説明

高い貯蔵能、高い可溶性固形物含量および/または低い辛味を有するタマネギ

低い辛味の結果としての「甘い味」と併せて「高い可溶性固形物」を含むタマネギ球根を産生できる長日タマネギ植物、並びに、このような植物、球根および種子を産生するための方法が提供される。このようなタマネギは、品質を低下させることなく、辛味を増加させることなく、長期間貯蔵することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、植物の育種および植物の改良、特に新しい品質特徴、並びに「高い可溶性固形物含量」、「低い辛味」(LP)および/または貯蔵中の有意な品質の低下を実質的に伴うことのない(例えば、辛味の有意な増加および/または可溶性固形物含量の有意な減少がない)「長期貯蔵」(LS)から選択される少なくとも2つの特徴の組合せを有するAllium cepa種(タマネギ)の植物に関する。これらの特徴を有するタマネギの球根、植物および種子(放任受粉およびハイブリッドの両方、特に長日タマネギ)並びにこれらを作製するための方法が提供される。
【0002】
発明の背景
タマネギ植物は、西アジアまたは中央アジアから派生したと考えられている。それは欧州では青銅器時代から知られている。タマネギ植物の球根、すなわち「タマネギ」は、多くの料理に使用され、そして非常に健康的な評価を得ている。植物の育種は、タマネギが健康に対して有益な効果を及ぼすいくつかの化合物を含んでいるため、収量、外見、収穫性、貯蔵性、風味および含量に焦点が当てられてきた。これらの中のいくつかの化合物はタマネギが生で消費された場合に最も効果的であり、その濃度はしばしばタマネギの固形物レベルに関連している。加熱調理せずに消費されるに十分なほどマイルドで甘い高固形物タマネギは、食生活においてより健康を促進する化合物を届けるだろう。
【0003】
タマネギの品種は、日長により特徴づけられる;「長日」タマネギ品種は、日長が14〜16時間に到達すると、先端の形成を停止し、球根を形成し始め、一方「短日」タマネギは、日光が僅か10〜12時間しかない時期の初春または秋/冬に球根を作り始める。「長日」タマネギは、通常、北方の国々または米国北部の州(北緯36度より北)で産生されるが、一方「短日」タマネギは、その線よりも南の国々または州で産生される。長日タマネギ品種は、一般に、甘い短日品種よりも辛い風味を有する。長日品種はまた、短日タマネギと比較して相対的により高い乾物含量またはより高い比率の可溶性固形物(SSC)を有しているため、短日品種よりもより良好により長く貯蔵される(例えば、テキサスA&M大学園芸学ウェブサイトのワールドワイドウェブhttp://aggie-horticulture.tamu.edu/plantanswers/publications/onions/oniongro.htmlから入手可能な「Onion Planting」刊行物を参照)。長日タマネギ品種の長期貯蔵能は、マイルドな短日タマネギが入手できないかまたは稀な時期である、晩夏、秋および冬(8月〜3月/4月)の間にタマネギを市販する可能性を与える。長日タマネギの種子産生は半年ごとである。種子産生目的の播種は、春の移植後の、可能性として必ずしもではないが秋に行なわれる。種子は次の夏に収穫される。球根産生のために長日タマネギは初春に播種され、秋に収穫され、その後、冬を通じて貯蔵される。短日タマネギは秋に播種され、次の年の春に収穫され得るか、または春に播種され同じ年の初夏に収穫され得る。短日タマネギの貯蔵能は低いので、これらのマイルドなタマネギの入手は、春から初夏に限られる(4月〜7月)。
【0004】
辛味は、タマネギ細胞が切断または傷害を受けた場合に、酵素アリナーゼによる硫黄含有風味前駆体−アルキル(アルケニル)−L−システイン−スルホキシド(ACSOs)からチオスルホネートへの変換により引き起こされる、典型的なタマネギの風味または味である。この酵素的プロセスの副生成物であるピルベートまたはピルビン酸が、辛味の指標として測定される(Schwimmer and Weston 1961, J. of Agric. Food Chem. 9: 301-4)。産生されるピルベートの量は、味パネルによって決定されるようなタマネギ辛味に直接的に関連している(Schwimmer and Guadagni, 1962, J. Food Sc. 27:94-97)。
【0005】
消費者が少ない辛味および甘い味を有する新鮮なタマネギを好むため、辛味は重要な商業的特質である。辛味は、水溶性固形物または炭水化物の一部としてタマネギに存在する、糖の甘味を遮蔽する。辛味は、土壌または植物栄養素中の硫黄の存在または非存在によって強く影響を受けるが(Randle 1992, Euphytica 59: 151-156 and Randle and Bussard 1993, J. Amer. Soc. Hort. Sci. 118: 766-770)、Lin(1995, J. Americ. Soc. Hort. Sci. 120: 119-122)、Simon(1995, Euphytica 82: 1-8)、Wall et al(1996, Euphytica 87: 133-139)並びにWallおよびCorgan(1999, Euphytica 106: 7-13)によって示されたような明確な遺伝的成分も有する。それ故、辛味は、場所により年度により異なり得る。
【0006】
タマネギ中の乾物は、可溶性および不溶性の両方の炭水化物からなる。可溶性固形物は、フルクトース、スクロース、グルコース、フルクタン、および他の糖類の形態である。乾物の分析は、時間を浪費し、球根にとって破壊的であり得る。何人かの研究者が、乾物含量および屈折率(可溶性固形物含量)が、乾物の比率と正に相関し、屈折率の測定は球根の破壊を回避することを見出した(Mann and Hoyle, 1945, Proc. Americ. Soc. Hort Sci. 46: 285-292; Foskett and Peterson, 1949, Proc. Americ. Soc. Hort Sci. 55: 314-318)。タマネギの低い辛味は、低い乾物含量または低比率の可溶性固形物と強く相関している(以下をさらに参照)。従って、短日タマネギは、収穫時に低い辛味および低いSSCを有しており、長期間貯蔵できない。しかしながら、北方の国々または米国北部の州(すなわち長日の国々)における新鮮なタマネギ市場のために、低い辛味の品種の必要性が以前からずっと存在している。これは、「低い辛味」特性と「高い固形物」特性とを併せ持つ長日タマネギを必要とする。このようなタマネギは当技術分野においては依然として存在していない。なぜなら、「高い辛味」特性と「高い(可溶性)固形物」特性の間には遺伝的連鎖があると主張されているからである。従って、長日タマネギは、高い辛味および高いSSCを有するため、それらは冬中貯蔵できる。
【0007】
高い辛味および高いSSCの間のこの連鎖は、例えば、Galmarini et al.(2001, Mol. Gent. Genomics 265: 543-551)の研究により示されており、この中で、辛味に対して重要である分子マーカーはまた、SSCに対しても重要であり、このことは、この特徴が、同じ染色体領域により制御され得ることを示唆している。それは、これらの形質間の遺伝的連鎖または会合を暗示し、これにより、低い辛味と共に低い可溶性固形物含量を一般的に有する短日タマネギと、高い辛味を併せ持った高い可溶性固形物含量を有する長日タマネギとなる。
【0008】
また他の研究も、2つの形質、すなわちSSCと辛味の間の強い連鎖を支持している(Schwimmer and Weston, 1961, supra; Randle 1992, supra; Simon 1995 supra; Lin 1995; MacCallum et al. 2001, NZ J. of Crop and Hort. Sci. 29: 149-158; Galmarini 2001, 前記)。例えば、Simon(1995, supra)は、親系列、F1、F2、および4つの親近交系の間のダイアレルのBC1世代において、辛味とSSCの間の強い相関を観察している。Galmarini et al. (2001, supra)およびHavey et al.(2004, Genome 47: 463-468)は、F3世代において固形物と辛味の間の表現型的かつ遺伝子的に有意な正の相関を見出した。
【0009】
Galmarini et al.およびHavey et al.は、この連鎖が、多面的効果の結果であり得ると示唆する。このシナリオには生理学的なエビデンスが存在する。なぜなら、フルクタンからフルクトースへの加水分解が全くないことおよび水分取り込みがより少ないことに起因する、高固形物タマネギにおけるフルクタンのより高い蓄積は、より高いチオスルフィネート濃度に関連しており、可溶性炭水化物、辛味およびタマネギの誘発するインビトロでの抗血小板活性(OIAA)間の強い相関が生じるからである。低固形物タマネギにおける水分含量および遊離フルクトースの増加は、辛味に関連した化合物を希釈することに関与し、より甘くよりマイルドな味を増加させ得る。これらの文献で考察されているようなQTL分析は、1つのグループ(E)における乾物比率(DM%)、辛味およびOIAAの間の強力な連鎖を示すが、一方、異なるグループ(D)においてはDM%および固形物が強力に連関している。これは、DM%、可溶性固形物、辛味およびOIAAの間の強力な関連を意味し、この克服は難しいだろう。
【0010】
いくつかの報告によると(Shock et al. 2004: "Pungency of Selected Onion Varieties Before and After Storage", Oregon State University, Malheur Experiment Station Special Report 1055: 45-46)、辛味は、貯蔵中に有意に増加し得る。それ故、収穫時に低い辛味および高いSSCを有し、辛味が貯蔵中に有意に増加しない、タマネギが必要である。
【0011】
発明の要約
本発明において、低い辛味を有する球根を含む球根の形成を開始するために14時間以上連続した日光を必要とするタマネギ植物、特に、前記球根が、収穫時に5.5μM/gFW未満のピルベート、5.0μM/gFW未満のピルベート、4.5μM/gFW未満のピルベート、4.0μM/gFW未満のピルベート、3.75μM/gFW未満のピルベート、または3.5μM/gFWのピルベートに等しいかもしくはそれ未満のPAD測定値を有するようなタマネギ植物が提供される。
【0012】
また、本明細書において、前記タマネギ植物がイエローオニオンまたはスパニッシュオニオンである、前記タマネギ植物のいずれか1つが提供される。さらに本明細書において、前記球根が収穫時に低い辛味であるか、または前記球根が約2ヶ月間の貯蔵後にも低い辛味を実質的に維持している、前記タマネギ植物のいずれか1つ、例えば、貯蔵後のPAD測定値が、収穫時のPAD測定値よりも10%未満増加している、前記球根が約4カ月の貯蔵後に低い辛味を実質的に維持している、または貯蔵後のPAD測定値が、収穫時のPAD測定値よりも10%未満増加している、前記タマネギ植物のいずれか1つが提供される。
【0013】
さらに、前記球根が約6ヶ月の貯蔵後に低い辛味を実質的に維持している、前記タマネギ植物のいずれか1つ、例えば、貯蔵後のPAD測定値が収穫時のPAD測定値よりも10%未満増加している、前記タマネギ植物のいずれか1つが提供される。また、本明細書において、前記タマネギ植物が、球根形成を開始するために2日間以上、4日間以上、または7日間以上の間に、14時間以上連続した光を必要とする、前記タマネギ植物のいずれか1つが提供される。
【0014】
本発明によると、本明細書において、球根形成を開始するために14時間以上連続した光を必要とするタマネギ植物の一部が提供され、前記植物は、5.5μM/gFW未満のピルベート、好ましくは3.5μM/gFW未満またはそれに等しいピルベートのPAD測定値を有する球根、例えば、種子、球根、葉、花粉、または胚珠からなる群より選択されるこのような植物の一部を含む。
【0015】
本明細書において、前記タマネギ植物のいずれか1つに由来またはそれから得られた、細胞、プロトプラスト、または細胞の組織培養物、例えば葉、花粉、胚、球根、葯、花、芽、および成長点からなる群より選択される組織に由来する組織培養物がさらに提供される。
【0016】
また本明細書において、低い辛味を有する球根を含む長日タマネギ植物、例えば低い辛味を有する球根を含むスペイン型タマネギ植物も提供される。
【0017】
本明細書において、約5.5μM/gFW未満のピルベート、約5.0μM/gFW未満のピルベート、約4.5μM/gFW未満のピルベート、約4.0μM/gFW未満のピルベート、約3.75μM/gFW未満のピルベート、または3.5μM/gFWに等しいかもしくはそれ未満のピルベートのPAD測定値を含む、球根形成を開始するのに14時間以上の連続した光を必要とするタマネギ植物由来のタマネギ球根、例えば、イエローオニオン球根、またはスパニッシュオニオン球根である前記球根のいずれか1つなどがさらに提供される。
【0018】
また本明細書において、約5.5μM/gFW未満のピルベート、約5.0μM/gFW未満のピルベート、約4.5μM/gFW未満のピルベート、または3.5μM/gFW未満もしくはそれに等しいピルベートの平均PAD測定値を含む球根形成を開始するのに14時間以上連続した光を必要とするタマネギ植物由来のタマネギ球根の容器が提供される。前記タマネギ球根の少なくとも75%、少なくとも85%、または少なくとも95%が、約5.5μM/gFW未満のピルベートのPAD測定値を有する、任意のこのような容器がさらに提供される。本明細書には、前記容器が、バッグ、缶、箱、および薄い平箱から選択される、前記容器のいずれか1つ、または1ポンドもしくは5ポンドのタマネギ球根を含む容器が含まれる。本明細書には、前記容器が食料品店などの店にある、前記容器のいずれか1つがさらに含まれる。
【0019】
本発明によると、球根形成を開始するのに14時間以上連続した光を必要とするタマネギ植物の種子も提供され、前記種子は、約5.5μM/gFW未満のピルベート、約5.0μM/gFW未満のピルベート、約4.5μM/gFW未満のピルベート、約4.0μM/gFW未満のピルベート、または3.5μM/gFWに等しいかもしくはそれ未満のピルベートのPAD測定値を含む球根を有するタマネギ植物を産生できる。
【0020】
本明細書において、球根形成を開始するのに14時間以上の連続した光を必要とするタマネギ植物の種子の容器も提供され、ここで、前記種子の50%超に由来するタマネギ球根が低い辛味のタマネギであり、ここで、前記種子由来のタマネギ球根個体群は、約5.5μM/gFW未満のピルベート、または約5.0μM/gFW未満のピルベートの平均PAD測定値を含み、例えば、少なくとも100または1000個の種子を含むこのような容器が提供される。このような容器は、バッグ、箱、または小包であり得る。本明細書において、種子の前記容器のいずれか1つがさらに提供され、ここで、前記種子の75%超、85%超、または95%超に由来する球根は低い辛味のタマネギである。
【0021】
本明細書において、球根形成を開始するのに14時間以上の光を必要とする低い辛味のタマネギ植物を別のタマネギ植物と交雑し、F1タマネギ種子を得ることを含む、ハイブリッドタマネギ種子の産生法も提供される。本明細書において、前記の低い辛味のタマネギが、それぞれ、アクセッションナンバーPTA−9053、PTA−9054およびPTA−9055の下で寄託されたI37853B、I37554A、またはI37554Bと称されるタマネギ系統である、このような方法がさらに提供される。
【0022】
本発明によると、本明細書において、I37853Bの種子(この種子の試料は、アクセッションナンバーPTA−9053の下で寄託されている)、前記種子から成長したタマネギ植物、このようなタマネギ植物由来のタマネギ植物の一部、例えば花粉、プロトプラスト、胚珠、または細胞が提供される。また本明細書において、前記植物から得られた細胞の組織培養物、例えば、葉、花粉、胚、球根、葯、花、芽、および成長点からなる群より選択される組織に由来する細胞の組織培養物も提供される。
【0023】
また本明細書において、I37554AまたはBの種子(この種子の試料は、それぞれ、アクセッションナンバーPTA−9054およびPTA−9055の下で寄託されている)、前記種子のいずれか1つから成長したタマネギ植物、前記タマネギ植物のいずれか1つに由来するタマネギ植物の一部、例えば花粉、プロトプラスト、胚珠、または細胞も提供される。また本明細書において、前記植物のいずれか1つから得られた細胞の組織培養物、例えば葉、花粉、胚、球根、葯、花、芽、および成長点からなる群より選択される組織に由来する細胞の組織培養物も提供される。
【0024】
さらに本明細書において、約5.5μM/gFW未満のピルベート、好ましくは3.5μM/gFW未満またはそれに等しいピルベートのPAD測定値を含む球根を有するハイブリッドタマネギ植物が提供される。
【0025】
また本明細書において、収穫時に3.75μM/g未満の新鮮重量(FW)のピルベート、または3.5μM/gFWのピルベートに等しいかもしくはそれ未満の平均PAD測定値を有する、球根を産生する長日タマネギ植物、例えば、前記球根が収穫時に少なくとも7.5%または少なくとも8%の平均可溶性固形物含量(SSC)を有する前記タマネギ植物のいずれか1つも提供される。
【0026】
さらに本明細書において、前記PAD測定値が収穫時のPAD測定値と比較して貯蔵後少なくとも4ヶ月間の間に10%未満増加する前記タマネギ植物のいずれか、および、前記SSCが貯蔵後少なくとも4ヶ月間後に2%未満減少するこのような前記タマネギ植物またはそのいずれかが提供される。
【0027】
また本明細書において、最も辛味の高い球根と最も辛味の低い球根の辛味レベルが最大で5μMol/gFWまたは最大で3.5μMol/gFW異なる、球根を産生する前記タマネギ植物のいずれか1つ、または全ての球根が0〜5μMol/gFWもしくは1〜4μMol/gFWの辛味を有する、このような球根を産生する前記タマネギ植物もしくはそのいずれか1つが提供される。
【0028】
本明細書において、前記タマネギ植物が、球根形成を開始するのに2日間以上の間に14時間以上連続した光を必要とする前記タマネギ植物のいずれか、例えば、前記平均PADまたは平均SSCが前記植物の少なくとも10個のタマネギ球根から得られる、このようなタマネギ植物または本発明の前記タマネギ植物のいずれか1つが提供される。
【0029】
また、本発明によると、前記タマネギ植物のいずれか1つが提供され、ここで、前記植物は、ハイブリッドであるか、あるいは、それぞれアクセッションナンバーPTA−9053、PTA−9054およびPTA−9055の下で寄託されたI37853B、I37554A、またはI37554Bと称される系統に由来するかまたはそれから得られる植物である。
【0030】
本明細書において、前記タマネギ植物のいずれか1つの種子または球根、および、このような複数の前記球根または前記球根のいずれか1つを含む容器、例えば任意のこのような容器がさらに提供され、ここで、球根の少なくとも75%が、請求項12記載の球根である。また本明細書において、前記容器のいずれか1つも提供され、ここで、前記容器は、請求項12記載の少なくとも1ポンドの球根を含む。
【0031】
また本明細書には、前記タマネギ植物のいずれかの一部、または前記種子もしくは球根のいずれか1つの一部、例えば細胞の一部もしくは細胞培養物、組織培養物、プロトプラスト、もしくは植物器官が示される。
【0032】
ここで、1つの局面において、本発明は、低い辛味を有するが高いSSCを有する球根を産生し、および/または辛味の有意な増加を全く伴うことなく(収穫時のレベルと比較して)および/またはSSCの有意な減少を全く伴うことなく(収穫時のレベルと比較して)、少なくとも2、3、4、5、6、7カ月以上貯蔵することができる、長日タマネギ植物を提供する。さらなる目的は、複数の長日植物、これらの植物由来の種子、球根、およびこれらのいずれかを有する容器、並びに、これらの表現型特徴を有する長日タマネギ植物の作製法を提供することである。
【0033】
別の局面において、本発明は、低い辛味を有する球根を含む球根形成を開始するのに14時間以上連続した日光を必要とするタマネギ植物を提供する。別の局面において、本発明は、球根形成を開始するのに2、4、7日間以上の間に14時間以上連続した光を必要とするタマネギ植物を提供する。本発明は、イエロー、スパニッシュ、および他の種類のタマネギ植物を提供する。本発明はまた、本発明の植物(または植物細胞)に由来する細胞、プロトプラスト、および組織培養物も提供する。
【0034】
さらなる局面において、球根は、収穫時に5.5、5.0、4.5、4.0、3.8、3.75、または3.5μM/gFW未満のピルベートのPAD測定値を有する。別の局面において、球根は、収穫時に3.5μM/gFWまたはそれ未満のピルベートのPAD測定値を有する。別の局面において、球根は収穫時に辛味が低い。別の局面において、球根は、約2、4、または6ヶ月間の貯蔵後も低い辛味を実質的に維持している。別の局面において、2、4、または6カ月間の貯蔵後のPAD測定値は、収穫時のPAD測定値から10%未満増加している。
【0035】
別の局面において、本発明は、球根形成を開始するのに14時間以上連続した光を必要とするタマネギ植物の一部を提供し、ここで、前記植物は、5.5μM/gFW未満のピルベート、好ましくは3.5μM/gFW未満もしくはそれに等しいピルベートのPAD測定値を有する球根を含む。植物の一部は、種子、球根、葉、花粉、または胚珠であり得る。
【0036】
別の局面において、本発明は、約5.5、5.0、4.5、4.0、3.75、もしくは3.5μM/gFW未満のピルベート、または3.5μM/gFWに等しいピルベートの平均PAD測定値を含む球根形成を開始するのに14時間以上連続した光を必要とする、タマネギ植物に由来するタマネギ球根の容器を提供する。別の局面において、本発明は、容器中のタマネギ球根の少なくとも75、85または95%が、約5.5μM/gFW未満のピルベートのPAD測定値を有することを提供する。
【0037】
別の局面において、本発明は、球根形成を開始するのに14時間以上連続した光を必要とするタマネギ植物の種子を提供し、ここで、前記種子は、約5.5、5.0、4.5、4.0、3.75、もしくは3.5μM/gFW未満のピルベート、または3.5μM/gFWに等しいピルベートのPAD測定値を含む球根を有するタマネギ植物を産生できる。本発明はまた、種子の容器も提供し、ここで、前記種子の50%超に由来するタマネギ球根は、低い辛味のタマネギである。
【0038】
別の局面において、本発明は、球根形成を開始するのに14時間以上の光を必要とする低い辛味のタマネギ植物を、別のタマネギ植物と交雑し、そしてF1タマネギ種子を得ることを含む、ハイブリッドタマネギ種子の産生法を提供する。別の局面において、本発明は、I37853またはI37554と称される低い辛味のタマネギ系統、これらのタマネギ系統に由来する種子、これらの種子から成長した植物、並びにこれらの植物に由来する植物の一部および組織を提供する。
【0039】
別の局面において、本発明は、約5.5または3.5μM/gFW未満のピルベート、または3.5μM/gFWに等しいピルベートのPAD測定値を含む球根を有するハイブリッドタマネギ植物を提供する。
【0040】
別の局面において、本発明は、高いSSC、良好な貯蔵能および低い辛味を有する、タマネギを提供する。
【0041】
発明の詳細な説明
定義
本明細書に使用したような表現「含む(to comprise)」およびその活用法は、非限定的な意味で使用され、その言葉の後に続く事項が含まれるが、具体的に言及されていない事項も除外されないことを意味する。さらに、「1つ(a)」または「1つ(an)」の列挙による要素への言及は、内容が明瞭に1つおよび唯1つの要素が存在することを必要としない限り、1より多い要素が存在する可能性を除外するものではない。従って、「1つ(a)」または「1つ(an)」とは、通常、「少なくとも1つ」のことをいい、例えば「細胞(a cell)」とは、細胞培養物、組織、全生物体などの形態のいくつかの細胞のことをいう。同様に、「球根(a bulb)」または「植物(a plant)」もまた、それぞれ複数の球根および植物のことをいう。
【0042】
本明細書に使用したような用語「植物」は、全植物またはそのいずれかの一部もしくはその誘導体、例えば植物器官(例えば、収穫されたまたは収穫されていない貯蔵器官、球根、塊茎、果実、葉など)、植物細胞、植物プロトプラスト、植物細胞組織培養物(これから全植物を再生できる)、植物カルス、植物細胞凝集塊および植物中で無傷である植物細胞、または植物の一部、例えば胚、花粉、胚珠、果実(例えば収穫された組織または器官)、花、葉、種子、塊茎、球根、クローン的に繁殖させた植物、根、幹、根端などを含む。また、実生、未成熟および成熟な球根などの任意の発達段階も含まれる。
【0043】
「品種」は、知られている最も下位の単一の植物分類群の中の植物分類を意味し、ここで、分類は、育成者権の認可条件が完全に適合しているかどうかに関係なく、特定の遺伝型または遺伝型の組合せから生じる特徴の発現により定義でき、前記特徴の少なくとも1つの発現により任意の他の植物分類から区別でき、そして、変化させずに繁殖することへの適切性に関しての単位として考えることができる。
【0044】
「表現型」は、その遺伝子型とその環境の間の相互作用の結果としての、植物の観察可能な外的および/または生理的外見である。それは全ての観察可能な形態学的および生理的特徴を含み、従って、タマネギ球根の辛味、PAD測定値および可溶性固形物含量などの表現型を包含する。
【0045】
「遺伝子型」は、表現型で発現される、環境因子により一部影響を受ける、植物の遺伝性の遺伝情報全体である。
【0046】
本明細書に使用したような「タマネギ植物」または「タマネギ」は、植物種Allium cepa L.の植物またはその一部、例えば(収穫された)球根、種子などである。「球根」は、収穫された植物の食用部分である。タマネギ球根は、発達中であっても成熟していてもよい。ここでは、成熟球根が好ましく、これは、収穫の準備のできた球根または収穫された球根である。
【0047】
「長日」タマネギ植物は、光(日長)が少なくとも連続して約14時間以上、例えば少なくとも約14、15または16時間である場合に球根形成を開始する。好ましくは、この連続的な光(1日当たりの時間)は、球根形成を開始するために2、4、7、14、21、25日間以上、提供される。
【0048】
「貯蔵条件」は、(好ましくは新鮮)タマネギを貯蔵するのに使用される典型的な条件、例えば暗闇、冷温(本明細書で使用したような冷温は、好ましくは12℃未満、例えば約3〜12℃、3〜10℃、5〜10℃、または約3〜5℃、好ましくは約3、4または5℃(摂氏)を意味する)および約60〜80%、好ましくは約70〜80%、最も好ましくは約70%の相対湿度(RH)を包含する。また、制御された換気が好ましい。
【0049】
「科」は、多くの異なる他の植物により受粉された、1つの植物の子孫である。
【0050】
「ハイブリッド」または「ハイブリッド植物」は、少なくとも2つの異なる植物または異なる親系統の植物の交雑(交雑受精)によって産生された植物である。本明細書においてこのような交雑の種子(ハイブリッド種子)、並びに、そのような種子から成長したハイブリッド植物、およびそうした成長植物から得られた植物の一部(例えば球根)が包含されることを理解されたい。
【0051】
「F1、F2など」は、2つの親植物または親系統間の交雑後の連続的に関連した世代を意味する。2つの植物または系統を交雑することにより産生された種子から成長した植物は、F1世代と呼ばれる。F1植物の自家受粉によりF2世代が得られる、等々。
【0052】
「可溶性固形物」または「可溶性固形物含量」(本明細書では「SSC」)は、Mann and Hoyle, 1945(Proc. Americ. Soc. Hort. Sci. 46: 285-292)またはFoskett and Peterson, 1949 (Proc. Americ. Soc. Hort. Sci. 55: 314-318)の方法に従って屈折計によって測定したタマネギ球根中の水溶性化合物の比率(%)である。
【0053】
「高いSSC」とは、本明細書において、少なくとも7%または7.5%、好ましくは少なくとも8%、9%、10%、11%、12%、15%、20%、25%、30%以上の代表的な数の球根(例えば少なくとも10、15、20、30、40、50、60、70、80、90個以上の球根)の平均SSCのことをいう。従って、7.5〜30%、より好ましくは8〜20%、8〜15%、10〜20%などの平均SSCが本明細書に包含される。
【0054】
「辛味」は、タマネギ球根組織が粉砕により破壊する時のタマネギの典型的な鋭い味である。辛味は、好ましくは、試験パネルによる風味認識に強く関連している(Schwimmer 1962, J. Food Sci. 27: 94-97; Wall and Corgan, 1992, Hort. Science 27: 1029-1030)、Schwimmer and Weston (1961, J. of Agric. Food Chemistry 9:301-304)の方法に従ってピルビン酸の酵素的発生を測定することにより決定される。辛味は、球根材料の新鮮重量1gあたりのμMol(マイクロモル、また本明細書ではμMまたはμmol)として表現される。それはまた、本明細書では「PAD測定値」(ピルビン酸発生に由来するPAD)または「ピルベート測定値」または「ピルベートレベル」とも称される。
【0055】
「低い辛味」とは、本明細書において、PAD測定により決定した、5.5μMol/gFW未満、好ましくは5.0、4.5、4.0μMol/gFW未満、より好ましくは3.8または3.75μMol/gFWに等しいかもしくはそれ未満、最も好ましくは3.5、3.0、2.5、2.3、2.0、1.8、1.5、または1.3μMol/gFWに等しいかもしくはそれ未満の代表的な数の(成熟)タマネギ球根(例えば、少なくとも約5、8、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90個以上の球根)の平均的辛味のことをいう。従って、3.5〜1.3μMol/gFW、3.0〜1.3μMol/gFW、または3.0〜2.0μMol/gFWなどの平均的辛味が本明細書に包含される。
【0056】
「狭い辛味範囲」は、ある植物系統から得られた複数の球根の中の個々の球根の間の辛味のばらつきが狭いことをいい、すなわち、最も辛味の高い球根(最大値)と最も辛味の低い球根(最小値)の辛味レベルが、好ましくは5μMol/gFW未満もしくは最大で5μMol/gFW、より好ましくは4μMol/gFW未満もしくは最大で4μMol/gFW、または3.5μMol/gFW未満もしくは最大で3.5μMol/gFW異なる。好ましくは最大辛味は、5μMol/gFW未満である。従って、植物系統内の好ましい辛味範囲は、全ての球根が0(最小)〜5(最大)μMol/gFW、好ましくは1(最小)〜5(最大)μMol/gFW、より好ましくは1(最小)〜4(最大)μMol/gFWの辛味を有する。また、本発明の1つの態様において、全ての球根が、0(最小)〜5(最大)μMol/gFW、好ましくは1(最小)〜5(最大)μMol/gFW、より好ましくは1(最小)〜4(最大)μMol/gFWの辛味を有する。狭い辛味範囲は、消費者のための重要な品質特徴である。
【0057】
「長期貯蔵」とは、本明細書において、少なくとも2、3、4、5、6、7カ月以上の貯蔵の長さのことをいう。好ましくは、貯蔵期間中の辛味の有意な増加および/またはSSCの有意な減少が全くない、すなわち、収穫時(または収穫後すぐ)の平均的な辛味および/またはSSCを、2、3、4、5、6、7カ月以上の貯蔵後の辛味および/またはSSCレベルと比較した場合。「辛味の有意な増加が全くない」とは、本明細書において、10%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは3%、2%、または1%未満、より好ましくは全く増加なしの、貯蔵期間後の辛味測定値の増加、場合によりさらには収穫時(または収穫後すぐ)の測定値と比べて辛味の減少のことをいう。「SSCの有意な減少が全くない」とは、本明細書において、収穫時(または収穫後すぐ)のSSCレベルと比較して、5%、4%、3%または2%未満、好ましくは1%または0.5%未満、より好ましくは不変の、貯蔵期間後のSSCレベルの減少のことをいう。
【0058】
球根形成を開始するのに14時間以上の連続した日光を必要とするタマネギ植物(およびタマネギ植物の種子、およびこのような植物に由来する一部)が提供され、ここで、球根は、特に収穫時に低い辛味を有する。好ましくは、球根はまた、特に収穫時に、高い可溶性固形物含量(SSC)を有する。球根は、約2、3、4、5、6、7カ月以上の貯蔵後に辛味を実質的に維持する。球根はまた、約2、3、4、5、6、7カ月以上、SSC含量を実質的に維持する。
【0059】
1つの局面において、本発明は、タマネギ植物、球根および種子を提供し、ここで、球根は、収穫時に低い(平均)辛味、高い(平均)SSCおよび/または長期貯蔵能を有する。収穫時の(平均)辛味は、好ましくは、5.5、5.0、4.5、4.0μMol/gFW、より好ましくは3.8または3.75μMol/gFWに等しいかまたはそれ未満、好ましくは3.5、3.0、2.5、2.3、2.0、1.8、1.5、1.3μMol/gFWに等しいかまたはそれ未満、またはそれ未満である。収穫時の(平均)SSCは、好ましくは、少なくとも7.5%、より好ましくは少なくとも8%、9%、10%、11%、12%、15%、20%、25%、30%以上である。本発明に記載の球根は、少なくとも2、3、4、5、6、7カ月以上、好ましくは、貯蔵終了時に辛味の有意な増加を全く伴わずおよび/またはSSCの有意な減少を全く伴わずに貯蔵できる。
【0060】
さらに、本明細書で提供されるタマネギ植物は、前記に定義したような狭い辛味範囲を有する球根を産生する。この特徴は、新鮮タマネギの消費者にとって重要な特徴である。なぜなら、しばしばタマネギのバッグが購入されるが、個々のタマネギが食事の調製に使用されるからである。従って、1つの態様において、狭い辛味範囲を有する複数の(収穫された)タマネギ球根が、このような球根を産生できる植物と同様に提供される。
【0061】
低いレベルの辛味、高いSSC含量および/または長期貯蔵能を有する球根を保持する、すなわちこれらの形質について親の球根と実質的に同一である、前記植物の子孫(自家受粉または交雑により得られる)も提供される。従って、子孫は、例えば、前記形質の1つ以上を有する球根を産生する近交植物、または、前記形質の1つ以上を有する球根を産生するハイブリッド植物を含む。
【0062】
また、前記タマネギ植物の一部も提供される。本明細書に記載のタマネギ植物由来のこのような植物の一部は、種子、球根、葉、花、花粉、雄蕊、胚珠、細胞、プロトプラスト、細胞の組織培養物、または同等のものであり得る。細胞の組織培養物は、例えば、葉、花粉、胚、球根、花、葯、花粉、胚珠、芽、成長点、または任意の細胞から選択された組織に由来し得る。
【0063】
1つの局面において、本発明は、ブダペスト条約の下でアクセッションナンバーPTA−9053(I37853B系統の種子)、PTA−9054(I37554A系統の種子)およびPTA−9055(I37554B系統の種子)の下で2008年3月13日にアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、米国、バージニア州20110−2209、マナッサス、10801ユニバーシティ・ブールバード)にNunhems B.V.によって寄託された長日タマネギ種子、またはその任意の誘導体、例えば寄託植物のいずれか1つの自家受粉によって、もしくは寄託植物のいずれか1つと別のタマネギ植物との交雑によって得られた子孫に関する。1つの局面において、誘導体は、記載されたような低い辛味、高いSSCおよび/または長期貯蔵能を含む近交タマネギ植物を含む。別の局面において、誘導体は、さらなるタマネギ植物との1回以上の交雑および/または1回以上の自家受粉において親としてこれらの系統(I37554AまたはB、I37853またはこれらのいずれかの誘導体)の1つを使用することから得られたタマネギ植物または種子(および球根)を含み、ここで、子孫は、前記に定義したのと同じおよび/または寄託された系統と同じ(またはより良好な)低い辛味、高い可溶性固形物表現型および/または貯蔵特性を有する。それ故、誘導体は、前記したような、および/またはI37853および/またはI37554AもしくはBの球根のような、前記の(またはより良好な)低い辛味、高いSSCおよび/または長期貯蔵能を有する球根を産生する/産生できるハイブリッドタマネギ植物または種子(およびこのような植物の球根)を含み得る。ハイブリッド誘導体も本明細書において包含される。別の局面において、I37853(またはその誘導体、例えば近交)をI37554AまたはB(またはその誘導体、例えば近交)と交雑することにより得ることができるハイブリッド種子、植物および球根、並びに、さらなる自家受粉もしくは交雑においてこのようなF1ハイブリッドを使用することから得られる植物、球根および種子が提供される。それ故、低い辛味、高いSSCおよび/または長期貯蔵能を有する様々な長日タマネギ植物が本明細書において包含され、これは、例えば、I37853および/またはI37554AもしくはBの生理的および形態学的特徴を含む植物を含む。
【0064】
従って、自家受粉、交雑、クローン増殖、または組織培養によってアクセッションナンバーPTA−9053、PTA−9054またはPTA−9055の下で寄託された植物の1つから誘導された、または誘導することができる、長日タマネギ植物が本明細書において提供され、ここで、前記植物は、本明細書で記載したものおよび/または寄託系統PTA−9053、PTA−9054またはPTA−9055と同じ(またはより良好な)低い辛味、高い可溶性固形物表現型および/または貯蔵特性(収穫時および/または貯蔵後)を有するタマネギ球根を産生する。
【0065】
PTA−9053、PTA−9054およびPTA−9055の下で寄託されたタマネギ植物の子孫が提供され、ここで、前記子孫は、本明細書で記載したものおよび/または寄託系統PTA−9053、PTA−9054またはPTA−9055と同じ(またはより良好な)低い辛味、高い可溶性固形物表現型および/または貯蔵特性(収穫時および/または貯蔵後)を有するタマネギ球根を産生する。
【0066】
誘導体はまた、組織培養法および組織培養自体から得られた植物を含み、ここで、本明細書に記載の植物のいずれかの組織(例えば、葉、花粉、花、胚、プロトプラストなど)が使用される。同様に、前記植物のいずれかのトランスジェニックタマネギが本明細書において包含される。従って、形質転換によって1つ以上の遺伝子的エレメントが導入されたタマネギ植物も本明細書において包含される。タマネギの形質転換および再生は、当技術分野において公知の方法を使用する。例えば、除草剤耐性または微生物耐性に関する1つ以上の遺伝子が導入され得る。同様に、タマネギ植物を、導入遺伝子を含む植物と交雑し、そして導入遺伝子を含む子孫を選択することにより、本発明に記載のタマネギに導入遺伝子が導入され得る。
【0067】
好ましくは、すなわち、収穫時(または収穫後すぐ)の平均的辛味および/または平均SSCを、2、3、4、5、6、7カ月以上の貯蔵後の平均的辛味および/または平均SSCレベルと比較した場合、球根の貯蔵期間中に辛味の有意な増加および/またはSSCの有意な減少が全くない。「辛味の有意な増加が全くない」とは、本明細書において、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは3%、2%、または1%未満、より好ましくは全く増加なしの、貯蔵期間後の辛味測定値(すなわちピルベート)の増加、場合によりさらには収穫時(または収穫後すぐ)の測定値と比べて辛味の減少のことをいう。収穫時の辛味と比較した辛時の減少は、例えば、少なくとも0.5%、1%以上の減少を含む。「SSCの有意な減少が全くない」とは、本明細書において、収穫時(または収穫後すぐ)のSSCレベルと比較して、2%未満、好ましくは1%または0.5%未満、より好ましくは不変の、貯蔵期間後のSSCレベルの減少のことをいう。
【0068】
また、辛味範囲は、好ましくは、貯蔵中に狭さを維持する。さらに、少なくとも2、3、4、5、6、7カ月以上の貯蔵後の腐敗(眼でおよび/または重量により測定できる、例えば腐敗していない球根を評量し、そしてその重量を、貯蔵開始時の全重量と比較する)は少なく、すなわち、任意の所定の時点において、例えば貯蔵から2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、または6カ月以上後に、腐敗が、10%未満、好ましくは9%、8%、7.2%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはさらにはそれ未満である。
【0069】
タマネギ植物、球根および種子は長日タマネギであり、すなわち、前記植物は、長期の連続的な光、例えば少なくとも約14時間以上の人工光または自然光の下で球根の形成を開始する。このように、タマネギ植物は、球根形成を開始するのに1日あたり(24時間あたり)14時間以上の連続的な光を必要とする。
【0070】
1つの局面において、本明細書において提供されるタマネギ植物または種子は、収穫から2、3、4、5、6または7ヶ月後に、例えば暗闇、冷温および60〜80%のRHで5〜6カ月間貯蔵した後に測定した場合、3.75/gFW未満、好ましくは3.5、3.0、2.5、2.3、2.0、1.8、1.5、1.3μMol/gFWに等しいかもしくはそれ未満の辛味を有する球根を形成できる。これらの球根は、NCIMBアクセッションナンバー41329および41330(WO2007/011857号に記載)の下で寄託された種子の球根よりも有意に低い平均的辛味、並びに、WO2007/011857号に記載の様々なタマネギ系統よりも好ましくは狭い辛味範囲を有する。さらに、球根は、NCIMBアクセッションナンバー41329および41330の下で寄託された種子の球根と少なくとも等価であるか、好ましくは有意により高い平均SSC含量および/またはこのような球根と比較してより長い貯蔵能を有する。
【0071】
非常に低い辛味および高いSSC含量を有する球根および植物を選択できることが判明し、これは不可能であると考えられていた。本発明を限定することなく、高い辛味に関与する1つ以上の領域と高いSSCに関与する領域の間の遺伝的連鎖を、従来の概念に反して、破ることができ、このことにより低い辛味/高いSSC植物の選択または同定が可能となると考えられる。本明細書に提供された植物を、本明細書における以下の方法および実施例において記載のように、育種および選択法(PAD測定、SSC測定および/または貯蔵中腐敗測定など)を使用して作製することができる。また、本明細書に提供された種子を使用して本発明に記載の植物を作製することができる。なぜなら、寄託された種子から交雑および選択によって他のタマネギ植物へと形質を移行できるからである。基本的に、形質(低い辛味、高いSSCおよび/または長期貯蔵能)を、任意の長日タマネギ、例えばスパニッシュオニオン、スペイン型タマネギ、(北部)イエロー型オニオン、ホワイトおよびレッド型オニオン、硬いグローブ状のイースタンまたはウェスタン型オニオンなどに導入できる。それ故、これらの形質を有し、良好な農学特徴、例えば疾病に対する耐性(例えばFusarium耐性)、紅色根腐れ病、球根サイズ、軸心%、とう立耐性などを有するタマネギ植物(例えば放任受粉またはハイブリッド植物)を作製できる。
【0072】
また本明細書において、前記表現型を有する複数のタマネギ球根を含む容器、並びに前記植物の複数のタマネギ種子を含む容器、または複数のタマネギ植物もしくは実生を含む容器が提供される。容器は、任意の種類、例えばバッグ、缶、スズ缶(tin)、トレー、箱、薄い平箱などであり得る。また本明細書において、約5.5μMol/gFW未満、好ましくは3.75、3.5、3.0などのμMol/gFW未満の平均PAD測定値、高いSSCおよび/または長期貯蔵能(各々の表現型は前記に定義した通りである)を有するタマネギ球根を含む容器が提供される。好ましくは、容器中の球根の少なくとも75%、85%、95%、98%以上が、このようなPAD測定値、SSCレベルおよび/または貯蔵能を有する。また、好ましくは容器中の全ての球根の辛味範囲が狭い。容器は、好ましくは、少なくとも約1ポンド、5ポンド、10ポンド以上の球根を含む。容器は、任意の場所、例えば店(例えば食料品店)、倉庫、市場、配送業者などにあり得る。
【0073】
球根形成を開始するのに14時間以上の連続した光を必要とするタマネギ植物の種子を含む種子容器も提供され、ここで種子は、低い辛味(すなわち定義したようなPAD測定値)、高いSSCおよび/または長期貯蔵能(これも定義した通り)を含む球根を有するタマネギ植物を産生できる。好ましくは、このような種子によって産生された植物の50%超、より好ましくは60%、70%、75%、80%、90%、95%、98%超に由来するタマネギ球根が、5.5μMol/gFW未満、好ましくは5.0、4.0、3.5、または3.0μMol/gFW未満などの平均PAD測定値、高いSSCおよび/または長期貯蔵能を有する球根を産生する。容器は、好ましくは、少なくとも100、500、1000、10,000個以上の種子を含み、そして好ましくは、バッグ、箱、小包、スズ缶または缶から選択される。また、好ましくは、容器中の種子から誘導可能な全ての球根の辛味範囲は狭い。
【0074】
別の局面において、タマネギ植物もしくは種子、または一群の植物もしくは種子を作製するための方法が提供され、ここで、植物または一群の植物が、1日あたり少なくとも約14時間の光への曝露後に(少なくとも約1週間以上、例えば2または3週間以上の期間中)、収穫時において5.5、5.0、4.0、3.75μMol/gFW未満(または前記に定義したようにそれ未満)の(単一球根または平均的)辛味および収穫時において少なくとも7.5%以上(前記に定義した通り)の(単一球根または平均的)SSCを含む球根を産生する。好ましくは、球根は、貯蔵中、低い辛味および高いSSCを保持する。また、球根の辛味範囲は、好ましくは狭い。前記方法は、2つの親タマネギ植物を交雑するかまたは1つのタマネギ植物を自家受粉し、そして交雑もしくは自家受粉から得られたタマネギ種子を収穫することを含み、ここで少なくとも1つの親は、前記したようなタマネギ植物、またはその誘導体である。前記方法によって産生された種子が、こうした種子を成長させることによって産生されたタマネギ植物およびこうした成長した植物から収穫したタマネギ球根と同様に本明細書において提供される。
【0075】
前記方法は、さらに、前記交雑から得られた種子から得られたF1ハイブリッドタマネギ植物を成長させる工程、F1タマネギ植物を別のタマネギ植物(例えば使用した親の1つ)と交雑させる工程、そして所望の低い辛味および高いSSC含量を有する子孫タマネギ植物を選択する工程を含み得る。
【0076】
さらなる局面において、タマネギ植物もしくは種子、または一群の植物もしくは種子を作製するための方法が提供され、ここで、植物または一群の植物が、1日あたり少なくとも約14時間の光への曝露後に(少なくとも約1週間以上、例えば2または3週間以上の期間中)、収穫時において5.5、5.0、4.0、3.75μMol/gFW未満(または前記に定義したようにそれ未満)の(単一球根または平均的)辛味および収穫時において少なくとも7.0または7.5%以上(前記に定義した通り)の(単一球根または平均的)SSCを含む球根を産生する。好ましくは、球根は、貯蔵中に低い辛味および高いSSCを保持し、貯蔵中に殆ど腐敗を示さず、そして/または狭い辛味範囲を有する(全て記載の通り)。前記方法は、
a)低いSSCおよび低い辛味を有する球根を産生するタマネギ植物を、高いSSCおよび高い辛味を有する球根を産生するタマネギ植物と交雑する工程、
b)前記交雑からF1種子を得る工程、
c)F1種子から得られた植物を、1回以上、互いにまたは他のタマネギ植物と自家受粉および/または交雑する工程、そして
d)球根の表現型検査により、低い辛味および高いSSCを有する球根を産生する子孫植物を同定および選択する工程を含む。
【0077】
場合により工程c)および/またはd)を数回繰り返してもよい。工程c)の交雑はまた、戻し交雑を含み得る。工程d)において、狭い辛味範囲を有する植物および/または貯蔵中に殆ど腐敗を示さない植物を選択し得る。従って、辛味範囲および/または貯蔵能も、低い辛味および/または高いSSCに追加してまたはその代わりとして選択基準として使用できる。このことは、SSCおよび辛味のみが記載されていたとしても、本明細書の以下に記載された方法にも当てはまる。
【0078】
表現型検査は、好ましくは、球根の辛味、SSC含量および/または貯蔵能(例えば特定の貯蔵期間の後の腐敗率、これは眼で分析できる)を決定し(例えば、前記の工程c)の1つ以上の個体群を表現型検査することによって)、そして低い辛味および/または高いSSCおよび/または長期貯蔵能を有する稀な組換え体もしくは突然変異体を選択することを含む。a)の下で使用される植物は、市販されているタマネギ栽培品種または育種系統、例えば長日タマネギおよび短日タマネギであり得る。表現型検査は、好ましくは適切な対照の隣で同じ条件下で成長した複数の単一球根において独立的に、または、数個の球根(の全てまたはその一部)からなる試料において行なう。単一の球根を使用する場合、好ましくは平均値は、球根の代表的な数値から計算される。表現型検査は、1回以上行なってもよい。例えば、PAD測定および/またはSSC測定は、収穫時および1、2、3、4週間以上貯蔵した後、または2、3、4、5、6、7、8、9カ月以上貯蔵した後に行ない得る。1つの態様において、表現型検査(PADおよび/またはSSC測定)を、約5、6または7カ月貯蔵後に行なう(例えば、約150〜210日後、例えば約150日間、180日間、200日間、または205、206、207、208、209、210日間貯蔵後)。表現型検査を、育種スキームの1つ以上の工程で行ない得る。
【0079】
表現型検査はまた、工程d)において長日タマネギが産生されるように、光周期応答の分析および長日応答を有する植物の選択を含み得る。
【0080】
1つの局面において、低い辛味および高いSSCを含む長日タマネギ植物を作製するための方法が提供され、これは、a)(場合により)辛味およびSSCについてタマネギ球根を分析する工程、b)高い辛味および高いSSCを有する球根を産生する植物を、低い辛味および低いSSCを有する球根を産生する植物と交雑することにより、F1ハイブリッドを産生する工程、c)F1ハイブリッド植物を1回以上自家受粉および/または(戻し)交雑する工程、そしてd)低い辛味および高いSSC含量(収穫時および/または貯蔵後)について、および好ましくはまた長日(long day length)光周期応答を有することについて、および/または好ましくはまた狭い辛味範囲を有することについて子孫植物を選択する工程、そしてe)収穫時および/または貯蔵後にPTA−9053、PTA−9054またはPTA−9055系統のレベルと同じレベルを有する、低い辛味および高いSSCを有する球根を産生する長日タマネギ植物を選択する工程を含む。工程d)は、収穫時および/または貯蔵後の辛味およびSSCの分析を含む。最初の交雑において、低い辛味、低いSSCの親タマネギは、短日タマネギ品種、栽培品種または育種系統であり得、そして高い辛味、高いSSCは、長日タマネギ品種、栽培品種または育種系統であり得る。好ましくは、工程c)およびd)は数回繰り返し、これにより数サイクルの表現型循環選択が行なわれ、これにより工程e)の長日タマネギがもたらされる。
【0081】
またさらなる局面において、低い辛味および高いSSCを含む近交、長日タマネギ植物を作製するための方法が本明細書において提供され、これは、
a)低い辛味および高いSSC(本明細書に記載した通り)を有する球根を産生する植物または植物群を、Allium cepa種の植物と交雑する工程を含む、Allium cepaの様々な個体群の創造の工程、
b)a)の交雑で使用された植物のいずれかに由来するF1種子を収穫し、そして収穫された種子からF1植物を成長させる工程、
c)b)の下で成長させた植物を自家受粉するか、または互いにこれらの植物を交雑するか、またはこれらの植物をAllium cepaの植物と交雑する工程、
d)通常の植物成長条件下で収穫されて得られた種子から植物を成長させる工程、
e)低い辛味および高いSSCを有する球根を産生する植物を選択し、その後、選択された植物を自家受粉する工程、そして場合により
f)ホモ接合型であり、低い辛味および高いSSCを有するハイブリッドの産生において親として使用できる近交系が得られるまで、工程d)および/またはe)を繰り返す工程を含む。
【0082】
また、前記した近交系の植物を、Allium cepaの雄性不稔系の植物と交雑し、そして、続いて、新しい雄性不稔系が雄性稔性反復親近交系と遺伝子的かつ表現型的に類似し、そして低い辛味および高いSSCの組合せを有するまで、雄性稔性親を用いての選択および反復戻し交雑する工程を含む、低い辛味および高いSSCの特性を有する雄性不稔近交系を開発するための方法が提供される。
【0083】
雄性不稔性近交系を雄性稔性近交系と交雑すると、ハイブリッド種子が生じ得、それから成長した植物は、低い辛味および高いSSCの特性を有する。
【0084】
低い辛味および高いSSCを含む同様の放任受粉された長日タマネギ植物を作製できる。従って、本発明に記載のタマネギ植物は、放任受粉された系統、半兄弟系統、雄性不稔性系統、雌性不稔性系統などとして維持され得る。本発明に記載のタマネギ植物の雄性不稔性近交系は、ハイブリッドを産生するための親として有用である。
【0085】
別の局面において、本発明に記載のタマネギ種子または植物に由来するタマネギ穀物を産生するための方法、およびそれから収穫された長日タマネギが提供される。
【0086】
以下の非制限的な実施例は、本発明に記載のタマネギ植物、種子および球根の産生を説明する。本明細書において記載された全ての参考文献が参照により組み入れられる。
【0087】
実施例
実施例1−植物の開発
数多くの植物が記載したような望ましい形質の組合せについて分析される、長期育種プログラム(米国オレゴン州)によって植物が得られてきた。
【0088】
初回の交雑は、I37787Bと称される育種系統の高い辛味/高いSSC長日タマネギ植物を用いた、低い辛味/低いSSCタマネギ植物(市販の長日品種のAilsa Craig)に関するものであり、続いて、F1植物を自家受粉することにより、可変性のF2個体群を創造することに関する。スペイン的背景は全く使用しなかった。
【0089】
選択したF2個体(辛味およびSSCについて表現型検査した)を、品種オレゴン・ダンバーズ・イエロー・グローブ(Oregon Danvers Yellow Globe)に由来する育種系統から選択した個体と交雑させた。自家受粉した場合のこの交雑由来の植物およびこの子孫由来の選択した個体を、再度、自家受粉した。低い辛味、高いSSCの系統が得られ、I37554と称した。
【0090】
6回の追加のサイクルの表現型循環選択が行なわれ、高いSSCおよび低い辛味で、全ての望ましい農学的形質および長日光周期応答を有する表現型について選択した。高いSSCは、Mann and Hoyle, 1945 (Proc. Americ. Soc. Hort. Sci. 46: 285-292)またはFoskett and Peterson, 1949 (Proc. Americ. Soc. Hort. Sci. 55: 314-318)の方法に従って、屈折率測定分析を使用して決定した。辛味は、Schwimmer and Weston 1961 (supra)のPAD測定を使用して決定した。スキーム全体を通じて、各世代の植物を、約150日間の貯蔵後に選択した、すなわち、PADおよび/またはSSC測定を、選択目的のために約5〜6ヶ月間貯蔵した後に行なった。
【0091】
6サイクルの表現型循環選択と同時に、選択した植物を交雑し、そして細胞質/核雄性不稔性植物に戻し交雑した。このように近交維持系統I37554Bおよびその雄性不稔性随伴系統I37554Aを開発し、その両方が、収穫時および貯蔵後により低い辛味およびより高いSSCを有し、そして長日タマネギである。I37554(I37554AおよびI37554B)の種子が、それぞれ、ブダペスト条約の下でアクセッションナンバーPTA−9054およびPTA−9055の下でATCCに寄託されている。
【0092】
I37853B系統は、前記材料を用いてさらに育種および選択することにより開発され、そしてI37853Bの種子は、ブダペスト条約の下でアクセッションナンバーPTA−9053の下でATCCに寄託された。I37853B系統は、I37554AおよびBよりもさらに低い辛味を有し、改良された球根の品質を有する。
【0093】
これらの植物から、さらに交雑しそしてさらに育成し、一方で農学的形質および良好な組合せ能について選択することによって、ハイブリッド品種を産生するための親系統が開発されてきた。これらの系統を用いて産生されたハイブリッド品種を、低い辛味/高い可溶性固形物のユニークな組合せ、長期貯蔵および他の望ましい農学的特徴について評価した。
【0094】
本発明の1つの局面において、長日タマネギI37554AまたはB並びにI37853Bの新規植物、種子および球根が提供される。また、I37554AもしくはBおよびI37853Bの交雑から産生されたハイブリッド、並びに、このような交雑もしくは自家受粉から産生され、そして低い辛味、高いSSCおよび/または高い貯蔵能を含む球根を産生する植物が提供される。
【0095】
実施例2−低い辛味および高いSSCを有する植物I37554
以下の表1は、両方共に収穫時および3ヶ月間の貯蔵中の、I37554Aと称される植物および市販の長日品種Granero9536の球根のピルベート濃度(μMol/gFW)として測定した(平均)辛味およびSSC含量(%)を示す。
【表1】

【0096】
実施例は、貯蔵中、辛味があり高いSSCを有する長日スペインハイブリッド品種であるGraneroのピルベートレベルは有意に増加しているが、一方、I37554Aの辛味は有意に変化せず、そしてSSCレベルは高くかつ一定に留まっていることを示す。また、収穫時においてI37554Aは、低い辛味と高いSSC(および長日特徴)を併せ持っている。
【0097】
実施例3
表2は、市販の辛味があり高いSSCの品種であるGraneroおよびNebulaと比較した、I37554Aの収量および貯蔵中腐敗率を示す(収穫から136日後、すなわち、約4.5カ月間の貯蔵後)。腐敗率は、重量により評価した。
【表2】

【0098】
実施例は、I37554A系統が、低い辛味を有している一方で、高いSSCを有する公知の辛いストレージ・オニオン(storage onions)と類似した良好な貯蔵特徴を有することを示す。
【0099】
実施例4
表3は、貯蔵6カ月超(270日間、すなわち6.9カ月)後のI37554Bに関する辛味およびSSCのデータを示す。表3は、I37554Bの92個の単一球根および平均に関するデータを示す。
【表3】





【0100】
データは、I37554B系統が低い辛味および高いSSCレベルを有することを示す。貯蔵から6カ月超後でさえ、平均的辛味は非常に低いままであり、平均SSCは高いままである。また、辛味範囲は狭い(最小1.29、最大4.85)。
【0101】
実施例5−I37853B系統
表4は、貯蔵5〜6カ月後のI37853B系統の単一球根辛味レベルを示し、これによると、高いSSCと併せて、非常に低い辛味(平均的辛味2.3μMol/gFW)が達成されたことを示している。
【表4】



【0102】
実施例6−ハイブリッド
収穫時および長期貯蔵後に低い辛味および高いSSCを有する長日ストレージ・オニオンのハイブリッドを作製するために、I37554A系統(雌性親)をI37853B(雄性親)と交雑することによりF1ハイブリッド種子を作製した。ハイブリッドを様々な場所で成長させ、そしてピルベートおよびSSCレベルを評価し、そして親および高い辛味の系統または栽培品種と比較する。
【0103】
実施例7−I37853B系統
表5は、貯蔵後(収穫から132日後)のI37554B系統の平均的辛味(ピルベートμMol/gFW)、SSC(%)および貯蔵中腐敗(%)を示す。
【表5】


【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
3.75μM/g新鮮重量(FW)未満のピルベートの収穫時平均PAD測定値を有する、球根を産生する長日タマネギ植物。
【請求項2】
収穫時の前記PAD測定値が、3.5μM/gFWのピルベートに等しいかまたはそれ未満である、請求項1記載のタマネギ植物。
【請求項3】
前記球根が、収穫時に少なくとも7.5%、好ましくは少なくとも8%の平均的な可溶性固形物含量(SSC)を有する、請求項1または2記載のタマネギ植物。
【請求項4】
前記PAD測定値が、収穫時のPAD測定値と比較して貯蔵後少なくとも4ヶ月間後に10%未満増加している、請求項1〜3のいずれか1項記載のタマネギ植物。
【請求項5】
前記SSCが、貯蔵後少なくとも4カ月間後に2%未満減少している、請求項1〜4のいずれか1項記載のタマネギ植物。
【請求項6】
最も辛味の高い球根と最も辛味の低い球根の辛味レベルが、最大5μMol/gFW、好ましくは最大3.5μMol/gFW異なっている、球根を産生する請求項1〜5のいずれか1項記載のタマネギ植物。
【請求項7】
全ての球根が、0〜5μMol/gFW、好ましくは1〜4μMol/gFWの辛味を有する、請求項1〜6のいずれか1項記載のタマネギ植物。
【請求項8】
前記タマネギ植物が、球根形成を開始するために2日間以上の間に14時間以上連続した光を必要とする、請求項1〜7のいずれか1項記載のタマネギ植物。
【請求項9】
前記平均PADまたは平均SSCが、前記植物の少なくとも10個のタマネギ球根から得られる、請求項1〜8のいずれか1項記載のタマネギ植物。
【請求項10】
前記植物が、ハイブリッドである、請求項1〜9のいずれか1項記載のタマネギ植物。
【請求項11】
前記植物が、それぞれアクセッションナンバーPTA−9053、PTA−9054およびPTA−9055の下で寄託されたI37853B、I37554A、またはI37554Bと称される系統に由来している、請求項1〜10のいずれか1項記載のタマネギ植物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載のタマネギ植物の細胞。
【請求項13】
収穫時に3.75μM/g新鮮重量(FW)未満のピルベートの平均PAD測定値を有する球根を産生する植物へと成長する、請求項1〜12のいずれか1項記載のタマネギ植物の種子。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項記載のタマネギ植物の球根。
【請求項15】
請求項14記載の複数の球根を含む容器。
【請求項16】
球根の少なくとも75%が、請求項14記載の球根である、請求項15記載の容器。
【請求項17】
前記容器が、請求項14記載の少なくとも1ポンドの球根を含む、請求項15または16記載の容器。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか1項記載のタマネギ植物の一部、請求項14記載の球根の一部、または請求項13記載の種子の一部。
【請求項19】
前記の一部が、細胞または細胞培養物、組織培養物、プロトプラスト、花粉、胚珠、成長点、胚、または植物器官である、請求項18記載の一部。
【請求項20】
前記タマネギ植物が、イエローまたはスパニッシュオニオンである、請求項1〜11のいずれか1項記載のタマネギ植物、またはその細胞もしくは球根。

【公表番号】特表2011−510618(P2011−510618A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543424(P2010−543424)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000321
【国際公開番号】WO2009/092560
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(510126036)
【氏名又は名称原語表記】NUNHEMS B.V.
【Fターム(参考)】