説明

高周波信号受信装置及び受信機

【課題】受信波から複数チャンネルの高周波信号を抽出する際、AGC制御によって各チャンネルの高周波信号のレベル差を低減し、複数チャンネルの受信品質の向上等を図る。
【解決手段】受信波Sinに含まれる複数チャンネルの高周波信号をRFフィルタ1aで抽出し、可変フィルタ回路1bでレベル調整した信号ScpをRFアンプ4へ供給する。周波数選択回路2cが、可変フィルタ回路1bの帯域幅を、各復調処理系統での検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcn中の大レベルに対応するチャンネルの選択帯域幅BWiに設定し、ゲイン制御回路2aが、選択帯域幅BWiにおける減衰量を、大レベルに対応する減衰量αjに設定する。可変フィルタ回路1bが、RFフィルタ1aで抽出される複数チャンネルの高周波信号のうち、選択帯域幅BWiを通過する高周波信号を減衰量αjで減衰させることで、複数チャンネルの高周波信号レベル差を低減するように調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、無線受信機のフロントエンドやアンテナ入力装置等に設けられる高周波信号受信装置に関し、特に、受信アンテナで受信される高周波数・広帯域の受信波に含まれている複数チャンネル(物理チャンネル)の高周波信号を自動的にレベル調整して受信する高周波信号受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛星を使用して無線伝送するディジタル放送(以下、「衛星ディジタル放送」と称する)と、地上アンテナを使用して無線伝送するディジタル放送(以下、「地上ディジタル放送」と称する)とを、所定の無線送信帯を利用してサイマル放送し、ユーザ側の受信機で良好な受信状態の得られる放送を選択等できるようにしたり、有用なサービスを有機的に提供するディジタル放送システムが考えられ、一部の地域では既に放送が開始されている。米国では、XM(XM Satellite Radio Inc.)と、シリウス(Sirius Satellite Radio Inc.)の2社がサービスを行っている。
【0003】
また、一般に、高層ビルの多い都市部等では、衛星ディジタル放送に較べて地上ディジタル放送の方が良好な受信品質が得られ、建築物が少ない平坦な場所等では、地上ディジタル放送に較べて衛星ディジタル放送の方が良好な受信品質が得られることから、衛星ディジタル放送と地上ディジタル放送との長所を効果的に活用し、自動車を運転する運転者等に対し、都市部等と平坦な場所等の何れの場所を走行中であっても、良好な受信品質の下で受信できるようにし、有用な情報を間断なく提供できるようにしている。
【0004】
図1は、このディジタル放送システムで提供されるサイマル放送を受信する従来の受信機の構成を示している。
【0005】
この受信機では、受信アンテナで受信される高周波数・広帯域の受信波Sinから、所定の通過帯域幅BWを有する初段のRFフィルタによって衛星ディジタル放送と地上ディジタル放送との複数チャンネル(物理チャンネル)分の高周波信号(つまり、高周波数の受信信号)A1,A2,A3を一括して帯域選択し、次に、RFアンプで高周波信号A1,A2,A3を一括して増幅してから、初段側の混合器で局発信号ω0を混合することで周波数変換信号Scvに一括してダウンコンバートする。
【0006】
例えば、高周波信号A1とA3が衛星ディジタル放送、高周波信号A2が地上ディジタル放送となっており、これら3つの放送が各チャンネル(物理チャンネル)の帯域を使用してサイマル放送されている場合には、3チャンネル分の高周波信号A1,A2,A3をRFフィルタで一括して帯域選択し、RFアンプで更に一括して増幅してから、初段の混合器で一括してダウンコンバートする。これにより、高周波信号A1,A2,A3のダウンコンバートされた信号B1,B2,B3を含む周波数変換信号Scvが生成される。
【0007】
更に、上述のRFアンプは、自動的に利得を調整する広帯域AGCアンプで形成されており、レベル検波器が周波数変換信号Scvに含まれている信号B1,B2,B3のレベルを検波し、その検波レベル(AGC電圧)に基づいてRFアンプ(広帯域AGCアンプ)をAGC制御(Automatic Gain Control)することで、上述の利得を自動的に調整している。
【0008】
次に、周波数変換信号Scvが3チャンネル分の各復調処理系統に供給され、周波数変換信号Scvに含まれている各信号B1,B2,B3を各復調処理系統が復調処理することで、上述の衛星ディジタル放送の復調信号S1,S3と地上ディジタル放送の復調信号S2を生成している。
【0009】
つまり、図1に示す第1の復調処理系統では、後段側の第1混合器が周波数変換信号Scvに選局用の局発信号ω1を混合することで中間周波数の信号にダウンコンバートし、更にIFフィルタが中間周波数の信号からIF信号IF1を抽出し、IFアンプがAGC制御によってレベル調整した後、復調器が復調処理することで衛星ディジタル放送の復調信号S1を生成する。
【0010】
また、第2の復調処理系統では、後段側の第2混合器が周波数変換信号Scvに選局用の局発信号ω2を混合することで中間周波数の信号にダウンコンバートし、更にIFフィルタが中間周波数の信号からIF信号IF2を抽出し、IFアンプがAGC制御によってレベル調整した後、復調器が復調処理することで、地上ディジタル放送の復調信号S2を生成する。
【0011】
また、第3の復調処理系統でも同様に、後段側の第3混合器が周波数変換信号Scvに選局用の局発信号ω3を混合することで中間周波数の信号にダウンコンバートし、更にIFフィルタが中間周波数の信号からIF信号IF3を抽出してIFアンプがレベル調整した後、復調器が復調することで他方の衛星ディジタル放送の復調信号S3を生成する。
【0012】
そして、図示しない所定の信号処理部が、復調信号S1,S2,S3のうち、より良好な受信品質の得られる復調信号を選択してデコード等することで、有用な情報を間断なく提供できるようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上記従来の受信機では、一般には初段側の混合器でダウンコンバートされた周波数変換信号Scv内の全ての信号(信号B1,B2,B3)をレベル検波器がレベル検波し、最も大きい信号レベルの検波レベルに基づいて、RFアンプ(広帯域AGCアンプ)の利得をAGC制御することで、上記例示した3チャンネル分の高周波信号A1,A2,A3を一括して(帯域幅BWにおいて同じ利得で)レベル調整している。
【0014】
ところが、受信環境や受信状態に依存して、不可避的に、受信波Sinに含まれる各々の高周波信号A1,A2,A3のレベルに差が生じると、そのレベル差を有する高周波信号A1,A2,A3が初段のRFフィルタを介してRFアンプ(広帯域AGCアンプ)に入力することとなり、従来のAGC制御が行われると、ダウンコンバート後の信号B1,B2,B3のレベルにも差が生じてしまう。
【0015】
例えば上述の高周波信号A1,A3に較べて高周波信号A2のレベルが大きくなった場合、信号B2の検波レベルに基づいてRFアンプ(広帯域AGCアンプ)がAGC制御される結果、高周波信号A2のレベルに較べて高周波信号A1,A3のレベルが大幅に減衰された状態で、初段側の混合器に入力され、ダウンコンバート後の信号B2のレベルに較べて信号B1,B3のレベルが極めて小さくなってしまう場合がある。
【0016】
このように、受信波Sinに含まれる各々の高周波信号A1,A2,A3のレベルに差が生じると、周波数変換信号Scvに含まれる信号B1,B2,B3のレベルにも差が生じることとなり、各復調処理系統で各信号B1,B2,B3を復調する際に、復調できなくなる場合があった。
【0017】
例えば、信号B2のレベルに較べて信号B1,B3のレベルが極めて小さくなってしまうと、第1,第3の復調処理系統では、復調不能となったり、復調信号S1,S3の信号対雑音比(SN比)が悪化する等の問題を招来する場合があった。
【0018】
本発明は、こうした従来の問題に鑑みてなされたものであり、受信波から複数チャンネルの高周波信号を抽出する際、AGC制御によって各チャンネルの高周波信号のレベル差を低減することによって、複数チャンネルの受信品質の向上等を図ることを可能にする高周波信号受信装置を提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、上述の高周波信号受信装置を備えた受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1に記載の発明は、受信アンテナで受信される受信波に含まれる複数の所定チャンネルの高周波信号をAGC制御によってレベル調整し、受信機内の周波数変換手段を介して前記複数の所定チャンネル分の復調処理系統に供給する高周波信号受信装置であって、前記各復調処理系統で生成される受信感度を示す所定の各信号のレベルを比較し、各信号に対応する前記高周波信号のチャンネルの帯域幅を判定する周波数選択手段と、前記受信感度を示す所定の各信号のレベルに対応する減衰量を設定するゲイン制御手段と、前記受信アンテナと前記周波数変換手段の間に接続され、前記複数の所定チャンネルの高周波信号のうち、前記周波数選択手段で判定される前記帯域幅内の高周波信号を前記ゲイン制御手段で設定される減衰量で減衰させる可変フィルタ手段と、を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項2に記載の発明は、受信アンテナで受信される受信波に含まれる複数の所定チャンネルの高周波信号を周波数変換手段で周波数変換信号に周波数変換し、前記周波数変換信号に基づいて前記複数の所定チャンネル分の復調処理系統で復調処理することで複数チャンネル分の復調信号を生成する受信機であって、前記各復調処理系統で生成される受信感度を示す所定の各信号のレベルを比較し、各信号に対応する前記高周波信号のチャンネルの帯域幅を判定する周波数選択手段と、前記受信感度を示す所定の各信号のレベルに対応する減衰量を設定するゲイン制御手段と、前記受信アンテナと前記周波数変換手段の間に接続され、前記複数の所定チャンネルの高周波信号のうち、前記周波数選択手段で判定される前記帯域幅内の高周波信号を前記ゲイン制御手段で設定される減衰量で減衰させる可変フィルタ手段と、を備えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の好適な実施形態について、図2、図3、図4、図5を参照して説明する。図2は、本実施形態の高周波信号受信装置と受信機の構成を表したブロック図、図3と図4は、高周波信号受信装置のより具体的な構成例を表した回路図とブロック図、図5は、機能を説明するための説明図である。
【0023】
なお、背景技術で説明したのと同様に、衛星ディジタル放送と地上ディジタル放送とを受信し、合計3チャンネル分のサイマル放送を受信する受信機200に設けられる高周波信号受信装置100と、その高周波信号受信装置100を備えた受信機200について説明することとする。
【0024】
図2において、本実施形態の高周波信号受信装置100は、受信機200の受信アンテナANTとRFアンプ(広帯域AGCアンプ)4との間に接続されるRFフィルタ部1と、RF自動利得制御部2を備えて構成され、nチャンネル(本実施形態では3物理チャンネル)分のサイマル放送等を受信する受信機200のフロントエンドやアンテナ入力装置等に設けられている。
【0025】
RF自動利得制御部2は、受信機200の3つの復調処理系統CH1,CH2,CHnに設けられている復調器11,16,21で生成される検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnを入力し、RFフィルタ部1のフィルタ特性を調整するための制御信号Px,Pa〜Pmを生成してRFフィルタ部1へ供給するようになっている。
【0026】
ここで、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnは、IFアンプ10,11,12の増幅率を自動利得制御(AGC制御)するために、復調器11,16,21が生成するAGC電圧信号である。つまり、復調器11,16,21が復調処理する過程で、IFアンプ10,11,12の各出力信号から各I成分(同相成分)とQ成分(直交成分)を生成し、そのI成分とQ成分から各希望信号を生成する際に、各I成分とQ成分をレベル検波することで、各希望信号のパワーを示す各AGC電圧信号を生成する。そして、各AGC電圧信号によってIFアンプ10,11,12の利得を調整することで、AGC制御を行うようになっており、また、各AGC電圧信号が検波レベル信号Sdc1,Sdc2,SdcnとしてRF自動利得制御部2に入力されている。したがって、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnは、各希望信号のパワーを示す信号であり、また、各受信チャンネルCH1,CH2,CHnの受信感度を示す信号である。
【0027】
なお、説明の便宜上、各受信チャンネルCH1,CH2,CHnの受信感度を示す信号を検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnと称しているが、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnは、各I成分とQ成分をレベル検波することによって生成される各希望信号のパワーを示す信号に限らず、各受信チャンネルCH1,CH2,CHnの受信感度を示す信号であれば、他の信号であってもよい。一具体例として、各復調処理系統CH1,CH2,CHnの復調部11,16,21が復調処理を行う過程で検出する復調信号のビットエラーレート(BER:Bit Error Rate)を、各受信チャンネルCH1,CH2,CHnの受信感度を示す信号(検波レベル信号)Sdc1,Sdc2,Sdcnとして用いるようにしてもよい。ビットエラーレートは、受信感度を反映した信号だからである。
【0028】
更に、受信機200の構成を説明すると、高周波信号受信装置100を備える他、図1に示した従来の受信機と同様の構成となっており、上述のRFアンプ4と、周波数変換手段CVとしての初段の混合器5及び局発信号ω0を発生する発振器6と、RFアンプ4をAGC制御するレベル検波器3と、3つの復調処理系統CH1,CH2,CHnとを備えて構成されている。
【0029】
更に、第1の復調処理系統CH1は、後段側の第1の混合器7と、選局用の局発信号ω1を発生する局部発振器8、IFフィルタ9、IFアンプ10、復調器11を有して構成され、第2の復調処理系統CH2は、後段側の第2の混合器12と、選局用の局発信号ω2を発生する局部発振器13、IFフィルタ14、IFアンプ15、復調器16を有して構成され、第3の復調処理系統CHnは、後段側の第3の混合器17と、選局用の局発信号ωnを発生する局部発振器18、IFフィルタ19、IFアンプ20、復調器21を有して構成されている。
【0030】
なお、復調器11,16,21は、IFアンプ10,15,16を介して供給されるIF信号IF1,IF2,IFnに対し、衛星ディジタル放送又は地上ディジタル放送の変調方式に準拠した所定の復調処理を行って、復調信号S1,S2,Snを生成する。また、上述したように、復調処理の過程で、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnを生成して出力する。
【0031】
そして、RFアンプ4が、RFフィルタ部1を介して供給される高周波信号Scpに対して、レベル検波器3の出力に基づいてAGC制御によるレベル調整を施して、そのレベル調整を施した高周波信号Sagcを混合器5に供給し、混合器5がそのレベル調整された高周波信号Sagcと局発信号ω0とを混合することで周波数変換信号Scvを生成し、レベル検波器3と復調処理系統CH1,CH2,CHnに供給する。
【0032】
第1の復調処理系統CH1では、第1の混合器7が周波数変換信号Scvに、局部発振器8で設定される局発信号ω1を混合することで中間周波数の信号に周波数変換し、更にIFフィルタ9が中間周波数の信号からIF信号IF1を抽出し、IFアンプ10がそのIF信号IF1をAGC制御によって自動的にレベル調整した後、復調器11が復調処理することで、復調信号S1を生成する。
【0033】
第2の復調処理系統CH2では、第2の混合器12が周波数変換信号Scvに、局部発振器13で設定される局発信号ω2を混合することで中間周波数の信号に周波数変換し、更にIFフィルタ14が中間周波数の信号からIF信号IF2を抽出し、IFアンプ15がそのIF信号IF2をAGC制御によって自動的にレベル調整した後、復調器16が復調処理することで復調信号S2を生成する。
【0034】
第3の復調処理系統CHnでは、第3の混合器17が周波数変換信号Scvに、局部発振器18で設定される局発信号ωnを混合することで中間周波数の信号に周波数変換し、更にIFフィルタ19が中間周波数の信号からIF信号IFnを抽出し、IFアンプ20がそのIF信号IFnをAGC制御によって自動的にレベル調整した後、復調器21が復調処理することで復調信号Snを生成する。
【0035】
図3及び図4を参照して、更に本実施形態の高周波信号受信装置100のより具体的な構成例について詳述する。
【0036】
図3に示すように、RFフィルタ部1は、RFフィルタ1aと、ゲイン制御回路2aと周波数選択回路2cから供給される制御信号Px,Pa〜Pmに従ってフィルタ特性が変化する可変フィルタ回路1bとを有して形成されている。
【0037】
RFフィルタ1aは、図1に示した初段のRFフィルタと同様の構成及び機能を有し、受信アンテナANTで受信される高周波数・広帯域の受信波Sinから、nチャンネル(本実施形態では3物理チャンネル)分の高周波信号A1,A2,Anを抽出して通過させる所定の通過帯域幅BWを有するフィルタで形成されている。
【0038】
可変フィルタ回路1bは、図示するようにm個(本実施形態では3個)ずつの、高速スイッチングトランジスタQa,Qb,Qmと容量可変コンデンサCa,Cb,Cmと所定値に設定されたコイルLa,Lb,Lmとが、RFフィルタ1aの出力に並列接続(ラダー接続)されたLCフィルタで形成されており、RFフィルタ1aから出力される高周波信号A1,A2,Anに対して、通過帯域幅BWの範囲内の所定の帯域幅(以下「選択帯域幅」と称する)BWiにおいて減衰量αjを可変調整するノッチフィルタとなっている。
【0039】
そして、高周波信号A1,A2,Anのうち選択帯域幅BWi内の高周波信号に対して減衰量αjでレベル調整し、そのレベル調整した高周波信号とレベル調整しない高周波信号とを、レベル調整済み信号ScpとしてRFアンプ4に供給する。例えば、可変フィルタ回路1bは、選択帯域幅BWiを高周波信号A2の帯域幅BW2に設定する場合には、高周波信号A2を減衰量αjで減衰させ、一方、高周波信号A1,Anを減衰させずに、RFアンプ4に供給する。
【0040】
なお、本実施形態では、コイルLa,Lb,Lmは、同じインダクタンスに決められており、容量可変コンデンサCa,Cb,Cmは、周波数選択回路2cから供給される制御信号Pxに従って異なる容量値で変化したり、また、同じ容量値で変化する所謂三連バリコン等で形成されている。
【0041】
そして、可変フィルタ回路1bは、周波数選択回路2cから供給される制御信号Pxに従って容量可変コンデンサCa,Cb,Cmの容量値を変化させ、更にゲイン制御回路2aから供給される制御信号Pa,Pb,Pmに従ってトランジスタQa,Qb,Qmがオン(導通)又はオフ(遮断)動作することで、フィルタ特性である選択帯域幅BWiと減衰量αjを設定して、高周波信号A1,A2,Anを選択的にレベル調整する。
【0042】
ここで、図5(a)〜(c)に示すフィルタ特性を参照して、可変フィルタ回路1bの機能を説明する。なお、図5(a)〜(c)において、横軸は周波数、縦軸は0(dB)を基準にして減衰量αjを表わしている。
【0043】
可変フィルタ回路1bは、そのフィルタ特性(選択帯域幅BWiと減衰量αj)が制御信号Px,Pa,Pb,Pmに従って可変調整されることで、次の機能を発揮する。
【0044】
(第1の機能)
まず、図3に示すゲイン制御回路2aからの制御信号Pa,Pb,Pmに従って、各トランジスタQa〜Qmがオン(導通)又はオフ(遮断)動作する。そして、全てのトランジスタQa〜Qmがオフとなる場合には、コイルLa〜LmとコンデンサCa〜CmがRFフィルタ1aに対して電気的に遮断されるため、可変フィルタ回路1bはLCフィルタとしての機能を停止して、RFフィルタ1aから出力される高周波信号A1,A2,AnをそのままRFアンプ4に供給する。つまり、全てのトランジスタQa〜Qmがオフとなる場合には、可変フィルタ回路1bは高周波信号A1,A2,Anに対してスルー状態となり、RFフィルタ1aから出力される高周波信号A1,A2,Anに対してレベル調整を行わず、RFアンプ4に供給する。
【0045】
(第2の機能)
周波数選択回路2cからの制御信号Pxに従って、コンデンサCa〜Cmの容量値が所定の第1容量値β1(つまり、β1=Ca=Cb=Cm)に調整されると、その第1容量値β1のコンデンサCa〜Cmと、同じインダクタンスのコイルLa〜Lmとによって、図5(a)に示すように、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiが高周波信号A1の帯域幅BW1に合わせられる。
【0046】
更に、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiが高周波信号A1の帯域幅BW1に合わせられた状態で、同時に、制御信号Paに従ってトランジスタQaがオン、制御信号Pb,Pmに従ってトランジスタQb,Qmがオフに設定されると、コンデンサCaとコイルLaだけがRFフィルタ1aに対して電気的に接続され、コンデンサCa,CmとコイルLb,Lmは電気的に遮断される。このため、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWi(つまり、BW1)における減衰量αjが比較的小さな第1減衰量α1に調整され、その第1減衰量α1で高周波信号A1のレベルを調整(減衰)する。
【0047】
また、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiが高周波信号A1の帯域幅BW1に合わせられた状態で、同時に、制御信号Pa,Pbに従ってトランジスタQa,Qbがオン、制御信号Pmに従ってトランジスタQmがオフに設定されると、コンデンサCa,CbとコイルLa,LbがRFフィルタ1aに対して電気的に接続され、コンデンサCmとコイルLmは電気的に遮断される。このため、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWi(つまり、BW1)における減衰量αjが、第1減衰量α1より大きな第2減衰量α2に調整され、その第2減衰量α2で高周波信号A1のレベルを調整(減衰)する。
【0048】
また、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiが高周波信号A1の帯域幅BW1に合わせられた状態で、同時に、制御信号Pa,Pb,Pmに従って全てのトランジスタQa,Qb,Qmがオンに設定されると、全てのコンデンサCa,Cb,CmとコイルLa,Lb,LmがRFフィルタ1aに対して電気的に接続される。このため、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWi(つまり、BW1)における減衰量αjが更に第2減衰量α2より大きな第3減衰量αmに調整され、その第3減衰量αmで高周波信号A1のレベルを調整(減衰)する。
【0049】
このように、可変フィルタ回路1bは、トランジスタQa,Qb,Qmのうち、オンとなる個数が多くなるほど、コンデンサCa,Cb,CmとコイルL1,L2,Lmの並列接続される数が多くなって、RFフィルタ1aの出力に対するインピーダンスが低下することで、帯域幅BW1内の高周波信号A1に対する減衰量αjが大きくなる。そして、帯域幅BW1内の高周波信号A1だけを減衰させ、帯域幅BW2,BWn内の高周波信号A2,Anを減衰さぜずにそのまま、RFアンプ4に供給する。
【0050】
(第3の機能)
周波数選択回路2cからの制御信号Pxに従って、コンデンサCa〜Cmの容量値が所定の第2容量値β2(つまり、β2=Ca=Cb=Cm)に調整されると、その第2容量値β2のコンデンサCa〜Cmと、同じインダクタンスのコイルLa〜Lmとによって、図5(b)に示すように、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiが高周波信号A2の帯域幅BW2に合わせられる。
【0051】
更に、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiが高周波信号A2の帯域幅BW2に合わせられた状態で、同時に、制御信号Paに従ってトランジスタQaがオン、制御信号Pb,Pmに従ってトランジスタQb,Qmがオフに設定されると、コンデンサCaとコイルLaだけがRFフィルタ1aに対して電気的に接続され、コンデンサCb,CmとコイルLb,Lmは電気的に遮断される。このため、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWi(つまり、BW2)における減衰量αjが比較的小さな第1減衰量α1に調整される。
【0052】
また、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiが高周波信号A2の帯域幅BW2に合わせられた状態で、同時に、制御信号Pa,Pbに従ってトランジスタQa,Qbがオン、制御信号Pmに従ってトランジスタQmがオフに設定されると、コンデンサCa,CbとコイルLa,LbがRFフィルタ1aに対して電気的に接続され、コンデンサCmとコイルLmは電気的に遮断される。このため、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWi(つまり、BW2)における減衰量αjが、第1減衰量α1より大きな第2減衰量α2に調整される。
【0053】
また、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiが高周波信号A2の帯域幅BW2に合わせられた状態で、同時に、制御信号Pa,Pb,Pmに従って全てのトランジスタQa,Qb,Qmがオンに設定されると、全てのコンデンサCa,Cb,CmとコイルLa,Lb,LmがRFフィルタ1aに対して電気的に接続される。このため、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWi(つまり、BW2)における減衰量αjが、更に第2減衰量α2より大きな第3減衰量αmに調整される。
【0054】
このように、可変フィルタ回路1bは、トランジスタQa,Qb,Qmのうち、オンとなる個数が多くなるほど、コンデンサC1,C2,CmとコイルL1,L2,Lmの並列接続される数が多くなって、RFフィルタ1aの出力に対するインピーダンスが低下することで、帯域幅BW2内の高周波信号A2に対する減衰量αjが大きくなる。そして、高周波信号A2だけを減衰させ、帯域幅BW1,BWn内の高周波信号A1,Anを減衰さぜずにそのまま、RFアンプ4に供給する。
【0055】
(第4の機能)
周波数選択回路2cからの制御信号Pxに従って、コンデンサCa〜Cmの容量値が所定の第3容量値βn(つまり、βn=Ca=Cb=Cm)に調整されると、その第3容量値βnのコンデンサCa〜Cmと、同じインダクタンスのコイルLa〜Lmとによって、図5(c)に示すように、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiが高周波信号Anの帯域幅BWnに合わせられる。
【0056】
更に、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiが高周波信号Anの帯域幅BWnに合わせられた状態で、同時に、制御信号Paに従ってトランジスタQaがオン、制御信号Pb,Pmに従ってトランジスタQb,Qmがオフに設定されると、コンデンサCaとコイルLaだけがRFフィルタ1aに対して電気的に接続され、コンデンサCa,CmとコイルLb,Lmは電気的に遮断される。このため、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWi(つまり、BWn)における減衰量αjが比較的小さな第1減衰量α1に調整される。
【0057】
また、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiが高周波信号Anの帯域幅BWnに合わせられた状態で、同時に、制御信号Pa,Pbに従ってトランジスタQa,Qbがオン、制御信号Pmに従ってトランジスタQmがオフに設定されると、コンデンサCa,CbとコイルLa,LbがRFフィルタ1aに対して電気的に接続され、コンデンサCmとコイルLmは電気的に遮断される。このため、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWi(つまり、BWn)における減衰量αjが第1減衰量α1より大きな第2減衰量α2に調整される。
【0058】
また、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiが高周波信号Anの帯域幅BWnに合わせられた状態で、同時に、制御信号Pa,Pb,Pmに従って全てのトランジスタQa,Qb,Qmがオンに設定されると、全てのコンデンサCa,Cb,CmとコイルLa,Lb,LmがRFフィルタ1aに対して電気的に接続される。このため、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWi(つまり、BWn)における減衰量αjが更に第2減衰量α2より大きな第3減衰量αmに調整される。
【0059】
このように、可変フィルタ回路1bは、トランジスタQa,Qb,Qmのうち、オンとなる個数が多くなるほど、コンデンサCa,Cb,CmとコイルL1,L2,Lmの並列接続される数が多くなって、RFフィルタ1aの出力に対するインピーダンスが低下することで、帯域幅BWn内の高周波信号Anに対する減衰量αjが大きくなる。そして、高周波信号Anだけを減衰させ、帯域幅BW1,BW2内の高周波信号A1,A2を減衰さぜずにそのまま、RFアンプ4に供給する。
【0060】
以上、可変フィルタ回路1bの機能について説明した。
次に、RF自動利得制御部2は、図3に示すように、値の異なる複数個(m+1)のスケールファクタとしての直流電圧(以下「参照電圧」と称する)Vref1〜Vrefm+1を発生する基準電圧源2bと、上述したゲイン制御回路2aと周波数選択回路2cとを有して構成されている。
【0061】
ゲイン制御回路2aは、図4のブロック図に示す構成となっており、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnのレベル(電圧)を比較して、最も大きいレベルの検波レベル信号を選択する比較器2aaと、その選択された検波レベル信号によって検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnを除算(割り算)処理することで、最大レベルを「1」とする正規化した検波レベル信号ΔSdc1,ΔSdc2,ΔSdcnを生成する正規化回路2abと、正規化した検波レベル信号(以下、「正規化検波レベル信号」と称する)ΔSdc1,ΔSdc2,ΔSdcnの加算平均値AVLを演算する平均値演算回路2acと、上述の最も大きいレベルの検波レベル信号に当たる正規化検波レベル信号と加算平均値AVLとの差の電圧(差電圧)ΔEを演算する差電圧演算回路2adと、差電圧ΔEと参照電圧Vref1〜Vrefm+1を比較する複数個(m+1)のコンパレータ2aeと、そのコンパレータ2aeの(m+1)個の比較結果CMをデコードすることにより、上述の比較器2abで選択された最も大きいレベルの検波レベル信号のレベルに応じて、トランジスタQa,Qb,Qcを選択的にオン/オフ切替えして、可変フィルタ回路1bの減衰量αjを調整するための制御信号Pa,Pb,Pmを生成するデコーダ回路2afと、を有して形成されている。
【0062】
かかる構成を有するゲイン制御回路2aによると、入力される検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnのうち、最も大きいレベルとなっている検波レベル信号に応じて、減衰量αjを設定するための制御信号Pa,Pb,Pmが生成される。
【0063】
つまり、上述の比較器2aaが、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnのレベルを比較し、最も大きいレベルの検波レベル信号Sdc1を選択した場合、正規化回路2abが、最大レベルを「1」とする正規化した検波レベル信号ΔSdc1,ΔSdc2,ΔSdcnを生成し、検波レベル信号ΔSdc1は「1」となる。次に、平均値演算回路2acが、正規化検波レベル信号ΔSdc1,ΔSdc2,ΔSdcnの加算平均値AVLを演算し、次に、差電圧演算回路2adが、最も大きいレベルの検波レベル信号Sdc1に当たる正規化検波レベル信号ΔSdc1と加算平均値AVLとの差電圧ΔEを演算する。
【0064】
更に、複数個(m+1)のコンパレータ2aeが、差電圧ΔEと参照電圧Vref1〜Vrefm+1を比較する。ここで、差電圧ΔEが正規化検波レベル信号ΔSdc1,ΔSdc2,ΔSdcnに基づいて生成されるものであることから、予め参照電圧Vref1〜Vrefm+1は、0<Vref1<Vref2<Vrefm<Vrefm+1=1の関係に設定されており、(m+1)個の各コンパレータ2aeが、各参照電圧Vref1〜Vrefm+1と差電圧ΔEとを比較し、合計で(m+1)個の比較結果CMを出力する。例えば、0≦ΔE<Vref1であれば、比較結果CMは、論理値で(0,0,0,0)となり、Vref1≦ΔE<Vref2であれば、比較結果CMは(1,0,0,0)となり、Vref2≦ΔE<Vrefmであれば、比較結果CMは(1,1,0,0)となり、Vrefm≦ΔE<Vrefm+1であれば、比較結果CMは(1,1,1,0)となり、Vrefm+1≦ΔEであれば、比較結果CMは(1,1,1,1)となる。
【0065】
そして、上述のデコーダ回路2afが、比較結果CMをデコードすることで、次の表1で表される関係に基づいて、減衰量αjを設定するための制御信号Pa,Pb,Pmを論理信号として生成する。
【0066】
【表1】

【0067】
なお、比較器2aaが検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnのレベルを比較し、最も大きいレベルの検波レベル信号Sdc1を選択した場合での、減衰量αjを設定するための制御信号Pa,Pb,Pmの生成過程について説明したが、比較器2aaが検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnのレベルを比較し、最も大きいレベルの検波レベル信号Sdc2を選択した場合にも、減衰量αjを設定するための制御信号Pa,Pb,Pmが同様の生成過程で生成され、比較器2aaが検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnのレベルを比較し、最も大きいレベルの検波レベル信号Sdcnを選択した場合にも、減衰量αjを設定するための制御信号Pa,Pb,Pmが同様の生成過程で生成される。
【0068】
次に、周波数選択回路2cは、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnをコンパレータ等で比較し、最も大きいレベルとなっている検波レベル信号を判定し、制御信号PxによってコンデンサCa,Cb,Cmの容量値を調整することで、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiを、その最も高レベルとなっている検波レベル信号が生成されたチャンネルの帯域幅に設定する。
【0069】
より詳細に述べると、周波数選択回路2cには、第1,第2,第3の容量値β1,β2,βnのデータを格納するメモリ等が設けられている。そして、それらの容量値β1,β2,βnのデータのうち、上述の判定した最も大きいレベルとなっている検波レベル信号に対応するデータを制御信号Pxとして可変フィルタ回路1bに供給し、コンデンサCa,Cb,Cmを調整する。
【0070】
つまり、周波数選択回路2cは、検波レベル信号Sdc1が最も大きいレベルとなっていると判定した場合、第1容量値β1のデータを制御信号Pxとして可変フィルタ回路1bに供給し、コンデンサCa,Cb,Cmを第1容量値β1に調整する。これにより、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiを、図5(a)に示した帯域幅BW1に合わせる。
【0071】
また、検波レベル信号Sdc2が最も大きいレベルとなっていると判定した場合、第2容量値β2のデータを制御信号Pxとして可変フィルタ回路1bに供給し、コンデンサCa,Cb,Cmを第2容量値β2に調整する。これにより、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiを、図5(b)に示した帯域幅BW2に合わせる。
【0072】
また、検波レベル信号Sdc2が最も大きいレベルとなっていると判定した場合、第3容量値βnのデータを制御信号Pxとして可変フィルタ回路1bに供給し、コンデンサCa,Cb,Cmを第3容量値βnに調整する。これにより、可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiを、図5(c)に示した帯域幅BWnに合わせる。
【0073】
次に、かかる構成を有する高周波信号受信装置100の動作を説明する。
まず、例えば受信状態が良好で、受信波Sinに含まれる高周波信号A1,A2,Anがほぼ同じレベルのときには、復調処理系統CH1,CH2,CHn内の復調器11,16,21で生成される検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnもほぼ同じレベルとなる。このため、RF自動利得制御部2内のゲイン制御回路2aが、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnを同じレベルと判定する。つまり、差電圧ΔEと参照電圧Vref1〜Vrefm+1を比較すると、0≦ΔE<Vref1の関係が満たされるため、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnを同じレベルと判定する。そして、トランジスタQa,Qb,Qmを全てオフにするための制御信号Pa,Pb,Pmを可変フィルタ回路1bに供給し、可変フィルタ回路1bを実質的に動作停止状態にする。つまり、可変フィルタ回路1bが高周波信号A1,A2,Anに対しスルーの状態となる。
【0074】
更に、周波数選択回路2cは、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnが同じレベルのときには、制御信号PxによってコンデンサCa,Cb,Cmを適宜の容量値に調整する。しかし、ゲイン制御回路2aによって可変フィルタ回路1bが実質的に動作停止状態となるため、周波数選択回路2cは可変フィルタ回路1bに対する制御には寄与しなくなる。
【0075】
一方、例えば受信状態が悪化し、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnが異なったレベルとなった場合、周波数選択回路2cが、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnのレベルを比較することで、最も大きいレベルの検波レベル信号を判定する。そして、最も大きいレベルの検波レベル信号が検波レベル信号Sdc1である場合、周波数選択回路2cは可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiを帯域幅BW1に設定させ、更に、ゲイン制御回路2aが検波レベル信号Sdc1のレベルを検知して、制御信号Pa,Pb,Pmによって、トランジスタQa,Qb,Qmをオン又はオフ制御することで、図5(a)に示したように、帯域幅BW1における減衰量αjを調整させる。
【0076】
これにより、可変フィルタ回路1bで高周波信号A1,A2,Anのレベルがほぼ同じレベルとなるように、AGC制御によるレベル調整が行われて、RFアンプ4に供給することとなる。この結果、各復調処理系統CH1,CH2,CHnに設けられているIFフィルタ9,14,19から出力されるIF信号IF1,IF2,IFnのレベルをほぼ同じレベルとすることが可能となり、復調器11,16,21が復調不能となったり、復調信号S1,S3,Snの信号対雑音比(SN比)が悪化する等の問題を改善することができる。
【0077】
また、周波数選択回路2cが、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnのレベルを比較した結果、最も大きいレベルの検波レベル信号が検波レベル信号Sdc2であった場合、周波数選択回路2cは可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiを帯域幅BW2に設定させ、更に、ゲイン制御回路2aが検波レベル信号Sdc1のレベルを検知して、制御信号Pa,Pb,Pmによって、トランジスタQa,Qb,Qmをオン又はオフ制御することで、図5(b)に示したように、帯域幅BW2における減衰量αjを調整させる。
【0078】
これにより、可変フィルタ回路1bで高周波信号A1,A2,Anのレベルがほぼ同じレベルとなるように、AGC制御によるレベル調整が行われて、RFアンプ4に供給することとなる。この結果、各復調処理系統CH1,CH2,CHnに設けられているIFフィルタ9,14,19から出力されるIF信号IF1,IF2,IFnのレベルをほぼ同じレベルとすることが可能となり、復調器11,16,21が復調不能となったり、復調信号S1,S3,Snの信号対雑音比(SN比)が悪化する等の問題を改善することができる。
【0079】
また、周波数選択回路2cが、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnのレベルを比較した結果、最も大きいレベルの検波レベル信号が検波レベル信号Sdcnであった場合、周波数選択回路2cは可変フィルタ回路1bの選択帯域幅BWiを帯域幅BW3に設定させ、更に、ゲイン制御回路2aが検波レベル信号Sdcn1のレベルを検知して、制御信号Pa,Pb,Pmによって、トランジスタQa,Qb,Qmをオン又はオフ制御することで、図5(c)に示したように、帯域幅BW3における減衰量αjを調整させる。
【0080】
これにより、可変フィルタ回路1bで高周波信号A1,A2,Anのレベルがほぼ同じレベルとなるように、AGC制御によるレベル調整が行われて、RFアンプ4に供給することとなる。この結果、各復調処理系統CH1,CH2,CHnに設けられているIFフィルタ9,14,19から出力されるIF信号IF1,IF2,IFnのレベルをほぼ同じレベルとすることが可能となり、復調器11,16,21が復調不能となったり、復調信号S1,S3,Snの信号対雑音比(SN比)が悪化する等の問題を改善することができる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態の高周波信号受信装置100によれば、RF自動利得制御部2において、検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnのレベルを比較し、最もレベルの大きい検波レベル信号に対応する選択通過帯域BWi内の高周波信号(A1,A2,Anの何れかの高周波信号)に対して、減衰量αjでレベル調整するように、RFフィルタ部1内のフィルタ回路1aのフィルタ特性を調整するので、受信波Sinに含まれている複数の高周波信号A1,A2,Anのレベルを同レベルにすべくAGC制御することができる。そして、同レベルにAGC制御した複数の高周波信号A1,A2,Anを、受信機200内の混合器5で周波数変換させて周波数変換信号Scvを生成させ、複数の復調処理系統CH1,CH2,CHnで復調させると、復調不能となったり復調信号S1,S2,SnのSN比が悪化する等の問題を改善することができる。
【0082】
なお、以上に説明した実施形態では、可変フィルタ回路1bの減衰量αjを3段階(m=3)に調整することとしているが、更に多くの段数で調整するようにしてもよい。つまり、図3に示したコイルLa,Lb,LmとコンデンサCa,Cb,CmとトランジスタQa,Qb,Qmで構成されているLCフィルタの並列接続段数を増やし、ゲイン制御回路2aが検波レベル信号Sdc1〜Sdcnをより細かくレベル判定して、その増やしたトランジスタをオン又はオフ制御することで、可変フィルタ回路1bの減衰量αjを3段階より増やしてもよい。かかる構成によれば、高周波信号A1,A2,Anをより細かくレベル調整することができるため、より精度の良いAGC制御を行うことができる。
【0083】
また、図3に示した可変フィルタ回路1bは、実施する際の一具体例であり、これと同等の機能を発揮するフィルタ回路であれば、他の回路構成のものでもよい。但し、高周波信号に対してフィルタ特性を可変調整する必要上、LCフィルタの構成とすることが望ましい。
【0084】
また、復調処理系統CH1,CH2,CHnを備えて3チャンネル分の高周波信号A1,A2,Anを受信する受信機200に設けられる高周波信号受信装置100について説明したが、本発明の高周波信号受信装置は、2チャンネル分の復調処理系統を備える受信機にも適用することが可能であり、また、4チャンネル以上の復調処理系統を備える受信機にも適用することが可能である。
【0085】
つまり、RF自動利得制御部2でレベル比較する検波レベル信号の数を復調処理系統の数に合わせて設定し、最も大きいレベルの検波レベル信号に対応する選択帯域幅内の高周波信号に対して、減衰量αjを調整するように、可変フィルタ回路1bのフィルタ特性を制御すればよい。
【0086】
また、以上の説明では、RF自動利得制御部2は、各復調処理系統CH1,CH2,CHnが復調処理の過程で各希望信号をレベル検波することで生成する各受信感度を示すAGC信号を検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnとして入力し、レベル比較と高周波信号の選択帯域幅BWiを判定して、可変フィルタ回路1bをAGC制御しているが、各受信感度を示す信号であれば、AGC信号以外の信号を検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnとして用いてもよい。例えば、各希望信号を検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnとして用いてもよい。また、IF信号IF1,IF2,IFnを検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnとして用いてもよい。各復調器11,16,21で復調される復調信号S1,S2,Snを検波レベル信号Sdc1,Sdc2,Sdcnとして用いてもよい。
【0087】
また、図2、図3に示した高周波信号受信装置100では、受信波Sinから高周波信号A1,A2,Anを抽出する通過帯域幅BWのRFフィルタ1aが備えられているが、一般に受信機に設けられているRFフィルタを用いればよいので、RFフィルタ1aをその受信機のRFフィルタとすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】衛星ディジタル放送と地上ディジタル放送を受信する従来の受信機の構成を表したブロック図である。
【図2】実施形態の高周波信号受信装置の構成を表したブロック図である。
【図3】図2に示した高周波信号受信装置の具体例の構成を表した回路図である。
【図4】更に、図2に示した高周波信号受信装置の具体例の構成を表したブロック図である。
【図5】図3、図4に示した高周波信号受信装置の機能を説明するための説明である。
【符号の説明】
【0089】
1b…可変フィルタ回路 2a…ゲイン制御回路
2b…周波数選択回路 100…高周波信号受信装置
200…受信機 CV…周波数変換手段
CH1,CH2,CHn…復調処理系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信アンテナで受信される受信波に含まれる複数の所定チャンネルの高周波信号をAGC制御によってレベル調整し、受信機内の周波数変換手段を介して前記複数の所定チャンネル分の復調処理系統に供給する高周波信号受信装置であって、
前記各復調処理系統で生成される受信感度を示す所定の各信号のレベルを比較し、各信号に対応する前記高周波信号のチャンネルの帯域幅を判定する周波数選択手段と、
前記受信感度を示す所定の各信号のレベルに対応する減衰量を設定するゲイン制御手段と、
前記受信アンテナと前記周波数変換手段の間に接続され、前記複数の所定チャンネルの高周波信号のうち、前記周波数選択手段で判定される前記帯域幅内の高周波信号を前記ゲイン制御手段で設定される減衰量で減衰させる可変フィルタ手段と、
を備えることを特徴とする高周波信号受信装置。
【請求項2】
受信アンテナで受信される受信波に含まれる複数の所定チャンネルの高周波信号を周波数変換手段で周波数変換信号に周波数変換し、前記周波数変換信号に基づいて前記複数の所定チャンネル分の復調処理系統で復調処理することで複数チャンネル分の復調信号を生成する受信機であって、
前記各復調処理系統で生成される受信感度を示す所定の各信号のレベルを比較し、各信号に対応する前記高周波信号のチャンネルの帯域幅を判定する周波数選択手段と、
前記受信感度を示す所定の各信号のレベルに対応する減衰量を設定するゲイン制御手段と、
前記受信アンテナと前記周波数変換手段の間に接続され、前記複数の所定チャンネルの高周波信号のうち、前記周波数選択手段で判定される前記帯域幅内の高周波信号を前記ゲイン制御手段で設定される減衰量で減衰させる可変フィルタ手段と、
を備えることを特徴とする受信機。
【請求項3】
前記受信感度を示す所定の各信号は、前記各復調処理系統で生成される各希望信号のレベルを検波した検波レベル信号であること、
を特徴とするを特徴とする請求項1に記載の高周波信号受信装置。
【請求項4】
前記受信感度を示す所定の各信号は、前記各復調処理系統で生成される各希望信号であること、
を特徴とするを特徴とする請求項1に記載の高周波信号受信装置。
【請求項5】
前記受信感度を示す所定の各信号は、前記各復調処理系統で生成される中間周波数のIF信号であること、
を特徴とする請求項1に記載の高周波信号受信装置。
【請求項6】
前記受信感度を示す所定の各信号は、前記各復調処理系統で生成される復調信号であること、
を特徴とする請求項1に記載の高周波信号受信装置。
【請求項7】
前記受信感度を示す所定の各信号は、前記各復調処理系統で生成される各希望信号のレベルを検波した検波レベル信号であること、
を特徴とするを特徴とする請求項2に記載の受信機。
【請求項8】
前記受信感度を示す所定の各信号は、前記各復調処理系統で生成される各希望信号であること、
【請求項9】
前記受信感度を示す所定の各信号は、前記各復調処理系統で生成される中間周波数のIF信号であること、
を特徴とする請求項2に記載の受信機。
【請求項10】
前記受信感度を示す所定の各信号は、前記各復調処理系統で生成される復調信号であること、
を特徴とする請求項2に記載の受信機。
【請求項11】
前記受信感度を示す所定の各信号は、前記各復調処理系統で生成される復調信号のビットエラーレート(BER:Bit Error Rate)であること、
を特徴とする請求項2に記載の受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−103848(P2008−103848A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282885(P2006−282885)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】