説明

高い粘性を有する材料の連続押出用のスクリュー押出機

高い粘性を有する材料、特にアルミニウム及びアルミニウム合金のような金属の連続押出用のスクリュー押出機。押出機は、押出される材料の給送用の入口11を有するスクリューハウジング4のライナ2内に回転可能に設けられたアルキメディアン・スクリュー1と、圧縮チャンバすなわち押出チャンバ5と、所望の押出製品7の形状を成形するダイを有する押出ダイアセンブリ6とを備える。アルキメディアン・スクリュー1とライナ2との設計は、必要な圧縮が、スクリューの最大540度の回転、すなわちアルキメディアン・スクリューの最大1.5回転のフライトの長さに相当する、押出チャンバ5を向いたスクリューの下流端で生じるようなものであり、スクリューの一端と押出チャンバ5とにおいてこのようにして形成される金属の固体プラグが剛性回転を抑えられ、必要な圧縮と押出圧力とを得るようなものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い粘性を有する材料、特にアルミニウム及びアルミニウム合金のような金属の連続押出用のスクリュー押出機であって、押出される材料の給送用の入口を有するスクリューハウジング内に設けられたアルキメディアン・スクリューと、圧縮チャンバすなわち押出チャンバと、所望の押出製品の形状を成形するダイを有する押出ダイアセンブリとを備えるスクリュー押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムのような高い粘性を有する材料の押出は、アルミニウムを、ダイブロック及びダイに通して押出すのに非常に高い圧力、通常は100MPa〜500MPaを必要とする。当該技術水準は、アルミニウムの押出に関して、ここ100年間、ラム押出が優位を占めている。ラム押出は、ビレットがコンテナ内に充填されて、移動しているピストンによってダイを通して押出される(押圧される)バッチプロセスである。アルミニウムの連続押出の1つの方法として、いわゆるCONFORM(登録商標)法を挙げることができ、この方法は、単一の回転ホイールを押出プロセスでの駆動力として使用することに基づいており、非限定的な長さを有する製品の製造を可能にしている。その最もシンプルな形態では、ホイールがその外周に単一の溝を有しており、当該溝が原料を受け入れてこの材料を押出区域及びダイへ搬送する。
【0003】
別の連続スクリュー押出法が、鉛形材及び鉛合金形材の製造に使用されており、これは、米国特許第3,693,394号明細書のロバートソン−ハッソンの押出機に基づくものである。この方法では、液状の鉛が押出機に給送され、押出プロセス中に固化する。
【0004】
鉛は、「滑り」摩擦を有しており、すなわち、鉛とコンテナの材料(鋼)との間の摩擦が圧力に比例するため、アルミニウムとは挙動が異なる。一方、アルミニウム及び大半の他の金属は、押出温度で付着摩擦を有しており、すなわち、アルミニウムは、コンテナ及びスクリューの材料に融着する。
【0005】
この挙動の結果として、アルミニウム及び高い粘性を有する他の粘着性金属のスクリュー押出は、例えばアルミニウムと鋼との間の摩擦力を克服するのに必要とされる力が膨大であるため、困難であり且つ実用的ではない。
【発明の概要】
【0006】
本発明によって、粘着に関する上記問題を負わず、且つアルミニウムのような高い粘性を有する材料の押出用の一貫した連続法を提供する、新たな改善されたスクリュー押出機が提供される。
【0007】
本発明による押出機は、添付の独立請求項1に規定される特徴を特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態は、添付の従属請求項2〜5にさらに規定されている。
【0009】
本発明を、実施例によって、及び、図面を参照しながら、以下でさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による押出機の概略断面図である。
【図2】断面でさらに見る、図1に示すスクリューの側面図である。
【図3】図1に示すような押出機の圧縮チャンバの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
金属のような、粘性があり付着する材料をスクリュー押出機によって連続法で押出する場合、ライナとスクリュー表面とに付着した材料を押出機に沿って引きずること(dragging)によって、圧力の増加が生じ、材料をダイに通してハウジングの一端において押出するのに必要な圧力に達する。粘性が金属の場合に比べて非常に低いポリマーの産業において使用されている通常のスクリュー押出機とは違い、押出機に対する過度に高い捩れ応力(torsion forces)を回避するために、圧力区域を実質的に減らさなければならない。これは、金属の回転流を制限するように設計されている押出チャンバと組み合わせたスクリューの特別な設計によって達成される。また、押出機に沿う温度分布を制御しなければならない。ゆえに、スクリューの全長もかなり短くなり、通常、スクリューの直径の1.5倍〜2.5倍である。
【0012】
押出機には、好ましくは、T<Tsの粒状金属が給送される。ここで、Tsは、金属が付着摩擦を有する温度である。粒状金属は、スクリューとコンテナ壁とに接触することによって押出機内で加熱されてもよく、又は所望の温度に予熱されていてもよい。付着摩擦が生じると、金属は摩擦熱及び変形によってさらに加熱される。半圧縮金属が圧力生成区域に達すると、この金属は、金属の既に圧縮されている「ウィング(wing)」に付着し、練り混ぜられて十分に圧縮されたものとなる。
【0013】
本発明による押出機は、図1に示されるように、内側のライナ2を有するスクリューハウジングすなわちコンテナ4を備え、その内部に、螺旋トレッド(helical tread)すなわち螺旋フライト(helical flight)を有するアルキメディアン・スクリュー1が回転可能に設けられている。ライナ2には、押出プロセス下の温度を制御するために、冷却路3が設けられている。コンテナすなわちハウジング4の上流端には、押出される粒状材料の供給用の入口11が設けられている。コンテナ4/ライナ2の出口端には、スクリュー1の下流端によって、押出チャンバ5が設けられ、さらに、この押出チャンバ5の端には、押出される形材7の形状を成形するダイアセンブリ6が設けられている。アルキメディアン・スクリュー1は、好ましくは、コンテナ4に実現可能に取り付けられた支持プレート9に嵌合するスラスト軸受けアセンブリ8によって安定されている。スクリュー軸10は、アルキメディアン・スクリュー1を適切な接続部材によって駆動装置に接続している。
【0014】
アルキメディアン・スクリューの設計は、図2に示されるように、
給送区域Aと、
搬送区域Bと、
圧力生成及び圧縮区域Cと
の3つの区域に関係付けて見ることができる。
【0015】
アルキメディアン・スクリューは、その一端における圧力が上昇することによって材料が圧力生成及び圧縮区域Cにおいて金属に付着するまでに、粒状材料が給送区域Aから搬送区域Bへ自由に搬送されることができることを確実にするように設計される。これは、給送区域から圧力生成区域へスクリュー谷径を線形に段階的に若しくは不規則(digressive manner)に減らすことによって、又はスクリュー外径若しくはスクリュー谷径とスクリュー外径との両方を大きくすることによって行うことができる。
【0016】
給送区域Aにおいて、押出される材料は、入口13を通って、コンテナ3/ライナ2アセンブリ内のアルキメディアン・スクリューに、重力又は他の手段のいずれかによって給送される。材料は、アルキメディアン・スクリューとライナとの間の開かれた空間に到達し、アルキメディアン・スクリューが回転すると、材料は搬送区域Bにさらに搬送される。
【0017】
搬送区域Bにおいて、材料はさらに搬送され、給送前に予熱されていない場合は、ライナ壁とアルキメディアン・スクリューとの間の接触によってT>Tsまで加熱されてもよい。さらに、圧力生成区域Cに入る際に材料の圧縮が生じ、材料は、(互いに対して、ライナに対して、且つアルキメディアン・スクリューの表面に対して)付着を開始し、練り混ぜられてさらに加熱され、したがって、押出チャンバ5に入る前に、アルキメディアン・スクリューの一端に向かって、固体材料のプラグを形成する。
【0018】
異なるアルミニウム合金を用いた試験によって、押出に必要な圧縮が、最大540度すなわちアルキメディアン・スクリューの最大1.5回転のフライトの長さに相当する、アルキメディアン・スクリューの最後の部分で生じることが証明されている。しかしながら、いくつかの試験によって、必要な圧縮は、より短いフライトの長さでさえ、すなわち360度未満でさえ生じることが証明されている。これは、上記のように、本発明の場合に重要な特徴を表す。研究者らが過去に、アルミニウムのような材料の連続押出に成功してこなかった理由は、彼らが使用した押出機の設計、例えば長いスクリュー及び長い圧縮領域が余剰の摩擦作用を引き起こし、それによって、より多くのエネルギー(はるかに高い回転モーメント)がプロセスに供給される必要があったためだと考えられている傾向が極めて高い。したがって、最も重要なことは、アルキメディアン・スクリューとハウジングとの設計は、圧縮がアルキメディアン・スクリューの短い距離(領域)にわたって生じるようなものであることである。
【0019】
さらに、固体プラグの前方への引きずりが生じるように、固体プラグがハウジング(及びアルキメディアン・スクリュー)に付着することが必要である。付着が悪化して、結果として起こる粘性の大幅な低下及び局所的で急速な温度の上昇を伴う、ライナ壁面に隣接した極めて局所的な剪断変形区域を生じさせることを防止しなければならない。
【0020】
さらに、必要な圧縮圧力を得るために、押出チャンバ5内の金属の固体プラグの剛性回転(rigid rotation)を抑えなければならないことが試験によって証明されている。これは、回転を回避するように、ある形状を有するように押出チャンバの壁を設計すること、又は押出チャンバの表面に所望の粗さ、例えば内方に延びる(図示しない)突起を与えることによって行うことができる。
【0021】
図2は、押出チャンバ5の前端が概ね四角形の断面形状を有する設計の一例を示している。
【0022】
アルキメディアン・スクリューの圧力生成区域に収容されている圧縮材料は、個体プラグとライナ壁とに完全に融着し、したがって、回転も抑えられている。アルキメディアン・スクリュー内の圧縮材料が回転を抑えられており且つアルキメディアン・スクリューが回転しているとき、アルキメディアン・スクリューの回転エネルギーは、押出チャンバ内への材料の純粋に前方に向かう流れに伝達される。
【0023】
回転毎にアルキメディアン・スクリュー内に給送される材料の体積がフライトの容積よりも小さいため、材料の一部が押出チャンバからフライト間の空間内へ逆流する。これは、押出チャンバ内の材料が十分に高密度になるように大量の剪断変形を生成する、本発明の作動原理の重要な部分を表している。剪断変形は、粒状材料の酸化物層を破壊し、粒状材料間の「融着」を完全なものとする。
【0024】
剪断変形は、アルミニウム中に含有されている鉄粒子のような粒子を破壊することも助け、それによって、これらのサイズを小さくする。
【0025】
本発明による押出機は、
(軽金属合金、Al、Mg、Tiのような)全ての粘着性金属、
金属の機械的混合物、
粒状材料、
金属及び化合物の混合物、
金属切屑及び微粉、例えばダライ粉
のような高い粘性を有する多くの材料の押出に使用することができる。
【0026】
特許請求の範囲に規定される本発明は上記の例に限定されない。したがって、アルキメディアン・スクリュー及び押出チャンバは、上記のような搬送区域Bにおける加熱を含まなくてもよく、代わりに、材料は押出機に給送される前に予熱されていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い粘性を有する材料、特にアルミニウム及びアルミニウム合金のような金属の連続押出用のスクリュー押出機であって、
押出される前記材料の給送用の入口(11)を有するスクリューハウジング(4)のライナ(2)内に回転可能に設けられたアルキメディアン・スクリュー(1)と、
押出チャンバ(5)と、
所望の押出製品(7)の形状を成形するダイ(6)を有する押出ダイアセンブリと
を備え、
前記アルキメディアン・スクリュー(1)と前記ライナ(2)との設計は、
必要な圧縮が、前記アルキメディアン・スクリューの最大540度の回転、すなわち前記アルキメディアン・スクリューの最大1.5回転のフライトの長さに相当する、前記押出チャンバ(5)を向いた前記アルキメディアン・スクリューの下流端で生じるようなものであることと、
圧縮区域において形成される圧縮金属と、前記押出チャンバ(5)内の金属の固体プラグとが剛性回転を抑えられることで、前記必要な圧縮と押出圧力とを得るようなものであることと
を特徴とするスクリュー押出機。
【請求項2】
前記必要な圧縮は、前記アルキメディアン・スクリューの最大360度の回転、すなわち前記アルキメディアン・スクリューの最大1.0回転のフライトの長さに相当する、前記押出チャンバ(5)を向いた前記アルキメディアン・スクリューの下流端で生じることを特徴とする、請求項1に記載のスクリュー押出機。
【請求項3】
前記回転の抑制は、前記押出チャンバ(5)自体の設計によって、又は該押出チャンバの内面によって得られることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスクリュー押出機。
【請求項4】
前記押出チャンバ(5)は、その上流端に、四角形の断面を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスクリュー押出機。
【請求項5】
前記押出チャンバ(5)の内面には、内方に延びる突起が設けられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスクリュー押出機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−510073(P2010−510073A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538359(P2009−538359)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【国際出願番号】PCT/NO2007/000408
【国際公開番号】WO2008/063076
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(591237869)ノルスク・ヒドロ・アーエスアー (24)
【氏名又は名称原語表記】NORSK HYDRO ASA
【住所又は居所原語表記】0240 OSLO,NORWAY
【Fターム(参考)】