髄膜炎菌タンパク質NMB1870の複数の改変体
【課題】髄膜炎菌性の病気および/または感染症に対する、特に血清群Bに対する免疫を提供するためのさらなる改良された組成物を提供すること。
【解決手段】髄膜炎菌タンパク質NMB1870は先行技術において記載されている。本発明者らは、NMB1870が、抗髄膜炎菌抗体応答を誘発するのに効果的な抗原であること、および、それは、すべての髄膜炎菌血清群にわたって発現されていることを発見した。42種類の異なったNMB1870の配列が同定されていて、これらの群は3種類の変異型に分類されている。ある変異型に対してできた血清は、同じ変異型群の中で殺菌作用があるが、別の2つの変異型の一方を発現する菌株に対しては活性を持たない。すなわち、変異型内交差防御はあるが、変異型間交差防御はない。したがって、最大の菌株横断的効果のため、本発明は、異なったNMB1870変異型を含む混合物を使用する。
【解決手段】髄膜炎菌タンパク質NMB1870は先行技術において記載されている。本発明者らは、NMB1870が、抗髄膜炎菌抗体応答を誘発するのに効果的な抗原であること、および、それは、すべての髄膜炎菌血清群にわたって発現されていることを発見した。42種類の異なったNMB1870の配列が同定されていて、これらの群は3種類の変異型に分類されている。ある変異型に対してできた血清は、同じ変異型群の中で殺菌作用があるが、別の2つの変異型の一方を発現する菌株に対しては活性を持たない。すなわち、変異型内交差防御はあるが、変異型間交差防御はない。したがって、最大の菌株横断的効果のため、本発明は、異なったNMB1870変異型を含む混合物を使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において引用される文献はすべて、その全体が参考として本明細書で援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、ワクチン接種の分野に属し、特に、Neisseria meningitidis(髄膜炎菌)など、ナイセリア属の病原性細菌によって起きる病気に対するワクチン接種の分野に属する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
Neisseria meningitidisは、グラム陰性の莢膜に覆われた細菌で、人口の約10%の上気道に定住している。定住されている10、000人あたり約一回(すなわち、人口100、000人あたり一回)、この細菌は血流に入り、そこで増殖して敗血症を引き起こす。この細菌は、血流から血液脳関門を横切って髄膜炎を引き起こす。どちらの病気も壊滅的で、効果的な抗生物質を利用できるにもかかわらず、感染した子供と若年成人のうちの5〜15%を数時間内に殺すことができる。生き残った人の25%までに、永続的な続発症が残る。
【0004】
病気の予防は、一部ではワクチン接種によって行われている。免疫は、病気の防御が、補体媒介性殺菌を誘導できる血清抗体の存在と関係すること、および、精製された莢膜ポリ多糖がこれらの抗体を誘導できることが発見された1969年になって可能となった。多糖体および結合体(conjugate)のワクチンが、血清群A、C、W135およびYに対しては利用可能であるが、この方法は血清群Bには適用できない。なぜなら、莢膜多糖体がポリシアル酸のポリマーであって、これは、ヒトにおいては自己抗原だからである。血清群Bに対するワクチンを開発するために、外膜ベシクル(OMV)に含まれる表面露出タンパク質が用いられている。これらのワクチンは、血清の殺菌抗体応答を誘発して、病気を防御するが、菌株間の交差防御を誘導できない[1]。
【0005】
血清群BのN.meningitidisの完全ゲノム配列が公開されていて[2]、ワクチン抗原を同定するために解析されている[3]。血清群AのN.meningitidisの完全ゲノム配列も知られており[4]、また、Neisseria gonorrhoeaeのFA1090株の完全ゲノム配列も利用可能である[5]。参考文献6〜9は、Neisseria meningitidisおよびNeisseria gonorrhoeaeに由来するタンパク質を開示しており、これらのタンパク質を発現させるための方法が、参考文献10〜12に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
髄膜炎菌性の病気および/または感染症に対する、特に血清群Bに対する免疫を提供するためのさらなる改良された組成物を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
組成物であって、以下の抗原:(a)配列番号24に対して85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号24に由来する7個以上連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む、第1のタンパク質;(b)配列番号33に対して85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号33に由来する7個以上連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む、第2のタンパク質;ならびに(c)配列番号41に対して85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号41に由来する7個以上連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む第3のタンパク質、のうちの2つ以上を含む、組成物。
(項目2)
タンパク質(a)がタンパク質(b)に対して70%よりも低い配列同一性を有し、タンパク質(a)がタンパク質(c)に対して70%よりも低い配列同一性を有し、そしてタンパク質(b)がタンパク質(c)に対して70%よりも低い配列同一性を有する、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記組成物が、血清群BのN.meningitidisのMC58株、961−5945株、およびM1239株のそれぞれに対して有効な殺菌反応を誘導することができる、項目1〜項目2のいずれか一項に記載の組成物。
(項目4)
前記組成物が、抗体応答を誘発することができ、該抗体応答が、超病原性系統ET−37、ET−5、クラスターA4、系統3、サブグループI、サブグループIII、およびサブグループIV−1の2つ以上においてN.meningitidisの菌株に対して殺菌性である、項目1〜項目3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
前記タンパク質の一種類以上が、リポタンパク質である、項目1〜項目4のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
前記タンパク質の一種類以上が、そのN末端の10アミノ酸以内に、アミノ酸配列TRSKP(配列番号70)またはTRSKPV(配列番号71)を含まない、項目1〜項目5のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
前記タンパク質の一種類以上が、そのN末端の10アミノ酸以内に、アミノ酸配列PSEPPFG(配列番号72)を含まない、項目1〜項目6のいずれか一項に記載の組成物。
(項目8)
前記タンパク質の一種類以上が、アミノ酸配列GGGG(配列番号73)を含む、項目1〜項目7のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
前記タンパク質の一種類以上が、融合タンパク質の形態で使用される、項目1〜項目8のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10)
前記融合タンパク質が、配列番号46および/またはH.influenzaeのP4リポタンパク質のリーダー配列を含む、項目9に記載の組成物。
(項目11)
配列番号1〜45、77、79〜85、87〜94および123〜142より選択されたアミノ酸配列を含む、1種類以上のタンパク質を含む、項目1〜項目10のいずれか一項に記載の組成物。
(項目12)
式:NH2−A−[−X−L−]n−B−COOHのハイブリッドタンパク質を含む組成物であって、ここで:nは2以上であり、Lは任意のリンカーアミノ酸配列であり、Aは任意のN−末端アミノ酸配列であり、Bは任意のC末端アミノ酸配列であり、そしてX部分は、以下:(a)配列番号24に対して85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号24に由来する7個以上連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む、第1のタンパク質;(b)配列番号33に対して85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号33に由来する7個以上連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む、第2のタンパク質;ならびに(c)配列番号41に対して85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号41に由来する7個以上連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む、第3のタンパク質、のうちの2つ以上を含む部分である、組成物。
(項目13)
前記ハイブリッドタンパク質が、以下のアミノ酸配列:配列番号79、82、83、85、87、88、89、90および142の一つを含む、項目12に記載の組成物。
(項目14)
15種類よりも少ない抗原を含む、項目1〜項目13のいずれか一項に記載の組成物。
(項目15)
NMB1870タンパク質以外のナイセリアの抗原を含む、項目1〜項目14のいずれか一項に記載の組成物。
(項目16)
N.meningitidisから調製されたベシクルを含む、項目1〜項目15のいずれか一項に記載の組成物。
(項目17)
N.meningitidisの血清群A、C、W135および/またはYに由来する糖抗原を含む、項目1〜項目16のいずれか一項に記載の組成物。
(項目18)
N.meningitidisの血清群A、C、W135およびYに由来する糖抗原を含む、項目17に記載の組成物。
(項目19)
Haemophilus influenzaeB型に由来する糖抗原を含む、項目1〜項目18のいずれか一項に記載の組成物。
(項目20)
前記糖抗原が、一種類以上の担体タンパク質に結合している、項目17、18または19に記載の組成物。
(項目21)
前記糖抗原がオリゴ糖である、項目17、18、19または20に記載の組成物。
(項目22)
Streptococcus pneumoniaeに由来する抗原を含む、項目1〜項目21のいずれか一項に記載の組成物。
(項目23)
前記血清群Aの糖抗原が、天然型糖類の一以上のヒドロキシル基が封鎖基に置換された修飾糖類類である、項目17〜22のいずれか一項に記載の組成物。
(項目24)
血清群Aの糖抗原がn個の単糖単位を含む場合、該単糖単位の50%以上が3位および4位の両方に−OH基を有さない、項目17〜22のいずれか一項に記載の組成物。
(項目25)
前記血清群Aの糖類が単糖単位を含み、該単糖単位の一つ以上が、3位に−OH基を有さず、かつ4位に−OH基を有さない、項目17〜22のいずれか一項に記載の組成物。
(項目26)
前記血清群Aの糖類が以下の式:
【化1】
を有し、ここで、nは1から100までの整数(好ましくは15から25までの整数)であり;
Tは、以下の式(A)または(B):、
【化2】
であって、各Z基は、OH基または封鎖基から独立に選択され;および、
各Q基は、OH基または封鎖基から独立に選択され;
Yは、OH基または封鎖基から選択され;
EがHまたは窒素保護基であり;
ならびに、Q基の7%よりも多くが封鎖基である、項目17〜25のいずれか一項に記載の組成物。
(項目27)
前記担体タンパク質がジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、CRM197、N.meningitidisの外膜タンパク質、H.influenzaeのプロテインD、または肺炎球菌表面タンパク質PspAである、項目20に記載の組成物。
(項目28)
以下:(i)前記抗原(a)、(b)および/または(c)の2つ以上;(ii)N.meningitidisの血清群A、C、W135、およびYのそれぞれに由来する糖抗原、(iii)Haemophilus influenzaeB型に由来する糖抗原、および(iv)Streptococcus pneumoniaeに由来する抗原を含む、項目1〜項目27のいずれか一項に記載の組成物。
(項目29)
医薬として使用するための、項目1〜項目28のいずれか一項に記載の組成物。
(項目30)
哺乳動物において抗体応答を引き起こす方法であって、項目1〜項目29のいずれか一項に記載の組成物を、該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目31)
前記方法が、ナイセリアの感染から前記哺乳動物を防御する、項目30に記載の方法。
(項目32)
哺乳動物においてナイセリアの感染を予防するための医薬の製造における、項目1に規定される抗原(a)、(b)および(c)のうちの2つ以上の使用。
(項目33)
項目12または項目13に記載のタンパク質をコードする、核酸。
(発明の開示)
参考文献2に開示されている約2200種類のタンパク質の一つが「NMB1870」である。このタンパク質は、元来、菌株MC58由来のタンパク質「741」として開示されていたもので[参考文献8における配列番号2535および2536;本明細書の配列番号1]、「GNA1870」[参考文献3に従う]または「ORF2086」[13]とも呼ばれていた。
【0008】
今では、NMB1870が、抗髄膜炎菌性抗体応答を誘導するための非常に効果的な抗原であって、髄膜炎菌の血清群すべてで発現されていることが分かっている。
【0009】
NMB1870は、これまでに調べられたすべての髄膜炎菌の菌株で発見されている。42種類の異なった髄膜炎菌NMB1870の配列が同定されており、これらの配列を3種類の改変体にグループ分けすることができることが分かった。さらに、ある改変体に対して生成された血清は、同じ改変体群の中では殺菌作用があるが、残りの2種類の改変体のどちらかを発現する菌株に対しては活性がないこと、すなわち、改変体内での交差防御はあるが、改変体間での交差防御はないことが分かっている。したがって、最大の菌株横断的な効率を得るためには、1つより多くの改変体を、患者を免疫するために使用する必要がある。
【0010】
したがって、本発明は、以下の抗原を少なくとも2つ含む組成物を提供する。すなわち、
(a)配列番号24に対して少なくともa%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号24の少なくともx個連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む第1のタンパク質;
(b)配列番号33に対して少なくともb%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号33の少なくともy個連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む第2のタンパク質;および
(c)配列番号41に対して少なくともc%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号41の少なくともz個連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む第3のタンパク質。
【0011】
また、本発明は、N.meningitidisの複数の(例えば2、3、4、5、またはそれ以上の)菌株および/または血清群に対する免疫を備えさせるためのNMB1870の使用を提供する。
【0012】
((a)、(b)および(c)における、またはこれらの間の変動)
aの値は少なくとも85、例えば、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5またはそれ以上である。
【0013】
bの値は少なくとも85、例えば、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5またはそれ以上である。
【0014】
cの値は少なくとも85、例えば、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5またはそれ以上である。
【0015】
a、bおよびcの値は、本質的に互いに関連してはいない。
【0016】
xの値は少なくとも7、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250である。yの値は少なくとも7、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250である。zの値は少なくとも7、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250である。x、yおよびzの値は、本質的に互いに関連してはいない。
【0017】
所定のアミノ酸配列が、(a)、(b)および(c)の一つ以上のカテゴリーに入らないことが好適である。したがって、いずれのNMB1870配列も、(a)、(b)および(c)というカテゴリーの一つだけに含まれる。したがって、タンパク質(a)は、タンパク質(b)に対してi%よりも低い配列同一性を有し、タンパク質(a)は、タンパク質(c)に対してj%よりも低い配列同一性を有し、また、タンパク質(b)は、タンパク質(c)に対してk%よりも低い配列同一性を有する。iの値は、60以上(例えば、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90など)であり、高くてもaである。jの値は、60以上(例えば、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90など)であり、高くてもbである。kの値は、60以上(例えば、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90など)であり、高くてもcである。i、jおよびkの値は、本質的に互いに関連してはいない。
【0018】
したがって、本発明の例示的2タンパク質実施態様において、タンパク質(a)は、配列番号24に対して85%よりも高い配列同一性を有するかもしれず、タンパク質(b)は、配列番号33に対して85%よりも高い配列同一性を有するかもしれないが、タンパク質(a)および(b)は、互いに対して75%よりも低い配列同一性を有する。したがって、タンパク質(a)および(b)は、それぞれの「プロトタイプ」配列にはそれぞれ非常に近縁であるが、互いに対しては、それほど近縁ではない。
【0019】
したがって、本発明の例示的3タンパク質実施態様において、タンパク質(a)は、配列番号24に対して85%よりも高い配列同一性を有するかもしれず、タンパク質(b)は、配列番号33に対して85%よりも高い配列同一性を有するかもしれず、タンパク質(c)は、配列番号41に対して85%よりも高い配列同一性を有するかもしれないが、タンパク質(a)および(b)は、互いに対して75%よりも低い配列同一性を有し、タンパク質(a)および(c)は、互いに対して75%よりも低い配列同一性を有し、タンパク質(a)および(b)は、互いに対して75%よりも低い配列同一性を有する。
【0020】
(a)、(b)および(c)の2種類以上を混合したものは、好ましくは、以下の3つの菌株群の少なくとも2つの各菌株に由来する1種類以上のN.meningitidis株に対して殺菌性である抗体応答を誘発することができる。
【0021】
(a)MC58、gb185(=M01−240185)、m4030、m2197、m2937、iss1001、NZ394/98、67/00、93/114、bz198、m1390、nge28、lnp17592、00−241341、f6124、205900、m198/172、bz133、gb149(=M01−240149)、nm008、nm092、30/00、39/99、72/00、95330、bz169、bz83、cu385、h44/76、ml590、m2934、m2969、m3370、m4215、m4318、n44/89、14847、
(b)961−5945、2996、96217、312294、11327、a22、gb013(=M01−240013)、e32、m1090、m4287、860800、599、95N477、90−18311、c11、m986、m2671、1000、m1096、m3279、bz232、dk353、m3697、ngh38、L93/4286、
(c)M1239、16889、gb355(=M01−240355)、m3369、m3813、ngp165。
【0022】
例えば、混合物は、血清群BのN.meningitidis株MC58、961−5945およびM1239のそれぞれに対して有効な殺菌応答を誘導することができる。
【0023】
(a)、(b)および(c)の2種類以上を混合したものは、好ましくは、臨床上関連する髄膜炎菌の血清群Bの少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)に対して殺菌性である抗体応答を誘発することができる。
【0024】
(a)、(b)および(c)の2種類以上を混合したものは、好ましくは、血清群BのN.meningitidisの菌株、および血清群A、C、W135およびYの少なくとも1つ(例えば1つ、2つ、3つ、4つ)の菌株に対して殺菌性である抗体応答を誘発することができる。
【0025】
(a)、(b)および(c)の2種類以上を混合したものは、好ましくは、N.gonococcusおよび/またはN.cinereaの菌株に対して殺菌性である抗体応答を誘発することができる。
【0026】
(a)、(b)および(c)の2種類以上を混合したものは、好ましくは、図9に示した樹状図(すなわち、配列番号1から23をKimura&Jukes−Cantorのアルゴリズムによって解析して得られた樹状図)の3つの主枝のうち少なくとも2つの主枝に由来する菌株に対して殺菌性である抗体応答を誘発することができる。
【0027】
(a)、(b)および(c)の2種類以上を混合したものは、好ましくは、超病原性(hypervirulent)系統ET−37、ET−5、クラスターA4、系統3、サブグループI、サブグループIII、およびサブグループIV−1の少なくとも2つ(例えば2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ)のN.meningitidisの菌株に対して殺菌性になるという抗体応答を誘発することができる[14、15]。
【0028】
本発明に係る組成物は、さらに、1種類以上の過侵襲性(hyperinvasive)系統に対する殺菌性抗体応答を誘導することができる。
【0029】
(a)、(b)および(c)の2種類以上の混合物は、好ましくは、ST1、ST4、ST5、ST8、ST11、ST32およびST4という多遺伝子座配列型[16]の少なくとも2つ(例えば2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ)のN.meningitidisの菌株に対して殺菌性である抗体応答を誘発することができる。この混合物はまた、ST44株に対して殺菌性である抗体応答を誘発することができる。
【0030】
殺菌性抗体応答は、マウスにおいて適宜測定され、ワクチンの有効性を示す標準的な指標となる[例えば、参考文献3の末尾の注14参照]。この組成物は、特定の系統またはMLST内のすべてのMenB株に対する殺菌性抗体を誘導する必要はないが、ある特定の超病原性系統またはMLST内の4つ以上の血清群Bの髄膜炎菌株からなる所定の群について、この組成物によって誘導された抗体は、この群の50%以上(例えば、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)に対して殺菌性である。好適な菌株群は、以下の国々の少なくとも4国において単離されたものである。すなわち、GB、AU、CA、NO、IT、US、NZ、NL、BRおよびCU。好ましくは、この血清は、少なくとも1024(例えば210、211、212、213、214、215、216、217、218またはそれ以上で、好ましくは少なくとも214)の殺菌力価を有する。すなわち、例えば、参考文献3の末尾の注14に記載されているように、該血清は、1024分の1に希釈されても、特定の系統の被検細菌の少なくとも50%を殺菌することができる。
【0031】
(リポタンパク)
NMB1870は、本来はN.meningitidisのリポタンパクである。E.coliで発現されても、脂質化されることが分かっている。
【0032】
本発明に係る組成物に含まれるNMB1870タンパク質の1種類以上(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、7種類、8種類、9種類、10種類)がリポタンパクであることが好ましい。
【0033】
本発明は、配列番号24から45までの1つ以上に対して少なくとも50%(例えば60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又はそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号24から45まで(好ましくは配列番号25から45まで)の1つ以上に由来する少なくとも7個(例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含むタンパク質であって、リポタンパクであるという特徴を有するタンパク質を提供する。
【0034】
好ましくは、上記リポタンパクはN末端のシステイン残基を有し、これに対して脂質が共有結合する。バクテリアの発現を介してこのリポタンパクを調製するには、一般的に、ジアシルグリセリルトランスフェラーゼによる脂質化、その後のリポタンパク特異的(II型)SPaseによる切断を促すための適当なN末端シグナルペプチドが必要である。したがって、本発明に係るリポタンパクは、N末端システインを持つことができ(例えば配列番号24から45)、したがって、これは、通常のN末端メチオニンを有する新生タンパク質(例えば配列番号1から22)を翻訳後修飾した産物である。
【0035】
リポタンパクは、脂質二重層と結合することができ、界面活性剤で可溶化することができる。
【0036】
(配列)
本発明にとって有用なNMB1870タンパク質は、配列番号1から23までの1つ以上に対して少なくとも50%(例えば60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又はそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号1から23までの1つ以上に由来する少なくとも7個(例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続したアミノ酸フラグメントからなるアミノ酸配列を含む。
【0037】
好適なフラグメントには、(a)エピトープ、好ましくは殺菌性エピトープを含むフラグメント;(b)配列番号1から23までの2つ以上に共通するフラグメント;(c)1個以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、またはそれ以上など)のN末端残基が欠失している配列番号1から23;(d)1個以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25など)のC末端残基が欠失している配列番号1から23;および(e)シグナルペプチドをもたない配列番号1から23(例えば配列番号24から45)が挙げられる。これら好適なフラグメントは、互いに排他的なものではなく、例えば、あるフラグメントは、カテゴリー(a)および(b)、またはカテゴリー(c)および(d)などに含まれ得る。
【0038】
さらに、本発明にとって有用なNMB1870タンパク質は、配列番号123から141までの1つ以上に対して少なくとも50%(例えば60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号123から141までの1つ以上に由来する少なくとも7個(例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続したアミノ酸フラグメントからなるアミノ酸配列を含む。
【0039】
さらに、本発明にとって有用なNMB1870タンパク質は、参考文献13の配列番号1から252までの1つ以上に対して少なくとも50%(例えば60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または参考文献13の配列番号1から252までの1つ以上に由来する少なくとも7個(例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続したアミノ酸フラグメントからなるアミノ酸配列を含む。参考文献13の配列番号300−302はコンセンサス配列を提供し、そして、参考文献13の配列番号254〜299はフラグメントである。好ましいフラグメントとしては、(a)エピトープ、好ましくは殺菌性エピトープを含むフラグメント;(b)配列番号123から141までの2つ以上に共通するフラグメント;(c)1個以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、またはそれ以上など)のN末端残基が欠失している配列番号123から141;(d)1個以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25など)のC末端残基が欠失している配列番号123から141;および(e)シグナルペプチドをもたない配列番号123から141が挙げられる。これら好適なフラグメントは、互いに排他的なものではなく、例えば、あるフラグメントは、カテゴリー(a)および(b)、またはカテゴリー(c)および(d)などに含まれ得る。
【0040】
配列番号1から23および123から141に100%より低い同一性をもつ好適なアミノ酸配列は、その対立遺伝子多型体、ホモログ、オルトログ(orthologs)、パラログ、変異体などである。配列番号1から23および123から141と比較したときに対立遺伝子多型体、ホモログ、オルトログ、パラログ、または変異体における1個以上の違いは、保存的アミノ酸置換、すなわち、1つのアミノ酸の、同類の側鎖をもつ別のアミノ酸との置換を含むことが好ましい。遺伝子にコードされたアミノ酸は、一般的に以下の4つのファミリーに分かれる。(1)酸性、すなわちアスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性、すなわちリジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性、すなわちアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性、すなわちグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、場合によって、芳香族アミノ酸として一緒に分類される。一般的に、これらファミリー内での単一のアミノ酸置換は、生物活性に大きな影響を与えない。
【0041】
好適なタンパク質のサブセットは、タンパク質のN末端の10アミノ酸以内に、アミノ酸配列TRSKP(配列番号70)またはTRSKPV(配列番号71)を含まない。別の好適なタンパク質のサブセットは、タンパク質のN末端の10アミノ酸以内に、アミノ酸配列PSEPPFG(配列番号72)を含まない。
【0042】
本発明で使用する別の好適なタンパク質のサブセットは、アミノ酸配列(Gly)n(ここで、nは1、2、3、4以上)を含む(例えば配列番号73)。
【0043】
本発明に係る好適なタンパク質の特徴は、宿主動物に投与された後、殺菌性抗髄膜炎菌抗体を誘導できることである。
【0044】
タンパク質は、例えば化学合成(少なくとも一部)、プロテアーゼを用いた長いポリペプチド鎖の分解、RNAからの翻訳、細胞培養物からの精製(例えば組換え発現、またはN.meningitidis培養液から)など、さまざまな方法によって調製することができる。E.coli宿主における異種性発現が、好適な発現経路である(例えばDH5α、BL21(DE3)、BLRなど)。
【0045】
本発明に係るタンパク質は、固体支持体に付着または固定させることが可能である。
【0046】
本発明に係るタンパク質は、例えば放射活性標識、蛍光標識、またはビオチン標識などの検出用標識を含むことも可能である。これらは、免疫アッセイ技術において得に有用である。
【0047】
タンパク質は、さまざまな形態を採ることができる(例えば天然型、融合型、グリコシル化型、非グルコシル化型、脂質化型、ジスルフィド架橋型など)。タンパク質は、好ましくは髄膜炎菌タンパク質である。
【0048】
タンパク質は、好ましくは、実質的に純粋であるか、実質的に単離されている形態(すなわち、他のナイセリアまたは宿主のタンパク質を実質的に含まない)か、または実質的に単離された形態で調製される。一般的に、該タンパク質は、例えば、本来の環境から隔離された自然ではない環境で提供される。ある実施態様において、対象となるタンパク質は、対照と較べると、該タンパク質が濃縮されている組成物中に存在する。そのように、精製タンパク質が提供され、精製されたとは、他の発現タンパク質を実質的に含まない組成物の中に存在することを意味する。ここで、実質的に含まないとは、組成物の90%未満、普通は60%未満、より普通には50%未満が、別の発現タンパク質で構成されていることを意味する。
【0049】
「タンパク質」という用語は、あらゆる長さのアミノ酸ポリマーを意味する。このポリマーは、直鎖状でも分枝状でもよく、修飾アミノ酸を含むことも可能であり、非アミノ酸によって中断されていてもよい。また、この用語は、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または、標識成分との結合体化のような、その他の操作または修飾など、天然または介入によって修飾されているアミノ酸ポリマーも含む。また、この定義の範囲内には、例えば、1種類以上のアミノ酸のアナログ(非天然型アミノ酸などを含む)、ならびに、当技術分野で知られている別の修飾を含むタンパク質が含まれる。タンパク質は、単一の鎖または結合した鎖として生じ得る。
【0050】
また、本発明は、配列番号77、79、82、83、85、87、88、89、90、91、92、93および94の1つ以上に対して少なくとも50%(例えば60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号77、79、82、83、85、87、88、89、90、91、92、93および94の1つ以上に由来する少なくとも7個(例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続したアミノ酸フラグメントからなるアミノ酸配列を含む。
【0051】
本発明が、単一のNMB1870タンパク質に係る場合、本発明は、参考文献13の配列番号1から302のいずれかに開示されているアミノ酸配列を含むタンパク質を包含しない。しかし、本発明が、NMB1870の混合物に係る場合には、そのようなタンパク質を選択的に使用することができる。
【0052】
(ハイブリッドタンパク質およびタンデムタンパク質)
上記の通り、NMB1870は、融合タンパク質の形態で使用することが可能であるが、融合タンパク質としてではなく発現させることもできる(例えばGST、MBP、his−タグなどなしに)。
【0053】
融合タンパク質は、C末端および/またはN末端に融合パートナーを持つことができる。配列番号1から23とともにN末端融合パートナーを用いる場合、当業者は、(もし含まれるのであれば)開始コドンはバリンとして発現されることに気づく。なぜなら、GTGは、開始コドンとして使用される場合(その場合、N−ホルミル−メチオニンとして翻訳される)を除いてバリンとして翻訳されるからである。
【0054】
好適なN末端融合パートナーとしては、他のタンパク質(具体的には、他のリポタンパク)由来のリーダーペプチドが挙げられるが、それらは、天然型のNMB1870のリーダーペプチドに代わることができる(すなわち、N末端システインの前の配列を、目的のリーダーペプチドで置換できる)。例としては、配列番号46、およびH.InfluenzaeP4リポタンパクのリーダー配列を含む配列である[例えば17]。
【0055】
好適な融合タンパク質のタイプが、参考文献10、11および12に開示されており、文献中、2種類以上(例えば3、4、5、6またはそれ以上)のナイセリアタンパク質が結合して、1本のポリペプチド鎖として翻訳されている。一般的に、このようなハイブリッドタンパク質は、以下の式で表すことができる。
【0056】
NH2−A−[X−L−]n−B−COOH
ここで、Xはナイセリアの配列を含むアミノ酸配列であり、Lは任意のリンカーアミノ酸配列であり、Aは任意のN−末端アミノ酸配列であり、Bは任意のC末端アミノ酸配列であり、そして、nは1よりも大きい整数である。nの値は2とxとの間であり、xの値は、典型的には3、4、5、6、7、8、9または10である。好ましくは、nは2、3または4であり、より好ましくは、2または3であり、最も好ましくはn=2である。
【0057】
本発明によれば、上で定義したとおり、−X−部分の少なくとも1つはNMB1870配列である。「タンデム」タンパク質と呼ばれるハイブリッドタンパク質において、少なくとも1つの−X−部分が、例えば、X1が配列番号24であり、X2が配列番号25であるなど、他の−X−部分の少なくとも一つに対して配列同一性を有する。3種類のNMB1870改変体の2個または3個がタンデムタンパク質として連結しているタンパク質が好適である。
【0058】
X1以外のX部分については、特に、X1がNMB1870配列でない場合には、好ましくは、天然のリーダーペプチドは削除されるべきである。一つの実施態様において、リーダーペプチドは、ハイブリッドタンパク質のN末端に位置する−X−部分のリーダーペプチド以外では除去される。すなわち、リーダーペプチドX1は保持されるが、X2…Xnのリーダーペプチドは削除される。これは、すべてのリーダーペプチドを除去して、X1のリーダーペプチドを−A−部分として用いるのと同じである。
【0059】
−X−部分として使用するのに好適なNMB1870配列は、成熟N末端の近傍に見られるポリ−グリシン配列のところまで削除して、それを含む。例えば、NMB1870配列は、VAA…(または、m3813菌株についてはIAA…)で開始する。このようなNMB1870配列としては、配列番号80、81および84が挙げられる。
【0060】
[−X−L−]のそれぞれのnの例については、リンカーのアミノ酸配列−L−はあっても、なくてもよい。例えば、n=2のとき、ハイブリッドは、NH2−X1−L1−X2−L2−COOH、NH2−X1−X2−COOH、NH2−X1−L1−X2−COOH、NH2−X1−X2−L2−COOHなどであり得る。リンカーのアミノ酸配列−L−は、典型的には短い(例えば20またはそれよりも少ないアミノ酸、すなわち19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)。例として、クローニングを容易にする短いペプチド配列、ポリ−グリシンリンカー(すなわち、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上であるGlyn)、およびヒスチジンタグ(すなわち、n=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上であるHisn)などがある。当業者には、他の適当なリンカーアミノ酸配列が明らかである。有用なリンカーはGSGGGG(配列番号144)であって、これは、Gly−SerジペプチドがBamHI制限酵素部位から形成されており、クローニングや操作をするのに役立つ。そして、Gly4テトラペプチド(配列番号73)も別の典型的なポリ−グリシンリンカーである。別の有用なリンカーは配列番号78である。
【0061】
−A−は、任意のN−末端アミノ酸配列である。これは、典型的には短い(例えば40またはそれよりも少ないアミノ酸、すなわち39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1などである)。例としては、タンパク質の輸送に関与するリーダー配列、または、クローニングまたは精製を容易にする短いペプチド配列(例えばヒスチジンタグ、すなわちn=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上であるHisn)などがある。当業者には、他の適当なN−末端アミノ酸配列が明らかである。X1が、本来のN−末端メチオニンを失っている場合には、−A−が、翻訳されたタンパク質の中にそのようなメチオニン残基を提供することができる(例えば、−A−は、単一のMet残基である)。NMB1870を発現させる上で有用な−A−部分は配列番号86である。成熟リポタンパクにおいて、好ましくは、−A−はN−末端システインを提供する(例えば、−A−は単一のシステイン残基である)。
【0062】
−B−は、任意のC−末端アミノ酸配列である。これは、典型的には短い(例えば40またはそれよりも少ないアミノ酸、すなわち39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1などである)。例には、タンパク質の輸送に関与する配列、クローニングまたは精製を容易にする短いペプチド配列(例えばヒスチジンタグ、すなわちn=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上であるHisn)、またはタンパク質の安定性を高める配列が挙げられる。当業者には、他の適当なC−末端アミノ酸配列が明らかである。
【0063】
本発明に係る好適なハイブリッドタンパク質において、X部分の一つは「タンパク質936」である。例えば、n=2、A=Met、X1=936配列(例えば、プロセシングされたMC58タンパク質である配列番号76)、L1=ポリ−グリシンリンカー(例えば配列番号144)、X2=N−末端が本来のポリ−グリシン配列まで削除されているが、それを含むNMB1870配列、そしてL2およびBは除去することができる。このようなハイブリッドタンパク質の例が配列番号77であって、菌株m1239由来の短縮型NMB1870が、菌株MC58由来のプロセシングされた936の下流に存在する。936(菌株2996)および短縮型NMB1870(菌株2996またはM1239)のハイブリッドタンパク質のさらなる例は配列番号91、92、93および94である。
【0064】
n=3の場合の好適なタンデムタンパク質は、3種類のNMB1870改変体のすべてを任意の順序で有することができる。
【0065】
【化3】
n=2の場合の好適なタンデムタンパク質は、2種類の異なったNMB1870改変体を有することができる。
【0066】
【化4】
n=2の場合(2種類の異なったNMB1870改変体)の好適なタンデムタンパク質の例は、配列番号79、82、83、85、87、88、89および90であり、これらは、菌株MC58(改変体1)、2996(改変体2)およびM1239(改変体3)を使用している。
【0067】
n=3の場合のタンデムタンパク質の例は、配列番号142に示されている。
【0068】
(NadA)
Nadタンパク質は、参考文献191および192に開示されている。これらの参考文献は、3つの異なったNadA対立遺伝子を開示している。しかし、いくつか小さな改変は見られる(例えば、血清群Cの菌株ISS1024は、アレル2に7個からなる反復配列が1つ欠失しているという改変体を有し、血清群Cの菌株ISS759および973−1720はともに、リーダーペプチドに単一のアミノ酸変異を有するアレル3の改変体を含み、そして、血清群Bの菌株95330はアレル1と2の組換えを含んでいる)。
【0069】
髄膜炎菌のHaji菌株からNadAの配列を決定したところ、配列番号143が同定された。このタンパク質は、既知のアレル2および3の組換え体である。
【0070】
本発明は、配列番号143に対して少なくとも50%(例えば60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれ以上、例えば、100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号143に由来する少なくとも7個(例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続したアミノ酸フラグメントからなるアミノ酸配列を含むタンパク質を提供する。
【0071】
好適なフラグメントとしては、(a)エピトープ、好ましくは殺菌性エピトープを含むフラグメント;(b)配列番号143と、参考文献191および192に開示されているNadA配列の少なくとも1つに共通するフラグメント;(c)1個以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、またはそれ以上など)のN末端残基が欠失している配列番号143;(d)1個以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25など)のC末端残基が欠失している配列番号143;および(e)シグナルペプチドをもたない配列番号143などである。これら好適なフラグメントは、互いに排他的なものではなく、例えば、あるフラグメントは、カテゴリー(a)および(b)、またはカテゴリー(c)および(d)などに含まれ得る。
【0072】
配列番号143に100%より低い同一性をもつ好適なアミノ酸配列は、その対立遺伝子改変体、ホモログ、オルトログ(orthologs)、パラログ、変異体などである。配列番号143と比較したときに対立遺伝子改変体、ホモログ、オルトログ、パラログ、または変異体における1個以上の違いは、保存的アミノ酸置換を含むことが好ましい。
【0073】
(核酸)
本発明は、上で定義したとおりの本発明に係るタンパク質をコードする核酸を提供する。また、本発明は、(a)上記核酸に由来する少なくともn個連続するヌクレオチドのフラグメントであって、nが10以上(例えば、12、14、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500以上)であるもの;および/または(b)上記核酸と少なくとも50%(例えば60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列同一性を有する配列を含む核酸を提供する。
【0074】
さらに、本発明は、好ましくは「高ストリンジェント」条件下(例えば0.1×SSC、0.5%SDS溶液中65℃)で、本発明に係るタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズすることができる核酸を提供する。
【0075】
本発明に係る核酸をハイブリダイゼーション反応(例えばノザンブロットもしくはサザンブロット、または核酸マイクロアレイもしくは「遺伝子チップ」)および増幅反応(例えばPCR、SDA、SSSR、LCR、TMA、NASBAなど)およびその他の核酸技術に使用することができる。
【0076】
本発明に係る核酸は、全部または一部を化学合成によって、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリー由来、細菌そのもの由来などのヌクレアーゼ(例えば制限酵素)を用いた長いポリヌクレオチドの消化によってなど、多くの方法で調製することができる。
【0077】
本発明に係る核酸は、例えば一本鎖、二本鎖、ベクター、プライマー、プローブ、標識されたもの、非標識のものなど、さまざまな形態をとることができる。
【0078】
本発明に係る核酸は、好ましくは、単離された形態か、または実質的に単離された形態である。
【0079】
本発明は、例えばアンチセンスもしくはプロービングのため、またはプライマーとして使用するための、上記した配列に相補的な配列を含む核酸を包含する。
【0080】
「核酸」という用語は、DNAおよびRNAを含み、また、改変された骨格を含むものなど、それらのアナログも含み、そして、ペプチド核酸(PNA)なども含む。
【0081】
本発明に係る核酸は、放射性または蛍光性の標識で標識することができる。これは、例えば、核酸を、PCR、LCR、TMA、NASBAなどの技術において使用するためのプライマーまたはプローブとする場合など、核酸を核酸検出技術に用いる場合に特に有用である。
【0082】
また、本発明は、本発明に係るヌクレオチド配列を含むベクター(例えば、核酸免疫に適したものなどのクローニングベクターまたは発現ベクター)、およびこのようなベクターによって形質転換された宿主細胞を提供する。
【0083】
(さらなる抗原成分)
本発明に係る組成物は、少数の(例えばtが5、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4または3であるとき、t種類の抗原よりも少ない)精製された血清群B抗原を含む。特に好適には、この組成物は、複合体または未定義の抗原混合物を含まないはずである。例えば、外膜ベシクルを組成物中に含まないことが好ましい。好ましくは、この抗原は異種宿主において組換えによって発現されて、精製される。
【0084】
本発明に係る組成物は、少なくとも2種類の異なったNMB1870タンパク質を含む。また、別のナイセリア抗原を、細菌毎に1つ以上の抗原を標的して、エスケープ変異体を選抜する可能性を低下させたワクチンとして含むことも可能である。この組成物に含まれるナイセリア抗原は、
(a)参考文献6に開示されている偶数の配列番号(すなわち2、4、6、…、890、892)の446個の配列;
(b)参考文献7に開示されている偶数の配列番号(すなわち2、4、6、…、88、90)の45個の配列;
(c)参考文献8に開示されている配列番号2〜3020の偶数番号、配列番号3040〜3114の偶数番号、および配列番号3115〜3241のすべての1674個の配列;
(d)参考文献2のNMB0001からNMB2160までの2160個のアミノ酸配列;
(e)参考文献10、11または12に開示されているアミノ酸配列;
(f)(a)から(e)までの改変体、ホモログ、オルトログ(orthologs)、パラログ、突然変異体など;または
(g)N.meningitidisから調製された外膜ベシクル[例えば、参考文献139参照]
を含むタンパク質を包含する。
【0085】
ナイセリア抗原に加えて、この組成物は、他の疾患または感染に対して免疫化するための抗原を含み得る。例えば、この組成物は、一つ以上の以下のさらなる抗原を含み得る:−Helicobacter pylori由来の抗原(例えば、CagA[18〜21]、VacA[22、23]、NAP[24、25、26]、HopX[例えば、27]、HopY[例えば、27]および/またはウレアーゼ)
−N.meningitidis血清群A、C、W135、および/またはY由来の糖抗原(例えば、血清群C由来の参考文献28に開示されるオリゴ糖[参考文献29も参照のこと]または参考文献30のオリゴ糖。
−Streptococcus pneumoniae由来の糖抗原[例えば、31、32、33]
−A型肝炎ウイルス(例えば、不活化ウイルス)由来の抗原[例えば、34、35]
−B型肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、表面抗原および/またはコア抗原)[例えば、35、36]
−ジフテリア抗原(例えば、ジフテリアトキソイド)[例えば、参考文献37の第3章](例えば、CRMl97変異体[例えば、38])
−破傷風抗原(例えば、破傷風トキソイド)[例えば、参考文献34の第4章]
−Bordetella pertussis由来の抗原(例えば、B.pertussis由来の百日咳ホロ毒素(PT)および線維状赤血球凝集素(FHA))(必要に応じて、ペルタクチン(pertactin)ならびに/またはアグルチノーゲン(agglutinogen)2および3[例えば、参考文献39および40]と組み合わせる)
−Haemophilus influenzae B菌由来の糖抗原[例えば、29]−C型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば、41]
−N.gonorrhoeae由来の抗原[例えば、6、7、8、42]
−Chlamydia pneumoniae由来の抗原[例えば、43〜49]
−Chlamydia trachomatis由来の抗原[例えば、50]
−Porphyromonas gingivalis由来の抗原[例えば、51]
−ポリオ抗原[例えば、52、53](例えば、IPV)
−狂犬病抗原[例えば、54](例えば、凍結乾燥不活化ウイルス[例えば、55、RabAvertTM])
−麻疹抗原、流行性耳下腺炎抗原および/または風疹抗原[例えば、参考文献37の第9章、第10章および第11章]
−インフルエンザ抗原[例えば、参考文献37の第19章]、(例えば、赤血球凝集素タンパク質および/またはノイラミダーゼ表面タンパク質)
−Moraxella catarrhalis由来の抗原[例えば、56]
−Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)由来のタンパク質抗原[例えば、57、58]
−Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)由来の糖抗原−Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)由来の抗原[例えば、58、59、60]
−Staphylococcus aureus由来の抗原[例えば、61]
−Bacillus anthracis由来の抗原[例えば、62、63、64]
−フラビウイルス科のウイルス(flavivirus属)由来の抗原(例えば、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルスの4つの血清型、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイルウイルス由来)
−ペスチウイルス抗原(例えば、古典的ブタ熱病(classical porcine
fever)ウイルス、ウシウイルス性下痢(bovine viral diarrhoea)ウイルス、および/またはボーダー病(border disease)ウイルス
−パルボウイルス抗原(例えば、パルボウイルスB19由来)
−プリオンタンパク質(例えば、CJDプリオンタンパク質)
−アミロイドタンパク質(例えば、βペプチド[65])
−癌抗原(例えば、参考文献66の表1、または参考文献67の表3および表4に列挙される抗原)
本組成物は、これらのさらなる抗原を1種以上含み得る。
【0086】
毒素タンパク質は、必要な場合、解毒され得る(例えば、化学的および/または遺伝的手段による百日咳毒素の解毒[40])。
【0087】
ジフテリア抗原がこの組成物に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含むことが好ましい。したがって、DTPの組み合わせが好ましい。
【0088】
糖抗原は、好ましくは、結合体形態である。この結合体の担体タンパク質は、N.meningitidisの外膜タンパク質[68]、合成ペプチド[69、70]、熱ショックタンパク質[71、72]、百日咳タンパク質[73,74]、H.influenzae由来のタンパク質D[75]、サイトカイン[76]、リンホカイン[76]、連鎖球菌タンパク質、ホルモン[76]、成長因子[76]、C.difficile由来の毒素AまたはB[77]、鉄取り込みタンパク質[78]などを含む。好ましい担体タンパク質は、CRM197ジフテリアトキソイド[79]である。
【0089】
本組成物の抗原は、代表的に、少なくとも各々1μg/mlの濃度で存在する。一般的に、任意の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を引き起こすに十分である。
【0090】
本発明の免疫原性組成物は、治療用に(すなわち、現存の感染を処置するために)使用され得るか、または予防用に(すなわち、将来の感染を防ぐために)使用され得る。
【0091】
本発明の免疫原性組成物にタンパク質抗原を使用することの代替として、その抗原をコードする核酸(好ましくは、DNA、例えば、プラスミドの形態)が使用され得る。
【0092】
特に好ましい本発明の組成物は、以下の一つ、二つ、または三つを含有する:(a)髄膜炎菌血清群Y由来の糖抗原、髄膜炎菌血清群W135由来の糖抗原、髄膜炎菌血清群C、および(必要に応じて)髄膜炎菌血清群A由来の糖抗原;(b)Haemophilus influenzae
B型由来の糖抗原;ならびに/または(c)Streptococcus pneumoniae由来の抗原。
(髄膜炎菌血清群Y、W135、Cおよび(必要に応じて)A)
血清群A、C、W135およびYに対する多糖ワクチンが、長年知られている。これらのワクチン(MENCEVAX ACWYTMおよびMENOMUNETM)は、生物の莢膜多糖に基づき、これらのワクチンは、青年および成人において有効であるが、生じる免疫応答は乏しく、かつ防御の持続時間は短く、そしてそれらは、乳児において使用することができない。
【0093】
これらのワクチンにおいて、結合体化されていない多糖抗原とは対照的に、最近認可された血清群Cワクチン(MenjugateTM[80、28]、MeningitecTMおよびNeisVac−CTM)は結合体化された糖を含有する。MenjugateTMおよびMeningitecTMは、CRM197担体に結合体化されたオリゴ糖抗原を有し、一方で、NeisVac−CTMは、破傷風トキソイド担体に結合された完全な多糖(脱O−アセチル化多糖)を使用する。提唱されるMenActraTMワクチンは、血清群Y、W135、CおよびAの各々に由来する結合体化された莢膜糖抗原を含有する。
【0094】
本発明の組成物は、好ましくは、一以上の髄膜炎菌血清群Y、髄膜炎菌血清群W135、髄膜炎菌血清群Cおよび(必要に応じて)髄膜炎菌血清群A由来の莢膜糖抗原を含有する。ここでこの抗原は担体タンパク質に結合体化されるか、そして/または、オリゴ糖である。例えば、この組成物は、血清群C;血清群AおよびC;血清群A、CおよびW135;血清群A、CおよびY;血清群C、W135およびY;または血清群A、C、W135およびYの4つ全てに由来する莢膜糖抗原を含み得る。
【0095】
一用量当たりの各髄膜炎菌糖抗原の代表的量は、1μgと20μgの間(例えば、約1μg、約2.5μg、約4μg、約5μg、または約10μg(糖として表示))である。
【0096】
混合物が、血清群Aおよび血清群Cの両方由来の莢膜糖を含む場合、MenA糖:MenC糖の比(w/w)は、1より大きくあり得る(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1またはそれ以上)。混合物が、血清群Yならびに血清群Cおよび血清群W135の一方、あるいは両方に由来する莢膜糖を含む場合、MenY糖:MenW135糖の比(w/w)は、1より大きくあり得(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1またはそれ以上)、そして/または、MenY糖:MenC糖の比(w/w)は、1より小さくあり得る(例えば、1:2、1:3、1:4、1:5またはそれ以下)。血清群A由来の糖:血清群C由来の糖:血清群W135由来の糖:血清群Y由来の糖についての好ましい比(w/w)は、1:1:1:1;1:1:1:2;2:1:1:1;4:2:1:1;8:4:2:1;4:2:1:2;8:4:1:2;4:2:2:1;2:2:1:1;4:4:2:1;2:2:1:2;4:4:1:2;および2:2:2:1である。血清群C由来の糖:血清群W135由来の糖:血清群Y由来の糖についての好ましい比(w/w)は、1:1:1;1:1:2;1:1:1;2:1:1;4:2:1;2:1:2;4:1:2;2:2:1;および2:1:1である。実質的に同等の質量の各糖を使用することが好ましい。
【0097】
莢膜糖は、概して、オリゴ糖形態で使用される。これらは、精製された莢膜多糖のフラグメント化によって(例えば、加水分解によって)、都合よく形成され、その後に、通常、所望のサイズのフラグメントの精製が続く。
【0098】
多糖のフラグメント化は、好ましくは、オリゴ糖において、30より小さい(例えば、血清群Aについて10と20の間、好ましくは、約10;血清群W135および血清群Yについて15と25の間;好ましくは約15〜20;血清群Cについて12と22の間など)最終的な平均重合度(DP)を生じさせるように成し遂げられる。DPは、イオン交換クロマトグラフィーによってかまたは比色アッセイによって、都合よく測定され得る[81]。
【0099】
加水分解が行われる場合、この加水分解産物は、概して、短い長さのオリゴ糖を除去するために大きさで選別される(be sized)[29]。これは、種々の方法(限外濾過に続くイオン交換クロマトグラフィーなど)において、成し遂げられ得る。好ましくは、血清群Aについて、約6以下の重合度を有するオリゴ糖は除去され、そして好ましくは、血清群W135および血清群Yについて、約4より少ない重合度を有するオリゴ糖は除去される。
【0100】
好ましいMenC糖抗原は、MenjugateTMにおいて使用されたように、参考文献80に開示される。
【0101】
この糖抗原は、化学的に修飾され得る。これは、特に、血清群Aの加水分解の減少に有用である[82;以下を参照のこと]。髄膜炎菌の糖の脱O−アセチル化が、行われ得る。修飾は、オリゴ糖については、脱重合の前または脱重合の後に起こり得る。
【0102】
本発明の組成物が、MenA糖抗原を含有する場合、この抗原は、好ましくは、修飾された糖であって、この修飾された糖はネイティブ糖の一以上のヒドロキシル基が、封鎖(blocking)基によって置換されている[82]。この修飾は、加水分解に対する抵抗を改善する。
【0103】
封鎖基を有する単糖単位の数は、変動し得る。例えば、全単糖単位または実質的な全単糖単位は、封鎖基を有し得る。あるいは、単糖単位のうち少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%は封鎖基を有し得る。少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の単糖単位は、封鎖基を有し得る。
【0104】
同様に、単糖単位上の封鎖基の数は、変動し得る。例えば、単糖単位上の封鎖基の数は、1または2であり得る。この封鎖基は、概して、単糖単位の4位および/または3位にある。
【0105】
末端の単糖単位は、天然のヒドロキシル基の代わりに封鎖基を有しても、有さなくてもよい。さらなる反応(例えば、結合体化)のための柄を提供するため、末端の単糖単位上に遊離型アノマーのヒドロキシル基を保持することが好ましい。アノマーのヒドロキシル基は、還元的アミノ化(例えば、NaBH3CN/NH4Clを使用する)によって、アミノ基(−NH2または−NH−E、ここでEは窒素保護基である)に変換され得、次いで、他のヒドロキシル基が封鎖基に変換された後に、アノマーのヒドロキシル基は、再生され得る。
【0106】
ヒドロキシル基を置換する封鎖基は、ヒドロキシル基の誘導体化反応を介して(すなわち、ヒドロキシル基の水素原子を別の基に置換することによって)、直接接触可能であり得る。封鎖基として働くヒドロキシル基の適切な誘導体は、例えば、カルバメート、スルホネート、カルボネート、エステル、エーテル(例えば、シリルエーテルまたはアルキルエーテル)、およびアセタールである。このような封鎖基のいくつかの特定の例は、アリル、Aloc、ベンジル、BOM、t−ブチル、トリチル、TBS、TBDPS、TES、TMS、TIPS、PMB、MEM、MOM、MTM、THPなどである。直接接触可能でなく、かつ完全にヒドロキシル基を置換する他の封鎖基としては、C1−12アルキル、C3−12アルキル、C5−12アリール、C5−12アリール−C1−6アルキル、NR1R2(R1およびR2は以下の段落で規定される)、H、F、Cl、Br、CO2H、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3、CCl3などが挙げられる。好ましい封鎖基は電子求引性基である。
【0107】
好ましい封鎖基は、式:−O−X−Yまたは−OR3のものであって、ここで:XはC(O)、S(O)、またはSO2であり;YはC1−12アルキル、C1−12アルコキシ、C3−12シクロアルキル、C5−12アリール、またはC5−12アリール−C1−6アルキルであり、これらの各々は、必要に応じて、F、Cl、Br、CO2H、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3、またはCCl3から独立的に選択される1つ、2つ、または3つの基で置換され得るか;あるいは、YはNR1R2であり;R1およびR2は、H、C1−12アルキル、C3−12シクロアルキル、C5−12アリール、C5−12アリール−C1−6アルキルから独立的に選択されるか;あるいはR1およびR2は結合され、C3−12飽和複素環式基を形成し得;R3はC1−12アルキルまたはC3−12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、必要に応じて、F、Cl、Br、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3、またはCCl3から独立的に選択される1つ、2つ、または3つの基で置換され得るか;あるいはR3は、C5−12アリールまたはC5−12アリール−C1−6アルキルであり、これらのそれぞれが、必要に応じて、F、Cl、Br、CO2H、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3またはCCl3から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの基で置換され得る。R3がC1−12アルキルまたはC3−12シクロアルキルである場合、それは代表的に、上記で規定されるような1つ、2つ、または3つの基で置換される。R1およびR2が結合され、C3−12飽和複素環式基を形成する場合、それは、窒素原子とともに、R1およびR2が、3と12の間の任意の数の炭素原子(例えば、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)を含む飽和複素環式基を形成することを意味する。この複素環式基は、上記窒素原子以外の1つまたは2つのヘテロ原子(N、O、またはSなど)を含み得る。C3−12飽和複素環式基の例は、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、アゼチジニル、およびアジリジニルである。
【0108】
封鎖基−O−X−Yおよび−OR3は、標準的な誘導体化手順(ハロゲン化アシル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化スルホニルなどとのヒドロキシル基の反応など)によって、−OH基から調製され得る。従って、−O−X−Yにおける酸素原子は、好ましくは、ヒドロキシル基の酸素原子であり、一方、−O−X−Yにおける−X−Y基は、好ましくは、ヒドロキシル基の水素原子を置換する。
【0109】
あるいは、この封鎖基は、置換反応(ミツノブ(Mitsonobu)型置換など)を介して、接触可能であり得る。ヒドロキシル基から封鎖基を調製する、これらの方法および他の方法は周知である。
【0110】
より好ましくは、封鎖基は、−OC(O)CF3[83]、またはカルバメート基−OC(O)NR1R2であって、ここでR1およびR2は、C1−6アルキルから独立に選択される。より好ましくは、R1およびR2は両方ともメチルである(すなわち、封鎖基は−OC(O)NMe2である)。カルバメート封鎖基は、グリコシド結合に対して安定化効果を有し、穏やかな条件下で調製され得る。
【0111】
好ましい、修飾されるMenA糖は、n個の単糖単位を含み、単糖単位のうちの少なくともh%は3位および4位の両方に−OH基を有さない。hの値は24以上(例えば、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、98、99、または100)であり、好ましくは、50以上である。−OH基の非存在は、好ましくは、上記で規定されるような封鎖基である。
【0112】
他の好ましい修飾されるMenA糖は、単糖単位を含むのであって、ここで単糖単位のうちの少なくともsは、3位に−OHを有さず、そして4位にも−OHを有さない。sの値は、少なくとも1(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90)である。−OH基の非存在は、好ましくは、上記で規定されるように、封鎖基である。
【0113】
本発明の使用に適した修飾されるMenA糖は、以下の式を有する:
【0114】
【化5】
nは1〜100の整数(好ましくは、15〜25の整数)であり;
Tは式(A)または式(B)であって:
【0115】
【化6】
ここで各Z基は、独立して、上記で規定されるようなOHまたは封鎖基から選択され;そして、
各Q基は、独立して、上記で規定されるようなOHまたは封鎖基から選択され;
Yは、OHまたは上記で規定されるような封鎖基から選択され;
Eは、Hまたは窒素保護基であり;
ここでQ基のうち約7%より多く(例えば、8%、9%、10%以上)は封鎖基である。
【0116】
n+2個のZ基の各々は、相互に同一または異なり得る。同様に、n+2個のQ基の各々は、相互に同一または異なり得る。全てのZ基はOHであり得る。あるいは、Z基のうち少なくとも、10%、20%、30%、40%、50%または60%はOAcであり得る。好ましくは、Z基の約70%はOAcであり、Z基の残部は上記で規定されるようなOHまたは封鎖基である。Q基のうち少なくとも約7%は封鎖基である。好ましくは、Q基のうち、少なくとも、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%でさえ、封鎖基である。
【0117】
髄膜炎菌の莢膜多糖は、代表的に、(例えば、陽イオン性界面活性剤を用いた)多糖沈殿、エタノール分画、(タンパク除去のための)冷フェノール抽出、および(LPS除去のための)超遠心の工程を包含するプロセスによって調製される[例えば、参考文献84]。しかしながら、より好ましいプロセス[30]は、多糖沈殿後に続く低級アルコールを用いる沈殿した多糖の可溶化を包含する。沈殿は、テトラブチルアンモニウム塩およびセチルトリメチルアンモニウム塩(例えば、臭化塩)、または臭化ヘキサジメチリン塩およびミリスチルトリメチルアンモニウム塩のような陽イオン性界面活性剤を使用して成し遂げられ得る。臭化セチルトリメチルアンモニウム(「CTAB」)は特に好ましい[85]。沈殿した物質の可溶化は、低級アルコール(メタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、2−メチル−プロパン−1−オール、2−メチル−プロパン−2−オール、ジオールなど)の使用により成し遂げられ得るが、しかし、エタノールは、CTAB−多糖複合体の可溶化に特に適している。エタノールは、好ましくは、50%と95%との間の終濃度(エタノールおよび水の全体量をベースとして)を与えるように、沈殿した多糖に加えられる。
【0118】
再可溶化後、この多糖は、夾雑物を除去するためにさらに処理され得る。これは、微量な夾雑物ですら、許容されない状況(例えば、ヒトワクチン作製のため)において、特に重要である。これは、代表的に、濾過(例えば、デプス濾過、活性炭を通じた濾過、サイズ濾過および/または限外濾過)の一以上の工程を包含する。一旦夾雑物を除去するために濾過されると、多糖は、さらなる処理、および/またはプロセスのために沈殿され得る。これは、好都合なことに、陽イオン交換(例えば、カルシウム塩またはナトリウム塩の添加)によって成し遂げられ得る。
【0119】
精製に代わる手段として、本発明の莢膜糖は、全合成または部分合成によって得られ得る(例えば、Hib合成は参考文献86において開示され、MenA合成は参考文献87において開示される)。
【0120】
本発明の組成物は、N.meningitidisの少なくとも二つの血清群由来の莢膜糖を含有する。糖は、好ましくは、(任意の断片化、結合体化、修飾などを含めて)別々に調製され、次いで本発明の組成物を生じさせるために混合される。
【0121】
しかしながら、この組成物が、血清群A由来の莢膜糖を含有する場合、加水分解の可能性を最小限に抑えるために、血清群Aの糖は、使用直前まで、この他の糖に混合されないことが好ましい。これは、好都合なことに、血清群A成分(代表的には適切な賦形剤とともに)を凍結乾燥形態にさせ、そして他の血清群成分(これもまた適切な賦形剤とともに)を液体形態にさせ、使用準備が整った場合、この液体成分を使用して、この凍結乾燥MenA成分を再構成することによって、成し遂げられ得る。アルミニウム塩アジュバントが使用される場合、液体ワクチンを含むバイアル内にアジュバントを含むこと、およびMenA成分をアジュバントなしで凍結乾燥させることが好ましい。
【0122】
従って、本発明の組成物は、以下のものを含むキットから調製され得る:(a)凍結乾燥形態の、N.meningitidis血清群A由来の莢膜糖;および(b)液体形態の、この組成物由来のさらなる抗原。本発明はまた、本発明の組成物を調製する方法を提供し、この方法は凍結乾燥されたN.meningitidis血清群A由来の莢膜糖をさらなる抗原と混合する工程を含み、ここで上記のさらなる抗原は液体形態である。
【0123】
本発明はまた、以下を含めるキットを提供する:(a)全ての凍結乾燥形態の、N.meningitidis血清群C、N.meningitidis血清群W135、およびN.meningitidis血清群Y由来の莢膜糖のうちの2以上を含む、第一の容器;ならびに(b)液体形態の以下を含む、第二の容器:(i)被験体に投与後、被験体内で抗体応答を誘導し得る組成物であって、この抗体応答は、N.meningitidis血清群Bの超病原性系統A4、ET−5および系統3のうちの2以上(例えば2または3)に対して殺菌性である、組成物、(ii)N.meningitidis血清群C、W135およびYに由来しないか、またはこれらのうちの一つ由来の莢膜糖、ならびに必要に応じて(iii)髄膜炎菌の莢膜糖を含まないさらなる抗原(以下を参照のこと)。ここで容器(b)の内容物による容器(a)の内容物の再構築は、本発明の組成物を提供する。
【0124】
各用量内で、個々の糖抗原の量は、概して、(糖の質量として測定して)1〜50μgの間になり、約2.5μg、5μgまたは10μgの各抗原の量が好ましい。従って、1:1:1:1;1:1:1:2;2:1:1:1;4:2:1:1;8:4:2:1;4:2:1:2;8:4:1:2;4:2:2:1;2:2:1:1;4:4:2:1;2:2:1:2;4:4:1:2;および2:2:2:1であるA:C:W135:Yの重量比で、数1によって表される量は、好ましくは、約2.5μg、5μgまたは10μgである。従って、1:1:1:1比のA:C:W:Yの組成物および一つの糖当たり10μgについては、40μgの糖が、一用量当たり投与される。好ましい組成物は、一用量当たり、およそ、以下のμgの糖を有する。
【0125】
【化7】
好ましい本発明の組成物は、一用量当たり、50μg未満の髄膜炎菌の糖を含有する。他の好ましい組成物は、一用量当たり≦40μgの髄膜炎菌の糖を含有する。他の好ましい組成物は、一用量当たり≦30μgの髄膜炎菌の糖を含有する。他の好ましい組成物は、一用量当たり≦25μgの髄膜炎菌の糖を含有する。他の好ましい組成物は、一用量当たり≦20μgの髄膜炎菌の糖を含有する。他の好ましい組成物は、一用量当たり≦10μgの髄膜炎菌の糖を含有するが、しかし、理想的には、本発明の組成物は、一用量当たり少なくとも10μgの髄膜炎菌の糖を含有する。
【0126】
MenjugateTMおよびNeisVacTMのMenC結合体は、水酸化物アジュバントを使用し、一方MeningitecTMはリン酸塩を使用する。本発明の組成物において、水酸化アルミニウムにいくつかの抗原を吸着させることが可能性であるが、リン酸化アルミニウムに会合する他の抗原を有することも可能性である。例えば、四価の血清群の組み合わせについては、以下の順列が利用可能である。
【0127】
【化8】
四価のN.meningitidis血清群の組み合わせについては、以下の順列が利用可能である。
【0128】
【化9】
(Haemophilus influenzae B型)
この組成物が、H.influenzaeB型抗原を含有する場合、それは、代表的に、Hib莢膜糖抗原である。H.influenzae b由来の糖抗原は周知である。
【0129】
有利には、Hib糖は、とりわけ子供においてその免疫原性を増強するため、担体タンパク質に共有結合される。概して、多糖結合体の調製、および特にHib莢膜多糖の調製は、よく実証されている[例えば、参考文献88〜96など]。本発明は、任意の適切なHib結合体を使用し得る。適切な担体タンパク質は、以下に記載され、Hib糖にとっての好ましい担体はCRM197(「HbOC」)、破傷風トキソイド(「PRP−T」)およびN.meningitidisの外膜複合体(「PRP−OMP」)である。
【0130】
この結合体の糖部分は多糖であり得る(例えば、全長ポリリボシルリビトールホスフェート(PRP))。しかしオリゴ糖(例えば、分子量約1〜約5kDa)を形成するために多糖を加水分解することが好ましい。
【0131】
好ましい結合体は、アジピン酸リンカーを介してCRM197に共有結合したHibオリゴ糖を含む[97、98]。破傷風トキソイドもまた、好ましい担体である。
【0132】
本発明の組成物は、1種類より多くのHib抗原を含み得る。
【0133】
組成物が、Hib糖抗原を含有する場合、この組成物は水酸化アルミニウムアジュバントも含有しないことが好ましい。この組成物が、リン酸アルミニウムアジュバントを含有する場合、Hib抗原はアジュバントに吸着され得るか[99]、またはHib抗原は吸着されなくてもよい[100]。
【0134】
Hib抗原は、(例えば、髄膜炎菌抗原とともに)凍結乾燥され得る。
【0135】
(Streptococcus pneumoniae)
この組成物が、S.pneumoniae抗原を含有する場合、これは、代表的に、好ましくは、担体タンパク質に結合体化される莢膜糖抗原である[例えば、参考文献31〜33]。一より多くのS.pneumoniaeの血清型由来の糖を含有することが好ましい。例えば、23の異なる血清型由来の多糖混合物は広く使用される(5と11との間の異なる血清群由来の多糖との結合体化ワクチン[101]のように)。例えば、PrevNarTM[102]は、各糖が還元的アミノ化によりCRM197に個々に結合体化される状態で、各糖が0.5mlの用量当たり2μg(血清型6Bは4μg)で、かつ、結合体がリン酸アルミニウムアジュバントに吸着された状態で、7つの血清型(4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F)由来の抗原を含む。本発明の組成物は、好ましくは、少なくとも血清型6B、14、19Fおよび23Fを含有する。結合体は、リン酸アルミニウム上に吸着され得る。
【0136】
肺炎球菌由来の糖抗原の使用に代わる手段として、この組成物は、一以上のポリペプチド抗原を含有し得る。肺炎球菌のいくつかの株のゲノム配列は入手可能であり[103、104]、ワクチン学を覆す対象であり得[106〜108]、適したポリペプチド抗原を同定し得る[109、110]。例えば、この組成物は、以下の抗原のうち一以上を含有し得る:参考文献111で規定されるような、PhtA、PhtD、PhtB、PhtE、SpsA、LytB、LytC、LytA、Sp125、Sp101、Sp128、およびSp130。
【0137】
いくつかの実施形態において、この組成物は、肺炎球菌由来の糖抗原およびポリペプチド抗原の両方を含有し得る。これらは、単純な混合で使用され得るか、または肺炎球菌の糖抗原は、肺炎球菌のタンパク質に結合体化され得る。このような実施形態にとって適した担体タンパク質には、前の段落において収載される抗原が挙げられる[111]。
【0138】
肺炎球菌抗原は(例えば、肺炎球菌抗原および/またはHib抗原とともに)凍結乾燥され得る。
【0139】
(共有結合性結合体化)
本発明の組成物における莢膜糖は、通常、担体タンパク質に結合される。一般に、結合体化は、糖をT細胞非依存性抗原からT細胞依存性抗原へ転換し、よって、免疫学的記憶の初回刺激を可能とすることから、糖の免疫原性を増強する。結合体化は、小児科ワクチンにとって特に有用であり、周知の技術である[例えば、参考文献112および88〜96で概説される]。
【0140】
好ましい担体タンパク質は、細菌性毒素または細菌性トキソイド(ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイド)である。CRM197変異体ジフテリアトキソイド[79、113、114]は特に好ましい。他の適した担体タンパク質としては、N.meningitidis外膜タンパク質[68]、合成ペプチド[69、70]、熱ショックタンパク質[71、72]、百日咳タンパク質[73、74]、サイトカイン[76]、リンホカイン[76]、ホルモン[76]、増殖因子[76]、種々の病原体由来抗原由来の複数のヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質[115]、H.influenzae由来のプロテインD[75、116]、肺炎球菌の表面タンパク質PspA[117]、鉄取り込みタンパク質[78]、C.difficile由来の毒素A、または毒素B[77]などが挙げられる。好ましい担体は、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、H.influenzaeプロテインD、およびCRM197である。
【0141】
本発明の組成物内で、(例えば、担体抑制の危険を減少させるため)一より多くの担体タンパク質を使用することが可能である。従って、異なる担体タンパク質は、異なる血清群に使用され得る(例えば、血清群Aの糖はCRM197に結合体化され得、一方で血清群Cの糖は破傷風トキソイドに結合体化され得る)。特定の糖抗原に一より多くの担体タンパク質を使用することもまた可能である(例えば、血清群Aの糖は、いくつかの糖がCRM197に結合体化され、他の糖が破傷風トキソイドに結合体化された、二つの群であり得る)。しかしながら、概して、同一の担体タンパク質を全ての糖に使用することが好ましい。
【0142】
単一担体タンパク質は一より多くの糖抗原を保有し得る[118]。例えば、単一担体タンパク質は、その担体タンパク質に結合された血清群Aおよび血清群C由来の糖を有し得る。この目的を成し遂げるため、糖は結合体化反応の前に混合され得る。しかしながら、概して、各血清群のための別個の結合体を有することが好ましい。
【0143】
1:5(すなわち、過剰のタンパク質)と5:1(すなわち、過剰の糖)との間の糖:タンパク質の比(w/w)を有する結合体が好ましい。1:2と5:1との間の比が好ましく、1:1.25と1:2.5との間の比はより好ましい。過剰の担体タンパク質は、MenAおよびMenCについて好ましくあり得る。
【0144】
結合体は、遊離の担体タンパク質との結合体化において使用され得る[119]。ある担体タンパク質が、本発明の組成物中に遊離型形態および結合体化形態の両方で存在する場合、非結合体化形態は、好ましくは、全体として、その組成物中の担体タンパク質の総量の5%以下であり、より好ましくは、2重量%未満である。
【0145】
任意の適した結合体化反応は、必要な場合、任意の適したリンカーとともに使用され得る。
【0146】
糖は、典型的に、結合体化の前に活性化されるか、または官能化される。例えば、活性化は、CDAP(例えば、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジウムテトラフルオロボレート[120、121など])のようなシアン化試薬を含む。他の適した技術は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシンイミド、S−NHS、EDC、TSTUを使用する;参考文献94への序論をまた参照のこと)。
【0147】
リンカー基を介した連結は、任意の公知の手順(例えば、参考文献122および123に記載された手順)を利用して作られ得る。一つの型の連結は、多糖の還元的アミノ化、結果として生じるアミノ基と、アジピン酸リンカー基の一端とのカップリング、およびその後の、アジピン酸リンカー基の他の一端へのタンパク質のカップリングを含む[92、124、125]。他のリンカーは、B−プロピオンアミド[126]、ニトロフェニル−エチルアミン[127]、ハロゲン化ハロアシル[128]、グリコシド結合[129]、6−アミノカプロン酸[130]、ADH[131]、C4〜C12部分[132]などを含む。リンカーの使用に代わる手段として、直接的結合が使用され得る。そのタンパク質への直接的結合は、例えば、参考文献133および参考文献134に記載されるような多糖の酸化とその後のタンパク質との還元的アミノ化を含み得る。
【0148】
糖へのアミノ基の導入(例えば、末端=O基の−NH2との交換による導入)およびその後のアジピン酸ジエステル(例えば、アジピン酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステル)での誘導体化、ならびに担体タンパク質との反応を包含するプロセスは、好ましい。別の好ましい反応は、プロテインD担体(例えば、MenAまたはMenCのための担体)でのCDAP活性化を使用する。
【0149】
結合体化後、遊離型糖および結合体化糖は、分離され得る。疎水性クロマトグラフィー、接線限外濾過、ダイアフィルトレーションなどを包含する多くの適切な方法がある[参考文献135および136などをまた参照のこと]。
【0150】
本発明の組成物が結合体化されたオリゴ糖を含有する場合、オリゴ糖の調製は結合体化に先行することが好ましい。
【0151】
(外膜ベシクル)
好ましくは、本発明に係る組成物は、OMVの典型的な特徴である、複合体のまたは未定義の抗原混合物を含むべきでない。しかし、本発明をOMVに適用し得る1つの方法は、OMVを、複数回投与スケジュールにおいて投与するものである。
【0152】
OMVを1用量以上投与しようとする場合、各用量に、上で定義したとおりの第1のタンパク質、第2のタンパク質、または第3のタンパク質の1つを(精製したタンパク質を付加するか、または、OMVが由来する細菌の中でタンパク質を発現させて)補充することができる。好ましくは、さまざまなNMB1870改変体によって、さまざまな用量に補充される。例えば、3回のOMV投与スケジュールにおいて、各用量は、第1のタンパク質、第2のタンパク質、または第3のタンパク質のうちの異なったものを1つ含むことができ、OMVを3用量服用すれば、3種類の改変体をすべて服用している。2回のOMV投与スケジュールにおいて、各OMV用量に対して1つの改変体を使用する(したがって、1つの改変体を除く)ことができ、また3種類の改変体をすべてカバーするために、OMVの1用量または両方の用量に1種類以上の改変体を補充することができる。好適な実施態様において、3用量のOMVがある(3つのOMV用量のそれぞれが、3種類の異なった遺伝子操作されたベシクル集団を含み、この集団のそれぞれが、3種類のサブタイプを提示し、したがって全部で9種類の異なったサブタイプをもたらす)。
【0153】
この方法は、一般的に、N.meningitidis血清群Bのマイクロベシクル[137]、「天然型OMV」[138]、小胞(blebs)または外膜ベシクル[例えば参考文献139から144など参照]の調製法を改良するために用いることができる。これらは、例えば、免疫原性を高める(例えば過発現(hyper−express)免疫原)、毒性を低下させる、莢膜多糖の合成を阻害する、PorA発現を下方制御するなどのために遺伝子操作した細菌から調製することができる。それらは、過剰に小胞形成する(hyperblebbing)菌株から調製することも可能である[149〜152]。非病原性ナイセリア由来のベシクルも含まれ得る[153]。OMVは、界面活性剤を使用しないでも調製することができる[154、155]。それらは、表面に非ナイセリアタンパク質を発現することも可能である[156]。それらは、LPSが除去されていてもよい。それらは、組換え抗原と混合することもできる[139、157]。さまざまなクラスI外膜タンパク質サブタイプをもつ細菌からのベシクル、例えば、それぞれが3種類のサブタイプを示す2つの異なった遺伝子工学的に改造されたベシクル集団を用いた6種類の異なったサブタイプ、または、それぞれが3種類のサブタイプを示す3つの異なった遺伝子工学的に改造されたベシクル集団を用いた9種類の異なったサブタイプなどを用いることができる。有用なサブタイプとしては、P1.7,16;P1.5−1,2−2;P1.19,15−1;P1.5−2,10;P1.12−1,13;P1.7−2,4;P1.22,14;Pl.7−1,1;P1.18−1,3,6が挙げられる。
【0154】
当然ながら、2種類または3種類の異なった改変体をベシクル調製物に補充することも可能である。
【0155】
(免疫化)
本発明に係る組成物は、好ましくは免疫原性組成物であり、本発明は、薬物として使用するために本発明の免疫原性組成物を提供する。
【0156】
また、本発明は、哺乳動物において抗体応答を惹起する方法であって、本発明に係る免疫原性組成物を哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。好ましくは、抗体応答は防御および/または殺菌抗体応答である。
本発明は、ナイセリア属(例えば髄膜炎菌)による感染から哺乳動物を防御するための方法であって、本発明に係る免疫原性組成物を哺乳動物に投与することを含む方法も提供する。
【0157】
また、本発明は、哺乳動物においてナイセリア属(例えば髄膜炎菌)による感染を予防するための薬物を製造における、上で定義されている抗原(a)、(b)および(c)の少なくとも2つの使用を提供する。
【0158】
哺乳動物は、好ましくはヒトである。ヒトは成人でもよく、または、好ましくは子供でもよい。
【0159】
本発明に係る免疫原性組成物は治療に(すなわち、既存の感染症を処置するために)、または予防的に(すなわち、将来の感染を防ぐために)用いることができる。
【0160】
これらの使用および方法は、髄膜炎(特に細菌性髄膜炎)および菌血症を含む(これらに限定されない)病気を予防/処置するのに特に有用である。
【0161】
治療的処置の有効性は、本発明に係る組成物を投与した後のナイセリア感染を監視することによって試験することができる。予防的処置の有効性は、組成物を投与した後のNMB1870に対する免疫応答をモニターして試験することができる。本発明に係る組成物の免疫原性は、それらを被験体(例えば12〜16ヶ月齢の子供、または動物モデル[160])に投与してから、血清中の殺菌性抗体(SBA)ならびに全抗莢膜IgGおよび高アビディティ抗莢膜IgGのELISA力価(GMT)など、標準的なパラメーターを測定して決定することができる。これらの免疫応答は、組成物を投与してからほぼ4週間後に決定することができ、組成物を投与する前に測定された値と比較される。少なくとも4倍または8倍のSBA増加が好適である。1用量以上の組成物が投与される場合には、投与後測定が2回以上行うことができる。
【0162】
好適な本発明に係る組成物は、患者において、ヒト被験体の許容できる割合についての各抗原成分に対する血清防御(seroprotection)に関する基準よりも高い抗体力価を付与することができる。その抗原に対して宿主がセロコンバージョンを起こすと考えられているよりも高い関連抗体力価をもつ抗原は周知であり、そのような力価は、WHOなどの機関によって公表されている。統計的に有意な被験体のサンプルの好ましくは80%よりも多くがセロコンバージョンを起こし、より好ましくは90%よりも多くが、さらにより好ましくは93%よりも多くが、もっとも好ましくは96〜100%がセロコンバージョンを起こす。
【0163】
本発明の組成物は、通常、直接患者に投与される。直接的な送達は、非経口注射(例えば皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、または組織の間質腔への注射)によって、または、直腸、口、膣、局所、経皮、鼻腔内、眼、耳、肺もしくはその他の粘膜への投与によって行うことができる。筋肉内投与は、大腿部または上腕部へが好ましい。注射は、針(例えば皮下注射用の針)によることもできるが、その代わりに針なしの注射を用いることができる。典型的な筋肉内用量は0.5mlである。
【0164】
本発明を用いて、全身および/または粘膜の免疫を誘導することも可能である。
【0165】
投薬治療は、単回投与スケジュールでも複数回投与スケジュールでも可能である。複数回投与を初回免疫スケジュールおよび/または追加免疫スケジュールで用いることも可能である。初回免疫投与スケジュールの後、追加免疫投与スケジュールを行うことができる。初回投与間の適当な時間間隔(4〜16週間)、および初回および追加免疫の間の時間間隔は慣習的に決めることができる。
【0166】
本発明に係る免疫原性組成物は、通常、医薬上許容され得る担体を含むが、この担体は、それ自体は組成物を投与される患者に対して有害な抗体の産生を引き起こすことのない、任意の物質であって、過度の毒性なしに投与することができる。適当な担体は、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性化ウイルス粒子など、大型でゆっくりと代謝される高分子でもよい。このような担体は、当業者に周知である。医薬上許容され得る担体は、水、食塩水、グリセロールおよびエタノールなどの液体を含み得る。湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質も、そのようなビヒクル中に存在させることができる。リポソームは適切な担体である。医薬上許容の担体の詳細な考察は、参考文献161で得られる。
【0167】
ナイセリア感染症は、身体のさまざまな領域に影響を与えるため、本発明に係る組成物は、さまざまな形態で調製することができる。例えば、組成物は、溶液または懸濁液いずれかの注射液として調製することができる。注射前に溶液にしたり、懸濁液にしたり、液状ビヒクルにするのに適した固体も調製することもできる。組成物は、例えば軟膏、クリームまたは粉剤として局所投与するために調製することもできる。組成物は、例えば錠剤もしくはカプセルとして、またはシロップ(必要に応じて風味付けしたもの)として経口投与するために調製することができる。組成物は、例えば吸入器として、微粉末またはスプレーを用いて肺に投与するために調製することができる。組成物は、坐剤または膣坐薬として調製することができる。組成物は、例えば点薬として鼻、耳または眼に投与するために調製することができる。
【0168】
好ましくは、組成物は滅菌されている。発熱物質を含まないものが好適である。好ましくは、例えばpH6とpH8との間、通常は約pH7に緩衝されている。組成物が、水酸化アルミニウム塩を含む場合、ヒスチジンバッファーを使用するのが好適である[162]。本発明に係る組成物は、ヒトに関して等張である。
【0169】
免疫原性組成物は、免疫学的に有効な量の免疫原、および、必要ならば、別の特定な成分のいずれかを含む。「免疫学的に有効な量」とは、その量を一回量として、または連続投与の一部として個体に投与したときに、処置または予防に効果があることを意味する。この量は、処置を受ける個体の健康および身体の状態、年齢、処置を受ける個体の分類群(例えば非ヒト霊長類、霊長類など)、抗体産生する個体の免疫系の能力、所望の防御程度、ワクチンの処方、医学的状況に関する処置医の評価、およびその他の関連要素によって変動する。この量は、日常的な試験によって決定することができる比較的広い範囲に含まれると期待される。投薬処置は、単回投与スケジュールでも、複数回投与スケジュール(例えば追加投与を含む)でもよい。組成物は、別の免疫調節剤とともに投与することができる。
【0170】
一般的に、免疫原性組成物はアジュバントを含む。組成物の効果を高めるのに好適なアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(A)MF59(マイクロフルイダイザーを用いてミクロン未満の粒子に製剤された5%スクアレン、0.5% Tween 80および0.5% Span 85)[参考文献163の第10章参照、また、参考文献164参照];(B)生物分解性および非毒性の材料(例えばポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)から形成された微粒子(すなわち、直径約100nmから約150μm、より好ましくは直径約200nmから約30μm、もっとも好ましくは直径約500nmから約10μmの粒子)(ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)であること(「PLG」)が好適で、必要に応じて(例えば、SDS(負荷電)またはCTAB(正荷電)などの陽イオン性、陰イオン性、または非イオン性界面活性剤を加えることによって)荷電表面を有する)[例えば、参考文献165および166];(C)リポソーム[参考文献163の第13および14章参照];(D)付加的な界面活性剤を欠くISCOM[参考文献163の第23章参照][167];(E)10%スクアレン、0.4% Tween 80、5%プルロニック(pluronic)ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含むSAFであって、微粒子流動(microfluidized)させてミクロン未満の乳濁液となっているか、より大きな粒子サイズの乳濁液を生成するために撹拌したもの[参考文献163の第12章参照];(F)2%スクアレン、0.2% Tween 80、およびモノホスホリリピドA(monophosphorylipid A)(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群由来の1種類以上の細菌細胞壁成分、好ましくはMPL+CWS(DetoxTM)を含むRibiTMアジュバントシステム(RAS)、(Ribi Immunochem);(G)StimulontTMとしても知られている、QuilAまたはQS21などのサポニンアジュバント[参考文献163の第22章参照];(H)キトサン[例えば168];(I)完全フロインドアジュバント(CFA)およびフロインド不完全アジュバント(IFA);(J)インターロイキン(例えば1L−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12)、インターフェロン(例えばインターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子などのサイトカイン[参考文献163の第27および28章参照]、RC529;(K)サポニン(例えばQS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて+ステロール)[169];(L)モノホスホリリピドA(monophosphorylipid A)(MPL)または3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)[例えば参考文献163の第21章参照];(M)3dMPLと、例えばQS21および/または水中油乳液を併用したもの[170];(N)必要に応じてシトシンの代わりに5−メチルシトシンが用いられる、CpGモチーフを含む(すなわち、少なくとも1個のCGジヌクレオチドを含む)、オリゴヌクレオチド[171];(O)ポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチレンエステル[172];(P)オクトキシノールと併用されるポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤[173]、あるいはオクトキシノールなどのさらなる非イオン性界面活性剤の少なくとも1種類と併用されたポリオキシエチレンアルキルエーテルもしくはエステルの界面活性剤[174];(Q)免疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えばCpGオリゴヌクレオチド)およびサポニン[175];(R)免疫刺激剤および金属塩粒子[176];(S)サポニンおよび水中油乳濁液[177];(T)大腸菌の非耐熱性エンテロトキシン(「LT」)、またはその無毒化変異体(K63またはR72変異体など)[例えば、参考文献38の第5章];(U)コレラ毒素(「CT」)またはその無毒化変異体[例えば、参考文献38の第5章];(V)二本鎖RNA;(W)水酸化アルミニウム(オキシ水酸化物を含む)、リン酸アルミニウム(ヒドロキシリン酸を含む)、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩[例えば参考文献163の第8および9章参照]、または、リン酸カルシウムなどのカルシウム塩;ならびに(X)免疫刺激剤として作用して、組成物の有効性を高めるその他の物質[例え、参考文献163の第7章参照]。アルミニウム塩(リン酸アルミニウムおよび特にヒドロキシリン酸アルミニウム、ならびに/または水酸化アルミニウムおよび特にはオキシ水酸化アルミニウム)およびMF59が非経口免疫にとって好適なアジュバントである。毒素の変異体は好適な粘膜アジュバントである。QS21は、NMB1870にとってもう一つの有用なアジュバントであって、単独または(A)から(X)までのいずれか、例えばアルミニウム塩と併用して使用することができる。
【0171】
ムラミールペプチドには、N−アセチル−ムラミール−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミール−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミール−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2 ’−ジパルミトイル−sn−グルセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)などが挙げられる。
【0172】
(タンパク質発現)
細菌の発現技術は当技術分野において公知である。細菌のプロモーターは、細菌のRNAポリメラーゼに結合して、コード配列(例えば構造遺伝子)をmRNAへと下流(3’)方向に転写開始させることができる任意のDNA配列である。プロモーターは、コード配列の5’末端付近に通常存在する転写開始領域を有する。この転写開始領域は、通常、RNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位を含む。また、細菌のプロモーターは、オペレーターと呼ばれ、隣接するRNAポリメラーゼ結合部位と重複することもあり、そこからRNA合成が開始する第2のドメインを有することもある。オペレーターは、遺伝子リプレッサータンパク質がオペレーターに結合して特定の遺伝子の転写を阻害するため、負に制御された(誘導型)転写を可能にする。オペレーターなどの負の調節エレメントがないときには構成的発現が生じ得る。さらに、あるとすれば、通常、RNAポリメラーゼ結合配列の近傍(5’)にある遺伝子活性化因子タンパク質結合配列によって正の調節が達成され得る。遺伝子活性化因子タンパク質の例は、カタボライト活性化タンパク質(CAP)であり、大腸菌(E.coli)においてlacオペロンの転写開始を助ける[Raibaudら、(1984)Annu.Rev.Genet.18:173]。したがって、制御された発現は正または負のいずれかであり、それによって転写が促進されるか抑制される。
【0173】
代謝経路酵素をコードする配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例としては、ガラクトース、ラクトース(lac)[Changら、(1977)Nature 198:1056]、およびマルトースなどの糖代謝酵素に由来するプロモーター配列などがある。別の例には、トリプトファン(trp)などの生合成酵素に由来するプロモーター配列が含まれる[Goeddelら、(1980)Nuc.Acids Res.8:4057;Yelvertonら、(1981)Nucl.Acids Res.9:731;米国特許第4,738,921号;EP−A−0036776およびEP−A−0121775]。β−ラクタマーゼ(bla)プロモーター系[Weissmann(1981)「The cloning of interferon and other mistakes.」、Interferon 3(I.Gresser編)]、バクテリオファージラムダPL[Shimatakeら、(1981)Nature 292:128]およびT5[米国特許第4,689,406号]のプロモーター系も有用なプロモーター配列を提供する。対象となる別のプロモーターは誘導型アラビノースプロモーター(pBAD)である。
【0174】
さらに、天然には存在しない合成プロモーターも細菌のプロモーターとして機能する。例えば、1つの細菌またはバクテリオファージのプロモーターの転写活性化配列を、別の細菌またはバクテリオファージのプロモーターのオペロン配列と結合させて、合成ハイブリッドプロモーターを作出することができる[米国特許第4,551,433号]。例えば、tacプロモーターは、trpプロモーターと、lacリプレッサーによって制御されるlacオペロンの配列を含むハイブリッドのtrp−lacプロモーターである[Amannら、(1983)Gene 25:167;de Boerら、(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.80:21]。さらに、細菌のプロモーターには、細菌以外の起源をもつ天然のプロモーターであって、細菌のRNAポリメラーゼに結合して転写を開始させることができるプロモーターも含まれ得る。また、非細菌由来の天然型プロモーターは、適合性のあるRNAポリメラーゼと結合して、原核生物の中でいくつかの遺伝子の高レベル発現を行わせることができる。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼ/プロモーター系は、結合したプロモーター系の例である[Studierら、(1986)J.Mol.Biol.189:113;Taborら、(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.82:1074]。さらに、ハイブリッドプロモーターも、バクテリオファージのプロモーターおよび大腸菌のオペレーター領域を含むことができる(EPO−A−0 267 851)。
【0175】
機能的なプロモーター配列以外に、効率的なリボソーム結合部位も、原核生物の中で外来遺伝子を発現させるのに役立つ。大腸菌においては、リボソーム結合部位はシャイン−ダルガルノ(SD)配列と呼ばれ、開始コドン(ATG)、および開始コドンから3から11ヌクレオチド上流のところにある長さ3〜9ヌクレオチドの配列を含む[Shineら、(1975)Nature 254:34]。SD配列は、SD配列と大腸菌16S rRNAの3’末端との間で塩基対合することによって、mRNAがリボソームに結合するのを促進すると考えられている[Steitzら、(1979)“Genetic signals and nucleotide sequences in messenger RNA“、Biological Regulation and Development:Gene Expression(R.F.Goldberger編)]。真核生物の遺伝子、および弱いリボソーム結合部位をもつ原核生物の遺伝子を発現させるため[Sambrookら、(1989)「Expression of cloned genes in Escherichiacoli.」、Molecular Cloning:A Laboratory Manual]。
【0176】
プロモーター配列は、DNA分子と直接連結させることも可能であり、その場合には、N−末端にある最初のアミノ酸は常にメチオニンであって、ATG開始コドンによってコードされている。所望であれば、N−末端のメチオニンは、臭化シアンとインビトロでインキュベートして、または、細菌のメチオニンN−末端ペプチダーゼとインビボまたはインビトロでインキュベートしてタンパク質から切断することができる(EP−A−0219237)。
【0177】
通常、細菌によって認識される転写終結配列は、翻訳終止コドンの3’側にある調節領域であり、そのため、プロモーターと一緒にコード配列の近傍に存在する。これらの配列は、該DNAによってコードされているポリペプチドに翻訳され得るmRNAの転写を指令する。転写終結配列は、多くの場合、転写の終結を補助するステムループ構造を形成することができる約50ヌクレオチドのDNA配列を含む。例には、大腸菌のtrp遺伝子およびその他の生合成遺伝子など、強いプロモーターをもつ遺伝子に由来する転写終結配列が含まれる。
【0178】
通常、プロモーター、シグナル配列(所望であれば)、対象とするコード配列、および転写終結配列を含む上記構成要素は、まとめて発現構築物に組み込まれる。発現構築物は、しばしば、細菌などの宿主中で安定して維持され得る染色体外要素(例えばプラスミド)などのレプリコンの中で維持される。レプリコンは複製系を有するため、発現のためにせよ、クローニングおよび増幅のためにせよ、原核生物宿主の中で維持することができる。さらに、レプリコンは高コピー数のプラスミドでも低コピー数のプラスミドでもよい。高コピー数のプラスミドは、一般的に、約5から約200個まで、通常は約10個から約150個のコピー数をもつ。高コピー数のプラスミドを含む宿主は、好ましくは、少なくとも約10個、より好ましくは少なくとも約20個のプラスミドを含む。宿主に対するベクターおよび外来タンパク質の効果に応じて、高コピー数のベクターまたは低コピー数のベクターのどちらを選ぶこともできる。
【0179】
あるいは、発現構築物を、組み込みベクターによって細菌のゲノムに組み込むこともできる。組み込みベクターは、通常、ベクターの組み込みを可能にする、細菌の染色体に相同な配列を少なくとも1つ含む。組み込みは、ベクター中の相同的DNAと細菌の染色体との間の組換えによって起こると考えられている。例えば、さまざまなバシラス属の菌株由来のDNAによって構築された組み込みベクターは、バシラス属の染色体に組み込まれる(EP−A−0127328)。また、組み込みベクターは、バクテリオファージまたはトランスポゾンの配列から構成することもできる。
【0180】
通常、染色体外組み込み発現構築物は、形質転換された菌株を選択するための選択マーカーを含むことができる。選択マーカーは、細菌宿主の中で発現させることができ、そして、アンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン(ネオマイシン)、およびテトラサイクリンなどの薬剤に対して細菌を抵抗性にする遺伝子を含むことができる[Daviesら、(1978)Annu.Rev.Microbiol 32:469]。また、選択マーカーは、ヒスチジン、トリプトファン、およびロイシンの生合成経路など、生合成遺伝子を含むこともできる。
【0181】
あるいは、上記構成要素には、形質転換ベクターに一緒に組み込むことのできるものもある。形質転換ベクターは、上記したように、通常、レプリコンの中で維持されているか、または組み込みベクターへと発達する選択マーカーを含む。
【0182】
発現用および形質転換用のベクターは、染色体外レプリコンであっても、組み込みベクターであっても、多くの細菌に形質転換できるよう開発されている。例えば、発現ベクターは、なかでも、以下の細菌のために開発されている。枯草菌(Bacillus subtilis)[Palvaら、(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:5582;EP−A−0036259およびEP−A−0063953;WO84/04541]、大腸菌[Shimatakeら、(1981)Nature 292:128;Amannら、(1985)Gene 40:183;Studierら、(1986)J.Mol.Biol.189:113;EP−A−0036776、EP−A−0136829およびEP−A−0136907]、クレモリス菌(Streptococcus cremoris)[Powellら、(1988)Appl.Environ.Microbiol 54:655];ストレプトコッカス・リビダンス(Streptococcus lividans)[Powellら、(1988)Appl.Environ.Microbiol.54:655]、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)[米国特許第4,745,056号]。
【0183】
外来DNAを細菌宿主の中に導入する方法は、当技術分野において周知であり、通常、CaCl2、または二価カチオンおよびDMSOなどその他の薬剤のいずれかで処理された細菌の形質転換を含む。また、エレクトロポレーションによって細菌細胞の中にDNAを導入することもできる。形質転換の手順は、通常、形質転換される細菌の種によって変化する。例えば、[Massonら、(1989)FEMS Microbiol.Lett.60:273;Palvaら、(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:5582;EP−A−0036259およびEP−A−0063953;WO84/04541、バシラス属]、[Millerら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:856;Wangら、(1990)J.Bacteriol.172:949、カンピロバクター]、[Cohenら、(1973)Proc.Natl.Acad.Sci.69:2110;Dowerら、(1988)Nucleic Acids Res.16:6127;Kushner(1978)“An improved method for transformation of Escherichia coli with ColEl−derived plasmids.Genetic Engineering:Proceedings of the International Symposium on Genetic Engineering(H.W.BoyerおよびS.Nicosia編);Mandelら、(1970)J Mol.Biol.53:159;Taketo(1988)Biochim.Biophys.Acta 949:318、エシェリキア属]、[Chassyら、(1987)FEMS Microbiol.Lett.44:173、乳酸桿菌属]、[Fiedlerら、(1988)Anal.Biochem170:38、シュードモナス属]、[Augustinら、(1990)FEMS Microbiol.Lett.66:203、スタヒロコッカス属]、[Baranyら、(1980)J.Bacteriol.144:698;Harlander(1987)”Transformation of Streptococcus lactis by electroporation,:Streptococcal Genetics(J.FerrettiおよびR.Curtiss III編);Perryら、(1981)Infect.Immun.32:1295;Powellら、(1988)Appl.Environ.Microbiol 54:655;Somkutiら、(1987)Proc.4th Evr.Cong.Biotechinology 1:412、連鎖球菌]を参照。
【0184】
(放棄)
好ましくは、本発明は以下を除外する。(a)2002年11月22日以前に公開配列データベース(例えばGenBankまたはGENESEQ)で利用可能なアミノ酸配列および核酸配列;(b)2002年11月22日以前の出願日または適用可能であれば優先日をもつ親出願に開示されているアミノ酸配列および核酸配列。特に、例えば参考文献13など、本明細書に引用されている参考文献のいずれかに記載されている配列番号エントリは除外され得る。
【0185】
(一般)
用語「含む(comprising)」は、「含有する、含む(including)」および「構成する(consisting)」を意味し、例えば、Xを「含む」組成物は、もっぱらXから構成されるか、またはさらなる何か(例えば、X+Y)を含有し得る。
【0186】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0187】
単語「実質的に」は、「完全に」を除外せず、例えば、Yを「実質的に含まない」の組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。必要に応じて、その単語「実質的に」は、本発明の規定から除外され得る。
【0188】
「配列同一性」は、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)で実行されているスミス−ウォーターマン(Smith−Waterman)同一性検索アルゴリズムによって、ギャップ出現時ペナルティ(gap open penalty)を12、ギャップ伸長時ペナルティ(gap extension penalty)を1とするアフィンギャップ検索を用いて決定される。
【0189】
血清群の後、髄膜炎菌の分類は、血清型、血清サブタイプ、そして免疫型を含み、標準的な命名法は、血清群、血清型、血清サブタイプ、そして免疫型を挙げ、それぞれを、例えばB:4:P1.15:L3,7,9というふうにコロンで区切る。血清群Bの中には、しばしば病気を引き起こす系統(過侵襲性)もあり、他よりも重篤な病状を引き起こす系統(超病原性)もあり、そして、そもそもほとんど病気を引き起こさない系統もある。7つの超病原性系統、すなわちサブグループI、IIIおよびIV−1、ET−5複合体、ET−37複合体、A4群、および系統3が認定されている。これらは、多座酵素電気泳動(MLEE)によって定義されたものであるが、多座配列タイピング(MLST)も髄膜炎菌を分類するために使用されている[参考文献16]。4つの主要な超病原性群はST32、ST44、ST8およびST11複合体である。
【0190】
用語「アルキル」は、直鎖状形態および分枝状形態の両方のアルキル基に言及する。そのアルキル基は、−O−、−NH−あるいは−S−から選択される1つ、2つ、または3つのヘテロ原子で割り込まれ得る。そのアルキル基はまた、1つ、2つ、または3つの二重結合または1つ、2つ、または3つの三重結合で割り込まれ得る。しかしながら、用語「アルキル」は、通常、ヘテロ原子の割り込み、あるいは二重結合または三重結合の割り込みを有さないアルキル基に言及する。言及がC1−12アルキルになされる場合、それは、アルキル基が1と12との間の任意の数の炭素原子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)を含み得ることを意味する。同様に、言及がC1−6アルキルにされる場合、そのアルキル基は、1と6との間の任意の数の炭素原子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6)を含み得ることを意味する。
【0191】
用語「シクロアルキル」は、シクロアルキル基、ポリシクロアルキル基、およびシクロアルケニル基、ならびにアルキル基とのこれらの組み合わせ(シクロアルキルアルキル基など)を含む。そのシクロアルキル基は、−O−、−NH−または−S−から選択される1つ、2つ、3つのヘテロ原子で割り込まれ得る。しかしながら、用語「シクロアルキル」は、通常、ヘテロ原子の割り込みを有さないシクロアルキル基に言及する。シクロアルキル基の例は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキシルメチル基、およびアダマンチル基を含む。言及がC3−12シクロアルキルにされる場合、それは、そのシクロアルキル基が、3と12との間の任意の数の炭素原子(例えば、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)を含み得ることを意味する。
【0192】
用語「アリール」は、芳香族基(フェニルまたはナフチルなど)に言及する。言及がC5−12アリールにされる場合、それは、そのアリール基が、5と12との間の任意の数の炭素原子(例えば、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)を含み得ることを意味する。
【0193】
用語「C5−12アリール−C1−6アルキル」は、ベンジル、フェニルエチルおよびナフチルメチルのような基に言及する。
【0194】
窒素保護基は、シリル基(TMS、TES、TBS、TIPSなど)、アシル誘導体(フタルイミド、トリフルオロアセトアミド、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(ZまたはCbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル(Troc))、スルホニル誘導体(β−トリメチルシリルエタンスルホニル(SES))、スルフェニル誘導体、C1−12アルキル、ベンジル、ベンズヒドリル、トリチル、9−フェニルフルオレニルなどを含む。好ましい窒素保護基はFmocである。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】図1は、NMB1870の上流領域の塩基配列を示している。
【図2】図2は、TbpBタンパク質ならびに抗原NMB2123およびNMB1870の構造を概略的に示している。リーダーペプチドおよび近傍のグリシンリッチ領域が示されている。5つの保存ボックスが異なったモチーフによって示されており、それらの位置がタンパク質配列上にマップされている。
【図3】図3は、増殖曲線とともに髄膜炎菌MC58におけるNMB1870の量が増加することを示している。
【図4】図4は、同じ期間内に上清においてNMB1870の量が増加することを示している。PorA量およびNMB1380の量は増加しない。レーンの上の数字は、培養液のOD620nm値を示している。KOは、MC58のNMB1870ノックアウト変異体を示し、Wclは全細胞ライセート対照を意味する。
【図5】図5は、抗NMB1870でプローブしたOMVを示している。
【図6】図6は、抗NMB1870を用いた、莢膜で覆われたMC58または莢膜で覆われていない変異体MC58のFACS解析を示している。
【図7】図7は、高発現性(レーン1および2)、中発現性(3および4)、および低発現性(5および6)のNMB1870発現体(expressers)の全細胞ライセートで泳動した濃度勾配SDS−PAGEゲルのウエスタンブロットである。レーン7は、MC58 NMB1870ノックアウトを含む。レーンは、以下である:(1)MC58;(2)H44/76;(3)NZ394/98;(4)961−5945;(5)67/00;(6)M1239:(7)MC58Δnmb1870。
【図8】図8は、高発現性、中発現性および低発現性の発現体、およびNMB1870ノックアウト変異体のそれぞれについて、FACおよび殺菌力価を示したものである。中発現性および低発現性の発現体は、MC58に対して91.6%適合する、同一のNMB1870アミノ酸配列を有する。
【図9】図9は、NMB1870タンパク質の距離による系統群を示す樹状図である。「1」、「2」および「3」という標識は3種類の改変体を示している。角括弧の中の数字は、樹状図の各枝に表された同一配列をもつ系統の数を示す。超病原性系統が、総数と異なるときには、その系統数を付けて示されている。B以外の血清群も示されている。血清学的解析で使用された3種類の菌株(MC58、961−5965およびM1239)およびもう一つの菌株が、丸の中に示されている。
【図10】図10は、改変体1(MC58)、改変体2(961−5965)および改変体3(M1239)の配列アラインメントである。アミノ酸番号は、成熟タンパク質の第1アミノ酸であると推定されているシステインから開始している。灰色および黒で囲んだ部分は、それぞれ保存された、同一の残基を示している。
【図11】図11は、改変体1(MC58)、改変体2(961−5965)および改変体3(M1239)の標準株を用いた、改変体1(第1列)、改変体2(第2列)および改変体3(第3列)に対する血清のFACS解析を示す。莢膜多糖に対する対照血清を第4列に示す(モノクローナル抗体Seam3)。細胞質タンパク質に対する対照血清を第5列に示す(抗NMB1380)。第6列は、各標準株のノックアウト変異体(KO)を含み、同種抗血清でプローブしている。
【図12】図12は(改変体1)は、3種類の別々のNMB1870の改変体について、多座配列タイピング(ST)によって分類した樹状図である。
【図13】図13(改変体2)は、3種類の別々のNMB1870の改変体について、多座配列タイピング(ST)によって分類した樹状図である。
【図14】図14(改変体3)は、3種類の別々のNMB1870の改変体について、多座配列タイピング(ST)によって分類した樹状図である。
【発明を実施するための形態】
【0196】
(発明の実施形態)
(血清群Bの菌株MC58におけるNMB1870−開始コドンの同定)
Institute of Genomic Research(TIGR)およびSanger Centerによってそれぞれ同定されたMenBおよびMenAのゲノム配列中にNMB1870遺伝子が同定された[2,4;NMB1870およびNMA0586]。しかし、MenBの開始コドンはMenAの開始コドンより120bp上流にあるため、ATG開始コドンの位置に関して食い違いがあった。この先行技術の両アノテーションとは対照的に、本発明は、先行技術の開始コドンよりも下流にある(MenAでは18bp下流、MenBの開始コドンでは138bp下流になる)GTGコドンを開始コドンとして位置づけていて、参考文献8と一致させる。
図1に示すように、GTGからの開始(+1)は、正確な間隔に置かれたリボソーム結合部位の存在、およびリポタンパクのシグネチャー(signature)の予測とつじつまが合う。先行技術であるTIGRのMenB開始コドンを四角で囲んで示し、SangerのMenAの開始コドンを丸で囲んで示した。逆位反復配列を水平の矢印で示す。
【0197】
NMB1870は、フルクトース−ビスホスフェートアルドラーゼ遺伝子nmb1869の終止コドンから157塩基下流に位置するモノシストロン性の遺伝子である。MenA Z2491でも、全体的な構成は類似しているが、GTG開始コドンから31塩基上流に、IS1106の内部反復領域に相同で、かつ2つの16塩基対の反復配列が隣接している186ヌクレオチドの挿入がある。推定リボソーム結合部位(斜線部)が、GTG開始コドンから8塩基対上流に存在する。配列番号75から開始して、最大で9個のミスマッチを許容するGCGFindPatternによって予測されたように、furボックス(大腸菌のfurボックス共通配列と11/19一致する[178];配列番号74および75)が、開始コドンの35bp上流に存在する。プロモーターと推定される配列も検出された。
【0198】
遺伝子およびタンパク質の配列のコンピュータによる配列解析にはGCGウィスコンシンパッケージソフト(バージョン10.0)を用いた。位置の推定にはPSORTプログラム[179]を用いた。NMB1870は、−Leu−X−X−Cys−型のリポ−ボックスモチーフであって、システインの後に、リポタンパクの外膜局在に一般的に関係するアミノ酸であるセリンが続く[180]モチーフをもつシグナルペプチドによって特徴づけられる表面露出タンパク質の典型的なシグネチャーを持っている。このリポ−ボックスは、MC58のヌクレオチド36の後ろに一塩基(G)の挿入によるフレームシフトによって、淋菌では失われており、正しいリーディングフレームは、73番目の後ろに8bpの挿入があって回復されている。
【0199】
成熟MC58タンパク質は、26,964Daの分子量と7.96のpI値をもつリポタンパクであると推定されており、リポ−ボックスモチーフの下流に4個のグリシンが存在するのが特徴である。
【0200】
PredictProteinソフトウエア[181]を用いた二次構造予測解析では、NMB1870は、大部分がベータシートから構成された球状タンパク質であることが示されている。
【0201】
(配列解析)
相同性検索には、非重複タンパク質データベースを用いたPSI−BLASTアルゴリズムが使用された。NCBIのサイトで維持されている、ヒトゲノムを含む既存の原核生物および真核生物の非重複タンパク質データベースを検索しても相同的なタンパク質は見つからなかったが、このことは、NMB1870がナイセリア属に特異的なものであることを示唆している。しかし、アクチノバシラス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)のトランスフェリン結合タンパク質TfbAのC−末端側部位にいくらかの同一性(146アミノ酸にわたって28%の同一性)をもつドメインが見つかった[183](図2)。このドメインをより詳細に見ると、N.meningtidis、インフルエンザ菌(H.influenzae)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)のトランスフェリン結合タンパク質との相同性、および、以前TbpBのホモログであるとアノテーションされたN.meningtidisの表面抗原NMB2132[3]との相同性が明らかになった。
【0202】
この配列相同性が、機能的な相同性を反映しているか否かを確認するために、組換えNMB1870(下記参照)、ヒトトランスフェリンhTF(Sigma T−4132)、およびこれら2つの混合物(最終濃度7μM)をPBS中4℃で一晩(O/N)透析した。透析の後、各タンパク質およびそれらの混合液を20μlずつ、泳動バッファーとしてPBSを用いたHPLC Superdex 2000 PC 3.2/30ゲル濾過カラム(Amersham)でロードした[187]。ブルーデキストラン2000(Blue Dextran 2000)ならびに分子量スタンダードであるリボヌクレアーゼA、キモトリプシンA、オボアルブミンA、ウシ血清アルブミン(Amersham)を用いてカラムを較正した。流速0.04ml/分で、また溶出された物質を214nmおよび280 nmで観察しながらSmartシステムを用いてゲル濾過を行った。(NMB1870保持容量は、1.68mlで、htfについては1.47mlであった。)40μlの画分を集めてSDS−PAGEで解析した。MC58の組換えトランスフェリン結合タンパク質2(Tbp2)を陽性対照として使用した。
【0203】
組換えタンパク質は、インビボでヒトトランスフェリンに結合できなかった。
【0204】
プロモーター中のFurボックスは、NMB1870の発現が鉄によって調節されている可能性があることを示唆している。しかし、このタンパク質の発現は、鉄濃度が低い状態では増加するようには見えない。
【0205】
このタンパク質の興味深い特徴は、脂質化されたシステインの下流に4個のグリシン鎖が存在することである。脂質化されたシステインの下流に3個以上グリシンが連続しているのは、N.meningtidisの別の5つのリポタンパク、すなわちトランスフェリン結合タンパク質B(TbpB)、ABC輸送タンパク質NMB0623の外膜成分、仮定的タンパク質NMB1047、TbpBホモログNMB2132、およびAspAリポタンパクでも見られる[188]。これらのタンパク質のいずれにおいても、ポリ−グリシン鎖はポリ−Gトラクト(tract)によってコードされておらず、この特徴が抗原による免疫調節を生じさせるためには利用されていないことを示唆している。
【0206】
グリシンリッチ領域によるリポタンパクの検索を、NCBIサイト[181]で探し出した22種類の完全ゲノム配列に対してFindPatternを用いて実施した。この検索によって、すべてではないがいくつかの細菌種において29種類のリポタンパクを探し出した。このタイプのリポタンパクをもつ生物には、Haemophilus influenzae、Enterococcus fecalis、Mycobacterium tuberculosis、Lysteria monocytogenes、およびStaphylococcus aureusを含む、グラム陰性菌もグラム陽性菌も含まれていたが、一方で、E.coli、Bacillus subtilis、Helicobacter pylori、Streptococcus pneumoniae、S.pyogenesおよびVibrio choleraeは有していなかった。このシグネチャーをもつリポタンパクのほとんどは、ABC輸送タンパク質に属し、したがって、未知の機能をもつタンパク質であった。一次構造におけるこの共通の特徴は、グリシン反復には共通の役割があることを示唆しているが、これまでのところその機能は分かっていない。しかし、分泌および表面局在の特異的経路にリポタンパクを導く働きをしている可能性がある[190]。
【0207】
(他の菌株の配列決定)
N.meningitidis集団の遺伝的および地理的な多様性を代表する70菌株を選んで、さらにNMB1870について調べた。菌株は、19か国に由来し、73%が血清群Bに属し、32菌株が過去5年間に単離されたものであった。この菌株パネルは、ほとんどが血清群Bの菌株を含んでいて、数菌株が血清群A、C、Y、W135およびZで、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)とナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)がそれぞれ1菌株ずつである。菌株については、参考文献191および192により詳しく開示されている。ATCCから入手可能な菌株もある(例えば、菌株MC58は参照番号BAA−335として入手可能である)。
【0208】
コード配列の外側にあるプライマーを使用して、NMB1870遺伝子を増幅した(A1、配列番号55;およびB2、配列番号56)。約10ngの染色体DNAを増幅のための鋳型として用いた。PCR条件は、94℃で40秒、58℃で40秒、68℃で40秒を30サイクル。PCRフラグメントを、QiagenのQIAquick PCR精製キットで精製し、ABI 377自動配列決定装置を使用して行われる配列解析に付した。配列決定は、プライマーA1、B2、22(配列番号57)および32(配列番号58)を用いて行った。
【0209】
ナイセリア属の70菌株すべてでPCRによって遺伝子が検出された。Neisseria lactamicaでは、ウエスタンブロッティングによってバンドは検出されたが、遺伝子は増幅されなかった。
【0210】
70菌株すべてで遺伝子のヌクレオチド配列を決定した。全部で23種類の異なったタンパク質の配列がコードされていた(配列番号1から23)。KimuraとJukes−Cantorのアルゴリズムを用いた、これら23の配列のコンピュータ解析によって、これらの配列が3種類の改変体に分けられた(図9)。NMB1870タンパク質配列の多重配列アラインメント(PileUP)から開始し、系統樹推定パッケージ(Phylogeny Inference Packag:Phylip)の中で利用可能なプログラムであるタンパク質配列節約法(Parsimony method)(ProtPars)を用いて樹状図を得、KimuraとJukes−Cantorのアルゴリズムを用いたGCGのプログラムDistanceによって確認した。
【0211】
さらに100菌株からNMB1870の配列を決定した。これらの多くは、配列番号1から23のいずれか一つと同一であったが、さらに19のユニークな配列が配列番号140から158として与えられた。
【0212】
図12〜14は、ST多座配列タイプによって分類された、さまざまな配列の樹状図を示している。改変体1(図12)の中で、参照菌株はMC58であり、参照菌株に対してもっとも低い配列同一性が89.4%であり、平均は93.7%であった。改変体2(図13)において、参照菌株は2996であり、配列同一性は最低93.4%に伸びる(平均96.3%)。改変体3(図14)において、参照菌株M1239に対してもっとも低い配列同一性は94.7%であった(平均95.8%)。ST32cpxが、最も均質な超病原性クラスターであり、改変体1由来のNMB1870配列を1種類だけ有する(またNMB1343およびNadAの一つの形態だけ)。ほとんどのST44cpx菌株は、NMB1870の改変体1(いくつか異なる配列)をもつが、いくつかの菌株は改変体3(単一の配列)を有する。これらのデータは、ST32cpxが、他のクラスターと比較するとST44cpxに近縁であることを示唆しているが、このことは、porA遺伝子型(クラスIII)に基づいたデータと合致する。ST11およびST8の複合体は、その大分部が、NMB1870の改変体2の中のさまざまな配列によって表され、これらの複合体が、他のクラスターと比較するとともに近縁であり、porA遺伝子型(クラスII)と適合する。ST11cpxは、3つの改変体すべてを含み、4つのうちもっと多様な超病原性クラスターであることを示している。
【0213】
菌株MC58、961−5945およびM1239が、それぞれ改変体1、2および3の標準菌株として任意に選ばれた。この3種類の標準菌株の間における配列多様性を図10に示す。アミノ酸の同一性は、改変体1と改変体2の間では74.1%、改変体1と改変体3の間では62.8%、また改変体2と改変体3の間では84.7%であった。各改変体内では配列はよく保存されており、最も遠いものでも、それらの標準菌株に対してそれぞれ91.6%、93.4%および93.2%の同一性であった。ナイセリア・シネレアは改変体1に属し、MC58に96.7%の同一性をもつ。図9に示されているように、改変体1は、超病原性系統ET−5に由来する全ての菌株、ほとんどの系統3菌株、血清群Aの菌株、W−135の最近の単離物2つ、およびET−37の一つを含む。改変体2は、超病原性複合体A4、血清群YおよびZ、古いW−135単離物の一つ、および5つのET−37菌株を含む。改変体3は、4つのユニークなST菌株、1つのET−37菌株、1つの系統3菌株および淋菌を含む。
【0214】
各改変体群における菌株、およびそれらのNMB1870配列は以下の通りである。
【0215】
【化10−1】
【0216】
【化10−2】
配列番号139(菌株220173i)、140(菌株gb101およびISS908)および141(菌株nge31)は、これら3種類の改変体から離れている(それほどではないが、菌株m3813も同様である)。
【0217】
改変体1において、菌株lnp17592の配列(菌株00−241341、00−241357、2ND80、2ND221およびISS1142にも見られる)が、W−135 Haji血清群にも見られる。Haji菌株の中では、NadAの配列(配列番号143)がアレル2と3の組換えである[191、192]。
【0218】
(E.coliにおけるクローニング、発現、および精製)
N.meningtidisのMC58、961−5949およびM1239の菌株のゲノムからPCRでNMB1870遺伝子を増幅した。フォワードプライマーとリバースプライマーは、推定リーダーペプチドをコードする配列を含まないようにnmb1870コード配列を増幅するために設計した。M1239および961−5945の改変体は、E.coliでは発現可能でないことが分かった。したがって、淋菌のタンパク質には存在するが、髄膜炎菌の対応タンパク質には存在しない配列番号46の配列をN−末端に付加して発現させた。増幅に使用されたオリゴヌクレオチドは以下のとおりである。
【0219】
【化11】
フォワードプライマーについてはNdeIおよびリバースプライマーについてはXhoI(M1239についてはHindIII)に相当する制限酵素部位を下線で示した。961−5949およびM1239のフォワードプライマーについては、淋菌の配列部分をイタリック体で示し、髄膜炎菌のNMB1870と一致する配列を太字で示した。
【0220】
プライマーの組み合わせがFor1/Rev1である場合のPCR条件は、94℃で30秒間変性、57℃で30秒間アニーリング、68℃で1分間伸長反応(5サイクル)、94℃で30秒間変性、68℃で30秒間アニーリング、68℃で1分間伸長反応(30サイクル)である。プライマーの組み合わせがFor2/Rev2およびFor3/Rev2およびFor3/Rev358℃である場合、94℃で30秒間、56℃で30秒間、68℃で1分間(5サイクル)、94℃で30秒間、71℃で30秒間アニーリング、68℃で1分間(30サイクル)である。
【0221】
以下のプライマー:f−lFor
【0222】
【数1】
およびf−lRev
【0223】
【数2】
を用い、以下の条件:94℃で30秒間、58℃で30秒間、72℃で1分間(30サイクル)を用いて、MC58のゲノムから全長のnmb1870遺伝子を増幅した。
【0224】
高忠実度Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を用いて、約10ngの染色体DNAに対してPCRを行った。PCR産物をNdeIおよびXhoIで消化して、pET−21b+発現ベクター(Novagen)のNdeI/XhoI部位にクローニングした。
【0225】
組換えタンパク質を、Hisタグ化融合タンパク質として大腸菌のなかで発現させ、前述したように[3]MCAC(金属キレートアフィニティークロマトグラフィー)で精製し、マウスを免疫するために使用して抗血清を得た。大腸菌DH5αをクローニング操作に使用し、BL21(DE3)を発現に使用した。
【0226】
(nmb1870およびsiaDの同系変異体)
菌株MC58、961−5945およびM1239をプラスミドpBSΔnmb1870ERMで形質転換して、nmb1870遺伝子を切断してエリスロマイシン抗生物質カセットによって置換した同系のノックアウト変異体を調製した。このプラスミドは、nmb1870の下流および上流にある500bpの隣接領域にエリスロマイシン抵抗性遺伝子を含んでいる。これらの領域を、以下のオリゴヌクレオチド、Ufor
【0227】
【数3】
(配列番号59、Xba1部位を下線で示す);URev
【0228】
【数4】
(配列番号60、Sma1部位を下線で示す);DFor
【0229】
【数5】
(配列番号61,Sma1部位を下線で示す)、およびDrev
【0230】
【数6】
(配列番号62、Xho1部位を下線で示す)を用いて、MC58のゲノムから増幅した。同じ方法で莢膜欠損変異体を作出した。siaD遺伝子を欠失させ、プラスミドpBSΔCapERMを用いて、ermCで置き換えた。それぞれ1000bpおよび1056bpの上流および下流の隣接領域を、以下のプライマー:UCapFor
【0231】
【数7】
(配列番号63、Xbal部位を下線で示す);UcapRev
【0232】
【数8】
(配列番号64、Smal部位を下線で示す);DCapFor
【0233】
【数9】
(配列番号65、Smal部位を下線で示す)およびDCapRev
【0234】
【数10】
(配列番号66、Xhol部位を下線で示す)を用いて、MC58のゲノムから増幅した。増幅されたフラグメントをpBluescriptにクローニングして、天然のコンピテントであるN.meningtidisの菌株MC58に形質転換した。この混合物をGC寒天プレートにスポットして、5%CO2下37℃で6時間インキュベートしてから、PBSに希釈して、5μg/mlのエリスロマイシンを含むGC寒天プレートに塗布した。菌株MC58Δnmbl870、961−5945Δnmbl870およびM1239Δnmbl870におけるnmb1870の欠失がPCRによって確認され、ウエスタンブロット解析によってNMB1870が発現しないことが確認された。MC58ΔsiaD菌株において、siaD遺伝子が欠失していることおよび莢膜が発現しないことを、それぞれPCRおよびFACSによって確認した。
【0235】
(リポタンパク)
NMB1870の脂質化を調べるために、参考文献193に記載されているように、全長nmb1870遺伝子をもつ組換えE.coli BL21(DE3)菌株によるパルミチン酸の取り込みを調べた。
【0236】
髄膜炎菌の菌株MC58とMC58Δnmbl870をGC培地で増殖させて、[9,10−3H]−パルミチン酸(Amersham)で標識した。5mlの培地からの細胞を10分間煮沸して溶解し、13,000rpmで遠心分離した。上清をTCAで沈殿させ、冷アセトンで2回洗浄した。タンパク質を、50μlの1.0%SDSに懸濁して、15μlをSDS−PAGEで分析し、クマシー・ブリリアントブルーで染色し、固定して、Amplify溶液(Amersham)に15分間浸した。ゲルをHyperfilm MP (Amersham)に−80℃で3日間暴露した。
【0237】
MC58では適正な分子量の放射活性バンドが検出されたが、Δnmbl870ノックアウト変異体では検出されなかった。
【0238】
[9,10−3H]−パルミチン酸存在下で増殖させた組換えE.coliも、期待された分子量のところに放射活性バンドを生じた。これにより、E.coliがリポタンパクモチーフを認識して、組換えタンパク質に脂質テイルを付加することが確認された。
【0239】
(タンパク質の検出)
菌株MC58を定常期にGC培地において5%CO2下37℃で増殖させた。増殖中(OD620nm 0.05−0.9)に試料を集めた。MC58Δnmbl870をOD620nm 0.5まで増殖させた。細菌の細胞を遠心分離によって集めて、PBSで1回洗浄し、OD値を標準化するために、さまざまな容量のPBSに再懸濁した。0.2μmのフィルターを用いて培養上清を濾過し、250μlの50%トリクロロ酢酸(TCA)を添加して1mlを沈殿させた。試料を氷上で2時間インキュベートし、4℃で40分間遠心分離し、沈殿物を70%氷冷エタノールで洗浄し、PBSに再懸濁した。そして、試料(OD620 0.03に相当)それぞれ3μlを、12%ポリアクリルアミドゲルで泳動して、ニトロセルロース膜に電気的に転移させた。
【0240】
E.coliで発現したタンパク質に対して惹起されたポリクローナル抗体を1:1000の希釈率で用い、次いでHPR−標識された抗ヒトIgG(Sigma)を1/2000に希釈したものを用いて、標準的な方法でウエスタンブロット解析を行った。LabScan(Pharmacia)およびImagemasterソフトウエア(Pharmacia)を用いてスキャンを行った。
【0241】
図3に示すように、N.meningitidisの全細胞抽出物から約29.5kDaのタンパク質を検出した。培養液の光学密度が0.05から0.9 OD620nmに増加する一方で、全細胞ライセートにおけるタンパク質の量は、増殖曲線の過程でほぼ2倍になった。培養上清においても、同じサイズのバンドが検出された。植菌されたばかりの培養液(OD620nm 0.05)の上清ではタンパク質は検出されなかったが、0.1から0.9 OD620nmに増加する間に約4倍に増加した(図4、左側パネル)。上清における発現の真の性質が、同じ試料を膜小胞および細胞質タンパク質について調べることによって確認された。図4の中央パネルに示されているように、PorAの上清調製物にはPorAが存在しないことは、膜小胞による汚染の可能性を排除する一方で、細胞質タンパク質NMB1380が上清中に存在しないことで、上清試料が、細胞溶解からもたらされたものでないことを確認した(右側パネル)。
【0242】
MC58Δnmbl870ノックアウト菌株は、全細胞ライセートにおいても、培養上清(図3および4の「KOレーン」)においてもタンパク質を示さなかった。
【0243】
外膜ベシクルでNMB1870を検出し、このタンパク質が、N.meningitidisの膜画分とともに分離することが確認された(図5)。しかし、OMVで免疫されたマウスからの血清は、ウエスタンブロッティングでは組換えNMB1870を認識せず、このタンパク質がOMV調製物においては免疫原性がないことを示唆している。
【0244】
抗NMB1870抗体を用いたFACS解析によって、該タンパク質は表面露出しているため、莢膜型および無莢膜型のN.meningitidis菌株の両方において抗体が結合できることが確認された(図6)。FACS解析は、二次抗体の抗マウス(全分子)FITC−結合体(Sigma)を用いて検出される抗体結合とともにFACS−Scanフローサイトメーターを用いた。陽性のFACS対照には、髄膜炎菌Bの莢膜ポリ多糖に特異的なモノクローナル抗体であるSEAM3[194]を用い、陰性対照は、細胞質タンパク質NMB1380に対するマウスのポリクローナル抗血清からなっていた[195]。
【0245】
43菌株のウエスタンブロッティングによって、試験した菌株のすべてによってNMB1870が発現されることが示された。しかし、図7に示されているように、発現レベルは、菌株によってかなり変動した。調べた菌株は、高度、中度および低度の発現株に大きく分類できる。
【0246】
【化12】
2つの菌株では中度レベルで発現し、2つの菌株では低レベルで発現したA4以外では、超病原性系統に由来する菌株(ET−5、系統3、ET−37)のほとんどは、タンパク質を高レベルで発現させた。興味深いことに、このタンパク質は、従来OMVワクチン株として用いられてきた菌株によって高レベルで発現された。各菌株によって発現されるタンパク質の量を予測するための明確な遺伝子パターンは見つからなかった。プロモーター領域にISエレメントが存在していても(これは8/70の菌株(1つは血清群A由来、3つは系統3に由来し、4つは別のものとして分類されたものである)で発見されたのであるが)、タンパク質の発現とは何の相関も示さなかった。
【0247】
ウエスタンブロットをスキャンしたところ、高度と中度の間、中度と低度の間、または高度と低度の間では、それぞれ発現に2倍、5倍、および9倍の違いがあり得ることが明らかになった。発現レベルが異なることについて、すぐに分かる理由はなく、また、遺伝子の上流にあるDNA配列の解析によっても、発現と相関する特徴は何も見られなかった。
【0248】
(抗体応答)
健康な被験者および回復期にある被験者からの血清を、ウエスタンブロットによって抗NMB1380抗体について解析した。精製したNMB1870(1μg/レーン)を12.5%SDS−ポリアクリルアミドゲルで泳動し、ニトロセルロース膜に移した。結合したタンパク質を、血清の1/200希釈液で、次いでHPR−標識された抗ヒトIgG(Sigma)を1/2000に希釈したもので検出した。健康な人々からの血清の2/10だけがNMB1870を認識し、回復期血清の21/40は該タンパク質を認識したことから、NMB1870は、感染期間中インビボで免疫原性をもつとの結論に達した。したがって、組換えで免疫したマウスの抗血清をさらに調べた。
【0249】
抗血清を調製するために、20μgの改変体1、改変体2および改変体3のNMB1380組換えタンパク質を用いて、6週齢のCD1メスマウス(Charles River)を免疫した。1群につき4から6匹を用いた。組換えタンパク質は、初回投与には完全フロインドアジュバンド(CFA)とともに、第2回(21日目)および第3回(35日目)の追加免疫にはフロインド不完全アジュバント(IFA)とともに腹腔内に投与した。フロインドアジュバンドの代わりに水酸化アルミニウムアジュバント(3mg/ml)用いて同じ免疫スケジュールを行った。解析のための血液試料は49日目に採取した。
【0250】
前述したように[3、196]、抗血清が、補体介在による莢膜型髄膜炎菌株の殺菌を誘導できるかを、補体の供給源として用いられる仔ウサギ血清のプール(CedarLane)を用いて調べた。健康なヒト成人由来の血清(最終濃度25または50%で調べても内因性の抗菌活性はない)も補体の供給源として用いた。血清の抗菌力価は、細菌を反応混合物とインキュベートして60分後に1mlあたりのコロニー形成単位(CFU)が、時間0での1mlあたりの対照のCFUと比較して50%減少するという結果をもたらす血清希釈と定義されていた。典型的には、補体存在下で陰性対照抗体とインキュベートされた細菌は、60分間のインキュベーションの間にCFU/mlの150から200%の上昇を示した。
【0251】
高度、中度および低度の発現体の代表的菌株をアッセイのために選んだ。FACS解析によって、選択された菌株の表面上でのタンパク質の示差的発現を確認した(図8)。すなわち、高発現菌株の代表であるMC58は、1/64,000まで希釈した血清によっても高効率で殺菌された。中度発現菌株の代表であるNZ394/98(元来NZ98/254)は、1/16,000まで希釈した血清によっても高効率で殺菌された、さらに、低発現菌株の代表である菌株67/00も、1/2,048まで希釈した血清によって殺菌された。nmb1870遺伝子がノックアウトされている対照菌株は、同じ血清によって殺菌されることはなかった。
【0252】
これらの血清が、インビボでも防御を付与できるか否かを確かめるために、幼ラットモデルにおいて受動防御を誘導できるか調べた。5日齢の幼ラットを、時間0において、抗NMB1870抗血清、または抗PorAモノクローナル抗体で腹腔内的に予め処理し、2時間後、5×103CFU/ラットのMenC 4243(OAc−陽性)またはMenB NZ394/98を腹腔内にチャレンジした。24時間後に定量的な血液培養物が得られた。チョコレート寒天プレートに塗布することによって、血液培養液中の細菌計測数(CFU/ml、相乗平均)が得られた。陽性対照血清は、MenCに対しては抗PorA(P1.2)で、MenBに対してはSEAM3であった。実験の結果は以下のとおりであった。
【0253】
【化13】
したがって、陰性対照の動物のほとんどが菌血症になった一方で、抗NMB1870血清で受動免疫したラットの血液からは細菌のコロニーは回収されなかった。
【0254】
(殺菌活性は改変体特異的である)
各型の改変体を、Hisタグ化タンパク質としてE.coliで発現させ、マウスを免疫するために使用した。これらの血清は、FACSおよび殺菌アッセイ法によって、3種類の改変体の菌株間における免疫学的交差反応性を試験するために使用された。図11に示すように、FACS解析によって、すべての菌株が各血清によって認識されたが、認識の程度はかなり変動し、これは通常、タンパク質間のアミノ酸相同性を反映する。
【0255】
より詳しく解析すると、抗改変体1の血清(図11,第1行)は、(予想どおり)MC58菌株を非常によく認識し、より低い程度で961−5945菌株(74.1%同一性)を、またより小さい範囲でM1239菌株(62.8%同一性)を認識した。同様の傾向が、改変体2および改変体3に対する血清にも見られた(図11,第2行および第3行)が、抗改変体2の血清を用いた場合には、その違いはそれほど顕著ではなかった。
【0256】
莢膜に対するモノクローナル抗体は、3つの菌株すべてを等しく十分に認識したが(第4行)、陰性対照として用いられた細胞質タンパク質NMB1380に対する血清は、どれも認識しなかった(第5行)。同様に、nmb1870ノックアウト変異体は、いずれの血清によっても認識されなかった(第6行)。
【0257】
改変体間における免疫認識の違いは、殺菌アッセイ法によってより明らかになった。
【0258】
【化14】
これらのデータは、各改変体に対する血清が、同種菌株の有効な補体媒介性の殺菌を誘導できたことを示している(力価は16,000と64,000との間の範囲)が、一方で別の改変体の菌株に対しては活性が低い(128〜2,048)か、なかった(<4)。緊密なアミノ酸相同性から予測されるように、改変体2および3の間の交差殺菌力価は、他のものよりは高かった。ヒト補体を使用したときは、同種の標準菌株を用いて、改変体1、2および3それぞれについて、4,096、256および512という殺菌力価が得られた。異種菌株に対しては、力価は検出されなかった。
【0259】
(ハイブリッドタンパク質およびタンデムタンパク質)
ハイブリッドタンパク質およびタンデムタンパク質は、NH2−A−[−X−L−]n−B−COOHという式で表すことができる。このタイプのさまざまなタンパク質をコードする遺伝子を構築した。ここで、n=2、X1およびX2のN末端は、それらのポリ−グリシン領域までを欠失しており、また−L1−および−B−は存在しない(または、Bは、精製に用いるポリ−ヒスチジンタグである)。以下の表は、成熟形態における、これらのタンパク質の成分を示し、また、全長ポリメラーゼの配列番号、および、成分配列A、X1、L1およびX2に対する配列番号と菌株を示している。
【0260】
【化15】
したがって、これら12種類のNMB1870タンパク質のうち、8種類はタンデムタンパク質(MWほぼ55kDa)であり、4種類は、N−末端に「9362996」を有するハイブリッドタンパク質(MWほぼ49kDa)である。以下の2種類のリンカーを使用した。(a)淋菌のNMB1870ホモログ(配列番号46)に由来する配列番号78;および(b)グリシンリッチリンカー(配列番号144)。配列番号78は、その2つのBamHI残基(Gly−Ser)を除いて、成熟タンパク質のN−末端にも用いられた。すなわち配列番号86である。
【0261】
12種類のタンパク質は、大腸菌で発現されるとすべて可溶性であり、精製後、マウスを免疫するために使用された。最大4種類の髄膜炎菌の菌株に対して血清の殺菌抗体(SBA)反応を評価して、3種類のNMB1870改変体1から3のそれぞれから一つを確定した(上付の添え字で示す)。アジュバントは、CFA(上)または水酸化アルミニウム(下)のどちらかであった。
【0262】
【化16】
これらの結果は、免疫反応の改変体特異的な性質を明確に示している。例えば、タンパク質(1)および(2)は、NMB1870の改変体1および2に由来する配列を含んでおり、最善のSBAの結果が、これら2つの改変体に対して見られる。同様に、タンパク質(3)および(4)を用いるときに、最善の結果が改変体1および3に対して見られる。改変体2および3からのNMB1870を用いると、N−末端からC−末端どちらの順序でも優れた活性が見られ、タンパク質(5)および(8)を用いると、改変体1に対してほとんど活性をもたない。「936」部分によって提供されている抗2996活性をいくらかもつハイブリッドタンパク質を用いると、NMB1870応答の改変体特異的な性質も明らかになる。
【0263】
以下のオリゴヌクレオチドプライマーは、12種類のタンパク質を構築する際に用いた。
【0264】
【化17】
三重のタンデムタンパク質(Triple tandem protein)
n=3である、「三重のタンデム」タンパク質を、菌株(1)MC58、(2)2996および(3)m1239に基づいて構築した。757merの三重タンデムタンパク質NH2−A−X1−L1−X2−L2−X3−L3−B−COOHは、配列番号142のアミノ酸配列を有する。
【0265】
【化18】
X2およびX3は、どちらもそれらのポリ−グリシンリッチ領域までN−末端を欠いている(すなわち、ΔG配列となっている)。
【0266】
(殺菌性SBA力価)
9種類の異なったタンパク質でマウスを免疫し、得られた血清の殺菌活性を、免疫に用いたタンパク質が由来した菌株と一致する菌株、免疫に用いたタンパク質とは異なる菌株の両方を含む、髄膜炎菌のさまざまな菌株に対して試験した。9種類のタンパク質は、以下であった:
(A)、(B)および(C)936とNMB1870とのハイブリッドタンパク質
(A)NMB1870MC58=改変体1[12]
(B)NMB18702996=改変体2、例えば配列番号91および92
(C)NMB1870M12239=改変体3、例えば配列番号91および92
(D)、(E)および(F)単一の菌株由来のNMB1870
(D)NMB1870MC58=改変体1、例えば、配列番号80
(E)NMB18702996=改変体2、例えば配列番号81
(F)NMB1870M1239=改変体3、例えば配列番号84
(G)、(H)および(I)NMB1870のタンデムタンパク質
(G)NMB1870MC58−NMB18702996=改変体1および2、例えば、配列番号79および82
(H)NMB18702996−NMB1870M1239=改変体2および3、例えば配列番号87および88
(I)NMB1870MC58−NMB1870M1239=改変体1および3、例えば配列番号83および85
NMB1870の改変体1を有する最大20までの菌株に対する、NMB1870の改変体2を有する最大22までの菌株に対する、および改変体3を有する最大5個までの菌株に対する、殺菌応答を測定した。
【0267】
タンパク質(A)〜(C)に対して惹起された血清の殺菌作用は、被験菌株の遺伝子型と適合した。例えば、CFAを免疫のためのアジュバントとして使用すると、菌株MC58(改変体1)に対するSBA力価は、(A)262144;(B)<4;(C)<4であった。同様に、菌株961−5945(改変体2)に対して血清を試験すると、SBAは、(A)256;(B)32768;(C)4096であった。最後に、菌株M1239(改変体3)の力価は、(A)<4;(B)512;(C)32768であった。
【0268】
CFAまたは水酸化アルミニウムをアジュバントとして使用したところ、タンパク質(A)は、以下の菌株に対して512以上のSBA力価を生じた:M01−240185、M2197、LPN17592、M6190(すべてET37);MC58、BZ83、CU385、N44/89、44/76、M2934、M4215(すべてET5);BZ133、M1390、ISS1026、ISS1106、ISS1102(系統3);F6124(sIII);およびM2937(その他)。これらの菌株は、血清群A、B、CおよびW135をカバーしているが、血清群Yの菌株は試験しなかった。
【0269】
CFAまたは水酸化アルミニウムをアジュバントとして使用したところ、タンパク質(B)は、以下の菌株に対して512以上のSBA力価があった:2996、961−5945、96217(A4群);M01−240013、C11、NGH38、M3279、M4287、BZ232(その他)。これらの菌株は、血清群B、およびCをカバーしているが、血清群A、W135またはYの菌株は試験しなかった。
【0270】
CFAまたは水酸化アルミニウムをアジュバントとして使用したところ、タンパク質(C)は、以下の菌株に対して512以上のSBA力価があった:M01−0240364、NGP165(ET37);M1239(系統3);M01−240355、M3369(その他)。これらの菌株は、血清群Bであり、カバーしているが、血清群A、C、W135またはYの菌株は試験しなかった。
【0271】
タンパク質(A)から(C)で見られるSBAパターンが、タンパク質(D)から(F)でも見られた。菌株MC58に対して、タンパク質(D)を用いて得られた血清と水酸化アルミニウムアジュバントは、16384というSBA力価をもたらしたが、一方で、タンパク質(E)または(F)を用いて得られた血清と同じアジュバントとは、4より低いSBA力価をもたらした。菌株961−5945に対して、タンパク質(D)または(F)の血清は、(E)を用いて得られた力価よりも低い力価を生じた。菌株M1239に対しては、SBA力価は、(D)<4;(E)128;(F)16384であった。
【0272】
タンデムタンパク質によってSBAの有効性が広がった。タンパク質(G)を用いて得られた血清は、菌株MC58と961−5945に対する殺菌作用があり、また、NMB1870の改変体1または改変体2を有する他の菌株も同様であった。タンパク質(H)に対する血清は、NMB1870の改変体1を有する菌株に対しては低い力価しか与えなかったが、他の菌株、例えば、菌株961−594(改変体2)に対する16384、および菌株M3369(改変体3)に対する32768に対しては高い力価を与えた。
【0273】
CFAアジュバント化タンパク質(H)で免疫して得られた血清は、LNP17094、96217、961−5945、2996、5/99(A4群);C4678、M01−0240364、NGP165(ET37);M1239(系統3);M2552、BZ232、M3279、M4287、1000、NGH38、Cll、M01−240013、M01−240355、M3369(その他)に対して512以上のSBA力価を与えた。これらの菌株は、血清群B、およびCをカバーしているが、血清群A、W135またはYの菌株に対する活性はタンパク質(H)を用いて試験しなかった。
【0274】
CFAアジュバントによるタンパク質(I)で免疫して得られた血清は、M01−0240364、14784、M6190、MC58、LPN17592、M2197(ET37);44/76(ET5);M1239、ISS1102、ISS1106、ISS1026、394/98(系統3);M2937(その他)に対して512以上のSBA力価を与えた。これらの菌株は、血清群B、CおよびW135をカバーしているが、血清群A、またはYの菌株に対する活性はタンパク質(I)を用いて試験しなかった。
【0275】
NMB1870の改変体1を含むタンパク質によって免疫した後、改変体1のNMB1870をもつ、最大20までの菌株に対して試験された血清は、以下のSBA力価を与えた。
【0276】
【化19】
NMB1870の改変体2を含むタンパク質によって免疫した後、改変体2のNMB1870をもつ、最大20までの菌株に対して試験された血清は、以下のSBA力価を与えた。
【0277】
【化20】
NMB1870の改変体3を含むタンパク質によって免疫した後、改変体3のNMB1870をもつ、最大5までの菌株に対して試験された血清は、以下のSBA力価を与えた。
【0278】
【化21】
(結論)
まず、NMB1870は、広範な免疫のために有用な抗原とは考えられない。その発現レベルは菌株間で変動し、顕著な配列多様性があり、また、異なった改変体との間で交差防御が起こらない。しかし、この抗原を非常に低いレベルでしか発現しない菌株でさえも、抗NMB1870血清には感受性であることが明らかにされた。さらに、配列の多様性は、3種類の変異型に限られるため、多数の抗原を必要としないで広範な免疫を達成することができる。さらに、これら3つのタンパク質は、血清群Bの髄膜炎菌だけでなく、より多くの髄膜炎菌に対する免疫を提供できると考えられる。
【0279】
1種類以上の改変体に対して活性のある単一のポリペプチド鎖をもたらすために、NMB1870のさまざまな改変体を融合タンパク質として発現させることができる。
【0280】
NMB1870は、感染の過程では免疫原性であり、殺菌性抗体を誘導することができ、また、幼ラットを細菌による攻撃から保護することができる。
【0281】
NMB1870に関するさらなる実験情報は、参考文献197に記載されている。
【0282】
以上の説明は本発明を例示するだけのものであり、本発明の範囲および精神を残したまま、各種の改変が行われ得る。
【0283】
(配列表の簡単な説明)
【0284】
【化22】
(参考文献:これらの内容は、本明細書において全てを参考として援用される)
【0285】
【数11−1】
【0286】
【数11−2】
【0287】
【数11−3】
【0288】
【数11−4】
【0289】
【数11−5】
(配列表)
【0290】
【数12−1】
【0291】
【数12−2】
【0292】
【数12−3】
【0293】
【数12−4】
【0294】
【数12−5】
【0295】
【数12−6】
【0296】
【数12−7】
【0297】
【数12−8】
【0298】
【数12−9】
【0299】
【数12−10】
【0300】
【数12−11】
【技術分野】
【0001】
本明細書において引用される文献はすべて、その全体が参考として本明細書で援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、ワクチン接種の分野に属し、特に、Neisseria meningitidis(髄膜炎菌)など、ナイセリア属の病原性細菌によって起きる病気に対するワクチン接種の分野に属する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
Neisseria meningitidisは、グラム陰性の莢膜に覆われた細菌で、人口の約10%の上気道に定住している。定住されている10、000人あたり約一回(すなわち、人口100、000人あたり一回)、この細菌は血流に入り、そこで増殖して敗血症を引き起こす。この細菌は、血流から血液脳関門を横切って髄膜炎を引き起こす。どちらの病気も壊滅的で、効果的な抗生物質を利用できるにもかかわらず、感染した子供と若年成人のうちの5〜15%を数時間内に殺すことができる。生き残った人の25%までに、永続的な続発症が残る。
【0004】
病気の予防は、一部ではワクチン接種によって行われている。免疫は、病気の防御が、補体媒介性殺菌を誘導できる血清抗体の存在と関係すること、および、精製された莢膜ポリ多糖がこれらの抗体を誘導できることが発見された1969年になって可能となった。多糖体および結合体(conjugate)のワクチンが、血清群A、C、W135およびYに対しては利用可能であるが、この方法は血清群Bには適用できない。なぜなら、莢膜多糖体がポリシアル酸のポリマーであって、これは、ヒトにおいては自己抗原だからである。血清群Bに対するワクチンを開発するために、外膜ベシクル(OMV)に含まれる表面露出タンパク質が用いられている。これらのワクチンは、血清の殺菌抗体応答を誘発して、病気を防御するが、菌株間の交差防御を誘導できない[1]。
【0005】
血清群BのN.meningitidisの完全ゲノム配列が公開されていて[2]、ワクチン抗原を同定するために解析されている[3]。血清群AのN.meningitidisの完全ゲノム配列も知られており[4]、また、Neisseria gonorrhoeaeのFA1090株の完全ゲノム配列も利用可能である[5]。参考文献6〜9は、Neisseria meningitidisおよびNeisseria gonorrhoeaeに由来するタンパク質を開示しており、これらのタンパク質を発現させるための方法が、参考文献10〜12に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
髄膜炎菌性の病気および/または感染症に対する、特に血清群Bに対する免疫を提供するためのさらなる改良された組成物を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
組成物であって、以下の抗原:(a)配列番号24に対して85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号24に由来する7個以上連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む、第1のタンパク質;(b)配列番号33に対して85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号33に由来する7個以上連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む、第2のタンパク質;ならびに(c)配列番号41に対して85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号41に由来する7個以上連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む第3のタンパク質、のうちの2つ以上を含む、組成物。
(項目2)
タンパク質(a)がタンパク質(b)に対して70%よりも低い配列同一性を有し、タンパク質(a)がタンパク質(c)に対して70%よりも低い配列同一性を有し、そしてタンパク質(b)がタンパク質(c)に対して70%よりも低い配列同一性を有する、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記組成物が、血清群BのN.meningitidisのMC58株、961−5945株、およびM1239株のそれぞれに対して有効な殺菌反応を誘導することができる、項目1〜項目2のいずれか一項に記載の組成物。
(項目4)
前記組成物が、抗体応答を誘発することができ、該抗体応答が、超病原性系統ET−37、ET−5、クラスターA4、系統3、サブグループI、サブグループIII、およびサブグループIV−1の2つ以上においてN.meningitidisの菌株に対して殺菌性である、項目1〜項目3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
前記タンパク質の一種類以上が、リポタンパク質である、項目1〜項目4のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
前記タンパク質の一種類以上が、そのN末端の10アミノ酸以内に、アミノ酸配列TRSKP(配列番号70)またはTRSKPV(配列番号71)を含まない、項目1〜項目5のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
前記タンパク質の一種類以上が、そのN末端の10アミノ酸以内に、アミノ酸配列PSEPPFG(配列番号72)を含まない、項目1〜項目6のいずれか一項に記載の組成物。
(項目8)
前記タンパク質の一種類以上が、アミノ酸配列GGGG(配列番号73)を含む、項目1〜項目7のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
前記タンパク質の一種類以上が、融合タンパク質の形態で使用される、項目1〜項目8のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10)
前記融合タンパク質が、配列番号46および/またはH.influenzaeのP4リポタンパク質のリーダー配列を含む、項目9に記載の組成物。
(項目11)
配列番号1〜45、77、79〜85、87〜94および123〜142より選択されたアミノ酸配列を含む、1種類以上のタンパク質を含む、項目1〜項目10のいずれか一項に記載の組成物。
(項目12)
式:NH2−A−[−X−L−]n−B−COOHのハイブリッドタンパク質を含む組成物であって、ここで:nは2以上であり、Lは任意のリンカーアミノ酸配列であり、Aは任意のN−末端アミノ酸配列であり、Bは任意のC末端アミノ酸配列であり、そしてX部分は、以下:(a)配列番号24に対して85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号24に由来する7個以上連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む、第1のタンパク質;(b)配列番号33に対して85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号33に由来する7個以上連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む、第2のタンパク質;ならびに(c)配列番号41に対して85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号41に由来する7個以上連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む、第3のタンパク質、のうちの2つ以上を含む部分である、組成物。
(項目13)
前記ハイブリッドタンパク質が、以下のアミノ酸配列:配列番号79、82、83、85、87、88、89、90および142の一つを含む、項目12に記載の組成物。
(項目14)
15種類よりも少ない抗原を含む、項目1〜項目13のいずれか一項に記載の組成物。
(項目15)
NMB1870タンパク質以外のナイセリアの抗原を含む、項目1〜項目14のいずれか一項に記載の組成物。
(項目16)
N.meningitidisから調製されたベシクルを含む、項目1〜項目15のいずれか一項に記載の組成物。
(項目17)
N.meningitidisの血清群A、C、W135および/またはYに由来する糖抗原を含む、項目1〜項目16のいずれか一項に記載の組成物。
(項目18)
N.meningitidisの血清群A、C、W135およびYに由来する糖抗原を含む、項目17に記載の組成物。
(項目19)
Haemophilus influenzaeB型に由来する糖抗原を含む、項目1〜項目18のいずれか一項に記載の組成物。
(項目20)
前記糖抗原が、一種類以上の担体タンパク質に結合している、項目17、18または19に記載の組成物。
(項目21)
前記糖抗原がオリゴ糖である、項目17、18、19または20に記載の組成物。
(項目22)
Streptococcus pneumoniaeに由来する抗原を含む、項目1〜項目21のいずれか一項に記載の組成物。
(項目23)
前記血清群Aの糖抗原が、天然型糖類の一以上のヒドロキシル基が封鎖基に置換された修飾糖類類である、項目17〜22のいずれか一項に記載の組成物。
(項目24)
血清群Aの糖抗原がn個の単糖単位を含む場合、該単糖単位の50%以上が3位および4位の両方に−OH基を有さない、項目17〜22のいずれか一項に記載の組成物。
(項目25)
前記血清群Aの糖類が単糖単位を含み、該単糖単位の一つ以上が、3位に−OH基を有さず、かつ4位に−OH基を有さない、項目17〜22のいずれか一項に記載の組成物。
(項目26)
前記血清群Aの糖類が以下の式:
【化1】
を有し、ここで、nは1から100までの整数(好ましくは15から25までの整数)であり;
Tは、以下の式(A)または(B):、
【化2】
であって、各Z基は、OH基または封鎖基から独立に選択され;および、
各Q基は、OH基または封鎖基から独立に選択され;
Yは、OH基または封鎖基から選択され;
EがHまたは窒素保護基であり;
ならびに、Q基の7%よりも多くが封鎖基である、項目17〜25のいずれか一項に記載の組成物。
(項目27)
前記担体タンパク質がジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、CRM197、N.meningitidisの外膜タンパク質、H.influenzaeのプロテインD、または肺炎球菌表面タンパク質PspAである、項目20に記載の組成物。
(項目28)
以下:(i)前記抗原(a)、(b)および/または(c)の2つ以上;(ii)N.meningitidisの血清群A、C、W135、およびYのそれぞれに由来する糖抗原、(iii)Haemophilus influenzaeB型に由来する糖抗原、および(iv)Streptococcus pneumoniaeに由来する抗原を含む、項目1〜項目27のいずれか一項に記載の組成物。
(項目29)
医薬として使用するための、項目1〜項目28のいずれか一項に記載の組成物。
(項目30)
哺乳動物において抗体応答を引き起こす方法であって、項目1〜項目29のいずれか一項に記載の組成物を、該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目31)
前記方法が、ナイセリアの感染から前記哺乳動物を防御する、項目30に記載の方法。
(項目32)
哺乳動物においてナイセリアの感染を予防するための医薬の製造における、項目1に規定される抗原(a)、(b)および(c)のうちの2つ以上の使用。
(項目33)
項目12または項目13に記載のタンパク質をコードする、核酸。
(発明の開示)
参考文献2に開示されている約2200種類のタンパク質の一つが「NMB1870」である。このタンパク質は、元来、菌株MC58由来のタンパク質「741」として開示されていたもので[参考文献8における配列番号2535および2536;本明細書の配列番号1]、「GNA1870」[参考文献3に従う]または「ORF2086」[13]とも呼ばれていた。
【0008】
今では、NMB1870が、抗髄膜炎菌性抗体応答を誘導するための非常に効果的な抗原であって、髄膜炎菌の血清群すべてで発現されていることが分かっている。
【0009】
NMB1870は、これまでに調べられたすべての髄膜炎菌の菌株で発見されている。42種類の異なった髄膜炎菌NMB1870の配列が同定されており、これらの配列を3種類の改変体にグループ分けすることができることが分かった。さらに、ある改変体に対して生成された血清は、同じ改変体群の中では殺菌作用があるが、残りの2種類の改変体のどちらかを発現する菌株に対しては活性がないこと、すなわち、改変体内での交差防御はあるが、改変体間での交差防御はないことが分かっている。したがって、最大の菌株横断的な効率を得るためには、1つより多くの改変体を、患者を免疫するために使用する必要がある。
【0010】
したがって、本発明は、以下の抗原を少なくとも2つ含む組成物を提供する。すなわち、
(a)配列番号24に対して少なくともa%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号24の少なくともx個連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む第1のタンパク質;
(b)配列番号33に対して少なくともb%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号33の少なくともy個連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む第2のタンパク質;および
(c)配列番号41に対して少なくともc%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号41の少なくともz個連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含む第3のタンパク質。
【0011】
また、本発明は、N.meningitidisの複数の(例えば2、3、4、5、またはそれ以上の)菌株および/または血清群に対する免疫を備えさせるためのNMB1870の使用を提供する。
【0012】
((a)、(b)および(c)における、またはこれらの間の変動)
aの値は少なくとも85、例えば、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5またはそれ以上である。
【0013】
bの値は少なくとも85、例えば、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5またはそれ以上である。
【0014】
cの値は少なくとも85、例えば、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5またはそれ以上である。
【0015】
a、bおよびcの値は、本質的に互いに関連してはいない。
【0016】
xの値は少なくとも7、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250である。yの値は少なくとも7、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250である。zの値は少なくとも7、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250である。x、yおよびzの値は、本質的に互いに関連してはいない。
【0017】
所定のアミノ酸配列が、(a)、(b)および(c)の一つ以上のカテゴリーに入らないことが好適である。したがって、いずれのNMB1870配列も、(a)、(b)および(c)というカテゴリーの一つだけに含まれる。したがって、タンパク質(a)は、タンパク質(b)に対してi%よりも低い配列同一性を有し、タンパク質(a)は、タンパク質(c)に対してj%よりも低い配列同一性を有し、また、タンパク質(b)は、タンパク質(c)に対してk%よりも低い配列同一性を有する。iの値は、60以上(例えば、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90など)であり、高くてもaである。jの値は、60以上(例えば、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90など)であり、高くてもbである。kの値は、60以上(例えば、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90など)であり、高くてもcである。i、jおよびkの値は、本質的に互いに関連してはいない。
【0018】
したがって、本発明の例示的2タンパク質実施態様において、タンパク質(a)は、配列番号24に対して85%よりも高い配列同一性を有するかもしれず、タンパク質(b)は、配列番号33に対して85%よりも高い配列同一性を有するかもしれないが、タンパク質(a)および(b)は、互いに対して75%よりも低い配列同一性を有する。したがって、タンパク質(a)および(b)は、それぞれの「プロトタイプ」配列にはそれぞれ非常に近縁であるが、互いに対しては、それほど近縁ではない。
【0019】
したがって、本発明の例示的3タンパク質実施態様において、タンパク質(a)は、配列番号24に対して85%よりも高い配列同一性を有するかもしれず、タンパク質(b)は、配列番号33に対して85%よりも高い配列同一性を有するかもしれず、タンパク質(c)は、配列番号41に対して85%よりも高い配列同一性を有するかもしれないが、タンパク質(a)および(b)は、互いに対して75%よりも低い配列同一性を有し、タンパク質(a)および(c)は、互いに対して75%よりも低い配列同一性を有し、タンパク質(a)および(b)は、互いに対して75%よりも低い配列同一性を有する。
【0020】
(a)、(b)および(c)の2種類以上を混合したものは、好ましくは、以下の3つの菌株群の少なくとも2つの各菌株に由来する1種類以上のN.meningitidis株に対して殺菌性である抗体応答を誘発することができる。
【0021】
(a)MC58、gb185(=M01−240185)、m4030、m2197、m2937、iss1001、NZ394/98、67/00、93/114、bz198、m1390、nge28、lnp17592、00−241341、f6124、205900、m198/172、bz133、gb149(=M01−240149)、nm008、nm092、30/00、39/99、72/00、95330、bz169、bz83、cu385、h44/76、ml590、m2934、m2969、m3370、m4215、m4318、n44/89、14847、
(b)961−5945、2996、96217、312294、11327、a22、gb013(=M01−240013)、e32、m1090、m4287、860800、599、95N477、90−18311、c11、m986、m2671、1000、m1096、m3279、bz232、dk353、m3697、ngh38、L93/4286、
(c)M1239、16889、gb355(=M01−240355)、m3369、m3813、ngp165。
【0022】
例えば、混合物は、血清群BのN.meningitidis株MC58、961−5945およびM1239のそれぞれに対して有効な殺菌応答を誘導することができる。
【0023】
(a)、(b)および(c)の2種類以上を混合したものは、好ましくは、臨床上関連する髄膜炎菌の血清群Bの少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)に対して殺菌性である抗体応答を誘発することができる。
【0024】
(a)、(b)および(c)の2種類以上を混合したものは、好ましくは、血清群BのN.meningitidisの菌株、および血清群A、C、W135およびYの少なくとも1つ(例えば1つ、2つ、3つ、4つ)の菌株に対して殺菌性である抗体応答を誘発することができる。
【0025】
(a)、(b)および(c)の2種類以上を混合したものは、好ましくは、N.gonococcusおよび/またはN.cinereaの菌株に対して殺菌性である抗体応答を誘発することができる。
【0026】
(a)、(b)および(c)の2種類以上を混合したものは、好ましくは、図9に示した樹状図(すなわち、配列番号1から23をKimura&Jukes−Cantorのアルゴリズムによって解析して得られた樹状図)の3つの主枝のうち少なくとも2つの主枝に由来する菌株に対して殺菌性である抗体応答を誘発することができる。
【0027】
(a)、(b)および(c)の2種類以上を混合したものは、好ましくは、超病原性(hypervirulent)系統ET−37、ET−5、クラスターA4、系統3、サブグループI、サブグループIII、およびサブグループIV−1の少なくとも2つ(例えば2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ)のN.meningitidisの菌株に対して殺菌性になるという抗体応答を誘発することができる[14、15]。
【0028】
本発明に係る組成物は、さらに、1種類以上の過侵襲性(hyperinvasive)系統に対する殺菌性抗体応答を誘導することができる。
【0029】
(a)、(b)および(c)の2種類以上の混合物は、好ましくは、ST1、ST4、ST5、ST8、ST11、ST32およびST4という多遺伝子座配列型[16]の少なくとも2つ(例えば2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ)のN.meningitidisの菌株に対して殺菌性である抗体応答を誘発することができる。この混合物はまた、ST44株に対して殺菌性である抗体応答を誘発することができる。
【0030】
殺菌性抗体応答は、マウスにおいて適宜測定され、ワクチンの有効性を示す標準的な指標となる[例えば、参考文献3の末尾の注14参照]。この組成物は、特定の系統またはMLST内のすべてのMenB株に対する殺菌性抗体を誘導する必要はないが、ある特定の超病原性系統またはMLST内の4つ以上の血清群Bの髄膜炎菌株からなる所定の群について、この組成物によって誘導された抗体は、この群の50%以上(例えば、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)に対して殺菌性である。好適な菌株群は、以下の国々の少なくとも4国において単離されたものである。すなわち、GB、AU、CA、NO、IT、US、NZ、NL、BRおよびCU。好ましくは、この血清は、少なくとも1024(例えば210、211、212、213、214、215、216、217、218またはそれ以上で、好ましくは少なくとも214)の殺菌力価を有する。すなわち、例えば、参考文献3の末尾の注14に記載されているように、該血清は、1024分の1に希釈されても、特定の系統の被検細菌の少なくとも50%を殺菌することができる。
【0031】
(リポタンパク)
NMB1870は、本来はN.meningitidisのリポタンパクである。E.coliで発現されても、脂質化されることが分かっている。
【0032】
本発明に係る組成物に含まれるNMB1870タンパク質の1種類以上(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、7種類、8種類、9種類、10種類)がリポタンパクであることが好ましい。
【0033】
本発明は、配列番号24から45までの1つ以上に対して少なくとも50%(例えば60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又はそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号24から45まで(好ましくは配列番号25から45まで)の1つ以上に由来する少なくとも7個(例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続したアミノ酸のフラグメントからなるアミノ酸配列を含むタンパク質であって、リポタンパクであるという特徴を有するタンパク質を提供する。
【0034】
好ましくは、上記リポタンパクはN末端のシステイン残基を有し、これに対して脂質が共有結合する。バクテリアの発現を介してこのリポタンパクを調製するには、一般的に、ジアシルグリセリルトランスフェラーゼによる脂質化、その後のリポタンパク特異的(II型)SPaseによる切断を促すための適当なN末端シグナルペプチドが必要である。したがって、本発明に係るリポタンパクは、N末端システインを持つことができ(例えば配列番号24から45)、したがって、これは、通常のN末端メチオニンを有する新生タンパク質(例えば配列番号1から22)を翻訳後修飾した産物である。
【0035】
リポタンパクは、脂質二重層と結合することができ、界面活性剤で可溶化することができる。
【0036】
(配列)
本発明にとって有用なNMB1870タンパク質は、配列番号1から23までの1つ以上に対して少なくとも50%(例えば60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又はそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号1から23までの1つ以上に由来する少なくとも7個(例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続したアミノ酸フラグメントからなるアミノ酸配列を含む。
【0037】
好適なフラグメントには、(a)エピトープ、好ましくは殺菌性エピトープを含むフラグメント;(b)配列番号1から23までの2つ以上に共通するフラグメント;(c)1個以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、またはそれ以上など)のN末端残基が欠失している配列番号1から23;(d)1個以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25など)のC末端残基が欠失している配列番号1から23;および(e)シグナルペプチドをもたない配列番号1から23(例えば配列番号24から45)が挙げられる。これら好適なフラグメントは、互いに排他的なものではなく、例えば、あるフラグメントは、カテゴリー(a)および(b)、またはカテゴリー(c)および(d)などに含まれ得る。
【0038】
さらに、本発明にとって有用なNMB1870タンパク質は、配列番号123から141までの1つ以上に対して少なくとも50%(例えば60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号123から141までの1つ以上に由来する少なくとも7個(例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続したアミノ酸フラグメントからなるアミノ酸配列を含む。
【0039】
さらに、本発明にとって有用なNMB1870タンパク質は、参考文献13の配列番号1から252までの1つ以上に対して少なくとも50%(例えば60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または参考文献13の配列番号1から252までの1つ以上に由来する少なくとも7個(例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続したアミノ酸フラグメントからなるアミノ酸配列を含む。参考文献13の配列番号300−302はコンセンサス配列を提供し、そして、参考文献13の配列番号254〜299はフラグメントである。好ましいフラグメントとしては、(a)エピトープ、好ましくは殺菌性エピトープを含むフラグメント;(b)配列番号123から141までの2つ以上に共通するフラグメント;(c)1個以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、またはそれ以上など)のN末端残基が欠失している配列番号123から141;(d)1個以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25など)のC末端残基が欠失している配列番号123から141;および(e)シグナルペプチドをもたない配列番号123から141が挙げられる。これら好適なフラグメントは、互いに排他的なものではなく、例えば、あるフラグメントは、カテゴリー(a)および(b)、またはカテゴリー(c)および(d)などに含まれ得る。
【0040】
配列番号1から23および123から141に100%より低い同一性をもつ好適なアミノ酸配列は、その対立遺伝子多型体、ホモログ、オルトログ(orthologs)、パラログ、変異体などである。配列番号1から23および123から141と比較したときに対立遺伝子多型体、ホモログ、オルトログ、パラログ、または変異体における1個以上の違いは、保存的アミノ酸置換、すなわち、1つのアミノ酸の、同類の側鎖をもつ別のアミノ酸との置換を含むことが好ましい。遺伝子にコードされたアミノ酸は、一般的に以下の4つのファミリーに分かれる。(1)酸性、すなわちアスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性、すなわちリジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性、すなわちアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性、すなわちグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、場合によって、芳香族アミノ酸として一緒に分類される。一般的に、これらファミリー内での単一のアミノ酸置換は、生物活性に大きな影響を与えない。
【0041】
好適なタンパク質のサブセットは、タンパク質のN末端の10アミノ酸以内に、アミノ酸配列TRSKP(配列番号70)またはTRSKPV(配列番号71)を含まない。別の好適なタンパク質のサブセットは、タンパク質のN末端の10アミノ酸以内に、アミノ酸配列PSEPPFG(配列番号72)を含まない。
【0042】
本発明で使用する別の好適なタンパク質のサブセットは、アミノ酸配列(Gly)n(ここで、nは1、2、3、4以上)を含む(例えば配列番号73)。
【0043】
本発明に係る好適なタンパク質の特徴は、宿主動物に投与された後、殺菌性抗髄膜炎菌抗体を誘導できることである。
【0044】
タンパク質は、例えば化学合成(少なくとも一部)、プロテアーゼを用いた長いポリペプチド鎖の分解、RNAからの翻訳、細胞培養物からの精製(例えば組換え発現、またはN.meningitidis培養液から)など、さまざまな方法によって調製することができる。E.coli宿主における異種性発現が、好適な発現経路である(例えばDH5α、BL21(DE3)、BLRなど)。
【0045】
本発明に係るタンパク質は、固体支持体に付着または固定させることが可能である。
【0046】
本発明に係るタンパク質は、例えば放射活性標識、蛍光標識、またはビオチン標識などの検出用標識を含むことも可能である。これらは、免疫アッセイ技術において得に有用である。
【0047】
タンパク質は、さまざまな形態を採ることができる(例えば天然型、融合型、グリコシル化型、非グルコシル化型、脂質化型、ジスルフィド架橋型など)。タンパク質は、好ましくは髄膜炎菌タンパク質である。
【0048】
タンパク質は、好ましくは、実質的に純粋であるか、実質的に単離されている形態(すなわち、他のナイセリアまたは宿主のタンパク質を実質的に含まない)か、または実質的に単離された形態で調製される。一般的に、該タンパク質は、例えば、本来の環境から隔離された自然ではない環境で提供される。ある実施態様において、対象となるタンパク質は、対照と較べると、該タンパク質が濃縮されている組成物中に存在する。そのように、精製タンパク質が提供され、精製されたとは、他の発現タンパク質を実質的に含まない組成物の中に存在することを意味する。ここで、実質的に含まないとは、組成物の90%未満、普通は60%未満、より普通には50%未満が、別の発現タンパク質で構成されていることを意味する。
【0049】
「タンパク質」という用語は、あらゆる長さのアミノ酸ポリマーを意味する。このポリマーは、直鎖状でも分枝状でもよく、修飾アミノ酸を含むことも可能であり、非アミノ酸によって中断されていてもよい。また、この用語は、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または、標識成分との結合体化のような、その他の操作または修飾など、天然または介入によって修飾されているアミノ酸ポリマーも含む。また、この定義の範囲内には、例えば、1種類以上のアミノ酸のアナログ(非天然型アミノ酸などを含む)、ならびに、当技術分野で知られている別の修飾を含むタンパク質が含まれる。タンパク質は、単一の鎖または結合した鎖として生じ得る。
【0050】
また、本発明は、配列番号77、79、82、83、85、87、88、89、90、91、92、93および94の1つ以上に対して少なくとも50%(例えば60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号77、79、82、83、85、87、88、89、90、91、92、93および94の1つ以上に由来する少なくとも7個(例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続したアミノ酸フラグメントからなるアミノ酸配列を含む。
【0051】
本発明が、単一のNMB1870タンパク質に係る場合、本発明は、参考文献13の配列番号1から302のいずれかに開示されているアミノ酸配列を含むタンパク質を包含しない。しかし、本発明が、NMB1870の混合物に係る場合には、そのようなタンパク質を選択的に使用することができる。
【0052】
(ハイブリッドタンパク質およびタンデムタンパク質)
上記の通り、NMB1870は、融合タンパク質の形態で使用することが可能であるが、融合タンパク質としてではなく発現させることもできる(例えばGST、MBP、his−タグなどなしに)。
【0053】
融合タンパク質は、C末端および/またはN末端に融合パートナーを持つことができる。配列番号1から23とともにN末端融合パートナーを用いる場合、当業者は、(もし含まれるのであれば)開始コドンはバリンとして発現されることに気づく。なぜなら、GTGは、開始コドンとして使用される場合(その場合、N−ホルミル−メチオニンとして翻訳される)を除いてバリンとして翻訳されるからである。
【0054】
好適なN末端融合パートナーとしては、他のタンパク質(具体的には、他のリポタンパク)由来のリーダーペプチドが挙げられるが、それらは、天然型のNMB1870のリーダーペプチドに代わることができる(すなわち、N末端システインの前の配列を、目的のリーダーペプチドで置換できる)。例としては、配列番号46、およびH.InfluenzaeP4リポタンパクのリーダー配列を含む配列である[例えば17]。
【0055】
好適な融合タンパク質のタイプが、参考文献10、11および12に開示されており、文献中、2種類以上(例えば3、4、5、6またはそれ以上)のナイセリアタンパク質が結合して、1本のポリペプチド鎖として翻訳されている。一般的に、このようなハイブリッドタンパク質は、以下の式で表すことができる。
【0056】
NH2−A−[X−L−]n−B−COOH
ここで、Xはナイセリアの配列を含むアミノ酸配列であり、Lは任意のリンカーアミノ酸配列であり、Aは任意のN−末端アミノ酸配列であり、Bは任意のC末端アミノ酸配列であり、そして、nは1よりも大きい整数である。nの値は2とxとの間であり、xの値は、典型的には3、4、5、6、7、8、9または10である。好ましくは、nは2、3または4であり、より好ましくは、2または3であり、最も好ましくはn=2である。
【0057】
本発明によれば、上で定義したとおり、−X−部分の少なくとも1つはNMB1870配列である。「タンデム」タンパク質と呼ばれるハイブリッドタンパク質において、少なくとも1つの−X−部分が、例えば、X1が配列番号24であり、X2が配列番号25であるなど、他の−X−部分の少なくとも一つに対して配列同一性を有する。3種類のNMB1870改変体の2個または3個がタンデムタンパク質として連結しているタンパク質が好適である。
【0058】
X1以外のX部分については、特に、X1がNMB1870配列でない場合には、好ましくは、天然のリーダーペプチドは削除されるべきである。一つの実施態様において、リーダーペプチドは、ハイブリッドタンパク質のN末端に位置する−X−部分のリーダーペプチド以外では除去される。すなわち、リーダーペプチドX1は保持されるが、X2…Xnのリーダーペプチドは削除される。これは、すべてのリーダーペプチドを除去して、X1のリーダーペプチドを−A−部分として用いるのと同じである。
【0059】
−X−部分として使用するのに好適なNMB1870配列は、成熟N末端の近傍に見られるポリ−グリシン配列のところまで削除して、それを含む。例えば、NMB1870配列は、VAA…(または、m3813菌株についてはIAA…)で開始する。このようなNMB1870配列としては、配列番号80、81および84が挙げられる。
【0060】
[−X−L−]のそれぞれのnの例については、リンカーのアミノ酸配列−L−はあっても、なくてもよい。例えば、n=2のとき、ハイブリッドは、NH2−X1−L1−X2−L2−COOH、NH2−X1−X2−COOH、NH2−X1−L1−X2−COOH、NH2−X1−X2−L2−COOHなどであり得る。リンカーのアミノ酸配列−L−は、典型的には短い(例えば20またはそれよりも少ないアミノ酸、すなわち19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)。例として、クローニングを容易にする短いペプチド配列、ポリ−グリシンリンカー(すなわち、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上であるGlyn)、およびヒスチジンタグ(すなわち、n=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上であるHisn)などがある。当業者には、他の適当なリンカーアミノ酸配列が明らかである。有用なリンカーはGSGGGG(配列番号144)であって、これは、Gly−SerジペプチドがBamHI制限酵素部位から形成されており、クローニングや操作をするのに役立つ。そして、Gly4テトラペプチド(配列番号73)も別の典型的なポリ−グリシンリンカーである。別の有用なリンカーは配列番号78である。
【0061】
−A−は、任意のN−末端アミノ酸配列である。これは、典型的には短い(例えば40またはそれよりも少ないアミノ酸、すなわち39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1などである)。例としては、タンパク質の輸送に関与するリーダー配列、または、クローニングまたは精製を容易にする短いペプチド配列(例えばヒスチジンタグ、すなわちn=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上であるHisn)などがある。当業者には、他の適当なN−末端アミノ酸配列が明らかである。X1が、本来のN−末端メチオニンを失っている場合には、−A−が、翻訳されたタンパク質の中にそのようなメチオニン残基を提供することができる(例えば、−A−は、単一のMet残基である)。NMB1870を発現させる上で有用な−A−部分は配列番号86である。成熟リポタンパクにおいて、好ましくは、−A−はN−末端システインを提供する(例えば、−A−は単一のシステイン残基である)。
【0062】
−B−は、任意のC−末端アミノ酸配列である。これは、典型的には短い(例えば40またはそれよりも少ないアミノ酸、すなわち39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1などである)。例には、タンパク質の輸送に関与する配列、クローニングまたは精製を容易にする短いペプチド配列(例えばヒスチジンタグ、すなわちn=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上であるHisn)、またはタンパク質の安定性を高める配列が挙げられる。当業者には、他の適当なC−末端アミノ酸配列が明らかである。
【0063】
本発明に係る好適なハイブリッドタンパク質において、X部分の一つは「タンパク質936」である。例えば、n=2、A=Met、X1=936配列(例えば、プロセシングされたMC58タンパク質である配列番号76)、L1=ポリ−グリシンリンカー(例えば配列番号144)、X2=N−末端が本来のポリ−グリシン配列まで削除されているが、それを含むNMB1870配列、そしてL2およびBは除去することができる。このようなハイブリッドタンパク質の例が配列番号77であって、菌株m1239由来の短縮型NMB1870が、菌株MC58由来のプロセシングされた936の下流に存在する。936(菌株2996)および短縮型NMB1870(菌株2996またはM1239)のハイブリッドタンパク質のさらなる例は配列番号91、92、93および94である。
【0064】
n=3の場合の好適なタンデムタンパク質は、3種類のNMB1870改変体のすべてを任意の順序で有することができる。
【0065】
【化3】
n=2の場合の好適なタンデムタンパク質は、2種類の異なったNMB1870改変体を有することができる。
【0066】
【化4】
n=2の場合(2種類の異なったNMB1870改変体)の好適なタンデムタンパク質の例は、配列番号79、82、83、85、87、88、89および90であり、これらは、菌株MC58(改変体1)、2996(改変体2)およびM1239(改変体3)を使用している。
【0067】
n=3の場合のタンデムタンパク質の例は、配列番号142に示されている。
【0068】
(NadA)
Nadタンパク質は、参考文献191および192に開示されている。これらの参考文献は、3つの異なったNadA対立遺伝子を開示している。しかし、いくつか小さな改変は見られる(例えば、血清群Cの菌株ISS1024は、アレル2に7個からなる反復配列が1つ欠失しているという改変体を有し、血清群Cの菌株ISS759および973−1720はともに、リーダーペプチドに単一のアミノ酸変異を有するアレル3の改変体を含み、そして、血清群Bの菌株95330はアレル1と2の組換えを含んでいる)。
【0069】
髄膜炎菌のHaji菌株からNadAの配列を決定したところ、配列番号143が同定された。このタンパク質は、既知のアレル2および3の組換え体である。
【0070】
本発明は、配列番号143に対して少なくとも50%(例えば60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれ以上、例えば、100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号143に由来する少なくとも7個(例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続したアミノ酸フラグメントからなるアミノ酸配列を含むタンパク質を提供する。
【0071】
好適なフラグメントとしては、(a)エピトープ、好ましくは殺菌性エピトープを含むフラグメント;(b)配列番号143と、参考文献191および192に開示されているNadA配列の少なくとも1つに共通するフラグメント;(c)1個以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、またはそれ以上など)のN末端残基が欠失している配列番号143;(d)1個以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25など)のC末端残基が欠失している配列番号143;および(e)シグナルペプチドをもたない配列番号143などである。これら好適なフラグメントは、互いに排他的なものではなく、例えば、あるフラグメントは、カテゴリー(a)および(b)、またはカテゴリー(c)および(d)などに含まれ得る。
【0072】
配列番号143に100%より低い同一性をもつ好適なアミノ酸配列は、その対立遺伝子改変体、ホモログ、オルトログ(orthologs)、パラログ、変異体などである。配列番号143と比較したときに対立遺伝子改変体、ホモログ、オルトログ、パラログ、または変異体における1個以上の違いは、保存的アミノ酸置換を含むことが好ましい。
【0073】
(核酸)
本発明は、上で定義したとおりの本発明に係るタンパク質をコードする核酸を提供する。また、本発明は、(a)上記核酸に由来する少なくともn個連続するヌクレオチドのフラグメントであって、nが10以上(例えば、12、14、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500以上)であるもの;および/または(b)上記核酸と少なくとも50%(例えば60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列同一性を有する配列を含む核酸を提供する。
【0074】
さらに、本発明は、好ましくは「高ストリンジェント」条件下(例えば0.1×SSC、0.5%SDS溶液中65℃)で、本発明に係るタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズすることができる核酸を提供する。
【0075】
本発明に係る核酸をハイブリダイゼーション反応(例えばノザンブロットもしくはサザンブロット、または核酸マイクロアレイもしくは「遺伝子チップ」)および増幅反応(例えばPCR、SDA、SSSR、LCR、TMA、NASBAなど)およびその他の核酸技術に使用することができる。
【0076】
本発明に係る核酸は、全部または一部を化学合成によって、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリー由来、細菌そのもの由来などのヌクレアーゼ(例えば制限酵素)を用いた長いポリヌクレオチドの消化によってなど、多くの方法で調製することができる。
【0077】
本発明に係る核酸は、例えば一本鎖、二本鎖、ベクター、プライマー、プローブ、標識されたもの、非標識のものなど、さまざまな形態をとることができる。
【0078】
本発明に係る核酸は、好ましくは、単離された形態か、または実質的に単離された形態である。
【0079】
本発明は、例えばアンチセンスもしくはプロービングのため、またはプライマーとして使用するための、上記した配列に相補的な配列を含む核酸を包含する。
【0080】
「核酸」という用語は、DNAおよびRNAを含み、また、改変された骨格を含むものなど、それらのアナログも含み、そして、ペプチド核酸(PNA)なども含む。
【0081】
本発明に係る核酸は、放射性または蛍光性の標識で標識することができる。これは、例えば、核酸を、PCR、LCR、TMA、NASBAなどの技術において使用するためのプライマーまたはプローブとする場合など、核酸を核酸検出技術に用いる場合に特に有用である。
【0082】
また、本発明は、本発明に係るヌクレオチド配列を含むベクター(例えば、核酸免疫に適したものなどのクローニングベクターまたは発現ベクター)、およびこのようなベクターによって形質転換された宿主細胞を提供する。
【0083】
(さらなる抗原成分)
本発明に係る組成物は、少数の(例えばtが5、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4または3であるとき、t種類の抗原よりも少ない)精製された血清群B抗原を含む。特に好適には、この組成物は、複合体または未定義の抗原混合物を含まないはずである。例えば、外膜ベシクルを組成物中に含まないことが好ましい。好ましくは、この抗原は異種宿主において組換えによって発現されて、精製される。
【0084】
本発明に係る組成物は、少なくとも2種類の異なったNMB1870タンパク質を含む。また、別のナイセリア抗原を、細菌毎に1つ以上の抗原を標的して、エスケープ変異体を選抜する可能性を低下させたワクチンとして含むことも可能である。この組成物に含まれるナイセリア抗原は、
(a)参考文献6に開示されている偶数の配列番号(すなわち2、4、6、…、890、892)の446個の配列;
(b)参考文献7に開示されている偶数の配列番号(すなわち2、4、6、…、88、90)の45個の配列;
(c)参考文献8に開示されている配列番号2〜3020の偶数番号、配列番号3040〜3114の偶数番号、および配列番号3115〜3241のすべての1674個の配列;
(d)参考文献2のNMB0001からNMB2160までの2160個のアミノ酸配列;
(e)参考文献10、11または12に開示されているアミノ酸配列;
(f)(a)から(e)までの改変体、ホモログ、オルトログ(orthologs)、パラログ、突然変異体など;または
(g)N.meningitidisから調製された外膜ベシクル[例えば、参考文献139参照]
を含むタンパク質を包含する。
【0085】
ナイセリア抗原に加えて、この組成物は、他の疾患または感染に対して免疫化するための抗原を含み得る。例えば、この組成物は、一つ以上の以下のさらなる抗原を含み得る:−Helicobacter pylori由来の抗原(例えば、CagA[18〜21]、VacA[22、23]、NAP[24、25、26]、HopX[例えば、27]、HopY[例えば、27]および/またはウレアーゼ)
−N.meningitidis血清群A、C、W135、および/またはY由来の糖抗原(例えば、血清群C由来の参考文献28に開示されるオリゴ糖[参考文献29も参照のこと]または参考文献30のオリゴ糖。
−Streptococcus pneumoniae由来の糖抗原[例えば、31、32、33]
−A型肝炎ウイルス(例えば、不活化ウイルス)由来の抗原[例えば、34、35]
−B型肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、表面抗原および/またはコア抗原)[例えば、35、36]
−ジフテリア抗原(例えば、ジフテリアトキソイド)[例えば、参考文献37の第3章](例えば、CRMl97変異体[例えば、38])
−破傷風抗原(例えば、破傷風トキソイド)[例えば、参考文献34の第4章]
−Bordetella pertussis由来の抗原(例えば、B.pertussis由来の百日咳ホロ毒素(PT)および線維状赤血球凝集素(FHA))(必要に応じて、ペルタクチン(pertactin)ならびに/またはアグルチノーゲン(agglutinogen)2および3[例えば、参考文献39および40]と組み合わせる)
−Haemophilus influenzae B菌由来の糖抗原[例えば、29]−C型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば、41]
−N.gonorrhoeae由来の抗原[例えば、6、7、8、42]
−Chlamydia pneumoniae由来の抗原[例えば、43〜49]
−Chlamydia trachomatis由来の抗原[例えば、50]
−Porphyromonas gingivalis由来の抗原[例えば、51]
−ポリオ抗原[例えば、52、53](例えば、IPV)
−狂犬病抗原[例えば、54](例えば、凍結乾燥不活化ウイルス[例えば、55、RabAvertTM])
−麻疹抗原、流行性耳下腺炎抗原および/または風疹抗原[例えば、参考文献37の第9章、第10章および第11章]
−インフルエンザ抗原[例えば、参考文献37の第19章]、(例えば、赤血球凝集素タンパク質および/またはノイラミダーゼ表面タンパク質)
−Moraxella catarrhalis由来の抗原[例えば、56]
−Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)由来のタンパク質抗原[例えば、57、58]
−Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)由来の糖抗原−Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)由来の抗原[例えば、58、59、60]
−Staphylococcus aureus由来の抗原[例えば、61]
−Bacillus anthracis由来の抗原[例えば、62、63、64]
−フラビウイルス科のウイルス(flavivirus属)由来の抗原(例えば、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルスの4つの血清型、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイルウイルス由来)
−ペスチウイルス抗原(例えば、古典的ブタ熱病(classical porcine
fever)ウイルス、ウシウイルス性下痢(bovine viral diarrhoea)ウイルス、および/またはボーダー病(border disease)ウイルス
−パルボウイルス抗原(例えば、パルボウイルスB19由来)
−プリオンタンパク質(例えば、CJDプリオンタンパク質)
−アミロイドタンパク質(例えば、βペプチド[65])
−癌抗原(例えば、参考文献66の表1、または参考文献67の表3および表4に列挙される抗原)
本組成物は、これらのさらなる抗原を1種以上含み得る。
【0086】
毒素タンパク質は、必要な場合、解毒され得る(例えば、化学的および/または遺伝的手段による百日咳毒素の解毒[40])。
【0087】
ジフテリア抗原がこの組成物に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含むことが好ましい。したがって、DTPの組み合わせが好ましい。
【0088】
糖抗原は、好ましくは、結合体形態である。この結合体の担体タンパク質は、N.meningitidisの外膜タンパク質[68]、合成ペプチド[69、70]、熱ショックタンパク質[71、72]、百日咳タンパク質[73,74]、H.influenzae由来のタンパク質D[75]、サイトカイン[76]、リンホカイン[76]、連鎖球菌タンパク質、ホルモン[76]、成長因子[76]、C.difficile由来の毒素AまたはB[77]、鉄取り込みタンパク質[78]などを含む。好ましい担体タンパク質は、CRM197ジフテリアトキソイド[79]である。
【0089】
本組成物の抗原は、代表的に、少なくとも各々1μg/mlの濃度で存在する。一般的に、任意の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を引き起こすに十分である。
【0090】
本発明の免疫原性組成物は、治療用に(すなわち、現存の感染を処置するために)使用され得るか、または予防用に(すなわち、将来の感染を防ぐために)使用され得る。
【0091】
本発明の免疫原性組成物にタンパク質抗原を使用することの代替として、その抗原をコードする核酸(好ましくは、DNA、例えば、プラスミドの形態)が使用され得る。
【0092】
特に好ましい本発明の組成物は、以下の一つ、二つ、または三つを含有する:(a)髄膜炎菌血清群Y由来の糖抗原、髄膜炎菌血清群W135由来の糖抗原、髄膜炎菌血清群C、および(必要に応じて)髄膜炎菌血清群A由来の糖抗原;(b)Haemophilus influenzae
B型由来の糖抗原;ならびに/または(c)Streptococcus pneumoniae由来の抗原。
(髄膜炎菌血清群Y、W135、Cおよび(必要に応じて)A)
血清群A、C、W135およびYに対する多糖ワクチンが、長年知られている。これらのワクチン(MENCEVAX ACWYTMおよびMENOMUNETM)は、生物の莢膜多糖に基づき、これらのワクチンは、青年および成人において有効であるが、生じる免疫応答は乏しく、かつ防御の持続時間は短く、そしてそれらは、乳児において使用することができない。
【0093】
これらのワクチンにおいて、結合体化されていない多糖抗原とは対照的に、最近認可された血清群Cワクチン(MenjugateTM[80、28]、MeningitecTMおよびNeisVac−CTM)は結合体化された糖を含有する。MenjugateTMおよびMeningitecTMは、CRM197担体に結合体化されたオリゴ糖抗原を有し、一方で、NeisVac−CTMは、破傷風トキソイド担体に結合された完全な多糖(脱O−アセチル化多糖)を使用する。提唱されるMenActraTMワクチンは、血清群Y、W135、CおよびAの各々に由来する結合体化された莢膜糖抗原を含有する。
【0094】
本発明の組成物は、好ましくは、一以上の髄膜炎菌血清群Y、髄膜炎菌血清群W135、髄膜炎菌血清群Cおよび(必要に応じて)髄膜炎菌血清群A由来の莢膜糖抗原を含有する。ここでこの抗原は担体タンパク質に結合体化されるか、そして/または、オリゴ糖である。例えば、この組成物は、血清群C;血清群AおよびC;血清群A、CおよびW135;血清群A、CおよびY;血清群C、W135およびY;または血清群A、C、W135およびYの4つ全てに由来する莢膜糖抗原を含み得る。
【0095】
一用量当たりの各髄膜炎菌糖抗原の代表的量は、1μgと20μgの間(例えば、約1μg、約2.5μg、約4μg、約5μg、または約10μg(糖として表示))である。
【0096】
混合物が、血清群Aおよび血清群Cの両方由来の莢膜糖を含む場合、MenA糖:MenC糖の比(w/w)は、1より大きくあり得る(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1またはそれ以上)。混合物が、血清群Yならびに血清群Cおよび血清群W135の一方、あるいは両方に由来する莢膜糖を含む場合、MenY糖:MenW135糖の比(w/w)は、1より大きくあり得(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1またはそれ以上)、そして/または、MenY糖:MenC糖の比(w/w)は、1より小さくあり得る(例えば、1:2、1:3、1:4、1:5またはそれ以下)。血清群A由来の糖:血清群C由来の糖:血清群W135由来の糖:血清群Y由来の糖についての好ましい比(w/w)は、1:1:1:1;1:1:1:2;2:1:1:1;4:2:1:1;8:4:2:1;4:2:1:2;8:4:1:2;4:2:2:1;2:2:1:1;4:4:2:1;2:2:1:2;4:4:1:2;および2:2:2:1である。血清群C由来の糖:血清群W135由来の糖:血清群Y由来の糖についての好ましい比(w/w)は、1:1:1;1:1:2;1:1:1;2:1:1;4:2:1;2:1:2;4:1:2;2:2:1;および2:1:1である。実質的に同等の質量の各糖を使用することが好ましい。
【0097】
莢膜糖は、概して、オリゴ糖形態で使用される。これらは、精製された莢膜多糖のフラグメント化によって(例えば、加水分解によって)、都合よく形成され、その後に、通常、所望のサイズのフラグメントの精製が続く。
【0098】
多糖のフラグメント化は、好ましくは、オリゴ糖において、30より小さい(例えば、血清群Aについて10と20の間、好ましくは、約10;血清群W135および血清群Yについて15と25の間;好ましくは約15〜20;血清群Cについて12と22の間など)最終的な平均重合度(DP)を生じさせるように成し遂げられる。DPは、イオン交換クロマトグラフィーによってかまたは比色アッセイによって、都合よく測定され得る[81]。
【0099】
加水分解が行われる場合、この加水分解産物は、概して、短い長さのオリゴ糖を除去するために大きさで選別される(be sized)[29]。これは、種々の方法(限外濾過に続くイオン交換クロマトグラフィーなど)において、成し遂げられ得る。好ましくは、血清群Aについて、約6以下の重合度を有するオリゴ糖は除去され、そして好ましくは、血清群W135および血清群Yについて、約4より少ない重合度を有するオリゴ糖は除去される。
【0100】
好ましいMenC糖抗原は、MenjugateTMにおいて使用されたように、参考文献80に開示される。
【0101】
この糖抗原は、化学的に修飾され得る。これは、特に、血清群Aの加水分解の減少に有用である[82;以下を参照のこと]。髄膜炎菌の糖の脱O−アセチル化が、行われ得る。修飾は、オリゴ糖については、脱重合の前または脱重合の後に起こり得る。
【0102】
本発明の組成物が、MenA糖抗原を含有する場合、この抗原は、好ましくは、修飾された糖であって、この修飾された糖はネイティブ糖の一以上のヒドロキシル基が、封鎖(blocking)基によって置換されている[82]。この修飾は、加水分解に対する抵抗を改善する。
【0103】
封鎖基を有する単糖単位の数は、変動し得る。例えば、全単糖単位または実質的な全単糖単位は、封鎖基を有し得る。あるいは、単糖単位のうち少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%は封鎖基を有し得る。少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の単糖単位は、封鎖基を有し得る。
【0104】
同様に、単糖単位上の封鎖基の数は、変動し得る。例えば、単糖単位上の封鎖基の数は、1または2であり得る。この封鎖基は、概して、単糖単位の4位および/または3位にある。
【0105】
末端の単糖単位は、天然のヒドロキシル基の代わりに封鎖基を有しても、有さなくてもよい。さらなる反応(例えば、結合体化)のための柄を提供するため、末端の単糖単位上に遊離型アノマーのヒドロキシル基を保持することが好ましい。アノマーのヒドロキシル基は、還元的アミノ化(例えば、NaBH3CN/NH4Clを使用する)によって、アミノ基(−NH2または−NH−E、ここでEは窒素保護基である)に変換され得、次いで、他のヒドロキシル基が封鎖基に変換された後に、アノマーのヒドロキシル基は、再生され得る。
【0106】
ヒドロキシル基を置換する封鎖基は、ヒドロキシル基の誘導体化反応を介して(すなわち、ヒドロキシル基の水素原子を別の基に置換することによって)、直接接触可能であり得る。封鎖基として働くヒドロキシル基の適切な誘導体は、例えば、カルバメート、スルホネート、カルボネート、エステル、エーテル(例えば、シリルエーテルまたはアルキルエーテル)、およびアセタールである。このような封鎖基のいくつかの特定の例は、アリル、Aloc、ベンジル、BOM、t−ブチル、トリチル、TBS、TBDPS、TES、TMS、TIPS、PMB、MEM、MOM、MTM、THPなどである。直接接触可能でなく、かつ完全にヒドロキシル基を置換する他の封鎖基としては、C1−12アルキル、C3−12アルキル、C5−12アリール、C5−12アリール−C1−6アルキル、NR1R2(R1およびR2は以下の段落で規定される)、H、F、Cl、Br、CO2H、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3、CCl3などが挙げられる。好ましい封鎖基は電子求引性基である。
【0107】
好ましい封鎖基は、式:−O−X−Yまたは−OR3のものであって、ここで:XはC(O)、S(O)、またはSO2であり;YはC1−12アルキル、C1−12アルコキシ、C3−12シクロアルキル、C5−12アリール、またはC5−12アリール−C1−6アルキルであり、これらの各々は、必要に応じて、F、Cl、Br、CO2H、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3、またはCCl3から独立的に選択される1つ、2つ、または3つの基で置換され得るか;あるいは、YはNR1R2であり;R1およびR2は、H、C1−12アルキル、C3−12シクロアルキル、C5−12アリール、C5−12アリール−C1−6アルキルから独立的に選択されるか;あるいはR1およびR2は結合され、C3−12飽和複素環式基を形成し得;R3はC1−12アルキルまたはC3−12シクロアルキルであり、これらのそれぞれは、必要に応じて、F、Cl、Br、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3、またはCCl3から独立的に選択される1つ、2つ、または3つの基で置換され得るか;あるいはR3は、C5−12アリールまたはC5−12アリール−C1−6アルキルであり、これらのそれぞれが、必要に応じて、F、Cl、Br、CO2H、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3またはCCl3から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの基で置換され得る。R3がC1−12アルキルまたはC3−12シクロアルキルである場合、それは代表的に、上記で規定されるような1つ、2つ、または3つの基で置換される。R1およびR2が結合され、C3−12飽和複素環式基を形成する場合、それは、窒素原子とともに、R1およびR2が、3と12の間の任意の数の炭素原子(例えば、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)を含む飽和複素環式基を形成することを意味する。この複素環式基は、上記窒素原子以外の1つまたは2つのヘテロ原子(N、O、またはSなど)を含み得る。C3−12飽和複素環式基の例は、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、アゼチジニル、およびアジリジニルである。
【0108】
封鎖基−O−X−Yおよび−OR3は、標準的な誘導体化手順(ハロゲン化アシル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化スルホニルなどとのヒドロキシル基の反応など)によって、−OH基から調製され得る。従って、−O−X−Yにおける酸素原子は、好ましくは、ヒドロキシル基の酸素原子であり、一方、−O−X−Yにおける−X−Y基は、好ましくは、ヒドロキシル基の水素原子を置換する。
【0109】
あるいは、この封鎖基は、置換反応(ミツノブ(Mitsonobu)型置換など)を介して、接触可能であり得る。ヒドロキシル基から封鎖基を調製する、これらの方法および他の方法は周知である。
【0110】
より好ましくは、封鎖基は、−OC(O)CF3[83]、またはカルバメート基−OC(O)NR1R2であって、ここでR1およびR2は、C1−6アルキルから独立に選択される。より好ましくは、R1およびR2は両方ともメチルである(すなわち、封鎖基は−OC(O)NMe2である)。カルバメート封鎖基は、グリコシド結合に対して安定化効果を有し、穏やかな条件下で調製され得る。
【0111】
好ましい、修飾されるMenA糖は、n個の単糖単位を含み、単糖単位のうちの少なくともh%は3位および4位の両方に−OH基を有さない。hの値は24以上(例えば、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、98、99、または100)であり、好ましくは、50以上である。−OH基の非存在は、好ましくは、上記で規定されるような封鎖基である。
【0112】
他の好ましい修飾されるMenA糖は、単糖単位を含むのであって、ここで単糖単位のうちの少なくともsは、3位に−OHを有さず、そして4位にも−OHを有さない。sの値は、少なくとも1(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90)である。−OH基の非存在は、好ましくは、上記で規定されるように、封鎖基である。
【0113】
本発明の使用に適した修飾されるMenA糖は、以下の式を有する:
【0114】
【化5】
nは1〜100の整数(好ましくは、15〜25の整数)であり;
Tは式(A)または式(B)であって:
【0115】
【化6】
ここで各Z基は、独立して、上記で規定されるようなOHまたは封鎖基から選択され;そして、
各Q基は、独立して、上記で規定されるようなOHまたは封鎖基から選択され;
Yは、OHまたは上記で規定されるような封鎖基から選択され;
Eは、Hまたは窒素保護基であり;
ここでQ基のうち約7%より多く(例えば、8%、9%、10%以上)は封鎖基である。
【0116】
n+2個のZ基の各々は、相互に同一または異なり得る。同様に、n+2個のQ基の各々は、相互に同一または異なり得る。全てのZ基はOHであり得る。あるいは、Z基のうち少なくとも、10%、20%、30%、40%、50%または60%はOAcであり得る。好ましくは、Z基の約70%はOAcであり、Z基の残部は上記で規定されるようなOHまたは封鎖基である。Q基のうち少なくとも約7%は封鎖基である。好ましくは、Q基のうち、少なくとも、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%でさえ、封鎖基である。
【0117】
髄膜炎菌の莢膜多糖は、代表的に、(例えば、陽イオン性界面活性剤を用いた)多糖沈殿、エタノール分画、(タンパク除去のための)冷フェノール抽出、および(LPS除去のための)超遠心の工程を包含するプロセスによって調製される[例えば、参考文献84]。しかしながら、より好ましいプロセス[30]は、多糖沈殿後に続く低級アルコールを用いる沈殿した多糖の可溶化を包含する。沈殿は、テトラブチルアンモニウム塩およびセチルトリメチルアンモニウム塩(例えば、臭化塩)、または臭化ヘキサジメチリン塩およびミリスチルトリメチルアンモニウム塩のような陽イオン性界面活性剤を使用して成し遂げられ得る。臭化セチルトリメチルアンモニウム(「CTAB」)は特に好ましい[85]。沈殿した物質の可溶化は、低級アルコール(メタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、2−メチル−プロパン−1−オール、2−メチル−プロパン−2−オール、ジオールなど)の使用により成し遂げられ得るが、しかし、エタノールは、CTAB−多糖複合体の可溶化に特に適している。エタノールは、好ましくは、50%と95%との間の終濃度(エタノールおよび水の全体量をベースとして)を与えるように、沈殿した多糖に加えられる。
【0118】
再可溶化後、この多糖は、夾雑物を除去するためにさらに処理され得る。これは、微量な夾雑物ですら、許容されない状況(例えば、ヒトワクチン作製のため)において、特に重要である。これは、代表的に、濾過(例えば、デプス濾過、活性炭を通じた濾過、サイズ濾過および/または限外濾過)の一以上の工程を包含する。一旦夾雑物を除去するために濾過されると、多糖は、さらなる処理、および/またはプロセスのために沈殿され得る。これは、好都合なことに、陽イオン交換(例えば、カルシウム塩またはナトリウム塩の添加)によって成し遂げられ得る。
【0119】
精製に代わる手段として、本発明の莢膜糖は、全合成または部分合成によって得られ得る(例えば、Hib合成は参考文献86において開示され、MenA合成は参考文献87において開示される)。
【0120】
本発明の組成物は、N.meningitidisの少なくとも二つの血清群由来の莢膜糖を含有する。糖は、好ましくは、(任意の断片化、結合体化、修飾などを含めて)別々に調製され、次いで本発明の組成物を生じさせるために混合される。
【0121】
しかしながら、この組成物が、血清群A由来の莢膜糖を含有する場合、加水分解の可能性を最小限に抑えるために、血清群Aの糖は、使用直前まで、この他の糖に混合されないことが好ましい。これは、好都合なことに、血清群A成分(代表的には適切な賦形剤とともに)を凍結乾燥形態にさせ、そして他の血清群成分(これもまた適切な賦形剤とともに)を液体形態にさせ、使用準備が整った場合、この液体成分を使用して、この凍結乾燥MenA成分を再構成することによって、成し遂げられ得る。アルミニウム塩アジュバントが使用される場合、液体ワクチンを含むバイアル内にアジュバントを含むこと、およびMenA成分をアジュバントなしで凍結乾燥させることが好ましい。
【0122】
従って、本発明の組成物は、以下のものを含むキットから調製され得る:(a)凍結乾燥形態の、N.meningitidis血清群A由来の莢膜糖;および(b)液体形態の、この組成物由来のさらなる抗原。本発明はまた、本発明の組成物を調製する方法を提供し、この方法は凍結乾燥されたN.meningitidis血清群A由来の莢膜糖をさらなる抗原と混合する工程を含み、ここで上記のさらなる抗原は液体形態である。
【0123】
本発明はまた、以下を含めるキットを提供する:(a)全ての凍結乾燥形態の、N.meningitidis血清群C、N.meningitidis血清群W135、およびN.meningitidis血清群Y由来の莢膜糖のうちの2以上を含む、第一の容器;ならびに(b)液体形態の以下を含む、第二の容器:(i)被験体に投与後、被験体内で抗体応答を誘導し得る組成物であって、この抗体応答は、N.meningitidis血清群Bの超病原性系統A4、ET−5および系統3のうちの2以上(例えば2または3)に対して殺菌性である、組成物、(ii)N.meningitidis血清群C、W135およびYに由来しないか、またはこれらのうちの一つ由来の莢膜糖、ならびに必要に応じて(iii)髄膜炎菌の莢膜糖を含まないさらなる抗原(以下を参照のこと)。ここで容器(b)の内容物による容器(a)の内容物の再構築は、本発明の組成物を提供する。
【0124】
各用量内で、個々の糖抗原の量は、概して、(糖の質量として測定して)1〜50μgの間になり、約2.5μg、5μgまたは10μgの各抗原の量が好ましい。従って、1:1:1:1;1:1:1:2;2:1:1:1;4:2:1:1;8:4:2:1;4:2:1:2;8:4:1:2;4:2:2:1;2:2:1:1;4:4:2:1;2:2:1:2;4:4:1:2;および2:2:2:1であるA:C:W135:Yの重量比で、数1によって表される量は、好ましくは、約2.5μg、5μgまたは10μgである。従って、1:1:1:1比のA:C:W:Yの組成物および一つの糖当たり10μgについては、40μgの糖が、一用量当たり投与される。好ましい組成物は、一用量当たり、およそ、以下のμgの糖を有する。
【0125】
【化7】
好ましい本発明の組成物は、一用量当たり、50μg未満の髄膜炎菌の糖を含有する。他の好ましい組成物は、一用量当たり≦40μgの髄膜炎菌の糖を含有する。他の好ましい組成物は、一用量当たり≦30μgの髄膜炎菌の糖を含有する。他の好ましい組成物は、一用量当たり≦25μgの髄膜炎菌の糖を含有する。他の好ましい組成物は、一用量当たり≦20μgの髄膜炎菌の糖を含有する。他の好ましい組成物は、一用量当たり≦10μgの髄膜炎菌の糖を含有するが、しかし、理想的には、本発明の組成物は、一用量当たり少なくとも10μgの髄膜炎菌の糖を含有する。
【0126】
MenjugateTMおよびNeisVacTMのMenC結合体は、水酸化物アジュバントを使用し、一方MeningitecTMはリン酸塩を使用する。本発明の組成物において、水酸化アルミニウムにいくつかの抗原を吸着させることが可能性であるが、リン酸化アルミニウムに会合する他の抗原を有することも可能性である。例えば、四価の血清群の組み合わせについては、以下の順列が利用可能である。
【0127】
【化8】
四価のN.meningitidis血清群の組み合わせについては、以下の順列が利用可能である。
【0128】
【化9】
(Haemophilus influenzae B型)
この組成物が、H.influenzaeB型抗原を含有する場合、それは、代表的に、Hib莢膜糖抗原である。H.influenzae b由来の糖抗原は周知である。
【0129】
有利には、Hib糖は、とりわけ子供においてその免疫原性を増強するため、担体タンパク質に共有結合される。概して、多糖結合体の調製、および特にHib莢膜多糖の調製は、よく実証されている[例えば、参考文献88〜96など]。本発明は、任意の適切なHib結合体を使用し得る。適切な担体タンパク質は、以下に記載され、Hib糖にとっての好ましい担体はCRM197(「HbOC」)、破傷風トキソイド(「PRP−T」)およびN.meningitidisの外膜複合体(「PRP−OMP」)である。
【0130】
この結合体の糖部分は多糖であり得る(例えば、全長ポリリボシルリビトールホスフェート(PRP))。しかしオリゴ糖(例えば、分子量約1〜約5kDa)を形成するために多糖を加水分解することが好ましい。
【0131】
好ましい結合体は、アジピン酸リンカーを介してCRM197に共有結合したHibオリゴ糖を含む[97、98]。破傷風トキソイドもまた、好ましい担体である。
【0132】
本発明の組成物は、1種類より多くのHib抗原を含み得る。
【0133】
組成物が、Hib糖抗原を含有する場合、この組成物は水酸化アルミニウムアジュバントも含有しないことが好ましい。この組成物が、リン酸アルミニウムアジュバントを含有する場合、Hib抗原はアジュバントに吸着され得るか[99]、またはHib抗原は吸着されなくてもよい[100]。
【0134】
Hib抗原は、(例えば、髄膜炎菌抗原とともに)凍結乾燥され得る。
【0135】
(Streptococcus pneumoniae)
この組成物が、S.pneumoniae抗原を含有する場合、これは、代表的に、好ましくは、担体タンパク質に結合体化される莢膜糖抗原である[例えば、参考文献31〜33]。一より多くのS.pneumoniaeの血清型由来の糖を含有することが好ましい。例えば、23の異なる血清型由来の多糖混合物は広く使用される(5と11との間の異なる血清群由来の多糖との結合体化ワクチン[101]のように)。例えば、PrevNarTM[102]は、各糖が還元的アミノ化によりCRM197に個々に結合体化される状態で、各糖が0.5mlの用量当たり2μg(血清型6Bは4μg)で、かつ、結合体がリン酸アルミニウムアジュバントに吸着された状態で、7つの血清型(4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F)由来の抗原を含む。本発明の組成物は、好ましくは、少なくとも血清型6B、14、19Fおよび23Fを含有する。結合体は、リン酸アルミニウム上に吸着され得る。
【0136】
肺炎球菌由来の糖抗原の使用に代わる手段として、この組成物は、一以上のポリペプチド抗原を含有し得る。肺炎球菌のいくつかの株のゲノム配列は入手可能であり[103、104]、ワクチン学を覆す対象であり得[106〜108]、適したポリペプチド抗原を同定し得る[109、110]。例えば、この組成物は、以下の抗原のうち一以上を含有し得る:参考文献111で規定されるような、PhtA、PhtD、PhtB、PhtE、SpsA、LytB、LytC、LytA、Sp125、Sp101、Sp128、およびSp130。
【0137】
いくつかの実施形態において、この組成物は、肺炎球菌由来の糖抗原およびポリペプチド抗原の両方を含有し得る。これらは、単純な混合で使用され得るか、または肺炎球菌の糖抗原は、肺炎球菌のタンパク質に結合体化され得る。このような実施形態にとって適した担体タンパク質には、前の段落において収載される抗原が挙げられる[111]。
【0138】
肺炎球菌抗原は(例えば、肺炎球菌抗原および/またはHib抗原とともに)凍結乾燥され得る。
【0139】
(共有結合性結合体化)
本発明の組成物における莢膜糖は、通常、担体タンパク質に結合される。一般に、結合体化は、糖をT細胞非依存性抗原からT細胞依存性抗原へ転換し、よって、免疫学的記憶の初回刺激を可能とすることから、糖の免疫原性を増強する。結合体化は、小児科ワクチンにとって特に有用であり、周知の技術である[例えば、参考文献112および88〜96で概説される]。
【0140】
好ましい担体タンパク質は、細菌性毒素または細菌性トキソイド(ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイド)である。CRM197変異体ジフテリアトキソイド[79、113、114]は特に好ましい。他の適した担体タンパク質としては、N.meningitidis外膜タンパク質[68]、合成ペプチド[69、70]、熱ショックタンパク質[71、72]、百日咳タンパク質[73、74]、サイトカイン[76]、リンホカイン[76]、ホルモン[76]、増殖因子[76]、種々の病原体由来抗原由来の複数のヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質[115]、H.influenzae由来のプロテインD[75、116]、肺炎球菌の表面タンパク質PspA[117]、鉄取り込みタンパク質[78]、C.difficile由来の毒素A、または毒素B[77]などが挙げられる。好ましい担体は、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、H.influenzaeプロテインD、およびCRM197である。
【0141】
本発明の組成物内で、(例えば、担体抑制の危険を減少させるため)一より多くの担体タンパク質を使用することが可能である。従って、異なる担体タンパク質は、異なる血清群に使用され得る(例えば、血清群Aの糖はCRM197に結合体化され得、一方で血清群Cの糖は破傷風トキソイドに結合体化され得る)。特定の糖抗原に一より多くの担体タンパク質を使用することもまた可能である(例えば、血清群Aの糖は、いくつかの糖がCRM197に結合体化され、他の糖が破傷風トキソイドに結合体化された、二つの群であり得る)。しかしながら、概して、同一の担体タンパク質を全ての糖に使用することが好ましい。
【0142】
単一担体タンパク質は一より多くの糖抗原を保有し得る[118]。例えば、単一担体タンパク質は、その担体タンパク質に結合された血清群Aおよび血清群C由来の糖を有し得る。この目的を成し遂げるため、糖は結合体化反応の前に混合され得る。しかしながら、概して、各血清群のための別個の結合体を有することが好ましい。
【0143】
1:5(すなわち、過剰のタンパク質)と5:1(すなわち、過剰の糖)との間の糖:タンパク質の比(w/w)を有する結合体が好ましい。1:2と5:1との間の比が好ましく、1:1.25と1:2.5との間の比はより好ましい。過剰の担体タンパク質は、MenAおよびMenCについて好ましくあり得る。
【0144】
結合体は、遊離の担体タンパク質との結合体化において使用され得る[119]。ある担体タンパク質が、本発明の組成物中に遊離型形態および結合体化形態の両方で存在する場合、非結合体化形態は、好ましくは、全体として、その組成物中の担体タンパク質の総量の5%以下であり、より好ましくは、2重量%未満である。
【0145】
任意の適した結合体化反応は、必要な場合、任意の適したリンカーとともに使用され得る。
【0146】
糖は、典型的に、結合体化の前に活性化されるか、または官能化される。例えば、活性化は、CDAP(例えば、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジウムテトラフルオロボレート[120、121など])のようなシアン化試薬を含む。他の適した技術は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシンイミド、S−NHS、EDC、TSTUを使用する;参考文献94への序論をまた参照のこと)。
【0147】
リンカー基を介した連結は、任意の公知の手順(例えば、参考文献122および123に記載された手順)を利用して作られ得る。一つの型の連結は、多糖の還元的アミノ化、結果として生じるアミノ基と、アジピン酸リンカー基の一端とのカップリング、およびその後の、アジピン酸リンカー基の他の一端へのタンパク質のカップリングを含む[92、124、125]。他のリンカーは、B−プロピオンアミド[126]、ニトロフェニル−エチルアミン[127]、ハロゲン化ハロアシル[128]、グリコシド結合[129]、6−アミノカプロン酸[130]、ADH[131]、C4〜C12部分[132]などを含む。リンカーの使用に代わる手段として、直接的結合が使用され得る。そのタンパク質への直接的結合は、例えば、参考文献133および参考文献134に記載されるような多糖の酸化とその後のタンパク質との還元的アミノ化を含み得る。
【0148】
糖へのアミノ基の導入(例えば、末端=O基の−NH2との交換による導入)およびその後のアジピン酸ジエステル(例えば、アジピン酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステル)での誘導体化、ならびに担体タンパク質との反応を包含するプロセスは、好ましい。別の好ましい反応は、プロテインD担体(例えば、MenAまたはMenCのための担体)でのCDAP活性化を使用する。
【0149】
結合体化後、遊離型糖および結合体化糖は、分離され得る。疎水性クロマトグラフィー、接線限外濾過、ダイアフィルトレーションなどを包含する多くの適切な方法がある[参考文献135および136などをまた参照のこと]。
【0150】
本発明の組成物が結合体化されたオリゴ糖を含有する場合、オリゴ糖の調製は結合体化に先行することが好ましい。
【0151】
(外膜ベシクル)
好ましくは、本発明に係る組成物は、OMVの典型的な特徴である、複合体のまたは未定義の抗原混合物を含むべきでない。しかし、本発明をOMVに適用し得る1つの方法は、OMVを、複数回投与スケジュールにおいて投与するものである。
【0152】
OMVを1用量以上投与しようとする場合、各用量に、上で定義したとおりの第1のタンパク質、第2のタンパク質、または第3のタンパク質の1つを(精製したタンパク質を付加するか、または、OMVが由来する細菌の中でタンパク質を発現させて)補充することができる。好ましくは、さまざまなNMB1870改変体によって、さまざまな用量に補充される。例えば、3回のOMV投与スケジュールにおいて、各用量は、第1のタンパク質、第2のタンパク質、または第3のタンパク質のうちの異なったものを1つ含むことができ、OMVを3用量服用すれば、3種類の改変体をすべて服用している。2回のOMV投与スケジュールにおいて、各OMV用量に対して1つの改変体を使用する(したがって、1つの改変体を除く)ことができ、また3種類の改変体をすべてカバーするために、OMVの1用量または両方の用量に1種類以上の改変体を補充することができる。好適な実施態様において、3用量のOMVがある(3つのOMV用量のそれぞれが、3種類の異なった遺伝子操作されたベシクル集団を含み、この集団のそれぞれが、3種類のサブタイプを提示し、したがって全部で9種類の異なったサブタイプをもたらす)。
【0153】
この方法は、一般的に、N.meningitidis血清群Bのマイクロベシクル[137]、「天然型OMV」[138]、小胞(blebs)または外膜ベシクル[例えば参考文献139から144など参照]の調製法を改良するために用いることができる。これらは、例えば、免疫原性を高める(例えば過発現(hyper−express)免疫原)、毒性を低下させる、莢膜多糖の合成を阻害する、PorA発現を下方制御するなどのために遺伝子操作した細菌から調製することができる。それらは、過剰に小胞形成する(hyperblebbing)菌株から調製することも可能である[149〜152]。非病原性ナイセリア由来のベシクルも含まれ得る[153]。OMVは、界面活性剤を使用しないでも調製することができる[154、155]。それらは、表面に非ナイセリアタンパク質を発現することも可能である[156]。それらは、LPSが除去されていてもよい。それらは、組換え抗原と混合することもできる[139、157]。さまざまなクラスI外膜タンパク質サブタイプをもつ細菌からのベシクル、例えば、それぞれが3種類のサブタイプを示す2つの異なった遺伝子工学的に改造されたベシクル集団を用いた6種類の異なったサブタイプ、または、それぞれが3種類のサブタイプを示す3つの異なった遺伝子工学的に改造されたベシクル集団を用いた9種類の異なったサブタイプなどを用いることができる。有用なサブタイプとしては、P1.7,16;P1.5−1,2−2;P1.19,15−1;P1.5−2,10;P1.12−1,13;P1.7−2,4;P1.22,14;Pl.7−1,1;P1.18−1,3,6が挙げられる。
【0154】
当然ながら、2種類または3種類の異なった改変体をベシクル調製物に補充することも可能である。
【0155】
(免疫化)
本発明に係る組成物は、好ましくは免疫原性組成物であり、本発明は、薬物として使用するために本発明の免疫原性組成物を提供する。
【0156】
また、本発明は、哺乳動物において抗体応答を惹起する方法であって、本発明に係る免疫原性組成物を哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。好ましくは、抗体応答は防御および/または殺菌抗体応答である。
本発明は、ナイセリア属(例えば髄膜炎菌)による感染から哺乳動物を防御するための方法であって、本発明に係る免疫原性組成物を哺乳動物に投与することを含む方法も提供する。
【0157】
また、本発明は、哺乳動物においてナイセリア属(例えば髄膜炎菌)による感染を予防するための薬物を製造における、上で定義されている抗原(a)、(b)および(c)の少なくとも2つの使用を提供する。
【0158】
哺乳動物は、好ましくはヒトである。ヒトは成人でもよく、または、好ましくは子供でもよい。
【0159】
本発明に係る免疫原性組成物は治療に(すなわち、既存の感染症を処置するために)、または予防的に(すなわち、将来の感染を防ぐために)用いることができる。
【0160】
これらの使用および方法は、髄膜炎(特に細菌性髄膜炎)および菌血症を含む(これらに限定されない)病気を予防/処置するのに特に有用である。
【0161】
治療的処置の有効性は、本発明に係る組成物を投与した後のナイセリア感染を監視することによって試験することができる。予防的処置の有効性は、組成物を投与した後のNMB1870に対する免疫応答をモニターして試験することができる。本発明に係る組成物の免疫原性は、それらを被験体(例えば12〜16ヶ月齢の子供、または動物モデル[160])に投与してから、血清中の殺菌性抗体(SBA)ならびに全抗莢膜IgGおよび高アビディティ抗莢膜IgGのELISA力価(GMT)など、標準的なパラメーターを測定して決定することができる。これらの免疫応答は、組成物を投与してからほぼ4週間後に決定することができ、組成物を投与する前に測定された値と比較される。少なくとも4倍または8倍のSBA増加が好適である。1用量以上の組成物が投与される場合には、投与後測定が2回以上行うことができる。
【0162】
好適な本発明に係る組成物は、患者において、ヒト被験体の許容できる割合についての各抗原成分に対する血清防御(seroprotection)に関する基準よりも高い抗体力価を付与することができる。その抗原に対して宿主がセロコンバージョンを起こすと考えられているよりも高い関連抗体力価をもつ抗原は周知であり、そのような力価は、WHOなどの機関によって公表されている。統計的に有意な被験体のサンプルの好ましくは80%よりも多くがセロコンバージョンを起こし、より好ましくは90%よりも多くが、さらにより好ましくは93%よりも多くが、もっとも好ましくは96〜100%がセロコンバージョンを起こす。
【0163】
本発明の組成物は、通常、直接患者に投与される。直接的な送達は、非経口注射(例えば皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、または組織の間質腔への注射)によって、または、直腸、口、膣、局所、経皮、鼻腔内、眼、耳、肺もしくはその他の粘膜への投与によって行うことができる。筋肉内投与は、大腿部または上腕部へが好ましい。注射は、針(例えば皮下注射用の針)によることもできるが、その代わりに針なしの注射を用いることができる。典型的な筋肉内用量は0.5mlである。
【0164】
本発明を用いて、全身および/または粘膜の免疫を誘導することも可能である。
【0165】
投薬治療は、単回投与スケジュールでも複数回投与スケジュールでも可能である。複数回投与を初回免疫スケジュールおよび/または追加免疫スケジュールで用いることも可能である。初回免疫投与スケジュールの後、追加免疫投与スケジュールを行うことができる。初回投与間の適当な時間間隔(4〜16週間)、および初回および追加免疫の間の時間間隔は慣習的に決めることができる。
【0166】
本発明に係る免疫原性組成物は、通常、医薬上許容され得る担体を含むが、この担体は、それ自体は組成物を投与される患者に対して有害な抗体の産生を引き起こすことのない、任意の物質であって、過度の毒性なしに投与することができる。適当な担体は、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性化ウイルス粒子など、大型でゆっくりと代謝される高分子でもよい。このような担体は、当業者に周知である。医薬上許容され得る担体は、水、食塩水、グリセロールおよびエタノールなどの液体を含み得る。湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質も、そのようなビヒクル中に存在させることができる。リポソームは適切な担体である。医薬上許容の担体の詳細な考察は、参考文献161で得られる。
【0167】
ナイセリア感染症は、身体のさまざまな領域に影響を与えるため、本発明に係る組成物は、さまざまな形態で調製することができる。例えば、組成物は、溶液または懸濁液いずれかの注射液として調製することができる。注射前に溶液にしたり、懸濁液にしたり、液状ビヒクルにするのに適した固体も調製することもできる。組成物は、例えば軟膏、クリームまたは粉剤として局所投与するために調製することもできる。組成物は、例えば錠剤もしくはカプセルとして、またはシロップ(必要に応じて風味付けしたもの)として経口投与するために調製することができる。組成物は、例えば吸入器として、微粉末またはスプレーを用いて肺に投与するために調製することができる。組成物は、坐剤または膣坐薬として調製することができる。組成物は、例えば点薬として鼻、耳または眼に投与するために調製することができる。
【0168】
好ましくは、組成物は滅菌されている。発熱物質を含まないものが好適である。好ましくは、例えばpH6とpH8との間、通常は約pH7に緩衝されている。組成物が、水酸化アルミニウム塩を含む場合、ヒスチジンバッファーを使用するのが好適である[162]。本発明に係る組成物は、ヒトに関して等張である。
【0169】
免疫原性組成物は、免疫学的に有効な量の免疫原、および、必要ならば、別の特定な成分のいずれかを含む。「免疫学的に有効な量」とは、その量を一回量として、または連続投与の一部として個体に投与したときに、処置または予防に効果があることを意味する。この量は、処置を受ける個体の健康および身体の状態、年齢、処置を受ける個体の分類群(例えば非ヒト霊長類、霊長類など)、抗体産生する個体の免疫系の能力、所望の防御程度、ワクチンの処方、医学的状況に関する処置医の評価、およびその他の関連要素によって変動する。この量は、日常的な試験によって決定することができる比較的広い範囲に含まれると期待される。投薬処置は、単回投与スケジュールでも、複数回投与スケジュール(例えば追加投与を含む)でもよい。組成物は、別の免疫調節剤とともに投与することができる。
【0170】
一般的に、免疫原性組成物はアジュバントを含む。組成物の効果を高めるのに好適なアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(A)MF59(マイクロフルイダイザーを用いてミクロン未満の粒子に製剤された5%スクアレン、0.5% Tween 80および0.5% Span 85)[参考文献163の第10章参照、また、参考文献164参照];(B)生物分解性および非毒性の材料(例えばポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)から形成された微粒子(すなわち、直径約100nmから約150μm、より好ましくは直径約200nmから約30μm、もっとも好ましくは直径約500nmから約10μmの粒子)(ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)であること(「PLG」)が好適で、必要に応じて(例えば、SDS(負荷電)またはCTAB(正荷電)などの陽イオン性、陰イオン性、または非イオン性界面活性剤を加えることによって)荷電表面を有する)[例えば、参考文献165および166];(C)リポソーム[参考文献163の第13および14章参照];(D)付加的な界面活性剤を欠くISCOM[参考文献163の第23章参照][167];(E)10%スクアレン、0.4% Tween 80、5%プルロニック(pluronic)ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含むSAFであって、微粒子流動(microfluidized)させてミクロン未満の乳濁液となっているか、より大きな粒子サイズの乳濁液を生成するために撹拌したもの[参考文献163の第12章参照];(F)2%スクアレン、0.2% Tween 80、およびモノホスホリリピドA(monophosphorylipid A)(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群由来の1種類以上の細菌細胞壁成分、好ましくはMPL+CWS(DetoxTM)を含むRibiTMアジュバントシステム(RAS)、(Ribi Immunochem);(G)StimulontTMとしても知られている、QuilAまたはQS21などのサポニンアジュバント[参考文献163の第22章参照];(H)キトサン[例えば168];(I)完全フロインドアジュバント(CFA)およびフロインド不完全アジュバント(IFA);(J)インターロイキン(例えば1L−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12)、インターフェロン(例えばインターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子などのサイトカイン[参考文献163の第27および28章参照]、RC529;(K)サポニン(例えばQS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて+ステロール)[169];(L)モノホスホリリピドA(monophosphorylipid A)(MPL)または3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)[例えば参考文献163の第21章参照];(M)3dMPLと、例えばQS21および/または水中油乳液を併用したもの[170];(N)必要に応じてシトシンの代わりに5−メチルシトシンが用いられる、CpGモチーフを含む(すなわち、少なくとも1個のCGジヌクレオチドを含む)、オリゴヌクレオチド[171];(O)ポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチレンエステル[172];(P)オクトキシノールと併用されるポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤[173]、あるいはオクトキシノールなどのさらなる非イオン性界面活性剤の少なくとも1種類と併用されたポリオキシエチレンアルキルエーテルもしくはエステルの界面活性剤[174];(Q)免疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えばCpGオリゴヌクレオチド)およびサポニン[175];(R)免疫刺激剤および金属塩粒子[176];(S)サポニンおよび水中油乳濁液[177];(T)大腸菌の非耐熱性エンテロトキシン(「LT」)、またはその無毒化変異体(K63またはR72変異体など)[例えば、参考文献38の第5章];(U)コレラ毒素(「CT」)またはその無毒化変異体[例えば、参考文献38の第5章];(V)二本鎖RNA;(W)水酸化アルミニウム(オキシ水酸化物を含む)、リン酸アルミニウム(ヒドロキシリン酸を含む)、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩[例えば参考文献163の第8および9章参照]、または、リン酸カルシウムなどのカルシウム塩;ならびに(X)免疫刺激剤として作用して、組成物の有効性を高めるその他の物質[例え、参考文献163の第7章参照]。アルミニウム塩(リン酸アルミニウムおよび特にヒドロキシリン酸アルミニウム、ならびに/または水酸化アルミニウムおよび特にはオキシ水酸化アルミニウム)およびMF59が非経口免疫にとって好適なアジュバントである。毒素の変異体は好適な粘膜アジュバントである。QS21は、NMB1870にとってもう一つの有用なアジュバントであって、単独または(A)から(X)までのいずれか、例えばアルミニウム塩と併用して使用することができる。
【0171】
ムラミールペプチドには、N−アセチル−ムラミール−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミール−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミール−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2 ’−ジパルミトイル−sn−グルセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)などが挙げられる。
【0172】
(タンパク質発現)
細菌の発現技術は当技術分野において公知である。細菌のプロモーターは、細菌のRNAポリメラーゼに結合して、コード配列(例えば構造遺伝子)をmRNAへと下流(3’)方向に転写開始させることができる任意のDNA配列である。プロモーターは、コード配列の5’末端付近に通常存在する転写開始領域を有する。この転写開始領域は、通常、RNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位を含む。また、細菌のプロモーターは、オペレーターと呼ばれ、隣接するRNAポリメラーゼ結合部位と重複することもあり、そこからRNA合成が開始する第2のドメインを有することもある。オペレーターは、遺伝子リプレッサータンパク質がオペレーターに結合して特定の遺伝子の転写を阻害するため、負に制御された(誘導型)転写を可能にする。オペレーターなどの負の調節エレメントがないときには構成的発現が生じ得る。さらに、あるとすれば、通常、RNAポリメラーゼ結合配列の近傍(5’)にある遺伝子活性化因子タンパク質結合配列によって正の調節が達成され得る。遺伝子活性化因子タンパク質の例は、カタボライト活性化タンパク質(CAP)であり、大腸菌(E.coli)においてlacオペロンの転写開始を助ける[Raibaudら、(1984)Annu.Rev.Genet.18:173]。したがって、制御された発現は正または負のいずれかであり、それによって転写が促進されるか抑制される。
【0173】
代謝経路酵素をコードする配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例としては、ガラクトース、ラクトース(lac)[Changら、(1977)Nature 198:1056]、およびマルトースなどの糖代謝酵素に由来するプロモーター配列などがある。別の例には、トリプトファン(trp)などの生合成酵素に由来するプロモーター配列が含まれる[Goeddelら、(1980)Nuc.Acids Res.8:4057;Yelvertonら、(1981)Nucl.Acids Res.9:731;米国特許第4,738,921号;EP−A−0036776およびEP−A−0121775]。β−ラクタマーゼ(bla)プロモーター系[Weissmann(1981)「The cloning of interferon and other mistakes.」、Interferon 3(I.Gresser編)]、バクテリオファージラムダPL[Shimatakeら、(1981)Nature 292:128]およびT5[米国特許第4,689,406号]のプロモーター系も有用なプロモーター配列を提供する。対象となる別のプロモーターは誘導型アラビノースプロモーター(pBAD)である。
【0174】
さらに、天然には存在しない合成プロモーターも細菌のプロモーターとして機能する。例えば、1つの細菌またはバクテリオファージのプロモーターの転写活性化配列を、別の細菌またはバクテリオファージのプロモーターのオペロン配列と結合させて、合成ハイブリッドプロモーターを作出することができる[米国特許第4,551,433号]。例えば、tacプロモーターは、trpプロモーターと、lacリプレッサーによって制御されるlacオペロンの配列を含むハイブリッドのtrp−lacプロモーターである[Amannら、(1983)Gene 25:167;de Boerら、(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.80:21]。さらに、細菌のプロモーターには、細菌以外の起源をもつ天然のプロモーターであって、細菌のRNAポリメラーゼに結合して転写を開始させることができるプロモーターも含まれ得る。また、非細菌由来の天然型プロモーターは、適合性のあるRNAポリメラーゼと結合して、原核生物の中でいくつかの遺伝子の高レベル発現を行わせることができる。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼ/プロモーター系は、結合したプロモーター系の例である[Studierら、(1986)J.Mol.Biol.189:113;Taborら、(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.82:1074]。さらに、ハイブリッドプロモーターも、バクテリオファージのプロモーターおよび大腸菌のオペレーター領域を含むことができる(EPO−A−0 267 851)。
【0175】
機能的なプロモーター配列以外に、効率的なリボソーム結合部位も、原核生物の中で外来遺伝子を発現させるのに役立つ。大腸菌においては、リボソーム結合部位はシャイン−ダルガルノ(SD)配列と呼ばれ、開始コドン(ATG)、および開始コドンから3から11ヌクレオチド上流のところにある長さ3〜9ヌクレオチドの配列を含む[Shineら、(1975)Nature 254:34]。SD配列は、SD配列と大腸菌16S rRNAの3’末端との間で塩基対合することによって、mRNAがリボソームに結合するのを促進すると考えられている[Steitzら、(1979)“Genetic signals and nucleotide sequences in messenger RNA“、Biological Regulation and Development:Gene Expression(R.F.Goldberger編)]。真核生物の遺伝子、および弱いリボソーム結合部位をもつ原核生物の遺伝子を発現させるため[Sambrookら、(1989)「Expression of cloned genes in Escherichiacoli.」、Molecular Cloning:A Laboratory Manual]。
【0176】
プロモーター配列は、DNA分子と直接連結させることも可能であり、その場合には、N−末端にある最初のアミノ酸は常にメチオニンであって、ATG開始コドンによってコードされている。所望であれば、N−末端のメチオニンは、臭化シアンとインビトロでインキュベートして、または、細菌のメチオニンN−末端ペプチダーゼとインビボまたはインビトロでインキュベートしてタンパク質から切断することができる(EP−A−0219237)。
【0177】
通常、細菌によって認識される転写終結配列は、翻訳終止コドンの3’側にある調節領域であり、そのため、プロモーターと一緒にコード配列の近傍に存在する。これらの配列は、該DNAによってコードされているポリペプチドに翻訳され得るmRNAの転写を指令する。転写終結配列は、多くの場合、転写の終結を補助するステムループ構造を形成することができる約50ヌクレオチドのDNA配列を含む。例には、大腸菌のtrp遺伝子およびその他の生合成遺伝子など、強いプロモーターをもつ遺伝子に由来する転写終結配列が含まれる。
【0178】
通常、プロモーター、シグナル配列(所望であれば)、対象とするコード配列、および転写終結配列を含む上記構成要素は、まとめて発現構築物に組み込まれる。発現構築物は、しばしば、細菌などの宿主中で安定して維持され得る染色体外要素(例えばプラスミド)などのレプリコンの中で維持される。レプリコンは複製系を有するため、発現のためにせよ、クローニングおよび増幅のためにせよ、原核生物宿主の中で維持することができる。さらに、レプリコンは高コピー数のプラスミドでも低コピー数のプラスミドでもよい。高コピー数のプラスミドは、一般的に、約5から約200個まで、通常は約10個から約150個のコピー数をもつ。高コピー数のプラスミドを含む宿主は、好ましくは、少なくとも約10個、より好ましくは少なくとも約20個のプラスミドを含む。宿主に対するベクターおよび外来タンパク質の効果に応じて、高コピー数のベクターまたは低コピー数のベクターのどちらを選ぶこともできる。
【0179】
あるいは、発現構築物を、組み込みベクターによって細菌のゲノムに組み込むこともできる。組み込みベクターは、通常、ベクターの組み込みを可能にする、細菌の染色体に相同な配列を少なくとも1つ含む。組み込みは、ベクター中の相同的DNAと細菌の染色体との間の組換えによって起こると考えられている。例えば、さまざまなバシラス属の菌株由来のDNAによって構築された組み込みベクターは、バシラス属の染色体に組み込まれる(EP−A−0127328)。また、組み込みベクターは、バクテリオファージまたはトランスポゾンの配列から構成することもできる。
【0180】
通常、染色体外組み込み発現構築物は、形質転換された菌株を選択するための選択マーカーを含むことができる。選択マーカーは、細菌宿主の中で発現させることができ、そして、アンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン(ネオマイシン)、およびテトラサイクリンなどの薬剤に対して細菌を抵抗性にする遺伝子を含むことができる[Daviesら、(1978)Annu.Rev.Microbiol 32:469]。また、選択マーカーは、ヒスチジン、トリプトファン、およびロイシンの生合成経路など、生合成遺伝子を含むこともできる。
【0181】
あるいは、上記構成要素には、形質転換ベクターに一緒に組み込むことのできるものもある。形質転換ベクターは、上記したように、通常、レプリコンの中で維持されているか、または組み込みベクターへと発達する選択マーカーを含む。
【0182】
発現用および形質転換用のベクターは、染色体外レプリコンであっても、組み込みベクターであっても、多くの細菌に形質転換できるよう開発されている。例えば、発現ベクターは、なかでも、以下の細菌のために開発されている。枯草菌(Bacillus subtilis)[Palvaら、(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:5582;EP−A−0036259およびEP−A−0063953;WO84/04541]、大腸菌[Shimatakeら、(1981)Nature 292:128;Amannら、(1985)Gene 40:183;Studierら、(1986)J.Mol.Biol.189:113;EP−A−0036776、EP−A−0136829およびEP−A−0136907]、クレモリス菌(Streptococcus cremoris)[Powellら、(1988)Appl.Environ.Microbiol 54:655];ストレプトコッカス・リビダンス(Streptococcus lividans)[Powellら、(1988)Appl.Environ.Microbiol.54:655]、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)[米国特許第4,745,056号]。
【0183】
外来DNAを細菌宿主の中に導入する方法は、当技術分野において周知であり、通常、CaCl2、または二価カチオンおよびDMSOなどその他の薬剤のいずれかで処理された細菌の形質転換を含む。また、エレクトロポレーションによって細菌細胞の中にDNAを導入することもできる。形質転換の手順は、通常、形質転換される細菌の種によって変化する。例えば、[Massonら、(1989)FEMS Microbiol.Lett.60:273;Palvaら、(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:5582;EP−A−0036259およびEP−A−0063953;WO84/04541、バシラス属]、[Millerら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:856;Wangら、(1990)J.Bacteriol.172:949、カンピロバクター]、[Cohenら、(1973)Proc.Natl.Acad.Sci.69:2110;Dowerら、(1988)Nucleic Acids Res.16:6127;Kushner(1978)“An improved method for transformation of Escherichia coli with ColEl−derived plasmids.Genetic Engineering:Proceedings of the International Symposium on Genetic Engineering(H.W.BoyerおよびS.Nicosia編);Mandelら、(1970)J Mol.Biol.53:159;Taketo(1988)Biochim.Biophys.Acta 949:318、エシェリキア属]、[Chassyら、(1987)FEMS Microbiol.Lett.44:173、乳酸桿菌属]、[Fiedlerら、(1988)Anal.Biochem170:38、シュードモナス属]、[Augustinら、(1990)FEMS Microbiol.Lett.66:203、スタヒロコッカス属]、[Baranyら、(1980)J.Bacteriol.144:698;Harlander(1987)”Transformation of Streptococcus lactis by electroporation,:Streptococcal Genetics(J.FerrettiおよびR.Curtiss III編);Perryら、(1981)Infect.Immun.32:1295;Powellら、(1988)Appl.Environ.Microbiol 54:655;Somkutiら、(1987)Proc.4th Evr.Cong.Biotechinology 1:412、連鎖球菌]を参照。
【0184】
(放棄)
好ましくは、本発明は以下を除外する。(a)2002年11月22日以前に公開配列データベース(例えばGenBankまたはGENESEQ)で利用可能なアミノ酸配列および核酸配列;(b)2002年11月22日以前の出願日または適用可能であれば優先日をもつ親出願に開示されているアミノ酸配列および核酸配列。特に、例えば参考文献13など、本明細書に引用されている参考文献のいずれかに記載されている配列番号エントリは除外され得る。
【0185】
(一般)
用語「含む(comprising)」は、「含有する、含む(including)」および「構成する(consisting)」を意味し、例えば、Xを「含む」組成物は、もっぱらXから構成されるか、またはさらなる何か(例えば、X+Y)を含有し得る。
【0186】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0187】
単語「実質的に」は、「完全に」を除外せず、例えば、Yを「実質的に含まない」の組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。必要に応じて、その単語「実質的に」は、本発明の規定から除外され得る。
【0188】
「配列同一性」は、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)で実行されているスミス−ウォーターマン(Smith−Waterman)同一性検索アルゴリズムによって、ギャップ出現時ペナルティ(gap open penalty)を12、ギャップ伸長時ペナルティ(gap extension penalty)を1とするアフィンギャップ検索を用いて決定される。
【0189】
血清群の後、髄膜炎菌の分類は、血清型、血清サブタイプ、そして免疫型を含み、標準的な命名法は、血清群、血清型、血清サブタイプ、そして免疫型を挙げ、それぞれを、例えばB:4:P1.15:L3,7,9というふうにコロンで区切る。血清群Bの中には、しばしば病気を引き起こす系統(過侵襲性)もあり、他よりも重篤な病状を引き起こす系統(超病原性)もあり、そして、そもそもほとんど病気を引き起こさない系統もある。7つの超病原性系統、すなわちサブグループI、IIIおよびIV−1、ET−5複合体、ET−37複合体、A4群、および系統3が認定されている。これらは、多座酵素電気泳動(MLEE)によって定義されたものであるが、多座配列タイピング(MLST)も髄膜炎菌を分類するために使用されている[参考文献16]。4つの主要な超病原性群はST32、ST44、ST8およびST11複合体である。
【0190】
用語「アルキル」は、直鎖状形態および分枝状形態の両方のアルキル基に言及する。そのアルキル基は、−O−、−NH−あるいは−S−から選択される1つ、2つ、または3つのヘテロ原子で割り込まれ得る。そのアルキル基はまた、1つ、2つ、または3つの二重結合または1つ、2つ、または3つの三重結合で割り込まれ得る。しかしながら、用語「アルキル」は、通常、ヘテロ原子の割り込み、あるいは二重結合または三重結合の割り込みを有さないアルキル基に言及する。言及がC1−12アルキルになされる場合、それは、アルキル基が1と12との間の任意の数の炭素原子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)を含み得ることを意味する。同様に、言及がC1−6アルキルにされる場合、そのアルキル基は、1と6との間の任意の数の炭素原子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6)を含み得ることを意味する。
【0191】
用語「シクロアルキル」は、シクロアルキル基、ポリシクロアルキル基、およびシクロアルケニル基、ならびにアルキル基とのこれらの組み合わせ(シクロアルキルアルキル基など)を含む。そのシクロアルキル基は、−O−、−NH−または−S−から選択される1つ、2つ、3つのヘテロ原子で割り込まれ得る。しかしながら、用語「シクロアルキル」は、通常、ヘテロ原子の割り込みを有さないシクロアルキル基に言及する。シクロアルキル基の例は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキシルメチル基、およびアダマンチル基を含む。言及がC3−12シクロアルキルにされる場合、それは、そのシクロアルキル基が、3と12との間の任意の数の炭素原子(例えば、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)を含み得ることを意味する。
【0192】
用語「アリール」は、芳香族基(フェニルまたはナフチルなど)に言及する。言及がC5−12アリールにされる場合、それは、そのアリール基が、5と12との間の任意の数の炭素原子(例えば、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)を含み得ることを意味する。
【0193】
用語「C5−12アリール−C1−6アルキル」は、ベンジル、フェニルエチルおよびナフチルメチルのような基に言及する。
【0194】
窒素保護基は、シリル基(TMS、TES、TBS、TIPSなど)、アシル誘導体(フタルイミド、トリフルオロアセトアミド、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(ZまたはCbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル(Troc))、スルホニル誘導体(β−トリメチルシリルエタンスルホニル(SES))、スルフェニル誘導体、C1−12アルキル、ベンジル、ベンズヒドリル、トリチル、9−フェニルフルオレニルなどを含む。好ましい窒素保護基はFmocである。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】図1は、NMB1870の上流領域の塩基配列を示している。
【図2】図2は、TbpBタンパク質ならびに抗原NMB2123およびNMB1870の構造を概略的に示している。リーダーペプチドおよび近傍のグリシンリッチ領域が示されている。5つの保存ボックスが異なったモチーフによって示されており、それらの位置がタンパク質配列上にマップされている。
【図3】図3は、増殖曲線とともに髄膜炎菌MC58におけるNMB1870の量が増加することを示している。
【図4】図4は、同じ期間内に上清においてNMB1870の量が増加することを示している。PorA量およびNMB1380の量は増加しない。レーンの上の数字は、培養液のOD620nm値を示している。KOは、MC58のNMB1870ノックアウト変異体を示し、Wclは全細胞ライセート対照を意味する。
【図5】図5は、抗NMB1870でプローブしたOMVを示している。
【図6】図6は、抗NMB1870を用いた、莢膜で覆われたMC58または莢膜で覆われていない変異体MC58のFACS解析を示している。
【図7】図7は、高発現性(レーン1および2)、中発現性(3および4)、および低発現性(5および6)のNMB1870発現体(expressers)の全細胞ライセートで泳動した濃度勾配SDS−PAGEゲルのウエスタンブロットである。レーン7は、MC58 NMB1870ノックアウトを含む。レーンは、以下である:(1)MC58;(2)H44/76;(3)NZ394/98;(4)961−5945;(5)67/00;(6)M1239:(7)MC58Δnmb1870。
【図8】図8は、高発現性、中発現性および低発現性の発現体、およびNMB1870ノックアウト変異体のそれぞれについて、FACおよび殺菌力価を示したものである。中発現性および低発現性の発現体は、MC58に対して91.6%適合する、同一のNMB1870アミノ酸配列を有する。
【図9】図9は、NMB1870タンパク質の距離による系統群を示す樹状図である。「1」、「2」および「3」という標識は3種類の改変体を示している。角括弧の中の数字は、樹状図の各枝に表された同一配列をもつ系統の数を示す。超病原性系統が、総数と異なるときには、その系統数を付けて示されている。B以外の血清群も示されている。血清学的解析で使用された3種類の菌株(MC58、961−5965およびM1239)およびもう一つの菌株が、丸の中に示されている。
【図10】図10は、改変体1(MC58)、改変体2(961−5965)および改変体3(M1239)の配列アラインメントである。アミノ酸番号は、成熟タンパク質の第1アミノ酸であると推定されているシステインから開始している。灰色および黒で囲んだ部分は、それぞれ保存された、同一の残基を示している。
【図11】図11は、改変体1(MC58)、改変体2(961−5965)および改変体3(M1239)の標準株を用いた、改変体1(第1列)、改変体2(第2列)および改変体3(第3列)に対する血清のFACS解析を示す。莢膜多糖に対する対照血清を第4列に示す(モノクローナル抗体Seam3)。細胞質タンパク質に対する対照血清を第5列に示す(抗NMB1380)。第6列は、各標準株のノックアウト変異体(KO)を含み、同種抗血清でプローブしている。
【図12】図12は(改変体1)は、3種類の別々のNMB1870の改変体について、多座配列タイピング(ST)によって分類した樹状図である。
【図13】図13(改変体2)は、3種類の別々のNMB1870の改変体について、多座配列タイピング(ST)によって分類した樹状図である。
【図14】図14(改変体3)は、3種類の別々のNMB1870の改変体について、多座配列タイピング(ST)によって分類した樹状図である。
【発明を実施するための形態】
【0196】
(発明の実施形態)
(血清群Bの菌株MC58におけるNMB1870−開始コドンの同定)
Institute of Genomic Research(TIGR)およびSanger Centerによってそれぞれ同定されたMenBおよびMenAのゲノム配列中にNMB1870遺伝子が同定された[2,4;NMB1870およびNMA0586]。しかし、MenBの開始コドンはMenAの開始コドンより120bp上流にあるため、ATG開始コドンの位置に関して食い違いがあった。この先行技術の両アノテーションとは対照的に、本発明は、先行技術の開始コドンよりも下流にある(MenAでは18bp下流、MenBの開始コドンでは138bp下流になる)GTGコドンを開始コドンとして位置づけていて、参考文献8と一致させる。
図1に示すように、GTGからの開始(+1)は、正確な間隔に置かれたリボソーム結合部位の存在、およびリポタンパクのシグネチャー(signature)の予測とつじつまが合う。先行技術であるTIGRのMenB開始コドンを四角で囲んで示し、SangerのMenAの開始コドンを丸で囲んで示した。逆位反復配列を水平の矢印で示す。
【0197】
NMB1870は、フルクトース−ビスホスフェートアルドラーゼ遺伝子nmb1869の終止コドンから157塩基下流に位置するモノシストロン性の遺伝子である。MenA Z2491でも、全体的な構成は類似しているが、GTG開始コドンから31塩基上流に、IS1106の内部反復領域に相同で、かつ2つの16塩基対の反復配列が隣接している186ヌクレオチドの挿入がある。推定リボソーム結合部位(斜線部)が、GTG開始コドンから8塩基対上流に存在する。配列番号75から開始して、最大で9個のミスマッチを許容するGCGFindPatternによって予測されたように、furボックス(大腸菌のfurボックス共通配列と11/19一致する[178];配列番号74および75)が、開始コドンの35bp上流に存在する。プロモーターと推定される配列も検出された。
【0198】
遺伝子およびタンパク質の配列のコンピュータによる配列解析にはGCGウィスコンシンパッケージソフト(バージョン10.0)を用いた。位置の推定にはPSORTプログラム[179]を用いた。NMB1870は、−Leu−X−X−Cys−型のリポ−ボックスモチーフであって、システインの後に、リポタンパクの外膜局在に一般的に関係するアミノ酸であるセリンが続く[180]モチーフをもつシグナルペプチドによって特徴づけられる表面露出タンパク質の典型的なシグネチャーを持っている。このリポ−ボックスは、MC58のヌクレオチド36の後ろに一塩基(G)の挿入によるフレームシフトによって、淋菌では失われており、正しいリーディングフレームは、73番目の後ろに8bpの挿入があって回復されている。
【0199】
成熟MC58タンパク質は、26,964Daの分子量と7.96のpI値をもつリポタンパクであると推定されており、リポ−ボックスモチーフの下流に4個のグリシンが存在するのが特徴である。
【0200】
PredictProteinソフトウエア[181]を用いた二次構造予測解析では、NMB1870は、大部分がベータシートから構成された球状タンパク質であることが示されている。
【0201】
(配列解析)
相同性検索には、非重複タンパク質データベースを用いたPSI−BLASTアルゴリズムが使用された。NCBIのサイトで維持されている、ヒトゲノムを含む既存の原核生物および真核生物の非重複タンパク質データベースを検索しても相同的なタンパク質は見つからなかったが、このことは、NMB1870がナイセリア属に特異的なものであることを示唆している。しかし、アクチノバシラス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)のトランスフェリン結合タンパク質TfbAのC−末端側部位にいくらかの同一性(146アミノ酸にわたって28%の同一性)をもつドメインが見つかった[183](図2)。このドメインをより詳細に見ると、N.meningtidis、インフルエンザ菌(H.influenzae)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)のトランスフェリン結合タンパク質との相同性、および、以前TbpBのホモログであるとアノテーションされたN.meningtidisの表面抗原NMB2132[3]との相同性が明らかになった。
【0202】
この配列相同性が、機能的な相同性を反映しているか否かを確認するために、組換えNMB1870(下記参照)、ヒトトランスフェリンhTF(Sigma T−4132)、およびこれら2つの混合物(最終濃度7μM)をPBS中4℃で一晩(O/N)透析した。透析の後、各タンパク質およびそれらの混合液を20μlずつ、泳動バッファーとしてPBSを用いたHPLC Superdex 2000 PC 3.2/30ゲル濾過カラム(Amersham)でロードした[187]。ブルーデキストラン2000(Blue Dextran 2000)ならびに分子量スタンダードであるリボヌクレアーゼA、キモトリプシンA、オボアルブミンA、ウシ血清アルブミン(Amersham)を用いてカラムを較正した。流速0.04ml/分で、また溶出された物質を214nmおよび280 nmで観察しながらSmartシステムを用いてゲル濾過を行った。(NMB1870保持容量は、1.68mlで、htfについては1.47mlであった。)40μlの画分を集めてSDS−PAGEで解析した。MC58の組換えトランスフェリン結合タンパク質2(Tbp2)を陽性対照として使用した。
【0203】
組換えタンパク質は、インビボでヒトトランスフェリンに結合できなかった。
【0204】
プロモーター中のFurボックスは、NMB1870の発現が鉄によって調節されている可能性があることを示唆している。しかし、このタンパク質の発現は、鉄濃度が低い状態では増加するようには見えない。
【0205】
このタンパク質の興味深い特徴は、脂質化されたシステインの下流に4個のグリシン鎖が存在することである。脂質化されたシステインの下流に3個以上グリシンが連続しているのは、N.meningtidisの別の5つのリポタンパク、すなわちトランスフェリン結合タンパク質B(TbpB)、ABC輸送タンパク質NMB0623の外膜成分、仮定的タンパク質NMB1047、TbpBホモログNMB2132、およびAspAリポタンパクでも見られる[188]。これらのタンパク質のいずれにおいても、ポリ−グリシン鎖はポリ−Gトラクト(tract)によってコードされておらず、この特徴が抗原による免疫調節を生じさせるためには利用されていないことを示唆している。
【0206】
グリシンリッチ領域によるリポタンパクの検索を、NCBIサイト[181]で探し出した22種類の完全ゲノム配列に対してFindPatternを用いて実施した。この検索によって、すべてではないがいくつかの細菌種において29種類のリポタンパクを探し出した。このタイプのリポタンパクをもつ生物には、Haemophilus influenzae、Enterococcus fecalis、Mycobacterium tuberculosis、Lysteria monocytogenes、およびStaphylococcus aureusを含む、グラム陰性菌もグラム陽性菌も含まれていたが、一方で、E.coli、Bacillus subtilis、Helicobacter pylori、Streptococcus pneumoniae、S.pyogenesおよびVibrio choleraeは有していなかった。このシグネチャーをもつリポタンパクのほとんどは、ABC輸送タンパク質に属し、したがって、未知の機能をもつタンパク質であった。一次構造におけるこの共通の特徴は、グリシン反復には共通の役割があることを示唆しているが、これまでのところその機能は分かっていない。しかし、分泌および表面局在の特異的経路にリポタンパクを導く働きをしている可能性がある[190]。
【0207】
(他の菌株の配列決定)
N.meningitidis集団の遺伝的および地理的な多様性を代表する70菌株を選んで、さらにNMB1870について調べた。菌株は、19か国に由来し、73%が血清群Bに属し、32菌株が過去5年間に単離されたものであった。この菌株パネルは、ほとんどが血清群Bの菌株を含んでいて、数菌株が血清群A、C、Y、W135およびZで、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)とナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)がそれぞれ1菌株ずつである。菌株については、参考文献191および192により詳しく開示されている。ATCCから入手可能な菌株もある(例えば、菌株MC58は参照番号BAA−335として入手可能である)。
【0208】
コード配列の外側にあるプライマーを使用して、NMB1870遺伝子を増幅した(A1、配列番号55;およびB2、配列番号56)。約10ngの染色体DNAを増幅のための鋳型として用いた。PCR条件は、94℃で40秒、58℃で40秒、68℃で40秒を30サイクル。PCRフラグメントを、QiagenのQIAquick PCR精製キットで精製し、ABI 377自動配列決定装置を使用して行われる配列解析に付した。配列決定は、プライマーA1、B2、22(配列番号57)および32(配列番号58)を用いて行った。
【0209】
ナイセリア属の70菌株すべてでPCRによって遺伝子が検出された。Neisseria lactamicaでは、ウエスタンブロッティングによってバンドは検出されたが、遺伝子は増幅されなかった。
【0210】
70菌株すべてで遺伝子のヌクレオチド配列を決定した。全部で23種類の異なったタンパク質の配列がコードされていた(配列番号1から23)。KimuraとJukes−Cantorのアルゴリズムを用いた、これら23の配列のコンピュータ解析によって、これらの配列が3種類の改変体に分けられた(図9)。NMB1870タンパク質配列の多重配列アラインメント(PileUP)から開始し、系統樹推定パッケージ(Phylogeny Inference Packag:Phylip)の中で利用可能なプログラムであるタンパク質配列節約法(Parsimony method)(ProtPars)を用いて樹状図を得、KimuraとJukes−Cantorのアルゴリズムを用いたGCGのプログラムDistanceによって確認した。
【0211】
さらに100菌株からNMB1870の配列を決定した。これらの多くは、配列番号1から23のいずれか一つと同一であったが、さらに19のユニークな配列が配列番号140から158として与えられた。
【0212】
図12〜14は、ST多座配列タイプによって分類された、さまざまな配列の樹状図を示している。改変体1(図12)の中で、参照菌株はMC58であり、参照菌株に対してもっとも低い配列同一性が89.4%であり、平均は93.7%であった。改変体2(図13)において、参照菌株は2996であり、配列同一性は最低93.4%に伸びる(平均96.3%)。改変体3(図14)において、参照菌株M1239に対してもっとも低い配列同一性は94.7%であった(平均95.8%)。ST32cpxが、最も均質な超病原性クラスターであり、改変体1由来のNMB1870配列を1種類だけ有する(またNMB1343およびNadAの一つの形態だけ)。ほとんどのST44cpx菌株は、NMB1870の改変体1(いくつか異なる配列)をもつが、いくつかの菌株は改変体3(単一の配列)を有する。これらのデータは、ST32cpxが、他のクラスターと比較するとST44cpxに近縁であることを示唆しているが、このことは、porA遺伝子型(クラスIII)に基づいたデータと合致する。ST11およびST8の複合体は、その大分部が、NMB1870の改変体2の中のさまざまな配列によって表され、これらの複合体が、他のクラスターと比較するとともに近縁であり、porA遺伝子型(クラスII)と適合する。ST11cpxは、3つの改変体すべてを含み、4つのうちもっと多様な超病原性クラスターであることを示している。
【0213】
菌株MC58、961−5945およびM1239が、それぞれ改変体1、2および3の標準菌株として任意に選ばれた。この3種類の標準菌株の間における配列多様性を図10に示す。アミノ酸の同一性は、改変体1と改変体2の間では74.1%、改変体1と改変体3の間では62.8%、また改変体2と改変体3の間では84.7%であった。各改変体内では配列はよく保存されており、最も遠いものでも、それらの標準菌株に対してそれぞれ91.6%、93.4%および93.2%の同一性であった。ナイセリア・シネレアは改変体1に属し、MC58に96.7%の同一性をもつ。図9に示されているように、改変体1は、超病原性系統ET−5に由来する全ての菌株、ほとんどの系統3菌株、血清群Aの菌株、W−135の最近の単離物2つ、およびET−37の一つを含む。改変体2は、超病原性複合体A4、血清群YおよびZ、古いW−135単離物の一つ、および5つのET−37菌株を含む。改変体3は、4つのユニークなST菌株、1つのET−37菌株、1つの系統3菌株および淋菌を含む。
【0214】
各改変体群における菌株、およびそれらのNMB1870配列は以下の通りである。
【0215】
【化10−1】
【0216】
【化10−2】
配列番号139(菌株220173i)、140(菌株gb101およびISS908)および141(菌株nge31)は、これら3種類の改変体から離れている(それほどではないが、菌株m3813も同様である)。
【0217】
改変体1において、菌株lnp17592の配列(菌株00−241341、00−241357、2ND80、2ND221およびISS1142にも見られる)が、W−135 Haji血清群にも見られる。Haji菌株の中では、NadAの配列(配列番号143)がアレル2と3の組換えである[191、192]。
【0218】
(E.coliにおけるクローニング、発現、および精製)
N.meningtidisのMC58、961−5949およびM1239の菌株のゲノムからPCRでNMB1870遺伝子を増幅した。フォワードプライマーとリバースプライマーは、推定リーダーペプチドをコードする配列を含まないようにnmb1870コード配列を増幅するために設計した。M1239および961−5945の改変体は、E.coliでは発現可能でないことが分かった。したがって、淋菌のタンパク質には存在するが、髄膜炎菌の対応タンパク質には存在しない配列番号46の配列をN−末端に付加して発現させた。増幅に使用されたオリゴヌクレオチドは以下のとおりである。
【0219】
【化11】
フォワードプライマーについてはNdeIおよびリバースプライマーについてはXhoI(M1239についてはHindIII)に相当する制限酵素部位を下線で示した。961−5949およびM1239のフォワードプライマーについては、淋菌の配列部分をイタリック体で示し、髄膜炎菌のNMB1870と一致する配列を太字で示した。
【0220】
プライマーの組み合わせがFor1/Rev1である場合のPCR条件は、94℃で30秒間変性、57℃で30秒間アニーリング、68℃で1分間伸長反応(5サイクル)、94℃で30秒間変性、68℃で30秒間アニーリング、68℃で1分間伸長反応(30サイクル)である。プライマーの組み合わせがFor2/Rev2およびFor3/Rev2およびFor3/Rev358℃である場合、94℃で30秒間、56℃で30秒間、68℃で1分間(5サイクル)、94℃で30秒間、71℃で30秒間アニーリング、68℃で1分間(30サイクル)である。
【0221】
以下のプライマー:f−lFor
【0222】
【数1】
およびf−lRev
【0223】
【数2】
を用い、以下の条件:94℃で30秒間、58℃で30秒間、72℃で1分間(30サイクル)を用いて、MC58のゲノムから全長のnmb1870遺伝子を増幅した。
【0224】
高忠実度Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を用いて、約10ngの染色体DNAに対してPCRを行った。PCR産物をNdeIおよびXhoIで消化して、pET−21b+発現ベクター(Novagen)のNdeI/XhoI部位にクローニングした。
【0225】
組換えタンパク質を、Hisタグ化融合タンパク質として大腸菌のなかで発現させ、前述したように[3]MCAC(金属キレートアフィニティークロマトグラフィー)で精製し、マウスを免疫するために使用して抗血清を得た。大腸菌DH5αをクローニング操作に使用し、BL21(DE3)を発現に使用した。
【0226】
(nmb1870およびsiaDの同系変異体)
菌株MC58、961−5945およびM1239をプラスミドpBSΔnmb1870ERMで形質転換して、nmb1870遺伝子を切断してエリスロマイシン抗生物質カセットによって置換した同系のノックアウト変異体を調製した。このプラスミドは、nmb1870の下流および上流にある500bpの隣接領域にエリスロマイシン抵抗性遺伝子を含んでいる。これらの領域を、以下のオリゴヌクレオチド、Ufor
【0227】
【数3】
(配列番号59、Xba1部位を下線で示す);URev
【0228】
【数4】
(配列番号60、Sma1部位を下線で示す);DFor
【0229】
【数5】
(配列番号61,Sma1部位を下線で示す)、およびDrev
【0230】
【数6】
(配列番号62、Xho1部位を下線で示す)を用いて、MC58のゲノムから増幅した。同じ方法で莢膜欠損変異体を作出した。siaD遺伝子を欠失させ、プラスミドpBSΔCapERMを用いて、ermCで置き換えた。それぞれ1000bpおよび1056bpの上流および下流の隣接領域を、以下のプライマー:UCapFor
【0231】
【数7】
(配列番号63、Xbal部位を下線で示す);UcapRev
【0232】
【数8】
(配列番号64、Smal部位を下線で示す);DCapFor
【0233】
【数9】
(配列番号65、Smal部位を下線で示す)およびDCapRev
【0234】
【数10】
(配列番号66、Xhol部位を下線で示す)を用いて、MC58のゲノムから増幅した。増幅されたフラグメントをpBluescriptにクローニングして、天然のコンピテントであるN.meningtidisの菌株MC58に形質転換した。この混合物をGC寒天プレートにスポットして、5%CO2下37℃で6時間インキュベートしてから、PBSに希釈して、5μg/mlのエリスロマイシンを含むGC寒天プレートに塗布した。菌株MC58Δnmbl870、961−5945Δnmbl870およびM1239Δnmbl870におけるnmb1870の欠失がPCRによって確認され、ウエスタンブロット解析によってNMB1870が発現しないことが確認された。MC58ΔsiaD菌株において、siaD遺伝子が欠失していることおよび莢膜が発現しないことを、それぞれPCRおよびFACSによって確認した。
【0235】
(リポタンパク)
NMB1870の脂質化を調べるために、参考文献193に記載されているように、全長nmb1870遺伝子をもつ組換えE.coli BL21(DE3)菌株によるパルミチン酸の取り込みを調べた。
【0236】
髄膜炎菌の菌株MC58とMC58Δnmbl870をGC培地で増殖させて、[9,10−3H]−パルミチン酸(Amersham)で標識した。5mlの培地からの細胞を10分間煮沸して溶解し、13,000rpmで遠心分離した。上清をTCAで沈殿させ、冷アセトンで2回洗浄した。タンパク質を、50μlの1.0%SDSに懸濁して、15μlをSDS−PAGEで分析し、クマシー・ブリリアントブルーで染色し、固定して、Amplify溶液(Amersham)に15分間浸した。ゲルをHyperfilm MP (Amersham)に−80℃で3日間暴露した。
【0237】
MC58では適正な分子量の放射活性バンドが検出されたが、Δnmbl870ノックアウト変異体では検出されなかった。
【0238】
[9,10−3H]−パルミチン酸存在下で増殖させた組換えE.coliも、期待された分子量のところに放射活性バンドを生じた。これにより、E.coliがリポタンパクモチーフを認識して、組換えタンパク質に脂質テイルを付加することが確認された。
【0239】
(タンパク質の検出)
菌株MC58を定常期にGC培地において5%CO2下37℃で増殖させた。増殖中(OD620nm 0.05−0.9)に試料を集めた。MC58Δnmbl870をOD620nm 0.5まで増殖させた。細菌の細胞を遠心分離によって集めて、PBSで1回洗浄し、OD値を標準化するために、さまざまな容量のPBSに再懸濁した。0.2μmのフィルターを用いて培養上清を濾過し、250μlの50%トリクロロ酢酸(TCA)を添加して1mlを沈殿させた。試料を氷上で2時間インキュベートし、4℃で40分間遠心分離し、沈殿物を70%氷冷エタノールで洗浄し、PBSに再懸濁した。そして、試料(OD620 0.03に相当)それぞれ3μlを、12%ポリアクリルアミドゲルで泳動して、ニトロセルロース膜に電気的に転移させた。
【0240】
E.coliで発現したタンパク質に対して惹起されたポリクローナル抗体を1:1000の希釈率で用い、次いでHPR−標識された抗ヒトIgG(Sigma)を1/2000に希釈したものを用いて、標準的な方法でウエスタンブロット解析を行った。LabScan(Pharmacia)およびImagemasterソフトウエア(Pharmacia)を用いてスキャンを行った。
【0241】
図3に示すように、N.meningitidisの全細胞抽出物から約29.5kDaのタンパク質を検出した。培養液の光学密度が0.05から0.9 OD620nmに増加する一方で、全細胞ライセートにおけるタンパク質の量は、増殖曲線の過程でほぼ2倍になった。培養上清においても、同じサイズのバンドが検出された。植菌されたばかりの培養液(OD620nm 0.05)の上清ではタンパク質は検出されなかったが、0.1から0.9 OD620nmに増加する間に約4倍に増加した(図4、左側パネル)。上清における発現の真の性質が、同じ試料を膜小胞および細胞質タンパク質について調べることによって確認された。図4の中央パネルに示されているように、PorAの上清調製物にはPorAが存在しないことは、膜小胞による汚染の可能性を排除する一方で、細胞質タンパク質NMB1380が上清中に存在しないことで、上清試料が、細胞溶解からもたらされたものでないことを確認した(右側パネル)。
【0242】
MC58Δnmbl870ノックアウト菌株は、全細胞ライセートにおいても、培養上清(図3および4の「KOレーン」)においてもタンパク質を示さなかった。
【0243】
外膜ベシクルでNMB1870を検出し、このタンパク質が、N.meningitidisの膜画分とともに分離することが確認された(図5)。しかし、OMVで免疫されたマウスからの血清は、ウエスタンブロッティングでは組換えNMB1870を認識せず、このタンパク質がOMV調製物においては免疫原性がないことを示唆している。
【0244】
抗NMB1870抗体を用いたFACS解析によって、該タンパク質は表面露出しているため、莢膜型および無莢膜型のN.meningitidis菌株の両方において抗体が結合できることが確認された(図6)。FACS解析は、二次抗体の抗マウス(全分子)FITC−結合体(Sigma)を用いて検出される抗体結合とともにFACS−Scanフローサイトメーターを用いた。陽性のFACS対照には、髄膜炎菌Bの莢膜ポリ多糖に特異的なモノクローナル抗体であるSEAM3[194]を用い、陰性対照は、細胞質タンパク質NMB1380に対するマウスのポリクローナル抗血清からなっていた[195]。
【0245】
43菌株のウエスタンブロッティングによって、試験した菌株のすべてによってNMB1870が発現されることが示された。しかし、図7に示されているように、発現レベルは、菌株によってかなり変動した。調べた菌株は、高度、中度および低度の発現株に大きく分類できる。
【0246】
【化12】
2つの菌株では中度レベルで発現し、2つの菌株では低レベルで発現したA4以外では、超病原性系統に由来する菌株(ET−5、系統3、ET−37)のほとんどは、タンパク質を高レベルで発現させた。興味深いことに、このタンパク質は、従来OMVワクチン株として用いられてきた菌株によって高レベルで発現された。各菌株によって発現されるタンパク質の量を予測するための明確な遺伝子パターンは見つからなかった。プロモーター領域にISエレメントが存在していても(これは8/70の菌株(1つは血清群A由来、3つは系統3に由来し、4つは別のものとして分類されたものである)で発見されたのであるが)、タンパク質の発現とは何の相関も示さなかった。
【0247】
ウエスタンブロットをスキャンしたところ、高度と中度の間、中度と低度の間、または高度と低度の間では、それぞれ発現に2倍、5倍、および9倍の違いがあり得ることが明らかになった。発現レベルが異なることについて、すぐに分かる理由はなく、また、遺伝子の上流にあるDNA配列の解析によっても、発現と相関する特徴は何も見られなかった。
【0248】
(抗体応答)
健康な被験者および回復期にある被験者からの血清を、ウエスタンブロットによって抗NMB1380抗体について解析した。精製したNMB1870(1μg/レーン)を12.5%SDS−ポリアクリルアミドゲルで泳動し、ニトロセルロース膜に移した。結合したタンパク質を、血清の1/200希釈液で、次いでHPR−標識された抗ヒトIgG(Sigma)を1/2000に希釈したもので検出した。健康な人々からの血清の2/10だけがNMB1870を認識し、回復期血清の21/40は該タンパク質を認識したことから、NMB1870は、感染期間中インビボで免疫原性をもつとの結論に達した。したがって、組換えで免疫したマウスの抗血清をさらに調べた。
【0249】
抗血清を調製するために、20μgの改変体1、改変体2および改変体3のNMB1380組換えタンパク質を用いて、6週齢のCD1メスマウス(Charles River)を免疫した。1群につき4から6匹を用いた。組換えタンパク質は、初回投与には完全フロインドアジュバンド(CFA)とともに、第2回(21日目)および第3回(35日目)の追加免疫にはフロインド不完全アジュバント(IFA)とともに腹腔内に投与した。フロインドアジュバンドの代わりに水酸化アルミニウムアジュバント(3mg/ml)用いて同じ免疫スケジュールを行った。解析のための血液試料は49日目に採取した。
【0250】
前述したように[3、196]、抗血清が、補体介在による莢膜型髄膜炎菌株の殺菌を誘導できるかを、補体の供給源として用いられる仔ウサギ血清のプール(CedarLane)を用いて調べた。健康なヒト成人由来の血清(最終濃度25または50%で調べても内因性の抗菌活性はない)も補体の供給源として用いた。血清の抗菌力価は、細菌を反応混合物とインキュベートして60分後に1mlあたりのコロニー形成単位(CFU)が、時間0での1mlあたりの対照のCFUと比較して50%減少するという結果をもたらす血清希釈と定義されていた。典型的には、補体存在下で陰性対照抗体とインキュベートされた細菌は、60分間のインキュベーションの間にCFU/mlの150から200%の上昇を示した。
【0251】
高度、中度および低度の発現体の代表的菌株をアッセイのために選んだ。FACS解析によって、選択された菌株の表面上でのタンパク質の示差的発現を確認した(図8)。すなわち、高発現菌株の代表であるMC58は、1/64,000まで希釈した血清によっても高効率で殺菌された。中度発現菌株の代表であるNZ394/98(元来NZ98/254)は、1/16,000まで希釈した血清によっても高効率で殺菌された、さらに、低発現菌株の代表である菌株67/00も、1/2,048まで希釈した血清によって殺菌された。nmb1870遺伝子がノックアウトされている対照菌株は、同じ血清によって殺菌されることはなかった。
【0252】
これらの血清が、インビボでも防御を付与できるか否かを確かめるために、幼ラットモデルにおいて受動防御を誘導できるか調べた。5日齢の幼ラットを、時間0において、抗NMB1870抗血清、または抗PorAモノクローナル抗体で腹腔内的に予め処理し、2時間後、5×103CFU/ラットのMenC 4243(OAc−陽性)またはMenB NZ394/98を腹腔内にチャレンジした。24時間後に定量的な血液培養物が得られた。チョコレート寒天プレートに塗布することによって、血液培養液中の細菌計測数(CFU/ml、相乗平均)が得られた。陽性対照血清は、MenCに対しては抗PorA(P1.2)で、MenBに対してはSEAM3であった。実験の結果は以下のとおりであった。
【0253】
【化13】
したがって、陰性対照の動物のほとんどが菌血症になった一方で、抗NMB1870血清で受動免疫したラットの血液からは細菌のコロニーは回収されなかった。
【0254】
(殺菌活性は改変体特異的である)
各型の改変体を、Hisタグ化タンパク質としてE.coliで発現させ、マウスを免疫するために使用した。これらの血清は、FACSおよび殺菌アッセイ法によって、3種類の改変体の菌株間における免疫学的交差反応性を試験するために使用された。図11に示すように、FACS解析によって、すべての菌株が各血清によって認識されたが、認識の程度はかなり変動し、これは通常、タンパク質間のアミノ酸相同性を反映する。
【0255】
より詳しく解析すると、抗改変体1の血清(図11,第1行)は、(予想どおり)MC58菌株を非常によく認識し、より低い程度で961−5945菌株(74.1%同一性)を、またより小さい範囲でM1239菌株(62.8%同一性)を認識した。同様の傾向が、改変体2および改変体3に対する血清にも見られた(図11,第2行および第3行)が、抗改変体2の血清を用いた場合には、その違いはそれほど顕著ではなかった。
【0256】
莢膜に対するモノクローナル抗体は、3つの菌株すべてを等しく十分に認識したが(第4行)、陰性対照として用いられた細胞質タンパク質NMB1380に対する血清は、どれも認識しなかった(第5行)。同様に、nmb1870ノックアウト変異体は、いずれの血清によっても認識されなかった(第6行)。
【0257】
改変体間における免疫認識の違いは、殺菌アッセイ法によってより明らかになった。
【0258】
【化14】
これらのデータは、各改変体に対する血清が、同種菌株の有効な補体媒介性の殺菌を誘導できたことを示している(力価は16,000と64,000との間の範囲)が、一方で別の改変体の菌株に対しては活性が低い(128〜2,048)か、なかった(<4)。緊密なアミノ酸相同性から予測されるように、改変体2および3の間の交差殺菌力価は、他のものよりは高かった。ヒト補体を使用したときは、同種の標準菌株を用いて、改変体1、2および3それぞれについて、4,096、256および512という殺菌力価が得られた。異種菌株に対しては、力価は検出されなかった。
【0259】
(ハイブリッドタンパク質およびタンデムタンパク質)
ハイブリッドタンパク質およびタンデムタンパク質は、NH2−A−[−X−L−]n−B−COOHという式で表すことができる。このタイプのさまざまなタンパク質をコードする遺伝子を構築した。ここで、n=2、X1およびX2のN末端は、それらのポリ−グリシン領域までを欠失しており、また−L1−および−B−は存在しない(または、Bは、精製に用いるポリ−ヒスチジンタグである)。以下の表は、成熟形態における、これらのタンパク質の成分を示し、また、全長ポリメラーゼの配列番号、および、成分配列A、X1、L1およびX2に対する配列番号と菌株を示している。
【0260】
【化15】
したがって、これら12種類のNMB1870タンパク質のうち、8種類はタンデムタンパク質(MWほぼ55kDa)であり、4種類は、N−末端に「9362996」を有するハイブリッドタンパク質(MWほぼ49kDa)である。以下の2種類のリンカーを使用した。(a)淋菌のNMB1870ホモログ(配列番号46)に由来する配列番号78;および(b)グリシンリッチリンカー(配列番号144)。配列番号78は、その2つのBamHI残基(Gly−Ser)を除いて、成熟タンパク質のN−末端にも用いられた。すなわち配列番号86である。
【0261】
12種類のタンパク質は、大腸菌で発現されるとすべて可溶性であり、精製後、マウスを免疫するために使用された。最大4種類の髄膜炎菌の菌株に対して血清の殺菌抗体(SBA)反応を評価して、3種類のNMB1870改変体1から3のそれぞれから一つを確定した(上付の添え字で示す)。アジュバントは、CFA(上)または水酸化アルミニウム(下)のどちらかであった。
【0262】
【化16】
これらの結果は、免疫反応の改変体特異的な性質を明確に示している。例えば、タンパク質(1)および(2)は、NMB1870の改変体1および2に由来する配列を含んでおり、最善のSBAの結果が、これら2つの改変体に対して見られる。同様に、タンパク質(3)および(4)を用いるときに、最善の結果が改変体1および3に対して見られる。改変体2および3からのNMB1870を用いると、N−末端からC−末端どちらの順序でも優れた活性が見られ、タンパク質(5)および(8)を用いると、改変体1に対してほとんど活性をもたない。「936」部分によって提供されている抗2996活性をいくらかもつハイブリッドタンパク質を用いると、NMB1870応答の改変体特異的な性質も明らかになる。
【0263】
以下のオリゴヌクレオチドプライマーは、12種類のタンパク質を構築する際に用いた。
【0264】
【化17】
三重のタンデムタンパク質(Triple tandem protein)
n=3である、「三重のタンデム」タンパク質を、菌株(1)MC58、(2)2996および(3)m1239に基づいて構築した。757merの三重タンデムタンパク質NH2−A−X1−L1−X2−L2−X3−L3−B−COOHは、配列番号142のアミノ酸配列を有する。
【0265】
【化18】
X2およびX3は、どちらもそれらのポリ−グリシンリッチ領域までN−末端を欠いている(すなわち、ΔG配列となっている)。
【0266】
(殺菌性SBA力価)
9種類の異なったタンパク質でマウスを免疫し、得られた血清の殺菌活性を、免疫に用いたタンパク質が由来した菌株と一致する菌株、免疫に用いたタンパク質とは異なる菌株の両方を含む、髄膜炎菌のさまざまな菌株に対して試験した。9種類のタンパク質は、以下であった:
(A)、(B)および(C)936とNMB1870とのハイブリッドタンパク質
(A)NMB1870MC58=改変体1[12]
(B)NMB18702996=改変体2、例えば配列番号91および92
(C)NMB1870M12239=改変体3、例えば配列番号91および92
(D)、(E)および(F)単一の菌株由来のNMB1870
(D)NMB1870MC58=改変体1、例えば、配列番号80
(E)NMB18702996=改変体2、例えば配列番号81
(F)NMB1870M1239=改変体3、例えば配列番号84
(G)、(H)および(I)NMB1870のタンデムタンパク質
(G)NMB1870MC58−NMB18702996=改変体1および2、例えば、配列番号79および82
(H)NMB18702996−NMB1870M1239=改変体2および3、例えば配列番号87および88
(I)NMB1870MC58−NMB1870M1239=改変体1および3、例えば配列番号83および85
NMB1870の改変体1を有する最大20までの菌株に対する、NMB1870の改変体2を有する最大22までの菌株に対する、および改変体3を有する最大5個までの菌株に対する、殺菌応答を測定した。
【0267】
タンパク質(A)〜(C)に対して惹起された血清の殺菌作用は、被験菌株の遺伝子型と適合した。例えば、CFAを免疫のためのアジュバントとして使用すると、菌株MC58(改変体1)に対するSBA力価は、(A)262144;(B)<4;(C)<4であった。同様に、菌株961−5945(改変体2)に対して血清を試験すると、SBAは、(A)256;(B)32768;(C)4096であった。最後に、菌株M1239(改変体3)の力価は、(A)<4;(B)512;(C)32768であった。
【0268】
CFAまたは水酸化アルミニウムをアジュバントとして使用したところ、タンパク質(A)は、以下の菌株に対して512以上のSBA力価を生じた:M01−240185、M2197、LPN17592、M6190(すべてET37);MC58、BZ83、CU385、N44/89、44/76、M2934、M4215(すべてET5);BZ133、M1390、ISS1026、ISS1106、ISS1102(系統3);F6124(sIII);およびM2937(その他)。これらの菌株は、血清群A、B、CおよびW135をカバーしているが、血清群Yの菌株は試験しなかった。
【0269】
CFAまたは水酸化アルミニウムをアジュバントとして使用したところ、タンパク質(B)は、以下の菌株に対して512以上のSBA力価があった:2996、961−5945、96217(A4群);M01−240013、C11、NGH38、M3279、M4287、BZ232(その他)。これらの菌株は、血清群B、およびCをカバーしているが、血清群A、W135またはYの菌株は試験しなかった。
【0270】
CFAまたは水酸化アルミニウムをアジュバントとして使用したところ、タンパク質(C)は、以下の菌株に対して512以上のSBA力価があった:M01−0240364、NGP165(ET37);M1239(系統3);M01−240355、M3369(その他)。これらの菌株は、血清群Bであり、カバーしているが、血清群A、C、W135またはYの菌株は試験しなかった。
【0271】
タンパク質(A)から(C)で見られるSBAパターンが、タンパク質(D)から(F)でも見られた。菌株MC58に対して、タンパク質(D)を用いて得られた血清と水酸化アルミニウムアジュバントは、16384というSBA力価をもたらしたが、一方で、タンパク質(E)または(F)を用いて得られた血清と同じアジュバントとは、4より低いSBA力価をもたらした。菌株961−5945に対して、タンパク質(D)または(F)の血清は、(E)を用いて得られた力価よりも低い力価を生じた。菌株M1239に対しては、SBA力価は、(D)<4;(E)128;(F)16384であった。
【0272】
タンデムタンパク質によってSBAの有効性が広がった。タンパク質(G)を用いて得られた血清は、菌株MC58と961−5945に対する殺菌作用があり、また、NMB1870の改変体1または改変体2を有する他の菌株も同様であった。タンパク質(H)に対する血清は、NMB1870の改変体1を有する菌株に対しては低い力価しか与えなかったが、他の菌株、例えば、菌株961−594(改変体2)に対する16384、および菌株M3369(改変体3)に対する32768に対しては高い力価を与えた。
【0273】
CFAアジュバント化タンパク質(H)で免疫して得られた血清は、LNP17094、96217、961−5945、2996、5/99(A4群);C4678、M01−0240364、NGP165(ET37);M1239(系統3);M2552、BZ232、M3279、M4287、1000、NGH38、Cll、M01−240013、M01−240355、M3369(その他)に対して512以上のSBA力価を与えた。これらの菌株は、血清群B、およびCをカバーしているが、血清群A、W135またはYの菌株に対する活性はタンパク質(H)を用いて試験しなかった。
【0274】
CFAアジュバントによるタンパク質(I)で免疫して得られた血清は、M01−0240364、14784、M6190、MC58、LPN17592、M2197(ET37);44/76(ET5);M1239、ISS1102、ISS1106、ISS1026、394/98(系統3);M2937(その他)に対して512以上のSBA力価を与えた。これらの菌株は、血清群B、CおよびW135をカバーしているが、血清群A、またはYの菌株に対する活性はタンパク質(I)を用いて試験しなかった。
【0275】
NMB1870の改変体1を含むタンパク質によって免疫した後、改変体1のNMB1870をもつ、最大20までの菌株に対して試験された血清は、以下のSBA力価を与えた。
【0276】
【化19】
NMB1870の改変体2を含むタンパク質によって免疫した後、改変体2のNMB1870をもつ、最大20までの菌株に対して試験された血清は、以下のSBA力価を与えた。
【0277】
【化20】
NMB1870の改変体3を含むタンパク質によって免疫した後、改変体3のNMB1870をもつ、最大5までの菌株に対して試験された血清は、以下のSBA力価を与えた。
【0278】
【化21】
(結論)
まず、NMB1870は、広範な免疫のために有用な抗原とは考えられない。その発現レベルは菌株間で変動し、顕著な配列多様性があり、また、異なった改変体との間で交差防御が起こらない。しかし、この抗原を非常に低いレベルでしか発現しない菌株でさえも、抗NMB1870血清には感受性であることが明らかにされた。さらに、配列の多様性は、3種類の変異型に限られるため、多数の抗原を必要としないで広範な免疫を達成することができる。さらに、これら3つのタンパク質は、血清群Bの髄膜炎菌だけでなく、より多くの髄膜炎菌に対する免疫を提供できると考えられる。
【0279】
1種類以上の改変体に対して活性のある単一のポリペプチド鎖をもたらすために、NMB1870のさまざまな改変体を融合タンパク質として発現させることができる。
【0280】
NMB1870は、感染の過程では免疫原性であり、殺菌性抗体を誘導することができ、また、幼ラットを細菌による攻撃から保護することができる。
【0281】
NMB1870に関するさらなる実験情報は、参考文献197に記載されている。
【0282】
以上の説明は本発明を例示するだけのものであり、本発明の範囲および精神を残したまま、各種の改変が行われ得る。
【0283】
(配列表の簡単な説明)
【0284】
【化22】
(参考文献:これらの内容は、本明細書において全てを参考として援用される)
【0285】
【数11−1】
【0286】
【数11−2】
【0287】
【数11−3】
【0288】
【数11−4】
【0289】
【数11−5】
(配列表)
【0290】
【数12−1】
【0291】
【数12−2】
【0292】
【数12−3】
【0293】
【数12−4】
【0294】
【数12−5】
【0295】
【数12−6】
【0296】
【数12−7】
【0297】
【数12−8】
【0298】
【数12−9】
【0299】
【数12−10】
【0300】
【数12−11】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−162038(P2010−162038A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59915(P2010−59915)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【分割の表示】特願2004−554854(P2004−554854)の分割
【原出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【出願人】(592243793)カイロン ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【分割の表示】特願2004−554854(P2004−554854)の分割
【原出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【出願人】(592243793)カイロン ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (107)
【Fターム(参考)】
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