説明

高動態荷重用コンクリートまくらぎおよびその製法

レール支え面(2)または下部底層領域あるいはそれら両方が耐摩滅性材料、耐磨耗性材料、または抗張力材料(3)によって構成され、高圧力を受収する高強度の汎用コンクリート(4)により構成される、レール支え面(2)およびレール下層領域をもつ高動態荷重用のコンクリートまくらぎ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧力を受収する高強度の汎用コンクリートにより構成される、レール支え面およびレール下層領域をもつ高動態荷重用のコンクリートまくらぎに関する。
【背景技術】
【0002】
レール支持点領域ならびにコンクリートまくらぎの下側に高動態荷重が発生すると、しばしば磨耗または摩滅あるいはそれら両方の現象が惹き起こされる。この磨耗はレールとコンクリートまくらぎのコンクリート部との間に注入される樹脂層の圧縮ないしはコンクリートまくらぎの下の砕石床の粒子移動によって発生する。そのような摩滅現象は、たとえば、アメリカ合衆国およびオーストラリアの鉄道において経験されるように、熔接されたレールを数10ミリメートルにもわたって移動させることがある、極度に長い列車の制動時に発生する。それは、当然、コンクリートまくらぎのかなりの摩滅をもたらす衝撃荷重を発生させる。
【0003】
脈動垂直荷重では、樹脂層は水平方向にも展延し、収縮し、その結果、コンクリートまくらぎのコンクリート表面と摩擦を生じる。コンクリートまくらぎの下側では、やはり砕石粒子がコンクリート本体ときしみ合って、摩擦を生じる。これはレール支持点およびコンクリートまくらぎの下側における材料剥離を招く。その結果、コンクリートまくらぎの幾何寸法および支持能力は時間の経過とともに減殺され、そのコンクリートまくらぎはもはや安全で、耐久力のある支持要素としての役割を果たせなくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、こうした磨耗特性を僅かの費用で抑止できるような、冒頭に述べた様態のコンクリートまくらぎを創造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、本発明により、レール支え面または下部底層領域あるいはそれら両方を耐摩滅性材料、耐磨耗性材料、または抗張力材料によって構成することが提案される。
さらに、本発明は上記の様態のコンクリートまくらぎの製法に関わる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、こうした磨耗特性を僅かの費用で抑止できるような、冒頭に述べた様態のコンクリートまくらぎが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明により、耐摩滅性材料、耐磨耗性材料、または抗張力材料は、予め製造されたプレートまたはプロフィルの形態でまくらぎモールドの中の汎用コンクリートの下または上に入れ、その硬化により汎用コンクリートと結合させることが提案される。
【0008】
たとえば、上記の耐摩滅性材料、耐磨耗性材料、または抗張力材料は金属アングルとすることができる。
【0009】
本発明の別の形態によれば、耐摩滅性材料、耐磨耗性材料、または抗張力材料は1つのまくらぎモールド内において、湿潤状態で汎用コンクリートと結合され、そして硬化される。そのために、まくらぎ内の配置形態に応じて、まず耐摩滅性材料、耐磨耗性材料、または抗張力材料を特殊コンクリート材としてまくらぎモールドに入れ、次いで汎用コンクリートを注入するか、またはその逆に最初に汎用コンクリートを注入し、そのあと耐磨耗性および耐摩滅性の底部を形成するために特殊コンクリート材を最上層としてまくらぎモールドに入れる製法が提案される。
【0010】
本発明によれば、この製法では可塑性の各種コンクリート材を交互に連続して入れ、汎用コンクリートと特殊コンクリート材とを湿潤状態で揺さぶりまたは振動により界面領域において互いに混ぜ合わせ、汎用コンクリートと特殊コンクリート材とに1つのモノシリック体を形成させる。その結果、このモノシリック体はその上下方向において希望の相異なる曲げ引張強度または耐摩滅性を有する。
【0011】
本発明の製法を発展させた1つの代替案として、好ましくは予め製造される樹脂プレートを使用し、それらのプレートは好ましくは流体または可塑可能の状態のままコンクリートモールドに装入され、この状態でコンクリートと結合させることが提案される。
【実施例】
【0012】
本発明のさらにその他の利点および詳細は若干の実施例の以下の説明ならびに図面により明らかとなる。
【0013】
図1および図2は、耐摩滅性のあるレール支え面を有する本発明のコンクリートまくらぎを製造するためのまくらぎモールドの断面を示し、左右に相異なるバリエーションが示されている。
【0014】
図3および図4は、コンクリートまくらぎの下部底層における耐摩滅性材料または耐磨耗性材料、あるいはそれら両方の材料から成る本発明のコンクリートまくらぎの製造のための2つの相異なる充填段階のまくらぎモールドの縦断面図である。
【0015】
図5および図6は、下部底層における高抗張力をもつ本発明のコンクリートまくらぎの製造におけるまくらぎモールドの縦断面図である。
【0016】
図7より図9は、上側の中央が大きい引張り応力に曝されるコンクリートまくらぎの製造の異なる段階のまくらぎモールドの断面図である。
【0017】
図1に、レール支え面2を形成するためのモールド領域を有するまくらぎモールド1を示す。レール支えとしての役割を果たすこのレール支え面2の領域において、高動態荷重、場合によっては脈動垂直荷重が生じるとき、高度の耐摩滅性および耐磨耗性を実現するために、図1の右に示すように、まくらぎ用コンクリート注入前にスチールアングル3を入れるか、または、図1の左に示すように、耐摩滅性および耐磨耗性の材料からなる第1コンクリート層を被せることができる。このあと、図2に示すように、汎用まくらぎコンクリート4の注入をおこなう。このとき、予め加工された構造材、この場合はスチールアングル3、を耐圧性の汎用コンクリート4に埋め込まれ、または、揺さぶりまたは振動により左側の界面領域において両種類のコンクリートの混合が達成される。これらの結果、1つのモノシリック体が形成されるが、このモノシリック体は上下方向にわたって望ましい相異なる耐摩滅性および耐磨耗性を有する。
【0018】
図3および図4には、下部底層領域が高度の耐摩滅性および耐磨耗性を有するまくらぎの製法が示される。この目的のため、まず最上部の薄い厚みの層の分を残して汎用コンクリート4がまくらぎモールド1に装入され、次いで汎用コンクリート4がまだ湿潤状態にあるとき耐摩滅性および/または耐磨耗性の特殊コンクリート3”の層が被せられる。
【0019】
図5および図6による実施例では、コンクリートまくらぎの下部底層領域に大きい引張り力が発生するレール区間のためのまくらぎの製法を示す。まくらぎモールド1に、ここでもやはりまず耐圧性の高い汎用コンクリート4がまくらぎ高さのほぼ半分まで装入され、次いで抗張力が大きい特殊コンクリート3'''が注入され、ここでも圧縮および振動により界面領域に両種類のコンクリートのモノシリック結合が実現される。
【0020】
最後に、図7から図9までは、図5および図6において製造されたコンクリートまくらぎにおいて、荷重が中央にかかり、中央の上側に追加の引張り応力が発生しうるような場合に備えたコンクリートまくらぎの実施態様を示す。この目的のため、まずまくらぎモールド1の中央に第1のコンクリート層として抗張力コンクリート層3''''が装入され、次いで通常の汎用コンクリート4がまくらぎモールド1に注入され、そのあと図5および図6と同じく抗張力特殊コンクリート3'''が別のコンクリート層として被せられる。
【0021】
本発明は図示の実施例に限定されるものではない。種々のまくらぎ領域における耐摩滅性または耐磨耗性を有する特殊コンクリートの品種ならびに抗張力コンクリートの使い方は種々さまざまであるので、たとえば、図5から図9までに示す抗張力を高める製法バリエーションと、図1から図4に示されるような、高度の耐摩滅性が実現される製法バリエーションとを組み合わせることも考えられうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】耐摩滅性のあるレール支え面を有する本発明のコンクリートまくらぎを製造するためのまくらぎモールドの断面図で、左右に相異なるバリエーションが示される。
【図2】汎用まくらぎコンクリートが注入された同様の断面図。
【図3】コンクリートまくらぎの下部底層における耐摩滅性材料または耐磨耗性材料、あるいはそれら両方の材料から成る本発明のコンクリートまくらぎの製造のためのまくらぎモールドの縦断面図。
【図4】汎用コンクリートがまだ湿潤状態にあるとき耐摩滅性および/または耐磨耗性の特殊コンクリートの層が被せられた同様の断面図。
【図5】下部底層における高抗張力をもつ本発明のコンクリートまくらぎの製造におけるまくらぎモールドの縦断面図。
【図6】抗張力が大きい特殊コンクリートが注入された同様の断面図。
【図7】上側の中央が大きい引張り応力に曝されるコンクリートまくらぎの製造のまくらぎモールドの断面図。
【図8】通常の汎用コンクリートがまくらぎモールドに注入された同様の断面図。
【図9】抗張力特殊コンクリートが別のコンクリート層として被せられた同様の断面図。
【符号の説明】
【0023】
1 まくらぎモールド 2 レール支え面 3’ 第1コンクリート層
3” 特殊コンクリート 3''' 特殊コンクリート 3'''' 抗張力コンクリート層
4 汎用コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧力を受収する高強度の汎用コンクリート(4)により構成される、レール支え面(2)およびレール下層領域をもつ高動態荷重用のコンクリートまくらぎにおいて、
レール支え面(2)または下部底層領域あるいはそれら両方が耐摩滅性材料、耐磨耗性材料、または抗張力材料によって構成されることを特徴とする、コンクリートまくらぎ。
【請求項2】
請求項1に掲げるコンクリートまくらぎにおいて、耐摩滅性材料、耐磨耗性材料、または抗張力材料は、予め製造されたプレートまたは金属アングル、特にスチールアングル(3)であることを特徴とする、コンクリートまくらぎ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に掲げるコンクリートまくらぎにおいて、耐摩滅性材料、耐磨耗性材料、または抗張力材料は、汎用コンクリート(4)と連結される第1のコンクリート層(3'、3'''')および/または特殊コンクリート(3''、 3''') であることを特徴とする、コンクリートまくらぎ。
【請求項4】
高圧力を受収する高強度の汎用コンクリート(4)により構成される、レール支え面(2)および下部底層領域をもつ高動態荷重用のコンクリートまくらぎの製法において、レール支え面(2)および/または下部底層領域は、予め製造されたプレートまたはプロフィルとしてまくらぎモールド(1)において汎用コンクリート(4)の下または上に装入され、汎用コンクリートの硬化にともない汎用コンクリートに結合される耐摩滅性材料、耐磨耗性材料、または抗張力材料から製造されることを特徴とする、製法。
【請求項5】
請求項4に掲げるコンクリートまくらぎの製法において、
耐摩滅性材料、耐磨耗性材料、または抗張力材料として、金属アングル、特にスチールアングル(3)が装入されることを特徴とする、製法。
【請求項6】
請求項4に掲げるコンクリートまくらぎの製法において、第1のコンクリート層(3'、3'''')および/または特殊コンクリート(3''、 3''')としての耐摩滅性材料、耐磨耗性材料、または抗張力材料は湿潤状態でまくらぎモールド(1)の中で汎用コンクリート(4)と結合され、硬化されることを特徴とする、製法。
【請求項7】
請求項6に掲げるコンクリートまくらぎの製法において、さまざまなコンクリート品種が順次まくらぎモールド(1)に装入され、界面領域において揺さぶりまたは振動により混ぜ合わせられ、モノシリック体を形成することを特徴とする、製法。
【請求項8】
請求項4に掲げるコンクリートまくらぎの製法において、好ましくは予め製造される樹脂プレートが使用されることを特徴とする、製法。
【請求項9】
請求項8に掲げるコンクリートまくらぎの製法において、プレートは流体または可塑可能の状態でコンクリートモールド(1)に装入され、この状態でコンクリートとの結合が生じることを特徴とする、製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−527201(P2008−527201A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548681(P2007−548681)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【国際出願番号】PCT/DE2005/002131
【国際公開番号】WO2006/069553
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(506311921)レール ワン ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】RAIL.ONE GmbH
【Fターム(参考)】