説明

骨盤観察用支持装置およびこれを用いた死体検案ならびに法医解剖における個人識別方法

【課題】骨盤を生体内における配置と同様の配置とすることによって、白骨化した死体であっても、性別を判定することが可能な骨盤観察用支持装置ならびにこれを用いた死体検案ならびに法医解剖における個人識別方法を提供する。
【解決手段】骨盤観察用支持装置1は、骨盤の形状を観察するため、骨盤を両側から挟持する挟持部として機能する第1部材10と第2部材20とを備えている。第1部材10および第2部材20は、基台部30にそれぞれ立設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白骨死体の死体検案と法医解剖において、骨盤を観察して性別を判定するための骨盤観察用支持装置およびこれを用いた死体検案ならびに法医解剖における個人識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事件、事故、自殺などで死亡した人々には、医師法および刑事訴訟法に基づく死体検案が行われ、必要に応じて刑事訴訟法または死体解剖保存法に基づいた法医解剖が行われる。
【0003】
死体検案と法医解剖では、白骨死体を対象とすることがある。白骨死体では、個人識別のために、骨の形状から、性別、年齢、身長などを判定する必要がある。このうち、性別の判定は、個人識別の最も基本となるところであり、頭蓋骨や骨盤の形状の違いを指標としている(非特許文献1,2、参照。)。非特許文献1,2に示すように、骨盤においては、骨盤上口や恥骨下角の形状に性差があるので、これに基づいて、医師は白骨死体の性別を識別する。男女の区別が判らないと、個人の特定は極めて困難となるので、性別判定が最も大切である。性別を判定した後に、骨の他の部位の性状や計測値から、年齢と身長を推定することとなる。
【0004】
【非特許文献1】永野耐造,若杉長英、「現代の法医学」、金原出版株式会社、改訂第3版、1998年2月27日発行、p.369-388
【非特許文献2】福島弘文、「法医学」、南山堂、第1版、2002年4月9日発行、p.187-202
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1,2に記載されているように、骨盤において、性別は、骨盤上口や恥骨下角の形状を観察することによって判定される。しかしながら、白骨化した死体の骨盤は、左右の仙腸関節と恥骨結合が離れており、仙骨と左右の寛骨の計3つに分離しているため、骨盤上口や恥骨下角の形状の観察が困難である。
そこで、本発明では、骨盤を生体内における配置と同様の配置とすることによって、仙骨と寛骨がばらばらに分離した白骨化した死体であっても、性別を判定することが可能な骨盤観察用支持装置ならびにこれを用いた死体検案ならびに法医解剖における個人識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の骨盤観察用支持装置は、骨盤の形状を観察するため、骨盤を両側から挟持する挟持部を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の死体検案ならびに法医解剖における個人識別方法は、骨盤を両側から挟持する挟持部を備えた骨盤観察用支持装置の前記挟持部に骨盤を挟持させ、骨盤を生体内における配置と同様の配置とすることを特徴とする。
【0008】
左右の寛骨の間に仙骨を挟んだ状態で、骨盤を挟持部に挟持させることによって、仙腸関節と恥骨結合とが生体内における骨盤の配置と同様の状態となり、骨盤の形状を正しく把握することができる。これにより、性別を正確に判定することができ、白骨化した死体であっても、個人の識別を正確に行うことができる。
【0009】
また、本発明の骨盤観察用支持装置の挟持部は、第1部材と、この第1部材よりも長さが短い第2部材とを有することを特徴とする。
【0010】
第1部材とこの第1部材よりも長さの短い第2部材とを備えることにより、骨盤を複数の支点により挟持することができるので、挟持された骨盤を安定した状態に保つことができる。
【0011】
ここで、前記第1部材は、骨盤の前面を観察する際に寛骨の坐骨に当接し、骨盤の上面を観察する際に寛骨の腸骨に当接する部材であり、前記第2部材は、骨盤の前面を観察する際に寛骨の腸骨に当接し、骨盤の上面を観察する際に寛骨の坐骨に当接する部材である。
【0012】
寛骨の坐骨を第1部材に当接させ、寛骨の腸骨を第2部材に当接させて骨盤の前面を観察することにより主に恥骨下角の形状を観察することができ、腸骨を第1部材に当接させ、坐骨を第2部材に当接させて骨盤の上面を観察することにより主に骨盤上口の形状を観察することができる。このように本発明によれば、異なる2つの視点から、骨盤の形状を把握することができる。これにより、性別を正確に判定することができる。
【0013】
また、本発明の骨盤観察用支持装置は、前記第1部材ならびに前記第2部材それぞれの鉛直方向に対する角度を調整する調整部を備えたものである方が望ましい。
【0014】
白骨化した死体の場合、左右の寛骨のうち、どちらか一方が欠損していることがあるが、本発明の骨盤観察用支持装置によれば、調整部を備えることにより、第1部材ならびに第2部材それぞれの鉛直方向に対する角度を調整することができるので、角度を動かして調整することで、第1部材または第2部材のどちらかで直接仙骨を支持することができる。従って、左右どちらかの寛骨が欠損している骨盤であっても、残りの寛骨と仙骨との間の仙腸関節を生体内における骨盤の配置と同様の状態に接合することができ、骨盤上口や恥骨下角の形状を正しく把握することができる。
【0015】
また、前記調整部は、第1部材間の距離ならびに第2部材間の距離を調整したり、第1部材ならびに第2部材それぞれの鉛直方向の高さを調整したりするものである方が望ましい。
【0016】
調整部によって、第1部材間の距離ならびに第2部材間の距離を調整したり、第1部材ならびに第2部材それぞれの鉛直方向の高さを調整したりすることができるので、第1部材および第2部材の可動範囲が広がり、1つの装置で、大きさや形状の異なる多様な骨盤に対応することができる。
【0017】
また、本発明の骨盤観察用支持装置は、第1部材および第2部材を立設する基台部を備え、調整部は、把持部を備えた固定部材を有するとともに、固定部材は、把持部の回動により第1部材ならびに第2部材を基台部に締め付け固定したり緩めたりするものである方が望ましい。
【0018】
把持部を備えた固定部材を設けることにより、把持部を回動させることで、第1部材ならびに第2部材を基台部に締め付け固定したり緩めたりすることができるので、使用者にとって操作が容易で作業における負担の少ない骨盤観察用支持装置とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の骨盤観察用支持装置によれば、骨盤を両側から挟持する挟持部を備えたことにより、左右の仙腸関節と恥骨結合とを生体内における骨盤の配置と同様の状態とすることができ、骨盤上口や恥骨下角の形状を正しく把握して、性別を正確に判定することができる。また、本発明の骨盤観察用支持装置に骨盤を挟持させることにより、死体検案ならびに法医解剖において使用者は両手が空いた状態で骨盤を観察することができるので、他人の手を煩わせることなく様々な角度から骨盤の写真を撮ることもでき、死体検案ならびに法医解剖における作業の幅が広がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態における骨盤観察用支持装置について図面を用いて説明する。図1は、本実施の形態における骨盤観察用支持装置の斜視図である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態における骨盤観察用支持装置1は、左右の寛骨と仙骨から構成される骨盤を両側から挟持するものであり、挟持部を構成する第1部材10および第2部材20と、この第1部材10および第2部材20を立設する基台部30とを備える。第1部材10および第2部材20ならびに基台部30は、透明アクリル樹脂により形成されて、第1部材10および第2部材20は、基台部30に着脱可能に取り付けられている。
【0022】
第1部材10は、長さ14cm、幅2cm、厚さ0.5cmの板材であり、基台部30に取り付けられる基端側であって幅方向のほぼ中央部分に、長手方向に沿って形成された長孔11を備えている。また、第2部材20は、長さ5.5cm、幅2cm、厚さ0.5cmの板材であり、幅方向のほぼ中央部分に長手方向に沿って形成された長孔21を備えている。
【0023】
基台部30は、左右の側板40と、側板40間に配置され、左右の側板40にほぼ直角に接続された第1連結板50と、左右の側板40の内側にそれぞれほぼ直角に接続された第2連結板60とを備えている。第2連結板60は、第1連結板50とほぼ平行となるように接続されている。
【0024】
第1連結板50は、長さ18.5cm、幅4cm、厚さ0.5cmの板材であり、幅方向の上端側から1cm程度下がった位置に、長手方向に沿って形成された長孔51を両端部に備えている。また、第2連結板60は、長さ4cm、幅4cm、厚さ0.5cmの板材であり、幅方向の上端側から1cm程度下がった位置に、長手方向に沿って形成された長孔61を備えている。
【0025】
第1部材10と第1連結板50は、把持部71を備えた固定部材70により着脱自在に連結されている。固定部材70は、使用者が握る部分となる把持部71と、第1部材10と第1連結板50を連結する連結部72とを備えている。第1部材10を第1連結板50に対して垂直に立て、第1部材10の長孔11が第1連結板50の長孔51に交差するように配置し、連結部72を、長孔11および長孔51に挿通することにより、第1部材10と第1連結板50とを連結することができる。
【0026】
また、連結部72は、把持部71の回動により、第1部材10と第1連結板50とを締め付け固定したり緩めたりする固定部(図示せず)を有する。すなわち、把持部71を第1連結板50と平行となるように倒すことにより、連結部72が第1部材10と第1連結板50とを締め付けて固定し、把持部71を図1の前面側に引き起こすことにより、連結部72は第1部材10と第1連結板50との締め付けを緩めることができる。
【0027】
第2部材20と第2連結板60も同様に、固定部材70により連結されている。第1部材10および第2部材20にそれぞれ形成された長孔11,21と、第1連結板50および第2連結板60にそれぞれ形成された長孔51,61と固定部材70とで、第1部材10間ならびに第2部材20間の距離、それぞれの鉛直方向の高さ、および鉛直方向に対する角度を調整する調整部として機能する。
【0028】
次に、図2を用いて第1部材10ならびに第2部材20の可動範囲について説明する。図2は、図1の骨盤観察用支持装置の可動範囲を示す図であり、(a)は第1部材、(b)は第2部材の可動範囲を示す。
【0029】
図2に示すように、本実施の形態における骨盤観察用支持装置1は、第1部材10に長孔11を設け、第1連結板50に長孔51を設けたことにより、第1部材10は水平方向、鉛直方向にスライド移動することが可能となり、また、鉛直方向に対する角度も可変とすることができる。同様に、第2部材に長孔21を設け、第2連結板60に長孔61を設けたことにより、第2部材20も、水平方向、鉛直方向にスライド移動することが可能となり、また、鉛直方向に対する角度も可変とすることができる。
【0030】
本実施の形態においては、第1部材10は、水平方向(h1)に5.5cm、鉛直方向(v1)に2cm、また、最大で135度程度回動(θ1)することができる。また、第2部材20は、水平方向(h2)に2cm、鉛直方向(v2)に2cm、また、最大で165度程度回動(θ2)することができる。
【0031】
次に、本実施の形態における骨盤観察用支持装置1を用いて骨盤の形状を観察する方法について図3〜図6に基づいて説明する。図3は、骨盤の前面を観察する様子を示す図であり、(a)に示す平面図に対して、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は背面図、(e)は斜視図である。図4は、骨盤の上面を観察する様子を示す図であり、(a)の平面図に対して、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は背面図、(e)は斜視図である。なお、図3においては、通常の骨盤観察における上下前後左右の方向に合わせて骨盤が配置される状態となるように、第1部材10を正面側にして骨盤観察用支持装置1を使用した状態を示している。
【0032】
白骨化した死体の骨盤は、左右の仙腸関節と恥骨結合が離れており、仙骨と左右の寛骨の計3つに分離している状態である。そこで、まず、骨盤の前面を観察する場合には、図3に示すように、左右の寛骨の間に仙骨を挟んだ状態にし、骨盤を寝かせた状態で骨盤観察用支持装置1に配置する。このとき、寛骨の坐骨の後面上部(図3(b)矢印A)に第1部材10の内側角部をそれぞれ当接させ、腸骨の後面下部(図3(e)矢印B)に第2部材20の内側角部をそれぞれ当接させた状態にして骨盤を挟持する。このように、第1部材10および第2部材20とで左右の寛骨の間に仙骨を挟んだ状態で挟持することにより、左右の仙腸関節(図3(d)矢印C)と恥骨結合(図3(a)矢印D)とを生体内における骨盤の配置と同様の状態とすることができる。なお、骨盤の前面を観察する場合には、図3(a)に示すように、恥骨下角(矢印E)の形状を正しく把握することができ、この恥骨下角の形状から、性別を判定することができる。
【0033】
ここで、上述したように、第1部材10および第2部材20はそれぞれ、水平方向、鉛直方向にスライド調整が可能であり、また、鉛直方向に対する角度も調整することができるので、観察する骨盤の大きさに合わせて、調整を行う。調整を行う際には、固定部材70の把持部71を引き起こし、位置ならびに角度を微調整した後に、把持部71を元の位置に倒して第1部材10と第1連結板50、第2部材20と第2連結板60とをそれぞれ締め付け固定する。これにより、第1部材10および第2部材20とで骨盤を両側からしっかりと挟み込んだ状態とすることができ、観察途中で骨盤の仙腸関節と恥骨結合の結合部分が緩んだりばらばらになったりして、正確な形状が観察できなくなることを防ぐことができる。このように、把持部71の操作のみで、第1部材10と第1連結板50とを、第2部材20と第2連結板60とを締め付け固定したり緩めたりすることができ、使用者にとって操作が容易で作業における負担を少なくすることができる。
【0034】
次に、骨盤の上面を観察する場合には、図4に示すように、左右の寛骨の間に仙骨を挟んだ状態にし、骨盤を立てた状態(図4(b)参照)で骨盤観察用支持装置1に配置する。このとき、第1部材10は、腸骨の後面上部(図4(d)矢印G)に第1部材10の内側角部をそれぞれ当接させ、坐骨の後面上部(図4(e)矢印H)に第2部材20の内側角部をそれぞれ当接させた状態にして骨盤を挟持する。このように、第1部材10および第2部材20とで左右の寛骨の間に仙骨を挟んだ状態で挟持することにより、左右の仙腸関節(図4(c)矢印I)と恥骨結合(図4(c)矢印J)とを生体内における骨盤の配置と同様の状態とすることができる。なお、骨盤の上面を観察する場合には、図4(a)に示すように、骨盤上口(矢印K)の形状を正しく把握することができ、この骨盤上口の形状から、性別を判定することができる。
【0035】
次に、左右の寛骨のうちどちらか一方が欠損している場合における観察方法について説明する。図5は、骨盤左側部欠損時の骨盤観察の様子を示す図であり、(a)の平面図に対して、(b)は正面図である。図6は、骨盤右側部欠損時の骨盤観察の様子を示す図であり、(a)の平面図に対して、(b)は正面図である。
【0036】
図5に示すように、例えば、左側の寛骨が欠損している場合、右側の寛骨と仙骨のみで骨盤の形状を観察することになる。このとき、図3の場合と同様に、骨盤を寝かせた状態で骨盤観察用支持装置1に配置する。欠損していない右側の寛骨に対しては、図3の場合と同様に、第1部材10を坐骨の後面上部に当接させ、第2部材20を腸骨の後面下部に当接させた状態にする。そして、図5(b)に示すように、図5の右側となるもう一方の第2部材20の鉛直方向に対する角度および位置を調整して第2部材20の先端側を装置内側に倒し、第2部材20の先端を仙骨の後面上部(図5(b)矢印L)に直接当接させる。これにより、右側の寛骨と仙骨との仙腸関節(図5(b)矢印M)を生体内における骨盤の配置と同様の状態とすることができ、図5(a)に示すように、骨盤の恥骨下角の形状(矢印N)を正しく把握することができる。
【0037】
なお、本実施の形態における第1部材10は第1連結板50に対して着脱可能に連結されているので、図5に示すように、寛骨が欠損している方の第1部材10は、取り外して使用してもよい。これにより、作業の際に、使用していない第1部材10に触れてしまって装置を倒してしまうなどの事故を未然に防ぐことができる。
【0038】
また、図6に示すように、例えば、右側の寛骨が欠損している場合、左側の寛骨と仙骨のみで骨盤の形状を観察することになるが、この場合は、図4と同様に、骨盤を立てた状態で骨盤観察用支持装置1に配置し、欠損していない左側の寛骨に対して、第1部材10を腸骨の後面上部に当接させ、第2部材20を坐骨の後面上部に当接させた状態にする。そして、図6の左側となるもう一方の第1部材10の鉛直方向に対する角度および位置を調整して第1部材10の先端側を装置内側に倒し、第1部材10の先端を仙骨の耳状面(図6(b)矢印P)に直接当接させる。これにより、左側の寛骨と仙骨との仙腸関節(図6(b)矢印Q)を生体内における骨盤の配置と同様の状態とすることができ、図6(a)に示すように、骨盤上口の形状(矢印R)を正しく把握することができる。なお、この場合において、寛骨が欠損している方の第2部材20は、図5の場合と同様に取り外して使用してもよい。
【0039】
このように、本実施の形態における骨盤観察用支持装置1によれば、左右の仙腸関節と恥骨結合とを生体内における骨盤の配置と同様の状態とすることができ、骨盤上口や恥骨下角の形状を正しく把握して、性別を正確に判定することができる。また、骨盤観察用支持装置1を用いることにより、死体検案ならびに法医解剖において使用者は両手が空いた状態で骨盤を観察することができるので、他人の手を煩わせることなく様々な角度から骨盤の写真を撮ることもでき、死体検案ならびに法医解剖における作業の幅を広げることができる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本実施の形態では、第1部材10と第1連結板50、第2部材20と第2連結板60とを締め付け固定したり緩めたりするために固定部材70を用いたが、より安価で製造される装置とする場合には蝶ネジであってもよい。しかしながら、操作の容易性を確保するためには、固定部材70を用いる方が望ましい。
【0041】
また、本実施の形態では、第1部材10および第2連結板はそれぞれ、第1連結板50および第2連結板60に対して、骨盤観察用支持装置1の前面側となる側に立設されているが、第1部材10および第2部材20の第1連結板50および第2連結板60に対する配置は、骨盤観察用支持装置1の後面側であっても、第1部材10と第2部材20とがそれぞれ前面側、後面側またはその逆の状態に配置されていてもよい。
【0042】
さらに、本実施の形態では、第1部材10および第2部材20はそれぞれ板状部材で形成されていたが、棒状や、部材の先端に骨盤を弾性支持する弾性部材を取り付けたものなど、寛骨や仙骨に当接して骨盤を両側から挟持できるものであれば、どのようなものであってもよい。しかしながら、寛骨や仙骨などの曲面や凹凸が多い骨においては、平面部分が少ないことから、寛骨や仙骨に対してできるだけ小さい面積で当接できるものである方がよいので、角部を寛骨や仙骨に当接させることができる板状部材を用いる方が望ましい。また、板状部材を用いれば、第1部材10と第1連結板50とを面で接触させ、第2部材20と第2連結板60とを面で接触させることができるので、棒状部材を用いる場合と比較して、骨盤観察用支持装置1としての強度を持たせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、骨盤を生体内における配置と同様の配置とすることによって、骨盤上口や恥骨下角の形状を正しく把握することが可能な骨盤観察用支持装置として好適に用いることができる。また、本発明の骨盤観察用支持装置を用いることにより、骨盤の形状から性別を識別することができるので、死体検案ならびに法医解剖における個人識別方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施の形態における骨盤観察用支持装置の斜視図である。
【図2】図1の骨盤観察用支持装置の可動範囲を示す図であり、(a)は第1部材、(b)は第2部材の可動範囲を示す図である。
【図3】骨盤の前面を観察する様子を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は正面図、(d)は背面図、(e)は斜視図である。
【図4】骨盤の上面を観察する様子を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は正面図、(d)は背面図、(e)は斜視図である。
【図5】骨盤左側部欠損時の骨盤観察の様子を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図6】骨盤右側部欠損時の骨盤観察の様子を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 骨盤観察用支持装置
10 第1部材
20 第2部材
30 基台部
40 側板
50 第1連結板
60 第2連結板
11,21,51,61 長孔
70 固定部材
71 把持部
72 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨盤の形状を観察するため、前記骨盤を両側から挟持する挟持部を備えた骨盤観察用支持装置。
【請求項2】
前記挟持部は、第1部材と、当該第1部材よりも長さが短い第2部材とを有するものである請求項1記載の骨盤観察用支持装置。
【請求項3】
前記第1部材は、前記骨盤の前面を観察する際に寛骨の坐骨に当接し、前記骨盤の上面を観察する際に前記寛骨の腸骨に当接する部材であり、
前記第2部材は、前記骨盤の前面を観察する際に前記寛骨の腸骨に当接し、前記骨盤の上面を観察する際に前記寛骨の坐骨に当接する部材である請求項2記載の骨盤観察用支持装置。
【請求項4】
前記第1部材ならびに前記第2部材それぞれの鉛直方向に対する角度を調整する調整部を備えた請求項2または3に記載の骨盤観察用支持装置。
【請求項5】
前記調整部は、前記第1部材間の距離ならびに前記第2部材間の距離を調整するものである請求項4に記載の骨盤観察用支持装置。
【請求項6】
前記調整部は、前記第1部材ならびに前記第2部材それぞれの鉛直方向の高さを調整するものである請求項4または5に記載の骨盤観察用支持装置。
【請求項7】
前記第1部材および前記第2部材を立設する基台部を備え、
前記調整部は、把持部を備えた固定部材を有するとともに、当該固定部材は、前記把持部の回動により前記第1部材ならびに前記第2部材を前記基台部に締め付け固定したり緩めたりするものである請求項4から6のいずれかに記載の骨盤観察用支持装置。
【請求項8】
骨盤を両側から挟持する挟持部を備えた骨盤観察用支持装置の前記挟持部に骨盤を挟持させ、前記骨盤を生体内における配置と同様の配置とすることを特徴とする死体検案ならびに法医解剖における個人識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−325730(P2007−325730A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158903(P2006−158903)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【Fターム(参考)】