説明

高分子質量レクチンの生産

【課題】質量分布の制御された組換え型ヒトMBL組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの分子量クラスのMBL分子を有する組換え型ヒトMBL組成物において、該クラスが、
200kDa〜270kDaの範囲内の分子量を有するクラスI;
270kDa〜300kDaの範囲内の分子量を有するクラスII;
300kDa〜400kDaの範囲内の分子量を有するクラスIII;及び
400kDa〜600kDaの範囲内の分子量を有するクラスIV、
の中から選択されており(なお分子量はSDS-PAGEによって決定されている)、
クラスI内のMBLが該組成物内のMBLの合計量の0〜20モル%の範囲内の量を構成している組換え型ヒトMBL組成物、それを含む医薬組成物、ならびにさまざまな身体条件及び疾病を治療するための医薬組成物の調製を目的とする生産された組成物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出発材料として組換えにより生産されたレクチンを用いるのに適した、特にマンノース結合レクチン(MBL)を含む高分子量レクチン組成物を調製するためのプロセス、高分子量レクチン組成物、それを含む薬学的組成物、ならびにさまざまな身体条件及び疾病を治療するための医薬組成物を調製する目的で生産された組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マンノース結合タンパク質(MBL)は、機能的及び/又は臨床的症候群に付随する遺伝性又は後天的MBL欠損症を有する患者における置換又は交換療法のために使用されるべきタンパク質である。
【0003】
MBLは、膠原性桿状体に付着したカルシウム依存性のC型炭水化物認識ドメイン(CRD)で各々構成されたサブユニットのオリゴマ構造により特徴づけされる。MBLは、関連するセリンプロテアーゼ(MASP−マンノース結合レクチン関連セリンプロテアーゼ)を介して、すなわちClqと類似したメカニズムによって補体系を活性化する。
【0004】
ヒト血漿に由来するMBLは、各々3つの同一のポリペプチド鎖から成るサブユニットのオリゴマの形に組立てられる。MBL分子内のサブユニットの数は変動する[Lipscombe RJ, et al;異なる遺伝子型の個体によって発現されたヒトマンノース結合タンパク質の全く異なる物理化学特性、Immunology 85(1995)660-667]が、生物学的に活性なポリペプチドは3つ以上のサブユニットから成るオリゴマであることが示唆されてきた。血漿は、3つ以上のサブユニットから成るオリゴマならびに、より高いオリゴマに対応する支配的なMBLバンドの間の例えばSDSゲル上のバンドを導く変性され構造的に損われたタンパク質形態を含む。
【0005】
組換えにより産生されたMBLは、血漿由来のMBLに類似したオリゴマ変形形態を顕示する[Vorup-Jensen T et al; ヒトマンナン結合レクチンの組換え型発現 Int Immunopharm 1(2001)677-687]。しかしながら、通常、組換えにより産生されるMBLは、血漿由来のMBLよりも高い低質量形態含有率を有する。MBLの低質量形態は、例えば単一のポリペプチド鎖、単一のサブユニット及び2量体サブユニットを内含する。
【0006】
PCT出願WO 00/70043号では、組換えにより産生されたMBLが特殊カラム上での分画を受ける、低質量形態から高オリゴマを分離するための方法が記述されている。
【0007】
タンパク質含有画分の沈殿が、当該技術分野において記述されてきた。例えば、Storgaard P, Nielsen EH, Andersen O, Skriver E, Mortensen H, Hojrup P, Leslie G, Holmsknow U, Svehag SE.「異なるサイズ及び超構造のブタマンナン結合タンパク質の単離及び特徴づけ」。Scand J Immunol 1996;43:289-96の中では、PEG沈殿マンナン−セファロース、プロテインA及び抗ブタIgM−セファロース上でのアフィニティクロマトグラフィとそれに続くゲルろ過を用いてMBPが精製された、ブタ血清からのMBLの単離が報告されている。
【0008】
WO 99/64453では、エタノール沈殿の使用を通した血漿のCohn分画について記述された。得られた画分は、その他の分子の間にMBLを含んでいた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
1つの溶液から、マンノース結合レクチン(MBL)又はその誘導体及び変異体(本書では集合的にレクチンと呼称される)といったようなレクチンを単離する迅速かつ単純な方法が、きわめて重要である。
【0010】
さらに、前記レクチンポリペプチドの異なるオリゴマは異なる生物学的機能及び活性を有することから、レクチンの質量分布を制御できるということも又非常に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、溶液に対し沈殿用作用物質を添加することにより、MBLといったようなレクチンを沈殿により単離するための方法について記述している。該方法は、前記ポリペプチドの調製、精製及び/又は製剤中、ユニット作業として使用可能である。その他の方法に比べ、本発明の方法を前記ポリペプチドのオリゴマの組成を変更するために使用し、かくして前記ポリペプチドの高質量オリゴマを前記ポリペプチドの低質量オリゴマから分離することができるというのが有利である。
【0012】
かくして、1つの態様においては、本発明は、溶液中のレクチンのオリゴマ分布を変更するための方法に関する。1つの実施形態においては、本発明は、さまざまなレクチン分子を含む組成物のR比を増大させるための方法において、Rが、2量体レクチンについての分子量以下の低分子量を有するレクチン分子の濃度に対する2量体レクチンの分子量より高い高分子量を有するレクチン分子の濃度の比である方法であって:
低分子量レクチン及び高分子量レクチンを含み、R比=R0を有するレクチン調製物を得る段階;
沈殿剤を前記調製物に添加し、沈殿物及び上清を形成させる段階;
前記上清から前記沈殿物を分離し、R比=R1(R1>R0)をもつ沈殿物画分を得、任意にはR比=R2(R2<R0)をもつ上清画分を得る段階;
任意には前記沈殿物画分を再懸濁させる段階;
沈殿物画分のレクチン分子を含む組成物を得る段階、
を含む方法に関する。
【0013】
かくして、出発材料に比べてレクチンの高質量オリゴマ含有率が増大した組成物が得られる。
【0014】
特に、比率の増大は、2量体レクチンについての分子量より高く分子量を有するレクチンを含む組成物を導く。かくして、もう1つの態様において、本発明は、さまざまなレクチン分子を含む組成物を生産する方法において、前記レクチン分子の実質的に全てが2量体レクチンについての分子量よりも高い高分子量を有する組成物の生産方法であって:
2量体レクチンについての分子量以下の低分子量を有するレクチン分子及び2量体レクチンについての分子量より高い高分子量を有するレクチン分子を含んで成りかつR比=R0を有する、〔なおここで、Rは、2量体レクチンについての分子量以下の低分子量を有するレクチン分子の濃度に対する2量体レクチンの分子量より高い高分子量を有するレクチン分子の濃度の比である〕レクチン調製物を得る段階:
沈殿剤を前記調製物に添加し、沈殿物及び上清を形成させる段階;
前記上清から前記沈殿物を分離し、R比=R1(R1>R0)をもつ沈殿物画分を得、任意にはR比=R2(R2<R0)をもつ上清画分を得る段階;
任意には前記沈殿物画分を再懸濁させる段階;
沈殿物画分のレクチン分子を含む組成物を得る段階、
を含む方法に関する。
【0015】
これらの方法のための出発材料は高質量レクチンならびに低質量レクチンを含むことから、本発明は同様に、レクチン分子の実質的に全てが2量体レクチンについての分子量よりも高い高分子量を有する、さまざまなレクチン分子を含む組成物を、2量体レクチンについての分子量以下の低分子量を有するレクチン分子及び2量体レクチンについての分子量より高い高分子量を有するレクチン分子を含むレクチン調製物から分離する方法において、前記調製物が、R比=R0を有する、〔なおここで、Rは、2量体レクチンについての分子量以下の低分子量を有するレクチン分子の濃度に対する2量体レクチンの分子量より高い高分子量を有するレクチン分子の濃度の比である〕方法であって:
前記レクチン調製物を得る段階;
沈殿剤を前記調製物に添加し、沈殿物及び上清を形成させる段階;
前記上清から前記沈殿物を分離し、R比=R1(R1>R0)をもつ沈殿物画分を得、任意にはR比=R2(R2<R0)をもつ上清画分を得る段階;
任意には前記沈殿物画分を再懸濁させる段階;
沈殿物画分のレクチン分子を含む組成物を得る段階、
を含む方法にも関する。
【0016】
しかしながら大部分の用途について高質量レクチンが望まれ、一部の利用分野について低質量レクチンが望まれることから、従って本発明はさらに、さまざまなレクチン分子を含む組成物を生産する方法において、前記レクチン分子の実質的に全てが2量体レクチンについての分子量以下の高い高分子量を有する組成物の生産方法であって:
2量体レクチンについての分子量以下の低分子量を有するレクチン分子及び2量体レクチンについての分子量より高い高分子量を有するレクチン分子を含んで成りかつR比=R0を有する、〔なおここで、Rは、2量体レクチンについての分子量以下の低分子量を有するレクチン分子の濃度に対する2量体レクチンの分子量より高い高分子量を有するレクチン分子の濃度の比である〕レクチン調整物を得る段階:
前記レクチン調製物を得る段階;
沈殿剤を前記調製物に添加し、沈殿物及び上清を形成させる段階;
前記上清から前記沈殿物を分離し、R比=R2(R2<R0)をもつ上清画分を得、任意にはR比=R1(R1>R0)をもつ沈殿物画分を得る段階;
沈殿物画分のレクチン分子を含む組成物を得る段階、
を含む方法にも関する。
【0017】
上述の全ての方法に関して、好ましくは沈殿物画分はR比=R1をもち、式中、R1は少なくとも1、例えば少なくとも1.05、例えば少なくとも1.10、例えば少なくとも1.15、例えば少なくとも1.25、例えば少なくとも1.50、例えば少なくとも1.75、例えば少なくとも2.0、例えば少なくとも2.5、例えば少なくとも3.0、例えば少なくとも4.0、例えば少なくとも5.0、例えば少なくとも6.0、例えば少なくとも7.0、例えば少なくとも8.0、例えば少なくとも9.0、例えば少なくとも10.0、例えば少なくとも15、例えば少なくとも20、例えば少なくとも30、例えば少なくとも40、例えば少なくとも50、例えば少なくとも60、例えば少なくとも70、例えば少なくとも80、例えば少なくとも90、例えば少なくとも100、例えば少なくとも100、例えば少なくとも1000、例えば少なくとも10000である。
【0018】
以上で開示した方法全てについて、Rは、2量体レクチンについての分子量以下の低分子量を有するレクチン分子の濃度に対する2量体レクチンの分子量より高い高分子量を有するレクチン分子の濃度の比であり、好ましい実施形態においては、Rは、3量体レクチンについての分子量以下の低分子量を有するレクチン分子の濃度に対する3量体レクチンの分子量より高い高分子量を有するレクチン分子の濃度の比である。
【0019】
本発明に従ったレクチンは、いくつかのオリゴマ形態が産生されるあらゆるレクチン、例えばマンノース結合レクチンであってよい。特に本発明は、MBL組成物を生産するための方法に関する。MBLという語は、マンノース結合レクチン(又は一部の著者が記している通りマンノース結合タンパク質)を意味している。MBLは好ましくは、例えばPCT出願WO 00/70043中に示されているようなタンパク質配列をもつMBLであるか又はMBLの機能的等価物であるその誘導体又は変異体である。以下では、レクチンMBLに関して本発明を記述する。
【0020】
本発明に従った方法は、問題のレクチンの大規模製造を可能にする。かくして、もう1つの態様においては、本発明は、前記MBLの製造中の前記方法の応用を含む、あらゆる工業的又は大規模MBL製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本書で開示されているR比は、適切なあらゆる方法を用いて計算することができる。好ましい実施形態においては、標本中のaというR値の量的推定は、以下のとおりに行なうこともできる。
【0022】
SDS−PAGE免疫ブロットはTIFFファイル内又はもう1つの非圧縮ビットマップファイル内に走査される。標本バンドに沿った画素密度は、ウインドウズ4.0用Scion Image(Scion Corporation, www.scioncorp. com上のフリーウェアベータバージョン)といったピクチャ評価プログラム内で測定され、データ評価プログラム(Excelなど)にエキスポートされる。
【0023】
2量体レクチンに対応する移動は、マーカーの移動に基づいて、確定される(Precision Protein Standards, BioRad)。R値は、(MBL200kDaについての)基準移動点より上の合計画素信号を(MBL200kDaについての)基準移動点より下の合計画素信号で除したものとして計算される。R0は、出発材料中の比率として定義され、一方R1は、沈殿した標本中の対応する評価ラインに沿った比率である。
【0024】
R比を測定するもう1つの方法は、Bio Analyzerシステム(Agilentより)のようなチップベースの電気泳動法システムを使用することである。ここでは、ピーク面積の積分は、標準評価手順の一部として行なわれる。
【0025】
沈殿剤
低質量形態と高質量形態の両方のMBL形態を含むMBL調製物を沈殿させることにより、これらのMBL形態を分離できるという点が、本発明の中心的態様である。沈殿剤は、実質的に非変性のあらゆる水溶性タンパク質沈殿剤であってよく、これらの多くは、タンパク質精製の分野で周知である。かくして、沈殿剤は、200Da、300Da、400Da、550Da、600Da、1,000Da、1,450Da、1,500Da、2,000Da、3,000Da、3,350Da、4,000Da、6,000Da、8,000Da、10,000Da、15,000Da、20,000Da、及び35,000Daといった質量を有するPEGといった高分子質量の沈殿剤及び、数多くのものが市販のPEG組成物である、PEG自体又はタンパク質といったようなPEGともう1つの化合物の化学的接合体でありうる。
【0026】
ただし、沈殿剤が低質量物質であることが好ましい。低質量物質の例としては、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸ナトリウム及び塩化ナトリウムがある。有効なアニオン作用物質の例としては、アンモニウム(NH4+)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)及びセシウム(Cs+)がある。有効なカチオン作用物質の例としては、硫酸塩(SO42-)、リン酸塩(PO43-)及び酢酸塩(CH2COO-)がある。
【0027】
かくして1つの実施形態においては、沈殿剤は、カチオン沈殿剤から選択される。沈殿剤は、Ca2+含有物質、例えば塩化カルシウム(CaCl2、CaCl2・H2O、CaCl2・2H2O、CaCl2・6H2O)、硝酸カルシウム(Ca(NO32、Ca(NO32・3H2O、Ca(NO32・4H2O)、亜硝酸カルシウム(Ca(NO22・H2O、Ca(NO22・4H2O)、ヨウ化カルシウム(CaI2、CaI2・6H2O)、臭化カルシウム(CaBr2、CaBr2・6H2O)、臭素酸塩(Ca(BrO32・H2O)、塩素酸カルシウム(Ca(ClO32、Ca(ClO32・2H2O、(CaClO42)、クロム酸カルシウム(CaCrO4・2H2O)、過マンガン酸カルシウム(Ca(MnO42・5H2O)、次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO22)、シアン化鉄カルシウム(Ca3[Fe(CN)62・12H2O、Ca2Fe(CN)6・12H2O)、チオ硫酸カルシウム(CaS23・6H2O)、及び例えば比較的可溶性の低いカルシウム含有作用物質例えば、蟻酸カルシウム(Ca(CHO22)、酢酸カルシウム(Ca(C2322、Ca(C2322・H2O、Ca(C2322・2H2O)、プロピオン酸カルシウム(Ca(C3522・H2O)、乳酸カルシウム(Ca(C3532・5H2O)、マレイン酸カルシウム(CaC424・H2O)、吉草酸カルシウム(Ca(C5922)、及びクエン酸カルシウム(Ca3(C6572・4H2O)の中から選択される。
【0028】
カチオン沈殿剤は好ましくは、0.001M〜5.0M例えば0.01M〜5.0M、例えば0.05M〜2.5M、例えば0.01M〜2.5M、例えば0.1M〜2.0M、例えば0.1M〜1.0Mの範囲内の濃度で添加される。
【0029】
もう1つの実施形態においては、沈殿剤は、アニオン沈殿剤の中から選択される。アニオン沈殿剤はリン酸塩、炭酸塩及び硫酸塩といったようなアニオンから選択され得る。
【0030】
沈殿剤のための対イオンは、調製物の溶剤中に存在していてもよいし、或いは又、沈殿剤の添加の前、それと同時又はその後のいずれにおいてでも添加できる。カチオン沈殿剤に関しては、調製物は好ましくは、炭酸塩、硫酸塩及び/又はリン酸塩の中から選択されたアニオン(好ましくはリン酸塩)を含有している。
【0031】
上清からの沈殿物の分離は、任意の適切な方法、好ましくはろ過又は遠心分離によって実施可能である。
【0032】
調製物は、細胞培養タンクからの培養液、精製プロセスからの液体中間生成物、液体製剤、任意の緩衝溶液又は純水の中から選択された溶剤といった溶剤を含んでいてよい。好ましい実施形態においては、溶剤は培地であり、かくして該方法は、任意にはろ過段階が先行するMBL発現細胞の培養の後培養液に直接適用可能である。
【0033】
沈殿物がひとたび形成したならば、それをあらゆる適切な手順、特に大規模生産に適した手順により、上清から分離することができる。この分離は、遠心分離とそれに続く例えば吸引による上清の除去によって行なうことができる。かくして本発明のもう1つの利点によると、明確に言うと、該当するMBLを実質的な量で失なうことなく発酵からの大量の水が除去されるということが明らかにされている。さらに、以上で記述されているように、例えばクロマトグラフィを通してMBL分子を捕捉することによって低質量分子を含む上清をさらに処理することができる。
【0034】
形成された沈殿物が安定している任意のpHで沈殿を行なうことができる。pHの限界は、通常2<pH<11、例えばpH=3、例えばpH=4、例えばpH=5、例えばpH=6、例えばpH=8、例えばpH=9、例えばpH=10である。
【0035】
沈殿は、形成された沈殿物が安定している任意の温度で行なうことができる。温度設定の限界は、0℃<温度<80℃、例えば4℃、例えば10℃、例えば15℃、例えば20℃、例えば25℃、例えば30℃、例えば35℃、例えば40℃、例えば50℃、例えば60℃、例えば70℃であるが、沈殿は通常室温で実施される。
【0036】
沈殿剤は好ましくは、日単位の時限、好ましくは時間単位の時限、好ましくは30分という時限内で沈殿を行なうことができるように選択される。
【0037】
この本文中に言及されている場合にはつねに、分子量は、Novexシステム及び市販のゲル(NuPAGETM3〜8%トリス−アセテート、Invitrogen)を用いて、SDS−PAGEによって測定される。MBLは、市販のMBL特異的抗体(Hyb131−01、Statens Serum Institute, Copenhagen)を用いて免疫ブロット法により認識される。主要Hyb131−01バンドの分子質量の推定は、In(移動)対質量の関係をプロットすることによって、BioRad Precision Protein StandardTM(Bio Rad 161−0362)に基づいて標準曲線上での補間法により行なわれる。
【0038】
組成物
R比の増加度は、出発材料がMBL調製物であるものとして、R0という定量を有する出発材料によって左右される。組成物中のMBLの少なくとも50モル%が、2量体レクチンについての分子量より高い、好ましくは三量体レクチンについての分子量より高い分子量を有することが好ましい。かくして、組成物中のMBLの少なくとも50モル%が200kDaより高い、例えば225kDaより高い、例えば250kDaより高い、300kDaより高い分子量を有することが好ましい。
【0039】
「モル%」という語は、組成物中のMBLポリペプチドのモル相対量を意味している。ただし、モル%は同様に、各々3つのMBLポリペプチドを含むMBLサブユニットのモル相対量としても表現され得る。代替的には、本書で開示された百分率値は、重量百分率値(%(w/w))として計算されうる。明確さを期して、百分率値は、本書では、MBL ポリペプチド鎖との関係における「モル%」として表現されているが、同一の百分率値を、MBLサブユニットとの関係におけるモル%としてか又は重量百分率値として表現することも同様に充分可能である。
【0040】
SDS−PAGE上のバンドは実質的に以下のクラスのうちの単数又は複数のものに入る分子に対応することから、本発明によって得られたMBLは、あたかも、血漿MBL中に通常見られる変性された及び/又は構造的に損われたMBL分子を含むことなくオリゴマのみを含む画分を提供しているかのように思われる:
200kDa〜270kDaの範囲内の分子量を有するクラスI(好ましくは2量体及び/又は3量体を含む);
270kDa〜300kDaの範囲内の分子量を有するクラスII(好ましくは3量体及び/又は4量体を含む);
300kDa〜400kDaの範囲内の分子量を有するクラスIII(好ましくは4量体及び/又は5量体を含む);及び
400kDa〜600kDaの範囲内の分子量を有するクラスIV(好ましくは5量体及び/又はそれ以上のオリゴマを含む)(なお分子量は好ましくは、SDS−PAGEによって決定されている)、
なおここで、クラスI内のMBLは、該組成物内のMBLポリペプチド鎖の合計量の0〜20モル%の範囲内の量、例えば0〜10モル%、例えば0〜5モル%、例えば0〜2モル%、例えば0〜1モル%、例えば0から0.5モル未満まで、例えば0から0.1モル%未満まで、例えば0から0.01モル%未満まで、例えば0から0.001モル%未満まで、例えば0.1〜20モル%、例えば0.1〜10モル%、例えば0.1〜5モル%、例えば0.1〜2モル%、例えば0.1〜1モル%、例えば0.1から0.5モル%未満まで、例えば0.1から0.4モル%未満まで、例えば0.1から0.3モル%未満まで、例えば0.1から0.2モル%未満までの範囲内の量を構成する。
【0041】
好ましくは、MBL組成物は少なくとも2つのクラスに入る分子、例えば少なくとも3つのクラス、より好ましくは4つのクラスに入る分子を含む。
【0042】
或るクラスが好ましくは或るMBLオリゴマを含む旨が本書の以上の部分で記されている場合、これは、特定のクラスについて指示されたもの以外のオリゴマが同様に存在することはできないということを意味するものではない。しかしながら理論により束縛されることはなく、現在好まれている1つの仮説に従うと、以上に列挙されたオリゴマは主としてそれらが対象となるものとして記されているクラスの中にあると考えられている。
【0043】
「実質的に対応する」という語は、10モル%未満例えば5モル%未満といったように、600kDaより高い分子量を有するMBLが少量存在しうるということを意味している。さらに、「実質的に」という語は同様に、各クラスについて記されている分子量における5%以内、例えば2%、例えば1%、例えば0.5%、例えば0.1%未満以内の任意の偏差をも意味する。
【0044】
より好ましくは、クラスIのMBLは、組成物中のMBLの合計量の0.1〜15モル%の範囲内の量、例えば組成物中のMBLの合計量の0.1〜12モル%、例えば組成物中のMBLの合計量の0.1〜10モル%、例えば組成物中のMBLの合計量の0.1〜5モル%の範囲内の量を構成する。
【0045】
好ましくは、クラスIIのMBLは、組成物中のMBLの合計量の0〜50モル%の範囲内の量、例えば組成物中のMBLの合計量の0〜30モル%、例えば組成物中のMBLの合計量の5〜30モル%、例えば組成物中のMBLの合計量の10〜30モル%の範囲内の量を構成する。
【0046】
好ましくは、クラスIIIのMBLは、組成物中のMBLの合計量の0〜60モル%の範囲内の量、例えば組成物中のMBLの合計量の10〜60モル%、例えば組成物中のMBLの合計量の20〜60モル%、例えば組成物中のMBLの合計量の20〜50モル%の範囲内の量を構成する。
【0047】
好ましくは、クラスIVのMBLは、組成物中のMBLの合計量の0〜50モル%の範囲内の量、例えば0〜30モル%、例えば5〜30モル%、例えば10〜30モル%の範囲内の量を構成する。
【0048】
好ましい実施形態においては、本発明により得られた組成物は、0〜5モル%の量のクラスIのMBL、10〜30モル%の量のクラスIIのMBL、20〜50モル%の量のクラスIIIのMBL及び10〜30モル%の量のクラスIVのMBL;例えば0〜5モル%の量のクラスIのMBL、15〜30モル%の量のクラスIIのMBL、20〜50モル%の量のクラスIIIのMBL、及び15〜30モル%の量のクラスIVのMBL;例えば0〜5モル%の量のクラスIのMBL、20〜30モル%の量のクラスIIのMBL、20〜50モル%の量のクラスIIIのMBL、及び20〜30モル%の量のクラスIVのMBL;例えば0〜5モル%の量のクラスIのMBL、20〜30モル%の量のクラスIIのMBL、30〜50モル%の量のクラスIIIのMBL、20〜30モル%の量のクラスIVのMBLを含む。
【0049】
上述の組成物については、クラスIのMBLは、無くてもよいし、或いは又例えば0.1モル%、例えば0.2モル%、例えば0.4モル%、例えば約1モル%、例えば約2モル%、例えば約3モル%、例えば4モル%の量で存在していてもよい。「約」という語は、クラスI中に存在するMBLの量における、例えば2%、例えば1%、例えば0.5%、例えば0.1%未満といった5%未満の任意の偏差を表わすものとして理解されるべきである。
【0050】
好ましい実施形態では、クラスは以下で定義される通りである:
200kDa〜260kDaの範囲内の分子量を有するクラスI;
270kDa〜300kDaの範囲内の分子量を有するクラスII;
310kDa〜390kDaの範囲内の分子量を有するクラスIII;及び
400kDa〜600kDaの範囲内の分子量を有するクラスIV(なお分子量はSDS−PAGEによって決定されている)。
【0051】
I〜IVの各クラスのMBLの百分率の決定は、R比の決定について以上で記述されている通りに実施される。
【0052】
本発明のもう1つの態様においては、高分子量のMBL及び低分子量のMBLの中から選択されたMBLを含む組成物を得るための方法において、該組成物が20モル%未満の低分子量のMBLを含み、前記分子量のMBLが300kDa未満の分子量を有するものである方法が提供されている。
【0053】
従って、本発明は同様に高分子量のMBL及び低分子量のMBLを含む組成物において、20モル%未満の低分子量のMBLを含み、前記低分子量のMBLが300kDa未満の分子量を有するものである組成物が提供されている。
【0054】
従って、低分子量のMBLの量が10モル%未満、例えば5モル%未満、例えば2モル%未満、例えば1モル%未満、例えば0.1モル%未満、例えば0.01モル%未満、例えば0.001モル%未満となる前述のとおりの方法及び組成物;ならびに、前記低分子量のMBLが好ましくは300kDa未満、例えば290kDa未満、例えば285kDa未満、例えば280kDa未満、例えば275kDa未満、例えば270kDa未満、例えば265kDa未満、例えば260kDa未満、例えば255kDa未満、例えば250kDa未満、例えば245kDa未満、例えば240kDa未満、例えば235kDa未満、例えば230kDa未満、例えば225kDa未満、例えば220kDa未満、例えば215kDa未満、例えば210kDa未満、例えば205kDa未満、例えば200kDa未満の分子量を有する上述の組成物のうちのいずれかが提供される。
【0055】
本発明に従ったMBL組成物を生産することにより、MBL組成物は、血漿MBLといったような未変性宿主生体内で産生された場合のMBLに天然に付随するいかなる不純物も実質的に含まなくなる。
【0056】
該方法は、任意の哺乳動物の組換え型MBLといったような任意のMBL供給源から高質量MBL組成物を生産するために使用することができる。しかしながら、組成物のMBLが、例えば、MBLサブユニットがPCT出願WO 00/70043中の配列番号1で示されているような配列を含む3つのペプチド配列又はその機能的等価物で組立てられているMBLといったようなヒトのMBLであることが好ましい。
【0057】
本発明のさらなる態様においては、高及び低分子量のMBLの2つの精製された画分はそれぞれ、各画分について所望の任意の比率でプールされうる。
【0058】
組換えによる生産
該方法は、低質量及び高質量の両方のMBLを有する任意のMBL出発材料に適用することができるが、組換えにより生産された調製物から高質量MBLを生産するのに特に適している。
【0059】
かくして、MBL調製物は好ましくは、組換え型調製物であり、ここでMBL調製物は、
ヒトMBLペプチド又はその機能的等価物をコードする遺伝子発現構成体を調製する段階;
構成体で宿主細胞培養を形質転換する段階;
培地内で宿主細胞培養を培養し、かくして培地内へのポリペプチドの発現、分泌を得る段階;
さまざまなMBL分子を含む調製物を得る段階、
によって得られる。
【0060】
本発明に従うと、MBL遺伝子由来の配列は、ヒトMBL遺伝子由来又はこの点に関し免疫系がヒト免疫系のように作用しているその他の動物種のMBL遺伝子由来のものであり得る。本発明に従った組換え型MBLの調製物の好ましい実施形態の一例が、本書に参考として内含されているPCT出願WO 00/70043の例1に記述されいる。この例の中では、組換え型MBLは、ヒトMBL遺伝子由来の配列を含む発現ベクタを使用することによって調製される。
【0061】
本発明は同様に、ヒトMBL遺伝子の配列の機能的誘導体である配列を含む発現ベクターの使用にも関する。前記機能的誘導体というのは、発現ベクターの機能的差異を全く又は基本的に全くもたらさない塩基対改変を含む配列を意味し、この要領で調製されたMBLは、ヒトMBL遺伝子由来の未改変配列を含む発現ベクターの使用によって調製されたMBLに匹敵する機能性を有する。
【0062】
精製方法に加えて、遺伝子発現構成体及び宿主細胞も同様により高いオリゴマの産生に有利に作用することが好ましい。従って、遺伝子発現構成体は好ましくは、ヒトMBL遺伝子由来の少なくとも1つのイントロン配列又はそのL遺伝子を含んでいる。さらに、遺伝子発現構成体は、ヒトMBL遺伝子由来の少なくとも2つのエキソン配列又はそのL遺伝子を含むことができる。より好ましくは、遺伝子発現構成体はヒトMBL遺伝子由来の少なくとも3つのエキソン配列又はそのL遺伝子を含む。複数のエキソンを含んでいる場合、エキソン配列は好ましくは、ヒトMBL遺伝子内と同じように整列されている。
【0063】
配列がイントロン配列を含むことが好ましいものの、一部の利用分野については、発現構成体が、MBLサブユニットをコードするcDNA配列又はそのL遺伝子を含んでいることが適切でありうる。
【0064】
本発明は、非変性及び変性条件下での構造的特性が天然のヒトMBLに実質的に類似している状態で組換え型MBLを得る目的で、哺乳動物の細胞系統又は遺伝子導入動物の中でrMBLを発現するためMBLcDNA構成体ではなくむしろMBL遺伝子発現構成体を使用することを特長としている。「組換え型ヒトMBL」というのは、工学処理された核酸から発現されるヒトMBLを意味し、「MBL遺伝子発現構成体」というのは、ヒトMBL遺伝子由来又は、制限的な意味なくチンパンジー及び赤毛猿といったようなその他の動物種のMBL遺伝子由来の少なくとも1つのイントロン配列及びエキソン配列を含有する、哺乳動物細胞系統内での発現に適した発現ベクターを意味している。
【0065】
好ましくは、DNA配列は、配列番号1に示されているようなポリペプチド配列又はそのL遺伝子をコードし、ここでL遺伝子は上述の通りである。配列番号1はデータベース受入れ番号P11226のMBL配列に対応する。等価物は、本発明中に言及されている配列のような対応する特性を処理するものの単数又は複数のアミノ酸がその他のもので置換されている配列といった、配列番号1として示されたペプチド配列の修飾によって得ることができる。好ましくは、L遺伝子は、同類置換を含む、すなわち単数又は複数のアミノ酸が類似の特性をもつアミノ酸によって置換されており、かくしてタンパク質化学の当業者は、タンパク質の二次及び三次構造は変化しないと予想することになるだろう。同類置換に適したアミノ酸には、機能的に類似した側鎖を有するアミノ酸が含まれる。例えば、疎水性残基、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びメチオニンが、このようなもう1つの残基と置き換わることができる。同様にして、同類置換には、親和性残基(例えばアルギニン及びリシン、グルタミン及びアスパラギン、トレオニン及びセリン)、塩基性残基(例えばリシン、アルギニン及びヒスチジン)及び/又は酸性残基(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)の相互交換が関与しうる。L遺伝子は、同様に又は代替的に、ポリペプチドの機能が保存されるかぎりにおいて、アミノ酸の欠失及び添加又はアミノ酸の化学的修飾によって修飾可能である。
【0066】
その何らかのL遺伝子を内含する単離されたMBLペプチドは、1実施形態において少なくとも80のアミノ酸残基、例えば少なくとも100のアミノ酸残基、例えば少なくとも150のアミノ酸残基、例えば少なくとも200のアミノ酸残基、例えば少なくとも220のアミノ酸残基、例えば少なくとも250のアミノ酸残基を含むことができる。
【0067】
好ましい実施形態においては、発現ベクターは、ヒトMBL遺伝子由来又は、制限的な意味なくチンパンジー及び赤毛猿といったようなその他の動物種のMBL遺伝子由来の少なくとも1つのイントロン配列及びエキソン配列を含有する、哺乳動物細胞系統又は遺伝子導入動物内での発現に適している。1つの実施形態においては、宿主細胞培養は、遺伝子導入動物の中で培養される。本件の文脈中では遺伝子導入動物というのは、ヒトMBL遺伝子又はそのフラグメント又は模擬体を含有し発現するように遺伝的に修飾された動物を意味する。
【0068】
好ましい実施形態においては、本発明の発現構成体は、DNAウイルスベースベクター、RNAウイルスベースベクター又はキメリックウイルスベースベクターといったウイルスベースベクターを含む。DNAウイルスの例としては、サイトメガロウイルス、単純ヘルペス、エプスタイン−バーウイルス、シミアンウイルス40、ウシ乳頭腫ウイルス、アデノ関連ウイルス、アデノウイルス、ワクチニアウイルス及びバキュロウイルスがある。
【0069】
哺乳動物宿主細胞においては、一定数のウイルスベース発現系を利用することができる。アデノウイルスが発現ベクターとして使用されるケースにおいては、本発明の核酸分子は、例えば晩期プロモータ及び3部成リーダー配列といったアデノウイルス転写/翻訳制御複合体に連結され得る。このキメラ遺伝子は、次にインビトロ又はインビボ組換えによりアデノウイルスゲノム内に挿入することができる。ウイルスゲノムの可欠領域(例えば領域E1又はE3)内への挿入は、結果として、生存可能でかつ感染を受けた宿主の中でMASP−3遺伝子を発現する能力をもつ組換え型ウイルスをもたらすことになる(例えば、Logan and Shenk, Proc, Natl, Acad. Sci. USA 81;3655-3659,1984を参照のこと)。挿入された核酸分子の効率の良い翻訳のためには、特定の開始シグナルも必要となる可能性がある。これらのシグナルには、ATG開始コドン及び隣接する配列が含まれる。独自の開始コドン及び隣接する配列を含めた全遺伝子又はcDNAが該当する発現ベクター内に挿入される場合、付加的な翻訳制御シグナルが全く必要とされない可能性がある。しかしながら、コーディング配列の一部分のみが挿入される場合には、おそらくはATG開始コドンを含めた外因性翻訳制御シグナルが提供されなくてはならない。さらに、開始コドンは、全インサートの翻訳を確実に行なうため所望のコーディング配列の読取り枠と同相でなくてはならない。これらの外因性翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然及び合成の両方のさまざまな由来のものであり得る。発現効率は、該当する転写エンハンサ要素、転写ターミネータなどの内含によって、増強され得る(Bittner et al., Method in Enzymol. 153;516-544,1987参照)。
【0070】
RNAウイルスの例としては、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、Pokoウイルス、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、SV5、呼吸器多核体ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、クンジンウイルス、センダイウイルス、水疱性口炎ウイルス及びレトロウイルスがある。
【0071】
キメラウイルスの例としては、アデノウイルス、シンドビスウイルス及びアデノウイルス−アデノ関連ウイルスがある。
【0072】
特異的ベクターに関しては、本書に参考として内含されている、Makrides, S.C.,「哺乳動物細胞中の遺伝子移入及び発現用ベクターの構成成分」を参照されたい。
【0073】
特に、pREP9ベクターを内含するエプスタイン−バールウイルス複製起点又はその機能的誘導体又は模擬体が使用される。
【0074】
1つの態様においては、本発明は、その機能的誘導体を含めたヒトMBL遺伝子由来の単数又は複数のイントロン配列を含むことを特長とする、ヒトMBLをコードする発現構成体を提供している。さらに、それには、哺乳動物及び昆虫を含めたウイルス又は真核生物の遺伝子から選択されたプロモータ領域が包含されている。
【0075】
プロモータ領域は、好ましくは、ヒトMBLプロモータとは異なるように選択されており、好ましくはMBLの収量及びMBLオリゴマのサイズ分布を最適化する目的でプロモータ領域は、問題のベクター及び宿主細胞と最適な形で機能するように選択される。
【0076】
好ましい一実施形態においては、プロモータ領域は、ラウス肉腫ウイルス長末端反復プロモータ、及びサイトメガロウイルス中間−早期プロモータ、及び延長因子−1アルファプロモータを含むグループの中から選択される。
【0077】
もう1つの実施形態においては、プロモータ領域は、その他のウイルス、酵母及び細菌といったような微生物遺伝子から選択される。
【0078】
組換え型MBLのさらに大きい収量を得るために、プロモータ領域は、マウス血管内皮成長因子遺伝子の5′末端未翻訳領域のQBI SP163要素といったようなエンハンサ要素を含むことができる。構成体は、MBLを発現する能力をもつ宿主細胞培養を得るべく宿主細胞を形質転換するために使用される。宿主細胞培養は好ましくは、真核宿主細胞培養である。真核細胞培養の形質転換というのは、本件の文脈中では、細胞内への組換え型DNAの導入を意味している。このプロセス中で用いられる発現構成体は、ヒト遺伝子及びチンパンジーからの遺伝子などのこのヒト遺伝子と大きな類似性をもつ遺伝子を含む哺乳動物遺伝子から選ばれたMBLコード化領域を有することを特徴としている。さらに、使用される発現構成体は、プロモータ領域が、哺乳動物細胞及び昆虫からの細胞を含めたウイルス又は真核動物の遺伝子から選択されるという特長を有している。
【0079】
本発明に従った組換え型MBLを産生するためのプロセスは、宿主細胞培養が好ましくは、真核生物例えば哺乳動物の細胞培養であることを特徴とする。好ましい宿主細胞培養は、ヒト腎細胞培養であり、さらに一層好ましい形態では、宿主細胞培養はヒト胎児腎細胞(HEK細胞)の培養である。本発明は、組換え型ヒトMBLの産生のためのHEK293細胞系統の使用という特長をもつ。「HEK293細胞系統」というのは、CRL−1573及びCRL−10852という番号でAmerican Type Culture Collectionに寄託された細胞系統(ただしこれに制限されるわけではない)といったヒト胎児腎組織に由来するあらゆる細胞系統を意味している。
【0080】
その他の細胞としては、ニワトリ胚線維芽細胞、ハムスター卵巣細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、ヒト子宮頸癌細胞、ヒト黒色腫細胞、ヒト腎臓細胞、ヒト臍帯血管内皮細胞、ヒト脳内皮細胞、ヒト口腔腫瘍細胞、サル腎臓細胞、マウス繊維芽細胞、マウス腎臓細胞、マウス結合組織細胞、マウス乏突起膠細胞、マウスマクロファージ、マウス繊維芽細胞、マウス神経芽細胞腫細胞、マウス前B細胞、マウBリンパ腫細胞、マウス形質細胞腫細胞、マウス奇形癌細胞、ラット星状細胞腫細胞、ラット乳腺上皮細胞、COS、CHO、BHK、293、VERO、HeLa、MDCK、W138及びNIH3T3細胞が考えられる。
【0081】
さらに、挿入された配列の発現を変調させるか又は遺伝子産物を所望の特異的な形で処理する宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のこのような修飾(例えばグリコシル化)及びプロセシング(例えば分割)は、タンパク質の機能にとって重要でありうる。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾のための特徴的かつ特異的メカニズムを有している。発現された外来性タンパク質の適正な修飾及びプロセシングを確保するために、適切な細胞系統又は宿主系を選択することができる。この目的で、一次写しの適切なプロセシング、グリコシル化及び遺伝子産物のリン酸化のための細胞メカニズムを有する真核生物宿主細胞を用いることができる。以上に列挙した哺乳動物細胞型は、適切な宿主細胞として役立つことのできるものの中に含まれる。
【0082】
宿主細胞培養は、任意の適切な培地の中で培養可能である。培地の例としては、例えばインシュリン、トランスフェリン、セレン及び胎児ウシ血清で補足されたRPMI−1640又はDMEMである。
【0083】
精製
上述のように、本発明は、MBLの高速生産を可能にする。MBLの生産は、以下の段階によって行なうことができる。
【0084】
発酵−MBL発現細胞の培養
分離−沈殿及びそれに続く沈殿物及び上清の分離
任意には精製。
【0085】
従って、MBL組成物は、制限的な意味なく濾過方法、クロマトグラフィ、例えば電荷ベースのイオン交換クロマトグラフィ、サイズベースのゲル透過クロマトグラフィ、疎水性ベースの疎水性相互作用クロマトグラフィ又はアフィニティクロマトグラフィを含めた任意の物理化学的単離方法などによる任意の適切な手段によって精製可能である。
【0086】
組換え型MBL組成物は好ましくは、マンノースアフィニティクロマトグラフィといったようなアフィニティクロマトグラフィによって画分から精製される。
【0087】
機能性
本発明に従って得られた組換え型MBL組成物の機能性は、好ましくは、血漿又は血清MBLの機能性に類似している。本件の文脈中では、MBLの機能性というのは、L遺伝子との関係において上述した通りの補体系を活性化させる能力を意味している。機能性は、MBL1ngあたりのMBL活性の単位数といったようなMBLの比活性として表現することができる。比活性として表わされた組換え型MBL組成物の機能性は、好ましくは、血清から精製されたMBLの比活性の少なくとも25%、例えば血清から精製されたMBLの比活性の少なくとも50%、より好ましくはその少なくとも75%である。
【0088】
MBLの機能性は、補体系の活性化を導くMBL/MASP複合体を形成するその能力によって推定可能である。C4がMBL/MASPによって分割された場合、活性チオールエステルが露呈され、C4は近くの求核基に共有結合によって付着された状態となる。かくしてC4bの実質的部分が、コーティングされたプラスチックウェルに付着された状態となり、抗−C4抗体により検出され得る。
【0089】
MBL機能的活性についての定量的TRIFMAは、1)100mlの緩衝液中の1mgのマンナンでマイクロタイターウェルをコーティングすること;2)Tween−20で遮断すること;3)テスト標本例えば希釈されたMBL調製物を適用すること、4)MBL欠損血清を適用すること(これはMBL/MASP複合体の形成を導く);(代替的にはMBL及びMBL欠損血清をマイクロタイターウェルでの適用前に混合することもできる);5)5mg/mlで精製済み補体因子C4を適用すること;6)37℃で1時間インキュベートすること;7)Eu標識づけされた抗C4抗体を適用すること;8)増強溶液を適用すること;及び 9)時間分解螢光光度法によってEuを読取ることによって構築された。ステップ8と9の間を除いて、各ステップの間で、プレートを室温でインキュベートし、洗浄する。
【0090】
ELISAによる推定は、例えばステップ7でビオチン標識づけされた抗C4を適用し;8)アルカリホスファターゼ標識づけされたアビジンを適用し;9)基板を適用し;10)色の強度を読取ることによって、類似の形で実施可能である。1つの選択された正常な血漿の希釈液を用いて較正曲線を構築することができる。本発明に関連して、血漿プールLJ6.57 28/04/97が有用な血清の一例である。機能性は、MBL1ngあたりのMBL活性単位といったようなMBLの比活性として発現可能である。
【0091】
MBLのL遺伝子を決定するためのもう1つの検定は、細胞上で単数又は複数のレセプタに結合する能力を決定するものである。
【0092】
細胞上の単数又は複数のレセプタとMBLの相互作用は、細胞螢光光度法によって分析することができる。1)50μg/mlの濃度のMBLは、2×105細胞と共にインキュベートされる。結合は、1%のFCS及び0.1%のNa−アジドを含有するリン酸緩衝溶液(PBS)の中で実施される。2)細胞に結合したMBLの検出のためには、ビオチニル化された抗−MBL抗体が適用される;3)その後ストレプトアビジン−FITCが添加され、4)螢光光度法により混合物が分析される。
【0093】
医薬組成物
得られた組成物は、そのまま医薬組成物の調製のために使用でき、そうでなければ上述のように使用される前に組成物をさらなる精製段階に付すこともできる。
【0094】
本発明によって得られたMBL組成物は、さまざまな疾病又は身体条件の予防及び/又は治療のための医薬組成物の調製のために使用することができる。
【0095】
MBLオリゴマに加えて、医薬組成物は、薬学的に許容される担体物質及び/又はビヒクルを含むことができる。
【0096】
特に、MBLタンパク質を安定させるための安定化剤を添加することができる。安定化剤は糖アルコール、糖類、タンパク質及び/又はアミノ酸であり得る。安定化剤の一例としては、アルブミン又はマルトースがある。
【0097】
例えば投与形態に応じて、その他の従来の添加剤を、医薬組成物に添加することができる。
【0098】
1つの実施形態においては、医薬組成物は、注射に適した形をしている。等張食塩水といったような従来の担体物質を使用することができる。
【0099】
もう1つの実施形態においては、医薬組成物は、吸入のための粉末又は局所施用のためのクリーム又は流体の形といったような、肺内投与に適した形をしている。
【0100】
治療は、現在又は見かけ上治療を必要としている診断された疾病、障害又は身体条件の治療である必要はなく、その疾病又は身体条件が発生するのを予防するために使用することもできる。
【0101】
本件の文脈中では治療には、例えばヒトによる及びヒトにおけるものと、この点で同じように作用する前記機能的単位をもつ動物による免疫系及び生殖系の治療及び/又は予防法が含まれる可能性がある。治療すべき身体条件というのは、必ずしも、現在治療を必要としていることがわかっている身体条件を意味するとは限らず、現在の及び/又は予想されている必要性又は正常な身体条件の改善と関連したあらゆる身体条件が含まれる。特に、治療は、MBL欠損条件の治療である。
【0102】
本発明のもう1つの態様においては、ヒトによる及びヒトにおけるものと同じように作用する前記機能的単位をもつ動物による例えば免疫系及び生殖系の疾病及び障害の身体条件の治療及び/又は予防法を含む、身体条件の治療のために意図されたrMBLフラグメント又はその模擬体の組成物を含めた、前記MBL医薬組成物からなる薬剤の製造が提供されている。
【0103】
本発明の化合物での治療を必要とする前記疾病、障害及び/又は身体条件には、特に、癌治療中の身体条件に関連して又は器官の移植及び/又は組織移植に関連して見られる感染を含めた、免疫抑制化学療法に関連する感染及び癌治療、MBL欠損症の身体条件の治療などが含まれる。本発明は同様に反復性流産に関連する身体条件の治療をも含む。
【0104】
かくして、特に、感染、MBL欠損症、癌、化学療法に付随する障害、例えば感染、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、先天性又は後天性免疫不全症に関連した疾病の中から選択された臨床条件の治療及び/又は予防のために、該医薬組成物を使用することができる。より特定的には、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、多発性運動神経障害、多発性硬化症、重症筋無力症、イートンランバート症候群、視神経炎、癲癇;原発性抗リン脂質抗体症候群;関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、全身性強皮症、脈管炎、ウェゲナー肉芽腫症、ショーグレン症候群、若年性関節リウマチ;自己免疫性好中球減少症、自己免疫性溶血性貧血、好中球減少;クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病;喘息、敗血性症候群、慢性疲労症候群、乾癬、毒素性ショック症候群、糖尿病、副鼻腔炎、拡張型心筋症、心内膜炎、アテローム性動脈硬化、分類不能型免疫不全、ウィスコットーアルドリッチ症候群及び重度複合免疫不全症(SCID)を含む原発性低/無ガンマグロブリン血症、慢性リンパ性白血病(CLL)及び多発性骨髄腫を伴う患者における続発性低/無ガンマグロブリン血症、急性及び慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、同種骨髄移植(BTM)、川崎病及びギラン・バレー症候群に使用できる。
【0105】
投与経路は、静脈内、筋内、皮下又は皮内といったような任意の適切な経路でありうる。同様に、肺内又は局所投与も、本発明では考慮されている。
【0106】
特に、MBL組成物は、先天的又は後天的MBL欠損症に付随する臨床的疾候を有するか又はかかる疾候を発生させるリスクのある患者において感染を予防しかつ/又は治療するために投与することができる。化学療法又はその他の療法用の細胞毒治療、癌、エイズ、遺伝的素質、慢性的感染及び好中球減少といったような多種多様な身体条件が、MBL欠損個体における感染に対する感受性の増大を導く可能性がある。
【0107】
化学療法での治療を受けている癌患者は往々にして、免疫系の細胞に対する医薬投与計画の不利な作用に起因して感染に対し高い感受性をもつと思われ、これが、この身体条件の治療におけるMBL療法の使用の背景である。MBLの低い血漿濃度(500ng/mL)が見られると、それは、臨床的に有意な感染に対する感受性の増大を表わし、これらの患者の免疫防御は、組換え型又は天然の血漿由来MBLの投与により強化することができる。
【0108】
かくして、該医薬組成物は、化学療法などの施用の開始前に一定期間、そして化学療法の少なくとも一部分の間に投与することができる。
【0109】
MBL組成物は、化学療法の前の一般的「追加免疫」として投与してもよいし、又、MBL欠損症を発生させるリスクがあるにすぎない人に投与することもできる。リスクのある患者のグループは、治療の前にMBLレベルを測定し、そのMBLレベルが予め定められたレベルより低い者のみに治療を施すことによって決定可能である。低いMBLレベルを決定するための限界は、大部分のグループについて500ng/ml未満であるものと推定される。MBLレベルは、例9に記述されているような時間分解免疫螢光検定、ELISA、RIA又は比濁法により決定できる。
【0110】
MBLを投与するためのもう1つの兆候は、MBLレベルが、300ng/ml未満又は200ng/ml未満といったように正常レベルの50%未満である場合である。
【0111】
MBL組成物は、適切な用量・用法で投与され、特に、例えば化学療法の間一週間に一度か2度といったような適当な間隔で通常投与される。
【0112】
通常は、一回の用量につき1〜100mg、例えば2〜10mg、大方は5〜10mgが投与される。ほとんどの場合、体重1kgあたり約0.1mgが投与される。
【0113】
かくして、1つの態様では、本発明は、癌及び例えば免疫系及び生殖系の疾病及び障害の身体条件の治療において使用するためのrMBLを含めたMBL、フラグメント又はその模擬体に関し、前記治療は、補体系の作成、再形成、そのオプソニン及び/又は殺菌活性の増強及び/又は刺激、すなわち、微生物病原体を認識し殺す免疫防御能力の増強で構成されている。
【0114】
さらに、本発明の1つの態様は、さらにもう1つの薬剤を含む部品キットの形での本発明に従った組換え型組成物の使用にある。特に、このもう1つの薬剤は、抗生物質といったような、抗菌薬でありうる。
【0115】
流産に関しては、MBLの低血漿レベルの発生頻度が、その他には説明のつかない反復的流産を患う患者において増大しているということが報告されてきており、このことが、これらの症例において組換え型MBLを投与することによってMBLレベルを再構築して流産に対する感受性を低下させるための背景となっている。
【0116】
本発明の化合物の性質については、その広い態様において、本発明はオプソニンとして作用することのできる、すなわち化合物とマクロファージの間の直接的相互作用又は標的表面上の媒介する補体の被着のいずれかを通してマクロファージによる摂取を増強することのできる化合物に関すると思われる。その特定の一例は、MBL、そのフラグメント又は模擬体である。本発明は、過去において達成されたものよりも天然のヒトMBLの構造にさらに近いものであると思われる組換え型ヒトMBLの合成の開示に基づいている。
【0117】
以上で、さまざまな態様においてかつ適切に細部にわたり本発明を説明してきたが、以下では、さらに、図1〜4及び好ましい実施形態の制限的意味のない例により本発明について例示する。
【実施例】
【0118】
例1:
スピナーボトル培養からのMBLの単離
連続200mL入りスピナーボトルでの培養から、MBLを含む細胞培養液を獲得した。WO 00/70043の例1で記述されている通りに生産したMBLを産生するHEK293細胞系統を、G418(Cal Biochem)、アスコルビン酸(ICN Biochemcals)及びCyto Pore1マイクロ担体(AP Biotech)と共に、HyQ PF293培地(Hy Clone)内でインキュベートした。
【0119】
160-175mLの細胞培養液をくり返し取出し、精密ろ過による細胞の除去後、細胞を含まない培養液を、沈殿のため適用した。0.1MのCa2+濃度を得るためpH7〜8で細胞を含まない培養液にCaCl2を添加した後、白色で重い沈殿物が形成される。
【0120】
沈殿物を、pH3.25でEDTA含有溶液内に再懸濁させることもできた。透析の後、溶解したMBLは、MBL検定(マンナン結合及びHYB131−01認識に基づくTRIFMA)及びSDS−PAGE(HYB131−01を用いたウェスタン法)により分析することができた。
【0121】
再懸濁した沈殿物のMBL特異的免疫検定は、有意な量の合計MBLが沈殿物の中で回収されるということを明らかにしている。さらに、沈殿物中で回収したMBLでは、約200kDaより大きいオリゴマーが支配的である(図1)。
【0122】
同じ検定は、上清中に一部のMBLが見い出されることを対応する上清が顕示しているということを明らかにしている。その上、上清中で回収されたMBLには、SDS−PAGEで見られるように、約200kDaより小さいオリゴマが支配的である(図2)。
【0123】
例2
培養タンクからのMBLの単離
5L入りタンクでの連続培養から、MBLを含む細胞培養液を獲得した。例1で記述されている通りに生産したMBLを産生するHEK293細胞系統を、G418(Cal Biochem),グルタマックス(Gibco)、アスコルビン酸(ICN Biochemicals)及びHy Soy(Hy Clone)と共に、HyQ PF293培地(Hy Clone)内でインキュベートする。
【0124】
200mLの細胞培養液をくり返し取出し、遠心分離による細胞の除去後、細胞を含まない培養液を、沈殿のため適用した。
【0125】
その後の沈殿を助けるため、約200mMのリン酸塩濃度を得るべくリン酸ナトリウムを添加した。0.1MのCa2+濃度を得るべくリン酸塩富有細胞を含まない培養液にCaCl2を添加した後、白色の重い沈殿物が形成される(図3参照)。
沈殿物は、pH3.2でクエン酸塩含有溶液内に再懸濁させることもできた。
【0126】
例3
SFM II培地からのMBLの単離
5L入りタンクでの連続培養から、MBLを含む細胞培養液を獲得した。MBLを産生するHEK293細胞を、G418(Cal Biochem)、グルタマックス(Gibco)及びアスコルビン酸(ICN Biochemicals)と共に、293SFMI培地(Gibco)内でインキュベートする。規則的に沈降させ培地を交換しながら、引抜き充填プロセスとして培養を行う。支持体としては、Microcarriers(Cytopore 1. AP Biotech)を使用する。2Lの細胞培養液をくり返し取出し、遠心分離による細胞の除去後、細胞を含まない培養液を、沈殿のため適用する。
【0127】
その後の沈殿を助けるため、約50mMのリン酸塩濃度を得るべくリン酸ナトリウムを添加した。0.1MのCa2+濃度を得るべくリン酸塩富有細胞を含まない培養液にCaCl2を添加した後、白色の重い沈殿物が形成される(図3参照)。
沈殿物は、pH3.0でクエン酸塩含有溶液内に再懸濁させられる。
【0128】
例4:
非培養地からのMBLの単離
100mMのリン酸塩濃度を得るため、MBL含有溶液(1.0mg/L)をリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)を添加する。その後、100mMのカルシウム濃度を得るべく塩化カルシウムを添加する。形成した沈殿物は、MBL検定(マンナン結合及びHYB131−01認識に基づくTRIFMA)及びSDS−PAGE(HYB131−01を用いたウェスタン法)によって示される通り、大部分のMBL(>90%)を含有している。
【0129】
例5:
MBLの収量
MBL検定において、マンナン結合MBLの収量を定量することができる(マンナン結合及びHYB131−01認識に基づくTRIFMA)。連続する2つの実験の中で、出発材料との関係における例1で得られた再懸濁した沈殿物のMBL含有量は、それぞれ72%及び68%であると推定された。
【0130】
例6:
R比の計算
本発明の使用前の組換えにより誘導されたMBL、本発明の使用後の組換えにより誘導されたMBL(上清)及び本発明の使用後の組換えにより誘導されたMBL(沈殿物)に対応する3つの標本を調査してR値を計算した。
【0131】
MAB131−01(Statens Serum Institute),ホースラディッシュペルオキシダーゼ(PO260,Dako)に接合されたウサギ抗マウス抗体及びSuper Signal West Pico基質(Pierce)を用いて、SDS−PAGE免疫ブロットを調製し、非圧縮TIFFファイルへと走査した。標本バンドに沿った画素密度をWindows(登録商標)4.0用Scion Image内で測定し、Microsoft Excelにエキスポートした。
【0132】
200kDaに対応する移動を、マーカーの移動から確立した(Precision Protein Standards, BioRad)。200kDaより上の合計画素信号を、200kDaマーカーの下の合計画素信号の場合と同様に計算した。各標本中のこれらの数の間の比がR値を表わしている。
【0133】
本発明の使用前の組換えにより誘導されたMBL中のR値は、R=6であるものと推定された。本発明の使用後の組換えにより誘導されたMBLの上清中のR値はR=0と推定され、一方本発明の使用後の組換えにより誘導されたMBLの沈殿物中のR値は、R≫1000であると推定された。
【0134】
例7:
R比の計算
組換えにより誘導されたMBLのR値を、Protein200 Plusチップ検出システム(Agilent)と共にBio Analyzer System (Agilent) を用いて推定することができる。
【0135】
ランの前に水でゲルを希釈する(水1部分対ゲル2部分)という点を除き、販売会社が記述している通りに、かつ標本に対し還元剤を添加することなく、標本をランさせる。これは、ゲル内のMBLの高質量形態を見ることができるようにするためである。
【0136】
200kDaに対応する移動を上部マーカーの移動から確定した(販売会社により納入された内部標準である210kDaの分子量を有するミオシン)。200kDaより上の合計画素信号を、200kDaマーカーの下の合計画素信号の場合と同様に、標準的積分ルーチンを用いて積分した。各標本中のこれらの数の間の比がR値を表わしている。
【0137】
組換えにより誘導されたMBLの2つの選択された標本内のR値の計算は、図4に示されている。1つの標本中のR値はR=19であり、一方もう1つの標本中のR値はR=0.2である。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】血漿由来のMBLに対し発生させたHYB131−01を用いたSDS−PAGEウェスタンである。P=血漿由来MBL;1=発明使用前の組換え由来MBL;3=発明の使用後の組換え由来MBL。
【図2】血漿由来MBLに対し発生させたHYB131−01を用いたSDS−PAGEウェスタンである。左:免疫ブロット。右:ブロットの密度計分析(Scion Software)。標本:1=発明使用前の組換え由来MBL(R=6);この例中の優性バンドの分子量は(右から左へ)47kDa、160kDa、230kDa、290kDa、330kDa、及び365kDa(段部)である。2=発明使用後の組換え由来MBL(上清)(R=0);この例中の優性バンドの分子量は(右から左へ)47kDa及び160kDaである。3=発明使用後の組換え由来MBL(沈殿物)(R≫1000);この例中の優性バンドの分子量は(右から左へ)230kDa、290kDa、330kDa及び365kDa(段部)及び400〜600kDaである。
【図3】3LのHyQ培地中のMBLの沈殿である。左:沈殿前の培地。中:沈殿剤の添加直後の培地。右:沈殿用作用物質の添加から40分後の培地。
【図4】BioAnalyzerシステムを用いたR値の計算例である。左:螢光染色されたゲル(Agilant標準方法、L=マーカーラダー)。右:標本1及び3のピーク積分(矢印はRの計算のための積分されたピークを表わす)。標本;1及び2:高分子量形態が支配的である組換え由来MBL(R=19)。3及び4:低分子量形態が支配的である組換え由来MBL(R=0、2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの分子量クラスのマンノース結合レクチン(MBL)分子を有する組換え型ヒトMBL組成物において、該クラスが、
200kDa〜270kDaの範囲内の分子量を有するクラスI;
270kDa〜300kDaの範囲内の分子量を有するクラスII;
300kDa〜400kDaの範囲内の分子量を有するクラスIII;及び
400kDa〜600kDaの範囲内の分子量を有するクラスIV、
の中から選択されており(なお分子量はSDS-PAGEによって決定されている)、
クラスI内のMBLが該組成物内のMBLの合計量の0〜20モル%の範囲内の量を構成している組換え型ヒトMBL組成物。
【請求項2】
分子量クラスのうちの少なくとも3つのクラスのMBL分子を含有し、クラスI内のMBLが組成物中のMBLの合計量の0.10〜20モル%の範囲内の量を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が分子量クラスのうちの4つのクラスのMBL分子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
MBL組成物が、未変性宿主生体の中で産生される場合にMBLに自然に付随するいかなる不純物も実質的に含んでいない、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
分子量がSDS-PAGE及び/又はウェスタンブロット法によって算定される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
非変性状態にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
変性状態にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
MBLサブユニットが3つの同一のペプチド配列で組立てられている、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
任意にはさらに薬学的に許容される担体物質を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組換え型ヒトMBL組成物を含む医薬組成物。
【請求項10】
注射に適した形をしている、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
担体物質が食塩水、ヒト血清アルブミン又はマンノースである、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
肺内投与に適した形をしている請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
吸入用粉末の形態をした、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
局所施用のためのクリーム又はローションの形をした、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
医薬組成物の生産を目的とした、請求項1〜8に記載の組換え型ヒトMBL組成物の使用。
【請求項16】
個体の体内で、感染、MBL欠損症、ガン、化学療法に関連する障害、流産、好中球減少に関連する障害、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)の中から選択された臨床条件を治療するための医薬組成物の生産を目的とした請求項15に記載の組成物の使用。
【請求項17】
医薬組成物が静脈内、筋内、皮下又は皮内投与される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
医薬組成物が肺内投与される、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
医薬組成物が局所投与される、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
医薬組成物が、化学療法又はその他の療法用の細胞毒治療を開始する前に予防的に投与される請求項16に記載の使用。
【請求項21】
投与されるMBL組成物の量が1〜100mg/用量である、請求項20に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−62372(P2009−62372A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232662(P2008−232662)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【分割の表示】特願2003−515547(P2003−515547)の分割
【原出願日】平成14年7月23日(2002.7.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
【出願人】(504029363)ナティミューン アクティーゼルスカブ (1)
【Fターム(参考)】