説明

高効率の縦列太陽電池用の低抵抗トンネル接合

半導体構造は、第1材料からなる第1光電池と、第2材料からなり、第1光電池に直列接続した第2光電池とを備える。第2材料に隣接する第1材料の伝導帯エッジは、その材料に隣接する第2材料の価電子帯エッジより大きくても0.1eVだけ高い。好ましくは、第1光電池の前記第1材料はIn1−xAlNまたはIn1−yGaNからなり、前記第2光電池の前記第2材料はシリコンまたはゲルマニウムからなる。あるいは、第1光電池の第1材料はInAsまたはInAsSbからなり、第2光電池の第2材料はGaSbまたはGaAsSbからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府援助についての声明
ここに記載されクレームされた発明は、契約No.DE−AC02−05CH11231に従って米国エネルギー省によって提供された資金を一部利用してなされた。政府は本発明に一定の権利を持っている。
【0002】
本発明は、縦列の光電池すなわち太陽電池、特に高効率の縦列太陽電池すなわち光電池用の低抵抗トンネル接合およびそれを作る方法に関する。
ここで用いられる「光電池」という用語は、光子を電気に変換することができるあらゆる半導体p/n接合を含む。これは、可視光を電気に変換する周知の光電池と、長波長光子あるいは熱光子を電気に変換する熱光電池を非限定的に含む。
【背景技術】
【0003】
これらの光電池は、それらの価電子帯とそれらの伝導帯との間のエネルギーバンドギャップを持つ固体結晶構造によって通常特徴づけられる。光が材料に吸収されると、低エネルギー状態を占める電子がバンドギャップを越えて、より高いエネルギー状態になるよう励起される。例えば、半導体の価電子帯中の電子が日射の光子から十分なエネルギーを吸収すると、それらはより高いエネルギー伝導帯へとバンドギャップをジャンプすることができる。より高いエネルギー状態へと励起された電子は、空の低エネルギー箇所つまり正孔を残す。そのような正孔は、伝導帯中の自由電子のように、結晶格子中で原子から原子へ移動し、電荷担体として働き、結晶の導電率に寄与することができる。半導体に吸収されたほとんどの光子は電子と正孔のペアを生じさせ、それらが、太陽電池が示す光電流を、そしてさらに光起電力を生成するようなる。電荷担体用としての正孔および電子を分離する空乏層を生成するために、半導体には異種物質がドープされる。一旦分離されると、収集された正孔および電子の電荷担体は、接合をまたぐ電圧、つまり光起電力、に帰着する空間電荷を生成する。外部負荷を通ってこれらの正孔と電荷担体を流れさせる場合、それらは光電流を構成する。
【0004】
半導体中のバンドギャップをまたぐ位置エネルギー差の決まった量子がある。より低いエネルギー価電子帯中の電子がより高いエネルギー伝導帯へとバンドギャップをジャンプするよう励起されるには、バンドギャップをまたぐ位置エネルギー差と少なくとも等しい値を持つように、通常は吸収された光子から十分なエネルギー量子を吸収しなければならない。半導体は、バンドギャップ未満の光子エネルギーを持つ輻射に透明である。電子が、例えばより高いエネルギー光子から、閾値エネルギー量子以上を吸収すれば、それはバンドギャップをジャンプすることができる。電子がバンドギャップをジャンプするのに必要な閾値量子を越えるそのような吸収エネルギーの超過は、電子を伝導帯中のほとんどの他の電子よりエネルギーがより高い状態にさせる。過剰エネルギーは最終的に熱の形で失われる。最終結果は、単一バンドギャップの半導体の有効な光起電力がバンドギャップによって制限されるということである。したがって、単一の半導体太陽電池で、太陽輻射のスペクトルからできるだけ多くの光子を捕らえるために、低エネルギーの光子さえもがバンドギャップをジャンプするように電子を励起できるように、半導体は小さなバンドギャップを持たなければならない。小さなバンドギャップ材料の使用はデバイス用として低い光起電力と低い出力になるから、これは限界がある。さらに、より強いエネルギーの輻射からの光子は、熱として失われる過剰エネルギーを生成する。
【0005】
しかし、光起電力を増加させ、かつホットキャリアの熱化によって引き起こされるエネルギー損を減らすためにより大きなバンドギャップを持つよう半導体が設計された場合、低エネルギーの光子は吸収されない。従って、これらの事柄のバランスをとって、単一接合の太陽電池を設計する際にバンドギャップを最適化し、最適のバンドギャップを備えた半導体を設計しようとすることが必要である。上段のセルがより大きなバンドギャップを持って、より高いエネルギー光子を吸収し、より低いエネルギーの輻射を吸収するためにより小さなバンドギャップを持つ下段または下端のセルへと低エネルギー光子が上段のセルを通過する構成の、縦列つまり多接合(カスケード)太陽電池構造を作ることにより、この問題を解決するための多くの研究が近年行われている。光学的なカスケード効果を達成するために、バンドギャップは最大から最小へ、上端から下端へと順序付けられる。原理的には任意の数のサブセルをそのように積み重ねることができるが、実際的な限界が通常2、3であると考えられる。個々のサブセルが、エネルギーを効率的に変換する小さな光子波長域で太陽エネルギーを電気エネルギーに変換するから、多接合太陽電池はより高い変換効率を達成することができる。そのような縦列の電池を作る技術は米国特許第5,019,177号に記載されており、その全体を参照してここに取り込む。
【0006】
光起電力デバイスの効率を高める努力は、炭化水素系燃料のコストの高騰でより緊急になった。現在市販されているほとんどの太陽電池はシリコンで作られていが、他の材料を用いるより高効率の電池が近年研究されている。砒化ガリウムおよび関連合金が特に注目されている。ここで述べるように、太陽電池効率の著しい増大は異なる材料の縦列サブセルの使用により可能であるが、異なる材料はそれらの価電子帯とそれらの伝導帯との間に異なるエネルギーバンドギャップを有する。光電池を形成するために使用される化合物と合金の格子定数は周知である。そのような材料が、異なる材料のサブセルを持つデバイスにおいて組み合わせられる場合、異なる材料の格子は小さな違いの範囲内で同じ格子定数となるはずである。これは、デバイスの効率を大きく低下させ得る結晶構造の欠陥の形成を回避する。
【0007】
いかなる縦列電池デバイスでも、サブセル間で電気的な接続がされなければならない。これらのセル間のオーム接触が、セル間の電力損失が非常に少なくなる最小の電気抵抗を持つことが望ましい。そのようなセル間のオーム接触を達成する2つの公知の方法があり、それは金属相互接続とトンネル接合(またはトンネルダイオード)である。金属相互接続は、低電気抵抗を提供することができるが、それらは作るのが難しく、その結果複雑な処理を要し、デバイス効率にかなりの損失をもたらし得る。したがって、一般にトンネル接合が好まれるが、それは間にトンネル接合を備えた複数のサブセルを持つモノリシック集積化デバイスを形成することができるからである。しかし、トンネル接合は、低抵抗率、高ピーク電流密度、低光学エネルギー損および上下端のセル間の格子整合による結晶学的相性など多数の要件を満たさなければならない。
【0008】
現在、縦列の太陽電池は、直列接続した2〜4個の光電池を通る効率的な電流フローを確保するためにトンネル接合を使用する。各サブセルで生成される電流が合致するとき、電池は最も効率的に機能する。サブセルの電圧が順次加わるように電流が電池を流れるためには、サブセル間の電子・正孔の再結合を可能にする接合が有用である。
【0009】
現在、縦列の電池においてバンドオフセットを適合させるために、高濃度にドープされたトンネル接合が使用される。トンネル接合は、例えば、InGaP上端セルからの正孔をInGaAs中間セルからの電子とともに効率的に消滅させるために、標準の3接合(3J)電池の上端および中間のセルを接続する。例えば、燐化インジウムサブセルおよび砒化燐化インジウムガリウムを持つ縦列太陽電池が米国特許第5,407,491号および米国特許第5,800,630号に記載されており、その全体をそれぞれ参照してここに取り込む。InGaPの価電子帯(VB)とInGaAsの伝導帯(CB)との間のバンド不整合のため、トンネル接合はトンネル輸送を可能にするよう高濃度にドープされる。この場合、接合はp++InGaPまたはp++AlGaAs、およびn++InGaAsまたはn++AlInPである。これは、太陽電池の製作に追加の処理ステップを加え、設計の複雑さを増すから望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,019,177号
【特許文献2】米国特許第5,407,491号
【特許文献3】米国特許第5,800,630号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、太陽電池の製作に追加の処理ステップを加えず、太陽電池の設計の複雑さを増すことのない低抵抗トンネル接合を提供することが望ましい。
【0012】
本発明は、高効率の縦列太陽電池に低抵抗トンネル接合を備えることにより、従来技術の前述の欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の目的は、セル接合領域での再結合を確保するために高濃度にドープされたトンネル接合を必要としない、高効率の縦列太陽電池を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、高効率の窒化インジウムを基礎とする縦列太陽電池を提供及び製造することにある。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、低抵抗あるいはゼロに近い抵抗のトンネル接合を提供する、前述のような窒化インジウムを基礎とする縦列太陽電池を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、低抵抗あるいはゼロに近い抵抗のトンネル接合を提供する、GaSb/InAsSbを基礎とする縦列太陽電池を提供することにある。
【0017】
本発明の実施形態によれば、半導体構造は、第1材料からなる第1光電池と、第2材料からなり、第1光電池に直列接続した第2光電池とを備える。第2材料に隣接する第1材料の伝導帯エッジは、その材料に隣接する第2材料の価電子帯エッジより大きくても0.1eVだけ高い。好ましくは、第1光電池の前記第1材料はIn1−xAlNまたはIn1−yGaNからなり、前記第2光電池の前記第2材料はシリコンまたはゲルマニウムからなる。
【0018】
あるいは、第1光電池の第1材料はInAsからなり、第2光電池の第2材料はGaSbからなる。好ましくは、あるいは、前記第1光電池の第1材料はInAsSbからなり、第2光電池の第2材料はGaAsSbからなる。
【0019】
本発明の実施形態によれば、半導体構造は、p型シリコン層と、p型シリコン層に接するn型半導体窒化物層とを備える。n型半導体窒化物層は、p型シリコン層の価電子帯エッジより大きくても0.1eVだけ高い伝導帯エッジを有する。好ましくは、n型半導体窒化物はIn1−xAlNとIn1−yGaNからなる群から選択され、xは好ましくは0.2と0.6との間で、yは好ましくは0.4と0.6との間である。p型シリコン層は(111)シリコンすなわちSi(111)である。
【0020】
本発明の1つの観点によれば、半導体構造の電圧電流特性は対称である。好ましくは、p型シリコン層とn型半導体窒化物層とによって形成された接合が、当該シリコン及び当該窒化物の直列抵抗と実質的に等しい抵抗を有する。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前述の半導体構造は、n型半導体窒化物層に接するp型半導体窒化物層と、p型シリコン層に接するn型シリコン層をさらに備える。
【0022】
本発明の実施形態によれば、半導体構造において、n型半導体窒化物層は第1光電池の一部であり、p型シリコン層は第2光電池の一部である。第1光電池と第2光電池は互いに直列接続している。
【0023】
本発明の種々の他の目的、利点および特徴は後続の詳細な説明から容易に明らかになり、新規な特徴は添付の請求項で詳しく指摘される。
例として挙げられ、本発明をそれだけに限定すると意図しない以下の詳細な説明は、添付図と併せて最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、InAlNとInGaNの合金の価電子および伝導帯の位置を示す。
【図2】図2は、本発明の典型的な実施形態に従ってゼロに近い抵抗のトンネル接合を組み込んだInGaN/Siの縦列電池のバンド図である。
【図3】図3は、n−InGaNとp−Si(111)の間のトンネル接合についての電流・電圧曲線を示す。
【図4】図4は、本発明の実施形態に従って低抵抗トンネル接合を組み込んだ縦列太陽電池設計である。
【図5】図5は、本発明の典型的な実施形態によるInGaNバンドギャップの関数として2接合(2J)のInGaN/Siの縦列太陽電池の計算された効率値を示す。
【図6】図6は、本発明の典型的な実施形態によるp型のGaSbおよびn型InAsSbの間の低抵抗接合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
III族窒化物のバンドギャップ調整範囲は、エネルギー変換に関して太陽のスペクトルの全有効範囲をほぼ含んでおり、光電池用としてこれらの材料を魅力的にしている。効率を高め、より大きな出力を作り出すために、薄膜で作られ、電気的に直列接続した縦列の光電池を設計することがますます一般的になった。しかし、直列接合に関連した問題があった。
【0026】
ここで述べるように、縦列の太陽電池は、直列接続した複数の光電池を通る効率的な電流フローを確保するためにトンネル接合を使用する。各サブセルで生成される電流が合致するとき、電池は最も効率的に機能する。サブセルの電圧が順次加わるように電流が電池を流れるためには、サブセル間の電子・正孔の再結合を可能にする接合が有用である。
【0027】
現在、縦列の太陽電池においてバンドオフセットを適合させるために、高濃度にドープされたトンネル接合が使用される。トンネル接合は、例えば、InGaP上端セルからの正孔をInGaAs中間セルからの電子とともに効率的に消滅させるために、標準の3接合(3J)電池の上端および中間のセルを接続する。InGaPの価電子帯(VB)とInGaAsの伝導帯(CB)とのバンド不整合のため、トンネル接合はトンネル輸送を可能にするよう高濃度にドープされる。この場合、接合はp++InGaPまたはp++AlGaAs、およびn++InGaAsまたはn++AlInPである。これは、電池の製作に追加の工程ステップを加え、設計の複雑さを増すから望ましくない。
【0028】
インジウム窒化アルミニウムおよびインジウム窒化ガリウム合金(In1−xAlNとIn1−yGaN)の伝導帯(CB)と価電子帯(VB)のエッジの絶対位置は、実験研究を通じて確認された。S. X. Li et al.の「III族窒化物におけるフェルミ準位安定化エネルギー」、Phys. Rev. B 71 , 161201 (R) (2005)を参照し、その全体を参照してここに取り込む。図1は、In1−xAlNとIn1−yGaNのCBとVBのエッジのエネルギーをxとyの関数としてプロットしたグラフを示す。シリコン(Si)およびゲルマニウム(Ge)に関するVBのエッジおよびCBのエッジの位置も図1に示されている。Siの価電子帯が伝導帯と揃う組成は点線で示されている。In1−xAlNのCBは、およそ0.3の「x」値でSiのVBと揃い、それはIn0.7Al0.3Nの組成に対応する。In1−yGaNのCBは、およそ0.5の「y」値でSiのVBと揃い、それはIn0.5Ga0.5Nの組成に対応する。本発明の典型的な実施形態によれば、ほぼ完全なバンドの整列を持つn型InAlNとp−Siの間またはn型InGaNとp−Siの間に接合を形成することができ、これにより非常に低い(ゼロに近い、あるいはほぼゼロの)抵抗のトンネル接合を生じる。本発明の窒化物を基礎とするトンネル接合のほぼ完全なバンドの整列を示す計算が図2に示されている。同様な、ほぼ完全あるいは優れたバンドの整列が、In0.6Al0.4N(またはIn0.4Ga0.6N)の組成に対応する、x〜0.4(またはy〜0.6)というより高いAl(あるいはGa)含有量のp−Ge用に存在する。一般に、バンドの整列は、伝導帯エッジが価電子帯エッジより約0.1eV以上高くない場合、優れていると考えられる。
【0029】
図2は、ゼロに近い抵抗のトンネル接合を持つIn0.46Ga0.54N p/n+:Si p/nの2J縦列電池の計算されたバンド図を示す。この計算のためのアクセプタ(N)およびドナー(N)濃度はそれぞれ、1×1018cm−3および5×1019cm−3である。InGaNとSiのセルはp/n接合を持ち、通常のp/n接合(1J)太陽電池として働く、すなわち照射光の下で、窒化物材料中の電子は表面から遠ざかって電池内へ流れ、Si中の正孔は表面へ向かう。トンネル接合は、表面から約400nm下のn−InGaNとp−Siの間の界面に位置する。n−InGaNからの電子とp−Siからの正孔は界面で再結合できる。この電流整合状態で、2個のセルの電圧は順次加わることができる。選ばれたInGaN組成に対してほぼ最適なバンドの整列により、界面での「バンド曲がり」はほんの僅かである。これにより非常に低い抵抗となる。
【0030】
本発明の典型的な実施形態によれば、n型窒化物材料の層は接合を形成するためにp型のSi(111)上に堆積される。n−InGaNとp−Si(111)の間のトンネル接合について電気的検査を行なった。特に、p型Si上のIn0.4Ga0.6N組成(つまり、ほぼその伝導帯がSiの価電子帯と揃う組成)の層について接合の電気抵抗を測定した。この接合の電気抵抗はオーミックで、かつ低いと判定された。認められた抵抗は12オームで、振舞いは試験装置の電流限界までオーミックであった。図3は、n−In0.4Ga0.6Nとp型のSiの間のこの接合についての電流・電圧曲線を示す。InGaN合金の測定された組成は、図2に示されたほぼ完全なバンドの整列をもたらすと予測されるものに近かった。図3の電流・電圧曲線は完全に対称であり、ヘテロ界面(接合)に電気的な障壁が無いことを示している。接合は、典型的な太陽電池の電流より高い、少なくとも50mA cm−2もの大きな電流密度に対してオーミック特性と低抵抗性を持つ。したがって、InGaNとSiの間の接合は、本発明の典型的な実施形態による窒化インジウムを基礎とする接合を備える太陽電池から生成し得る光電流を制限しない。一般に、構成要素の半導体の直列抵抗未満の抵抗を持つオーミックのトンネル接合を備えることは有用である。最適化された太陽電池では、前後のオーム接触は数オーム/cmのオーダーである。
【0031】
図4は、本発明の典型的な実施形態による、上端セルとしての1.8eVのバンドギャップを有する窒化インジウムを基礎とする材料と、下端セルとしてのSi(バンドギャップ=1.1eV)を備える2接合の縦列セルを示す。この構成が、最大電力変換効率の点で、Siに適合される上端セルにとっての理想に近いことが理解される。
【0032】
InGaNとSiの光吸収パラメータおよび電荷輸送パラメータに関して一般に認められた値を用いて、図5は、本発明の典型的な実施形態によるInGaNバンドギャップの関数としてInGaN/Siの縦列電池の計算された効率値を示す。電池構造は、0.1μmのp−InGaN、0.8μmのn−InGaN、0.1μmのp−Siおよび基板として1000μmのn−Siを備える。効率はAM(気団)1.5の直接太陽スペクトル(光起電力性能評価のためのASTM地上基準スペクトル)について計算した。具体的に、図5は、2接合(2J)のInGaN/Siの縦列太陽電池の計算された300KのAM1.5の効率を示す。30%超の効率がInGaN上端セルバンドギャップの範囲に対して予測される。1.7eVのすぐ下のバンドギャップを持つInGaN(In0.5Ga0.5N)を使用すると、最高効率は35%である。次のInGaNの電気的パラメータおよび輸送パラメータが計算において使用された:電子移動度、300cm−1−1;正孔移動度、50cm−1−1;電子実効質量0.07m;正孔実効質量0.7m;および表面再結合速度がゼロ。InGaN/Siの縦列電池で、最大値が30%をかなり越えており、最適な構成では35%に達する。セル間の低抵抗トンネル接合は、接合でのキャリアの効率的な再結合を可能にし、それによって、本発明が理論的な限界に近い実際の効率を達成することを可能にする。さらに、本発明は、高濃度にドープされたトンネル接合の必要性をなくすことにより2J電池の設計を非常に単純化する。すなわち、本発明は、セル接合領域での再結合を確保するために現在入手可能な縦列の太陽電池を作る際に要求されるドーピング工程を有利に除去する。
【0033】
本発明の低抵抗トンネル接合の形成に使用することができる他の対の半導体があることは理解される。例えば、InAsの伝導帯はGaSbの価電子帯とよく揃う。これらの材料のバンドギャップ(両方とも1eV未満である)は、太陽光に反応する縦列の電池に理想的であると考えられるもの未満であるが、熱から電気を生成することができる熱光電池で熱源から近赤外および赤外光を変換するためにInAs/GaSb設計を最適化することができる。
【0034】
本発明の典型的な実施形態によれば、InAsSb合金を形成するためにInAsに少量数%まで)の(SbをInAsに導入し、および/またはGaAsSb合金を形成するために少量数%まで)のAsまたはPをGaSbに導入することで、InAsSbおよびGaAsSb合金は、格子パラメータを整合させ、及び、トンネル接合を形成する構成要素である半導体間のバンドオフセットを修正するために使用され得る。図6は、p−GaSbおよびn−InAs0.94Sb0.06接合の計算されたバンド図を示す。界面での低い障壁は非常に低い抵抗接合を示す。計算は次の電極構造に基づいた。
【0035】
層組成 ドーピング濃度 層厚
n−InAsSb(コンタクト層) 1×1018cm−3 100nm
n−InAsSb 1×1017cm−3 500nm
p−GaSb 1×1017cm−3 500nm
p−GaSb(基板) 2×1017cm−3 1000nm
【0036】
本発明は、新規な原理を適用し、かつ必要な特化した構成要素を構築し使用するのに関連する情報を当業者に提供するためにここでかなり詳細に説明した。しかし、発明は、異なる設備、材料およびデバイスによって実施することができ、設備と操作手順の両方に関する種々の変更は、発明自体の範囲から外れずに達成することができることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材料からなる第1光電池と、
第2材料からなり、前記第1光電池に直列接続した第2光電池と、を備え、
前記第2材料に隣接する前記第1材料の伝導帯エッジは、前記材料に隣接する前記第2材料の価電子帯エッジより大きくても0.1eVだけ高い、半導体構造。
【請求項2】
前記第1光電池の前記第1材料がIn1−xAlNまたはIn1−yGaNからなり、前記第2光電池の前記第2材料がシリコンまたはゲルマニウムからなる請求項1に記載の半導体構造。
【請求項3】
前記第1光電池の前記第1材料がInAsからなり、前記第2光電池の前記第2材料がGaSbからなる請求項1に記載の半導体構造。
【請求項4】
前記第1光電池の前記第1材料がInAsSbからなり、前記第2光電池の前記第2材料がGaAsSbからなる請求項1に記載の半導体構造。
【請求項5】
p型シリコン層と、
前記p型シリコン層に接するn型半導体窒化物層と、を備え、
前記n型半導体窒化物層は、前記p型シリコン層の価電子帯エッジより大きくても0.1eVだけ高い伝導帯エッジを有する、半導体構造。
【請求項6】
前記半導体構造の電圧電流特性が対称である請求項5に記載の半導体構造。
【請求項7】
前記p型シリコン層と前記n型半導体窒化物層とによって形成される接合が、当該シリコンと当該窒化物との直列抵抗と実質的に等しい抵抗を有する請求項5に記載の構造。
【請求項8】
前記n型半導体窒化物が、In1−xAlNとIn1−yGaNからなる群から選択される請求項5に記載の半導体構造。
【請求項9】
xが0.2と0.6の間とであり、yが0.4と0.6との間である請求項8に記載の半導体構造。
【請求項10】
前記p型シリコン層が(111)シリコンである請求項5に記載の半導体構造。
【請求項11】
前記n型半導体窒化物層に接するp型半導体窒化物層と、前記p型シリコン層に接するn型シリコン層をさらに備える請求項5に記載の半導体構造。
【請求項12】
前記n型半導体窒化物層が第1光電池の一部であり、前記p型シリコン層が第2光電池の一部であり、前記第1光電池と前記第2光電池が互いに直列接続している請求項5に記載の半導体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−534922(P2010−534922A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503044(P2010−503044)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/004572
【国際公開番号】WO2008/124160
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(508158333)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (2)
【Fターム(参考)】