説明

高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造方法、それによって形成された炭素基材及びその製造に使われるシステム

【課題】高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造方法、それによって形成された炭素基材及びその製造に使われるシステムを提供する。
【解決手段】酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及びバインダ・ステープルファイバを含むプリウェブを形成する酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ形成工程と、熱硬化性樹脂と炭素フィラとを含むスラリに、酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを含浸させた後で乾燥させ、酸化された炭素前駆体ファイバウェブを得る含侵工程と、酸化された炭素前駆体ファイバウェブに、熱と圧力とを加えることによって、熱硬化性樹脂を硬化させ、ウェブを圧縮する硬化工程と、酸化された炭素前駆体ファイバウェブを不活性雰囲気中で加熱し、酸化された炭素前駆体ステープルファイバを安定化及び炭化することによって、炭素基材を得る炭化工程と、を含むガス拡散層用炭素基材の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造方法、それによって形成された炭素基材及びその製造に使われるシステムに係り、さらに詳細には、酸化された形態の炭素前駆体ステープルファイバ(carbon precursor staple fiber)とバインダ高分子ステープルファイバとを利用することによって、酸化処理工程を省略し、炭素基材製品の偏差及び低い工程性を解決し、これに加えて、2段以上の圧縮ロール部による多段階ローリング硬化工程を介して、炭素基材を連続的に形成することによって、作業性を向上させるとともに、炭素基材の厚みを均一に維持させる、高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造方法、それによって形成された炭素基材、及びその製造に使われるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、韓国・知識経済部の支援(課題番号:2008NFC12J0125002008、主管機関:(株)ヒョプチンINC、研究課題名:「水素燃料電池の自動車用高性能低価GDL国産化技術開発」)によってなされたものである。
【0003】
[背景技術]
燃料電池は、燃料と酸素とを電気化学的に反応させて電気エネルギーを生産する装置であって、使われる電解質の種類によって、高分子電解質型(PEM:polymer electrolyte membrane)、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型(solid oxide)、アルカリ水溶液型などに区分されうる。
【0004】
ここで、高分子電解質型燃料電池(PEFC:polymer electrolyte fuel cell)は、他の形態の燃料電池に比べて、作動温度が低くて効率が高く、電流密度及び出力密度が高く、始動時間が短く、負荷変化に対する応答が速いという特性がある。
【0005】
PEFCは、燃料としてメタノールを使用する直接メタノール燃料電池と、燃料として水素を使用する水素燃料電池とに分けることができる。PEFCは、高分子電解質膜の両側に、それぞれガス拡散層上に触媒が塗布された燃料極と空気極とが接合された膜電極接合体(MEA:membrane electrode assembly)が複数個積層された構造を有する。
【0006】
ここで、ガス拡散層(GDL:gas diffusion layer)は、多孔質炭素膜からなる炭素基材に、微細多孔層(MPL:microporous layer)をコーティングして形成したものである。
【0007】
従来の一般的な技術によるガス拡散層を構成する炭素基材の製造方法は、図1に図示されているように、炭素前駆体ステープルファイバからなるプリウェブ(preweb)(炭素前駆体ファイバ・プリウェブ)を形成する炭素前駆体ファイバ・プリウェブ形成工程(S10)、高温の不活性雰囲気中で前記プリウェブを加熱し、前記プリウェブの炭素前駆体ステープルファイバを炭化させ、炭素前駆体ステープルファイバを炭素ステープルファイバに炭化させることにより、炭素ファイバウェブ(web)を形成する第1炭化工程(S17)、炭素ファイバウェブに、熱硬化性樹脂と炭素フィラとを含浸する含浸工程(S20)、熱硬化性樹脂と炭素フィラとが含浸された炭素ファイバウェブに、熱と圧力とを加えることによって、熱硬化性樹脂を硬化させる硬化工程(S30)、及び樹脂が含浸された前記炭素ファイバウェブを、高温の不活性雰囲気中で加熱して熱硬化性樹脂を炭化させ、炭素ステープルファイバの結晶性を増進させることによって、炭素基材を得る第2炭化工程(S41)からなる。
【0008】
図2は、図1の従来技術によるガス拡散層を構成する炭素基材の製造方法について、さらに詳細に図示したものである。
【0009】
図2に図示されているように、従来技術によるガス拡散層を構成する炭素基材の製造方法は、炭素前駆体ファイバウェブ形成工程(S10)、第1炭化工程(S17)、含侵工程(S20)、硬化工程(S30)、及び第2炭化工程(S41)に加え、炭素前駆体ステープルファイバを予備的に酸化するために、第1炭化工程(S17)前に酸化工程(S16)をさらに含んでいる。炭素前駆体ファイバウェブ形成工程(S10)は、炭素前駆体ステープルファイバを開纎(opening)する段階(S11)、開纎された炭素前駆体ステープルファイバをカーディング(carding)し、カーディングされた(carded)薄い炭素前駆体ファイバ・プリウェブを形成するカーディング段階(S12)、カーディングされた炭素前駆体ファイバ・プリウェブをクロス・ラッピング(cross-lapping)し、厚い炭素前駆体ファイバ・プリウェブを形成する段階(S13)、クロス・ラッピングされた厚い炭素前駆体ファイバ・プリウェブを結合処理し、炭素前駆体ファイバ・プリウェブを結合する段階(S14)、結合された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを巻き取る段階(S15)を含み、第2炭化工程(S41)は、炭化処理段階(S42)及び黒鉛化処理段階(S44)を含むことができる。
【0010】
図2を再び参照すれば、開纎段階(S11)で開纎機を利用し、塊になっているポリアクロニトリル(PAN)、ピッチのような炭素前駆体ステープルファイバを解きほぐす。カーディング段階(S12)でカーディング・マシーン(carding machine)を利用し、炭素前駆体ステープルファイバを平行に整えた後で集め、シート状の薄い炭素前駆体ファイバ・プリウェブを形成する。クロス・ラッピング段階(S13)では、カーディング・マシーンを介して吐出された薄い炭素前駆体ファイバ・プリウェブを何層にも積層させ、所望の重量を有する厚い炭素前駆体ファイバ・プリウェブを得る。このようにクロス・ラッピングされた厚い炭素前駆体ファイバ・プリウェブは、結合処理段階(S14)で、特殊な針を使用したニードル・パンチングによって炭素前駆体ステープルファイバを機械的に互いにからませ、結合された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを得る。このようにニードル・パンチングされた炭素前駆体ファイバ・プリウェブは、巻き取り段階(S15)で巻き取られる。前記のように、このように巻き取られた炭素前駆体ファイバ・プリウェブの炭素前駆体ステープルファイバは、200−500℃の空気雰囲気で酸化処理工程(S16)を経て、第1炭化工程を介して、炭素ファイバウェブを得る。その後、炭素基材製造工程の含侵工程(S20)、硬化工程(S30)、及び炭化処理段階(42)と黒鉛化処理段階(44)とからなる第2炭化工程(S41)を経て、炭素基材を得る。
【0011】
前述のように、従来技術によれば、PAN、ピッチなどの酸化されていない形態の炭素前駆体ステープルファイバを原料として使用することによって、一般的な不織布生産工程をそのまま使用することが可能であり、バインダ高分子なしに、炭素前駆体ステープルファイバだけで、炭素基材を製造することができ、炭素ステープルファイバの表面特性制御が可能であるが、製造された炭素基材は、一般的な不織布工程を利用するために、±20%の厚み偏差及び重さ偏差を有しうる短所があり、軟性である炭素前駆体ステープルファイバの特性によって、工程中にプリウェブ及びウェブが容易に増え、このために、部位別に偏差が発生するという短所がある。
【0012】
また、従来技術の場合、炭素前駆体ファイバ・プリウェブの酸化処理工程に必要な時間が約1時間ほどであって、工程コストが追加され、低い延伸下でも、炭素前駆体ファイバ・プリウェブの収縮率が不均一に起こりうるために、位置別に異なる厚みを有することがあり、特に、横方向(CD:cross-machine direction:CD)偏差が大きい。また、酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ中に、バインダやバインダ・ファイバがないために、縦方向(MD:machine direction)及び横方向に不均一に延伸されやすく、これによって、含侵工程で、均一な樹脂含浸とウェブ厚制御とが困難であるという問題点がある。また、PANやピッチのような炭素前駆体ステープルファイバは、酸化工程で、延伸によって強度がさらに増大し、他の機械的特性が増大するが、高分子ウェブを酸化するために、十分な強度を有するように延伸できない。
【0013】
一方、従来技術の硬化工程(S30)で、硬化温度に加熱されたホットプレスの板(plate)間に一定の間隔をおいて、熱硬化性樹脂と炭素フィラとが含まれた炭素前駆体ファイバウェブを入れて、熱と圧力とを加えれば、熱硬化性樹脂が硬化されつつ、炭素前駆体ファイバウェブの厚みが縮小する。硬化工程(S30)で、炭素前駆体ステープルファイバと炭素前駆体ステープルファイバとの間、炭素前駆体ステープルファイバと炭素フィラとの間、炭素フィラと炭素フィラとの間に含浸された熱硬化性高分子樹脂が、熱と圧力とによって硬化されつつ分子量が大きくなり、結合力を有する。
【0014】
一般的に使われる硬化工程(S30)では、ホットプレス工程を利用して、硬化温度以上に加熱された2枚の板の間に、炭素前駆体ファイバウェブを入れ、一定時間の間圧縮して、熱硬化性樹脂を硬化させる。しかし、この方法は、連続的にロール状の製品を作れないために、特許文献1に開示された技術は、一定速度で炭素前駆体ファイバウェブを一定長に供給した後、ホットプレスによって、一定時間の間加圧してさらに移送させ、再び加圧するスタンピング動作を介して、所定厚に圧縮する。
【0015】
しかし、従来の炭素基材の製造方法は、硬化工程が、一定の時間の間、一定長のみを加熱プレスする工程からなり、その硬化工程が連続的ではなく、硬化が均一になされず、厚み調節が容易ではないという問題点があった。また、硬化工程が平板ホットプレシング工程によって行われるために、バインダ高分子樹脂の硬化も、平板形態の厳格な拘束下で進められ、炭素基材の屈曲強度が非常に低いという短所がある。屈曲強度が低ければ、ロール(roll)状に巻き取ることができず、小さい力にも壊れるという短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国公開特許2008−0258206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、酸化されていない炭素前駆体ステープルファイバを使用し、一般的な不織布製造工程を介して、炭素基材を製造する従来技術における前記の問題点を解決するために、一般的な不織布製造工程をそのまま使用しつつも、前記の従来技術の炭素基材製品の偏差問題及び工程上の難点を解決することができる高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造方法、その製造方法によって得られたガス拡散層用炭素基材及びその製造に使われるシステムを提供することを目的とする。
【0018】
また本発明は、従来技術で、硬化工程が非連続的なスタンピング工程からなることによって炭素基材製造の生産性が低下し、圧縮及び硬化が均一ではないという問題点を解決することができるように、2段以上の加熱ロールによる多段階ローリング硬化工程を介して、炭素基材の製造を連続的に行って生産性を向上させる、高分子電解質型燃料電池のガス拡散層炭素基材、その製造方法、及び製造システムを提供することを目的とする。
【0019】
また本発明は、柔軟な構造を有するロール状の製品に製造される高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造方法、その製造方法によって得られたガス拡散層用炭素基材及びその製造に使われる製造システムを提供することを目的とする。
【0020】
また本発明は、平板型圧縮硬化で生じる部位別厚み偏差を減らすことができる高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造方法、及びその製造方法によって得られたガス拡散層用炭素基材及びその製造に使われるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一側面による高分子電解質型燃料電池のガス拡散層炭素基材の製造方法は、炭素前駆体ステープルファイバ(staple fiber)として、酸化されたポリアクロニトリル(oxy−PAN)系ステープルファイバ、酸化されたピッチ(oxy−pitch)系ステープルファイバ、酸化されたポリビニルアルコール(oxy−PVA)系ステープルファイバ、酸化されたセルロース(oxy−cellulose)系ステープルファイバ、及び酸化されたフェノール樹脂系ステープルファイバから構成されたグループから選択された一種または二種以上の酸化された形態の炭素前駆体ステープルファイバを使用することができ、バインダ・ステープルファイバとしては、PVAステープルファイバ、低融点(LM)ポリエステル・ステープルファイバ、ポリエチレン(PE)・ステープルファイバ、ポリプロピレン(PP)・ステープルファイバ、セルロース・ステープルファイバ及びピッチ・ステープルファイバから構成されたグループから選択された一種または二種以上のバインダ・ステープルファイバを使用することができ、一般的な不織布製作工程を利用し、また酸化処理工程を省略する。
【0022】
本発明による高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造方法で、酸化された炭素前駆体ファイバウェブの硬化工程は、2段以上の加熱ロールによる多段階ローリング硬化工程を介して行われる。
【0023】
本発明による高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材製造システムの多段階ローリング硬化装置は、酸化された炭素前駆体ファイバウェブを予熱する予熱部、前記予熱部によって予熱された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを圧縮硬化するようにローリング・ギャップがだんだんと狭く形成された2対以上のロールを備えるローリング硬化部、及び前記ローリング硬化部によって圧縮硬化された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを冷却する冷却部を具備する。
【0024】
本発明の一具現例によれば、酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及びバインダ・ファイバとして、PVAステープルファイバ、低融点ポリエステル・ステープルファイバなどのバインダ・ステープルファイバを含むプリウェブ(preweb)(酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ)を形成する酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ512の形成工程(S10)、熱硬化性樹脂と炭素フィラとを含むスラリ520に、前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ512を含浸した後で乾燥させ、酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を得る含侵工程(S20)、熱硬化性樹脂と炭素フィラとが含浸された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510に、熱と圧力とを加えることによって、前記熱硬化性樹脂を硬化させ、前記ウェブを圧縮する硬化工程(S30)、及び前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を炭化炉内で不活性雰囲気中で加熱し、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバを安定化及び炭化することによって、炭素基材を得る炭化工程(S41)を含む高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造方法を提供する。
【0025】
前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ形成工程(S10)は、開纎機(opening machine)を利用し、塊になっている酸化された炭素前駆体ステープルファイバ、及び塊になっているバインダ・ステープルファイバを均一に混合して解きほぐす開纎段階(S11')、カーディング・マシーンを利用し、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及び前記バインダ・ステープルファイバを平行に整えた後で集め、シート状の酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを形成するカーディング段階(S12')、カーディング・マシーンから吐出された酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを何層にも積層させ、所望の重量を有する酸化された炭素前駆体ファイバプリウェブを得るクロス・ラッピング段階(cross-lapping)(S13')、このようにクロス・ラッピングされた酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを、特殊な針(needle)を使用したニードル・パンチングによって、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及び前記バインダ・ステープルファイバを機械的に互いにからませ、酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを結合する段階(S14')、このように結合された前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブをカレンダリングして加熱加圧する段階(S45)、及び前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを巻き取る巻き取り段階(S15')を含むことができる。
【0026】
前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ形成工程(S10)は、前記開纎段階前に、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバと前記バインダ・ステープルファイバとを混合する混合処理段階をさらに含むことができる。
【0027】
前記バインダ・ステープルファイバの含有量は、前記プリウェブの重量を基準にして、1〜30wt%、さらに望ましくは1〜10wt%であって、前記バインダ・ステープルファイバは、融点が300℃以下、例えば、50℃以上300℃以下の熱可塑性高分子からなりうる。
【0028】
前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及びバインダ・ステープルファイバのファイバ長は、10mm−100mm、例えば、20mm−80mmまたは30mm−50mmでありうる。
【0029】
含浸工程(S20)は、前述の従来技術と同様になされうるので、詳細な説明は省略する。
【0030】
前記硬化工程(S30)は、予熱段階、加熱圧縮硬化段階及び冷却段階を経る多段階ローリング硬化工程(S300)によってなされうる。多段階ローリング硬化工程(S300)からなる硬化工程(S30)は、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を、100〜150℃の温度で移送過程中に予熱する予熱段階(S31)、ローリング・ギャップがだんだんと狭くなるように形成された2対以上のロールを備えるローリング硬化部312によって、前記予熱段階(S31)を介して予熱された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を移送する過程で、130〜250℃の温度で圧縮硬化する連続ローリング硬化段階(S32)、及び前記連続ローリング硬化段階(S32)を介して、一定厚に圧縮硬化された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を空気冷却する冷却段階(S33)によってなりうる。
【0031】
前記予熱段階(S31)は、100〜150℃の温度内で、互いに異なる二段階以上、例えば、二段階以上四段階以下、具体的には、二段階以上三段階以下の温度で、順次加熱される方式によってなりうる。
【0032】
前記連続ローリング硬化段階(S32)で、予熱段階(S31)を介して予熱された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510は、ローリング硬化部312で加熱及び圧縮されるが、ここで、前記炭素前駆体ファイバウェブ510は、130〜250℃の温度を有し、300〜1,000μmのギャップを有する1番ロール部のロール間を通過し、次に、130〜250℃の温度を有し、250〜600μmのギャップを有する2番ロール部のロール間を通過し、また130〜250℃の温度を有し、200〜400μmのギャップを有するn番(nは、3以上10以下の自然数)ロール部のロール間を通過する方式で、少なくとも2個以上のロール部のロール間を連続的に通過しつつ、加熱及び圧縮されうる。
【0033】
望ましくは、前記ローリング硬化部312のロールの半径は、100−800mmの範囲を有し、さらに望ましくは150−500mmの半径を有する。前記1番ロール部ないしn番ロール部の温度は、同一でありえる。または、前記1番ロール部からn番ロール部への方向に温度が順次上昇しうる。
【0034】
ローリング硬化部312は、図6及び図7に図示されているように、各ロール部は、水平に配列されうる。または、図8に図示されているように、各ロール部3112は、垂直に配列され、その場合、垂直に設けられているロール部間には、ガイドロール3123が備わりうる。
【0035】
前記冷却段階(S33)は、連続ローリング硬化段階(S32)で加熱された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510が徐々に冷却されうるように、互いに異なる二段階以上、例えば、二段階以上四段階以下、具体的には、二段階以上三段階以下の温度で、順次冷却される方式によってなりうる。前記連続ローリング硬化段階(S32)を介して、一定厚に圧縮硬化された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510は、前記冷却段階(S33)で空気によって冷却されうる。
【0036】
前記炭化工程(S41)は、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を600〜1,000℃の非活性雰囲気下で加熱し、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ、熱硬化性樹脂及びバインダ・ステープルファイバを炭化する炭化処理段階(S42)、及び1,300〜2,000℃の非活性雰囲気下で、前記炭化処理されたウェブ510をさらに加熱することによって、炭化されて形成された炭素ファイバに黒鉛構造を誘導する黒鉛化処理段階(S44)によってなりうる。
【0037】
前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバは、酸化されたPANステープルファイバ、酸化されたピッチ・ステープルファイバ、酸化されたPVAステープルファイバ、酸化されたセルロース・ステープルファイバ及び酸化されたフェノール樹脂ステープルファイバから構成されたグループから選択された一種または二種以上の組み合わせであって、前記バインダ・ステープルファイバは、PVAステープルファイバ、低融点ポリエステル・ステープルファイバ、PEステープルファイバ、PPステープルファイバ、セルロース・ステープルファイバ及びピッチ・ステープルファイバから構成されたグループから選択された一種または二種以上の組み合わせでありうる。
【0038】
本発明の他の側面によれば、前記高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造方法によって製造されたことを特徴とする高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材が提供される。
【0039】
本発明のさらに他の側面によれば、酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及びバインダ・ステープルファイバを使用し、酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及びバインダ・ステープルファイバを含む酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ512を形成するプリウェブ形成装置(図示せず)、前記プリウェブ512を熱硬化性樹脂と炭素フィラとを含むスラリ520に含浸させた後で乾燥させ、酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を製造する含浸装置210、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510に熱と圧力とを加えることによって、熱硬化性樹脂を硬化させ、前記ウェブ510を圧縮する硬化装置310、及び前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を不活性雰囲気中で加熱し、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバを安定化及び炭化することによって、炭素基材を生成する炭化炉を具備した炭化装置410を含む高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造システムが提供される。
【0040】
前記プリウェブ形成装置は、前記炭素前駆体ステープルファイバ及び前記バインダ・ステープルファイバを混合するミキサをさらに含むことができる。
【0041】
前記プリウェブ形成装置は、塊になっている酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及び塊になっているバインダ・ステープルファイバを均一に混合して解きほぐす開纎機、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及び前記バインダ・ステープルファイバを平行に整えた後で集め、シート状の酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを形成するカーディング・マシン、カーディング・マシンから吐出された酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを何層にも積層し、所望の重量を有する酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを生成するクロス・ラッピングマシン、このようにクロス・ラッピングされた酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを、特殊な針を使用したニードル・パンチングによって、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及び前記バインダ・ステープルファイバを機械的に互いにからませて結合するニードル・パンチングマシン、このように結合された前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを加熱加圧するカレンダリング・マシン、及び前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを巻き取る巻き取り装置(winding machine)を具備することができる。
【0042】
前記硬化装置310は、予熱段階、加熱圧縮硬化段階及び冷却段階を順次遂行する多段階ローリング硬化装置310でありうる。
【0043】
前記多段階ローリング硬化工程(S300)を遂行する硬化装置310は、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を、100〜150℃の温度で移送過程中に予熱する予熱部311、前記予熱部311によって予熱された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を、130〜250℃の温度で圧縮硬化するように、ローリング・ギャップだんだんと狭くなるように形成された2対以上のロールを備えるローリング硬化部312、及び前記ローリング硬化部312によって、一定厚に圧縮硬化された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を空気冷却する冷却部313を具備することができる。
【0044】
望ましくは、図6に図示されているように、予熱部311は、移送される前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510の上下部に設けられ、前記ウェブ510の移送方向に回転するヒーティング・ベルト3111aと、前記ヒーティング・ベルト3111aに設けられてヒーティング・ベルト3111aを加熱し、前記ウェブ510を前記移送方向に順次加熱させる二つ以上の予熱ヒータ3112と、を具備する。
【0045】
または予熱部311は、図7に図示されているように、移送される前記ウェブ510を囲み込むように形成されており、前記ウェブ510の移送方向に区画され、前記移送方向に前記ウェブ510を順次加熱する二つ以上のヒーティング室3111bと、前記ヒーティング室3111b内に備わったそれぞれの予熱ヒータ3112と、を具備する。
【0046】
望ましくは、前記ローリング硬化部312は、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェル510を移送して圧縮硬化することができるように、前記ウェブ510の上下に対向するように配される1対のロールからなる二つ以上の圧縮ロール部3121aを具備し、前記二つ以上の1対の圧縮ロール部3121aは、水平に配されており、前記圧縮ロール部3121aのロールの内側と外側とのうち少なくとも一側に、ロールヒータ3122を具備し、前記二つ以上の1対の圧縮ロール部3121aの加熱温度が、前記ウェブ510の移送方向に順次上昇するようにセッティングされ、前記二つ以上の1対の圧縮ロール部3121aの上下ロール間のギャップは、前記ウェブの移送方向にだんだんと狭くなるようにセッティングされうる。これによって、前記ウェブ510は、ローリング硬化部312の一連の圧縮ロール部3121aを通過しつつ、一定厚に圧縮硬化される。
【0047】
または、ローリング硬化部312は、図8に図示されているように、前記ウェブ510を移送して圧縮硬化できるように、前記ウェブ510の両側面に配される1対のロールからなる圧縮ロール部3121bを二つ以上具備することができる。ただし、この場合、前記二つ以上の1対の圧縮ロール部3121bは、垂直に配されている。前記2つの圧縮ロール部3121b間には、次の圧縮ロール部3121bに前記ウェブ510を案内させるガイドロール3123が備わっており、前記圧縮ロール部3121bのロールの内側と外側とのうち少なくとも一側に、ロールヒータ3122を具備し、前記二つ以上の圧縮ロール部3121bの加熱温度が、前記ウェブ510の移送方向に順次上昇するようにセッティングされ、前記二つ以上の1対の圧縮ロール部の各上下ロール間のギャップが、前記ウェブの移送方向にだんだんと狭くなるようにセッティングされうる。これにより、前記ウェブ510は、ローリング硬化部312の一連の圧縮ロール部3121bを通過しつつ、一定厚に圧縮硬化される。
【0048】
望ましくは、前記ローリング硬化部312のロールの半径は、100−800mmの範囲を有し、さらに望ましくは、前記ローリング硬化部312のロールの半径は、150−500mmの半径を有する。前記ロールの温度は、1番ロール部からn番ロール部までの温度が同一でありえる。または、前記ロールの温度は、1番ロール部からn番ロール部までの温度が順次上昇しうる。
【0049】
望ましくは、図6ないし図8に図示されているように、冷却部313は、前記ウェブ510の移送方向にそれぞれ隔離された二つ以上の冷却室3131を具備し、冷却室3131ではそれぞれの冷却空気が供給されるように構成されることによって、加熱された前記ウェブ510は、前記冷却室3131を通過しつつ徐々に冷却される。
【0050】
望ましくは、前記炭化装置410は、酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510の酸化された炭素前駆体ステープルファイバ、熱硬化性樹脂及びバインダ・ステープルファイバを、600〜1,000℃の非活性雰囲気下で炭化する炭化処理炉、及び1,300〜2,000℃の非活性雰囲気下で、前記炭化処理されたウェブ510を加熱することによって、前記炭化処理によって形成された炭素ファイバに黒鉛構造を誘導する黒鉛化処理炉を具備することができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明は、炭素前駆体ステープルファイバとして、軟性は弱くて剛性の強い酸化された形態の炭素前駆体ステープルファイバと、軟性及び結合力にすぐれる融点300℃以下である高分子樹脂からなるバインダ・ステープルファイバと、を組み合わせて使用することによって、次のような技術的効果を達成することができる。
【0052】
1)一般的な従来の不織布製造工程をそのまま使用することができる。
【0053】
2)延伸による炭素ウェブの偏差が小さく、縦方向(MD)/横方向(CD)に延伸制御特性にすぐれ、これによって得られた炭素基材の局部的な厚み偏差及び重さ偏差が小さい。また、それによって、樹脂含浸工程の制御が容易であり、均一な樹脂含浸と厚み制御とが可能である。
3)PANとピッチとに比べて、軟性は低くて剛性である酸化された形態の炭素前駆体ステープルファイバを使用するので、得られた炭素基材の機械的強度が高い。
【0054】
4)バインダ・ステープルファイバを使用するので、厚み300μm以下の薄膜炭素基材が製作可能である。
【0055】
5)炭素ファイバ生産ラインで規格化された酸化された形態の炭素前駆体ステープルファイバを使用するので、酸化処理工程が不要であり、原材料特性が一定している。
【0056】
6)後続工程で、不織布炭素基材の特性である三次元的な結合及び弾性を生かすことができる。
【0057】
また、本発明は、樹脂が含浸された酸化された炭素前駆体ファイバウェブを2段以上の連続ロールでローリング硬化する多段階ローリング硬化工程を介して、炭素基材を製造することによって、炭素基材の製造が連続的になされて作業性が向上し、ギャップが固定された複数対のロールによって圧縮がなされ、炭素基材の厚みが均一に維持されうる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】従来技術による炭素基材の製造方法について説明するための概略的なフローチャートである。
【図2】図1に図示された従来技術による炭素基材の製造方法をさらに詳細に図示したフローチャートである。
【図3】本発明の一側面による炭素基材の製造方法について説明するための詳細な例示的なフローチャートである。
【図4】本発明の一具現例による炭素基材の製造方法について説明するための例示的な工程別フローチャートである。
【図5】本発明による炭素基材の製造方法のうち、硬化工程及び硬化装置について説明するための細部工程別フローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態による炭素基材製造システムの例示的な構成図である。
【図7】本発明の他の実施形態による炭素基材製造システムの例示的な構成図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態による炭素基材製造システムの例示的な構成図である。
【図9】本発明の実施例と比較例とで得られた炭素基材の圧縮硬化特性を図示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、添付された図面によって、本発明の望ましい実施形態による高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造方法及びシステムについてさらに詳細に説明する。
【0060】
図3は、本発明の炭素基材の製造方法について説明するための詳細な例示的なフローチャートであり、図4は、本発明の炭素基材の製造方法について説明するための例示的な工程別フローチャートである。
【0061】
図3及び図4を参照すれば、本発明の高分子電解質型燃料電池のガス拡散層炭素基材は、炭素前駆体ステープルファイバ(staple fiber)として、酸化されたポリアクロニトリル(PAN)系ステープルファイバ、酸化されたピッチ系ステープルファイバ、酸化されたポリビニルアルコール(PVA)系ステープルファイバ、酸化されたセルロース系ステープルファイバ及び酸化されたフェノール樹脂系ステープルファイバから構成されたグループから選択されたいずれか一種または二種以上の炭素前駆体ステープルファイバを使用し、バインダ・ステープルファイバとして、例えば、PVAステープルファイバ、低融点ポリエステル・ステープルファイバ、ポリエチレン(PE)・ステープルファイバ、ポリプロピレン(PP)・ステープルファイバ、セルロース・ステープルファイバ及びピッチ・ステープルファイバから構成されたグループから選択された一種または二種以上のバインダ・ステープルファイバを原料として使用し、一般的な不織布製作工程を介して製造されうる。ただし、炭素前駆体ステープルファイバとして、酸化された形態の炭素前駆体ステープルファイバを利用するので、酸化処理工程は省略される。
【0062】
前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及びバインダ・ステープルファイバのファイバ長は、10mm−100mm、例えば、20mm−80mmまたは30mm−50mmでありうる。
【0063】
本実施形態による炭素基材の製造方法は、酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及びバインダ・ステープルファイバとして、PVAステープルファイバ、低融点ポリエステル・ステープルファイバのようなバインダ・ステープルファイバを含むプリウェブ(preweb)(酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ)を形成する酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ512の形成工程(S10)、熱硬化性樹脂と炭素フィラとを含むスラリ520に、前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ512を含浸した後で乾燥させ、酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を得る含侵工程(S20)、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510に熱と圧力とを加えることによって、熱硬化性樹脂を硬化させ、前記ウェブを圧縮する硬化工程(S30)、及び前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を炭化炉内で不活性雰囲気中で加熱し、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバを安定化及び炭化することによって、炭素基材を得る炭化工程(S41)を含む。
【0064】
前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ形成工程(S10)は、開纎機(opening machine)を利用し、塊になっている酸化された炭素前駆体ステープルファイバ、及び塊になっているバインダ・ステープルファイバを均一に混合して解きほぐす開纎段階(S11')、カーディング・マシーンを利用し、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及び前記バインダ・ステープルファイバを、平行になるように整えた後で集め、シート状の酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを形成するカーディング段階(S12')、カーディング・マシーンから吐出された前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを何層にも積層させ、所望の重量を有する酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを得るクロス・ラッピング段階(S13')、このようにクロス・ラッピングされた前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを、特殊な針を使用したニードル・パンチングによって、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及び前記バインダ・ステープルファイバを機械的に互いにからませて結合する結合段階(S14')、このように結合された前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブをカレンダリングして加熱加圧する段階(S45)、及び前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを巻き取る巻き取り段階(S15')を含むことができる。
【0065】
前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ形成工程(S10)は、前記開纎段階前に、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバと前記バインダ・ステープルファイバとを混合する混合処理段階をさらに含むことができる。
【0066】
前記バインダ・ステープルファイバの含有量は、前記プリウェブの重量を基準にして、1〜30wt%、さらに望ましくは1〜10wt%であって、融点が300℃以下、例えば、50℃以上300℃以下の熱可塑性高分子ステープルファイバでありうる。
【0067】
含浸工程(S20)は、前述の従来技術と同様になされうるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
硬化工程(S30)は、熱硬化性樹脂と炭素フィラとが含浸された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510に、熱と圧力とを加えることによって、熱硬化性樹脂を硬化させ、前記ウェブを圧縮する工程である。この工程は、予熱段階、加熱圧縮硬化段階及び冷却段階を経る多段階ローリング硬化工程(S300(図5))によってなされうる。
【0069】
炭化工程(S41)は、酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を600〜1,000℃の非活性雰囲気下で加熱し、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ、熱硬化性樹脂及びバインダ・ステープルファイバを炭化する炭化処理段階(S42)、及び1,300〜2,000℃の非活性雰囲気下で、前記炭化処理されたウェブ510を加熱することによって、炭化されて形成された炭素ファイバに黒鉛構造を誘導する黒鉛化処理段階(S44)によってなりうる。
【0070】
前記多段階ローリング硬化工程(S300)について、図5を参照しつつ詳細に説明する。図5は、本発明による炭素基材の製造方法で使われる硬化工程及び硬化装置について説明するための細部工程別フローチャートである。
【0071】
図5を参照すれば、多段階ローリング硬化工程(S300)を含む硬化工程(S30)は、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を、100〜150℃の温度で移送過程中に予熱する予熱段階(S31)、2段以上で配され、ローリング・ギャップがだんだんと狭くなるように形成されたローリング硬化部312によって、前記予熱段階(S31)を介して予熱された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を、130〜250℃の温度で圧縮硬化する連続ローリング硬化段階(S32)、及び前記連続ローリング硬化段階(S32)を介して、一定厚に圧縮硬化された酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を空気冷却する冷却段階(S33)によってなりうる。
【0072】
図5の多段階ローリング硬化工程(S300)を具現した本発明の望ましい実施例について、図6ないし図8を参照しつつ、さらに詳細に説明する。
【0073】
図6は、本発明の一実施形態による炭素基材製造システムの例示的な構成図であり、図7は、本発明の他の実施形態による炭素基材製造システムの例示的な構成図であり、図8は、本発明のさらに他の実施形態による炭素基材製造システムの例示的な構成図である。
【0074】
最初の工程である予熱段階(S31)は、100〜150℃の温度内で、互いに異なる二段階以上の温度で、順次加熱することができるように構成された予熱部311によって具現される。図6及び図8によれば、予熱部311は、移送される前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510の上下部に設けられ、前記ウェブ510の移送方向に回転するヒーティング・ベルト3111aと、ヒーティング・ベルト3111aに設けられ、ヒーティング・ベルト3111aを加熱することによって、前記ウェブ510を前記移送方向に順次加熱させる二つ以上の予熱ヒータ3112と、を具備する。このとき、前記ウェブ510は、前記ヒーティング・ベルト3111aによって、1〜10kgf/cmの圧力で圧縮される。
【0075】
または、図7を参照すれば、予熱部311は、移送される前記ウェブ510を囲み込むように形成されており、前記ウェブ510の移送方向に区画され、前記移送方向に前記ウェブ510を順次加熱する二つ以上のヒーティング室3111bと、前記ヒーティング室3111b内に備わったそれぞれの予熱ヒータ3112と、を具備する。
【0076】
二番目の工程である連続ローリング硬化段階(S32)で、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510に加えられる圧縮率は、だんだんと上昇し、前記ウェブ510に加えられる加熱温度も、互いに異なる二段階以上の温度でだんだんと上昇することによって、硬化工程が均一になされうる。予熱段階(S31)を介して予熱された前記ウェブ510は、ローリング硬化部312で、130〜250℃の温度及び300〜1,000μmのギャップを有する1番ロール部のロール間を通過し、前記ウェブ510は、引続いて130〜250℃の温度を有し、250〜600μmのギャップを有する2番ロール部のロール間を通過し、さらに130〜250℃の温度を有し、200〜400μmのギャップを有するn番ロール部のロール間を通過する方式で、少なくとも2個以上のロール部のロール間を連続的に通過しつつ、加熱及び圧縮される。
【0077】
ここで、前記ローリング硬化部312のロールの半径は、100−800mmの範囲を有し、さらに望ましくは150−500mmの半径を有し、ロールの温度は、1番ロール部ないしn番ロール部の温度が同一であるか、あるいは1番ロール部からn番ロール部への方向に、順次温度が上昇するようにセッティングされうる。
【0078】
前記ロールの温度は、130〜250℃の範囲を有するように誘導加熱、あるいは熱媒体加熱方式を使うことができ、さらに望ましくはロールの温度は、150−200℃である。
【0079】
一方、ローリング硬化部312は、図6及び図7に図示されているように、各ロール部が水平に配列されうる。または、図8に図示されているように、各ロール部3112は、垂直に配列され、この場合、垂直に設けられているロール部間には、ガイドロール3123が備わりうる。
【0080】
三番目の工程である冷却段階(S33)で、連続ローリング硬化段階(S32)で加熱された酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510は、徐々に冷却されうるように、互いに異なる二段階以上の温度で、順次冷却される。前記連続ローリング硬化段階(S32)を介して、一定厚に圧縮硬化された酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510は、この段階で、空気によって冷却されうる。このとき、冷却空気の流量を調節し、酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を冷却する方法を使用するが、反応を起こさない他種のガス成分を使用しても差し支えない。
【0081】
一方、各工程部間には、ガイドロール3110が位置し、前記ウェブ510が進み送られるようにガイドする役割を行い、このガイドロール3110の半径は、圧縮硬化された前記ウェブが切れずに連続的にローリングが可能なように決定される。
【0082】
以下、添付された図面を参照しつつ、本発明の他の側面による高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造システムについてさらに詳細に説明する。
【0083】
図4を参照すれば、本発明の高分子膜燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造システムは、酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及びバインダ・ステープルファイバを使用し、酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及びバインダ・ステープルファイバを含む酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ512を形成するプリウェブ形成装置、前記プリウェブ512を熱硬化性樹脂と炭素フィラとを含むスラリ520に含浸させた後で乾燥させ、酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を製造する含浸装置210、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510に熱と圧力とを加えることによって、前記熱硬化性樹脂を硬化させ、前記ウェブ510を圧縮する硬化装置310、及び前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を不活性雰囲気中で加熱し、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバを炭化炉(図示せず)で安定化及び炭化することによって、炭素基材を生成する炭化炉を具備する炭化装置410を含む。
【0084】
前記プリウェブ形成装置は、前記炭素前駆体ステープルファイバと前記バインダ・ステープルファイバとを混合するミキサをさらに含むことができる。
【0085】
前記プリウェブ形成装置は、塊になっている酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及び塊になっているバインダ・ステープルファイバを均一に混合して解きほぐす開纎機(opening machine)、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及びバインダ・ステープルファイバを、平行になるように整えた後で集め、シート状の酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを形成するカーディング・マシン(carding machine)、カーディング・マシンから吐出された酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを何層にも積層し、所望の重量を有する酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを生成するクロス・ラッピングマシン(cross-lapping machine)、このようにクロス・ラッピングされた酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを、特殊な針を使用したニードル・パンチングによって、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及び前記バインダ・ステープルファイバを機械的に互いにからませて結合するニードル・パンチングマシン(needle punching machine)、このように結合された前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを加熱加圧するカレンダリング・マシン(calendaring machine)、及び前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを巻き取る巻き取り装置(winding machine)を具備する。本発明による高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造システムにおいて、硬化装置310は、図5に図示されているように、予熱段階、加熱圧縮硬化段階及び冷却段階を順次遂行する多段階ローリング硬化装置310を含む。
【0086】
ここで、多段階ローリング硬化工程(S300)を遂行する硬化装置310は、図5に図示されているように、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を、100〜150℃の温度で移送過程中に予熱する予熱部311、前記予熱部311によって予熱された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を、130〜250℃の温度で圧縮硬化するように、2段以上で配され、ローリング・ギャップがだんだんと狭くなるように形成されたローリング硬化部312、及び前記ローリング硬化部312によって、一定厚に圧縮硬化された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510を空気冷却する冷却部313を具備する。
【0087】
図6及び図8を参照すれば、予熱部311は、移送される前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブ510の上下部に設けられ、前記ウェブ510の移送方向に回転するヒーティング・ベルト3111aと、ヒーティング・ベルト3111aに設けられ、ヒーティング・ベルト3111aを加熱し、前記ウェブ510を前記移送方向に順次加熱させる二つ以上の予熱ヒータ3112と、を具備する。
【0088】
または、図7に図示されているように、前記予熱部311は、移送される前記ウェブ510を囲み込むように形成されており、前記ウェブ510の移送方向に区画され、前記移送方向に前記ウェブ510を順次加熱する二つ以上のヒーティング室3111bと、前記ヒーティング室3111b内に備わったそれぞれの予熱ヒータ3112と、を具備する。
【0089】
図6及び図7に図示されているように、ローリング硬化部312は、移送される前記ウェブ510の上下に対向するように配される1対のロールからなる二つ以上の圧縮ロール部3121aを具備し、前記圧縮ロール部3121aのロールの内側と外側とのうち少なくとも一側に、ロールヒータ3122を具備し、前記二つ以上で配列される圧縮ロール部3121aが前記ウェブ510の移送方向に順次加熱されるように構成され、各圧縮ロール部3121aの1対のロール間のギャップが狭くなるように構成する。これにより、前記ウェブ510は、ローリング硬化部312の一連の圧縮ローラ部3121aを通過しつつ、一定厚に圧縮硬化される。
【0090】
または、図8に図示されているように、ローリング硬化部312は、前記ウェブ510を移送して圧縮硬化できるように、前記ウェブ510の両側面に配される1対のロールからなる圧縮ロール部3121bを二つ以上具備する。ただし、この場合、前記二つ以上の1対の圧縮ロール部3121bは、垂直に配されている。前記2つの圧縮ロール部3121b間には、次の圧縮ロール部3121bに前記ウェブ510を案内することができるガイドロール3123を備わっており、前記圧縮ロール部3121bのロールの内側と外側とのうち少なくとも一側に、ロールヒータ3122が備わっており、前記二つ以上の圧縮ロール部3121bは、前記ウェブ510の移送方向に順次加熱されるように構成されており、上下ロール間のギャップが狭くなるように構成される。これにより、前記ウェブ510は、ローリング硬化部312の一連の圧縮ローラ部3121aを通過しつつ、一定厚に圧縮硬化される。
【0091】
図6ないし図8に図示されているように、冷却部313は、前記ウェブ510の移送方向にそれぞれ隔離された二つ以上の冷却室3131を具備し、冷却室3131には、それぞれの冷却空気が供給されるように構成されることによって、加熱された前記ウェブ510は、前記冷却室3131を通過しつつ徐々に冷却される。
【0092】
以下、本発明の実施例による炭素基材と、従来技術の比較例による炭素基材との製造方法及び特性について説明する。
【実施例】
【0093】
実施例1
酸化された炭素前駆体ステープルファイバとして、炭素含有量:62%、直径:12μm、密度:1.3g/cc、巻軸レベル(crimp level):3回/cm、ファイバ長:60mmである酸化されたPANステープルファイバ(製造社:Zoltek Corporation、モデル名:PYRON(r))90wt%;バインダ・ステープルファイバとして、ファイバ長12mmであるPVAステープルファイバ(製造社:Kuraray、モデル名:Kuralon)10wt%;を均一に混合した。このステープルファイバ混合物を利用し、ファイバ混合及び開纎;カーディング;クロス・ラッピング;ニードル・パンチングによる結合;温度120℃、圧力3kgf/cmでカレンダリングする加熱加圧;巻き取り;を遂行することによって、酸化されたPANステープルファイバ90wt%及びPVAステープルファイバ10wt%からなる酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを形成した。このようにして得た酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを、図6に図示されたシステムを利用して、酸化工程なしに、含侵工程、硬化工程、及び炭化工程を遂行することによって、ガス拡散層用炭素基材を製造した。このとき、含侵工程では、酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブに、フェノール樹脂(重量平均分子量:約3,000ないし5,000、溶媒:N−メチル−2−ピロリドン)及び黒鉛粒子(製造社:Asbury Carbons 、モデル名:5991)(フェノール樹脂/黒鉛粒子重量比=50/50、混合物の総固形分含有量:およそ20重量%)を分散させたスラリを、3mg/cmの量で含浸させた。硬化工程では、約120℃のヒーティング・ベルト3111aの温度を、約130℃、約150℃及び約180℃に上昇させる3段のロール3121aを利用し、前記ウェブを乾燥及び硬化させた。冷却室3131の温度は、冷却空気で約30℃以下に調節した。炭化工程では、炭化処理は、温度約1,000℃の炭化処理炉で、注入速度10l/minの窒素あるいはアルゴンを入れつつ30分間処理し、黒鉛化処理は、温度約2,000℃の黒鉛化処理炉で、注入速度10l/minの窒素あるいはアルゴンを入れつつ30分間処理し、表1の実施例1に記載されているような特性を有する炭素基材を得た。前記含侵工程、硬化工程及び炭化工程で、前記ウェブの進行速度は、約3m/minであった。
【0094】
実施例2
酸化された炭素前駆体ステープルファイバとして、前記酸化されたPANステープルファイバ70wt%;バインダ・ステープルファイバとして、前記PVAステープルファイバ30wt%;を使用したことを除いては、実施例1に説明した方法と同じ方法を利用し、表1の実施例2に記載されているような特性を有する炭素基材を得た。
【0095】
実施例3
酸化された炭素前駆体ステープルファイバとして、前記酸化されたPANステープルファイバの含有量90wt%;バインダ・ステープルファイバとして、融点130℃の低融点ポリエステル(LM)ステープルファイバ(製造社:KPケミカル、製品名:PAPET)10wt%;を使用したことを除いては、実施例1に説明した方法と同じ方法を利用し、表1の実施例3に記載されているような特性を有する炭素基材を得た。
【0096】
比較例
炭素前駆体ステープルファイバとして、直径:50〜60μm、引っ張り強度:10g/d、切断強度:2.2g/dのPANステープルファイバ(製造社:Bluestar、モデル名:Tow 320K)100wt%を使用して炭素前駆体ファイバ・プリウェブを形成し、また、炭素基材製造工程で、含侵工程、硬化工程及び炭化工程を遂行する以前に、温度300〜400℃、空気雰囲気下で、前記炭素前駆体ファイバ・プリウェブを1時間酸化させたことを除いては、実施例1に説明した方法と同じ方法を利用し、表1の比較例に記載されているような特性を有する炭素基材を得た。
【0097】
【表1】

【0098】
表1で、空隙率は、ASTM D4404で規定された条件及び方法による数は、注入法(mercury intrusion porosimetry)によって測定された。電気抵抗(in-plane)と電気抵抗(thru-plane)は、ASTM C611に規定された条件及び方法によって測定された。圧縮率は、ASTM D645に規定された条件及び方法によって測定された。反り角度は、bending stiffnessの尺度であり、ASTM D5650に規定された条件及び方法によって測定された。
【0099】
このように得られた本発明の実施例1,2と比較例との炭素基材の圧縮率は、図9に図示されている。図9に図示されているように、炭素基材の圧縮率は、本発明の実施例が比較例に比べて優秀であるということが分かる。
【0100】
これにより、酸化処理工程を省略して、多段階ローリング硬化工程を採択する本発明の炭素基材の製造方法とシステムとを利用すれば、従来の炭素基材の製造方法とシステムとに比べて、製品の偏差及び低い工程性を解決することができる。
【0101】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野で当業者であるならば、本発明の本質的な特性から外れない範囲で、多様な修正及び変形が可能であろう。従って、本発明に開示された実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、かような実施例によって、本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって解釈されるものであり、それと同等な範囲内にあるあらゆる技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものであると解釈されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材、及びその製造方法及びシステムは、燃料電池に利用される炭素基材の製造に利用される。
【符号の説明】
【0103】
210 含浸装置
310 硬化装置
3110 ガイドロール
311 予熱部
3111a ヒーティング・ベルト
3111b ヒーティング室
3112 予熱ヒータ
312 ローリング硬化部
3121a 圧縮ロール部(水平配列型)
3121b 圧縮ロール部(垂直配列型)
3122 ロールヒータ
3123 ガイドロール
313 冷却部
3131 冷却室
410 炭化装置
510 酸化された炭素前駆体ファイバウェブ
512 プリウェブ
520 スラリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質型燃料電池のガス拡散層炭素基材の製造方法において、
酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及びバインダ・ステープルファイバを含むプリウェブを形成する酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ形成工程と、
熱硬化性樹脂と炭素フィラとを含むスラリ中に前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを含浸した後で乾燥して、酸化された炭素前駆体ファイバウェブを得る含侵工程と、
前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブに、熱と圧力とを加えることによって、前記熱硬化性樹脂を硬化させ、前記ウェブを圧縮する硬化工程と、
前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを不活性雰囲気中で加熱し、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバを安定化及び炭化することによって、炭素基材を得る炭化工程と、を含む製造方法。
【請求項2】
前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブ形成工程は、開纎機を利用し、塊になっている酸化された炭素前駆体ステープルファイバ、及び塊になっているバインダ・ステープルファイバを均一に混合して解きほぐす開纎段階と、
カーディング・マシーンを利用し、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及び前記バインダ・ステープルファイバを、平行になるように整えた後で集め、シート状の酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを形成するカーディング段階と、
カーディング・マシーンから吐出される前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを何層にも積層させ、所望の重量を有する前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを得るクロス・ラッピングの段階と、
前記クロス・ラッピングした前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを、特殊な針を使用したニードル・パンチングによって、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及び前記バインダ・ステープルファイバを機械的に互いにからませて結合する段階と、
前記結合した前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブをカレンダリングして、加熱加圧する段階と、
前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを巻き取る巻き取り段階と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記バインダ・ステープルファイバは、前記プリウェブの重量を基準にして、1〜30w%の含有量で300℃以下の融点を有する熱可塑性高分子からなることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記硬化工程は、予熱段階、加熱圧縮硬化段階及び冷却段階を含む多段階ローリング硬化工程によってなされることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記多段階ローリング硬化工程は、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを、100〜150℃の温度で移送過程中に予熱する予熱段階と、
ローリング・ギャップがだんだんと狭くなるように形成された2対以上のロールを備えるローリング硬化部によって、前記予熱段階を介して予熱された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを移送する過程で、130〜250℃の温度で圧縮硬化する連続ローリング硬化段階と、
前記連続ローリング硬化段階を介して、一定厚に圧縮硬化された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを空気冷却する冷却段階と、を含むことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記予熱段階は、100〜150℃の温度内で互いに異なる二段階以上の温度で、順次加熱される方式によってなされることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記連続ローリング硬化段階で、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブは、130〜250℃の温度を有し、300〜1,000μmのギャップを有する1番ロール部のロール間を通過し、次に、130〜250℃の温度を有し、250〜600μmのギャップを有する2番ロール部のロール間を通過し、さらに130〜250℃の温度を有し、200〜400μmのギャップを有するn番(nは、3以上10以下の自然数)ロール部のロール間を通過する方式で、少なくとも2個以上のロール部のロール間を連続的に通過しつつ、加熱及び圧縮されることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記冷却段階は、前記連続ローリング硬化段階で加熱された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブが徐々に冷却されうるように、二段階以上の温度で、順次冷却される方式によってなされることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記炭化工程は、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを600〜1,000℃の非活性雰囲気下で加熱し、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ、熱硬化性樹脂及びバインダ・ステープルファイバを炭化する炭化処理段階と、
1,300〜2,000℃の非活性雰囲気下で、前記炭化処理されたウェブを加熱することによって、炭化されて形成された炭素ファイバに黒鉛構造を誘導する黒鉛化処理段階と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバは、酸化されたポリアクロニトリル(PAN)系ステープルファイバ、酸化されたピッチ系ステープルファイバ、酸化されたポリビニルアルコール(PVA)系ステープルファイバ、酸化されたセルロース系ステープルファイバ及び酸化されたフェノール樹脂系ステープルファイバから構成されたグループから選択された一種または二種以上の組み合わせであり、前記バインダ・ステープルファイバは、PVAステープルファイバ、低融点ポリエステル・ステープルファイバ、ポリビニルアルコール(PE)ステープルファイバ、ポリプロピレン(PP)ステープルファイバ、セルロース・ステープルファイバ、及びピッチ・ステープルファイバから構成されたグループから選択された一種または二種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のうち、いずれか1項に記載の高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造方法によって製造された高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材。
【請求項12】
高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用炭素基材の製造システムであって、
酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及びバインダ・ステープルファイバを使用し、酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及びバインダ・ステープルファイバを含む酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを形成するプリウェブ形成装置と、
前記プリウェブを、熱硬化性樹脂と炭素フィラとを含むスラリに含浸させた後で乾燥させ、酸化された炭素前駆体ファイバウェブを製造する含浸装置と、
前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブに、熱と圧力とを加えることによって、熱硬化性樹脂を硬化させ、前記ウェブを圧縮する硬化装置と、
前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを不活性雰囲気中で加熱し、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバを安定化及び炭化することによって、炭素基材を生成する炭化炉を具備した炭化装置と、を含む製造システム。
【請求項13】
前記プリウェブ形成装置は、塊になっている酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及び塊になっているバインダ・ステープルファイバを均一に混合して解きほぐす開纎機と、
前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及び前記バインダ・ステープルファイバを平行に整えた後で集め、シート状の酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを形成するカーディング・マシンと、
カーディング・マシーンから吐出された前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを何層にも積層し、所望の重量を有する酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを生成するクロス・ラッピングマシンと、
このようにクロス・ラッピングされた前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを、ニードル・パンチングによって、前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ及び前記バインダ・ステープルファイバを機械的に互いにからませて結合するニードル・パンチングマシンと、
このように結合された酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを加熱加圧するカレンダリング・マシンと、
前記酸化された炭素前駆体ファイバ・プリウェブを巻き取る巻き取り装置と、を具備することを特徴とする請求項12に記載の製造システム。
【請求項14】
前記硬化装置は、予熱段階、圧縮硬化段階及び冷却段階を順次遂行する多段階ローリング硬化装置であることを特徴とする請求項12に記載の製造システム。
【請求項15】
前記多段階ローリング硬化装置は、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを、100〜150℃の温度で移送過程中に予熱する予熱部と、
前記予熱部によって予熱された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを移送する過程で、130〜250℃の温度で圧縮硬化するように、ローリング・ギャップがだんだんと狭くなるように形成された2対以上のロールを備えるローリング硬化部と、
前記ローリング硬化部によって一定厚に圧縮硬化された前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを空気冷却する冷却部と、を具備することを特徴とする請求項14に記載の製造システム。
【請求項16】
前記予熱部は、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブの上下部に設けられ、前記ウェブの移送方向に回転するヒーティング・ベルトと、前記ヒーティング・ベルトに設けられ、ヒーティング・ベルトを加熱し、前記ウェブを前記移送方向に順次加熱させる二つ以上の予熱ヒータと、を具備することを特徴とする請求項15に記載の製造システム。
【請求項17】
前記予熱部は、移送される前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを囲み込むように形成されており、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブの移送方向に区画され、前記移送方向に前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを順次加熱する二つ以上のヒーティング室と、前記ヒーティング室内に備わったそれぞれの予熱ヒータと、を具備することを特徴とする請求項15に記載の製造システム。
【請求項18】
前記ローリング硬化部は、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェルを移送して圧縮硬化することができる前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブの上下に対向するように配される1対のロールからなる二つ以上の圧縮ロール部を具備し、前記二つ以上の1対の圧縮ローラ部は水平に配され、前記圧縮ロール部のロールの内側と外側とのうち少なくとも一側に、ロールヒータを具備し、前記二つ以上で配列される圧縮ロール部の加熱温度が、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブの移送方向に順次上昇するようにセッティングされ、前記二つ以上の1対の圧縮ロール部の各上下ロール間のギャップは、前記ウェブの移送方向にだんだんと狭くなるようにセッティングされうることを特徴とする請求項15に記載の製造システム。
【請求項19】
前記ローリング硬化部は、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを移送して圧縮硬化することができるように、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブの両側面に配される1対のロールからなる圧縮ロール部を二つ以上具備し、前記二つ以上の1対の圧縮ロール部は垂直に配されており、前記2つの圧縮ロール部の間には、次の圧縮ロール部に、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブを案内するガイドロールが備わっており、前記圧縮ロール部のロールの内側と外側とのうち少なくとも一側に、ロールヒータを具備し、前記二つ以上の圧縮ロール部の加熱温度が、前記ウェブの移送方向に順次上昇するようにセッティングされ、前記二つ以上の1対の圧縮ロール部の各上下ロール間のギャップは、前記ウェブの移送方向にだんだんと狭くなるようにセッティングされうることを特徴とする請求項15に記載の製造システム。
【請求項20】
前記冷却部は、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブの移送方向にそれぞれ隔離された二つ以上の冷却室を具備し、前記冷却室では、それぞれの冷却空気が供給されるように構成されることによって、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブは、前記冷却室を通過しつつ徐々に冷却されうることを特徴とする請求項15に記載の製造システム。
【請求項21】
前記炭化装置は、前記酸化された炭素前駆体ファイバウェブの前記酸化された炭素前駆体ステープルファイバ、熱硬化性樹脂及びバインダ・ステープルファイバを、600〜1,000℃の非活性雰囲気下で炭化する炭化処理炉、及び1,300〜2,000℃の非活性雰囲気下で、前記炭化処理されたウェブを加熱することによって、前記炭化処理によって形成された炭素ファイバに黒鉛構造を形成する黒鉛化処理炉を具備することを特徴とする請求項12に記載の製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−243578(P2011−243578A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114082(P2011−114082)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(511123946)株式会社協進 アイアンドシー (1)
【Fターム(参考)】