説明

高いアクセシビリティー・インデックスを有する層状球状体触媒を用いる方法

アセチレンのエチレンへの選択的水素化に用いるための方法及び触媒を示す。本触媒は、触媒が内部コア及び活性材料の外側層を有する層状構造を含む。本触媒は更に外側層上に堆積している金属を含み、また、本触媒は、触媒が3〜500の間のアクセシビリティー・インデックスを有するように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、層状触媒組成物、かかる組成物を製造する方法、及びかかる組成物を用いる炭化水素転化プロセスに関する。本層状組成物は、内部コア、及び内部コアに結合している無機酸化物を含む外側層を含む。
【背景技術】
【0002】
[0002]白金ベースの触媒は、数多くの炭化水素転化プロセスのために用いられている。多くの用途において、促進剤及び変性剤も用いられている。1つのかかる炭化水素転化プロセスは、炭化水素の脱水素であり、特にイソブタンのようなアルカンをイソブチレンに転化する。例えば、米国特許第3,878,131号明細書(並びに関連する米国特許第3,632,503号明細書及び同第3,755,481号明細書)には、白金金属、酸化スズ成分、及び酸化ゲルマニウム成分を含む触媒が開示されている。全ての成分はアルミナ担体全体に均一に分散されている。米国特許第3,761,531号明細書(及び関連する米国特許第3,682,838号明細書)には、全てアルミナ担体材料上に分散されている白金族成分、第IVA族金属成分、例えばゲルマニウム、第VA族金属成分、例えばヒ素、アンチモン、及びアルカリ又はアルカリ土類成分を含む触媒複合体が開示されている。ここでも、全ての成分は担体上に均一に分配されている。
【0003】
[0003]米国特許第3,558,477号明細書、同第3,562,147号明細書、同第3,584,060号明細書、及び同第3,649,566号明細書は、全て、耐火性酸化物担体上の白金族成分及びレニウム成分を含む触媒複合体を開示している。しかしながら、従前と同様に、これらの参照文献には、最良の結果は白金族成分及びレニウム成分が触媒全体に均一に分配されている場合に達成されることが開示されている。
【0004】
[0004]また、幾つかのプロセスに関しては、触媒の活性部位における供給物質又は生成物の過度の滞留時間によって、所望の生成物に対する選択性が抑制されることも公知である。而して、米国特許第4,716,143号明細書には、白金族金属が担体の外側層(400μm)内に堆積している触媒が記載されている。変性剤金属をどのようにして担体全体に分配するかについての選択肢は与えられていない。同様に、米国特許第4,786,625号明細書には、白金が担体の表面上に堆積しており、一方、変性剤金属が担体全体に均一に分配されている触媒が開示されている。
【0005】
[0005]米国特許第3,897,368号明細書には、貴金属が白金であり、白金を触媒の外表面上に選択的に堆積させる貴金属触媒の製造方法が記載されている。しかしながら、この文献においては、白金のみを外側層上に含侵させる有利性が記載されており、貴金属の表面含侵を達成するために特定のタイプの界面活性剤を用いている。
【0006】
[0006]また、幾つかの参照文献においては、触媒が内部コア及び外側層又はシェルを含む技術も開示されている。例えば、米国特許第3,145,183号明細書には、不浸透性の中心部及び多孔質のシェルを有する球状体が開示されている。不浸透性の中心部は小さくてもよいことが開示されているが、全体の直径は1/8”以上である。より小さい直径の球状体(1/8”未満)に関しては、均一性を制御することが困難であると述べられている。米国特許第5,516,740号明細書には、触媒的に不活性の材料の内部コアに結合している触媒材料の薄い外側シェルが開示されている。外側コアは、その上に分散している白金のような触媒金属を有していてよい。前記’740号特許には、更に、この触媒を異性化プロセスにおいて用いることが開示されている。最後に、外側層の材料は、内部コア上に被覆する前に触媒金属を含んでいる。
【0007】
[0007]米国特許第4,077,912号明細書及び同第4,255,253号明細書には、触媒金属酸化物、又は触媒金属酸化物と酸化物担体との組合せの層がその上に堆積しているベース担体を有する触媒が開示されている。国際公開第98/14274号には、活性部位を含む材料の薄いシェルがその上に堆積及び結合している触媒的に不活性のコア材料を含む触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,878,131号明細書
【特許文献2】米国特許第3,632,503号明細書
【特許文献3】米国特許第4,755,481号明細書
【特許文献4】米国特許第3,761,531号明細書
【特許文献5】米国特許第3,682,838号明細書
【特許文献6】米国特許第3,558,477号明細書
【特許文献7】米国特許第3,562,147号明細書
【特許文献8】米国特許第3,584,060号明細書
【特許文献9】米国特許第3,649,566号明細書
【特許文献10】米国特許第4,716,143号明細書
【特許文献11】米国特許第3,897,368号明細書
【特許文献12】米国特許第3,145,183号明細書
【特許文献13】米国特許第5,516,740号明細書
【特許文献14】米国特許第4,077,912号明細書
【特許文献15】米国特許第4,255,253号明細書
【特許文献16】国際公開第98/14274号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0008]本発明は、アセチレン化合物の選択的水素化に関して改良された活性及び選択性を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0009]本発明は、アセチレンのエチレンへの選択的水素化を提供する。本方法は、エチレン及びアセチレンを含む供給流を新規な触媒と接触させ、それによってアセチレン含量が減少したエチレンに富む生成流を生成することを含む。触媒は、不活性材料から構成される内部コアを有する層状触媒を含む。外側層は内部コアに結合し、外側層は金属酸化物を含む。外側層の上に、第1の触媒金属及び第2の触媒金属が堆積しており、第1の金属はIUPACの8〜10族の金属から選択され、第2の金属はIUPACの11族又は14族の金属から選択される。層状触媒のための材料は、触媒が3〜500の間のアクセシビリティー・インデックス(accessibility index)又は0〜1の間の空隙指数(VSI)、或いは3〜500の間のAI及び0〜1の間のVSIの両方を有するように選択され、触媒上に結合される。
【0011】
[0010]他の態様においては、本方法は、供給流を脱メタン化器に通して、それによって脱メタン化したエチレン流を生成させることを含む。脱メタン化流はまた、減少した一酸化炭素含量を有する。エチレン及びアセチレンを含む脱メタン化したエチレン流を新規な触媒と接触させて、それによってアセチレン含量が減少したエチレンに富む生成流を生成させる。本触媒は、不活性材料から構成される内部コアを有する層状触媒を含む。外側層は内部コアに結合しており、外側層は金属酸化物を含む。外側層の上に、第1の触媒金属及び第2の触媒金属が堆積されており、第1の金属はIUPACの8〜10族の金属から選択され、第2の金属はIUPACの11族又は14族の金属から選択される。層状触媒のための材料は、触媒が3〜500の間のアクセシビリティー・インデックス又は0〜1の間の空隙指数(VSI)、或いは3〜500の間のAI及び0〜1の間のVSIの両方を有するように選択され、触媒上に結合される。
【0012】
[0011]本発明の他の目的、有利性、及び用途は、以下の詳細な説明及び図面から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】[0012]図1は、アセチレンの水素化のための触媒のフロントエンド(front end)での使用の概略図である。
【図2】[0013]図2は、アセチレンの水素化のための触媒のテールエンド(tail end)での使用の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0014]各分子あたり2又は3個の炭素原子を有する軽質オレフィン炭化水素であるエチレン及びプロピレンは、ポリエチレン及びポリプロピレンのような他の有用な材料の製造において用いるための重要な化学物質である。ポリエチレン及びポリプロピレンは、今日用いられている最も一般的なプラスチックの中の2つであり、材料の製造及び包装用の材料としての両方に関する広範囲の用途を有する。エチレン及びプロピレンの他の用途としては、塩化ビニル、エチレンオキシド、エチルベンゼン、及びアルコールの製造が挙げられる。炭化水素を蒸気分解又は熱分解すると、大部分がエチレンで若干のプロピレンが製造される。エチレンは、炭化水素の蒸気分解、炭化水素の接触分解、又はより大きなオレフィン供給材料のオレフィン分解のような幾つかの手段によって製造される。しかしながら、ポリエチレンの製造に用いるためのエチレンは、実質的に純粋であることが必要である。エチレンを製造する方法では、エチレン/エタン流の2〜3体積%程度の高さである可能性がある相当量のアセチレンを有する生成物流が生成する。
【0015】
[0015]より選択的な触媒を用いることによってエチレンの量の増加を達成しながら、アセチレンの選択的水素化によってエチレン生成物流の品質を向上させる。本発明における触媒は、現在の商業的な触媒から区別される特性を有する材料を含む。これらの特性は、このプロセスにおいて良好な選択性を有する触媒を選択するために、活性インデックスから決定することができる。本触媒は、アセチレンをエチレン生成物流の5ppm未満の量に選択的に水素化し、好ましくはアセチレンを1ppm未満に減少させる。
【0016】
[0016]触媒は、不活性材料を含む内部コアを有する層状触媒である。外側層は内部コアに結合しており、外側層は金属酸化物を含む。触媒は、外側層の上に堆積しているIUPACの8〜10族の金属から選択される第1の金属、及び外側層の上に堆積しているIUPACの11又は14族の金属から選択される第2の金属を含む。触媒はまた、3〜500の間のアクセシビリティーインデックス(AI)も有し、好ましいアクセシビリティー・インデックスは3〜20の間であり、より好ましいアクセシビリティー・インデックスは4〜20の間である。アクセシビリティー・インデックスは、外側層の表面積に粒子の直径を乗じ、100を乗じ、層の有効厚さ(マイクロメートル又はcm/(g))で除したものに等しいが、表面積は外側層のみからのものであり、粒子全体の重量を考慮する。
【0017】
[0017]外側層の上に堆積している第1の金属は、好ましくは白金又はパラジウム或いはこれらの混合物であり、触媒の100〜50,000重量ppmの濃度で堆積している。好ましくは、第1の金属は、触媒の200〜20,000重量ppmの濃度で堆積している。
【0018】
[0018]外側層の上に堆積している第2の金属は、好ましくは銅、銀、金、スズ、ゲルマニウム、及び鉛を含む1種類以上の金属である。第2の金属は、第2の金属に対する第1の金属の原子比が0.1〜10の間であるような量で外側層上に堆積している。
【0019】
[0019]触媒の内部コアは、コージエライト、ムライト、オリバイン、ジルコニア、スピネル、カイヤナイト、アルミナ、シリカ、アルミン酸塩、ケイ酸塩、チタニア、窒化物、炭化物、ホウケイ酸塩、ボリア、ケイ酸アルミニウム、マグネシア、フォルステライト、カオリン、カオリナイト、モンモリロナイト、サポナイト、ベントナイト、酸性活性が少ししかないか又は低いクレー、γ−アルミナ、δ−アルミナ、η−アルミナ、及びθ−アルミナの1以上から構成される不活性材料を含む。内部コアは、0.05mm〜10mm、好ましくは0.8mm〜5mm、より好ましくは0.8mm〜3mmの間の有効直径を有する。有効直径とは、非球状形状に関しては、球状体に成形した場合に成形粒子が有する直径を意味する。好ましい態様においては、乾燥成形粒子は実質的に球状の形状である。
【0020】
[0020]外側層は、1〜200μmの間の有効厚さに内部コア上に堆積し、かつ該内部コアに結合している。好ましい外側層の厚さは20〜100μmの間であり、より好ましい外側層の厚さは20〜70μmの間である。実際の厚さは粒子の周囲で多少変化する。有効厚さという用語は、内部コアの表面上に材料を均一に分配した場合の層を基準とする厚さを意味するように意図する。内部コアは不規則な表面を有し、これによって外側層の材料の分布の多少の不規則性が導かれる可能性がある。外側層の材料は、γ−アルミナ、δ−アルミナ、η−アルミナ、θ−アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、非ゼオライトモレキュラーシーブ、チタニア、及びジルコニアの1以上から選択される。
【0021】
[0021]別の態様においては、触媒は不活性材料を含む内部コアを有する層状触媒である。外側層は内部コアに結合しており、外側層は金属酸化物を含む。触媒は、外側層の上に堆積しているIUPACの8〜10族の金属から選択される第1の金属、及び外側層の上に堆積しているIUPACの11又は14族の金属から選択される第2の金属を含む。触媒はまた0〜1の間の空隙指数(VSI)も有し、好ましい空隙指数は0.0001〜0.5の間であり、より好ましい空隙指数は0.001〜0.3の間である。空隙指数は、細孔容積に外側層の平均細孔半径をかけ、粒子の直径をかけ、外側層の有効厚さで割った値に等しく、cm・μm/gの単位である。細孔容積は外側層の細孔容積であり、一方、外側層の重量だけではなく、全触媒の重量を考慮する。
【0022】
[0022]不活性の内部コアは上記に記載の材料から選択され、外側層は上記のリストからの材料を含む。外側層上に堆積している第1及び第2の金属は、第1及び第2の金属に関して上記に列記した金属から選択される。
【0023】
[0023]選択的水素化プロセスの制御は、エチレンが水素化してそれによって生成物の一部を失うのを最小限に抑えるために重要であり、この制御は、3より大きいAI、又は1未満のVSI、或いは両方を有する触媒を選択することによって向上させることができる。
【0024】
[0024]この触媒は、エチレンのエタンへの水素化のような副反応を最小限に抑えながらアセチレンをエチレンへ選択的水素化するのに有用である。このプロセス又はフロントエンドプロセスを図1に示す。まず、エチレン、エタン、及びアセチレンを含むプロセス供給流12を脱エタン化器10に通し、エチレンに富む塔頂流14を選択的水素化反応器20に送る。通常は、エチレンに富む流れ14は、選択的水素化反応器20に送る前に圧縮及び温度調節する。一般的には、温度調節は、圧縮したエチレンに富む流れ14を冷却することになる。触媒を用いるプロセスは、エチレン及びアセチレンを有する塔頂供給流14を、3〜500の間のAI、又は0〜1の間のVSI、或いは3〜500の間のAI及び0〜1の間のVSIの両方を有する触媒と、反応条件において接触させ、それによってエチレン生成流を生成させることを含み、触媒は上記の通りのものである。選択的水素化反応条件は、100kPa〜14.0MPaの間の圧力を含み、好ましい圧力は500kPa〜10.0MPaの間であり、より好ましい圧力は800kPa〜7.0MPaの間である。選択的水素化のための温度は10℃〜300℃の間であり、好ましい温度は30℃〜200℃の間である。
【0025】
[0025]選択的水素化条件は、0.1〜10,000の間のアセチレンに対する水素のモル比を含むが、好ましいモル比は0.1〜10の間である。このモル比は、より好ましくは0.5〜5の間であり、最も好ましくは0.5〜3の間である。プロセス供給流12の源は接触ナフサ分解器からであってよく、エチレンに富む供給流を製造するプロセスにおいては、相当量の一酸化炭素が生成する。一酸化炭素の量は1〜8000体積ppmの間になる可能性がある。大量の一酸化炭素が存在する場合には、一酸化炭素は活性触媒部位に対する可逆的な遮断剤として機能する。選択的水素化反応器の運転条件には1,000〜15,000hr−1の間の気体空間速度(GHSV)を含ませることができ、好ましくは気体空間速度(GHSV)は2,000〜12,000hr−1の間である。最も好ましい運転においては、GHSVは8,000〜12,000hr−1の間である。
【0026】
[0026]選択的水素化反応器20は、減少したアセチレン含量を有する生成流22を送り出す。生成流22を冷却して若干の凝縮液を生成させる。生成流22を、凝縮流26(該凝縮流は還流として脱エタン化器10に戻される)、及び蒸気流24に分離する。蒸気流24は脱メタン化器30に送り、ここで蒸気流24を、水素及び残留一酸化炭素を含むメタンに富む流れ32、及びエタン/エチレン流34に分割する。エタン/エチレン流34は、エタンをエチレンから分離除去するためのエタン/エチレンスプリッター40に送る。エチレンを含む塔頂流42が、ポリマー供給材料として用いるための品質レベルで生成する。エタンを含む塔底流44は、他の処理ユニットへ送るか又は最終生成物とする。
【0027】
[0027]他の態様において、アセチレンをエチレンへ選択的水素化する方法又はテールエンドプロセスを図2に示す。まず、プロセス供給流12を脱メタン化器30に通して、メタン及び一酸化炭素を含む塔頂流32、並びにエタン、エチレン、アセチレン、及びC3+炭化水素を含む脱メタン化器塔底流34を生成させる。脱メタン化器塔底流34は脱エタン化器10に送り、ここで脱エタン化器によって、脱メタン化器塔底流を、脱エタン化器塔頂流、又はエタン、エチレン、及びアセチレンを含むエチレン流14、及びC3+炭化水素を含む塔底流に分割する。脱エタン化器塔頂流14は選択的水素化反応器20に送り、ここでアセチレンをエチレンに選択的に転化させる。塔頂流14は、選択的水素化反応器20に送る前に圧縮及び温度調節することができる。一般的には、温度調節は、圧縮によって加熱される塔頂流14の冷却である。選択的水素化供給流には、必要に応じて更なる水素供給流を含ませることができる。エチレン流14を、3〜500の間のAI、又は0〜1の間のVSI、或いは両方を有する選択的水素化触媒と、反応器内において反応条件下で接触させる。触媒は上記の通りのものである。
【0028】
[0028]選択的水素化反応条件は、100kPa〜14.0MPaの間の圧力を含み、好ましい圧力は500kPa〜10.0MPaの間であり、より好ましい圧力は800kPa〜7.0MPaの間である。選択的水素化のための温度は10℃〜300℃の間であり、好ましい温度は30℃〜200℃の間である。アセチレンに対する水素のモル比は0.1〜20の間であるが、好ましいモル比は0.1〜10の間である。このモル比は、より好ましくは0.5〜5の間であり、最も好ましい比は0.5〜3の間である。プロセス供給流12の源は、接触ナフサ分解器、蒸気分解器、又はオレフィン分解ユニットからであってよく、エチレンに富む供給流を製造するプロセスにおいては、相当量の一酸化炭素が生成する。しかしながら、供給流を選択的水素化反応器20へ送る前に脱メタン化器30に通すことにより、一酸化炭素の量を0.1〜10体積ppmの間にすることができる。選択的水素化反応器の運転条件は1,000〜5,000hr−1の間の気体空間速度(GHSV)を含んでいてよく、好ましいGHSVは4,000hr−1より低い。
【0029】
[0029]選択的水素化反応器20によってアセチレン含量が減少した生成物流22が生成し、これをエタン/エチレンスプリッター40に送る。生成物流22を冷却し、若干の凝縮液を生成させる。生成物流22は気液分離器に送り、ここで凝縮液26を回収し、還流として脱エタン化器10に戻す。蒸気流24はスプリッターに送り、ここでスプリッター40によって、ポリマー供給材料として用いるための品質レベルのエチレンを含む塔頂流42が生成し、エタンを含む塔底流44は他の処理ユニットへ送るか又は最終生成物とする。
【0030】
[0030]選択的水素化の前にメタン及び一酸化炭素の一部を除去するテールエンドプロセスに用いるための触媒は、アルカリ金属で処理して触媒の酸性度を低下させることができる。触媒を、外側層の0.5重量%未満、好ましくは外側層の0.1重量%〜0.5重量%の量のアルカリ金属で処理する。有用なアルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、及びセシウム(Cs)が挙げられる。アルカリ金属で処理する場合には、それは匹敵する活性を与えるモル量、即ちLiの原子がKの原子と同じ応答を与える量である。したがって、より軽質のリチウムに関する重量は、原子量の比に従って減少する。例えば、Pdのみ及びPd/Agの触媒の場合、3300重量ppmのKと500重量ppmのLiは同等の活性及び選択性を有する。
【0031】
[0031]しかしながら、フロントエンド触媒に関しては、アルカリ金属の添加は増加する活性を示すが、減少する選択性を示す。外側層上にPdのみを有する試験した触媒に関しては、より低いカリウムはより高い活性及び選択性、或いはより低いエタン形成を与える。これは、エチレンの水素化よりも優先的なアセチレン水素化を示し、リチウムはより高い活性を与えるが、より低い選択性を与えることを示す。外側層の上にPd/Agを有する試験した触媒に関しては、より低いカリウムはまた、より高い活性及びより低い選択性を与える。
【0032】
[0032]表1では、γ又はθ−アルミナのいずれかの5〜200μmの層厚を有する本発明の層状触媒が、α−アルミナ上に製造し、25〜300μmの種々の深さに表面含侵した従来の触媒と比較されている。全ての触媒は、共通の基準で示すために3mmの球状体とした。パラメーターは、非常に薄い活性区域が従来の触媒に関しては何故実際的でないかを示す。活性区域は、活性金属/活性部位の少なくとも90%が生成する領域として定義される。通常の装填量は非常に高い割合の単層被覆になり、これは劣る金属利用率を与え、しばしば非常に大きい金属粒子凝集体を与える。特に特徴的なパラメーターは、表面積×粒子直径×100/活性区域の厚さ(cm/g)又はAI、並びに細孔容積×平均細孔半径×粒子直径/厚さ(cm・μm/g)又はVSIである。
【0033】
【表1】

【0034】
[0033]本発明は、触媒の外側層に関してγ及びθ−アルミナを用い、種々の有効厚さを有していた。本発明の触媒は、外側被覆としてα−アルミナを用いる標準的な商業的な触媒に比べて、3より大きい高いアクセシビリティー・インデックス、及び1未満の低い空隙指数を有する。α−アルミナを用いる従来の触媒は非常に大きな平均細孔径を有する。この指数は、薄い活性区域が従来の触媒に関しては何故実際的でないかを示す。活性区域は、活性金属部位の>90%が生成する領域である。従来の触媒は、薄い活性区域で非常に高い単層被覆率及び大きい金属粒子凝集体を有するので、劣った金属利用率を与える。触媒の細孔径を変化させることによって、フロントエンドプロセスに関する選択的水素化の性能が向上する。
【0035】
[0034]試験から、触媒活性は、5〜50μmの範囲の外側層有効厚さを有する触媒に関して増加する傾向がある。これは、より薄い層がより良好な性能を与えることを示唆している。本発明の触媒は、より低い金属堆積量でより薄い層を可能にする。これは、重質副生成物が蓄積する傾向を減少させ、それによって触媒の失活を減少させる可能性を有する。
【実施例】
【0036】
触媒の調製手順:
[0035]所望量の担体に適当な金属塩の溶液を加えることによって触媒を調製した。適当な金属塩は通常は硝酸塩である。特に、担体重量に対して1%のHNO溶液を脱イオン水で希釈して、担体体積にほぼ等量の溶液の体積、或いは1:1の溶液:担体の体積比を与えた。溶液を、室温において、一定の撹拌を行いながら、或いは良好な担体と溶液の接触を確実にするために転動させながら、担体と1時間接触させた。次に、溶液を100℃に加熱し、液体を3時間超の一定時間にわたって蒸発させ、それによって含侵担体を生成させた。最終的な担体は、容器内で「自由に転動する」か、又は自由に動くものでなければならない。最終的な湿分含量は特定の担体で変化するが、通常は20〜30重量%の範囲である。
【0037】
[0036]次に、含侵担体を、焼成及び還元のために好適な容器に移した。担体を、乾燥空気流中120℃において3時間乾燥し、次に乾燥空気流中において5℃/分の速度で450℃に昇温し、450℃において1時間保持した。試料を室温に冷却した。
【0038】
[0037]還元のために、試料を、乾燥N流中において5℃/分の速度で200℃に昇温し、200℃において1時間保持した。乾燥N流を停止し、次に触媒上に水素を流し、3時間保持した。次に、水素を窒素に切り替え、触媒試料を室温に冷却した。
【0039】
[0038]2段階手順に関しては、第1工程からの焼成及び還元した触媒を、第2工程のための担体として用い、溶液中の金属塩の第2の組を用いて通常の含侵、乾燥、焼成、及び還元工程を行った。
【0040】
[0039]現在好ましい態様と考えられるものを用いて本発明を記載したが、本発明は開示された態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に含まれる種々の変更及び均等の配置をカバーすることを意図すると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン及びアセチレンを含む供給流を反応条件において触媒と接触させ、それによってアセチレンの量が減少した生成流を生成させる;
ことを含み、該触媒が、
不活性材料を含む内部コア;
内部コアに結合している、金属酸化物を含む外側層;
外側層上に堆積している、IUPACの8〜10族の金属である第1の金属;及び
外側層上に堆積している、IUPACの11族又は14族の金属である第2の金属;
を有する層状触媒を含み;
該触媒が、3〜500の間のアクセシビリティー・インデックス(AI)又は0〜1の間の空隙指数(VSI)、或いは3〜500の間のAI及び0〜1の間のVSIの両方を有する、アセチレンをエチレンへ選択的水素化する方法。
【請求項2】
選択的水素化条件が100kPa〜14.0MPaの間の圧力を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
選択的水素化条件が500kPa〜10.0MPaの間の圧力を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
選択的水素化条件が800kPa〜7.0MPaの間の圧力を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
選択的水素化条件が10℃〜300℃の温度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
選択的水素化条件が30℃〜200℃の温度を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
選択的水素化条件が0.1〜10000の間のアセチレンに対する水素のモル比を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
供給流が1〜8000体積ppmの間の量の一酸化炭素(CO)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
エチレン生成流を脱メタン化器に送り、それによってメタンに富む流れ、及びエタン/エチレン流を生成させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
エタン/エチレン流をエタン/エチレン分離器に送り、それによってエチレン生成物流を生成させることを更に含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−512245(P2012−512245A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542159(P2011−542159)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/059931
【国際公開番号】WO2010/074795
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】