0109】
近位脛骨プラトー骨折バルーンの寸法は以下のようにさまざまである。
【0110】
バルーンの厚さまたは高さは、0.5 cmから5.0 cmの範囲である。
【0111】
前方から後方までの寸法は 1.0 cmから6.0 cmの範囲である。
【0112】
サイドからサイド(内側から外側)までの寸法は1.0 cmから6.0 cmの範囲である。
【0113】
一定の脛骨プラトーの骨折を治療するための適切なバルーンの選択は、X線写真で測った骨折のサイズ及び位置によって行なう。
【0114】
(大腿骨頭用バルーン)
大腿骨頭の場合は、大腿骨頭の皮質骨202内に挿入されたバルーン200を示す。皮質骨は大腿骨頭の外側端204で薄く、大腿骨の下端206で厚さを増している。皮質骨は海綿骨207を取り囲み、この骨はバルーン200の膨張によって圧縮される。膨らませるため液体をバルーンへ送り込むための管は数字209が付されている。管は大腿骨の頚部に沿って延長し、通常球形の大腿骨頭内へ達している。バルーンは図20Aの200aが示すように半球でもよいし、また図20のように球形でもよい。バルーン200は椎骨に関して説明したのと同じ方法で、大腿骨頭に挿入したり、大腿骨頭から取り出したりする。本例の半球の形状は、図20Aに示すプリーツ200Bを形成している底の重なっている部分によって維持されている。
【0115】
大腿骨頭バルーンの寸法は、以下のようにさまざまである。
【0116】
大腿骨頭バルーンの寸法は1.0 cmから4.5cmまでの範囲にわたる。大腿骨頭バルーンの適当なサイズの選択は、大腿骨頭のX線写真またはCTスキャンによる大腿骨頭のサイズの測定及ならびに、虚血壊死骨の位置及びサイズによって行なう。半球形バルーンの寸法は、球形バルーンの約半分である点を除けば、球形バルーンの寸法と同じである。
【0117】
(股関節部骨折の防止)
図21は股関節部骨折を防止する「ブーメラン」形バルーン210を示している。「ブーメラン」形バルーン210は膨らませると円筒形で、中央部でブーメランのように次第に曲がっている。バルーンは大腿骨頭211の端から約0.5cmのところからスタートして、大腿骨頚部212を経由し、近位大腿骨骨幹213内へ延長し、小転子214から約5〜7 cmのところでストップしている。バルーン210は、非弾性の素材(215はそのうちの1つ)からなるリングによってその形状を維持され、該リングは、バルーンの片側の全長にわたり付着している非弾性のより短い帯216にはより近い間隔で繋ぎ合わされており、バルーンの反対側に付着している非弾性のより長い帯217にはより離れた間隔で繋ぎ合わされているものが望ましい。
【0118】
膨らませる前後に、バルーン210を膨張管に押し付けて折りたたむ(218の点線に示すように)。膨張の前にバルーン210を膨張管に巻いてもよいが、その場合バルーンを膨らま
せたとき、ほどける程度にゆるく巻く。バルーンを膨張管に付けて股関節部に挿入するには、術者はX線画像を見ながらパワードリルを使用して、遠位大腿骨皮質221の地点からスタートして、大腿骨頭211に達する通常4〜6 mmの幅の腔220を形成する。大腿骨骨幹213の地点までバルーンを下ろしてバルーンを膨らませる代わりに、大転子領域222内でバルーンを膨らませることは望ましくないが、バルーンの配置と正しい方位がそれを防止している(凋ませたバルーンは小転子の方に向いている)。バルーン210を腔220内で膨らませた後(図21の点線を参照)、前もって決められたバルーンのサイズ及び形状により、バルーンの近位部分は小転子の方へ偏る。任意により、同じドリルのスタート点から骨幹の方へ第2の腔をドリルで形成してもよい。
【0119】
股関節部の骨密度がしきい値以下の患者の場合、股関節部骨折のリスクが増し、密度が下がるにつれてリスク度も増す。患者の選択は骨密度のスキャンによって行なう。バルーンの長さは術者によって決められる。バルーンは大腿骨頭211の端から約0.5 cmのところからスタートして、大腿骨頚部を経由し、近位大腿骨骨幹内へ延長して、小転子から約4〜8 cm下がったところでストップしている。バルーンの直径は、大腿骨頚部(最も細い領域)の内側皮質骨の直径を測り、その値から0.5cmを差し引いて求める。「ブーメラン形バルーン」の好適な寸法は、全長が10〜20 cm、直径が約1.0〜2.5 cmである。(「こぶ付きバナナ」形バルーンの「こぶ」部分の幅が大腿骨頚部の許容寸法を超えない限り、正しい長さの「こぶ付きバナナ」形バルーンも股関節の骨折防止に有用である。)
大腿骨頭の骨密度が最低の患者の場合、たとえば、「ブーメラン形バルーン」に続いて大腿骨頭バルーンを用いるといった2つのバルーンを連続的に使用することにより、大腿骨頭内の海綿骨をより強力に圧縮することが必要になるかも知れない(同じ挿入口から挿入し、支持材を挿入する前に膨らます)。代りの方法として、「ブーメラン形」バルーンを適合させて、バルーンの遠位部分が大腿骨頭バルーンの形状に似るようにすることもできる。
【0120】
(その他の使用、方法、及びバルーン)
バルーンにより形成される腔は、医療的に適切な処方の薬剤または成長因子で充填することが出来る。薬剤投与の例として、局所の骨髄炎を治療するための抗生物質ゲンタマイシンの典型的な投与量は、1グラムである(ゲンタマイシンの治療投与量の範囲ははるかに大きく、治療する病状及び投与する領域の広さ次第で1ナノグラムから100グラムまでにわたる)。ポリエチレングリコール等の正しいゲル物質を処方した医療的に適切なゲルは、一定量(たとえば10cc)のゲル内に1グラムのゲンタマイシンを含有させることができる。形状及びサイズが治療する部位に適切なこの量のバルーン(つまり、バルーンは動かないため、形状及びサイズが適切でないバルーンを選択部位で膨らませると皮質骨を破壊する恐れがある)を使用して、病原菌に冒された海綿骨を圧縮することができる。これにより腔が形成され、治療が必要な部位に必要量の薬剤を正確に維持しておくことができ、薬剤が血液やその他の液体で洗い流されることを防止する。投与量は最適化できるのみでなく、切開手術を施すことなく後で投与量を追加することができ、治療的結果が強化される。最適の薬剤投与に必要な腔が骨を弱めた場合、それ以上骨折しないように、ギプスを使用して、あるいは従来の体内または体外金属(またはプラスチック)固定装置を使用して、骨を保護することができる。骨に入れられた治療的物質は骨の外にも作用を及ぼす。化学療法用の薬剤を含んでいる処方薬を使用して、局所の固形腫瘍、局所に限られた黒色腫、または近くの骨肉腫やその他の腫瘍までも治療することが可能である。
【0121】
治療的物質を投与するための代替方法として、治療する骨にバルーンを挿入する前に、医療的に有効な量の好適な抗生物質、骨成長因子、またはその他の治療的物質を含有している医療的処方薬(乾燥粉末剤、液体またはゲル)の中にバルーンを落として、上述の物質をバルーンに塗布する。任意により、薬剤塗布を施す前に、空気または液体でバルーンを全部または一部膨らませてもよい。任意により、塗布した薬剤が濡れている場合(液体またはゲル状の場合)、塗布したバルーンを空気またはその他の手段で乾燥させてもよい。指示に従いバルーンを再び折りたたみ、必要に応じて直ちに使用するか保存する。バルーンに塗布された治療的物質は、海綿骨を圧縮する間に投与してもよいし、腔が形成された後、もう1つのバルーンに塗布して投与してもよい。
【0122】
上述した方法を用いて、使用前にゲルフォーム(Gelfoam)またはその他の薬剤をバルーンに塗布することもできる。ゲルフォームを塗布した骨内のバルーンを膨らませて、海綿骨の圧縮によって満たされなかった骨折骨のあらゆる割れ目をバルーンで満たす。
【0123】
図22A-Cは、本発明に従って治療的物質を骨に投与する1つのシステム及び方法を概念的に示している。図22Aに示すように、膨張管230に取り付けられた膨張バルーン229を、管230をワイヤ232へ繋いでいるクリップ231で固定する。図22Bに示すように、希望する量の物質233含んだ測定量のゲル処方薬を、容器234から一様につまみ出し、好適には薄いライン235状にしてバルーン236の外側表面に塗布する。次に、図22Cで示すように塗布バルーン237を凋ませ、ゲルが固定するまで乾燥させる。その後、塗布バルーン237は医療用として包装される。もちろん、バルーンはあらかじめ膨らますことなく薬剤を塗布することもできる。さらに、塗布物質は自然の状態(固体、液体または気体)の希望する化合物のみでもよいし、あるいは乾燥粉末、エアゾールまたは溶液を含む適当な処方でもよい。もちろん、任意の乾燥時間は化合物及びその処方の性質による。
【0124】
骨の圧縮に用いられるか、あるいは骨を圧縮した後の第2のバルーン(わずかに大きい)として用いられるバルーンの外側に治療的物質を塗布しての薬剤投与は、処方薬を腔に投与するのとは質的に異なる。骨の圧縮中に薬剤を投与する場合、物質は圧縮される骨の中へ組み入れられる。これは薬剤を徐放する方法として即座に役立つ。同時に、アクリル骨セメントまたは生体適合性の人工骨のような適当な支持物質で腔を充填することが出来るので、ギプスも金属製の固定装置も不要になる。かかるバルーンの組合せによって、たとえば、術者は希望する治療的物質(抗生物質、骨の成長因子または骨粗しょう症薬剤等)を骨粗しょう症の部位に投与しながら、骨粗しょう症による骨折を経皮的に治療することができる。したがって、ギプスまたは金属製の固定装置は一般に不要である。
【0125】
医療的に有効な量の治療的物質は、薬剤のメーカーまたはスポンサーにより、一般に1つの部位につき10ナノグラムから50ミリグラムであるが、特別な症例では、これより少ない量や多い量が必要な場合もあり得る。典型的な抗生物質にはゲンタマイシン及びトブラマイシンがある。典型的な骨成長因子には、骨モルフォゲン因子、骨形成タンパク、繊維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子、ならびに変形成長因子アルファ及びベータ科のメンバーがある。化学療法及び関連薬品には、シスプラチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、メトトレキサート、タクソール、タモキシフェンなどの化合物がある。骨粗しょう症の薬剤には、エストロゲン、カルシトニン、二ホスホン酸塩、及び副甲状腺ホルモン拮抗剤がある。
【0126】
本発明で説明するバルーンは、整形外科的インプラント、骨移植、人工骨、骨充填材、治療的物質のための改良スペースを提供するため、上に説明した部位の切開手術にも使用することができる。選んだバルーンのサイズ及び形状は、まず、治療を受ける部位によって決定され、続いて、サイズ、形状または残りの骨に挿入を希望する素材の量によって決定される。四角形または長方形バルーンは、これらの形状で入手できるヒドロキシアパタイト等の人工骨の配置に、どのような部位にも用いることができる。バルーンは前もって決められたサイズに適合するように作られており、また選んだ素材のサイズにピッタリ合うものが選ばれる。
【0127】
バルーンによって形成された腔内へ、ヒドロキシアパタイト顆粒または骨ミネラル固着料のような流れない材料を挿入するには、術者は小侵襲手技により、カニューレの内径よりわずかに小さな径の長いピンで、管の中へ材料を押し込むことができる。切開手術中、術者と治療する骨との間に皮膚またはその他の組織が存在しないことを除けば、術者はあたかも経皮的手技を用いているかのように治療する骨に達することができる。これにより、皮質骨をできるだけ無傷のまま保つことができる。挿入する材料が流れず、カニューレを介して腔に押し入れられない場合(たとえば、ヒドロキシアパタイトの塊のように傷害を起こす可能性があるため)、術者は「小侵襲手技」によって腔を形成し、続いて標準的器具(穴あけ器、穴たがね、荒目やすり等)を用いて皮質骨の側に孔を開け該塊を挿入する。この同じ方法を用いて、全膝関節置換えシステムの金属脛骨部分のような金属製の人工装具を移植することができる。
【0128】
異なるサイズ及び(または)形状のバルーンを、顎骨、腕及び脚骨の骨幹中央部、頚部椎体、足及び足首の骨、肋骨のような上記に特定していない部位にも使用することができる。骨の骨折の治療または防止において、バルーンの形状とサイズを選ぶ場合の重要点の1つは、骨折をひき起こす(骨折のリスクがある)骨疾患が海綿骨量の喪失による場合、最適には、海綿骨の約70〜90%を圧縮する必要があるという本出願の教示である。治療を
受ける部位の海綿骨の圧縮最適量である70〜90%(または実現可能な範囲として40〜99%)未満を圧縮した場合、疾患海綿骨が治療部位に残り過ぎる。病気の海綿骨は脆く崩壊する可能性があり、治療したにもかかわらず再び骨折するおそれがある。この原理を基に、特定の骨に用いる許容形状及び最小サイズを説明し定義する。
【0129】
70〜90%の基準には、本明細書に記載するような特定の例外がある。1つは虚血壊死の場合ように、治療する骨の疾患が局所に限られ、血液供給のロスによって骨が局所的に壊死している場合である。この場合、治療を要する疾患の部位は小さいため、バルーンは小さくてもよい。2つ目の例外は、ヒドロキシアパタイト及び全膝関節置換えシステムの構成部分のような特定形状の固形材料の挿入を改良するのにデバイスを使用する場合である。この場合、バルーンの形状及びサイズは、挿入される材料の形状及びサイズによって限定される。さらにもう1つの例外は、治療的物質の投与である。この場合、海綿骨は冒されているかもしれず冒されていないかもしれない。冒されていない場合、海綿骨は圧縮されることにより、重要な治療目的を有する薬剤または成長因子の投与改良のための犠牲となる。この場合、薬剤を内部に含む骨は、薬剤が作用し骨が治癒する間、ギプスまたは従来の固定装置で支持される。
【0130】
バルーンの形状及びサイズを選ぶ場合のもう1つ重要点は、非弾性のバルーン束縛手段が一般に必要とされ、バルーンの素材は非弾性のものが好適であるという本出願の教示である。これらの素材は、海綿骨の外側端(すなわち皮質骨の内側)の通常寸法の限界値によって定義される前もって決められたバルーン形状及びサイズを超えて、バルーンが拡張することを安全かつ容易に防止するからである。たとえば大き過ぎるバルーンの場合、すぐにも骨折が起こる危険性があるため、これが各部位におけるバルーン・サイズの上限を決める。代表的な血管形成術用バルーンは数多く存在するため、術者は一般にモニター装置に頼って(本発明のバルーン設計の特徴の代わりに)、バルーンの膨らみ過ぎを防止する。モニター装置に頼ることは、この出願の教示に比べて、手術に一段と熟練することが要求される。これには、治療を受ける部位のX線写真を撮り、本文に説明したように重要
な寸法を測定することがある。さらに、骨の治療において圧力に頼ることは、思わしくない臨床的結果を招く可能性がある。術者は普通海綿骨を完全に圧縮するには、どの程度の圧力をかければいいかが事前にわからない。その理由は、圧力値は海綿骨の厚さおよび、疾患による骨の密度の喪失によって異なるからである。膨らまし過ぎやその結果による深刻な骨折を避けるため、術者はバルーンを最適以下に膨らます傾向がある。この結果、海綿骨が残され過ぎて、再び骨折が起こる可能性がある。
【0131】
本出願のもう1つの教示は、海綿骨を圧縮するためには、あらゆる方向に圧力を一様に最大限に加えることが必要なことである。これは、本出願および本明細書に記載するその他の出願に図示されているバルーンに特有の特徴である。バルーンの設計のせいで圧力を最大限に加えられない場合、海綿骨は普通、圧縮されない。圧縮される海綿骨の形状、そして骨が不適当に動いた場合に損傷を受けるおそれのある局所の構造物に関しては、人体の骨格解剖学の教科書ならびに、部位及びその疾患または損傷に関する知識によって、医療専門家は一般に理解している。形状及び寸法の範囲は治療を受ける部位によって決められる。一定の患者のための厳密な寸法は、治療を受ける部位のX線写真、治療目的、及び
部位における安全束縛手段によって決定される。骨疾患の場合、一般に海綿骨の大部分を置き換えることが望ましく、その形状及びサイズにより、治療領域の海綿骨量の約70〜90%を圧縮するバルーンが選ばれる。しかし、特に治療的物質の投与が主な目的である場合
、これより小さいバルーンや大きいバルーンも適切である。この場合、バルーンが皮質骨をその通常の位置から移動させてはならないことを念頭に置きながら、治療的物質の希望量を基にしてバルーン・サイズを選ぶことができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は、積み重ねられたドーナツ組立の形状を有する本発明のバルーンの最初の実施例の透視図である。
【図2】図2は、図1のバルーンのドーナツ部分が椎体の腔内にフィットする方法を示している図1のバルーンの断面図である。
【図3】図3は、バルーンが膨らむ方向への拡張を制限するための、3段に積み重ねられたバルーン及び糸様束縛方法を示している本発明のバルーンのもう1つの実施例の概念図である。
【図4】図4は、バルーンを取り囲む円筒形のリングを有する球形バルーンの平面図である。
【図5】図5は、球形バルーン及び図4のリングの断面図である。
【図6】図6は、カテーテルがバルーンの中心部内へ延長している長円形のバルーンを示す。図6Aは、図6のバルーンを膨らますための内部管に対してカテーテルが配列されている方法を示す透視図である。
【図7】図7は、バルーンの膨張を行なうため、及びバルーン自体の膨張により生成される残骸物の除去を行なうための吸引管及び造影剤注入管である。
【図8】図8は、凋ませた後、ヒトの椎体内へ挿入されつつあるバルーンの断面図である。
【図9】図9は、保護スリーブまたは防護要素が拡張する方法を示しているカニューレの側面図である。図9Aは、保護スリーブまたは防護要素が拡張する方法を示しているカニューレの側面図である。図9Bは、アクセス用の孔をドリルで設けた椎骨の断面図である。
【図10】図10は、インゲンマメの形状に形成された本発明のバルーンのもう1つの実施例の透視図である。
【図11】図11は、骨内に挿入して膨らました図10のインゲンマメの形のバルーンを示している椎骨の透視図である。
【図12】図12は、発熱体または熱シール器具を使用していくつかの小部屋を形成したインゲンマメ形(肝臓の形の)バルーンの平面図である。
【図13】図13は、図12のライン13から13に沿ってカットした場合の横断図であるが、2つのインゲンマメ形バルーンを積み重ねて形成されている。
【図14】図14は、図11と同様の透視図であるが、椎骨内にある図13の積み重ねられたインゲンマメ形バルーンを示している。
【図15】図15は、バルーンの上壁と底壁とを互いに結んでいる内部の糸を所定の位置に保持ている外部の房を示しているインゲンマメ形バルーンの平面図である。
【図16】図16は、図15のライン16−16に沿ってカットした場合の図15の横断図である。
【図17】図17Aは、右遠位橈骨内のこぶ付きバナナ形バルーンの背面図である。図17Bは、図17Aのライン17B−17Bに沿ってカットした場合の図17Aの断面図である。
【図18】図18は、左近位上腕骨の前方から見た近位上腕骨内にある基部上の球形バルーンである。
【図18A】図18Aは、左近位上腕骨の正面から見た円筒形バルーンである。
【図19】図19Aは、楕円形の円筒型バルーンが内側脛骨プラトー下に挿入された近位脛骨の前面図である。図19Bは、図19Aのバルーンの斜視図である。図19Cは、図19Aのバルーンの立側面図である。図19Dは、図19Aのバルーンの平面図である。
【図20】図20は、大腿骨(または上腕骨)頭の虚血壊死を治療するための球形バルーンを左股関節部の前方から見た図である。図20Aは、大腿骨(または上腕骨)頭の虚血壊死を治療するための半球形バルーンの側面図である。
【図21】図21は、股関節部の骨折を防止するためのバルーンを左股関節部の前方から見た図である。
【図22】図22Aは、本発明に従って治療的物質を骨に投与する代表的方法及びシステムを示す概念図である。図22Bは、本発明に従って治療的物質を骨に投与する代表的方法及びシステムを示す概念図である。図22Cは、本発明に従って治療的物質を骨に投与する代表的方法及びシステムを示す概念図である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、「骨の固定に関する手術的プロトコルにおいて使用される改良された膨張可能なデバイス」と称する1994年1月26日付けの米国特許出願第08/188,224号の一部継続出
願である、1995年6月7日付けの米国特許出願第08/485,394号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、ヒトまたはその他の動物の骨格系の骨疾患の手術的治療における改良に関するものであって、さらに詳細に述べると、かかる骨疾患の治療において使用する膨張可能なバルーン様デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
骨粗しょう症、虚血壊死、及び骨癌は、骨の骨折または崩壊を起こしやすい骨疾患である。米国では毎年200万件の骨折が報告されており、うち約130万件は骨粗しょう症によるものである。一方、虚血壊死及び骨癌による骨折は非常にまれである。これらの疾患は従来ほとんど顧みられなかった骨の問題の原因となっており、その結果、変形や慢性の合併症を起こしている。
【0004】
感染している骨、治癒が思わしくない骨、または重度の外傷により骨折した骨の切開手術のような骨治療のためのその他の多くの整形外科的手技の結果も改良することが可能である。現在のところ、疾患の骨または外傷を受けた骨を取り除き、移植骨や人工骨のような物質を受け入れるべく、通常金属製の標準的器具を用いて骨を準備している。しかし、患者の残りの骨と挿入物質との間の隙間のために、治癒が遅れたり阻害されている。
【0005】
抗生物質や骨の成長因子のような治療的物質は、適切な骨領域との接触を最適に維持するような方法で、これまで骨に投与されてきたことがない。抗生物質、骨成長因子、及びその他の薬剤は、合併症を防止し治癒を早める。これらの薬剤は現在、乾燥粉末か液体の形で治療骨の周囲に配置されたり、あるいはゲルか分解可能なプラスチック・ポリマーの形に処方され、欠陥領域(骨の空洞)に投与されている。この方法で投与した場合、薬剤はただちに(または薬剤の運搬物質の分解に伴い)血液やその他の体液で洗い流される可能性がある。また、ゲルやポリマーの形で投与できる治療物質の量は、骨の欠陥によってできた腔のために限られるかもしれない。
【0006】
(発明の背景)
米国特許出願第4,969,888号及び5,108,404号は、骨粗しょう症及び非骨粗しょう症を含めたヒト及びその他の動物の骨格系の骨折やその他の疾患を固定するための装置及び方法を開示している。その装置及び方法は、椎体の圧縮骨折、コリーズ骨折、及び近位上腕骨骨折の固定に使用するのに特に適しているが、これのみに限定されない。
【0007】
上記の2つの特許に開示された方法には、術者またはヘルスケア提供者が行なうことのできる一連のステップで、骨折または疾患の骨(骨粗しょう症の骨、骨粗しょう症の骨折した骨幹端や骨端、骨粗しょう症の椎体、骨折した骨粗しょう症の椎体、腫瘍、特に円形細胞腫による椎体の骨折、長骨骨端の虚血壊死、特に近位大腿骨・遠位大腿骨・近位上腕骨の虚血壊死、内分泌の疾患に原因する欠陥を含むが、以上のみに限定されない)内に空洞を形成することが含まれている。
【0008】
この方法にはさらに、皮膚の切開(切開口は通常1ケ所であるが、吸引用のはけ口を設ける場合、2ケ所目の小さな切開が必要な場合もある)に続いて、軟組織を通して骨に至るガイド・ピンを配置することが含まれる。
【0009】
この方法にはさらに、骨に空洞または経路を形成するため、治療を受ける骨に穴をあけ、かつ膨張可能なバルーン様デバイスを空洞または経路に挿入することが含まれる。膨張可能なデバイスを膨らませることにより、海綿骨及び骨髄が皮質壁の内側表面に対して圧縮されるため、空洞または経路がさらに拡大される。次に、膨張可能なデバイスを完全に凋ませた後、骨から取り出す。必要であれば、最初により小型の膨張可能なデバイス(開始バルーン)を使用して、骨髄の圧縮を開始し、続いて海綿骨及び骨髄内の空洞または経路の形成を開始する。空洞または経路が形成された後、空洞または経路内により大型の膨張可能なデバイスを挿入して、骨髄をあらゆる方向にさらに圧縮する。
【0010】
メタクリル酸メチル・セメントや合成人工骨のような流動性で生体適合性の充填物質を空洞もしくは経路に導き、骨を構造的に支持できる状態まで固まらせる。この後者のステップに続いて、挿入したデバイスを体内から取り除き、皮膚の切開部位を包帯でおおう。
【0011】
前述の特許の装置及び方法は、骨の固定に十分なプロトコルを提供する一方、治療する骨の皮質壁の内側表面に対して骨髄及び(または)柱骨及び(または)海綿骨を圧縮させることは、これまで特許に記載されたことのない技術で、かかる特許が記載する従来の膨張可能なデバイスでは正しい制御ができなかった技術的特徴をさらに組み入れた膨張可能なデバイスを使用することにより、著しく改良できることがわかった。また、前述の特許の装置及び方法を意外な方法で使用して、治療的物質を投与できることもわかった。さらに、前述の特許の装置及び方法を、従来記載されなかったような方法で適合させて切開手術を改良し、骨の固定、融合、除去を行ない、かつこれらの術中に治療的物質を投与できることもわかった。したがって、前述の装置及び方法ならびに新たな方法を使用した膨張可能なデバイスの形、構造及びサイズを改良する必要性が求められており、本発明はかかる必要性を満足させるものである。
【0012】
(患者内に使用するためのバルーン製造の従来技術)
バルーン製造に関する従来の技術を精査すると、上腕動脈か大腿動脈を通じて患者の心臓血管系に挿入されるガイディング・カテーテルの形成については、相当な量の背景情報が蓄積されていることを示している。しかし、骨に使用される膨張可能なデバイスに関しては開示がきわめて少なく、椎体及び長骨内で骨髄を圧縮するための膨張可能なデバイスに至っては開示がまったく見られない。
【0013】
膨張可能なカテーテルの場合、バルーンが治療を受ける病巣に正しく配置されるまで、カテーテルは患者内を進められる。バルーンに、X線不透過性液を4大気圧以上の液圧で送り込んで膨らませ、病巣のプラークを圧縮することにより、動脈管空を広げる。次にバルーンを凋ませ、続いて拡張された動脈の血流が回復するようバルーンを動脈から取り除く。
【0014】
かかるカテーテルの利用法の解説は、米国特許出願第5,163,989号に記載され、明確に開示されている。血管形成カテーテル手技に関するその他の詳細、及びかかる手技に使用されるバルーンの詳細については、米国特許出願第4,323,071号、4,332,254号、4,439,185号、4,168,224号、4,516,672号、4,538,622号、4,554,929号、及び4,616,652号に記載されている。
【0015】
プリズム形のバルーン形成に、鋳型を用いた押出し加工も用いられているが、この技術で血管形成カテーテルに適したバルーンを形成するには、バルーン内部表面のきわめて精密な加工が必要である。しかし、この押出し加工技術はバルーン製品に型割線を残すため、バルーン自体の壁がもろくなる意味で限界がある。
【0016】
特許5,163,989は、カテーテルのバルーンに型割線の全くない成型膨張カテーテルのための鋳型及び技法を開示している。技法には、熱した成型内部表面が管状のプラスチック素材で圧縮されるよう、該プラスチック素材を膨らますことが伴う。膨張可能なデバイスを好適なサイズと形に成型した後、冷却して凋ませ、型から取り出す。特許は、本発明のバルーンがプリズム様バルーンの形成に特に適していると同時に、広範なサイズと形のバルーンを形成するためにも使用できると記載している。
【0017】
本特許、すなわち米国特許出願第4,706,670号に関して、カテーテル技術の特別な改良点は、内部及び外部管が連続した螺旋形の微細繊維で形成され補強された同軸カテーテルを使用していることである。かかる微細繊維は互いに交差して、バルーン軸を長軸方向に短縮させる一方、軸の動く部分を伸長させる。バルーンの編み方の長さと角度、および微細繊維の動く部分を適切にバランスさせることにより、長さの違いを相殺させることができる。したがって、内部管と外部管の位置は必要に応じて調整することができ、バルーンを血管内の希望する位置に保つことができる。
【0018】
患者の骨格を治療するための他の膨張可能なデバイスの挿入に関する他の開示には以下のものが含まれる。
【0019】
米国特許出願第4,313,434号は、凋ませた柔軟なバルーン袋を骨髄腔に挿入して、バルーン袋を膨らませ、治癒が起こるまで長骨の内部を密閉し、次にバルーンを取り出し、バルーンを取り出した開口部を埋めることによって長骨を固定することに関する。
【0020】
米国特許出願第5,102,413号は、膨張可能なバルーンを使用して、骨折した長骨の固定用金属棒を固定する方法を開示している。
【0021】
バルーン及び人工装具の固定用セメントの使用を開示している他の参考文献には、米国特許出願第5,147,366号、4,892,550号、4,697,584号、4,562,598号、及び4,399,814号がある。
【0022】
オランダの特許NL901858は、前以て形成した腔内にセメントを染み込ませたバッグを挿入して膨らませ、固まらせることによる骨折修復の手段を開示している。
【0023】
前述の従来技術の精査から、骨内の腔の形成に使用される膨張可能なデバイスに関する実質的情報はほとんどないか、或いは全然ないと結論付けることができる。適切に充填した場合、骨を最適に支持する腔を形成するバルーンの形状については何も教示していない。バルーンは膨らませた場合、球形にならないことが望ましいが、球形にならないようにする方法については何も教示していない。現行の医療用バルーンは骨を圧縮することができるが、小さすぎて、しかも一般に間違った形状をしており、人体の椎体または長骨内に十分な腔を形成するには一般に強度が足りない。
【0024】
米国特許出願第4,969,888号及び5,108,404号は、海綿骨の圧縮にチェッカーの駒形のバルーンを開示しているが、このバルーンを膨らませた場合、どのようにしてその形状を維持するかについては情報を提供していない。増強された治療的物質を投与する方法も提供していない。
【0025】
米国特許出願第4,892,550号は、骨内に金属の人工装具を固定するための弾性バルーンについて説明している。米国特許出願第4,313,434号は、金属棒の代わりに用いるもので、骨折した長骨(大腿、脚、腕)の骨髄腔の内部に配置して、治癒中の骨を保護する収縮可能なバルーンについて記載している。
【0026】
したがって、骨折骨及び(または)疾患骨に使用する膨張可能なデバイス及びその方法に対するニーズは続いている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0027】
(発明の要旨)
本発明は、上述の特許4,969,888及び5,108,404のシステム及び方法の実施において使用されるバルーン様の膨張可能なデバイスまたはバルーン、これらのデバイスを使用する新たな方法、並びにその方法及びデバイスの新たな使用を意図している。かかる膨張可能なデバイス(以下時々「バルーン」と呼ぶ)は、骨が骨折している、いないにかかわらず、骨の内側皮質骨に対して海綿骨及び骨髄(髄質骨または小柱骨とも称される)を圧縮するための形状を有している。
【0028】
特に、本発明は骨折または崩壊しやすい骨の治療に使用するためのバルーンを意図している。バルーンは該骨に挿入するための膨張可能な非弾性バルーン本体からなる。本体は海綿骨内の腔を広げ、かつ内側皮質骨の少なくとも一部を元の位置に再建するための圧縮に十分なサイズに実質的に膨らませた場合、前もって決められた形状とサイズを有する。該骨に骨折または崩壊がない場合、十分に膨らませたバルーン本体が外側皮質骨の内側表面に実質的な圧力をかけないように、バルーン本体は前もって決められた該形状とサイズを形成するよう束縛されている。本文では「実質的な圧力」を「皮質骨をその通常の相対的配置以外の位置へ移動させるに足る圧力」と定義する。
【0029】
膨張可能なデバイス自体の形状のほかに、もう1つの重要な実施態様は、バルーン本体の適切な膨張を達成して骨髄全体を最適に圧縮できるようにバルーン壁を構成することである。バルーンの素材も、ガイド・ピンとカニューレを使用して骨内に素早く簡単に挿入できるようにバルーンを折り畳めるもので、しかも膨らませたとき高圧に耐え得るような好適なものを選ぶ。またバルーンは任意により、充填物の安定性を強化するため、バルーンを取り出した後の腔に残しておく隆起した部分かくぼみ部分を含んでもよい。また、任意により、膨張可能なデバイスに吸引カテーテルを内蔵させることもできる。この吸引カテーテルは、骨の内部でバルーンが膨らむ間、骨から押し出された脂肪または体液を取り除くために使用される。また、バルーン本体がカニューレ内にある間、バルーンを保護できるケブラー(Kevlar)、テトラフタル酸ポリエチレン(PET)、その他のポリマーまたは物質等の適切な素材からなる任意の保護スリーブで被うことにより、バルーン本体を皮質骨またはカニューレによる穿刺から保護することもできる。したがって、膨張可能なデバイスの主な目的は、骨、特に椎体(これのみに限らない)内の腔または経路の形成または拡張である。
【0030】
本発明の1つの実施態様は、骨内に腔を形成する手術プロトコルの有効性を高め、手術の実施に先立つ手術プロトコルの設計時間を最短にとどめ、かつ臨床の結果を改善するため、手術プロトコルの実施に使用される改良バルーン様の膨張可能なデバイスを提供することである。このバルーンは、海綿骨を最大限に圧縮するため、バルーンが挿入される骨の内側形状にほぼ似せて作られる。このバルーンは、特定の臨床的目標を達成するための付加的設計要素を有する。好適には、これらのバルーンは非弾性の素材からなり、かつ、以下の束縛(これのみに限らない)を含めたさまざまな束縛により、膨らませた時その定義された形状を保つ。さまざまな束縛とは、バルーン本体に非弾性の素材を使用すること、別々の素材部分の接着もしくは融合により、またはバルーン本体の対面の接着もしくは融合により形成されたバルーン本体の継ぎ目、バルーン本体の内側もしくは外側に接着された織物素材、バルーン本体の選択点に配置された紐もしくは帯、類似のまたは異なるサイズか形のバルーンを接着剤か熱融合によって互いに積み重ねること等である。前述の構造によって形成されたか、あるいは別の素材を接着して加えられた任意の隆起部分もしくはくぼみ部分は、充填材の安定性を増す。好適には、形成される腔の最低点に少なくとも1つの孔を設けるよう配置された任意の吸引デバイスにより、充填する前に腔を清掃することができる。
【0031】
本発明のもう1つの実施態様は、このバルーンの新しい使用及び、その使用の新しい方法を提供することである。骨に挿入する前に、バルーンに治療的物質でコーティングを施すことにより、バルーンを治療的物質の投与に使用することができることである。コーティングを施されたバルーンを骨の中で膨らませた時、海綿骨がバルーンによって圧縮されるに従い、治療的物質が該海綿骨内に圧し入れられる。これにより長時間投与が維持されるような方法で、好適量の治療的物質を直接治療部位に投与することが可能となる。バルーンはまた、小侵襲または切開手術中に、整形外科インプラント、骨移植片、人工骨、アクリル・セメント、骨充填材、骨成長因子、化学療法薬剤、抗生物質、その他の薬剤のためのより良いスペースの提供に使用することもできる。骨中の物質は、骨自体の治療を目的として使用するか、あるいは骨肉腫のような近くの構造物に薬剤を投与するための貯留場所として使用することができる。
【0032】
本発明のさらにもう1つの実施態様は、骨折骨または疾患骨に対し一時的に構造的支持を提供すため、バルーンを用いることである。この実施態様では、治療部位でバルーンを膨らませ、周囲の皮質骨が治癒するまでバルーンをそこに残しておくことにより、骨折骨または疾患骨を治療することができる。すなわち、骨折骨または疾患骨を支持するため、前述の実施態様で使用した生体適合性の充填材の代わりにバルーンを使用することである。本発明は、患者の体内の骨腔の外側にて膨らませたバルーンを密閉する方法が含まれる。密閉方法には、金属またはプラスチックのクリップ、膨張管のねじを外すことにより活性化するチェック・バルブ、バルーンの内部経路を密閉するプラグ等の使用が含まれる。前述の実施態様と同様、バルーンを骨に挿入して膨らませ、海綿骨の内側を圧縮して、その中に腔を設ける。次に、膨らませたバルーンを密閉し(例えば、膨張バルーンの開口部にプラグを挿入することにより)、膨張管を患者から抜き取り、最後に経皮切開部位を閉じる。バルーン内の液体圧によって骨が十分に支持されるため、骨の治癒が可能になる。バルーンは、外側の皮質骨の完全または少なくとも部分的治癒に必要な期間(通常約1日〜3ヶ月、好適には6〜8週間)、膨らませた形状のまま骨腔内に残しておいてもよい。本発明のこの実施態様では、バルーンは少なくとも以下の4つの機能を提供する。(1)骨の再整列。(2) 病気の内部海綿骨の除去または少なくとも1部の除去。(3) 圧縮された内部海綿骨からのカルシウムの追加による外部海綿骨の補強。外部海綿骨は外部皮質に吸収され、その1部を構成するようになる。(4)皮質骨が治癒する間、体内ギプスの役目をする。
【0033】
皮質骨が治癒したあと、術者は前と同じか別の経皮切開口を経由して、バルーンにアクセスし、クリップやプラグを取り除くことにより(チェック・バルブの場合は拡張管のねじをバルーンにはめることにより)、バルーンを凋ませることができる。多くの場合、皮質骨は圧縮された海綿骨からのカルシウムが追加されることにより治癒が起こり、十分に補強される。これらのケースではバルーンは骨腔から取り出される。止血、感染の防止、バルーン内への骨の成長を最低に抑えるため、かつ(または)バルーンを凋ませた時、骨からのバルーンの分離を容易にするため、バルーンの外側表面にゲルフォーム(Gelfoam)または抗生物質のようなコーティングを施してもよい。しかし、皮質骨がそれでもなお弱過ぎると術者が判断した場合(例えば、骨密度のスキャンやその他の手段で)、バルーンを取り出す前に、アクリル・セメント、人工骨、骨充填材、骨成長因子等の適切な支持物質を骨腔に挿入することができる。
【0034】
上述の特許の方法及びその改良は、海綿骨及び(または)柱骨及び(または)骨髄骨を有する骨格なら、いずれの骨格にも応用することが可能である。
【0035】
本発明は、以下を提供する。
【0036】
骨が骨折しているか否かにかかわらず、海綿骨及び髄(骨髄または柱骨としても公知)を骨の内側皮質に対して圧縮するために使用するバルーン(12)。バルーンは該骨内へ挿入するための膨張可能な非拡張性のバルーン本体からなる。本体は、骨折または崩壊がある場合、少なくとも海綿骨の一部を圧縮して、海綿骨内に腔を形成し、かつ外側皮質骨を元の位置に戻すための形及びサイズを有する。バルーンは外側皮質骨に対して過度の圧力をかけないよう束縛されている。バルーンの壁は、バルーン本体の正しい膨張が達成され、全骨髄が最適に圧縮されるようになっている。バルーンは骨内へ迅速に挿入できるよう、折りたためるようになっている。バルーンは吸引カテーテル(16)を備えるように作ることが可能である。バルーンはまた、治療的物質でコーティングされてもよい。このバルーンの主な目的は、骨内、特に椎体内(これのみに限らない)に腔または経路を形成するか、形成された腔股は経路を拡大することである。もう1つの重要な目的は、治療的物質をより良い方法で骨に投与することである。
【0037】
より具体的には、本発明は、以下を提供する。
1. 治療的物質を骨の治療部位へ投与する方法において、
中空で折り畳むことができ、膨らますことができるバルーンを提供することと、
治療的物質をバルーンの外側表面に塗布することと、
バルーンを骨内の腔へ挿入することと、
バルーンを膨らませて、治療的物質を骨に投与することからなることを特徴とする方法。
2. 項目1記載の方法において、さらに、
バルーンを十分な液体圧に膨らませて、少なくとも内部海綿骨の1部を圧縮することと、
治療的物質を圧縮された内部海綿骨に投与し、治療的物質を直接骨内に組込むことからなることを特徴とする方法。
3. 項目1記載の方法においてさらに、
患者の体の外側でバルーンを膨らませ、治療的物質を膨らませたバルーンの外側表面に塗布することを特徴とする方法。
4. 項目3記載の方法において、さらに、
バルーンを折りたたみ、経皮的侵入を通じてバルーン及び治療的物質を骨内の腔へ運搬することからなることを特徴とする方法。
5. 項目1記載の方法において、
塗布ステップがゲル処方薬をバルーンの外側表面に塗布することによって行なわれることを特徴とする方法。
6. 項目1記載の方法において、
塗布ステップがバルーンに粉末を塗布することによって行なわれることを特徴とする方法。
7. 項目2記載の方法において、
バルーンが骨内に腔を形成する方法と、さらに、骨の支持材料を腔内へ挿入することからなることを特徴とする方法。
8. 項目1記載の方法において、
治療的物質が充填材料からなることと、さらに、
バルーンを膨らませて充填材料を割れ目に投与することにより、骨折した骨の割れ目を埋めることからなることを特徴とする方法。
9. 項目1記載の方法において、
治療的物質が骨成長因子からなることを特徴とする方法。
10. 項目1記載の方法において、
治療的物質が抗生物質からなることを特徴とする方法。
11. 項目1記載の方法において、さらに、
バルーンを十分な液体圧に膨らまし、骨に過度の圧力をかけることなく、海綿骨の少なくとも70%を圧縮するステップからなることを特徴とする方法。
12. 項目1記載の方法において、さらに、
バルーンを十分な液体圧に膨らまし、骨に過度の圧力をかけることなく、海綿骨の少なくとも90%を圧縮するステップからなることを特徴とする方法。
13. 治療的物質を骨内の治療部位に投与するシステムにおいて、
凋んだ形状から膨張した形状に膨らませることができる柔軟な非弾性の素材と、
内部海綿骨の少なくとも一部を圧縮するため膨らませた形状において、前以て決められたサイズを持つバルーン本体と、
バルーンが前以て決められた形状以上に膨らむことを禁じる非弾性の素材と、
膨張液を本体内へ送り込むための外部表面及び内部経路を定義しているバルーン本体と、治療的物質をバルーンの外部表面に塗布するためのアプリケーターからなる中空のバルーン本体からなることを特徴とするシステム。
14. 項目13記載のシステムにおいて、
アプリケーターが、内部に治療的物質を貯蔵しておく小部屋を持つ容器と、
ゲル処方薬をバルーンの表面に一定量で供給するノズルからなることを特徴とするシステム。
15. 項目13記載のシステムにおいて、
アプリケーターが乾燥粉末ディスペンサーからなることを特徴とするシステム。
16. 項目13記載のシステムにおいて、
アプリケーターが、バルーンの外側表面に粉末薬剤を煙霧状に散布するための散布デバイスからなることを特徴とするシステム。
17. 項目13記載のシステムにおいて、
前以て決められたサイズの膨らませた形状のバルーン本体を選んで、内部海綿骨の実質的な部分を圧縮し、治療的物質を圧縮された海綿骨内へ直接組み込むことを特徴とするシステム。
18. 項目17記載のシステムにおいて、さらに、
バルーンを骨内のスペース内へ運搬するための手段と、
スペース内でバルーンを膨らませて治療的物質をバルーンに運搬するための手段からなることを特徴とするシステム。
19. 項目13記載のシステムにおいて、
治療的物質が、バルーンを膨らまして充填材料を割れ目に投与することにより、骨折した骨の割れ目を埋めるための充填材料からなることを特徴とするシステム。
20. 項目13記載のシステムにおいて、
治療的物質が骨成長因子からなることを特徴とするシステム。
21. 項目13記載のシステムにおいて、
治療的物質が抗生物質からなることを特徴とするシステム。
22. 項目13記載のシステムにおいて、
膨らませた形状のバルーン本体を或るサイズと形にして、骨に実質的な圧力をかけることなく治療部位の海綿骨の少なくとも70%を圧縮することを特徴とするシステム。
23. 項目13記載のシステムにおいて、
膨らませた形状のバルーン本体を或るサイズと形にして、骨に実質的な圧力をかけることなく治療部位の海綿骨の少なくとも90%を圧縮することを特徴とするシステム。
24. 項目13記載のシステムにおいて、
膨らませた形状及び凋ませた形状におけるバルーン本体が実質的に同じ形を有することを特徴とするシステム。
25. 患者の股関節部の治療に使用されるバルーンにおいて、
凋ませた形状から拡張させた形状へ膨らませることができる非弾性素材からなる中空で長円形のバルーン本体と、
膨張液を本体内へ導くための内部経路を特徴として持つバルーン本体からなり、かつ、
膨らませた形状においてバルーン本体が前以て決められたサイズを持ち、患者の大腿骨頭から大腿骨頚部を経て、近位大腿骨骨幹内へ延長しており、非弾性素材によって前以て決められたバルーン本体のサイズ以上にバルーンが膨らむことを防止していることを特徴とするバルーン。
26. 項目25記載のバルーンにおいて、
膨らませた形状のバルーン本体が、大腿骨頚部を経て大腿骨頭の1部分へ延長するようなサイズに作られた長く伸びた遠位部分と、
近位部分に対して直角方向に長く伸び、かつ膨らませた形状のとき大腿骨骨幹の一部内へ延長するようなサイズに作られた近位部分と、
遠位及び近位部分を互いに結び付けているアーチ形の部分を含むことを特徴とするバルーン。
27. 項目26記載のバルーンにおいて、さらに、
バルーン本体の近位部分を、近位及び遠位部分が実質的に互いに平行である導入形状から、近位部分が近位大腿骨骨幹内へ延長している有効形状へと偏らせるための手段を含むことを特徴とするバルーン。
28. 項目27記載のバルーンにおいて、さらに、
バルーン本体が凋んでいる時の導入形状において、バルーンの近位部分を支える束縛要素であり、バルーン本体を拡張した形状に膨らませた時、その束縛要素が近位部分を開放するように適合されている少なくとも1つの束縛要素からなることを特徴とするバルーン。
29. 項目25記載のバルーンにおいて、さらに、
膨らませた形状の時に前もって決められたサイズと形を有する長円形バルーン本体を取り囲んでいる1つかそれ以上の非弾性のリング要素からなることを特徴とするバルーン。
30. 項目29記載のバルーンにおいて、
支持要素が、長円形バルーン本体を取り囲んでいる1つかそれ以上の非弾性リングと、
リング要素を連結している少なくとも1つの非弾性軸帯からなることを特徴とするバルーン。
31. 項目25記載のバルーンにおいて、
膨らませた形状にあるバルーン本体が、大腿骨頭の端から約0.3〜0.7 cmのところからスタートし、小転子を約5〜7 cm過ぎた近位大腿骨骨幹内まで延長していることを特徴とするバルーン。
32. 項目25記載のバルーンにおいて、膨らませた形状にあるバルーン本体が、約10〜20cmの長さ及び約1.0〜2.5 cmの直径を持つことを特徴とするバルーン。
33. 患者の股関節部を治療する方法において、
大腿骨頚部を経て大腿骨頭の少なくとも一部まで達する経路を形成することと、
長円形のバルーン本体を経路内に配置することと、
長円形のバルーン本体を十分な液体圧に膨らませて、内部海綿骨の少なくとも一部を圧縮することと、
バルーンを膨らませるに従い、バルーン本体によって、大腿骨頭から大腿骨頚部を経て、下方の近位大腿骨骨幹まで伸びる腔を形成することからなることを特徴とする方法。
34. 項目33記載の方法において、
腔の形成ステップにおいて、外側大腿骨皮質から大腿骨頚部を経て、大腿骨頭へ達する実質的に直線の経路をドリルであけることが含まれることを特徴とする方法。
35. 項目34記載の方法において、
バルーンの配置ステップにおいて、長円形のバルーン本体を経皮的侵入を通じて、該直線経路内へ送り届けることが含まれることを特徴とする方法。
36. 項目34記載の方法において、さらに、
膨らますステップにおいて、バルーン本体の近位部分が近位大腿骨骨幹内の内部海綿骨を圧縮するように、バルーンの近位部分を近位大腿骨骨幹の方へ偏らせることからなることを特徴とする方法。
37. 項目33記載の方法において、さらに、
長円形のバルーン本体が、前もって決められたサイズ及び形以上に膨らむことを抑制しており、そのため皮質骨にバルーンによる過度の圧力がかかることを防止していることからなることを特徴とする方法。
38. 損傷を受けた骨を一時的に支持しかつ補強しているシステムにおいて、
凋ませた形状から拡張した形状へ膨らますことができる柔軟で非弾性の素材からなる中空のバルーン本体と、
膨らませた形状の時に前もって決められたサイズを持ち、外部皮質骨の補強のために、内部海綿骨の少なくとも一部を外部皮質骨内へ圧縮するべく選択されたバルーン本体と、
バルーンを膨らませた形状の時、外部皮質骨を一時的に支持することができるバルーン本体の非弾性素材と、
膨張液体をバルーン本体内へ通過させるため、内部経路を特徴として持つバルーン本体と、
バルーンを膨らませた形状の時、外部皮質骨のため一時的な支持構造を提供するため、バルーン本体の内部経路を密閉する方法からなることを特徴とするシステム。
39. 項目38記載のシステムにおいて、
密閉する手段が内部経路を密閉するよう該経路内に適合するプラグからなることを特徴とするシステム。
40. 項目38記載のシステムにおいて、
密閉する手段が内部経路を閉じて、バルーン内部の小部屋に液体を閉じ込めるためのクリップからなることを特徴とするシステム。
41. 項目38記載のシステムにおいて、
バルーン本体が内部海綿骨を外部皮質骨内へ圧縮することによって腔が形成され、密閉手段が腔の外側及び患者の体内にあることを特徴とするシステム。
42. 項目38記載のシステムにおいて、
損傷した骨が骨折した皮質骨であり、骨折した皮質骨が治癒するまで、バルーン本体が該皮質骨を支持することができることを特徴とするシステム。
43. 骨折した骨または崩壊した骨を一時的に支持し補強する方法において、
患者の内部海綿骨内に中空のバルーン本体を配置することと、
バルーン本体を十分な液体圧に膨らまして、内部海綿骨の少なくとも一部を圧縮し、その内部に腔を形成することと、
バルーン本体を患者内に密閉し、外部皮質骨に対して一時的な構造上の支持を提供することからなることを特徴とする方法。
44. 項目43記載の方法において、さらに、
外部皮質骨が治癒した後に該皮質骨を補強するため、内部海綿骨の大部分を外部皮質骨内へ圧縮することからなる方法。
45. 項目43記載の方法において、
膨らませるステップが膨張液を内部経路を通してバルーン本体内の内部小部屋へ送り込むことによって実施され、かつ液体を内部小部屋に閉じ込めるため、密閉ステップが内部経路にクリップを取り付けることからなることを特徴とする方法。
46. 項目43記載の方法において、
密閉ステップがバルーン本体の内部経路をプラグで密閉することからなることを特徴とする方法。
47. 項目43記載の方法において、さらに、
密閉ステップの後、バルーンを腔内に残しておき、皮質骨が治癒する間、内部ギプスとして役立たせることからなることを特徴とする方法。
からなることを特徴とする方法。
48. 項目47記載の方法において、さらに、
バルーンを凋ませ、バルーンを腔から取り出すことからなることを特徴とする方法。
【0038】
本発明のさまざまな実施例は以下のとおりである。
【0039】
1. バルーン膨張中に押し出される脂肪やその他の生成物を除去するため、任意の吸引カテーテルを内蔵するドーナツ形(トーラス形)のバルーン。
【0040】
2. 体腔形成のため、リング形のバルーン・セグメントに取り囲まれた球形の外形を有するバルーン。
【0041】
3. インゲンマメ(腎臓)の形状を有するバルーン。かかるバルーンは単層か、あるいは積み重ねた複数の層で構成されてもよい。この実施例ではインゲンマメ(腎臓)の形の代わりに、四角形か長方形でもよい。
【0042】
4. ほぼ大腿骨頭(すなわち、近位大腿骨端)の大きさの球形のバルーン。かかるバルーンは半球形でもよい。
【0043】
5. 橈骨遠位端(すなわち、遠位橈骨端及び骨幹端)の形状に似せたこぶ付きバナナ形または変形ピラミッド形のバルーン。
【0044】
6. 近位脛骨端の内側半分または外側半分の形状に似せた円筒の長円形。かかるバルーンは近位脛骨幹端の内側及び外側半分の形状に似せて構成してもよい。
【0045】
7. 近位上腕骨端および上腕骨幹端に似せた形状で、骨幹内の海綿骨を圧縮し骨幹を密閉しているプラグを具備する基部上のバルーン。かかるバルーンは円筒形でもよい。
【0046】
8. 大腿骨頭、頚部及び小転子の内部に似せたブーメラン形のバルーンで、腰の骨折を防止する処置を可能にする。
【0047】
9. 近位上腕骨または遠位橈骨の内部の大きさと形状に似せた円筒形のバルーン。
【0048】
10. 任意の吸引デバイスを具備するバルーン・デバイス。
【0049】
11. カテーテル内の各バルーンを任意にカバーしている穿刺保護用の保護シース。
【0050】
したがって本発明は、バルーン・デバイスが挿入される骨内の腔または経路の形成または拡大のための改良された膨張可能なデバイスを提供する。各デバイスの形状は、周囲の皮質骨及び隣接する内部構造によって範囲を制限され、かつ骨内の容積の約70〜90%を占めるように設計されるが、骨折には骨内の容積がわずかに40%のバルーンや最高99%のバルーンも実施可能である。一般に虚血壊死のようなある種のケースでは、骨折または崩壊が局所に限られている理由から、バルーンのサイズは治療を受ける骨領域の海綿骨量のわずか10%でも実施可能である。十分に膨らませたバルーンのサイズと形状は、特に厚く作られているバルーン本体の選択部分に付加された素材でさらに束縛されており、かつデバイスに形成された以下のような(これのみに限らない)内部的または外部的束縛も受けている。すなわち、メッシュ細工、バルーン本体の一部に張り付けられた素材の曲がり方もしくは巻き方、接着剤で内側の特定の位置に固定されているか、外側へ通されている連続もしくは非連続の糸、そして、2つの本体部分を接合させた際、または本体の対面を接着剤か熱で接着させた際に形成されるバルーン本体の継ぎ目等である。バルーンの球形部分は、バルーン本体の構造に非弾性の素材を使用して束縛してもよいし、あるいは前述のような束縛手段を加えてもよい。バルーンの素材は、テトラフタル酸ポリエチレン(PET)、ケブラー(Kevlar)または他の特許医療バルーン材などの非弾性材が好適である。適切な束縛手段が組み入れられれば、バルーンはシリコン等の半弾性材かラテックスのような弾性素材で作ることもできる。束縛手段は、米国特許出願第4,706,670号に説明した素材等、柔軟で非弾性で引張りの強い素材から作ることができる。バルーン壁の厚さは、一般に1インチの1000分の2から1000分の25の範囲か、あるいは250〜400psiまでの圧力に耐え得る厚さにする。
【0051】
本発明の経皮的椎体増強の1つの重要な目的は、椎体内に腔を形成することができ、その形状が骨の支持に最適なバルーンを提供することである。もう1つの重要な目的は、できれば高さを維持するため、椎体の最上部を元の位置に再建することである。しかし上述の2つの目的は、椎体の皮質壁を破砕するか、あるいはすでに骨折した骨を動かすかのいずれかの方法によって、椎体側面の外径を変えずに達成しなければならない。この特徴は椎骨を脊髄の方へ押しやる可能性があり、この状態は望ましくない。
【0052】
本発明は下に説明する膨張可能なデバイスの設計によって、これらの目的を満足させている。かかるデバイスを膨らますことにより、カルシウムを含む軟らかい海綿骨は、硬い皮質骨の内側を被う薄い外皮の中へ圧縮され、大きな腔を形成する。
【0053】
同時に、軟骨内の生物学的構成要素(赤血球、骨先祖細胞)は押し出され、処置中に洗い流すことにより取り除かれる。体は骨折のない場合の椎体の内部形状を再生するが、内部容積の約70〜90%で再生をストップする。本発明のバルーンは非弾性であるため、最大限に膨らませても前もって決められた形と大きさにしか再生されない。しかし、従来のバルーンは膨らませると球形になる。球形では各椎体表面上に単一の接触点しかできないため、固まった骨セメントは脊椎を十分に支持できない(四角形内の円形または円筒内の球形と同じ)。本発明のバルーンは、バルーンを希望する形状に保つ束縛手段を含めることにより椎体の平坦な表面を再現する。これにより椎体表面と骨セメント間の接触が最適になり、脊椎が補強される。さらに、これらの腔を満たす骨セメントの量により、適切な圧縮力に必要とされる厚いセメントの外被(4mm以上) が形成される。必要ではないが、もう1つの有用な特徴として、圧縮された海綿骨の内層に跡を残すバルーンの隆起部がある。その結果できた骨セメントの「指」により安定性が補強される。
【0054】
椎体の海綿骨を最適に圧縮するバルーンは、前述したバルーン・タイプのうち、1、2、3としてリストしたバルーンである。これらのバルーンは椎体の形状に似せて設計されている。バルーンは骨の内部容積の70〜90%を占めるものが選ばれるため、椎体の側面に無理な圧力をかけることはなく、したがって椎体は通常のサイズ以上には拡がらない(骨折、無骨折にかかわらず)。しかし、バルーンは無骨折の椎体の高さを有するので、崩壊した椎体の最上部を元の位置に再建することが可能である。いずれのタイプのバルーンも積み重ねることができ、また柔軟性及び(または)束縛を与えるため、タイプ1、2、3のいずれのバルーンを含めた積み重ねの場合も、形状及び(または)大きさをミックスすることができる。本発明の経皮的近位上腕骨増強の主な目的は、近位上腕骨の支持に最適な形状を有する腔を近位上腕骨内に形成することである。もう1つの重要な目的は、上腕骨頭と上腕骨幹が骨折で離れた場合、両者を再整列させることである。上述の2つの目的は、主として海綿骨(皮質骨ではなく)を圧縮することにより達成することが必要である。皮質骨に対する無理な圧縮は皮質骨の骨折を招くおそれがあり、肩の骨折を悪化させることが考えられる。
【0055】
本発明は以下に述べる膨張可能なデバイスの設計によって、これらの目的を満足させる。かかるデバイスを膨らませると、上腕骨の骨端及び骨幹端の皮質壁に対して海綿骨が圧縮される結果、腔が形成される。ある種の症例では、骨折の位置次第で、バルーンまたは膨張可能なデバイスを使用して、上腕骨の骨幹の近位部分の中へ腔を延長することができる。
【0056】
「基部上の球」様バルーン(前述のバルーン・タイプの7)の設計のせいで、このバル
ーンにより形成される腔は、近位上腕骨の皮質壁の内側の形を再現するか、それに近似した形になる。「基部上の球様バルーン」によって形成される腔のおおよその容積は、主として近位上腕骨の骨端及び骨幹端の容積の70〜90%であるが、骨幹の一部を含めることもある。その形状は上腕骨頭の形に近似する。「基部」は遠位骨幹端または近位骨幹の骨の「プラグ」内へ柱骨を圧縮するよう設計されている。この骨のプラグは注入可能な物質が上腕骨の骨幹内へ流れ込むのを防止する結果、臨床的な結果が改善される。また「基部」のない球形を使用してもかまわない。代りの方法として、バルーンは、上腕骨頭頂の一端がカテーテルに取り付けられ、もう一端がプラグの機能を果たす肥満した円筒様の形状でもよい。また円筒は、上腕骨内の端の径がプラグの機能を果たす端の径より大きくなるように形成することができる。
【0057】
本発明の経皮的遠位橈骨増強の主な目的は、遠位橈骨の支持に最適な形状を有する腔を遠位橈骨内に形成することである。もう1つの重要な目的は、骨折が finger trap により部分的に再整列された後、骨折の再整列を細かく調整することである。この2つの目的は、主として海綿骨(皮質骨ではなく)を圧縮することによって達成することが必要である。皮質骨に対する過度の圧縮は皮質骨の骨折を招くおそれがあり、症状を悪化させることが考えられる。
【0058】
本発明は、すでに述べたか、あるいは以下に述べる膨張可能なデバイスの設計によって、これらの目的を満足させている。
【0059】
「こぶ付きバナナ」の設計、または変形ピラミッドの設計(前述のバルーン・タイプの5)は、遠位橈骨の形状に似せてあるため、このバルーンで形成される腔も、遠位橈骨に近似する。この「こぶ付きバナナ」タイプのバルーンで形成される腔のおおよその容積は、遠位橈骨の骨端及び骨幹端の容積の約70〜90%であるが、遠位橈骨の骨幹の或る部分を含めることもある。かかるデバイスを膨らませると、遠位橈骨の骨端及び骨幹端の皮質壁に対して海綿骨を圧縮する結果、腔が形成される。ある種のケースでは、骨折の位置次第で、骨に似たバルーンまたは膨張可能なデバイスを使用して、橈骨の骨幹の遠位部分の中へ腔を延長することができる。
【0060】
本発明の経皮的大腿骨頭(または上腕骨頭)増強の主な目的は、大腿骨頭の支持に最適な形状を有する腔を大腿骨頭(または上腕骨頭)内に形成することである。もう1つの重要な目的は、大腿骨頭内の虚血(または防腐処置を施した)壊死骨の圧縮または虚血壊死骨の支持を助けることである。この目的には、大腿骨頭の球形を改良するため、虚血壊死骨を大腿骨頭内の元の位置に再建して再整列することを含めることができる。これらの目的は、主として大腿骨頭内の海綿骨を圧縮することによって達成することが必要である。
【0061】
本発明は、すでに述べたか、あるいは以下に述べる膨張可能なデバイスの設計によって、これらの目的を満足させている。
【0062】
球形の骨に似たバルーンの設計(前述のバルーン・タイプの4)は、大腿骨頭の形状に
似せてあるため、このバルーンで形成される腔も大腿骨頭に近似する(この膨張可能なデバイスの球形は上腕骨にも似せてあり、上腕骨内の腔形成にも適切であることに留意)。かかるデバイスを膨らませて、大腿骨頭をその内側皮質壁に対して圧縮する結果、腔が形成される。ある種のケースでは、虚血壊死の程度次第で、大腿骨頭内に大きい腔か、または小さい腔を形成すことができる。また或る種のケースでは、虚血壊死の領域が小さい場合、小さなバルーンを利用して大腿骨頭の総容積のわずか10%〜15%の腔を形成することが可能である。大腿骨頭の虚血壊死の領域が大きい場合は、大きなバルーンを利用して、大腿骨頭の総容積の80%〜90%の腔を形成できるような一段と大きい腔を形成することもできる。
【0063】
半球形のバルーンは大腿骨(上腕骨)頭の上半分の形状に似せて作られ、大腿骨頭の残りを妨げることなく、虚血壊死または軽度の骨折領域内の海綿骨を圧縮する方法を提供する。これにより、将来必要になるかもしれない関節の完全置き換えが容易になる。
【0064】
股関節部の経皮的増強は、股関節の骨折が起こる大腿骨内の脆い海綿骨を圧縮し、適当な支持材と置き換えることにより、股関節部の骨折を防止するように設計される。股関節部の経皮的増強の主な目的は、大腿骨頭、大腿骨頚部、及び小転子内に腔を形成することである。これにより、疾患海綿骨は圧縮され、適当な支持材と置き換えられるため、股関節の骨折を防止することができる。この処置で形成される腔は、通常大腿骨頭から小転子を規定量だけ超える位置まで延長されるが、それ以上延長されることはない。股関節の骨折が患者に影響を及ぼさない大転子の位置まで腔を延長してはならない。その理由は、股関節の骨折が患者に影響を及ぼす小転子内へのバルーンの延長を妨げるからである。バルーンは皮質骨の内側を押さずに、海綿骨のみをできるだけ十分に圧縮することが必要である。皮質骨の内側を押した場合、(骨折防止の代わりに)骨折を起こすおそれがある。
【0065】
本発明は、すでに述べたか、あるいは以下に述べる膨張可能なデバイスであって、バルーンを適切に向けておくため、そのデバイスをカテーテル上に配置することを含めて、特別な特徴を有するデバイスを提供することによって、これらの目的を満足させている。
【0066】
股関節部の経皮的増強の主な目的は、内側または外側脛骨プラトーの支持に最適な形状を有する腔を近位脛骨内に形成することである。もう1つの重要な目的は、脛骨プラトー骨折、特に骨片が通常の位置より下(または下部)に陥没した骨折の骨折片の再整列を助けることである。この2つの目的は、主として海綿骨(皮質骨ではなく)を圧縮することによって達成することが必要である。皮質骨に対する過度の圧縮は脛骨プラトーの骨折を悪化させることが考えられる。
【0067】
本発明は以下に述べる膨張可能なデバイスの設計によって、これらの目的を満足させている。かかるデバイスを膨らますと、内側または外側脛骨プラトーの皮質壁に対して海綿骨を圧縮する結果、腔が形成される。
【0068】
「長円形円筒」様バルーン(前記のバルーン・タイプ6)の設計のせいで、このバルーンで形成される腔は、内側または外側脛骨プラトーの皮質壁の形状を再現するか、それに近似する。長円形の円筒様バルーンによって形成される腔のおおよその容積は、脛骨の内側半分または外側半分の近位骨端骨の50〜90%である。
【0069】
損傷、疾患または他の治療の性質の理由から、切開手術中に本発明のデバイスで骨を治療するのが好適であろう。さらに、経皮または切開手術の目的は、疾患または損傷骨を流れない素材(骨充填材またはある種の薬剤等)に置き換えることであってもよい。
【0070】
本発明は以下に述べる本発明のシステムと方法によって、これらの目的を満足させている。
【0071】
本発明のその他の目的は、発明の図示ために添付した図面を説明している以下の明細書を読み進むに従い明らかになるであろう。
【実施例】
【0072】
(好適な実施態様の詳細な説明)
(椎体用バルーン)
本発明のバルーンの最初の実施例(図1)は、番号10が概略的に示しており、テトラフタル酸ポリエチレン(PET)またはケブラー(Kevlar)のような柔軟な素材からなる1対の中空で膨張可能な非拡張性の部分12及び14を有するバルーン本体11を含んでいる。部分12及び14の間には、脂肪及びその他の残骸物を管16内へ吸引し、遠隔の廃棄場所まで運搬するための吸引管16が配備されている。カテーテル管16は、吸引源(図示されていない)から管16の開放端へ吸引力を応用できるよう、1つかそれ以上の吸引口を持つ。
【0073】
部分12及び14は、接着剤で接着されている。接着剤は適当なタイプなら何でもよい。部分12及び14は、図1に示すように、ドーナツ型をしており、部分12及び14へ通じ、かつ部分12及び14からそれぞれ延長し、膨張用の加圧された液体源へと通じる管18及び20を有する。液体は無菌で生体適合性であればいずれの溶液でもよい。液体によるバルーン10、特にその部分12及び14の膨張は、図2の椎骨22のような治療を受ける骨内にバルーンを凋ませた状態で(図8)挿入した後に行なう。前述の特許出願第4,969,888号及び5,108,404号は、治療を受ける骨内へバルーンを挿入するためのガイト・ピン及びカニューレの使用を開示している。この方法では、バルーンを凋ませて管内へ挿入し、カテーテルで皮質骨内へ運搬した後にバルーンを膨らます。
【0074】
図8は、凋ませたバルーン10がカニューレ26によって骨内に挿入されるところを示している。カニューレ26内のバルーンは凋まされており、カテーテル21に手で力を加えながらカニューレの中を押し進められる。カテーテル21は経路28内へ延長しており、経路28は骨の内部へ延長している。カテーテルはわずかに柔軟性を有するが、骨の内部へ力を加えて押入れるに足る硬さを持っている。骨内に挿入されたら、管88内へ液体を送り込んでバルーンを膨らます。管88の放出口は部分12及び14に連結されている。
【0075】
使用においては、バルーン10は始めに凋ませておき、バルーンで満たされる骨をバルーンを受け入れるべくドリルで準備した後、凋ませたバルーンをカニューレ26を通して崩壊した状態の骨内へ力を加えて押し入れる。骨は図2に示している。骨の骨折または崩壊がまったくない場合、骨内のバルーンは好適には、骨髄及び(または)海綿骨への圧力が最小になるような方位に向けられる。かかる圧力によって、骨髄及び(または)海綿骨は皮質骨の内壁対して押さえられるため、治療を受ける骨の骨髄は圧縮され、骨髄の代わりに生体適合で流動性の骨材質を充填する腔がさらに拡張される。
【0076】
次に、骨髄及び(または)海綿骨を圧縮するため、バルーンを腔内で膨らませる。骨髄及び(または)海綿骨が圧縮されたらバルーンを凋ませ、腔から抜き取る。バルーンの膨張と圧縮が行なわれる間、脂肪及びその他の残骸物は、カテーテル管16に吸引圧をかけることにより、部分12及び14の間ならびに周囲のスペースから吸引される。この処置及び骨髄の圧縮を行なった後、バルーンを凋ませ、カテーテル21を力を加えて腔から抜き取る。
【0077】
本発明の膨張可能なデバイスの第2の実施例は、番号60が概略的に示しており、図4及び5に示されている。バルーン60は中空になっており、管64を通じて加圧された膨張用液体
を受け入れる中央の球形部分62を含む。球形部分には球形の外部表面66があり、部分68を膨らますための管セグメント70を有するリング形の部分68で囲まれた外部表面を持つ。ペアの経路69は部分62と68を結んでいる。吸引管セグメント72は、バルーン60で生成された骨腔からの液体及び残骸物を吸引する。
【0078】
本明細書に開示されたバルーン・スリーブ71、バルーン60及びすべてのバルーンは入手可能である。バルーン・スリーブ71(図9)は置き換えられるように外部管71a内に配備されており、バルーン60の挿入に用いることができる。スリーブ71は、バルーンの損傷を防止するため、椎骨22(図9A)の開口部71Cの内壁を押している弾性の指71bを持つ。バルーン・スリーブを取り除くと同時に、加圧された液体が管64に向かって流れ、皮質骨内の骨髄を圧縮するよう部分62及び68を膨らます。次に、バルーン60を凋ませ、骨腔から取り出す。
【0079】
図6及び6Aは、図1及び2に示したタイプの変形ドーナツ形バルーン80のいくつかの図を示している。ただし、バルーン80のドーナツ形は互いにステッチで留められてはいない。図6のバルーン80は、第1の中空部分84及び第2の中空部分85からなるナシ形の凸状外部表面82を持つ。管88は、2つの部分が骨の髄質腔へ挿入された後に分管90及び92を介して液体を2つの部分へ導き、その部分を膨らますためのものである。カテーテル管16は、バルーン80の2つの部分の間のスペース96内へ挿入される。2つの部分84及び85は、接着剤によりその対面で接着されている。
【0080】
図6Aは、バルーン80の2つの部分の間のスペースまたは開口部96内へカテーテル管16が挿入されている方法を示している。
【0081】
図7は、膨張液をバルーン80内へ導いた後、バルーンの正しい配置を決めるため、膨張材で満たされたバルーンのX線撮影ができるように、バルーン80内へ造影剤を注入する管88を示している。管16は図6にも示してあり、管88の外壁表面に或る種の適当な方法で取り付けられている。
【0082】
本発明のさらにもう1つの実施例は、図3に示している。これは図1に類似しているが、ドーナツ形ではなく、丸くて膨張可能なデバイス109を含む。このデバイスは膨らますことができ、糸状の束縛手段117を有する3つのバルーン・ユニット110、112及び114を有する。この束縛手段は、バルーン・ユニットの長軸に対してバルーン・ユニットが直角方向へ拡張するのを防止する。束縛手段の素材は、バルーンの素材と同じか類似の素材で、ある程度の弾力性はあっても、実質的には拡張能力のないようなものからなる。
【0083】
管システム115は、加圧された液体をバルーン・ユニット110、112、及び114へ導き、凋ませた状態で骨内に配置したバルーン・ユニットを液体で膨らますためのものである。バルーンを正しく膨らませて骨髄を圧縮した後、バルーンを凋ませ、治療する骨から力を加えて外へ取り出す。束縛手段の助けにより、両端の側面77及び79は、実質的に平坦であり互いに平行である。
【0084】
図10は、もう1つの膨張可能なバルーンを示している。このデバイスはインゲンマメ形のバルーン本体130で、1対のインゲンマメ形側面132を持ち、バルーン130を図11に示す骨136内に押し入れるため、その側面は折り畳まれるように適合されており、また連続的端面134と共動するように適合されている。管138は、バルーンを膨らませて、バルーンが図11の椎体136に示す寸法及び位置になるように膨張液をバルーン内へ送り込むのに用いられる。デバイス130は、骨の骨折も崩壊もない場合、海綿骨を圧縮する。上述の動作はバルーンの側面及び端面によって制限される。
【0085】
図12は、インゲンマメの形状を有し、かつ膨張液をバルーン内へ送り込み、バルーンを膨らますのに用いる管142を備えるバルーン140を示す。バルーンは当初、1つの小部屋からなる袋であるが、袋はカーブした線または帯に沿って熱シールを施し、接着線144を形成することができる。これにより、図13に示すインゲンマメ形状を有する横に並んだ小部屋146が形成される。四角または三角のバルーンには、140に見られるものと類似のパターンの帯で、直線のものが応用される。素材はプラスチックに類似し、熱で形成できる標準的な医療用バルーン材であるため、熱シールを施すことによって袋の側面の熔接が起こる。
【0086】
図14は、図12のバルーンを含んでおり、椎骨147に挿入された場合の二重積み重ねバルーン140を示す椎体147の透視図である。
【0087】
図15は、図10に類似しているが、糸状の束縛手段である房が付いている点が異なる。この房は膨張可能なデバイスの側面152の間に延長し、それらを結ぶことによって側面の互いからの拡張を制限している結果、側面は一般的に平行を保っている。管88は上述した方法で、インゲンマメ形状のバルーンを膨張液で満たすために用いられる。
【0088】
椎体バルーン用の寸法は、広範囲にわたる種類のものがある。腰椎体及び胸椎体のための椎体バルーンの高さ(図11のH)は、典型的に0.5 cmから3.5 cmの範囲にわたる。腰椎体及び胸椎体のための椎体バルーンの前方から後方までの寸法 (図11のA)は0.5cmから3.5cmの範囲にわたる。胸椎体のための椎体バルーンの左側から右側までの寸法(図11のL)は0.5 cmから3.5 cmの範囲にわたる。最適の椎体バルーンは、独立した管システムを通して各要素を別々に膨らませることができる異なる高さの2つかそれ以上の要素を積み重ねたバルーンである。十分に膨らませた場合の積み重ねバルーンを合計した高さは、上記に特定した高さの範囲内でなければならない。かかる設計にすることによって、周囲の組織を傷つけることなく骨折した椎体を段階的に元の高さに再建することができ、また同じバルーンをより広範囲の椎体サイズに使用することができる。
【0089】
一定の椎体のための適切なバルーンの最終的な選択は、たとえばいくつかの要素に基づく。一定の椎体のためのバルーンの前から後までの(A-P)寸法は、椎体のCTスキャンまたはX線写真を見て選択する。A-P寸法は、椎体の前皮質の内部皮質壁から、後皮質の内部皮質壁までを測る。一般に、適切なバルーンのA-P寸法は、この測定値より5〜7ミリメートル少ない。
【0090】
一定の椎体のための適切なバルーンのサイドからサイドまでの寸法は、治療を受ける椎体のCTスキャンまたはX線写真を見て選択する。サイドからサイドまでの距離は椎体の側面の内部皮質壁を測定する。一般に、適切なバルーンのサイドからサイドまでの寸法は、この測定値より5〜7ミリメートル少ない。また腰椎体のサイドからサイドまでのバルーン寸法はA-P(前から後までの)寸法より広い傾向にある。胸椎骨の場合、サイドからサイドまでの寸法とA-P寸法はほぼ同じである。
【0091】
一定の椎体のための適切な椎体バルーンの高さは、治療を受ける椎体の上方及び下方の椎体のCTスキャンまたはX線写真を見て選択する。治療を受ける椎体の上方及び下方の椎体の高さを測定し平均する。この平均値は選んだ椎体バルーンの適切な高さを決定するのに用いられる。
【0092】
(長骨用バルーン)
本発明のバルーンを使用して治療できる長骨には、遠位橈骨(手首の大きい方の腕骨)、近位脛骨プラトー(膝の直ぐ下の脚の骨)、近位上腕骨(肩の腕上端)、及び近位大腿骨頭(股関節の脚骨)がある。
【0093】
(遠位橈骨用バルーン)
遠位橈骨用としては、遠位橈骨152内のバルーン160を示しており、バルーンはピラミッドに近似しているが、より厳密にはこぶ付きバナナの形状と考えられる。このこぶ付きバナナは、遠位橈骨内の腔内部の大部分を満たし、皮質骨158の内部表面156に対して海綿骨154を軽く圧縮している。前述した球形橈骨バルーンも、遠位橈骨158用として適当なサイズに形成できることに注目していただきたい。
【0094】
バルーン160は、円錐形の下部分159を持ち、遠位橈骨152の中空スペース内を下方向へ延長している。この円錐形部分159は、遠位中央部分161に近づくにつれて横断面が大きくなる。バルーン160の横断面は、中央の位置(図17B)に示されており、この位置はバルーンの最も広い位置に近い。番号162を付したバルーンの上部端は、バルーンを膨らますため液体をバルーン内へ導き、皮質骨の内部表面に対して海綿骨を圧縮するため、カテーテル88に向かって細くなっている。バルーン160の形状は、糸による束縛手段165で形成される房によって決められ制限を受けている。これらの束縛手段の使用は任意であり、バルーン本体160を一段と補強してくれるが、希望の形状を達成するのに不可欠なものではない。バルーンは椎骨に関して説明した方法と同様にして、遠位橈骨に配置したり遠位橈骨から取り出したりすることができる。
【0095】
バルーンの近位端(すなわち肘に最も近い部分)は円筒形で、寸法は0.5 x 0.5 cmから1.8 x 1.8 cmまでさまざまである。
【0096】
遠位橈骨バルーンの長さは1.0 cmから12.0 cmまでさまざまである。
【0097】
遠位橈骨バルーンの内側(正中線に近い)から外側(正中線から離れた)までの最も広い寸法(遠位橈骨と遠位尺骨の関節部かその付近)は、1.0 cmから2.5 cmまでさまざまである。遠位橈骨バルーンの遠位の前から後までの奥行寸法は0.5 cmから3.0 cmまでさまざまである。
【0098】
(近位上腕骨骨折用バルーン)
遠位橈骨の一定の骨折を治療する適切なバルーン・サイズの選択は、遠位橈骨及び骨折の位置のX線写真観察による測定値によって行なう。
【0099】
近位上腕骨169の場合、図18が示すバルーン166は球形であり、基部を持つ設計のものである。このバルーンは近位上腕骨169内の海綿骨168を圧縮する。埋め込みまたはラミネート及び(または)巻かれたメッシュ170を用いてバルーン166のネック172を形成し、また骨幹の始まる部分で、2つ目のメッシュを用いて基部172aの底を内部皮質壁の形状に一致するよう形成することができる。これらの束縛手段により、バルーン本体の強度が一段と向上するが、形状はバルーン本体の成型によって達成することができる。これは図18に示すように、バルーン166を取り囲む圧縮された領域に示すような形状に海綿骨を圧縮するためである。皮質骨173は下部174で相対的に広くなっており、上部端175では薄い壁になっている。バルーン166は供給管177を有しており、その管を通して加圧された液体をバルーン内へ送り込んでバルーンを膨らまし、近位上腕骨の海綿骨を軽く圧縮する。バルーンは椎骨に関して説明した方法と同じ方法で、近位上腕骨に挿入したり、近位上腕骨から取り出したりできる。
【0100】
近位上腕骨の骨折用バルーンは以下のようにさまざまである。
【0101】
バルーンの球形になった末端部は、1.0 x 1.0 cmから3.0 x 3.0 cmまでさまざまである。
【0102】
近位上腕骨骨折バルーンのネック部は、0.8 x 0.8 cmから3.0 x 3.0 cmまでさまざまである。
【0103】
近位上腕骨骨折バルーンの基部または遠位部分の幅は、0.5 x 0.5 cmから2.5 x 2.5 cmまでさまざまである。
【0104】
バルーンの長さは4.0cmから14.0 cmまでさまざまである。
【0105】
一定の近位上腕骨骨折を治療するための適切なバルーンの選択は、近位上腕骨のX線写真で測定した骨折の大きさや位置によって行なう。
【0106】
近位上腕骨169内の使用に適合されたもう1つのバルーンは、図18Aに示す円筒形バルーン225である。図18の供給管177のように、円筒形バルーン225はバルーンに液体を注入す
るための膨張管226を備えている。227は典型的な肩骨折を示す。円筒は一様な円周のものでもよいし、片方の端がもう片方より広くてもよい。広い方の端には、上腕骨頭168aの海綿骨168を圧縮するため、拡張管226が取り付けられている。形状を維持するための適切な束縛手段は、一定の間隔で周囲に配置された複数の非弾性帯(228はその1つ)である。
一様な幅の円筒の場合、束縛帯は通常同じ直径を有する。片方の端がもう片方の端より広い円筒の場合、各帯は直径が次第に大きくなる。
【0107】
バルーンの長さは、通常基部上の球体と同じ長さで、好適には4〜14 cmの範囲にあり、幅は通常0.5〜2.5 cmの範囲内のものがよい。術者は治療を受ける上腕骨の普通のX線写真を使用する。必要な長さは、挿入部位の内側上腕骨頭から骨折部位の約3cm下までの距離を測定して決める。直径は上腕骨幹(バルーンの長さの最も狹い部分)の皮質の内側直径より少なくとも0.5 cm短い。
【0108】
(近位脛骨プラトー骨折用バルーン)
脛骨骨折は図19Aに示すとおりである。19Aでは、バルーン180は脛骨183の片側182に配置される。バルーンは膨らませたとき、バルーン180を取り囲む層184内の海骨綿を圧縮する。バルーンの横断面を図19Cに示す。図19Cのバルーンは1組の対面185及び187を持ち、束縛手段188によって相互に結ばれている。糸の形状あるいは適切な構造の柔軟な要素ならなんでもよい。この束縛手段の主な目的は、面185及び187が事実上互いに平行になり、球形にならないようにするためである。管190は、液体をバルーンに導き入れたり、バルーンから導き出したりするため、バルーン180に連結されている。束縛手段の端は図19B及び図19Dに示し、数字191を付している。バルーンは、椎骨に関して説明した方法と同じ方法で、脛骨に挿入したり、脛骨から取り出したりする。図19Bは、実質的に円形のバルーン形状を示しているが、図19Dは実質的に楕円形のバルーンを示している。
【0109】
近位脛骨プラトー骨折バルーンの寸法は以下のようにさまざまである。
【0110】
バルーンの厚さまたは高さは、0.5 cmから5.0 cmの範囲である。
【0111】
前方から後方までの寸法は 1.0 cmから6.0 cmの範囲である。
【0112】
サイドからサイド(内側から外側)までの寸法は1.0 cmから6.0 cmの範囲である。
【0113】
一定の脛骨プラトーの骨折を治療するための適切なバルーンの選択は、X線写真で測った骨折のサイズ及び位置によって行なう。
【0114】
(大腿骨頭用バルーン)
大腿骨頭の場合は、大腿骨頭の皮質骨202内に挿入されたバルーン200を示す。皮質骨は大腿骨頭の外側端204で薄く、大腿骨の下端206で厚さを増している。皮質骨は海綿骨207を取り囲み、この骨はバルーン200の膨張によって圧縮される。膨らませるため液体をバルーンへ送り込むための管は数字209が付されている。管は大腿骨の頚部に沿って延長し、通常球形の大腿骨頭内へ達している。バルーンは図20Aの200aが示すように半球でもよいし、また図20のように球形でもよい。バルーン200は椎骨に関して説明したのと同じ方法で、大腿骨頭に挿入したり、大腿骨頭から取り出したりする。本例の半球の形状は、図20Aに示すプリーツ200Bを形成している底の重なっている部分によって維持されている。
【0115】
大腿骨頭バルーンの寸法は、以下のようにさまざまである。
【0116】
大腿骨頭バルーンの寸法は1.0 cmから4.5cmまでの範囲にわたる。大腿骨頭バルーンの適当なサイズの選択は、大腿骨頭のX線写真またはCTスキャンによる大腿骨頭のサイズの測定及ならびに、虚血壊死骨の位置及びサイズによって行なう。半球形バルーンの寸法は、球形バルーンの約半分である点を除けば、球形バルーンの寸法と同じである。
【0117】
(股関節部骨折の防止)
図21は股関節部骨折を防止する「ブーメラン」形バルーン210を示している。「ブーメラン」形バルーン210は膨らませると円筒形で、中央部でブーメランのように次第に曲がっている。バルーンは大腿骨頭211の端から約0.5cmのところからスタートして、大腿骨頚部212を経由し、近位大腿骨骨幹213内へ延長し、小転子214から約5〜7 cmのところでストップしている。バルーン210は、非弾性の素材(215はそのうちの1つ)からなるリングによってその形状を維持され、該リングは、バルーンの片側の全長にわたり付着している非弾性のより短い帯216にはより近い間隔で繋ぎ合わされており、バルーンの反対側に付着している非弾性のより長い帯217にはより離れた間隔で繋ぎ合わされているものが望ましい。
【0118】
膨らませる前後に、バルーン210を膨張管に押し付けて折りたたむ(218の点線に示すように)。膨張の前にバルーン210を膨張管に巻いてもよいが、その場合バルーンを膨らま
せたとき、ほどける程度にゆるく巻く。バルーンを膨張管に付けて股関節部に挿入するには、術者はX線画像を見ながらパワードリルを使用して、遠位大腿骨皮質221の地点からスタートして、大腿骨頭211に達する通常4〜6 mmの幅の腔220を形成する。大腿骨骨幹213の地点までバルーンを下ろしてバルーンを膨らませる代わりに、大転子領域222内でバルーンを膨らませることは望ましくないが、バルーンの配置と正しい方位がそれを防止している(凋ませたバルーンは小転子の方に向いている)。バルーン210を腔220内で膨らませた後(図21の点線を参照)、前もって決められたバルーンのサイズ及び形状により、バルーンの近位部分は小転子の方へ偏る。任意により、同じドリルのスタート点から骨幹の方へ第2の腔をドリルで形成してもよい。
【0119】
股関節部の骨密度がしきい値以下の患者の場合、股関節部骨折のリスクが増し、密度が下がるにつれてリスク度も増す。患者の選択は骨密度のスキャンによって行なう。バルーンの長さは術者によって決められる。バルーンは大腿骨頭211の端から約0.5 cmのところからスタートして、大腿骨頚部を経由し、近位大腿骨骨幹内へ延長して、小転子から約4〜8 cm下がったところでストップしている。バルーンの直径は、大腿骨頚部(最も細い領域)の内側皮質骨の直径を測り、その値から0.5cmを差し引いて求める。「ブーメラン形バルーン」の好適な寸法は、全長が10〜20 cm、直径が約1.0〜2.5 cmである。(「こぶ付きバナナ」形バルーンの「こぶ」部分の幅が大腿骨頚部の許容寸法を超えない限り、正しい長さの「こぶ付きバナナ」形バルーンも股関節の骨折防止に有用である。)
大腿骨頭の骨密度が最低の患者の場合、たとえば、「ブーメラン形バルーン」に続いて大腿骨頭バルーンを用いるといった2つのバルーンを連続的に使用することにより、大腿骨頭内の海綿骨をより強力に圧縮することが必要になるかも知れない(同じ挿入口から挿入し、支持材を挿入する前に膨らます)。代りの方法として、「ブーメラン形」バルーンを適合させて、バルーンの遠位部分が大腿骨頭バルーンの形状に似るようにすることもできる。
【0120】
(その他の使用、方法、及びバルーン)
バルーンにより形成される腔は、医療的に適切な処方の薬剤または成長因子で充填することが出来る。薬剤投与の例として、局所の骨髄炎を治療するための抗生物質ゲンタマイシンの典型的な投与量は、1グラムである(ゲンタマイシンの治療投与量の範囲ははるかに大きく、治療する病状及び投与する領域の広さ次第で1ナノグラムから100グラムまでにわたる)。ポリエチレングリコール等の正しいゲル物質を処方した医療的に適切なゲルは、一定量(たとえば10cc)のゲル内に1グラムのゲンタマイシンを含有させることができる。形状及びサイズが治療する部位に適切なこの量のバルーン(つまり、バルーンは動かないため、形状及びサイズが適切でないバルーンを選択部位で膨らませると皮質骨を破壊する恐れがある)を使用して、病原菌に冒された海綿骨を圧縮することができる。これにより腔が形成され、治療が必要な部位に必要量の薬剤を正確に維持しておくことができ、薬剤が血液やその他の液体で洗い流されることを防止する。投与量は最適化できるのみでなく、切開手術を施すことなく後で投与量を追加することができ、治療的結果が強化される。最適の薬剤投与に必要な腔が骨を弱めた場合、それ以上骨折しないように、ギプスを使用して、あるいは従来の体内または体外金属(またはプラスチック)固定装置を使用して、骨を保護することができる。骨に入れられた治療的物質は骨の外にも作用を及ぼす。化学療法用の薬剤を含んでいる処方薬を使用して、局所の固形腫瘍、局所に限られた黒色腫、または近くの骨肉腫やその他の腫瘍までも治療することが可能である。
【0121】
治療的物質を投与するための代替方法として、治療する骨にバルーンを挿入する前に、医療的に有効な量の好適な抗生物質、骨成長因子、またはその他の治療的物質を含有している医療的処方薬(乾燥粉末剤、液体またはゲル)の中にバルーンを落として、上述の物質をバルーンに塗布する。任意により、薬剤塗布を施す前に、空気または液体でバルーンを全部または一部膨らませてもよい。任意により、塗布した薬剤が濡れている場合(液体またはゲル状の場合)、塗布したバルーンを空気またはその他の手段で乾燥させてもよい。指示に従いバルーンを再び折りたたみ、必要に応じて直ちに使用するか保存する。バルーンに塗布された治療的物質は、海綿骨を圧縮する間に投与してもよいし、腔が形成された後、もう1つのバルーンに塗布して投与してもよい。
【0122】
上述した方法を用いて、使用前にゲルフォーム(Gelfoam)またはその他の薬剤をバルーンに塗布することもできる。ゲルフォームを塗布した骨内のバルーンを膨らませて、海綿骨の圧縮によって満たされなかった骨折骨のあらゆる割れ目をバルーンで満たす。
【0123】
図22A-Cは、本発明に従って治療的物質を骨に投与する1つのシステム及び方法を概念的に示している。図22Aに示すように、膨張管230に取り付けられた膨張バルーン229を、管230をワイヤ232へ繋いでいるクリップ231で固定する。図22Bに示すように、希望する量の物質233含んだ測定量のゲル処方薬を、容器234から一様につまみ出し、好適には薄いライン235状にしてバルーン236の外側表面に塗布する。次に、図22Cで示すように塗布バルーン237を凋ませ、ゲルが固定するまで乾燥させる。その後、塗布バルーン237は医療用として包装される。もちろん、バルーンはあらかじめ膨らますことなく薬剤を塗布することもできる。さらに、塗布物質は自然の状態(固体、液体または気体)の希望する化合物のみでもよいし、あるいは乾燥粉末、エアゾールまたは溶液を含む適当な処方でもよい。もちろん、任意の乾燥時間は化合物及びその処方の性質による。
【0124】
骨の圧縮に用いられるか、あるいは骨を圧縮した後の第2のバルーン(わずかに大きい)として用いられるバルーンの外側に治療的物質を塗布しての薬剤投与は、処方薬を腔に投与するのとは質的に異なる。骨の圧縮中に薬剤を投与する場合、物質は圧縮される骨の中へ組み入れられる。これは薬剤を徐放する方法として即座に役立つ。同時に、アクリル骨セメントまたは生体適合性の人工骨のような適当な支持物質で腔を充填することが出来るので、ギプスも金属製の固定装置も不要になる。かかるバルーンの組合せによって、たとえば、術者は希望する治療的物質(抗生物質、骨の成長因子または骨粗しょう症薬剤等)を骨粗しょう症の部位に投与しながら、骨粗しょう症による骨折を経皮的に治療することができる。したがって、ギプスまたは金属製の固定装置は一般に不要である。
【0125】
医療的に有効な量の治療的物質は、薬剤のメーカーまたはスポンサーにより、一般に1つの部位につき10ナノグラムから50ミリグラムであるが、特別な症例では、これより少ない量や多い量が必要な場合もあり得る。典型的な抗生物質にはゲンタマイシン及びトブラマイシンがある。典型的な骨成長因子には、骨モルフォゲン因子、骨形成タンパク、繊維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子、ならびに変形成長因子アルファ及びベータ科のメンバーがある。化学療法及び関連薬品には、シスプラチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、メトトレキサート、タクソール、タモキシフェンなどの化合物がある。骨粗しょう症の薬剤には、エストロゲン、カルシトニン、二ホスホン酸塩、及び副甲状腺ホルモン拮抗剤がある。
【0126】
本発明で説明するバルーンは、整形外科的インプラント、骨移植、人工骨、骨充填材、治療的物質のための改良スペースを提供するため、上に説明した部位の切開手術にも使用することができる。選んだバルーンのサイズ及び形状は、まず、治療を受ける部位によって決定され、続いて、サイズ、形状または残りの骨に挿入を希望する素材の量によって決定される。四角形または長方形バルーンは、これらの形状で入手できるヒドロキシアパタイト等の人工骨の配置に、どのような部位にも用いることができる。バルーンは前もって決められたサイズに適合するように作られており、また選んだ素材のサイズにピッタリ合うものが選ばれる。
【0127】
バルーンによって形成された腔内へ、ヒドロキシアパタイト顆粒または骨ミネラル固着料のような流れない材料を挿入するには、術者は小侵襲手技により、カニューレの内径よりわずかに小さな径の長いピンで、管の中へ材料を押し込むことができる。切開手術中、術者と治療する骨との間に皮膚またはその他の組織が存在しないことを除けば、術者はあたかも経皮的手技を用いているかのように治療する骨に達することができる。これにより、皮質骨をできるだけ無傷のまま保つことができる。挿入する材料が流れず、カニューレを介して腔に押し入れられない場合(たとえば、ヒドロキシアパタイトの塊のように傷害を起こす可能性があるため)、術者は「小侵襲手技」によって腔を形成し、続いて標準的器具(穴あけ器、穴たがね、荒目やすり等)を用いて皮質骨の側に孔を開け該塊を挿入する。この同じ方法を用いて、全膝関節置換えシステムの金属脛骨部分のような金属製の人工装具を移植することができる。
【0128】
異なるサイズ及び(または)形状のバルーンを、顎骨、腕及び脚骨の骨幹中央部、頚部椎体、足及び足首の骨、肋骨のような上記に特定していない部位にも使用することができる。骨の骨折の治療または防止において、バルーンの形状とサイズを選ぶ場合の重要点の1つは、骨折をひき起こす(骨折のリスクがある)骨疾患が海綿骨量の喪失による場合、最適には、海綿骨の約70〜90%を圧縮する必要があるという本出願の教示である。治療を
受ける部位の海綿骨の圧縮最適量である70〜90%(または実現可能な範囲として40〜99%)未満を圧縮した場合、疾患海綿骨が治療部位に残り過ぎる。病気の海綿骨は脆く崩壊する可能性があり、治療したにもかかわらず再び骨折するおそれがある。この原理を基に、特定の骨に用いる許容形状及び最小サイズを説明し定義する。
【0129】
70〜90%の基準には、本明細書に記載するような特定の例外がある。1つは虚血壊死の場合ように、治療する骨の疾患が局所に限られ、血液供給のロスによって骨が局所的に壊死している場合である。この場合、治療を要する疾患の部位は小さいため、バルーンは小さくてもよい。2つ目の例外は、ヒドロキシアパタイト及び全膝関節置換えシステムの構成部分のような特定形状の固形材料の挿入を改良するのにデバイスを使用する場合である。この場合、バルーンの形状及びサイズは、挿入される材料の形状及びサイズによって限定される。さらにもう1つの例外は、治療的物質の投与である。この場合、海綿骨は冒されているかもしれず冒されていないかもしれない。冒されていない場合、海綿骨は圧縮されることにより、重要な治療目的を有する薬剤または成長因子の投与改良のための犠牲となる。この場合、薬剤を内部に含む骨は、薬剤が作用し骨が治癒する間、ギプスまたは従来の固定装置で支持される。
【0130】
バルーンの形状及びサイズを選ぶ場合のもう1つ重要点は、非弾性のバルーン束縛手段が一般に必要とされ、バルーンの素材は非弾性のものが好適であるという本出願の教示である。これらの素材は、海綿骨の外側端(すなわち皮質骨の内側)の通常寸法の限界値によって定義される前もって決められたバルーン形状及びサイズを超えて、バルーンが拡張することを安全かつ容易に防止するからである。たとえば大き過ぎるバルーンの場合、すぐにも骨折が起こる危険性があるため、これが各部位におけるバルーン・サイズの上限を決める。代表的な血管形成術用バルーンは数多く存在するため、術者は一般にモニター装置に頼って(本発明のバルーン設計の特徴の代わりに)、バルーンの膨らみ過ぎを防止する。モニター装置に頼ることは、この出願の教示に比べて、手術に一段と熟練することが要求される。これには、治療を受ける部位のX線写真を撮り、本文に説明したように重要
な寸法を測定することがある。さらに、骨の治療において圧力に頼ることは、思わしくない臨床的結果を招く可能性がある。術者は普通海綿骨を完全に圧縮するには、どの程度の圧力をかければいいかが事前にわからない。その理由は、圧力値は海綿骨の厚さおよび、疾患による骨の密度の喪失によって異なるからである。膨らまし過ぎやその結果による深刻な骨折を避けるため、術者はバルーンを最適以下に膨らます傾向がある。この結果、海綿骨が残され過ぎて、再び骨折が起こる可能性がある。
【0131】
本出願のもう1つの教示は、海綿骨を圧縮するためには、あらゆる方向に圧力を一様に最大限に加えることが必要なことである。これは、本出願および本明細書に記載するその他の出願に図示されているバルーンに特有の特徴である。バルーンの設計のせいで圧力を最大限に加えられない場合、海綿骨は普通、圧縮されない。圧縮される海綿骨の形状、そして骨が不適当に動いた場合に損傷を受けるおそれのある局所の構造物に関しては、人体の骨格解剖学の教科書ならびに、部位及びその疾患または損傷に関する知識によって、医療専門家は一般に理解している。形状及び寸法の範囲は治療を受ける部位によって決められる。一定の患者のための厳密な寸法は、治療を受ける部位のX線写真、治療目的、及び
部位における安全束縛手段によって決定される。骨疾患の場合、一般に海綿骨の大部分を置き換えることが望ましく、その形状及びサイズにより、治療領域の海綿骨量の約70〜90%を圧縮するバルーンが選ばれる。しかし、特に治療的物質の投与が主な目的である場合
、これより小さいバルーンや大きいバルーンも適切である。この場合、バルーンが皮質骨をその通常の位置から移動させてはならないことを念頭に置きながら、治療的物質の希望量を基にしてバルーン・サイズを選ぶことができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は、積み重ねられたドーナツ組立の形状を有する本発明のバルーンの最初の実施例の透視図である。
【図2】図2は、図1のバルーンのドーナツ部分が椎体の腔内にフィットする方法を示している図1のバルーンの断面図である。
【図3】図3は、バルーンが膨らむ方向への拡張を制限するための、3段に積み重ねられたバルーン及び糸様束縛方法を示している本発明のバルーンのもう1つの実施例の概念図である。
【図4】図4は、バルーンを取り囲む円筒形のリングを有する球形バルーンの平面図である。
【図5】図5は、球形バルーン及び図4のリングの断面図である。
【図6】図6は、カテーテルがバルーンの中心部内へ延長している長円形のバルーンを示す。図6Aは、図6のバルーンを膨らますための内部管に対してカテーテルが配列されている方法を示す透視図である。
【図7】図7は、バルーンの膨張を行なうため、及びバルーン自体の膨張により生成される残骸物の除去を行なうための吸引管及び造影剤注入管である。
【図8】図8は、凋ませた後、ヒトの椎体内へ挿入されつつあるバルーンの断面図である。
【図9】図9は、保護スリーブまたは防護要素が拡張する方法を示しているカニューレの側面図である。図9Aは、保護スリーブまたは防護要素が拡張する方法を示しているカニューレの側面図である。図9Bは、アクセス用の孔をドリルで設けた椎骨の断面図である。
【図10】図10は、インゲンマメの形状に形成された本発明のバルーンのもう1つの実施例の透視図である。
【図11】図11は、骨内に挿入して膨らました図10のインゲンマメの形のバルーンを示している椎骨の透視図である。
【図12】図12は、発熱体または熱シール器具を使用していくつかの小部屋を形成したインゲンマメ形(肝臓の形の)バルーンの平面図である。
【図13】図13は、図12のライン13から13に沿ってカットした場合の横断図であるが、2つのインゲンマメ形バルーンを積み重ねて形成されている。
【図14】図14は、図11と同様の透視図であるが、椎骨内にある図13の積み重ねられたインゲンマメ形バルーンを示している。
【図15】図15は、バルーンの上壁と底壁とを互いに結んでいる内部の糸を所定の位置に保持ている外部の房を示しているインゲンマメ形バルーンの平面図である。
【図16】図16は、図15のライン16−16に沿ってカットした場合の図15の横断図である。
【図17】図17Aは、右遠位橈骨内のこぶ付きバナナ形バルーンの背面図である。図17Bは、図17Aのライン17B−17Bに沿ってカットした場合の図17Aの断面図である。
【図18】図18は、左近位上腕骨の前方から見た近位上腕骨内にある基部上の球形バルーンである。
【図18A】図18Aは、左近位上腕骨の正面から見た円筒形バルーンである。
【図19】図19Aは、楕円形の円筒型バルーンが内側脛骨プラトー下に挿入された近位脛骨の前面図である。図19Bは、図19Aのバルーンの斜視図である。図19Cは、図19Aのバルーンの立側面図である。図19Dは、図19Aのバルーンの平面図である。
【図20】図20は、大腿骨(または上腕骨)頭の虚血壊死を治療するための球形バルーンを左股関節部の前方から見た図である。図20Aは、大腿骨(または上腕骨)頭の虚血壊死を治療するための半球形バルーンの側面図である。
【図21】図21は、股関節部の骨折を防止するためのバルーンを左股関節部の前方から見た図である。
【図22】図22Aは、本発明に従って治療的物質を骨に投与する代表的方法及びシステムを示す概念図である。図22Bは、本発明に従って治療的物質を骨に投与する代表的方法及びシステムを示す概念図である。図22Cは、本発明に従って治療的物質を骨に投与する代表的方法及びシステムを示す概念図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟組織を通して、海綿骨によって少なくとも一部分が占められる内部容積を有する骨に至るアクセス経路を形成するようなサイズにつくられかつ構成された第1手段と、
該海綿骨において拡張するようなサイズに作られかつ構成された拡張することができる構造と、
該海綿骨に該拡張することができる構造を導入するために、該アクセス経路を通して通過するようなサイズに作られかつ構成された第2手段であって、該拡張することができる構造は、該第2手段を除去する際に該海綿骨内に残しておかれる、第2手段と、
を備える、システム。
【請求項1】
軟組織を通して、海綿骨によって少なくとも一部分が占められる内部容積を有する骨に至るアクセス経路を形成するようなサイズにつくられかつ構成された第1手段と、
該海綿骨において拡張するようなサイズに作られかつ構成された拡張することができる構造と、
該海綿骨に該拡張することができる構造を導入するために、該アクセス経路を通して通過するようなサイズに作られかつ構成された第2手段であって、該拡張することができる構造は、該第2手段を除去する際に該海綿骨内に残しておかれる、第2手段と、
を備える、システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図18A】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図18A】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2007−136222(P2007−136222A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22274(P2007−22274)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【分割の表示】特願2004−341300(P2004−341300)の分割
【原出願日】平成8年6月6日(1996.6.6)
【出願人】(504445817)カイフォン インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【分割の表示】特願2004−341300(P2004−341300)の分割
【原出願日】平成8年6月6日(1996.6.6)
【出願人】(504445817)カイフォン インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】
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