説明

骨集積および殺腫瘍部分を有する修飾ヒドロキシポリマー複合体

【課題】
【解決手段】本発明は、骨腫瘍すなわち骨転移、特にホルモン抵抗性前立腺癌(HRPC)および乳癌に関連する骨転移だけでなく、骨粗鬆症を治療するための修飾ヒドロキシポリマー複合体、好ましくは、デキストラン−グアニジン−ビホスホネート複合体に関する。前記ヒドロキシポリマー複合体を生成および使用する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗破骨細胞活性を有する骨集積部分および殺腫瘍部分によって置換された修飾ヒドロキシポリマー複合体に関する。前記修飾ヒドロキシポリマー複合体は、骨癌、骨粗鬆症等を治療するための薬剤として有用である。ヒドロキシポリマーデキストラン複合体は、抵抗性前立腺癌における転移性骨病変を治療するために特に有用である。本発明はまた、前記ヒドロキシポリマー複合体の調製方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシポリマーとは、有効な化合物の様々な部分で都合よく置換された多数のヒドロキシ基を備える一群の糖ポリマーのことである。デキストランは、例えば、血液量減少性ショックを予防し、塞栓症を予防し、および微小循環を改善するための、薬剤産業で最も頻繁に用いられる製薬学的用途が確立されたヒドロキシポリマーの1つである。デキストランならびにその無毒性および高い認容性は、文献で明確に証明されている(AS Segal, 1964年 In: Modern medical monographs編 Wright, IS, Green & Stratton, ニューヨーク、ロンドン、5〜17頁(非特許文献1))。従って、デキストランは、薬学的に適用可能なヒドロキシポリマーの例として頻繁に用いられている。
【0003】
国際特許出願第PCT/EP2008/052714号(特許文献1)では、グアニジン化合物およびデキストランは、別々に用いられる場合には、腫瘍細胞に対してほぼ有毒作用を有さないが、グアニジン−デキストラン複合体は、アドリアマイシン(登録商標)などの従来の抗腫瘍薬と同様の抗腫瘍活性、または、投与量によっては従来の抗腫瘍薬よりも高い抗腫瘍活性を示したことが立証されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許出願第PCT/EP2008/052714号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】AS Segal, 1964年 In: Modern medical monographs編 Wright, IS, Green & Stratton, ニューヨーク、ロンドン、5〜17頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
様々なタイプの腫瘍には、様々なタイプの抗腫瘍薬および治療法が必要であることは常識である。骨転移は、進行した癌において共通して見られる。骨転移の発症率は、進行した乳癌および前立腺癌において特に高い。これらの患者の大半に当る約80%は、広範囲にわたる骨転移を有する。骨格痛は、癌に関連した最も一般的な痛みであり、大抵の場合、生活の質に全くマイナスの影響を与えるほど激しいものである。標準的な治療としては、鎮痛薬と化学療法薬との組合せ、放射性核種治療、局所外部ビーム照射線療法、および局所手術が挙げられる。患者の中には長期にわたって痛みが一時的に緩和されるものもいるが、多くの患者においては治療にもかかわらず痛みが持続する。米国における調査では、約25%の患者において治療にもかかわらず激しい制御不能な痛みが持続したことが示されている。上記のパーセンテージを考慮すると、骨癌すなわち骨転移を治療するための新規なかつ有効な薬剤が切に求められていることは明らかである(Gralowら、Journal of Pain and Symptom Management, 第33巻(4), 2007年;G Owens, Am J Manag Care. 第13巻、290〜308頁、2007年;Hoeslら、Urol Int, 第76巻: 97〜105頁、2006年;Marquezら、Anticancer Res, 5〜6月;第24巻(3a):1347〜51頁、2004年;Lambronoudakiら、Ann. N.Y. Acad. Sci. 第1092巻:397〜402頁、2006年);Daubineら、J Natl Cancer Inst 第99巻、322〜330頁、2007年;Larssonら、Anticancer Res, 1989年、第9巻:1111〜1119頁、1989年)。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、骨格において発見される腫瘍すなわち骨転移の治療用のおよび骨粗鬆症の治療用の医薬品を製造するための修飾ヒドロキシポリマー複合体に関する。前記修飾ヒドロキシポリマー複合体は、ビホスホネート(biphosphonate)化合物および少なくとも1つの遊離アミノ基を有するグアニジン化合物がヒドロキシポリマーの活性化ヒドロキシル基に共有結合された複合体である。好ましいヒドロキシポリマーは、分子量が103〜106ダルトンであり、活性化されたデキストランである。好ましいビホスホネート化合物としては、ネリドロネートまたはアレンドロネートが挙げられ、好ましいグアニジン化合物としては、アグマチンまたはアミノグアニジンが挙げられる
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、LarssonおよびNygren(Larsonら、Anticancer Res, 1989年、第9巻:1111〜1119頁)に記載されるように実施された蛍光細胞毒性アッセイの結果を示す。デキストラン−グアニジン−ビホスホネート(DGB)を、濃度0.4、0.9、1.75、3.5、7および25μMにおいて、ゾレドロン酸(ゾメタ(登録商標))と比較した。図1において、y軸は、細胞系PC3(前立腺癌)の細胞生存率%を示し、x軸は、比較した試験物質のモル濃度を示す。
【図2】図2は、図1に記載されるのと同じ蛍光細胞毒性アッセイの結果を示す。図2において、y軸は、細胞系MDA453(乳癌)の細胞生存率%を示し、x軸は、比較した試験物質のモル濃度を示す。
【図3】図3は、デキストラン分子のグルコース単位が、グアニジン基およびビホスホネート基によって置換されている、典型的なグアニジン−デキストラン−ビホスホネート複合体の構造を示す。
【図4】図4は、グアニジン−デキストラン−ビホスホネート複合体を用いて処理した、注射してから6.5時間後の右肩における病変のガンマ画像(ant)である。
【図5】図5は、グアニジン−デキストラン−ビホスホネート複合体を用いて処理した、注射してから24時間後の右肩における病変のガンマ画像(ant)である。
【図6】図6は、グアニジン−デキストラン−ビホスホネート複合体を用いて処理した、注射してから6時間後の右大腿骨における病変のガンマ画像(ant)である。
【図7】図7は、グアニジン−デキストラン−ビホスホネート複合体を用いて処理した、注射してから6時間後の右膝における病変のガンマ画像(ant)である。
【図8】図8は、グアニジン−デキストラン−ビホスホネート複合体を用いて処理した、注射してから6.5時間後の右肩における病変のガンマ画像(ant)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
国際特許出願第PCT/EP2008/052714号において、本発明者は、固有毒性が非常に低い特定のグアニジン化合物は、デキストランなどの無毒性ヒドロキシルポリマーと共有結合すると、高い腫瘍細胞死滅効力を有することを示した。デキストラン−グアニジンの腫瘍細胞死滅効力は、ファルモルビシン(登録商標)およびアドリアマイシン(登録商標)などの確立されたアントラサイクリン抗癌医薬品と等しいか、または濃度によっては、確立された抗癌剤よりも高いことが示された。前記ポリマー−グアニジン複合体の構成要素の無毒性により、従来の化学療法抗癌医薬品と比較して、このような複合体の取扱い、すなわち、医療スタッフにとっての取扱い、および治療に関連する患者への副作用が好ましいものとなり得る可能性が高いようである。
【0010】
標的細胞または腫瘍細胞の選択性は、アミノ−5−グアニジノペンタン酸および構造上関連したグアニジン化合物、ならびにポリアミンを形成するための他の構成要素を必要とする、迅速に分割する腫瘍細胞の代謝要求が高まることによって達成されると考えられている(D Scott Lind, Am Soc Nutr Sci, 2004年、J Nutr, 第134巻:2837〜2841頁; E Wayne, Turk J Med Sci, 2003年、第33巻, 195-205頁)。前記グアニジン化合物の細胞摂取は、主として、Na+非依存性塩基性アミノ酸輸送システムy+によって媒介される(Cendanら、Ann Surg Oncol, 1995年、第2巻:257〜265頁)。
【0011】
本発明は、修飾ヒドロキシポリマー複合体、例えば、ビホスホネート基などの骨集積部分およびグアニジン基などの腫瘍細胞死滅部分の両方によって置換された修飾デキストランである。好ましい修飾ヒドロキシポリマー複合体は、抗破骨細胞活性を有する腫瘍細胞死滅デキストラン−グアニジン−ビホスホネート化合物である。前記修飾ヒドロキシポリマー複合体は、少なくとも1つの遊離アミノ基を有し、かつ、ヒドロキシポリマー部分の活性化ヒドロキシル基に共有結合したグアニジン化合物によって置換されたデキストランなどのヒドロキシポリマーである。
【0012】
好ましい前記グアニジン化合物は、アグマチンまたはアミノグアニジンであり、前記ヒドロキシポリマー部分は、分子量が103〜106ダルトンであり、かつ、前記グアニジン化合物によって置換される前に活性化されるデキストランである。
【0013】
前記修飾ヒドロキシポリマー複合体はさらに、放射性核種、治療化合物、抗腫瘍薬、標的剤等を含む共有結合した官能基を含み得る。
【0014】
前記修飾ヒドロキシポリマー複合体は、好ましくは、グアニジン−デキストラン複合体であり、前記デキストランは、分子量が103〜106ダルトンであり、前記ヒドロキシポリマー化合物(例えば、デキストラン)のグルコース部分の少なくとも15%、好ましくは20%が、少なくとも1つの遊離アミノ側基を有するグアニジン化合物によって置換され、好ましくは、前記ヒドロキシポリマー化合物(例えば、デキストラン)の前記グルコース部分の少なくとも10%、好ましくは15%が、ビホスホネート化合物によって置換されている。前記グアニジン化合物、好ましくは、アグマチンまたはアミノグアニジンは、前記ヒドロキシポリマー化合物の活性化ヒドロキシル基と共有結合している。
【0015】
前記ビホスホネート化合物は、好ましくは、アレンドロネート、ネリドロネート、または他の同様のビホスホネート化合物である。前記ヒドロキシポリマー複合体はさらに、放射性核種、治療化合物、抗癌剤、標的剤等を含む共有結合した官能基を含み得る。
【0016】
本発明はまた、特に骨腫瘍すなわち転移性骨病変、および骨粗鬆症の治療用の薬剤を製造するための、前記修飾ヒドロキシポリマー複合体の薬剤として使用に関する。
【0017】
前記薬剤は、抗破骨細胞活性を有する殺腫瘍組成物であり、前記薬剤は、前記修飾ヒドロキシポリマー複合体および少なくとも1つの薬学的に許容可能なアジュバントを含む。前記薬剤または殺腫瘍組成物は、局所、膀胱内、部位局所(regiolocally)、腹膜内、腫瘍内、全身、または静脈内投与される。前記薬剤はさらに、放射性核種、治療化合物、抗癌剤、標的剤等を含む共有結合した官能基を含み得る。
【0018】
本発明の最も好ましい修飾ヒドロキシポリマー複合体は、転移性骨病変を治療するためのグアニジン−デキストラン−ビホスホネート化合物である。
【0019】
本発明はまた、前記修飾ヒドロキシポリマー複合体を製造するための方法を提供する。前記ヒドロキシポリマーは、過ヨウ素酸塩が、前記ヒドロキシポリマーを含む水溶液に加えられ、次いで、濃硫酸が加えられる酸化反応によって活性化され、エチレングリコールを加えることによって反応は終了する。上記のように活性化されたヒドロキシポリマーは、次に、ゲル濾過によって精製される。
【0020】
グアニジン化合物およびビホスホネート化合物は、前記精製した活性化ヒドロキシポリマーを含む溶液に順次加えられる。加える順番を変えてもよい。前記修飾ヒドロキシポリマー複合体における置換度または前記修飾ヒドロキシポリマー複合体に存在するグアニジンもしくはビホスホネート化合物の割合をより良好に制御するため、前記ヒドロキシポリマーは、まず、比較的大量に存在することが意図される化合物と結合され、次いで、比較的少量で存在することが意図される他の化合物と結合される。ビホスホネート化合物が比較的少量で存在することが所望される場合には、前記ビホスホネート化合物が二番目に加られ、前記グアニジンが一番目に加えられる。グアニジン化合物が比較的少量で存在することが所望される場合には、前記グアニジン化合物が二番目に加えられ、前記ビホスホネート基が一番目に加えられる。両複合体を同時に加えることも当然のことながら可能であるが、この場合の結果は、より危険であるか、または制御性が劣り得る。
【0021】
一般に、本発明の修飾ヒドロキシポリマー複合体は、ヒドロキシポリマーまたはデキストラン1mol当り、グアニジン化合物30molおよびビホスホネート化合物30mol含むことが望ましい。言うまでもなく、前記修飾ヒドロキシポリマー複合体は、使用される出発材料の量に応じて、ランダムに配置される様々な量のグアニジンおよびビホスホネートを含み得る。本発明では、前記修飾ヒドロキシポリマー複合体は、ヒドロキシポリマー化合物1mol当り、ビホスホネートを少なくとも10mol、ビホスホネートを好ましくは20molまたはビホスホネートを最も好ましくは25mol、グアニジンを少なくとも25mol、グアニジンを好ましくは30molまたはグアニジンを最も好ましくは35mol含まなければならない。前記ビホスホネートの量は、ヒドロキシポリマー1mol当り30molより多くてもよい。その場合、グアニジンの量は、30molよりも少なくなければならない。あるいは、グアニジンの量は、ヒドロキシポリマー化合物1mol当り30molより多く35molまででもよく、その場合、ビホスホネートの量は、30molよりも少なくなければならない。
【0022】
前記ヒドロキシルポリマーまたはデキストランポリマーは、グアニジンの側基によって置換される。前記グアニジン基は、前記ヒドロキシポリマーまたはデキストランポリマーに前記グアニジン化合物の遊離アミノ側基を介して共有結合される。酸化による前記デキストランポリマーの活性化が置換よりも先行し、それにより、グアニジン化合物の結合を形成する前記遊離アミノ側基との反応およびそれに次ぐ還元で、安定したアミン結合を得ることができる(Matsunagaら、Nucl Med Biol. 2005年、第32巻、279〜285頁)。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、前記修飾ヒドロキシポリマー複合体は、ビホスホネートである官能基を備える。好ましい修飾ヒドロキシポリマー複合体は、デキストラン−グアニジン−ビホスホネート複合体であり、前記ビホスホネート基は、ネリドロネートまたはアレンドロネート基である。
【0024】
前記修飾ヒドロキシポリマー複合体、好ましくは、デキストラン−グアニジン−ビホスホネートは、特に、進行した前立腺癌すなわちホルモン抵抗性前立腺癌(HRPC)における転移性骨病変を治療するのに有用であり、破骨細胞活性に影響を与え得る。前記デキストラン−グアニジン−ビホスホネート複合体は、標的剤として、骨集積ビホスホネート部分、例えば、ネリドロネートまたはアレンドロネートを含み、腫瘍細胞死滅部分としてグアニジン基、例えば、アグマチンまたはアミノグアニジンを含む。適切なビホスホネートは、骨リモデリングと高い親和性を有する一群の医薬品において見出すことができる。
【0025】
前記グアニジン−ヒドロキシポリマー複合体化合物にさらに結合し得る他の官能基としては、治療薬、Tc−99m、I−131、Y−90、Re−188、Sm−153などの放射性核種、ホルモン、タモキシフェン(Tamoxifen)などのホルモン拮抗薬、ソマトスタチンなどのペプチド、トキシン、モノクローナル抗体もしくはそのフラグメント、アミフォスチンなどのフリーラジカルスカベンジャーもしくは蛋白質、および標的剤が挙げられる。このような官能基の結合は、直接、または、官能基を含む前に前記ヒドロキシポリマーに結合された二官能キレートを介して達成される。
【0026】
本発明の修飾ヒドロキシポリマー複合体は、好ましくは、局所的に(例えば、膀胱内投与により)、部位局所的に(例えば、腹腔への投与により)、腫瘍内に(例えば、固体腫瘍への直接注入により)、または全身に(すなわち、静脈投与により)投与される。これらすべての投与経路が可能であり、特定の治療への応用に依存する。
【0027】
本発明はまた、前記修飾ヒドロキシポリマー複合体の有効量を、これを必要とする対象者に投与することによって、前立腺癌の骨転移を治療するための方法を提示する。
【0028】
本発明の修飾ヒドロキシポリマー複合体すなわちデキストラン−グアニジン−ビホスホネート複合体の標的効力は、デキストラン−グアニジン−ビホスホネートなどの放射標識された修飾ヒドロキシポリマー複合体を用いて、HRPCを患う患者において示された。これらの図もまた、前記修飾ヒドロキシポリマー複合体が骨格内の腫瘍病変を撮像し、特定するために用いられ得ることを示している。前記デキストラン−グアニジン−ビホスホネートは、実施例2に記載される過テクネチウム酸塩−塩化第一スズ(stannochloride)方法を含む当該技術分野で公知の多数の方法によって放射標識され得る。
【0029】
明確な摂取を含む結果は図4から図8に示され、デキストラン−グアニジン−ビホスホネートなどの本発明の修飾ヒドロキシポリマー複合体の標的実現可能性および前立腺癌の骨転移を治療するためのその潜在力を示している。同時に、この結果は、本発明の修飾ヒドロキシポリマー複合体すなわちデキストラン−グアニジン−ビホスホネートがまた、例えば、骨粗鬆症を治療するための潜在力を有することも示している。
【0030】
以下の例では、化合物の調製およびその効果について示される。
【実施例1】
【0031】
[デキストラン−グアニジン−ビホスホネートの合成]
[活性化]
医薬品グレードのデキストランPM40(150mg)を水5mlに溶解させた。過ヨウ素酸ナトリウム120mgを加え、次いで、濃硫酸25μlを加えた。この混合溶液を45分間撹拌した。酸化を停止させるため、エチレングリコール25μlを加え、さらに15分間反応させることによって過剰な過ヨウ素酸塩を破壊した。次に、pHを0.2M酢酸ナトリウムで6.5に調整した。
【0032】
[複合化]
上記の手順によって得られた溶液2mlをアレンドロネート20mgおよびシアノ水素化ホウ素ナトリウム5mgと混合した。この溶液を室温で撹拌し、1.5時間インキュベートさせた。1時間後、アミノグアニジン80mgを加えた。この溶液を室温でさらに4時間撹拌し、次に、溶離剤としてPBSを用いるPD10カラム上において低分子量成分から分離した。精製した複合体溶液4mLを得た。通常、この合成では、デキストラン1mol当りグアニジン20〜30molおよびアレンドロネート10〜20molとなる。
【0033】
[蛍光細胞毒性アッセイ]
LarssonおよびNygren(Larsonら、 Anticancer Res, 1989年、第9版:1111〜1119頁)に記載されるように蛍光細胞毒性アッセイを行った。
【0034】
簡単に説明すると、1ウェル当り約10,000個の細胞を播種した(96ウェル マイクロタイタープレート、Falcon, Becton Dickinson, Meylan, フランス)。デキストラン−グアニジン−ビホスホネート(DGB)、および、比較として、ゾレドロン酸(ゾメタ(登録商標)を濃度0.4、0.9、1.75、3.5、7および25μMにおいてウェルに加えた。対照のウェルには同量のPBSを与えた。72時間インキュベーションした後、マイクロタイタープレートを遠心分離にかけ(200×gで3分間)、前記プレートを指でパチンとはじくことにより培地を除去した。細胞をPBS中で洗浄した。フルオレセイン二酢酸(FDA, Sigma, ストックホルム、スウェーデン)をDMSOに溶解させ、ストック溶液(10mg/ml)として−20℃に凍結させた。このFDAストック溶液を10μg/mlの濃度でPBS中に希釈し、200μlを各ウェルに加えた。次に、前記プレートを37℃で30分間インキュベートさせた。96ウェル走査蛍光計を用いて生存している細胞から放射された蛍光をカウントした。データをコンピュータに移し、結果を計算した。
【0035】
この結果を図1および図2に示す。図1および図2において、y軸は、細胞生存率%を示し、x軸は、テスト物質のモル濃度を示す。2つの細胞系、PC3(前立腺癌)およびMDA453(乳癌)を用いた。図1に示される結果は、使用したすべての濃度において、デキストラン−グアニジン−ビホスホネート(DGB)が、比較のために使用した骨癌薬ゾレドロン酸よりもさらに効力があることを示している。前立腺癌細胞は、濃度25μMで完全に死滅したが、この濃度では、ゾレドロン酸は、前立腺癌細胞の半分しか死滅させなかった。図2に示される結果は、使用したすべての濃度において、デキストラン−グアニジン−ビホスホネート(DGB)が、比較のために使用した骨癌薬ゾレドロン酸よりもさらに効力があることを示している。乳癌細胞は、濃度7μMで完全に死滅したが、この濃度では、ゾレドロン酸は、乳癌細胞にはほとんど効力を示さなかった。
【実施例2】
【0036】
[デキストラン−グアニジン−ビホスホネートの合成]
[活性化]
医薬品グレードのデキストランPM70(150mg)を水6mlに溶解させた。過ヨウ素酸ナトリウム120mgを加え、次いで、濃硫酸25μl加えた。この混合溶液を30分間撹拌した。酸化を停止させるため、エチレングリコール75μlを加え、さらに15分間反応させることによって過剰な過ヨウ素酸塩を破壊した。溶離剤として0.1M酢酸塩(pH6.5)を用いるPD10カラム上においてゲル濾過により低分子量成分から1mLずつ活性化デキストランを精製した。各分離において、活性化デキストラン溶液2mLを得た。
【0037】
[複合化モード1]
上記の手順によって得られた溶出液1mlをアレンドロネート10mgおよび過ヨウ素酸ナトリウム5mgと混合した。この溶液を室温で撹拌し、2時間インキュベートさせた。2時間後、アミノグアニジン65mg2を加えた。この溶液を室温で一晩撹拌し、次に、溶離剤としてPBSを用いるPD10カラム上において低分子量成分から分離した。精製した複合体溶液2mLを得た。
【0038】
[複合化モード2]
上記の手順によって得られた溶出液1mlをアミノグアニジン65mgおよび過ヨウ素酸ナトリウム5mgと混合した。この溶液を室温で撹拌し、2時間インキュベートさせた。2時間後、アレンドロネート10mgを加えた。この溶液を室温で一晩撹拌し、次に、溶離剤としてPBSを用いるPD10カラム上において低分子量成分から分離した。精製した複合体溶液2mLを得た。
【0039】
[放射性標識]
0.2M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH6)300μl中のグアニジン−デキストラン−ビホスホネート複合体3mgを過テクネチウム酸塩300μl(約700MBq)と混合し、次いで、塩化第一スズ10μl(エタノール中約50μg)を加え、この溶液をゆるやかに混合し、15分間インキュベートさせた。インキュベーション後、この溶液を使い捨てセファデックスG25カラム(PD10)上で精製した。最後に、この精製した溶液を滅菌フィルタ(0.22μ)で濾過し、得られた標識収率を測定した。
【0040】
[標的概念の証明]
骨病変と診断された二人のホルモン抵抗性前立腺癌患者に、約500MBqのテクネチウム99mで標識されたデキストラン−グアニジン−ビホスホネート約3mgを注射した。注射してから2、4、6、24時間後に、ガンマ画像を回収した。
【0041】
[結果]
明確な摂取は、右膝(図7)および右肩(図8)において示される。これらの画像は、診断の際に実施された従来の骨のスキャンの結果と一致している。この結果は、デキストラン−グアニジン−ビホスホネートの実現可能性および前立腺癌の骨転移を治療するためのその潜在力を示している。デキストラン−グアニジン−ビホスホネートは、骨粗鬆症の治療に対して潜在力を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍細胞死滅効果を有する修飾ヒドロキシポリマー複合体であって、前記修飾ヒドロキシポリマー複合体は、ビホスホネート基および少なくとも1つの遊離アミノ基を有するグアニジン基によって置換されたヒドロキシポリマーであり、前記ビホスホネート基および前記グアニジン基は、前記ヒドロキシポリマーの活性化ヒドロキシル基に共有結合していることを特徴とする修飾ヒドロキシポリマー複合体。
【請求項2】
前記ビホスホネート基は、ネリドロネートまたはアレンドロネートであることを特徴とする請求項1に記載の修飾ヒドロキシポリマー複合体。
【請求項3】
前記グアニジン基は、アグマチンまたはアミノグアニジンであることを特徴とする請求項1に記載の修飾ヒドロキシポリマー複合体。
【請求項4】
前記ヒドロキシポリマーは、分子量が103〜106ダルトンであることを特徴とする請求項1に記載の修飾ヒドロキシポリマー複合体。
【請求項5】
前記修飾ヒドロキシポリマー複合体は、ヒドロキシポリマー化合物1mol当り、グアニジン基を少なくとも25mol、好ましくは少なくとも30mol、最も好ましくは35mol含み、ヒドロキシポリマー化合物1mol当り、グアニジン基を少なくとも10mol、好ましくは少なくとも20mol、最も好ましくは25mol含むことを特徴とする請求項1に記載の修飾ヒドロキシポリマー複合体。
【請求項6】
前記ヒドロキシポリマーは、デキストランであることを特徴とする請求項1に記載の修飾ヒドロキシポリマー複合体。
【請求項7】
前記修飾ヒドロキシポリマー複合体は、少なくとも1つのさらなる共有結合した官能基を含むことを特徴とする請求項1に記載の修飾ヒドロキシポリマー複合体。
【請求項8】
前記官能基は、放射性核種、治療性化合物、抗癌剤、または標的剤であることを特徴とする請求項7に記載の修飾ヒドロキシポリマー複合体。
【請求項9】
骨腫瘍もしくは骨転移または骨粗鬆症を治療するための請求項1に記載の修飾ヒドロキシポリマー複合体。
【請求項10】
前記修飾ヒドロキシポリマー複合体は、局所、膀胱内、部位局所、腹膜内、腫瘍内、全身、または静脈内投与可能であることを特徴とする請求項1に記載の修飾ヒドロキシポリマー複合体。
【請求項11】
骨腫瘍すなわち骨転移、または骨粗鬆症を治療するための薬剤を製造するための請求項1に記載の修飾ヒドロキシポリマー複合体の使用。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の修飾ヒドロキシポリマー複合体および少なくとも1つの薬学的に許容可能なアジュバントを含むことを特徴とする殺腫瘍組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの遊離アミノ基を有するグアニジン化合物およびビホスホネート化合物は、精製した活性化ヒドロキシポリマーを含む溶液に任意の順番で順次加えられることを特徴とする請求項1に記載の修飾ヒドロキシポリマー複合体を製造する方法。
【請求項14】
前記活性化ヒドロキシポリマーは、過ヨウ素酸塩がヒドロキシポリマーを含む水溶液に加えられ、次いで濃硫酸が加えられる酸化反応によって得られ、前記酸化反応は、エチレングリコールを加えることによって停止し、次いで、ゲル濾過によって精製が行われることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
骨腫瘍すなわち骨転移、または骨粗鬆症の治療を必要とする対象者に請求項1に記載の修飾ヒドロキシポリマー複合体を有効量与える癌の治療方法。
【請求項16】
治療される前記骨腫瘍すなわち骨転移は、ホルモン抵抗性前立腺癌または乳癌に関連する請求項16に記載の方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−516508(P2011−516508A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503339(P2011−503339)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054139
【国際公開番号】WO2009/124580
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(504401905)デクステック メディカル エービー (2)
【Fターム(参考)】