説明

骨髄内釘をロッキングする共平面X線ガイド型照準アーム

骨髄内釘内に遠位側ロッキングねじを挿入するための新規な共平面X線ガイド型方法および装置を開示する。照準器具は、保護スリーブの挿入を可能にする共平面孔を有している。ドリルおよび骨ねじは、保護スリーブを通って挿入される。照準アームの放射線不透過性マーカは、X線ビームが照準アームの横断孔と共平面になるように、X線源を容易に位置決めすることを可能にする。X線源が正確に配置されたならば、単一のスナップショットだけで、移植された骨髄内釘の正確な歪みを充分に評価できる。X線ビームは必ずしも骨髄内釘孔と同心状である必要はない。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、係属中の2004年9月23日付米国特許出願第10/947,155号の優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、骨髄内釘(intramedullary nails)をロッキングする照準アームに関し、より詳しくは、骨髄内釘をロッキングするX線ガイド型照準アームに関する。
【背景技術】
【0003】
管状骨の骨折の治療に骨髄内釘を使用することは良く知られている。骨片を骨釘上に保持して骨片が変位しないように固定するため、骨の骨髄管内には、骨折部位を横切るようにして釘が移植される。釘は、横断孔を有しかつ釘の孔に通して周囲の骨内にねじ込む必要がある多数のロッキングねじまたは固定ボルトにより骨に固定される。釘が骨髄管内に挿入されると、釘の遠位端は、裸眼では見えなくなる。骨折した骨および移植された骨髄内釘の両方を横切ってロッキングねじを首尾良く配置するため、種々の方法および装置が開発されている。
【0004】
通常、釘は、両端部、すなわち入口点に近い位置および入口点から遠い位置でロックされる。釘が移植される骨の領域は近位側として識別され、骨髄内釘とは反対側の端部は遠位側として識別される。釘のロッキングは、現在、機械的照準アームまたはX線ガイダンスのいずれかを用いて行われている。
【0005】
下記特許文献1から特許文献3に開示されているように、移植される骨釘の近位端に固定的に取付けられる機械的照準器具は、信頼できるドリリングが行えるように、近位側ねじ孔との同心状整合を与える。
【0006】
この機械的照準アームの長所は、患者および外科医のいずれもがX線源に曝露されないことである。しかしながら、遠位側ねじ孔は、骨内に打ち込まれる間に骨髄内釘が歪むことと、照準アームに生じる機械的応力のいずれか、或いは、両方のため、満足できる機能を発揮しない。照準アームガイド型ロッキングは、通常、近位側ロッキングに対しては成功を収めている。なぜならば、釘の長さが短い場合には、骨内に挿入されたときに、釘の歪みを無視できるからである。しかしながら、遠位側ロッキングに対しては、非常に短い釘であっても成功を収めてはいない。なぜならば、骨内に挿入されたときに釘の歪みを無視できないからである。
【0007】
移植される骨髄内釘の歪みは3次元空間内に生じ、その主要コンポーネンツ、すなわち、
・骨髄内釘の軸線での長さ変化;
・骨髄内釘の軸線での回転歪み;
・骨髄内釘の遠位側孔の平面内の曲り歪み;
・骨髄内釘の遠位側孔の平面に対して垂直な曲り歪み;
に分析される。
【0008】
本発明者等は、共平面の遠位側孔が設けられた無スロット骨髄内釘を用いるときは、上記最初の3つの歪みすなわち(1)釘の軸線での長さ歪み、(2)釘の軸線での回転歪み、および(3)釘の遠位側ねじ孔の平面内の曲り変形は受入れることができる。しかしながら、釘の遠位側ねじ孔の平面に対して垂直な平面内の曲り歪みは非常に重要で、かつ遠位側ロッキングが目的である場合には重要な歪みである。
【0009】
X線ガイダンスは、非常に短い釘を除き、遠位側ロッキングに現在最も多く使用されているものである。処置は、X線ビームを釘孔の軸線内に正確に位置決めすることからスタートするが、或る場合には、X線技術者にとって必ずしも簡単なことではない。骨髄内釘は、X線モニタ上に、暗くて細長いイメージとして映り、一方、釘孔は明るい円または楕円として現われる。より詳しくは、釘孔は、X線ビームが釘孔の軸線に平行になるようにX線源が配置されるときは円として現われるが、或る場合には複雑な3次元処置となる。
【0010】
釘孔が位置決めされたならば、ドリルを用いて、ロッキングねじを挿入すべく骨をドリリングする。この処置は、照準アームガイドを用いて(または用いないで)行うことができ、この場合、照準アームガイドは骨に固定してもよいし、固定しなくてもよい。
【0011】
例えば、下記特許文献4から特許文献8に開示されているように、骨折した骨および移植した骨髄内釘の両者を横切ってロッキング骨ねじを正確に配置すべくX線源と組合せて種々の照準ガイドを使用することは当業界で知られている。
【0012】
これらの全てのX線ガイド型処置は、X線ビームが釘孔の軸線に平行になるようにX線源を配置することを必要とする。これは必ずしも簡単ではなく、不可能な場合もある。これはまた、外科医、患者および手術室スタッフへの好ましくないX線曝露を増大させかつ手術を長引かせることにもなる。
【0013】
これまで、X線ガイド型ロッキングに付随する問題を解消できる、成功性のある遠位側ロッキング法を得る試みがなされてきた。しかしながら、これらの殆どのシステムは、扱い難くかつ骨内への移植後に歪んだ骨髄内釘内の孔の位置を正確に評価するには付加的な骨ねじを必要とする。
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,334,192号明細書
【特許文献2】米国特許第5,766,179号明細書
【特許文献3】米国特許第6,514,253号明細書
【特許文献4】米国特許第4,803,976号明細書
【特許文献5】米国特許第4,850,344号明細書
【特許文献6】米国特許第6,656,189号明細書
【特許文献7】米国特許第4,667,664号明細書
【特許文献8】米国特許第4,881,535号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、外科医が、正確で速くかつ信頼できる方法で、骨髄内釘内に骨ねじの目標を定め、かつ、前記骨ねじを配置することを可能にする新規な遠位側ロッキング装置および方法に関するものである。
【0016】
従って本発明の目的は、骨内への骨髄内釘の挿入後に、骨髄内釘を補償すべく調節できかつX線イメージインテンシファイアの幾つかのスナップショットにより与えられる情報を使用できる照準アームを提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、X線ビームが照準アームの孔の軸線と共平面となるようにX線源が位置決めされる時点を決定するのに使用する放射線不透過性マーカを備えた骨髄内釘の遠位側ロッキングを行う放射線透過性照準アームを提供することにある。
【0018】
更に本発明の目的は、外科医、患者および手術室スタッフへの好ましくないX線曝露を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、X線技術者および外科医にとって容易かつ簡明な手順を提供しかつ骨髄内釘の遠位側骨固定を簡単かつ迅速にし、これにより、実際の手術における最も重要な1つの問題点すなわち時間短縮に対処できる。
【0020】
本発明の照準アームは、X線ビームを釘孔と同心状にする必要がない、遠位側ロッキングの容易に得られるX線ガイダンスを行うことにより、外科医、患者および手術室スタッフの好ましくないX線曝露を低減させ、従来の照準アームの欠点を解消できる。
【0021】
本発明の新規な特徴は、X線イメージインテンシファイアの幾つかのスナップショットにより得られる情報を用いて、骨内への釘の挿入後に釘情報を補償すべく調節できる照準アームにある。
【0022】
上記目的を満たすことにより、本発明は、医療ケア分野にとって極めて有効である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態は、骨釘に取付けられる調節可能な照準アームを提供する。照準アームは、放射線透過性材料で構成されかつ共平面の横断孔を有している。照準アームは多数の放射線不透過性ターゲットマーカを有し、X線源の位置が、X線ビームが照準アームの横断孔と共平面になる位置であるか否かをX線技術者が評価することを可能にする。この位置での単一のX線スナップショットにより示されるイメージは、骨内への釘の挿入後の釘の歪み量に関する正確な情報を外科医に与え、これにより、外科医が、骨髄内釘の歪みの補償に必要な照準アームの調節量を決定することが可能になる。照準アームの横断孔が釘孔と同心状になるように、ひとたび照準アームが釘孔に対して正確に配向されると、周囲の骨物質をドリリングすることができる。骨がドリリングされたならば、ロッキング骨ねじが、照準アームの横断孔内に予め挿入されている保護スリーブを通してねじ込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の他の目的、長所および新規な特徴は、添付図面を参照して述べる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0025】
本発明の好ましい特徴が添付図面に示されており、幾つかの図面において、同じ要素は同じ参照番号で示されている。
【0026】
以下、図1から図7を参照して、本発明の好ましい実施形態による骨固定方法を説明する。
【0027】
図1を参照すると、ここには照準器具4が示されており、前記照準器具4には可動照準アーム部分6が取付けられている。照準アーム4には、2つの共平面横断孔3を備えた骨髄内釘2が取付けられている。保護スリーブ7が、照準アーム4の可動部分6に設けられた孔5を通ってスライドし、骨髄内釘2の遠位側ロッキングを行う釘横断孔3を通るドリルおよび骨ねじをガイドする。可動照準アーム部分6は、照準アーム4に対して軸線9の回りで回転する。
【0028】
照準アーム4は骨髄内釘2に取付けられ、釘2が骨ねじ内に挿入される前に、照準アーム孔5と骨髄内釘孔3とが、図2および図3に示すように正確に整合される。
【0029】
骨内に移植された後に骨髄内釘2が歪むと、骨髄内釘孔3が移動して、図4に示すように、照準アーム孔5とは整合しなくなる。
【0030】
好ましい実施形態では、照準アーム4は、少なくとも一部が比較的放射線を透過する材料で形成されかつ放射線不透過性のターゲットマーカ10、11が設けられている。これらのターゲットマーカ10、11は、X線源の位置が照準アーム孔の平面と共平面になった時点をオペレータが評価することを可能にし、かつX線ビームが照準アーム孔の平面と共平面になることを確保し、これにより、X線ビームと骨髄内釘孔3とを同心状にする必要性をなくすことができる。従って、図6に示すように、X線ビームが照準アーム孔5と共平面になるように位置決めされたX線源からの単一のスナップショットで、充分に骨髄内釘2の正確な歪みを決定できる。
【0031】
調節ノブ8を必要量だけ回転させることにより、照準アームの可動部分6は、骨髄内釘2の歪みを補償すべく位置決めされ、これにより、照準アーム孔5および釘孔3は、図5および図7に示すように再整合される。
【0032】
ひとたび照準アーム孔5と骨髄内釘孔3とが整合されると、保護スリーブ7を照準アーム孔5に通して容易にスライドさせることができる。保護スリーブ7が位置決めされた後、ドリルビットが、釘孔3と整合されかつ釘孔3および周囲の骨物質を通ってドリリングされる。ひとたび第二ドリルビットが第二釘孔3および周囲の骨物質を通って正確にドリリングされると、第二ドリルビットが取外され、ロッキングねじが保護スリーブに挿通されかつ骨および第二釘孔3を通ってねじ込まれ、釘を骨に固定する。最後に、第一ドリルビットが取外され、かつ第二ロッキングねじがスリーブ7に挿通されて、骨1および第一釘孔3にねじ込まれ、骨髄内釘2を骨1に固定する。
【0033】
次に、本発明の他の好ましい実施形態による照準アーム器具を、図8から図14を参照して説明する。
【0034】
図8を参照すると、ここには、短い骨髄内釘12に取付けられた照準器具14が示されている。骨髄内釘12には、2つの共平面横断孔13が設けられている。骨髄内釘12の遠位側ロッキングを行うべく釘横断孔13を通してドリルおよび骨ねじをガイドするため、保護スリーブ17は、照準アーム14内に配置されるインサート16内に存在する孔15を通ってスライドできる。インサート孔15および釘孔13は同じ軸線19を有している。
【0035】
放射線不透過性ターゲットマーカ、例えばバブル20およびライン21を備えた照準アーム14は、骨釘12に取付けられる。骨髄内釘12が骨1内に挿入される前に、照準アーム孔15および釘孔13は、図9および図10に示すように、完全に整合される。
【0036】
骨内に挿入された後、骨髄内釘12は、一般に、図11に示すように、照準アーム孔15と釘孔13とが、もはや整合しなくなるまで歪む。
【0037】
X線ビームが照準アーム孔15と共平面になるように配置されたX線源の単一スナップショットは、図12に示すように、釘の歪み量を決定するのに充分である。オフセット孔が設けられたインサート16を用いることにより、照準アーム孔15および骨髄内釘13が、図13および図14に示すように、再び整合される。
【0038】
ひとたび照準アーム孔15と骨髄内釘孔13とが整合されると、保護スリーブ17を照準アーム孔15に通して容易にスライドさせかつドリルを保護スリーブ17を通してスライドさせて、骨1にボアを形成することができる。オペレータは、次に、骨髄内釘12をロックすべく、保護スリーブ17および整合した釘孔13を通して骨ねじをスライドさせることができる。
【0039】
図15および図16に示す更に別の好ましい実施形態では、本発明は、患者の骨内の所定位置に釘32を遠位側にロックすべく、骨髄内釘32内の横断ボアのターゲッティングを行う放射線透過性照準器具30に関する。照準器具30は照準アーム34を有し、照準アーム34は、上方ハンドル36に対して着脱可能かつ調節可能に連結されかつドリリング要素および固定要素を受入れかつガイドする少なくとも1つの横断孔33を有している。照準アーム34は、軸線50の回りでハンドル36に対して回転できかつ軸線53に沿って参照番号52で示す方向に直線移動できるように構成されている。照準アーム34はまた、左側骨髄内釘または右側骨髄内釘の両方に使用できるように、ハンドル36から取外しかつ再連結することができる。ハンドル36は釘挿入ハンドル38を介して骨髄内釘32に取付けられ、釘挿入ハンドル38は、ローレット付ナット39を備えたボルト、ねじまたは他の連結要素を介して照準アームハンドル36に対して着脱可能に取付けられる。
【0040】
照準アーム34は、放射線透過性下方部分および上方部分37を有し、下方部分35は、ピン40を介して上方部分37にピボット連結されかつ調節ノブ42を有している。調節ノブ42はねじ機構を作動して軸線50の回りでアーム部分34を回転させ、上方照準アーム部分37およびハンドル36に対する下方照準アーム部分35の角度を調節する。好ましい実施形態では、軸線50は骨髄内釘の横断孔の軸線に対して平行である。ハンドル36はまた、複数の細長いスロット44を有し、このスロット44に沿って照準アーム34の上方部分37を調節可能に取付けることができる。釘32の方向(すなわち右側または左側)およびサイズ・長さに基いて選択される。1つ以上のピン46によりスロット44に沿ってひとたび取付けられると、照準アーム34は、ローレット付ナット48により、方向52に沿って更に直線移動できないように解放可能にロックされる。
【0041】
図18および図19に最も良く示すように、照準アーム34の下方部分35は、その上面56および下面58に、それぞれ1組の放射線不透過性マーカを有している。上面56は、この上面56の2つの長手方向縁部に沿って整合している複数の周辺円60と、上面56の中心線に沿う一連のドット62とを有している。また、より完全に後述するように、一連のスケールマーカ64(ダッシュの形態をなしている)が、照準アーム34がX線源と正確に整合されない場合に必要な角度調節度合いを決定する補助を行う。上面56にはまた、所与の装着にについての器具の正しい方向(すなわち、符号「L」および「R」)を表示する放射線不透過性マーカ66を付すことができる。好ましい実施形態では、円60は約5.0mmの直径を有し、スケールマーカ64は約5.0mmの長さを有する。
【0042】
図19に示すように、下面は、2本の周辺ライン68の形態をなす放射線不透過性マーカ自体の組と、1本の正中ライン70とを有し、これらの全てのラインは互いに平行に配置されている。周辺ライン68は下面58の両長手方向縁部に沿って延びているのに対し、正中ライン70は下面58の中心線に沿って延びている。ライン68、70は、約1.0−2.0mmの幅を有している。図16および図17に示すように、照準アーム34の下方部分35は、放射線透過性であることに加え、上面56と下面58との間に1つ以上の凹部72およびそれぞれの放射線不透過性マーカの組を有し、このため、放射線不透過性マーカ同士の間には小さい中実材料が存在するようになっている。これにより、イメージインテンシフィケーションの下での放射線不透過性マーカの視覚化および整合が補助される。
【0043】
本発明の特徴および利益を更に説明するため、上記照準器具の使用方法を以下に述べる。最初に、骨髄内釘を挿入する前に、釘は、本発明の照準器具と適正に整合されなくてはならない。従って、釘挿入ハンドル38が照準アームハンドル36に取付けられる。次に、照準アーム34が適当なスロット44に連結され、これは、釘の長さ・サイズおよび患者が必要とする移植の側(すなわち、左側または右側)に基いて選択される。ローレット付ナット48をハンドル36に緩く連結しかつキャリブレーショントロカール41を使用して、照準アーム孔33と骨髄内ペール(intramedullary pail)の横断孔とを整合させ、かつ照準アーム34の適当な長さを決定する。ひとたび照準アーム孔33が釘孔と適正に整合されたならば、ローレット付ナット48が緊締固定されかつキャリブレーショントロカールが照準器具30から取外される。この初期キャリブレーションの後、照準器具30が挿入ハンドル38から取外され、釘が患者の骨髄管内に挿入される。挿入後に、釘は一般に既知の技術を用いて近位側がロックされる。
【0044】
釘32が患者内に挿入されかつ近位側がロックされたならば、スロット44に沿って直線移動しないように照準アーム34をロックするローレット付ナット48を調節する注意を払うことなく、照準器具30が再び釘挿入ハンドル38に取付けられる。次に、イメージインテンシフィケーション器具(C−ARM)が患者の方向に移動されかつ骨の長手方向軸線に対して約30度から約40度、傾斜される(これにより、外科医が放射線から保護されかつ対側性四肢(contralateral limb)の回避を助ける)。次に、C−ARMを使用して、外科医は、照準アーム34の放射線不透過性マーカのイメージが適当な側(左側または右側)に形成されているか否かを確認する。適当な側にある場合には、図17に参照番号66で示す「L」または「R」の記号が示される。必要ならば、イメージが伝送される。C−ARMを使用している間、外科医は、次に、種々の放射線不透過性マーカ、例えば周辺円60、ドット62、マーカ64およびライン68、70を識別する。次に、ドット62が正中ライン70に重なり合うように、または、周辺円60と周辺ライン68との関係が対称的(図5および図20)になるように、或いは、それらの両方をみたすように、ドット62を整合させるべく、C−ARMビームが調節される。
【0045】
従って、ドット62および円60がライン68、70より上にある場合にはC−ARMを下方に回転させ、ドット62および円60がライン68、70より下にある場合にはC−ARMを上方に回転させるべきである。好ましい実施形態では、スケールマーカ64は、スケールの各目盛が2°の回転を表すように構成されている。従って、外科医は、スケールマーカ64を使用して、ビームと照準アーム孔33の平面とを適正に整合させるために必要なC−RAMの回転量を決定することができる。図20に示すように、中心ドット62が正中ライン70に重なり合いかつ周辺円60が周辺ライン68に対して対称的に横たわると、照準アーム34は、C−ARMと適正に整合されたことになる。円60が周辺ライン68に対して対称的に配置されない場合には、C−ARMは依然として調節を必要とする。
【0046】
照準アーム34が、ひとたびC−ARMと適正に整合されると、外科医は、釘を視覚化できかつ前後方向平面内すなわち釘孔の軸線に対して垂直な方向に何らかの曲げが生じた場合にはこれを決定できる。このような場合には、照準アーム34の下方部分35は、照準アーム孔33と釘孔とを再整合させるべく調節できる。前述のように、調節ノブ42を回転させると、ハンドル36に対して照準アーム34の下方部分35が回転されてこの整合が達成されかつ前後方向の釘の曲りが補償される。照準アーム34の角度を調節した後、放射線不透過性マーカが依然として適正に整合されていることを確保する最終チェックを行うべきである。適正に整合されていない場合には、上記整合段階を反復しなければならない。ひとたび整合されると、スリーブ・トロカール組立体が照準アーム孔33に挿通され、かつドリリングおよびロッキング要素の挿入の前に整合を確認すべく放射線不透過性マーカが再度チェックされる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態を例示して説明したが、当業者ならば、特許請求の範囲によってのみ定められる本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更を行うことが可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の好ましい実施形態による照準アームの平面図であり、保護スリーブおよび取付けられた骨髄内釘を示すものである。
【図2】骨髄内釘孔と正確に整合された照準アーム横断孔を示す側面図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態による整合された照準アームの斜視図であり、保護スリーブおよび照準アームに取付けられた骨髄内釘を示すものである。
【図4】本発明の好ましい実施形態による照準アームの側面図であり、骨への挿入後に取付けられた骨髄内釘が歪んでおり、照準アーム孔と骨髄内釘の横断孔とが整合していないところを示すものである。
【図5】本発明の好ましい実施形態による照準アームの側面図であり、釘の変形の補償がなされた後に、照準アーム孔および骨髄内釘の横断孔が整合されているところを示すものである。
【図6】照準アーム孔の平面内の斜視図であり、X線ビームが骨髄内釘孔の軸線と整合されないという事実にもかかわらず、骨髄内釘の交差孔と照準アーム孔との整合をいかにして確認するかを示すものである。
【図7】図5の斜視図である。
【図8】本発明の好ましい実施形態による照準アームの斜視図であり、骨内に移植された短い骨髄内釘を示すものである。
【図9】短い骨髄内釘と正確に整合された照準アーム孔を示す側面図である。
【図10】図9の斜視図であり、保護スリーブ、照準アームに取付けられた短い骨髄内釘、および前方および後方の放射線不透過性マーカを示すものである。
【図11】本発明の好ましい実施形態による照準アームの側面図であり、骨への挿入後に取付けられた骨髄内釘が歪んでおりかつ照準アーム孔と骨髄内釘の横断孔とが整合していないところを示すものである。
【図12】照準アームの平面内での斜視図であり、この平面内の単一のX線スナップショットにより、オペレータが、いかにして骨内への挿入後の骨髄内釘の正確な歪みを評価できるかを示すものである。
【図13】本発明の好ましい実施形態による照準アームの斜視図であり、歪んだ骨髄内釘および骨髄内釘の歪みを補償するオフセット孔を備えたインサートを示すものである。
【図14】図13の側面図である。
【図15】本発明の他の好ましい実施形態による照準アームの側面図であり、照準アームが骨髄内釘に連結されているところを示すものである。
【図16】図15に示した照準アームの平面図である。
【図17】図15の照準アームの下方部分を示す平面図および側面図である。
【図18】図15の照準アームの遠位側部分の上面の部分図であり、放射線不透過性マーカを示すものである。
【図19】図15の照準アームの下面の部分図であり、図18に示した面とは反対側の面を示すものである。
【図20】図15に示した照準アームの適正に整合した放射線不透過性マーカを示す部分図である。
【符号の説明】
【0049】
1 骨
2 骨髄内釘
3 共平面(横断孔)
4 照準器具(照準アーム)
7 保護スリーブ
10 放射線不透過性ターゲットマーカ
11 放射線不透過性ターゲットマーカ
15 インサート孔
41 キャリブレーショントロカール
60 周辺円
68 周辺ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植される骨髄内釘の横断孔の位置を決定する放射線透過性照準アームにおいて、
実質的に放射線透過性材料で構成された細長い本体を有し、細長い本体は、前部、後部および中心軸線をもつ少なくとも1つの横断孔を備え、細長い本体は骨髄内釘に取付けることができるようになっており、
さらに、細長い本体の前部に配置された少なくとも1つの放射線不透過性ターゲットマーカと、細長い本体の後部に配置された少なくとも1つの放射線不透過性ターゲットマーカとを有し、これらの放射線不透過性ターゲットマーカは、照準アームの少なくとも1つの横断孔の中心軸線と共平面のX線ビームを得るように、X線源の整合を表示することを特徴とする放射線透過性照準アーム。
【請求項2】
前記骨髄内釘は長手方向軸線を有し、放射線不透過性ターゲットマーカの整合は、釘が骨内に挿入される前に、X線ビームが、照準アームの横断孔の軸線と骨髄内釘の長手方向軸線とにより形成された平面と共平面内にあることを表示することを特徴とする請求項1記載の放射線透過性照準アーム。
【請求項3】
前記細長い本体は、骨髄内釘の近位端に取付けられる固定部分と、放射線不透過性ターゲットマーカおよび横断孔を備えた可動部分とを有し、
可動部分は固定部分に対して移動できることを特徴とする請求項1記載の放射線透過性照準アーム。
【請求項4】
前記細長い本体の可動部分は固定部分に対してピボット運動できることを特徴とする請求項3記載の放射線透過性照準アーム。
【請求項5】
前記可動部分のピボット運動を制御する調節ノブを更に有することを特徴とする請求項4記載の放射線透過性照準アーム。
【請求項6】
前記細長い本体の可動部分は固定部分に対してスライドできることを特徴とする請求項3記載の放射線透過性照準アーム。
【請求項7】
前記細長い本体は、開口と、この開口内に配置できるインサートとを有し、放射線不透過性マーカは前記インサート上に配置されていることを特徴とする請求項1記載の放射線透過性照準アーム。
【請求項8】
前記インサートには、スリーブを受入れるオフセット孔が設けられていることを特徴とする請求項7記載の放射線透過性照準アーム。
【請求項9】
前記オフセット孔は、インサートが照準アームの開口内に挿入されるときに、移植される骨髄内釘孔と同心状になることを特徴とする請求項8記載の放射線透過性照準アーム。
【請求項10】
複数のインサートが設けられており、各インサートは細長い本体の開口内に別々に配置でき、各インサートは、他のインサートの横断開口とは異なる位置に設けられた横断開口を備えていることを特徴とする請求項7記載の放射線透過性照準アーム。
【請求項11】
前記複数のインサートは、各々が細長い本体の開口内に別々にかつ個々に配置されることを特徴とする請求項10記載の放射線透過性照準アーム。
【請求項12】
異なる長さをもつ骨髄内釘に調節可能であることを特徴とする請求項10記載の放射線透過性照準アーム。
【請求項13】
前記細長い本体の前部に配置された少なくとも1つのターゲットマーカは、円およびラインからなる群の少なくとも1つであり、前記細長い本体の後部に配置された少なくとも1つのターゲットマーカは、円およびラインからなる他の群の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の放射線透過性照準アーム。
【請求項14】
移植される骨髄内釘の遠位側ロッキングを行う孔を位置決めする方法において、
近位端と、遠位端と、少なくとも1つの遠位側ロッキング孔とを備えた骨髄内釘を骨内に移植する段階と、
一軸線をもつ横断孔を備えた照準アームを用意する段階とを有し、照準アームは、少なくとも1つの放射線不透過性ターゲット部材を備えた前面および少なくとも1つの放射線不透過性ターゲット部材を備えた、前記前面とは反対側の後面を有し、
照準アームを骨髄内釘の近位端に連結する段階と、
前記前面上に配置された少なくとも1つの放射線不透過性ターゲットマーカと、前記後面上の少なくとも1つの放射線不透過性ターゲットマーカとを整合させることにより、X線ビームが照準アーム孔の中心軸線を含む平面と共平面になるようにX線源を位置決めする段階とを更に有することを特徴とする方法。
【請求項15】
前記照準アームの横断孔に対する、移植される骨髄内釘の遠位側ロッキング孔の相対位置を決定すべくX線スナップショットを撮る段階と、
照準アームの横断孔と骨髄内釘の遠位側ロッキング孔とを整合させる段階とを更に有することを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記照準アームは第一部分および第二部分を有し、前記整合段階は、横断孔を備えた第二部分を第一部分に対してピボット運動させて、前記前面上の放射線不透過性マーカと前記後面上の放射線不透過性ターゲットマーカとを整合させることを含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記照準アームは、骨髄内釘が患者内に移植される前に骨髄内釘に連結され、照準アームの横断孔は骨髄内釘の遠位側ロッキング孔と整合されることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記照準アームは、X線ビームが照準アームの横断孔の軸線と共平面になるように骨髄内ロッドに対して調節されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
移植される骨髄内釘の横断孔の位置および方向を決定する照準器具において、
骨髄内釘の近位端に取付けられるハンドル部分と、このハンドル部分に連結される可動照準アーム部分とを有し、可動照準アーム部分は第一表面および第二表面と交差する少なくとも1つの横断孔を備え、横断孔は第一表面内の第一開口および第二表面内の第二開口を備え、前記可動部分はハンドル部分に対して回転できるようになっており、
さらに、横断孔の第一開口を備えた第一表面は少なくとも1つの放射線不透過性ターゲットマーカを有し、横断孔の第二開口を備えた第二表面は少なくとも1つの放射線不透過性ターゲットマーカを有することを特徴とする照準器具。
【請求項20】
前記第一表面上の放射線不透過性ターゲットマーカと、第二表面上の放射線不透過性ターゲットマーカとは異なることを特徴とする請求項19記載の照準アーム。
【請求項21】
前記第一表面上の放射線不透過性ターゲットマーカは、少なくとも3つの円を含んでおり、後面上の放射線不透過性マーカは、少なくとも1つのラインを含むことを特徴とする請求項20記載の照準アーム。
【請求項22】
移植される骨髄内釘の横断孔の位置および方向を決定する照準器具において、
骨髄内釘の近位端に取付けられるハンドル部分と、
放射線不透過性材料で形成されかつ前記ハンドル部分に着脱可能に連結できるように構成されかつ寸法を有する照準アームとを有し、照準アームは、少なくとも1つの横断孔を備え、横断孔は第一表面から第二表面へと延びており、第一表面および第二表面の両者は、少なくとも1つの放射線不透過性マーカを備え、
照準アームは、ハンドル部分に対して調節可能に回転できかつハンドル部分に対して調節可能に直線移動できることを特徴とする照準器具。
【請求項23】
前記照準アームの横断孔は第一軸線を形成し、照準アームは、横断孔の第一軸線に対して平行な第二軸線の回りで調節可能に回転できることを特徴とする請求項22記載の照準器具。
【請求項24】
前記ハンドル部分は、このハンドル部分に対する照準アームの直線移動を可能にする構成および寸法を有する少なくとも1つの長手方向スロットを備えていることを特徴とする請求項22記載の照準器具。
【請求項25】
前記第一表面上の放射線不透過性マーカは円であることを特徴とする請求項22記載の照準器具。
【請求項26】
前記第一表面上の放射線不透過性マーカは、使用者に調節値を表示するスケールであることを特徴とする請求項22記載の照準器具。
【請求項27】
前記放射線不透過性マーカ間の材料の量を最小にすべく、第一表面と第二表面との間に形成された少なくとも1つの凹状空間を更に有することを特徴とする請求項22記載の照準器具。
【請求項28】
前記第一表面および第二表面上の放射線不透過性マーカは、X線源の整合を表示して、照準アームの少なくとも1つの横断孔の中心軸線と共平面をなすX線ビームを得ることを特徴とする請求項22記載の照準器具。
【請求項29】
前記骨髄内釘は長手方向軸線を有し、放射線不透過性マーカの整合は、釘が骨内に挿入される前に、X線ビームが、照準アームの横断孔の中心軸線と骨髄内釘の長手方向軸線とにより形成される平面と共平面内にあることを表示することを特徴とする請求項22記載の放射線透過性照準アーム。
【請求項30】
前記第一表面上の放射線不透過性マーカは、第二表面上の放射線不透過性ターゲットマーカとは異なっていることを特徴とする請求項22記載の照準器具。
【請求項31】
前記第一表面上の放射線不透過性マーカは、少なくとも3つの円を含んでおり、後面上の放射線不透過性マーカは、少なくとも1つのラインを含むことを特徴とする請求項30記載の照準器具。
【請求項32】
移植される骨髄内釘の遠位側ロッキングを行う孔を位置決めする方法において、
近位端と、遠位端と、少なくとも1つの遠位側ロッキング孔とを備えた骨髄内釘を骨内に移植する段階と、
骨髄内釘の近位端に取付けることができるハンドル部分と、放射線透過性材料で形成されかつ前記ハンドル部分に着脱可能に取付けることができるように構成されかつ寸法を有する照準アームとを備えた照準器具を用意する段階とを有し、照準アームは、第一表面から第二表面へと延びている少なくとも1つの横断孔を備え、第一表面および第二表面の両方が少なくとも1つの放射線不透過性マーカを備え、
照準器具のハンドル部分を骨髄内釘の近位端に連結する段階と、
前記第一面上に配置された少なくとも1つの放射線不透過性ターゲットマーカと、前記第二面上の少なくとも1つの放射線不透過性マーカとを整合させることにより、X線ビームが照準アーム孔の中心軸線を含む平面と共平面になるようにX線源を位置決めする段階と、
前記照準アームの横断孔に対する、移植される骨髄内釘の遠位側ロッキング孔の相対位置を決定すべくX線スナップショットを撮る段階と、
照準アームの横断孔と骨髄内釘の遠位側ロッキング孔とを整合させるように、ハンドル部分に対して照準アームを回転させる段階とを更に有することを特徴とする方法。
【請求項33】
前記骨髄内釘が患者内に移植される前に、照準器具を骨髄内釘に連結する段階と、
照準器具のハンドル部分に形成された少なくとも1つの細長いスロットを用いて骨髄内釘に対する照準器具の位置を調節し、照準アームの横断孔と骨髄内釘の遠位側ロッキング孔とを整合させる段階とを更に有することを特徴とする請求項32記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−514296(P2008−514296A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533715(P2007−533715)
【出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/034457
【国際公開番号】WO2006/034503
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(505377463)ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (186)
【Fターム(参考)】