説明

高いロフトの不織シート材およびその作成方法

アジア製ボール紙およびスクリム層を含む不織音響シート材、ならびにその作成方法が提供される。当該作成方法は、アジア製ボール紙を供給し、ボール紙を所定の大きさの断片に細分することを含む。さらに、ボール紙のより小さい断片を、熱接合可能織物繊維およびスフと混合して、実質的に均質な混合物を形成し、混合物からウェブを形成する。次に、ウェブの構成成分を熱的に結合させて、所望の厚さのマットを作成する。さらに、最初に作成されたマットの元の厚さを維持しながら、スクリム層をマットの少なくとも一方側に積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は2010年2月9日に提出された米国仮出願連続番号第61/302,767号の優先権を主張し、2010年3月9日に提出された米国特許出願第12/720,119号の一部継続出願であり、これは現在米国特許第7,744,143号として登録されている、2008年1月9日に提出された米国特許出願第11/971,484号の分割出願であり、米国特許出願第12/720,119号および米国特許第7,744,143号の両方は、2007年1月10日に提出された米国仮出願連続番号第60/884,368号および2007年1月11日に提出された米国仮出願連続番号第60/884,534号の優先権を主張し、その全体は引用により本明細書において援用する。
【0002】
発明の背景
1.技術分野
本発明は不織シートおよびその作成方法に一般に関し、より特定的には通常は再処理に適さない廃棄物材料成分、特にアジア製のボール紙を含む混合物から少なくとも部分的に作成される音響シート、熱シートおよび/または構造シートに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
不織布地および材料の製造に伴う費用を削減し、環境への潜在的に負の影響を最小限にするために、多くの民生品はリサイクルされた成分を用いて作成されている。たとえば、米国の自動車メーカーは、吸音材料および/または断熱材料を含む、さまざまな利用法を有する不織布地および材料を作成するためにリサイクル材を用いる。音を吸収する車両パネルを構成するために用いられる一部の回収材料またはリサイクル材料には、たとえば綿、ポリエステル、ナイロンまたはリサイクル布地繊維の混合物といった織物再生毛糸を含む。綿再生毛糸は、未使用のまたはリサイクルされた布地スクラップからなり、混合されて縫われて不織布地を形成する。リサイクルされた標準のボール紙または繊維から作成され、油を吸収するために限定された基準で用いられる他の製品としては、エコペーパーがある。この製品は標準的なボール紙を使用し、それを難燃性、防かび性、または埃を出さないようにする添加物を含んでいない。
【0004】
米国の商社および民生品製造業者、たとえば自動車用部品および相手先製品製造業者は、低級な「アジア製のボール紙」からなる箱や容器で、さまざまなアジアの国から、たとえば中国や韓国から、多くの荷物を受取る。アジア製ボール紙は、既にリサイクルされた松材のボール紙を基に、ならびに竹や米の繊維を基に、非常に短くかつ細い繊維の成分を有する。したがって、アジア製ボール紙を製紙工場での処理によって紙、厚紙、または他の構造パネル製品にリサイクルする試みは失敗に終わっている。この失敗の理由は、紙/ボール紙製造処理の際にパルプを運ぶために用いられるふるいまたは網目を、アジア製ボール紙の非常に細かい成分が通り抜けてしまうからである。アジア製ボール紙の流れ出た成分は、リサイクル処理の廃棄物流れを介して環境に流れ出てしまう。さらに、アジア製ボール紙の細かい成分は、上記の通り抜け以外にも、処理の際の細かい繊維の固有の凝集により、「ロフトの高い低密度の」最終生成物の製造を難しいものにしている。したがって、少なくとも上記の理由により、アジア製ボール紙は廃棄物であると考えられており、それにより比較的高い人件費で再生可能な標準ボール紙から選り分けられて、埋立地に送られる(選り分けの際、アジア製ボール紙はその比較的脆い構造およびその薄茶色または緑っぽい色により、標準的ボール紙と容易に識別可能であり)、またリサイクルされたボール紙のベイルに5%を上回るアジア製ボール紙が混合されている場合は、そのベイル全部がスクラップとなり、これは製品製造業者および環境の両方にとって相対的に高いコストをもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一局面に従い、アジア製ボール紙で不織シート材を作成する方法が提供され、作成されたシート材は、構造パネルおよび/または音響パネルおよび/または熱パネルを形成するのに有用である。当該方法は、アジア製ボール紙を供給し、ボール紙を所定の大きさの断片に細分するステップを含む。さらに、ボール紙のより小さい断片を熱接合可能織物繊維およびスフと混合して、実質的に均質な混合物を形成し、混合物からウェブを作成する。次にウェブの構成成分を熱的に結合して、所望の所定厚さのマットを生成する。さらに、最初に作成されたマットの元の厚さを維持しながら、スクリム層をマットの少なくとも一方側に積層する。
【0006】
本発明の別の局面に従い、当該方法は難燃剤、殺生物剤および結合剤を含む化学混合物をマットの少なくとも一表面に与え、最初に作成されたマットの元の厚さを維持することを含む。次に、スクリムをマットに積層する前に、マットを乾燥および硬化させる。
【0007】
本発明の他の局面に従い、当該方法はマットを巻き上げ、巻き上げ処理の際にマットに与えられる張力を制御して、マットの「元の形成された厚さ」を圧縮することを避ける。
【0008】
本発明のさらに別の局面に従い、音響不織シートが提供される。不織シートは、所望の厚さに熱的に結合されたアジア製ボール紙、熱接合可能織物繊維、およびスフからなるマットを含む。さらに、スクリム層は、ニップを用いずに、または用いた場合は圧力を少ししかもしくは全くかけずに、マットの少なくとも一方側に取付けられ、そこでマットは最初に作成された元の厚さを保つまたは実質的に保つ。
【0009】
本発明の別の局面に従い、音響不織シートは、難燃剤、殺生物剤および結合剤を含む化学混合物を含み、化学混合物はウェブの厚さを保つ方法を用いて、ウェブの少なくとも一表面に与えられ、乾燥および硬化される。
【0010】
したがって、本発明は音響、熱的または構造的用途に使用するのに適するような不織シートを提供し、さらに少なくとも部分的にアジア製ボール紙をリサイクルし、自動車を含む多様な用途で用いることができる、製造段階の間低密度のマットを保つ、「ロフトの高い」不織の音響、熱またはその他の構造パネルを作成することにより、不織シートを作成する方法を提供する。
【0011】
本発明の上記および他の局面、特徴ならびに利点は、好ましい実施例および最良モードの詳細な説明、添付の請求項および図面と併せて検討されると、より容易に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好ましい局面に従い作成される、不織シートの部分的斜視図である。
【図2】本発明の一局面に従う、不織シートを作成する方法を示す処理のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましい実施例の詳細な説明
図面をより詳細に参照すると、図1は本発明の一局面に従い構成された、単にシート材またはパネルとも呼ばれ、総括的に10で示される、高いロフトのグリーンな不織シートを示す。パネル10はたとえば自動車部品用に、さまざまな用途で用いることができるよう構成できる。パネル10は、優れたノイズ減少または減衰特性をもたらす「ロフトの高い」(すなわち、低密度の)マット12を有して作成され、特に音響パネルとして優れた機能を呈する。さらに、排気系の近くまたはたとえば車両エンジンコンパートメント内のように、温度の高い環境での使用が意図されるのなら、パネル10は難燃性特性を有して作成することができる。パネル10は、少なくとも部分的に、アジア製ボール紙14、スフ、および熱接合可能繊維、たとえば総括的に16で示される複合繊維からなる。さらに、パネル10は、難燃性剤、殺生物剤および結合剤を含む化学混合物コート18を用いて作成することができ、化学混合物コートは少なくとも1つの外面に与えられ、乾燥および硬化される。さらに、パネル10はマット12の少なくとも一方側に接着されたスクリム層20を含み、スクリム層20は、ニップローラを用いた場合は圧力を少ししかもしくは全くかけずに、またはニップローラを用いずに、取付けられ、それにより最初に作成されたマット12の元の厚さを保つまたは実質的に保つ。したがって、完成したパネル10は、スクリム層20を有して、低密度構造、「高いロフト」を提供し、それにより優れたノイズ減衰特性を与える。さらに、パネル10の少なくとも一部が使用済みまたはリサイクルされたアジア製ボール紙14から作成されるので、再生したアジア製ボール紙が埋立地に送られる、燃やされる、または廃棄物として分類されないことにより、環境に優しい。
【0014】
ボール紙の含有量は、100%のアジア製ボール紙と混合またはアジア製ボール紙から供給されたか否に拘らず、構成されるパネル10の所望の性能特性に依存して、好ましくは全体のウェブ重量の約25から99重量%(wt%)の間にある。アジア製ボール紙14は、たとえば竹繊維、黄麻繊維、米繊維などの非常に短くかつ細いリサイクル繊維、および/または他のスクラップ/廃棄物材の品質が劣っている構成成分から作成されていることにより、低級な再生できないボール紙であると考えられている。したがって、アジア製ボール紙は典型的には、そのままであろうと、ベイル化されるなどして回収された使用済みボール紙積荷に含まれていようと、深刻なリサイクル不可能な汚染物質であると見なされている。したがって、アジア製ボール紙が標準的な米国製ボール紙または他のより品質の高いボール紙とともにベイル化されている場合、そのベイル全体または積荷全体がリサイクル不可能な廃棄物であると一般的に見なされる。アジア製ボール紙は、そのペラペラな状態と特徴的な薄茶色、黄色、または緑っぽい色によって、より高品質な米国製ボール紙と容易に区別することができる。したがって、アジア製ボール紙は、より高品質な米国製ボール紙から典型的に分離され、埋立地に送られ、焼却などして廃棄される。
【0015】
アジア製ボール紙がリサイクルできないのは、アジア製ボール紙を構成するのに用いられる劣った繊維の構成成分に由来する。その繊維は一般に非常に短く、それゆえ非常に弱い。アジア製ボール紙の繊維や他の粉末成分の細かさにより、アジア製ボール紙がより長い繊維を有する標準的ボール紙とともに既知の「湿式」リサイクル処理で処理されると、アジア製ボール紙の成分はふるいを通って流され、廃棄物流に運ばれて、リサイクル装置を詰まらせたり損傷させたりする。したがって、本発明の一局面に従い、パネル10の作成は「乾式」ウェビング処理で行なわれ、それによりその製造において長さが0.2mm未満の繊維(「細粒」と呼ぶ)とともに品質の劣ったアジア製ボール紙の使用を可能にする。
【0016】
スフは低密度マットでも高さを維持し、軽く、かつ高いレベルの吸音性を与える適切な織物繊維から提供でき、熱接合可能な繊維は、たとえばポリエチレン、PETもしくはナイロンの繊維などの低融点ポリマー材料として、ならびに/またはポリプロピレンのような外側被覆が融点を超えて加熱されると溶融する熱可塑性複合繊維として供給される。図2のフロー図に示されるように、パネル10を作成するプロセスは、細分されたアジア製ボール紙14をスフおよび熱接合可能繊維16と混合または合せてウェブを形成することを含む。たとえばランドーマシンで行なうことができるウェビングプロセスは、均質に混合された繊維/紙マットまたはウェブを形成し、ボール紙14の繊維は任意に配向されている。
【0017】
次に、ウェブを形成すると、ウェブはたとえばオーブンにおいて熱接合可能繊維を溶融するのに適する温度(たとえば、低融点の複合繊維の外側部分の融点は約110℃から180℃であり得る)に加熱され、それによりアジア製ボール紙14の混合をスフおよび熱接合可能繊維16と熱的に結合させる。こうして、ウェブはマット12に形成され、マット12は所望の高いロフトの低密度のより大きい厚さtを有する。このより大きい厚さがなければ、自動車メーカーが一般的に求めている、より低い可聴周波数をマット12によって吸収することができない。
【0018】
次に、マット12の形成および冷却の後、たとえば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムもしくはホウ酸のような耐熱または難燃性(FR)コート、殺生物剤および結合剤のうちの少なくとも1つを含み、一例であるが+41のTgを有するSPRに限定されない、化学混合物18が、たとえばスプレー処理において、マット12の少なくとも一方側に、さらに好ましくは外面全部に与えられる。化学混合物18のスプレー用途は、マット12の厚さtを維持する働きをし、それにより高いロフト、低密度を保ち、それによりノイズ減衰特性をもたらす。混合物18が与えられると、混合物18はマット12上で乾燥および硬化される。
【0019】
もたらされる被覆された不織マット12には、スクリム層20と呼ばれる薄い不織繊維または不浸透性被膜層が、一方側または両側に取付けまたは接着される。スクリム層20は、概して22で示される適切な耐熱接着剤を用いて、マット12の一方側または両側に接合される。マット12の高いロフトおよび低密度を、マットが最初に形成された元のまま保つためには、スクリム層20の接着の際にはマット12の厚さtを維持または実質的に維持するのが重要であり、それによりパネル10に所望のノイズ減衰特性を与える。これは、ニップローラを用いずに、または用いた場合は圧力を少ししかもしくは全くかけないことにより得られる。ニップロールにより高い圧力が用いられると、マット12の厚さtを圧縮する傾向があり、それにより密度が増加し、厚さが減少し、それにより目標のノイズ減衰特性を低下させる。保たれる厚さのレベルが高ければ、スクリム層20とともに、より低い可聴周波数を減衰させることになる。
【0020】
最後に、シート10が作成されると、シート10はロールのような特殊な巻き上げ処理を用いて保管され、その巻き上げ処理はウェブ10が製造された元の厚さtを保つことを可能にする。この巻き上げ処理は、シート10に所定の最大張力、好ましくは実質的に均一な張力を与えるよう制御される。したがって、マット12の厚さtが減少しないよう、その張力が選択される。
【0021】
本発明の多くの変形および変更は、上記に照らして可能である。添付の請求の範囲内において、本発明は具体的に記載した態様と異なる態様で実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジア製ボール紙を用いて不織シートを作成する方法であって、
アジア製ボール紙を供給するステップと、
アジア製ボール紙を所定のより小さい断片に細分するステップと、
前記より小さい断片を熱接合可能な織物繊維およびスフと混合して、実質的に均質な混合物を形成するステップと、
混合物からウェブを形成するステップと、
ウェブの構成成分を熱的に結合して、所望の厚さのマットを作成するステップと、
マットの厚さを維持しながら、スクリム層をマットの少なくとも一方側に積層するステップとを備える、方法。
【請求項2】
難燃性剤、殺生物剤、および結合剤の少なくとも1つを含む化学混合物を、マットの厚さを維持しながら、マットの少なくとも一表面に与えるステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
難燃性剤、殺生物剤、および結合剤を含む化学混合物を提供するステップをさらに備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
スプレー処理を用いて化学混合物を与えるステップをさらに備える、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
化学混合物を、マットのスクリム層とは反対側に与えるステップをさらに備える、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
化学混合物を乾燥および硬化させるステップをさらに備える、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
スクリム層をマットに積層する前に、乾燥および硬化を行なうステップをさらに備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
スクリム層を不浸透性層として設けるステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
マットを巻き上げ、巻き上げ処理の際にマットの厚さを維持するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
巻き上げ処理の際、マットに与えられる張力を制御するステップをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ニップローラを用いることなく、スクリム層をマットに積層するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
所望の厚さに熱的に結合されたアジア製ボール紙、熱接合可能織物繊維およびスフからなるマットと、
前記マットの少なくとも一方側に接続されるスクリム層とを備え、前記マットは最初に生成された元の厚さを実質的に保つ、不織シート。
【請求項13】
前記マットの少なくとも一外面に対して与えられ、乾燥および硬化される化学混合物をさらに備え、前記化学混合物は難燃性剤、殺生物剤および結合剤の少なくとも1つを含む、請求項12に記載の不織シート。
【請求項14】
前記化学混合物は、前記難燃性剤、殺生物剤および結合剤の各々を含む、請求項13に記載の不織シート。
【請求項15】
前記化学混合物は、前記スクリム層に接着される側の前記マットに少なくとも与えられる、請求項13に記載の不織シート。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−519003(P2013−519003A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552156(P2012−552156)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2011/024136
【国際公開番号】WO2011/100281
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(503170721)フェデラル−モーグル パワートレイン インコーポレイテッド (32)
【氏名又は名称原語表記】Federal−Mogul Powertrain, Inc.
【住所又は居所原語表記】26555 Northwestern Highway, Southfield, Michigan 48034, U.S.A.
【Fターム(参考)】