説明

高い摩耗耐性を備えた通気性積層体およびその製造の方法

【課題】通気性かつ摩耗耐性であるのみならず、通気性を変動するように構成可能である材料を提供すること。
【解決手段】少なくとも、繊維を含む基板を備える第1の層;およびポリマーマトリックス内に分散された比較的硬い粒子を含む第2の層を備え、ここで、その第2の層が、その第1の層の少なくともいくらかの繊維に機械的に付着される、積層体を提供することにより、上記課題を解決する。上記第1の層は、嵩および強度を提供し、上記第2の層は、調節可能な通気性を提供するために、炭酸カルシウムのような硬い鉱物などを含み、ここで、この第2の層は、基板層の繊維の少なくともいくらかを少なくとも部分的にカプセル化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、通気性の積層体に関する。より詳細には、本発明は、水蒸気が透過可能であるが、静水圧ヘッドには抵抗性である積層体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
通気性である、すなわち、水蒸気は通過させるが、液体の水の貫通には抵抗性のままである材料に対する必要性が多くの産業に存在している。このような材料の多くの使用の2〜3の例は、ビルの外装および保護衣裳を含む。
【0003】
ビル外装に関し、外部羽目板および/または窓が設置される前に、構築段階の間で、構造物の内部を、雨、風および埃のような環境要素から保護することばしばしば必要である。従って、部分的に構築された構造物の外部を通気性材料中に包むことが一般的な慣行である。いくつかのこのような材料が市場で入手可能であり、例えば、Wilmington、Delaware、米国のE.I.duPont de Nemours & Co.によって製造されるTyvek(商標名)、BBA Group plc、London、英国によって販売されるTypar(商標名)、およびMidland、Michigan、米国のDow Chemical Co.によって販売されるWeatherMate(商標名)を含む。好ましくは、これらの材料は、雨が材料を貫通することを許容することなく、ハリケーンの風力に耐え得るべきである。
【0004】
このような材料は、水貫通には抵抗性であるべきであるが、それらはまた、水蒸気には透過性でなければならない。詳細には、建物構造物内の湿度増強は、カビおよびミルデューを生じ得、これは、建物に構造的および美観的損傷を引き起こし得、そして建物の住居人に健康危害を生成し得る。従って、水蒸気は、構造物内側の湿度を最小にするために材料を通過可能でなければならない。
【0005】
保護的衣裳(例えば、環境危険物および環境廃棄物清掃従事者が着る保護衣類)に関し、この材料は液体による貫通には抵抗性であるが、その結果、使用者が、過熱されず、そして彼または彼女自身の発汗から不快にならないように、水蒸気が出ることを可能にすることが必要である。
【0006】
湿気蒸気に対する透過性は、任意の合理的な試験手順に従って、評価および度合いを付けられ得る。1つのこのような手順は、ASTM E−96法AまたはBである。この試験によれば、透過度は、「透過(perm)」数として与えられ、ここで、1permは、試験仕様で特定された試験条件の下で材料を通過する、1日あたり1平方メートルあたり約7.2グラムの水蒸気である。この試験のための完全な情報については、このASTM試験標準への参照がなされ得る。しかし、この試験は、一般に、室温で、50%の相対湿度のΔPで行われる。
【0007】
液体に対する抵抗性は、任意の合理的な試験手順で測定され得る。1つのこのような試験は、AATCC試験法127(耐水性:静水圧試験)である。いくつかの適用では、液体に抵抗することが所望される。家外装の場合には、ハリケーンの風力が、雨を構造物に対して駆動し得る。上記の試験方法に基づき、210cmを超える水ヘッド圧に耐えることが所望される。その他の制限が、適用および耐えるべき液体に依存して要求され得る。
【0008】
蒸気透過性の程度は、適用、そして地理的位置にさえ従って変動し得る。例えば、米国では、メーソンディクソン線の南では、構造物の外側ではより高い湿度状態および構造物の内側ではより乾燥した状態の空気を有することがより一般的であり、家外装材料に対する代表的な所望のperm評価は、かなり低く、すなわち、5〜15permの範囲にされる傾向にある。しかし、メーソンディクソン線の北では、代表的には、構造物の内側ではより高い湿度状態が存在し、そして構造物の外側ではより冷たい乾燥した空気が存在し(特に秋、冬および早春)、より高い水蒸気透過、すなわち、約35〜100permの大きさが一般に所望される。類似の状況が、保護衣裳について存在する。保護が所望される特定の汚染または危険材料に依存して、保護衣裳の透過度評価は、数桁の大きさに亘る範囲であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通気性であることに加えて、これらの材料は、摩耗に耐性であるべきである。材料が、ベース材料の繊維を剥き出す点まで摩耗されるようになる場合、それは、もはや耐水性ではない可能性が高い。例えば、これらの材料は、埃および汚物を運ぶ強風(家外装の場合)またはそれ自体、設備もしくは地面に対する材料摩擦(家外装および保護衣裳の両方の場合)の結果として、顕著な摩耗に曝され得る。材料が、もはや湿度抵抗性でない点まで摩耗されると、それは、置換されるか、またはつくろわなければならない。
【0010】
従って、所望されることは、通気性かつ摩耗耐性であるのみならず、通気性を変動するように構成可能である材料である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明の1つの局面によれば、水貫通に対する高い抵抗性および高い摩耗耐性を有する積層体材料が提供される。この材料は、特定の必要性に適するように種々の程度の通気性を備えて製造され得る。この積層体は、少なくとも2つの層、すなわち、嵩(bulk)および強度を提供するための第1の層、および調節可能な通気性を提供するために、炭酸カルシウムのような硬い鉱物などを含む第2の層を備え、ここで、この第2の層は、基板層の繊維の少なくともいくらかを少なくとも部分的にカプセル化する。
【0012】
上記第2の層は、比較的硬い粒子が分散されるポリマーマトリックスを含む。この粒子は、この被覆に硬度を与えるのみならず、その通気性を促進する。すなわち、一旦、積層体が形成されると、それは、これら粒子の周りに微小間隙を生成する公知の技法を用いて活性化される。これら間隙は、水貫通に抵抗するためには十分小さいが、蒸気貫通を許容するためには十分大きい。この積層体の活性化は、好ましくは、インターフィットギア(intermeshing gear)活性化によって達成される。なぜなら、これは、例えば、張り枠伸張に対してより攻撃的な活性化を許容するからであり、そして活性化ギアの係合の深さが、特定の適用に依存して積層体の所望の通気性を得るために変動され得るからである。また、上記被覆中の粒子の濃度は、積層体の摩耗耐性および通気性を増加または減少するために、それぞれ増加または減少され得る。
【0013】
本発明の別の局面は、市販され入手可能な基板が第2の層で被覆され、得られる積層体に所望の程度の磨耗耐性および通気性を与える、積層体を作製するプロセスである。好ましい実施形態では、このプロセスは、分散された粒子を含む第2の層を押出す工程、減圧被覆プロセスを用いて上記基板層に上記第2の層を直ちに積層する工程、そして次にこの積層体を活性化する工程を包含する。
【0014】
したがって、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)積層体であって:
少なくとも、繊維を含む基板を備える第1の層;および
ポリマーマトリックス内に分散された比較的硬い粒子を含む第2の層を備え、
ここで、その第2の層が、その第1の層の少なくともいくらかの繊維に機械的に付着される、積層体。
(項目2)上記第2の層が、上記繊維の少なくともいくらかをカプセル化する、項目1に記載の積層体。
(項目3)上記基板が、織られていない、項目1に記載の積層体。
(項目4)上記第2の層が、炭酸カルシウムおよびベースポリマーの組成物を含む、項目1に記載の積層体。
(項目5)上記第2の層が、比較的硬い鉱物、ベースポリマー、および少なくとも1つの着色剤、プロセス補助剤、UV耐性剤、難燃剤、抗微生物剤、抗げっ歯類剤、および殺虫剤の組成物を含む、項目1に記載の積層体。
(項目6)上記第2の層が:
50〜70重量%の粒子分散物;および
18〜38重量%のベースポリマーを備える、項目1に記載の積層体。
(項目7)上記第2の層が:
60重量%の炭酸カルシウムブレンド;および
28重量%の高密度ポリエチレンを備える、項目1に記載の積層体。
(項目8)上記炭酸カルシウムブレンドが、線状低密度樹脂ベース中に約80重量%の炭酸カルシウムを含む、項目6に記載の積層体。
(項目9)上記積層体が、上記第2の層中に微小間隙を含み、それによってその積層体が通気性である、項目1に記載の積層体。
(項目10)上記積層体が、TAPPI T476摩耗試験法に従って少なくとも200サイクルの摩耗耐性を有する、項目1に記載の積層体。
(項目11)上記積層体が、TAPPI T476摩耗試験法に従って少なくとも1000サイクルの摩耗耐性を有する、項目1に記載の積層体。
(項目12)上記積層体が、活性化されている、項目1に記載の積層体。
(項目13)摩耗耐性の積層体を製造する方法であって:
篩様面上に、第1の通気性の繊維基板を提供する工程;
その篩様面に減圧を適用する工程;
ポリマーマトリックス中に分散された比較的硬い粒子を含む第2の層を押出す工程;
積層体を形成するために、その第2の層を、なお熱可塑性状態の間に、その篩様面上の基板上に供給する工程であって、その減圧が、その基板の膜の繊維の少なくともいくらかを通って、その基板の膜の繊維の少なくともいくらかの周りで、その繊維に機械的にロックするようにその膜を引くに十分に強い工程、を包含する、方法。
(項目14)上記積層体を活性化する工程、をさらに包含する、項目13に記載の方法。
(項目15)上記第2の層中に微小間隙を生成するように、上記積層体を伸張する工程をさらに包含する、項目13に記載の方法。
(項目16)上記伸張する工程が、上記積層体をインターフィットギアを通過させることを含む、項目15に記載の方法。
(項目16a)上記伸張する工程が、上記積層体をインターフィットギアを通過させることを含む、項目14に記載の方法。
(項目17)上記減圧が、10〜20インチ(254〜508mm)水銀の範囲内で付与される、項目13に記載の方法。
(項目18)上記減圧が、約14インチ(356mm)水銀で付与される、項目13に記載の方法。
(項目19)項目13に記載の方法によって製造される積層体であって、上記第2の層が:
55〜65重量%の粒子分散物;および
23〜33重量%のベースポリマーを備える、積層体。
(項目19a)項目13に記載の積層体であって、上記第2の層が:
55〜65重量%の粒子分散物;および
23〜33重量%のベースポリマーを備える、積層体。
(項目20)上記粒子分散物が、線状低密度樹脂ベース中に約80%の炭酸カルシウムを含む、項目19に記載の積層体。
(項目21)摩耗耐性積層体を製造する方法であって:
繊維を含む通気性基板を提供する工程;
ポリマーマトリックス中に分散された比較的硬い粒子を含む膜を押出す工程;および
その膜を、その膜がなお熱可塑性状態にある間にその基板上に減圧被覆する工程、を包含する、方法。
(項目22)上記減圧被覆する工程の間に、上記膜が、上記基板の膜の少なくともいくらかの繊維をカプセル化する、項目21に記載の方法。
(項目23)上記減圧被覆する工程の次に、上記膜を活性化する工程をさらに包含する、項目22に記載の方法。
(項目24)上記減圧被覆する工程が、約2インチ(51mm)水銀より大きい減圧を付与することを含む、項目22に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の原理に従う積層体の生産のためのデバイスの概略図である。
【図2】図2は、本発明の原理に従う積層体の走査電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、本発明の原理に従って作製された例示の積層体の特徴を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明は、少なくとも2つの層を備える積層体に関する。この積層体は、以下にさらに論議されるように、2つより多い層を備え得るが、嵩および強度を提供するための第1の層、ならびに所望のレベルの通気性および摩耗耐性を提供するための第2の層を本質的に備える。
【0017】
上記第1の層は、それを通って減圧に引かれ得る任意の従来の繊維性材料または穿孔膜であり得る基板を含む。好ましくは、この基板は、繊維性材料である。この繊維性材料は、スパンボンデッド、すかれた(カーデッド)、溶融吹込、湿展開、水もつれ(hydroentangled)不織布のような合成または天然繊維の不織布、または織物、網織、またはスクリム(scrim)のような織られた材料を含み得る。この基板にための適切な材料は周知であり、そして、例えば、低密度ポリオレフィンおよび高密度ポリオレフィン、メタロセンで触媒されたポリオレフィン、セルロース、再生セルロースおよびその他のセルロース誘導体、ならびにガラスファイバを含む。好ましい実施形態では、この基板は、ポリプロピレン繊維を含むスパンボンデッド不織布である。
【0018】
上記基板は任意の合理的な重量であり得、そして所定の適用のために所望される嵩および強度に基づいて選択されなければならない。代表的には、この基板は、約10〜約100g/mの範囲である。例えば、この基板は、家外装には約70g/mであり得、そして保護衣裳には約40g/mであり得る。
【0019】
上記第2の層は、その中に分散された粒子を有するポリマーマトリックスである。好ましくは、上記第2の層は、以下に記載されるように粒子を懸濁し得、そして一旦押出されるか、または重合されると、有意な程度まで破壊されることなく活性化され得る、1つまたは複数の層のカーテンとして押出され得る押出された熱可塑性組成物から形成される。本明細書で用いられるとき、「活性化」は、上記第2の層中に微小間隙を生成するに十分な程度まで積層体を初期伸張することをいう。
【0020】
好ましい実施形態では、上記組成物は、押出しの前に2つの部分−粒子分散物および熱可塑性ベースポリマーを含む。上記第2の層の組成は、本明細書では、これら2つの主要な成分に関して記載されるが、これは、例示の目的のためになされ、そして本発明は、2つの部分の組成物に制限されないことが理解されるべきである。例えば、粒子分散物をまとめて調製することを避けるために、これら粒子がベースポリマーと直接混合されることは本発明の範囲内である。さらに、第2の層の組成物を、押出しのときに混合される3つ以上のサブ組成物にさらに分割することは本発明の範囲内である。
【0021】
粒子分散物は、組成物中の個々の粒子をホモジュナイズするために供され、良好な押出しを可能にする。すなわち、押出しの前に、活性化の間に、所望の微小間隙よりはむしろ所望されない穴の形成を引き起こし得る塊を防ぐために可能な限り最大の程度まで組成物内で個々に分散された粒子を有することが所望される。
【0022】
この粒子分散物は、改良された摩耗耐性のような異なる特徴を与え、単層または複数層のカーテンいずれかで活性化されるとき、粒子の周りに依然として微小間隙を生じる、異なるサイズまたはタイプの充填剤で重層され得る。
【0023】
この粒子分散物は、主に、比較的硬い粒子およびキャリア樹脂を含む。適切な粒子は、約1.2ミクロン〜+3σである5.0ミクロンのサイズ、およびモース硬度スケールで少なくとも約3の硬度を有するような粒子を含む。本明細書で用いるとき、用語「比較的硬い」とは、少なくとも3の硬度を有する粒子をいう。適切な比較的硬い粒子は、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化ケイ素、および硫酸バリウム、ならびにこれらおよびその他の粒子の混合物を含む。好ましい実施形態では、これら粒子は、その広範な利用可能性、合理的なコスト、および硬度に起因して炭酸カルシウムである。
【0024】
適切なキャリア樹脂は、ベースポリマーと比較して相対的に低い粘度を有する樹脂である。キャリア樹脂は、代表的には、分散物のレベルを改良するために調合される鉱物に対し所望のレベルの親和性を有するように選択される。キャリア樹脂は、例えば、オクタンを基礎にした線状ポリエチレンであるDow2517、およびその組み合わせを含む。好ましい実施形態では、このキャリア樹脂は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂および炭酸カルシウムを含む。マスターバッチは、約0.0005〜0.002、好ましくは約0.001のメルトインデックス、そして約1.8〜約2g/cc、好ましくは約1.92g/ccの密度を有する。
【0025】
分散物中の粒子の濃度、サイズ、およびタイプは、積層体の摩耗耐性、および活性化の間にそれに付与され得る通気性の程度の両方に顕著に影響する。粒子のより高い%は、一般に、より大きな摩耗耐性を提供し、そしてより大きな通気性を許容する。粒子の濃度は変動し得るけれども、分散物中の比較的より高い粒子の装填が好ましいことが見出された。代表的には、分散物中の粒子濃度は、約55〜約95重量%、好ましくは約70〜約90重量%、そしてより好ましくは約80重量%である(そうでないことが述べられなければ、粒子分散物の成分濃度は、全体分散物の重量に対して述べられる。)。キャリア樹脂の濃度は、通常、粒子の濃度より少ない。代表的には、キャリア樹脂の濃度は、約5〜45重量%、好ましくは約10〜約40重量%、そしてより好ましくは約20%である。良好な結果は、約80重量%の粒子濃度および約20重量%のキャリア樹脂濃度で得られた。
【0026】
上記第2の層の組成物のその他の主要な成分はベースポリマーである。適切なベースポリマーは、公知の押出し可能な熱可塑性物、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、(エラストマーはより高価である傾向にあり、そしてそれ故、より好ましくないが)エラストマー、およびそれらの組み合わせを含む。好ましくは、このベースポリマーは、高密度ポリエチレン(HDPE)のような高密度ポリマーである。高密度は、膜の硬度を、そしてそれ故、摩耗耐性を改善し、そして活性化の間に膜に付与されるべきより大きな通気性を許容する。しかし、それは、ポリプロピレン、またはMDPEのような中間密度のポリマー、または線状低密度PE(LLDPE)であり得る。本発明のより好ましい実施形態では、このベースポリマーは、約0.950〜約0.965g/ccの密度、および約1.0〜約10.0のメルトインデックスを有するHDPEである。高度に好ましい実施形態では、このベースポリマーは、約0.962g/ccの密度、および約6.5のメルトインデックスを有するHDPEである。
【0027】
上記第2の層の組成物中の粒子分散物とベースポリマーとの相対濃度は、適用によって変動し得る。代表的には、粒子分散物は、約40〜約80重量%、好ましくは約50〜約70重量%、そしてより好ましくは約55〜約65重量%の濃度を有する(そうでないことが述べられなければ、組成物の成分濃度は、組成物全体の重量に対して述べられる。)。代表的には、ベースポリマーの濃度は、約8〜約48重量%、好ましくは約18〜約38重量%、そしてより好ましくは約23〜約33重量%である。良好な結果は、約60重量%の粒子分散物濃度、および約28重量%のベースポリマー濃度で得られた。
【0028】
粒子分散物およびベースポリマーに加え、上記組成物は、好ましくは、積層体の硬度または通気性に関連しない性質を生成物へいて与えるための添加物を含む。このような添加物は、例えば、着色剤(例えば、白色および不透明度を与える二酸化チタン)、プロセス補助剤(例えば、Wilmington、Delaware、米国のE.I.duPont de Nemours&Co.から入手可能なフルオロポリマープロセッシング補助ポリマーであるViton(商標名))、UV耐性薬剤、難燃剤、抗微生物剤、抗げっ歯類剤、殺虫剤、消臭剤、またはその他の添加物、およびそれらの組み合わせを含み得る。このような添加物の濃度は、本開示に基づき当業者によって容易に決定される。
【0029】
これらおよびその他のタイプの添加物は、あるいは、第1の基板層17に添加され得る。さらに、このような添加物は、組成物または製品の製造プロセスにかかわらず、本明細書中で論議される製品適用のタイプで有益であり得る。詳細には、家外装、保護衣裳、カーペット裏打ち、屋根中間層用材、アイスダム材料(ice dam material)、そして窓/ドア雨押さえはすべて、UV耐性材、難燃剤、抗生物剤、抗げっ歯類剤、殺虫剤、および/または消臭材のような添加物を取り込むことから利益を得る。
【0030】
二酸化チタンは、LDPEのベース中で、67%の活性成分TiOのブレンドであり得、そして1立方センチメートルあたり1.91グラムの密度、および2.5のメルトインデックスを有する。添加され得るUV阻害剤は、積層体のUV耐性を改善する。これは、LDPEのベース中の10.2%の活性成分(UV阻害剤)のブレンドであり得、そして1立方センチメートルあたり0.93グラムの密度、および10のメルトインデックスを有する。Viton(商標名)と称するプロセス補助剤は、Wilmington、Delaware、米国のE.I.duPont de Nemours&Co.から入手可能なフルオロポリマーである。これは、LDPEのベース中2%のViton(商標名)のブレンドであり得、そして1立方センチメートルあたり0.92グラムの密度、および1.0のメルトインデックスを有する。すべての%は重量である。
【0031】
上記第1の層および第2の層は、第2の層が上記基板の繊維の少なくともいくらかを少なくとも部分的にカプセル化するようにする減圧被覆プロセスを用いて積層される。この第2の層を第1の層に強力にロックするため、完全なカプセル化は要求されない。特に、摩耗耐性の大部分は、単に、この第2の層の材料が上記第1の層の複数の繊維を実質的に取り囲み、(それらの間の任意の化学的結合に加えて)それらの間で機械的連結を形成するようにさせることによって提供される。例えば、上記第1の層の繊維がほぼ円筒形であると仮定して(その他の形状が利用可能であるので、これは単なる例示である)、上記第2の層の材料が、それが半分を超える繊維を取り囲むように円筒形の幾何学的中心を超えて(減圧を経由して)押されることが所望される。それ故、この材料が硬化状態まで冷却するとき、それは、繊維に機械的にロックされる。繊維への機械的ロックのこの形態は、それが繊維のいくらかのみに対して生じる場合でさえ、全体の積層体に顕著な摩耗耐性を与える。
【0032】
特定の処方および押出しプロセスに依存して、繊維のいくらか、または全部の完全なカプセル化が生じても良いし、生じなくても良い。
【0033】
図1は、積層体を製造するための装置10を示す概略図である。本発明の1つの好ましい実施形態によれば、第2の層を構成する成分は、押出し装置のホッパー21中に導入され、そこで、それらは、熱可塑性状態まで加熱され、そして均一ブレンドを生成するために混合される。このブレンドは、例えば、華氏約450゜程度の非常に高い温度まで加熱され得、そして維持される。熱可塑性状態にある間に、このブレンドは、それを押出しダイ12中のスロット11を通過させることによるように押出され、第2の層13のシートを形成する。
【0034】
本発明の1つの好ましい実施形態では、上記第2の層は、1平方メートルあたり20〜200グラムの範囲の重量に押出される。より好ましい実施形態では、上記第2の層は、1平方メートルあたり25〜55グラムの範囲の重量に押出される。本発明のなおより好ましい実施形態では、上記第2の層は、1平方メートルあたり35〜45グラムの範囲の重量に押出される。本発明のなおより好ましい実施形態では、上記第2の層は、1平方メートルあたり40グラムの重量に押出される。
【0035】
ダイ12は、減圧被覆装置15に直ぐ隣接して位置決めされる。このダイ12は、好ましくは、減圧被覆装置15から約2〜3インチ以内に位置決めされる。
【0036】
減圧被覆装置15は、その中に複数のアパーチャを有する篩様面16aを有するドラム16を備える。減圧は、ドラム16の内側で生成される。基板17は、案内ローラー18の支援でドラム16の表面16a上に供給される。第2の層13は、熱可塑性状態にある間に、ダイの直ぐ外にある案内ローラー18によって基板17との表面−表面接触にもたらされる。ドラム16および案内ローラー18は、2つの層13および17が進行し、そしてドラム表面16a上に積層するように回転する。
【0037】
減圧の圧力は高くあるべきであるが、第2の層中に穴を生成する程には高くない。本発明の好ましい実施形態では、この減圧は、非常に強力な減圧であり、2インチ(51mm)水銀より大きな程度、好ましくは約10〜20インチ(254〜508mm)水銀、そしてより好ましくは約14インチ(356mm)水銀である。従って、基板17は、それがドラム上を進行されるとき、非常に強力に引かれ、そしてこのドラムの表面に非常に堅く保持される。この基板膜は、好ましくは、減圧が基板膜17を通って真っ直ぐに引き、そして第2の層13を基板膜17に対して強力に引くように高度に通気性である。なお熱可塑性状態の第2の層と組合せた減圧は、この第2の層が基板層17の繊維を通り、そしてこの繊維の周りに引かれるようにし、それによってこの第1の基板層を第2の層13の材料とを機械的にロックする。これ故、これら2つの層は、この第2の層が冷却するとき、互いに非常に堅く機械的に付着するようになる。それはまた、本発明の積層体の優れた摩耗耐性を提供する。なぜなら、これら2つの層が、これら2つの層の間のあらゆる化学的結合に加え、機械的に本質的にロックされるからである。
【0038】
この減圧被覆プロセスは、2つの層が、1つがゴムのような弾性材料であり、そして他方がスチールのような硬い材料から作製される2つのローラー間の挟み込みによってともに本質的に圧縮されるハードニップ技法のような先行技術技法より、基板材料への損傷がより少ないと考えられる。このような技法は、押出し物を基板に結合するために必要な挟み込みにおける高い付与(lay−on)圧力の結果として基板を損傷し得る。この基板への損傷の減少は、摩耗耐性を含む積層体の強度性質を改善する。
【0039】
勿論、この第2の層13は、それがダイを離れ、そして室温に曝されると直ぐに冷却を開始する。さらに、減圧によって引かれる空気が冷却の速度を増加する。さらに、冷却は、基板層との緊密な接触、および結果としての伝導による熱移動に起因してなおさらに促進される。さらに、冷却ユニット(図示されず)が、減圧被覆ステージと組み合わせ、またはその後のいずれかで冷却プロセスを支援し、そして早めるために提供され得る。第2の層が冷却し、そして硬化されるようになるとき、これら2つの層間の機械的結合はより強力になる。
【0040】
これら2つの層は互いに堅く結合され、そして積層体は、高度に摩耗耐性である。
【0041】
この時点で、積層体は、極度に低い通気性であるか、または通気性がない可能性がある。
【0042】
これ故、第2の層は、熱可塑性状態の下まで冷却するとき、積層体に所望のレベルの通気性を与えるために、積層体は、活性化ステージ20に続く。通気性がほとんどないか、または通気性がない適用では、この活性化ステージはスキップされ得る。このような適用は、例えば、極度に危険な環境で用いられるべき保護衣裳を含み得る。
【0043】
活性化ステージ20では、積層体19は伸張されて、この積層体(そして特に第2の層)を伸張し、その中に微小間隙を生成し、そしてそれによってそれを液体の水には透過可能にすることなく、それに通気性を与える、少なくとも1対のインターフィットギア21、21を通って積層体を供給することによるように、第2の層中に微小間隙を生成する。この活性化プロセスによって達成される特定の透過性は、活性化の深さ(例えば、これらギアの歯の深さ)および膜13中の炭酸カルシウムの%の適正な選択によって広範な範囲に亘って正確に制御され得る。通気性に影響するその他の因子は、上記第1の基板の層17上の第2の層13の被覆重量、および第2の層13中のベースポリマーの処方である。一般に、より高い密度のベースポリマーは、線状低密度ポリマーより高い通気性を可能にする。
【0044】
図1では、ギアの歯は、積層体が移動する方向(「機械方向」)に対して横断する方向(「横方向」)に配向され、この機械方向に伸張される積層体を生じる。本発明の好ましい実施形態では、このギアの歯は、機械方向に平行に配向され、横方向に伸張される積層体を生じる。
【0045】
背景のセクションで上記に述べたように、所望の通気性は、0〜数百または数千までのperm値のいずれかであり得るか、またはそれを超え得る。上記活性化ステージは、周知の技法に従って、任意の所望のレベルの通気性を提供するような形態であり得る。
【0046】
この時点で、積層体は本質的に完全であり、そして販売のためのサイズに切断され、そして梱包され得る。
【0047】
所望であれば、この積層体は、印刷のため、または水性官能性被覆を有するように、表面処理され得る。
【0048】
第2の材料の元の層は、基板材料の繊維の少なくともいくらかを少なくとも部分的にカプセル化し、そしてそれにそのように強力に付着するようになったので、別の層を付与する必要は必ずしもない。しかし、所望であれば、上記活性化プロセスの前後に、第2の層の別の薄層が、基板層の反対側に堆積され得る。しかし、これは、稀にしか望ましくないと考えられる。なぜなら、この2つの層の積層体が、既に、極度に摩耗耐性であるからである。さらに、積層体19自体、この第2の層がその上に堆積される前に当初の基板材料17よりかなり低い通気性を有している。従って、第2の減圧被覆プロセスのために積層体19を通って強力な減圧を引くことは、代表的には、それが当初の基板材料に対して強力な減圧を引くことよりかなり困難である。これ故、3層の積層体を作製することが所望される場合、第3の層を付与するために押出し被覆のような異なる積層プロセスを用いることが好ましい。
【0049】
さらに、適用に依存して、上記2層の積層体上に異なる材料の第3または次の層を付与することが所望され得る。これは、妥当な任意の技法によって行われ得る。例えば、保護衣裳適用のために、例えば、高いウイルス保護が所望されるべき場合、コ−ポリエステルまたはポリウレタンのような材料からなるさらなるモノリシックな第2の層が、上記2つの層の積層体の1つの側面または両側面いずれかに積層され得る。しかし、上記で注記したように、上記で説明された減圧被覆技法以外の技法が、より適切であるようである。なぜなら、上記の2つの層の積層体を通じて減圧を引くことが困難であるからである。その一方、上記活性化プロセスが、高度に通気性の積層体を提供するような形態である場合、第3または引き続く層の減圧被覆は、妥当であり得る。
【0050】
図2は、本発明の原理に従って作製された例示の家外装200の断面の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。この特定の例では、第1の層の繊維201のほんのわずか、または全てが、第2の層の材料202によって完全にカプセル化されていないが、これら繊維の多くが、第2の層の材料によって半分より多く取り囲まれており、それによって第1の層から分離されている第2の層に対する機械的ロックを提供することに注目のこと。その他の実施形態では、第1の層の繊維のいくらか、または全部が、完全にカプセル化され得る。第2の層の材料によって第1の層の繊維をカプセル化するか、または取り囲むレベルは、多くの要因に依存し、これには、押出しの温度、第2の層の成分の処方、付与される減圧の強度、および押出しスリットと減圧ドラムとの間の距離が含まれる。
【0051】
本発明の積層体の優れた摩耗耐性は、大部分は、第2の層の第1の層の繊維への機械的ロッキングの結果である。しかし、摩耗耐性はまた、一部、第2の層の組成物、特に、ベースポリマーの硬度、および用いた粒子の含量およびタイプの結果である。炭酸カルシウムのような非常に硬い粒子の高い含量は、摩耗耐性を改善する。さらに、高密度ポリオレフィンのような、高密度基板の使用はまた、摩耗耐性を増加する。
【0052】
本発明は、先行技術の家外壁または保護衣裳積層体より2桁の大きさ迄より大きい摩耗耐性を提供する。類似の性質の先行技術の積層体では、基板および第2の層は、一般に、2つの層が、1つがゴムのような弾性材料から作製され、そして他方がスチールのような硬い材料から作製される2つのローラー間の挟み込みによって本質的に一緒に圧縮されるハードニップとして知られる技法によって互いに結合される。このような技法では、これら2つの層間の結合は、接着結合であり、そしてこれら2つの材料間に機械的結合はほとんどないか、またはない。
【0053】
標準化TAPPI T476摩耗試験法にほぼ従って実施された試験では、本発明の原理に従って作製された家外装は、その他の市販され入手可能な家外装製品について約44〜152サイクルの摩耗定格と比較して、4000サイクルより大きい摩耗定格を有することが決定された。
【0054】
本発明に従う積層体は、例えば、標準化されたTAPPI T476摩耗試験法を用いて測定されたとき、少なくとも200サイクル、好ましくは少なくとも400サイクル、より好ましくは少なくとも100サイクル、そして最も好ましくは少なくとも4000サイクルの摩耗耐性を有する。
【0055】
本発明の2〜3の特定の実施形態をこのように記載したので、種々の改変、修飾、および改良は、当業者に容易に想到される。本開示によって自明にされたように、このような改変、修飾、および改良は、本明細書中に明示的に述べられていないけれども、本明細書の一部であることが意図され、そして本発明の思想および範囲内であることが意図される。従って、先行する説明は、例示のみにより、そして制限するものではない。本発明は、添付の特許請求の範囲に規定されるように、そしてそれに対する等価物のみにより制限される。
【実施例】
【0056】
図3は、匹敵する市販され入手可能な製品と比較したとき、本発明の原理の詳細な実施形態に従って作製された積層体の特定の特徴を示す表である。これらの特定の試験結果と組合せて報告された本発明の積層体は以下を含む:
60% 炭酸カルシウムブレンド
28% ベースポリマー
4% UV阻害剤ブレンド
4% TiOブレンド
4% Viton(商標名)Aブレンド
ここで、上記炭酸カルシウムブレンドは、80%炭酸カルシウムおよび20%線状低密度キャリアポリエチレン(LLDPE)であり、0.001のメルトインデックスおよび1.92グラム/立方センチメートルの密度を有する。この炭酸カルシウムブレンドの粒子サイズは、1.2ミクロン(±3σ)であった。上記ベースポリマーは、0.962グラム/立方センチメートルの密度、および6.5のメルトインデックスを有する高密度ポリエチレン(HDPE)であった。
【0057】
上記二酸化チタン添加物は、LDPEのベース中67%のTiOのブレンドであり、そして1.91グラム/立方センチメートルの密度および2.5のメルトインデックスを有していた。上記UV阻害剤は、LDPEのベース中10.2%の活性成分(UV阻害剤)のブレンドであり、そして0.93グラム/立方センチメートルの密度および10のメルトインデックスを有していた。上記Vitron(商標名)は、LDPEのベース中2%のViton(商標名)のブレンドであり、そして0.92グラム/立方センチメートルの密度および1.0のメルトインデックスを有していた。
【0058】
第2の層は、40g/平方メートルの重量まで押出され、そして70g/平方メートルの重量の基板に積層された。減圧ドラムは、約4インチの押出しスリット内に配置され、そして14インチ(356mm)水銀の減圧が適用された。
【0059】
積層体は、10ミルの深さまで活性化された。活性化深さは、ほぼゼロ(0)から数百ミルまでの範囲であり得る。活性化ロールは、同様に温度制御され得、積層体の効率的な活性化を支援する。
【0060】
図3の表から見られ得るように、本発明の積層体のテイバー摩耗耐性は、TAPPI T476摩耗試験法にほぼ従って試験された。それは、4066サイクルの摩耗耐性を提供し、その一方、その他の市販の製品は、44〜152サイクルの範囲の摩耗耐性を達成した。それはまた、その他の市販の製品と一致する引張り強度を達成した。水蒸気透過および水ヘッド試験は、それぞれ、ASTM E−96法AおよびAATCC試験法127(耐水性:静水圧試験)にほぼ従って実施された。本発明の積層体は、その他の積層体とほぼ一致する水蒸気耐性を達成した。しかし、この水蒸気耐性は、先に論議されたように、活性化パラメーターおよび炭酸カルシウムの処方の適正な選択による本質的に任意の妥当な値に選択的に設定され得ることが理解されるべきである。さらに、本発明の積層体は、本質的にその他の製品と一致する340の水ヘッド耐性を有していた。
【0061】
(高い摩耗耐性を備えた通気性積層体およびその製造の方法)
(要約)
本発明は、水貫通に対して高い抵抗性を備えるが、任意の特定の適用の必要性に適する通気性の種々の程度に製造され得る、なお通気性の高度に摩耗耐性である積層体材料、およびそれを作製する方法である。
【符号の説明】
【0062】
11 スロット
12 押出しダイ
16 ドラム
17 第1の基板層
16a 篩様面
19 積層体
20 活性化ステージ
21 インターフィットギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−16373(P2011−16373A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211443(P2010−211443)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2007−211584(P2007−211584)の分割
【原出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【出願人】(507274744)トレデガー フィルム プロダクツ コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】