説明

高分子粒体材料の検査方法

【課題】高分子粒体の高温での凝集し易さを評価できる高分子粒体材料の検査方法を提供すること。
【解決手段】高分子粒体材料の検査方法に、測定用容器に入った高分子粒体材料に荷重を加えて高分子粒体材料を圧縮する圧縮工程と、圧縮工程後の高分子粒体材料を測定用容器に入った状態で測定子を持つ検査装置に取り付け測定子を回転させつつ高分子粒体材料に差し込んで測定子に加わる差し込み方向の荷重と測定子に加わる回転方向の荷重との少なくとも一方を測定する測定工程と、を設け、測定工程で測定した荷重に基づいて高分子粒体の凝集し易さを評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の高分子粒体を含む高分子粒体材料を検査するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒体状の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマ(以下、高分子粒体と呼ぶ)は、パウダースラッシュ成形等の材料として用いられる。複数個の高分子粒体を含む高分子粒体材料には、輸送時や保管時、連続成形時に高分子粒体の凝集体が生じる(所謂ブロッキング)場合がある。高分子粒体の凝集体が生じた高分子粒体材料を用いて成形すると、得られた成形品の品質が悪くなる。このため従来は、成形前に高分子粒体材料の検査をおこない、高分子粒体が凝集しているか否かを判別していた。このような高分子粒体材料の検査方法としては、一般に、高分子粒体材料を篩にかけ、篩を通らなかった高分子粒体材料の形状や量を基に高分子粒体の凝集体が生じているか否かを評価する方法がとられていた。しかし、篩がけの作業は作業者毎にばらつくため、この検査方法による判別結果もまた、作業者毎にばらついていた。
【0003】
特許文献1には、パウダーレオメータを用いて、現像剤(トナーなど)の流動性を評価する技術が紹介されている。この技術を転用すれば、高分子粒体材料の流動性を基に、高分子粒体の凝集体が生じているか否かを精度高く判別できると考えられる。
【0004】
ところで、パウダースラッシュ成形などでは、高分子粒体は、成形時において高温にさらされる等、凝集し易い環境におかれる。したがって、凝集し易い高分子粒体であれば、検査時には凝集していないと判別されても、実際の成形時(詳しくは成形直前)に凝集する場合がある。特許文献1に紹介されている方法によると、高分子粒体の凝集体が生じているか否かを判別することはできるが、高分子粒体の凝集し易さは評価できない。このため、高分子粒体の凝集し易さを評価できる検査方法の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2007−114751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高分子粒体の凝集し易さを評価できる高分子粒体材料の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の高分子粒体材料の検査方法は、複数個の高分子粒体を含む高分子粒体材料を測定用容器に入れる準備工程と、測定用容器に入った高分子粒体材料に荷重を加えて高分子粒体材料を圧縮する圧縮工程と、圧縮工程後の高分子粒体材料を、測定用容器に入った状態で測定子を持つ検査装置に取り付け、測定子を回転させつつ高分子粒体材料に差し込んで、測定子に加わる差し込み方向の荷重と測定子に加わる回転方向の荷重との少なくとも一方を測定する測定工程と、を備え、測定工程で測定した荷重に基づいて高分子粒体の凝集し易さを評価することを特徴とする。
【0007】
本発明の高分子粒体材料の検査方法は、下記の(1)〜(6)の何れかを備えるのが好ましい。(1)〜(6)の複数を備えるのがより好ましい。
【0008】
(1)上記測定工程において、少なくとも上記測定子に加わる回転方向の荷重を測定する。
【0009】
(2)上記測定工程において、上記測定子に加わる差し込み方向の荷重と上記測定子に加わる回転方向の荷重との両方を測定する。
【0010】
(3)上記圧縮工程において、上記高分子粒体材料をその溶融温度に満たない温度で加熱しつつ圧縮する。
【0011】
(4)上記圧縮工程において上記高分子粒体材料に加える荷重は、20.4g/cm〜509g/cmである。
【0012】
(5)上記圧縮工程における加熱温度は、前記高分子粒体材料の溶融温度未満50℃以上である。
【0013】
(6)上記検査装置はパウダーレオメータである。
【発明の効果】
【0014】
複数個の高分子流体を含む高分子粒体材料を圧縮すると、高分子粒体材料中の高分子粒体が互いに圧接する。このため、凝集し易い高分子粒体は凝集する。したがって、本発明の高分子粒体材料の検査方法においては、凝集し易い高分子粒体は圧縮工程によって凝集する。
【0015】
測定工程では、圧縮工程後の高分子粒体材料、すなわち、凝集し易い高分子粒体が凝集した高分子粒体材料に測定子を差し込んで、測定子に加わる差し込み方向の荷重(以下、差し込み荷重と呼ぶ)と、測定子に加わる回転方向の荷重(以下、回転荷重と呼ぶ)との少なくとも一方を測定する。高分子粒体が凝集すると、差し込み荷重および回転荷重が大きくなる。このため、測定工程で測定された差し込み荷重と回転荷重との少なくとも一方を基に、圧縮工程後の高分子粒体材料に高分子粒体の凝集体が生じているか否かを判別でき、高分子粒体が凝集し易いか否かを判別できる。よって、本発明の高分子粒体材料の検査方法によると、高分子粒体の凝集し易さ(以下、凝集性と呼ぶ)を評価できる。以下、凝集し易いことを凝集性が大きいといい、凝集し難いことを凝集性が小さいという。
【0016】
本発明の高分子粒体材料の検査方法によると、差し込み荷重と回転荷重との少なくとも一方を機械的に測定することで、高分子粒体の凝集性を精度高く評価できる。
【0017】
上記(1)〜(2)を備える本発明の高分子粒体材料の検査方法によると、高分子粒体の凝集性をさらに精度高く評価できる。高分子粒体が凝集していない高分子粒体材料の回転荷重と、高分子粒体が凝集している高分子粒体材料の回転荷重と、の差は、高分子粒体が凝集していない高分子粒体材料の差し込み荷重と、高分子粒体が凝集している高分子粒体材料の差し込み荷重と、の差よりも大きいためである。
【0018】
上記(3)を備える本発明の高分子粒体材料の検査方法によると、圧縮工程において高分子粒体を加熱しつつ圧縮することで、凝集性の大きな高分子粒体を信頼性高く凝集させ得る。このため、上記(3)を備える本発明の高分子粒体材料の検査方法によると、高分子粒体の凝集性を精度高く評価できる。なお、加熱温度を、高分子粒体材料の溶融温度に満たない温度にすることで、高分子粒体材料の溶融による高分子粒体の固着を避けつつ高分子粒体を信頼性高く凝集させ得る。
【0019】
上記(4)を備える本発明の高分子粒体材料の検査方法によると、凝集性の大きな高分子粒体を、圧縮工程において信頼性高く凝集させ得る。このため、上記(4)を備える本発明の高分子粒体材料の検査方法によると、高分子粒体の凝集性をさらに精度高く評価できる。
【0020】
上記(5)を備える本発明の高分子粒体材料の検査方法によると、凝集性の大きな高分子粒体を、圧縮工程においてさらに信頼性高く凝集させ得る。このため、上記(5)を備える本発明の高分子粒体材料の検査方法によると、高分子粒体の凝集性をさらに精度高く評価できる。
【0021】
上記(6)を備える本発明の高分子粒体材料の検査方法によると、高分子粒体の凝集性を安価かつ信頼性高く評価できる。一般的な検査装置であるパウダーレオメータを用いるためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の高分子粒体材料の検査方法に供する高分子粒体材料は、複数個の高分子粒体のみからなっても良いし、高分子粒体以外の副材料を含んでも良い。例えば、高分子粒体よりも凝集性の小さい樹脂材料からなり高分子粒体よりも小径の副材料を高分子粒体の表面に付着させる場合には、高分子粒体同士の間隙に副材料が介在する。このため、高分子粒体同士が圧接し難くなり、高分子粒体の凝集が抑制される。
【0023】
本発明の高分子粒体材料の検査方法で用いる検査装置は、測定子を持つ。測定子は、少なくとも回転運動できるものであればよい。すなわち、測定子を高分子粒体材料に差し込む作業は測定者が手作業でおこなっても良い。例えば測定子を回転させ、作業者が測定子に向けて測定用容器および高分子粒体材料を近づければ、回転している測定子を高分子粒体材料に差し込むことができる。しかし、評価のバラツキをなくし、評価の信頼性を高めるためには、測定子自体が回転しつつ測定用容器および高分子粒体材料に向けて移動することが好ましい。
【0024】
また、本発明の高分子粒体材料の検査方法で用いる検査装置は、差し込み荷重を検知するセンサと、回転荷重を検知するセンサとを持つ。これらのセンサとしては、既知の荷重センサや加速度センサ、角速度センサ等を用いればよい。測定子の回転速度や測定子の差し込み速度は、使用する高分子粒体の種類や粒径、測定用容器の形状等に応じて適宜設定すればよい。なお、高分子粒体としてスラッシュ成形用エラストマパウダーを用いる場合には、測定子の差し込み速度は26.4mm/分〜1575.2mm/分程度であるのが好ましい。また、高分子粒体としてスラッシュ成形用エラストマパウダーを用いる場合には、測定子の回転速度は2.0rpm〜119.4rpm程度であるのが好ましい。
【0025】
本発明の高分子粒体材料の検査方法によると、種々の大きさの高分子粒体の凝集性を評価できるが、平均粒子径0.01mm〜1.0mm程度の高分子粒体の凝集性を評価するのに特に好ましく用いられる。また、本発明の高分子粒体材料の検査方法によると、種々の材料からなる高分子粒体の凝集性を評価できるが、熱可塑性ポリウレタンエラストマ、熱可塑性オレフィンエラストマ、スチレン系熱可塑性エラストマ、塩化ビニル系熱可塑性エラストマ、熱可塑性ポリエステルエラストマ、熱可塑性ポリアミドエラストマ等からなる高分子粒体の凝集性を評価するのに特に好ましく用いられる。
【0026】
本発明の高分子粒体材料の検査方法の圧縮工程では、高分子粒体材料に加える荷重が大きいほど、凝集性の小さな高分子粒体を凝集させることができる。一方、凝集性の大きな高分子粒体を凝集させるためには、圧縮工程において高分子粒体に加える荷重は小さくて良い。このため、圧縮工程において高分子粒体に加える荷重は、評価すべき凝集性の大きさに応じて適宜設定すればよい。圧縮工程において高分子粒体に加える荷重が高分子粒体160mlあたり20.4g/cm〜509g/cmであれば、比較的凝集性の小さな高分子粒体材料を凝集させることなく、凝集性の大きな高分子粒体を信頼性高く凝集させることができる。
【0027】
圧縮工程において高分子粒体材料を加熱する温度は、高分子粒体材料の溶融温度に満たない温度であれば良く、高分子粒体材料の種類毎に適宜設定できる。なお、この加熱温度が高温である程、凝集性の大きな高分子粒体を信頼性高く凝集させ得る。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の高分子粒体材料の検査方法を例を挙げて説明する。
【0029】
(実施例1)
実施例1の高分子粒体材料の検査方法に供する高分子粒体材料としては、三洋化成工業株式会社製のGS200を用いた。この高分子粒体材料は、熱可塑性ポリウレタンエラストマの粒体である。また、この高分子粒体材料の溶融温度は180℃である。
【0030】
(予備工程)
高分子粒体材料を50℃に設定した乾燥機に入れて、16時間〜20時間乾燥させた。乾燥した高分子粒体材料300〜400mlを500ml容PEチューブに入れたものを5つ作製し(試料1〜5)、試料1〜5の高分子粒体材料の重量をそれぞれ測定した。その後、試料1〜5の高分子粒体材料に、それぞれ、測定した重量に基づいて水を添加した。なお、ここで添加した水は、イオン交換処理後の純水であった。また、水は各試料の高分子粒体材料を撹拌しつつ添加した。
【0031】
詳しくは、試料1の高分子粒体材料には水を加えなかった。試料2の高分子粒体材料には、水添加後の高分子粒体材料の質量(100質量%)に対して0.3質量%となる量の水を加えた。試料3の高分子粒体材料には、水添加後の高分子粒体材料の質量(100質量%)に対して0.8質量%となる量の水を加えた。試料4の高分子粒体材料には、水添加後の高分子粒体材料の質量(100質量%)に対して1.3質量%となる量の水を加えた。試料5の高分子粒体材料には、水添加後の高分子粒体材料の質量(100質量%)に対して1.8質量%となる量の水を加えた。
【0032】
乾燥した高分子粒体材料には約0.2質量%の水が含まれている。このため、水添加後の試料1の高分子粒体材料には約0.2質量%の水が含まれ、水添加後の試料2の高分子粒体材料には約0.5質量%の水が含まれ、水添加後の試料3の高分子粒体材料には約1.0質量%の水が含まれ、水添加後の試料4の高分子粒体材料には約1.5質量%の水が含まれ、水添加後の試料5の高分子粒体材料には約2.0質量%の水が含まれる。水添加後、高分子粒体材料全体に水を分散させるため、試料1〜5のPEチューブにキャップをし、さらにポリビニルテープで封をした上で、20〜70時間程度室温で放置した。
【0033】
各試料の高分子粒体材料にそれぞれ異なる量の水を加えることで、高分子粒体の凝集性の異なる試料1〜5を得た。この試料1〜5を以下の準備工程〜測定工程に供することで、各試料の凝集性を評価した。
【0034】
(準備工程)
実施例1における準備工程は、予備工程後の高分子粒体材料を測定用容器に入れる工程である。
【0035】
測定用容器1としては、後述するパウダーレオメータFT4用のベッセルキット(スプリットベッセルキット C203 50X160ML)を用いた。このベッセルキットは、図1に示すように、上筒体11と下筒体12とを持つ。上筒体11および下筒体12の内径はともに50mmである。下筒体12の上端外周部には、略リング状の下側リング枠13が固着されている。上筒体11の下端外周部には略リング状の上側リング枠14が固着されている。上側リング枠14は下側リング枠13に枢支されている。このため上側リング枠14および上筒体11は、図1に示す第1位置と図2に示す第2位置との間を回動可能である。第1位置においては、上筒体11および上側リング枠14と、下筒体12および下側リング枠13とは同軸的に固定され、上側リング枠14の下面は下側リング枠13の上面に当接し、上筒体11の内部と下筒体12の内部とは連通する。第2位置においては、下筒体12の内部は露出する。
【0036】
先ず、測定用容器1を組み立て、上筒体11および上側リング枠14を図1に示す第1位置に配置した。次いで、予備工程後の高分子粒体材料160ml強を上筒体11の上方から上筒体11および下筒体12に入れた。そして高分子粒体材料が入った測定用容器1を実験台に20〜30回軽くたたきつけた(所謂タッピング)。このタッピング処理で、下筒体12の全体と上筒体11の一部とに高分子粒体材料が充填された。このとき、高分子粒体材料の体積が160ml以下になった場合には、高分子粒体材料を追加して軽くタッピング処理を行った。タッピング処理後、図2に示すように、上筒体11および上側リング枠14を第2位置に回動させて、下筒体12に充填されている高分子粒体材料をすり切った。この操作によって、下筒体12には160mlの高分子粒体材料が充填された。
【0037】
(圧縮工程)
実施例1における圧縮工程は、測定用容器1に入った高分子粒体材料に荷重を加えつつ加熱して、高分子粒体材料を圧縮する工程である。
【0038】
先ず、180ml容平底ジャー(サンプラテック製PFA平底ジャー No.15283E 0103L 外径49mm)の外表面に出ている凸状突起をカッターナイフで削り取り、平底ジャーの外径を均一(49mm)にした。この平底ジャーに鉄粉(ナカライテスク製 No.19416−45 CP80メッシュ)を入れ、平底ジャーの蓋も合わせた質量が500.0gになるようにした。鉄粉を入れた平底ジャーの蓋をしっかりと閉めたものを、圧縮用の荷重体2として用いた。
【0039】
準備工程後、上筒体11および上側リング枠14を第1位置に回動させた。そして、図3に示すように、上筒体11に荷重体2を挿入して、下筒体12に充填された高分子粒体材料に荷重を加えた。この状態で測定用容器1、高分子粒体材料および荷重体2を図略の環境試験装置(エスペック株式会社製 各種汎用環境試験装置)に入れ、高分子粒体材料を50℃で3時間圧縮した。なお、高分子粒体材料の溶融温度(180℃)は50℃を超えるため、この工程によって高分子粒体材料が溶融することはない。
【0040】
(測定工程)
実施例1における測定工程は、圧縮工程後の高分子粒体材料を測定用容器1に入った状態で検査装置に取り付け、検査装置の測定子を回転させつつ高分子粒体材料に差し込んで、差し込み荷重と回転荷重とを測定する工程である。
【0041】
実施例1における測定工程では、検査装置として、パウダーレオメータ(フリーマンテクノロジー社製 パウダーレオメータFT4)を用いた。なお、一般的なパウダーレオメータには、測定前にコンディショニング処理(測定子を逆回転させつつ検体に差し込んで、検体の粒度を均一化する処理)をおこなう機能がある。しかし、コンディショニング処理をおこなうと、圧縮工程で凝集した高分子粒体が再度分離する可能性が大きい。このため実施例1では、コンディショニング処理をおこなわず、圧縮工程後そのままの高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定した。
【0042】
詳しくは、測定用容器1を検査装置に取り付け、圧縮されている高分子粒体材料に測定子(パウダーレオメータブレード)を回転させつつ差し込んだ。このときの測定子の回転速度は39.8rpmであり、差し込み速度は525.1mm/分であった。なお、測定子としては上述した装置(FT4)の付属品である48mm径ブレードを用いた。
【0043】
測定工程で測定した試料1〜5の差し込み荷重を表すグラフを図4に示し、試料1〜5の回転荷重を表すグラフを図5に示し、試料1〜5の差し込み荷重と回転荷重との和(以下、合計荷重と呼ぶ)を表すグラフを図6に示す。
【0044】
(比較例1)
比較例1の高分子粒体材料の検査方法では、実施例1の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。換言すると、比較例1の高分子粒体材料の検査方法では、圧縮されていない状態の高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。
【0045】
(測定工程)
実施例1の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、測定用容器1を検査装置に取り付け、実施例1の高分子粒体材料の検査方法において測定子で一回撹拌した高分子粒体材料に、測定子を再度回転させつつ差し込んだ。検査装置は実施例1で用いた検査装置と同じものであり、測定子の回転速度および差し込み速度もまた実施例1と同じである。
【0046】
比較例1の測定工程で測定した試料1〜5の差し込み荷重を表すグラフを図4に示し、試料1〜5の回転荷重を表すグラフを図5に示し、試料1〜5の合計荷重を表すグラフを図6に示す。
【0047】
(比較例2)
比較例2の高分子粒体材料の検査方法では、比較例1の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。換言すると、比較例2の高分子粒体材料の検査方法では、比較例1よりもさらに圧縮されていない状態の高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。
【0048】
(測定工程)
比較例1の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、測定用容器1を検査装置に取り付け、実施例1および比較例1の高分子粒体材料の検査方法において測定子で合計二回撹拌した高分子粒体材料に、測定子を再度回転させつつ差し込んだ。検査装置は実施例1で用いた検査装置と同じものであり、測定子の回転速度および差し込み速度もまた実施例1と同じである。
【0049】
比較例2の測定工程で測定した試料1〜5の差し込み荷重を表すグラフを図4に示し、試料1〜5の回転荷重を表すグラフを図5に示し、試料1〜5の合計荷重を表すグラフを図6に示す。
【0050】
(比較例3)
比較例3の高分子粒体材料の検査方法では、比較例2の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。換言すると、比較例3の高分子粒体材料の検査方法では、比較例2よりもさらに圧縮されていない状態の高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。
【0051】
(測定工程)
比較例2の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、測定用容器1を検査装置に取り付け、実施例1および比較例1〜2の高分子粒体材料の検査方法において測定子で合計三回撹拌した高分子粒体材料に、測定子を再度回転させつつ差し込んだ。検査装置は実施例1で用いた検査装置と同じものであり、測定子の回転速度および差し込み速度もまた実施例1と同じである。
【0052】
比較例3の測定工程で測定した試料1〜5の差し込み荷重を表すグラフを図4に示し、試料1〜5の回転荷重を表すグラフを図5に示し、試料1〜5の合計荷重を表すグラフを図6に示す。
【0053】
(凝集性の評価1)
図4に示すように、実施例1の検査方法で測定した試料1〜5の差し込み荷重は、比較例1〜3の検査方法で測定した試料1〜5の差し込み荷重よりも遙かに大きい。また、実施例1の検査方法によると、比較例1〜3の検査方法よりも、各試料間の差し込み荷重の差が遙かに大きくなる。この結果から、実施例1の高分子材料の検査方法によると、水含有率の大きい高分子粒体材料(高分子粒体の凝集性の大きい高分子粒体材料)と、水含有率の小さい高分子粒体材料(高分子粒体の凝集性の小さい高分子粒体材料)とを精度高く判別でき、高分子粒体の凝集性を精度高く評価できることがわかる。なお、実施例1の測定工程で測定した試料1〜5の差し込み荷重は、試料1<試料2<試料3<試料4<試料5となっている。これは、試料1〜5の水含有率が、試料1<試料2<試料3<試料4<試料5となっているためである。
【0054】
また、実施例1の検査方法で測定した試料1〜5の回転荷重と比較例1〜3の検査方法で測定した試料1〜5の回転荷重との差(図5)は、実施例1の検査方法で測定した試料1〜5の差し込み荷重と比較例1〜3の検査方法で測定した試料1〜5の差し込み荷重との差(図4)よりも遙かに大きい。この結果から、回転荷重を基に高分子粒体の凝集性を評価する場合には、差し込み荷重を基に高分子粒体の凝集性を評価する場合に比べて、高分子粒体の凝集性をさらに精度高く評価できることがわかる。
【0055】
さらに、図6に示すように、合計荷重を基に高分子粒体材料の凝集性を評価する場合には、実施例1の検査方法による測定値と比較例1〜3の測定方法による測定値との差がさらに大きくなる。この結果から、合計荷重(すなわち、差し込み荷重と回転荷重との和)を基に高分子粒体の凝集性を評価する場合には、高分子粒体の凝集性をさらに精度高く評価できることがわかる。
【0056】
実施例1の高分子粒体材料の検査方法と比較例1〜3の高分子粒体材料の検査方法との違いは圧縮工程の有無である。このため、本発明の高分子粒体材料の検査方法は、圧縮工程を備えることで、高分子粒体の凝集性を精度高く評価できるといえる。
【0057】
なお、水分含有率0.5質量%以下の熱可塑性ポリウレタンエラストマ(GS200)を用いてパウダースラッシュ成形をおこなうと、品質に優れた成形品を得ることができる。換言すると、試料1および試料2の高分子粒体材料を用いてパウダースラッシュ成形をおこなうと、品質に優れた成形品を得ることができる。
【0058】
このため、差し込み荷重を基に高分子粒体材料の凝集性を評価する場合には、差し込み荷重が300mJ以下であれば、その高分子粒体材料の凝集性は十分に小さくパウダースラッシュ成形に適している、と評価することができる。
【0059】
また、回転荷重を基に高分子粒体の凝集性を評価する場合には、回転荷重が1350mJ以下であれば、その高分子粒体材料の凝集性は十分に小さくパウダースラッシュ成形に適している、と評価することができる。
【0060】
また、合計荷重を基に高分子粒体の凝集性を評価する場合には、合計荷重が1650mJ以下であれば、その高分子粒体材料の凝集性は十分に小さくパウダースラッシュ成形に適している、と評価することができる。
【0061】
(実施例2)
実施例2の高分子粒体材料の検査方法で凝集性を評価した試料(試料1〜4)は、高分子粒体材料として、三洋化成工業株式会社製のGS500を用いたこと以外は、実施例1における試料1〜4と同じものである。実施例2における予備工程、準備工程、測定工程は実施例1における予備工程、準備工程、測定工程と同じである。実施例2における圧縮工程は、加熱温度が23℃であること以外は実施例1における圧縮工程と同じである。
【0062】
実施例2の予備工程で作製した試料1には約0.2質量%の水が含まれ、試料2には約0.5質量%の水が含まれ、試料3には約1.0質量%の水が含まれ、試料4には約1.5質量%の水が含まれる。なお、後述する実施例3〜10に関しても、予備工程で作製した試料1〜4の水含有率は実施例2と同じである。予備工程後の試料1〜4を準備工程〜測定工程に供して、その凝集性を評価した。実施例2の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図7に示す。
【0063】
(比較例4)
比較例4の高分子粒体材料の検査方法では、実施例2の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例4の測定工程は、比較例1の測定工程と同様におこなった。比較例4の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図7に示す。
【0064】
(比較例5)
比較例5の高分子粒体材料の検査方法では、比較例4の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例5の測定工程は、比較例2の測定工程と同様におこなった。比較例5の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図7に示す。
【0065】
(比較例6)
比較例6の高分子粒体材料の検査方法では、比較例5の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例6の測定工程は、比較例3の測定工程と同様におこなった。比較例6の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図7に示す。
【0066】
(実施例3)
実施例3の高分子粒体材料の検査方法で凝集性を評価した試料(試料1〜4)は、高分子粒体材料として、三洋化成工業株式会社製のGS500を用いたこと以外は、実施例1における試料1〜4と同じものである。実施例3における予備工程、準備工程、測定工程は実施例1における予備工程、準備工程、測定工程と同じである。実施例3における圧縮工程は、加熱温度が40℃であること以外は実施例1における圧縮工程と同じである。予備工程後の試料1〜4を準備工程〜測定工程に供して、その凝集性を評価した。実施例3の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図8に示す。
【0067】
(比較例7)
比較例7の高分子粒体材料の検査方法では、実施例3の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例7の測定工程は、比較例1の測定工程と同様におこなった。比較例7の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図8に示す。
【0068】
(比較例8)
比較例8の高分子粒体材料の検査方法では、比較例7の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例8の測定工程は、比較例2の測定工程と同様におこなった。比較例7の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図8に示す。
【0069】
(比較例9)
比較例9の高分子粒体材料の検査方法では、比較例8の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例9の測定工程は、比較例3の測定工程と同様におこなった。比較例9の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図8に示す。
【0070】
(実施例4)
実施例4の高分子粒体材料の検査方法で凝集性を評価した試料(試料1〜4)は、高分子粒体材料として、三洋化成工業株式会社製のGS500を用いたこと以外は、実施例1における試料1〜4と同じものである。実施例4における予備工程、準備工程、測定工程は実施例1における予備工程、準備工程、測定工程と同じである。実施例4における圧縮工程は実施例1における圧縮工程と同じである。なお、実施例4の圧縮工程における加熱温度は50℃である。予備工程後の試料1〜4を準備工程〜測定工程に供して、その凝集性を評価した。実施例4の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図9に示す。
【0071】
(比較例10)
比較例10の高分子粒体材料の検査方法では、実施例4の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例10の測定工程は、比較例1の測定工程と同様におこなった。比較例10の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図9に示す。
【0072】
(比較例11)
比較例11の高分子粒体材料の検査方法では、比較例10の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例11の測定工程は、比較例2の測定工程と同様におこなった。比較例11の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図9に示す。
【0073】
(比較例12)
比較例12の高分子粒体材料の検査方法では、比較例11の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例12の測定工程は、比較例3の測定工程と同様におこなった。比較例12の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図9に示す。
【0074】
(実施例5)
実施例5の高分子粒体材料の検査方法で凝集性を評価した試料(試料1〜4)は、高分子粒体材料として、三洋化成工業株式会社製のGS500を用いたこと以外は、実施例1における試料1〜4と同じものである。実施例5における予備工程、準備工程、測定工程は実施例1における予備工程、準備工程、測定工程と同じである。実施例5における圧縮工程は、加熱温度が65℃であること以外は実施例1における圧縮工程と同じである。予備工程後の試料1〜4を準備工程〜測定工程に供して、その凝集性を評価した。実施例5の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図10に示す。
【0075】
(比較例13)
比較例13の高分子粒体材料の検査方法では、実施例5の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例13の測定工程は、比較例1の測定工程と同様におこなった。比較例13の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図10に示す。
【0076】
(比較例14)
比較例14の高分子粒体材料の検査方法では、比較例13の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例14の測定工程は、比較例2の測定工程と同様におこなった。比較例14の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図10に示す。
【0077】
(比較例15)
比較例15の高分子粒体材料の検査方法では、比較例14の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例15の測定工程は、比較例3の測定工程と同様におこなった。比較例15の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図10に示す。
【0078】
(凝集性の評価2)
実施例2〜5の高分子粒体材料の検査方法は、圧縮工程における加熱温度(以下、圧縮温度と略する)が異なる。詳しくは、各実施例における圧縮温度は、実施例2<実施例3<実施例4<実施例5である。また、図7〜10に示すように、実施例2〜5の高分子粒体材料の検査方法で測定した合計荷重は、実施例2<実施例3<実施例4<実施例5である。さらに、図7〜10に示すように、圧縮温度が高いほど、実施例の方法で測定した合計荷重と比較例の方法で測定した合計荷重との差は大きくなる。これらの結果から、本発明の高分子粒体材料の検査方法は、圧縮温度が高いほど検出感度が高くなり、高分子粒体の凝集性を精度高く評価できることがわかる。なお、圧縮温度を50℃以上にする場合(図9〜10)には、圧縮温度を50℃未満にする場合(図7〜8)に比べて、実施例で測定した合計荷重が大きく、かつ、実施例で測定した合計荷重と比較例で測定した合計荷重との差が非常に大きくなる。さらに、上述したように、圧縮温度を高分子粒体材料の溶融温度に満たない温度にすることで、高分子粒体材料の溶融による高分子粒体の固着を避けつつ高分子粒体を信頼性高く凝集させ得る。したがって、本発明の高分子粒体材料の検査方法における好ましい圧縮温度は、高分子粒体材料の溶融温度未満50℃以上である、と言える。
【0079】
なお、図示しないが、回転荷重のみを基に高分子粒体の凝集性を評価する場合、および、差し込み荷重のみを基に高分子粒体の凝集性を評価する場合にも同様に、圧縮温度が高分子粒体材料の溶融温度未満50℃以上であれば、高分子粒体の凝集性を精度高く評価できる。
【0080】
(実施例6)
実施例6の高分子粒体材料の検査方法に供する高分子粒体材料としては、実施例1と同じものを用いた。実施例6の高分子粒体材料の検査方法で凝集性を評価した試料(試料1〜4)は、実施例1における試料1〜4と同じものである。実施例6における予備工程、準備工程、測定工程は実施例1における予備工程、準備工程、測定工程と同じである。実施例6における圧縮工程は、各試料に加えた荷重が15.3g/cm(荷重体2の質量が300g)であること以外は実施例1における圧縮工程と同じである。なお、実施例6の圧縮工程における加熱温度は50℃である。予備工程後の試料1〜4を準備工程〜測定工程に供して、その凝集性を評価した。実施例6の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図11に示す。
【0081】
(比較例16)
比較例16の高分子粒体材料の検査方法では、実施例6の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例16の測定工程は、比較例1の測定工程と同様におこなった。比較例16の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図11に示す。
【0082】
(比較例17)
比較例17の高分子粒体材料の検査方法では、比較例16の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例17の測定工程は、比較例2の測定工程と同様におこなった。比較例17の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図11に示す。
【0083】
(比較例18)
比較例18の高分子粒体材料の検査方法では、比較例17の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例18の測定工程は、比較例3の測定工程と同様におこなった。比較例18の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図11に示す。
【0084】
(実施例7)
実施例7の高分子粒体材料の検査方法で凝集性を評価した試料(試料1〜4)は、高分子粒体材料として、三洋化成工業株式会社製のGS500を用いたこと以外は、実施例1における試料1〜4と同じものである。実施例7における予備工程、準備工程、測定工程は実施例1における予備工程、準備工程、測定工程と同じである。実施例7における圧縮工程は、各試料に加えた荷重が20.4g/cm(荷重体2の質量が400g)であること以外は実施例1における圧縮工程と同じである。なお、実施例7の圧縮工程における加熱温度は50℃である。予備工程後の試料1〜4を準備工程〜測定工程に供して、その凝集性を評価した。実施例7の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図12に示す。
【0085】
(比較例19)
比較例19の高分子粒体材料の検査方法では、実施例7の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例19の測定工程は、比較例1の測定工程と同様におこなった。比較例19の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図12に示す。
【0086】
(比較例20)
比較例20の高分子粒体材料の検査方法では、比較例19の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例20の測定工程は、比較例2の測定工程と同様におこなった。比較例20の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図12に示す。
【0087】
(比較例21)
比較例21の高分子粒体材料の検査方法では、比較例20の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例21の測定工程は、比較例3の測定工程と同様におこなった。比較例21の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図12に示す。
【0088】
(実施例8)
実施例8の高分子粒体材料の検査方法で凝集性を評価した試料(試料1〜4)は、高分子粒体材料として、三洋化成工業株式会社製のGS500を用いたこと以外は、実施例1における試料1〜4と同じものである。実施例8における予備工程、準備工程、測定工程は実施例1における予備工程、準備工程、測定工程と同じである。実施例8における圧縮工程は、各試料に加えた荷重が50.9g(荷重体2の質量が1000g)であること以外は実施例1における圧縮工程と同じである。なお、実施例8の圧縮工程における加熱温度は50℃である。予備工程後の試料1〜4を準備工程〜測定工程に供して、その凝集性を評価した。実施例8の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図13に示す。
【0089】
(比較例22)
比較例22の高分子粒体材料の検査方法では、実施例8の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例22の測定工程は、比較例1の測定工程と同様におこなった。比較例22の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図13に示す。
【0090】
(比較例23)
比較例23の高分子粒体材料の検査方法では、比較例22の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例23の測定工程は、比較例2の測定工程と同様におこなった。比較例23の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図13に示す。
【0091】
(比較例24)
比較例24の高分子粒体材料の検査方法では、比較例24の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例24の測定工程は、比較例3の測定工程と同様におこなった。比較例24の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図13に示す。
【0092】
(凝集性の評価3)
実施例6〜8の高分子粒体材料の検査方法は、圧縮工程における荷重(以下、圧縮荷重と略する)が異なる。詳しくは、各実施例における圧縮荷重は、実施例6<実施例7<実施例8である。また、図11〜13に示すように、実施例6〜8の高分子粒体材料の検査方法で測定した合計荷重は、実施例6<実施例7<実施例8である。さらに、図11〜13に示すように、圧縮荷重が大きいほど、実施例の方法で測定した合計荷重と比較例の方法で測定した合計荷重との差は大きくなる。これらの結果から、本発明の高分子粒体材料の検査方法は、圧縮荷重が大きいほど検出感度が高くなり、高分子粒体の凝集性を精度高く評価できることがわかる。なお、圧縮荷重を400g以上にする場合(図12〜13)には、圧縮荷重を400g未満にする場合(図11)に比べて、実施例で測定した合計荷重が大きく、かつ、実施例で測定した合計荷重と比較例で測定した合計荷重との差が非常に大きくなる。したがって、本発明の高分子粒体材料の検査方法における好ましい圧縮荷重は400g以上(20.4g/cm以上)である、といえる。さらに、圧縮荷重が509g/cm未満(荷重体2の質量が10kg未満)であれば、高分子粒体材料は凝着しない。このため、圧縮荷重が20.4g/cm〜509g/cmであれば、高分子粒体の凝集性を精度高く評価できる。
【0093】
なお、図示しないが、回転荷重のみを基に高分子粒体の凝集性を評価する場合、および、差し込み荷重のみを基に高分子粒体の凝集性を評価する場合にも同様に、圧縮荷重が20.4g/cm〜509g/cmであれば、高分子粒体の凝集性を精度高く評価できる。
【0094】
(実施例9)
実施例9の高分子粒体材料の検査方法で凝集性を評価した試料(試料1〜4)は、高分子粒体材料として、三洋化成工業株式会社製のGS500を用いたこと以外は、実施例1における試料1〜4と同じものである。実施例9における予備工程、準備工程、圧縮工程は実施例1における予備工程、準備工程、圧縮工程と同じである。実施例9における測定工程は、測定子の回転速度が2.0rpmであり、差し込み速度が26.4mm/分であること以外は実施例1における測定工程と同じである。なお、実施例9の圧縮工程における加熱温度は50℃であり、各試料に加えた荷重(荷重体2の質量)は500gである。予備工程後の試料1〜4を準備工程〜測定工程に供して、その凝集性を評価した。実施例9の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図14に示す。
【0095】
(比較例25)
比較例25の高分子粒体材料の検査方法では、実施例9の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例25の測定工程は、比較例1の測定工程と同様におこなった。比較例25の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図14に示す。
【0096】
(比較例26)
比較例26の高分子粒体材料の検査方法では、比較例25の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例26の測定工程は、比較例2の測定工程と同様におこなった。比較例26の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図14に示す。
【0097】
(比較例27)
比較例27の高分子粒体材料の検査方法では、比較例26の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例27の測定工程は、比較例3の測定工程と同様におこなった。比較例27の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図14に示す。
【0098】
(実施例10)
実施例10の高分子粒体材料の検査方法で凝集性を評価した試料(試料1〜4)は、高分子粒体材料として、三洋化成工業株式会社製のGS500を用いたこと以外は、実施例1における試料1〜4と同じものである。実施例10における予備工程、準備工程、圧縮工程は実施例1における予備工程、準備工程、圧縮工程と同じである。実施例10における測定工程は、測定子の回転速度が119.4rpmであり、差し込み速度が1575.2mm/分であること以外は実施例1における測定工程と同じである。なお、実施例10の圧縮工程における加熱温度は50℃であり、各試料に加えた荷重(荷重体2の質量)は500gである。予備工程後の試料1〜4を準備工程〜測定工程に供して、その凝集性を評価した。実施例10の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図15に示す。
【0099】
(比較例28)
比較例28の高分子粒体材料の検査方法では、実施例10の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例28の測定工程は、比較例1の測定工程と同様におこなった。比較例28の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図15に示す。
【0100】
(比較例29)
比較例29の高分子粒体材料の検査方法では、比較例28の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例29の測定工程は、比較例2の測定工程と同様におこなった。比較例29の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図15に示す。
【0101】
(比較例30)
比較例30の高分子粒体材料の検査方法では、比較例29の高分子粒体材料の検査方法における測定工程後に、再度、高分子粒体材料の差し込み荷重と回転荷重とを測定する。比較例30の測定工程は、比較例3の測定工程と同様におこなった。比較例30の測定工程で測定した試料1〜4の合計荷重を表すグラフを図15に示す。
【0102】
(凝集性の評価4)
実施例9〜10の高分子粒体材料の検査方法は、測定子の回転速度および差し込み速度が異なる。しかし、図14〜15に示すように、実施例9〜10の高分子粒体材料の検査方法で測定した合計荷重は十分に大きく、実施例9〜10の方法で測定した合計荷重と、それに対応する比較例の方法で測定した合計荷重との差もまた十分に大きい。これらの結果から、本発明の高分子粒体材料の検査方法では、測定子の回転速度が2.0〜119.4rpm、差し込み速度が26.4〜1575.4mm/分の範囲であれば、検出感度が十分に高くなり、高分子粒体の凝集性を精度高く評価できることがわかる。なお、図示しないが、回転荷重のみを基に高分子粒体の凝集性を評価する場合、および、差し込み荷重のみを基に高分子粒体の凝集性を評価する場合にも同様に、測定子の回転速度が2.0〜119.4rpm、差し込み速度が26.4〜1575.4mm/分の範囲であれば、高分子粒体の凝集性を精度高く評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】実施例1で用いた測定用容器を模式的に表す斜視図である。
【図2】実施例1で用いた測定用容器を模式的に表す斜視図である。
【図3】実施例1における圧縮工程を模式的に表す斜視図である。
【図4】実施例1および比較例1〜3の測定工程で測定した試料1〜5の差し込み荷重を表すグラフである。
【図5】実施例1および比較例1〜3の測定工程で測定した試料1〜5の回転荷重を表すグラフである。
【図6】実施例1および比較例1〜3の測定工程で測定した試料1〜5の差し込み荷重と回転荷重との和を表すグラフである。
【図7】実施例2および比較例4〜6の測定工程で測定した試料1〜4の差し込み荷重と回転荷重との和を表すグラフである。
【図8】実施例3および比較例7〜9の測定工程で測定した試料1〜4の差し込み荷重と回転荷重との和を表すグラフである。
【図9】実施例4および比較例10〜12の測定工程で測定した試料1〜4の差し込み荷重と回転荷重との和を表すグラフである。
【図10】実施例5および比較例13〜15の測定工程で測定した試料1〜4の差し込み荷重と回転荷重との和を表すグラフである。
【図11】実施例6および比較例16〜18の測定工程で測定した試料1〜4の差し込み荷重と回転荷重との和を表すグラフである。
【図12】実施例7および比較例19〜21の測定工程で測定した試料1〜4の差し込み荷重と回転荷重との和を表すグラフである。
【図13】実施例8および比較例22〜24の測定工程で測定した試料1〜4の差し込み荷重と回転荷重との和を表すグラフである。
【図14】実施例9および比較例25〜27の測定工程で測定した試料1〜4の差し込み荷重と回転荷重との和を表すグラフである。
【図15】実施例10および比較例28〜30の測定工程で測定した試料1〜4の差し込み荷重と回転荷重との和を表すグラフである。
【符号の説明】
【0104】
1:測定用容器 2:荷重体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の高分子粒体を含む高分子粒体材料を測定用容器に入れる準備工程と、
該測定用容器に入った該高分子粒体材料に荷重を加えて該高分子粒体材料を圧縮する圧縮工程と、
該圧縮工程後の該高分子粒体材料を、該測定用容器に入った状態で測定子を持つ検査装置に取り付け、該測定子を回転させつつ該高分子粒体材料に差し込んで、該測定子に加わる差し込み方向の荷重と該測定子に加わる回転方向の荷重との少なくとも一方を測定する測定工程と、を備え、
該測定工程で測定した荷重に基づいて該高分子粒体の凝集し易さを評価することを特徴とする高分子粒体材料の検査方法。
【請求項2】
前記測定工程において、少なくとも前記測定子に加わる回転方向の荷重を測定する請求項1に記載の高分子粒体材料の検査方法。
【請求項3】
前記測定工程において、前記測定子に加わる差し込み方向の荷重と前記測定子に加わる回転方向の荷重との両方を測定する請求項1または請求項2に記載の高分子粒体材料の検査方法。
【請求項4】
前記圧縮工程において、前記高分子粒体材料をその溶融温度に満たない温度で加熱しつつ圧縮する請求項1〜請求項3の何れか一つに記載の高分子粒体材料の検査方法。
【請求項5】
前記圧縮工程において前記高分子粒体材料に加える荷重は、20.4g/cm〜509g/cmである請求項1〜請求項4の何れか一つに記載の高分子粒体材料の検査方法。
【請求項6】
前記圧縮工程における加熱温度は、前記高分子粒体材料の溶融温度未満50℃以上である請求項1〜請求項5の何れか一つに記載の高分子粒体材料の検査方法。
【請求項7】
前記検査装置はパウダーレオメータである請求項1〜請求項6の何れか一つに記載の高分子粒体材料の検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−216642(P2009−216642A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62681(P2008−62681)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】