説明

高反射性硬化シリカ−チタニア物品およびその製造方法

【課題】 EUVリソグラフィーに使用するための反射光学素子において、EUVリソグラフィーの必要性を満たすように改良する。
【解決手段】 照射線硬化された少なくとも1つの面を有するシリカ−チタニアガラス基体および該硬化された面上の選択された多層反射コーティングからなる。前記多層反射コーティングが金属ケイ化物多層コーティングであり、前記シリカ−チタニアガラスが3〜12質量%のチタニアおよび88〜97質量%のシリカからなる。前記反射コーティングが30〜60のコーティング周期からなり、各周期が1つの金属層および1つのケイ素層を有し、該金属層が、前記基体の照射線硬化された面の上面の最初の層であることが好ましい。前記金属層および前記ケイ素層の各々が、約2nmから約5nmの範囲の厚さを有することも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高反射性硬化シリカ−チタニア物品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光リソグラフィーが、エレクトロニクス用物品の製造に長年に亘り使用されてきており、大量生産のために、一般的な白色(可視またはVIS)光投射システムの使用から、レーザ系DUV(深紫外)ステッパシステム(〜193mで動作する)へと進歩してきた。光リソグラフィーは今では、DUV範囲から、〜13.4nm(軟X線)波長を使用して動作するEUV(極紫外線)範囲へと広がってきている。各代々の光リソグラフィーシステムについて、それらシステムが相互作用する光を反射、屈折、および一般に操作するのに使用される光学材料は、使用されている光の波長が減少するにつれて高まっている技術的要求を満たすために、著しく進展しなければならない。これらの要求には、より高い透過率、より良好な光学的均一性、低応力を提供する、および/または次第に高価になってきているのでこれらの材料を使用する器具の長寿命に亘り今以上のレーザ耐久性を提供する改良された材料が含まれる。リソグラフィーシステムを変える(VISからDUVからEUV)目的は、より高速およびより小さい寸法の半導体デバイスの高まっている要求を満たすのに必要な、マスタ・パターンの高精度かつずっと少ない数の複製物を製造することにある。現在、〜32nmほど小さいハーフピッチ線幅を達成できる〜193nmのDUV波長を使用する生産システムが製造されている。速度の増加およびサイズの減少において著しい進歩を示す次世代のEUVシステムが開発中である。これらのEUVシステムは、13.4nmの高エネルギーEUV照射線を使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このEUVシステムは既存の材料を歪ませ、それゆえ、EUVリソグラフィーの必要性を満たすことのできる新規の材料または改良された材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、EUVまたは他の高エネルギー反射光学系への使用が意図された改良されたシリカ−チタニア(SiO2−TiO2、チタニアドープシリカとも呼ばれる)ガラス物品、およびそのような改良されたシリカ−チタニア物品の製造プロセスに関する。この改良されたシリカ−チタニア物品は、EUV用途のための反射光学素子の製造に使用されるコーティングのためのより安定した表面を提供する。ある態様において、本開示は、緻密化されたシリカ−チタニアガラスからなる改良された基礎ガラスに関する。別の態様において、本開示は、緻密化された基礎ガラス上に堆積された、EUV用途に適した多層反射光学コーティングを有する改良されたシリカ−チタニア基礎ガラスからなる改良された物品に関する。緻密化は、加速イオン、中性子、電子および光子(γ線、X線またはDUVレーザ)を使用して行うことができる。
【0005】
改良されたシリカ−チタニア基礎ガラスは、コーティング材料の堆積前に、<250nmの波長を有する照射線により選択された回数だけ故意に照射されたガラスである。シリカ−チタニアガラスの照射により、反射光学コーティングが施されるガラスの表面の少なくとも表面層の圧密または緻密化が誘発される。シリカ−チタニアガラスへのこの改良の結果、短波長反射光学素子用途への使用を促進する改良された表面安定性と共に、基礎シリカ−チタニアガラスの有益なバルク特性(CTE制御、有益な膨張性)を提供する、照射線硬化されたシリカ−チタニア基礎ガラス、およびそのようなガラスを使用して形成された物品である。
【0006】
本開示は、EUVリソグラフィーに使用するための反射光学素子にも関し、この光学素子は、照射線硬化された少なくとも1つの面を有するシリカ−チタニアガラス基体および硬化面上の選択された多層反射コーティングからなる。ある実施の形態において、多層反射コーティングは、金属ケイ化物(M/Si、ここで、Mは選択された金属である)、例えば、制限するものではなく、Mo/Si多層コーティングである。別の実施の形態において、シリカ−チタニアガラスは、3〜12質量%のチタニアおよび88〜97質量%のシリカからなる。さらに別の実施の形態において、反射コーティングは、30〜60のコーティング周期からなり、各周期は、1つの金属層および1つのケイ素層を有し、各周期の金属層とSi層は、独立して、層当たり約2nmから約5nmの範囲の厚さを有する。
【0007】
本開示は、さらに、高エネルギーの<50nm波長の光学系に使用するためのガラス物品に関し、このガラス物品は、選択された深さまで緻密化された少なくとも1つの表面を有する。ある実施の形態において、ガラス物品は、その高エネルギー光学系内で反射光学素子として使用される。別の実施の形態において、ガラス物品は、その高エネルギー光学系内で機械式/構造的支持体として使用される。
【0008】
本開示は、加えて、EUV光学系に関し、この系は、照射線硬化された少なくとも1つの面を有する少なくとも1つの光学素子および硬化面上の選択された多層反射コーティングを含む。ある実施の形態において、選択された反射コーティングは30〜60のコーティング周期からなり、各周期は1つのMo層および1つのSi層を有し、Mo層は、基体の照射線硬化面の上面にある第1の層であり、それにSi層が続く。各周期において、最初にMo層で次にSi層の順序が繰り返される。
【0009】
本開示は、さらに、EUVリソグラフィーに使用するための反射光学素子に関し、この光学素子は、照射線硬化面を有する少なくとも1つの面を有するシリカ−チタニアガラス基体およびこの基体の硬化面上の選択された多層反射コーティングからなり、
シリカ−チタニアガラスは、3〜12質量%のチタニアおよび88〜97質量%のシリカからなり、
多層反射コーティングは、30〜60のコーティング周期からなるMo/Si多層コーティングであり、各周期は1つのMo層および1つのSi層を有し、Mo層は、基体の照射線硬化面の上面の第1の層であり、
各周期におけるMo層およびSi層は、独立して、層当たり約2nmから約5nmの範囲の厚さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】表面変化をもたらす高強度照射線により生じた局所損傷区域を有する多層被覆ガラス基体の説明図
【図2】ガラス基体の表面上の圧密/緻密化区域および圧密/緻密化区域の上面に配置された高強度照射線からの損傷に対する抵抗を与える多層コーティングを有するガラス基体の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
リソグラフィー業界が13.4nmのEUV波長の照射線へと継続してシフトされてきたことにより、EUVシステム設計の多くの態様に多大な難題がもたらされてきた。中でも、光源の開発と管理、制御された雰囲気の室内で動作するシステムの設計、光学設計、およびEUV照射線を操作するために使用される光学材料並びにコーティングを含む、システムの全ての構造部品に使用すべき特有の低膨張材料の必要性がある。さらに、過去のリソグラフィーシステムは、典型的に、本質的に少なくとも部分的に屈折性であり(いくつかの反射素子およびいくつかの波長透過素子)、EUVシステムは、ベース基体に施された反射多層金属ケイ化物コーティングの使用に基づく完全に反射性の光学系として設計され、金属ケイ化物は、ケイ素Si、および通常はより陽性である金属、例えば、Moである別の金属の二成分化合物である。Mo/Siコーティングが好ましい。他の反射コーティング、例えば、W/SiおよびNi/Siも公知であり、本開示の実施に使用しても差し支えない。そのような反射系設計において、コーティングの基礎材料として使用される光学材料は、9〜40nmの範囲にある所望の非常に小さいサイズのリソグラフィー印刷を行うのに必要な精密制御を提供するために、幅広い使用温度範囲に亘り極めて安定でなければならない。基体として使用される現在の基礎材料は、この要件を満たしていない。その結果、改良された材料が必要とされている。
【0012】
本開示は、EUVリソグラフィーに使用するための光学素子に関する。この素子は、緻密化基体層を形成するために基体中に選択された深さまたは距離だけ基礎材料が緻密化された少なくとも1つの面を有する基礎材料または基体および緻密化層上の多層コーティング、例えば、反射コーティングからなる。ここでは、例示の多層コーティングとして、選択された金属およびケイ素、例えば、MoおよびSi(Mo/Siコーティング)の複数の交互の層からなる多層金属ケイ化物コーティングが使用される。他のコーティングとしては、W/SiおよびNi/Siが挙げられる。本開示によれば、金属ケイ化物コーティングが上に堆積される基礎ガラスは、250nm未満の波長の照射線に曝露されることによって緻密化された少なくとも1つの面を有するシリカ−チタニアガラスである。ある実施の形態において、照射線は193nm未満の波長である。別の実施の形態において、照射線は50nm未満の波長である。
【0013】
図1は、参照番号18により例示されるように多層コーティング12を通過してガラス10中に入る高強度の入射照射線11により生じて、多層コーティング12において表面変化17をもたらすガラスにおける局部損傷区域16をその上に有する多層コーティング12を備えたガラス基体10の説明図である。図1において、参照番号15は、コーティング12から適切に反射される光を表し、参照番号14は、コーティング12の表面変化17の結果として誤って方向付けられた光を表す。
【0014】
図2は、参照番号18により例示されたような多層コーティングを通過する高強度照射線11からの損傷に対する抵抗を与える、ガラス基体10と多層コーティング12との間の圧密/緻密化区域20を有するガラス基体10の説明図である。多層コーティング12の堆積前にガラス基体10の表面の照射により形成された、緻密化層20の結果として、ガラス基体10の表面は、EUVリソグラフィーにおける被覆素子の使用中に損傷に対して抵抗性である。リソグラフィーの使用中の照射線による損傷に対する緻密化されたガラス基体10の抵抗の結果として、多層コーティングの表面における変化が避けられるか、または最小となる。
【0015】
シリカ−チタニアガラスが、数十年に亘り当該技術分野において公知であり、そのガラスは、シリカとチタニアの前駆体を使用して数多くの手段により、例えば、火炎加水分解、OVD、VADおよびプラズマ堆積プロセスにおけるシリカとチタニアの前駆体の燃焼、およびゾルゲルプロセスによって製造できる。これらのプロセスは、3から18質量%のチタニア、および残りの量のシリカを含有する緻密なガラス質のシリカ−チタニア材料を形成するために使用される。ある実施の形態において、チタニア含有量は、3〜12質量%の範囲にあり、ガラスの残りはシリカである。さらに別の実施の形態において、チタニアの含有量は、5〜9質量%の範囲にあり、ガラスの残りはシリカである。基礎シリカ材料にチタニアを添加することにより、基礎シリカ材料のCTE、膨張性、および物理的性質と光学的性質の平坦化および/またはシフトが生じる。この初期の研究のほとんどは、M.E.Enordberg、P.Schultz等により行われた(米国特許第2326059号および同第3690855号の各明細書、並びに“Binary Titania-Silica Glasses Containing 10-20 Wt% TiO2,” J. Amer. Ceram. Soc. Vol. 59, Issue 5-6, pages 214-219を参照のこと)。シリカ−チタニアガラスおよびその製造方法を記載した最近の特許には、米国特許第5154744号、同第5970757号および同第7155936号、並びに欧州特許第1608598号および同第1608599号の各明細書が挙げられ、その教示の全てをここに引用する。長年に亘り、基本的な低CTEのシリカ−チタニアガラスが、地球上での天文用途、宇宙空間での望遠鏡、機械的安定性が必要とされる用途において、うまく使用されてきており、最近、EUVリソグラフィーシステムにおけるマスクと光学素子に最適な材料となってきた。EUVシステムにおいて、シリカ−チタニアガラスは、EUVリソグラフィーシステムが小さな特徴(〜32nm以下)を印刷する目的を達成するのを助ける特徴の組合せを提供した。シリカ−チタニアガラスは、CTEおよび所望のゼロクロスオーバー温度をこの特定の用途において望ましい値に実質的に調整するために、組成的および熱的の両方で変更できるという点でさらに別の利点を有する(米国再特許第RE40586E1号および米国特許出願公開第2009/0143213A1号の各明細書参照のこと。それらの教示をここに引用する)。これらの特許文献を使用して、直径が10cmから200cm、厚さが2cmから30cmのガラスのブールを製造できる。また、心棒に取り付けられたガラスのロッドを製造し、これを所望の形状に形成し、その後、ここに記載したように照射線硬化することもできる。
【0016】
この熱的に安定なシリカ−チタニア材料は、EUVステッパの設計において受け入れられ使用されているが、このシリカ−チタニア材料は、高フルエンス(強度)および長期の照射線への曝露後に、特に照射線が250nm未満である場合、変化し得る。照射線損傷のこの現象は、米国特許第5267343号、同第5574820号、同第6705125号、および同第6920765号の各明細書を含む数多くの文献において純粋なシリカガラスに関して議論されている。長時間に亘り光源により生じる曝露出力は、シリカガラス材料が曝露されているエネルギー量を表す。透過性である材料において、エネルギーはしばしば光学材料を透過し、上述した文献において述べたような残留効果を示し、この残留効果は、長期間に亘り増加した吸収率、誘発された複屈折効果、および様々な他の公知のシリカ格子欠陥の活性化と形成(例えば、E’SIHおよびSi−Si金属−金属結合)により、250nm未満の伝送性光学系における光学材料の使用に影響を与える。シリカ−チタニアにおける照射線が、M. Rajaram et al.による“Radiation-Induced Surface Deformation in Low-Thermal-Expansion Glasses and Glass-Ceramics,” Advanced Ceramic Materials, Vol. 3 [6], 598-600 (1988)により議論されている。
【0017】
上述したこれらの欠陥は、短波長、例えば、250nm未満の波長の照射線源の強力なエネルギーに曝露された光学材料(すなわち、透過性である材料)に生じる。しかしながら、EUVリソグラフィーシステムは、反射性システムであって、透過性システムではない。EUV成分の反射性は、薄膜コーティング積層体を形成するために選択された金属およびケイ素の多層コーティングを使用した結果である。現在、好ましい多層反射性コーティングは、EUV(13.4nm)光を反射するMo/Si多層表面を形成するモリブデンおよびケイ素の交互の層により製造される。13.4nm波長領域における反射率を改善する目的について、多くの他の金属−ケイ素コーティングの組合せが評価されてきたが、Mo/Si多層コーティングが依然として好ましいコーティングである。
【0018】
任意の基本的光学素子の主題において、反射率のほとんどの研究は、理想的な「完全無欠の」反射器に取り組んでいる。「完全無欠の」モデルの使用は、基本的な議論に役立ち、IinとIoutとの間に1:1の関係を使用することにより、技術的問題を解決するのを容易にしている。しかしながら、完全無欠な反射器は存在せず、全ての反射器には不完全部がある。各場合において、各界面で、入射する光と反射媒体との相互作用により、ある量の光が失われる(約4〜7%)。ある程度の光が非標的方向に散乱し、そのシステムに迷光を加え、一方で、ある程度の光が反射コーティングに吸収されおよび/またはその中を透過する。「不完全な」反射コーティングを通る光の漏れには、被覆された部品が光学素子またはマスクであるか否かにかかわらず、反射コーティングの下にあるシリカ−チタニア基体の表面に損傷を与える可能性が多大にある。その結果は、下にある基体への損傷が、時間の経過と共に増すこと、および光学素子の寿命の相当な期間に亘る曝露量である。例えば、照射線がコーティングを通って基体の表面に漏れた場合、その結果、光学素子の表面が緻密化され得、このことは、次に、基体の表面の隣接した区域と、緻密化されていない基体の下にある塊との間の小さな膨張差のために、反りをもたらし得る。
【0019】
より高出力の光源の改善された反射率および益々増える利用可能性の課題は、EUVシステムの設計および効率的な使用にとって実際に極めて重大である。そのシステムは、典型的に、6〜8の反射面を有し、これらは最終的に減少したリソグラフィーパターンを形成する。EUV光学システムおよび光源の設計者は、この問題に様々な角度から対処するために勤勉に研究してきた。EVU光源の出力を増加させる努力も払われ、これは、毎時のウェハーに関するシステムのスループット(抵抗感受性に基づく)に直接関連する。このことには、EUVリソグラフィーに関する所有権と全ビジネスモデルのコストに多大な影響があるだけでなく、反射性または透過性であろうと、システムに使用される光学素子により見込まれ処理される光の量を増加させる。より高い生産速度のためにビジネス基準を満たす目的で、出力レベルは、許容される生産速度を満たすために、現在の40〜90Wレベルから近い将来に100Wレベルに増加することが予測されており、この出力レベルは、長期間で約500Wへと増加することが予測されている。生産性に重点を置いた結果、光源の製造業者は、出力範囲を拡張しなければならず、100Wの目先の標的を超えるのに少なくとも2倍、出力レベルを増加させる必要性が予測されている。その結果、出力が増加する度に、シリカ−チタニア光学材料はより高いエネルギー密度に曝露され、これは転じて、光学コーティング(より多くの光の漏れを生じる傾向にある)およびその下にあるシリカ−チタニア光学基体により多くの応力を生じるであろう。シリカ−チタニアガラスは、天文学用鏡光学素子に長年に亘り使用されてきたが、この使用は、重要なCTE特徴に依存しており、シリカ−チタニア天文学用鏡素子は、典型的に、電磁スペクトルの赤外から可視部分における画像取込み(image capture)に使用されてきた。そのような光学素子の宇宙空間における損傷性照射線(例えば、ガンマ線またはX線)への故意ではない曝露は、光学系においておそらく検出可能ではなさそうである。何故ならば、その変化は、長波長の赤外光および可視光の画像のノイズにおいて失われるほどわずかであるからである。
【0020】
シリカ−チタニアは、193nm波長範囲において99.4%/cmから99.9%/cmの範囲にある透過率を有し得る典型的な純粋なシリカガラスと同じレベルの透過率を有していない。シリカ−チタニアガラスについて、透過率は低く、典型的に、193nm波長範囲において50%未満の透過率である。この結果は、シリカ−チタニアガラスが、コーティングを通って漏れるEUV光を吸収する傾向が大きいことである。その結果、シリカ−チタニアガラスは、純粋なシリカガラスよりも損傷を受けそうである。この損傷は、下にあるベースのシリカ−チタニアガラス材料への物理的変化による多数の影響をもたらし得る。初期の系の欠陥はおそらく、光学収差または焦点変化として現れ、これにより、その系を使用できる状態にするために、欠陥のある光学素子を、費用をかけて復元する/交換する必要があるであろう。
【0021】
それゆえ、ある実施の形態において、本開示は、EUVリソグラフィーに使用するのに適した照射線硬化表面を有するシリカ−チタニアガラス基体に関する。このガラスは、リソグラフィー機器における迷EUV照射線に潜在的に曝露される、UVシステム内の構造部材などの非透過性物品または反射性光学素子として使用できる。反射性光学素子として使用される場合、シリカ−チタニアガラス基体は、硬化表面上に選択された多層反射コーティングを有する。ある実施の形態において、多層反射コーティングは60のコーティング周期からなるMo/Siコーティングであり、各周期は1つのMo層および1つのSi層からなり、Mo層は、施された各々の最初の層である。各周期において、この順序でMo層、次いで、Si層が繰り返される。Mo層およびSi層の各々は、1層当たり約2nmから約5nmに及ぶ厚さを有する。
【0022】
別の実施の形態において、本開示は、照射線硬化された少なくとも1つの面を有するシリカ−チタニアガラスを製造する方法に関する。この方法は、
火炎加水分解、OVD、CVDおよびプラズマ法からなる群より選択される方法であって、その全てが、酸素および燃料(例えば、水素、メタン、天然ガス、エタンなど)の存在下で、シリカ−チタニアガラスに固結される、容器内または表面上(心棒またはマンドレル)に収集されるまたは堆積されるシリカ−チタニアスートに転化されるシリカ前駆体材料およびチタニア前駆体材料を使用する方法を使用して、シリカ−チタニアガラスのブールを製造する工程、
スートを容器中または心棒上に固結温度で堆積させることにより、またはスートが収集された後にスートまたはスートから形成されたプリフォームを固結温度に加熱することより、シリカ−チタニアスートを固結させる工程、
固結したシリカ−チタニアガラスを、選択されたアニールスケジュールにしがってアニールする工程、
固結したシリカ−チタニアガラスをブランク(直径が0.2メートル未満で厚さが0.15メートル未満のブールなどの小さなブールに一般に使用されている)に直接形成する工程、または固結されたガラスが大きなブール、例えば、直径が0.2〜2メートルである場合、水ジェット、ワイヤのこ引きおよび機械式切断技法を使用して、このブールからガラスブランクを抽出する工程、
このブランクを、機械的および光学的仕様に研削ラップ仕上げし、研磨して、光学素子を形成する工程であって、必要に応じて、機械的研磨、イオンビーム研磨または平削り、化学的研磨および磁気レオロジー仕上げを含む工程、
前記面を選択された深さまで圧密(緻密化)して光学素子を形成するために選択された時間に亘り250nm未満の波長の入射する高エネルギー照射線にこの面を曝露することによって、光学素子の少なくとも1つの面を緻密化する工程、および
照射後に光学素子を分析して、光学素子の照射線硬化された面が、仕様に適合していることを判定し、必要であれば、緻密化された層の全てを除去せずに、仕様を満たすように照射線硬化された面を再研磨する工程、
を有してなる。1つの工程または追加の数の工程において、多層反射コーティングが、放射線硬化された面上に堆積される。先の方法は、3〜12質量%のチタニアおよび88〜97質量%のシリカから実質的になるシリカ−チタニアガラスを製造するのに適している。
【0023】
ある実施の形態において、堆積された多層反射コーティングは、30〜60周期からなるMo/Siコーティングであり、各周期は、照射線硬化された面上に堆積された1つのMo層および1つのSi層からなり、Mo層は、施された各々の最初の層である。MoおよびSi層の各々は、当該技術分野において公知の方法、例えば、制限するものではなく、マグネトロン・スパッタリング、イオンアシスト蒸着およびプラズマイオンアシスト蒸着を使用して、2〜5nmの範囲の厚さに堆積される。シリカ−チタニアガラスブールを製造する方法は、米国特許第2326059号、同第5154744号、同第5970757号、同第7155936号、米国再発行特許第RE40586E1号、米国特許出願公開第2009/0143213A1号、および欧州特許第1608598号および同第1608599号の各明細書を含む数多くの特許、特許出願および技術文献に開示されている。
【0024】
請求項に記載された主題の精神および範囲から逸脱せずに、ここに記載された実施の形態に様々な改変および変更を行えることが、当業者には明らかであろう。それゆえ、本明細書は、ここに記載された様々な実施の形態の改変と変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲に入るという条件で包含することが意図されている。
【符号の説明】
【0025】
10 ガラス基体
11 高強度照射線
12 多層コーティング
16 損傷区域
17 表面変化
20 緻密化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVリソグラフィーに使用するための反射光学素子であって、
照射線硬化された少なくとも1つの面を有するシリカ−チタニアガラス基体および該硬化された面上の選択された多層反射コーティングからなる光学素子において、
前記多層反射コーティングが金属ケイ化物多層コーティングであり、前記シリカ−チタニアガラスが3〜12質量%のチタニアおよび88〜97質量%のシリカからなることを特徴とする反射光学素子。
【請求項2】
前記反射コーティングが30〜60のコーティング周期からなり、各周期が1つの金属層および1つのケイ素層を有し、該金属層が、前記基体の照射線硬化された面の上面の最初の層であることを特徴とする請求項1記載の反射光学素子。
【請求項3】
1つの周期の前記金属層および前記ケイ素層の各々が、各層で約2nmから約5nmの範囲の厚さを有することを特徴とする請求項2記載の反射光学素子。
【請求項4】
前記金属がMoであり、前記反射コーティングが30〜60のコーティング周期からなり、各周期が1つのMo層および1つのSi層を有し、該Mo層が、前記基体の照射線硬化された面の上面の最初の層であり、
1つの周期の前記Mo層および前記Si層の各々が、各層で約2nmから約5nmの範囲にある厚さを有することを特徴とする請求項1記載の反射光学素子。
【請求項5】
前記シリカ−チタニアガラスが5〜9質量%のチタニアおよび91〜95質量%のシリカからなり、
前記反射コーティングが30〜60のコーティング周期からなり、各周期が1つのMo層および1つのSi層を有し、該Mo層が、前記基体の照射線硬化された面の上面の最初の層であり、
1つの周期の前記Mo層および前記Si層の各々が、各層で約2nmから約5nmの範囲にある厚さを有することを特徴とする請求項1記載の反射光学素子。
【請求項6】
EUVリソグラフィーに使用ための反射光学素子を製造する方法であって、
3〜12質量%のチタニアおよび88〜97質量%のシリカからなるシリカ−チタニアガラスブランクを提供する工程、
前記ブランクを機械的および光学的仕様に研削ラップ仕上げおよび研磨して、シリカ−チタニアガラス光学素子を形成する工程、
前記光学素子の少なくとも1つの面を、該光学素子中の選択された深さまで該面の緻密化を行い、それによって、少なくとも1つの照射線硬化された面を有する光学素子を形成するために、該面を選択された時間に亘り250nm未満の波長の入射する高エネルギー照射線に曝露することによって、緻密化する工程、
照射後に前記光学素子を分析して、該光学素子の前記照射線硬化された面が、前記仕様に適合していることを判定し、必要であれば、前記緻密化された層の全てを除去せずに、仕様を満たすように前記照射線硬化された面を再研磨する工程、および
前記照射線硬化された面上に多層反射コーティングを堆積させ、それによって、EUVリソグラフィーに適した反射面を形成する工程、
を有してなる方法。
【請求項7】
前記多層反射コーティングを堆積させる工程が、30〜60周期の金属/Siコーティングを堆積させることを意味し、各周期が、前記照射線硬化された面上に堆積された1つの金属層および1つのSi層からなり、該金属層が、堆積された最初の層であり、前記金属層および前記Si層の各々が、約2〜5nmの範囲にある厚さで堆積されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記金属がモリブデンであり、前記堆積された多層反射コーティングがMo/Siコーティングであることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記多層Mo/Siの堆積が、マグネトロン・スパッタリング、化学蒸着、イオンアシスト蒸着およびプラズマイオンアシスト蒸着からなる群より選択される堆積方法によるものであることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
照射線硬化されたシリカ−チタニアガラスを製造する方法であって、
火炎加水分解、OVD、CVDおよびプラズマ法からなる群より選択される方法を使用してシリカ−チタニアガラスのブールを製造する工程であって、選択された方法が、酸素および燃料の存在下で、容器内または表面上に収集されるまたは堆積されるシリカ−チタニアスートに転化されるシリカ前駆体材料およびチタニア前駆体材料を使用する方法である工程、
前記シリカ−チタニアスートを固結温度で固結させる工程、
前記固結したシリカ−チタニアガラスを、選択されたアニールスケジュールにしがってアニールする工程、
前記ブールからシリカ−チタニアブランクを形成する工程、
前記ブランクを研削ラップ仕上げし、研磨して、シリカ−チタニア光学素子を形成する工程、
前記光学素子の少なくとも1つの面を、該光学素子中の選択された深さまで該面の圧密(緻密化)を行うために、該面を選択された時間に亘り250nm未満の波長の入射する高エネルギー照射線に曝露することによって、緻密化する工程、および
照射後に前記光学素子を分析して、該光学素子の照射線硬化された面が、前記仕様に適合していることを判定し、必要であれば、前記緻密化された層の全てを除去せずに、仕様を満たすように前記照射線硬化された面を再研磨する工程、
を有してなり、
前記シリカ−チタニアガラスが、3〜12質量%のチタニアおよび88〜97質量%のシリカからなることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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