説明

高分子有機半導体材料、高分子有機半導体材料薄膜及び有機半導体デバイス

【課題】 溶液化の可能な有機半導体材料、該有機半導体材料を塗布することによる有機半導体膜、該有機半導体膜を用いた有機半導体デバイスを提供する。
【解決手段】 一般式(1)
【化1】


(式(1)中、R1およびR2は、各々独立して、水素原子または炭素原子数1〜16のアルキル基を表し(但しR1およびR2が水素原子である場合を除く)、W1およびW2は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、(HO)B−及び(R3−O)B−からなる群から選択される少なくとも1つの基を表し、R3は炭素原子数1〜12のアルキル基を表す。)で表される化合物を重合してなる高分子有機半導体材料、該高分子有機半導体材料を含有することを特徴とする高分子有機半導体材料薄膜、及び、前記高分子有機半導体材料を半導体層に用いる有機半導体デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子有機半導体材料、高分子有機半導体材料薄膜及び有機半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
情報化の進展に伴った情報端末の普及は目覚しく、従来、紙媒体で提供されていた情報が電子化される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用情報媒体のニーズが高まりつつある。
【0003】
従来の情報媒体を構成するシリコン(Si)材料を用いた半導体デバイスは、真空チャンバーを含む真空系の製造プロセスを何度も繰り返して各層を形成せざるを得ず、装置コスト、ランニングコストが非常に膨大なものとなっていた。例えば、半導体デバイスの一つであるTFT素子では、通常それぞれの層の形成のために真空蒸着、ドープ、フォトリソグラフ、現像等の工程を何度も繰り返す必要があり、何十もの工程を経て素子を基板上に形成している。スイッチング動作の要となる半導体部分に関しても、p型、n型等、複数種類の半導体層を積層している。
【0004】
また、このような従来からのSi材料を用いた半導体デバイスの形成には高温での工程が含まれるため、基板材料には工程温度に耐える材料であるという制限が加わることになる。このため実際上はガラスを用いざるをえず、従って、柔軟性に欠け、落下の衝撃で割れる可能性のある製品となってしまう。このことは、先に述べた情報媒体のモバイル化といったニーズを満たすにあたり望ましくないことである。
【0005】
一方、近年において電荷輸送性を有する有機化合物として、有機半導体材料の研究が精力的に進められている。これらの化合物は有機ダイオードや有機発光ダイオード(EL)用の電荷輸送性材料のほか、有機レーザー発振素子(例えば、非特許文献1参照。)や、有機薄膜トランジスタ(有機TFT素子)(例えば非特許文献2参照。)への応用が期待されている。
【0006】
有機半導体材料は、電荷を輸送するという点では有機導電体材料と同じであるが、電荷輸送のメカニズムが両者で大きく異なる。その違いは、有機導電体材料が電荷輸送の担い手となるチャージキャリアを材料内に含有しているのに対し、有機半導体材料はチャージキャリアを材料内に有していない点にある。従って有機導電体材料は、チャージキャリアを有するため、金属と同様の挙動を呈し、電気回路内に組み込めば、電流が印加した電圧に単純に比例する電気導伝体となり、すなわち、情報媒体内では単なる配線材料にしかなりえない。一方有機半導体材料は、チャージキャリアを有していないため、電荷輸送を発現するためには、外部からチャージキャリアを供給する必要があり、このチャージキャリアの供給のために、ショットキー障壁構造、 pn接合構造、MIS構造などの、物理構造体を作り付け、これを利用する。こうして得られた有機半導体材料と物理構造体よりなる「有機半導体デバイス」の電流は、上記物理構造に由来した制御を受け、Si半導体デバイスと同様、オームの法則に従わない半導体デバイス特性を呈する(その一例として、ダイオードに見られる整流特性、トランジスタに見られるスイッチング特性やメモリー特性がある)。
【0007】
これらの有機半導体は、その分子構造を適切に改良することによって、溶液化できる半導体を得る可能性があり、有機半導体溶液をインク化することにより印刷法によるデバイス製造が可能となる。これらの低温プロセスによる製造は、前述の基板耐熱性に関する制限が緩和され、樹脂基板上にも半導体デバイスを形成できる可能性を意味するものである。
【0008】
これまで、有機半導体材料として検討されてきたのは、ペンタセンやテトラセン等のアセン類(例えば、特許文献1参照。)、鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体といった低分子化合物(例えば、特許文献2参照。)や、α−チエニルもしくはセキシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマー(例えば、特許文献3参照。)、ナフタレン、アントラセンに5員の芳香族複素環が対称に縮合した化合物(例えば、特許文献4参照。)、モノ、オリゴ及びポリジチエノピリジン(例えば、特許文献5参照。)、更には、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子等限られた種類の化合物(例えば、非特許文献1〜3参照。)がある。
【0009】
この中で、ペンタセンなどの低分子化合物やα−チエニルなどの芳香族オリゴマーの多くは、有機溶媒に対して不溶もしくは難溶のために、塗布による膜の形成が難しいという問題点がある。このことは半導体デバイスを製造するに当たって、製造コストを押し上げるため、Si系半導体技術に代わる経済的な技術としての魅力が削がれてしまう。
【0010】
一方、ポリチオフェンなどの高分子化合物は、周囲の酸素によって酸化的にドープされ、導電率が増大してしまい、即ち空気に対して不安定である。従ってこれらの材料の多くは、材料加工とデバイス製造の間に環境酸素を排除して酸化的ドーピングを起こさない、あるいは最小とするよう厳重に予防処置をとらなければならないという問題点がある。上記のような予防措置は製造コストを押し上げるため、Si系半導体技術に代わる経済的な技術としての魅力が削がれてしまう。
【0011】
一方最近、エネルギーレベルのシミュレーションに関する論文(非特許文献4)に、新規なチオフェン誘導体として、ポリチエノ[3,4−d]イミダゾール−2−オン(Poly−thieno[3,4−d]imidazol−2−one 以下、PUTと略す)の構造式が記載された。このPUTは、実際に製造してみると、電気伝導度が10−1〜10S/cm程度の有機導電体材料であり、有機半導体としては機能しないことがわかった。
【0012】
【非特許文献1】サイエンス(Science)2000年、第289号、P.599
【非特許文献2】ネイチャー(Nature)2000年、第403号、P.521
【非特許文献3】アドバンスド・マテリアル(Advanced Material)2002年、第2号、P.99
【非特許文献4】ジャーナルオブフィジカルケミストリービー(Journal of Physical Chemistry B) 2005年、第109号, P.3126
【特許文献1】特開平5−55568号公報
【特許文献2】特開平5−190877号公報
【特許文献3】特開平8−264805号公報
【特許文献4】特開平11−195790号公報
【特許文献5】特開2003−155289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、溶液化の可能な有機半導体材料、該有機半導体材料を塗布することによる有機半導体膜、該有機半導体膜を用いた有機半導体デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、ポリチエノ[3,4−d]イミダゾール−2−オンの窒素上の水素原子の両方、もしくは片方をアルキル基で置換することにより、溶液化の可能な有機半導体材料を得ることが出来ることを見出した。
なぜ水素原子の両方、もしくは片方をアルキル基で置換することにより、有機導電性材料が有機半導体材料となったかは定かではないが、以下のように推定している。即ち、アルキル基導入による立体的効果により、π電子の最高被占軌道(HOMO)のエネルギーレベルが下がり、最低空軌道(LUMO)のエネルギーレベルが上がると考えられ、これにより、材料内に自発的チャージキャリアは発生しないが、一方で、各モノマーユニット内の適度なπ共役の広がりがキャリアの移動能を確保するためと推定している。
【0015】
即ち、本発明は、一般式(1)
【0016】
【化1】

【0017】
(式(1)中、R1およびR2は、各々独立して、水素原子または炭素原子数1〜16のアルキル基を表し(但しR1およびR2が水素原子である場合を除く)、W1およびW2は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、(HO)B−及び(R3−O)B−からなる群から選択される少なくとも1つの基を表し、R3は炭素原子数1〜12のアルキル基を表す。)で表される化合物を重合してなる高分子有機半導体材料を提供する。
【0018】
また本発明は、前記記載の高分子有機半導体材料を含有する高分子有機半導体材料薄膜を提供する。
【0019】
また本発明は、前記記載の高分子有機半導体材料を半導体層に用いる有機半導体デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、溶液化の可能な有機半導体材料、該有機半導体材料を塗布することによる有機半導体膜、該有機半導体膜を用いた有機半導体デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(一般式(1)で表される化合物)
前記一般式(1)において、R1およびR2は、各々独立して、水素原子または炭素原子数1〜16のアルキル基を表す。但しR1およびR2が水素原子である場合を除く。R1またはR2、即ち水素原子が1つでもアルキル基である場合には半導体特性を示すが、R1およびR2が水素原子である化合物は、前述の通り半導体特性を示さないからである。
炭素原子数は中でも1〜12が好ましく、1〜6が半導体特性を示す上で最も好ましい。
【0022】
前記一般式(1)において、W1およびW2は、各々独立して、水素原子、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、(HO)B−(ボロン酸)及び(R3−O)B−(ボロン酸エステル)からなる群から選択される少なくとも1つの基をあらわす。中でも、ハロゲン原子や(R3−O)B−を有する化合物を重合した高分子有機半導体材料が、半導体特性を示す上で好ましい。
【0023】
一般式(1)における化合物のうち、W1及びW2が水素原子である化合物は、以下のスキームにより合成可能である。
【0024】
【化2】

【0025】
具体的には、「ジャーナルオブオーガニックケミストリー(Journal of Organic Chemistry)」2002年、第67号、P.9073に記載の方法で製造したチエノ[3,4−d]イミダゾール−2−オン(Poly−thieno[3,4−d]imidazol−2−oneに、ジメチルホルムアミド(以下DMFと略す)溶媒下、ヨウ化アルキルとNaHを作用させることで、窒素に結合している水素をアルキル化することができる。反応分子種間のモル比を制御することで、導入メチル基の数を制御できる。
【0026】
また、一般式(1)における化合物のうち、W1及びW2がハロゲン原子の場合は、以下のように、W1及びW2が水素の化合物を出発物質にして、ジメチルホルムアミド(以下DMFと略す)下、N−ブロモスクシンイミド(以下NBSと略す)を作用させることで、以下の合成スキームの如く得ることが出来る。
【0027】
【化3】

【0028】
【化4】

【0029】
W1及びW2が(HO)B−や(R3−O)B−の場合は、以下の方法により合成可能である。すなわち、W1及びW2が臭素などのハロゲン原子である化合物を出発物質にして、テトラヒドロフラン(以下THFと略す)下マグネシウムを作用せしめ、ここに、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを加えることで、以下の合成スキームの如く得られる。
【0030】
【化5】

【0031】
(高分子有機半導体材料)
本発明の一般式(1)で表される化合物を重合してなる膜は、W1及びW2が水素原子である場合には、電解酸化重合に供することで得ることができる。電解酸化重合は、二電極法でも三電極法でも可能であり、電位基準重合(例えば、低電位重合、サイクリック電位重合)、電圧基準重合(例えば、定電圧重合)、電流基準重合(例えば、定電流重合)が行える。三電極法の場合、参照電極は一般的なものが使用可能であるが、飽和カロメル電極(SCE)、銀/塩化銀電極(Ag/AgCl)、銀/銀イオン電極(Ag/Ag)が良く使用される。作用電極および対抗電極としては、酸化インジウムスズ(以下ITOと略す)電極、ネサガラス、白金板、カーボン電極などが使用可能である。
溶剤としては、比誘電率が高く、電解質をよく溶解するもので、2種類以上の溶剤を混合してもかまわない。溶剤の具体例としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピレンカーボネート、アルコール、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、アセトン、ニトロメタン、酢酸エチル、THF、ピリジン、ニトロベンゼン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホオキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、水などがあげられる。
支持電解質としては、電解重合電位の範囲内(Ag/Ag参照電極に対し、電解電位+0.5 V〜+1.8 Vの範囲)で電極反応を受けない塩、ClO、PF、BF、CFSO、N(CFSOおよびSbF 等のアニオンを含有する金属塩、オニウム塩等が用いられる。
【0032】
具体的には、支持電解質及び前記一般式(1)で表される化合物のうちW1及びW2が水素原子である化合物を溶解させたアセトニトリル等の溶剤溶液中に、ITOからなる作用電極、Ag/Ag からなる参照電極、及び白金板からなる対抗電極を浸積させる。参照電極に対して適切な電圧を作用電極に印加すると、作用電極上に前記一般式(1)のうちW1及びW2が水素原子である化合物で表される化合物の重合物が析出し、膜が形成される。次に、電解重合の反応を示す。
【0033】
【化6】

【0034】
電解重合法で得られる膜は、一般に、膜厚1〜1000nmの範囲で、僅かのみ着色膜である。この膜は通常酸化された状態であるため、有機半導体材料として十分な機能を発現させるためには、Ag/Ag参照電極に対し、−0.5 V〜−0.0 Vの任意の範囲で電圧を還元電流が流れなくなるまで印加してから使用することが好ましい。なお、電解重合法は、作用電極上に直接膜を形成させることができるので、製膜過程を省けるという点で好ましい。
【0035】
また、前記一般式(1)で表される化合物のうちW1及びW2が水素原子である化合物を、酸化剤等を使用して溶液重合法等により高分子化させることも可能である。具体的には、前記一般式(1)で表される化合物のうちW1及びW2が水素原子である化合物をブタノール中に溶解させ、FeCl等の酸化剤を加えることで重合が進行し高分子が析出する。得られた高分子を水洗後、ヒドラジンヒドラートなどの還元剤で処理し、さらに、水洗とエタノール洗を繰り返すことで、所望の高分子有機半導体材料が得られる。
【0036】
また、前記一般式(1)で表される化合物のうちW1及びW2が水素原子である化合物を酸化剤とともにアルコール中に溶解させ、この溶液を基板上に塗布した後、50〜200℃で加熱することで膜を形成させることが出来る。この膜をヒドラジンヒドラートなどの還元剤で処理することで、所望の高分子有機半導体材料よりなる膜を得ることが出来る。この溶液中には反応速度を制御する目的でイミダゾール、ピリジンなどの塩基を加えることが出来る。塗布方式としては特に制限は無く公知慣用の方法を使用できる。具体的には、グラビア法、リバース法、エアドクターコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、スクイズコーター法、含浸コーター法、トランスファーロールコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレイコーター法、ダイ法、スピンコーター法、バーコーター法、反転印刷法、スクリーンコーター法等が挙げられる。なお、本方式による重合方法は、膜形成と有機半導体材料の合成を同時に行なうことから、製膜過程を省けるという点で好ましい。
【0037】
また、前記一般式(1)で表される化合物のうちW1及びW2がハロゲン原子である化合物の場合には、下記の反応式のごとくNiゼロ価錯体などのカップリング試薬を用いて重縮合させることで所望の高分子有機半導体材料を得ることが出来る。
【0038】
【化7】

【0039】
また、前記一般式(1)で表される化合物のうちW1及びW2が(R3−O)B−もしくは(HO)B−である化合物の場合には、下記の反応式のごとくPd錯体をカップリング試薬に用いて重縮合させることで所望の高分子有機半導体材料を得ることが出来る。
【0040】
【化8】

【0041】
本発明の高分子有機半導体材料は、前記一般式(1)で表される化合物のうちW1及びW2が水素原子である化合物を重合せしめた場合には、赤外吸収スペクトル(IR)において、チオフェン環の2、5位の水素に由来するピーク(芳香環−H面内変角振動)が消失することで、2、5位で高分子化されたことを判断できる。一方、前記一般式(1)で表される化合物のうちW1及びW2がハロゲン原子もしくは(R3−O)B−もしくは(HO)B−である化合物を重合せしめた場合には、チオフェン環の2、5位のハロゲンもしくはボロン酸エステルに由来するピーク(芳香環−ハロゲン(ボロン酸エステル)面内変角振動)が消失することで、2、5位で高分子化されたことを判断できる。さらには、本発明による高分子有機半導体材料は、汎用の溶媒に非常に良く溶けるため、光散乱法あるいはゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)等による分子量の特定が可能である。
【0042】
(高分子有機半導体材料薄膜)
本発明に係る高分子有機半導体材料薄膜について説明する。
本発明の高分子有機半導体材料は適当な有機溶媒と混合し、溶液または分散液として用いることができる。
【0043】
本発明の高分子有機半導体材料を含有する溶液を用いて高分子有機半導体材料薄膜を作製する場合、使用する有機溶媒は何を用いても構わず、また2種以上の有機溶媒を混合して用いてもよいが、好ましくは非ハロゲン系の溶媒を1種以上含んでおり、より好ましくは非ハロゲン系の溶媒のみで構成されていることが望ましい。本発明に用いられる非ハロゲン系溶媒としては、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族系、シクロヘキサンなどの脂環式系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、アニソール、ベンジルエチルエーテル、エチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、エチルセロソルブ等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン系溶媒、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミド、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
【0044】
また、併用される有機溶剤は、特に制限されるものではないが、好ましいものとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ピロリドン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、β−メトキシプロピオン酸メチル、β−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、ヘキサン、リモネン、シクロヘキサンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は2種類以上を組合せて用いることもできる。
【0045】
また、エステル系溶剤としては、オキシイソ酪酸アルキルエステル等を用いてもよく、オキシイソ酪酸エステルとしては、α−メトキシイソ酪酸メチル、α−メトキシイソ酪酸エチル、α−エトキシイソ酪酸メチル、α−エトキシイソ酪酸エチルなどのα−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル;β−メトキシイソ酪酸メチル、β−メトキシイソ酪酸エチル、β−エトキシイソ酪酸メチル、β−エトキシイソ酪酸エチルなどのβ−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル;およびα−ヒドロキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸エチルなどのα−ヒドロキシイソ酪酸アルキルエステルが挙げられ、特にα−メトキシイソ酪酸メチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、β−エトキシイソ酪酸メチルまたはα−ヒドロキシイソ酪酸メチル等を用いることができる。
【0046】
本発明の高分子有機半導体材料薄膜は、本発明の有機半導体材料を前記有機溶媒と混合して調製した、室温で溶液または分散液を用いて膜形成する工程を経て作製されることが好ましい。ここで、室温で溶液または分散液とは、有機半導体材料と有機溶媒とを10℃〜80℃の条件下で混合した時に、溶液または分散液が形成されることが好ましく、分散液とは、有機半導体材料が粒子状に分散された状態を表すが、分散液中に、有機半導体材料が部分的溶解している状態も含まれる。
また、分散液の一態様としては、例えば、80℃の温度条件下では溶解し、溶液を形成するが、室温(通常25℃前後の温度を示す)に戻すと有機半導体材料の粒子、凝集体、析出物等が有機溶媒中に分散されている状態等を挙げることが出来る。
【0047】
塗布方式としては特に制限は無く公知慣用の方法を使用できる。具体的には、グラビア法、リバース法、エアドクターコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、スクイズコーター法、含浸コーター法、トランスファーロールコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレイコーター法、ダイ法、スピンコーター法、バーコーター法、反転印刷法、スクリーンコーター等が挙げられる。
【0048】
(有機半導体デバイス)
本発明の有機半導体デバイスについて説明する。
本発明の高分子有機半導体材料は、高分子有機半導体膜として、有機半導体デバイス等の半導体層に用いられることにより、良好に駆動する有機半導体デバイス、有機ダイオード等を提供することができる。
【0049】
有機ダイオードは単純には、基材上に電極、有機半導体薄膜、電極の順に積層したサンドイッチ構造よりなる(図1参照)。
【0050】
本発明において、電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。
【0051】
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。更に導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0052】
また、基材にはガラスやフレキシブルな樹脂製シートで構成され、例えば、プラスチックフィルムをシートとして用いることができる。前記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。このように、プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、数平均分子量及び重量平均分子量については、テトラヒドロフランを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(島津製作所製:LC−10Avp)によりポリスチレン換算の数平均分子量を求めた。
なお、特に断わりのない限り「%」は質量基準である。
【0054】
(合成例1 式(A)で表される化合物の合成)

(A)
400mLの濃硫酸、600mLの発煙濃硫酸、及び325mLの濃硝酸よりなる室温下の混酸に、350gの2,5−ジブロモチオフェン(アルドリッチ製)を反応液の温度を20〜30℃に維持しながら滴下した。滴下後、反応溶液に氷水を加え、析出した粉末を濾別し、メタノールより再結晶することで、2,5−ジブロモ−3,4−ジニトロチオフェン144gを得た。
【0055】
【化9】

【0056】
30gの塩化パラジウムを、300mLのメタノールと300mLの水よりなる混合溶媒中で1.4×10Pa下の水素で還元した。次に7.5mLの濃硫酸、10gの2,5−ジブロモ−3,4−ジニトロチオフェンをこの順に加え、1.4×10Paの水素下で1時間30分攪拌した。反応液を濾過し、濾液に200mLのメタノールを加えよく攪拌した後、減圧下濃縮することで、3,4−ジアミノチオフェンの酸性水溶液を得た。
【0057】
【化10】

【0058】
得た3,4−ジアミノチオフェンの酸性水溶液に、炭酸ナトリウムとホスゲンを1時間作用させた後、減圧濃縮した。得られた固体を10−4Pa下125〜150℃で昇華精製した後、メタノール/エタノール(1/1=体積/体積)混合溶媒から再結晶することで、化合物「UT」を0.35g(2,5−ジブロモ−3,4−ジニトロチオフェンからの収率で50%)得た。
【0059】
【化11】

【0060】
アルゴン気流下、310mLのDMFに、「UT」9.6gと、NaH4gをこの順に加え、24.4gのMeIを溶解した40mLのDMF溶液を20分かけて滴下した後、この反応液を5時間攪拌した。30mLの水を加え反応を停止し、200gの氷を加え、氷が解けるまで攪拌し、酢酸エチルで抽出後、有機層を30%食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。こうして得られた濃縮物を、カラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、展開溶媒:酢酸エチル/ジクロロメタン=1/1=体積/体積)を用いて精製し、式(A)で表される化合物「DMUT」を白色粉末として得た(7g、2,5−ジブロモ−3,4−ジニトロチオフェンからの収率で61%)。
【0061】
【化12】

【0062】
(合成例2 式(B)で表される化合物の合成)
【0063】
【化13】

(B)
【0064】
アルゴン気流下、250mLのDMFに、NaH2.6gと、合成例1で得た「UT」9.6gをこの順に加え、15.2gのMeIを溶解した50mLのDMF溶液を徐々に滴下し、室温で3時間攪拌した。30mLの水を加え反応を停止し、酢酸エチルで抽出後、得られた固体をテトラヒドロフラン/メタノール混合溶媒から3回再結晶することで、式(B)で表される化合物「MMUT」を白色粉末として得た(0.56g、2,5−ジブロモ−3,4−ジニトロチオフェンからの収率で5%)。
【0065】
(合成例3 式(C)で表される化合物の合成)
【0066】
【化14】

(C)
【0067】
合成例1のMeI、24.4gを臭化ペンチル26.0gにした以外は合成例1と同様にして、式(C)で表される化合物「DPUT」を針状結晶として得た(8g、2,5−ジブロモ−3,4−ジニトロチオフェンからの収率で42%)。
【0068】
(合成例4 式(D)で表される化合物の合成)
【0069】
【化15】

(D)
【0070】
合成例2のMeI、15.2gを臭化ペンチル16.0gにした以外は合成例2と同様にして、式(D)で表される化合物「MPUT」を黄色液体として得た(1.1g、2,5−ジブロモ−3,4−ジニトロチオフェンからの収率で7%)。
【0071】
(合成例5 式(E)で表される化合物の合成)
【0072】
【化16】


(E)
【0073】
合成例1で得た「DMUT」6.6gをDMF60mLに溶解し、これをアイスバスを用いて冷却した。ここに、N−ブロモスクシニックイミド(NBS)15.5gとDMF60mLよりなる溶液を滴下した。滴下終了後、DMF10mLを加え、1時間室温で攪拌した。その後、反応液を氷水にあけ、得られた粉末を濾別し、これを水500mL、エタノール10mLで洗浄した後、真空乾燥することで、式(E)で表される化合物「DBr−DMUT」を淡黄色粉末として得た(10g、収率82%)。
【0074】
(参考例1 「UT」を重合してなる高分子化合物「PUT」の製造)
31gのアセトニトリルに過塩素酸テトラブチルアンモニウムを0.875g、合成例1で得た「UT」を0.073g溶解し電解溶液を調製した。これを、作用電極および対電極としてITO電極付ガラス(1.5×7cm=10.5cm )、参照電極としてAg/Agを取り付けた電解槽に入れ、室温下、エーエルエス製電気化学アナライザーモデル760Bを用いて、電解電位1.3V(Ag/Ag に対しての電位、以下同様)で2分間電解重合を行い、その後、−0.8Vを2分間印加し、作用電極上に僅かのみ青色のかかった透明性を有する高分子化合物よりなる膜が形成された。該膜を電極上から取り出した後、真空ラインを用いて乾燥した。その結果、該高分子化合物の赤外吸収スペクトルは下記の吸収を示した。
【0075】
1693s,1480s,1428s,1324s, 1221s,1100s,1043m,720−600m,576m(数字はcm−1で示した吸収位置を示す。m,sはそれぞれ中位の吸収、強い吸収を示す。)
【0076】
チオフェン環の2、5位の水素に由来する1158のピーク(芳香環−H面内変角振動)が消失することで、2、5位で高分子化されたことを確認した。
上記の測定結果はいずれもKBrペレット中でのものである。従って、該膜は、「UT」の重合物「PUT」であることが確認された。
【0077】
(参考例2 「UT」を重合してなる高分子化合物「PUT」の製造)
イミダゾール1.3g、「UT」1.4gおよびブタノール10gを混合し、これをp−トルエンスルホン酸鉄(III)11.5gおよびブタノール10gよりなる混合液に加え、攪拌・混合し、ガラス基材上にスピンコートする(1000rpm、30秒)。スピンコート後、120℃で2分間加熱しメタノール、ヒドラジンヒドラートで漱ぎ、乾燥することで高分子化合物よりなる膜を得た。該膜をガラス基板上から取り出した後、真空ラインを用いて乾燥した。その結果、該高分子化合物の赤外吸収スペクトルは下記の吸収を示した。
【0078】
1693s,1480s,1428s,1324s, 1221s,1100s,1043m,720−600m,576m(数字はcm−1で示した吸収位置を示す。m,sはそれぞれ中位の吸収、強い吸収を示す。)
【0079】
チオフェン環の2、5位の水素に由来する1158のピーク(芳香環−H面内変角振動)が消失することで、2、5位で高分子化されたことを確認した。
上記の測定結果はいずれもKBrペレット中でのものである。従って、該膜は、「UT」の重合物「PUT」であることが確認された。
【0080】
(実施例1)
参考例1において、化合物「UT」の代わりに合成例1で得た式(A)で表される化合物「DMUT」を使用した以外は、参考例1と同様にして作用電極上に僅かのみオレンジ色のかかった透明性を有する膜を得た。該膜を電極上から取り出した後、真空ラインを用いて乾燥した。該膜の赤外吸収スペクトルは下記の吸収を示した。
【0081】
1727s、1561m、1451s、1382s、1256m、1072s、985m、807m、743m、622m、576m(数字はcm−1で示した吸収位置を示す。m,sはそれぞれ中位の吸収、強い吸収を示す。)
【0082】
上記の測定結果はいずれもKBrペレット中でのものである。チオフェン環の2、5位の水素に由来する1152のピーク(芳香環−H面内変角振動)が消失することで、2、5位で高分子化されたことを確認した。
従って、該膜は、式(A)で表される化合物の重合物「PDMUT」であることが確認された。
得られた「PDMUT」のポリスチレン換算数平均分子量は、7.5x10 であった。
【0083】
(実施例2)
参考例2において、化合物「UT」の変わりに合成例1で得た式(A)で表される化合物「DMUT」を使用した以外は、参考例2と同様にしてガラス基板上にオレンジ色のかかった透明性を有する膜を得た。該膜を電極上から取り出した後、真空ラインを用いて乾燥した。該膜の赤外吸収スペクトルは下記の吸収を示した。
【0084】
1727s、1561m、1451s、1382s、1256m、1072s、985m、807m、743m、622m、576m(数字はcm−1で示した吸収位置を示す。m,sはそれぞれ中位の吸収、強い吸収を示す。)
【0085】
上記の測定結果はいずれもKBrペレット中でのものである。チオフェン環の2、5位の水素に由来する1152のピーク(芳香環−H面内変角振動)が消失することで、2、5位で高分子化されたことを確認した。
従って、該膜は、式(A)で表される化合物の重合物「PDMUT」であることが確認された。
得られた「PDMUT」のポリスチレン換算数平均分子量は、5.5x10 であった。
【0086】
(実施例3)
塩化鉄(III)11gをアセトニトリル1Lに溶解させ、ここに、合成例1で得た式(A)で表される化合物「DMUT」2.8gとアセトニトリル100mLを混合した分散液を滴下した。室温で15時間攪拌した後、反応液を濾別し、黒色粉末を得た。この粉末を、ヒドラジンヒドラート、エタノール、純水で洗浄し、クロロホルムに溶解させ、メタノールを用いて再沈殿を行った。こうして得られた再沈殿物を再度、水、エタノールで洗浄し、真空ラインを用いた乾燥を経て、淡黄色の粉末を得た。この粉末の赤外吸収スペクトルは下記の吸収を示した。
【0087】
1727s、1561m、1451s、1382s、1256m、1072s、985m、807m、743m、622m、576m(数字はcm−1で示した吸収位置を示す。m,sはそれぞれ中位の吸収、強い吸収を示す。)
【0088】
上記の測定結果はいずれもKBrペレット中でのものである。チオフェン環の2、5位の水素に由来する1152のピーク(芳香環−H面内変角振動)が消失することで、2、5位で高分子化されたことを確認した。
従って、該粉末は、式(A)で表される化合物の重合物「PDMUT」であることが確認された。
得られた「PDMUT」のポリスチレン換算数平均分子量は、3.0x10 であった。
【0089】
(実施例4)
アルゴンガス下、Ni(COD)490mgをDMF6mLに加え、ここに、ビピリジン289mg及びシクロオクタジエン163mgを加えた。ここに、合成例5で得た式(E)で表される化合物「DBr−DMUT」502mgを加え60℃で15時間攪拌した。その後、反応液を氷水にあけ、固形粉末を濾別した。この粉末を、メタノールと塩酸1:1混合液、エタノール、トルエンを用いて洗浄し、クロロホルムに溶解させ、メタノールを用いて再沈殿を行った。こうして得られた再沈殿物を再度、水、エタノールで洗浄し、真空ラインを用いた乾燥を経て、淡黄色の粉末を得た。
この粉末の赤外吸収スペクトルは下記の吸収を示した。
【0090】
1727s、1561m、1451s、1382s、1256m、1072s、985m、807m、743m、622m、576m(数字はcm−1で示した吸収位置を示す。m,sはそれぞれ中位の吸収、強い吸収を示す。)
【0091】
上記の測定結果はいずれもKBrペレット中でのものである。チオフェン環の2、5位の臭素に由来する1100のピーク(芳香環−臭素面内変角振動)が消失することで、2、5位で高分子化されたことを確認した。
従って、該粉末は、式(A)で表される化合物の重合物「PDMUT」であることが確認された。
得られた「PDMUT」のポリスチレン換算数平均分子量は、4.0x10 であった。
【0092】
(実施例5)
実施例1において、式(A)で表される化合物DMUTの代わりに合成例2で得た式(B)で表される化合物「MMUT」を使用した以外は、実施例1と同様にして作用電極上に僅かのみ黄色のかかった透明性を有する膜を得た。該膜を電極上から取り出した後、真空ラインを用いて乾燥した。該膜の赤外吸収スペクトルは下記の吸収を示した。
【0093】
1682s,1450s,1418s,1290s, 1216s,1099s,1048m,720−600m,580m(数字はcm−1で示した吸収位置を示す。m,sはそれぞれ中位の吸収、強い吸収を示す。)
【0094】
上記の測定結果はいずれもKBrペレット中でのものである。チオフェン環の2、5位の水素に由来する1152のピーク(芳香環−H面内変角振動)が消失することで、2、5位で高分子化されたことを確認した。
従って、該膜は、式(B)で表される化合物の重合物「PMMUT」であることが確認された。
【0095】
(実施例6)
実施例1において、式(A)で表される化合物DMUTの代わりに合成例3で得た式(C)で表される化合物「DPUT」を使用した以外は、実施例1と同様にして作用電極上に僅かのみ黄色のかかった透明性を有する膜を得た。該膜を電極上から取り出した後、真空ラインを用いて乾燥した。該膜の赤外吸収スペクトルは下記の吸収を示した。
【0096】
1713s,1553s、1452s,1396s,1360s,1103s,839s,750−600m(数字はcm−1で示した吸収位置を示す。m,sはそれぞれ中位の吸収、強い吸収を示す。)
【0097】
上記の測定結果はいずれもKBrペレット中でのものである。チオフェン環の2、5位の水素に由来する1150のピーク(芳香環−H面内変角振動)が消失することで、2、5位で高分子化されたことを確認した。
従って、該膜は、式(C)で表される化合物の重合物「PDPUT」であることが確認された。
【0098】
(実施例7)
実施例1において、式(A)で表される化合物DMUTの代わりに合成例4で得た式(D)で表される化合物「MPUT」を使用した以外は、実施例1と同様にして作用電極上に僅かのみ黄色のかかった透明性を有する膜を得た。該膜を電極上から取り出した後、真空ラインを用いて乾燥した。該膜の赤外吸収スペクトルは下記の吸収を示した。
【0099】
1717s,1692s、1551s、1450s,1389s,1169s,750−600m(数字はcm−1で示した吸収位置を示す。m,sはそれぞれ中位の吸収、強い吸収を示す。)
【0100】
上記の測定結果はいずれもKBrペレット中でのものである。チオフェン環の2、5位の水素に由来する1088のピーク(芳香環−H面内変角振動)が消失することで、2、5位で高分子化されたことを確認した。
従って、該膜は、式(D)で表される化合物の重合物「PMPUT」であることが確認された。
【0101】
(実施例8 有機半導体デバイス評価)
スパッタ法により100nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、実施例4で得た「PDMUT」が1.5wt%となるように調製したトルエン溶液を用いてスピンコートにより1500rpmの回転速度で成膜した。次に減圧下80℃で1時間乾燥した後、対極として、アルミニウムを約30nm蒸着して、ダイオード素子を作製した。得られた素子に電圧を引加すると素子は整流作用を示すことがわかり(図2参照)、即ち半導体特性を示すことが判った。
【0102】
(実施例9 有機半導体デバイス評価)
スパッタ法により100nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、実施例2に記載の方法で「PDMUT」を成膜した。次に減圧下80℃で1時間乾燥した後、対極として、アルミニウムを約30nm蒸着して、ダイオード素子を作製した。得られた素子に電圧を引加すると、素子は整流作用を示すことがわかり(図2参照)、即ち半導体特性を示すことが判った。
【0103】
(比較例1 有機半導体デバイス評価)
参考例2に記載の方法で「PUT」膜を使用した以外は実施例9と同様にして素子を作製した。得られた素子は、整流作用ではなくオーム挙動を示した(図3参照)。このことは「PUT」が半導体特性を示さないことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明に係る有機半導体デバイスの具体的態様である有機ダイオードの構成例を示す図である。
【図2】実施例の高分子有機半導体デバイスの半導体特性の結果である。
【図3】比較例デバイスの電流−電圧特性の結果である。
【符号の説明】
【0105】
1:基材
2:電極
3:有機半導体薄膜
4:電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式(1)中、R1およびR2は、各々独立して、水素原子または炭素原子数1〜16のアルキル基を表し(但しR1およびR2が水素原子である場合を除く)、W1およびW2は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、(HO)B−及び(R3−O)B−からなる群から選択される少なくとも1つの基を表し、R3は炭素原子数1〜12のアルキル基を表す。)で表される化合物を重合してなる高分子有機半導体材料。
【請求項2】
請求項1記載の高分子有機半導体材料を含有することを特徴とする高分子有機半導体材料薄膜。
【請求項3】
請求項1記載の高分子有機半導体材料を半導体層に用いることを特徴とする有機半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−99942(P2009−99942A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177819(P2008−177819)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】