説明

高周波モジュールおよび受信装置

【課題】電界および磁界をシールド部の外部に排出することができ、シールド部内の電子部品をより近接させて配置することが可能で、ひいては小型化を図ることが可能な高周波モジュールおよび受信装置を提供する。
【解決手段】インダクタを含む発振器を内蔵する集積回路(IC)112,113と、IC112,113覆う形状のシールド部としてのシールドケース114と、を有し、シールド部としてのシールドケース114は、IC112,113の配置位置と対向する領域に、IC112,113の形状サイズの1/2以上の大きさの開口部116A,116Bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョンチューナ等に適用可能な高周波モジュールおよび受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高周波モジュールの一例であるテレビジョン(TV)チューナはTV受信機のみならず、パーソナルコンピュータ(PC)などのIT機器にも内蔵されるようになっている。
そして、その受信装置は、地上波テレビジョン放送と衛星波テレビジョン放送を受信可能にするために、地上波チューナと衛星チューナを搭載した、いわゆるダブルチューナの受信装置として構成される。
【0003】
図1は、IT機器に適用されるダブルチューナの一般的な放送波受信装置の構成例を示すブロック図である。
【0004】
図1の受信装置1は、衛星チューナ2、地上波チューナ3、入力端子4、スプリッタ5、PCI-Expressブリッジ6、電源7、メモリ8、およびカードエッジコネクタ部9を有する。
【0005】
図1は、PCI-Expressと呼ばれるコンピュータのインターフェースを使ったPC内のアプリケーションの例である。
本構成の回路では所定のスロットに回路が内蔵されるように高さも標準化されていて、おおよそ3.75mm以内にする必要がある。
【0006】
受信装置1においては、入力端子4から入力された高周波信号がスプリッタ5を介して分配された後に2つのチューナ2と3に供給され復調されてデータが出力される。
そのデータは、PCI-Expressブリッジ6を介してデジタルデータPCI-Expressのインターフェースに出力される。
そのとき、電源7は必要な電圧、電流を供給しメモリ8は必要な保管データを保持する動作を行う。
【0007】
ところで、ダブルチューナの受信装置は、小型化、実装設計の簡単化が求められている。これに対応すべく、2個のチューナを1つのダブルチューナモジュール内に配置した受信装置が実用に供されている。
【0008】
図2は、ダブルチューナモジュールを適用した放送波受信装置の構成例を示すブロック図である。
図2において、受信装置1Aは、ダブルチューナモジュール10を有する。
なお、図1と同じ番号を付してある機能部分は同じく図1と同じ動作を行う。
【0009】
図3は、PCI-Express基板上に配置されるダブルチューナモジュールの簡略構成を示す図である。
【0010】
ダブルチューナモジュール10は、基板11上でさらに薄い高さとして2.3mm高で設計されている例を示している。
このように、薄いモジュールを構成する場合、衛星チューナ12および地上波チューナ13は基板11の上に集積回路(IC)としてマウントされ、シールドケース14で覆う構成によって実現される。
このように、薄いチューナを実現するには使用する半導体においてもより集積化されたICが好適であり、同様に図3の内部の衛星チューナ12と地上波チューナ13は集積度を向上するために、局部発振器とそれに用いるインダクタを内蔵している。
【0011】
図4は、ICに内蔵されるインダクタの一例を説明するための図である。
【0012】
高周波帯で動作する半導体においては、一般に外部回路によって実現されていた電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)は、図4のICチップ20の上にレイアウトされるオンチップ型のVCO21となる。VCO21に必須のインダクタ22はアルミ配線によって同心円の形状を持つスパイラル形状によって実現される。
本例はNXP社のQUBIC4と言うプロセスの説明図で、局部発振器(図中VCO21)に使うインダクタをICのパターンレイアウトで構成しているICの例である。
【0013】
一般に、ICに内蔵されるインダクタは平面上に配置されるので、図4のように同心円を螺旋状に周回するスパイラル構造を持つ。
このため、ICの動作時にはこのインダクタから誘起される電界、磁界は紙面平面の上下方向に放射される。
そこで、局部発振回路を内蔵し、かつインダクタを内蔵したICを複数使用する場合、ICの周囲に発生する電界の影響を考慮する必要がある。
【0014】
図5(A)および(B)は、インダクタを内蔵するICが放射する電界の概念を示す図である。
【0015】
図5(A)は、回路基板11の上にマウントされたIC30から電波31が放射している例を示している。
この場合は、IC30近傍では円弧状の電界強度であるが放射素子であるIC30から離れるにつれて放射面に平行になる。
【0016】
図5(B)は、実際のチューナモジュールに実装された様子を示している。
すなわち、回路基板11にマウントされたIC30の底面には銅箔面33が横方向と上面方向はシールドケース14で覆われている。この場合、放出された電波31がシールドケース14および銅箔面33に近傍で反射されるため、円弧状の電界が反射しながら経路路32を経て伝搬されていく。
【0017】
なお、シールドケース14は薄い材料であって半田付け性に優れる銅、ニッケル、亜鉛の合金である通称、洋白と呼ばれる金属を用いるが、一般に導電性が優れていれば問題無いため、形状の制約がゆるい場合は安価なブリキ材やその類似品を用いてもよい。
【0018】
図6(A)および(B)は、インダクタを内蔵するICが放射する磁界の概念を示す図である。
図6(A)および(B)において、図5と同じ構成要素には同じ番号を付してある。
【0019】
図6(A)にはIC30から上部方向に磁界40が誘起され底面側に戻るループを形成する。
同様に、図6(B)に示すように、シールドケース14、回路基板11の表面の銅箔面33の導体面にぶつかった磁界は渦電流41を発生させる。そして、この渦電流は導体内を伝搬して導体内に拡散される。
【0020】
図7(A)および(B)は、図5および図6の電界、磁界による高周波信号の伝搬を等価的に示す図である。
【0021】
図7(A)は、IC30の上面近傍にシールドケース14がある場合、電界および磁界がシールドケースを介して反射や電流の誘起などで信号が伝わることをストレーキャパシタンス50によって置き換えている。
そして図7(B)は、図3のダブルチューナモジュールに当てはめた説明図であり、衛星チューナ12と地上波チューナ13がストレーキャパシタンス50を介して接続されている様子を示している。
【0022】
IC30に内蔵されるインダクタも一般の部品と同様で、電流を流せば電磁界を発生させる素子となり、逆に電磁界の中に置けば電流を誘起する素子となることは容易に理解できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2007−103610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
ところで、以上説明してきたような高周波信号の放射が起こりやすくなった要因にはICの動作周波数の進化も考える必要がある。
【0025】
図4のように、VCOを内蔵したICでは回路動作に適したインダクタを用いるのが一般的であるが、ICのサイズに制約されるため、数ミリ角のスペースしか与えられないのが普通である。
この場合に実現できるインダクタンス値は10nH程度の値しか取れない。
この条件でたとえは並列共振器を構成して共振周波数を計算すると、
f=1/2π√LC、 C=1/(2πf)
となる。たとえば、f=200MHzとすると、C=63pFが必要になる。
【0026】
ところが、ICの内部に作るキャパシタンスとしては63pFは非常に大きく、キャパシタを構成する対向する電極面の面積を確保するとチップサイズが大きくなってコストが高くなる。
【0027】
一方で、年々高速化、微細化する半導体プロセスにおいては動作周波数がギガヘルツ帯に突入しており、ちょうど本衛星チューナ、地上波チューナの所用周波数の数倍の領域で動作できる。
半導体内部部品とプロセスの動作周波数のバランスを取る形で技術が進化した結果、受信周波数の逓倍周波数で発振するVCOを用い、分周して周波数変換を行う方式が主流となっている。
【0028】
衛星チューナ12の場合、ローカル周波数は2〜4GHz付近のため、その波長は70〜140mm程度となる。
このとき、ダブルチューナを1つのモジュールで実現しようとした場合、チューナICの間隔は容易にλ/4のサイズに収まってしまう。
λ/4という距離は電波の受信に効率の良い共振を起こしてしまい、特に電波の伝播が起こりやすい状況を生じさせる。
【0029】
図8は、このようにしてチューナ間の干渉が起きている一例を示す図である。
【0030】
図8に示す例は、一方のチューナのVCO発振をローカル周波数として示している。
そして、その1/2ローカル周波数とRF信号が周波数変換されたIFの近傍にもう一つのチューナから発せられた電磁界スプリアスによるサイドバンドSB1,SB2がローカル周波数の両サイドに生じる。このことから、同じようにIFの両サイドに周波数変換されている。
【0031】
このように、チューナ間の干渉がギガヘルツ帯の高い周波数で発生した結果、本来必要なRF信号と一緒に周波数変換されてIF帯に現れてしまう。
この周波数変換はVCO回路間の干渉あるいはその他の回路に重畳された電磁界スプリアスが周波数変換を行うミキサ部にて一緒に周波数変換されるなど、複数の経路がある。
【0032】
以上説明したように、VCOなどの発振器等、RF回路を有したICを薄い金属筐体で覆った場合、小型筐体になるほど周囲に電磁波を伝播させてしまって受信帯域内にスプリアスノイズを発生させやすくなる。
【0033】
特許文献1には、シールドケースを変形させて、回路基板上で発生するノイズをシールドケースに効率的に逃がし、隣接する回路への影響を低減するように構成された電子装置が記載されている。
この電子装置においては、シールドケースの金属部に絞りの加工を施し、チューナ内部の周波数変換回路を有するICに近接させることを主目的とし、ICから発せられる電波を吸収する接地導体としてシールドケースを用いている。
そして、絞り部には、放熱のためのスリットが形成されている。
この電子装置は、シールドケースに電磁波を吸収し、漏洩をさせない機能を持たせているものの、電界および磁界の影響によるチューナ間の干渉を防止することは困難である。
【0034】
本発明は、電界および磁界をシールド部の外部に排出することができ、シールド部内の電子部品をより近接させて配置することが可能で、ひいては小型化を図ることが可能な高周波モジュールおよび受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明の第1の観点の高周波モジュールは、発振器を内蔵する集積回路と、上記集積回路を覆う形状のシールド部と、を有し、上記シールド部は、上記集積回路の配置位置と対向する領域に、当該集積回路の形状サイズの1/2以上の大きさの開口部が形成されている。
【0036】
本発明の第2の観点の受信装置は、衛星波放送信号または地上波放送信号が入力される入力端子と、上記衛星波放送信号の周波数変換機能を有する衛星チューナを含む衛星放送受信回路と、上記地上波放送信号の周波数変換機能を有する地上波チューナを含む地上波放送受信回路と、上記入力端子から入力される衛星波放送信号を上記衛星放送受信回路に分配し、上記地上波放送信号を上記地上波放送受信回路に分波する分波回路と、を有し、上記衛星チューナおよび上記地上波チューナは、発振器を内蔵して衛星チューナ集積回路および地上波チューナ集積回路として形成され、少なくとも上記衛星チューナ集積回路および上記地上波チューナ集積回路を覆う形状のシールド部を含み、上記シールド部は、上記衛星チューナ集積回路および上記地上波チューナ集積回路のうちの少なくとも一方の集積回路の配置位置と対向する領域に、当該集積回路の形状サイズの1/2以上の大きさの開口部が形成されている。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、電界および磁界をシールド部の外部に排出することができ、シールド部内の電子部品をより近接させて配置することができ、ひいてはモジュールの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】IT機器等に適用されるダブルチューナの一般的な放送波受信装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】ダブルチューナモジュールを適用した放送波受信装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】PCI-Express基板上に配置されるダブルチューナモジュールの簡略構成を示す図である。
【図4】ICに内蔵されるインダクタの一例を説明するための図である。
【図5】インダクタを内蔵するICが放射する電界の概念を示す図である。
【図6】インダクタを内蔵するICが放射する磁界の概念を示す図である。
【図7】図5および図6の電界、磁界による高周波信号の伝搬を等価的に示す図である。
【図8】チューナ間の干渉が起きている一例を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュールを採用した放送信号受信装置の構成例を示す図である。
【図10】本第1の実施形態に係る高周波モジュールの一例として採用したダブルチューナモジュールの要部の簡略構成を示す図である。
【図11】本実施形態に係る高周波モジュールの一例として採用したダブルチューナモジュールの具体的な構成例を示す図である。
【図12】本第1の実施形態に係る開口部を有する高周波モジュールの原理を説明するための図である。
【図13】本第実施形態に係るシールドケースに形成された開口部の具体的な構成例について説明するための図である。
【図14】本実施形態に係るシールドケースに形成された開口部の他の具体的な構成例について説明するための図である。
【図15】地上波チューナから衛星チューナに対する干渉を測定した例を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る放送信号受信装置におけるダブルチューナモジュールの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施形態
2.第2の実施形態
【0040】
<1.第1の実施形態>
図9は、本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュールを採用した放送信号受信装置の構成例を示す図である。
図10は、本第1の実施形態に係る高周波モジュールの一例として採用したダブルチューナモジュールの要部の簡略構成を示す図である。
図11は、本実施形態に係る高周波モジュールの一例として採用したダブルチューナモジュールの具体的な構成例を示す図である。
【0041】
本受信装置100は、ダブルチューナモジュール110、入力端子120、PCI-Expressブリッジ130、電源140、メモリ150、およびカードエッジコネクタ部160を有する。
図9の受信装置100は、PCI-Expressと呼ばれるコンピュータのインターフェースを使ったPC内のアプリケーションの例である。
【0042】
本実施形態において、高周波モジュールの一例として示すダブルチューナモジュール110は、衛星波TV放送と地上波TV放送を受信可能に構成されている。
【0043】
[ダブルチューナモジュールの構成例]
ダブルチューナモジュール110は、図10に示すように、チューナ基板111上でさらに薄い高さとして2.3mm高で設計されている例を示している。
薄いモジュールとして構成されるダブルチューナモジュール110は、衛星チューナ112および地上波チューナ113がチューナ基板111の上にICとしてマウントされ、シールド部としてのシールドケース114で覆うように構成されている。
このように、薄いチューナを実現するには使用する半導体においてもより集積化されたICが好適である。
本実施形態の衛星チューナ112と地上波チューナ113は集積度を向上するために、たとえば図4に示すように、局部発振器とそれに用いるインダクタを内蔵している。
また、図10中の符号115はグランド面である銅箔面を示している。
【0044】
本ダブルチューナモジュール110は、図10に示すように、ICにより形成される衛星チューナIC112と地上波チューナIC113の上部に位置するシールドケース114に、ICの形状サイズの1/2以上の大きさの開口部116A,116Bが形成されている。
この開口部116A,116Bは、シールドケース114内で発生する電界および磁界を外部に効率よく排出できるように形成されている。
図10から明らかなようにそれぞれの衛星チューナIC112と地上波チューナIC113の上部に開口部が形成されシールドケース114を用いることで、図7に示されるストレーキャパシタンスの発生を防ぐことが可能である。
この構造のダブルチューナモジュール110では、VCOの発振周波数の波長に比べて十分な距離が取れない複数のチューナICの実装を行っても高周波信号が相互に干渉することを回避させることができる。
この高周波モジュール(本実施形態ではダブルチューナモジュール)の開口部116の大きさ、形状、機能等については後で詳述する。
【0045】
本第1の実施形態のシールドケース114は、薄い材料であって半田付け性に優れる銅、ニッケル、亜鉛の合金である通称、洋白と呼ばれる金属が用いられる。
ただし、シールドケース114としては、一般に導電性が優れていれば問題無いため、形状の制約がゆるい場合は安価なブリキ材やその類似品を用いることも可能である。
【0046】
また、IC内蔵の発振器に使用されるインダクタは、同心形状の配線を持つように構成される。
また、IC内蔵の発振器に使用されるインダクタは、複数の同心形状の配線を持つように構成される。
たとえば、IC内部のマスクパターンにスパイラル状のインダクタとして形成することも可能である。
また、ICは、配線パターンまたは電子部品または配線に同心形状のインダクタを配置する構造を採用することも可能である。
【0047】
[ダブルチューナモジュールの機能説明]
ここで、図11に関連付けてダブルチューナモジュール110内の回路構成および機能について説明する。
ここでは、ダブルチューナモジュールを符号200で示す。
【0048】
図11のダブルチューナモジュール200は、入力端子201、分波回路202、ハイパスフィルタ(High Pass Filter:HPF)203、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier:LNA)204、衛星チューナ205、および衛星復調部206を有する。
ダブルチューナモジュール200は、バンドパスフィルタ(Band Pass Filter:BPF)207、アッテネータ回路(ATT)208、LNA209、地上波チューナ210、地上波復調部211を有する。
ダブルチューナモジュール200は、出力マトリックス部212、スイッチ213,214、およびトランスポートストリーム(Transport Stream:TS)出力ポート215,216を有する。
ダブルチューナモジュール200は、インダクタ217、および低雑音ブロックダウンコンバータ(Low Noise Blockdown Converter;LNB)用端子218を有する。
ダブルチューナモジュール200は、電源端子として、衛星チューナ用VCCA1端子219、地上波チューナ用VCCA2端子220を有する。
ダブルチューナモジュール200は、衛星および地上波復調および出力マトリックス用VDDH端子221、VDDL端子222を有する。
ダブルチューナモジュール200は、IC端子223を有する。
【0049】
ダブルチューナモジュール200において、HPF203、LNA204、衛星チューナ205、および衛星復調部206により衛星放送受信回路230が形成される。
BPF207、アッテネータ回路208、LNA209、地上波チューナ210、および地上波復調部211により地上波放送受信回路240が形成される。
【0050】
ダブルチューナモジュール200において、入力端子201に印加された高周波信号は分波回路202によって衛星放送の受信側と地上波放送の受信側に分かれる。
衛星放送受信回路230では、衛星放送信号がHPF203を介してLNA204によって増幅され衛星チューナ205に入力され周波数変換される。その後に衛星復調部206にてTSデータとなって出力マトリックス部212に送出される。
【0051】
他方、地上波放送受信回路240では、地上放送信号は分波回路202で分波された後にBPF207で帯域制限され、アッテネータ回路208にて適正な信号レベルにされた後、LNA209で増幅され地上波チューナ210に入力される。
地上波チューナ210にて周波数変化された後に地上波復調部211によって衛星復調と同様のTSデータに変換され前記同様に出力マトリックス部212に送出される。
出力マトリックス部212はスイッチ213および214を有しており、TS出力ポート215,216に求められるTSを選択して出力することができる。
【0052】
インダクタ217は、LNBへの直流供給と高周波信号の遮断の役目を持ち、端子218と分波回路(分配器)202の衛星用ラインに結線され、分波回路202を直流的に通過して入力端子201から外部に直流電圧を供給する。
端子223は、それぞれ衛星復調部206と地上波復調部211を制御するICバスの入力端子であり、それぞれの復調部を介してそれぞれ衛星チューナ205および地上波チューナ210も制御する構成になっている。
【0053】
以上、本実施形態に係る放送信号受信装置100の全体構成を高周波モジュールの一例であるダブルチューナモジュール110を中心に説明した。
以下では、本実施形態に係る開口部を有する高周波モジュールの特徴について説明する。
【0054】
[開口部を有する高周波モジュールの原理説明]
図12(A)および(B)は、本第1の実施形態に係る開口部を有する高周波モジュールの原理を説明するための図である。
ここで、理解を容易にするために、ダブルチューナモジュールと同一構成部分は同一符号を持って表している。
図12(A)においては、300はインダクタを含む発振器を内蔵するICを示し、301は電波を示している。
図12(B)において、400は磁界を示している。
【0055】
図12(A)は、本実施形態における高周波モジュールによる電波の放射を示している。
電波301は、本実施形態の開口部を有するシールドケース114の開口部116から外部に輻射するように、開口部116はその位置と開口度を決めて形成されることによって、電波301がシールドケース114では反射せず、横方向への伝播も起こらない。
【0056】
図12(B)は、同様に開口部116を有するシールドケース114が磁界400に対して渦電流を発生させないように、開口部116はその位置と開口率を決めて形成されている。
この開口部116によって磁界400はモジュールの外部へ拡散することになり、シールドケース114を伝播する渦電流の発生を防ぐことができる。
【0057】
以上の原理に基づいて図10のシールドケースを用いたダブルチューナモジュール110が形成されている。
前述したが、図10から明らかなように、それぞれの衛星チューナIC112と地上波チューナIC113の上面に開口部を設けたシールドケースを用いることで図7に示されるストレーキャパシタンスの発生を防いでいることが分かる。
この構造のチューナモジュールではVCOの発振周波数の波長に比べて十分な距離が取れない複数のチューナICの実装を行っても高周波信号が相互に干渉することを回避させることができる。
【0058】
図13(A)および(B)は、本実施形態に係るシールドケース114に形成された開口部の具体的な構成例について説明するための図である。
【0059】
図13(A)は実装したICの上面に方形状の穴を開口部116C,116Dとして形成した例であり、中心位置は各ICと同一点である。
そして、開口率はICのチップサイズの各辺の1/2以上の一辺を持つサイズで効果が顕著であり、この場合の開口率は(1/2)=1/4 以上であることが望ましく、ICサイズの25%以上である。
なお、本例では、角穴のサイズは、4.7mm×4.7mmであり、チューナICのサイズは4.3mm×4.3mmである。
シールドケース114は、23mm×23mmの大きさを有する。
【0060】
図13(B)は、本実施形態のシールドケース114の開口部116E,116Fの形状を、丸穴形状としたものである。
この場合も開口率がICサイズの25%以上であれば十分な効果が見込める。
本例において、丸穴形状の開口部116E,116Fの直径は6mmである。
【0061】
図14(A)および(B)は、本実施形態に係るシールドケース114に形成された開口部の他の具体的な構成例について説明するための図である。
【0062】
図14(A)は、図13(A)の構成例に当たる方形穴部を符号116C、116Dで示しており、本例では、その両方を包含する形で楕円系の長丸穴の開口部116Gが形成されている。
本構成によっても前述したストレーキャパシタンスの発生を回避できるため、高周波信号の相互干渉を防げる。
【0063】
同様に図14(B)の例では、長角穴の開口部116Hにて方形穴部116C、116Dを包含するようにしたものであり、
図14(C)は、同一穴の開口部116I,116JによってICの位置と同一の中心を取らない条件での複数穴の例である。
図14(D)は、開口部116Kを1つしか有しない場合である。
【0064】
以上の構成のチューナモジュールにおいて、実際の性能差はビットエラーレート(Bit Error Rate:BER)に現れる。
【0065】
図15は、地上波チューナから衛星チューナに対する干渉を測定した例を示す図である。
図15において、横軸はチャンネル名を、縦軸はCN値を示している。
縦軸のCN比は所要CNと言われるBERが非常に良い状態になるのに必要な入力信号のCarrier対Noiseの比で規格化して示したものである。
図15において、Aで示す特性が開口部である穴を2つ形成した場合であり、Bで示す特性が開口部である穴を1つ形成した場合であり、Cで示す特性が開口部である穴を形成しない場合である。
【0066】
特に、日本の衛星放送で使われるBS15チャンネル付近での穴の効果が示されている。
開口部である穴を2つ形成した場合には十分に干渉を抑止することが可能である。
開口部である穴を1つのみ形成した場合であっても、穴を形成しない場合に比較して十分に干渉抑止効果が示されている。
【0067】
すなわち、図15の所要CNがBS−15チャンネルの付近の入力周波数1318MHzの、2倍のローカル周波数2636MHzにおける対策の結果であり、穴の個数を搭載するICの個数と同じだけ設けた場合に最も効果が出ることを示している。
勿論一つだけでも効果がある事は自明である。
【0068】
<2.第2の実施形態>
図16は、本発明の第2の実施形態に係る放送信号受信装置におけるダブルチューナモジュールの構成例を示す図である。
【0069】
本第2の実施形態に係るダブルチューナモジュール110Aが第1の実施形態に係るダブルチューナモジュール110と異なる点は、シールド部としてシールドケースの代わりに、導電性ペースト117を塗布して導電性塗布膜により形成したことにある。
【0070】
すなわち、ダブルチューナモジュール110Aは、チューナ基板111上にマウントされた衛星チューナIC112と地上波チューナIC113の周囲をモールド充填材118にて封止して保護する。
そして、ダブルチューナモジュール110Aは、その封止外周に導電性ペースト117を塗布することで、前述したシールドケースと同様の効果を持たせた構造を有している。
その際、シールドケースと同様の作用を施す導電性ペースト117の塗布膜117Aに開口部116Aと開口部116Bを形成して電波、磁力線を導電ペーストによるシールド体の外部に排出させるようにしている。
詳細の動作原理はシールドケースを用いた場合と全く同様であることから、ここではその説明は省略する。
基板111上のグランド面115と導電性ペースト117はその壁面にて電気的に接続されることで、シールド体を構成している。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。電界および磁界をシールド部の外部に排出することができ、シールド部内の電子部品をより近接させて配置することができ、ひいては小型化を図ることができる。
たとえばシールドケースを用いた衛星チューナICまたは地上波チューナICがスパイラルインダクタンスを用いたVCOのような発振器を内蔵する場合に効果がある。
すなわち、その発振回路が放射する電界、磁界が周囲の回路を電磁結合、あるいは磁界結合することによってスプリアスノイズを発生させたり、発振器の位相ノイズを劣化させたりすることが無視できない程に近接されてマウントされる場合に効果がある。
特に、シールドケースを付けたために、より強く発生する上記のノイズ群をシールド部外に放射させることができるので、非常に近接させた部品配置を可能にする。
また、特に、複数のチューナを同一基板上に構成する場合は、電界、磁界をシールド部の外部に排出するのと同じ効果であり、特に同時に動作させた時に顕著に表れる。
また、トランシーバーのように送信と受信の機能を持ち、独立の発振器を用いる場合にも有効である。
さらに、発振器が一つの場合でもミキサ回路や入力回路への別経路のノイズとなり得るため、本開口部を有するシールド部の構造を持たせることで効果が期待できる。
その他にも、無線LANのように2.4GHz帯と5GHz帯など、複数のバンドを持つ送受信器にも有効である。
【0072】
なお、本構成が適用される半導体としては、ICのマスクパターンにスパイラルインダクタンスを内蔵するモノリシック型ICを含む。
また、SIP(System In Package)と呼ばれるシリコン・ベア・チップを搭載した小型基板上に構成されるインダクタンスを持つ構成のICを含む。
あるいは、通常の外部デバイスとしてスパイラルインダクタンスを用いるICを含む。 これらICの何れにおいても効果があり、適応させることができる。
【符号の説明】
【0073】
100・・・放送信号受信装置、110・・・ダブルチューナモジュール、111・・・チューナ基板、112・・・衛星チューナIC、113・・・地上波チューナIC、114・・・シールドケース、116,116A〜116K・・・開口部、117・・・導電性ペースト、120・・・入力端子、130・・・PCI-Expressブリッジ、140・・・電源、150・・・メモリ、160・・・カードエッジコネクタ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振器を内蔵する集積回路と、
上記集積回路を覆う形状のシールド部と、を有し、
上記シールド部は、
上記集積回路の配置位置と対向する領域に、当該集積回路の形状サイズの1/2以上の大きさの開口部が形成されている
高周波モジュール。
【請求項2】
複数の上記集積回路を有し、
上記シールド部は、
少なくとも一つの上記集積回路の配置位置と対向する領域に、当該集積回路の形状サイズの1/2以上の大きさの開口部が形成されている
請求項1記載の高周波モジュール。
【請求項3】
上記シールド部は、
上記複数の集積回路の配置位置と対向する領域にそれぞれ、各集積回路の形状サイズの1/2以上の大きさの開口部が形成されている
請求項2記載の高周波モジュール。
【請求項4】
上記シールド部は、
上記複数の集積回路の配置位置と対向する領域にわたって、各集積回路の形状サイズの1/2以上の大きさの上記開口部を含む形で、長穴状に開口部が形成されている
請求項2記載の高周波モジュール。
【請求項5】
上記複数の集積回路は、
衛星波放送信号を処理する衛星チューナ集積回路と、
地上波放送信号を処理する地上波チューナ集積回路と、を含む
請求項2から4のいずれか一に記載の高周波モジュール。
【請求項6】
上記シールド部は、
金属製のシールドケースにより形成される
請求項1から5のいずれか一に記載の高周波モジュール。
【請求項7】
上記シールド部は、
導電性塗布膜により形成される
請求項1から5のいずれか一に記載の高周波モジュール。
【請求項8】
衛星波放送信号または地上波放送信号が入力される入力端子と、
上記衛星波放送信号の周波数変換機能を有する衛星チューナを含む衛星放送受信回路と、
上記地上波放送信号の周波数変換機能を有する地上波チューナを含む地上波放送受信回路と、
上記入力端子から入力される衛星波放送信号を上記衛星放送受信回路に分配し、上記地上波放送信号を上記地上波放送受信回路に分波する分波回路と、を有し、
上記衛星チューナおよび上記地上波チューナは、
発振器を内蔵して衛星チューナ集積回路および地上波チューナ集積回路として形成され、
少なくとも上記衛星チューナ集積回路および上記地上波チューナ集積回路を覆う形状のシールド部を含み、
上記シールド部は、
上記衛星チューナ集積回路および上記地上波チューナ集積回路のうちの少なくとも一方の集積回路の配置位置と対向する領域に、当該集積回路の形状サイズの1/2以上の大きさの開口部が形成されている
受信装置。
【請求項9】
上記シールド部は、
上記衛星チューナ集積回路および上記地上波チューナ集積回路の配置位置と対向する領域にそれぞれ、各集積回路の形状サイズの1/2以上の大きさの開口部が形成されている
請求項8記載の受信装置。
【請求項10】
上記シールド部は、
上記衛星チューナ集積回路および上記地上波チューナ集積回路の配置位置と対向する領域にわたって、各集積回路の形状サイズの1/2以上の大きさの上記開口部を含む形で、長穴状に開口部が形成されている
請求項8記載の受信装置。
【請求項11】
上記シールド部は、
金属製のシールドケースにより形成される
請求項8から10のいずれか一に記載の受信装置。
【請求項12】
上記シールド部は、
導電性塗布膜により形成される
請求項8から10のいずれか一に記載の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−191654(P2012−191654A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−119317(P2012−119317)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【分割の表示】特願2009−242756(P2009−242756)の分割
【原出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】