説明

高エネルギー超音波抽出

本発明は固体材料から化学化合物を水性抽出する方法および装置を説明し、固体材料は放射状または収束された高エネルギー超音波を放射する浸漬された超音波金型の周りを流れる抽出液体相中に捕捉される。抽出された材料の顕著な増加および抽出時間の短縮が観察される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は好ましくは浸漬された超音波金型を用いて材料から価値のある化学成分の液相抽出を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
木材の樽は液体および食品の一般的な容器として歴史的に重要な地位を占めてきた。しかし、材料取り扱い方法および現代の状況下におけるより実際的な他の構造材料の開発によって、ワインおよび蒸留酒の熟成を除いて、樽はほぼ完全に置き換えられてきた。
【0003】
オークの樽に貯蔵されたワインおよび蒸留酒は魅力的で好ましい官能的な特性、複雑で官能的な品質を獲得する。このため、多くの優秀な赤および白テーブルワインの製造はオーク樽の使用を伴う。世界中のワイン熟成に用いられるほとんどの樽は190〜500リットルの容量である。テーブルワイン用には225リットルが最も一般的である。
【0004】
オーク材はセルロース、ヘミセルロース、タンニン、およびリグニンを含み、最後の3つは木材との接触中にワインに影響を与える。ヘミセルロース(無臭)は間接的に影響を与え、樽板の加熱はそれらを化学的に変質させ、他の匂い化合物の基にする。木材から遊離されたタンニン(不揮発性)は加水分解性であり、エラグ酸および没食子酸のポリマーから構成される。樽に貯蔵された後のワイン中の量は100mg/Lに達することができる。溶解性リグニンは部分的に芳香族アルデヒドに分解され、酸化によって対応するフェノール酸を形成することができる。新しいオーク樽の寄与は、主として木材成分の揮発性フェノール(200種を越える)画分の抽出に依存する。
【0005】
単純な拡散によってワインに入る重要な化合物は、感覚の刺激に最も重要なココナッツ状芳香を有するシスおよびトランス−b−メチルオクタラクトン(オークラククトンはフルフラールによって、よりキャラメル状の匂いに変化させることができる)、アルデヒド(特にヴァニリン)、ヴァニリンの匂いを増加させるフェノリックケトン、他の揮発性フェノリックケトン、オイゲノール(香辛料のような丁子およびカーネーションの芳香)などの揮発性フェノール、グアヤコールおよびその誘導体(燻煙および薬品のような匂い)、焼成によって誘導されたフラン誘導体、および他の化合物、およびノルイソプレノイド(B−イオノンを含んで約30種)である。
【0006】
焼成は、ワイン中に(i)グアヤコール(燻煙および薬品のような匂い)、4−メチルグアヤコール(燻煙および丁子の匂い)、ヴァニリン(ヴァニラ)、シリンガアルデヒド、コニフェルアルデヒド、シナプアルデヒドおよびオークラクトン(木材およびココナッツ状)の量を増加させ、(ii)オーク中の多糖類(約50%)はフルフラール、マルトールおよびシクロテンを増加させ、甘味とトーストのような芳香を与える。
【0007】
アメリカオークはフランスオークよりも多くのオークラクトンおよびノルイソプレノイド成分を含む。
【0008】
新しい大樽(300L)中で、木材中に浸透するワイン1mmにつき約11gのオークが抽出される。最初の1mmは約1週間で浸透する。ワイン1リットルあたりの樽表面積基準で、樽の各1mmに浸透するワインは、200Lの樽で約7.6gの木材を抽出し、500Lの樽では5.6gの木材を抽出する。
【0009】
新しい225Lの樽は約2ヶ月の間に0.5mmの浸透深さで3.8gの木材抽出に貢献することができる。試飲結果に基づき、これはワインの試験可能な差を生じるのに必要な量の約3〜10倍である。より長い期間では6mmまで浸透することができる。
【0010】
これは225L樽の木材46gの抽出を意味する。これはほとんどのワインの芳香の最小検出可能なレベルの約100倍を与え、または樽は100回の装填と取り出しが可能であり、その全てのワインに検出可能な芳香を与える。
【0011】
ワイン中へのオーク成分の拡散は、大きな分子は拡散に長い時間を要するので、表面が消耗するといくらか変化する。しかし、半浸透性木材系を拡散することのできる分子は最終的に抽出され、樽を長期間連続して使用した後でさえ、十分な時間その中に貯蔵されたワインに検出可能なオークの芳香を与えることは驚くべきことではない。
【0012】
従来、ワインが木材の特性を取得する唯一の方法はオーク製の樽またはタンクに接触することによるものであった。しかし、過去10年間のオーク樽の購入に伴うコストが上昇し、オークの利点を保ちたい経済観念のあるワイン製造者はオークの代替、オークの置き換え、または選択肢としてのオークに変わりつつある。オークの代替は実際には樽の形にしないオーク材である。さまざまな選択肢のための専門用語は供給者によるが、基本的な選択は多くの長さと焼成レベルの樽板および挿入板、ブロック、立方体、「ドミノ」、チップ、削りくず、オーク棒の鎖、およびオーク粉を含む。オークの品質はオーク樽と同じであるがコストが異なる。
【0013】
材料から油、香料、顔料、医薬品または栄養学的化合物などを水性および化学的に抽出することは広く行われている。それらの工程の速度および収率は製造コストに重要な影響を与える。
【0014】
農業生産は多量の廃棄物を放出し、多量の高価値成分および価値のある物質である食物繊維を含むことが判る。食物製品からの高価値成分の抽出は生産者に追加の収入を与えることができる。従来の抽出は多量の有機化学品の消費、長い抽出時間および低い収率を含んで多くの問題を有する。
【0015】
いくつかの材料について、超音波振動を用いて材料と抽出剤の間の接触を促進する抽出工程を改善する試みが行われた。
【0016】
欧州特許第583200号は、超音波トランスデューサを取り付けた抽出カラムでマツヨイグサ油を抽出する方法を開示する。
【0017】
米国特許第5859236号には抽出された液体が超音波攪拌される微小結晶セルロースの抽出工程が開示される。
【0018】
これらの先行特許は波振動を生成する低出力超音波技術が小さなバッチ環境で抽出を助けたことを示す。しかし、低出力超音波技術は連続フロー工程には使用することができない。この場合、超音波エネルギー密度が低く、超音波滞留時間が短く、容積/生産速度は高い。
【0019】
また、既存の特許に用いられる技術は、発生器およびトランスデューサの電気的/電子的設計仕様が物理的および化学的条件(例えば、流量、圧力、温度、気体混入、液体の蒸気圧、表面張力)を変化させる移動液体を処理するようには設計されていないので、移動液体または媒体上では故障、過熱、電力過負荷なしに用いることができない。低出力超音波は静止状態(非移動)の小さなバッチ容積のためにのみ設計された。低出力超音波を用いる経験は、コスト効率が産業的に魅力がなく、あるいは技術的/経済的に実現性がなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、かつてない高い効率で材料から化学成分を抽出する方法を提供することである。
【0021】
本発明の目的は、従来技術の不利および欠点を克服し、あるいは少なくとも改善することである。
【0022】
本発明の他の目的および利点は、本発明の実施形態が図示および例として開示される添付図面と共に以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によれば、本発明を制限するものと判断すべきではないが、材料から化学化合物を水性抽出する方法が提供され、抽出液体相に捕捉された材料は、0.01〜1000W/cm(または0.01〜1000W/cm)の範囲のエネルギー強度でオーク流体媒体中に超音波を放射しまたは集束する浸漬された超音波金型の周りを流れるが、最も好ましくは、工程は0.1〜100W/cmまたは0.01〜100W/cmで効率的に働く。
【0024】
高エネルギーの波は処理媒体中に高エネルギー空洞、機械的衝撃波、微小流れ、高エネルギー振動および高エネルギー圧力波を形成する。
【0025】
液体相に浸漬された超音波金型の使用は、材料の内部への超音波の浸透を増加させる。これは、トランスデューサが鋼製容器/チャンバの外側に取り付けられ/ボルト締めされ/溶接された従来技術と対照的である。この効果は液体中に低エネルギーで低効率の定在波/静止波を形成し、滞留時間が非常に長い(>1時間)場合だけ、外側表面のみ抽出を可能にする。定在波/静止振動波に伴うエネルギー強度は0.0001ワット/cmの領域だけである。
【0026】
さらに、従来技術はしばしばバッチ式処理に制限され、連続流抽出ではなかった。
【0027】
高強度超音波放射波または集束エネルギーの使用は表面上およびオーク材料の構造中に微小流れ効果/空洞効果を形成して、成分を取り出し/遊離させ、水性浸透を高める。対照的に、トランスデューサが鋼製容器/チャンバの外側に取り付けられ/ボルト締めされ/溶接される概念を用いる従来技術は、材料中に低エネルギーで低効率の定在波/静止波を形成し、水性浸透および成分取り出しを促進する微小流れ効果を生まない。対照的に、液体流の中に高強度超音波金型を導入すると、0.01〜1000W/cmの強度を形成し、高速度(780km/hr)の微小流効果、高い水性浸透および成分取り出しを可能にする。
【0028】
本発明は材料から物質を抽出するために低周波数の超音波(16kHz〜100kHz)を用い、好ましい周波数は20〜30kHzである。本発明の方法を用いて広範囲の物質を抽出することができ、材料内に存在する着色剤、香料、および医薬品化合物が含まれるが、それらに限定されない。
【0029】
超音波周波数および超音波金型設計および流通セル設計は抽出される材料に適合する必要がある。有機物の装填程度および材料の構造の種類は超音波金型設計の種類を決定する。特定の超音波金型の設計はより大きな超音波/空洞エネルギーの浸透、材料へのより良好なエネルギーの結合、およびエネルギー効率の改善を可能にし、抽出される材料からより多くの成分の抽出、水性浸透および成分の遊離をもたらす。
【0030】
好ましくは、本発明を適用して、水性溶剤、有機溶剤またはこの2つの混合物を用いるブドウの皮からの着色剤および香料の抽出、ブドウの皮からのアントラシアニン、ブドウの種からの酸化防止剤の抽出を含むことができる。
【0031】
例えば、低い有機物装填によるオークプロセスまたは超音波エネルギー吸収率の高い製品は、カスケード式設計の放射状超音波金型を用いる。対照的に、有機物装填が高く、または超音波吸収係数の低い工程は、伝播距離が長く、有機物装填の高い製品の流れまたは超音波吸収係数の小さな製品に対して浸透能力の高い超音波を生成する、長さ(波長)対直径の係数/比の大きな放射状超音波金型を用いる。容器/チャンバ/管の外側に熔接/ボルト締めされたトランスデューサを用いる従来技術のデバイスは、特別な種類の有機物装填または超音波吸収特性の異なる製品用には設計されなかった。
【0032】
水性浸透および成分抽出の性能の向上は、異なる種類の製品のための自動周波数走査システムを用いることによって達成される。例えば、オークからの化合物の抽出において、有機物の装填(濃度、速度)が高いほど、多くの種類のオーク表面/組織/構造がそのシステム/オーク製品の共鳴周波数を決定する。超音波共鳴周波数は超音波ユニットが最大のエネルギー効率を与える周波数である。
【0033】
また、本発明は、特定の製品の共鳴周波数に固定し、次いで0.001秒ごとに処理プロセス全体を新しい共鳴周波数のために再走査する超音波システムを提供する。共鳴周波数から10Hzほどの小さな変動で追跡する共鳴周波数でなければ、エネルギー効率は10〜40%程度低下する。これは水性浸透、成分の抽出、および成分の遊離における効率を顕著に低下させる。
【0034】
例えば、レタスの共鳴周波数は20,350Hzであり、ニンジンは20,210Hzの共鳴周波数を有する。容器/チャンバ/管の外側に熔接/ボルト締めされたトランスデューサを用いる従来技術のデバイスは、特定の種類のオーク製品のために自動共鳴周波数追跡システムを備える設計ではなく、製品は正しい共鳴周波数と最大出力効率で処理することができない。
【0035】
抽出には、高出力で振幅の大きな超音波(0.001W/cm〜1000W/cm)および1ミクロン変位〜500ミクロン変位(好ましい振幅範囲は20〜60ミクロンである)を用いることが好ましい。従来技術のデバイスはこの種のエネルギーと振幅レベルを生成することが不可能であった。
【0036】
本発明はオーク製品から成分を抽出するための溶媒として水を強化するのに特に有用である。高速度の微小流れ、高いエネルギー空洞を生成する、高出力でエネルギー効率の高い集束および放射状システムを用いることによって、水は疎水性表面を通ってオーク材料の組織/構造中に浸透し、成分の取り出し/遊離が可能になる。
【0037】
このように本発明のシステムを用いて、有機溶媒は完全にまたは部分的に水と置き換えることができ、ヘキサンなどの溶媒の使用から生じる安全問題が低減される。
【0038】
しかし、本発明はオーク製品などの製品から化合物を抽出するために、水と有機溶媒(例えば、水とエタノール)の混合物、または有機溶媒単独(例えば、アルコール、ヘキサン、アセトン)と組み合わせた超音波の使用にも適用することができる。また、低周波数超音波の使用は、オーク材料から成分および化合物を抽出するために高圧下の超臨界流体(例えば、液体CO)と組み合わせることもできる。
【0039】
超音波トランスデューサは超臨界液体を含む既存の高圧容器に取り付けることができる。
【0040】
本発明の別の態様はオーク製品から成分、化合物を抽出するために緩やかな温度(0℃〜60℃)と組み合わせた低周波数/高強度の超音波を用いることである。超音波エネルギーと熱エネルギーの間の相乗効果は抽出速度と抽出収率を高める。
【0041】
本発明の別の態様はオーク製品から成分、化合物を抽出するために圧力(0.5〜10バール圧力、好ましくは2〜4バール)と組み合わせた低周波数/高強度超音波を用いることである。この超音波エネルギーと圧力の相乗効果は、特に流体が固体含有物を多く含むとき、超音波の媒体への結合とインピーダンス整合を大きく高める。波と製品の結合の向上は抽出速度と抽出収率を向上させる。
【0042】
好ましい装置設計において、本発明は高エネルギーの超音波を放射する放射状超音波金型に関する。しかし、超音波金型の周囲に高濃度の局在化空洞泡を生成する大振幅集束超音波金型など他の超音波金型を用いることができる。
【0043】
本発明による超音波金型とフローセルの構成は、16kHz〜100kHzの範囲の周波数に微調整することができ、0.01〜1000W/cmのエネルギー強度を生成する液相中に浸漬された放射状超音波金型を使用することに基づく。
【0044】
1つの構成は、開放タンク、溝またはとい内に長手方向または横方向に取り付けられた放射状超音波金型を含む。反射器シールドは基底部に配置されて超音波エネルギーを製品流路中に反射およびまたは集束する。
【0045】
他の適切な構成は、流通セルに固定された集束または放射状超音波金型を用い、水/オーク製品は超音波金型の表面に直接または横断して流れる。滞留時間は超音波金型からの微小流れ、流量、トランスデューサ/超音波金型の出力およびサイズ、直列および並列トランスデューサの数、および容器の幾何形状を調節することによって制御することができる。
【0046】
本発明はオーク系材料からの化合物の高出力超音波抽出に関するが、上述の技術は医薬品、酸化防止剤、油、香料、着色剤、生物活性化合物、食糧材料の抽出のための他の園芸/農業系材料(例えば、果物、野菜、穀類、牧草、種子)にも適用することができる。
【0047】
好ましくは、本発明は収率と工程速度を高める超臨界流体/抽出技術(液体COなど)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0048】
以下、本発明の使用を、添付図面を参照し例示としてより完全に説明する。
【図1】チャネルに長手方向に固定された本発明の放射状超音波金型を示す図である。
【図2】閉じた流通セル用の本発明の横方向超音波金型を示す図である。
【図3】回転ドラム抽出器中の本発明の集束超音波金型を示す図である。
【図4】閉じた流通セル中の本発明の放射状超音波金型を示す図である。
【図5】水中で10秒のオーク材料からの化合物の抽出について、本発明の結果を示す図である。
【図6】水中で30秒のオーク材料からの化合物の抽出について、本発明の結果を示す図である。
【図7】12%エタノール/水中で10秒のオーク材料からの化合物の抽出について、本発明の結果を示す図である。
【図8】集束の100%および30%振幅での異なる超音波印加時間で抽出されたテーブルブドウの色スペクトルを示す図である。
【図9】放射状の100%振幅での異なる超音波印加時間で抽出されたテーブルブドウの色スペクトルを示す図である。
【図10】異なる時間攪拌された抽出されたテーブルブドウの色スペクトルの対照群を示す図である。
【図11a】ワイン産業において品質管理用の色分析に用いられた2つの標準波長での色吸収である。データは図8〜10から抽出された。
【図11b】ワイン産業において品質管理用の色分析に用いられた2つの標準波長での色吸収である。図11bでは色強度を表し、各波長での吸収の和である。データは図8〜10から抽出された。
【図12】異なる超音波印加時間後の図8〜10の抽出のpHを示す図である。
【図13】異なる実験条件についてレモンからの抽出を示す図である。
【図14】重量%として茶からの抽出可能な固体を示す図である(F=集束、R=放射状、100%および25%=振幅)。
【図15】抽出された茶からのUV−可視吸収を示す図である(F=集束、R=放射状、100%および25%=振幅)。
【図16】抽出されたコーヒーからのUV−可視吸収を示す図である(F=集束、R=放射状、100%および25%=振幅)。
【図17】オークチップから水および12%エタノール/水中への抽出を示す図である(F=集束、R=放射状、100%および25%=振幅)。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明のシステムは電源と、電気エネルギーを機械的振動エネルギーに変換するトランスデューサを含み、機械的振動エネルギーは超音波金型5によって液体抽出相系に伝達される。超音波金型5は用途に応じて放射状波、静止波または集束放射を提供することができる。超音波金型材料はチタンまたはセラミック、鋼、鋳造合金、またはガラスから作ることができる。
【0050】
トランスデューサシステムはPZT(ピエゾセラミックトランスデューサ)、ターフェノール−D磁気歪トランスデューサ、またはニッケル−鉄−バナジウム磁気歪材料とすることができる。
【0051】
ここで、十分理解できるように、製品の移動にコンベヤーが用いられるとき、浸漬された本発明の超音波金型5を用いることができる。さらに、低有機物液体中で用いるためにカスケード式超音波金型とすることができ、高有機物装填液体中の浸透を高めるために長さ対直径の比の大きな放射状超音波金型とすることができよう。
【0052】
超音波の印加は範囲(10kHz〜100kHz)、強度(0.01W/cm〜1000W/cm)および振幅(1ミクロン変位〜500ミクロン変位)である。トランスデューサ/電源は100ワット〜16000ワットの範囲の個別のエネルギーを有することができる。電源は、抽出工程中に装置が運転しているとき、ユニットが常に液体流れ12の変化による新しい共鳴周波数(最大電力出力に関する)を走査するように自動共鳴周波数追跡を含むのが好ましい。超音波金型/トランスデューサは、液体抽出相の流れ12に捕捉された固体材料を含むタンク、容器(丸、四角、楕円)、樋、パイプ、フローセル10に装着しまたは組み込むことができる。図1はチャネル11中の反射器9とともに液体抽出相7に浸漬された超音波金型5を示す。
【0053】
さらに、上述した本発明は液体COなどの超臨界流体/抽出技術と組み合わせて収率と工程速度を高めることもできる。トランスデューサは抽出管が超音波金型になるように抽出管の外側シェルに組み込むこともできる。次いで超臨界溶媒および固体基体が位置する超臨界抽出管の内部に超音波が生成される。あるいは、超音波金型は超臨界抽出管の内側のフランジを経由して内部に接続して、固体基体と超臨界流体に直接露出させることができる。
【0054】
超音波および生成された空洞は固体基体中への超臨界流体の溶媒質量の移動を助ける。この用途の例はショウガからのジンゲロールの抽出である。
【0055】
当業者には容易に理解できないことであろうが、上記発明は、茶固体の抽出、茶葉からの色彩、香り、およびポリフェノールの抽出−水性抽出、コーヒーからのカフェインの抽出、コーヒーの抽出、焙煎され挽かれたコーヒー豆全体からの香味、色彩の抽出−水性抽出、果物、果物パルプ、果物の皮など農業製品からの酸化防止剤、医薬品、生物活性物およびカロチノイドの抽出に容易に適用することができよう。
【0056】
野菜、野菜パルプ、野菜の皮およびナッツからの抽出−この例はトマトパルプまたは皮からのリコピン、ニンジンパルプおよび皮からのαおよびβカロテン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、レモンなどの柑橘果物の剥き皮からの柑橘油であろう。これは水性もしくはエタノールなどの溶媒、または水性と溶媒の組み合わせ、果物、果物のパルプ、果物の皮などの農業製品からの油の抽出とすることができよう。
【0057】
トウモロコシまたはトウモロコシ胚芽からのコーン油の抽出、大豆、オリーブ、キャノラ種、ヤシ植物およびヤシ果物/繊維、植物/花弁材料からのローズ油。これは水性またはエタノール、ヘキサン、ブタンなどの溶媒、または水性と溶媒の組み合わせとすることができよう。
【0058】
果物、野菜およびココア豆からのチョコレートなどナッツを含む農業製品からの香料の抽出、肉からのプロテインの抽出、乳製品からのレニンの抽出、テンサイまたはサトウキビからの砂糖の抽出、トウモロコシ、大豆、小麦(および他の農業材料)およびこれらの材料の繊維からのデンプンの抽出、果物および野菜系材料からのジュースの抽出。
【実施例】
【0059】
オーク香料の抽出
【0060】
40gのオークを150mlの水道水、または12%エタノール/水、または100%エタノールを用いて抽出した。サンプルを攪拌し(対照サンプル)、または10および30秒間超音波を印加し、その後液体サンプルを取り出して篩(約0.8mmメッシュ)にかけ、続いてWhatman#1フィルター紙で濾過した。濾過物の一部のサンプルを水で3.5×に希釈し、GC−MSによってオーク香料分析するためにオーストラリアワイン研究所に送った。
【0061】
結果
【0062】
同定された化学物質のGC−MSによる定量限界(希釈された抽出物中のμg/L)は、グアヤコール3.5、オイゲノール35、オークラクトン35、ヴァニリン35およびフルフラール35であった。分析したが定量限界以下であった他の化学物質は、4−メチルグアヤコール、4−エチルフェノール、4−エチルグアヤコール、および5−メチルグアヤコールであった。
【0063】
抽出データは、上記方法を用いる超音波印加が同じ抽出時間の対照サンプルに比べて望ましい化合物の抽出を増加させることを示す。
【0064】
放射状モードにおいて、12%エタノール(図5)は最も効果的であり、集束モードにおいて水(図6および7)が最も効果的であった。
【0065】
上記結果から、超音波印加はオーク香料のGC−MSによる測定でオーク香料の抽出を大きく増加させた。集束モードにおいて、水は最も効率的であり、12%エタノール中の放射状および集束は類似の効果であった。振幅を25%に低下させても香料化学物質の抽出は顕著に減少しなかった。
【0066】
異なる超音波印加方法および時間を用いる赤テーブルブドウからの色(アントシアニン)の抽出。
【0067】
10種の抽出を行った。各々150mlの脱イオン水および20個の赤テーブルブドウからの剥き皮を用いた。対照サンプルは10、60、および120秒間攪拌し、その後、pH分析のため液体サンプルを取り出し、続いてUV−可視分光計で色の測定を行った。超音波印加したサンプルは同じ時間(10、60、および120秒間)で100%の振幅であり、1つのサンプルは30%の振幅で60秒間であった。超音波印加は集束または放射状のいずれかで行った。異なる実験の組み合わせについては表1を参照されたい。対照サンプルは、pH4.3〜4.5で変動する超音波印加サンプルと線形にするためにpH4.3に調節した。全てのサンプルは濾過なしと0.2μm注射筒フィルター濾過の後に測定した。
【0068】
結果
【0069】
色強度は特定の波長で光の吸収によって測定して抽出時間の増加とともに増加する。表1、図8〜10、および対照(攪拌)と超音波印加サンプルの両方の図11を参照されたい。図8および9は同じX軸およびY軸尺度であり集束モード抽出は放射状モードよりも多くの色を抽出することが比較から明らかである。典型的にワイン産業で測定されるように、波長420と520nmの吸収の和は抽出物の色強度として定義される。これは図11bに示され、各波長での個別の吸収は図11aに示される。超音波印加がアントシアニンの抽出、したがって色強度を顕著に増加させることは明らかである。
【0070】
【表1】

【0071】
超音波印加の時間を60から120秒に増加すると吸収は2倍の増加よりも大きくなった。
【0072】
図12はサンプルのpHを示す。超音波印加時間が増加すると、おそらく果物と皮からの酸の放出の結果としてpHはわずかに低下した。存在するアントシアニンの量がおそらく装置の検出限界であったため、pHを修正しない対照品の吸収は大きな差がなかった。
【0073】
結論
【0074】
上述した方法を用いる超音波印加はブドウの皮に見出される赤い着色化学物質アントシアニンの放出を増加させる。超音波印加の時間の増加は、集束モードを用いて得られたように、色強度に正の効果を有した(図11)。振幅を30%に縮小すると抽出は予想されたように低下した。
【0075】
ニンジンからのカロテンおよびレモンとライムからのリモネンの抽出
【0076】
カロテンの抽出および分析方法
【0077】
1バッチのニンジンを食品ミキサーで混合した。混合物の30gを400Wベンチトップ装置による超音波印加または手動(対照サンプル)のいずれかによって150mlの20%エタノール水溶液に懸濁した。考慮した変数は、10、20、および30秒の時間、集束対放射状超音波モード、および放射状モードにおける100%対25%振幅であった。抽出の後、液体成分は直ちに0.8mm孔サイズのステンレススチール篩で篩にかけて取り除いた。次いで、篩にかけた液体の部分は孔サイズ0.45μmの注射筒フィルターを用いて濾過した。次いで、これを20%エタノール水混合物で6倍に希釈し、VU−可視分光計で分析した。背景サンプルは純粋な抽出溶媒の一部であった(20%エタノール水混合物)。
【0078】
レモンとライムからのリモネンの抽出および分析方法
【0079】
各果物の剥き皮を食品ミキサーで混合した。レモンについては、混合物の30gを400Wベンチトップ装置(製造者)による超音波印加または手動(対照サンプル)のいずれかによって150mlの水に懸濁した。考慮した変数は、5、10、および30秒の抽出時間、集束対放射状超音波モード、および放射状モードにおける100%対25%振幅であった。ライムについては、混合物の15gを400Wベンチトップ装置による超音波印加または手動(対照サンプル)のいずれかによって75mlの水に懸濁した。考慮した変数は、10、および30秒の時間、集束対放射状超音波モード、および放射状モードにおける100%対25%振幅であった。レモンとライムの抽出の後、液体成分は直ちに0.8mm孔サイズのステンレススチール篩で篩にかけて取り除いた。各液体サンプルに10mlのヘキサンを加えて手で30秒間激しく攪拌し、その後、それらを終日静置した。水性成分を約15℃で一夜冷却して取り除き、液体ヘキサンをデカントした。
【0080】
背景サンプルをヘキサンとして各サンプルの一部をVU−可視分光計で分析した。
【0081】
結果
【0082】
特定の波長での吸収の増加は増加した分析物の存在を示す。図1の各チャートに示される各波長について、各変数(時間、超音波モードおよび振幅)が示される。図13はレモンとライムからの抽出についての変数(時間、超音波モードおよび振幅)の効果を示す代表的な例である。
【0083】
データは上述の方法を用いる超音波印加が同じ抽出時間の対照サンプルに比較して抽出を増加させることを示す。抽出時間の増加はニンジン、レモン、およびライムの測定された抽出物を増加させる。
【0084】
茶、コーヒー、オークの抽出。
【0085】
茶およびコーヒーの方法
【0086】
各々200mlの水道水(80℃、コーヒーについては50℃で2つのデータ点を実施)および40gの茶またはコーヒーを用いて抽出を行った。サンプルは攪拌(対照サンプル)または10、20、および30秒間超音波印加し、その後液体サンプルを取り出して篩(約0.8mmメッシュ)にかけ、続いてコーヒーは0.45μmおよび茶は0.2μm孔サイズで濾過した。濾過されたサンプルの一部を直ちに取り出して、UV−可視分光計で測定する前に、茶はエタノール/水の1:1重量混合物で10×に希釈し、コーヒーは水で50×に希釈した。残りの濾過サンプルを重量測定し80℃で乾燥した。全ての抽出サンプルは、抽出液体/溶液の%として抽出可能固体の計算ができるように乾燥の前後に重量測定した。
【0087】
オークの方法
【0088】
40gのオークを150mlの水道水または12%エタノール/水のいずれかを用いて抽出した。オークチップについては12%エタノール混合物で1つの抽出時間だけを用いた。サンプルは攪拌(対照サンプル)または10、20、および30秒間超音波印加し、その後、その後液体サンプルを取り出して篩(約0.8mmメッシュ)にかけ、続いてWhatman#1濾紙で濾過した。濾過サンプルの一部を直ちに取り出して、UV−可視分光計で測定する前に抽出溶媒のいずれかで5×に希釈した。第2濾過物の一部を水で3.5×に希釈し、オーク香料のGC−MS分析に送った。
【0089】
使用したオーク粉:中間焼成した約1mm粒子サイズ
【0090】
使用したオークチップ:Heinrich Cooperage,American Oak Medium。粒子サイズは長さ約10〜18mm、幅2〜7mm、厚さ1〜2mmである。
【0091】
結果および考察
【0092】
図1および2は茶についての抽出可能固体(濾過後の溶液の固体%)および320nm波長でのUV−可視吸収を示す。図3および4はコーヒーについて茶と同じ詳細を示すが、分光は350nmである。オーク抽出は270nmでのUV−可視吸収だけを示す。
【0093】
結果
【0094】
全てのデータは、超音波印加が同じ抽出時間で対照サンプルに比べて抽出を増加させることを示す。
【0095】
方法のステップおよびシステム構成の部分または全てを改善することができる。本明細書に引用される出版物、特許出願、および特許を含む全ての参照文献は参照により本明細書に援用されている。本明細書に提供されるいかなる例および全ての例、または例示的言語(たとえば「など」)は本発明を説明するためであり、特に要求のない限り本発明の範囲の制限を提示するものではない。本発明または好ましい実施形態の本質もしくは利点に関する本明細書の記述は、制限を意図するものではなく、かかる記述によって付随する請求項が制限されるものとみなしてはならない。より一般的に、明細書中の言語は、本発明を実施するために重要な請求されていない要素を示すものと考えるべきではない。本発明は適用される法律で許されるかぎり、本出願に添付された請求項に記載された主題の修正および等価の全てを含む。さらに、上記要素の全ての変形可能な組み合わせは、本明細書に特記されない限り、または文脈によって明らかに禁忌されない限り本発明に包含される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体材料から化学化合物を抽出する方法であって、前記固体材料が液体相に浸漬された超音波金型の周りを流れる液体抽出相中に捕捉され、前記超音波金型が約0.1〜100W/cmのエネルギー強度で液体相中に超音波を放射する方法。
【請求項2】
放射される超音波が放射状または集束である請求項2記載の方法。
【請求項3】
前記方法が前記液体相の脱気をさらに含む請求項3記載の方法。
【請求項4】
前記材料が食品製品である請求項4記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、前記抽出液体相に捕捉された前記材料の共鳴周波数に固定するように前記超音波金型を微調整することをさらに含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記液体相が水性液体である請求項6記載の方法。
【請求項7】
前記水性液体が水である請求項7記載の方法。
【請求項8】
前記液体相が超臨界液体である請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記液体相が0℃から60℃に加熱される請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記液体がある圧力下に保たれる請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記圧力が0.5バールから10バールである請求項11記載の方法。
【請求項12】
前記圧力が2バールから4バールである請求項12記載の方法。
【請求項13】
前記食品材料が、果物、野菜、穀類、牧草、種子、およびその混合物からなる群から選択される請求項5記載の方法。
【請求項14】
固体材料から化学化合物を抽出する装置であって、
(i)液体抽出相の流れを材料の周りに導いて前記材料がその中に捕捉されるようにする導管と、
(ii)少なくとも1つの超音波金型に運転可能に接続され、前記少なくとも1つの超音波金型が前記液体相に接触する少なくとも1つの超音波発生器とを含み、
(iii)前記超音波発生器の運転によって、液体相中に捕捉された固体材料に超音波エネルギーが加わるようにされた抽出器本体を含む装置。
【請求項15】
前記超音波発生器が約0.1〜100W/cmのエネルギー強度で運転する請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記超音波発生器に運転可能に接続された前記超音波金型が、前記抽出液体相中に捕捉された前記材料の共鳴周波数に固定されるように微調整可能である請求項15記載の装置。
【請求項17】
本明細書に実質的に説明した固体材料から化学化合物を抽出する装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図11a】
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【図11b】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−512998(P2010−512998A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541691(P2009−541691)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/AU2007/001958
【国際公開番号】WO2008/074072
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(509172642)カビタス ピーティーワイ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】