説明

高効率な電磁波インターフェース装置と電磁波伝送システム

【課題】高効率かつ安全に、電磁波伝送シートとの間で電磁波の入出力をすることが可能な電磁波インターフェース装置と電磁波伝送システムとを提供することを目的とする。
【解決手段】第一電極と、第一電極と対向する第二電極と、第一電極と第二電極との間に配置された誘電体と、を備える給電部と、第二電極と、第一電極の第二電極と異なる側に対向して配置された第三電極と、の間に電磁波伝送シートの辺縁部を挟むクリップ部とを備え、給電部において、第一電極と第二電極とに給電される電磁波インターフェース装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を伝送するシート状の電磁波伝送媒体に電磁波を入出力する高効率な電磁波インターフェース装置とその電磁波伝送システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対向する導電性シート体に挟まれる狭間領域に電磁場を存在させ、2つの導電性シート体の間の電圧を変化させて電磁場を変化させたり、また電磁場の変化によって導電性シート体の間の電圧を変化させたりして、電磁場を所望の方向に進行させることで、電磁波伝送を行う技術が提案されている。このような電磁波の伝送技術により、電磁波を媒体とする通信や電力伝送が可能となる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、メッシュ状の導体部と、シート状の導体部と、に挟まれる狭間領域とメッシュ状の導体部側外側の浸出領域とにおいて電磁場を変化させて、電磁波インターフェース装置を介して信号を伝送する電磁波伝送シートを備える信号伝送システムが提案されている。
【0004】
これによれば、メッシュ状の第1導体部の外面側近傍の電磁場の変化を介して電磁波インターフェース装置と通信する。また、電磁波伝送シートの第1導体部の外側近傍の電磁場は、第1導体部と第2導体部との間の電磁場にともなって変化する。また、第一導体部の上に載置された電磁波インターフェース装置において、その第1電極と第2電極との間の電圧は、第1導体部の外側近傍の電磁場にともなって変化する。従って、通信装置における当該電圧の変化と、電磁波伝送シートにおける当該電磁場の変化とによって、両者の間で電磁波インターフェース装置を介した通信が可能な電磁波伝送シートとできる。
【0005】
また、特許文献1には、シート状の電磁波伝送シートに電磁波を入出力するインターフェースとして、電磁波伝送シートの上面に載置する円盤形の形状を有する電磁波インターフェース装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−82178
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の電磁波インターフェース装置は、電磁波の漏洩低減や損失低減の観点から充分であるとはいえず、電磁波伝送シートとの間で高効率に電磁波を入出力するために改善の余地が残されていた。
【0008】
電磁波インターフェース装置と電磁波伝送シートとの入出力時に電磁波の漏洩が増大すると、他の電子機器や人体への悪影響が懸念される。また、電磁波インターフェース装置と電磁波伝送シートとの入出力時に電磁波の損失が増大すると、無駄な電力消費や予期せぬ発熱を生じる一因となる。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、高効率かつ安全に電磁波伝送シートとの間で電磁波の入出力をすることが可能な電磁波インターフェース装置と、それを用いた電磁波伝送システムとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる電磁波インターフェース装置は、第一電極と、第一電極と対向する第二電極と、第一電極と第二電極との間に配置された誘電体と、を備える給電部と、第二電極と、第一電極の第二電極と異なる側に対向して配置された第三電極と、の間に電磁波伝送シートの辺縁部を挟むクリップ部とを備え、給電部において、第一電極と第二電極とに給電されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる電磁波インターフェース装置は、好ましくはクリップ部で電磁波伝送シートの辺縁部を挟んだ場合に、クリップ部における第二電極と第三電極との間隔が、給電部における第一電極と第二電極との間隔よりも、電磁波伝送シートの二つの導電体層の厚さ合計と、導電体層の外面側の保護層の厚さ合計と、の和に相当する間隔だけ大きいことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる電磁波インターフェース装置は、さらに好ましくはクリップ部で電磁波伝送シートの辺縁部を挟んだ場合に、電磁波伝送シートと電磁波インターフェース装置の誘電体との当接部において、第一電極と、電磁波伝送シートの二つの導電体層のうちいずれか一方の導電体層と、が内面側において一平面であり、第一電極と第二電極との間隔は、電磁波伝送シートの二つの導電体層の間隔に略等しくてもよい。
【0013】
また、本発明にかかる電磁波インターフェース装置は、さらに好ましくは第二電極が、給電部とクリップ部との間に、電磁波伝送シートの二つの導電体層のうち少なくともいずれか一方の導電体層の厚さと、該一方の導電体層に設けられた保護層の厚さと、の和に相当する段差を有してもよい。
【0014】
また、本発明にかかる電磁波インターフェース装置は、さらに好ましくはクリップ部で電磁波伝送シートの辺縁部を挟んだ状態で誘電体が露出しないように、電磁波インターフェース装置の端面は、誘電体を被覆する被覆導電体で覆われるとともに、電磁波インターフェース装置の端面において電磁波が反射されるように、被覆導電体は、第二電極と第三電極とに電気的に接続されてもよい。
【0015】
また、本発明にかかる電磁波インターフェース装置は、さらに好ましくは給電部において、給電方向に垂直な方向における第二電極の幅と第三電極の幅とは、給電部から給電される電磁波の波長の略1/2の長さであってもよい。
【0016】
また、本発明にかかる電磁波伝送システムは、上述の電磁波インターフェース装置と、該電磁波インターフェース装置を嵌合させた場合に、その誘電体と厚さ及び配置において整合する誘電体層を備える電磁波伝送シートと、を嵌合させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
高効率かつ安全に、電磁波伝送シートとの間で電磁波の入出力をすることが可能な電磁波インターフェース装置と、それを用いた電磁波伝送システムとを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかる電磁波インターフェース装置の概要を説明する模式図である。
【図2】本発明の第一の実施形態にかかる電磁波インターフェース装置の概要を説明する側面図である。
【図3】電磁波伝送シートの概要構成を説明する模式図である。
【図4】本発明の第二の実施形態にかかる電磁波インターフェース装置の概要を説明する模式図である。
【図5】図5(a)が電磁波インターフェース装置の正面図であり、図5(b)が電磁波インターフェース装置の平面図であり、図5(c)が電磁波インターフェース装置の側面図である。
【図6】シミュレーションで使用した電磁波伝送シートに電磁波インターフェース装置を嵌合させた状態を説明する平面図である。
【図7】シミュレーションに用いた電磁波インターフェース装置と電磁波伝送シートとの各パラメータを示す図である。
【図8】5.8ギガヘルツ帯における電磁波インターフェース装置の給電点からみたリターンロスS11の計算結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施形態で説明する電磁波インターフェース装置は、電磁波伝送シートの辺縁部を挟み込んで固定されるクリップ部と、同軸ケーブル等から給電される給電部とを備える。電磁波インターフェース装置の給電部は、対向するシート状の電極間に挟持された誘電体を備える。対向するシート状の電極間に挟持された誘電体は、電磁波の伝送を実質的に担うものである。
【0020】
また、電磁波インターフェース装置における対向するシート状の電極間に挟持された誘電体の厚さと、電磁波伝送シートにおける電磁波の伝送を実質的に担う誘電体層の厚さと、は略等しい。すなわち、電磁波インターフェース装置の誘電体を挟んで対向するシート状の一対の電極間の距離は、電磁波伝送シートの一対の導電体層、典型的にはメッシュ層と導電体層、との間の距離に略等しい。
【0021】
また、電磁波インターフェース装置と電磁波伝送シートとが嵌合した場合に、電磁波インターフェース装置の対向するシート状の一対の電極の内側面は、各々電磁波伝送シートのメッシュ層の内側面と導電体層の内側面と面一(一平面)となる。これにより、電磁波インターフェース装置内の電磁波は、反射や損失が低減されてスムースに電磁波伝送シートへと伝送されることとなる。
【0022】
また、電磁波インターフェース装置は、上述した対向するシート状の一対の電極に加え、電磁波伝送シートにより定まる所定の距離だけ、対向するシート状の一対の電極のいずれか一方から外側に設けられた他の電極を備える。電磁波伝送シートにより定まる所定の距離とは、電磁波伝送シートのメッシュ層の厚みとメッシュ層の外側面に設けられた保護層の厚さとの和に相当する距離である。また、他の電極は、クリップ部において電磁波伝送シートを挟み込む場合の一つの電極となる。
【0023】
また、電磁波インターフェース装置が備える対向するシート状の一対の電極のうち外側面側に他の電極が設けられていない一方の電極は、クリップ部において、電磁波伝送シートにより定まる所定の長さだけ、給電部より外側に広がるような段差を有する。電磁波伝送シートにより定まる所定の長さとは、電磁波伝送シートの導電体層の厚みと導電体層の外側面に設けられた保護層の厚さとの和に相当する長さである。
【0024】
これにより、電磁波伝送シートのメッシュ層と導電体層とが無視できない厚さを有する場合や、それらに各々保護層が設けられている場合であっても、電磁波インターフェース装置と電磁波伝送シートとが嵌合した場合に、電磁波インターフェース装置の誘電体が電磁波伝送シートの誘電体層と整合することが可能となる。電磁波インターフェース装置の誘電体が電磁波伝送シートの誘電体層と整合することで、低損失な電磁波伝送が可能な電磁波インターフェース装置とできる。
【0025】
また、電磁波インターフェース装置は、電磁波伝送シートに嵌合した場合に誘電体が露出しないように(典型的には外側から誘電体が見えないように)、電磁波インターフェース装置の端面に電磁波を反射する処理が施されている。より具体的には、電磁波インターフェース装置は、その端面において、外側面に位置する二つの電極が電気的に接続される。このため、端部からの電磁波の漏洩が低減された電磁波インターフェース装置とできる。
【0026】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる電磁波インターフェース装置100の概要を説明する模式図である。図1において、電磁波インターフェース装置100は、不図示の同軸ケーブルやSMAコネクタ等から電磁波が給電される給電部160と、不図示の電磁波伝送シートを挟み込むクリップ部150とを備える。
【0027】
電磁波インターフェース装置100は、クリップ部150と給電部160との図1における上面全体を覆う薄い板状の第三電極110を備える。また、電磁波インターフェース装置100は、クリップ部150と給電部160との図1における下面全体を覆う薄い板状の第二電極120を備える。
【0028】
また、給電部160において、第三電極110と第二電極120との間に配置された誘電体140を備える。また、誘電体140の中には、第三電極110に近接してシート状の第一電極270が埋め込むように配置されている。
【0029】
電磁波インターフェース装置100の第一電極270と第二電極120と第三電極110とは、互いに対向しておりかつ互いに略平行である。また、電磁波インターフェース装置100は、不図示の同軸ケーブルやSMAコネクタ等から、給電部160の第一電極270と第二電極120とに電磁波が給電される。給電に用いるコネクタは、同軸ケーブルやSMAコネクタに限られず、他の高周波コネクタを用いてもよい。
【0030】
また、不図示の電磁波伝送シートは、クリップ部150に挟み込まれて誘電体140に当接するまで挿入される。すなわち、不図示の電磁波伝送シートは、電磁波インターフェース装置100の第三電極110と第二電極120との間に嵌合される。この場合に、クリップ部150が適度な嵌合保持強度を生じるように、電磁波伝送シートが、第三電極110と第二電極120との間を押し広げながら挟み込まれるようにしてもよい。
【0031】
また、不図示の電磁波伝送シートを誘電体140に当接するまで第三電極110と第二電極120との間に挿入した場合に、誘電体140は不図示の電磁波伝送シートの誘電体層と厚さ及び配置において整合する。これにより、誘電体140と、不図示の電磁波伝送シートの誘電体層と、は電磁波の波長からみて一つの連続したいわば導波路を形成する。
【0032】
ところで、不図示の電磁波伝送シートは、二つの導電体層を備えるとともに、各導電体層の外側に配置される保護層を備える場合がある。電磁波インターフェース装置100の第二電極120は、給電部160とクリップ部150との間に、電磁波伝送シートにより定まる所定の高さの段差180を備える。段差180の高さは、第二電極120に対応する導電体層の厚さと、その保護層の厚さと、の和に相当する。段差180により、電磁波伝送シートの底面側に電磁波が漏れることを抑制できる。また、導電体層の厚さを実質的に無視できる程度とすれば、段差180の高さは保護層の厚さと同一としてもよい。
【0033】
このため、導電体層の厚さと保護層の厚さとの和が無視できない程度の厚さである場合でも、クリップ部150において電磁波伝送シートの保護層の外側面と当接する第二電極120は、給電部160においてその内側面が導電体層の内側面と面一となる。
【0034】
すなわち、段差180により、電磁波伝送シートが電磁波インターフェース装置100に嵌め込まれた場合に、電磁波伝送シートが誘電体140に当接する箇所において、誘電体140と第二電極120との境界面と、不図示の電磁波伝送シートの第二電極120に対応する導電体層と誘電体層との境界面と、が面一に揃うこととなる。
【0035】
また、第三電極110に近接して誘電体140の中に埋め込まれた第一電極270により、不図示の電磁波伝送シートが電磁波インターフェース装置100に嵌め込まれた場合に、電磁波伝送シートが誘電体140に当接する箇所において、誘電体140と第一電極270との境界面と、不図示の電磁波伝送シートの第一電極270に対応する導電体層と誘電体層との境界面と、が面一に揃うこととなる。
【0036】
また、電磁波インターフェース装置100の給電部160の三つの端面は、被覆導電体130で完全に覆われている。このため、被覆導電体130として例えば金属を用いると、不図示の電磁波伝送シートが電磁波インターフェース装置100に嵌合する場合に、誘電体140を外部から視認することはできない。
【0037】
すなわち、不図示の電磁波伝送シートが電磁波インターフェース装置100に嵌合する場合に、誘電体140は外部への露出が完全に遮断されて、電磁波が電磁波インターフェース装置100の端部から漏洩することが抑制される。これにより、誘電体140内を伝送される電磁波は、不図示の電磁波伝送シートへの導波路を除いてその進路が制限される。
【0038】
また、被覆導電体130は、第三電極110と第二電極120とに電気的に接続される一方、第一電極270とは電気的に接続されない。このため、第一電極270と第二電極120とに給電された誘電体140内の電磁波は、電磁波インターフェース装置100の端部に設けられた被覆導電体130で反射されることとなり、端部からの電磁波の漏洩や損失を低減できることとなる。
【0039】
図2は、電磁波インターフェース装置100の概要を説明する側面図である。図2においては、図1と同一の部位には同一の符号を伏して、説明の重複を避けるためにその説明を省略する。図2に示すように、同軸ケーブル210の外部導体220は、電磁波インターフェース装置100の給電部160において、第二電極120に電気的に接続される。また、同軸ケーブル210の内部導体230は、電磁波インターフェース装置100の給電部160において、第一電極270に電気的に接続される。なお、235は給電点であり、給電は図2における下方からに限定されず、右側や上方等任意の方向から電磁波インターフェース装置100にコネクタを接続してもよい。
【0040】
電磁波インターフェース装置100は、第一電極270と第二電極120との間に配置された厚さDの誘電体140が、電磁波を伝送する機能を有する。誘電体140の厚さDは、クリップ部150において不図示の電磁波伝送シートを挟み込んだ場合に、電磁波伝送シートの二つの導電体層間の距離、すなわち電磁波伝送シートの誘電体層の厚さ、と同一である。また、電磁波インターフェース装置100における誘電体140の配置(図2における上下方向配置位置)は、クリップ部150において不図示の電磁波伝送シートを挟み込んだ場合に、電磁波伝送シートの誘電体層の配置と一致する。
【0041】
また、図2において第一電極270は、その内側面(図2における下側面)と第三電極110とが、電磁波伝送シートにより定まる距離Dだけ離間するように、第三電極110に対向して給電部160に配置される。第三電極110と第一電極270との間は、誘電体140と同一の物質であってもよい。また、第三電極110と第一電極270との間に、距離Dに対応する厚さを有する樹脂性のスペーサを配置してもよい。
【0042】
第一電極270が第三電極110と距離Dだけ離間して給電部160に配置されることにより、不図示の電磁波伝送シートをクリップ部150で挟み込んだ場合に、第一電極270の内側面と、第一電極270に対応する電磁波伝送シートの導電体層の下側面と、の間での段差がなく面一に整合することとなる。すなわち、クリップ部150に嵌合する電磁波伝送シートにより定まる距離Dは、電磁波伝送シートの上面から上面側導電体層の底面までの距離に対応する。
【0043】
また、図2に示すように第二電極120は、給電部160とクリップ部150との間に、段差180を有する。段差180の高さDは、不図示の電磁波伝送シートの底面から底面側導電体層の上面までの距離に対応する。
【0044】
図2に示すように高さDの段差180により、不図示の電磁波伝送シートをクリップ部150で挟み込んだ場合に、給電部160における第二電極120の上面と、電磁波伝送シートの第二電極120に対応する導電体層の上面と、の間での段差がなく面一に整合することとなる。また、段差180は、第二電極120の内面側(誘電体140側)にあればよく、第二電極120の底面側(図2の下面側)の形状を限定するものではない。
【0045】
なお、電磁波インターフェース装置100の段差180は、矩形状であってもよいしスロープ状や階段状等任意の形状に形成してもよい。また、電磁波インターフェース装置100の段差180は、電磁波インターフェース装置100に嵌合させる電磁波伝送シートの嵌合部形状に整合する任意形状としてもよい。
【0046】
電磁波インターフェース装置100は、電磁波伝送シートをクリップ部150で挟み込んだ場合に、電磁波インターフェース装置100と電磁波伝送シートとの接続部分において電磁波を伝送する導波路に段差や空隙がなく、滑らかかつ連続した導波路となる。また、電磁波インターフェース装置100の端部は第一電極270と電気的に絶縁された被覆導電体130で覆われているので、誘電体140が大気に暴露されることがなく、誘電体140から大気中への電磁波の漏洩を抑制できる。
【0047】
被覆導電体130は、第二電極120と第三電極110と電気的に接続されるので、電磁波インターフェース装置100の端部において電磁波を反射する。従って、電磁波インターフェース装置100は、高効率かつ安全に電磁波伝送シートと電磁波の入出力をすることが可能である。
【0048】
ここで、電磁波インターフェース装置100と嵌合する電磁波伝送シートについて簡略に説明する。図3は、電磁波伝送シート301の概要構成を説明する模式図である。図3(a)が電磁波伝送シート301の平面図であり、図3(b)が電磁波伝送シート301のX−X´断面図である。図3に示すように、電磁波伝送シート301は、メッシュ状の導電体311を含む第一導電体層370と、これに略平行な平板状の第二導電体層321と、を備えている。
【0049】
電磁波伝送シート301は、第一導電体層370と第二導電体層321との間に、狭間領域331を備え、第一導電体層370の外側(図3(b)において上側)に、第一保護層360を備える。なお、第一保護層360の外側には電磁波が進出する浸出領域341があってもよい。第一保護層360は必ずしも必要ではないが、第一保護層360を備えることにより、第一導電体層370が大気や水分等に暴露されることを防止するので、電磁波伝送シート301の耐久性や信頼性を向上させることができる。
【0050】
また、電磁波伝送シート301は、第二導電体層321の外側(図3(b)において下側)に、第二保護層350を備える。第二保護層350は必ずしも必要ではないが、第二保護層350を備えることにより、第二導電体層321が大気や水分等に暴露されることを防止するので、電磁波伝送シート301の耐久性や信頼性を向上させることができる。
【0051】
また、メッシュ状の導電体311のメッシュ間隔を小さくすれば、浸出領域341を低減させて電磁波伝送シート301からの漏洩電磁波を抑制することが可能である。一方で、メッシュ状の導電体311のメッシュ間隔を小さくすれば、第一保護層360の上部に載置するタイプの電磁波インターフェース装置との間で、電磁波の入出力効率が低下することとなる。このため、全体として損失を低減した電磁波伝送を実現する電磁波伝送システムとするためには、メッシュ状の導電体311のメッシュ間隔を比較的小さくすると共に、クリップタイプの電磁波インターフェース装置を用いることが好ましい。
【0052】
なお、図3において、第一導電体層370は、正方形のメッシュ状の導電体311で形成されており、狭間領域331に充填される誘電体が透明である場合には、導電体311の正方形空間部から第二導電体層321が透けて見える。また、第一導電体層370において、メッシュ状の導電体311が存在する部分(すなわち配線部分)を除く正方形のメッシュ空間部には、狭間領域331に充填される誘電体と同一の誘電体を充填してもよいし、第一保護層360と同一の樹脂等を充填してもよい。
【0053】
また、メッシュ状の導電体311において、メッシュの繰り返し単位(すなわちメッシュ間隔)は、横に隣り合う正方形の中心同士の距離に等しい。狭間領域331と浸出領域341とは、いずれも気体としてもよく、いずれか一方もしくは両方もしくはそれらの一部分を、各種の誘電体としたり液体としたり真空としたりしてもよい。
【0054】
第一導電体層370と第二導電体層321の外形は、いずれもシート状(布状、紙状、箔状、板状、膜状、フィルム状、メッシュ状など、面として一定の広がりを有し厚さが薄いもの)である。
【0055】
従って、たとえば、部屋の壁を本実施形態の電磁波伝送シート301とする場合には、まず第二導電体層321として金属箔を壁に貼り付け、つぎに絶縁体を吹き付けてから、第一導電体層370として金属の網を貼り付け、さらに絶縁体の壁紙を貼り付ければよい。このように形成した電磁波伝送シート301は、電磁波伝送シート301に開けたスルーホールの辺縁部に電磁波インターフェース装置をクリップ固定して、電磁波の入出力を可能としてもよい。
【0056】
また、導電性インクや導電性ゴムを利用し、必要に応じて適宜模様を描きながらこれらを塗装したり吹き付けたりすることによって、第一導電体層370や第二導電体層321を形成することができる。
【0057】
上述のように、電磁波伝送シート301において、第一導電体層370と第二導電体層321とに挟まれる狭間領域331を伝播する電磁波モードについて以下簡単に説明する。仮に、第一導電体層370がメッシュ状の導電体311ではなく、薄い板状の導電体等から形成されており開孔がない構造である場合には、電磁波は狭間領域331内に完全に閉じ込められる。
【0058】
一方、図3に示す第一導電体層370は、メッシュ状の導電体311を有するので、導電体311の開孔部分がある。このようなメッシュ形状では、メッシュの間隔と同程度の高さにまで、電磁場が染み出すことが知られている。
【0059】
ここで、メッシュの繰り返しの単位寸法、すなわちメッシュ間隔は、狭間領域331における電磁波の波長より十分に短いことが好ましい。典型的には、電磁波の波長λに対して、λ/5以下、好ましくはλ/10〜λ/100、さらに好ましくはλ/100〜λ/1000などのメッシュ間隔を有する導電体311を利用することができる。
【0060】
しかし、電磁波伝送シート301の適用分野に応じて、適宜メッシュ間隔を変更してもよい。また、現実の素材を適宜組み合わせて実験やシミュレーションを行い、所望の電磁波の強度や効率となるようにメッシュ間隔を適宜設計してもよい。浸出領域341においては、第一導電体層370の表面から外側(図3(b)における上方)への距離に応じて、指数関数的に電磁波の強度が減衰する。
【0061】
また、電磁波伝送シート301を2つ用意して、それぞれ浸出領域341が重なるように配置すれば、2つの電磁波伝送シート301の間で、電磁場を介した電力や情報の伝送を行うことが可能となる。たとえば、一方の電磁波伝送シート301を、部屋の壁紙として壁面に貼り付け、他方の電磁波伝送シート301を、この「壁紙」を介した電磁波伝送を行うためのインターフェース装置やコネクタの一種として利用してもよい。
【0062】
この場合、それぞれの電磁波伝送シート301のメッシュの間隔や形状は、互いに異なるものとしてもよいし、同一としてもよい。このほか、一方の電磁波伝送シート301には第1の電磁波インターフェース装置や通信機器を有線結合もしくは近接結合により接続し、他方の電磁波伝送シート301には第2の電磁波インターフェース装置や通信機器を有線結合もしくは近接結合により接続してもよい。
【0063】
そして、2つの電磁波伝送シート301の浸出領域341を重ねれば、第1の電磁波インターフェース装置や通信機器と、第2の電磁波インターフェース装置や通信機器と、の間で、電力や情報を伝送することが可能となる。なお、電磁波による電力伝送をする場合には、比較的大きなエネルギーが伝送されることとなるので、特に電磁波の漏洩や安全性、損失の低減に対する配慮や施策が必要となる。
【0064】
図3(b)において、電磁波伝送シート301の上面と、狭間領域331と第一導電体層370との境界面と、の距離をdとする。この場合に、距離をdは、図2に説明する距離Dに相当する。
【0065】
また、図3(b)において、狭間領域331と第一導電体層370との境界面と、狭間領域331と第二導電体層321との境界面と、の距離をdとする。この場合に、距離dは、図2に説明する厚さDに相当する。
【0066】
また、図3(b)において、狭間領域331と第二導電体層321との境界面と、電磁波伝送シート301の底面(図3(b)の下面)と、の距離をdとする。この場合に、距離dは、図2に説明する距離Dに相当する。
【0067】
なお、電磁波インターフェース装置100は、誘電体140と狭間領域331とが厚さと配置とにおいて整合するとの上述した関係を充足する限り、電磁波伝送シート301の表裏に拘わらず挟み込み嵌合することが可能である。この場合においても、電磁波インターフェース装置100は、高効率かつ安全に電磁波の入出力をすることが可能となる。
【0068】
また、電磁波インターフェース装置100は、自然状態において上述した電磁波伝送シート301との関係を充足する必要はなく、電磁波伝送シート301と嵌合した状態で上述した関係を充足すればよい。例えば、クリップ部150は、自然状態において二つの電極間の間隔を比較的狭くしてもよい。これにより、電磁波伝送シート301と嵌合した状態で、クリップ部150が所望の保持力を発揮することが可能となる。
【0069】
また、電磁波伝送シート301と誘電体140との当接箇所において、誘電体140と電磁波伝送シート301の誘電体層(狭間領域331に相当)とが、厚さと配置とにおいて整合するとは、必ずしも物理的に一体的に接合することに限定されない。電磁波の波長との関係において、電磁波の伝搬上損失が顕在化しない程度の位置ずれや厚さ相違は許容される。
【0070】
また、電磁波インターフェース装置100の段差180は、第二電極120の内面側、すなわち誘電体140側において設けられていればよい。従って、第二電極120の外面側、すなわち誘電体140と異なる側において、第二電極120の形状は任意であり、例えば給電部160において、段差180に相当する厚さだけ第二電極120の厚さが増大する構成としてもよい。
【0071】
(第二の実施形態)
図4は、本発明の第二の実施形態にかかる電磁波インターフェース装置400の概要を説明する模式図である。図4においては、図1と図2とに対応する部位には対応する符号を伏して、説明の重複を避けるために簡略に説明することとする。
【0072】
図4に示すように、電磁波インターフェース装置400は、SMAコネクタ490により電磁波が給電される。SMAコネクタ490の芯線は、第一電極470に電気的に接続される。
【0073】
また、SMAコネクタ490の外部導体は、第二電極420と第三電極410とに電気的に接続される。また、第一電極470は、第二電極420と第三電極410とは電気的に絶縁される。
【0074】
電磁波インターフェース装置400は、給電部160において、第一電極470と第二電極420との間に、厚さDの誘電体440を備える。また、電磁波インターフェース装置400は、給電部160とクリップ部150との境界付近に、クリップ部150に向けてスロープ状の高さDの段差480を備える。
【0075】
また、電磁波インターフェース装置400の端部においては、電磁波伝送シート401が嵌め込まれた状態で誘電体440が外部に暴露されないように、誘電体440が不図示の被覆導電体で覆われている。また、不図示の被覆導電体は、第二電極420と第三電極410と電気的に接続される一方で、第一電極470とは絶縁されているので電磁波を反射する。
【0076】
また、電磁波インターフェース装置400に嵌め込まれる電磁波伝送シート401は、スロープ状の段差480に整合する形状の第二保護層450と第二導電体層421とを備える。また、電磁波伝送シート401は、メッシュ状の導電体411が埋め込まれた第一保護層460を備える。
【0077】
図4に示すように、電磁波伝送シート401の第一導電体層411を含めた第一保護層460の厚さdと、電磁波インターフェース装置400の誘電体440上面と第三電極410底面との距離Dと、が等しい。
【0078】
また、図4に示すように、電磁波伝送シート401の誘電体層431の厚さdと、電磁波インターフェース装置400の誘電体440の厚さDと、が等しい。
【0079】
また、図4に示すように、電磁波伝送シート401の第二導電体層421と第二保護層450との合計厚さdと、電磁波インターフェース装置400の誘電体440底面とクリップ部150における第二電極420上面との距離Dと、が等しい。
【0080】
このため、電磁波インターフェース装置400に、電磁波伝送シート401を嵌め込んだ場合に、電磁波伝送シート401と誘電体440との当接箇所において、誘電体440と誘電体層431とが、厚さと配置とにおいて整合する。従って、電磁波インターフェース装置400から電磁波伝送シート401へと伝送される電磁波は、両者の接合部分において漏洩や損失等が低減されるので、スムースかつ低損失に電磁波が伝送されることとなる。特に、電磁波伝送シート401の保護層の厚さが比較的大きな場合、すなわちdやdが比較的大きな場合、においても、電磁波は、両者の接合部分において漏洩や損失等が低減され、スムースかつ低損失に電磁波が伝送される。
【0081】
なお、電磁波インターフェース装置400は、自然状態において上述した電磁波伝送シート401との関係を充足する必要はなく、電磁波伝送シート401と嵌合した状態において上述した関係を充足すればよい。さらには、電磁波インターフェース装置400は、電磁波伝送シート401と嵌合した状態で電磁波を現実に伝送する場合において、上述した関係を充足すれば足りる。
【0082】
また、電磁波伝送シート401と誘電体440との当接箇所において、誘電体440と誘電体層431とが、厚さと配置とにおいて整合するとは、必ずしも物理的に一体的に接合することに限定されない。電磁波の波長との関係において、電磁波の伝搬上損失が顕在化しない程度の位置ずれや厚さ相違は許容される。
【0083】
また、電磁波インターフェース装置400の段差480は、第二電極420の内面側、すなわち誘電体440側において設けられていればよい。従って、段差480は、第二電極420の外面側、すなわち誘電体440と異なる側における、第二電極120の形状を限定するものではない。
【0084】
(シミュレーション結果)
次に、シミュレーションにより高効率かつ低損失な電磁波インターフェース装置のリターンロスS11を算出した。図5は、シミュレーションに用いた電磁波インターフェース装置500の概要を説明する図である。
【0085】
図5(a)が電磁波インターフェース装置500の正面図であり、図5(b)が電磁波インターフェース装置500の平面図であり、図5(c)が電磁波インターフェース装置500の側面図である。なお、図5(a)は、電磁波伝送シート501の嵌合側から見た図である。また、図5(c)では説明の便宜上、電磁波伝送シート501の側面図も併記している。
【0086】
図5において、電磁波インターフェース装置500には、上述した電磁波インターフェース装置100,400と対応する部位には対応する符号を付す。また、電磁波インターフェース装置500は、上述した電磁波インターフェース装置100,400が各々備える電磁波伝送シート301,401との関係を全て備えている。そこで、以下に電磁波インターフェース500について図5を参照しながら簡略に説明する。
【0087】
電磁波インターフェース装置500は、第一電極570と第二電極520と第三電極510とを備える。第一電極570は、第二電極520と第三電極510とから絶縁されている。
【0088】
同軸ケーブルの内部導体537は第一電極570に電気的に接続され、同軸ケーブルの外部導体536は第二電極520に電気的に接続される。なお、535は給電点である。
【0089】
また、誘電体540の周囲は、電磁波伝送シート501と当接する部位を除いて、電磁波インターフェース装置500の端部において、被覆導電体530により覆われている。被覆導電体530は、金属角棒を配置した外側をハンダで被覆するものでもよい。
【0090】
また、給電点535は給電部160に設けられ、電磁波伝送シート501はクリップ部150に嵌合される。図5(b)と図5(c)とにアルファベット等で示した電磁波インターフェース装置500の各寸法は、それぞれ図7(b)に説明している。図7は、シミュレーションに用いた電磁波インターフェース装置500と電磁波伝送シート501との各パラメータを示す図である。
【0091】
図5(c)に示すように、第二電極520の内面側には、段差580が設けられている。また、誘電体540は、電磁波伝送シート501と当接する部位において、誘電体層531と、位置関係と厚さとにおいて実質的に一致して整合する。このため、誘電体540から誘電体層531へと電磁波が伝送される場合に、誘電体540と誘電体層531とが、電磁波の波長の観点から連続的ないわば導波路を形成することとなる。
【0092】
また、図6は、シミュレーションで使用した電磁波伝送シート501に電磁波インターフェース装置500を嵌合させた状態を説明する平面図である。図6に示すように、電磁波伝送シート501は91ミリメートル四方であり、メッシュ周期が3ミリメートルで線幅が1ミリメートのメッシュ状の導電体511を備える。また、図7(a)には、電磁波伝送シート501の各パラメータを説明している。
【0093】
図6において、電磁波伝送シート501の3つの辺縁部501a,501b,501cには、電磁波の反射を低減するように終端処理をした。終端処理は、例えば、導体板と抵抗とを組み合わせた電磁波吸収部材を辺縁部に設ければよい。また、例えば導体板をメッシュ状の導電体層611(メッシュ状の導電体511が存在する層)の辺縁部上に載置するのみでもよい。また、電磁波吸収部材は、電磁波伝送シート501の辺縁部に電磁波を吸収する材料を埋め込んでその上下を導体板で被覆する構造としてもよい。
【0094】
終端処理により、電磁波伝送シート501の3つの辺縁部501a,501b,501cにおける電磁波の反射が抑制されるので、電磁波伝送シート501内において予期せぬ定在波の発生を抑制することが可能である。終端処理により、電磁波伝送シート501は、安定した電磁波の伝送が可能となる。
【0095】
また、電磁波伝送シート501の辺縁部501dには、電磁波インターフェース装置500が嵌合する部位を除いて、電磁波を反射するシールドを設けてある。電磁波を反射するシールドは、例えば一対の対向した導電体層のうちの一方の導電体と電気的に接続された導体板を、他方の導電体と絶縁された状態で、該他方の導電体の外側面(例えば他方の導電体の保護層の外側面等)に載置することとできる。具体的には、例えば第二導電体層521と電気的に接続された金属板を、電磁波伝送シート501の上面に載置こととしてもよい。また、電磁波を反射するシールドは、例えば一対の対向した導電体層の両方の導電体と電気的に接続された導体板を、いずれか一方の導電体の外側面(例えば導電体の保護層の外側面等)に載置してもよい。
【0096】
電磁波伝送シート501の辺縁部501dに設けられた電磁波を反射するシールドにより、電磁波インターフェース装置500から電磁波伝送シート501に入力される電磁波が、辺縁部501dで吸収されることがなく、伝送されることとなる。従って、電磁波伝送シート501の辺縁部501dに設けられたシールドにより、電磁波伝送シート501内の電磁波の不要輻射を抑制することが可能となるので、低損失で高効率な電磁波の伝送が可能となる。
【0097】
また、図7(a)に示すように、電磁波伝送シート501の第二導電体層521の外側面(底面)に設けられた第二保護層550の厚さは、250ミクロンである。一方で、電磁波インターフェース装置500の第二電極520の段差580(h)は、250ミクロンである。
【0098】
このシミュレーションでは、第二導電体層521の厚さは、実質的に無視できる程度の厚さであるとしたことから、電磁波伝送シート501と電磁波インターフェース装置500とを嵌合させた場合に、誘電体層531の底面と誘電体540の底面とが面一に一致することとなる。
【0099】
また、シミュレーションでは、第一電極570の厚さ(h)は200ミクロンとした。第一電極570の厚さ(h)は、電磁波伝送シート501の第一導電体511を含む第一保護層560の厚さ250ミクロンより小さい。このため、第三電極510が平板状である場合に、第一電極570と第三電極510との間隔をスペーサ等で適宜調整すれば、誘電体540の上面と誘電体層531の上面とを一致させることが可能となる。
シミュレーションにおいては、スペーサは厚さ50ミクロン(250−200ミクロン)としており、第一導電体511の厚さ(メッシュ状の導電体層611の厚さに相当)は、第一保護層560の厚さに含まれるものとした。また、図5(c)に示すように、誘電体540の厚さと誘電体層531の厚さとは、共にhであり同一である。
【0100】
図8は、周波数をパラメータとして横軸にとり、電磁波インターフェース装置500の給電点535からみたリターンロスS11を縦軸とした計算結果を示す図である。電磁波は、電磁波インターフェース装置500の給電点535から電磁波伝送シート501方向へと伝送される。図8から明らかなように、電磁波伝送シート501に電磁波インターフェース装置500を嵌合させた場合に、5.8ギガヘルツ付近においてリターンロスS11が充分に小さいことが理解できる。
【0101】
さらに、図6に示すように、電磁波伝送シート501に電磁波インターフェース装置500を嵌合させた電磁波伝送システム600から空中への漏洩電力は、5.8ギガヘルツにおいて、0.46%であった。この値は、従来知られている漏洩電力より一桁程度小さい値であり、電磁波伝送システム600は、極めて漏洩電力が小さく高効率かつ低損失で安全な電磁波伝送が実現できていることが判った。
【0102】
また、電磁波インターフェース装置500内部での電磁波の半波長(λ/2)は、約20ミリメートルである一方で、第三電極510の横幅Bは24ミリメートルである。すなわち、第三電極510の横幅Bは、電磁波インターフェース装置500内部での電磁波の半波長(λ/2)に略等しい値ということができ、この場合には比較的低損失となる。例えば、比較的低い周波数の電磁波を伝送する場合には、第三電極510の横幅Bを比較的長くすれば高効率な伝送が行える。また、第二電極520も、第三電極510と同様に、電磁波インターフェース装置500内部での電磁波の半波長(λ/2)に略等しい値とすることで、比較的低損失な伝送が可能となる。
【0103】
上述した電磁波インターフェース装置100,400,500と電磁波伝送シート301,501と電磁波伝送システム600とは、各実施形態における説明に限定されるものではなく、自明な範囲でその構成を適宜変更し、自明な範囲で動作及び処理を適宜変更して用いることとできることは当業者に容易に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、シート状の電磁波伝送媒体に電磁波を入出力する電磁波インターフェースと電磁波伝送システム等に幅広く利用できる。
【符号の説明】
【0105】
100・・電磁波インターフェース装置、110・・第三電極、120・・第二電極、130・・被覆導電体、140・・誘電体、150・・クリップ部、160・・給電部、180・・段差、270・・第一電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電極と、前記第一電極と対向する第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に配置された誘電体と、を備える給電部と、
前記第二電極と、前記第一電極の前記第二電極と異なる側に対向して配置された第三電極と、の間に電磁波伝送シートの辺縁部を挟むクリップ部とを備え、
前記給電部において、前記第一電極と前記第二電極とに給電される
ことを特徴とする電磁波インターフェース装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁波インターフェース装置において、
前記クリップ部で前記電磁波伝送シートの辺縁部を挟んだ場合に、
前記クリップ部における前記第二電極と前記第三電極との間隔は、前記給電部における前記第一電極と前記第二電極との間隔よりも、
前記電磁波伝送シートの二つの導電体層の厚さ合計と、前記導電体層の外面側の保護層の厚さ合計と、の和に相当する間隔だけ大きい
ことを特徴とする電磁波インターフェース装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電磁波インターフェース装置において、
前記クリップ部で前記電磁波伝送シートの辺縁部を挟んだ場合に、
前記電磁波伝送シートと前記電磁波インターフェース装置の前記誘電体との当接部において、
前記第一電極と、前記電磁波伝送シートの二つの導電体層のうちいずれか一方の導電体層と、は内面側において一平面であり、前記第一電極と前記第二電極との間隔は、前記電磁波伝送シートの二つの導電体層の間隔に略等しい
ことを特徴とする電磁波インターフェース装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電磁波インターフェース装置において、
前記第二電極は、前記給電部と前記クリップ部との間に、前記電磁波伝送シートの二つの導電体層のうち少なくともいずれか一方の導電体層の厚さと、該一方の導電体層の外面側に設けられた保護層の厚さと、の和に相当する段差を有する
ことを特徴とする電磁波インターフェース装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電磁波インターフェース装置において、
前記クリップ部で前記電磁波伝送シートの辺縁部を挟んだ状態で前記誘電体が露出しないように、前記電磁波インターフェース装置の端面は、前記誘電体を被覆する被覆導電体で覆われるとともに、
前記電磁波インターフェース装置の端面において電磁波が反射されるように、前記被覆導電体は、前記第二電極と前記第三電極とに電気的に接続される
ことを特徴とする電磁波インターフェース装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電磁波インターフェース装置において、
前記給電部において、給電方向に垂直な方向における前記第二電極の幅と前記第三電極の幅とは、前記給電部から給電される電磁波の波長の略1/2の長さである
ことを特徴とする電磁波インターフェース装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の電磁波インターフェース装置と、
該電磁波インターフェース装置を嵌合させた場合に、前記誘電体と厚さ及び配置において整合する誘電体層を備える電磁波伝送シートと、を嵌合させた
ことを特徴とする電磁波伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−9801(P2011−9801A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148158(P2009−148158)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/新たな通信媒体を利用したサーフェイス通信技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503054096)株式会社セルクロス (38)
【Fターム(参考)】