説明

高い酸素透過性を有する真空スキン包装構造体

獣肉、魚、鳥肉、野菜、またはその他の食品を包装するための改善された包装体および方法を開示する。本発明の包装体は、有機酸改質アイオノマーブレンドの少なくとも1つの層と、エチレン/酢酸ビニルコポリマーなどのエチレン含有ポリマーの少なくとも1つの層とを含む多層フィルムを含む真空スキン包装体であり、このフィルムは特定のガス透過性条件を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の透過性条件を有するガス透過性フィルムを含む真空スキン包装体(package)に関する。本発明は、特に、腐敗しやすい食品のための改善された包装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌、カビなどの微生物に曝露した場合に、腐敗しやすい食品は汚染される。汚染によって、腐敗、毒素産生、およびその他の有害な影響が加速されうる。箔、塗工板紙、および酸素バリアフィルムなどのガス不透過性材料中にこのような腐敗しやすい品物を包装することによって、微生物汚染に対する障壁を提供することができる。しかし、ボツリヌス中毒の原因物質である強力な毒素を産生するC.botulinumなどの嫌気生物は、酸素欠乏雰囲気中で増殖する。箔、板紙、および酸素バリアフィルムなどのガス不透過性材料は、ボツリヌス毒素産生の影響を非常に受けやすい製品の包装には適していない。
【0003】
C.botulinumの汚染は、鮮魚の場合に特に問題となる。通常、包装された鮮魚はこの理由のために冷凍される。鮮魚の保管、輸送、および販売に関する問題を回避するために、鮮魚の保護に好適な包装が望ましくなりうる。
【0004】
腐敗しやすい食品の保管および輸送を行う方法を改善するために、さまざまな包装方法が開発されている。真空包装は、腐敗しやすい品目を劣化から保護するために使用される方法の1つであり、この方法では、包装を封止する前に内容物の形状に包装フィルムの形状を一致させるために、包装を真空にして空気が能動的に除去される。スキン包装は、包装体内に製品が厳重に包装され、実質的にすべての大気が排除される周知の技術の1つである。真空スキン包装は、これら2つの包装方法を組み合わせたものである。しかし、この種の従来の包装では酸素が排除されるため、C.botulinumの増殖は阻害されない。
【0005】
内容物の貯蔵安定性を向上させ、貯蔵寿命を延長させるために、包装中にある種のガスを閉じ込めることが知られている。嫌気生物の増殖を阻害するために包装体のヘッドスペース内で酸素を使用できる場合には、ガス不透過性材料を使用して包装体を製造することができる。しかし、嫌気生物の増殖を長期間防止するのに十分な酸素を、このような包装体のヘッドスペース中に提供することは困難である。
【0006】
U.S.Food and Drug Administration(FDA)の指針には、10,000cc/m2/24時間以上の酸素透過率(OTR)を有する包装が、「酸素透過性」の指針に適合すると記載されている。FDAによって包装体が酸素透過性であると見なされるにもかかわらず、「危害要因分析必須管理点」(Hazard Analysis of Critical Control Points)(HACCP)計画を確立する必要がある。HACCP計画下では、温度監視が必要であり、時間/温度指標(TTI)を輸送用コンテナ上に設ける必要がある。温度監視プロトコル単独では、食品の腐敗の防止には不十分である場合がある。さらに別の問題は、新鮮な獣肉などの食材の包装に現在使用されている従来の発泡トレイを使用した場合には、FDA OTR指針に適合できないことである。
【0007】
魚などの腐敗しやすい食品の包装は複雑であることに加えて、食品中の水分量を維持することが望ましい場合がある。魚を載せるための隆起領域を有するトレイ中に魚を包装することができ、それによって、魚の底部を酸素に接触させることができる。しかし、この種のトレイは、魚から液体が出ることができる。高透湿性を有するフィルムでは、この包装から水分が逃れることができ、その結果、商品の脱水が起こり、品質が低下する。
【0008】
米国特許第4,685,274号明細書、第4,840,271号明細書、第5,025,611号明細書、第5,103,618号明細書、および第5,115,624号明細書には、腐敗しやすい品物を包装するための包装体、方法、および装置が記載されている。米国特許出願公開第2003/0198715A1号明細書には、良好な酸素透過性を有する、有機酸とエチレン酸コポリマーとの高度に中和したブレンドのフィルムおよび包装体が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
腐敗しやすい食料品の包装のために、高い酸素透過性および低い透湿性を有する包装体を製造することが望ましい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、本発明は、複数のフィルム層を含む包装体であって:
(i)少なくとも1つの酸素透過性層であって:
a)36個未満の炭素原子を有する1種類以上の脂肪族有機酸またはその塩と;
(b)少なくとも1種類のE/X/Yコポリマー(エチレン酸コポリマー)、または上記E/X/Yコポリマーのアイオノマー(上式中、Eはエチレンから誘導され、Xは少なくとも1種類のC3〜C8α,β−エチレン系不飽和カルボン酸から誘導され、Yは、アクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択されるコモノマーから誘導され、上記アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、Xは、上記E/X/Yコポリマーの約3〜約30重量%であり、Yは、上記E/X/Yコポリマーの0〜約35重量%であり、(a)+(b)の全酸部分のすべての70%超が、対応する金属塩に中和されている)と;
(c)少なくとも1種類の追加のエチレン含有ホモポリマーおよび/またはコポリマーとを含むブレンドから得られる、少なくとも1つの酸素透過性層と;
(ii)少なくとも1種類のエチレン含有ポリマー、または複数のエチレン含有ポリマーの混合物から実質的になる少なくとも1つのポリマーフィルム層とを含み;
包装体から空気を除去するステップと、包装体を封止するステップとを含む方法によって製造される、包装体に関する。
【0011】
本出願人は、少なくとも1種類の中和された有機酸と、少なくとも1種類の高度に中和されたエチレンとα,β−エチレン系不飽和カルボン酸とのコポリマー(エチレン酸コポリマーアイオノマー)と、1種類以上のエチレン含有ポリマーとを含むブレンドから得られたフィルムが、中和された有機酸と高度に中和されたエチレン酸コポリマーアイオノマーとから実質的になり追加のエチレンコポリマーを含まない類似の組成物から得られたフィルム、またはアイオノマーコポリマーのみから得られるフィルムと比較すると、改善された酸素透過性を実現可能なことを発見した。さらに、本明細書に記載されるブレンドされた組成物から形成されたフィルムは、エチレン含有コポリマーを含まない類似の組成物のフィルムと比較すると、改善された加工性を有し、改善された防湿性が得られる。これらの酸改質アイオノマーブレンド組成物を含むフィルム層は、任意選択的にエチレン/酢酸ビニルコポリマーなどの他の高透過性フィルム層と併用することで、通気性フィルム構造が得られる。これらのブレンドされた組成物によって、良好な成形性、および変形せずに内容物の重量を支持するための構造強度に加えて、改善された酸素透過性と制限された水蒸気透過性とを兼ね備えたフィルム構造が得られる。本明細書に記載されるブレンドを含むフィルムは、ケースレディミート、魚、ソーセージ、生鮮食品などの通気性フィルムを必要とする食品の包装に有用となることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
特に明記しない限り、すべてのパーセント値、部数、比率などは重量を基準としている。さらに、ある量、濃度、あるいはその他の値またはパラメータが、ある範囲、好ましい範囲、または上位の好ましい値と下位の好ましい値と配列のいずれかで与えられる場合、複数の範囲が別個に開示されているかどうかとは無関係に、任意の好ましい上限値または好ましい値と、任意の好ましい下限値または好ましい値とのあらゆる組み合わせから形成されるあらゆる範囲を明確に開示しているものと理解すべきである。本明細書内にある数値範囲が記載されている場合、特に明記しない限り、その範囲は、その範囲の端点、ならびにその範囲内のあらゆる整数および分数を含むことを意図している。ある範囲が画定される場合に、本発明の範囲が、記載される特定の値に限定されることを意図するものではない。ある成分が、0から始まるある範囲内で存在するとして示されている場合、そのような成分は任意選択の成分(すなわち、存在してもよいし、存在しなくてもよい)である。
【0013】
本明細書において使用される場合、語句「内面」、「内層」、または「最内」層は、包装される品物に接触している、フィルムまたは包装用ウェブの面または層を意味し、語句「外層」または「外側層」は、包装される物品と接触せず、形成後には包装体の外面となる、フィルムまたは包装用ウェブの面を意味する。
【0014】
本発明により包装することが可能な腐敗しやすい品物としては、獣肉、魚、鳥肉、または生鮮野菜、並びにその他の腐敗しやすい品物が挙げられる。本明細書に記載されるフィルムは、高い酸素透過性および低い透湿性の両方を提供し、嫌気性雰囲気において損傷する、および/または脱水のために劣化する腐敗しやすい食品、あるいは鮮度および新鮮な外観を意味するために高い通気性を必要とするその他のものの包装に特に適している。
【0015】
一実施形態において、本発明は、包装された食品の表面に酸素を供給することによって、腐敗しやすい食品の保管に好適な真空スキン包装に関する。本発明の真空包装体の1つは、本明細書に記載されるブレンドを含む少なくとも1つのフィルム層を含み、鮮魚の包装に特に有用である。
【0016】
本明細書に記載される一部の包装用途においては、空気を排除した後で、二酸化炭素、酸素、および/または窒素を選択的に容器内に導入することができる。この包装技術は、従来、調整雰囲気包装および/または制御雰囲気包装と呼ぶことができる。これらの包装方法は、本明細書に記載される真空包装方法と併用することができる。本発明の包装は、本明細書に記載される種類の酸素透過性フィルムを含む包装体を真空に引くことも考慮している。したがって、本発明の真空包装体は、本発明のフィルム層がガス透過性であるため、完全真空を得ることができる、および/または維持することができる包装体ではないことが当業者には理解できるであろう。
【0017】
本明細書に記載される組成物を含む、バリア層と通気性層とを含む多層フィルム、またはバリアフィルム層と通気性フィルム層とを含む多重フィルム構造は、任意選択的に、予備成形されたバリアトレイに封止することができる。バリアおよび通気性のフィルムまたは層は、互いに物理的に分離される。バリアフィルムおよび通気性フィルムは、複数の積層体であってよい。この特定の実施形態においては、包装体の内側に、選択されたガスまたはガス混合物を流すことができる。バリアフィルムは、包装の内容物を保護し、保管および流通の間に選択されたガス雰囲気を維持する。バリアフィルムを小売店において剥離することで、通気性フィルムを露出させ、包装内に空気が入るようにすることができる。包装された赤身の肉の場合、空気によって肉が望ましい鮮赤色に変化する。
【0018】
本発明による真空包装の別の実施形態においては、内容物に対する不透過性ガス障壁となり、「マスターバッグ」と呼ばれることもあるパウチ、またはバッグの中に、本発明の複数の包装体が入れられる。このマスターバッグの内側では制御雰囲気または真空を維持することができる。「制御雰囲気」とは、バッグを封止する前に、たとえば窒素、酸素、または二酸化炭素、あるいはアルゴンまたは窒素リッチ混合物などの別の不活性ガスなどの選択されたガスまたはガス混合物を使用してバッグを満たすことができることを意味する。種々の目的で他のガスを使用することができる。小売店において、ガス透過性真空包装体をマスターバッグから取り外すことで、大気中の酸素を包装内に透過させることができる。
【0019】
本発明の酸素透過性組成物を含むフィルムまたはシートは、そのシートを成形物品に熱成形することによってさらに加工することができる。
【0020】
本明細書に記載されているように、本発明の包装体は少なくとも2つのガス透過性フィルムウェブを含むことができる。これらの少なくとも2つのフィルムウェブは、個別のフィルムのシートであってよい。これらのウェブは、同一である場合もあるし、種類が異なる場合もある。たとえば、一方のウェブは透明で包装された品物を見ることができ、他方は不透明および/または着色されていて背景となることができる。これらのウェブの一方または両方は、包装の外観を魅力的にするため、および/または消費者に情報を提供するために、デザイン、ロゴ、英数字のテキストなどを印刷することもできる。当業者であれば理解できるように、1枚のフィルムのウェブをそれ自体の上に折り重ねて、2枚が重なったウェブを得ることもできるし、あるいは、フィルムのチューブを形成し、それによてチューブの2枚が重なり合っている部分を、2枚のフィルムのウェブと同等となるようにすることもできる。
【0021】
包装される物品は、少なくとも2つのフィルムウェブの間に配置し、包装に真空を適用し、2つのウェブの周囲を互いに接着、好ましくは熱融着させることによってシールを形成することができる。包装体の周囲を封止する方法は、第3のポリマーフィルムを介在させることによって2つのフィルムウェブを間接的にヒートシールすることによる方法などの周知または従来通りのあらゆる方法であってよいし、あるいは、封止された包装を形成するために開発されうるあらゆる方法であってよいことは理解できるであろう。場合によっては、成形された包装ウェブを平坦なウェブと組み合わせることで、本発明の包装体を形成することもできる。
【0022】
本発明の種々の実施形態は、本明細書に記載される有機酸改質アイオノマーブレンドを含む少なくとも1つのフィルム層を、本発明における使用に好適な別の材料を含む少なくとも1つの別の層とともに提供することを考慮することができる。このような種々の組み合わせは、本明細書において提供や説明が行われる例に限定されるものではない。当業者であれば、本明細書において提供される教示によって好適なフィルム構造を構成することができるであろう。
【0023】
本発明は、全面が容易に酸素に曝露し、それによって微生物の嫌気性増殖を阻害することができるように、鮮魚などの腐敗しやすい品物を包装可能な包装体を提供する。魚などの品物を包装する場合、魚の中の通常のドリップ液を保持することもできるが、酸素透過性フィルムを通して酸素が透過することができる。
【0024】
小売店で展示する場合に包装の外観を良くするために、本発明の実施において使用されるフィルムは、包装された品物の重量下での延伸に耐えるのに適した剛性を有すること、すなわちフィルムがクリープ抵抗性であることが望ましい場合がある。
【0025】
フィルムの酸素透過率(OTR)は、フィルムの厚さ、およびその組成物に固有の透過率に依存する。透過率は、フィルムに衝突するガスの温度、相対湿度、および圧力などの要因に依存する。通常、OTRは、23℃、相対湿度50%、および1気圧に規格化された標準条件下で求められる。酸素透過値は(OPV)は、1ミルに規格化されたOTR値であり、したがって、特定のフィルム厚さにおけるOTRを予測するために使用できる。
【0026】
本発明は、エチレン酸コポリマー/有機酸ブレンドから得られる上述のフィルムのOPVの改善を提供する。エチレン含有コポリマー(エチレン酸コポリマーでもアイオノマーでもない)を、中和した酸コポリマー/有機酸ブレンドとブレンドした場合に、特にOPVに関して相乗効果を得ることができることを発見した。エチレン含有コポリマーを混入することによって、E/X/Yターポリマー量を減少させた場合でもOPVを改善できることを発見した。すなわち、エチレンおよびα,β−エチレン系不飽和カルボン酸/有機酸ブレンドの中和したコポリマーと、エチレン含有コポリマーとを含むブレンドは、10,000cc/m2/24時間を超えるOTRを得ることができる。本発明のフィルムのOTRが改善されることに加えて、本発明のエチレンコポリマーブレンドは、良好な防湿性を提供し、エチレン含有コポリマーが存在しない類似のブレンドよりも改善された加工性を示す。
【0027】
本発明において使用される有機酸は、脂肪族で、一官能性(飽和、不飽和、または多価不飽和)の有機酸であり、特に、36個未満の炭素原子を有する有機酸である。また、これらの有機酸の塩も使用することができる。有機酸塩は、好ましくはマグネシウム塩またはカルシウム塩であるが、しかし、他の塩の濃度が、本発明のフィルムの酸素透過性を無効にしないのであれば、他の塩を使用することもできる。他の塩は、たとえば、バリウム塩またはストロンチウム塩などのあらゆるアルカリ土類金属塩であってよい。
【0028】
酸コポリマーまたはアイオノマーと溶融ブレンドする場合、有機酸(および塩)は揮発性が低いと有用となる場合があるが、そのブレンドを高いレベルまで、特に100%付近まで中和する場合には、揮発性が限定要因とはならないことを発見した。したがって、本発明の実施において、炭素含有率の低い有機酸を使用することができる。しかし、有機酸(または)は、不揮発性および非移行性であることが好ましい場合がある。不揮発性とは、本明細書に記載されるような酸コポリマーの溶融ブレンドに有用な温度範囲内で揮発しないことを意味する。非移行性とは、通常の保管条件(周囲温度)下でポリマー表面への有機酸のブルーミングが起こらないことを意味する。本明細書に記載される酸を加えることによって、イオン形態の変更、および/またはエチレン/C3〜8α,β−エチレン系不飽和カルボン酸コポリマーまたはそれらのアイオノマーからのエチレン結晶性の除去が効率的に行われる。特に有用な有機酸としては、4〜34個の炭素を有する酸が挙げられ、より好ましくはC6〜C26酸であり、さらに好ましくはC6〜C22酸である。本発明の実施において有用な有機酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、およびリノール酸、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。より好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、およびそれらの混合物などの天然由来の有機脂肪酸を好都合に使用することができる。フィルムの官能的性質を低下させる目的の場合には、飽和有機酸が好ましい場合がある。ステアリン酸が好ましい場合がある。
【0029】
酸素透過性を高めるためには、飽和分岐有機酸が特に好ましくなる場合がある。分岐飽和酸の中では、イソステアリン酸が特に好ましい。本発明において考慮されるいずれかの有機酸の混合物から、個別の有機酸成分の性質から気体または予想することができる性質を得ることができることが、当業者には理解できる。
【0030】
本発明において使用される有機酸およびエチレンコポリマーのブレンドの官能的性質の変更(たとえばにおいまたは風味の減少)において、場合によっては酸化防止剤が有用となりうる。有機酸が不飽和である場合には、酸化防止剤が好ましいことがある。酸化防止剤は、商標IrganoxでCiba Geigy Inc.Tarrytown,New Yorkから入手可能である。たとえば、IRGANOX E201(CAS番号10191−41−0)またはその誘導体などのフェノール系酸化防止剤を、本発明のブレンドに加えることができる。本発明における使用に好適なもう1つの酸化防止剤はIRGANOX 1010である。したがって、本発明は、前述の(a)、(b)、および(c)のブレンドが、酸化防止剤をさらに含む、包装体および包装された食品を提供する。
【0031】
酸コポリマー/アイオノマー
アイオノマーを形成するために本発明において使用される酸コポリマーは、好ましくは「直接」酸コポリマーである。これらは、好ましくはαオレフィン、特にエチレン、C3〜8 α,β−エチレン系不飽和カルボン酸、特にアクリル酸およびメタクリル酸の、コポリマーである。これらは、任意選択的に、結晶性を妨害することができる第3のモノマーを含むことができる。
【0032】
本発明の酸コポリマーは、E/X/Yコポリマーと表すことができ、式中、Eはエチレンであり、Xはα,β−エチレン系不飽和カルボン酸であり、Yはコモノマーである。Xは、ポリマーの3〜35(好ましくは4〜25、より好ましくは5〜20)重量%で存在し、Yはポリマーの0〜35重量%、好ましくは1〜35重量%、より好ましくは4〜25で存在する。顕著なものはE/Xジポリマー(dipolymer)であり、これはYが、E/X/Yコポリマーの0重量%となる。
【0033】
好適な第3のコモノマーは、アルキル基が1〜8個の炭素原子を有するアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択されるモノマーである。好ましいアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルは、そのアルキル基が1〜4個の炭素原子を有するものであり、より好ましいものは、そのアルキル基が3〜4個の炭素原子を有するものである。
【0034】
酸(X)量が多いエチレン酸コポリマーは、モノマー−ポリマー相分離のために、連続重合装置中での調製が困難である。この問題は、米国特許第5,028,674号明細書に記載されるような「共溶媒技術」の使用によって、または、酸量がより少ないコポリマーを調製することができる圧力よりも幾分高い圧力を使用することによって回避することができる。
【0035】
具体的な酸コポリマーとしては:エチレン/(メタ)アクリル酸ジポリマー;エチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸n−ブチルターポリマー;エチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸イソブチルターポリマー;エチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸メチルターポリマー;およびエチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エチルターポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本明細書において使用される場合、「(メタ)アクリル酸」は略語表記であり、「メタクリル酸および/またはアクリル酸」を意味するものとし、すなわち、メタクリル酸単独、アクリル酸単独、または両者の組み合わせを意味するものとする。
【0037】
本発明において使用される溶融加工可能な未改質アイオノマー(すなわち、有機酸成分とブレンドされていない溶融加工可能なアイオノマー)は、酸コポリマーを中和することによって得られる。そのようなものとしては、部分的に中和した酸コポリマー、特にエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーが挙げられる。未改質アイオノマーは、有用な物理的性質を損なうことなく、加工しにくい(すなわち溶融加工が不可能な)ポリマーにはならないあらゆる程度で中和することができる。
【0038】
本明細書に記載される有機酸とブレンドしたアイオノマー(改質アイオノマー)は、あらゆる程度、特に70%を超える程度まで中和することができる。本発明の目的のためには、高い程度の中和(70%を超える)は、ブレンド中の酸コポリマーおよび有機酸中の酸部分の目標量を中和するために計算された化学量論量の陽イオン源を加えることによって行うことができる(以降、「%公称中和」または「公称中和された」と記載する)。このようにして、十分な陽イオンがブレンド中で利用できるようになり、そのため、凝集体中で、指定の公称中和量が実現される。
【0039】
未改質アイオノマーは、本発明の多層フィルム中の分離した層として使用すると好適な場合もあるし、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、および/または遷移金属で中和することもできる。たとえば、未改質アイオノマーは、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、または亜鉛、あるいはそれらの組み合わせなどの金属で中和することができる。
【0040】
どんな場合でも、本発明において有用なアイオノマーは、カルシウムおよび/またはマグネシウムで中和されたアイオノマーから実質的になる。カルシウムおよび/またはマグネシウムのアイオノマー組成物は、高い酸素透過性に加えて水分を制限するために好ましいが、結果として得られるフィルムの酸素透過性が約10,000(cc/m2)(day)(atm)未満に低下するまで、別の陽イオンの濃度が上昇しないのであれば、別の陽イオンも存在することができる。本発明の高酸素透過性ブレンドの製造に有用な別の陽イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、または亜鉛、あるいはそれらの陽イオンの組み合わせが挙げられる。場合によっては、カルシウムの使用がマグネシウムの使用よりも好ましいことがあり、その逆になることもありうる。特定の状況において何が好ましくなるかは、当業者が決定することができる。
【0041】
脂肪酸改質アイオノマーブレンド
本明細書に記載されるブレンドの成分(a)および(b)は、以下の手順によって中和することができる:
(1)エチレンα,β−エチレン系不飽和C3〜8カルボン酸コポリマーおよび/またはそれらのアイオノマーを、1種類以上の脂肪族で、一官能性で、36個未満の炭素原子を有する飽和または不飽和有機酸、あるいはその有機酸の塩を、同時または順次溶融ブレンドするステップ;
(2)すべての酸部分(酸コポリマー中および有機酸中の酸部分を含む)の中和量を約70%を超えるまで、好ましくは約80%を超えるまで、より好ましくは約90%を超えるまで、さらにより好ましくは約91%〜約100%まで増加させるのに十分な量の陽イオン源を加えるステップ、但し、ステップ(1)中の脂肪族有機酸とブレンドした場合に、アイオノマー成分が溶融加工可能となる。本明細書に挙げられている具体的に画定された端点にもかかわらず有機酸の中和は、本明細書に記載される範囲内のあらゆる特定の程度で行うことができる。当業者であれば、本明細書において教示または請求されるあらゆる程度への中和が、本明細書によって提供される教示の範囲内、または従来技術の範囲内にあることが分かるであろう。
【0042】
好ましくは、脂肪族で、一官能性で、36個未満の炭素原子を有する飽和または不飽和有機酸、またはそれらの有機酸の塩は、エチレンα,β−エチレン系不飽和C3〜8カルボン酸コポリマーまたはそれらのアイオノマー100重量部当たり、約5〜約150重量部、あるいは約25〜約80重量部(pph)の範囲内で存在する。オレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、およびイソステアリン酸が、本発明の実施において好ましい場合がある。
【0043】
この方法における酸コポリマーおよび有機酸の中和が好ましくなる場合がある。酸コポリマーの中和は、コポリマーおよび有機酸を中和するときに希釈剤を使用して行うことができる。本発明のコポリマーを中和する場合に、コポリマーの所望の性質が低下したり、加工が困難になったりしないように、注意すべきである。たとえば、有機酸とブレンドされた酸コポリマーは、公称中和が約70%を超えるまで、好ましくは約80%を超えるまで、より好ましくは約90%を超えるまで、最も好ましくは約91〜約100%となるまで、溶融加工性を損なうことなく中和することができ、本発明のものではない酸コポリマーでは、70%を超えるまで中和すると溶融加工性が損なわれる場合がある。
【0044】
本発明の酸コポリマーまたは未改質で溶融加工可能なアイオノマーは、あらゆる好適な方法によって、有機酸または塩と溶融ブレンドすることができる。たとえば、固体成分を混合して、不均一な成分の固相混合物を得ることができ、次にこれらの成分を押出機中で溶融ブレンドすることができる。
【0045】
本発明の溶融加工可能な酸コポリマー/有機酸または塩のブレンドは、当技術分野において周知の方法によって中和することができる。たとえば、Werner & Pfleiderer二軸スクリュー押出機を使用して、酸コポリマーおよび有機酸を同時に中和することができる。
【0046】
コポリマーまたはターポリマーの酸の量に依存するが、加工性を支配する有機酸の量は、本発明によって提供される教示によって求めることができる。理論に固執しようとするものではないが、一般的に言うと、コポリマーまたはターポリマーの主鎖中により多くの酸が存在すると、比較的少ない酸を有するコポリマーと類似のメルトインデックスを実現するために、パーセント有機酸の増加が必要となる場合がある。
【0047】
別の実施形態においては、本発明の方法は、E/X/YコポリマーまたはE/X/Yコポリマーの溶融加工可能なアイオノマーである、エチレンα,β−不飽和カルボン酸コポリマーまたはそれらの溶融加工可能なアイオノマーを使用し、上式中、Eはエチレンであり、Xはα,β−不飽和カルボン酸であり、Yはコモノマーである。Xは、ポリマーの3〜35(好ましくは4〜25、より好ましくは5〜20)重量%で存在し、Yは0〜35重量%の量で存在し、好ましくはYは、ポリマーの1〜35重量%、より好ましくは4〜25重量%で存在する。
【0048】
本発明は、E/Xジポリマー(Yがポリマーの0重量%となるE/X/Yコポリマー)のアイオノマー、および/またはE/X/Yターポリマー、および/またはその他のE/X/Yコポリマーを、本明細書に記載の範囲内で含む混合物を考慮している。種々のコポリマーの組成、またはコポリマーの分子量は、本明細書において提供される教示により、および/または特定の用途において望ましい場合がある性質をブレンドに付与するための当技術分野における従来の教示と併せることで、各コポリマー種の中で変動させることができる。
【0049】
エチレン含有コポリマー
前述の高度に中和された有機酸およびエチレン酸コポリマー(アイオノマー)は、エチレン含有コポリマーおよび/またはホモポリマー、ならびにそれらの混合物から選択される少なくとも1種類の別のエチレン含有ポリマー(成分(c))とブレンドされる。本発明の成分(c)として好適なエチレン含有ポリマーの例としては、ポリエチレンホモポリマーおよびコポリマー、たとえばLLDPE、LDPE、ULDPE、メタロセンポリエチレン(mPE);エチレンプロピレンコポリマー;エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)コポリマーなど;ならびに(メタ)アクリル酸アルキル、酢酸ビニル、およびCO(一酸化炭素)からなる群より選択される少なくとも1種類の極性コモノマーとエチレンとの共重合から誘導されるエチレンコポリマーが挙げられる。
【0050】
用語「エチレン/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマー」は、エチレンと(メタ)アクリル酸アルキルとの共重合によって得られるコポリマーの略語表記である。本発明の実施において使用すると好適な(メタ)アクリル酸アルキルは、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基を含む(メタ)アクリル酸アルキルから選択される。
【0051】
本発明における使用に好適なアクリル酸アルキルの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸ブチルが挙げられる。エチレン/アクリル酸メチル(EMA)は、エチレン(E)とアクリル酸メチル(MA)とのコポリマーの略語表記である。エチレン/アクリル酸エチル(EEA)は、エチレンとアクリル酸エチル(EA)とのコポリマーの略語表記である。エチレン/アクリル酸ブチル(EBA)は、エチレンとアクリル酸ブチル(BA)とのコポリマーの略語表記である。
【0052】
本発明のエチレン/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマー中に含まれる(メタ)アクリル酸アルキルコモノマーの相対量は、全コポリマーの数重量パーセントから最大45重量パーセントまで、またはそれを超える量までの広範囲で変動させることができる。同様に、アルキル基は、メチル基であってもよいし、最大8個の炭素原子を有するあらゆるアルキル基であってもよい。最も好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルコモノマー中のアルキル基は、メチル、エチル、またはn−ブチルである。
【0053】
好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルコモノマーは、エチレン/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーの5〜45重量パーセントの濃度範囲であり、好ましくは10〜35重量%、より好ましくは10〜28重量%の濃度範囲である。
【0054】
(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーは、好都合には、約5〜約50重量%の範囲の量で使用することができる。好ましくは、(メタ)アクリレートコポリマーは約10〜約35重量%の量で存在する。さらにより好ましくは、(メタ)アクリレートコポリマーは約15〜約30重量%の量で存在する。
【0055】
本発明における使用に好適なエチレンコポリマーは、管型反応器またはオートクレーブなどによる従来方法、および/または非従来方法などのあらゆる方法によって生成することができる。管型反応器によって得られるエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーは、管型反応器などの中で高温高圧で生成されるが、この場合、エチレンおよびアクリル酸アルキルコモノマーのそれぞれの反応速度が異なることによる固有の結果は、管型反応器内の反応流路に沿ったモノマーの計画的な導入によって、緩和、または部分的に打ち消される。このようなコポリマーは、DuPontより商業的に入手することができる。オートクレーブ法によって生成されるエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーは、たとえば、Exxon/Mobil、および/またはAtoChemより商業的に入手することができる。
【0056】
本発明の実施において使用すると好適なエチレン/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーのメルトインデックスによって測定される分子量は、大幅に変動させることができる。望ましい具体的なメルトインデックスは、個別の包装フィルムに要求される酸素透過性および構造的性質の望ましい組み合わせが得られることを意図した、有機酸/エチレン/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーブレンドから得られる性質のバランスに依存しうる。
【0057】
本発明の目的のためには、ブレンドの意図する用途が損なわれたり失われたりしない限り、本発明の成分(c)は、さまざまな種類の個別のコポリマーの混合物などの複数の成分の混合物であってよいことを考慮している。たとえば、さまざまなメルトインデックスを有する、または異なるアルキル基を有する複数のエチレン(メタ)アクリル酸アルキルを、本発明の成分(c)に意図される機能を果たすための混合物として使用できることが、本発明の範囲内であるとして考慮している。
【0058】
別の実施形態においては、ブレンドの成分(c)がエチレン/酢酸ビニルコポリマーである。エチレン/酢酸ビニルコポリマー中に組み込まれる酢酸ビニルコモノマーの相対量は、原則として、全コポリマーの数重量パーセントから最大40重量パーセントまで、またはそれを超える量までの広範囲で使用することができる。
【0059】
エチレン/酢酸ビニルコポリマーは、好ましくは、酢酸ビニル単位含有率が、2〜40重量%、特に6〜30重量%である。エチレン/酢酸ビニルコポリマーは、好ましくは、ASTM D−1238二準拠して測定されるメルトフローレートが、約0.1〜約40g/10分、特に約0.3〜約30g/10分である。本明細書に記載されるブレンド中の第3の成分として有用なエチレン含有コポリマーは、無水マレイン酸またはマレイン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体を使用した改質などの、当技術分野において周知の方法によって改質することができる。
【0060】
コモノマー含有率の平均値が前述の範囲内となるのであれば、1種類のコポリマーの代わりに、2種類以上の異なるエチレン/酢酸ビニルコポリマーの混合物を、本発明の多層フィルム中に使用することができる。2種類以上の適切に選択されたエチレン/酢酸ビニルコポリマーが本発明のブレンド中に使用される場合、特に有用な性質が得られることがある。
【0061】
エチレン/酢酸ビニルコポリマーは、熱融着開始温度が低いため、本発明のシール層(内層)中に有用である。これによって、包装ウェブの間で良好な二次的シールを形成することができる。中和された酸コポリマー/有機酸混合物と併用して酸素透過性フィルムを形成する場合に、あらゆる好適なエチレン含有コポリマーの混合物も本発明の実施において有用となりうる。
【0062】
前述したように、本発明の複数層(多層)フィルムは、真空包装用途において有用となる場合があり、この場合、少なくとも1つの層が、本明細書に記載される有機酸改質アイオノマーおよびエチレン含有コポリマーブレンドを含み、少なくとも1つの別の層がエチレン含有コポリマーから実質的になる。
【0063】
本発明の多層フィルム中の第2のポリマーとして好適なエチレン含有ポリマーの例としては、ポリエチレンホモポリマーおよびコポリマー、たとえばLLDPE、LDPE、ULDPE、メタロセンポリエチレン(mPE);エチレンプロピレンコポリマー;エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)コポリマーなど;ならびに、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、およびCO(一酸化炭素)からなる群より選択される少なくとも1種類の極性コモノマーとエチレンとの共重合から誘導されるエチレンコポリマーが挙げられ、酸性基を含むコポリマー(たとえば(メタ)アクリル酸)は、任意選択的に、少なくとも部分的に中和されている。エチレン含有ポリマー上に溶融グラフト法によって極性コモノマーを組み込むこともできる(すなわちグラフトコポリマー)。
【0064】
好ましい一実施形態においては、本発明の多層フィルムは、エチレン/酢酸ビニルコポリマー エチレン/(メタ)アクリル酸アルキル、またはmPEから実質的になる少なくとも1つの層を含む。
【0065】
本発明のフィルムまたは多層フィルムは、周知のあらゆるフィルム製造方法によって得ることができる。したがって、本発明のフィルムは、キャストフィルム、インフレーションフィルム、押出コーティング、積層体などとして、種々の層の組成物の同時押出によって作製することができる。本発明で使用するために得られたフィルムは、たとえば、インフレーションフィルム、バブル技術、機械的延伸などの種々の方法によって一軸延伸または二軸延伸のいずれかを行うことができる。
【0066】
当技術分野において一般的に使用される種々の添加剤は、それらが通気性フィルムまたはフィルム構造の性質を実質的に変化させないのであれば、各フィルム層中にできることを理解すべきである。したがって、酸化防止剤および熱安定剤、紫外(UV)光安定剤、顔料および染料、フィラー、スリップ防止剤、可塑剤、その他の加工助剤などの種々の添加剤を好都合に使用できることが考慮されている。本発明のフィルムは、平坦シートまたは筒状形態などのあらゆる形態で製造することができる。
【0067】
本発明真空スキン包装において使用する場合、エチレン含有ポリマーから製造される層は、内部シーラント層として使用される。
【0068】
場合によっては、包装ウェブは、包装される内容物の容器となるように熱成形などによって成形することができる。通常、成形されたウェブが使用される場合には、本発明の包装を形成するために平坦なウェブが併用される。
【実施例】
【0069】
本明細書における実施例は、請求される本発明の種々の実施形態を説明するために提供しており、請求される本発明の範囲を限定することを意図するものでは決してない。
【0070】
アイオノマー、有機酸、およびエチレン/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーの高度に中和したブレンドを含むフィルム層に関する向上した酸素透過率を示すために、以下に挙げる材料からキャストフィルムを作製した。酸素透過率値(OPV)は、23℃および相対湿度50%においてMocon Ox−tram(登録商標)2/21を使用して各キャストフィルムについて測定した。厚さ1ミル当たりで規格化された酸素透過率(mil・cc/m2/24時間)で表される結果のデータを、以下の表1に示している。これらの結果から、アイオノマー、有機酸、およびエチレン/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーの高度に中和されたブレンドのフィルムは、標準的なアイオノマーを含むフィルムの酸素透過性値の6倍程度となることが分かる。
【0071】
使用した材料
アイオノマー−1:Mgで部分的に中和され、MIが0.75であるE/15%MAAジポリマー。
アイオノマー−2:Mgで部分的に中和され、MIが0.95であるE/23.5%nBA/9%MAAターポリマー。
アイオノマー−3:Naで部分的に中和され、MIが1.3であるE/10%MAAジポリマー。
EMA−1:MIが2であるE/24%MAジポリマー。
EMA−2:MIが20であるE/24%MAジポリマー。
EBA−1:MIが4であるE/27%nBAジポリマー。
EMAA−1:MIが60であるE/15%メタクリル酸ジポリマー。
NA−1:MIが500のE/5%MAAジポリマーで構成されるポリマー単体中にブレンドされた50重量%のMg(OH)2を含む中和剤。
NA−2:E/nBA/AAターポリマーのポリマー単体中にブレンドされた50重量%のMg(OH)2を含む中和剤。
EVA−1:MIが2であるE/28%酢酸ビニルジポリマー。
EBAAA−1:MIが60であるE/12.5nBA/10.5AAターポリマー。
EBAMAA−1:MIが200であるE/23.5%nBA/9%MAAターポリマー。
【0072】

【0073】
実施例15
Bramptonインフレーションフィルムライン上で、公称厚さ1ミルのEVA−1の1層と、95重量%の実施例13の樹脂および5重量%のEMAA−1のブレンドを含む公称厚さ2ミルの1層とを含む同時押出した2層フィルムを作製した。この運転パラメータを以下に示す。
【0074】

ライン速度:15フィ−ト/分;ブロ−アップ比:3対1;レイフラット寸法:8インチ
【0075】
結果として得られたフィルムは、1.0ミルのEVA−1および2.25ミルの実施例13+EMAA−1の最終構造を有した。これは、優れた成形性、良好な封止性(EVA−1層をシーラント層として使用)、および6318cc/m2・日・atmのOTRを有した。
【0076】
実施例16
同様の加工条件を使用して、OPVが13,952mil・cc/m2/24時間であり、公称厚さが0.7ミルであるEVA−1の1層と、公称厚さが1.8ミルである実施例14の1層とを含む類似のフィルムを作製する。
【0077】
このフィルムは、実施例15と同様の成形性および封止性を有し、OTRの計算値は10,331cc/m2・日・atmとなる。
【0078】
実施例17
実施例15のフィルムの2つのウェブと、新鮮な鮭またはカレイの切り身とを含む包装物を作製した。標準的な真空シール包装機上で、フィルムの1つのウェブ上に魚の切り身を置き、魚の上に第2のウェブを載せて第1のウェブに重ねる。真空を適用し、15秒のサイクル時間で200°Fにおいてウェブをシールした。成形性およびシール強度は良好から優秀の間であった。
【0079】
実施例18
実施例15で使用した方法と類似の方法を使用して実施例16のフィルムから包装体を作製する。
【0080】
以上のように、ある程度詳細に本発明を説明し例示してきたが、特許請求の範囲は、そのように限定されるものではなく、特許請求の範囲の各要素の表現およびそれらの同等物と同等の範囲を有するものと認識すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィルム層を含む包装体であって:
(i)少なくとも1つの酸素透過性層であって:
(a)36個未満の炭素原子を有する1種類以上の脂肪族有機酸またはその塩と;
(b)少なくとも1種類のE/X/Yコポリマー、または前記E/X/Yコポリマーのアイオノマー(上式中、Eはエチレンから誘導され、Xは少なくとも1種類のC3〜C8α,β−エチレン系不飽和カルボン酸から誘導され、Yは、アクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択されるコモノマーから誘導され、前記アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、Xは、前記E/X/Yコポリマーの約3〜約30重量%であり、Yは、前記E/X/Yコポリマーの0〜約35重量%であり、(a)+(b)の全酸部分のすべての70%超が、対応する金属塩に中和されている)と;
(c)少なくとも1種類の追加のエチレン含有ホモポリマーおよび/またはコポリマーとを含むブレンドから得られる、少なくとも1つの酸素透過性層と;
(ii)少なくとも1種類のエチレン含有ポリマー、またはエチレン含有ポリマーの混合物から実質的になる少なくとも1つのポリマーフィルム層とを含み;
前記包装体から空気を除去するステップと、前記包装体を封止するステップとを含む方法によって製造される、包装体。
【請求項2】
前記ブレンドが前記有機酸のカルシウム塩および/またはマグネシウム塩を含む、請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記ブレンドが4〜34個の炭素原子を有する有機酸塩を含む、請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
前記ブレンドが6〜26個の炭素原子を有する有機酸塩を含む、請求項3に記載の包装体。
【請求項5】
前記ブレンドが6〜22個の炭素原子を有する有機酸塩を含む、請求項4に記載の包装体。
【請求項6】
前記ブレンドが、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、リノール酸、およびそれらの混合物からなる群の有機酸から選択される有機酸の塩を含む、請求項5に記載の包装体。
【請求項7】
前記ブレンドが、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、リノール酸、およびそれらの混合物からなる群の有機酸から選択される有機酸の塩を含む、請求項6に記載の包装体。
【請求項8】
前記ブレンドが、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される有機酸の塩を含む、請求項7に記載の包装体。
【請求項9】
前記ブレンドの成分(b)が、Xが(メタ)アクリル酸である少なくとも1種類のE/X/Yコポリマーを含む、請求項1に記載の包装体。
【請求項10】
前記ブレンドが少なくとも1種類のエチレン/(メタ)アクリル酸ターポリマーを含む、請求項9に記載の包装体。
【請求項11】
前記ブレンドが少なくとも1種類のエチレン/メタクリル酸ジポリマーを含む、請求項9に記載の包装体。
【請求項12】
(ii)の前記少なくとも1種類のエチレン含有ポリマーが:LLDPE、LDPE、ULDPE、メタロセンポリエチレン(mPE)などのポリエチレンホモポリマーおよびコポリマー;エチレンプロピレンコポリマー;エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)コポリマー;ならびに、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、およびCO(一酸化炭素)からなる群より選択される少なくとも1種類の極性コモノマーとエチレンとの共重合から誘導されるエチレンコポリマーからなる群より選択されるエチレン含有コポリマーである、請求項11に記載の包装体。
【請求項13】
少なくとも3つのポリマー層を含む、請求項12に記載の包装体。
【請求項14】
2つの外層と1つの中間層とから実質的になり、両外層が、エチレン/酢酸ビニルコポリマーから実質的になり、前記中間層が(i)の前記ブレンドから実質的になる、請求項13に記載の包装体。
【請求項15】
(i)(c)の前記エチレン含有ポリマーが、エチレン/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーである、請求項14に記載の包装体。
【請求項16】
前記(i)(c)コモノマー中の前記アルキル基が1〜8個の炭素原子を有し、前記(メタ)アクリル酸アルキルコモノマーが、5〜約45重量パーセントの量で前記エチレン/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマー中に含まれる、請求項15に記載の包装体。
【請求項17】
前記(メタ)アクリル酸アルキルコモノマーが約10〜約35重量%の量で含まれる、請求項16に記載の包装体。
【請求項18】
前記(メタ)アクリル酸アルキルコモノマーが約10〜約28重量%の量で含まれる、請求項17に記載の包装体。
【請求項19】
前記(メタ)アクリル酸アルキルコモノマー中の前記アルキル基が、メチル、エチル、またはn−ブチルである、請求項18に記載の包装体。
【請求項20】
成分(c)が、(メタ)アクリル酸アルキル、および酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種類の極性コモノマーとエチレンとの共重合から誘導される少なくとも1種類のエチレン含有ポリマーを含む、請求項1に記載の包装体。
【請求項21】
生鮮食品の貯蔵安定性を改善する方法であって、前記食品を真空スキン包装体中に包装するステップと、真空源によって空気を除去した後に前記包装体を封止するステップとを含み、前記包装体がガス透過性多層フィルムを含み、前記多層フィルムが:
(i)少なくとも1つの層であって:
(a)36個未満の炭素原子を有する1種類以上の脂肪族有機酸またはその塩と;
(b)1種類以上のE/X/Yコポリマー、または前記E/X/Yコポリマーのアイオノマー(上式中、Eはエチレンから誘導され、Xは少なくとも1種類のC3〜C8α,β−エチレン系不飽和カルボン酸から誘導され、Yは、アクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される軟化性コモノマーから誘導され、前記アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、Xは、前記E/X/Yコポリマーの約3〜約30重量%であり、Yは、前記E/X/Yコポリマーの0〜約35重量%であり、(a)+(b)の全酸部分のすべての70%超が、対応する金属塩に中和されている)と;
(c)少なくとも1種類の追加のエチレン含有ホモポリマーおよび/またはコポリマーとのブレンドを含む、少なくとも1つの層と;
(ii)少なくとも1種類のエチレン含有ポリマーまたはそれらの混合物から実質的になる少なくとも1つのポリマー層とを含む、方法。
【請求項22】
複数の前記真空スキン包装体をガス不透過性パウチ中に入れるステップと、前記パウチを封止して前記包装体にガス不透過性雰囲気を提供するステップとをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記パウチ内部に制御雰囲気を提供するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記制御雰囲気が真空である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記制御雰囲気が選択されたガスまたはガス混合物である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記制御雰囲気が、窒素、二酸化炭素、または酸素からなる群より選択されるガスを含む、請求項25に記載の方法。

【公表番号】特表2009−502659(P2009−502659A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522932(P2008−522932)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/028069
【国際公開番号】WO2007/012015
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】