説明

高周波ペーシング及び腎神経のアブレーションを使用する心房細動の治療

【課題】アブレーションカテーテルを使用する方法を提供する。
【解決手段】血圧を低下させること、及び/又は心不整脈、特に心房細動を治療することを目的とする、患者の治療のための方法は、腎動脈の管腔内へのアブレーションカテーテルの挿入を含む。このアブレーションカテーテルは、腎動脈内の壁組織を刺激して、腎神経の位置を特定することに役立ち得る電極を備えている。腎神経の高周波刺激が、患者の血圧の低下を引き起こし、これによって、腎神経が近傍にあることが示される。アブレーションカテーテルは、高周波エネルギー、超音波エネルギー、マイクロ波エネルギー、又は極低温冷却を使用して、腎神経をアブレーションするために使用される。潅流アブレーションカテーテルを使用して、内皮細胞などの、腎神経以外の腎動脈の管腔の壁内の細胞への損傷を軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腎神経の除神経を単独で、又は心臓組織のアブレーションと組み合わせて使用する、心房細動を含めた心不整脈の治療のための、アブレーションカテーテルを使用する方法に関する。具体的には、本方法は、高周波ペーシングを使用して、アブレーションのための腎神経を特定し、また薬剤不応の心房細動の症例を治療するために、心臓内での肺静脈の隔離を達成するための、心臓組織のアブレーションの使用を含み得る。
【背景技術】
【0002】
心不整脈及び特に心房細動は、特に老年人口では、一般的かつ危険な病状として持続する。正常な洞調律を有する患者では、心房組織、心室組織、及び興奮伝導組織から構成される心臓は、同期的なパターン化された様式で拍動するように電気的に興奮される。心不整脈を有する患者では、心臓組織の異常領域は、正常な洞調律を有する患者におけるような、通常の伝導組織に関連する同期的な拍動周期には従わない。その代わりに、心臓組織の異常領域は、隣接する組織へ異常に伝導することにより、心臓周期を、非同期的な心律動へと混乱させる。そのような異常な伝導は、例えば、洞房(SA)結節の領域内、房室(AV)結節及びヒス束の伝導経路に沿って、あるいは心室及び心房室の壁を形成する心筋組織内などの、心臓の様々な領域で発生することが、従来より知られている。
【0003】
心房性不整脈を含めた心不整脈は、心房室の周りで散乱して、しばしば自己伝播する電気インパルスの複数の非同期的ループを特徴とする、マルチウェーブレットリエントラント型となる場合がある。マルチウェーブレットリエントラント型に代わって、又はそれに加えて、心不整脈はまた、心房の組織の孤立領域が、急速で反復的な様式で自律的に興奮する場合などの、局所的な起源を有する場合もある。心室性頻脈症(V−tach又はVT)は、心室のうちの1つ内で起こる頻脈症、すなわち高速な心律動である。これは、心室細動及び突然死につながり得るため、潜在的に致死性の不整脈である。
【0004】
不整脈の1つのタイプ、心房細動は、洞房結節によって生成される通常の電気インパルスが、心房及び肺静脈内で生じる無秩序な電気インパルスによって圧倒され、不規則なインパルスが心室に伝導する場合に発生する。不規則な心拍が結果的にもたらされ、これは、数分から数週間、又は更に数年間、持続する場合がある。心房細動(AF)は、しばしば脳卒中が原因となる死亡のリスクの、僅かな増大につながる、慢性的な症状である場合が多い。リスクは年齢と共に増大する。80歳を超える人口の約8%が、ある程度のAFを有している。心房細動は、無症候性である場合が多く、それ自体は概ね致死性ではないが、動悸、脱力感、失神、胸痛、及び鬱血性心不全をもたらす恐れがある。脳卒中のリスクは、AFの間に増大するが、これは、収縮が不十分な心房及び左心耳内に、血液が溜まって血栓を形成するためである。AFに関する第一選択の治療法は、心拍数を減らすか、又は心律動を通常に戻す、投薬治療である。更には、AFを有する患者は、脳卒中のリスクから守るために、抗凝血剤を与えられる場合が多い。そのような抗凝血剤の使用は、それ自体のリスクである内出血を伴う。一部の患者では、投薬治療は十分ではなく、その患者のAFは、薬剤不応、すなわち、標準的な薬理学的介入では治療不可能であると判断される。同期電気的除細動もまた、AFを通常の心律動に変換するために使用することができる。あるいは、AFの患者は、カテーテルアブレーションによって治療される。しかしながら、そのようなアブレーションは、全ての患者で成功するわけではない。それゆえ、そのような患者に関する、代替的な治療法を有する必要性が存在する。外科的アブレーションは、1つの選択肢であるが、また、外科手術に従来より関連する、付加的なリスクも有する。
【0005】
心不整脈の診断及び治療には、心臓組織、特に心内膜及び心臓容積の電気的特性をマッピングすること、並びにエネルギーの適用によって心臓組織を選択的にアブレーションすることが含まれる。そのようなアブレーションは、望ましくない電気信号が心臓のある部分から別の部分へと伝播することを中止させるか、又は修正することができる。アブレーションのプロセスは、非伝導性の損傷部位の形成によって、望ましくない電気経路を破壊する。損傷部位を形成するための様々なエネルギー送達の様式が開示されており、それらの様式としては、心臓組織壁に沿って伝導の遮断部分を作り出すための、マイクロ波エネルギー、レーザーエネルギー、及びより一般的には、高周波エネルギーの使用が挙げられる。マッピングの後にアブレーションが続く、2段階の処置では、心臓内部の各点での電気的活動は、典型的には、1つ以上の電気センサー(又は電極)を収容するカテーテルを心臓内へと前進させ、多数の点でのデータを取得することによって、感知され測定される。次いでこれらのデータを利用して、アブレーションが実施される心内膜の標的領域を選択する。
【0006】
電極カテーテルは、長年にわたり医療現場で一般的に使用されている。それらは、心臓内の電気的活動を刺激し、マッピングするために使用され、異常な電気的活動の部位をアブレーションするために使用される。使用時には、電極カテーテルは、主要な静脈又は動脈内に、例えば大腿動脈内に挿入され、次いで関心対象の心室内へと導かれる。典型的なアブレーション処置は、その遠位端に先端電極を有するカテーテルを、心腔内に挿入することを伴う。参照電極が、一般的には患者の皮膚にテープで貼り付けられるか、あるいは心臓内又は心臓付近に配置されている第2のカテーテルによって、提供される。RF(高周波)電流が、アブレーションカテーテルの先端電極に印加され、電流が、先端電極を囲繞する媒体、すなわち、血液及び組織を通って、参照電極に向かって流れる。電流の分布は、血液と比較して、より高い導電性を有する組織と接触する、電極表面の量に応じて決定される。組織の電気抵抗によって、組織の加熱が発生する。組織は、心臓組織内の細胞の破壊を引き起こし、結果として心臓組織内部に非導電性の損傷部位が形成されるように、十分に加熱される。このプロセス中に、加熱された組織から電極自体への伝導の結果として、電極の加熱もまた発生する。電極の温度が、十分に高くなり、恐らく60℃を上回る場合には、脱水された血液タンパク質の薄く透明な皮膜が、電極の表面上に形成され得る。温度が上昇し続ける場合には、この脱水層が徐々に厚くなり、電極表面上の血液凝固をもたらし得る。脱水された生物学的材料は、心内膜組織よりも高い電気抵抗を有するため、電気エネルギーの組織内部への流れに対するインピーダンスもまた増大する。このインピーダンスが十分に増大すると、インピーダンス上昇が発生し、カテーテルを身体から取り出して先端電極を洗浄しなければならない。
【0007】
米国特許第6,292,695号では、少なくとも1つの刺激電極を収容する先端区域を有し、その電極が選択された血管内の位置に安定して置かれる電気生理学カテーテルの使用によって、心細動、頻脈、又は心不整脈を制御する方法を開示している。この電極は、刺激手段に接続され、刺激は、心臓を神経支配する交感神経又は副交感神経に対して、その神経を脱分極し、心臓の制御を実現するために十分な強度で、血管の壁全体にわたり、血管横断的に加えられる。
【0008】
心臓不整脈の治療のための、腎臓の神経刺激の使用は、Demarisらによる米国特許出願公開第2007/1029671号に開示された。Demarisは、標的の神経線維における、不可逆性の電気穿孔法又は電気融合法、アブレーション、壊死及び/又はアポトーシスの誘起、遺伝子発現の変更、活動電位の減衰又は遮断、サイトカイン増加調節の変化、並びに他の条件を実行するための、神経調節の使用を記述している。一部の実施形態では、そのような神経調節は、神経調節剤、熱エネルギー、又は高密度焦点式超音波の適用を通じて達成される。
【0009】
Deemらによる米国特許出願公開第2010/0222851号では、腎臓の神経調節の監視が、腎神経を特定して除神経又は調節するために、提案された刺激であった。神経調節の前の、そのような神経の刺激は、血流を低減することが期待されるが、一方で神経調節の後の刺激は、神経調節の前と同様の状況パラメーター及び位置を利用する場合、同程度まで血流を低減することは期待されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、患者の治療のための方法を目的とし、具体的には、腎臓アブレーションを単独で、又は心臓アブレーションと組み合わせて使用する、心房アブレーションなどの、心不整脈の治療のための方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
患者の治療のための本方法は、上に電極が載置されたアブレーションカテーテルを、患者の腎動脈内に挿入する工程であって、その腎動脈が、管腔を画定する壁を有する、工程と、その腎動脈の管腔の壁の一部分を刺激する工程と、患者の血圧を監視する工程と、刺激が患者の血圧の低下を引き起こす、腎臓の組織の壁上の位置を特定することによって、その位置の付近の腎神経の存在を指示する工程と、特定された位置の付近のその腎神経をアブレーションする工程と、を含む。
【0012】
アブレーションが行なわれた後、その特定された位置を再び刺激して、その刺激が患者の血圧を低下させるか否かを判定し、低下が存在する場合には、腎神経をアブレーションするために、特定された位置を再びアブレーションすることが、必要であり得る。使用されるアブレーションカテーテルは、高周波エネルギー、超音波エネルギー、マイクロ波エネルギー、又は極低温冷却を使用して、組織をアブレーションすることが可能なものとすることができる。アブレーションカテーテルは、内皮層などの、腎神経細胞以外の腎動脈の壁への損傷を低減するために、潅流電極を有し得る。潅流電極は、冷却用流体が中を通って流れることが可能な複数個の孔を有し得るか、又は閉鎖システム内の冷却用流体によって冷却することができる。冷却用流体は、生理食塩水とすることができ、好ましくは、実質的に患者の体温よりも低く、より好ましくは、約20℃に冷却される。
【0013】
腎動脈の管腔の壁の一部分を刺激する工程は、高周波パルスを、好ましくは約20KHzを超える周波数で使用して、腎神経を刺激することにより、患者内の血圧反応を引き起こすことを含む。アブレーションカテーテルは、腎動脈の壁に沿って第2の位置に移動させることができ、刺激する工程、監視する工程、特定する工程、及びアブレーションする工程を繰り返すことができる。このことは、全ての腎神経が除神経されていると考えられるまで、実施することができる。
【0014】
その治療が心不整脈に関する、請求項1に記載の方法。心不整脈の治療に関して、本方法は、好ましくは、患者の心臓内にアブレーションカテーテルを挿入する工程と、心不整脈を矯正するために、そのアブレーションカテーテルを使用して心臓組織をアブレーションする工程と、を含む。心不整脈が心房細動である場合には、心臓組織をアブレーションする工程は、1つ以上の肺静脈の隔離をもたらす。
【0015】
本方法で使用されるアブレーションカテーテルは、アブレーションカテーテルの先端部の位置に関する情報を検証することが可能な、磁気位置センサーなどの、位置センサーを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明のこれらの及び他の特徴と利点は、添付の図面と共に考慮する場合、以下の詳細な説明を参照することによって、より良好に理解されよう。
【図1】心臓カテーテル法に関するシステムの概略的な絵図。
【図2】ヒト腎臓の解剖学的構造を示す概略図。
【図3】腎動脈の壁の一部分の横断面の概略図。
【図4】本発明のカテーテルの一実施形態の側面図。
【図5】図4のカテーテルの遠位区域の斜視図。
【図6】本発明による腎臓除神経の方法の流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態による、腎臓及び/又は心臓カテーテル法に関するシステム20の概略的な絵図である。システム20は、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,California)による製造の、CARTO(商標)システムに基づき得る。このシステムは、カテーテル28の形態の侵襲性プローブ及び制御コンソール34を含む。以降で説明する実施形態では、カテーテル28は、当該技術分野において既知であるように、心内膜組織をアブレーションする際に使用される。あるいは、このカテーテルは、心臓内又は他の身体器官内で、他の治療目的及び/又は診断目的のために、必要な変更を加えて使用してもよい。
【0018】
心臓専門医などの操作者26は、カテーテルの遠位端30が、腎動脈又は患者の心臓22の心室に入り込むように、患者24の血管系を通してカテーテル28を挿入する。操作者は、カテーテルの遠位先端部が、所望の位置で心内膜組織と係合するように、カテーテルを前進させる。カテーテル28は、典型的には、その近位端で、好適なコネクタによってコンソール34に接続される。このコンソールは、以降で更に説明するように、遠位先端部によって係合された位置で、心臓内の組織をアブレーションするために、カテーテルを介して高周波電気エネルギーを供給する、高周波(RF)発振器40を含む。あるいは、このカテーテル及びシステムは、冷凍アブレーション、超音波アブレーション、又はマイクロ波エネルギーの使用を通じたアブレーションなどの、当該技術分野において既知である他の技術によって、アブレーションを実行するように構成することができる。
【0019】
コンソール34は、磁気位置感知を使用して、心臓22内部の遠位端30の位置座標を判定する。この目的のために、コンソール34内の駆動回路38が、磁場発生器32を駆動して、患者24の身体内部に磁場を生成する。典型的には、この磁場発生器は、患者胴体の下方の、患者の外部の既知の位置に設置されるコイルを含む。これらのコイルは、心臓22を含む既定の作業範囲内に磁場を生成する。カテーテル28の遠位端30内部の磁気位置センサー(図2に示す)が、これらの磁場に反応して電気信号を生成する。信号プロセッサ36は、典型的には、場所及び配向の座標の双方を含む、遠位端の位置座標を判定するために、これらの信号を処理する。この位置感知の方法は、上述のCARTOシステムに実装され、その開示が全て参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際特許公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されている。
【0020】
プロセッサ36は、典型的には、カテーテル28から信号を受け取り、コンソール34の他の構成要素を制御するための、好適なフロントエンド回路及びインターフェイス回路を備える、汎用コンピュータを含む。このプロセッサは、本明細書で説明される機能を実行するように、ソフトウェアでプログラムすることができる。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコンソール34にダウンロードしてもよく、又は光学的、磁気的、若しくは電子的記憶媒体などの、有形媒体上に提供されてもよい。あるいは、プロセッサ36の一部又は全ての機能を、専用の又はプログラム可能な、デジタルハードウェア構成要素によって実行してもよい。カテーテル、及びシステム20の他の構成要素から受け取った信号に基づいて、プロセッサ36は、ディスプレイ42を駆動して、患者身体内での遠位端30の位置に関する視覚的フィードバック、並びに進行中の処置に関する状況情報及びガイダンスを、操作者26に与える。
【0021】
あるいは、又は更に、システム20は、患者24の身体内部でカテーテル28を誘導及び操作するための、自動化機構を含み得る。そのような機構は、典型的には、カテーテルの長手方向の動き(前進/後退)、及びカテーテルの遠位端の横方向の動き(偏向/操舵)の双方を制御することが可能である。この種の機構の一部は、例えば、この目的のためのDC磁場を使用する。そのような実施形態では、プロセッサ36は、カテーテル内の磁場センサーによって提供される信号に基づいて、カテーテルの動きを制御するための制御入力を生成する。これらの信号は、以降で更に説明するように、カテーテルの遠位端の位置、及び遠位端上に加えられる力の双方を示す。
【0022】
図2は、左右の腎臓Kを含む、ヒトの腎臓及び泌尿器系の概略図であり、腎臓Kは、腎動脈RAによって酸素化血液を供給され、同様に腎動脈RAは、腹部大動脈AAによって酸素化血液を供給される。腎臓は、その比較的小さい寸法にも関わらず、心臓の酸素化血液の全拍出量の約20%を受け取る。各腎動脈は、腎区動脈へと分枝して、更に腎被膜を貫通する葉間動脈へと分かれ、腎錐体の間の腎柱を通って延びる。尿は、腎臓Kによって、泌尿器系の尿管Uへ、膀胱Bへと排出される。
【0023】
酸素化血液は、腎臓によって使用された後、腎臓から、腎静脈RV及び下大静脈IVCを介して、心臓へと流れ戻る。腎臓と中枢神経系とは、腎神経叢を介して情報伝達し、その腎神経叢の繊維は、腎動脈に沿って進み、各腎臓に至る。腎神経は、腎動脈RAの長さに沿って長手方向に、かつ腎動脈RAの周囲で、概ね動脈壁の外膜の内部に、内皮層の約3mm下で延びる。図3は、内皮層E、平滑筋細胞SMCの層、及び外膜Aを含む、腎動脈を含めた、典型的な動脈の層を示す。腎神経RNは、外膜の内部に主として存在する。
【0024】
図3及び図4は、本発明で使用するための、先端アブレーション電極17を通って流れる改善された潅流を有する、カテーテル28の一実施形態を示す。このカテーテルは、参照により本明細書に組み込まれる、2010年4月29日出願の米国特許出願第12/770,582号に、更に詳細に記載されている。先端電極は、先端電極内への流体の流れを促進し、先端電極の外面上の全ての位置での、より均一な流体の通達範囲及び流れを提供する際の、先端電極内での流体の分散を促進するように構成される。したがって、このカテーテルは、患者に対して、より低い流体負荷を有するより低い流速で操作可能であり、その一方で、従来の冷却電極よりも、改善された先端電極の冷却を提供する。更には、先端電極での高速の流体出口速度は、アブレーション中の炭化物及び/又は血栓の発生率を低減する、先端電極の周囲の流体境界層を作り出す際に役立つ、「噴射」作用を提供する。例えば生理食塩水又はヘパリン化生理食塩水などの流体を、先端電極からアブレーション部位に輸送して、組織を冷却し、凝血を低減し、かつ/又はより深い損傷部位の形成を促進することができる。神経阻害剤及び神経興奮剤などの、任意の診断用及び治療用の流体を含めた、他の流体もまた、同様に送達し得ることが理解されよう。
【0025】
カテーテル28は、近位端及び遠位端を備える細長いカテーテル本体12、カテーテル本体12の遠位端の中間偏向区域14、及び潅流されるマッピング及びアブレーション先端電極17を備える遠位区域15を有する。このカテーテルはまた、中間区域14の偏向(単一方向性、又は双方向性)を制御するための制御ハンドル16を、カテーテル本体12の近位端に含む。
【0026】
カテーテル本体12は、単一の、軸性すなわち中央の管腔18を有する、細長い管状の構造を含む。カテーテル本体12は可撓性、すなわち屈曲可能であるが、その長さに沿って実質的に圧縮不可能である。カテーテル本体12は、任意の好適な構造のものとすることができ、任意の好適な材料で作製することができる。現状で好ましい構造は、ポリウレタン又はPEBAXで作製される外壁を含む。この外壁は、カテーテル本体12の捩れ剛性を上昇させるために、ステンレス鋼などの埋め込み式の編組みメッシュを含むことにより、制御ハンドル16が回転されると、カテーテル28の中間区域14が対応する方式で回転する。
【0027】
カテーテル本体12の外径は重要ではないが、好ましくは約8フレンチ以下、より好ましくは7フレンチである。同様に、外壁20の厚さも重要ではないが、中央管腔18が、牽引部材(例えば、牽引ワイヤー)、リード線、及び任意の他の所望のワイヤー、ケーブル、若しくは管材を収容することができるように、十分に薄い。所望の場合、外壁の内表面は、改善された捩れ安定性を提供するために、補強管で裏打ちされる。
【0028】
制御ハンドル16と偏向可能な区域14との間に延びる構成要素は、カテーテル本体12の中央管腔18を通過する。これらの要素としては、遠位区域15上の先端電極17及びリング電極22用のリード線、遠位区域15に流体を送達するための潅流管材、遠位区域内に担持される位置特定センサー用のケーブル、中間区域14を偏向させるための牽引ワイヤー、並びに遠位先端区域15での温度を感知するための1対の熱電対ワイヤーが挙げられる。
【0029】
中間区域14の遠位端には、遠位先端区域15があり、この先端区域15は、先端電極17、及び先端電極17と中間区域14との間の比較的短い連結管材又は被覆部材24の部分を含む。図4に示す実施形態では、連結管材24は、先端電極及びリング電極用のリード線30、センサーケーブル33、熱電対ワイヤー41及び42、牽引ワイヤー32、並びに潅流管材38の、先端電極17内への通過を可能にする、単一の管腔を有する。この連結管材24の単一の管腔によって、これらの構成要素は、必要に応じて、中間区域14内のそれぞれの管腔から、先端電極17内部のそれらの構成要素の位置に向かって、再び向きを変えることができる。開示される実施形態では、管材24は、6mm〜12mmの範囲の、より好ましくは約11mmの長さを有する、例えばPEEK管材の、保護管材である。先端電極及びリング電極用のリード線30を含めた、選択された構成要素は、他の構成要素及び先端電極の構造の、より良好な明瞭性のために、示されていないことに留意されたい。
【0030】
シェル50は、生体適合性合金を含めた、生体適合性金属で構築される。好適な生体適合性合金としては、ステンレス鋼合金、貴金属合金、及び/又はこれらの組み合わせから選択される合金が挙げられる。一実施形態では、このシェルは、約80重量%のパラジウム及び約20重量%の白金を含む合金で構築される。代替の実施形態では、シェルは、約90重量%の白金及び約10重量%のイリジウムを含む合金で構築される。シェルは、取り扱い、患者の身体を通る輸送、並びにマッピング及びアブレーション処置中の組織接触のために好適である、十分に薄いが頑丈なシェル壁を製造する、深絞り製造プロセスによって形成することができる。開示される実施形態では、シェルの壁は、約0.076mm(約0.003インチ)〜0.254mm(0.010インチ)の範囲の、好ましくは約0.076mm(約0.003インチ)〜0.102mm(0.004インチ)の範囲の、より好ましくは約0.089mm(約0.0035インチ)の概ね均一な厚さを有する。深絞り法は、十分に薄い壁を有するシェルの製造に適しているが、ドリル穿孔及び/又はキャスティング/型成形などの、他の方法もまた使用可能であることが理解されよう。
【0031】
開示される実施形態では、6つの外周の列に配置構成される、56個のポートが存在し、5つの列R1〜R5は、それぞれ10個のポートを有し、遠位の列R6は、6個のポートを有する。列R1〜R5のポートは、互いに概ね等間隔であるが、隣り合う列のポートが、互いにオフセットしていることにより、各ポートは、4個又は6個の隣接するポートに対して等間隔である。最も遠位の10個のポートの列R5は、丸みを帯びた、シェルの遠位部分に配置される。列(又は円)R6は、平坦な、又はほぼ平坦な、シェルの遠位端53上に配置される。この列R6の6個のポートは、円上で等角度である。
【0032】
連結管材24上に載置されるリング電極22は、白金又は金、好ましくは白金とイリジウムとの組み合わせなどの、任意の好適な固体導電性材料で作製することができる。リング電極は、接着剤などで、連結管材24上に載置することができる。あるいは、リング電極は、白金、金、及び/又はイリジウムのような導電性材料で、管材24をコーティングすることによって形成してもよい。コーティングは、スパッタリング、イオンビーム蒸着、又は等価の技術を使用して適用することができる。管材24上のリング電極の数は、所望に応じて変更することができる。リングは、単極性であっても双極性であってもよい。図示の実施形態では、遠位の単極性リング電極、及び近位の1対の双極性リング電極が存在する。各リング電極は、対応するリード線に接続される。先端電極17は、リード線によって、アブレーションエネルギーの供給源に電気的に接続される。リング電極21は、対応するリード線によって、適切なマッピング又は監視システムに電気的に接続される。
【0033】
本発明の先端電極は、30ワット未満では約8mL/分以下で、30〜50ワットでは約17mLで動作することができる。それゆえ、5〜6時間の処置での、患者に対する流体負荷の軽減は、極めて顕著となり得る。更には、プログラム可能なポンプによって流速が調節される場合、流速は、より低いワット数では更に低くなり得る。
【0034】
図5は、本発明による2重アブレーション処置に関するプロセスを示す、流れ図である。工程100で、医師は、治療される患者の腎動脈内にアブレーションカテーテルを挿入する。このことは、腎動脈内への切開、及び腎動脈内へのアブレーションカテーテルの操作を通じて、あるいは別の既知の方法を通じて達成することができる。工程110では、好ましくは20KHzを超える周波数で、高周波刺激を使用することによって、高周波アブレーションエネルギーを適用する位置を判定する。高周波刺激を使用して、腎神経がアブレーションカテーテルの付近にあるか否かを判定することができる。腎神経の高周波刺激は、患者の血圧の低下を引き起こし、それゆえ、工程120では、患者の血圧が監視される。工程130で、高周波刺激に反応して血圧の低下が認められた場合には、工程140で、その組織をアブレーションすることができる。このアブレーションカテーテルを使用して、腎神経をアブレーションする。例えば、上述の潅流高周波アブレーションカテーテルを使用して、次に高周波エネルギーを、腎動脈の内側上のこの局所に適用し、腎神経のアブレーションをもたらすことができる。潅流アブレーションカテーテルからの冷却用流体が、腎動脈狭窄の可能性を回避するために、内皮細胞及び平滑筋細胞を過度の損傷から保護する。この冷却用流体は、内皮層への損傷を低減するために十分に冷たいものとするべきであり、好ましくは、患者の体温よりも冷たく、より好ましくは、約20℃未満とするべきである。高周波エネルギーを使用する以外に、アブレーションカテーテルは、当該技術分野において既知であるような、超音波若しくはマイクロ波の放射、又は寒剤を使用することができる。
【0035】
アブレーションの成功の確認は、同一の領域を同一の方式で刺激した場合に、迷走神経反応の欠落、すなわち患者の血圧低下の欠落が存在するか否かを判定するために、工程150で、同一の高周波刺激を使用して、同一の組織を再び刺激することによって達成される。工程150(step 150)で血圧を監視し、工程170で反応が存在するか否かを判定することによって、工程180で、その位置の付近の腎神経のアブレーションを確認することができ、又は依然として刺激による血圧の反応が存在する場合には、工程140でアブレーションを繰り返すことができる。工程130又は工程170のいずれかで、迷走神経反応の欠落を通じてアブレーションが確認された後、工程190で、アブレーションカテーテルを再配置して、所望の結果を達成するためのアブレーションが必要とされる腎神経を含む、腎動脈の他の領域が存在するか否かを判定することができる。
【0036】
高周波刺激は、Grass Technologies製の発振器の使用を通じて、20KHz以上で達成される。
【0037】
心不整脈の特異的治療法に関しては、プロセスにおける次の工程は、患者の大腿動脈又は上腕動脈内にアブレーションカテーテルを挿入し、心室内へとアブレーションカテーテルを操作して、心臓組織のアブレーションを実行することである。心房細動の症例では、1つ以上の肺静脈の隔離を達成するために、アブレーションを実行する。アブレーションカテーテルを、例えば、Y.Schwartzによる、表題「Standardization of Catheter Based Treatments for Atrial Fibrillation」の米国特許出願公開第2007/003826号の教示に従って、患者の大腿動脈内の切開、導入カテーテル内に導入し、心房内へと操作する。腎神経の除神経と肺静脈の隔離との組み合わせは、患者の心房細動の再発の、改善された低減を提供し、繰り返し処置の低減をもたらす。
【0038】
前述の説明は、本発明の現状で好ましい実施形態を参照して提示されてきた。当業者は、記載した構造の代替及び変更が、本発明の原理、趣旨及び範囲を大きく逸脱することなく実施できることを理解するであろう。
【0039】
したがって、上述の記載は、記述され以下の添付図に説明された厳密な構造のみに関係付けられるものとして読解されるべきではなく、むしろ、以下の最も完全で公正な範囲を有するとされる特許と一致し、かつそれらを補助するものとして読解されるべきである。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) 腎臓カテーテル法(renal catherization)に関するシステムであって、
上に電極が載置され、患者の腎動脈内への挿入に適合された、アブレーションカテーテルであって、前記腎動脈が、管腔を画定する壁を有する、腎神経のアブレーションのための、アブレーションカテーテルと、
前記腎動脈の前記管腔の前記壁の一部分に、前記電極を介して適用するための、刺激信号を生成するように構成された、発振器と、
前記腎神経の付近の、前記腎動脈の前記管腔の前記壁上の位置の特定を可能にする、前記患者の血圧を監視するための手段と、
前記電極に、前記腎神経をアブレーションさせるための手段と、を含む、システム。
(2) 前記アブレーションカテーテルが、高周波エネルギーを使用して、組織をアブレーションするようにされる、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記アブレーションカテーテルが、潅流電極を有する、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記アブレーションカテーテルが、組織の極低温冷却を使用して、前記組織をアブレーションするようにされる、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記アブレーションカテーテルが、超音波を使用して、組織をアブレーションするようにされる、実施態様1に記載のシステム。
(6) 前記アブレーションカテーテルが、マイクロ波の放射を使用して、組織をアブレーションするようにされる、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記発振器が、前記腎動脈の前記管腔の前記壁の一部分を刺激するための、高周波パルスを生成する、実施態様1〜6のいずれかに記載のシステム。
(8) 前記生成される高周波パルスの周波数が、約20KHzを超える、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記潅流電極が、前記腎動脈の前記管腔の内側を覆う内皮細胞への損傷を軽減するように構成される、実施態様3に記載のシステム。
(10) 前記潅流電極が、冷却用流体が中を通って流れることが可能な複数個の孔を有する、実施態様3又は7に記載のシステム。
【0041】
(11) 前記潅流電極が、閉鎖システム内の冷却用流体によって冷却される、実施態様3、9、又は10に記載のシステム。
(12) 前記冷却用流体が、生理食塩水である、実施態様10又は11に記載のシステム。
(13) 前記冷却用流体が、実質的に前記患者の体温よりも低く冷却される、実施態様10及び11に記載のシステム。
(14) 前記冷却用流体が、20℃未満に冷却される、実施態様13に記載のシステム。
(15) 前記アブレーションカテーテルが、位置センサーを含む、実施態様1〜14のいずれかに記載のシステム。
(16) 前記位置センサーが、前記アブレーションカテーテルの先端部の位置に関する情報を検証することが可能な、磁気位置センサーである、実施態様15に記載のシステム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎臓カテーテル法に関するシステムであって、
上に電極が載置され、患者の腎動脈内への挿入に適合された、アブレーションカテーテルであって、前記腎動脈が、管腔を画定する壁を有する、腎神経のアブレーションのための、アブレーションカテーテルと、
前記腎動脈の前記管腔の前記壁の一部分に、前記電極を介して適用するための、刺激信号を生成するように構成された、発振器と、
前記腎神経の付近の、前記腎動脈の前記管腔の前記壁上の位置の特定を可能にする、前記患者の血圧を監視するための手段と、
前記電極に、前記腎神経をアブレーションさせるための手段と、を含む、システム。
【請求項2】
前記アブレーションカテーテルが、高周波エネルギーを使用して、組織をアブレーションするようにされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アブレーションカテーテルが、潅流電極を有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記アブレーションカテーテルが、組織の極低温冷却を使用して、前記組織をアブレーションするようにされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記アブレーションカテーテルが、超音波を使用して、組織をアブレーションするようにされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記アブレーションカテーテルが、マイクロ波の放射を使用して、組織をアブレーションするようにされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記発振器が、前記腎動脈の前記管腔の前記壁の一部分を刺激するための、高周波パルスを生成する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記生成される高周波パルスの周波数が、約20KHzを超える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記潅流電極が、前記腎動脈の前記管腔の内側を覆う内皮細胞への損傷を軽減するように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項10】
前記潅流電極が、冷却用流体が中を通って流れることが可能な複数個の孔を有する、請求項3又は7に記載のシステム。
【請求項11】
前記潅流電極が、閉鎖システム内の冷却用流体によって冷却される、請求項3、9、又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記冷却用流体が、生理食塩水である、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記冷却用流体が、実質的に前記患者の体温よりも低く冷却される、請求項10及び11に記載のシステム。
【請求項14】
前記冷却用流体が、20℃未満に冷却される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記アブレーションカテーテルが、位置センサーを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記位置センサーが、前記アブレーションカテーテルの先端部の位置に関する情報を検証することが可能な、磁気位置センサーである、請求項15に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−135613(P2012−135613A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−266111(P2011−266111)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【出願人】(508080229)バイオセンス・ウエブスター・インコーポレーテツド (79)
【Fターム(参考)】