説明

高いアンモニア結合性を有する吸水性ポリマー構造体

【課題】超吸収体を含む衛生用品の臭気結合性に関して従来技術の欠点を改善すること。
【解決手段】i)70モル%以下の中和度を有する未処理の吸水性ポリマー構造体を用意する工程と、ii)前記未処理の吸水性ポリマー構造体を酸性成分と接触させる工程と、を含む吸水性ポリマー構造体の製造方法。また、前記方法によって得られる吸水性ポリマー構造体、吸水性ポリマー構造体、複合体、複合体の製造方法、前記方法によって得られる複合体、発泡体、成形品、繊維、シート、フィルム、ケーブル、シール材、吸液性衛生用品、植物・菌類生育調節剤用担体、包装材料、土壌添加剤又は建設材料及び吸水性ポリマー構造体の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性ポリマー構造体の製造方法、前記方法によって得られる吸水性ポリマー構造体、吸水性ポリマー構造体、複合体、複合体の製造方法、前記方法によって得られる複合体、発泡体、成形品、繊維、薄片、フィルム、ケーブル、シール材、吸液性衛生用品、植物・菌類生育調節剤用担体、包装材料、土壌添加剤、建設材料、吸水性ポリマー構造体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
超吸収体は、膨潤してヒドロゲルを形成することにより、大量の水、水性液体、特に体液、好ましくは尿又は血液を吸収し、圧力下で保持することができる非水溶性架橋ポリマーである。超吸収体は、好ましくは超吸収体の重量の少なくとも100倍の重量の水を吸収する。超吸収体の詳細は、F.L.Buchholz、A.T.Graham、「現代の超吸収性ポリマー技術(Modern Superabsorbent Polymer Technology)」、Wiley−VCH、1998年に記載されている。これらの特性のために、吸水性ポリマーは、おむつ、失禁用品又は生理用ナプキン等の衛生用品に主として使用されている。
【0003】
超吸収体は、酸性基含有モノマーを架橋剤の存在下でフリーラジカル重合することによって製造され、酸性基含有モノマーは重合前又は重合後に少なくとも部分的に中和される。
【0004】
衛生用品(特に成人用衛生用品)の場合には、不快な臭気と結合することができる超吸収体が求められている。臭気結合性は、例えば、国際公開第WO01/13841 A1号に記載されているように、シクロデキストリン等の臭気結合剤を添加することによって得ることができる。しかし、臭気結合剤を添加すると、衛生用品の製造設備における搬送時に粉末状の添加剤のために吸水性ポリマー構造体からダストが発生するという問題が生じる。また、国際公開第WO03/002623 A1号も衛生用品における臭気制御について記載している。
【0005】
尿素の細菌分解によって生成するアンモニアを結合させることは、特に衛生用品の着用感にとって重要である。超吸収体は架橋され、部分的に中和されたアクリル酸からなるため、超吸収体は酸塩基反応によってアンモニアと結合することができる。アクリル酸ポリマーの中和度を低下させ、プロトン化カルボン酸基を増加させることにより、アンモニア結合性を向上させることができる。しかし、中和度が低下すると超吸収ポリマー構造体の全体的な性能が低下するため、pHの低下は制限される。現代の超吸収体は、65〜80モル%の中和度において最適な液体吸収性能を発揮する。
【0006】
中和度を50モル%まで低下させた場合でも、満足できる全体的な性能を達成することができる。しかし、中和度を50モル%以下まで低下させると、ポリマーネットワークの低いイオン性のために膨潤性が大きく減少する。
【0007】
pHを低下させることによって衛生用品の臭気結合性を向上させるために、米国特許第3,794,034号は、粉末状酸性物質(例えば、クエン酸)を衛生用品の繊維材料中に導入することを提案している。しかし、例えば架橋ポリアクリレートからなる超吸収体の使用は米国特許第3,794,034号には開示されていない。
【0008】
国際公開第WO00/35502 A1号は、超吸収体を含む衛生用品の臭気結合性を向上させるために、衛生用品が体液と接触した後にpHが3.5〜5.5となるように、乳酸を生成するバクテリアを衛生用品の吸収性コアに超吸収体と共に添加することを提案している。そのような衛生用品の問題は、乳酸を生成するバクテリアを添加することで衛生用品の製造における工程数が増加すると共に、乳酸を生成するバクテリアの温度感受性のために、環境要因(高温又は低温)が衛生用品の臭気結合性に悪影響を及ぼし得ることである。
【0009】
国際公開第WO01/32226 A1号は、超吸収体を含む衛生用品の臭気結合性を向上させるために、超吸収体に加えて有機カルボン酸等の酸性物質を衛生用品の吸収性コアに導入することを提案している。この場合も、衛生用品の製造において酸性成分を吸収性コアに投入する工程がさらに必要となるという問題がある。また、そのような衛生用品の臭気結合性は満足できるものではない。
【0010】
国際公開第WO03/002623 A1号は、5.7未満のpHを有する部分的に中和された吸水性ポリマー構造体を表面後架橋させる臭気結合性超吸収体の製造方法を開示している。国際公開第WO03/002623 A1号に開示された超吸収体の欠点は、アンモニア結合性が低いことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第WO01/13841 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、超吸収体を含む衛生用品の臭気結合性に関して従来技術の欠点を改善することにある。
【0013】
特に、本発明の目的は、従来の吸水性ポリマー構造体と比較して、衛生用品から不快な臭気を有する化合物が放出されることを抑制することができると共に満足できる吸収特性を有する吸水性ポリマー構造体を提供することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、従来のポリマー構造体と比較して向上した臭気結合性を有し、従来の超吸収体と比較して良好に処理することができ、衛生用品の製造設備において良好に搬送することができる吸水性ポリマー構造体を提供することにある。
【0015】
また、本発明の目的は、そのような有利な吸水性ポリマー構造体を製造することができる方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、従来の複合体と比較して向上した臭気結合性及び吸収特性を有し、従来の複合体と比較して少ない製造工程で製造することができる複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は、吸水性ポリマー構造体の製造方法であって、
i)70モル%以下、好ましくは65モル%以下、より好ましくは60モル%以下、より好ましくは55モル%以下、最も好ましくは45〜55モル%であって、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、最も好ましくは45モル%以上の中和度を有する未処理の吸水性ポリマー構造体を用意する工程と、
ii)前記吸水性ポリマー構造体を酸性成分、好ましくは有機酸性成分と接触させる工程と、
を含む方法によって達成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、予期せぬことに、低い中和度で中和された吸水性ポリマー構造体を酸性成分と混合することにより、有利な臭気結合性と有利な全体的性能を有する吸水性ポリマー構造体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において、「未処理」という用語は、工程i)で用意する吸水性ポリマー構造体を酸性成分、好ましくは有機酸性成分と接触させていないことを意味する。ただし、「未処理」という用語は、吸水性ポリマー構造体が表面後架橋等の他の表面変性法によって変性されている場合を排除するものではない。
【0020】
工程i)で用意する未処理の吸水性ポリマー構造体は、好ましくは繊維、発泡体又は粒子であり、繊維及び粒子であることが好ましく、粒子であることが特に好ましい。
【0021】
本発明において好ましいポリマー繊維は、織糸として織物に織り込むか、織物に直接織り込むことができる寸法を有する。本発明では、ポリマー繊維は、1〜500mm、好ましくは2〜500mm、特に好ましくは5〜100mmの長さを有し、1〜200デニール、好ましくは3〜100デニール、特に好ましくは5〜60デニールの直径を有することが好ましい。
【0022】
本発明に係る好ましいポリマー粒子は、10〜3,000μm、好ましくは20〜2,000μm、特に好ましくは150〜850μm又は150〜600μmのERT420.2−02に準拠して測定した平均粒径を有する。この場合、300〜600μmの粒径を有するポリマー粒子の含有量は、後架橋された吸水性ポリマー粒子の総重量に対して少なくとも30重量%、特に好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%であることが特に好ましい。
【0023】
工程i)で用意する吸水性ポリマー構造体の好適な実施形態では、吸水性ポリマー構造体は、
(α1)20〜99.999重量%、好ましくは55〜98.99重量%、特に好ましくは70〜98.79重量%のエチレン性不飽和酸性基含有モノマー又はその塩、プロトン化又は四級化窒素を含むエチレン性不飽和モノマー又はそれらの混合物(少なくともエチレン性不飽和酸性基含有モノマーを含む混合物、好ましくはアクリル酸が特に好ましい)と、
(α2)0〜80重量%、好ましくは0〜44.99重量%、特に好ましくは0.1〜44.89重量%の、(α1)と共重合可能な重合性モノエチレン性不飽和モノマーと、
(α3)0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%、特に好ましくは0.01〜2.5重量%の1種以上の架橋剤と、
(α4)0〜30重量%、好ましくは0〜5重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%の水溶性ポリマーと、
(α5)0〜20重量%、好ましくは2.5〜15重量%、特に好ましくは5〜10重量%の水と、
(α6)0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%、特に好ましくは0.1〜8重量%の1種以上の添加剤と、
を含むポリマー構造体であることが好ましい((α1)〜(α6)の合計重量は100重量%である)。
【0024】
工程i)で用意する未処理の吸水性ポリマー構造体が70モル%以下、好ましくは65モル%以下、より好ましくは60モル%以下、より好ましくは55モル%以下、最も好ましくは45〜55モル%の中和度を有するとは、モノマー(α1)の酸性基の70モル%以下、65モル%以下、60モル%以下又は55モル%以下が脱プロトン化カルボキシレート基として存在していることを意味する。
【0025】
中和は、重合後に部分的又は完全に行うこともできる。中和は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、炭酸塩、重炭酸塩を使用して行うことができる。酸と共に水溶性塩を生成する塩基も使用することができる。異なる塩基による中和も可能である。アンモニア及びアルカリ金属水酸化物を使用した中和が好ましく、水酸化ナトリウム及びアンモニアを使用した中和が特に好ましい。
【0026】
好ましいエチレン性不飽和酸性基含有モノマー(α1)は、国際公開第WO2004/037903 A2号においてエチレン性不飽和酸性基含有モノマー(α1)として記載されている化合物である。国際公開第WO2004/037903 A2号の開示内容は、この参照によって本明細書の開示として援用する。特に好ましいエチレン性不飽和酸性基含有モノマー(α1)はアクリル酸及びメタクリル酸であり、アクリル酸が最も好ましい。
【0027】
本発明に係る方法の一実施形態によれば、(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー(α2)がアクリルアミド、メタアクリルアミド又はビニルアミドである未処理の吸水性ポリマー構造体を使用する。
【0028】
アクリルアミド及びメタクリルアミド以外の好ましい(メタ)アクリルアミドは、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノ(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル置換(メタ)アクリルアミド又は(メタ)アクリルアミドのアミノアルキル置換誘導体である。ビニルアミドとしては、例えば、N−ビニルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、ビニルピロリドンが挙げられる。これらのモノマーのうち、アクリルアミドが特に好ましい。
【0029】
本発明に係る方法の別の実施形態によれば、(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー(α2)が水溶性モノマーである吸水性ポリマー構造体を使用する。水溶性モノマーとしては、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0030】
(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー(α2)としては、水分散性モノマーも好ましい。好ましい水分散性モノマーは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアクリレート及び(メタ)アクリレートである。
【0031】
(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー(α2)としては、メチルポリエチレングリコールアリルエーテル、酢酸ビニル、スチレン、イソブチレンも挙げられる。
【0032】
架橋剤(α3)としては、国際公開第WO2004/037903 A2号において架橋剤(α3)として記載されている化合物を好ましくは使用する。これらの架橋剤のうち、水溶性架橋剤が特に好ましい。水溶性架橋剤としては、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、塩化トリアリルメチルアンモニウム、塩化テトラアリルアンモニウム、アクリル酸1モル当たり9モルのエチレンオキシドを使用して得られたアリルノナエチレングリコールアクリレートが最も好ましい。
【0033】
水溶性ポリマー(α4)としては、部分的または完全に加水分解したポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、デンプン誘導体、ポリグリコール、ポリアクリル酸等の水溶性ポリマーを、好ましくは重合前にポリマー構造体に添加することができる。これらのポリマーの分子量は、ポリマーが水溶性であれば限定されない。好ましい水溶性ポリマーは、デンプン、デンプン誘導体又はポリビニルアルコールである。水溶性ポリマー、好ましくはポリビニルアルコール等の合成ポリマーは、重合させるモノマーのグラフト基材としても使用することができる。
【0034】
添加剤(α6)としては、希釈剤、臭気結合剤、界面活性剤、酸化防止剤や、ポリマー構造体の製造に使用される添加剤(重合開始剤等)を好ましくはポリマー構造体に添加することができる。
【0035】
工程i)で用意する吸水性ポリマー構造体の一実施形態では、吸水性ポリマー構造体は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%のカルボン酸基又はカルボキシレート基含有モノマーを含む。
【0036】
未処理の吸水性ポリマー構造体は、上記モノマー、コモノマー、架橋剤、水溶性ポリマー及び添加剤を各種重合法により重合することによって製造することができる。重合方法としては、例えば、好ましくは押出機等の混錬反応器内で行う塊状重合、溶液重合、噴霧重合、逆乳化重合、逆懸濁重合が挙げられる。
【0037】
溶液重合は水を溶媒として行うことが好ましい。溶液重合は連続的又は非連続的に行うことができる。開始剤及び反応溶液の温度、種類、量等の反応条件に関しては、従来技術において様々な条件が知られている。代表的な方法は、米国特許第4,286,082号、ドイツ特許第27 06 135 A1号、米国特許第4,076,663号、ドイツ特許第35 03 458 A1号、ドイツ特許第40 20 780 C1号、ドイツ特許第42 44 548 A1号、ドイツ特許第43 33 056 A1号、ドイツ特許第44 18 818 A1号に記載されている。これらの文献の開示内容は、この参照によって本明細書の開示として援用する。
【0038】
通常、重合は開始剤によって開始させる。重合を開始させるための開始剤としては、重合条件下でフリーラジカルを生成し、従来から超吸収体の製造に使用されている開始剤を使用することができる。また、重合性水性混合物に対する電子線の作用によって重合を開始させることもできる。また、上述した開始剤を使用せずに、光開始剤の存在下における高エネルギー放射線の作用によって重合を開始させることもできる。重合開始剤は、本発明に係るモノマー溶液に溶解又は分散させることができる。開始剤としては、フリーラジカルに解離する当業者に公知の化合物が挙げられる。特に、国際公開第WO2004/037903 A2号に開始剤として記載されている開始剤が挙げられる。
【0039】
特に好ましくは、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、アスコルビン酸を含むレドックス系を吸水性ポリマー構造体を製造するために使用する。
【0040】
ポリマー構造体の製造には、逆懸濁重合及び乳化重合を使用することもできる。これらの方法では、保護コロイド及び/又は乳化剤を使用し、必要に応じて水溶性ポリマー及び添加剤を含むモノマー(α1)及び(α2)の部分的に中和された水溶液を疎水性有機溶媒中に分散させ、フリーラジカル開始剤によって重合を開始させる。架橋剤は、モノマー溶液に溶解するか、モノマー溶液と共に添加するか、重合時に必要に応じて個別に添加する。グラフト基材としての水溶性ポリマー(α4)は、必要に応じてモノマー溶液に添加するか、油相に直接添加する。次に、水を混合物から共沸除去し、ポリマーを濾別する。
【0041】
溶液重合、逆懸濁重合、乳化重合のいずれの場合にも、モノマー溶液に溶解した多官能架橋剤(α3)内での重合及び/又は重合工程時における適当な架橋剤とポリマーの官能基との反応によって架橋を行うことができる。このプロセスは、例えば米国特許第4,340,706号、ドイツ特許第37 13 601 A1号、ドイツ特許第28 40 010 A1号、国際公開第WO96/05234 A1号に記載されている。これらの文献の対応する開示内容は、この参照によって本明細書の開示として援用する。
【0042】
溶液重合又は逆懸濁重合及び乳化重合によって得られるヒドロゲルは、別の工程で乾燥させる。
【0043】
特に、溶液重合の場合には、乾燥前にヒドロゲルを粉砕することが好ましい。粉砕は公知の粉砕装置(例えば肉挽機)を使用して行う。
【0044】
ヒドロゲルの乾燥は、適当な乾燥機又はオーブン内で行うことが好ましい。例えば、回転式チューブ炉、流動床乾燥機、プレート乾燥機、パドル乾燥機、赤外線乾燥機が例として挙げられる。本発明では、ヒドロゲルの乾燥は、水分が0.5〜25重量%、好ましくは1〜10重量%となるまで行うことが好ましく、乾燥温度は通常100〜200℃である。
【0045】
乾燥により得られた吸水性ポリマー構造体は、特に溶液重合によって得た場合には、別の工程で粉砕し、上述した所望の粒径に篩い分けることができる。乾燥した吸水性ポリマー構造体の粉砕は、ボールミル等の適当な機械的粉砕装置内で行うことが好ましい。
【0046】
本発明に係る方法の特に好ましい実施形態では、工程i)で用意する未処理の吸水性ポリマー構造体は表面後架橋されている。表面後架橋された吸水性ポリマー構造体はコアシェル構造を有し、吸水性ポリマー構造体のシェル領域がコア領域よりも高い架橋度を有する。
【0047】
表面後架橋では、乾燥したポリマー構造体又は乾燥しておらず、好ましくは粉砕したヒドロゲルを好ましくは有機化学表面後架橋剤と接触させる。特に、後架橋剤が後架橋条件において液体ではない場合には、後架橋剤と溶媒を含む流体Fとして後架橋剤をポリマー粒子又はヒドロゲルに接触させることが好ましい。適当な溶媒としては、水、水と混和する有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、イソブタノール又はそれらの有機溶媒の混合物又は水とそれらの有機溶媒の混合物が挙げられ、溶媒として水を使用することが最も好ましい。流体Fは、流体Fの総重量の5〜75重量%、特に好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは15〜40重量%の量で後架橋剤を含むことが好ましい。
【0048】
本発明に係る方法において、流体Fとポリマー構造体を混合することによってポリマー構造体又は粉砕したヒドロゲルを後架橋剤を含む流体Fと接触させることが好ましく、適当な混合装置としては、パターソン・ケリー(Patterson−Kelley)ミキサー、DRAIS乱流ミキサー、ロディジ(Lodige)ミキサー、ルベルク(Ruberg)ミキサー、スクリューミキサー、プレートミキサー、流動床ミキサー、回転刃によって高回転数でポリマー構造体を混合する連続垂直ミキサー(シュージ(Schugi)ミキサー)を挙げることができる。
【0049】
後架橋では、吸水性ポリマー構造体を、吸水性ポリマー構造体の重量に対して、20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下の溶媒(好ましくは水)と接触させることが好ましい。
【0050】
本発明では、好ましくは球状粒子であるポリマー構造体を使用する場合には、粒子状ポリマー構造体の内部領域ではない外部領域のみを流体F(後架橋剤)と接触させることが好ましい。
【0051】
本発明に係る方法で使用される後架橋剤としては、縮合反応(=縮合架橋剤)、付加反応又は開環反応によってポリマー構造体の官能基と反応することができる官能基を少なくとも2つ有する化合物が好ましい。本発明に係る方法において好ましい後架橋剤は、国際公開第WO2004/037903 A2号に架橋剤IIとして記載されている化合物である。
【0052】
これらの化合物のうち、縮合後架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル又はジエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシド、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のプロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン/オキシプロピレンブロック共重合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコール、ソルビトール、1,3−ジオキソラン−2−オン(炭酸エチレン)、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(炭酸プロピレン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソラン−2−オンが特に好ましい。
【0053】
後架橋剤又は後架橋剤を含む流体Fと接触させたポリマー構造体又はヒドロゲルは、50〜300℃、好ましくは75〜275℃、特に好ましくは150〜250℃に加熱し、ポリマー構造体の外部領域を内部領域よりも高度に架橋させる(後架橋)。加熱時間は、ポリマー構造体の所望の特性が熱によって損なわれる時間によって制限される。
【0054】
表面後架橋は、工程ii)の前、工程ii)の実施中又は工程ii)の後に行うことができる。
【0055】
好適な実施形態では、本発明に係る工程i)で用意する未処理の吸水性ポリマー構造体は、以下の特性の少なくとも1つを有する(ERT:EDANA推奨試験)。
(A)ERT 440.2−02に準拠した0.9重量%食塩水の最大吸収量(粒子の場合には、全粒径部分に対して測定)が少なくとも10〜1,000g/g、好ましくは20〜500g/g、より好ましくは50〜250g/g。
(B)ERT 470.2−02に準拠した16時間後の抽出可能部分(粒子の場合には、全粒径部分に対して測定)が未処理の吸水性ポリマー構造体の30重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは15重量%未満。
(C)ERT 460.2−02に準拠した嵩密度(粒子の場合には、全粒径部分に対して測定)が300〜1,000g/l、好ましくは400〜900g/l、より好ましくは500〜800g/l。
(D)1リットルの水中での未処理の吸水性ポリマー構造体1gのERT 400.2−02に準拠して測定したpH(粒子の場合には、全粒径部分に対して測定)が6.5未満、好ましくは6.0未満、特に好ましくは5.5未満、最も好ましくは5.2未満であり、好ましくは1.0以上、特に好ましくは2.0以上、より最も好ましくは4.5以上。
(E)ERT 442.2−02に準拠して測定した50g/cmの圧力下における吸収率(粒子の場合には全粒子部分に対して測定)が10〜26g/g、好ましくは13〜25g/g、最も好ましくは15〜24g/g。
(E)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率(粒子の場合には全粒子部分に対して測定)が20〜50g/g、好ましくは25〜40g/g、最も好ましくは27〜35g/g。
【0056】
本発明に係る方法の一実施形態では、工程i)において用意するポリマー構造体は以下の特性又は特性の組み合わせを有する:(A),(B),(C),(D),(E),(F),(A)(B),(A)(C),(A)(D),(A)(E),(A)(F),(B)(C),(B)(D),(B)(E),(B)(F),(C)(D),(C)(E),(C)(F),(D)(E),(D)(F),(E)(F),(A)(B)(C)(D)(E)(F)。これらのうち、(D)が最も好ましい。
【0057】
本発明に係る方法の工程ii)では、工程i)で用意した未処理の吸水性ポリマー構造体を、酸性成分、好ましくは有機酸と接触させる。酸性成分とは、水のみの存在下で酸無水物等の酸性化合物を形成することができる化合物を意味する。
【0058】
好ましい有機酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、カルボン酸水素化物、これらの酸の少なくとも2種の混合物である。
【0059】
上記有機酸のうち、無水酢酸、マレイン酸無水物、フマル酸無水物、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリオキシル酸、グリコール酸、グリセロールリン酸、グルタル酸、クロロ酢酸、クロロプロピオン酸、けい皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、フマル酸、プロピオン酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、マロン酸、酪酸、イソ酪酸、イミジノ酢酸、リンゴ酸、イソチオン酸、メチルマレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、クロトン酸、シュウ酸、サリチル酸、グルコン酸、没食子酸、ソルビン酸、グルコン酸、p−オキシ安息香酸が好ましく、クエン酸及び酒石酸がより好ましく、クエン酸が最も好ましい。酸性成分として有機酸を使用することが好ましいが、P、SO、NO、HSO、HCl等の無機酸又は酸無水物を工程ii)において酸性成分として使用することもできる。
【0060】
本発明に係る方法の工程ii)において、酸性成分と未処理の吸水性ポリマー構造体を混合することによって酸性成分を未処理の吸水性ポリマー構造体と接触させることが好ましく、適当な混合装置としては、パターソン・ケリー(Patterson−Kelley)ミキサー、DRAIS乱流ミキサー、ロディジ(Lodige)ミキサー、ルベルク(Ruberg)ミキサー、スクリューミキサー、プレートミキサー、流動床ミキサー、回転刃によって高回転数でポリマー構造体を混合する連続垂直ミキサー(シュージ(Schugi)ミキサー)を挙げることができる。
【0061】
また、酸性成分は、溶媒と、溶媒に溶解又は分散させた酸性成分とを含む流体F又は乾燥した粉末として未処理の吸水性ポリマー構造体と接触させることができ、流体Fとして接触させることが特に好ましい。適当な溶媒としては、水、水と混和する有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、イソブタノール又はそれらの有機溶媒の混合物又は水とそれらの有機溶媒の混合物が挙げられ、溶媒として水を使用することが最も好ましい。未処理の吸水性ポリマー構造体を溶媒及び酸性成分を含む流体Fと接触させる場合には、流体Fは、流体Fの全重量に対して0.1〜75重量%、好ましくは20〜65重量%、最も好ましくは30〜60重量%の塩を含むことが好ましい。
【0062】
本発明に係る方法の特に好適な実施形態では、工程ii)において、未処理の吸水性ポリマー構造体を、未処理の吸水性ポリマー構造体の重量に対して、20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下であって、少なくとも1重量%、特に好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは4重量%が以下の溶媒、好ましくは水と接触させる。
【0063】
また、本発明では、工程ii)において、未処理の吸水性ポリマー構造体を、工程i)で用意した未処理の吸水性ポリマー構造体の重量に対して、0.1〜20重量%、特に好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%、最も好ましくは2.5〜7.5重量%の酸性成分と接触させることが好ましい。
【0064】
工程ii)において、未処理の吸水性ポリマー構造体を、30〜210℃、特に好ましくは40〜150℃、最も好ましくは50〜100℃の温度で酸性成分と接触させることが好ましい。また、未処理の吸水性ポリマー構造体をより低温(例えば室温)で酸性成分と接触させることもでき、得られた混合物を上記温度に加熱することができる。
【0065】
本発明に係る方法の特に好適な実施形態では、工程ii)において、未処理の吸水性ポリマー構造体を、酸性成分、好ましくは有機酸性成分に加えて、酸性成分とは異なる無機成分と接触させる。この無機成分は、好ましくはケイ素と酸素を含む無機成分であり、本発明に係る方法の一実施形態では、粉末状である。
【0066】
好ましいケイ素と酸素を含む無機成分としては、モノオルトケイ酸の重縮合によって得られる化合物及びケイ酸塩が挙げられる。ドイツ特許出願公開第102 49 821号に記載されているように、ポリケイ酸の中ではシリカゾルが特に好ましい。ドイツ特許出願公開第102 49 821号のシリカゾルに関する開示内容はこの参照によって本明細書の開示として援用する。ケイ酸塩の中では、特にゼオライト等の三次元ケイ酸塩又はAerosil(登録商標)として市販されている発熱性シリカ等のシリカ水溶液又はシリカゾルを乾燥することによって得られるケイ酸塩であって、好ましくは5〜50nm、特に好ましくは8〜20nmの粒径を有するケイ酸塩が好ましい。また、沈降シリカ、特にSipernat(登録商標)として知られる沈降シリカも使用することができる。好ましいケイ酸塩は、Hollemann及びWiberg著、無機化学教本、第91〜100版、Walter de Gruyter−Verlag、750〜783頁に開示されている天然または合成ケイ酸塩である。上記文献の当該部分の開示内容は、この参照によって本明細書の開示として援用する。
【0067】
特に好ましいゼオライトは、ソーダ沸石、重土十字沸石、モルデン沸石、斜方沸石、フォージャサイト(方ソーダ石)、方沸石から得られる天然ゼオライトである。天然ゼオライトの例としては、方沸石、白榴石、ポルサイト、ワイラカイト、ベルバーガイト、ビキタアイト、ボグザイト、ブリュスター沸石、菱沸石、ウィルヘンダーソナイト、コウルス沸石、ダキアルディ沸石、エディントン沸石、剥沸石、エリオン沸石、フォージャ沸石、苦土沸石、アミカイト、ガロン沸石、ギスモンド沸石、ゴビンス沸石、グメリン沸石、ゴンナルド沸石、グースクリーカイト、重土十字沸石、灰十字沸石、ウェルサイト(Wellsite)、斜プチロル沸石、輝沸石、濁沸石、レビ沸石、マッチー沸石、メルリーノ沸石、マンテソマイト、モルデン沸石、中沸石、ソーダ沸石、スコレス沸石、オフレット沸石、パラソーダ沸石、ポーリング沸石、ペルリアライト、バラー沸石、束沸石、ステラ沸石、トムソン沸石、チャーニック沸石、湯河原沸石等が挙げられる。好ましい合成ゼオライトは、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトPまたはABSCENTである。
【0068】
ただし、ケイ素と酸素を含む無機成分の中でも、例えばAerosil(登録商標)として入手可能な発熱性シリカ、例えばLevasil(登録商標)として入手可能なシリカゾル、Sipernat(登録商標)として入手可能な沈降シリカが好ましい。
【0069】
本発明に係る方法の本実施形態では、工程ii)において、未処理の吸水性ポリマー構造体を、工程i)で用意した未処理の吸水性ポリマー構造体の重量に対して、0.001〜5重量%、特に好ましくは0.01〜2.5重量%、最も好ましくは0.1〜1重量%の無機成分と接触させることがさらに好ましい。
【0070】
工程ii)において、未処理の吸水性ポリマー構造体を、酸性成分、好ましくは有機酸性成分に加えて、無機成分、好ましく粉末状無機成分を接触させる場合、様々な方法で接触させることができる。
【0071】
第1の変形では、任意に表面後架橋した未処理の吸水性ポリマー構造体を、粉末又は流体F(好ましくは流体F)としての酸性成分と最初に接触させ、得られた混合物を、無機成分、好ましくは粉末状無機成分と接触させる。
【0072】
第2の(特に好適な)変形では、任意に表面後架橋した未処理の吸水性ポリマー構造体を、無機成分、好ましくは粉末状無機成分と最初に接触させ、得られた混合物を粉末又は流体F(好ましくは流体F)としての酸性成分と接触させる。
【0073】
第3の変形では、任意に表面後架橋した未処理の吸水性ポリマー構造体を、粉末状無機成分及び粉末又は流体F(好ましくは流体F)としての酸性成分と同時に接触させる。この場合、粉末状無機成分及び流体Fとしての酸性成分は、未処理の吸水性ポリマー構造体に別々に添加することができる。ただし、粉末状無機成分を好ましくは流体Fとしての酸性成分と最初に混合し、得られた混合物を未処理の吸水性ポリマー構造体と接触させることもできる。
【0074】
本発明に係る方法では、工程ii)において、吸水性ポリマー構造体を酸性成分及び無機成分と接触させる場合には、酸性成分を流体Fとして使用することが好ましい。この場合、吸水性ポリマー構造体を、少なくとも1重量%、特に好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも3重量%、最も好ましくは少なくとも4重量%の、酸性成分を溶解又は分散した溶媒と接触させる。
【0075】
本発明に係る方法の工程ii)の後に、iii)工程ii)で得られた吸水性ポリマー構造体の表面変性を行う工程を行うことができる。
【0076】
表面後架橋されていない吸水性ポリマー構造体を工程i)で使用した場合には、工程iii)における表面変性として表面後架橋を行うことができる。また、工程iii)における表面変性として、工程ii)で得られた吸水性ポリマー構造体を透過性向上剤(例えば塩)と接触させることもできる。好ましい塩は、リン酸塩又は多価(好ましく三価)カチオンを含む塩である。これらの塩の中では、塩化物アニオン、ヨウ化物アニオン、臭化物アニオン、硝酸アニオン、亜硝酸アニオン、硫化物アニオン、亜硫酸アニオン、硫酸アニオン、炭酸アニオン、重炭酸塩アニオン、水酸化物アニオン又は酢酸アニオン又はシュウ酸アニオン等の有機アニオンを含む塩が特に好ましい。特に好ましい三価カチオンを含む塩は、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ビス−アルミニウムカリウム、硫酸ビス−アルミニウムナトリウム、乳酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、グリオキシル酸アルミニウム、コハク酸アルミニウム、イタコン酸アルミニウム、クロトン酸アルミニウム、酪酸アルミニウム、ソルビン酸アルミニウム、マロン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、ピルビン酸アルミニウム、吉草酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、グルタール酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム又は酢酸アルミニウムであり、AlCl×6HO、NaAl(SO×12HO、Al(NO×9HO、KAl(SO×12HO、又はAl(SO×14−18HO及び対応する無水塩、NaSO又はその水和物、MgSO×10HO又は無水硫酸マグネシウムが最も好ましい。
【0077】
また、工程iii)における表面変性として、工程ii)で得られた吸水性ポリマー構造体を、ポリビニルアルコール等のダスト形成抑制化合物又はシクロデキストリン又はゼオライト等の臭気結合化合物と接触させることもできる。
【0078】
また、上述した目的は、上述した方法によって得られる吸水性ポリマー構造体によって達成される。本発明に係る吸水性ポリマー構造体は、内部領域及び内部領域を取り囲む外部領域を含み、外部領域が上述した酸性成分及び任意の無機(好ましくは粉末状)成分と接触済みであることが好ましい。ここで、本発明に係る方法によって得られる吸水性ポリマー構造体は、均一ではない中和度を有することを特徴とする。「均一ではない中和度」とは、吸水性ポリマー構造体の外部領域が、好ましくは少なくとも1%、特に好ましくは少なくとも2.5%、より好ましくは少なくとも5%、最も好ましくは少なくとも10%だけ内部領域よりも低い中和度を有することを意味する。例えば、内部領域が60モル%の中和度を有する場合には、外部領域の中和度は、好ましくは59モル%以下、特に好ましくは57.5モル%以下、より好ましくは55モル%以下、最も好ましくは50モル%以下である。
【0079】
この場合、上述した方法によって得られる吸水性ポリマー構造体は、以下の特性の少なくとも1つ、好ましくは全てを有することが好ましい。
(β1)ERT 441.2−02に準拠して全粒子部分について測定した保持率が、少なくとも27g/g、特に好ましくは少なくとも29g/g、より好ましくは少なくとも31g/g、最も好ましくは33g/gであって、好ましくは50g/g以下、特に好ましくは45g/g以下、最も好ましくは40g/g以下。
(β2)以下の式で定義されるSAP指数が、少なくとも140cm/g、好ましくは少なくとも160cm/g、より好ましくは少なくとも180cm/g、最も好ましくは少なくとも200cm/g。
(数1)
SAP指数=(RET×SFC)/pH
式中、
RBT=ERT 441.2−02に準拠して全粒子部分について測定した保持率
SFC=本明細書に記載する試験方法に準拠して全粒子部分について測定した透過性
pH=ERT 400.2−02に準拠して測定した全粒子部分のpH
(β3)ERT 442.2−02に準拠して50g/cmの圧力下で測定した吸収率が、20g/g以下、特に好ましくは19g/g以下、最も好ましくは18g/g以下であって、好ましくは5g/g以上、特に好ましくは10g/g以上、最も好ましくは15g/g以上。
(β4)本明細書に記載する試験方法に準拠して測定したアンモニア結合性が、少なくとも98mg/g、特に好ましくは少なくとも99mg/g、最も好ましくは少なくとも100mg/gであって、130mg/g以下、特に好ましくは120mg/g以下、最も好ましくは110mg/g以下。
(β5)ERT 400.2−02に準拠したpH(粒子の場合には、全粒径部分に対して測定)が、6.5未満、好ましくは6.0未満、特に好ましくは5.5未満、最も好ましくは5未満であって、好ましくは1.0以上、特に好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、最も好ましくは4.0以上。
【0080】
本発明に係る方法によって得られる好ましい吸水性ポリマー構造体は、以下の特性又は特性の組み合わせを有する:(β1),(β2),(β1)(β2),(β1)(β2)(β3),(β1)(β2)(β4),(β1)(β2)(β5),(β1)(β2)(β3)(β4)(β5)。これらのうち、(β1)(β2)(β5)、特に少なくとも27g/gの保持率及び5.5未満のpHが最も好ましい。
【0081】
また、上述した目的は、吸水性ポリマー構造体であって、内部領域及び内部領域を取り囲む外部領域を含み、外部領域が上述した酸性成分及び任意の無機(好ましくは粉末状)成分と接触済みであり、以下の特性の少なくとも1つ、好ましくは全てを有する吸水性ポリマー構造体によって達成される。
(β1)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が、少なくとも27g/g、特に好ましくは少なくとも29g/g、より好ましくは少なくとも31g/g、最も好ましくは33g/gであって、好ましくは50g/g以下、特に好ましくは45g/g以下、最も好ましくは40g/g以下。
(β2)以下の式で定義されるSAP指数(SAN)が、少なくとも140cm/g、好ましくは少なくとも160cm/g、より好ましくは少なくとも180cm/g、最も好ましくは少なくとも200cm/g。
(数2)
SAP指数=(RET×SFC)/pH
式中、
RBT=ERT 441.2−02に準拠して全粒子部分について測定した保持率
SFC=本明細書に記載する試験方法に準拠して全粒子部分について測定した透過性
pH=ERT 400.2−02に準拠して測定した全粒子部分のpH
(β3)ERT 442.2−02に準拠して50g/cmの圧力下で測定した吸収率が、20g/g以下、特に好ましくは19g/g以下、最も好ましくは18g/g以下であって、好ましくは5g/g以上、特に好ましくは10g/g以上、最も好ましくは15g/g以上。
(β4)本明細書に記載する試験方法に準拠して測定したアンモニア結合性が、少なくとも98mg/g、特に好ましくは少なくとも99mg/g、最も好ましくは少なくとも100mg/gであって、130mg/g以下、特に好ましくは120mg/g以下、最も好ましくは110mg/g以下。
(β5)ERT 400.2−02に準拠したpH(粒子の場合には、全粒径部分に対して測定)が、6.5未満、好ましくは6.0未満、特に好ましくは5.5未満、最も好ましくは5未満であって、好ましくは1.0以上、特に好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、最も好ましくは4.0以上。
【0082】
本発明に係る好ましい吸水性ポリマー構造体は、以下の特性又は特性の組み合わせを有する:(β1),(β2),(β1)(β2),(β1)(β2)(β3),(β1)(β2)(β4),(β1)(β2)(β5),(β1)(β2)(β3)(β4)(β5)。これらのうち、(β1)(β2)(β5)、特に少なくとも27g/gの保持率及び5.5未満のpHが最も好ましい。
【0083】
また、上述した目的は、本発明に係る吸水性ポリマー構造体又は本発明に係る方法によって得られる吸水性ポリマー構造体(以下、「本発明に係る吸水性ポリマー構造体」という)と、基材と、を含む複合体によって達成される。本発明に係るポリマー構造体と基材は強固に結合されていることが好ましい。好ましい基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリアミド等のポリマーの薄片、金属、不織布、綿毛、織物、織布、天然又は合成繊維又は発泡体である。本発明では、複合体は、複合体の総重量の約15〜100重量%、好ましくは約30〜100重量%、特に好ましくは約50〜99.99重量%、より好ましくは約60〜99.99重量%、さらに好ましくは約70〜99重量%の本発明に係る吸水性ポリマー構造体を含む少なくとも1つの領域を含み、該領域は少なくとも0.01cm3、好ましくは少なくとも0.1cm3、最も好ましくは少なくとも0.5cm3の体積を有することが好ましい。
【0084】
本発明に係る複合体の特に好適な実施形態では、複合体は「吸収性材料」として国際公開第WO02/056812 A1号に記載されているようなシート状複合体である。国際公開第WO02/056812 A1号の複合体の構造、構成要素の単位面積当たりの重量及び厚みに関する開示内容は、この参照によって本発明の開示内容の一部として援用する。
【0085】
また、上述した目的は、本発明に係る吸水性ポリマー構造体と、基材と、必要に応じて添加剤と、を接触させる複合体の製造方法によって達成される。基材としては、本発明に係る複合体に関連して述べた基材を使用することが好ましい。
【0086】
また、上述した目的は、上記方法によって得られ、上述した本発明に係る複合体と同一の特性を好ましくは有する複合体によって達成される。
【0087】
また、上述した目的は、本発明に係るポリマー構造体又は本発明に係る複合体を含む化学製品によって達成される。好ましい化学製品は、発泡体、成形体、繊維、フィルム、シート、ケーブル、シール材、液体吸液性衛生用品(特におむつ及び生理用ナプキン)、植物・菌類生育調節剤・植物保護活性化合物の担体、建設材料の添加剤、包装材料、土壌添加剤である。
【0088】
また、上述した目的は、本発明に係るポリマー構造体又は本発明に係る複合体の、化学製品、好ましくは上述した化学製品、特におむつ及び生理用ナプキン等の衛生用品における使用及び超吸収体粒子の植物、菌類生育調節剤又は植物保護活性化合物の担体における使用によって達成される。植物、菌類生育調節剤又は植物保護活性物質の担体としての使用では、植物、菌類生育調節剤又は植物保護活性物質は、担体によって制御される時間が経過した後に放出できることが好ましい。
【0089】
本発明を、本発明を限定するものではない試験方法及び実施例を参照してさらに詳細に説明する。
【0090】
試験方法
【0091】
SFC値の測定
【0092】
SFC値の測定は、国際公開第WO95/26209 A1号に記載された試験方法に準拠して行った。
【0093】
アンモニア結合性の測定
【0094】
0.9重量%塩化ナトリウム溶液85mlを、ガラス栓で閉じることができる円錐フラスコ(200ml)に入れ、磁気撹拌機によって撹拌した。次に、炭酸塩を含まない0.1モル/lNaOH溶液15mlをビュレットを使用して溶液に添加した。次に、分析対象の超吸収体 約200mgを正確に秤量し、円錐フラスコ内の溶液に散布した。円錐フラスコをガラス栓によって閉じ、組成物を500rpmで60分間撹拌した。
【0095】
次に、濾紙(Schleicher & Schull社製「Schwarzband」)を使用して組成物を濾過した後、Titroprocessor(Metrohm GmbH & Co.社製「Metrohm 670」)を使用して得られた濾液50mlを0.1モル/lHCl水溶液によって第1の終点まで滴定した。超吸収体を含まない対応する溶液(85mlの0.9重量%NaCl溶液+15mlの0.1モル/lNaOH溶液)を対照として使用した。
【0096】
アンモニア結合性は以下のように決定した。
【数3】


式中、
w:アンモニア結合性
:対照のHCl溶液の消費量(ml)
:超吸収体を含む溶液のHCl溶液の消費量(ml)
c:HCl溶液の濃度(0.1モル/l)
M:アンモニアのモル質量(17.03g/モル)
F:100ml/50mlから計算した係数(2)
m:使用した超吸収体の量(g)
【0097】
6回の測定を行い、6回の測定の平均値をアンモニア結合性とした。
【0098】
実施例
1.未処理の吸水性ポリマー構造体の調製(工程i))
【0099】
2,400gのアクリル酸、1,332.2gのNaOH(濃度:50%)、4,057.4gの脱イオン水、2.14gのポリエチレングリコール300ジアクリレート(活性物質含有量:78.4重量%)、6.92gのモノアリルポリエチレングリコール450モノアクリレート(活性物質含有量:72.8重量%)、65.36gのポリエチレングリコール750モノメタクリレートメチルエーテル(活性物質含有量:73.4重量%)からなるモノマー溶液から窒素フラッシュによって溶存酸素を除去した。次に、モノマー溶液を開始温度(4℃)に冷却した。開始温度に達した後、開始剤溶液(77.6gのHOに溶解した2.4gのペルオキシ硫酸ナトリウム、15.44gのHOに溶解した0.56gの30%過酸化水素溶液、39.88gのHOに溶解した0.12gのアスコルビン酸)を添加した。約100℃の終了温度に達した後、得られたゲルを肉挽機で粉砕し、乾燥キャビネット内において150℃で2時間乾燥した。乾燥したポリマーを粗く砕き、2mmの篩いを有する粉砕機「SM10」で粉砕し、粒径が150〜850μmの粉末(=粉末A)に篩い分けた。
【0100】
2.表面後架橋(工程i))
【0101】
実験室用ミキサー内において、粉末Aを炭酸エチレン(粉末Aに対して1重量%)及び水(粉末Aに対して3重量%)からなる水溶液と混合した後、混合物をオーブン内において150℃で30分間加熱した(=粉末B)。
【0102】
3.本発明に係る粉末のコーティング
【0103】
表1に示す量の乾燥Aerosil(登録商標)200、表1に示す量のクエン酸、表1に示す量の水(溶媒)を粉末Bに添加した(成分量(重量%)は吸水性ポリマー構造体に基づく)。0.9mmのカニューレを備えた注射器を使用して、クエン酸を50重量%クエン酸溶液として粉末Bに750rpmで添加した。Aerosil(登録商標)200及びクエン酸を添加する場合には、Aerosil(登録商標)200を乾燥状態の粉末Bと撹拌した後、混合物をローラーベンチ上で30分間均質化し、次にクエン酸溶液を注射器によって添加した。
【表1】

1)n.i.=比較例
2)i.=本発明

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性ポリマー構造体の製造方法であって、
i)70モル%以下の中和度を有する未処理の吸水性ポリマー構造体を用意する工程と、
ii)前記未処理の吸水性ポリマー構造体を酸性成分と接触させる工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記工程i)で用意する前記未処理の吸水性ポリマー構造体の中和度が60モル%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程i)で用意する前記未処理の吸水性ポリマー構造体の中和度が55モル%以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程i)で用意する前記未処理の吸水性ポリマー構造体を表面後架橋する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程ii)において、前記吸水性ポリマー構造体をさらに無機成分と接触させる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記無機成分がケイ素及び酸素を含む化合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ケイ素及び酸素を含む化合物が粉末状である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程ii)において、前記未処理の吸水性ポリマー構造体を、前記工程i)で用意する前記未処理の吸水性ポリマー構造体の重量に対して0.001〜5重量%の前記無機成分と接触させる、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸性成分が有機酸である、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記有機酸が、モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機酸が、アニス酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリオキシル酸、グリコール酸、グリセリンリン酸、グルタル酸、クロロ酢酸、クロロプロピオン酸、けい皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、フマル酸、プロピオン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、マロン酸、酪酸、イソ酪酸、イミジノ酢酸、リンゴ酸、イソチオン酸、メチルマレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、クロトン酸、シュウ酸、サリチル酸、グルコン酸、没食子酸、ソルビン酸、p−オキシ安息香酸からなる群から選択される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記工程ii)において、前記未処理の吸水性ポリマー構造体を、前記酸性成分を含む流体Fと接触させる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記工程ii)において、前記未処理の吸水性ポリマー構造体を、前記工程i)で用意する前記未処理の吸水性ポリマー構造体の重量に対して0.1〜20重量%の前記酸性成分と接触させる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法によって得られる吸水性ポリマー構造体であって、内部領域及び前記内部領域を取り囲む外部領域を含み、前記外部領域が酸性成分及び任意の粉末状成分と接触済みであり、以下の特性の少なくとも1つを有する吸水性ポリマー構造体。
(β1) ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が少なくとも27g/g。
(β2)以下の式で定義されるSAP指数(SAPI)が、少なくとも140cm/g。
(数1)
SAP指数=(RET×SFC)/pH
式中、
RBT=ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率
SFC=明細書に記載する試験方法に準拠して測定した透過性
pH=ERT 400.2−02に準拠して測定したpH
(β3)ERT 442.2−02に準拠して50g/cmの圧力下で測定した吸収率が20g/g以下。
(β4)明細書に記載する試験方法に準拠して測定したアンモニア結合性が少なくとも98mg/g。
(β5)ERT 400.2−02に準拠して測定したpHが6.5未満。
【請求項15】
吸水性ポリマー構造体であって、内部領域及び前記内部領域を取り囲む外部領域を含み、前記外部領域が酸性成分及び任意の無機(好ましくは粉末状)成分と接触済みであり、以下の特性を有する吸水性ポリマー構造体。
(β1)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が少なくとも27g/g。
(β2)以下の式で定義されるSAP指数(SAPI)が、少なくとも140cm/g。
(数2)
SAP指数=(RET×SFC)/pH
式中、
RBT=ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率
SFC=明細書に記載する試験方法に準拠して測定した透過性
pH=ERT 400.2−02に準拠して測定したpH
【請求項16】
請求項13、14又は15に記載の吸水性ポリマー構造体と、基材と、を含む複合体。
【請求項17】
請求項13、14又は15に記載の吸水性ポリマー構造体と、基材と、必要に応じて添加剤とを接触させることを含む、複合体の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法によって得られる複合体。
【請求項19】
請求項13、14又は15に記載の吸水性ポリマー構造体又は請求項16又は18に記載の複合体を含む、発泡体、成形品、繊維、シート、フィルム、ケーブル、シール材、吸液性衛生用品、植物・菌類生育調節剤用担体、包装材料、土壌添加剤又は建設材料。
【請求項20】
請求項13、14又は15に記載の吸水性ポリマー構造体又は請求項16又は18に記載の複合体の、発泡体、成形品、繊維、シート、フィルム、ケーブル、シール材、吸液性衛生用品、植物・菌類生育調節剤用担体、包装材料、活性化合物の制御放出のための土壌添加剤又は建設材料における使用。

【公表番号】特表2010−518213(P2010−518213A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548689(P2009−548689)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051505
【国際公開番号】WO2008/095983
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(308007985)エフォニック ストックハウゼン ゲーエムベーハー (12)
【Fターム(参考)】