説明

高エネルギーポテンシャル二重層組成物

二重層組成物を提供する。その第1の層は、仕事関数が5.2eVを超える正孔注入層である。第2の層は正孔輸送層である。本発明の二重層組成物を有する電子デバイスも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、高エネルギーポテンシャル二重層組成物、およびそれらの有機電子デバイス中での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子デバイスは、活性層を含む製品の分類の1つとして定義される。このようなデバイスは、電気エネルギーを放射線に変換したり、電子的過程を介して信号を検出したり、放射線を電気エネルギーに変換したり、あるいは、1つまたは複数の有機半導体層を含んだりする。
【0003】
有機発光ダイオード(OLED)は、エレクトロルミネッセンスが可能な有機層を含む有機電子デバイスである。OLEDは、以下の構成を有することができる:
アノード/緩衝層/EL材料/カソード
通常、アノードは、たとえば、インジウム/スズ酸化物(ITO)などの、透明でありEL材料中に正孔を注入する能力を有するあらゆる材料である。場合により、アノードは、ガラスまたはプラスチックの基体上に支持されている。EL材料としては、蛍光性化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、ならびにそれらの混合物が挙げられる。通常、カソードは、EL材料中に電子を注入する能力を有するあらゆる材料(たとえばCaまたはBaなど)である。緩衝層は、典型的には導電性ポリマーであり、アノードからEL材料層中への正孔の注入を促進する。緩衝層は、デバイス性能を促進する他の性質を有することもできる。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,463,005号明細書
【特許文献2】米国特許第3,282,875号明細書
【特許文献3】米国特許仮出願第60/105,662号明細書
【特許文献4】国際公開第98/31716(A1)号パンフレット
【特許文献5】国際公開第99/52954(A1)号パンフレット
【特許文献6】米国特許出願第60/176,881号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1 026 152 A1号明細書
【特許文献8】米国特許第4,358,545号明細書
【特許文献9】米国特許第4,940,525号明細書
【特許文献10】米国特許第4,433,082号明細書
【特許文献11】米国特許第6,150,426号明細書
【特許文献12】国際公開第03/006537パンフレット
【特許文献13】米国特許第6,670,645号明細書
【特許文献14】国際公開第03/063555号パンフレット
【特許文献15】国際公開第2004/016710号パンフレット
【特許文献16】国際公開第03/008424号パンフレット
【特許文献17】国際公開第03/091688号パンフレット
【特許文献18】国際公開第03/040257号パンフレット
【特許文献19】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献20】国際公開第00/70655号パンフレット
【特許文献21】国際公開第01/41512号パンフレット
【特許文献22】国際公開第2005/080525号パンフレット
【非特許文献1】CRC化学物理ハンドブック第81版(CRC Handbook of Chemistry and Physics,81st Edition)(2000−2001)
【非特許文献2】Macromolecules,34,5746−5747(2001)
【非特許文献3】Macromolecules,35,7281−7286(2002)
【非特許文献4】A.フェイリング(Feiring)ら,J.Fluorine Chemistry 2000,105,129−135
【非特許文献5】A.フェイリング(Feiring)ら,Macromolecules 2000,33,9262−9271
【非特許文献6】D.D.デマルト(Desmarteau),J.Fluorine Chem.1995,72,203−208
【非特許文献7】A.J.アップルビー(Appleby)ら,J.Electrochem.Soc.1993,140(1),109−111
【非特許文献8】「可溶性導電性ポリマーから製造した可撓性発光ダイオード」(Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer),Nature vol.357,pp 477 479(11 June 1992)
【非特許文献9】Surface Science,316,(1994),P380
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改善された性質を有する緩衝材料が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
二重層組成物を提供する。その第1の層は、5.2eVを超える仕事関数を有する正孔注入層である。第2の層は正孔輸送層である。
【0007】
別の一実施形態においては、二重層組成物を提供する。その第1の層は、2.0を超えるpHを有する組成物から製造され5.0eVを超える仕事関数を有する正孔注入層である。第2の層は正孔輸送層である。
【0008】
別の一実施形態においては、電子デバイスを提供する。このデバイスはアノードを有する。このアノードは、5.2eVを超える仕事関数を有する正孔注入層と接触している。この正孔注入層は正孔輸送層と接触している。
【0009】
以上の概要および以下の詳細な説明は、単に例示的および説明的なものであり、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明を限定するものではない。
【0010】
本明細書において提示される概念の理解をすすめるために、添付の図面において実施形態を説明する。
【0011】
当業者であれば理解しているように、図面中の物体は、平易かつ明快にするために示されており、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。たとえば、実施形態を理解しやすいようにするために、図面中の一部の物体の寸法が他の物体よりも誇張されている場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
多数の態様および実施形態を以上に説明してきたが、これらは単に例示的で非限定的なものである。本明細書を読めば、本発明の範囲から逸脱しない他の態様および実施形態が実現可能であることが、当業者には分かるであろう。
【0013】
いずれか1つまたは複数の本発明の実施形態のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。この詳細な説明では、最初に、用語の定義および説明を扱い、続いて、正孔注入層、正孔輸送層、二重層組成物の製造方法、電子デバイス、そして最後に実施例を扱う。
【0014】
(1.本明細書および特許請求の範囲において使用される用語の定義および説明)
以下に説明する実施形態の詳細を扱う前に、一部の用語について定義または説明を行う。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「導体」およびその変形は、電位が実質的に降下することなく層材料、部材、または構造に電流が流れるような電気的性質を有する層材料、部材、または構造を意味することを意図している。この用語は、半導体を含むことを意図している。一実施形態においては、導体は、少なくとも10-6S/cmの導電率を有する層を形成する。
【0016】
用語「導電性材料」は、カーボンブラックまたは導電性金属粒子を加えなくても、本来または本質的に導電性となることができる材料を意味する。
【0017】
用語「仕事関数」は、電子を導電性または半導体材料の表面から無限遠点まで引き離すのに必要な最小エネルギーを意味することを意図している。仕事関数は、一般にUPS(紫外光電子分光法)またはケルビンプローブ接触電位差測定によって求められる。
【0018】
用語「エネルギーポテンシャル」は、導電性試験体とケルビンプローブの振動チップとの間に挟まれた非導電性材料のポテンシャルを意味することを意図している。導電性試験体は、金、インジウム・スズ酸化物、または導電性ポリマーのいずれかであってよいが、これらに限定されるものではない。本発明における非導電性材料は、正孔輸送材料である。
【0019】
層、材料、部材、または構造に関して言及される場合、用語「正孔注入」は、そのような層、材料、部材、または構造が、比較的効率的かつ少ない電荷損失で、そのような層、材料、部材、または構造の厚さを通過する正電荷の注入および移動を促進することを意味することを意図している。
【0020】
層、材料、部材、または構造に関して言及される場合、「正孔輸送」は、そのような層、材料、部材、または構造が、比較的効率的かつ少ない電荷損失で、そのような層、材料、部材、または構造の厚さを通過する正電荷の移動を促進することを意味することを意図している。発光層が、ある程度正孔輸送特性を有する場合があるが、本明細書において使用される場合、用語「正孔輸送層」は発光層を含まない。
【0021】
ある実施形態においては、導電性材料はポリマーである。用語「ポリマー」は、少なくとも1つの繰り返しモノマー単位を有する材料を意味することを意図している。この用語は、1つのみの種類または化学種のモノマー単位を有するホモポリマー、および、異なる化学種のモノマー単位から形成されるコポリマーなどの2つ以上の異なるモノマー単位を有するコポリマーを含んでいる。用語「有機溶剤でぬらすことができる」は、フィルムに成形した場合に有機溶剤によってぬらすことができる材料を意味する。この用語は、単独ではフィルム形成性ではないが、ぬらすことができる導電性ポリマー組成物を形成するポリマー酸も含んでいる。一実施形態においては、有機溶剤でぬらすことができる材料は、40°以下の接触角でフェニルヘキサンによってぬらすことができるフィルムを形成する。用語「フッ素化酸ポリマー」は、酸性基を有し、少なくとも一部の水素がフッ素で置き換えられているポリマーを意味する。用語「酸性基」は、イオン化することによって水素イオンをブレンステッド塩基に供与することができる基を意味する。本発明の組成物は、1つまたは複数の異なる導電性ポリマーと、有機溶剤でぬらすことができる1つまたは複数の異なるフッ素化酸ポリマーとを含むことができる。
【0022】
本明細書において使用される場合、用語「含んでなる」、「含んでなること」、「含む」、「含むこと」、「有する」、「有すること」、またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的な包含を扱うことを意図している。たとえば、ある一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素にのみに必ずしも限定されるわけではなく、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に関して明示されず固有のものでもない他の要素を含むことができる。さらに、反対の意味で明記されない限り、「または」は、包含的なまたはを意味するのであって、排他的なまたはを意味するのではない。たとえば、条件AまたはBが満たされるのは、Aが真であり(または存在し)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)Bが真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)のいずれか1つによってである。
【0023】
また、本発明の要素および成分を説明するために「a」または「an」も使用されている。これは単に便宜的なものであり、本発明の一般的な意味を提供するために行われている。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むものと読むべきであり、明らかに他の意味となる場合を除けば、単数形は複数形も含んでいる。
【0024】
元素周期表中の縦列に対応する族の番号は、(非特許文献1)に見ることができる「新表記法」(New Notation)の規則を使用している。
【0025】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を使用して、本発明の実施形態の実施または試験を行うことができるが、好適な方法および材料については以下に説明する。本明細書において言及されるあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、特に明記しない限り、それらの記載内容全体が援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。さらに、材料、方法、および実施例は、単に説明的なものであって、限定を意図したものではない。
【0026】
本明細書に記載されていない程度の、具体的な材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、それらについては、有機発光ダイオードディスプレイ、照明源、光検出器、光電池、および半導体要素の技術分野の教科書およびその他の情報源中に見ることができる。
【0027】
(2.正孔注入層)
本発明の二重層組成物の第1の層は正孔注入層である。一実施形態においては、正孔注入層は5.2eVを超える仕事関数を有する。一実施形態においては、正孔注入層は5.3eVを超える仕事関数であった。一実施形態においては、正孔注入層は5.5eVを超える仕事関数であった。一実施形態においては、正孔注入層は、5.0eVを超える仕事関数を有し、pHが2を超える液体組成物から形成される。用語「液体組成物」は、材料が溶解して溶液が形成された液体媒体、材料が分散して分散液が形成された液体媒体、あるいは材料が懸濁して懸濁液またはエマルジョンが形成された液体媒体を意味することを意図している。用語「液体媒体」は、純液体、複数の液体の組み合わせ、溶液、分散液、懸濁液、およびエマルジョンなどの液体材料を意味することを意図している。液体媒体は、1つまたは複数のいずれの溶媒が存在するかとは無関係に使用される。一実施形態においては、液体媒体は、1つの溶媒または2つ以上の溶媒の組み合わせである。導電性ポリマーの層を形成できるのであれば、あらゆる溶媒または溶媒の組み合わせを使用することができる。液体媒体は、コーティング助剤などの他の材料を含むことができる。
【0028】
一実施形態においては、正孔注入層は、導電性材料を含む。正孔注入層が所望の仕事関数を有する限りは、あらゆる導電性材料を使用することができる。一実施形態においては、導電性材料は、少なくとも1つの電荷移動錯体を含む。このような錯体の例としては、テトラシアノキノジメタン(「TCNQ」)とテトラチアフルバレンまたはテトラメチルテトラセレナフルバレンとの錯体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。Ag−TCNQ、Cu−TCNQ、およびK−TCNQなどの金属−TCNQ錯体を使用することもできる。一実施形態においては、導電性材料は、液体媒体から堆積された半導体酸化物を含む。別の一実施形態においては、半導体酸化物の仕事関数を増加させるために、半導体酸化物分散体にフッ素化酸ポリマーが加えられる。
【0029】
一実施形態においては、本発明の導電性材料は、少なくとも1つの導電性ポリマーを含む。用語「ポリマー」は、少なくとも3つの繰り返し単位を有する材料を意味することを意図しており、ホモポリマーおよびコポリマーを含んでいる。ある実施形態においては、導電性ポリマーは、プロトン化された形態では導電性であり、プロトン化されていない形態では導電性ではない。正孔注入層が所望の仕事関数を有する限りは、あらゆる導電性ポリマーを使用することができる。
【0030】
一実施形態においては、本発明の導電性材料は、少なくとも1つのフッ素化酸ポリマーでドープした少なくとも1つの導電性ポリマーを含む。用語「ドープした」は、導電性ポリマーが、その導電性ポリマー上の電荷のバランスをとるために、ポリマー酸から誘導されたポリマー対イオンを有することを意味することを意図している。用語「フッ素化酸ポリマー」は、酸性基を有し、少なくとも一部の水素がフッ素で置き換えられているポリマーを意味する。用語「酸性基」は、イオン化することによって水素イオンをブレンステッド塩基に供与することができる基を意味する。
【0031】
(a.導電性ポリマー)
一実施形態においては、本発明の導電性ポリマーは、少なくとも10-7S/cmの導電率を有する膜を形成する。導電性ポリマーが形成されるモノマーを「前駆体モノマー」と呼ぶ。コポリマーは、2種類以上の前駆体モノマーを有する。
【0032】
一実施形態においては、本発明の導電性ポリマーは、チオフェン類、セレノフェン類、テルロフェン類、ピロール類、アニリン類、および多環式芳香族類から選択される少なくとも1つの前駆体モノマーから生成される。これらのモノマーから生成されたポリマーは、本明細書において、それぞれ、ポリチオフェン、ポリ(セレノフェン)、ポリ(テルロフェン)、ポリピロール、ポリアニリン、および多環式芳香族ポリマーと呼ばれる。用語「多環式芳香族」は、2つ以上の芳香環を有する化合物を意味する。これらの環は、1つまたは複数の結合によって連結している場合もあるし、互いに縮合している場合もある。用語「芳香環」は、複素環式芳香環を含むことを意図している。「多環式複素環式芳香族」化合物は、少なくとも1つの複素環式芳香環を有する。一実施形態においては、多環式芳香族ポリマーはポリ(チエノチオフェン)である。
【0033】
一実施形態においては、本発明の新規組成物中の導電性ポリマーを形成するために使用が考慮されるモノマーは、以下の式Iを含み:
【0034】
【化1】

【0035】
式中:
Qは、S、Se、およびTeからなる群から選択され;
1は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは両方のR1基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成させてもよく、その環は場合により、1つまたは複数の二価の窒素原子、セレン原子、テルル原子、硫黄原子、または酸素原子を含んでもよい。
【0036】
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、脂肪族炭化水素から誘導される基を意味し、非置換の場合も置換されている場合もある線状、分岐、および環状の基を含んでいる。用語「ヘテロアルキル」は、アルキル基中の1つまたは複数の炭素原子が窒素、酸素、硫黄などの別の原子で置き換えられているアルキル基を意味することを意図している。用語「アルキレン」は、2つの結合点を有するアルキル基を意味する。
【0037】
本明細書において使用される場合、用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素から誘導される基を意味し、非置換の場合も置換されている場合もある線状、分岐、および環状の基を含んでいる。用語「ヘテロアルケニル」は、アルケニル基中の1つまたは複数の炭素原子が窒素、酸素、硫黄などの別の原子で置き換えられているアルケニル基を意味することを意図している。用語「アルケニレン」は、2つの結合点を有するアルケニル基を意味する。
【0038】
本明細書において使用される場合、置換基に関する以下の用語は、以下に示す式を意味する:
「アルコール」 −R3−OH
「アミド」 −R3−C(O)N(R6)R6
「アミドスルホネート」 −R3−C(O)N(R6)R4−SO3
「ベンジル」 −CH2−C65
「カルボキシレート」 −R3−C(O)O−Zまたは−R3−O−C(O)−Z
「エーテル」 −R3−(O−R5p−O−R5
「エーテルカルボキシレート」 −R3−O−R4−C(O)O−Zまたは−R3−O−R4−O−C(O)−Z
「エーテルスルホネート」 −R3−O−R4−SO3
「エステルスルホネート」 −R3−O−C(O)−R4−SO3
「スルホンイミド」 −R3−SO2−NH−SO2−R5
「ウレタン」 −R3−O−C(O)−N(R62
式中、すべての「R」基はそれぞれ同じかまたは異なるものであり:
3は単結合またはアルキレン基であり:
4はアルキレン基であり
5はアルキル基であり
6は水素またはアルキル基であり
pは0または1〜20の整数であり
Zは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、N(R54、またはR5である。
上記基はいずれも、さらに非置換の場合も置換されている場合もあり、いずれの基も、過フッ素化基などのように、1つまたは複数の水素がFで置換されていてもよい。一実施形態においては、上記アルキル基およびアルキレン基は1〜20個の炭素原子を有する。
【0039】
一実施形態においては、上記モノマー中、両方のR1が一緒になって−O−(CHY)m−O−を形成し、式中、mは2または3であり、Yは、それぞれ同じかまたは異なるものであり、そして、水素、ハロゲン、アルキル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され、これらのY基は、部分的または完全にフッ素化されていてもよい。一実施形態においては、すべてのYが水素である。一実施形態においては、上記ポリマーが、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が水素ではない。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が、少なくとも1つの水素がFで置換された置換基である。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が過フッ素化されている。
【0040】
一実施形態においては、上記モノマーは式I(a)を有し:
【0041】
【化2】

【0042】
式中:
Qは、S、Se、およびTeからなる群から選択され;
7は、それぞれ同じかまたは異なるものであり、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され、但し、少なくとも1つのR7が水素ではなく、
mは2または3である。
【0043】
式I(a)の一実施形態においては、mが2であり、1つのR7が、5個を超える炭素原子のアルキル基であり、他のすべてのR7が水素である。式I(a)の一実施形態においては、少なくとも1つのR7基がフッ素化されている。一実施形態においては、少なくとも1つのR7基が、少なくとも1つのフッ素置換基を有する。一実施形態においては、そのR7基が完全フッ素化されている。
【0044】
式I(a)の一実施形態においては、モノマー上の縮合脂環式環上のR7置換基によって、モノマーの水に対する溶解性が改善され、フッ素化酸ポリマーの存在下での重合が促進される。
【0045】
式I(a)の一実施形態においては、mが2であり、1つのR7が、スルホン酸−プロピレン−エーテル−メチレンであり、他のすべてのR7が水素である。一実施形態においては、mが2であり、1つのR7が、プロピル−エーテル−エチレンであり、他のすべてのR7が水素である。一実施形態においては、mが2であり、1つのR7がメトキシであり、他のすべてのR7が水素である。一実施形態においては、1つのR7が、スルホン酸ジフルオロメチレンエステルメチレン(−CH2−O−C(O)−CF2−SO3H)であり、他のすべてのR7が水素である。
【0046】
一実施形態においては、本発明の新規組成物中の導電性ポリマーを形成するために使用が考慮されるピロールモノマーは以下の式IIを含む。
【0047】
【化3】

【0048】
式IIにおいて:
1は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、アミドスルホネート、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは両方のR1基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成させてもよく、その環は場合により、1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含んでもよく;
2は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アルカノイル、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される。
【0049】
一実施形態においては、R1は、それぞれ同じかまたは異なるものであり、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、アミドスルホネート、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、ウレタン、エポキシ、シラン、シロキサン、ならびに、1つまたは複数のスルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、またはシロキサン部分で置換されたアルキルから独立して選択される。
【0050】
一実施形態においては、R2は、水素、アルキル、ならびに、1つまたは複数のスルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、またはシロキサン部分で置換されたアルキルから選択される。
【0051】
一実施形態においては、上記ピロールモノマーは置換されておらず、R1およびR2の両方が水素である。
【0052】
一実施形態においては、両方のR1が一緒になって、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される基でさらに置換された6員または7員の脂環式環を形成する。これらの基は、モノマーおよび結果として得られるポリマーの溶解性を改善することができる。一実施形態においては、両方のR1が一緒になって、アルキル基でさらに置換された6員または7員の脂環式環を形成する。一実施形態においては、両方のR1が一緒になって、少なくとも1つの炭素原子を有するアルキル基でさらに置換された6員または7員の脂環式環を形成する。
【0053】
一実施形態においては、両方のR1が一緒になって−O−(CHY)m−O−を形成し、式中、mは2または3であり、Yは、それぞれ同じかまたは異なるものであり、水素、アルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、アミドスルホネート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が水素ではない。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が、少なくとも1つの水素がFで置換された置換基である。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が過フッ素化されている。
【0054】
一実施形態においては、本発明の新規組成物中の導電性ポリマーを形成するために使用が考慮されるアニリンモノマーは以下の式IIIを含む。
【0055】
【化4】

【0056】
式中:
aは0または1〜4の整数であり;
bは1〜5の整数であり、但しa+b=5であり;
1は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは両方のR1基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成させてもよく、その環は場合により、1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、または酸素原子を含んでもよい。
【0057】
重合すると、このアニリンモノマー単位は、以下に示す式IV(a)または式IV(b)、あるいは両方の式の組み合わせを有することができる。
【0058】
【化5】

【0059】
式中、a、b、およびR1は前出の定義の通りである。
【0060】
一実施形態においては、上記アニリンモノマーは置換されておらず、a=0である。
【0061】
一実施形態においては、aが0ではなく、少なくとも1つのR1がフッ素化されている。一実施形態においては、少なくとも1つのR1が過フッ素化されている。
【0062】
一実施形態においては、本発明の新規組成物中の導電性ポリマーを形成するために使用が考慮される縮合多環式複素環式芳香族モノマーは、2つ以上の縮合芳香環を有し、その環の少なくとも1つが複素環式芳香族である。一実施形態においては、この縮合多環式複素環式芳香族モノマーは式Vを有し:
【0063】
【化6】

【0064】
式中:
Qは、S、Se、Te、またはNR6であり;
6は、水素またはアルキルであり;
8、R9、R10、およびR11は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され;
8とR9、R9とR10、およびR10とR11、のうち少なくとも1つがアルケニレン鎖を形成して5または6員の芳香環を完成させ、その環は、場合により1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含むことができる。
【0065】
一実施形態においては、上記縮合多環式複素環式芳香族モノマーは、式V(a)、V(b)、V(c)、V(d)、V(e)、V(f)、およびV(g)を有し:
【0066】
【化7】

【0067】
式中:
Qは、S、Se、Te、またはNHであり;
Tは、それぞれ同じかまたは異なるものであり、S、NR6、O、SiR62、Se、Te、およびPR6から選択され;
6は、水素またはアルキルである。
上記縮合多環式複素環式芳香族モノマーは、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される基でさらに置換されていてもよい。一実施形態においては、これらの置換基がフッ素化されている。一実施形態においては、これらの置換基が完全フッ素化されている。
【0068】
一実施形態においては、上記縮合多環式複素環式芳香族モノマーはチエノ(チオフェン)である。このような化合物は、たとえば、(非特許文献2);および(非特許文献3)において議論されている。一実施形態においては、このチエノ(チオフェン)は、チエノ(2,3−b)チオフェン、チエノ(3,2−b)チオフェン、およびチエノ(3,4−b)チオフェンから選択される。一実施形態においては、チエノ(チオフェン)モノマーは、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される少なくとも1つの基でさらに置換されている。一実施形態においては、これらの置換基がフッ素化されている。一実施形態においては、これらの置換基が完全フッ素化されている。
【0069】
一実施形態においては、本発明の新規組成物中のポリマーを形成するために使用が考慮される多環式複素環式芳香族モノマーは式VIを含み:
【0070】
【化8】

【0071】
式中:
Qは、S、Se、Te、またはNR6であり;
Tは、S、NR6、O、SiR62、Se、Te、およびPR6から選択され;
Eは、アルケニレン、アリーレン、およびヘテロアリーレンから選択され;
R6は、水素またはアルキルであり;
12は、それぞれ同じかまたは異なるものであり、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは両方のR12基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成させてもよく、その環は場合により1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含んでもよい。
【0072】
一実施形態においては、本発明の導電性ポリマーは、前駆体モノマーと少なくとも1つの第2のモノマーとのコポリマーである。コポリマーに望まれる性質に悪影響を及ぼさないのであれば、あらゆる種類の第2のモノマーを使用することができる。一実施形態においては、第2のモノマーが、モノマー単位の総数を基準にしてポリマーの50%以下を構成する。一実施形態においては、第2のモノマーが、モノマー単位の総数を基準にして30%以下を構成する。一実施形態においては、第2のモノマーが、モノマー単位の総数を基準にして10%以下を構成する。
【0073】
第2のモノマーの代表的な種類としては、アルケニル、アルキニル、アリーレン、およびヘテロアリーレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。第2のモノマーの例としては、限定するものではないが、フルオレン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾチアジアゾール、フェニレンビニレン、フェニレンエチニレン、ピリジン、ジアジン類、およびトリアジン類が挙げられ、これらすべてがさらに置換されていてもよい。
【0074】
一実施形態においては、本発明のコポリマーは、最初に構造A−B−Cを有する中間前駆体モノマーを形成することによって製造され、式中、AおよびCは、同じかまたは異なっていてもよい前駆体モノマーを表し、Bは第2のモノマーを表す。このA−B−C中間前駆体モノマーは、ヤマモト(Yamamoto)、スティル(Stille)、グリニャール(Grignard)メタセシス、スズキ(Suzuki)、およびネギシ(Negishi)カップリングなどの標準的な合成有機技術を使用して調製することができる。次に、この中間前駆体モノマー単独で酸化重合させる、または1つまたは複数の別の前駆体モノマーとともに酸化重合させることによって、本発明のコポリマーが形成される。
【0075】
一実施形態においては、本発明の導電性ポリマーは、2つ以上の前駆体モノマーのコポリマーである。一実施形態においては、これらの前駆体モノマーは、チオフェン類、セレノフェン類、テルロフェン類、ピロール類、アニリン類、および多環式芳香族類から選択される。
【0076】
(b.フッ素化酸ポリマー)
本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化され、酸性プロトンを有する酸性基を有するあらゆるポリマーであってよい。この用語は、部分フッ素化材料および完全フッ素化材料を含んでいる。一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは高フッ素化されている。用語「高フッ素化」は、炭素に結合した利用可能な水素の少なくとも50%が、フッ素で置き換えられていることを意味する。酸性基は、イオン化可能なプロトンを供給する。一実施形態においては、酸性プロトンは3未満のpKaを有する。一実施形態においては、酸性プロトンは0未満のpKaを有する。一実施形態においては、酸性プロトンは−5未満のpKaを有する。酸性基は、ポリマー主鎖に直接結合していてもよいし、ポリマー主鎖上の側鎖に結合していてもよい。酸性基の例としては、カルボン酸基、スルホン酸基、スルホンイミド基、リン酸基、ホスホン酸基、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。酸性基はすべてが同じものである場合もあるし、ポリマーが2種類以上の酸性基を有することもできる。
【0077】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは水溶性である。一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは水に対して分散性である。
【0078】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは有機溶剤でぬらすことができる。用語「有機溶剤でぬらすことができる」は、フィルムに成形した場合に有機溶剤によってぬらすことができる材料を意味する。一実施形態においては、有機溶剤でぬらすことができる材料は、40°以下の接触角でフェニルヘキサンによってぬらすことができるフィルムを形成する。本明細書において使用される場合、用語「接触角」は、図1に示される角度Φを意味することを意図している。液体媒体の液滴の場合、角度Φは、表面の面と、液滴の外側端部から表面までの線との交差部分によって定義される。さらに、角度Φは、液滴が適用された後で表面上で平衡位置に達した後で測定され、すなわち「静的接触角」である。有機溶剤でぬらすことができるフッ素化ポリマー酸のフィルムが、上記表面として示されている。一実施形態においては、接触角が35°以下である。一実施形態においては、接触角が30°以下である。接触角の測定方法は周知である。
【0079】
一実施形態においては、上記ポリマーの主鎖がフッ素化されている。好適なポリマー主鎖の例としては、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、およびそれらのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、ポリマー主鎖が高フッ素化されている。一実施形態においては、ポリマー主鎖が完全フッ素化されている。
【0080】
一実施形態においては、酸性基は、スルホン酸基またはスルホンイミド基である。スルホンイミド基は次式を有し:
−SO2−NH−SO2−R
式中、Rはアルキル基である。
【0081】
一実施形態においては、酸性基はフッ素化側鎖上にある。一実施形態においては、フッ素化側鎖は、アルキル基、アルコキシ基、アミド基、エーテル基、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0082】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化オレフィン主鎖と、ペンダントフッ素化エーテルスルホネート基、ペンダントフッ素化エステルスルホネート基、またはペンダントフッ素化エーテルスルホンイミド基とを有する。一実施形態においては、このポリマーは、1,1−ジフルオロエチレンと2−(1,1−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)アリルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸とのコポリマーである。一実施形態においては、このポリマーは、エチレンと、2−(2−(1,2,2−トリフルオロビニルオキシ)−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸とのコポリマーである。これらのコポリマーは、対応するフッ化スルホニルポリマーとして製造することができ、後にスルホン酸形態に変換することができる。
【0083】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化および部分フッ素化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)のホモポリマーまたはコポリマーである。このコポリマーはブロックコポリマーであってよい。コモノマーの例としては、ブタジエン、ブチレン、イソブチレン、スチレン、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、式VIIを有するモノマーのホモポリマーまたはコポリマーであり:
【0085】
【化9】

【0086】
式中:
bは1〜5の整数であり、
13はOHまたはNHR14であり、
14は、アルキル、フルオロアルキル、スルホニルアルキル、またはスルホニルフルオロアルキルである。
【0087】
一実施形態においては、上記モノマーは以下に示す「SFS」または「SFSI」であり:
【0088】
【化10】

【0089】
重合後、得られたポリマーを酸形態に変換することができる。
【0090】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、酸性基を有するトリフルオロスチレンのホモポリマーまたはコポリマーである。一実施形態においては、このトリフルオロスチレンモノマーは式VIIIを有し:
【0091】
【化11】

【0092】
式中:
Wは、(CF2b、O(CF2b、S(CF2b、(CF2bO(CF2bから選択され、
bは独立して1〜5の整数であり
13はOHまたはNHR14であり、
14は、アルキル、フルオロアルキル、スルホニルアルキル、またはスルホニルフルオロアルキルである。
【0093】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、式IXを有するスルホンイミドポリマーであり:
【0094】
【化12】

【0095】
式中:
fは、フッ素化アルキレン、フッ素化ヘテロアルキレン、フッ素化アリーレン、またはフッ素化ヘテロアリーレンから選択され;
nは少なくとも4である。
【0096】
式IXの一実施形態においては、Rfはパーフルオロアルキル基である。一実施形態においては、Rfはパーフルオロブチル基である。一実施形態においては、Rfはエーテル酸素を含有する。一実施形態においては、nは10を超える。
【0097】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化ポリマー主鎖および式Xを有する側鎖を含み:
【0098】
【化13】

【0099】
式中:
15は、フッ素化アルキレン基またはフッ素化ヘテロアルキレン基であり;
16は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アリール基であり;
aは0または1〜4の整数である。
【0100】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは式XIを有し:
【0101】
【化14】

【0102】
式中:
16は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アリール基であり;
cは独立して0または1〜3の整数であり;
nは少なくとも4である。
【0103】
フッ素化酸ポリマーの合成は、たとえば、(非特許文献4);(非特許文献5);(非特許文献6);(非特許文献7);およびデマルト(Desmarteau)の米国特許公報(特許文献1)に記載されている。
【0104】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、構造(XII)を有するエチレン系不飽和化合物から誘導される少なくとも1つの繰り返し単位を含み:
【0105】
【化15】

【0106】
式中、nは0、1、または2であり;
17〜R20は独立して、H、ハロゲン、1〜10個の炭素原子のアルキルまたはアルコキシ、Y、C(Rf’)(Rf’)OR21、R4Y、あるいはOR4Yであり;
Yは、COE2、SO22、またはスルホンイミドであり;
21は、水素または酸不安定性保護基であり;
f’は、それぞれ同じかまたは異なるものであり、1〜10個の炭素原子のフルオロアルキル基であるか、1つに合わせたものが(CF2eとなるかであり、eは2〜10であり;
4はアルキレン基であり;
2は、OH、ハロゲン、またはOR5であり;
5はアルキル基であり;
但し、R17〜R20の少なくとも1つが、Y、R4Y、またはOR5Yである。
4、R5、およびR17〜R20は、ハロゲンまたはエーテル酸素によって場合により置換されていてもよい。
【0107】
本発明の範囲内にある構造(XII)の代表的なモノマーの一部の説明的で非限定的な例を以下に示しており:
【0108】
【化16】

【0109】
式中、R21は、第3級陽イオンの形成または第3級陽イオンへの転位が可能な基であり、より典型的には1〜20個の炭素原子のアルキル基であり、最も典型的にはt−ブチルである。
【0110】
d=0の場合の構造(XII)である構造(XII−a)の化合物は、以下の式に示されるような構造(XIII)の不飽和化合物とクアドリシクラン(テトラシクロ[2.2.1.02,63,5]ヘプタン)との付加環化反応によって調製することができる。
【0111】
【化17】

【0112】
この反応は、約0℃〜約200℃の範囲の温度、より典型的には約30℃〜約150℃の範囲の温度において、ジエチルエーテルなどの不活性溶媒の非存在下または存在下で実施することができる。1つまたは複数の試薬または溶媒の沸点以上で実施される反応の場合、揮発性成分の減少を回避するために、通常は密閉反応器が使用される。より大きな値のd(すなわち、d=1または2)を有する式XIIの化合物は、d=0である式XIIの化合物をシクロペンタジエンと反応させることによって調製することができ、このことは当技術分野において周知である。
【0113】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、エチレン系不飽和炭素に結合した少なくとも1つのフッ素原子を含有する少なくとも1つのエチレン系不飽和化合物から誘導された繰り返し単位も含む。このフルオロオレフィンは2〜20個の炭素原子を含む。代表的なフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、パーフルオロ−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ−(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、CF2=CFO(CF2tCF=CF2(式中のtは1または2である)、およびRf’’OCF=CF2(式中のRf’’は1〜約10個の炭素原子の飽和フルオロアルキル基である)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、このコモノマーはテトラフルオロエチレンである。
【0114】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、シロキサンスルホン酸を含むペンダント基を有するポリマー主鎖を含む。一実施形態においては、このシロキサンペンダント基は以下の式を有し:
【0115】
【化18】

【0116】
式中:
aは1〜bであり;
bは1〜3であり;
22は、独立してアルキル、アリール、およびアリールアルキルからなる群から選択される非加水分解性基であり;
23は、1つまたは複数のエーテル酸素原子によって置換されていてもよい二座アルキレン基であり、但し、R23は、SiとRfとの間に直線状に配置された少なくとも2つの炭素原子を有し;
fは、1つまたは複数エーテル酸素原子によって置換されていてもよいパーフルオルアルキレン(perfluoralkylene)基である。
【0117】
一実施形態においては、ペンダントシロキサン基を有する本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化主鎖を有する。一実施形態においては、この主鎖は過フッ素化されている。
【0118】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化された主鎖および式(XIV)によって表されるペンダント基を有し、
−Og−[CF(Rf2)CF−Ohi−CF2CF2SO3H (XIV)
式中、Rf2は、F、または、非置換であるか、1つまたは複数のエーテル酸素原子によって置換されているかのいずれかであり1〜10個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、h=0または1であり、i=0〜3であり、g=0または1である。
【0119】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは式(XV)を有し
【0120】
【化19】

【0121】
式中、j≧0、k≧0、および4≦(j+k)≦199であり、Q1およびQ2はFまたはHであり、Rf2は、F、あるいは、非置換であるか、1つまたは複数のエーテル酸素原子によって置換されているかのいずれかであり1〜10個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、h=0または1であり、i=0〜3であり、g=0または1である。一実施形態においては、Rf2は−CF3であり、g=1、h=1、およびi=1である。一実施形態においては、ペンダント基が3〜10mol%の濃度で存在する。
【0122】
一実施形態においては、Q1はHであり、k≧0であり、Q2はFであり、これは、コナリー(Connolly)らの米国特許公報(特許文献2)の教示により合成することができる。別の好ましい一実施形態においては、Q1はHであり、Q2はHであり、g=0であり、Rf2はFであり、h=1であり、I=1であり、同時継続中の米国特許公報(特許文献3)により合成することができる。さらに別の実施形態は、ドライスデール(Drysdale)らの(特許文献4)、ならびに同時継続中の米国出願のチェ(Choi)らの(特許文献5)、および米国特許公報(特許文献6)における種々の教示により合成することができる。
【0123】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーはコロイド形成性ポリマー酸である。本明細書において使用される場合、用語「コロイド形成性」は、水に対して不溶性であり、水性媒体中に分散させた場合にコロイドを形成する材料を意味する。コロイド形成性ポリマー酸は、通常、約10,000〜約4,000,000の範囲内の分子量を有する。一実施形態においては、このポリマー酸は約100,000〜約2,000,000の分子量を有する。コロイドの粒度は、通常2ナノメートル(nm)〜約140nmの範囲内である。一実施形態においては、このコロイドは2nm〜約30nmの粒度を有する。酸性プロトンを有するあらゆる完全フッ素化コロイド形成性ポリマー材料を使用することができる。一実施形態においては、コロイド形成性フッ素化ポリマー酸は、カルボン酸基、スルホン酸基、およびスルホンイミド基から選択される酸性基を有する。一実施形態においては、コロイド形成性フッ素化ポリマー酸はポリマースルホン酸である。一実施形態においては、コロイド形成性ポリマースルホン酸は過フッ素化されている。一実施形態においては、コロイド形成性ポリマースルホン酸はパーフルオロアルキレンスルホン酸である。
【0124】
一実施形態においては、本発明のコロイド形成性ポリマー酸は、高フッ素化スルホン酸ポリマー(「FSAポリマー」)である。「高フッ素化」は、ポリマー中のハロゲン原子および水素原子の総数の少なくとも約50%、一実施形態においては少なくとも約75%、別の一実施形態においては少なくとも約90%がフッ素原子であることを意味する。一実施形態においては、このポリマーは過フッ素化されている。用語「スルホネート官能基」は、スルホン酸基またはスルホン酸基の塩のいずれかを意味し、一実施形態においてはアルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。この官能基は、式−SO35で表され、式中のE5は「対イオン」とも呼ばれる陽イオンである。E5は、H、Li、Na、K、またはN(R1)(R2)(R3)(R4)であってよく、R1、R2、R3、およびR4は同じかまたは異なるものであり、一実施形態においては、これらはH、CH3、またはC25である。別の一実施形態においては、E5はHであり、この場合そのポリマーは「酸形態」にあると言われる。E5は、Ca++、およびAl+++などのイオンによって表されるような多価であってもよい。当業者には明らかなように、一般にMx+と表される多価対イオンの場合、対イオン1つ当たりのスルホネート官能基数が価数「x」と等しくなる。
【0125】
一実施形態においては、FSAポリマーは、主鎖に結合した反復する側鎖を有するポリマー主鎖を含み、これらの側鎖は陽イオン交換基を有する。ポリマーには、ホモポリマー、または2つ以上のモノマーのコポリマーが含まれる。通常、コポリマーは、非官能性モノマーと、後にスルホネート官能基を加水分解できるフッ化スルホニル基(−SO2F)などの陽イオン交換基またはその前駆体を有する第2のモノマーとから形成される。たとえば、第1のフッ素化ビニルモノマーと、フッ化スルホニル基(−SO2F)を有する第2のフッ素化ビニルモノマーとのコポリマーを使用することができる。可能性のある第1のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリジン(vinylidine fluoride)、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。TFEが好ましい第1のモノマーである。
【0126】
別の実施形態においては、可能性のある第2のモノマーとしては、ポリマー中に所望の側鎖を提供することができるスルホネート官能基または前駆体基を有するフッ素化ビニルエーテルが挙げられる。希望するなら、エチレン、プロピレン、およびR−CH=CH2(式中のRは、1〜10個の炭素原子の過フッ素化アルキル基である)などの追加のモノマーを、これらのポリマー中に組み込むことができる。これらのポリマーは、本明細書においてランダムコポリマーと呼ばれる種類であってよく、すなわち、コモノマーの相対濃度が可能な限り一定に維持され、それによって、ポリマー鎖に沿ったモノマー単位の分布がそれらの相対濃度および相対反応性に従う重合によって製造されるコポリマーであってよい。重合の過程中にモノマーの相対濃度を変化させることによって製造される不規則性のより低いコポリマーを使用することもできる。(特許文献7)に開示されるものなどの、ブロックコポリマーと呼ばれる種類のポリマーを使用することもできる。
【0127】
一実施形態においては、本発明において使用されるFSAポリマーは、高フッ素化された、一実施形態においては過フッ素化された、炭素主鎖および以下の式で表される側鎖を含み、
−(O−CF2CFRf3a−O−CF2CFRf4SO35
式中、Rf3およびRf4は独立して、F、Cl、または1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、a=0、1、または2であり、E5は、H、Li、Na、K、またはN(R1)(R2)(R3)(R4)であり、R1、R2、R3、およびR4は同じかまたは異なるものであり、一実施形態においてはこれらはH、CH3、またはC25である。別の一実施形態においてはE5はHである。前述したように、E5は多価であってもよい。
【0128】
一実施形態においては、本発明のFSAポリマーとしては、たとえば、米国特許公報(特許文献2)、ならびに米国特許公報(特許文献8)および米国特許公報(特許文献9)に開示されているポリマーが挙げられる。好ましいFSAポリマーの一例は、パーフルオロカーボン主鎖および次式で表される側鎖を含み、
−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO35
式中、Xは前出の定義の通りである。この種類のFSAポリマーは、米国特許公報(特許文献2)に開示されており、テトラフルオロエチレン(TFE)と、過フッ素化ビニルエーテルのCF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2F(パーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド)(PDMOF))との共重合の後、スルホニルフルオリド基の加水分解によってスルホネート基に変換し、必要に応じてイオン交換することによってそれらを所望のイオン形態に変換することによって製造することができる。米国特許公報(特許文献8)および米国特許公報(特許文献9)に開示されている種類のポリマーの一例は、側鎖−O−CF2CF2SO35を有し、式中のE5は前出の定義の通りである。このポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)と、過フッ素化ビニルエーテルのCF2=CF−O−CF2CF2SO2F(パーフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフルオリド)(POPF))との共重合の後、加水分解し、さらに必要に応じてイオン交換することによって製造することができる。
【0129】
一実施形態においては、本発明において使用されるFSAポリマーは、通常、約33未満のイオン交換比を有する。本明細書において、「イオン交換比」または「IXR」は、陽イオン交換基に対するポリマー主鎖中の炭素原子数として定義される。約33未満の範囲内であれば、個別の用途に応じて希望通りにIXRを変動させることができる。一実施形態においてはIXRは約3〜約33であり、別の一実施形態においては約8〜約23である。
【0130】
ポリマーの陽イオン交換能力は、多くの場合当量(EW)で表現される。本明細書の目的では、当量(EW)は、1当量の水酸化ナトリウムを中和するために必要となる、酸形態のポリマーの重量と定義される。ポリマーがパーフルオロカーボン主鎖を有し、側鎖が−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO3H(またはその塩)であるスルホネートポリマーの場合、約8〜約23のIXRに相当する当量範囲は約750EW〜約1500EWとなる。このポリマーのIXRは、式:50IXR+344=EWを使用して当量と関連づけることができる。米国特許公報(特許文献8)および米国特許公報(特許文献9)に開示されているスルホネートポリマー、たとえば側鎖−O−CF2CF2SO3H(またはその塩)を有するポリマーに対して同じIXR範囲が使用されると、陽イオン交換基を有するモノマー単位の分子量が低いため、その当量はある程度低くなる。約8〜約23の好ましいIXR範囲の場合、その対応する当量範囲は約575EW〜約1325EWとなる。このポリマーのIXRは、式:50IXR+178=EWを使用して当量と関連づけることができる。
【0131】
FSAポリマーは、コロイド水性分散体として調製することができる。これらは、他の媒体中の分散体の形態であってもよく、そのような媒体の例としては、アルコール、テトラヒドロフランなどの水溶性エーテル、水溶性エーテルの混合物、およびそれらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。この分散体を製造する際、ポリマーは酸形態で使用することができる。米国特許公報(特許文献10)、米国特許公報(特許文献11)、および(特許文献12)には、水性アルコール性分散体の製造方法が開示されている。分散体を製造した後、濃度と分散させる液体の組成とを、当技術分野において周知の方法によって調整することができる。
【0132】
FSAポリマーを含むコロイド形成性ポリマー酸の水性分散体は、典型的には、安定なコロイドが形成されるのであれば、可能な限り小さい粒度、および可能な限り小さいEWを有する。
【0133】
FSAポリマーの水性分散体は、ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体として、本願特許出願人より市販されている。
【0134】
本明細書において前述したポリマーの一部は、非酸形態、たとえば、塩、エステル、またはフッ化スルホニルとして形成することができる。後述するように、これらは、導電性組成物を調製するために酸形態に変換される。
【0135】
(c.導電性組成物の調製)
本発明の新規導電性コポリマー組成物は、(i)フッ素化酸ポリマーの存在下での前駆体モノマーの重合によって;または(ii)最初に本来導電性であるコポリマーを形成した後、それをフッ素化酸ポリマーと組み合わせることによって調製される。
【0136】
((i)フッ素化酸ポリマーの存在下での前駆体モノマーの重合)
一実施形態においては、本発明の導電性コポリマー組成物は、フッ素化酸ポリマーの存在下での前駆体モノマーの酸化重合によって形成される。一実施形態においては、前駆体モノマーは、2つ以上の導電性前駆体モノマーを含む。一実施形態においては、これらのモノマーは、構造A−B−Cを有する中間前駆体モノマーを含み、式中、AおよびCは、同じかまたは異なっていてもよい導電性前駆体モノマーを表しており、Bは、非導電性前駆体モノマーを表している。一実施形態においては、この中間前駆体モノマーは、1つまたは複数の導電性前駆体モノマーとともに重合される。
【0137】
一実施形態においては、上記の酸化重合は均一水溶液中で行われる。別の一実施形態においては、別の一実施形態においては、酸化重合は、水と有機溶剤とのエマルジョン中で行われる。一般に、酸化剤および/または触媒の適切な溶解性を得るために、ある程度の水が存在する。過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの酸化剤を使用することができる。塩化第二鉄、または硫酸第二鉄などの触媒も存在することができる。結果として得られる重合生成物は、フッ素化酸ポリマーと会合した導電性ポリマーの溶液、分散体、またはエマルジョンとなる。一実施形態においては、本来導電性ポリマーが正に帯電しており、フッ素化酸ポリマー陰イオンによって電荷のバランスがとられる。
【0138】
一実施形態においては、本発明の新規な導電性ポリマー組成物の水性分散体の製造方法は、前駆体モノマーと酸化剤との少なくとも一方が加えられるときに少なくとも一部のフッ素化酸ポリマーが存在するのであれば任意の順序で、水と、前駆体モノマーと、少なくとも1つのフッ素化酸ポリマーと、酸化剤とを混合することによって反応混合物を形成するステップを含む。
【0139】
一実施形態においては、本発明の新規な導電性ポリマー組成物の製造方法は:
(a)フッ素化酸ポリマーの水溶液または分散体を提供するステップと;
(b)ステップ(a)の溶液または分散体に酸化剤を加えるステップと;
(c)ステップ(b)の混合物に前駆体モノマーを加えるステップとを含む。
【0140】
別の一実施形態においては、酸化剤を加える前に、フッ素化酸ポリマーの水溶液または分散体に前駆体モノマーが加えられる。これに続いて、酸化剤を加える前述のステップ(b)が行われる。
【0141】
別の一実施形態においては、通常、約0.5重量%〜約4.0重量%の範囲内の全前駆体モノマーの濃度で、水と前駆体モノマーとの混合物が形成される。この前駆体モノマー混合物がフッ素化酸ポリマーの水溶液または分散体に加えられ、酸化剤を加える前述のステップ(b)が行われる。
【0142】
別の一実施形態においては、上記水性重合混合物は、硫酸第二鉄、塩化第二鉄などの重合触媒を含むことができる。この触媒は、最終ステップの前に加えられる。別の一実施形態においては、触媒は酸化剤とともに加えられる。
【0143】
一実施形態においては、重合は、水に対して混和性である共分散液体(co−dispersing liquid)の存在下で行われる。好適な共分散液体の例としては、エーテル、アルコール、アルコールエーテル、環状エーテル、ケトン、ニトリル、スルホキシド、アミド、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、共分散液体はアルコールである。一実施形態においては、共分散液体は、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、およびそれらの混合物から選択される有機溶剤である。一般に、共分散液体の量は約60体積%未満とすべきである。一実施形態においては、共分散液体の量は約30体積%未満である。一実施形態においては、共分散液体の量は5〜50体積%の間である。重合中に共分散液体を使用することによって、粒度が顕著に減少し、分散体の濾過性が改善される。さらに、この方法によって得られた緩衝材料は、粘度の増加が見られ、これらの分散体から作製された膜は高品質となる。
【0144】
共分散液体は、本発明の方法の任意の時点で反応混合物に加えることができる。
【0145】
一実施形態においては、重合は、ブレンステッド酸である共酸(co−acid)の存在下で行われる。この酸は、HCl、硫酸などの無機酸、あるいは酢酸またはp−トルエンスルホン酸などの有機酸であってよい。あるいは、この酸は、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸などの水溶性ポリマー酸、または前述の第2のフッ素化酸ポリマーであってよい。複数の酸の組み合わせを使用することもできる。
【0146】
共酸は、最後に加えられる酸化剤または前駆体モノマーのいずれかが加えられる前の、本発明の方法の任意の時点で反応混合物に加えることができる。一実施形態においては、共酸が加えられた後で、前駆体モノマーとフッ素化酸ポリマーとの両方が加えられ、最後に酸化剤が加えられる。一実施形態においては、共酸が加えられた後で、前駆体モノマーが加えられ、続いてフッ素化酸ポリマーが加えられ、最後に酸化剤が加えられる。
【0147】
一実施形態においては、重合は、共分散液体と共酸との両方の存在下で行われる。
【0148】
一実施形態においては、最初に、水と、アルコール共分散剤と、無機共酸との混合物を反応容器に投入する。これに、前駆体モノマー、フッ素化酸ポリマーの水溶液または分散体、および酸化剤をこの順序で加える。混合物を不安定化する可能性のある高イオン濃度局所領域の形成を防止するため、酸化剤はゆっくり滴下する。この混合物を撹拌し、次に、制御された温度において反応を進行させる。重合が完了してから、反応混合物を強酸陽イオン樹脂で処理し、撹拌し、濾過し、続いて、塩基性陰イオン交換樹脂で処理し、撹拌し、濾過する。前述したように、別の添加順序を使用することもできる。
【0149】
本発明の新規導電性ポリマー組成物の製造方法において、酸化剤の全前駆体モノマーに対するモル比は、一般に0.1〜2.0の範囲内であり、一実施形態においては0.4〜1.5である。フッ素化酸ポリマーの全前駆体モノマーに対するモル比は、一般に0.2〜5の範囲内である。一実施形態においては、この比は1〜4の範囲内である。全体の固形分は、一般に、重量パーセントの単位で、約1.0%〜10%の範囲内であり、一実施形態においては約2%〜4.5%の範囲内である。反応温度は、一般に約4℃〜50℃の範囲内であり、一実施形態においては約20℃〜35℃の範囲内である。場合により使用される共酸の前駆体モノマーに対するモル比は約0.05〜4である。酸化剤の添加時間は粒度および粘度に影響を与える。したがって、添加速度を遅くすることによって粒度を減少させることができる。同時に、添加速度を遅くすることによって粘度は増加する。反応時間は、一般に約1〜約30時間の範囲内である。
【0150】
((ii)本質的に導電性のポリマーとフッ素化酸ポリマーとの混合)
一実施形態においては、本質的に導電性のポリマーが、フッ素化酸ポリマーとは別に形成される。一実施形態においては、これらのポリマーは、対応するモノマーを水溶液中で酸化重合させることによって調製される。一実施形態においては、酸化重合は水溶性酸の存在下で行われる。一実施形態においては、この酸は、水溶性非フッ素化ポリマー酸である。一実施形態においては、この酸は、非フッ素化ポリマースルホン酸である。この酸の一部の非限定的な例は、ポリ(スチレンスルホン酸)(「PSSA」)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)(「PAAMPSA」)、およびそれらの混合物である。酸化重合によって、正電荷を有するコポリマーが得られる場合、その酸の陰イオンが導電性ポリマーの対イオンとなる。この酸化重合は、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの酸化剤を使用して行われる。
【0151】
本発明の新規な導電性ポリマー組成物は、本質的に導電性のポリマーをフッ素化酸ポリマーとブレンドすることによって調製される。これは、本質的に導電性のポリマーの水性分散体を、ポリマー酸の分散体または溶液に加えることによって行うことができる。一実施形態においては、この組成物は、成分を確実に混合するために、超音波処理またはマイクロ流動化を使用してさらに処理される。
【0152】
一実施形態においては、本質的に導電性のポリマーおよびフッ素化酸ポリマーの一方または両方が、固体の形態で分離される。この固体材料は、水中、あるいは他の成分の水溶液または分散体の中に再分散させることができる。たとえば、本質的に導電性のポリマーの固体を、フッ素化酸ポリマー水溶液または分散体の中に分散させることができる。
【0153】
((iii)pH調整)
合成された時点では、本発明の新規導電性コポリマー組成物の水性分散体は、一般に非常に低いpHを有する。一実施形態においては、デバイスの性質に悪影響を与えずに、pHをより高い値に調整される。一実施形態においては、分散体のpHは約1.5〜約4に調整される。一実施形態においては、pHは3〜4の間に調整される。pHは、イオン交換、または塩基性水溶液を使用した滴定などの周知の技術を使用して調整できることが分かっている。
【0154】
一実施形態においては、重合反応の完了後、分解した化学種、副反応生成物、および未反応モノマーを除去するため、およびpHを調整するために、好適な条件下で、合成された状態の水性分散体を、少なくとも1つのイオン交換樹脂と接触させることによって、所望のpHを有する安定な水性分散体が生成される。一実施形態においては、合成された状態の水性分散体を、第1のイオン交換樹脂および第2のイオン交換樹脂と任意の順序で接触させる。合成された状態の水性分散体は、第1および第2のイオン交換樹脂の両方で同時に処理することもできるし、一方で処理した後に続いて他方で処理することもできる。
【0155】
イオン交換は、流体媒体(水性分散体など)中のイオンが、流体媒体に対して不溶性である固定された固体粒子に結合した類似の荷電イオンと交換される可逆的な化学反応である。本明細書においては、あらゆるこのような物質を意味するために用語「イオン交換樹脂」が使用される。イオン交換基が結合するポリマー支持体が架橋性を有するため、この樹脂は不溶性となる。イオン交換樹脂は、陽イオン交換体または陰イオン交換体に分類される。陽イオン交換体は、交換に利用可能な正に帯電した可動イオンを有し、典型的には、プロトンまたはナトリウムイオンなどの金属イオンを有する。陰イオン交換体は、負に帯電した交換可能なイオンを有し、典型的には水酸化物イオンを有する。
【0156】
一実施形態においては、第1のイオン交換樹脂は、プロトンイオンまたは金属イオンの形態、典型的にはナトリウムイオンの形態であってよい陽イオン酸交換樹脂である。第2のイオン交換樹脂は塩基性陰イオン交換樹脂である。プロトン交換樹脂などの酸性陽イオン交換樹脂と、塩基性陰イオン交換樹脂との両方が、本発明の実施において使用が考慮されている。一実施形態においては、酸性陽イオン交換樹脂は、スルホン酸陽イオン交換樹脂などの無機酸陽イオン交換樹脂である。本発明の実施において使用が考慮されるスルホン酸陽イオン交換樹脂としては、たとえば、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノール−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、ベンゼン−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、およびそれらの混合物が挙げられる。別の一実施形態においては、酸性陽イオン交換樹脂は、カルボン酸、アクリル、またはリンの陽イオン交換樹脂などの有機酸陽イオン交換樹脂である。さらに、異なる陽イオン交換樹脂の混合物を使用することができる。
【0157】
別の一実施形態においては、塩基性陰イオン交換樹脂は、第3級アミン陰イオン交換樹脂である。本発明の実施において使用が考慮される第3級アミン陰イオン交換樹脂としては、たとえば、第3級アミノ化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、第3級アミノ化架橋スチレンポリマー、第3級アミノ化フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、第3級アミノ化ベンゼン−ホルムアルデヒド樹脂、およびそれらの混合物が挙げられる。さらに別の一実施形態においては、塩基性陰イオン交換樹脂は、第4級アミン陰イオン交換樹脂、あるいはこれらおよびその他の交換樹脂の混合物である。
【0158】
第1および第2のイオン交換樹脂は、合成された状態の水性分散体に、同時または連続のいずれかで接触させることができる。たとえば、一実施形態においては、両方の樹脂は、合成された状態の導電性コポリマーの水性分散体に同時に加えられ、少なくとも約1時間、たとえば約2時間〜約20時間の間、分散体との接触を維持する。次に、濾過することによって、イオン交換樹脂を分散体から除去することができる。フィルターのサイズは、比較的大きなイオン交換樹脂粒子が除去され、より小さな分散粒子は通過するように選択される。理論によって束縛しようと望むものではないが、イオン交換樹脂は、重合を停止させ、さらに、イオン性および非イオン性の不純物、ならびに大部分の未反応モノマーを合成された状態の水性分散体から効率的に除去すると考えられている。さらに塩基性の陰イオン交換樹脂および/または酸性の陽イオン交換樹脂は、酸性部位をより塩基性にするため、結果として分散体のpHが増加する。一般に、新規導電性コポリマー組成物1グラム当たり、約1〜5グラムのイオン交換樹脂が使用される。
【0159】
多くの場合、塩基性イオン交換樹脂を使用することでpHを所望の値に調整することができる。場合によっては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの溶液などの塩基性水溶液を使用して、pHをさらに調整することができる。
【0160】
別の一実施形態においては、本発明の新規導電性コポリマー組成物の水性分散体に高導電性添加剤を加えることによって、より導電性の高い分散体が形成される。比較的高いpHを有する分散体が形成されるので、この導電性添加剤、特に金属添加剤は、分散体中の酸には引き寄せられない。好適な導電性添加剤の例としては、金属の粒子およびナノ粒子、ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、黒鉛の繊維または粒子、炭素粒子、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0161】
(3.正孔輸送層)
正孔輸送層にはあらゆる正孔輸送材料を使用することができる。一実施形態においては、本発明の正孔輸送材料は、減圧レベルに対して、4.2eV以下の光学バンドギャップ、および6.2eV以下のHOMOレベルを有する。
【0162】
一実施形態においては、本発明の正孔輸送材料は少なくとも1つのポリマーを含む。正孔輸送ポリマーの例としては、正孔輸送基を有するポリマーが挙げられる。このような正孔輸送基としては、カルバゾール、トリアリールアミン類、トリアリールメタン、フルオレン、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0163】
一実施形態においては、本発明の正孔輸送層は、非ポリマー正孔輸送材料を含む。正孔輸送分子の例としては、4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP);1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB);および銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0164】
一実施形態においては、本発明の正孔輸送層は式XVIを有する材料を含み:
【0165】
【化20】

【0166】
式中、
Arはアリーレン基であり;
Ar’およびAr”は独立してアリール基から選択され;
24からR27は独立して、水素、アルキル、アリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アリールオキシ、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルチオ、ホスフィノ、シリル、−COR、−COOR、−PO32、−OPO32、およびCNからなる群から選択され;
Rは、水素、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、およびアミノからなる群から選択され;
mおよびnは、それぞれ独立して0〜5の値を有する整数であり、m+n≠0である。
【0167】
式XVIの一実施形態においては、Arは、直線状に配列した2つ以上のオルト縮合ベンゼン環を有するアリーレン基である。
【0168】
(4.二重層組成物の製造方法)
本発明の二重奏組成物の正孔注入および正孔輸送層は、あらゆる層形成技術を使用して製造することができる。一実施形態においては、最初に正孔注入層を形成し、その正孔注入層の少なくとも一部の上に正孔輸送層を直接形成する。一実施形態においては、正孔輸送層は、正孔注入層上にその全体を覆って直接形成される。
【0169】
一実施形態においては、正孔注入層は、液体組成物から液相堆積によって基体上に形成される。用語「基体」は、剛性または可撓性のいずれであってもよく、1つまたは複数の材料の1つまたは複数の層を含むことができる母材を意味することを意図している。基体材料としては、ガラス、ポリマー、金属、またはセラミック材料、あるいはそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。基体は、電子部品、回路、導電性部材、または他の材料の層を含む場合もあるし、含まない場合もある。
【0170】
連続技術および不連続技術などのあらゆる周知の液相堆積技術を使用することができる。連続液相堆積技術としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。不連続液相堆積技術としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、およびスクリーン印刷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0171】
一実施形態においては、正孔注入層は、pHが2を超える液体組成物から液相堆積することによって形成される。一実施形態においては、このpHが4を超える。一実施形態においては、このpHが6を超える。
【0172】
一実施形態においては、正孔輸送層は、液体組成物から液相堆積することによって、正孔注入層の少なくとも一部の上に直接形成される。
【0173】
一実施形態においては、正孔輸送層は、気相堆積によって正孔注入層の少なくとも一部の上に形成される。スパッタリング、熱蒸着、化学蒸着などのあらゆる気相堆積技術を使用することができる。化学蒸着は、プラズマ化学蒸着(「PECVD」)または金属有機化学蒸着(「MOCVD」)として行うことができる。物理蒸着としては、イオンビームスパッタリングなどのスパッタリング、ならびにeビーム蒸発、および抵抗蒸発のあらゆる形態を挙げることができる。物理蒸着の具体的な形態としては、高周波マグネトロンスパッタリング、および誘導結合プラズマ物理蒸着(「IMP−PVD」)が挙げられる。これらの堆積技術は、半導体製造分野においては周知である。
【0174】
正孔注入層の厚さは、意図する用途に希望されるだけ厚くすることができる。一実施形態においては、正孔注入層は100nm〜200ミクロンの範囲内の厚さを有する。一実施形態においては、正孔注入層は50〜500nmの範囲内の厚さを有する。一実施形態においては、正孔注入層は50nm未満の厚さを有する。一実施形態においては、正孔注入層は10nm未満の厚さを有する。一実施形態においては、正孔注入層の厚さは、正孔輸送層の厚さよりも厚い。
【0175】
正孔輸送層の厚さは、1つの単層と同じ薄さであってもよい。一実施形態においては、厚さは100nm〜200ミクロンの範囲内である。一実施形態においては、厚さは100nm未満である。一実施形態においては、厚さは10nm未満である。一実施形態においては、厚さは1nm未満である。
【0176】
(5.電子デバイス)
本発明の別の一態様においては、本発明の二重層組成物を含む電子デバイスを提供する。用語「電子デバイス」は、1つまたは複数の有機半導体層または有機半導体材料を含むデバイスを意味することを意図している。電子デバイスとしては:(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(たとえば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、ダイオードレーザー、または照明パネル)、(2)電子的過程を介して信号を検出するデバイス(たとえば、光検出器、光導電セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管、赤外線(「IR」)検出器、またはバイオセンサー)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(たとえば、光起電性デバイスまたは太陽電池)、(4)1つまたは複数の有機半導体層(たとえば、トランジスタまたはダイオード)を含む1つまたは複数の電子部品を含むデバイス、あるいは項目(1)〜(4)中のデバイスのあらゆる組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0177】
一実施形態においては、本発明の電子デバイスは、2つの電気接触層に間に配置された少なくとも1つの電気活性層を含み、このデバイスは二重層をさらに含む。層または材料に言及する場合の用語「電気活性」は、電子的または電気放射的(electro−radiative)性質を示す層または材料を意味することを意図している。電気活性層材料は、放射線を発する場合もあるし、放射線を受けた場合に電子−正孔対の濃度変化を示す場合もある。
【0178】
デバイスの種類の1つは有機発光ダイオード(「OLED」)である。このようなデバイスの1つが図2に示されている。デバイス100は、アノード層110、緩衝層120、電気活性層130、およびカソード層150を有する。カソード層150には、場合により電子注入/輸送層140が隣接する。緩衝層は、本明細書において定義される二重層であり正孔注入層122と正孔輸送層124とを含む。
【0179】
このデバイスは、アノード層110またはカソード層150に隣接することができる支持体または基体(図示せず)を含むことができる。ほとんどの場合、支持体はアノード層110に隣接している。支持体は、可撓性の場合も剛性の場合もあるし、有機の場合も無機の場合もある。支持体材料の例としては、ガラス、セラミック、金属、およびプラスチックフィルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0180】
アノード層110は、カソード層150よりも正孔の注入が効率的な電極である。アノードは、金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合酸化物を含有する材料を含むことができる。好適な材料としては、2族元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、11族元素、4族、5族、および6族の元素、ならびに8〜10族の遷移元素の混合酸化物が挙げられる。アノード層110を光透過性にするためには、インジウム・スズ酸化物などの12族、13族、および14族の元素の混合酸化物を使用することができる。本明細書において使用される場合、語句「混合酸化物」は、2族元素、あるいは12族、13族、または14族の元素から選択される2つ以上の異なる陽イオンを有する酸化物を意味する。アノード層110の材料の一部の非限定的な具体例としては、インジウム・スズ酸化物(「ITO」)、インジウム・亜鉛酸化物、アルミニウム・スズ酸化物、金、銀、銅、およびニッケルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アノードは、有機材料、特に、ポリアニリンなどの導電性ポリマー、たとえば、(非特許文献8)に記載される代表的な材料も含むことができる。アノードおよびカソード少なくとも1つは、発生した光を観察できるように、少なくとも部分的に透明となるべきである。
【0181】
アノード層110は、化学蒸着法または物理蒸着法、あるいはスピンキャスト法によって形成することができる。化学蒸着は、プラズマ化学蒸着(「PECVD」)または金属有機化学蒸着(「MOCVD」)として行うことができる。物理蒸着としては、イオンビームスパッタリングなどのスパッタリング、ならびにeビーム蒸発、および抵抗蒸発のあらゆる形態を挙げることができる。物理蒸着の具体的な形態としては、高周波マグネトロンスパッタリング、および誘導結合プラズマ物理蒸着(「IMP−PVD」)が挙げられる。これらの堆積技術は、半導体製造分野においては周知である。
【0182】
一実施形態においては、アノード層110は、リソグラフィ作業中にパターンが形成される。このパターンは、希望に応じて変更することができる。これらの層は、第1の電気接触層材料を適用する前に、第1の可撓性複合バリア構造上にパターンが形成されたマスクまたはレジストを配置することなどによってパターンを形成することができる。あるいは、これらの層は、全体の層として適用することができ(ブランケット堆積とも呼ばれる)、続いて、たとえば、パターンが形成されたレジスト層と湿式化学エッチングまたはドライエッチング技術とを使用してパターンを形成することができる。当技術分野において周知の他のパターン形成方法を使用することもできる。
【0183】
デバイスの用途に依存するが、電気活性層130は、印可電圧によって活性化される発光層(発光ダイオードまたは発光電気化学セル中など)、放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印可を伴ってまたは伴わずに信号を発生する材料の層(光検出器中など)であってよい。一実施形態においては、電気活性材料は、有機エレクトロルミネッセンス(「EL」)材料である。限定するものではないが、小分子有機蛍光化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物などのあらゆるEL材料をデバイス中に使用することができる。蛍光化合物の例としては、ピレン、ペリレン、ルブレン、クマリン、それらの誘導体、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属錯体の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;米国特許公報(特許文献13)、ならびに(特許文献14)および(特許文献15)に開示されるような、フェニルピリジン配位子、フェニルキノリン配位子、またはフェニルピリミジン配位子を有するイリジウムの錯体などのシクロメタレート化イリジウムおよび白金エレクトロルミネッセンス化合物、ならびに、たとえば、(特許文献16)、(特許文献17)、および(特許文献18)に記載されているような有機金属錯体、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。電荷輸送ホスト材料と金属錯体とを含むエレクトロルミネッセンス発光層が、トンプソン(Thompson)らの米国特許公報(特許文献19)、ならびにバローズ(Burrows)およびトンプソン(Thompson)の(特許文献20)、および(特許文献21)に記載されている。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0184】
任意選択の層140は、電子の注入/輸送の両方を促進する機能を果たす場合もあるし、層界面における消光反応を防止する閉じ込め層として機能する場合もある。より具体的には、層140は、電子の移動を促進し、層130および150が直接接触している場合の消光反応の可能性を減少させることができる。任意選択の層140の材料の例としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニル−フェノラト)アルミニウム(III)(BAlQ)およびトリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)などのアゾール化合物;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなどのキノキサリン誘導体;9,10−ジフェニルフェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)などのフェナントロリン誘導体;ならびにそれらの1つまたは複数のあらゆる組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。あるいは、任意選択の層140は無機であってもよく、BaO、LiF、Li2Oなどを含むことができる。
【0185】
カソード層150は、電子または負電荷担体の注入に特に有効な電極である。カソード層150は、第1の電気接触層(この場合はアノード層110)よりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であってよい。本明細書において使用される場合、用語「低い仕事関数」は、約4.4eV以下の仕事関数を有する材料を意味することを意図している。本明細書において使用される場合、「高い仕事関数」は、少なくとも約4.4eVの仕事関数を有する材料を意味することを意図している。
【0186】
カソード層の材料は、1族のアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Rb、Cs)、2族金属(たとえば、Mg、Ca、Baなど)、12族金属、ランタニド(たとえば、Ce、Sm、Euなど)、およびアクチニド(たとえば、Th、Uなど)から選択することができる。アルミニウム、インジウム、イットリウム、およびそれらの組み合わせなどの材料も使用することができる。カソード層150の材料の非限定的な具体例としては、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユウロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム、ならびにそれらの合金および組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0187】
通常、カソード層150は、化学蒸着法または物理蒸着法によって形成される。ある実施形態においては、アノード層110に関して前述したようにして、カソード層にパターンが形成される。
【0188】
デバイス中の他の層は、そのような層が果たすべき機能を考慮することによってそのような層に有用であることが知られているあらゆる材料でできていてよい。
【0189】
ある実施形態においては、水および酸素などの望ましくない成分がデバイス100内に入るのを防止するために、接触層150の上に封入層(図示せず)が堆積される。このような成分は、有機層130に対して悪影響を及ぼす場合がある。一実施形態においては、封入層は障壁層またはフィルムである。一実施形態においては、封入層はガラス蓋である。
【0190】
図示していないが、デバイス100が追加の層を含むことができることは理解できよう。当技術分野において周知である別の層、またはその他の別の層を使用することができる。さらに、上記のいずれかの層は、2つ以上副層を含む場合があるし、層状構造を形成している場合もある。あるいは、アノード層110、正孔注入層122、正孔輸送層124、電子輸送層140、カソード層150、および別の層の一部またはすべては、電荷担体輸送効率またはデバイスの他の物理的性質を向上させるために、処理、特に表面処理を行うことができる。各構成層の材料の選択は、デバイスの稼働寿命を考慮して高いデバイス効率を有するデバイスを得ること、製造時間、および複雑な要因、ならびに当業者に認識されている他の問題点の目標の釣り合いを取ることによって、好ましくは決定される。最適な構成要素、構成要素の構成、および組成の決定は、当業者の日常的な作業であることは理解できるであろう。
【0191】
一実施形態において、種々の層は以下の範囲の厚さを有する:アノード110、500〜5000Å、一実施形態においては1000〜2000Å;緩衝二重層120、100〜4000Å、その中の正孔注入層122、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å、および正孔輸送層124、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;光活性層130、10〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;任意選択の電子輸送層140、50〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;カソード150、200〜10000Å、一実施形態においては300〜5000Å。デバイス中の電子−正孔再結合領域の位置、したがってデバイスの発光スペクトルは、各層の相対厚さによって影響されうる。たとえば、電子−正孔再結合領域が発光層中に存在するように、電子輸送層の厚さを選択すべきである。層の厚さの望ましい比は、使用される材料の厳密な性質に依存する。
【0192】
動作中、適切な電源(図示せず)からの電圧がデバイス100に印加される。それによって、デバイス100の層に電流が流れる。電子が有機ポリマー層に入り、フォトンを放出する。アクティブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれる一部のOLEDでは、光活性有機薄膜の個別の堆積物を、電流の流れによって独立して励起させることができ、それによって個別のピクセルを発光させることができる。パッシブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれる一部のOLEDでは、光活性有機薄膜の堆積物は、電気接触層の横列および縦列によって励起させることができる。
【実施例】
【0193】
本明細書に記載される概念を以下の実施例でさらに説明するが、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0194】
(フィルム試料の作製およびケルビンプローブ測定の一般的手順)
実施例および比較例に示される水性分散体またはポリマー溶液を30mm×30mmのガラス/ITO基体上にスピンコーティングすることによって、ケルビンプローブ測定のフィルム試料を作製した。二重層フィルム試料の場合、最初に水性分散体をITO基体上にスピンコーティングし、続いて正孔輸送ポリマー溶液をトップコーティングした。ITO/ガラス基体は、100〜150nmのITO厚さを有する中心部における15mm×20mmのITO領域からなる。15mm×20mmのITO領域のコーナーの1つにおいて、ガラス/ITOの縁端部に延在するITOフィルム表面は、ケルビンプローブ電極との電気接点として機能する。スピンコーティングの前に、ITO/ガラス基体を清浄にし、続いてそのITO側を、0.3Torrおよび300ワットにおいて酸素/プラズマで15分間処理、またはUV−オゾンで10分間処理する。スピンコーティング後、延在するITOフィルムのコーナー上に堆積した材料は、水またはトルエンのいずれかで濡らしたQチップ(Q−tip)を使用して除去した。露出したITOパッドは、ケルビンプローブ電極と接触させるために使用した。次に、堆積したフィルムは、実施例および比較例に示すように焼き付けした。次に、焼き付けしたフィルム試料を、窒素をあふれさせたガラス瓶上に置いた後、蓋を閉めてから測定を行った。
【0195】
仕事関数、またはエネルギーポテンシャルの測定の場合、試料の測定の前に、基準として周囲雰囲気でエージングした金フィルムの測定を最初に行った。フィルムと同じ大きさのガラス片上の金フィルムを、正方形の鋼製容器の底部に切り取られた空隙の中に入れた。この空隙側には、試料片をしっかりと固定するために4つの保持クリップが存在する。1つの保持クリップには、ケルビンプローブとの接触を形成するための電線が取り付けられる。金フィルムは上向きに配置し、鋼製蓋の中央から突出するケルビンプローブチップを、金フィルム表面の中央の上まで下げた。次に、4つのコーナーにおいて、正方形の鋼製容器上で蓋をしっかりと閉めた。正方形の鋼製容器の側面の孔に、ケルビンプローブセルに窒素を連続的に流すためのチューブを接続し、窒素出口には、周囲圧力を維持するための鋼製針が挿入されている隔壁を取り付けた。次にプローブの設定をそのプローブに最適化させ、チップの高さだけは測定全体で変化させた。以下のパラメーターを有するマカリスターKP6500ケルビンプローブメーター(McAllister KP6500 Kelvin Probe meter)にケルビンプローブを接続した:1)振動数:230;2)振幅:20;3)DCオフセット:試料間で変動;4)バッキング電位(backing potential)上限:2ボルト;5)バッキング電位下限:−2ボルト;6)走査速度:1;7)トリガー遅延:0;8)取得(A)/データ(D)点:1024;9)A/D比率:19.0サイクルにおいて12405;10)D/A:遅延:200;11)セットポイント勾配:0.2;12)ステップサイズ:0.001;13)最大勾配偏移:0.001。トラッキング勾配が安定した直後に、金フィルム間の接触電位差(「CPD」)をボルトの単位で記録した。次に、この金のCPDを使用して、プローブチップの基準を(4.7−CPD)eVとした。この4.7eV(電子ボルト)は、周囲雰囲気でエージングした金フィルム表面の仕事関数である[(非特許文献9)]。金のCPDを一定時間ごとに測定しながら、試料のCPDを測定した。金フィルム試料と同じ方法で、4つの保持クリップで各試料を空隙内に取り付けた。試料と電気接触を形成する保持クリップが、1つのコーナーで露出したITOパッドと良好な電気接触が形成されるように注意を払った。CPD測定中、プローブチップを乱さないようにしながら、少量の窒素をセル内に連続的に流した。試料のCPDを記録した後、試料のCPDを4.7eVと金のCPDとの差に加えることによって、試料のエネルギーポテンシャルを計算した。
【0196】
(実施例1)
この実施例では、高仕事関数正孔注入材料の作製を示す。この正孔注入材料は、導電性のポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の低pH水性分散体であり、ナフィオン(Nafion)(登録商標)は、ポリ(テトラフルオロエチレン)/パーフルオロエーテルスルホン酸)である。
【0197】
温度が約270℃であることを除けば米国特許公報(特許文献11)の実施例1パート2の手順と類似の手順を使用して、EWが1050であるナフィオン(Nafion)(登録商標)の25%(w/w)水性コロイド分散体を作製した。この分散体を水で希釈して、重合用の12%(w/w)分散体を形成した。
【0198】
500mLの反応釜中に、243.5gの固形分12%の水性ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体(29.22mmolのSO3H基)、および685gの水を投入した。5℃まで冷却したこの混合物を、二段プロペラブレードを取り付けたオーバーヘッドスターラーを使用して200RPMで撹拌した。次に、この混合物に、10mLの脱イオン水中の604.3mg(1,168.6μmol)の硫酸鉄(III)(Fe2(SO43)の溶液を加えた。この反応混合物を200RPMで15分間撹拌した後、20mLの水中の2.5g(10.5mmol)過硫酸ナトリウムNa228と、20mLの水で希釈した809μL(11.69mmol)の希釈ピロールとの両方を加えた。最初に反応混合物のすべてを窒素で脱気し、イオン交換樹脂を加えるまで窒素下に維持した。過硫酸ナトリウムおよびピロールの両方を加えてから3時間後、それぞれ50gずつのダウエックス(Dowex)M31イオン交換樹脂およびダウエックス(Dowex)M43イオン交換樹脂と、50gの脱イオン水とを反応混合物に加え、混合物を120RPMで5時間さらに撹拌した。最後に、VWR 417濾紙でこれらのイオン交換樹脂を懸濁液から濾過した。この分散体のpHは2.18であり、空気中130℃で10分間焼き付けしたフィルムの導電率は室温で1.7×10-2S/cmである。
【0199】
上記で作製した十分な体積の水性分散体を0.45μmのHVフィルターで濾過し、オゾン処理したITO/ガラス表面上に1,800RPMで60秒かけてスピンコーティングした。ITO/ガラスのオゾン処理は、UVO−クリーナー・モデル#256(UVO−Cleaner Model #256)(2メーソン(2 Mason),アービン(Irvine),CA 92718)を使用して行った。得られたフィルムを、空気中130℃で10分間焼き付けした後、ケルビンプローブセルに取り付けた。試料とプローブチップとの間の接触電位差(CPD)を測定すると1.76ボルトであった。ポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の仕事関数(Wf)を、空気中でエージングした金フィルムについてあらかじめ測定したCPD値0.69ボルトに基づいて計算すると、5.87eVであった。このpH2.18の水性ポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)から、高Wfのフィルムが形成されることが示された。
【0200】
(実施例2)
この実施例では、二重層組成物が高エネルギーポテンシャルであることを示す。この二重層は、pH2.18の分散体から堆積したポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)層の高仕事関数正孔注入層と、フルオレン−トリアリールアミンの架橋性ポリマー(「HT−1」)の正孔輸送層とを含む。
【0201】
実施例1で作製した十分な体積のポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の水性分散体を0.45μmのHVフィルターで濾過し、ITO/ガラス表面上にスピンコーティングした。このITO/ガラスは、最初にO2−プラズマ−25チャンバー(O2−Plasma−25 chamber)(メルカトル・コントロール・システムズ・インコーポレイテッド(Mercator Control Systems,Inc.)、LF−5プラズマ・システム(LF−5 Plasma System))を使用して0.3Torrおよび300ワットにおいて15分間プラズマ/酸素で処理した。次に、スピンコーティングしたフィルムを空気中130℃で10分間焼き付けし、それをKLAテンコール・コーポレーション(KLA−Tencor Corporation)(米国カリフォルニア州サンノゼ(San Jose,CA,USA)のP−15モデルプロフィルメーターによって測定すると約20nm(ナノメートル)であった。以下の実施例および比較例でもこのプロフィルメーターを使用した。次に、ITO上のポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)に、0.4%(w/v)のHT−1をトップコーティングした。得られたITO/(ポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標))/HT−1を窒素中200℃で30分間焼き付けして架橋性基を反応させた。架橋したフィルムを測定すると約20nmであった。次に、このガラス/ITO/(ポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標))/架橋HT−1をケルビンプローブセルに取り付けた。試料とプローブチップとの間の接触電位差(CPD)を測定すると0.95ボルトであった。次に、HT−1のエネルギーポテンシャルを、空気中でエージングした金フィルムについてあらかじめ測定したCPD値0.69ボルトに基づいて計算すると、4.96eVであった。このエネルギーポテンシャルは実施例1のポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の仕事関数よりも低かったが、比較例Aに示されるようにポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)を下に有さない架橋HT−1の仕事関数よりは高いことが示された。
【0202】
(比較例A)
この実施例では、高仕事関数正孔注入材料を下に有さない単層として使用した場合のHT−1が低エネルギーポテンシャルであることを示す。
【0203】
トルエン中の0.4%(w/v)HT−1の十分な体積を、0.45μmのHVフィルターで濾過し、ITO/ガラス表面上にスピンコーティングした。最初にこのITO/ガラスを0.3Torrおよび300ワットにおいてプラズマ/酸素で15分処理した。ITO/ガラス上のHT−1フィルムを空気中200℃で30分間焼き付けして架橋性基を反応させ、これを測定すると約18nmであった。次に、このHT−1/ITO/ガラスをケルビンプローブセルに取り付けた。試料とプローブチップとの間の接触電位差(CPD)を測定すると0.26ボルトであった。次に、ITO上のHT−1フィルムのエネルギーポテンシャルを、空気中でエージングした金フィルムについてあらかじめ測定したCPD値0.69ボルトに基づいて計算すると、4.27eVとなる。このエネルギーポテンシャル(4.27eV)は、実施例2で示されるように4.96eVであったHT−1/ポリピロール−ナフィオン(Nafion)(登録商標)/ITOの仕事関数よりも低かった。
【0204】
(実施例3)
この実施例では、導電性ポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の高pH水性分散体の調製と、その高い仕事関数とを示す。
【0205】
この実施例で使用したポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体は、EW(酸当量)が1000である水性ナフィオン(Nafion)(登録商標)コロイド分散体を使用して調製した。温度が約270℃であることを除けば米国特許公報(特許文献11)の実施例1パート2の手順と類似の手順を使用して25%(w/w)のナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体を調製し、次に水で希釈して重合用の12.0%(w/w)分散体を形成した。
【0206】
4Lの反応釜中に、1,704.3gの固形分12%水性ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体(204.51mmolのSO3H基)と、1,790gの水とを投入した。この混合物を、300rpmに設定した3ブレードオーバーヘッドスターラーで撹拌した。次に、得られた混合物に、150mLの水中に溶解させた4,230.0mg(8.18mmol)の硫酸鉄(III)(Fe2(SO43)と17.53g(73.62mmol)過硫酸ナトリウムNa228との溶液を加えた。釜中のこの混合物を脱気した後、150mLの水中に希釈した5.66mL(81.8mmol)の希釈ピロールを加えた。このピロールの添加は、60mLのシリンジを4つ使用して行った。4つのシリンジのそれぞれによって、それぞれ当量のピロールを1つは釜の底部に、1つは釜の中央部に、2つは釜の上部に、300rpmで撹拌しながら加えた。ピロール溶液を添加してから3.5時間後、それぞれ350gのダウエックス(Dowex)M31イオン交換樹脂およびダウエックス(Dowex)M43イオン交換樹脂を反応混合物に加え、これを120RPMでさらに3時間撹拌した。最後に、VWR 417濾紙でこれらのイオン交換樹脂を懸濁液から濾過した。この分散体のpHは2.32であり、空気中130℃で10分間焼き付けしたフィルムの導電率は室温で1.1×10-2S/cmである。
【0207】
上記で作製したポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の一部をレバチット・モノプラス(Lewatit Monoplus)S100でpH7に調整した。十分な体積のこのpH7水性分散体を、0.45μmのHVフィルターで濾過し、最初に0.3Torrおよび300ワットにおいてプラズマ/酸素で15分間処理したITO/ガラス基体上にスピンコーティングした。このフィルムを空気中130℃で10分間焼き付けし、それを測定すると20nmであった。次に、このポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)をケルビンプローブセルに取り付けた。試料とプローブチップとの間の接触電位差(CPD)を測定すると1.27ボルトであった。次にこのポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の仕事関数(Wf)を、空気中でエージングした金フィルムについてあらかじめ測定したCPD値0.69ボルトに基づいて計算すると、5.28eVとなる。実施例1で示したpH2.18の分散体よりも低いWfを有するフィルムが、ポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)のpH7水性分散体から形成されることが分かる。しかしこの仕事関数は、実施例4で示されるようにHT−1のエネルギーポテンシャルを増大させるのになお十分な高さである。
【0208】
(実施例4)
この実施例では、pH7の水性分散体から形成したポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)層上のHT−1が高エネルギーポテンシャルであることを示す。
【0209】
実施例3で作製したポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)のpH7水性分散体の十分な体積を、0.45μmのHVフィルターで濾過し、ITO/ガラス表面上にスピンコーティングした。このITO/ガラスは、最初に0.3Torrおよび300ワットにおいてプラズマ/酸素で15分間処理した。次に、スピンコーティング下フィルムを空気中130℃で10分間焼き付けし、測定すると約20nm(ナノメートル)であった。次に、ITO上のポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)に、トルエン中の0.4%(w/v)HT−1をトップコーティングした。ポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)/ITO上の正孔輸送ポリマーHT−1を窒素中200℃で30分間焼き付けして架橋性基を反応させた。架橋したフィルムを測定すると約20nmであった。次に、このガラス/ITO/ポリピロール−ナフィオン(Nafion)(登録商標)/架橋HT−1をケルビンプローブセルに取り付けた。試料とプローブチップとの間の接触電位差(CPD)を測定すると0.63ボルトであった。次に、HT−1のエネルギーポテンシャルを、空気中でエージングした金フィルムについてあらかじめ測定したCPD値0.69ボルトに基づいて計算すると、4.64eVであったこのエネルギーポテンシャル(4.64eV)は実施例3のポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)(5.28eV)の仕事関数よりも低いが、比較例Bに示しているポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)層を下に有さない架橋HT−1のエネルギーポテンシャルよりは高いことが示された。
【0210】
(比較例B)
この比較例は、高仕事関数正孔注入材料を下に有さない単層としてのHT−1が低いエネルギーポテンシャルを有することを示すために、実施例4と同時に実施した。
【0211】
トルエン中の0.4%(w/v)HT−1の十分な体積を、0.45μmのHVフィルターで濾過し、ITO/ガラス表面上にスピンコーティングした。このITO/ガラスは、最初に、0.3Torrおよび300ワットにおいてプラズマ/酸素で15分処理した。ITO/ガラス上のHT−1フィルムを空気中200℃で30分間焼き付けして架橋性基を反応させ、これを測定すると約18nmであった。次に、このHT−1/ITO/ガラスをケルビンプローブセルに取り付けた。試料とプローブチップとの間の接触電位差(CPD)を測定すると0.12ボルトであった。次に、ITO上のHT−1フィルム仕事関数(Wf)、すなわちエネルギーポテンシャルを、空気中でエージングした金フィルムについてあらかじめ測定したCPD値0.69ボルトに基づいて計算すると、4.13eVとなる。このエネルギーポテンシャル(4.eV)は、実施例4で示したHT−1/ポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)/ITO(4.64eV)のエネルギーポテンシャルよりも低い。この比較から、ポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)層をHT−1とITOとの間に挿入することによってエネルギーポテンシャルが増加し、引き続く放射層への正孔注入が促進されることが分かる。
【0212】
(実施例5)
この実施例では、pHが2.0の水性分散体から作製したポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)層上の正孔輸送ポリマーが高エネルギーポテンシャルであることを示す。
【0213】
NaOHを加えなかったことを除けば実施例3に記載の処方を使用して、pHが2.0である新しいバッチのポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)を作製した。このポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体は、仕事関数が5.87eVのフィルムを形成する。十分な体積のポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)水性分散体を0.45μmのHVフィルターで濾過し、1,000RPMで60秒間ITO/ガラス表面上にスピンコーティングした。このITO/ガラスは、最初に、0.3Torrおよび300ワットにおいてプラズマ/酸素で15分間処理した。スピンコーティングしたフィルムを空気中120℃で10分間焼き付けした。次にITO上のこのポリピロール−ナフィオン(Nafion)(登録商標)に、トルエン中0.5%(w/v)の正孔輸送ポリマー(「HT−2」)をトップコーティングした。
【0214】
【化21】

【0215】
HT−2は、(特許文献22)の実施例1の手順により作製した。得られたガラス/ITO/ポリピロール−ナフィオン(Nafion)(登録商標)/HT−2を不活性ボックス(inert box)中195℃で30分間焼き付けした後、ケルビンプローブセルに取り付けた。試料とプローブチップとの間の接触電位差(CPD)を測定すると0.58ボルトであった。このHT−2のエネルギーポテンシャルを、空気中でエージングした金フィルムについてあらかじめ測定したCPD値0.69ボルトに基づいて計算すると、4.59eVであった。このエネルギーポテンシャル(4.59eV)は、ポリピロール−ナフィオン(Nafion)(登録商標)の仕事関数(5.87eV)よりも低いが、比較例Cで示されるポリピロール−ナフィオン(Nafion)(登録商標)層を下に有さないHT−2よりも高い値を示した。
【0216】
(比較例C)
この比較例は、高仕事関数正孔注入材料を下に有さない単層としてのHT−2が低エネルギーポテンシャルであることを示すために実施例5と同時に実施した。
【0217】
トルエン中の0.5%(w/v)HT−2の十分な体積を、0.45μmのHVフィルターで濾過し、1,000RPMで60秒間ITO/ガラス表面上にスピンコーティングした。このITO/ガラスは、最初に、0.3Torrおよび300ワットにおいてプラズマ/酸素で15分処理した。次に、このガラス/ITO/HT−2を不活性ボックス中195℃で30分間焼き付けした。HT−2の厚さを測定すると19nmであり、これをケルビンプローブセルに取り付けた。試料とプローブチップとの間の接触電位差(CPD)を測定すると0.25ボルトであった。ITO上のHT−2フィルムのエネルギーポテンシャルを、空気中でエージングした金フィルムについてあらかじめ測定したCPD値0.69ボルトに基づいて計算すると、4.26eVであった。このエネルギーポテンシャル(4.26eV)は、実施例5で示したHT−2/ポリピロール−ナフィオン(Nafion)(登録商標)/ITO(4.59eV)の値よりも低い。この比較から、ポリピロール−ナフィオン(Nafion)(登録商標)層をHT−2とITOとの間に挿入することによってエネルギーポテンシャルが増加し、引き続く発光層への正孔注入が促進されることが分かる。
【0218】
(実施例6)
この実施例では、導電性ポリ(3,4−ジオキシ−エチレンチオフェン)/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の仕事関数に対するpHの影響を示し、ここでナフィオン(Nafion)(登録商標)は、ポリ(テトラフルオロエチレン)/パーフルオロエーテルスルホン酸)である。
【0219】
この実施例で使用したPEDOT−ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体は、EW(酸当量)が1050である水性ナフィオン(Nafion)(登録商標)コロイド分散体を使用して調製した。温度が約270℃であることを除けば米国特許公報(特許文献11)の実施例1パート2の手順と類似の手順を使用して25%(w/w)のナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体を作製し、次に水で希釈して重合用の12.0%(w/w)分散体を形成した。
【0220】
500mLの反応釜中に、63.5gの固形分12%水性ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体(7.26mmolのSO3H基)、156gの水、13.7 mg(25.4μmol)硫酸鉄(III)(Fe2(SO43)、および130μLの37%HCl(1.58mmol)を投入する。この反応混合物を、二段プロペラ型ブレードを取り付けたオーバーヘッドスターラーを使用して175RPMで15分間撹拌した後、10mLの水中の0.79g(3.30mmol)過硫酸ナトリウム(Na228)と、281μLのエチレンジオキシチオフェン(EDT)とを加える。この添加は別々のシリンジを使用して開始し、添加速度はNa228/水の場合0.8mL/時、EDTの場合20μL/時を使用し、この間200RPMで撹拌を続ける。EDTの添加は、反応混合物中に直接案内するテフロン(Teflon)(登録商標)チューブに接続されたシリンジ中にモノマーを入れることによって行われる。Na228/水溶液に接続されるテフロン(Teflon)(登録商標)チューブの末端は、反応混合物の上に配置され、それによって、注入は、チューブの末端から個々の液滴を落下させることによりおこなわれ、そのため注入は徐々に行われる。モノマー添加終了から2時間後、それぞれ15gのレバチット(Lewatit)MP62WSイオン交換樹脂およびレバチット・モノプラス(Lewatit Monoplus)S100イオン交換樹脂と、20gのn−プロパノールとを反応混合物に加え、さらに7時間120RPMで撹拌することによって反応を停止させる。最後にワットマン(Whatman)No.54濾紙を使用して、これらのイオン交換樹脂を溶液から濾過した。この分散体のpHは4であり、この分散体から得られた乾燥フィルムの導電率は室温で1.4×10-3S/cmであった。
【0221】
最初に15gのMP62WSを充填し、次に15gのプロトン交換樹脂であるアンバーリスト(Amberlyst)15を充填したガラスカラムに、上記で得た200gのPEDOT−ナフィオン(Nafion)(登録商標)を通した。回収したPEDOT−ナフィオン(Nafion)(登録商標)は、pHが1.9であり、これを実施例6aと呼ぶ。48gのpH1.9のPEDOT−ナフィオン(Nafion)(登録商標)に、pHが4.2になるまでNaOH希薄水溶液を加える。この試料を実施例6bと呼ぶ。46gのpH1.9のPEDOT−ナフィオン(Nafion)(登録商標)に、pHが6.1になるまでNaOH希薄水溶液を加える。この試料を実施例6cと呼ぶ。pHが1.9、4.2、および6.1であるこれら3つの分散体試料を、ITO/ガラス基体上にスピンコーティングし、最初に乾燥させて水を除去する。乾燥させたフィルムの仕事関数(Wf)を、周知の技術である紫外光電子分光法(UPS)によって測定する。Wfエネルギーレベルは、He I(21.22eV)放射線を使用して減圧レベルの位置に関する2次電子カットオフ(second electron cut−off)から求めた。表1より、pH1.9のPEDOT−ナフィオン(Nafion)(登録商標)の仕事関数(Wf)が、比較例Cで示したpH1.8のバイトロン−P(Baytron−P)の値よりも高いことが分かる(5.9eV対5.1eV)。pHが4.2および6.1ではWfがそれぞれ5.5eVおよび5.3eVに減少するが、そのWfは3つのpH値におけるバイトロン−P(Baytron−P)よりもはるかに高い。この比較は、PEDOT−ナフィオン(Nafion)(登録商標)が、バイトロン−P(Baytron−P)よりもはるかにpHの影響が少なく、高pHにおいても依然として高いWfを維持することを明確に示している。
【0222】
【表1】

【0223】
(比較例D)
この実施例では、導電性ポリ(3,4−ジオキシエチレンチオフェン)/フルオロポリマー酸ではないポリスチレンスルホン酸の水性分散体であるバイトロン−P(Baytron−P)(登録商標)AI4083(ロット番号CHDSPS0006;固形分1.48%、pH=1.8)の仕事関数に対するpHの影響を示す。
【0224】
ドイツのレーバークーソンのH.C.スタルク(H.C.Starck,GmbH,Leverkuson,Germany)のバイトロン−P(Baytron−P)AI4083は、PEDOT−PSSA、すなわちポリ(3,4−ジオキシ−エチレンチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)である。80gのバイトロン−P(Baytron−P)AI4083に、それぞれ4gのレバチット(Lewatit)S100およびMP 62 WSを20分かけて加えた。レバチット(Lewatit)(登録商標)S100は、ペンシルバニア州ピッツバーグのバイエル(Bayer,Pittsburgh,PA)の商標名であり、これは架橋ポリスチレンのスルホン酸ナトリウム塩である。レバチット(Lewatit)(登録商標)MP62 WSは、ペンシルバニア州ピッツバーグのバイエル(Bayer,Pittsburgh,PA)の商標名であり、これは架橋ポリスチレンの第3級/第4級アミンの遊離塩基/塩化物である。バイトロン−P(Baytron−P)中の樹脂は、VWR #417濾紙(40μm)で濾過することによって除去した。pHを測定すると2.2であり、1.0MのNaOH水溶液を加えることでpHを3.95に調整した。この試料の半分を比較例D−a(表2参照)と呼ぶ。残りの半分は、さらに1.0MのNaOH溶液でpH7に調整した。この試料を比較例D−bと呼ぶ。
【0225】
比較例D−aおよびD−bおよびAI4083をITO/ガラス基体上にスピンコーティングし、最初に乾燥させて水を除去した。乾燥させたフィルムの仕事関数(Wf)を紫外光電子分光法(UPS)によって測定した。Wfエネルギーレベルは、He I(21.22eV)放射線を使用して減圧レベルの位置に関する2次電子カットオフから求める。これらのデータは、入手した状態のバイトロン−P(Baytron−P)は仕事関数が5.1eV(電子ボルト)と低い値であり、pHが4および7に増加すると4.7eVに減少することを示している。この比較例は、バイトロン−P(Baytron−P)は低pHにおいては高仕事関数導電性ポリマーではなく、pHが増加するとその機能が低下することを示している。
【0226】
【表2】

【0227】
(実施例7)
この実施例では、ポリ(テトラフルオロエチレン/パーフルオロエーテルスルホン酸)であるナフィオン(Nafion)(登録商標)を強得ることによって、バイトロン−P(Baytron−P)(登録商標)AI4083の仕事関数が増加することを示す。
【0228】
バイトロン−P(Baytron−P)(登録商標)AI4083(ロット番号CHDSPS0006;固形分:1.48%、pH=1.77)を使用してナフィオン(Nafion)(登録商標)とのブレンドを形成した。AI4083は、ドイツのレーバークーゼンのH.C.スタルク(H.C.Starck,GmbH,Leverkusen,Germany)のPEDOT/PSSAである。PEDOT/PSSAの間のw/w比は1:6である。ブレンドに使用したナフィオン(Nafion)(登録商標)は、EWが1050の水性コロイド分散体であり、以下のように作製した。最初に、温度が約270℃であることを除けば米国特許公報(特許文献11)の実施例1パート2の手順と類似の手順を使用して25%(w/w)のナフィオン(Nafion)(登録商標)を作製した。次に、このナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体を水で希釈して、本発明で使用するための12.0%(w/w)分散体を形成した。
【0229】
330.94gの上記ナフィオン(Nafion)(登録商標)を滴下してフラスコ中の1269.59gのバイトロン−P(Baytron−P)(登録商標)と混合しながら、マグネチックスターラーで撹拌した。添加終了まで約5時間を要した。この結果得られた分散体は3.66%の固形分を含有し、そのナフィオン(Nafion)(登録商標)/PEDT/PSSAの当量比は2.0/1.0/4.6であった。この混合物を、8,000psiの圧力を使用してマイクロフルイダイザー・プロセッサー(Microfluidizer Processor)M−110EH(米国マサチューセッツ州のマイクロフルイディクス(Microfluidics,Massachusetts,USA))でさらに処理した。第1のチャンバーと第2のチャンバーの直径はそれぞれ200μm(H30Zモデル)、および87μm(G10Z)であった。1回のパスでPSCが693,000から約240,000に減少した。マイクロ流動化した混合物から、導電率が7.7×10-6S/cmのフィルム(90℃で40分間焼き付けした)が得られた。
【0230】
底部にモノプラス(Monoplus)S100および上部にMP 62 WSを充填した100mLのカラムに、上記のマイクロ流動化した分散体の一部を通した。これらの2つの樹脂は、最初別々に、水に色が残らなくなるまで脱イオン水で洗浄した。樹脂で処理した分散体のpHは1.98であり、導電率が1.4×10-5S/cmのフィルム(90℃で40分間焼き付け)が得られる。数滴の分散体を、ITO/ガラス基体上にスピンコーティングし、最初に乾燥させて水を除去した。乾燥させたフィルムの仕事関数(Wf)を紫外光電子分光法(UPS)によって測定すると5.8eVであった。この仕事関数は、ブレンドの配合物中に使用したバイトロン−P(Baytron−P)よりもはるかに高い値である。
【0231】
(実施例8)
この実施例では、スルホン酸の存在下で1,1−ジフルオロエチレン(「VF2」)および2(1,1−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)アリルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルフルオリド(「VF2−PSEBVE」)から変換させて製造したポリアニリン高仕事関数組成物を示す。VF2−PSEBVEスルホン酸は、有機溶剤でぬらすことができる表面を形成する。
【0232】
(成分の構造および用語集)
【0233】
【化22】

【0234】
400mLのハステロイ(Hastelloy)C276反応容器に、160mLのバートレル(Vertrel)(登録商標)XFと、バートレル(Vertrel)(登録商標)XF中のHFPO二量体過酸化物の20重量%溶液4mLと、143gのPSEBVE(0.42mol)とを投入した。この容器を−35℃まで冷却し、−3PSIGまで減圧し、窒素をパージした。この減圧/パージのサイクルをさらに2回繰り返した。次にこの容器に29gのVF2(0.45mol)を加えた。容器を28℃まで加熱すると、圧力が92PSIGまで増加した。反応温度を28℃で18時間維持すると、圧力が32PSIGまで低下した。容器に通気し、未精製の液体材料を回収した。バートレル(Vertrel)(登録商標)XFを減圧除去して、110gの所望のコポリマーを得た。
【0235】
上記で調製したスルホニルフルオリドコポリマーのスルホン酸への変換は、以下の方法で行った。20gの乾燥ポリマーと5.0gの炭酸リチウムとを100mLの乾燥メタノール中で12時間還流させた。この混合物を室温まで冷却し、すべての残留固形分を濾過により除去した。メタノールを減圧除去して、ポリマーのリチウム塩を単離した。次に、このポリマーのリチウム塩を水に溶解させ、水に色が残らなくなるまで水で十分に洗浄したプロトン酸交換樹脂であるアンバーリスト(Amberlyst)15を加えた。この混合物を撹拌し、濾過した。濾液に新しいアンバーリスト(Amberlyst)15樹脂を加え、再び濾過した。このステップをさらに2回繰り返した。次に、最終濾液から水を除去した後、固形分を真空オーブン中で乾燥させた。次に、このVF2/PSEBVE酸ポリマーを水中に溶解させて、以下に示すアニリンとの重合用の4.39%(w/w)溶液を調製した。
【0236】
78.61gの脱イオン水および45.38gの99.7%n−プロパノールを、室温において1,000mLの反応器中に直接量り取った。次に、0.0952mL(1.2mmol)の37重量%HClおよび0.6333mL(7.0mmol)のアニリン(蒸留済み)をピペットで上記反応器に加えた。この混合物を、U字型撹拌棒が取り付けられ100RPMに設定されたオーバーヘッドスターラーで撹拌した。5分後、53.60gのVF2/PSEBVEスルホン酸ポリマー(5.80mmol)4.39%水溶液を、ガラス漏斗からゆっくりと加えた。この混合物を200rpmにおいてさらに10分間均質化した。シリンジ注入ポンプを使用して、20gの脱イオン水中に溶解させた1.65g(7.2mmol)の過硫酸アンモニウム(99.99+%)を6時間かけて反応物質に滴下した。8分後、溶液は淡青緑色に変化した。この溶液はさらに暗青色になり、その後暗緑色に変化した。APSを加えた後、混合物を60分間撹拌し、4.68gのアンバーリスト−15(Amberlyst−15)(ペンシルバニア州フィラデルフィアのローム・アンド・ハース・カンパニー(Rohm and Haas Co.,Philadelphia,PA))陽イオン交換樹脂(32%n−プロパノール/脱イオン水混合物で複数回洗浄した後、窒素下で乾燥させた)を加え、200RPMで終夜撹拌を行った。翌朝、鋼製メッシュで混合物を濾過した。アンバーリスト(Amberlyst)15で処理した分散体のpHは1.2であった。pHが1.2から5.7に変化するまで、この分散体の一部をアンバージェット(Amberjet)4400(OH)(ペンシルバニア州フィラデルフィアのローム・アンド・ハース・カンパニー(Rohm and Haas Co.,Philadelphia,PA))陰イオン交換樹脂(32%n−プロパノール/脱イオン水混合物で複数回洗浄した後、窒素下で乾燥させた)とともに撹拌した。樹脂を再び濾過すると、濾液は安定な分散体となった。
【0237】
数滴のこのPani分散体をITO/ガラス基体上にスピンコーティングした。このITO上の乾燥フィルムの仕事関数を紫外光電子分光法によって測定すると5.5eVであった。この仕事関数はpH5.7においては高い値である。
【0238】
(実施例9)
この実施例では、高エネルギーポテンシャル二重層を使用したポリマー発光ダイオードを示す。この二重層は、第1の層のポリピロール/ナフィオン(Nafion)に第2の層のHT−1をスピンコーティングしたものからなる。
【0239】
実施例4に示されるように、高pHのポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)上にトップコーティングされたHT−1は高エネルギーポテンシャルを有する。この二重層の表面を使用し、赤色発光材料を使用してポリマー発光ダイオードを作製した。十分な体積のポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)水性分散体を0.45μmHVフィルターで濾過し、発光ダイオードを製造するためのガラス/ITOバックライト基体(30mm×30mm)上にスピンコーティングした。100〜150nmのITO厚さを有する各ITO基体は、3枚の5mm×5mmピクセルと、1枚の発光用の2mm×2mmピクセルとからなる。ITO基体上にスピンコーティングした後、得られたフィルムを最初に空気中120℃で10分間焼き付けした。焼き付けしたフィルムの厚さは12nmであり、仕事関数は実施例3に示すように5.3eVである。このポリピロール/ITO基体に、HT−1の架橋性ポリマー溶液(トルエン中0.4%w/v)を2,000RPMで60秒間スピンコーティングした。次にこの架橋性ポリマーを窒素中198℃で30分間焼き付けして正孔輸送層(HTL)を形成した。このフィルムの厚さを測定すると約20nmであった。次に、このHTLに赤色エレクトロルミネッセンスポリマーの1%(w/v)溶液(トルエン中)をトップコーティングし、続いて、窒素中130℃で30分間焼き付けして、70nmの厚さのフィルムを形成した。焼き付け後、3nmのBaと250nmのAlとからなるカソードを4×10-6Torr未満の圧力で熱蒸着した。デバイスの封入は、UV硬化性エポキシ樹脂を使用してデバイスの裏面上にスライドガラスを接合することによって行った。
【0240】
表2に、200、500、1,000ニト(Cd/m2)における発光デバイスの効率および電圧、ならびに1,200ニト〜1,000ニトの寿命をまとめている。これらのデータから、高表面エネルギーポテンシャル二重層は、比較例Eで示される高仕事関数正孔注入層を下に有さない正孔輸送層よりもデバイス効率が優れており、低電圧であり、はるかに寿命が長いことが分かる。
【0241】
(比較例E)
この実施例では、低エネルギーポテンシャルの正孔輸送層を使用して作製したポリマー発光ダイオードを示す。
【0242】
比較例Bに示されているように、高仕事関数正孔注入層を下に有さなければ、HT−1は低表面エネルギーポテンシャルを有する。ポリマー発光ダイオードを作製するために、ITO基体にHT−1のみをスピンコーティングした。各層の順序、焼き付け温度、および層の厚さを含めて実施例9に記載のデバイス製造手順に厳密に従った。デバイス効率および寿命を表2にまとめている。HT−1層の下にポリピロール/ナフィオン(Nafion)層を有さないITOは、実施例9に示した二重層よりもデバイス効率が低く、高電圧であり、寿命がはるかに短いことがはっきりと分かる。
【0243】
【表3】

【0244】
(比較例F)
この比較例では、ITOの仕事関数を示す。
【0245】
実施例および比較例の説明に使用したITO基体は、UV−オゾンで10分間の処理、あるいは0.3Torrおよび300ワットにおいて酸素/プラズマで15分間の処理のいずれかを行った。処理したITO試料は、ITOがケルビンプローブチップに面するようにケルビンプローブセルに取り付けた。UV/オゾン処理ITOとプローブチップとの間の接触電位差(CPD)を測定すると0.805ボルトであった。次に、表面の仕事関数を、金フィルムについてあらかじめ測定したCPD値0.69ボルトに基づいて計算すると、4.9eVであった。酸素−プラズマ処理ITOとプローブチップとの間のCPDを測定すると1.17ボルトの高さであった。次にこのITO表面の仕事関数を、金フィルムについてあらかじめ測定したCPD値0.69ボルトに基づいて計算すると、5.2eVであった。この仕事関数は安定せず、空気またはトルエンなどの溶媒に曝露すると少なくとも0.2eV減少した。この比較例より、正孔輸送層上に高エネルギーポテンシャルを形成するにはITO単独では不十分であることが分かる。
【0246】
概要または実施例において前述したすべての行為が必要なわけではなく、特定の行為の一部は不要である場合があり、1つまたは複数のさらに別の行為が、前述の行為に加えて実施される場合があることに留意されたい。さらに、行為が列挙されている順序は、必ずしもそれらが実施される順序ではない。
【0247】
以上の明細書において、具体的な実施形態を参照しながら本発明の概念を説明してきた。しかし、当業者であれば、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱せずに種々の修正および変更を行えることが理解できよう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく説明的なものであると見なすべきであり、すべてのこのような修正は本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0248】
特定の実施形態に関して、利益、その他の利点、および問題に対する解決法を以上に記載してきた。しかし、これらの利益、利点、問題の解決法、ならびに、なんらかの利益、利点、または解決法を発生させたり、より顕著にしたりすることがある、あらゆる特徴が、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての重要、必要、または本質的な特徴であるとして解釈すべきではない。
【0249】
別々の実施形態の状況において、明確にするために本明細書に記載されている特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔にするため1つの実施形態の状況において説明した種々の特徴も、別々に提供したり、あらゆる副次的な組み合わせで提供したりすることができる。さらに、ある範囲において記載される値への言及は、その範囲内にあるすべての値を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1】接触角を説明する図である。
【図2】高エネルギーポテンシャル二重層組成物を有する電子デバイスの説明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5.2eVを超える仕事関数を有する正孔注入層と、
正孔輸送層と
を含むことを特徴とする二重層組成物。
【請求項2】
前記正孔注入層が、電荷移動錯体および導電性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの導電性材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の二重層組成物。
【請求項3】
前記電荷移動錯体が、テトラチアフルバレンまたはテトラメチルテトラセレナフルバレンを有するテトラシアノキノジメタン錯体、金属−テトラシアノキノジメタン錯体、および液体媒体から堆積された半導体酸化物からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の二重層組成物。
【請求項4】
前記導電性ポリマーが、チオフェン類、セレノフェン類、テルロフェン類、ピロール類、アニリン類、および多環式芳香族類からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーから形成されることを特徴とする請求項2に記載の二重層組成物。
【請求項5】
前記半導体酸化物が、少なくとも1つのフッ素化酸ポリマーとともに堆積されることを特徴とする請求項3に記載の二重層組成物。
【請求項6】
前記導電性ポリマーが少なくとも1つのフッ素化酸ポリマーでドープされることを特徴とする請求項4に記載の二重層組成物。
【請求項7】
前記フッ素化酸ポリマーが、過フッ素化炭素主鎖および次式:
−(O−CF2−CFRf3a−O−CF2−CFRf4−SO3−E5
(式中、Rf3およびRf4は独立してF、Cl、および1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基からなる群から選択され;a=0、1または2であり;E5はHである)
で表される側鎖を有することを特徴とする請求項5に記載の二重層組成物。
【請求項8】
前記フッ素化酸ポリマーが、過フッ素化炭素主鎖および次式:
−(O−CF2−CFRf3a−O−CF2−CFRf4−SO3−E5
(式中、Rf3およびRf4は独立してF、Cl、および1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基からなる群から選択され;a=0、1または2であり;E5はHである)
で表される側鎖を有することを特徴とする請求項6に記載の二重層組成物。
【請求項9】
前記正孔輸送層が架橋性であることを特徴とする請求項1に記載の二重層組成物。
【請求項10】
前記正孔注入層の仕事関数が5.3eVを超えることを特徴とする請求項1に記載の二重層組成物。
【請求項11】
前記正孔注入層の仕事関数が5.5eVを超えることを特徴とする請求項1に記載の二重層組成物。
【請求項12】
pHが2.0を超える組成物から作製され、5.0eVを超える仕事関数を有する正孔注入層と、
正孔輸送層と
を含むことを特徴とする二重層組成物。
【請求項13】
アノードを有し、
前記アノードが、5.2eVを超える仕事関数を有する正孔注入層と接触し、
前記正孔注入層が正孔輸送層と接触している
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項14】
前記正孔輸送層が、カルバゾール、トリアリールアミン類、トリアリールメタン、フルオレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される正孔輸送基を有する少なくとも1つのポリマーを含むことを特徴とする請求項3に記載の二重層組成物。
【請求項15】
前記正孔輸送層が、カルバゾール、トリアリールアミン類、トリアリールメタン、フルオレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される正孔輸送基を有する少なくとも1つのポリマーを含むことを特徴とする請求項4に記載の二重層組成物。
【請求項16】
前記正孔輸送層が、4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン;4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン;1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン;N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン;テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン;α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン;p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン;トリフェニルアミン;ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン;1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン;1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン;N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン;ポルフィリン系化合物、および式XVI:
【化1】

(式中、
Arはアリーレン基であり;
Ar’およびAr”は独立してアリール基から選択され;
24〜R27は独立して水素、アルキル、アリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アリールオキシ、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルチオ、ホスフィノ、シリル、−COR、−COOR、−PO32、−OPO32、およびCNからなる群から選択され;
Rは、水素、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、およびアミノからなる群から選択され;
mおよびnは、それぞれ独立して0〜5の値を有する整数であり、
m+n≠0である)
によって表される化合物からなる群から選択される非ポリマー材料を含むことを特徴とする請求項3に記載の二重層組成物。
【請求項17】
前記正孔輸送層が、4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン;4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン;1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン;N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン;テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン;α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン;p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン;トリフェニルアミン;ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン;1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン;1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン;N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン;ポルフィリン系化合物、および式XVI:
【化2】

(式中、
Arはアリーレン基であり;
Ar’およびAr”は独立してアリール基から選択され;
24〜R27は独立して水素、アルキル、アリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アリールオキシ、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルチオ、ホスフィノ、シリル、−COR、−COOR、−PO32、−OPO32、およびCNからなる群から選択され;
Rは、水素、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、およびアミノからなる群から選択され;
mおよびnは、それぞれ独立して0〜5の値を有する整数であり、
m+n≠0である)
によって表される化合物からなる群から選択される非ポリマー材料を含むことを特徴とする請求項4に記載の二重層組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−534831(P2009−534831A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506465(P2009−506465)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/014551
【国際公開番号】WO2007/120143
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】