説明

骨誘導性骨材料

天然骨の化学組成に近い骨形成骨インプラント組成物を提供する。これらインプラント組成物の有機成分は無機成分の存在にもかかわらず骨誘導性であり、さらに、インプラントの再生能力をその成形性および機械的強度を損なうことなく最大化するのに十分な量で存在する。本組成物は、脱灰骨基質(DBM)粒子、リン酸カルシウム粉末、および任意で生体適合性凝集性剤を含む、骨誘導性粉末であることができる。本粉末は、生理的に許容される液体と混和されることにより、自己硬化してかなりの圧縮強度を有する低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムを形成する成形可能な骨誘導性ペーストを生じ得る。本骨インプラント材料は移植部位に導入された場合にその凝集性を保ち、インビボで骨に再構築される。損傷した骨を修復するためにこれらのインプラント材料を使用する方法および骨インプラント材料中のDBM粒子の含量を重量としてアッセイする方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明の分野は骨修復および骨置換である。より具体的には、本発明は、望ましい取扱特性および機械的性質を有する自己硬化性骨形成組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然に存在する骨は有機成分および無機成分の両方から構成されている。有機成分には、成長因子、軟骨、コラーゲンおよび他のタンパク質が含まれる。無機骨成分には、1.45〜1.75のCa/P比を有する非化学量論的低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムが含まれる(Besic et al.(1969)J. Dental Res. 48(1):131)。この無機骨塩は、インビボでは破骨細胞および骨芽細胞により、絶え間なく吸収および再生されている。
【0003】
骨の欠損および傷害が発生した場合、自然の再生過程を増強するために、しばしば骨インプラントが用いられる。これらのインプラントは生体適合性でなければならない。また、理想的な骨インプラントは骨形成促進性、すなわち骨伝導性かつ骨誘導性であり、移植に先だって外科医が容易に操作することができ、インプラントがインビボでその形状を維持するような強度および組成を有するべきである。
【0004】
その再生能力を考えると、天然骨は、潜在的インプラント材料である。しかし、付随する疾患伝達、免疫原性インプラント拒絶、患者の罹病、および複雑な外科手術が、自家骨、同種異系骨および異種骨の使用を困難にしている。そこで、合成骨インプラント材料が次第に注目を集めるようになっている。
【0005】
金属インプラント装置は、高い強度および安定性を有するので、使用され続けている。これらの利点にもかかわらず、金属装置は天然骨塩に吸収されることができず、その結果、いったん移植すると永久に異物であり続けるので、好まれない。
【0006】
金属インプラントの欠点を克服するために、天然骨にもっと近い組成物が開発された。有機骨誘導性材料はそのような組成物の望ましい成分である。よく使用される骨誘導性材料には、脱灰骨基質(DBM)および組換えヒト骨形態形成タンパク質(rh-BMP;例えば米国特許第6,030,635号、欧州特許出願第0 419 275号、PCT/US00/03024、PCT/US99/01677、およびPCT/US98/04904を参照されたい)が含まれる。これらの有機骨誘導性材料は、典型的には、液状またはゼラチン状の担体と組み合わせて移植部位に送達される(例えば米国特許第6,030,635号、米国特許第5,290,558号、米国特許第5,073,373号、およびPCT/US98/04904を参照されたい)。理想的な骨インプラントは、その再生能力が最大になるように、十分な量のこれら骨誘導性材料を含む。
【0007】
これらの有機骨誘導性材料は、合成骨組成物を形成させるために、過去にヒドロキシアパタイトおよび/またはリン酸三カルシウムと混和されている。これらの合成骨インプラントの有用性は、ヒドロキシアパタイトおよび/またはリン酸三カルシウムが有機成分の骨誘導性を阻害する傾向を有することによって相殺される(例えば、Redondo,L.M. et al.(1995)Int. J. Oral Maxillofac. Surg. 24(6):445-448、Lindholm,T.C. et al.(1993)Ann. Chir. Gynaecol. Suppl. 207:91-98、Alper,G. et al.(1989)Am. J. Med. Sci. 298(6):371-376を参照されたい)。さらに最近になって、有機骨誘導性材料は吸収性リン酸カルシウム組成物、例えば非晶質リン酸カルシウムおよび低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムを含むものと混和された(例えば米国特許第6,027,742号、PCT/US00/20630、およびPCT/US00/03024を参照されたい)。しかし、これらのインプラントの機械的強度は、組み込まれる骨誘導性成分(例えばDBM)の量が増えるにつれて低下する。さらに、望ましい量の骨誘導性材料を含有するインプラントは、操作が困難になり、インビボでその凝集性および形状を失う傾向がある。したがって、リン酸カルシウム成分およびDBM粒子を含有し高い圧縮強度を有する改良された骨インプラント材料が必要とされている。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
天然骨の化学組成に近い骨形成骨インプラント組成物を提供する。これらインプラント組成物の有機成分は、無機成分が存在するにもかかわらず骨誘導性であり、しかも、インプラントの成形性および機械的強度を損なうことなく、インプラントの再生能力を最大化するのに十分な量で存在する。
【0009】
ある局面では、本組成物は、脱灰骨基質(DBM)粒子、リン酸カルシウム粉末、および任意で生体適合性凝集性剤(例えば結合剤)を含む骨誘導性粉末である。DBM粒子は様々なサイズおよび形状をとり得る。好ましい一態様では、リン酸カルシウム粉末が非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源を含む。一部の態様では、非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源が、100nm未満の平均結晶領域サイズを有する。そのような結晶領域サイズは、例えば高エネルギー粉砕工程などによって得ることができる。一部の態様では、第2のリン酸カルシウム源が酸性リン酸カルシウムである。別の態様では、骨形成粉末が、生理学的に許容される液体で水和させると、自己硬化して低結晶性アパタイト型リン酸カルシウムを形成する。さらに別の態様では、低結晶性アパタイト型リン酸カルシウムが1.67未満のCa/P比を有する。特に好ましい骨形成粉末は、脱灰骨基質(DBM)粒子、リン酸カルシウム粉末の組合せ、および任意で生体適合性凝集性剤(例えば結合剤)を含み、前記リン酸カルシウム粉末の組合せが反応して、総Ca/P比が1.0〜1.67、好ましくは1.3〜1.65、より好ましくは1.4〜1.6の範囲、そして最も好ましくは天然に存在する骨に近い範囲、すなわち1.45〜1.67の範囲にある、アパタイト型リン酸カルシウムを形成する。
【0010】
もう一つの局面では、本組成物は、上述の骨伝導性粉末および生理学的に許容される液体を含む成形可能な自己硬化性低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムペーストである。このペーストは、インビボで移植部位に適用された場合に、凝集性である。少なくとも一部の態様では、このペーストは硬化して、かなりの強度を有する低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムを形成する。本組成物は、損傷した骨を修復するために、ペーストの形で、または硬化したPCAリン酸カルシウムとして、インビボに移植することができる。別の態様では、上記成形可能な自己硬化性骨誘導性ペーストが硬化して低結晶性アパタイト型リン酸カルシウムを形成する。さらに別の態様では、低結晶性アパタイト型リン酸カルシウムが1.67未満のCa/P比を有する。特に好ましい態様では、上記成形可能な自己硬化性骨誘導性ペーストが硬化して、総Ca/P比が1.0〜1.67、好ましくは1.3〜1.65、より好ましくは1.4〜1.6の範囲、そして最も好ましくは天然に存在する骨に近い範囲、すなわち1.45〜1.67の範囲にあるアパタイト型リン酸カルシウムを形成する。好ましい態様では、低結晶性アパタイト型リン酸カルシウムが約1.5以下のCa/P比を有する。
【0011】
好ましい態様では、成形可能な自己硬化性PCAリン酸カルシウムペーストが、さらに凝集性剤を含む。好ましい凝集性剤には、多糖類、核酸、糖質、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物-コ-イミド)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(α-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリプロピレンフマレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、炭素繊維、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、およびそれらのコポリマーから選択されるポリマーが含まれる。好ましい凝集性剤には、アルギン酸、アラビアゴム、グアーゴム、キサンタンゴム、ゼラチン、キチン、キトサン、キトサン酢酸、キトサン乳酸、コンドロイチン硫酸、N,O-カルボキシメチルキトサン、デキストラン(例えばα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、またはデキストラン硫酸ナトリウム)、フィブリン糊、グリセロール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セルロース(例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロース)、グルコサミン、プロテオグリカン、デンプン(例えばヒドロキシエチルデンプンまたは可溶性デンプン)、乳酸、プルロニック、グリセロリン酸ナトリウム、コラーゲン、グリコーゲン、ケラチン、絹、およびそれらの混合物も含まれる。
【0012】
一部の態様によれば、本組成物はさらに生物活性剤を含む。本明細書に記載する組成物および方法に使用することができる生物活性剤には、抗体、抗生物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質(例えば骨形成タンパク質)、抗癌剤、成長因子、およびワクチンが含まれるが、これらに限定されるわけではない。骨形成タンパク質には、BMP-2、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-10、BMP-12、BMP-13、およびBMP-14が含まれるが、これらに限定されるわけではない。抗癌剤には、アルキル化剤、白金剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍性抗生物質、抗有糸分裂剤、アロマターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNAアンタゴニスト、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ポンプ阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、リボヌクレオシドレダクターゼ阻害剤、TNFαアゴニスト、TNFαアンタゴニスト、エンドセリンA受容体アンタゴニスト、レチノイン酸受容体アゴニスト、免疫調節薬、ホルモン剤、抗ホルモン剤、光線力学剤(photodynamic agent)、およびチロシンキナーゼ阻害剤が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0013】
本組成物は、任意で、発泡剤を含んでもよい。例示的発泡剤は、重炭酸ナトリウム、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、酸素、およびアルゴンである。本組成物は、例えば約1〜約40重量パーセントの発泡剤を含み得る。
【0014】
さらにもう一つの局面では、DBMおよびリン酸カルシウム粉末を含む混合物中のDBM量を重量としてアッセイする方法を提供する。
【0015】
本発明者らは、53〜125μmの小サイズDBM粒子(すなわち微粉)および全域DBM粒子(例えば125〜850μmのもの)が、担体なしで移植した場合に、かなりの骨誘導を示すことに気付いた。また本発明者らは、異所(無胸腺ラット)モデルで試験したDBM微粉が全域DBM粒子よりも多くの骨形成を誘導すること、そしてヒツジ椎体間固定モデルで担体なしで試験したDBM微粉が100%の固定率を示すことに気付いた。商業的DBM供給者および組織バンクは、125〜180μm領域のDBMを骨移植片増量剤または整形外科用代替品として供給している。53〜125μm領域のDBMは整形外科用途には使用されていない。本発明者らは、53〜125μm DBMの使用が、整形外科用途へのDBMの新規な利用法であると考える。
【0016】
本明細書で使用される用語「約」は、記載した値の±10%を意味する。
【0017】
本明細書で使用され、リン酸カルシウムに適用される用語「非晶質」は、結晶秩序を持たないか、短距離結晶秩序(すなわち100nm未満にわたる結晶秩序)しか持たないリン酸カルシウムを意味する。
【0018】
本明細書で使用され、DBM粒子に適用される用語「アスペクト比」は、粒子の最大直径と粒子の最小直径の比を意味する。
【0019】
本明細書で使用される「生体適合性」物質は、その受容者において無毒性であり、望ましくない生理学的応答、例えば免疫応答を惹起しない物質である。
【0020】
本明細書で使用され組成物に適用される用語「凝集性」は、生体適合性液体と混合された時に、質量を失うことなくその形状を維持するという組成物の能力を意味する。組成物は、水性環境下で少なくとも10分間にわたって初期質量および初期体積の90%を超える量が、その初期形状寸法内に保たれるのであれば、凝集性であるとみなされる。
【0021】
本明細書で使用される「凝集性剤」は、本発明のリン酸カルシウム組成物に包含させた場合に、そのリン酸カルシウム組成物の凝集性維持能力を改善する添加剤を意味する。好ましい凝集性剤には、多糖類、核酸、糖質、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物-コ-イミド)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(α-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリプロピレンフマレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、炭素繊維、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、およびそれらのコポリマーから選択されるポリマーが含まれる。好ましい凝集性剤には、アルギン酸、アラビアゴム、グアーゴム、キサンタンゴム、ゼラチン、キチン、キトサン、キトサン酢酸、キトサン乳酸、コンドロイチン硫酸、N,O-カルボキシメチルキトサン、デキストラン(例えばα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、またはデキストラン硫酸ナトリウム)、フィブリン糊、グリセロール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セルロース(例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロース)、グルコサミン、プロテオグリカン、デンプン(例えばヒドロキシエチルデンプンまたは可溶性デンプン)、乳酸、プルロニック、グリセロリン酸ナトリウム、コラーゲン、グリコーゲン、ケラチン、絹、およびそれらの混合物も含まれる。
【0022】
本明細書で使用される「低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウム」は、天然に存在する骨に見いだされる程度の小さい結晶領域を有し、ブロードで不明瞭なX線回折パターンおよび1.67未満のCa/P比を特徴とする、合成リン酸カルシウム材料を意味する。PCAリン酸カルシウムは、それがアパタイト型鉱物に特有のX線回折パターン(すなわち、20〜35°の範囲に2本のブロードなピークがあり、1本は26°を中心とし、もう1本は32°を中心とする)を示すのであれば、必ずしも単一のリン酸カルシウム相に限定されない。
【0023】
添付の図面を参照して本発明を説明するが、図面は例示のために記載するのであって、本発明の限定を意図するものではない。
【0024】
発明の詳細な説明
天然骨の化学組成に匹敵する化学組成を有し、インビボで移植部位に導入された時に凝集性を保つ、成形可能な自己硬化性骨形成骨インプラント材料を提供する。これらの骨インプラントは、その化学組成にもかかわらず、高度に骨誘導性である。しかも、硬化すると、これらのインプラント材料はかなりの圧縮強度を示す。
【0025】
本骨インプラント材料は脱灰骨基質(DBM)粒子を含む。DBM粒子は、非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源を含むリン酸カルシウム粉末と混合されて、骨誘導性粉末を形成する。骨誘導性粉末はさらに生体適合性凝集性剤(例えば結合剤)を含み得る。生理学的に許容される液体と混和すると、骨誘導性粉末は、硬化し反応して低結晶性アパタイト型リン酸カルシウムを形成する成形可能なペーストを生じる。好ましくは、低結晶性アパタイト型リン酸カルシウムは、1.67未満のCa/P比を有する。例えば低結晶性アパタイト型リン酸カルシウムは、望ましくは、1.0〜1.67、好ましくは1.3〜1.65、より好ましくは1.4〜1.6の範囲、そして最も好ましくは1.45〜1.67の(すなわち天然に存在する骨の総Ca/P比に近い)範囲にある総Ca/P比を有する。好ましくは、低結晶性アパタイト型リン酸カルシウムは約1.5のCa/P比を有する。このPCAリン酸カルシウムは、インビボで骨に再構築される。リン酸カルシウム粉末の性質および/または生体適合性凝集性剤の存在により、骨インプラント材料中に、その成形性または機械的強度を損なわずに、十分な量のDBM粒子を含めることが可能になる。したがって、本インプラント材料は、インビボで移植部位に移植された後もその凝集性を保ち、硬化するとかなりの圧縮強度を示す。注目すべきことに、少なくとも一部の態様では、本インプラント材料は、無機リン酸カルシウム源が存在するにもかかわらず、高度に骨誘導性である。
【0026】
DBMは、酸処理によって脱灰された長骨チップから通常得られる有機骨誘導性材料である。酸処理は、骨中の無機鉱物成分および酸可溶性タンパク質を溶解して、コラーゲン基質ならびに酸不溶性タンパク質および成長因子を残す(例えばGlowacki et al.(1985)Clin. Plast. Surg. 12(2):233-241、Covey et al.(1989)Orthop. Rev. 17(8):857-863を参照されたい)。残存する酸不溶性タンパク質および成長因子には、骨形態形成タンパク質(BMP)およびトランスフォーミング成長因子(TGF)などの骨誘導性因子が含まれる。したがって、DBMは骨誘導性であり、完全に可吸収性であり、本明細書に記載するリン酸カルシウム粉末と組み合わせて使用すると、天然骨の化学組成を綿密に模倣しているので、高い生体適合性を有する骨インプラント材料になる。有利なことに、DBMは、他の多くの利用可能な有機骨組成物添加剤(例えば単離されたBMP)よりも安価である。
【0027】
骨インプラント材料に使用されるDBMは、好ましくは、自家または同種異系供給源に由来する。上述したようにDBMは、当業者には周知の工程である長骨チップの酸処理によって得ることができる。または、市販のDBM(例えばAllosource、American Red Cross、Musculoskeletal Transplant Foundation、Regeneration Technologies,Inc.、およびOsteotech,Inc.から入手できるDBM)を使用することもできる。
【0028】
少なくとも一部の態様では、骨インプラント材料中のDBMは、粉末成分の約10〜約70重量パーセントの量で存在する。特定の態様では、DBMが、粉末成分の約60重量パーセントに相当する量で存在する。別の態様では、DBMが、粉末成分の約1〜約50重量パーセントの量で存在する。さらに別の態様では、DBMが、粉末成分の約20重量パーセント以下の量で存在する。好ましくは、DBMは、粉末成分の約15重量パーセント以下の量で存在する。
【0029】
与えられた組成物中のDBMの量は、生体適合性凝集性剤の有無ならびに骨インプラント材料の使用目的および所望する特性に応じて変動すると考えられる。特定の態様では、凝集性剤が、粉末成分の約0.5〜約20重量パーセントの量で、骨形成粉末中に存在する。好ましい態様では、凝集性剤が約5重量パーセント以下の量で存在する。
【0030】
当業者は、特定の用途に要求されるDBM、リン酸カルシウム、および凝集性剤の量を決定することができると考えられる。例えば、好ましい骨形成粉末組成物は、約15重量パーセントのDBM、および約85重量パーセントのリン酸カルシウム粉末を含む。もう一つの骨形成粉末は、約50重量パーセントのDBM、約45重量パーセントのリン酸カルシウム粉末、および約5重量%の生体適合性凝集性剤を含む。
【0031】
DBM粒子は様々なサイズおよび物理的形態をとり得る。DBM量の場合と同様に、DBM粒子のサイズおよび形態も、骨インプラント材料の使用目的に応じて変動すると考えられる。一部の態様では、DBM粒子が約35μm〜約850μmの最大直径を有し、さらに約5未満のアスペクト比を有し得る。別の態様では、DBM粒子が繊維性である。一部の態様では、これらのDBM繊維が、約50μm〜約3mmの長さを有する。別の態様では、これらのDBM繊維が、約250μm〜約2mmの長さを有する。一部の態様では、これらのDBM繊維のアスペクト比が4より大きい。別の態様では、これらDBM繊維のアスペクト比が10より大きい。DBM繊維は、5未満の平均幅対平均厚比を有する針状であってもよい。様々なサイズを有するDBM粒子の製造方法は当業者には周知であって、例えば「Cohesive Demineralized Bone Compositions」と題する同時係属中の米国特許出願第10/298,112号(2002年11月15日出願)に開示されており、この特許出願は参照により本明細書に組み入れられる。注目すべきことに、長骨チップまたは長骨削り屑から得られる針状繊維性DBMは、粉砕した骨から得られるDBMと比較して、本発明の骨インプラント組成物に組み込んだ場合に、凝集性の増加をもたらす。
【0032】
リン酸カルシウムを基にした骨インプラント材料へのDBMの組込みは、DBMを組み込んだインプラント材料の機械的強度をDBMが低下させる傾向を有するために、これまで制限されてきた。したがって、その骨誘導能力を最大にするのに必要な量のDBMを含有するインプラント材料は、操作が難しく、成形性に乏しく、インビボに移植するとその凝集性および形状を失う。硬化したリン酸カルシウム生成物もはるかに弱い。そのうえ、リン酸カルシウムなどの無機骨伝導性成分を含有する骨インプラント材料にDBMを有効利用することは、無機成分がDBMの骨誘導性を阻害するので、これまで成功していなかった。
【0033】
本明細書に記載する骨インプラント材料は、これら公知の欠点を、いくつかの方法で克服する。一部の態様によれば、本骨インプラント材料は、インプラントの機械的強度を増加させる特徴を有するリン酸カルシウム粉末を含む。このリン酸カルシウム粉末は、非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウムを含む。非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウムはどちらも約100nm未満の平均結晶領域サイズを有する。このリン酸カルシウム粉末は、生理学的に許容される液体と混和して自己硬化性ペーストを形成させた場合は特に、十分な量のDBMを含有するインプラント材料に、成形性および凝集性をもたらす。その上、このリン酸カルシウム粉末はDBMの骨誘導性を阻害せず、実際には、本明細書に開示するインプラント材料の一定の製剤は、DBM単独よりも優れた骨誘導性を示す。これらの利点は、主として、リン酸カルシウム粉末の製造に用いるリン酸カルシウム源の結晶度、粒径、および反応性に帰することができる。本明細書で論じるDBM粒子の適切な量、サイズ、および形状の選択も、これらの有利な特性に寄与する。
【0034】
上述のように、本リン酸カルシウム粉末は、非晶質リン酸カルシウム、および第2のリン酸カルシウム源を含む。非晶質リン酸カルシウムはブロードで不明瞭なX線回折パターンを有し、オングストローム規模で測定すると均一であり、カルシウムおよびリン酸イオン源を含有する溶液から急速沈降によって形成されるゲル様材料である。急速沈降はリン酸カルシウム核内に非常に多くの欠陥を生じる。生理的条件下では、非晶質リン酸カルシウムは、高い溶解度、高い形成速度、およびPCAリン酸カルシウムへの高い変換率を有する。
【0035】
非晶質リン酸カルシウムは約1.1〜約1.9の範囲にあるCa/Pモル比を有する。本発明の少なくとも一部の態様では、非晶質リン酸カルシウムが1.5未満のCa/Pモル比を有する。特定の態様では、Ca/Pモル比が約1.35〜約1.49である。非晶質リン酸カルシウムのCa/Pモル比は、カルシウムおよびリン酸イオン含有溶液への追加イオンの導入によって、変更することができる。そのような追加イオンの例には、CO32-、Mg2+、P2O74-、硝酸イオン、亜硝酸イオン、または酢酸イオンなどがあるが、これらに限定されるわけではない。非晶質リン酸カルシウムの製造および特性解析は、米国特許第5,650,176号および第6,214,368号に詳述されており、これらの特許は参照により本明細書に組み入れられる。
【0036】
少なくとも一部の態様では、非晶質リン酸カルシウムが粉末成分の約20重量%以上の量で存在する。特定の態様では、非晶質リン酸カルシウムが粉末成分の約30重量%以上の量で存在する。
【0037】
リン酸カルシウム粉末には第2のリン酸カルシウム源が含まれる。第2のリン酸カルシウム源は結晶性でも非晶質でもよい。本発明での使用に適した第2のリン酸カルシウム源には、非晶質リン酸カルシウムと反応させるとアパタイト型リン酸カルシウムを生じるような化学量論を有する酸性および中性リン酸カルシウムが含まれる。好適な酸性リン酸カルシウムの例には、メタリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸七カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸カルシウム二水和物、低結晶性ヒドロキシアパタイト、ピロリン酸カルシウム、およびリン酸八カルシウムなどがあるが、これらに限定されるわけではない。特定の態様では、第2のリン酸カルシウム源がリン酸二カルシウム二水和物(DCPD)である。
【0038】
非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源は、それらが所望の総Ca/Pモル比を有するリン酸カルシウム粉末を生じるように選択されるべきである。したがって非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源は、1:10〜10:1もしくは1:5〜5:1の範囲、または約1:1の比率で使用される。少なくとも一部の態様では、所望のリン酸カルシウム生成物が低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムである。非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源からPCAリン酸カルシウムを形成させる反応は実質的に完全に進行するので、非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源のCa/Pモル比は、生成物のCa/Pモル比に相当すべきである。PCAリン酸カルシウムは約1.1〜約1.9のCa/Pモル比を有する。したがって、本発明の少なくとも一部の態様によれば、非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源は、約1.1〜約1.9のCa/Pモル比を有するべきである。一部の態様では、非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源のCa/Pモル比が約1.1〜約1.7の範囲にある。好ましくは、非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源は、それらを混和した場合に、1.67未満のCa/Pモル比を有する低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムを形成する。好ましい低結晶性アパタイト型リン酸カルシウム組成物は、米国特許第6,027,742号、米国特許第6,214,368号、米国特許第6,287,341号、米国特許第6,331,312号、および米国特許第6,541,037号に記載されており、これらの特許は全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0039】
低温高機械強度リン酸カルシウム組成物は、DBM粒子および任意で凝集性剤と組み合わせて、本発明のインプラント材料を製造するために使用することができる。そのような低温高機械強度リン酸カルシウム組成物は、例えば米国特許第5,783,217号に記載されており、この特許は参考により本明細書に組み入れられる。
【0040】
非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源を混合して、高エネルギー混合工程、例えば高エネルギー粉砕を使って、リン酸カルシウム粉末を形成させることもできる。そのような高エネルギー粉砕工程は、リン酸カルシウム源粒子の結晶度指数を低下させるので、「非晶質化」工程と呼ばれる。非晶質化中に、リン酸カルシウム源粒子は互いに多数の衝突を起こし、これらの衝突が粒子を破壊して、高い比表面積を有するはるかに小さな粒子にする。非晶質化中に起こる衝突と、それに対応するリン酸カルシウム源粒子へのエネルギー移動は、それらの構造および/または組成にも変化を引き起こし得る。結果として得られるリン酸カルシウム源粒子は、その小さい粒径ゆえに、密に充填されており、それによって本発明の骨インプラント材料の成形性および凝集性を改善する。さらに、結果として得られるリン酸カルシウム源粒子は、インビボでより効率よく反応して、硬化PCAリン酸カルシウムを形成する。
【0041】
高エネルギーボール粉砕では、非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源を容器に入れ、シャフトまたはアームの回転によって撹拌したボールをランダムに移動させることによって、それらを粉砕する。Attritor Model 01HD、Fritch Pulverisette 4、ASI Uni-Ball Mill II、およびZoz Simoloyer(登録商標)などの商標で販売されているような微粉砕機を使用することができる。高エネルギー粉砕は、非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源を破壊して、約50m2/g〜約150m2/gの比表面積を有する約100ナノメートル(nm)未満程度のナノ構造粒子にする。このナノ構造粒子は均等に混合され、長距離結晶秩序を持たない高密度均一生成物粉末を形成する。高エネルギーボール粉砕を含む高エネルギー粉砕工程と、それらがリン酸カルシウム源に及ぼす効果は、「Synthesis of Calcium Phosphates by Mechano-Chemical Process」と題する同時係属中の米国特許出願第10/222,670号(2002年8月16日出願)に詳述されている。
【0042】
少なくとも一部の態様では、非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源を、約24時間以下の時間にわたって微粉砕する。一部の態様では、非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源を、約15時間にわたって微粉砕する。別の態様では、非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源を、約3時間にわたって微粉砕する。高エネルギー粉砕時間が増加するにつれて、非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源の非晶質化が進み、それらのX線回折パターンは、よりブロードに、より散漫になる(図1)。
【0043】
次に、DBMおよびリン酸カルシウム粉末を混和する。DBM粒子とリン酸カルシウム粉末との完全かつ永続的な配合をもたらす任意の混合方法を使用することができる。そのような方法は当業者には公知であると考えられる。例えば、DBM粒子およびリン酸カルシウム粉末は、ターブラー(Turbula)ミキサーを使って混和することができる。
【0044】
リン酸カルシウム粉末は、インプラント材料の使用目的および所望する特性に応じて、様々な量で存在すると考えられる。一部の態様では、リン酸カルシウム粉末が、粉末成分の約20〜約90重量パーセントの量で存在すると考えられる。別の態様では、リン酸カルシウム粉末が、粉末成分の約50〜約99重量パーセントの量で存在すると考えられる。さらに別の態様では、リン酸カルシウム粉末が、粉末成分の約30重量パーセントの量で存在すると考えられる。好ましい態様では、リン酸カルシウムが約85重量パーセントの量で存在し、DBMが約15重量パーセントの量で存在する。
【0045】
一部の態様によれば、骨インプラント材料はさらに生体適合性凝集性剤(例えば結合剤)を含む。場合によっては、骨インプラント材料のDBM含量があまりに高いので、高エネルギー粉砕処理したリン酸カルシウム粉末によって成形性および凝集性が与えられるとはいえ、移植中の骨インプラント材料の機械的強度を増強するために、凝集性剤が望ましいこともある。さらに、凝集性剤を含めることにより、インプラント材料の機械的強度を有意に低下させずに、上述したリン酸カルシウム粉末以外のリン酸カルシウム粉末を使用することが可能になる。これらの代替リン酸カルシウム粉末は、高エネルギー粉砕工程に供する必要がない。したがって、例えば一部の態様では、高エネルギー粉砕処理されていない非晶質リン酸カルシウムおよび酸性第2リン酸カルシウム源を含むリン酸カルシウム粉末を使用することができる。そのような材料は例えば米国特許第6,214,368号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0046】
好適な生体適合性凝集性剤の例には、多糖類、核酸、糖質、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物-コ-イミド)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(α-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリプロピレンフマレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、炭素繊維、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、およびそれらのコポリマーから選択されるポリマーがあるが、これらに限定されるわけではない。好ましい凝集性剤には、アルギン酸、アラビアゴム、グアーゴム、キサンタンゴム、ゼラチン、キチン、キトサン、キトサン酢酸、キトサン乳酸、コンドロイチン硫酸、N,O-カルボキシメチルキトサン、デキストラン(例えばα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、またはデキストラン硫酸ナトリウム)、フィブリン糊、グリセロール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セルロース(例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロース)、グルコサミン、プロテオグリカン、デンプン(例えばヒドロキシエチルデンプンまたは可溶性デンプン)、乳酸、プルロニック、グリセロリン酸ナトリウム、コラーゲン、グリコーゲン、ケラチン、絹、およびそれらの混合物も含まれる。一部の態様では、生体適合性凝集性剤が水溶性である。水溶性凝集性剤は、インビボで、インプラント材料の移植後、短時間でそのインプラント材料から溶解し、その結果として、骨インプラント材料にマクロ多孔性を導入する。このマクロ多孔性は、移植部位における破骨細胞および骨芽細胞の接近を増進し、結果として、その再構築活性を増進することにより、骨インプラント材料の骨伝導性を増加させる。
【0047】
生体適合性凝集性剤は、骨インプラント材料に様々な量で、そして粉末成分の製造中の様々な段階で、添加することができる。生体適合性凝集性剤を含める場合、それは粉末成分の20重量パーセント以下の量で存在する。特定の態様では、生体適合性凝集性剤が、粉末成分の約10重量パーセントの量で存在する。好ましい態様では、インプラント材料が、約50重量パーセントの量のDBM、約45重量%の量のリン酸カルシウム成分、および約5重量パーセントの量の凝集性剤を含む。生体適合性凝集性剤は、高エネルギー粉砕の前または後にリン酸カルシウム源に添加することができる。生体適合性凝集性剤はDBM粒子に溶液として添加することができ、例えば凝集性剤でDBM粒子を覆うことができる。生体適合性凝集性剤は、DBM粒子およびリン酸カルシウム粉末を含む骨誘導性粉末に添加することができる。当業者は、与えられた用途に必要な凝集性剤の量および包含方法を決定することができると考えられる。
【0048】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、生物活性剤も含むことができる。一般に唯一の要件は、生産中にその物質がペースト内で活性なままであるか、後に活性化もしくは再活性化できること、またはその生物活性剤が自己硬化性ペーストのホストへの移植時に、もしくは水性環境中37℃で賦形剤が硬化した後に、添加されることである。
【0049】
本発明の組成物に組み込むことができる生物活性剤には、有機分子、無機材料、タンパク質、ペプチド、核酸(例えば遺伝子、遺伝子断片、遺伝子調節配列、およびアンチセンス分子)、核タンパク質、多糖類、糖タンパク質、およびリポタンパク質が含まれるが、これらに限定されるわけではない。本発明の組成物に組み込むことができる生物活性化合物のクラスには、抗癌剤、抗生物質、鎮痛薬、抗炎症剤、免疫抑制薬、酵素阻害剤、抗ヒスタミン薬、抗痙攣薬、ホルモン、筋弛緩薬、鎮痙薬、眼科剤(ophthalmic agent)、プロスタグランジン類、抗うつ薬、抗精神病物質、栄養因子、骨誘導性タンパク質、成長因子、およびワクチンが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0050】
抗癌剤には、アルキル化剤、白金剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍性抗生物質、抗有糸分裂剤、アロマターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNAアンタゴニスト、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ポンプ阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、リボヌクレオシドレダクターゼ阻害剤、TNFαアゴニスト/アンタゴニスト、エンドセリンA受容体アンタゴニスト、レチノイン酸受容体アゴニスト、免疫調節薬、ホルモン剤および抗ホルモン剤、光線力学剤、およびチロシンキナーゼ阻害剤が含まれる。
【0051】
表1に列挙する生物活性剤はどれでも使用することができる。
【0052】
(表1)




【0053】
抗生物質には、アミノグリコシド類(例えばゲンタマイシン、トブラマイシン、ネチルミシン、ストレプトマイシン、アミカシン、ネオマイシン)、バシトラシン、コルバペネム(corbapenem)類(例えばイミペネム/シスラスタチン(cislastatin))、セファロスポリン類、コリスチン、メセナミン、モノバクタム類(例えばアズトレオナム)、ペニシリン類(例えばペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、ナトシリン(natcillin)、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、アンピシリン、アモキシシリン、カルベニシリン、チカルシリン、ピペラシリン、メズロシリン、アズロシリン)、ポリミキシンB、キノロン類、およびバンコマイシン、ならびに静菌剤、例えばクロラムフェニコール、クリンダニアン(clindanyan)、マクロライド類(例えばエリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン)、リンコミアン(lincomyan)、ニトロフラントイン、スルホンアミド類、テトラサイクリン類(例えばテトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、デメクロシリン)、およびトリメトプリムが含まれる。メトロニダゾール、フルオロキノロン類、およびリタンピン(ritampin)も含まれる。
【0054】
酵素阻害剤は、酵素反応を阻害する物質である。酵素阻害剤の例には、塩化エドロホニウム、N-メチルフィソスチグミン、臭化ネオスチグミン、硫酸フィソスチグミン、タクリン、タクリン、1-ヒドロキシマレエート、ヨードツベルシジン、p-ブロモテトラミソール、10-(α-ジエチルアミノプロピオニル)-フェノチアジン塩酸塩、塩化カルミダゾリウム、ヘミコリニウム-3,3,5-ジニトロカテコール、ジアシルグリセロールキナーゼインヒビターI、ジアシルグリセロールキナーゼインヒビターII、3-フェニルプロパルギルアミン、酢酸N6-モノメチル-L-アルギニン、カルビドパ、3-ヒドロキシベンジルヒドラジン、ヒドララジン、クロルギリン、デプレニル、ヒドロキシルアミン、リン酸イプロニアジド、6-MeO-テトラヒドロ-9H-ピリド-インドール、ニアラミド、パージリン、キナクリン、セミカルバジド、トラニルシプロミン、N,N-ジエチルアミノエチル-2,2-ジフェニルバレレート塩酸塩、3-イソブチル-1-メチルキサンチン、パパベリン、インドメタシン、2-シクロオクチル-2-ヒドロキシエチルアミン塩酸塩、2,3-ジクロロ-a-メチルベンジルアミン(DCMB)、8,9-ジクロロ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-2-ベンズアゼピン塩酸塩、p-アミノグルテチミド、酒石酸p-アミノグルテチミド、3-ヨードチロシン、α-メチルチロシン、アセタゾラミド、ジクロルフェナミド、6-ヒドロキシ-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド、およびアロプリノールが含まれる。
【0055】
抗ヒスタミン薬には、例えばピリラミン、クロルフェニラミン、およびテトラヒドラゾリンなどが含まれる。
【0056】
抗炎症剤には、コルチコステロイド類、非ステロイド抗炎症薬(例えばアスピリン、フェニルブタゾン、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イブプロフェン、ピロキシカム、およびフェナメート類)、アセトアミノフェン、フェナセチン、金塩、クロロキン、D-ペニシラミン、メトトレキセート コルヒチン、アロプリノール、プロベネシド、およびスルフィンピラゾンが含まれる。
【0057】
筋弛緩薬には、メフェネシン、メトカルボマル(methocarbomal)、塩酸シクロベンザプリン、塩酸トリヘキシルフェニジル(trihexylphenidyl)、レボドパ/カルビドパ、およびビペリデンが含まれる。
【0058】
鎮痙薬には、アトロピン、スコポラミン、オキシフェノニウム、およびパパベリンが含まれる。
【0059】
鎮痛薬には、アスピリン、フェニルブタゾン、インドメタシン、スリンダク、トルメチク(tolmetic)、イブプロフェン、ピロキシカム、フェナメート類、アセトアミノフェン、フェナセチン、硫酸モルヒネ、硫酸コデイン、メペリジン、ナロルフィン、オピオイド類(例えば硫酸コデイン、クエン酸フェンタニル、重酒石酸ヒドロコドン、ロペラミド、硫酸モルヒネ、ノスカピン、ノルコデイン、ノルモルヒネ、テバイン、ノルビナルトルフィミン、ブプレノルフィン、クロルナルトレキサミン(chlornaltrexamine)、フナルトレキサミオン(funaltrexamione)、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロキソン、ナロキソナジン、ナルトレキソン、およびナルトリンドール)、プロカイン、リドカイン、テトラカインおよびジブカインが含まれる。
【0060】
眼科剤には、フルオレセインナトリウム、ローズベンガル、メタコリン、アドレナリン、コカイン、アトロピン、α-キモトリプシン、ヒアルロニダーゼ、ベタキサロール(betaxalol)、ピロカルピン、チモロール、チモロール塩、およびそれらの組合せが含まれる。
【0061】
プロスタグランジン類は当技術分野では認識されており、様々な生物作用を有する天然に存在する化学的に関連した長鎖ヒドロキシ脂肪酸群である。
【0062】
抗うつ薬は、うつ病を予防または緩和する能力を有する物質である。抗うつ薬の例には、イミプラミン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、デシプラミン、アモキサピン、ドキセピン、マプロチリン、トラニルシプロミン、フェネルジン、およびイソカルボキサジドが含まれる。
【0063】
栄養因子は、その持続的存在が細胞の生存能力または寿命を改善するような因子である。栄養因子には、血小板由来成長因子(PDGP)、好中球活性化タンパク質、単球化学誘引タンパク質、マクロファージ炎症タンパク質、血小板因子、血小板塩基性タンパク質、およびメラノーマ成長刺激活性;表皮成長因子、トランスフォーミング成長因子(α)、線維芽細胞成長因子、血小板由来内皮細胞成長因子、インスリン様成長因子、グリア由来成長神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、神経成長因子、骨成長/軟骨誘導因子(αおよびβ)、骨形態形成タンパク質、インターロイキン(例えばインターロイキン阻害剤またはインターロイキン受容体、インターロイキン1からインターロイキン10を含む)、インターフェロン(例えばインターフェロン・アルファ、ベータおよびガンマ)、造血因子(例えばエリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む)、腫瘍壊死因子、トランスフォーミング成長因子(β)(ベータ1、ベータ2、ベータ3、インヒビン、およびアクチビンを含む)、ならびにOP-1、BMP-2およびBMP-7などの骨形態形成タンパク質が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0064】
ホルモンには、エストロゲン(例えばエストラジオール、エストロン、エストリオール、ジエチルスチベストロール(diethylstibestrol)、キネストロール、クロロトリアニセン、エチニルエストラジオール、メストラノール)、抗エストロゲン(例えばクロミフェン、タモキシフェン)、プロゲスチン(例えばメドロキシプロゲステロン、ノルエチンドロン、ヒドロキシプロゲステロン、ノルゲストレル)、抗黄体ホルモン(ミフェプリストン)、アンドロゲン類(例えばテストステロンシピオネート、フルオキシメステロン、ダナゾール、テストラクトン)、抗アンドロゲン(例えば酢酸シプロテロン、フルタミド)、甲状腺ホルモン(例えばトリヨードチロン(triiodothyronne)、チロキシン、プロピルチオウラシル、メチマゾール、およびヨージキソード(iodixode))、および下垂体ホルモン(例えばコルチコトロピン、スムトトロピン(sumutotropin)、オキシトシン、およびバソプレシン)が含まれる。ホルモンはホルモン補充療法および/または産児制限の目的でよく使用される。プレドニゾンなどのステロイドホルモン類は、免疫抑制薬および抗炎症薬としても使用される。
【0065】
骨形成タンパク質
生物活性剤は、望ましくは、アクチビン、インヒビン、および骨形態形成タンパク質(BMP)を含むトランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)タンパク質スーパーファミリーと呼ばれるタンパク質ファミリーから選択される。最も好ましくは、活性剤は、骨形成促進活性ならびに他の成長分化型活性を有することが開示されている一般にBMPと呼ばれるタンパク質サブクラスから選択される少なくとも1つのタンパク質を含む。これらのBMPには、例えば米国特許第5,108,922号、第5,013,649号、第5,116,738号、第5,106,748号、第5,187,076号、および第5,141,905号に開示されているBMPタンパク質BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6およびBMP-7;PCT公開公報WO91/18098に開示されているBMP-8;ならびにPCT公開公報WO93/00432に開示されているBMP-9;PCT出願WO94/26893に開示されているBMP-10;PCT出願WO94/26892に開示されているBMP-11;またはPCT出願WO95/16035に開示されているBMP-12もしくはBMP-13;BMP-14;米国特許第5,635,372号に開示されているBMP-15、または米国特許第5,965,403号に開示されているBMP-16が含まれる。本発明のリン酸カルシウム組成物中の活性剤として有用であり得る他のTGF-βタンパク質には、Vgr-2, Jonesら,Mol. Endocrinol. 6:1961(1992)、およびPCT出願

などに記載されているものを含む任意の成長分化因子(GDF)が含まれる。WO94/01557に開示されているBIP;特開平7-250688号公報に開示されているHP00269;およびPCT出願WO93/16099に開示されているMP52も、本発明に有用であり得る。上記特許出願の全ての開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。現時点で本発明での使用が好ましいBMPのサブセットには、BMP-2、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-10、BMP-12、BMP-13、BMP-14、およびMP52が含まれる。活性剤は、最も好ましくは、BMP-2である。BMP-2の配列は米国特許第5,013,649号に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。当技術分野で公知の他の骨形成促進剤、例えばテリパラチド(Forteo(商標))、Chrysalin(登録商標)、プロスタグランジンE2、またはLIMタンパク質なども、使用することができる。
【0066】
生物活性剤は組換え生産するか、タンパク質組成物から精製することができる。活性剤は、BMPなどのTGF-βまたは他の二量体なら、ホモ二量体であってもよいし、他のBMPとのヘテロ二量体(例えばBMP-2およびBMP-6の単量体それぞれ1つずつから構成されるヘテロ二量体)、またはTGF-βスーパーファミリーの他のメンバー、例えばアクチビン、インヒビンおよびTGF-β1などとのヘテロ二量体(例えばBMPおよびTGF-βスーパーファミリーの関連メンバーの単量体それぞれ1つずつから構成されるヘテロ二量体)であってもよい。そのようなヘテロ二量体タンパク質の例は、公開されたPCT特許出願WO93/09229に記載されており、その明細書は参照により本明細書に組み入れられる。
【0067】
生物活性剤は、追加の薬剤、例えばHedgehog、Frazzled、Chordin、Noggin、CerberusおよびFollistatinタンパク質などを、さらに含んでもよい。これらのタンパク質ファミリーはSasaiら,Cell 79: 779-790(1994)(Chordin)、PCT出願公開公報WO94/05800(Noggin)、およびFukuiら,Devel. Biol. 159:131(1993)(Follistatin)に概説されている。Hedgehogタンパク質はWO96/16668、WO96/17924、およびWO95/18856に記載されている。Frazzledタンパク質ファミリーは最近発見されたタンパク質ファミリーであって、Frizzledと呼ばれる受容体タンパク質ファミリーの細胞外結合ドメインに高い相同性を有する。Frizzled遺伝子およびタンパク質ファミリーはWangら,J. Biol. Chem. 271:4468-4476(1996)に記載されている。活性剤には他の可溶性受容体、例えばPCT特許公開公報WO95/07982に開示されている切断された可溶性受容体などを含むこともできる。他にも数多くの受容体タンパク質を製造することができることは、WO95/07982の教示から、当業者には認識されると考えられる。上記の刊行物は参照により本明細書に組み入れられる。
【0068】
既存もしくは浸潤前駆細胞または他の細胞の増加した骨形成促進活性を刺激するのに有効な骨形成タンパク質の量は、処置される欠損の大きさおよび性質ならびに使用する担体に依存すると考えられる。一般的には、送達されるタンパク質の量は、約0.1〜約100mg、好ましくは約1〜約100mg、最も好ましくは約10〜約80mgの範囲にある。
【0069】
生物活性剤は、本発明のリン酸カルシウム組成物中に、その形成時または形成後に導入することができる。薬剤は固化前に組成物に都合良く混合され得る。または、賦形剤を造形し硬化させた後、溶液状態の治療剤に曝露することもできる。この手法は、アパタイト型材料に対して親和性を有することが知られているタンパク質には、とりわけ好適である。例えば移植前に自己硬化性ペーストを湿らせるための水溶液として、水の代わりに、生物活性剤を含有する緩衝剤溶液を使用することができる。緩衝剤は任意のpH範囲で使用することができるが、ほとんどの場合、5.0〜8.0の範囲内で使用され、好ましい態様では、pHは所望する治療剤の長期間にわたる安定性および効力に適合し、最も好ましい態様では、5.5〜7.4の範囲内であると考えられる。好適な緩衝剤には、炭酸塩、リン酸塩(例えばリン酸緩衝食塩水)、および有機緩衝剤、例えばトリス、HEPES、およびMOPSなどが含まれるが、これらに限定されるわけではない。ほとんどの場合、緩衝剤は、ホスト組織との生体適合性および治療剤との適合性によって選択されると考えられる。核酸、ペプチドまたは抗体の大半の用途には、単純なリン酸緩衝食塩水で十分であると考えられる。
【0070】
上に列挙した薬剤の送達に関する標準的プロトコールおよび投薬計画は、当技術分野では公知である。典型的には、これらのプロトコールは経口送達または静脈内送達に基づく。生物活性剤は、適切な投与量の薬剤を移植部位に送達することができるような量で、賦形剤に導入される。ほとんどの場合、投与量は、当該薬剤に適用可能な、医師に公知の指針を使って決定される。本発明のペーストに含まれるまたは硬化した送達賦形剤に添加される生物活性剤の例示的な量は、状態のタイプおよび程度、その患者の全体的健康状態、活性剤の製剤、ならびに使用する送達賦形剤の生体吸収性などの変数に、おそらく依存すると考えられる。標準的臨床試験を使って、任意の特定生物活性剤に関して、用量および投与頻度を最適化することもできる。
【0071】
本発明は、多孔性組成を有するリン酸カルシウム組成物も提供する。リン酸カルシウム組成物の多孔性は、細胞が細胞外骨基質を分泌することができるようにリン酸カルシウム組成物への細胞の移動および浸潤を容易にするので、望ましい特性である。また、脈管化のための通路を提供する。多孔性は高い表面積をもたらし、活性物質の吸収および放出を増進すると共に、細胞-基質相互作用も増加させる。
【0072】
高度な多孔性を有するインプラントは、リン酸カルシウム組成物への発泡剤の添加によって達成することができる。発泡剤は移植に先だってリン酸カルシウム組成物に溶解される気体であることができる。気体は、加圧下で、すなわちセメント反応にとって不活性な気体の加圧雰囲気に複合材料を供することによって、リン酸カルシウム組成物に溶解させることができる。次に、生理学的温度に曝露されると(すなわち注射または移植されると)、温度の上昇に伴う気体溶解度の低下により、気体が放出される。このような場合、気体の溶解と、それ続く細孔形成は、インビボでの硬化中にのみ起こり、投与前には起こらない。これはとりわけ魅力的である。なぜなら、細孔形成が室温において注射器中で起こることは望ましくないからである。好適な気体には、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、酸素、およびアルゴンが含まれるが、これらに限定されるわけではない。または、発泡剤は溶解時に気体を放出する固形材料である。例えば重炭酸ナトリウムは二酸化炭素気体を放出する。なぜなら、重炭酸ナトリウムは不安定な炭酸中間体に変わり、次にそれが二酸化炭素と水を放出するからである。望ましくは、炭酸ナトリウムは、リン酸カルシウム組成物中に0.5〜40重量%の量で存在する。発泡剤の使用に関するさらに詳細な説明は、「Calcuim phosphate delivery vehicles for osteoinductive proteins」と題する米国特許出願第10/160,607号(2002年5月31日出願)に見いだされる。
【0073】
少なくとも一部の態様では、適切な量の生理学的に許容される液体を粉末成分に加えることにより、自己硬化性のペーストまたはパテを作る。好適な生理学的に許容される液体の例には、水、食塩水、およびリン酸緩衝液が含まれるが、これらに限定されるわけではない。これらのペースト組成物は、既に公知である骨インプラント材料の大半と比較して、改善された流動特性を有するが、その原因は非晶質リン酸カルシウムを含むことおよびリン酸カルシウム粉末の性質に帰することができる。所望の特性を有するペーストを作るために様々な量の液体を粉末に加えることができる。例えば、少なくとも一部の態様では、粉末1グラムにつき0.5〜2.0ccの液体を使って、成形可能、すなわち鋳造することができ、かつその形状を保つことができる、ペーストを調製する。少なくとも一部の態様では、ペーストが注射可能である(すなわち16〜18ゲージの注射器を通過することができる)。
【0074】
生理学的に許容される液体の添加後に、ペーストは移植部位に送達される。ペーストは移植部位に注入するか、所望の形状に成形して移植部位に詰め込むことができる。ペーストは移植部位に設置する前に所望の形状に成形し、硬化させることができる。既製の装置を手で造形するか、鋳造するか、または機械加工することができる。与えられた用途に適した移植手順は、当業者には認識されると考えられる。
【0075】
本移植材料は単離されたDBMのみと比較してインビボで優れた骨誘導性を示す。例えば、(a)DBM粒子60重量パーセント、リン酸カルシウム粉末30重量パーセント、およびカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはその混合物からなる群より選択される生体適合性凝集性剤10重量パーセントを含む粉末成分、ならびに(b)粉末成分1グラムにつき1ccの生理学的に許容される液体を含むペーストは、移植した場合に、DBM単独よりも骨誘導性が高い。一部についてはDBMの骨誘導性を阻害することがこれまで当技術分野で公知であった無機リン酸カルシウムの包含にもかかわらず、この優れた骨誘導性が観察されることに注目されたい。さらに、このペーストは、高エネルギー粉砕処理されたリン酸カルシウム粉末および/または生体適合性凝集性剤の包含ゆえに、インビボでその凝集性を保つ。
【0076】
骨インプラント材料のペーストはエクスビボで(すなわち移植前に)またはインビボで(すなわち移植後に)反応して、低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムを形成する。その結果得られるPCAリン酸カルシウムは、やはり天然骨のものに近いナノメートル規模の結晶構造を有する。例えば、本発明の骨インプラント材料のPCAリン酸カルシウムの結晶は長さが約26nm、幅が約8nmであるのに対して、天然骨のものは長さが約23nm〜約32nm、幅が約6nm〜約8nmである。骨インプラント材料のPCAリン酸カルシウムが有するナノメートル規模の結晶構造は、破骨細胞などの骨形成細胞に適合する表面をもたらす。破骨細胞はリン酸カルシウム基質に付着しその上で増殖することができ、その結果、リン酸カルシウム基質はインビボで骨伝導性材料として働く。
【0077】
PCAリン酸カルシウム生成物は、天然に存在する骨に近いCa/Pモル比を有する。Ca/Pモル比は約1.1〜約1.9である。一部の態様では、Ca/Pモル比は1.2〜1.67である。好ましくは、Ca/Pモル比は1.67未満であり、約1.5未満であってもよい。上述のように、PCAリン酸カルシウム形成反応は実質的に完全に進行するので、骨誘導性粉末のリン酸カルシウム源中のカルシウムおよびリン酸の全てまたは実質的に全てが、PCAリン酸カルシウム生成物の一部になる。したがって、PCAリン酸カルシウム生成物のCa/Pモル比は、リン酸カルシウム源の選択によって制御することができる。
【0078】
ペーストからPCAリン酸カルシウムへの変換は、周囲温度または体温で起こり、ペースト材料の硬化を伴う。この硬化過程は、DBMまたは任意の生体適合性凝集性剤の添加による悪影響を受けない。この「自己硬化」または「自己固化」反応は周囲温度、すなわち約20℃〜25℃ではゆっくりと起こり、体温、すなわち約32℃〜約37℃ではかなり加速される。したがって、例えばペーストは周囲温度では約20分〜約60分後に硬化するのに対して、体温では、ペーストは約3分〜約15分後に硬化する。PCAリン酸カルシウムの形成および特性は、米国特許第6,214,368号、第6,027,742号、および第5,650,176号に詳述されており、これらの特許は参照により本明細書に組み入れられる。
【0079】
硬化したPCAリン酸カルシウムインプラント材料は、かなりの量(すなわち粉末成分の最大約50重量%)のDBMを包含するにもかかわらず、かなりの圧縮強度を示す。圧縮強度は、脊椎インプラントなどの一定タイプの骨インプラントにとっては、とりわけ望ましい属性である。一部の態様によれば、本PCAリン酸カルシウム骨インプラント材料は約1MPaより大きい圧縮強度を有する。特定の態様では、圧縮強度が1MPa〜20MPaである。他の特定態様では、圧縮強度が2MPa〜10MPaである。
【0080】
ペーストがPCAリン酸カルシウムに変わると、PCAリン酸カルシウムはインビボで骨に再構築される。上述のように、PCAリン酸カルシウムは天然骨に似た化学組成および結晶構造を有し、生物系では可吸収性である。再構築には、PCAリン酸カルシウムの遅い分解と、その結果生じるカルシウムおよびリン酸材料を身体が利用することによる新しい骨の生成が関与する。本発明の1以上の態様に従って製造される骨インプラント材料の再構築は、通常は数ヶ月〜数年という時間尺度で起こる長期過程である。高密度な骨インプラント材料ほど、長い再構築期間を必要とする。なぜなら、高密度で多孔性の低いインプラントは細胞および生体物質の浸透を遅らせて、再構築を長期間にわたる内部への拡散過程として引き起こすからである。
【0081】
1以上の態様によれば、本発明は、与えられた骨インプラント材料試料中のDBM含量を重量としてアッセイする方法も提供する。DBMの量が骨インプラント材料の性質に影響を及ぼすことを考えると、与えられた材料中のDBM量を決定する方法は望ましい。与えられた骨インプラント材料試料中のDBM含量は、重量として、DBM抽出アッセイで測定することができる。このアッセイでは塩化水素(HCl)を使って、骨インプラント材料中のリン酸カルシウム源を消化する。HClを加えたら、HCl-骨インプラント混合物を撹拌し、遠心分離し、再懸濁して、抽出されたDBMのペレットが形成されるようにし、次にそのペレットを乾燥し、秤量することができる。
【0082】
以下、実施例を挙げて本発明を例示するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【0083】
実施例
実施例1.脱灰骨基質繊維の製造
この実施例では繊維状DBM粒子の製造を説明する。
【0084】
長骨を浄化して全ての結合組織を除去した。終板を除去して長骨の皮質骨成分を単離し、骨髄を除去した。中空の長骨をアルコール中で洗浄してさらに浄化し、脂肪を除去した。次に骨を旋盤で回した。骨の表面に直刃炭化ケイ素切断具を押しつけることによって、削り屑を作った。ある長さの骨削り屑が得られるように、切断具を骨の端から端まで進める。この工程に精通した作業者であれば、材料除去速度が制御されるように、切断具の移動速度と協調した骨の回転速度を制御することができる。この工程により、50μm〜250μmの範囲の様々な厚さ、2mm〜10mmの幅およびランダムな長さを有する削り屑を得た。次に、これらの削り屑をエーテル中で洗浄して、残存している脂肪を除去した。脱灰は削り屑を0.5M塩酸(HCl)中で1時間撹拌することによって行なった。脱灰後、繊維を脱イオン水中で過剰の酸が除去されるまで濯いだ。次に、アルコールおよびエーテル中で濯ぎ、エーテルを蒸発させることによって、繊維を乾燥させた。平均繊維長は約250μm〜2mmの間にランダムに分布し、平均繊維厚は約50μm〜250μmだった。
【0085】
実施例2.非晶質リン酸カルシウムの製造
この実施例では非晶質リン酸カルシウム粉末の製造を説明する。
【0086】
蒸留水14.4mL中にリン酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HPO4 7H2O)1000gの溶液を調製し、撹拌した。この溶液に水酸化ナトリウム(NaOH)555g、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)333g、およびピロリン酸ナトリウム十水和物(Na2P2O7 10H2O)2.2gを逐次的に加えて、溶液1を形成させた。
【0087】
蒸留水5.6L中に硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO3)2 4H2O)208gの溶液を調製し、撹拌した。塩化マグネシウム六水和物(MgCl2 6H2O)11gをこの溶液に加えて、溶液2を形成させた。
【0088】
溶液2を溶液1に室温で素早く注ぎ込み、1分間撹拌した。非晶質リン酸カルシウムが直ちにかつ実質的に完全に沈殿した。懸濁液のpHは13±0.5だった。沈殿物がアパタイトまたは結晶性の高い他のリン酸カルシウムに変換しないように、このpHを維持した。
【0089】
次に、バスケット型遠心分離濾過工程を使って上記沈殿物をその母液から直ちに分離し、蒸留水約100Lを使って洗浄した。洗浄工程の完了は最終洗液のイオン伝導度が300μs未満であることをもって確認した。この工程により、非晶質リン酸カルシウム約500gのゲルケーキが得られる。
【0090】
乾燥中に非晶質構造が保たれるように、非晶質リン酸カルシウムの湿ケーキを直ちに凍結乾燥した。水の約80%が除去された。凍結乾燥粉末約100gを450℃で1時間、か焼した。
【0091】
この非晶質リン酸カルシウム生成物は1.5未満のCa/P比、典型的には1.35〜1.49のCa/P比を持っていた。
【0092】
実施例3.リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)の製造
この実施例ではリン酸二カルシウム二水和物粉末の製造を説明する。
【0093】
リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)20gを蒸留水1Lに溶解して、0.300mol/Lの濃度を有する溶液3を調製した。溶液3のpHが7.0〜9.0であることを確認した。
【0094】
硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO3)2 4H2O)35.5gを蒸留水0.5Lに溶解して、0.300mol/Lの濃度を有する溶液4を調製した。溶液4のpHが5.0〜8.0であることを確認した。
【0095】
溶液4を溶液3に注ぎ込んだ後、約2分間撹拌した。得られた懸濁液のpHが5.2〜6.2であることを確認した。懸濁液を減圧濾過して、均一なケーキを形成させた。そのケーキを蒸留水750mLで3回(合計2.25L)洗浄した。洗浄が完了したら、ケーキを濾紙から分離し、層流フード中で24時間乾燥した。乾燥した粉末を、公称粒径120μmのふるいを通して微粉砕した。
【0096】
実施例4.リン酸カルシウム粉末の製造
この実施例では、非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源を含むリン酸カルシウム粉末の製造を説明する。
【0097】
実施例2で説明したように製造した非晶質リン酸カルシウムと、実施例3で説明したように製造した結晶性DCPDとを、1:1の重量比(例えば各25g)で混和した。混合した粉末を100RPMのボールミル(Ball Mill)で3時間、高エネルギー粉砕処理した。得られた粉末の平均結晶領域サイズは約100nm未満だった。
【0098】
実施例5.DBM/リン酸カルシウム粉末の製造
この実施例ではDBM粒子およびリン酸カルシウム粉末を含む粉末の製造を説明する。
【0099】
実施例1で説明したように製造した繊維性DBM粒子0.4g、および実施例4で説明したように製造したリン酸カルシウム粉末0.6gを、ターブラーミキサーを使って混和した。
【0100】
実施例6.DBM/リン酸カルシウム/凝集性剤粉末の製造
この実施例では、DBM粒子、リン酸カルシウム粉末、および生体適合性凝集性剤を含む粉末の製造を説明する。
【0101】
実施例1で説明したように製造したDBM粒子0.5g、実施例4で説明したように製造したリン酸カルシウム粉末0.45g、およびHercules 7 HFPHカルボキシメチルセルロース0.05gをシリコーンミキシングバルブ(mixing bulb)で混和した。得られた粉末はDBM粒子約50重量%、リン酸カルシウム粉末約45重量%、およびカルボキシメチルセルロース約5重量%を含有した。
【0102】
実施例7.成形可能な自己硬化性ペーストの製造
この実施例では、DBM/リン酸カルシウム/凝集性剤粉末からの成形可能な自己硬化性ペーストの製造を説明する。
【0103】
実施例6に記載した粉末1.0gを、粉末1グラムあたり0.6ccの生理食塩水で水和することにより、ペーストを形成させた。得られたペーストは成形可能であり、注射器から押出すことができ、37℃では20分未満で硬化した。
【0104】
ペースト0.10ccを、カットオフチップ(cut-off tip)を有するBecton Dickinsonスリップチップ(slip tip)注射器を通して押し出すことにより、0.1ccのペースト円柱体を形成させた。
【0105】
実施例8.成形可能な自己硬化性ペーストの凝集性
この実施例では、本発明に従って製造した成形可能な自己硬化性ペーストの凝集性の評価を説明する。
【0106】
実施例7で説明したように製造したペーストの試料1.0gを直径約1.0cmの球に成形し、その球をビーカー一杯分の水中に落とした。少なくとも10分間は目立ったゆがみ、膨潤、または質量喪失は観察されず、球は最初の形状を保った。試料を水から取り出し、浸漬によって試料から失われた質量の程度を決定するために水を濾過した。測定可能な質量喪失量は観察されなかった。
【0107】
実施例9.CaP/DBM組成物の圧縮強度
この実施例では、本発明に従って製造した成形可能な自己硬化性ペーストの湿潤圧縮強度の評価を説明する。
【0108】
125μm〜850μmの粒径を有するDBM粒子0.3gおよび実施例4で説明したように製造したリン酸カルシウム粉末1.7gを含有する粉末2gを、粉末1グラムあたり0.5ccの生理食塩水で水和することにより、ペーストを形成させた。
【0109】
そのペーストを直径6mmおよび高さ12mmの円柱状ステンレス鋼鋳型5つに均等に充填した。次に鋳型を37℃の生理食塩水槽に2時間浸漬した。
【0110】
次に、5つの硬化したCaP/DBM試料を鋳型から取り出し、万能試験機(Instron,マサチューセッツ州カントン)を使って5mm/分のクロスヘッド速度で圧縮強度を試験した。
【0111】
平均圧縮強度は12±1MPaと測定された。
【0112】
実施例10.骨インプラント材料の硬化時間
本発明に従って製造した種々の骨インプラント材料の硬化時間に関するデータを表2に示す。
(表2)

1「HCS-24」は、24時間混合された高圧縮強度精密混合リン酸カルシウム源を指す。
2「PBS 1:30」は、リン酸緩衝溶液を指す。
【0113】
実施例11.骨インプラント材料の移植
無胸腺ラットの筋肉内または皮下ポケットへの移植後の異所骨形成の評価は、骨誘導性材料の特性解析に関する現行の標準である。この実施例では、本明細書に記載するように製造された骨インプラント材料を評価し、これらの組成物を他のDBM製剤と比較するための、無胸腺ラットモデルの使用を説明する。
【0114】
6〜7週齢の雄無胸腺ラット(ドブネズミ(Rattus norvegicus)、Crl:NIH-rnuヌード、Charles River Laboratories)を、「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」(National Research Council、1996)で勧告された条件で、アイソレータまたはマイクロアイソレータ相当物にて飼育し、維持した。ラットにはガンマ線照射齧歯類飼料および水道水を不断給餌した。
【0115】
表3に示すように、本明細書に記載の様々なインプラント組成物を試験した。これらのインプラント組成物の伝導性を、当技術分野公知のいくつかのインプラント材料と比較した:GRAFTON(登録商標)DBM Putty(Osteotech,Inc.)、GRAFTAON(登録商標)DBM Flex(Osteotech,Inc.)、GRAFTON(登録商標)DBM Matrix(Osteotech,Inc.)、およびOsteofil(登録商標)(Regeneration Technologies,Inc.)。全てのインプラントを直径5mmの0.1cc円柱体として移植した。
【0116】
35匹の動物に、4つの異なる試験品を、2つは胸筋系(大胸筋)に、そして2つは後肢(大腿四頭筋)に、ランダムに移植した。各動物に、ケタミン(100mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)を腹腔内(IP)注射した。完全な麻酔状態になってから、第1移植部位に円刃刀で小切開を施し、皮膚、皮下組織、および筋膜を剪刀で両断した。先のとがった剪刀を使って所望する筋に侵入することにより、筋肉内に袋を形成させた。最初の切断は筋繊維と同じ方向に行い、剪刀を広げて小さい袋を作り、鉗子を使って0.1mlの試験品を投与する間はその袋を広げておいた。試験品が固化したら(少なくとも6分)、筋ポケットを縫合閉鎖した。次に残りの3つの移植部位で手術を繰り返した。必要であれば、移植術を完了するのに十分な麻酔状態を維持するために、半量のケタミン/キシラジンを追加投与した。
【0117】
各動物に対して移植後7日間にわたって毎日臨床観察を行なった。その後は、週2回の臨床観察を行なった。
【0118】
移植の6週間後に試験品を回収した。動物を回収直前にCO2過剰投与によって安楽死させた。組織収集は、インプラント材料および骨格筋および/または結合組織の縁部約0.5cmに限定した。組織標本を10%中性緩衝ホルマリン中で最低12時間固定し、組織学用アルコールに移した。組織標本をインプラントの中央部で横に両断し、常法によりパラフィン包埋処理を行い、スライドガラス上に切断し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、カバーガラスで覆った。必要であれば、組織学的解析に先だって組織標本をさらに脱灰した。
【0119】
それぞれが異なる筋肉内インプラント切片に相当する無作為化した組織学スライドを、投与したインプラントに関して盲検的に病理学者に提示した。骨形成の量を0〜4の尺度(0は骨形成の証拠がないことを示し、1、2、3および4はインプラント表面のそれぞれ<25%、26〜50%、51〜75%、および>75%が新しい骨形成に関与したことを示す)で採点した。骨芽細胞で裏打ちされ、そして/または、骨小腔内の骨細胞および軟骨性細胞を含有し、その基質および骨髄が新しい骨の小柱に取り囲まれている新しい骨は、全て骨新生過程の一部とみなした。インプラントの形状およびサイズ(元の5mm円柱体との比較)、インプラント内の新しい骨の分布、ならびにインプラント基質の性質にも注目した。スライドの評価が完了したら、群割当て手段を評価者に提供して結果を要約した。その結果を以下に示す。
(表3)選択したDBM-リン酸カルシウム製剤の骨誘導スコア

3DBM、結合剤、およびリン酸カルシウム粉末の量はインプラント材料の粉末成分の重量百分率として記載する。
4CMCはカルボキシメチルセルロースを意味する。
5PVPはポリビニルピロリドンを意味する。
【0120】
実施例12.DBM抽出アッセイ
実施例5で説明したように製造したDBM/リン酸カルシウム粉末の試料1.00gを50cc遠心管に入れた。20ミリリットルの5N HClを試料に加えた。試料を20分間穏やかに撹拌してリン酸カルシウム材料を消化した。次に試料を5分間遠心分離してDBMペレットを形成させ、上清を注意深く捨てた。DBMペレットをDI-H2O 15mLに2回、次いでエタノール15mLに1回、再懸濁し、毎回10分間遠心分離してDBMを分離した。過剰のエタノールを一晩蒸発させ、試料を減圧乾燥器で24時間乾燥した。次に、抽出されたDBMを秤量し、0.39gのDBMを得た。
た。
【0121】
他の態様
本明細書で言及した刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照により組み入れられることを具体的かつ個別に明示した場合と同様に、全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0122】
本発明をその具体的態様に関して説明し終えたが、さらなる変更態様も可能であり、概して本発明の原理に従い、本発明が関係する技術分野においては公知または慣行に属し、かつ上述の、そして本願特許請求の範囲に記載する本質的特徴に当てはまり得るような、本開示からの逸脱を含む、任意の変形、使用、または適応が、本願に包含されるものとすることが理解される。
【0123】
他の態様は特許請求の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】高エネルギー粉砕を行なう前、ならびに高エネルギーボールミルで3、10、15、および24時間高エネルギー粉砕を行なった後の、非晶質リン酸カルシウムおよびリン酸二カルシウム二水和物(DCPD)を含むリン酸カルシウム粉末のX線回折(XRD)パターンを表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)脱灰骨基質(DBM)粒子、および
(b)リン酸カルシウム粉末
を含む骨誘導性粉末であって、生理学的に許容される液体と混合すると成形可能な自己硬化性低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムペーストを形成し、該ペーストは硬化して少なくとも約1MPaより大きい圧縮強度を有するPCAリン酸カルシウムを形成する能力を有する、骨誘導性粉末。
【請求項2】
DBM粒子が約1〜約60重量%の範囲内の量で存在する、請求項1記載の骨誘導性粉末。
【請求項3】
DBM粒子が約60重量%未満の量で存在する、請求項1記載の骨誘導性粉末。
【請求項4】
DBM粒子が約50重量%未満の量で存在する、請求項3記載の骨誘導性粉末。
【請求項5】
DBM粒子が約20重量%未満の量で存在する、請求項4記載の骨誘導性粉末。
【請求項6】
DBM粒子が約15重量%の量で存在する、請求項5記載の骨誘導性粉末。
【請求項7】
DBM粒子が約850μm未満の粒径を有する、請求項1記載の骨誘導性粉末。
【請求項8】
DBM粒子が約125〜約850μmの範囲内の粒径を有する、請求項1記載の骨誘導性粉末。
【請求項9】
DBM粒子が約53〜約125μmの範囲内の粒径を有する、請求項7記載の骨誘導性粉末。
【請求項10】
DBM粒子が約125μm未満の粒径を有する、請求項7記載の骨誘導性粉末。
【請求項11】
リン酸カルシウム粉末が非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウムを含む、請求項1記載の骨誘導性粉末。
【請求項12】
第2のリン酸カルシウムが酸性または中性リン酸カルシウムである、請求項11記載の骨誘導性粉末。
【請求項13】
酸性リン酸カルシウムがメタリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸七カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸カルシウム二水和物、低結晶性ヒドロキシアパタイト、ピロリン酸カルシウム、またはリン酸八カルシウムである、請求項12記載の骨誘導性粉末。
【請求項14】
酸性リン酸カルシウムがリン酸二カルシウム二水和物(DCPD)である、請求項13記載の骨誘導性粉末。
【請求項15】
非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウムが約100nm未満の平均結晶領域サイズを有する、請求項11記載の骨誘導性粉末。
【請求項16】
リン酸カルシウム粉末がDBM粒子との混合前に高エネルギー粉砕工程に供される、請求項1記載の骨誘導性粉末。
【請求項17】
凝集性剤、生物活性剤、および発泡剤から選択される少なくとも1つの補足材料をさらに含む、請求項1記載の骨誘導性粉末。
【請求項18】
凝集性剤が約1〜約20重量%の範囲内の量で存在する、請求項17記載の骨誘導性粉末。
【請求項19】
凝集性剤が約20重量%未満の量で存在する、請求項17記載の骨誘導性粉末。
【請求項20】
凝集性剤が約10重量%未満の量で存在する、請求項19記載の骨誘導性粉末。
【請求項21】
凝集性剤が約5重量%未満の量で存在する、請求項20記載の骨誘導性粉末。
【請求項22】
凝集性剤が約1重量%未満の量で存在する、請求項21記載の骨誘導性粉末。
【請求項23】
凝集性剤が多糖類、核酸、糖質、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物-コ-イミド)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(α-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリプロピレンフマレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、炭素繊維、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、およびそれらのコポリマーから選択されるポリマーを含む、請求項17記載の骨誘導性粉末。
【請求項24】
凝集性剤がアルギン酸、アラビアゴム、グアーゴム、キサンタンゴム、ゼラチン、キチン、キトサン、キトサン酢酸、キトサン乳酸、コンドロイチン硫酸、N,O-カルボキシメチルキトサン、デキストラン、フィブリン糊、グリセロール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セルロース、グルコサミン、プロテオグリカン、デンプン、乳酸、プルロニック、グリセロリン酸ナトリウム、コラーゲン、グリコーゲン、ケラチン、絹、およびそれらの混合物から選択される、請求項17記載の骨誘導性粉末。
【請求項25】
セルロースがメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースである、請求項24記載の骨誘導性粉末。
【請求項26】
デキストランがα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、またはデキストラン硫酸ナトリウムである、請求項24記載の骨誘導性粉末。
【請求項27】
デンプンがヒドロキシエチルデンプンまたは可溶性デンプンである、請求項24記載の骨誘導性粉末。
【請求項28】
生物活性剤が抗体、抗生物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗癌剤、成長因子、およびワクチンから選択される、請求項17記載の骨誘導性粉末。
【請求項29】
タンパク質が骨形成タンパク質である、請求項28記載の骨誘導性粉末。
【請求項30】
骨形成タンパク質がBMP-2、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-10、BMP-12、BMP-13、およびBMP-14から選択される、請求項29記載の骨誘導性粉末。
【請求項31】
抗癌剤がアルキル化剤、白金剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍性抗生物質、抗有糸分裂剤、アロマターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNAアンタゴニスト、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ポンプ阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、リボヌクレオシドレダクターゼ阻害剤、TNFαアゴニスト、TNFαアンタゴニスト、エンドセリンA受容体アンタゴニスト、レチノイン酸受容体アゴニスト、免疫調節薬、ホルモン剤、抗ホルモン剤、光線力学剤(photodynamic agent)、およびチロシンキナーゼ阻害剤から選択される、請求項28記載の骨誘導性粉末。
【請求項32】
発泡剤が重炭酸ナトリウム、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、酸素、およびアルゴンである、請求項17記載の骨誘導性粉末。
【請求項33】
発泡剤が約1〜約40重量%の範囲内の量で存在する、請求項32記載の骨誘導性粉末。
【請求項34】
生理学的に許容される液体と混合すると自己固化性PCAリン酸カルシウムペーストを形成し、該ペーストは硬化して、約1.67未満の総Ca/P比を有するPCAリン酸カルシウムを形成する、請求項1記載の骨誘導性粉末。
【請求項35】
生理学的に許容される液体と混合すると自己固化性PCAリン酸カルシウムペーストを形成し、該ペーストは硬化して、該生理学的に許容される液体と混合した場合に約1.5未満の総Ca/P比を有するPCAリン酸カルシウムを形成する、請求項34記載の骨誘導性粉末。
【請求項36】
生理学的に許容される液体と混合すると自己固化性PCAリン酸カルシウムペーストを形成し、該ペーストは硬化して、該生理学的に許容される液体と混合した場合に約1.0〜約1.67の範囲内の総Ca/P比を有するPCAリン酸カルシウムを形成する、請求項1記載の骨誘導性粉末。
【請求項37】
(a)脱灰骨基質(DBM)粒子;
(b)リン酸カルシウム粉末;および
(c)生体適合性凝集性剤
を含む骨誘導性粉末であって、生理学的に許容される液体と混合すると成形可能な自己硬化性低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムペーストを形成し、該ペーストは硬化して少なくとも約1MPaより大きい圧縮強度を有するPCAリン酸カルシウムを形成する能力を有する、骨誘導性粉末。
【請求項38】
(a)以下の(i)、(ii)を含む粉末成分:
(i)脱灰骨基質(DBM)粒子、
(ii)リン酸カルシウム粉末;ならびに
(b)凝集性成形可能ペーストを生じさせる量の生理学的に許容される液体
を含む、骨インプラント材料としての使用に適した成形可能な自己硬化性低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムペーストであって、インビボの移植部位に導入された時にその凝集性を保ち、硬化して少なくとも約1MPaより大きい圧縮強度を有するPCAリン酸カルシウムを形成するペースト。
【請求項39】
DBM粒子が約1〜約60重量%の範囲内の量で存在する、請求項38記載のペースト。
【請求項40】
DBM粒子が約60重量%未満の量で存在する、請求項38記載のペースト。
【請求項41】
DBM粒子が約50重量%未満の量で存在する、請求項40記載のペースト。
【請求項42】
DBM粒子が約20重量%未満の量で存在する、請求項41記載のペースト。
【請求項43】
DBM粒子が約15重量%の量で存在する、請求項42記載のペースト。
【請求項44】
DBM粒子が約850μm未満の粒径を有する、請求項38記載のペースト。
【請求項45】
DBM粒子が約125〜約850μmの範囲内の粒径を有する、請求項38記載のペースト。
【請求項46】
DBM粒子が約53〜約125μmの範囲内の粒径を有する、請求項38記載のペースト。
【請求項47】
DBM粒子が約125μm未満の粒径を有する、請求項44記載のペースト。
【請求項48】
リン酸カルシウム粉末が非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウムを含む、請求項38記載のペースト。
【請求項49】
第2のリン酸カルシウムが酸性または中性リン酸カルシウムである、請求項48記載のペースト。
【請求項50】
酸性リン酸カルシウムがメタリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸七カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸カルシウム二水和物、低結晶性ヒドロキシアパタイト、ピロリン酸カルシウム、またはリン酸八カルシウムである、請求項51記載のペースト。
【請求項51】
酸性リン酸カルシウムがリン酸二カルシウム二水和物(DCPD)である、請求項50記載のペースト。
【請求項52】
非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウムが約100nm未満の平均結晶領域サイズを有する、請求項48記載のペースト。
【請求項53】
リン酸カルシウム粉末がDBM粒子との混合前に高エネルギー粉砕工程に供される、請求項38記載のペースト。
【請求項54】
凝集性剤、生物活性剤、および発泡剤から選択される少なくとも1つの補足材料をさらに含む、請求項38記載のペースト。
【請求項55】
凝集性剤が約1〜約20重量%の範囲内の量で存在する、請求項54記載のペースト。
【請求項56】
凝集性剤が約20重量%未満の量で存在する、請求項54記載のペースト。
【請求項57】
凝集性剤が約10重量%未満の量で存在する、請求項56記載のペースト。
【請求項58】
凝集性剤が約5重量%未満の量で存在する、請求項57記載のペースト。
【請求項59】
凝集性剤が約1重量%未満の量で存在する、請求項58記載のペースト。
【請求項60】
凝集性剤が多糖類、核酸、糖質、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物-コ-イミド)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(α-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリプロピレンフマレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、炭素繊維、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、およびそれらのコポリマーから選択されるポリマーを含む、請求項54記載のペースト。
【請求項61】
凝集性剤がアルギン酸、アラビアゴム、グアーゴム、キサンタンゴム、ゼラチン、キチン、キトサン、キトサン酢酸、キトサン乳酸、コンドロイチン硫酸、N,O-カルボキシメチルキトサン、デキストラン、フィブリン糊、グリセロール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セルロース、グルコサミン、プロテオグリカン、デンプン、乳酸、プルロニック、グリセロリン酸ナトリウム、コラーゲン、グリコーゲン、ケラチン、絹、およびそれらの混合物から選択される、請求項54記載のペースト。
【請求項62】
セルロースがメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースである、請求項61記載のペースト。
【請求項63】
デキストランがα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、またはデキストラン硫酸ナトリウムである、請求項61記載のペースト。
【請求項64】
デンプンがヒドロキシエチルデンプンまたは可溶性デンプンである、請求項61記載のペースト。
【請求項65】
生物活性剤が抗体、抗生物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗癌剤、成長因子、およびワクチンから選択される、請求項56記載のペースト。
【請求項66】
タンパク質が骨形成タンパク質である、請求項65記載のペースト。
【請求項67】
骨形成タンパク質がBMP-2、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-10、BMP-12、BMP-13、およびBMP-14から選択される、請求項66記載のペースト。
【請求項68】
抗癌剤がアルキル化剤、白金剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍性抗生物質、抗有糸分裂剤、アロマターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNAアンタゴニスト、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ポンプ阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、リボヌクレオシドレダクターゼ阻害剤、TNFαアゴニスト、TNFαアンタゴニスト、エンドセリンA受容体アンタゴニスト、レチノイン酸受容体アゴニスト、免疫調節薬、ホルモン剤、抗ホルモン剤、光線力学剤、およびチロシンキナーゼ阻害剤から選択される、請求項65記載のペースト。
【請求項69】
発泡剤が重炭酸ナトリウム、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、酸素、およびアルゴンである、請求項54記載のペースト。
【請求項70】
発泡剤が約1〜約40重量%の範囲内の量で存在する、請求項69記載のペースト。
【請求項71】
約1.67未満の総Ca/P比を有するPCAリン酸カルシウムに自己硬化する、請求項38記載のペースト。
【請求項72】
約1.5未満の総Ca/P比を有するPCAリン酸カルシウムに自己硬化する、請求項71のペースト。
【請求項73】
約1.0〜約1.67の範囲内の総Ca/P比を有するPCAリン酸カルシウムに自己硬化する、請求項38記載のペースト。
【請求項74】
硬化して約1MPa〜約20MPaの範囲内の圧縮強度を有するPCAリン酸カルシウムを形成する、請求項38記載のペースト。
【請求項75】
硬化して約2MPa〜約10MPaの範囲内の圧縮強度を有するPCAリン酸カルシウムを形成する、請求項74記載のペースト。
【請求項76】
硬化して約2MPaの圧縮強度を有するPCAリン酸カルシウムを形成する、請求項38記載のペースト。
【請求項77】
(a)以下の(i)〜(iii)を含む粉末成分:
(i)脱灰骨基質(DBM)粒子、
(ii)リン酸カルシウム粉末、および
(iii)生体適合性凝集性剤;ならびに
(b)凝集性成形可能ペーストを生じさせる量の生理学的に許容される液体
を含む、骨インプラント材料としての使用に適した成形可能な自己硬化性低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムペーストであって、インビボで移植部位に導入された時にその凝集性を保ち、かつ硬化して少なくとも約1MPaより大きい圧縮強度を有するPCAリン酸カルシウムを形成する、ペースト。
【請求項78】
(a)以下の(i)、(ii)を含む粉末成分:
(i)該粉末成分の約1重量%〜約50重量%の量で存在する、脱灰骨基質(DBM)粒子、および
(ii)約100nm未満の平均結晶領域サイズを有する非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源から構成され、かつ該粉末成分の約50重量%〜約99重量%の量で存在するリン酸カルシウム粉末;ならびに
(b)凝集性成形可能ペーストを生じさせる量の生理学的に許容される液体
を含む、骨インプラント材料としての使用に適した成形可能な自己硬化性低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムペーストであって、インビボで移植部位に導入された時にその凝集性を保ち、かつ硬化して約1MPa〜約20MPaの圧縮強度を有する低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムを形成する、ペースト。
【請求項79】
(a)以下の(i)〜(iii)を含む粉末成分:
(i)該粉末成分の約1重量%〜約50重量%の量で存在する、脱灰骨基質(DBM)粒子、
(ii)約100nm未満の平均結晶領域サイズを有する非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源から構成され、かつ該粉末成分の約50重量%〜約99重量%の量で存在するリン酸カルシウム粉末、および
(iii)該粉末成分の約1重量%〜約20重量%の量で存在する、生体適合性凝集性剤;ならびに
(b)凝集性成形可能ペーストを生じさせる量の生理学的に許容される液体
を含む、骨インプラント材料としての使用に適した成形可能な自己硬化性低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムペーストであって、インビボで移植部位に導入された時にその凝集性を保ち、かつ硬化して1MPa〜20MPaの圧縮強度を有する低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムを形成する、ペースト。
【請求項80】
低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムを含む骨インプラント材料であって、該PCAリン酸カルシウムが、
(a)以下の(i)〜(iii)を含む粉末成分:
(i)脱灰骨基質(DBM)粒子、
(ii)非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源から構成されるリン酸カルシウム粉末であって、該第2のリン酸カルシウム源が酸性リン酸カルシウムである、リン酸カルシウム粉末、および
(iii)生体適合性凝集性剤;と、
(b)生理学的に許容される液体
とを混和することによって形成され、該粉末成分および該液体は混和されることにより、硬化して約1MPa〜約20MPaの圧縮強度を有するPCAリン酸カルシウムを形成するペーストを生じる、骨インプラント材料。
【請求項81】
請求項38〜79のいずれか一項記載の成形可能な自己硬化性低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムペーストを含む骨インプラント材料を提供する工程を含む、骨修復方法。
【請求項82】
低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウムを含む骨インプラント材料を提供する工程を含む骨修復方法であって、該PCAリン酸カルシウムが、
(a)以下の(i)〜(iii)を含む粉末成分:
(i)脱灰骨基質(DBM)粒子、
(ii)非晶質リン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源から構成されるリン酸カルシウム粉末であって、該第2のリン酸カルシウム源が酸性リン酸カルシウムであるリン酸カルシウム粉末、および
(iii)生体適合性凝集性剤;と、
(b)生理学的に許容される液体
とを混和することによって形成され、該粉末成分および該液体は混和されることにより、硬化して約1MPa〜約20MPaの圧縮強度を有するPCAリン酸カルシウムを形成するペーストを生じる、方法。
【請求項83】
脱灰骨基質(DBM)粒子およびリン酸カルシウム粉末を含む試料中のDBM粒子の量を重量としてアッセイする方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)試料に塩化水素を加える工程;
(b)試料を撹拌する工程;
(c)抽出されたDBM粒子のペレットを取得する工程;
(d)抽出されたDBM粒子のペレットを乾燥する工程;および
(e)抽出されたDBM粒子を秤量する工程。

【図1】
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【公表番号】特表2006−522670(P2006−522670A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509917(P2006−509917)
【出願日】平成16年4月12日(2004.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/011182
【国際公開番号】WO2004/091435
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(504238046)エテックス コーポレーション (6)
【Fターム(参考)】