説明

高ターンダウン圧力噴霧バーナ

【課題】ターンダウン1:8以上の大流量・高ターンダウン圧力噴霧バーナを提供する。
【解決手段】ドラフトチューブ17及びその上流のバンパー部16を同軸2重円筒で2分割し、燃焼空気流量はダンパー部の内筒部、環状部にそれぞれ設置したルーバー形ダンパー21と22で、フローパターンはドラフトチューブ17内筒の旋回翼23、環状部の整流板24で制御し、赤熱防止用の遮蔽板25を付けたフレームファンネル18で構成されたバーナヘッドをもち、燃焼空気送風機、燃料供給ポンプをインバータで制御する圧力噴霧バーナ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスファルト・ドライヤープラント等に使用される大流量・高ターンダウン圧力噴霧バーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルト・ドライヤープラントで用いられている大流量油焚き圧力噴霧バーナはターンダウン比が1:4程度であるが、経済性・運転性の向上のため更なる高ターンダウン化がもとめられている。単一ノズルでターンダウンを広く取り、且つ、低負荷時に燃料噴霧状態をよく保つために、噴霧圧力は3MPa以上の高圧で、燃料供給量もリーターン量を含めると最大負荷量の約2倍の量をノズルに供給するため、大流量の高圧油ポンプが必要となる。
【0003】
また、高ターンダウンためには燃料供給制御だけでなく、これに対応した燃焼空気の制御も必要になるが、従来の単一のダンパーを使用した制御ではターンダウン比をこれ以上高くするのは難しい。すなわち、最大燃焼量が800〜1600L/hのような大流量バーナのターンダウンを上げると、最大流量を対象にしたドラフトチューブを用いたバーナでは最小流量時の燃焼空気流速が低くなり過ぎ、逆に中〜低燃焼を対象に決定したドラフトチューブでは最大燃焼時の空気流速が高すぎて燃焼性に問題が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大流量・高圧低粘度油ポンプは機種が少なく、運転可能流量範囲も狭いため、必要とするプラントで選択できるポンプも少なく、且つ、日本のように東日本と西日本で電気の周波数が異なるところでは供用できない等、汎用性に欠ける。
【0005】
バーナの燃焼空気制御装置はルーバー型ダンパーの採用が一般的で、燃焼量に応じ、ルーバーの開口角を変化させるが、低燃焼域ではルーバー角に対する燃焼空気の流量変化が大きく制御が難しい。たとえば、単一ダンパーで燃焼空気を調整しようとすると、負荷量100%のときルーバー角60度とすると、負荷量67%のときルーバー角約28度、負荷量33%のときルーバー角約9度となる。このような性能のダンパーでは負荷のターンダウンを上げ、最小負荷15%以下とすると、単一ダンパーでの空気調整ではルーバー開口角が非常に小さく、ほとんど調整シロがない。
【0006】
また、アスファルト・ドライヤープラントで多く採用されている圧力噴霧式バーナでは、流量を下げると噴霧圧が下がるため、燃料の微粒化が悪くなるだけでなく、ノズルによっては噴霧角が大きくなり、通常の噴霧圧では当たることの無かったフレームファンネル内部に液滴がぶつかり、油垂れやフレームファンネル内での燃焼によりフレームファンネル自体の赤熱化という問題を起こす。
【0007】
逆に、低負荷燃焼を中心にドラフトチューブを選択すると、高負荷燃焼では空気流速が速すぎ、噴霧燃料との混合が不十分で黒煙が残るという問題が起こる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ターンダウン比1:8以上という広い燃焼範囲を持つ油焚きバーナの油ポンプの適用範囲を広げる方法と燃焼空気を制御するダンパーとドラフトチューブを提供するだけでなく、ターンダウンを高くすることにより生じる燃焼性悪化対する対策をも提供することにある。
【0009】
燃料ポンプの汎用性を広げる方法はポンプのモータ制御にインバータを採用することである。これによりポンプ容量が必要な値より多少過不足があっても、モータの回転数を変化させることにより、また、電気の周波数が異なる圏に移動しても対応が可能となり、高価なポンプの交換は不要となる。
【0010】
戻油回路を設けた単一ノズル噴霧高ターンダウン比バーナでは、低燃焼時、大量の戻り
油が、配管中を巡回する為、油温が上昇し、高温の油が燃料ポンプに戻り、燃料ポンプの
耐熱限度を超える恐れがある。
【0011】
一方、ポンプの耐用時間を維持する為に、定格燃費の約2倍の吐出能力をもつポンプを選定する必要があったが、燃料ポンプモータをインバータ制御することで、必要最小限の循環流量に制御することで、上記の問題を解決することが出来る。
【0012】
また、課題の一つである低負荷時の燃焼空気の制御性の問題を克服する手段としては、燃焼空気を2分割しそれぞれを独立に調節できるよう、ドラフトチューブを同軸2重円筒とし、この内筒部及び環状部にそれぞれに流量調整用ルーバー形ダンパーを付けることと、燃焼空気送風機のモータをインバータ制御し回転数を変化させることを組合せ、燃焼空気を3層制御することで、高ターンダウンに対応することである。
【0013】
低負荷時におけるフレームファンネルの赤熱化対策としては、ファンネルの保護のため
胴部の内側に遮熱板を取り付け、遮熱板と胴部の間に冷却空気を流すこと、及び、ファンネル外部に外筒を取り付けて外気導入の冷却空気通路を設けることにより、内外から冷却することで対応する。内側に供給する空気は2重管ドラフトチューブの環状部を流れる空気で、環状部に設けたダンパーで流量を制御し、かつ冷却効果を上げるため、環状部に整流板を設け、直線流に変え供給する。
【0014】
燃焼空気と噴霧燃料との混合不足が原因の高負荷時の黒煙対策については、噴霧のノズル下流に取り付けたデフューザーにある旋回翼だけでは、混合能力が不足するため、2重管ドラフトチューブの内筒に設けたダンパーと燃料噴霧ノズルの間に旋回翼を置くことで対応する。
【0015】
戻り油回路を設けた単一孔ノズルにおいて、ターンダウン比を下げていくと、噴霧量の減少に伴い、噴霧角度が拡大し、油滴の粒度も粗大かする傾向になることが知られている。ターンダウン比1:4以上になると、燃料噴霧の一部がフレームファンネルの内側に衝突して、粗大液滴となって炉内へ飛散することがある。この液滴が過熱された炉壁で気化して、白煙の原因になるばかりでなく、炉内製品の品質にも悪影響を及ぼす。粗大液滴の飛散を防止する為に、フレームファンネルの火炎出口絞り部内側に油滴切リングを設けることで対応する。
【発明の効果】
【0016】
これにより、比較的簡単な方法で、高ターンダウン運転が可能な大流量用圧力噴霧バーナが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による大容量・高ターンダウン圧力噴霧バーナの具体的な実施例について、図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0018】
圧力噴霧でターンダウンを変えるためには、複数ノズルをノズルホルダーにセットし、燃焼量に応じ使用するノズルの本数を増やす方法か、戻り付きノズルを用い調量弁で戻り量を変化さす方法をとるのが一般的である。戻り付きノズルにおいて、ノズルの噴霧量を減らし、戻り量を増加させるとノズル圧が低下し、噴霧状態が悪くなるため、ターンダウンは1:4までが普通である。
【0019】
図1は本発明に係わる戻り付き噴霧ノズルの燃料周りのフローを示す。
【0020】
図中の1は燃料噴霧ノズル、2は燃料ポンプ、3はポンプ駆動用モータ、4はモータ制御用インバータ、5は調圧弁、6は調量弁、7は供給ライン、8は戻りライン、9はバイパスライン、10はストレーナー、11は流量計、12は安全弁である。
【0021】
この系では高ターンダウンを図り、最小流量での噴霧圧低下による燃料の噴霧状態の悪化を避けるため、多少の噴霧圧の低下では噴霧状態が悪くならないよう使用圧力を通常使用される1.5MPaから3MPaに上げるとともに、戻りライン8に常時大量の戻り油を流して、戻り油の増加による圧力低下を最小に抑えようと最大燃焼量の2倍以上の燃料をノズルに流しているが、A重油のような低粘度油を大流量供給するポンプ2の機種は少なく、一台のポンプで運転可能な流量範囲も狭い。
【0022】
このため、装置にマッチしたポンプ2を選択するのは難しいが、ポンプ2を駆動するモータ3の回転数を制御するインバータ4を採用することで、幅広く流量が設定でき、ポンプ選択が容易となる。
【0023】
日本国内において50Hz、60Hz両電源に対し容易に対応できるようになる。
【0024】
又、低燃焼時噴霧特性を適正に維持できる最小循環量での運転が可能となる。
【0025】
本発明に係わる大流量・高ターンダウン圧力噴霧バーナの側面図を図2に、正面図を図3に示す。
【0026】
このバーナは送風機13の下流にルーバー形ダンパーを内円筒部と環状部に持つ2重円筒形ダンパー部16があり、更にダンパー部16と同一形状で内環状部にはノズルアセンブリーとその下流に旋回翼23を収納し、環状部には整流板24が取り付けられたドラフトチューブ17へと続き、最後は燃焼炉内に入るフレームファンネル18で構成される。
【0027】
図4はこのダンパー部16、ドラフトチューブ17、フレームファンネル18の断面図である。
【0028】
図5は図4のA−A断面を正面から見た図である。
【0029】
図4ではダンパー部内円筒には2つのルーバー式ダンパー21があり、環状部には図示したのは2枚であるが16枚のダンパー22が取り付けてあって、互いに連携して開閉する機構になっている。
【0030】
ドラフトチューブ17は上部に開閉蓋が付いており、そこから内筒内にあるノズル1や点火棒27の付いたノズルアッセイを点検整備できる構造になっているが、ノズルホルダー28には旋回翼23も取り付けられていて、内筒外側の環状部にはダンパー22で旋回気味に流れる空気を直線流に変える整流板24が付けられている。
【0031】
このようにダンパー部16及びドラフトチューブ17を同軸2重円筒で分割し、それぞれ独立したダンパー21と22で燃焼空気の流量を制御すると、制御精度があがり、ルーバー開口角が小さく、流量変化の大きい領域の制御が容易になり、高ターンダウンでの低流量域制御に有効である。
【0032】
高燃焼域では、大量の燃焼空気が必要となるのが、図示されていない制御盤内に設置した送風機用インバータにより燃焼空気送風機の回転数を上げ、必要風量を確保することが出来る。
【0033】
低燃焼の場合、燃焼空気送風機の回転数を下げて、ルーバー形ダンパーに高静圧が掛るのを避けられるので、隙間からの漏れ量が抑制されて、制御性を維持することが出来る。
【0034】
また、各ターンダウン比に適正な送風機回転数をインバータで設定することで、省電力、騒音の低減ができる。
【0035】
また、フレームファンネル18の内側に、ファンネル胴部18aに沿った遮蔽板25を取り付けてある。これは燃料流量を下げると、燃料噴霧ノズル1の圧力が低下し、ノズルによっては噴霧角が広がり、液滴がフレームファンネル18の内側に当たり、フレームファンネル18内で主燃焼が始まるため、フレームファンネル18自体が赤熱化し、耐久性が悪くなるという問題の対策として行っており、火炎がファンネル胴部18aに直接当たるのを遮蔽するだけでなく、この遮蔽板25とファンネル胴部18aの間に燃焼空気の一部を流し、冷却による遮蔽板25の耐久性向上を目論んでいる。
【0036】
さらに、ファンネル胴部18aの外周に外筒29を取り付けて冷却空気通路を設け、炉内圧負圧により、外気を導入して、冷却効果を高めている。
【0037】
ドラフトチューブ17の環状部にある整流板24は環状部に流れる空気を直線流にし、遮蔽板25にぶつけることで遮蔽板25の冷却効果を増す狙いがある。
【0038】
ドラフトチューブ17の内筒内でノズルホルダー28先端部に取り付けられた旋回翼23は最大燃焼時の火炎長短縮と黒煙発生は対策のためである。
【0039】
ダンパー部16の内筒内にセットされたルーバー式段ダンパーで制御された空気はほぼ直線流に近く、火炎が長くなるだけでなく、ノズルから噴霧された燃料との混合も悪いため、火炎に黒煙を含み易くなるため、ドラフトチューブ17内筒先端の旋回翼23で燃焼空気に旋回を与え、燃料と燃焼空気の混合良くし、火炎形状を整えることで、問題を解決する。
【0040】
戻り油回路を設けた単一孔ノズルにおいて、噴霧量を下げていくと、噴霧量の減少に伴い、噴霧角度が拡大し、油滴の粒度も粗大かする傾向になることが知られおり、ターンダウン比1:4以上になると、低噴霧量時、燃料噴霧の一部がフレームファンネル18の内側に衝突して、粗大液滴となって炉内へ飛散することがある。この液滴が過熱された炉壁で気化して、白煙の原因になるばかりでなく、炉内製品の品質にも悪影響を及ぼす。フレームファンネル18の火炎出口絞り部内側に油滴切リング30を設けることで粗大液滴を捕捉・燃焼し、炉内への飛散を防止する。
【0041】
なお、本発明はダンパー部17における内円筒中のダンパー21の数や同環状部のダンパー22の数、また、ドラフトチューブ18における内円筒中の旋回翼23の数や環状部の整流板数で制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】戻り付き噴霧ノズルの燃料周りのフロー図である。
【図2】大容量・高ターンダウン圧力噴霧バーナの側面図である。
【図3】大容量・高ターンダウン圧力噴霧バーナの正面図である。
【図4】バーナヘッド断面略図である。
【図5】A−A視野図である。
【符号の説明】
【0043】
1 燃料噴霧ノズル
2 燃料ポンプ
3 ポンプ駆動用モータ
4 油ポンプ用制御用インバータ
5 調圧弁
6 調量弁
7 供給ライン
8 戻りライン
9 バイパスライン
10 ストレーナー
11 流量計
12 安全弁
13 送風機
14 送風機用モータ
15 バーナ端子箱
16 ダンパーボックス
17 ドラフトチューブ
18 フレームファンネル
18a ファンネル胴部
18b ファンネル先端部
19 デフューザー
20 送風機サイレンサー
21 円筒部ダンパー
22 環状部ダンパー
23 円筒部旋回翼
24 環状部整流板
25 遮蔽板
26 内筒絞りリング
27 点火棒
28 ノズルホルダー
29 ドラフトチューブ胴部外筒
30 油滴切りリング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト・ドライヤープラント等に使用される大容量・高ターンダウン圧力噴霧形バーナにおいて、燃焼空気を2分割しそれぞれを独立に調節できるよう、ドラフトチューブ(17)を同軸2重円筒とし、この内筒部及び環状部にそれぞれ流量調整用ルーバー形ダンパー(21)(22)を付けることを特徴としたバーナ。
【請求項2】
請求項1の構造において、燃焼空気送風機の回転数をインバータ制御することと、ルーバー形ダンパー制御の組合せで、1:8以上の高ターンダウン燃焼対応の燃焼空気風量調整を可能としたことを特徴とする請求項1に記載のバーナ。
【請求項3】
ファンネル(18)の赤熱化防止対策のため、ファンネル胴部の内側に遮熱板(25)を取り付け、遮熱板と胴部の間に冷却空気を流し、この冷却空気は2重管ドラフトチューブの環状部を流れる空気で、環状部に設けたダンパー(22)で流量を制御し、かつ冷却効果を上げるため、環状部出口に整流板(24)を設け、直線流で流す請求項1に記載のバーナ。
【請求項4】
燃焼空気と噴霧燃料との混合不足が原因の高負荷時の黒煙対策及び短炎化につき、2重管ドラフトチューブの内筒に設けたダンパー(21)と燃料噴霧ノズルの間に旋回翼(23)を設けることで対応した請求項1に記載のバーナ。
【請求項5】
請求項3のファンネル(18)において、更なる赤熱化防止却対策として、ファンネル胴部(18a)の外側に冷却空気通路となる外筒(29)を設け、炉内負圧を利用して、外気を誘引するようにした請求項1に記載のバーナ。
【請求項6】
フレームファンネル(18)の内側に油滴切りリング(30)を設け、炉内へ油滴が落ちないようにした上記請求項1のバーナ。
【請求項7】
燃料供給ポンプのモータにインバータ制御(4)を使用し、ポンプの回転数を制御して、吐出油量を制御するようにした請求項1に記載のバーナ。
【請求項8】
アスファルト・ドライヤープラントの熱効率を改善するため、プラントの廃熱により燃焼空気を予熱ように、燃焼排ガスをバーナ送風機の吸引側に戻すシステムをもつ請求項1に記載のバーナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−41816(P2009−41816A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206030(P2007−206030)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(595088034)ニッポメックス株式会社 (11)
【出願人】(390029207)オリンピア工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】