説明

高カロリー軟化経口栄養材

【課題】0.9kcal/g以上のカロリーを有し、軟らかく、かつ、素材または食材の形状を保持している経口栄養材の提供。
【解決手段】経口栄養材全体として単位重量あたりのカロリーが高くなるように素材または食材の選択・組合せを行い、経口栄養材全体として単位重量あたりのカロリーが高く、水分含量が低くなるように軟化素材、軟化食材の選択・組合せを行い、調味料の添加量を通常より少なくしたもの、水分含量の少ない調味液となるように、調味料を組み合わせて調製したもの、濃縮された調味料や味が濃い調味料を組み合わせて調整したものや、調味液を調製した後に濃縮したものや油脂を加えた調味液を用いることにより、高カロリーで軟らかく、かつ、食材の形状を保持している経口栄養材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高カロリー軟化経口栄養材に関する。さらに詳しくは、0.9kcal/g以上のカロリーを有し、軟らかく、かつ、素材または食材の形状を保持している経口栄養材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、咀嚼・嚥下困難者、要介護者、術後初期、中期、後期の患者または高齢者等(以下、「咀嚼・嚥下困難者等」ということがある)を対象として、消化吸収、咀嚼・嚥下等を考慮して軟らかく調製されたゲル状、ゾル状等の栄養食品、食品組成物等が提供されている。
しかし、これらの食品等は軟らかくするために、水分を増やした調理方法で調製されることが多く、水分含量が高くなるために、得られた食品のカロリーが0.9kcal/g未満と低い傾向にある。
【0003】
従って、咀嚼・嚥下困難者、要介護者、術後初期、中期、後期の患者または高齢者等がこれらの食品等を摂取し、かつ十分なカロリーを得るには、摂取重量を増やすことが求められる。例えば、重湯・五分粥を中心とした献立を摂取する場合において、一食500kcalを満たすためには、全重量0.8〜1.0kgもの食事を経口摂取する必要がある。
健常人で若者であれば、この量を摂取することは容易であろうが、咀嚼・嚥下困難者、術後初期、中期の患者や高齢者等においては、全量を食事摂取することが困難であり、一部のみの摂取に留まり、残す場合が多く発生している。例えば、胃切除2週間の患者の術後食摂取量の調査では、主食の摂取量が1/3以下であり、主菜や副菜の摂取量も1/2以下という結果が得られている(図1)(例えば、非特許文献1参照)。このように必要なカロリー量を摂取できないために、栄養状態や病態の悪化、疾患の完治が遅れる等の弊害が生じている。
【0004】
そこで、製品100g当たりカロリーが100kcal以上の咀嚼・嚥下困難者用の高栄養ゼリー状食品、熱量が1kcal/g以上であるゲル状食品組成物、1g当たり1.8〜2.5kcalに調整された嚥下障害者等用の経口高エネルギーゲル状栄養組成物(例えば、特許文献1〜3等)等のカロリーを高めた食品が製造されている。
しかし、これらはいずれもゲル状、ゾル状であるため、料理の種類や料理に含まれる素材または食材が何であるかを視認することができず、咀嚼・嚥下困難者や高齢者等において、食事を楽しむことができないという問題があった。そこで、カロリーが高く、軟らかく、かつ、素材または食材固有の形状を保持している経口栄養材の提供が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−229877号公報
【特許文献2】特開2005−13134号公報
【特許文献3】特許第3132652号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】NutritionCare.岡本智子、稲村なお子、武田みゆき、Vol.2、2009、pp39−45.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高カロリー軟化経口栄養剤の提供を課題とする。さらに詳しくは、0.9kcal/g以上のカロリーを有し、軟らかく、かつ、素材または食材の形状を保持している経口栄養材の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、0.9kcal/g以上のカロリーを有する経口栄養材を製造するために、1)経口栄養材全体としてカロリーが高くなるように素材または食材の選択・組合せを行い、2)経口栄養材全体としてカロリーが高く、水分含量が低くなるように軟化素材または軟化食材の選択・組合せを行い、3)水分含量の少ない調味液を用い、4)カロリーを高めたい場合には、油脂および/またはデキストリンを加えた調味液を用いる等により、高カロリーで軟らかく、かつ、素材または食材の形状を保持している経口栄養材が提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明ではさらに、5)ビタミン、ミネラルを加えた調味液を用いる等により、長期摂取が必要となる咀嚼・嚥下困難者や要介護者における健康の維持や増進にも有効な経口栄養材が提供できる。
【0009】
すなわち、本発明は次の(1)〜(10)の経口栄養材等に関する。
(1)0.9kcal/g以上のカロリーを有し、軟らかく、かつ、経口栄養材を構成する素材または食材がその形状を保持している経口栄養材。
(2)圧縮応力が直径3mmのプランジャーで圧縮速度10mm/秒、クリアランスを試料の厚さ30%として測定した際に300〜100000N/m2の硬さを示す上記(1)に記載の経口栄養材。
(3)植物性素材および/または動物性素材を素材とする上記(1)または(2)に記載の経口栄養材。
(4)NPC/Nが25〜850の範囲内である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の経口栄養材。
(5)炭水化物由来のカロリーが40%以上である炭水化物を主体とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の経口栄養材。
(6)50〜200gの重量で個包装された上記(1)〜(5)のいずれかに記載の経口栄養材。
(7)1包装あたり、タンパク質量が5〜20gであるタンパク質を主体とする上記(6)に記載の経口栄養材。
(8)咀嚼・嚥下困難者、要介護者、腎臓疾患、術後初期、中期、後期の患者または高齢者用である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の経口栄養材。
(9)次の1)および/または2)を組合せることによって得られる上記(1)〜(8)のいずれかに記載の経口栄養材の製造方法、
1)経口栄養材全体として単位重量あたりのカロリーが高くなるように素材または食材の選択・組合せを行う、
2)経口栄養材全体として単位重量あたりのカロリーが高く、水分含量が低くなるように軟化素材、軟化食材の選択・組合せを行う。
(10)さらに次の3)および/または4)を組合せることによって得られる上記(9)に記載の経口栄養材の製造方法、
3)調味料の添加量を通常より少なくしたもの、水分含量の少ない調味液となるように、調味料を組み合わせて調製したもの、濃縮された調味料や味が濃い調味料を組み合わせて調整したものまたは、調味液を調製した後に濃縮したものを調味液として用いる、
4)油脂、デキストリン、ビタミンまたはミネラルのいずれか一種または二種以上を加えた調味液を用いる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の経口栄養材の提供によって、咀嚼・嚥下困難者や高齢者等において、少ない摂取量で十分なカロリーを摂取することができ、かつ、食事を楽しむことが可能となる。
本発明の経口栄養材は、さらに、非タンパクカロリー窒素比(以下、NPC/Nとする)を調整できることから、病院等において、腎臓疾患等、患者の疾患や症状に合わせてNPC/Nを調整して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】患者の術後食摂取量の調査結果を示した図である。
【図2】経口栄養材を示した図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の「経口栄養材」は、経口で栄養を摂取するための材であって、0.9kcal/g以上のカロリーを有し、軟らかく、かつ、素材または食材固有の形状を保持しているものであれば、いずれのものも含まれる。
【0013】
本発明の「経口栄養材」は、咀嚼・嚥下困難者、要介護者、術後初期、中期、後期の患者または高齢者等が摂取しやすい軟らかさを有することが好ましく、例えば、圧縮応力が直径3mmのプランジャーで圧縮速度10mm/秒、クリアランスを試料の厚さ30%として測定した際に300〜100000N/m2の硬さの経口栄養材であることが好ましい。摂取対象者に応じて、軟らかさを調整することもでき、例えば、咀嚼・嚥下困難者を対象とする場合には、同様の測定において、300〜20000N/m2の硬さの経口栄養材が好ましい。本発明における「経口栄養材」の「硬さ」とは、「経口栄養材」を構成する軟化素材または軟化食材のうち、最も硬いものを基準とする。
【0014】
本発明の「経口栄養材」が「素材または食材固有の形状を保持している」とは、健常人が摂食する料理と同様に、その経口栄養材を構成する素材または食材が何であるかが視認できる程度に素材または食材の形状が保持されていることをいう。
例えば、本発明の「経口栄養材」の内容が「赤魚のオイスターソース焼き」の場合には、赤魚の身をすりつぶした後ゼリー等で寄せて赤魚の形状に類似させたもので構成されているのではなく、赤魚の切り身のままの形状が保持された状態のもので構成されていることになる。
【0015】
ここで、「素材」とは、生の肉類・魚介類、青果類や穀類等のことをいう。切り身にした魚や乱切りしたにんじん等、これらを調理しやすい、または食べやすい大きさに包丁等で切ったものも含まれる。
「素材」としては、食用であれば、植物性素材、動物性素材のいずれのものも用いることができる。植物性素材としては、ニンジン、ブロッコリー、タケノコ等の野菜やりんご等の果物を含む青果類、シイタケ、ブナシメジ等の菌類等が挙げられる。また、動物性素材としては、豚肉、鶏肉等の肉類、魚、貝等の魚介類、エビ等の甲殻類等が挙げられる。
【0016】
「食材」とは、加工食品や加熱調理されたもののことをいい、大豆の加工食品である納豆、豆腐、油揚げ、厚揚げ等、こんにゃく芋の加工食品であるこんにゃく、糸こんにゃく等、卵の加熱調理品であるオムレツ、目玉焼き、玉子焼き、厚焼き玉子、錦糸玉子、いり玉子またはゆで卵等が挙げられる。また、魚肉の加工食品である蒲鉾、竹輪、魚肉ソーセージ等や、肉類の加工食品であるベーコン、ソーセージ等が挙げられる。
【0017】
本発明の「経口栄養材」は、これらの素材または食材を軟化処理することで調製した「軟化素材」、「軟化食材」について、「経口栄養材」の内容に応じて、選択・組合せを行い、これらの「軟化素材」、「軟化食材」に調味液で味をつけることによって製造することができる。
「軟化素材」または「軟化食材」の調製は、素材または食材を酵素処理によって軟化することで行うことができる。酵素処理の時間は、処理する素材または食材の性質、大きさ等に合わせて調整することができる。
具体的には、本出願人の次の文献および特許出願の明細書等に記載されている方法等を挙げることができる。また、圧縮応力が直径3mmのプランジャーで圧縮速度10mm/秒、クリアランスを試料の厚さ30%として測定した際に300〜100000N/m2の硬さの「軟化素材」または「軟化食材」が得られるのであれば、従来知られている軟化素材または軟化食材のいずれの調製方法を用いてもよい。
<軟化処理方法>
文献1:WO2008/142853国際公開パンフレット
特許出願1:特願2008−043474
特許出願2:特願2008−291432
特許出願3:特願2008−334858
特許出願4:特願2008−334859
特許出願5:国際出願番号PCT/JP2008/002740
【0018】
本発明の「軟化素材」または「軟化食材」の調製方法において、素材または食材の軟化に使用する機械としては、素材または食材に酵素を注入するためのインジェクション装置や、酵素を失活させるための飽和蒸気調理機、食品加熱冷却機等、従来知られているいずれの機械を用いることもできる。
インジェクション装置としては、例えば、「インジェクター」(株式会社ニッコー社製)、「スーパーミニインジェクターTN−SP18型」(株式会社トーニチ社製)等が挙げられる。また、飽和蒸気調理器としては、例えば、「スチームマイスターCK−120V」(三浦工業株式会社製)、「スチームマイスターCK−20EL」(三浦工業株式会社製)等が挙げられる。さらに、食品加熱冷却機としては、例えば、「CQ120」(三浦工業株式会社製)が挙げられる。
【0019】
本発明の「経口栄養材」はいずれの形態であっても、経口栄養材全体として、0.9kcal/g以上のカロリーを有することを特徴とし、特に1.0kcal/g以上のカロリーを有することが好ましい。このような「経口栄養材」の製造には、製造される「経口栄養材」のカロリーが0.9kcal/g以上となるように、「軟化素材」、「軟化食材」や「調味液」の選択・組合せを行うことが重要である。
「軟化素材」、「軟化食材」や「調味液」の選択・組合せは、次のように行うことが好ましい。
1)経口栄養材全体としてカロリーが高くなるように素材または食材の選択・組合せを行うことが好ましい。高カロリーの素材または食材を意図的に選択して組合せてもよく、また、「経口栄養材」の内容によっては、摂食する人が素材を視認することで、食事を楽しむこともできるように、低カロリーの素材と高カロリーの素材を選択して組合せてもよい。選択される素材または食材は、必ず組み合わせる必要はなく、単品であってもよい。
2)経口栄養材全体としてカロリーが高く、水分含量が低くなるように軟化素材、軟化食材の選択・組合せを行うことが好ましい。1)で選択・組合せられた素材または食材より調製される軟化素材または軟化食材について、カロリーや水分含量を確認し、高カロリーかつ水分含量が少ない軟化素材、軟化食材を意図的に選択して組合せてもよい。また、「経口栄養材」の内容によっては、低カロリーの軟化素材、軟化食材と高カロリーの軟化素材、軟化食材を選択して組合せてもよい。選択される軟化素材は、必ず組み合わせる必要はなく、単品であってもよい。
3)調味液は、「経口栄養材」の内容に応じて調味料を検討し、調味料の添加量を通常より少なくしたもの、水分含量の少ない調味液となるように、調味料を組み合わせて調製したもの、濃縮された調味料や味が濃い調味料を組み合わせて調整したものや、調味液を調製した後に濃縮したもの等を用いることが好ましい。
4)「経口栄養材」のカロリーを高めたい場合には、油脂やデキストリンを加えた調味液を用いることが好ましい。
さらに、5)長期摂取が必要となる咀嚼・嚥下困難者や要介護者における健康の維持や増進に有効なビタミン、ミネラルを加えた調味液を用いることが好ましい。
【0020】
本発明の調味液とは、砂糖、塩、醤油、酢、味噌、酒、胡椒等のスパイス、油脂等の調味料を「経口栄養材」の内容に応じて調製したものをいう。水分含量が高いと、「経口栄養材」における単位重量あたりのカロリーが下がることから、水分含量の少ないものを用いることが好ましい。
本発明の調味液に含まれる油脂としては、胡麻油、サラダ油、オリーブ油、大豆油、サフラワー油、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)等が挙げられる。
また、デキストリンは、食品の製造に利用できるものであれば、いずれのものも用いることができる。例えば、市販のパインデックス#2(松谷化学工業株式会社)等が挙げられる。本発明の経口栄養材ひとつあたりに2〜6g(8〜24kcal)となるように調味液に含ませて用いることが好ましい。また、調味液に添加する以外に、本発明の「経口栄養材」に含まれる軟化素材や軟化食材に添加・含浸させてもよく、別途添加してもよい。
【0021】
また、本発明の調味液に含まれるビタミン、ミネラル等としては、ビタミンは食品添加物として利用できるものであればいずれのビタミンであってもよいが、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ナイアシン、パントテン酸または葉酸等が挙げられる。また、ミネラルも食品添加物として利用できるものであればいずれのミネラルであってもよいが、例えば、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅、鉄、マンガン等が挙げられる。
本発明の「経口栄養材」に含まれるビタミン、ミネラルの量はいずれでもよいが、基本的には、「日本人の食事摂取基準(2005年版)」を考慮した量が配合されている量が含まれていることが好ましく、さらに「経口栄養材」に含まれる軟化素材の種類や組み合わせに応じて、「経口栄養材」への添加量を調整することが好ましい。
また、一日に摂取する「経口栄養材」に含まれるビタミン、ミネラル量として、例えば、ビタミンAはレチノール当量として450〜3000μg、ビタミンDは5〜50μg、ビタミンEは8〜800mg、ビタミンKは65〜30000μg、ビタミンB1は900μg以上、ビタミンB2は1000μg以上、ビタミンB6は1〜60mg、ビタミンB12は2〜10μg、ビタミンCは85〜2000mg、ナイアシンは9〜100mg、パントテン酸は5〜10000mg、葉酸は200〜1000μgの範囲で含まれていることが好ましく、さらにカルシウムは600〜2300mg、マグネシウムは240〜350mg、亜鉛は6〜30mg、銅は0.6〜10mg、鉄は5.5〜50mg、マンガンは3.5〜11mgの範囲であることが好ましい。
【0022】
これらのビタミン、ミネラル等は、調味液に添加する以外に、本発明の「経口栄養材」に含まれる軟化素材や軟化食材に添加・含浸させてもよく、別途添加してもよい。ビタミン、ミネラルを含む調味液や、ビタミン、ミネラルを含浸させた軟化素材を用いて製造される「経口栄養材」は、本発明の「経口栄養材」であればいずれのものも製造することができる。例えば、「タンパク質を主体とする経口栄養材」が挙げられ、「炭水化物を主体とする経口栄養材」であってもよい。
ビタミン、ミネラル等は偏りがちな成分であるが、ビタミン、ミネラル等を含む調味液やビタミン、ミネラルを含浸させた軟化素材を用いて製造される「経口栄養材」は、積極的にビタミン、ミネラル等を添加しているため、長期摂取が必要となる咀嚼・嚥下困難者や要介護者における健康の維持や増進に有効である。
【0023】
本発明の「経口栄養材」は、「軟化素材」、「軟化食材」と「調味液」との選択・組合せによって、様々な内容のものを製造することができる。
例えば、「鶏肉の豆入りトマトソース」、「大豆と筍の煮物」、「鶏のササミと温野菜のサラダ」、「ポークビーンズ」、「豚肉の香り漬け焼き」、「牛肉の香り煮(中華)」、「赤魚のオイスターソース焼き」、「赤魚の漬け焼き」、「茹で豚と野菜のサラダ」、「肉じゃが」、「具沢山ポトフ」、「さつまいもの甘辛煮」、「じゃがいものバジル風味」、「お粥」等が挙げられる。また、「肉団子の野菜あんかけ」、「豚肉の南蛮」、「豚肉の醤油蒸し」、「ポークカツレツ」、「ローストポーク」、「カジキのトマトソースがけ」、「銀鮭の生姜蒸し」、「鮭の照り焼き(柚子風味)」、「鰆の幽庵焼き」、「エビとホタテのとろろグラタン」、「南瓜と豆の煮物」、「野菜のクリーム煮」、「五目豆」、「さつまいもの甘辛煮」や、にんじん、南瓜、カリフラワー、ブロッコリー等の軟化素材によって構成される「ホットサラダ」等が挙げられる。
このうち「炭水化物を主体とする経口栄養材」としては、「さつまいもの甘辛煮」、「じゃがいものバジル風味」、「お粥」等が挙げられる。また、「タンパク質を主体とする経口栄養材」としては、「鶏肉の豆入りトマトソース」、「豚肉の香り漬け焼き」、「牛肉の香り煮(中華)」、「赤魚のオイスターソース焼き」等が挙げられる。
本発明の「経口栄養材」は、例えば、「鶏肉の豆入りトマトソース」、「大豆と筍の煮物」、「鶏のササミと温野菜のサラダ」等の単品であってもよく、また、「鶏肉の豆入りトマトソース」、「大豆と筍の煮物」等、単品同士を組合せたものであってもよい。さらに、これらの単品が包装されているもの、または組合せたものが一つのセットとして包装されているものであっても良い。
【0024】
このような「経口栄養材」のひとつである「鶏肉の豆入りトマトソース」は、鶏胸肉、じゃがいも、たまねぎ、ズッキーニおよび大豆を「素材」として選択し、これらをそれぞれ軟化処理して「軟化素材」としたものを組合せ、トマト味の調味液で味をつけることにより製造することができる。
【0025】
本発明の「経口栄養材」は、NPC/Nが25〜850の範囲内であることが好ましい。本発明において、「経口栄養材」のNPC/Nは式1の計算方法に従って計算することができる。窒素係数は一般的に6.25を用いるが、素材ごとに適した値を用いることができる。また、NPC/Nの計算には、コンピューター等の電算機を用いることもできる。
【0026】
[式1]
一食あたりのNPC/N=
〔(一食あたりの総カロリーの合計(kcal))−(一食あたりの総タンパク質の合計(g)×4※)〕/〔一食あたりの総タンパク質の合計(g)/窒素係数〕
※タンパク質1gあたり4kcalで換算
【0027】
NPC/Nは摂取対象者に応じて、摂取する経口栄養材を選択する等により、調整することもでき、術後初期・中期・後期の患者の場合であれば、初期から後期になるにつれ、NPC/Nが低値から高値になるように上げていくのが好ましい。例えば、術後初期の患者を対象とする場合には、NPC/Nを25〜75とし、術後中期の患者を対象とする場合には、NPC/Nを50〜90とし、さらに、術後後期の患者を対象とする場合には、NPC/Nを60〜120として調製することが挙げられる。
また、腎臓疾患を対象とする場合には、NPC/Nを200以上に調整することが好ましい。本発明の「経口栄養材」は、複数組合せることで、一食におけるNPC/Nをこれらの範囲に調整することもできる。
【0028】
本発明の「経口栄養材」には、炭水化物由来のカロリーが40%以上、さらには70%以上である「炭水化物を主体とする経口栄養材」が含まれる。このような経口栄養材としては「お粥」、「さつまいもの甘辛煮」、「じゃがいものバジル風味」や「さつまいもの甘辛煮」等が挙げられる。
【0029】
本発明の「経口栄養材」は、その「経口栄養材」を構成する軟化素材、軟化食材にもよるが、50〜200gの重量で個包装されていることが好ましい。そして、「タンパク質を主体とする経口栄養材」においては、1包装あたりのタンパク質量が5〜20gであることが好ましい。
【0030】
本発明の「経口栄養材」は、いずれの人も摂食することができるが、咀嚼・嚥下困難者、要介護者、術後初期、中期、後期の患者または高齢者用であることが好ましい。摂食対象者に応じて、「経口栄養材」に構成する軟化素材、軟化食材の選択やカロリー、軟らかさまたはNPC/Nの調整等をすることができ、さらに、摂食において複数の経口栄養材の組合せを行うこともできる。
【0031】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
軟化素材、軟化食材の調製
軟化素材、軟化食材の調製例として、選択した各素材または食材についての軟化処理方法を下記に示した。
1.肉類
1)鶏胸肉
鶏胸肉(ブロック)を素材とし、インジェクション装置(トーニチ社製、以下同じ物を用いた)を用いて、植物由来のプロテアーゼと微生物由来のプロテアーゼとを含み、さらに低温糊化澱粉とカードランを加えた酵素処理液(以下、酵素処理液Aとする)を鶏胸肉の素材重量に対して70wt%注入した。更に酵素処理液Aに浸漬した状態で10〜20時間冷蔵保存し、酵素反応を行った。
次いで、約10mm厚に斜めスライスカットし、飽和蒸気調理機(「スチームマイスターCK−120V」株式会社三浦プロテック社製、以下同じ物を用いた)にて庫内温度90℃・10分加熱することで酵素失活処理を行い、鶏胸肉の軟化素材を得た。
【0033】
2)鶏ササミ肉
鶏ササミ肉を素材とし、インジェクション装置を用いて、酵素処理液Aを鶏ササミの素材重量に対して50wt%注入した。更に酵素処理液Aに浸漬した状態で10〜20時間冷蔵保存し、酵素反応を行った。
次いで、約15mm厚に斜めスライスカットし、飽和蒸気調理機にて庫内温度90℃・10分加熱することで酵素失活処理を行い、鶏ササミ肉の軟化素材を得た。
【0034】
3)豚腿肉
豚腿肉(ブロック)を素材とし、インジェクション装置を用いて、酵素処理液Aを豚腿の素材重量に対して50wt%注入した。更に酵素処理液Aに浸漬した状態で10〜20時間冷蔵保存し、酵素反応を行った。
次いで、約10mm厚に斜めスライスカットし、飽和蒸気調理機にて庫内温度90℃・10分加熱することで酵素失活処理を行い、豚腿肉の軟化素材を得た。
【0035】
4)牛腿肉
牛腿肉(ブロック)を素材とし、インジェクション装置を用いて、酵素処理液Aを牛腿肉の素材重量に対して70wt%注入した。更に酵素処理液Aに浸漬した状態で10〜20時間冷蔵保存し、酵素反応を行った。
次いで、約10mm厚に斜めスライスカットし、飽和蒸気調理機にて庫内温度60℃・20分、続けて90℃・10分にて二段階加熱することで酵素失活処理を行い、牛腿肉の軟化素材を得た。
【0036】
5)ベーコン
ベーコン(厚さ3mm、1/2カット)を酵素処理液Aに浸漬し、減圧下(−0.1MPa)で含浸を行った。更に、このベーコンを4℃の冷蔵庫内に1時間収納することで、酵素反応を行った。
次いで、飽和蒸気調理器にて庫内温度90℃・10分加熱することで酵素失活処理を行い、ベーコンの軟化素材を得た。
【0037】
2.魚介類
1)赤魚
赤魚の切り身(約10mm厚カット)を素材とし、インジェクション装置を用いて、酵素処理液Aを赤魚の素材重量に対して10wt%注入した。更に、この赤魚を4℃の冷蔵庫内に10〜20時間収納することで、酵素反応を行った。
次いで、飽和蒸気調理機にて庫内温度92℃・10分加熱することで酵素失活処理を行い、赤魚の軟化素材を得た。
【0038】
3.青果類・穀類
1)にんじん
にんじん(約10mm厚輪切り)を素材とし、皮むき・へた取りした後、水中に浸漬することによりあく抜きをした。次にこのにんじんを飽和蒸気調理器にて庫内温度120℃・10分間で加熱処理した。次いで,ヘミセルラーゼおよびトレハロースを0.025Mクエン酸緩衝液(pH5.0)に溶解して調製した酵素処理液(以下、酵素処理液Bとする)をにんじんの素材重量に対して20wt%、減圧下(−0.1MPa)で含浸させた。更に、このにんじんを4℃の冷蔵庫内に10〜20時間収納した後、45℃の恒温室内に30分間収納することで、酵素反応を行った。
次いで、飽和蒸気調理機にて庫内温度70℃・40分加熱することで酵素失活処理を行い、にんじんの軟化素材を得た。
【0039】
2)じゃがいも
じゃがいも(乱切り親指大)を素材とし、飽和蒸気調理機にて庫内温度100℃・20分で加熱して、50℃で荒熱を取った後、急速冷凍装置にて庫内温度10℃で冷却を行った。このじゃがいもをペクチナーゼおよびヘミセルラーゼを含有する酵素処理液(以下、酵素処理液Cとする)に浸漬し、減圧下(−0.1MPa)で含浸させた。更に、このじゃがいもを、4℃の冷蔵庫内に10〜20時間収納した後、45℃の恒温室内に30分間収納することで、酵素反応を行った。
次いで、飽和蒸気調理機にて庫内温度70℃・40分加熱することで酵素失活処理を行い、じゃがいもの軟化素材を得た。
【0040】
3)ズッキーニ
ズッキーニ(約10mm厚輪切り)を素材とし、水中に浸漬することによりあく抜きをした。次にこのズッキーニを飽和蒸気調理器にて庫内温度100℃・3分間で加熱処理した。ヘミセルロースを含む酵素処理液(以下、酵素処理液Dとする)をズッキーニの素材重量に対して20wt%、減圧下(−0.1MPa)で含浸させた。更に、このズッキーニを、4℃の冷蔵庫内に10〜20時間収納した後、45℃の恒温室内に30分間収納することで、酵素反応させた。
次いで、飽和蒸気調理機にて庫内温度70℃・40分間加熱することで酵素失活処理を行い、ズッキーニの軟化素材を得た。
【0041】
4)9.たけのこ
市販の水煮たけのこ(約10mm半月切り)を素材とし、飽和蒸気調理器にて庫内温度110℃・3分間で加熱処理した。加熱処理したたけのこの素材重量に対して20wt%の酵素処理液Dを、減圧下(−0.1MPa)で含浸させた。更に、このたけのこを4℃の冷蔵庫内に10〜20時間収納した後、45℃の恒温室内に30分間収納することで、酵素反応させた。
次いで、飽和蒸気調理機にて庫内温度70℃・40分で加熱することで酵素失活処理を行い、たけのこの軟化素材を得た。
【0042】
5)ブロッコリー
ブロッコリー(親指大の大きさで重量10g)を素材とし、芯を取り除いた後、水中に浸漬することによりあく抜きをした。次にこのブロッコリーを飽和蒸気調理器にて庫内温度100℃・3分間で加熱処理した。加熱処理したブロッコリーの素材重量に対して40wt%の酵素処理液Dを、減圧下(−0.1MPa)で含浸させた。更に、このブロッコリーを4℃の冷蔵庫内に10〜20時間収納した後、45℃の恒温室内に30分間収納することで、酵素反応させた。
次いで、飽和蒸気調理機にて庫内温度70℃・40分加熱することで酵素失活処理を行い、ブロッコリーの軟化素材を得た。
【0043】
6)たまねぎ
たまねぎ(30mm×40mm)を素材とし、飽和蒸気調理機にて庫内温度100℃・15分で加熱した後、急速冷凍装置にて庫内温度10℃で冷却を行った。このたまねぎを酵素処理液Dに浸漬し、減圧下(−0.1MPa)で含浸させた。更に、このたまねぎを4℃の冷蔵庫内に10〜20時間収納した後、45℃の恒温室内に30分間収納することで、酵素反応を行った。
次いで、飽和蒸気調理機にて庫内温度70℃・40分加熱することで酵素失活処理を行い、たまねぎの軟化素材を得た。
【0044】
7)ヤングコーン
市販のヤングコーン(水煮)(まるごと)を素材とし、水中に浸漬することによりあく抜きをした。このヤングコーンは飽和蒸気調理器にて庫内温度110℃・1分間で加熱処理した。加熱処理したヤングコーンの素材重量に対して20wt%の酵素処理液Dを、減圧下(−0.1MPa)で含浸させた。更に、このヤングコーンを4℃の冷蔵庫内に10〜20時間収納した後、45℃の恒温室内に30分間収納することで、酵素反応させた。
次いで、飽和蒸気調理機にて庫内温度70℃・40分加熱することで、酵素失活処理を行い、ヤングコーンの軟化素材を得た。
【0045】
8)長ネギ
皮むき(2枚)・へた取りした長ネギ(約10mm斜め切り)を素材とし、飽和蒸気調理器にて庫内温度100℃・10分間で加熱処理した。加熱処理した長ネギの素材重量に対して20wt%の酵素処理液Dを、減圧下(−0.1MPa)で含浸させた。更に、この長ネギを4℃の冷蔵庫内に10〜20時間収納した後、45℃の恒温室内に30分間収納することで、酵素反応させた。
次いで、飽和蒸気調理機にて庫内温度70℃・40分加熱することで酵素失活処理を行い、長ネギの軟化素材を得た。
【0046】
9)大豆
乾燥大豆を洗浄し、ヘミセルラーゼおよびセルラーゼを含有する酵素処理液(以下、酵素処理液Eとする)に浸漬して、この大豆を4℃の冷蔵庫内に10〜24時間静置することで、酵素を含浸させた後、飽和蒸気調理機にて庫内温度50℃・60分加温することで酵素反応させた。
次いで、軽く攪拌し、はがれた皮を取り除いた後、醤油を主体とした調味液に5分浸し、さらに飽和蒸気調理機で120℃・60分加熱することで酵素失活処理を行い、大豆の軟化素材を得た。
【0047】
10)そらまめ
皮むき済みの市販の冷凍そらまめを素材とし、飽和蒸気調理機で100℃・10分加熱し、そらまめの軟化素材を得た。
【0048】
11)さつまいも
さつまいも(約20mm角ダイズ)を素材とし、皮むき・へた取りした後、水中に浸漬することによりあく抜きをした。次にこのさつまいもを飽和蒸気調理器にて庫内温度110℃・20分間で加熱処理した。次いで、ヘミセルラーゼおよびペクチナーゼ、トレハロースを0.025Mクエン酸緩衝液(pH5.0)に溶解して調製した酵素処理液(以下、酵素処理液Fとする)を用い、加熱処理したさつまいもの素材重量に対して20wt%の酵素処理液Fを、減圧下(−0.1MPa)で、含浸させた。更に、このさつまいもを4℃の冷蔵庫内に10〜20時間収納した後、45℃の恒温室内に30分間収納することで、酵素反応させた。
次いで、飽和蒸気調理機にて庫内温度70℃・40分加熱して、酵素失活処理を行い、さつまいもの軟化素材を得た。
【0049】
12)カリフラワー
房落とししたカリフラワー(親指大、約10g)をあく抜きのために30分間水に浸した後、飽和蒸気調理器にて庫内温度120℃・5分で加熱処理し、冷却を行い、カリフラワーの軟化素材を得た。
【0050】
13)かぼちゃ
とらむきの南瓜(20mm×40mm×約20mm、約20g)をあく抜きのために30分間水に浸した後、飽和蒸気調理器にて庫内温度110℃・20分間で加熱処理した後、冷却した。次いで、ヘミセルラーゼおよびマセロチームを含有する酵素処理液(以下、酵素処理液Gとする)に浸漬した後、減圧下(−0.1MPa)で含浸させた。更に、このかぼちゃを4℃の冷蔵庫内に10〜20時間収納した後、45℃の恒温室内に30分間収納することで、酵素反応を行った。
次いで、飽和蒸気調理機にて庫内温度70℃・40分加熱することで酵素失活処理を行い、かぼちゃの軟化素材を得た。
【0051】
14)だいこん
皮剥きした大根(20mm厚、半月切り、約30g)をあく抜きのために30分間水に浸した後、飽和蒸気調理器にて庫内温度120℃・20分間で加熱処理した後、冷却した。次いで、ヘミセルラーゼを含有する酵素処理液(以下、酵素処理液Hとする)に浸漬した後、減圧下(−0.1MPa)で含浸させた。更に、このだいこんを4℃の冷蔵庫内に10〜20時間収納した後、45℃の恒温室内に30分間収納することで、酵素反応を行った。
次いで、飽和蒸気調理機にて庫内温度70℃・40分加熱することで酵素失活処理を行い、だいこんの軟化素材を得た。
【0052】
4.食材
1)こんにゃく
水、低温糊化澱粉、こんにゃく(30mm角にカット)の混合液に、グルコマンナンを主体とする溶液および寒天を添加し、50℃で保温した後、十分に攪拌を行った。ついで飽和蒸気調理器にて庫内温度90℃・10分加熱し、室温に戻した後、こんにゃくの軟化素材を得た。
【0053】
各軟化素材または軟化食材の単位重量あたりのカロリー(kcal/g)および上記1.の軟化食材の単位重量あたりのカロリー(kcal/g)および軟らかさ(N/m2)を表1に示した。
【0054】
【表1】

【実施例2】
【0055】
経口栄養材の製造
上記実施例1で調製した軟化素材、軟化食材を必要量取り分け、これらを組合せて調味液で調味することにより、0.9kcal/g以上のカロリーを有し、軟らかく、かつ、素材または食材の形状を保持している経口栄養材を製造した。本発明で製造した経口栄養材を以下および図2に示した。
【0056】
1.鶏肉の豆入りトマトソース
軟化素材である鶏胸肉30g、じゃがいも10g、たまねぎ10g、ズッキーニ10g、大豆30gをそれぞれ容器に充填した後、トマトケチャップやトマトピューレを主体とした、油、ビタミンおよびミネラルを含む調味液21gと彩りとして乾燥パセリを添加し、50℃30分、75℃15分で殺菌処理した。これを急速冷凍装置で凍結して、1包装(重量111g、タンパク質10.9g、カロリー125kcal)とした。
【0057】
2.大豆と筍の煮物
軟化素材である鶏ササミ40g、にんじん10g、たけのこ15g、大豆30gをそれぞれ容器に充填した後、醤油、酒、みりんを主体とする、油、ビタミンおよびミネラルを含む調味液26gを添加し、50℃30分、75℃15分で殺菌処理した。これを急速冷凍装置にて凍結して、1包装(重量121g、タンパク質11.1g、カロリー126kcal)とした。
【0058】
3.鶏のササミと温野菜のサラダ
軟化素材である鶏ササミ45g、じゃがいも15g、ブロッコリー10g、ヤングコーン7.5g、大豆25gをそれぞれ容器に充填した後、50℃30分、75℃15分で殺菌処理した。これを急速冷凍装置にて凍結して、マヨネーズおよび油、ビタミンおよびミネラルを含む調味液10gを別添として付け、1包装(重量112g、タンパク質11.3g、カロリー126kcal)とした。
【0059】
4.ポークビーンズ
軟化素材である豚腿肉40g、にんじん10g、じゃがいも10g、たまねぎ10g、大豆25gをそれぞれ容器に充填した後、トマトケチャップ、トマトピューレを主体とする、油、ビタミンおよびミネラルを含む調味液16gと彩りとして乾燥パセリを添加し、50℃30分、75℃15分で殺菌処理した。これを急速冷凍装置にて凍結して、1包装(重量111g、タンパク質11.7g、カロリー133kcal)とした。
【0060】
5.豚肉の香り漬け焼き
軟化素材である豚腿肉60gに、醤油、酒を主体とする調味液を添加し、バーナー焼成を2回繰り返し、さらにブロッコリー10g、たけのこ20gを容器に充填し、醤油および油、ビタミンおよびミネラルを含む調味液13gを添加した後、50℃30分、75℃15分で殺菌処理した。これを急速冷凍装置にて凍結して、1包装(重量103g、タンパク質11.9g、カロリー112kcal)とした。
【0061】
6.牛肉の香り煮(中華)
軟化素材である牛腿肉60g、にんじん20g、長ねぎ15gをそれぞれ容器に充填した後、醤油および油、ビタミンおよびミネラルを含む調味液17gを添加し、50℃30分、75℃15分で殺菌処理した。これを急速冷凍装置にて凍結し、1包装(重量112、タンパク質14.4g、カロリー123kcal)とした。
【0062】
7.赤魚のオイスターソース焼き
軟化素材である赤魚40gとソラマメ25gを容器に入れ、大豆油1g、ごま油1gを添加したのち、焦げ目がつく程度にバーナーにて焼成した。かき油、醤油、ビタミンおよびミネラルを含む調味液16gを添加し、50℃30分、75℃、15分で殺菌処理した。これを急速冷凍装置にて凍結して、1包装(重量101g、タンパク質13.6g、カロリー140kcal)とした。
【0063】
8.赤魚の漬け焼き
軟化素材である赤魚40gに、醤油、酒、みりんを主体とし、ビタミンおよびミネラルを含む調味液を塗布した後、バーナーにて焼成し、さらにサラダ油を塗布してバーナーにて焼成した。次いで、軟化素材である大豆25g、醤油および油を含む調味液11gを容器に添加した後、50℃30分、75℃15分で殺菌処理した。これを急速冷凍装置にて凍結して、1包装(重量81g、タンパク質12.0g、カロリー132kcal)とした。
【0064】
9.茹で豚と野菜のサラダ
軟化素材である豚腿肉10g、にんじん10g、かぼちゃ40g、カリフラワー30g、ブロッコリー20gをそれぞれ容器に充填した後、50℃30分、75℃15分で殺菌処理した。これを急速冷凍装置にて凍結して、調味液としてマヨネーズ15gを添付して1包装(重量125g、タンパク質5.1g、カロリー133kcal)とした。
【0065】
10.肉じゃが
軟化素材である牛腿肉20g、にんじん30g、じゃがいも60g、タマネギ20g、こんにゃく10gをそれぞれ容器に充填した後、醤油、酒、みりんを主体とし、ビタミンおよびミネラルを含む調味液10gと調合油1.5gを添加し、50℃30分、75℃15分で殺菌処理した。これを急速冷凍装置にて凍結して、1包装(重量151g、タンパク質5.9g、カロリー137kcal)とした。
【0066】
11.具沢山ポトフ
軟化素材であるベーコン20g、ダイコン30g、カリフラワー20g、ニンジン15g、ブロッコリー20gをそれぞれ容器に充填した後、醤油および白ワイン、油を主体とし、ビタミンおよびミネラルを含む調味液13gを添加し、50℃30分、75℃15分で殺菌処理した。これを急速冷凍装置にて凍結して、1包装(重量118g、タンパク質4.3g、カロリー115kcal)とした。
【0067】
12.さつまいもの甘辛煮
軟化素材であるさつまいも45gを容器に充填した後、醤油、みりんを主体とする調味液11g(うち胡麻油1g含む)を添加し、50℃30分、75℃15分で殺菌処理した。これを急速冷凍装置にて凍結して、1包装(重量70g、炭水化物19.6g、カロリー80kcal)とした。
【0068】
13.じゃがいものバジル風味
軟化素材であるじゃがいも45gを容器に充填した後、バジルペーストを主体とする、バターを含む調味液7gと彩りとして乾燥パセリを添加し、50℃30分、75℃15分で殺菌処理した。これを急速冷凍装置にて凍結し、1包装(重量52g、炭水化物8.2g、カロリー80kcal)とした。
【0069】
14.お粥
米に0.03%α−アミラーゼ、0.10%プロテアーゼ、0.03%ヘミセルラーゼ、を含有する酵素処理液(以下、酵素処理液Iとする)を加え1時間浸漬した後、酵素溶液を捨てた。このお米をスチームコンベクションで湿度100%・庫内温度95℃・10分で加熱後、酵素処理液Iを加え、10分浸漬した。さらに水洗いし、酵素処理液Iに浸した後、飽和蒸気調理機で庫内温度80℃・40分、庫内温度99℃・20分で炊飯し、次いで常圧に戻した。
これにα−アミラーゼ溶液を添加し、10分〜20分間保持した後、ザルで水をきり、容器に充填し、食品加熱冷却機(CQ120、三浦工業株式会社製)にて78℃・30分殺菌加熱した後、急速冷凍装置にて凍結し、1包装(重量60g、150g、180g、炭水化物10.9g、36.5g、43.8g、カロリー50kcal、167kcal、200kcal)とした。
【0070】
上記で製造した経口栄養材(11種)の単位重量あたりのカロリー(kcal/g)および軟らかさ(N/m2)、非タンパク窒素カロリー/窒素比(NPC/N比)を表2に示した。
【0071】
【表2】

【実施例3】
【0072】
経口栄養材の製造
ビタミン、ミネラルを含む調味液で調味する以外は、実施例2と同様に製造した、ビタミン、ミネラルが添加された0.9kcal/g以上のカロリーを有し、軟らかく、かつ、素材または食材の形状を保持している経口栄養材を製造した。
このような経口栄養材の一例として、1.鶏肉の豆入りトマトソースに添加した各ビタミン、ミネラルの量を表3に示した。
【0073】
【表3】

【実施例4】
【0074】
経口栄養材の製造
ビタミン、ミネラル、デキストリン(パインデックス#2、松谷化学工業株式会社製)を含む調味液で調味する以外は、実施例2と同様に製造した、ビタミン、ミネラル、デキストリンが添加された0.9kcal/g以上のカロリーを有し、軟らかく、かつ、素材または食材の形状を保持している経口栄養材を製造した。
このような経口栄養材の一例として、1.鶏肉の豆入りトマトソースに添加した各ビタミン、ミネラル、デキストリンの量を表4に示した。
【0075】
【表4】

【0076】
[比較例]
本発明の経口栄養材と比較して、公知の咀嚼・嚥下困難者用の商品のカロリーを表5、6に示した。これらの商品のカロリーがいずれも0.9kcal/g未満であることから、本発明の経口栄養材が高いカロリーを有していることが確認された。
【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の経口栄養材によって、咀嚼・嚥下困難者や高齢者等において、少ない摂取量で十分なカロリーを摂取することができ、かつ、食事を楽しむことが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.9kcal/g以上のカロリーを有し、軟らかく、かつ、経口栄養材を構成する素材または食材がその形状を保持している経口栄養材。
【請求項2】
圧縮応力が直径3mmのプランジャーで圧縮速度10mm/秒、クリアランスを試料の厚さ30%として測定した際に300〜100000N/m2の硬さを示す請求項1に記載の経口栄養材。
【請求項3】
植物性素材および/または動物性素材を素材とする請求項1または2に記載の経口栄養材。
【請求項4】
非タンパクカロリー窒素比(NPC/N)が25〜850の範囲内である請求項1〜3のいずれかに記載の経口栄養材。
【請求項5】
炭水化物由来のカロリーが40%以上である炭水化物を主体とする請求項1〜4のいずれかに記載の経口栄養材。
【請求項6】
50〜200gの重量で個包装された請求項1〜5のいずれかに記載の経口栄養材。
【請求項7】
1包装あたり、タンパク質量が5〜20gであるタンパク質を主体とする請求項6に記載の経口栄養材。
【請求項8】
咀嚼・嚥下困難者、要介護者、腎臓疾患、術後初期、中期、後期の患者または高齢者用である請求項1〜7のいずれかに記載の経口栄養材。
【請求項9】
次の1)および/または2)を組合せることによって得られる請求項1〜8のいずれかに記載の経口栄養材の製造方法、
1)経口栄養材全体として単位重量あたりのカロリーが高くなるように素材または食材の選択・組合せを行う、
2)経口栄養材全体として単位重量あたりのカロリーが高く、水分含量が低くなるように軟化素材、軟化食材の選択・組合せを行う。
【請求項10】
さらに次の3)および/または4)を組合せることによって得られる請求項9に記載の経口栄養材の製造方法、
3)調味料の添加量を通常より少なくしたもの、水分含量の少ない調味液となるように、調味料を組み合わせて調製したもの、濃縮された調味料や味が濃い調味料を組み合わせて調整したものまたは、調味液を調製した後に濃縮したものを調味液として用いる、
4)油脂、デキストリン、ビタミンまたはミネラルのいずれか一種または二種以上を加えた調味液を用いる。

【図1】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate