説明

高い耐熱性と透過性とコントラストをもつカラーフィルタを製造するための着色材組成物

【課題】高耐熱性、高光透過性及び高コントラストの全てを兼ね備えるカラーフィルタの製造用着色材組成物を提供する。
【解決手段】トリフェニルメタン系の化合物又はその塩からなる染料の存在下、金属アルコキシドを溶媒中で加水分解、縮合することにより得られる着色材組成物。金属アルコキシドは下記一般式(2)M(OR23)n(2)[式中、R23は、低級アルキル基を示す。Mは、3価または4価の金属を示す。nは、金属Mの価数を示す。]で示される化合物またはその縮合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタを製造するための着色材組成物及びカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタの製法には、着色材として染料を用いる方法と、当該多数の染料分子が凝集し溶解性を失った顔料を用いる方法とがある。
【0003】
染料を用いる方法としては、例えば、染色法、染料溶解法等があり、顔料を用いる方法としては、例えば、顔料分散法、電着法等がある。
【0004】
着色材として染料を用いた場合、一般に、顔料を用いた場合に比べて発色性(色度および光透過率)に優れている。しかし、一方で、染料は、顔料に比べて耐熱性に劣るという問題点があった。特に、カラーフィルタの製造プロセスにおいては、着色材を含む組成物を基板上に塗布し、200℃以上で加熱して画素を形成させる工程を赤、緑及び青色の3色の画素について繰り返し行う必要があるため、着色材組成物には、複数回の加熱処理に耐えうる高い耐熱性が必要となる。
【0005】
従来、カラーフィルタの画素を製造する方法としては、ポリマー側鎖にシアニン染料を共有結合した化合物を用い、当該化合物の存在下で、金属アルコキシドを加水分解、縮合する方法(特許文献1及び2)、及びアントラキノン系顔料を化学結合させた金属アルコキシド及び顔料を化学結合させていないフリーの金属アルコキシドを用いてゾルゲル法を行う方法(特許文献3)が行われている。
【0006】
また、従来、カラーフィルタ用の着色材としてトリフェニルメタン系化合物等を用いる場合、染料が多数凝集した顔料の状態で用いられ、これを直接レジストポリマーに混合し、硬化させることにより画素が製造されていた。
【0007】
しかし、これらの方法により得られたカラーフィルタは、耐熱性、光透過性及びコントラストが不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US4948843
【特許文献2】US5100970
【特許文献3】特開平6-308314公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高耐熱性、高光透過性及び高コントラストの全てを兼ね備える、カラーフィルタの製造用着色材組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような状況の下、本発明者らは、鋭意研究した結果、特定の構造を有するトリフェニルメタン系の染料を用い、当該染料存在下、ゾル−ゲル反応を行うことで、染料が本来有する透過性及びコントラストに加えて耐熱性を両立できることを見出した。本発明は、上記新規の知見に基づくものである。
【0011】
従って、本発明は、以下の項を提供する:
項1.下記一般式(1)で示されるトリフェニルメタン系の化合物又はその塩からなる染料、及び金属アルコキシドを含有する、カラーフィルタを製造するための着色材組成物:
【0012】
【化1】

【0013】
[式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、又は
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R〜R13は、同一又は異なって、水素原子又はスルホン酸基を示す。mは、0又は1を示す。)
を示す。
は、水素原子、低級アルキル基を示す。
、R5、及びRは、同一又は異なって、水素原子、スルホン酸基又はヒドロキシル基を示す。
及びRは、これらが結合する炭素原子と共に、互いに結合して
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、R14〜R17は、同一又は異なって、水素原子又はスルホン酸基を示す。)
で示される不飽和6員環を形成してもよい。
は、水素原子、スルホン酸基、N−低級アルキルアミノ基又は
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、R18、R19、R21及びR22は、同一又は異なって、水素原子又はスルホン酸基を示す。R20は、低級アルキル基を示す。)
を示す。]
項2.前記トリフェニルメタン系の化合物又はその塩からなる染料の存在下、金属アルコキシドを溶媒中で加水分解、縮合することにより得られる、項1に記載の着色材組成物。
【0020】
項3.金属アルコキシドが下記一般式(2)
M(OR23 (2)
[式中、R23は、低級アルキル基を示す。
Mは、3価または4価の金属を示す。
nは、金属Mの価数を示す。]
で示される化合物またはその縮合物である、項1又は2に記載の着色材組成物。
【0021】
項4.さらに、分散剤として、ハロアルキルトリアルコキシシランまたはその縮合物を含む、項1〜3のいずれか一項に記載の着色材組成物。
【0022】
項5.さらに、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン及びポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種のポリマーを含む、項1〜4のいずれか一項に記載の着色材組成物。
【0023】
項6.前記ポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリマーである、項5に記載の着色材組成物:
【0024】
【化5】

【0025】
[式中、R25は、水素原子又はメチル基を示す。R26は、ヒドロキシ低級アルキル基を示す。]。
【0026】
項7.透明基板、及び当該透明基板上に前記項1〜6のいずれか一項に記載の着色材組成物及び樹脂を含む組成物の硬化物を備えるカラーフィルタ。
【0027】
項8.請求項7に記載のカラーフィルタを有することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0028】
本発明のカラーフィルタ製造用着色材組成物は、染料が本来有する高光透過性及び高コントラストという性能を有しながら、かつ耐熱性にも優れている。従って、本発明の着色材組成物は、複数回の加熱工程を含む製造プロセスを経て得られるカラーフィルタの製造に非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本願試験例において測定した実施例1〜3の塗膜の、加熱処理前の透過スペクトルを示す。
【図2】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.着色材組成物
本発明は、前記一般式(1)で示されるトリフェニルメタン系の染料及び金属アルコキシドを含有する、カラーフィルタ製造用の着色材組成物を提供する。
【0031】
トリフェニルメタン系の染料又はその塩
前記一般式(1)において示されるトリフェニルメタン系の染料の各基は、具体的には次の通りである。
【0032】
、R、R又はR20が低級アルキル基である場合、当該低級アルキル基としては、例えば、炭素数1〜3、好ましくは炭素数1〜2、より好ましくは炭素数2の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。より具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、及びイソプロピルが含まれる。
【0033】
がN−低級アルキルアミノ基である場合、当該N−低級アルキルアミノ基としては、例えば、置換基として、炭素数1〜3、好ましくは炭素数1〜2、より好ましくは炭素数2の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を1個有するアミノ基を挙げることができる。より具体的には、N−メチルアミノ、N−エチルアミノ、N−(n−プロピル)アミノ、及びN−イソプロピルアミノが含まれる。
【0034】
一般式(1)で示されるトリフェニルメタン系の染料又はその塩の中では、例えば、対応するR及びRのうち一方が低級アルキル基を示し、かつ他方が低級アルキル又は
【0035】
【化6】

【0036】
を示し、
対応するRが水素を示し、
対応するR、R、Rが水素を示しかつRがスルホン酸基を示すか、又はR及びRが互いに結合して
【0037】
【化7】

【0038】
を形成しかつR及びRが水素を示し、かつ
対応するRが水素又は
【0039】
【化8】

【0040】
を示す化合物又はその塩が好ましい。
【0041】
より好ましくは、一般式(1)で示されるトリフェニルメタン系の染料としては、例えば、Acid Blue 1、Acid Blue 3、Acid Blue 9、Acid Blue 83、Acid Blue 90等を挙げることができる。
【0042】
本発明の原料化合物である一般式(1)において示されるトリフェニルメタン系の染料は、無機塩基の塩等の好適な塩であってもよい。
【0043】
このような塩としては、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等、リチウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)等の金属塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0044】
これらのトリフェニルメタン化合物又はその塩は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0045】
本発明の着色材組成物は、上記トリフェニルメタン化合物又はその塩を用いることによって、金属アルコキシドが加水分解・縮合した後、金属酸化物の三次元マトリクス中に、染料分子が可溶性を有するレベルで会合した会合物が分散した、擬結晶バルクを形成し、これにより高耐熱性及び高透過性を両立させることができる。
【0046】
本発明の好ましい実施形態においては、上記トリフェニルメタン系の化合物又はその塩は、これらが多数凝集した顔料の状態ではなく、溶媒中に溶解、分散した染料状態で後述のゾルゲル法を行う。このように染料が溶媒中に溶解、分散した状態でゾルゲル法を行うことによって、上記擬結晶バルクが形成されやすくなる。
【0047】
金属アルコキシド
本発明において用いられる金属アルコキシドとしては、ゾルゲル法に用いられるものを広く使用することができるが、例えば、下記式(2)で示されるものが挙げられる:
M(OR23 (2)
[式中、R23は、低級アルキル基を示す。
Mは、3価または4価の金属を示す。
nは、金属Mの価数を示す。]
Mで示される3価または4価の金属としては、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム等が挙げられ、ケイ素が好ましい。
【0048】
24で示される低級アルキル基としては、例えば、炭素数1〜3、好ましくは炭素数1〜2、より好ましくは炭素数1の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。より具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、及びイソプロピルが含まれる。
【0049】
これらの金属アルコキシドは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0050】
上記金属アルコキシドは、モノマー(金属アルコキシド自体)として上記原料組成物に配合してもよく、ダイマー、トリマーなどのオリゴマーのような部分的に縮合した金属酸化物として本発明の着色材組成物の原料組成物に配合したのち加水分解及び縮合前してもよく、あるいは一部がポリマーとして原料混合物中に配合してもよい。ダイマー、トリマーなどのオリゴマー、あるいは、ポリマーとして配合する場合、これらは一般式(2)の金属アルコキシドをゾルゲル法などにより縮合したオリゴマーないしポリマーであってもよく、アルキル基ないしアリール基とSi原子が直接結合していてもよいアルコキシシラン化合物(シランカップリング剤)、アルコキシチタン化合物(チタンカップリング剤)、アルコキシジルコニウム化合物(ジルコニウムカップリング剤)、アルコキシアルミニウム化合物(アルミニウムカップリング剤)などの1種以上の化合物と一般式(2)の金属アルコキシドが縮合した化合物であってもよい。なお、一般式(2)の金属アルコキシドをゾルゲル法などにより縮合したオリゴマーないしポリマーは、同一の一般式(2)の金属アルコキシドを縮合してもよく、一般式(2)に含まれる2種以上の金属アルコキシドを縮合してもよい。縮合法としては、例えばアルコールなどの溶媒中で、酸触媒ないしアルカリ触媒の存在下で行うゾルゲル法が挙げられる。
【0051】
本発明の着色材組成物において、上記金属アルコキシドと染料との配合割合は、これらの合計を100重量部とした場合、金属アルコキシド40〜95重量部と染料5〜60重量部、好ましくは金属アルコキシド50〜90重量部と染料10〜40重量部が挙げられる。
【0052】
分散剤等
本発明の色材組成物において、染料の分散性を向上させるために分散剤を添加してもよい。ただし、その添加量や種類によっては耐久性を損なうことがあるので注意を要す。分散剤は染料とゾルゲルの混合時において、染料を媒体中に均一に分散させその状態を安定化させるために使用される。分散剤の種類としては界面活性剤やシランカップリング剤がある。ここでいう界面活性剤は一つの分子内に親水性の部位と親油性の部位が共有結合で結ばれた構造をした物質を指し、低分子であっても高分子であってもよい。親水性の部位としてはアニオン型(酸)、カチオン型(塩基、オニウム塩(NR4+))、あるいはノニオン型がある。ノニオン型とは、イオン解離性を持たないポリエチレンエキサイド(PEO:polyethylen oxide)やポリオールが一般的で、これらは水素結合によって酸素原子が水和されpHによらず親水性を示す。シランカップリング剤は分子内に反応結合する官能基,および無機材料と反応結合する官能基を同時に有する有機ケイ素化合物である。好適にはシランカップリング剤が用いられ、具体例としてはグリシジロキシアルキルトリアルコキシシラン、メタクリロキシトリアルコキシシラン、ハロアルキルトリアルコキシシラン、アミノアルキルトリアルコキシシランなどを用いることができる。特にハロアルキルトリアルコキシシランが染料の媒質中への分散性向上と安定性の付与の点で好ましい。
【0053】
ここで、ハロアルキルトリアルコキシシランにおける、ハロアルキル基としては、例えば、1〜3個、好ましくは1個のハロゲン原子を有していてもよい、炭素数1〜6、好ましくは炭素数2〜4、より好ましくは炭素数3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。具体的には、フルオロメチル、クロロメチル、ブロモメチル、2,2−ジフルオロエチル、2−フルオロエチル、2−クロロエチル、3,3,3−トリクロロプロピル、3−クロロプロピル、2−クロロプロピル、3−ブロモプロピル、4,4,4−トリフルオロブチル、4−クロロブチル、4−ブロモブチル、2−クロロブチル、5−クロロペンチル、6,6,6−トリフルオロへキシル、6−クロロヘキシル等が含まれ、好ましくは、3−クロロプロピルが例示できる。
【0054】
ハロアルキルトリアルコキシシランにおけるアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜3、好ましくは炭素数1〜2、より好ましくは炭素数1の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基を挙げることができる。より具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、及びイソプロプロポキシが含まれる。本発明において、ハロアルキルトリアルコキシシラン中の3つのアルコキシ基は同一であっても異なっていてもよい。
【0055】
当該実施形態において、金属アルコキシドと分散剤との配合割合は、前記1重量部に対して、後者が、通常、0.001〜1重量部、好ましくは、0.005〜0.5重量部、より好ましくは、0.01〜0.3重量部である。
【0056】
本発明の着色剤組成物には、上記染料及び必要に応じた分散剤等に加えて、ポリ酢酸ビニルおよびその加水分解物、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のポリマーをさらに含むもの、及びその存在下で、金属アルコキシドを溶媒中で加水分解、縮合することにより得られるものも含まれる。
【0057】
ポリビニルピリジンとしては、例えば、ポリ(2−、3−又は4−ビニルピリジン)が挙げられる。
【0058】
ポリビニルピロリドンとしては、例えば、ポリ[N−ビニル−(2又は3−)ピロリドン]、ポリ[2−ビニル−(3−、4−又は5−)ピロリドン]、及びポリ[3−ビニル−(2−、4−又は5−)ピロリドン]が挙げられる。
【0059】
これらのポリマーの重量平均分子量は、通常、3,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜700,000、より好ましくは10,000〜500,000である。
【0060】
これらのポリマーのうち、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい:
【0061】
【化9】

【0062】
[式中、R25は、水素原子又はメチル基を示す。R26は、ヒドロキシ低級アルキル基を示す。]
ここで、R26で示されるヒドロキシ低級アルキル基としては、例えば、1〜3個、好ましくは1個のヒドロキシル基を有していてもよい、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数2〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。具体的には、ヒドロキシメチル、2,2−ジヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチル、3,3,3−トリヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4,4,4−トリヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル、5−ヒドロキシペンチル、6,6,6−トリヒドロキシへキシル、6−ヒドロキシヘキシル等が含まれ、好ましくは、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
【0063】
これらのポリマーは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0064】
これらのポリマーのモノマーを混合し、系内でポリマー化して使用してもよい。
当該実施形態において、金属アルコキシドとポリマーとの配合割合は、前記1重量部に対して、後者が、通常、0.01〜10重量部、好ましくは、0.05〜5重量部、より好ましくは、0.1〜3重量部である。
【0065】
上記ポリマーを用いることによって、耐熱性をより高めることができるため好ましい。
【0066】
また、本発明の着色剤組成物には、上記染料及び必要に応じた分散剤等に加えて、アリールアルコキシシランを添加してもよい。
【0067】
ここで、アリールアルコキシシランは、例えば、ケイ素にアリール基が1〜2個(好ましくは1個)、及びアルコキシ基が2〜3個(好ましくは3個)、合計4個結合した構造をとる。ケイ素にアリール基が2個以上結合している場合は、各アリール基は同一であっても異なっていてもよい。また、ケイ素にアルキル基が2個以上結合している場合も同様である。
【0068】
アリールアルコキシシランにおけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。
【0069】
ここで、アリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシ(OH),アミノ(NH)、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルオキシ、アルコキシアルキル、メチレンジオキシなどが挙げられる。置換基の数は、1〜3個、好ましくは1〜2個、特に1個である。置換基がハロゲン原子の場合には、置換基の数は1個または2個、特に1個が好ましい。
【0070】
アリール基が置換基として、ハロゲン原子を有する場合、当該ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0071】
アリール基が置換基として、アルキル基を有する場合、当該アルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基が挙げられ、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。
【0072】
アリール基が置換基として、アルコキシ基を有する場合、当該アルコキシ基としては、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、1-メチルプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、2-メチル-ブトキシ、ネオペンチルオキシ、ペンタン-2-イルオキシなどが挙げられる。
【0073】
アリール基が置換基として、アルキルチオ基を有する場合、当該アルキルチオ基としては、好ましくは炭素数1〜6の直鎖状若しくは分枝状のアルキルチオを示し、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオ、イソブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオなどが挙げられる。
【0074】
アリール基が置換基として、アリールオキシ基を有する場合、当該アリールオキシ基としては、フェノキシ、ナフトキシが挙げられる。
【0075】
アリール基が置換基として、モノ又はジアルキルアミノ基を有する場合、当該モノ又はジアルキルアミノ基としては、前記の炭素数1〜6の直鎖または分枝を有するアルキル基によりモノ置換又はジ置換されたアミノ基が挙げられ、例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノが挙げられる。
【0076】
アリール基が置換基として、アシルオキシ基を有する場合、当該アシルオキシ基としては、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、n-ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ、バレリルオキシ、イソバレリルオキシ、ピバロイルオキシ、ベンゾイルオキシなどの直鎖又は分枝を有する炭素数1〜7のアシルオキシ基が挙げられる。
【0077】
アリール基が置換基として、アルコキシアルキル基を有する場合、当該アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチルなどが挙げられる。
【0078】
アリールアルコキシシランにおいてケイ素に結合するアルキル基としては、メチル基、エチル、n−プロピルが挙げられ、好ましくはメチルまたはエチルである。
【0079】
これらのアリールアルコキシシランは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
当該実施形態において、金属アルコキシドとアリールアルコキシシランとの配合割合は、前記1重量部に対して、後者が、通常、0.1〜20重量部、好ましくは、0.2〜15重量部、より好ましくは、0.3〜10重量部である。
【0080】
アリールアルコキシシランを添加することによって、耐熱性、耐光性が向上するため好ましい。
【0081】
アリールアルコキシシランとして、アリールジアルコキシシランを用いる場合、ジアルコキシドの使用割合は、本発明の着色剤組成物中に配合されるトリアルコシド及びテトラアルコキシド(上記金属アルコキシド、アリールトリアルコキシシラン及びシランカップリング剤であるトリアルコキシシランの合計)1モルに対して、後者を、通常、0.001〜1モル、好ましくは0.005〜1モル、より好ましくは通常、0.01〜0.5モル用いる。
【0082】
ゾルゲル法に用いる触媒、主として重縮合触媒としては、第三級アミンが挙げられる。例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等があり、特にN−N−ジメチルベンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシドおよび各カップリング剤の合計量100重量部当り、0.01〜1重量部、好ましくは約0.03重量部である。
【0083】
本発明に係る着色材組成物の製造においては、第三級アミンに代えて、又は第三級アミンとともに酸の存在下で縮合反応を行ってもよい。酸は、ゾルゲル法の触媒、主としてアルコキシドやシランカップリング剤等の加水分解のための触媒として用いられる。酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸、ならびに酢酸、酒石酸等の有機酸が用いられる。酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対して、0.001〜0.05モルであり、好ましくは約0.01モルである。
【0084】
本発明の着色材組成物には、金属アルコキシドの少なくとも一部が加水分解・縮合したものであれば、ゾル状、ゲル状(インク組成物)及び固体状(色材組成物)、ならびに金属酸化物マトリクス中に染料が保持されて粒子状になって物が溶剤中、ゾル中またはゲル中に分散したような状態等のいずれの状態のものも含まれる。また本発明の着色材組成物には、溶剤分子が分散した状態で含まれているものも、可溶性を有する程度に会合した状態で含まれているものも包含される。
【0085】
2.カラーフィルタ
本発明のカラーフィルタは、常法に従い、本発明の着色材組成物を従来の染料または顔料の代わりに用いて製造できる。
【0086】
例えば、本発明の着色材組成物、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤及び溶剤を含有する着色レジストを用いた液晶表示用のカラーフィルタの製造方法は、バインダー樹脂、光重合性モノマーおよび光重合開始剤を含む透明感光性樹脂に本発明の着色材組成物を分散ないし混合した感光液を透明ガラス基板上に塗布して感光性樹脂層を形成する。次に、この感光性樹脂層上に所定形状の開口パターンを有するマスクを載置し、露光・現像を行い第一着色層を形成する。同様にして第二着色層、第三着色層を形成して、R、G、Bの各着色層を備えたカラーフィルタを得ることができる。
【0087】
本発明で使用するバインダー樹脂には、光重合性モノマーに対して相溶性がある線状有機高分子重合体であって、溶剤に可溶で現像可能なものを好ましく用いることができる。具体的には、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ポリイミド樹脂等を用いることができる。
【0088】
本発明で使用する光重合性モノマーには、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常温において100℃以上のものが好ましい。具体的には、単官能のアクリレートやメタクリレート、多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後メタクリレート化したもの等を用いることができる。さらに、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタアククリレート、光硬化性モノマー及びオリゴマー、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、フェノール樹脂等を用いることができるが、反応性の理由から、多官能性アクリレートモノマーを使用するのが好ましい。
【0089】
本発明に使用する光重合開始剤には、ビシナールポリケトアルドニル化合物、α−カルボニル化合物、アシオインエーテル、多岐キノン化合物、トリアリルイミダゾールダイマー/p−アミノフェニルケトンの組合せ、トリオキサジアゾール化合物等が挙げられ、好ましくは、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン(イルガキュア369:商品名、チバスペシャルティケミカルズ社製)が挙げられる。
本発明で使用する溶剤には、グリコールエーテル系、そのアセテート系、酢酸エステル系、ケトン系の溶剤が適宜使用可能である。特に、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好適に使用できる。
【0090】
本発明において用いられる溶剤としては、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。
【0091】
本発明で用いられるアルコール系溶媒としては、色材組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であれば特に限定されるものではない。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、N−プロピルアルコール、i−プロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのセロソルブ系溶剤、メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤などを好適に用いることができる。
【0092】
これらの溶剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明に用いられる透明基板としては、可視光に対して透明な基材であれば特に限定されるものではない。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
【0093】
塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えばスプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法等を挙げることができる。
【0094】
以下、本発明のカラーフィルタの用途として液晶表示装置について説明するが、本発明のカラーフィルタは、白色発光有機EL等の有機ELと組み合わせて使用することもできる。
【0095】
3.液晶表示装置
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。本発明の液晶表示装置は上記カラーフィルタを有することを特徴とするものである。
【0096】
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有するものである。
【0097】
本発明によれば、上記カラーフィルタが用いられていることにより、高コントラスト等の高品質かつ優れた生産性の液晶表示装置とすることができる。
【0098】
本発明の液晶表示装置は、少なくとも上記本発明に係るカラーフィルタが用いられているものである。
【0099】
以下、本発明の液晶表示装置について説明する。
【0100】
本発明の液晶表示装置は、上記カラーフィルタが用いられていることを特徴とするものである。したがって、本発明に用いられるカラーフィルタとしては、上記「2.カラーフィルタ」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0101】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定されるものではなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、および、MVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
【0102】
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
【0103】
本発明における液晶層は、カラーフィルタおよび対向基板間に設けられるものである。液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、およびこれらの混合物を用いることができる。
【0104】
図2に示すように本発明の液晶表示装置は、通常、上記カラーフィルタが用いられたカラーフィルタと、上記対向基板と、上記液晶層とを有するものとされるが、本発明の液晶表示装置はこのような構成に限られるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0105】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
【0106】
真空注入方式では、例えば、あらかじめカラーフィルタおよび対向基板を用いて液晶セルを作製し、液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して液晶セルに液晶を等方性液体の状態で注入し、接着剤で封鎖することにより液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0107】
また液晶滴下方式では、例えば、カラーフィルタの周縁にシール剤を塗布し、このカラーフィルタを液晶が等方相になる温度まで加熱し、ディスペンサー等を用いて液晶を等方性液体の状態で滴下し、カラーフィルタおよび対向基板を減圧下で重ね合わせ、シール剤を介して接着させることにより、液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはいうまでもない。
【0109】
実施例1
ゾルゲル−染料色材組成物1
反応容器に、メタノール13.2重量部、染料Acid Blue 90 1.07重量部、テトラメトキシシラン1.92重量部、純水0.68重量部及び0.5N塩酸0.23重量部を加え、さらに室温で20時間撹拌した。このものをメンブレンフィルタを用い濾過し、不溶物を除いた。
【0110】
得られたろ液を厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、NA35)上に、スピンコートにより塗布した。 その後、150℃のホットプレート上で2分間加熱乾燥を行い、厚み0.6μm±0.1μmの上記ゾルゲル−染料色材組成物1の塗膜を得た。
【0111】
実施例2
ゾルゲル−染料色材組成物2
Acid Blue 90 1.07重量部にかえて染料Acid Blue 9 1.04重量部を用いた以外は実施例1と同様にして上記ゾルゲル−染料色材組成物2の塗膜を得た。
【0112】
実施例3
ゾルゲル−染料色材組成物3
Acid Blue 90 1.07重量部にかえて染料Basic Blue 7 0.67重量部を用いた以外は実施例1と同様にして上記ゾルゲル−染料色材組成物3の塗膜を得た。
【0113】
実施例4
ゾルゲル−染料色材組成物4
メタノール13.2重量部、染料Acid Blue 90 1.07重量部及びクロロプロピルトリメトキシシラン0.25重量部を混合し、室温で20時間撹拌した。このものにテトラメトキシシラン1.72重量部、純水0.61重量部、0.5N塩酸0.2重量部を加え、さらに室温で20時間撹拌した。このものをメンブレンフィルタを用い濾過し、不溶物を除いた。
得られたろ液を厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、NA35)上に、スピンコートにより塗布した。 その後、150℃のホットプレート上で2分間加熱乾燥を行い、厚み0.6μm±0.1μmの上記ゾルゲル−染料色材組成物4の塗膜を得た。
【0114】
実施例5
ゾルゲル−染料色材組成物5
Acid Blue 90 1.07重量部にかえて染料Acid Blue 9 1.04重量部を用いた以外は実施例4と同様にして上記ゾルゲル−染料色材組成物5の塗膜を得た。
【0115】
実施例6
ゾルゲル−染料色材組成物6
クロロプロピルトリメトキシシラン0.25重量部にかえてブロモプロピルトリメトキシシラン0.33重量部を用いた以外は実施例4と同様にして上記ゾルゲル−染料色材組成物6の塗膜を得た。
【0116】
実施例7
ゾルゲル−染料色材組成物7
メタノール3.6重量部及び染料Acid Blue 90 0.32重量部を混合したものに10重量%ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(アルドリッチ社製 重量平均分子量300,000)のメタノール溶液を1.0重量部加えよく撹拌した。このものにテトラメトキシシラン2.69重量部、純水0.68重量部及び0.5N塩酸0.23重量部を加え、さらに室温で20時間撹拌した。メンブレンフィルタを用い濾過し、不溶物を除いた。
【0117】
得られたろ液を厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、NA35)上に、スピンコートにより塗布した。その後、150℃のホットプレート上で2分間加熱乾燥を行い、厚み0.6μm±0.1μmの上記ゾルゲル−染料色材組成物7の塗膜を得た。
【0118】
実施例8
ゾルゲル−染料色材組成物8
ポリヒドロキシエチルメタクリレートにかえてポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)(アルドリッチ社製 重量平均分子量200,000)を用いた以外は実施例7と同様にして上記ゾルゲル−染料色材組成物8の塗膜を得た。
【0119】
実施例9
ゾルゲル−染料色材組成物9
ポリヒドロキシエチルメタクリレートにかえてポリ(4−ビニルピリジン)(アルドリッチ社製 重量平均分子量200,000)を用いた以外は実施例7と同様にして上記ゾルゲル−染料色材組成物9の塗膜を得た。
【0120】
実施例10
ゾルゲル−染料色材組成物10
ポリヒドロキシエチルメタクリレートにかえてポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)(アルドリッチ社製 重量平均分子量55,000)を用いた以外は実施例7と同様にして上記ゾルゲル−染料色材組成物10の塗膜を得た。
【0121】
比較例1
染料のポリマー分散組成物1
ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(アルドリッチ社製 重量平均分子量300,000)0.3重量部をメタノール4.5重量部に溶解し、このものにAcid Blue 90 0.2重量部を加え室温で20時間撹拌した。メンブレンフィルタを用い濾過し、不溶物を除いた。
【0122】
得られたろ液を厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、NA35)上に、スピンコートにより塗布した。 その後、150℃のホットプレート上で2分間加熱乾燥を行い、厚み0.6μm±0.1μmの上記染料のポリマー分散組成物1の塗膜を得た。
【0123】
比較例2
染料のポリマー分散組成物2
ポリヒドロキシエチルメタクリレートにかえてポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)(アルドリッチ社製 重量平均分子量200,000)を用いた以外は比較例1と同様にして上記染料のポリマー分散組成物2の塗膜を得た。
【0124】
比較例3
染料のポリマー分散組成物3
ポリヒドロキシエチルメタクリレートにかえてポリ(4−ビニルピリジン)(アルドリッチ社製 重量平均分子量200,000)を用いた以外は比較例1と同様にして上記ゾルゲル−染料色材組成物3の塗膜を得た。
【0125】
比較例4
染料のポリマー分散組成物4
ポリヒドロキシエチルメタクリレートにかえてポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)(アルドリッチ社製 重量平均分子量55,000)を用いた以外は比較例1と同様にして上記ゾルゲル−染料色材組成物4の塗膜を得た。
【0126】
試験例
得られた上記塗膜を耐熱性試験に供した。
耐熱性試験は塗膜サンプルをホルダにたて、ホルダごと230度に熱したオーブンに30分間投入し、耐熱試験前後の塗膜の透過スペクトルおよび透過率ピーク値とL、a、bをオリンパス社製顕微分光装置OSP−SP200を用いて測定した。この作業を3回繰り返し、得られた値から透過率ピークの減少率およびΔEabを算出し表1にまとめた。
【0127】
ここで、透過率ピークの減少率及びΔEは、下記の式から算出することができる。
透過率ピークの減少率=[最初の加熱処理前に測定した透過率ピーク値(初期ピーク透過率)−各加熱処理後に測定した透過率ピーク値]/初期ピーク透過率×100(%)
ΔE =(Δa2+Δb2+ΔL21/2
ここで、Δa、Δb及びΔLは、各加熱処理後のa、b及びLと最初の加熱処理前のa、b及びLとの差を示す。
【0128】
【表1】

【0129】
上記表において、減少率が小さい、色差ΔEが小さいほうが耐熱性が高い。
実施例1〜10および比較例1〜4において染料のもつ高い透過性を示す80%以上の高い透過率を示した。例として実施例1〜3の透過スペクトルを図1に示した。
【0130】
ゾル−ゲル中にAcid Blue 90を分散した実施例1は同じ染料を有機高分子中に分散した比較例1〜4をくらべピーク透過率の減少率が大幅に低くなり、耐熱性が高い。
【0131】
染料としてAcid Blue 9、Basic Blue 7を用いた実施例2、3も比較例1〜4にくらべ高い耐熱性を示した。このことから酸性染料、塩基性染料問わず本手法によって耐熱性が向上することがわかる。
【0132】
分散剤としてクロロプロピルトリメトキシシランを用いた実施例4、5は同じ染料を用いた実施例1、2にくらべてさらに耐熱性が高い。これは分散剤が染料の会合状態を均一に分散するとともに生じた擬結晶バルク構造をさらに固定することに寄与したためと考えられる。
【0133】
分散剤としてブロモプロピルトリメトキシシランを用いた実施例6は、同じ染料を用いた実施例4にくらべ同等以上の高い耐熱性を示した。若干ではあるが耐熱性が向上した理由として、分散剤の相互作用能がクロロ基にくらべブロモ基が高いため、結果として染料の会合状態を均一に分散するとともに生じた擬結晶バルク構造をさらに固定することに寄与したことが考えられる。
【0134】
ゾルゲル−染料組成物に有機高分子を混合した実施例7〜10では同じ染料を有機高分子のみに分散した比較例1〜4に比べ大幅に耐熱性が向上した。さらに同じ染料を用いてゾルゲルに分散した実施例1に比較しても高い耐熱性を示した。これは染料を会合状態のまま均一に分散し固定硬化する無機シリカバインダーの能力に加え、有機高分子の柔軟性が付与された結果、染料会合状態の熱運動が緩和されることで耐熱性が向上したものと考えられる。また有機高分子と無機ゾルゲルシリカとが緊密に相互作用し分散することで有機−無機ハイブリッドバルクを形成し、会合状態の染料を均一に分散し固定化したためと考えられる。
【符号の説明】
【0135】
1 … 透明基板
2 … 遮光部
3 … 着色層
10 … カラーフィルタ
20 … 対向基板
30 … 液晶層
40 … 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるトリフェニルメタン系の化合物又はその塩からなる染料、及び金属アルコキシドを含有する、カラーフィルタを製造するための着色材組成物:
【化1】

[式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、又は
【化2】

(式中、R〜R13は、同一又は異なって、水素原子又はスルホン酸基を示す。mは、0又は1を示す。)
を示す。
は、水素原子、低級アルキル基を示す。
、R5、及びRは、同一又は異なって、水素原子、スルホン酸基又はヒドロキシル基を示す。
及びRは、これらが結合する炭素原子と共に、互いに結合して
【化3】

(式中、R14〜R17は、同一又は異なって、水素原子又はスルホン酸基を示す。)
で示される不飽和6員環を形成してもよい。
は、水素原子、スルホン酸基、N−低級アルキルアミノ基又は
【化4】

(式中、R18、R19、R21及びR22は、同一又は異なって、水素原子又はスルホン酸基を示す。R20は、低級アルキル基を示す。)
を示す。]
【請求項2】
前記トリフェニルメタン系の化合物又はその塩からなる染料の存在下、金属アルコキシドを溶媒中で加水分解、縮合することにより得られる、請求項1に記載の着色材組成物。
【請求項3】
金属アルコキシドが下記一般式(2)
M(OR23 (2)
[式中、R23は、低級アルキル基を示す。
Mは、3価または4価の金属を示す。
nは、金属Mの価数を示す。]
で示される化合物またはその縮合物である、請求項1又は2に記載の着色材組成物。
【請求項4】
さらに、分散剤として、ハロアルキルトリアルコキシシランまたはその縮合物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の着色材組成物。
【請求項5】
さらに、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン及びポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種のポリマーを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の着色材組成物。
【請求項6】
前記ポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリマーである、請求項5に記載の着色材組成物:
【化5】

[式中、R25は、水素原子又はメチル基を示す。R26は、ヒドロキシ低級アルキル基を示す。]。
【請求項7】
透明基板、及び当該透明基板上に前記請求項1〜6のいずれか一項に記載の着色材組成物及び樹脂を含む組成物の硬化物を備えるカラーフィルタ。
【請求項8】
請求項7に記載のカラーフィルタを有することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−243960(P2010−243960A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95309(P2009−95309)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】