説明

高分子担持キラルジルコニウム触媒の製造方法

【課題】
本発明は、空気中でも安定で、長期保存の可能な実用的な高分子固定型のキラルなジルコニウム触媒を提供する。
【解決手段】
本発明は、キラルな配位子を有するキラルジルコニウムにおいて、当該ジルコニウムがさらにポリマーに結合したイミダゾール基を配位子とていることを特徴とするキラルなジルコニウム化合物、その製造方法、及びそれを用いた触媒に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラルな配位子を有するキラルジルコニウムにおいて、当該ジルコニウムがさらにポリマーに結合したイミダゾール基を配位子とていることを特徴とするキラルなジルコニウム化合物、その製造方法、及びそれを含有してなる触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、香料、化粧料、農薬、あるいは機能性ポリマー合成等の分野において各種の不斉合成反応法が重要な手段となってきている。これらの不斉合成に用いられる不斉触媒の中には、高活性で、目的の反応を高選択的に進行させるものも多く存在するが、多くは酸素、光、熱等の外部刺激により分解や不活性化を起こしやすく不安定である。その為、ほとんどの不斉触媒は、安定な前駆体から使用直前に調製する必要があり、安定で、長期保存が可能であり、反応後に回収、再利用できるような不斉触媒は極めてまれであるというのが実情である。
【0003】
本発明者らは、これまで不斉マンニッヒ型反応等に於いて有用なキラルジルコニウム触媒を開発し報告している(例えば、特許文献1及び2参照、並びに非特許文献1等参照)。しかし、このようなキラルジルコニウム触媒もまた、空気中や水存在下では不安定であり長期保存して利用したり、反応後に回収、再利用したりすることはほとんど不可能であった。そのためほとんどの反応系に於いて、反応毎にその場で調製し、使用していたのが実情である。
本発明者らは以上の問題を解決する方法として、長期保存に於いても高い触媒能を維持し、安定で反応後の回収、再利用も可能なキラルジルコニウム触媒の創成を目指し、ゼオライトに担持させたマンニッヒ型反応に適切な実用的キラルジルコニウムを開発した(特許文献3参照)。
一方、本発明者らは、マンニッヒ型に適した触媒を調製した後にヘキサンを加えることにより発生する不溶性固体もまた触媒的不斉マンニッヒ型反応を効果的に促進し、目的物を高収率且つ高選択的に合成する手法を見いだし、この不溶性固体もまた、長期に亘って安定に保存可能であることを明らかとした(非特許文献2参照)。この不斉触媒の安定化にはアミンや溶媒の寄与が大きく、実際ここで単離した粉末は、ジルコニウム成分:配位子:安定化剤が1:2:2の割合でジルコニウム金属周りの6配座空間を埋めていることが示されている。
上記触媒は反応終了後、ヘキサン等の貧溶媒を加えることにより、再び不溶性固体となって回収、再使用できるが、粉末状の為取り扱いに難がある。そのため、汎用される解決法としては不斉配位子を高分子上に固定化するのが一般的であるが、この触媒系に於いては中心金属と不斉配位子が1:2の形を取っているため、事実上不可能であった。ちなみに1:1の形を取っているアザディールス−アルダー反応用の3、3−アリール型においては高分子固定化に成功している(特許文献4参照)。
【0004】
【特許文献1】特開1999−033407号公報
【特許文献2】特開2003−261490号公報
【特許文献3】WO−003076072号公報
【特許文献4】特開2001−252569号公報
【非特許文献1】Ishitani, H., Ueno, M., Kobayashi, S. J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 8180
【非特許文献2】Saruhashi, K. Kobayashi, S., J.Am.Chem.Soc. 2006, 128, 11232-11235
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、空気中でも安定で、長期保存の可能な実用的な高分子固定型のキラルなジルコニウム触媒を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、触媒活性の優れたジルコニウム触媒について、安定性や取り扱いの容易なものに改善すべく鋭意検討してきた。特に、不斉マンニッヒ型反応を円滑に進行させるキラルジルコニウム触媒を、触媒活性を維持したままで高分子上に固定化させることは従来は不可能であるとされていたが、本発明者らは鋭意検討して結果、意外なことにイミダゾール基を配位させることにより、高分子上に固定化させても触媒活性を維持することができることを見出し、キラルなジルコニウム化合物の固定化に成功した。
【0007】
即ち、本発明は、キラルな配位子を有するキラルジルコニウムにおいて、当該ジルコニウムがさらにポリマーに結合したイミダゾール基を配位子とていることを特徴とするキラルなジルコニウム化合物に関する。
また、本発明は、重合可能な有機基を結合しているイミダゾリル基を配位したキラルなジルコニウム化合物を、単独又は他のモノマーの存在下に重合させて、前記した本発明のキラルなジルコニウム化合物を製造する方法に関する。
さらに、本発明は、前記した本発明のキラルなジルコニウム化合物を含有してなる触媒、より詳細には不斉マンニッヒ型反応の触媒に関する。
【0008】
以下に本発明を依り詳細に説明する。
(1) キラルな配位子を有するキラルジルコニウムにおいて、当該ジルコニウムがさらにポリマーに結合したイミダゾール基を配位子としていることを特徴とするキラルなジルコニウム化合物。
(2) ポリマーが、ポリスチレンである前記(1)に記載のキラルなジルコニウム化合物。
(3) キラルなジルコニウム化合物が、次の一般式(1)、
【0009】
【化6】

【0010】
(式中、L及びLは、それぞれ独立して隣接する酸素原子と共にキラリティーを有する配位子を示し、Y及びYはそれぞれ独立してイミダゾール基とポリマーZ及びZをそれぞれ結合させるリンカー基を示し、Z及びZはそれぞれ独立してポリマーを示す。)
で表されるキラルなジルコニウム化合物である前記(1)又は(2)に記載のキラルなジルコニウム化合物。
(4) 前記一般式(1)におけるL及びLが、次の一般式(2)、
【0011】
【化7】

【0012】
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を示す。)
で表されるビナフタレン誘導体から誘導されたものである前記(3)に記載のキラルなジルコニウム化合物。
(5) 前記一般式(1)におけるY及びYが、炭素数3〜30の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である前記(3)又は(4)に記載のキラルなジルコニウム化合物。
(6) 前記一般式(1)におけるZ及びZで表されるポリマーが、それぞれ独立してポリスチレン又はスチレン共重合体である前記(3)〜(5)のいずれかに記載のキラルなジルコニウム化合物。
(7) スチレン共重合体が、スチレン−ジビニルベンゼン−アクリル酸エステル共重合体である前記(6)に記載のキラルなジルコニウム化合物。
(8) 次の一般式(3)、
【0013】
【化8】

【0014】
(式中、L及びLは、それぞれ独立して隣接する酸素原子と共にキラリティーを有する配位子を示し、Y及びYはそれぞれ独立してイミダゾール基と基Rをそれぞれ結合させるリンカー基を示し、Rはそれぞれ独立して重合可能な基を有する有機基を示す。)
で表される重合可能なイミダゾリル基を配位したキラルなジルコニウム化合物を、単独又は他のモノマーの存在下に重合させて、前記(3)〜(7)のいずれかに記載のキラルなジルコニウム化合物を製造する方法。
(9) 前記一般式(3)におけるRの重合可能な基がビニル基である前記(8)に記載の方法。
(10) 他のモノマーが、ジビニルベンゼン、アクリル酸エステル、及び置換基を有してもよいスチレンからなる群から選ばれる1種又は2種以上のモノマーである前記(9)に記載の方法。
(11) 前記一般式(3)で表される重合可能なイミダゾリル基を配位したキラルなジルコニウム化合物が、ジルコニウム塩、次の一般式(4)及び/又は一般式(5)、
HO−L−OH (4)
HO−L−OH (5)
(式中、L及びLは、それぞれ独立して隣接する酸素原子と共にキラリティーを有する配位子を示す。)
で表されるジヒドロキシ化合物、並びに、次の一般式(6)及び/又は一般式(7)、
【0015】
【化9】

【0016】
(式中、Yは、イミダゾール基と基Rをそれぞれ結合させるリンカー基を示し、Rはそれぞれ独立して重合可能な基を有する有機基を示す。)
【0017】
【化10】

【0018】
(式中、Yは、イミダゾール基と基Rをそれぞれ結合させるリンカー基を示し、Rはそれぞれ独立して重合可能な基を有する有機基を示す。)
で表されるイミダゾール誘導体を反応させて製造されるものである前記(8)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12) 前記(1)〜(7)のいずれかに記載のキラルなジルコニウム化合物を含有してなる触媒。
(13) 触媒が、不斉マンニッヒ型反応の触媒である前記(12)に記載の触媒。
【0019】
以下に、本発明の態様をさらに詳細に説明する。
本発明のジルコニウム化合物は、イミダゾールを配位子としていることを特徴とし、そして、さらに当該イミダゾール基がリンカー基を介してポリマーに結合していることを特徴とするものであり、これによりジルコニウム錯体の固定化に成功している。また、イミダゾール基による配位子が触媒活性において特異的な挙動を示すことが触媒活性を維持することができた原因であると考えられる。本発明のジルコニウム化合物の触媒作用を次の反応式で示す。
【0020】
【化11】

【0021】
この式における左側は触媒反応の開始前の状態を示している。この状態のときに反応基質が接近すると、ジルコニウム錯体に配位しているイミダゾール基が一旦解離し、ジルコニウムを中心とした活性体が形成される(上記反応式の右側)。この状態では、ジルコニウム錯体は、高分子鎖から一旦遊離し、通常の触媒活性を有するジルコニウム錯体となるが、反応が終了すると再びイミダゾール基が配位し、安定なイミダゾール錯体を形成し、ポリマーに担持された状態に戻る。
このように、本発明の固定化されたジルコニウム化合物は、従来の固定化方法とは全く異なる原理で固定化されているものであり、全く新しい発想に基づく固定化方法に成功したものである。
したがって、本発明のジルコニウム錯体は、
(1)従来の触媒活性を有するキラルなジルコニウム錯体であって、
(2)配位子として、さらにイミダゾール基を含有するものであって、かつ、
(3)当該イミダゾール基によりポリマーに固定化されている
ことを特徴とするものであり、固定化されているにもかかわらず、非固定化の錯体と同等な触媒活性を有していることを特徴とするものである。
【0022】
本発明のジルコニウム化合物のより好ましい態様としては、前記した一般式(1)で表されるジルコニウム化合物が挙げられる。前記した一般式(1)で表されるジルコニウム化合物は、前記した一般式(3)で表されるジルコニウム化合物を重合させることにより製造することができる。
本発明の一般式(1)及び(3)で表されるキラルなジルコニウム化合物におけるL及びLの、「隣接する酸素原子と共にキラリティーを有する配位子」としては、2配座のキラリティーを有する配位子であれば特に限定はない。キラリティーは、不斉原子によるキラリティーであってもよいし、回転障害による軸不斉であってもよい。一般式(1)及び(3)においては、酸素原子での配位を示しているが、ジルコニウムと錯体を形成できるのであれば、他の原子、例えば窒素原子、リン原子などであってもよい。本発明におけるL及びLの配位子としては、触媒活性を有し、キラリティーを有し、かつジルコニウムと錯体を形成できるものであれば、制限が無いことは当業者には容易に理解できるところである。
以下の例においては、回転障害を有する2,2’−ビナフトールを例として挙げているが、本発明はこの例に何ら限定されるものではない。
【0023】
本発明の一般式(1)及び(3)で表されるキラルなジルコニウム化合物におけるY及びYの、「イミダゾール基とポリマーZ及びZをそれぞれ結合させるリンカー基」としては、イミダゾール基とポリマーを化学的に結合できるものであって、ポリマーとZrに配位しているイミダゾールとに適当な距離を与えることができ、Zrの反応性に悪影響を与えないものであれば特に制限は無い。このようなリンカー基としては、簡便性の点からアルキレン基が好ましいがこれに限定されるものではない。必要であれば、このようなアルキレン基の1個又は2個以上の炭素原子が、酸素原子や窒素原子に置き換わってもよいが、簡便性の点からはアルキレン基が好ましい。
このようなアルキレン基としては、炭素数3〜30、好ましくは炭素数5〜20、炭素数5〜15の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が挙げられる。例えば、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基などが具体的には挙げられる。
【0024】
本発明の一般式(1)で表されるキラルなジルコニウム化合物におけるZ及びZの「ポリマー」としては、固定化可能なポリマーであれば、特に制限はなく、ポリアルキレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオキシアルキレンなどの各種のポリマーが挙げられる。好ましいポリマーとしては、重合性や反応性の点からポリスチレン又はポリスチレン共重合体のようなポリアルキレンが挙げられるがこれに限定されるものではない。また、Z及びZの「ポリマー」は同一分子であっても、異なる分子であってもよいが、製造の容易性等の観点からは好ましくは同種のポリマーが挙げられる。
以下の例ではポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−ジビニルベンゼン共重合体などが例示されているが、これらのポリマーに限定されるものではない。
本発明における好ましいジルコニウム化合物を例示すれば、次の一般式、
【0025】
【化12】

【0026】
(式中、Rは、水素原子又は配位子の置換基を示す。)
で表される化合物が挙げられる。なお、前記式は、ジルコニウムの中心部分のみを示している。好ましい置換基Rとしては、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などのパーフルオロアルキル基などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0027】
また、本発明の一般式(3)で表されるキラルなジルコニウム化合物におけるRの「重合可能な基を有する有機基」としては、重合可能な基、例えば、ビニル基、イソシアネート基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基などの重合可能な基を有する有機基が挙げられる。ここにおける有機基としては、前記したリンカー基の末端と前記した重合可能な基を結合させることができる炭素原子を含有してなる基であり、例えば、アルキレン基、アリーレン基などの2価の炭化水素基、及びこれに必要に応じて各種の置換基が置換された基を挙げることができる。
好ましい「重合可能な基を有する有機基」としては、スチリル基、アクリロイル基、ジビニルフェニル基などが挙げられるが、これに限定されるものではない。簡便性の点からはスチリル基が好ましい。
【0028】
本発明の一般式(3)で表されるキラルなジルコニウム化合物は、各種の公知の方法を適宜くみあわせることにより製造することができる。好ましい製造方法としては、まず、「重合可能な基を有する有機基」−リンカー基−イミダゾール基を有する化合物を製造し、これをジルコニウムに配位させる方法が挙げられる。例えば、「重合可能な基を有する有機基」がスチリル基である場合には、イミダゾール−1−イル基がアルキレン鎖の末端の結合したイミダゾール担持のポリスチレンを製造するイメージで合成ルートを構築することができる。具体的な製造例については後述する製造例又は実施例において詳述する。
【0029】
本発明の一般式(1)で表されるキラルなジルコニウム化合物は、前記した一般式(3)で表されるキラルなジルコニウム化合物を重合することにより製造することができる。重合方法に特に制限は無く、リンカー基の末端に結合された「重合可能な基を有する有機基」における重合可能な官能基の種類に応じて公知の重合方法を採用することができる。必要に応じて適宜重合開始剤を添加して重合させることができる。
【0030】
本発明の一般式(1)で表されるキラルなジルコニウム化合物は、前述してきたように固定化されているにもかかわらず、イミダゾールの特異な特性により触媒活性を保持するものであり、かつ安定性、特に空気中でも安定で、長期保存が可能なだけでなく、固定化による取り扱いの良さ(回収性、分離性など)を有するものであり、実用的な高分子固定型キラルジルコニウム触媒として使用することができる。本発明は前記してきたように、キラルジルコニウム触媒自身の安定化に寄与している配位子を高分子に固定化することによって、活性の低下を防ぐことのできる実用的キラルジルコニウム触媒を提供するものである。
【0031】
具体的には、本発明はさらに、下記の一般式(III)で表される新規イミダゾール類縁体(III)、特に好ましくは末端にスチレンを有する一般式(III’)で表されるイミダゾール化合物、及びこれらを配位子とする実用的キラルジルコニウム化合物である一般式(IV)で表されるジルコニウム化合物、特に好ましくは一般式(IV’)で表されるジルコニウム化合物、並びにこれらの化合物の製造方法、及び触媒としての使用を提供する。
【0032】
【化13】

【0033】
(前記一般式(III)、(III’)、(IV)、及び(IV’)中のRは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ原子を含むこれら置換基を含み、末端が二重結合、三重結合、イソシアネート基等の重合反応で汎用される置換基となっているもの。R2‘はその末端にスチレン基を有しているものを例示している。Rはナフタレン基に結合する置換基を示す。)
前記一般式(III')における好ましいR2’基としては、炭素数3〜30、好ましくは炭素数5〜20、炭素数5〜15の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が挙げられる。例えば、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基などが具体的には挙げられる。
また、このジルコニウム化合物をコモノマーとし、適当なモノマー(例えば、好ましくはスチレン、ジビニルベンゼン等、特に好ましくはこれらの混合物)との共重合反応により調製される高分子固定型キラルジルコニウム触媒として有用なジルコニウムを製造することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、従来不可能であった不斉マンニッヒ型反応を円滑に進行させるキラルジルコニウム触媒を高分子上に固定化することが初めて可能となった。本発明の担持法は、従来まで知られている不斉配位子を高分子上に固定化するのではなく、触媒の安定化に寄与し真の活性状態では遊離した状態であると考えられている塩基性配位子を固定化しているため、一般に固定化触媒では低下するといわれている触媒の反応活性が、そのまま維持されている。特に、不斉マンニッヒ型反応においては、その触媒活性が維持されている。
本発明の触媒を使用により、再使用が容易となるだけでなく、反応後の触媒の分離が容易となり、また生成物中や反応系外に触媒として使用される金属成分が混入することが少なくなり、医薬品や食品やそれらの中間体などの製造プロセスにおいて工業的にも有用なものとなる。
【0035】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらの例は本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び製造例において、H−NMR及び13C−NMRは溶媒としてCDClを内部標準としてテトラメチルシランを用い、日本電子株式会社製JNM−ECX400又は600MHzの装置により測定した。
製造例1(配位子の合成)
次に示す反応式により配位子のスチリル基部分を製造した。
【0036】
【化14】

【0037】
300mlの二径のナスフラスコにマグネシウム(4.5g,0.19mol)と少量のヨウ素(I)をEtO(75ml)中で撹拌した後、1−(クロロメチル)−4−ビニルベンゼン(25g,0.165mol)のEtO(25ml)溶液を、0℃にて2時間かけて滴下した。さらに、氷浴中で1時間、室温で1時間撹拌した後、500mlの二径のナスフラスコに用意した1,4−ジブロモブタン(35.6g,0.165mol)とジリチウムテトラクロロ銅(II)(0.1M,15ml)のTHF(150ml)溶液に0℃にて3時間かけて滴下した。滴下終了後、室温にて終夜撹拌した後、MeOH(5ml)を加え反応を停止した。反応混合物をセライトで濾過し少量の1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)の存在下、溶媒を減圧留去した。得られた残さを飽和塩化ナトリウム水溶液に注ぎトルエンにて抽出し、DPPH存在化、減圧蒸留(約0.02mmHg,108℃)することで1−(5−ブロモペンチル)−4−ビニルベンゼン(19g,収率46%)を得た。
H−NMR (CDCl,400MHz): δ:
1.43-1.49 (m, 2H), 1.58-1.66 (m, 2H), 1.83-1.90 (m, 2H),
2.59 (t, 2H, J = 7.6 Hz), 3.37 (t, 2H, J = 6.9 Hz),
5.18 (d, 1H, J = 10.5 Hz), 5.69 (d, 1H, J = 16.9 Hz),
6.68 (dd, 1H, J = 11.0, 17.4 Hz), 7.12 (d, 2H, J = 7.8 Hz),
7.32 (d, 2H, J = 7.8 Hz).
13C−NMR (CDCl,100MHz): δ:
27.7, 30.5, 32.6, 33.7, 35.4, 112.9, 126.1, 128.5, 135.1, 136.6, 142.0.
製造例2(配位子の合成)
次に示す反応式により配位子のイミダゾール誘導体を製造した。
【0038】
【化15】

【0039】
200mlの二径ナスフラスコに室温下NaH(2.2g,92mmol)のDMF(70ml)懸濁溶液に、イミダゾール(3.1g,46mmol)のDMF(15ml)溶液を加えた。1時間撹拌した後、0℃にて1−(5−ブロモペンチル)−4−ビニルベンゼン(11.7g,46mmol)を滴下した。終夜撹拌した後、セライトによる濾過を行い、飽和塩化ナトリウム水溶液に注ぎ塩化メチレンにて抽出した。水、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、カラムクロマトグラフィー(CHCl:MeOH=100:1→40:1)にて精製し、1−(5−(4−ビニルフェニル)ペンチル)−1H−イミダゾール(4.6g,収率42%)を得た。
H−NMR (CDCl,400MHz): δ:
1.29-1.37 (m, 2H), 1.59-1.67 (m, 2H), 1.75-1.82 (m, 2H),
2.58 (t, 2H, J = 7.6 Hz), 3.90 (t, 2H, J = 7.1 Hz),
5.19 (d, 1H, J = 11.0 Hz), 5.70 (d, 1H, J = 17.9 Hz),
6.69 (dd, 1H, J = 11.0, 17.4 Hz), 6.88 (s, 1H), 7.05 (s, 1H),
7.10 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.33 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.44 (s, 1H).
13C−NMR (CDCl,100MHz): δ:
26.1, 30.8, 31.0, 35.3, 46.9, 113.0, 118.7, 126.2, 128.5, 129.4, 135.3,
136.6, 137.0, 141.8.
【実施例1】
【0040】
次に示す反応式により配位子の本発明のモノマーを製造した。
【0041】
【化16】

【0042】
100mlの二径ナスフラスコに室温下、1−(5−(4−ビニルフェニル)ペンチル)−1H−イミダゾール(480.7mg,2.0mmol)、6,6’−ジブロモ−2,2’−ビナフトール(888.2mg,2.0mmol)、Zr(OiPr)4・iPrOH(387.7mg,1.0mmol)を塩化メチレン(8.0ml)に溶解させ撹拌した。2時間後ヘキサン(100ml)を加えることで白色の沈殿を生じた。終夜撹拌の後、濾過を行うことで白色の粉末触媒(1)(1.40g,収率97%)を得た。
H−NMR (CDCl,600MHz): δ:
1.11-1.16 (m, 2H), 1.44-1.47 (m, 2H), 1.50-1.52 (m, 2H),
2.50 (t, 2H, J = 7.6 Hz), 3.49 (t, 2H, J = 7.6 Hz),
5.19 (d, 1H, J = 11.0 Hz), 5.71 (d, 1H, J = 18.6 Hz), 6.32 (s, 1H),
6.44 (s, 1H), 6.51 (d, 2H, J = 8.9 Hz), 6.69 (dd, 1H, J = 11.0, 17.9 Hz),
6.87 (m, 2H), 6.89 (s, 1H), 7.07 (d, 2H, J = 7.6 Hz),
7.31 (d, 2H, J = 7.6 Hz), 7.69 (s, 4H), 7.75 (d, 2H, J = 2.1 Hz).
13C−NMR (CDCl,150MHz): δ:
25.5, 26.2, 30.6, 31.0, 35.5, 48.1, 64.5, 113.1, 115.5, 118.4, 125.9,
126.5, 127.3, 127.8, 128.4, 128.9, 129.8, 129.9, 132.7, 135.6, 136.9,
142.3, 159.9.
【実施例2】
【0043】
次に示す反応式により配位子の本発明のモノマーを製造した。
【0044】
【化17】

【0045】
同様にして6,6’−ジブロモ−2,2’−ビナフトールの代わりに6,6’−(ペンタフルオロエチル)−2,2’−ビナフトールを用いることにより白色の粉末触媒(2)を得た。
【実施例3】
【0046】
次に示す反応式により配位子の本発明の固定化ジルコニウム化合物を製造した。
【0047】
【化18】

【0048】
テフロンチューブに、実施例1で製造したジルコニウム錯体(1)(1165mg,0.8mmol)、スチレン(8.332g,80mmol)、ジビニルベンゼン(416.6mg,3.2mmol)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2.4−ジメチル バレロニトリル)(133.2mg,0.44mmol)を加え、減圧下脱気を3回繰り返し、30℃にて48時間撹拌した。得られた固体を粉砕し塩化メチレンにより洗浄を行い高分子固定化触媒(A)(7.9786g,収率90%)を得た。
正確に恒量した高分子固定化触媒(A)(約20.0mg)に濃硫酸(1.0ml)を加え180℃で30分間加熱した。このものに室温で硝酸(0.5ml)を加え、再び180℃で90分間加熱することにより高分子を分解した。このものを蛍光X線分析又はプラズマ発光分析することによりジルコニウム含量(0.072mmol/g)を決定した。
【実施例4】
【0049】
ジルコニウム錯体(1):スチレン:ジビニルベンゼンの比を1:100:20として、実施例3と同様の操作により高分子固定化触媒(B)(収率86%、ジルコニウム含量0.068mmol/g)を得た。
【実施例5】
【0050】
ジルコニウム錯体(1):スチレン:ジビニルベンゼンの比を1:200:8として、実施例3と同様の操作により高分子固定化触媒(C)(収率69%、ジルコニウム含量0.042mmol/g)を得た。
【実施例6】
【0051】
ジルコニウム錯体(1):スチレン:ジビニルベンゼンの比を1:300:6として、実施例3と同様の操作により高分子固定化触媒(D)(収率70%、ジルコニウム含量0.034mmol/g)を得た。
【実施例7】
【0052】
ジルコニウム錯体(1):スチレン:ジビニルベンゼンの比を1:100:4として、さらに製造例2で合成した配位子である1−(5−(4−ビニルフェニル)ペンチル)−1H−イミダゾールをジルコニウム錯体(1)に対し0.2等量添加し、実施例3と同様の操作により高分子固定化触媒(E)(収率85%、ジルコニウム含量0.116mmol/g)を得た。
【実施例8】
【0053】
次に示す反応式により配位子の本発明の固定化ジルコニウム化合物を製造した。
【0054】
【化19】

【0055】
ジルコニウム錯体(2):スチレン:ジビニルベンゼンの比を1:100:4として、実施例3と同様の操作により高分子固定化触媒(F)(収率85%、ジルコニウム含量0.076mmol/g)を得た。
【実施例9】
【0056】
ジルコニウム錯体(2):スチレン:ジビニルベンゼンの比を1:200:2として、実施例3と同様の操作により高分子固定化触媒(G)(収率92%、ジルコニウム含量0.037mmol/g)を得た。
【実施例10】
【0057】
ジルコニウム錯体(2):スチレン:ジビニルベンゼンの比を1:100:2として、実施例3と同様の操作により高分子固定化触媒(H)(収率86%、ジルコニウム含量0.093mmol/g)を得た。
【実施例11】
【0058】
ジルコニウム錯体(2):スチレン:ジビニルベンゼンの比を1:50:1として、実施例3と同様の操作により高分子固定化触媒(I)(収率82%、ジルコニウム含量0.144mmol/g)を得た。
【実施例12】
【0059】
ジルコニウム錯体(2):スチレン:ジビニルベンゼンの比を1:100:4として、さらに製造例2で合成した配位子である1−(5−(4−ビニルフェニル)ペンチル)−1H−イミダゾールをジルコニウム錯体(2)に対し0.2等量添加し、実施例3と同様の操作により高分子固定化触媒(J)(収率87%、ジルコニウム含量0.091mmol/g)を得た。
【実施例13】
【0060】
次に示す反応式により配位子の本発明の固定化ジルコニウム化合物を製造した。
【0061】
【化20】

【0062】
ジルコニウム錯体(1):スチレン:ジビニルベンゼンの比を1:100:4として、ラジカル開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2.4−ジメチル バレロニトリル)の代わりに3フッ化ホウ素エーテル錯体を用い、減圧下脱気を3回繰り返し−30℃において終夜撹拌した。得られた固体を粉砕し塩化メチレンにより洗浄を行い高分子固定化触媒(K)(ジルコニウム含量0.160mmol/g)を得た。
【実施例14】
【0063】
ジルコニウム錯体(1):スチレン:ジビニルベンゼンの比を1:100:4として、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2.4−ジメチル バレロニトリル)の存在下、減圧下脱気を3回繰り返し80℃において終夜撹拌した。得られた固体を粉砕し塩化メチレンにより洗浄を行い高分子固定化触媒(L)(ジルコニウム含量0.068mmol/g)を得た。
【実施例15】
【0064】
ジルコニウム錯体(1):スチレン:ジビニルベンゼンの比を1:100:4として、MAIBの存在下、減圧下脱気を3回繰り返し80℃において終夜撹拌した。得られた固体を粉砕し塩化メチレンにより洗浄を行い高分子固定化触媒(M)(ジルコニウム含量0.073mmol/g)を得た。
【実施例16】
【0065】
次に示す反応式により配位子の本発明の固定化ジルコニウム化合物を製造した。
【0066】
【化21】

【0067】
ジルコニウム錯体(1):メタクリル酸メチル:ジビニルベンゼンの比を1:100:4として、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2.4−ジメチル バレロニトリル)の存在下、減圧下脱気を3回繰り返し30℃において終夜撹拌した。得られた固体を粉砕し塩化メチレンにより洗浄を行い高分子固定化触媒(N)(ジルコニウム含量0.113mmol/g)を得た。
【実施例17】
【0068】
次に示す反応式により配位子の本発明の固定化ジルコニウム化合物を製造した。
【0069】
【化22】

【0070】
ジルコニウム錯体(1):p−メトキシスチレン:ジビニルベンゼンの比を1:100:4として、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2.4−ジメチル バレロニトリル)の存在下、減圧下脱気を3回繰り返し30℃において終夜撹拌した。得られた固体を粉砕し塩化メチレンにより洗浄を行い高分子固定化触媒(O)(ジルコニウム含量0.088mmol/g)を得た。
【実施例18】
【0071】
ジルコニウム錯体(1):p−メトキシスチレン:ジビニルベンゼンの比を1:100:4として、MAIB存在下、減圧下脱気を3回繰り返し80℃において終夜撹拌した。得られた固体を粉砕し塩化メチレンにより洗浄を行い高分子固定化触媒(P)(ジルコニウム含量0.059mmol/g)を得た。
【実施例19】
【0072】
次に示す反応式により配位子の本発明の固定化ジルコニウム化合物を製造した。
【0073】
【化23】

【0074】
1−(5−(4−ビニルフェニル)ペンチル)−1H−イミダゾールの代わりに1−(13−(4−ビニルフェニル)ヘキサデシル)−1H−イミダゾールより調製した粉末状キラルジルコニウム触媒(1’):スチレン:ジビニルベンゼンの比を1:100:4として、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2.4−ジメチル バレロニトリル)の存在下、減圧下脱気を3回繰り返し30℃において終夜撹拌した。得られた固体を粉砕し塩化メチレンにより洗浄を行い高分子固定化触媒(Q)(ジルコニウム含量0.079mmol/g)を得た。
【実施例20】
【0075】
アルゴン雰囲気下、高分子固定化触媒(0.02mmol)に塩化メチレンを加え−45℃に冷却する。これに、1−ナフトアルデヒドと2−アミノフェノールより合成した2−[(ナフタレン−1−イルメチレン) −アミノ]−フェノール(0.2mmol)とイソ酪酸メチル由来のケテンシリルアセタール(1−メトキシ−2−メチル−プロペニルオキシ)−トリメチル−シラン(0.24mmol)の塩化メチレン溶液を加え、48時間撹拌した後、塩化メチレンで濾過することにより溶液に生成物を抽出した。回収した高分子は真空下で十分乾燥した後再使用できる。
生成物の収率、エナンチオ選択性、及び反応時における金属の漏れ出しを、以下の方法で決定した。
【0076】
【化24】

【0077】
回収した塩化メチレン溶液を精確に2等分した。一方にTHF:1N塩酸水溶液=10:1混合溶媒を氷温下、0.5時間作用させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え反応を停止し、塩化メチレンで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、残さをシリカゲル薄層クロマトグラフィーで精製すると、対応する(R)−メチル 2,2’−ジメチル−3−(2−ヒドロキシフェニル)アミノ−3−(1’−ナフチル)−プロピオネートを得た。生成物の光学収率は、光学異性体分離カラム(ダイセル化学工業、CHIRALCEL)を用いたHPLCにより決定した。
また、上述の回収した塩化メチレン溶液のもう一方は、塩化メチレンを濃縮後、濃硫酸(1.0ml)を加え180℃で30分間加熱した。このものに室温で硝酸(0.5ml)を加え、再び180℃で90分間加熱することにより回収した有機物を分解し、このものを蛍光X線分析若しくはプラズマ発光分析することにより反応中に分解し漏れ出してきたジルコニウム含量を決定した。漏れ出したジルコニウム含量はいずれも使用量の10%以下であった。
これらの結果を次の表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1は、左側から、使用した固定化触媒の記号、収率(%)、光学収率(ee%)をそれぞれ示している。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、固定化触媒として有用な固定化されたジルコニウム化合物を提供するものであり、本発明のジルコニウム化合物を触媒として使用することにより、再使用が容易となるだけでなく、反応後の触媒の分離が容易となり、また生成物中や反応系外に触媒として使用される金属成分が混入することが少なくなり、医薬品や食品やそれらの中間体などの製造プロセスにおいて工業的にも有用なものとなり、本発明は産業上の利用可能性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キラルな配位子を有するキラルジルコニウムにおいて、当該ジルコニウムがさらにポリマーに結合したイミダゾール基を配位子としていることを特徴とするキラルなジルコニウム化合物。
【請求項2】
ポリマーが、ポリスチレンである請求項1に記載のキラルなジルコニウム化合物。
【請求項3】
キラルなジルコニウム化合物が、次の一般式(1)、
【化1】

(式中、L及びLは、それぞれ独立して隣接する酸素原子と共にキラリティーを有する配位子を示し、Y及びYはそれぞれ独立してイミダゾール基とポリマーZ及びZをそれぞれ結合させるリンカー基を示し、Z及びZはそれぞれ独立してポリマーを示す。)
で表されるキラルなジルコニウム化合物である請求項1又は2に記載のキラルなジルコニウム化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)におけるL及びLが、次の一般式(2)、
【化2】

(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を示す。)
で表されるビナフタレン誘導体から誘導されたものである請求項3に記載のキラルなジルコニウム化合物。
【請求項5】
前記一般式(1)におけるY及びYが、炭素数3〜30の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である請求項3又は4に記載のキラルなジルコニウム化合物。
【請求項6】
前記一般式(1)におけるZ及びZで表されるポリマーが、それぞれ独立してポリスチレン又はスチレン共重合体である請求項3〜5のいずれかに記載のキラルなジルコニウム化合物。
【請求項7】
スチレン共重合体が、スチレン−ジビニルベンゼン−アクリル酸エステル共重合体である請求項6に記載のキラルなジルコニウム化合物。
【請求項8】
次の一般式(3)、
【化3】

(式中、L及びLは、それぞれ独立して隣接する酸素原子と共にキラリティーを有する配位子を示し、Y及びYはそれぞれ独立してイミダゾール基と基Rをそれぞれ結合させるリンカー基を示し、Rはそれぞれ独立して重合可能な基を有する有機基を示す。)
で表される重合可能なイミダゾリル基を配位したキラルなジルコニウム化合物を、単独又は他のモノマーの存在下に重合させて、請求項3〜7のいずれかに記載のキラルなジルコニウム化合物を製造する方法。
【請求項9】
前記一般式(3)におけるRの重合可能な基がビニル基である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
他のモノマーが、ジビニルベンゼン、アクリル酸エステル、及び置換基を有してもよいスチレンからなる群から選ばれる1種又は2種以上のモノマーである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記一般式(3)で表される重合可能なイミダゾリル基を配位したキラルなジルコニウム化合物が、ジルコニウム塩、次の一般式(4)及び/又は一般式(5)、
HO−L−OH (4)
HO−L−OH (5)
(式中、L及びLは、それぞれ独立して隣接する酸素原子と共にキラリティーを有する配位子を示す。)
で表されるジヒドロキシ化合物、並びに、次の一般式(6)及び/又は一般式(7)、
【化4】

(式中、Yは、イミダゾール基と基Rをそれぞれ結合させるリンカー基を示し、Rはそれぞれ独立して重合可能な基を有する有機基を示す。)
【化5】

(式中、Yは、イミダゾール基と基Rをそれぞれ結合させるリンカー基を示し、Rはそれぞれ独立して重合可能な基を有する有機基を示す。)
で表されるイミダゾール誘導体を反応させて製造されるものである請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載のキラルなジルコニウム化合物を含有してなる触媒。
【請求項13】
触媒が、不斉マンニッヒ型反応の触媒である請求項12に記載の触媒。

【公開番号】特開2008−222803(P2008−222803A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61132(P2007−61132)
【出願日】平成19年3月10日(2007.3.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】