説明

高出力超音波トランスデューサ

圧電セラミックス素子と、音響インピーダンス整合板と、圧電素子の各々に電圧を供給するように配置された電気接点の組立体とからなる高出力超音波トランスデューサが開示される。1つ又は複数の弾性的な導電素子が、圧電素子と、インピーダンス整合板と、電気接点の組立体との間の電気接触を可能にする。トランスデューサを使用する装置及び方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本トランスデューサは、概して高出力超音波トランスデューサの分野に関し、特に高出力超音波療法のためのトランスデューサに関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本願は、37CFR1.53(b)のもとに出願された非仮出願であり、2008年7月16日に出願され且つ出願番号61/081,110が与えられ、完全な形で付録Aとして本明細書に添付されている米国特許仮出願を参照により含むものとする。
【背景技術】
【0003】
医療診断の目的での超音波の照射は周知である。しかしながら、超音波の治療的用途の開発は、比較的新しく、急速に発展している技術である。超音波による治療には多くの利点があり、一般に他の治療法と比較して副作用が少ないと認められている。
【0004】
望ましい治療効果をもたらすために、超音波の照射は、診断目的で必要とされるものより大きな大きさを超えるオーダーの超音波パワーを必要とする。超音波は、超音波トランスデューサを用いて治療対象に導入される。超音波トランスデューサは、電気エネルギーを超音波エネルギー又は超音波に変換する装置である。通常、この用語は、電気エネルギーを超音波に変換する圧電トランスデューサ(圧電変換器)を指す。したがって、トランスデューサ技術の進歩は、この技術領域で重要な役割を果たす。
【0005】
高出力超音波トランスデューサの特徴は、高デューティサイクル、集束超音波及び焦点位置の制御、治療組織の深層へのアクセスにより、損傷なく高いピーク出力を提供し維持する能力、及びオペレータが治療パラメータを変更することを可能にする制御装置へのフィードバックを提供する能力に関連する。
【0006】
治療に使用される典型的な高出力トランスデューサは、両側に導電性電極を有し、且つ交流電圧(交流電流、AC)発電機によって駆動される、圧電材料のプレートから構成される。これらのトランスデューサの典型的な動作周波数は100kHzから5MHzまでの範囲にある。通常、治療位置に接触させられるトランスデューサ側面は、トランスデューサの音響インピーダンスと治療対象の音響インピーダンスとの間の大きな差を補償する音響インピーダンス整合素子を有する。圧電材料の反対側は、超音波反射材料又は吸収材料に連結される。高出力超音波トランスデューサによって生成されるエネルギーの効率的な利用は必須であるため、吸収バッキングは使用されない。吸収バッキングは通常、大部分の超音波エネルギーを反射する圧電セラミックスにより大きな音響インピーダンス不整合を有するバッキングに置き換えられる。このような構造は超音波エネルギーの浪費を低減するからである。反射材料は、圧電材料の音響インピーダンスと著しく異なる音響インピーダンスを有するものであることができる。
【0007】
空気は最高の反射材料である。しかし、熱除去が大きな問題となる高出力トランスデューサに空気を使用することはできない。圧電セラミックスは効率的に熱を除去する方法を備えていなければならず、空気は適切な熱伝導性を有していない。熱伝導性の高い油や固体物質は、より頻繁に高出力超音波トランスデューサに使用される。効率的な熱除去の要件は、良好な超音波カップリングに用いられる解決策のいくつかと矛盾する。
【0008】
フェイズドアレイトランスデューサは、従来の平面又は曲面圧電トランスデューサよりも有効であり、それらは通常、高出力超音波治療の用途に使用される。フェイズドアレイトランスデューサは、圧電材料を、「画素(ピクセル)」とも呼ばれる個々の圧電素子に切断することによって作られ、各画素は割り当てられた電気的ドライバへの独自の有線接続を有する。電気的ドライバの各々の位相を制御することにより、超音波ビームを治療位置で電子的に走査することができる。フェイズドアレイ構造は、単一のトランスデューサに比べて、寄生振動モードを低減できるという利点がある。
【0009】
高いピーク出力及び比較的小さい周波数で作動する高出力フェイズドアレイトランスデューサの製造及び使用は、多くの問題を引き起こす。圧電素子又は画素の寸法及び圧電セラミックスの材料厚さは、数ミリメートルの範囲にある。それらは、接着剤又は半田付け、又は一方を他方の上に材料のポッティングをすることによって、音響インピーダンス整合板に取り付けられる。超音波振動によって生じる機械的負荷は、圧電セラミックスと整合板との界面で最大になる。高いピーク出力では、結合の強さが充分ではなく、結合が壊れるので、トランスデューサの耐用年数は短い。トランスデューサを酷使した場合には、不可逆的な損傷が生じることがある。半田付けは接着より強い結合を形成し、このため、結合の代わりに、セラミックス圧電材料が機能しなくなる。
【0010】
圧電セラミックスに半田付けか又は接着された電極は、高出力では機能しなくなる傾向がある。極端な場合、本当に高い超音波パワーが加えられると、電圧供給導線がせん断引張りによって切断される可能性がある。フレキシブルプリント回路の圧電セラミックスの接点への導線の直接的な接着又は半田付けは、いずれも高出力で機能しなくなる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これらの及び他の問題は、技術のより急速な発展を妨げており、部分的に又は完全に解決されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
高出力超音波トランスデューサは、導電性音響インピーダンス整合板と圧電素子の各々に電圧を供給するように構成された電気接点の組立体との間に設置された圧電セラミックス素子を含む。圧電セラミックス素子をインピーダンス整合板と電気接点の組立体とに押しつける1つ又は複数の弾性的な導体素子によって生じる力は、圧電素子への電圧供給のために必要とされる導電路を使用可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面を参照して、非限定的な実施例としてのみ開示を提供する。図面は、必ずしも正確な縮尺ではなく、むしろ、方法の原理を示すことに重点が置かれている。
【図1】本発明の超音波トランスデューサの例示的な実施形態の断面の概略図である。
【図2】圧電セラミックス素子を設置及び保持するための複数セクション容器の例示的実施形態の概略図である。
【図3】本発明の超音波トランスデューサの例示的な実施形態の他の断面の概略図である。
【図4】本発明の超音波トランスデューサの上面の概略図である。
【図5A】本発明の超音波トランスデューサの例示的な組立体の概略図である。
【図5B】本発明の超音波トランスデューサの例示的な組立体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
高出力超音波トランスデューサと、それにより記載されたトランスデューサを使用するための装置及び方法の原理及び実施は、図面を参照することにより理解することができる。非限定的な、例示的な実施形態のいくつかの図面及び付随する記載にわたって、類似の符号は類似の要素を示す。「上」、「下」、「前」、「後」などの方向の用語は、記載されている図の向きに関して用いられる。本発明の実施形態の構成部品は多くの異なる向きで配置することができるので、方向の用語は説明のために用いられるものであり、決して制限するものではない。
【0015】
図1を参照すると、図1は本発明の超音波トランスデューサの例示的な実施形態の断面の概略図である。トランスデューサ100は、蓋又はカバー108によって覆われたハウジング104を備える。1つ又は複数の圧電セラミックス素子112であって、その下側120及び上側124に配置された接点を有する圧電セラミックス素子112は、各々の圧電素子112が独立して作動することができ且つ隣接する圧電素子の動作に干渉しないように、図2に更に詳細に示される複数セクション容器116内に配置される。
【0016】
圧電素子を備えた容器116は、圧電素子の各々の接点の一方がハウジング104の内部キャビティ132内に設置された導電性音響インピーダンス整合板128と電気的に通信状態にあるように、ハウジング104のインナーキャビティ132内に設置される。インピーダンス整合板128は、金属粒子又は黒鉛粉末などの導電性粒子と樹脂との混合物である。エポキシ樹脂はこのような樹脂の実例であることができ、詳細には、黒鉛を含浸させたエポキシ樹脂、又は他のいかなる導電材料を含浸させたポリマーもエポキシ樹脂と類似の特性を有する。これらの材料は導電性があり、接点120への電圧の印加を可能にする。導電性音響インピーダンス整合板128は、トランスデューサ100の圧電素子112の全てにとって共通の電気接点となる。整合板はまた、銅又は金などの導電材料の薄層によってメッキされた非導電性材料で作られることができる。
【0017】
リジッドプリント配線板又はフレキシブルプリント配線板136として実現される電気接点の組立体、金属被覆セラミックス、又は圧電素子112の各々に電圧を提供するように構成された他の形状の接点が、超音波エネルギー供給源114に連結される。供給源114は、前記圧電セラミックス素子112の各々に電圧を提供するように動作する1つ又は複数の超音波発生器又はドライバ118と、超音波発生器又はドライバ118の動作、及びしたがって圧電セラミック素子112の動作を同期させるコントローラ122とを含み得る。
【0018】
複数セクション容器116の適切な穴に挿入された弾性的な導電素子140は、圧電素子112の第2の接点124とフレキシブルプリント回路136として実現される電気接点の組立体の突出するか又は平らなパッド130(図4)との間に設置される。それらはフレキシブルプリント回路136から圧電セラミックス素子112まで電気が通ることを可能にする。素子140によって加えられた圧力が圧電セラミックス112に伝達されて導電インピーダンス整合板128との接触を確実にするように、中間のプレート142が回路136を弾性的な素子140に固定し且つわずかに押しつけるように構成される。カバー108がキャビティ132を密封する。弾性的な導電素子140は、金属ばね又は高分子導電性材料、例えば、黒鉛又は金属粒子添加シリコーン又は他の類似のポリマーであってもよい。弾性的な素子140によって発生した力は、圧電セラミックス素子112を導電インピーダンス整合板128に押しつけることによって圧電セラミックス素子112の各々に作用し、且つ、圧電素子112の第1の端部120と導電音響インピーダンス整合板128との間の信頼性の高い電気接触を可能にしている。弾性的な素子140の第1の端部は、第2の圧電電極124と接触し、一方、弾性的な素子140の第2の端部はフレキシブルプリント回路136のパッド130と接触している。
【0019】
圧電素子に取り付けられた導線、導電性接着剤又は半田はなく、圧電セラミックス112とインピーダンス整合板128との界面で超音波振動によって生じる負荷は界面又は接点に作用しない。
【0020】
圧電セラミックス素子112から音響インピーダンス整合板128への超音波エネルギーの効率的な転送のために、それらの間の空間を流体で満たすことができる。一般に、表面が理想的に整合する場合、流体は必要とされないだろう。しかし、実際には表面は理想的に整合せず、効率的な超音波カップリングは接触媒質によって達成することがより容易である。このような媒質は、流体、ゲル又はグリースであることができる。実際には、適当な音響特性を有する大部分の非固体材料をカップリング材料として用いることができる。種々な油によって、特にヒマシ油によって最もよい結果が得られることが判明した。油は、圧電セラミックス112と音響インピーダンス整合板128の界面にある非常に小さい間隙を埋め、圧電素子112とインピーダンス整合板128との間に薄い油層を形成する。油はトランスデューサ100のキャビティ132を埋めることができ、圧電セラミックス素子112は油に浸されながら作動する。これにより、圧電素子112からの熱除去が改善され、更に素子の間での高圧スパーク放電が防止される。
【0021】
また、トランスデューサを冷却することによりトランスデューサ性能が改善されることが判明した。この特性は、低温で油粘度が増大するという事実及び/又は流体の蒸気圧の低下によると考えられる。油、特にヒマシ油は、高出力超音波トランスデューサ100のキャビティ132を満たす適切な流体であることが分かった。これはおそらく、ヒマシ油の比較的低い蒸気圧によるものである。高い蒸気圧を有する流体は、高出力超音波の作用下でキャビテーション気泡を生じる傾向がある。キャビテーション気泡は、エネルギーを吸収し、トランスデューサ部品に損傷を与える可能性がある。
【0022】
実験により、トランスデューサのキャビティ132を満たす油の脱ガスがトランスデューサの性能を向上させることが示された。これは、油に閉じ込められた空気の削減と油内に存在する揮発性成分の抽出とによるものであり、それによりキャビテーションのリスクが低減すると考えられる。したがって、油の脱ガスは、油の揮発性成分の蒸気圧より低い圧力で行われる。液体又は非固体材料を使用することにより、トランスデューサ部品への負荷が軽減され、非常に高出力でトランスデューサを駆動する場合でも、トランスデューサへの不可逆的な損傷が防止される。圧電セラミックス素子112と整合板128との間に固体の固定された接点がないことは、更に、そのプロセスに関与するトランスデューサの構成部品への損傷の可能性を軽減する。
【0023】
エポキシ樹脂含浸黒鉛から上記のように作られた音響インピーダンス整合板128は、良好な導電体であることに加えて、良好な熱伝導体でもある。圧電セラミックス素子112の動作の間に発生した熱は、インピーダンス整合板128を介して一般にアルミニウム又は銅などの良好な熱伝導体で作られるハウジング104に流れ、ハウジング104を介して熱電冷却器144に流れる。圧電セラミックス素子112が浸されたハウジング104の内部キャビティ132を満たす油は、伝導及び対流によって効率的に熱を除去する。自然対流はキャビティ132内の温度を均一化にし、必要な場合には、キャビティ132内の油の強制循環を導入することができる。
【0024】
カバー108の表面148に配置された熱電冷却器144は、ハウジングや油を冷却し、トランスデューサの望ましい動作温度を維持するように動作する。熱分配フィン156と冷却液供給路160とを有するヒートシンク152は、熱電冷却器144の高温側を冷却する。冷却液は、水又は作業に適した他のいかなる流体でもよい。上記冷却方式を有するトランスデューサは、熱除去の問題を解決し、トランスデューサにいかなる損傷も引き起こすことなく、高い超音波エネルギー準位及び長い動作時間でのトランスデューサの動作を可能にする。
【0025】
油は、ヒマシ油を含め、絶縁物であるが、弾性的な導電素子136が圧電セラミックス112を押圧し、それらの接点120がインピーダンス整合板128と電気的に通信状態にあるとき、それらの間には油の存在にもかかわらず電気が通過する。この特徴への1つの寄与因子は、接触面が完全でなく、上記のように、ミクロンの何分の1のオーダーで非常に小さい間隙と丘状部とを有することである。圧電セラミックス112の表面上にある丘状部は、音響インピーダンス整合板128の表面上にある丘状部と直接接触し、電気はこれらの接点を通過する。音響インピーダンス整合板128と接触している丘状部と油で満たされた間隙との総合的な組合せは、比較的小さい電気抵抗を有する。圧電素子112の他方の電極124は、圧電セラミックス素子112を整合板に押しつける弾性的な導電素子140と接触している。弾性的な導電素子140により可能となる電気接続は、圧電セラミックス112に小さくてほとんど無視できる音響負荷を発生させるが、高出力超音波は、電圧(電気)供給路に損傷を与えない。圧電セラミックスの電気接続は、一般的に高出力超音波によって損傷を受ける導線、半田付け又は他の素子を含まない。
【0026】
代替的な実施形態において、音響インピーダンス整合材又は整合板は、導電材料の層でコーティングされてもよい。
【0027】
高出力超音波トランスデューサによって発生した出力のより大きな量を利用するために、矢印Aによって示されるように、超音波エネルギーの音響インピーダンス整合板128から離れる方向に伝搬する部分を反射することが望ましい。良好な超音波反射は、大きな音響インピーダンス不整合を有する材料の境界において達成することができる。空気又は真空は、圧電セラミックスとの大きな音響インピーダンス不整合を有するが、いずれも低い熱伝導率を有する。キャビティ132を満たし、且つ音響インピーダンス整合及びトランスデューサ冷却液として機能する同じ油が、圧電セラミックスとの音響インピーダンスの大きな不整合を有する。油の音響インピーダンスは、約1.4MRであり、約33〜34MRである圧電セラミックスの音響インピーダンスよりかなり小さい。
【0028】
トランスデューサの動作の更なる改良は、キャビティ132を満たすヒマシ油からガスを除くことによって達成される。油の脱ガス過程は、油内に溶解しているガスの除去に加えて、揮発性化合物の濃度の低減を容易にする。油の脱ガス及び揮発性化合物の濃度の低下は、超音波エネルギーの一定量を吸収し且つ近くの材料に損傷を生じる可能性がある油内のキャビテーション気泡の形成を妨げる。
【0029】
図2は、圧電セラミックス素子112を設置し、保持するための複数セクション容器116の概略図である。各圧電素子112は、そのネスト200に挿入される。素子の1つによって放出される超音波が隣接する素子に影響を及ぼさないように、壁204はネストと圧電素子112との間を分離する。容器116は、所定の位置に固定されたとき、接点120が音響インピーダンス整合板128と電気的に通信状態にあることが可能であるように、素子112を設置する(図1)。矢印208は、圧電セラミックス素子112の挿入方向を示し、矢印212は、ばねとして示される弾性的な導体素子140の挿入方向を示す。
【0030】
図3は、本発明の超音波トランスデューサの更なる断面の概略図である。図は、圧電セラミックス素子112、複数セクション容器116、各圧電セラミックス素子112用のネスト200を画定する壁204、及びフレキシブルプリント回路136の位置を示す。図1に示される一実施形態において、インピーダンス整合板128は固体板である。図3に示される別の実施形態において、インピーダンス整合板128は、圧電セラミックス素子112と接触する側面に切り込み300を有する固体板である。切り込み300は、素子間における音響のカップリングと、整合板における表面波の伝播とを低減するのに役立つ。このようにして、トランスデューサの効率、フォーカシング及び走査能力が改善される。
【0031】
図4は、本発明の超音波トランスデューサの上面の概略図である。トランスデューサ100は、カバー108、熱電冷却器144、及びそれらに関連する他の構成部品なしで示される。フレキシブルプリント回路136はパッド130を含み、パッド136は、回路136の表面の上に突出し、弾性的な導電素子140とのより容易な接触を可能にすることができる。コネクタ400は、圧電セラミックス素子112の各々とそれらの個々のドライバ118との間の電気接続を提供する(図1)。
【0032】
図5A及び5Bは、治療的使用のための本発明の超音波トランスデューサの2つの例示的な組立体の概略図である。治療は、脂肪組織の削減、皮膚のしわの除去、及び他の美容及び治療的な用途を含む。トランスデューサ100は、例えば、同譲受人に譲渡され、付録Aとして参照の目的のみのために本願明細書に添付されている米国特許仮出願第61/081,110号に開示されるような超音波組織照射用器具の構成部品として、組織に接触させることができる。組織と接触する図5Aに示されるトランスデューサの表面は、望ましい組織突出角度に合わせるように傾斜させることができる。超音波の組織へのカップリングを改善するために、ウェッジ504が、組織とインピーダンス整合板128との間に設置される。ウェッジは、超音波反射を防止するために、人体の音響インピーダンスに近い音響インピーダンスを有する材料から作られる。ポリウレタン又は他の適当なポリマーを用いることができる。図5Bに示される他の実施形態において、トランスデューサ100は、組織の比較的平らな部分と接触するように適合されている。超音波の組織へのカップリングを改善するために、ポリウレタン又は類似物から作られた平板508が、組織とインピーダンス整合板128との間に設置される。
【0033】
上記の高出力超音波トランスデューサは、様々な治療的医療用途に使用することができる。しかしながら、トランスデューサの使用は医療用途のみに限定されない。トランスデューサは、さまざまな流体混合プロセス、さまざまな超音波クリーニングの用途、欠陥検出の用途、及び高い超音波パワーを必要とする他の用途に適用することができる。
【0034】
非限定的な実施例として提供される典型的なトランスデューサ作動パラメータ及び構成部品は下記の通りである。
【0035】
高出力トランスデューサ用の圧電材料は、一般的にPZTセラミックス系の1つである。トランスデューサの発振周波数は、100kHz〜5MHz、又は100kHz〜1MHz、又は100kHz〜400kHzの間である。トランスデューサ放射表面におけるピーク出力は10W/cm2〜500W/cm2、又は50W/cm2〜200W/cm2の間であることができ、典型的な駆動パルスの長さは20マイクロ秒〜1ミリ秒の間である。平均超音波パワーは、0.1W/cm2〜10W/cm2、又は1W/cm2〜3W/cm2の間であることができる。トランスデューサにおける圧電セラミックス素子の典型的な数は、4〜128、又は8〜64の間であることができ、配列における素子(画素)の各々の寸法は、1×1×1mmから6×6×10mmまでの範囲にわたる。
【0036】
多くの実施形態を説明してきた。それでも、超音波トランスデューサの趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行い得ることが理解されよう。したがって、他の実施形態は以下の請求項の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高出力超音波トランスデューサであって、前記トランスデューサは、
1つ又は複数の圧電セラミックス素子、音響インピーダンス整合板、及び前記圧電素子の各々に電圧を提供するように配置された電気接点の組立体と、
前記インピーダンス整合板にそれらを押しつけることによって前記圧電セラミックス素子の各々に作用し、且つ前記圧電素子と前記インピーダンス整合板と前記電気接点の組立体との間の電気接触を可能にする1つ又は複数の弾性的な導電素子と、
前記圧電セラミックス素子と前記音響インピーダンス整合板との間に配置された非固体材料薄層と
を備える、高出力超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記インピーダンス整合板は導電性粒子と樹脂との混合物で作られている、請求項1に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記導電性粒子は、金属粒子及び黒鉛粉末のグループの少なくとも1つである、請求項2に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記樹脂はエポキシ樹脂である、請求項2に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記インピーダンス整合板は導電性である、請求項1に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記インピーダンス整合板は熱伝導性である、請求項1に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記インピーダンス整合板は導電性材料の薄層でメッキされている、請求項1に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記電気接点の組立体は、リジッドプリント配線板、フレキシブルプリント配線板、及び金属被覆セラミックスのグループの少なくとも1つである、請求項1に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記弾性的な導電素子は、金属ばね及び高分子導電性材料のグループの少なくとも1つである、請求項1に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項10】
前記非固体材料薄層は、油、音響インピーダンス整合ゲル、及び非固体材料のグループのうちの1つである、請求項1に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項11】
前記非固体材料薄層はヒマシ油である、請求項10に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項12】
前記非固体材料薄層はヒマシ油である、請求項1に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項13】
前記圧電セラミックス素子は油に浸されている、請求項1に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項14】
前記油はヒマシ油である、請求項13に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項15】
前記油は、空気と揮発性化合物の濃度を減らすために脱ガスされる、請求項10に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項16】
前記油は、前記圧電セラミックス素子によって生成される超音波エネルギーを反射する、請求項10に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項17】
前記油は前記トランスデューサの温度を均一化する、請求項10に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項18】
熱伝導材料で作られたハウジングを更に備える、請求項1に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項19】
前記トランスデューサの温度を望ましい範囲内に維持するように作動する熱電冷却器を更に備える、請求項1に記載の高出力超音波トランスデューサ。
【請求項20】
超音波組織照射用装置であって、前記装置は、
複数の超音波発生器と、
超音波トランスデューサであって、1つ又は複数の圧電セラミックス素子、音響インピーダンス整合板、弾性的な導電素子、前記圧電セラミックス素子と前記インピーダンス整合板と前記トランスデューサの電圧供給素子との間の電気接触を可能にする電気接点の組立体、及び前記圧電セラミックス素子と前記音響インピーダンス整合板との間に配置された非固体材料薄層を有する超音波トランスデューサと
を備える、超音波組織照射用装置。
前記超音波発生器を制御し、前記圧電セラミックス素子の各々に電圧を供給し、それらの動作を同期させるように作動するコントローラを更に備える、請求項19に記載の超音波組織照射用装置。
【請求項21】
前記超音波トランスデューサは、前記圧電セラミック素子への共通の電極及び温度均一化流体として機能する導電性音響インピーダンス整合板を更に備える、請求項20に記載の超音波組織照射用装置。
【請求項22】
前記トランスデューサの電圧供給素子は、前記音響インピーダンス整合板と、前記電気接点の組立体とである、請求項21に記載の超音波組織照射用装置。
【請求項23】
前記トランスデューサの電圧供給素子は、前記音響インピーダンス整合板と、前記電気接点の組立体とである、請求項20に記載の超音波組織照射用装置。
【請求項24】
前記非固体材料薄層は、油と音響インピーダンス整合ゲルのグループのうちの1つである、請求項20に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項25】
前記非固体材料薄層はヒマシ油である、請求項24に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項26】
前記非固体材料薄層はヒマシ油である、請求項20に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項27】
高出力超音波トランスデューサ内に電気接点を提供する方法であって、前記方法は、
1つ又は複数の圧電セラミック素子と、音響インピーダンス整合板と、前記圧電セラミックス素子の各々に電圧を供給するように構成された電気接点の組立体とを設けることと、
前記圧電素子を前記インピーダンス整合板に押しつけるように構成され、且つ前記電気接点の組立体と接触している1つ又は複数の弾性的な導体素子を設けることと、
前記圧電セラミックス素子と前記音響インピーダンス整合板との間に配置された非固体材料薄層を設けることと
を含む、電気接点を提供する方法。
【請求項28】
前記非固体材料は、前記圧電セラミックス素子と前記音響インピーダンス整合板との間の隙間内にある充填材である、請求項27に記載の電気接点を提供する方法。
【請求項29】
複数の圧電セラミックス素子と、前記複数の圧電セラミックス素子への共通の電極である導電インピーダンス整合板と、前記圧電セラミック素子と前記導電インピーダンス整合板との間に配置された非固体材料薄層とを含む高出力超音波トランスデューサ内に電気接点を提供する方法であって、前記材料は前記圧電セラミックス素子と前記音響インピーダンス整合板との間の隙間を満たしている方法。
【請求項30】
高出力フェイズドアレイ超音波トランスデューサであって、前記トランスデューサは、
1つ又は複数の圧電セラミックス素子と、
導電音響インピーダンス整合板と、
前記圧電素子の各々に電圧を供給するように構成された電気接点の組立体と、
前記圧電素子と前記電気接点の組立体との間に配置されて前記圧電素子を前記インピーダンス整合板に押しつけ、且つ前記圧電素子と前記電気接点の組立体との間の導電路を使用可能にする1つ又は複数の弾性的な導体素子と、
前記圧電セラミックス素子と前記音響インピーダンス整合板との間に配置された非固体材料薄層と
を備える、高出力フェイズドアレイ超音波トランスデューサ。
【請求項31】
前記圧電セラミックスの前記押し付けは、前記インピーダンス整合板との電気接触を可能にする、請求項30に記載の高出力フェイズドアレイ超音波トランスデューサ。
【請求項32】
前記インピーダンス整合板は、前記1つ又は複数の圧電セラミックス素子への共通の電極である、請求項30に記載の高出力フェイズドアレイ超音波トランスデューサ。
【請求項33】
超音波組織照射の方法であって、前記方法は、
音響インピーダンス整合板と、複数の圧電セラミックス素子と、弾性的な導電素子と、前記圧電セラミックス素子と前記音響インピーダンス整合板との間に配置された非固体材料薄層とを有する超音波トランスデューサを組織に接触させることと、
超音波エネルギーを放出するように前記トランスデューサを作動することと、
前記超音波エネルギーで組織を治療することと
を含む方法。
【請求項34】
超音波組織照射用装置であって、前記装置は、
複数の超音波発生器と、
超音波トランスデューサであって、1つ又は複数の圧電セラミックス素子と、弾性的な導電素子と、前記圧電セラミックス素子と前記トランスデューサの電圧供給素子との間の電気接触を可能にする電圧供給素子とを有する超音波トランスデューサと、
前記超音波発生器を制御し、前記圧電セラミックス素子の各々に電圧を供給し、それらの動作を同期させるように作動するコントローラと
を備える装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2012−511938(P2012−511938A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524515(P2011−524515)
【出願日】平成21年7月12日(2009.7.12)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000694
【国際公開番号】WO2010/023653
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(504359488)シネロン メディカル リミテッド (25)
【Fターム(参考)】