説明

高周波加熱治療装置

【課題】小面積の患部と大面積の患部をそれぞれ最適な温度で同時に温熱治療する。
【解決手段】高周波加熱治療装置は、高周波電力増幅器10と、高周波電力増幅器10の出力により患部を加熱する1対の導子電極14a、14b、又は14cと、少なくとも一方の導子電極とこれにより加熱される患部表面との間に挿入される図示しない絶縁材、高周波電力増幅器10の出力に接続されるとともに前記1対の導子電極14a、14b、又は14cに接続される可変インピーダンス回路12と、可変インピーダンス回路12のインピーダンスを、前記1対の導子電極14a、14b、又は14c、前記絶縁材及び前記双方の患部で構成される被治療電気回路のインピーダンスに整合させるインピーダンス制御手段12と、被治療電気回路のインピーダンスを記憶するメモリ18と、導子電極の面積、及び、絶縁材の誘電率・厚さを入力する入力部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波加熱治療装置に関し、特に、電極を患部に押し当て、当該電極を介して超短波(VHF帯)やマイクロ波(SHF帯)の電磁波で患部に温熱治療を施す高周波加熱治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波加熱治療装置用導子の一例として、患部を高周波加熱するコンデンサ型のものがある。例えば、特許文献1に開示された高周波加熱治療装置用導子では、1対の電極が人体患部に容易に装着できるようにしている。具体的には、患部が手・足などの場合は、手・足の厚みに合わせて電極連結部を屈曲させて患部を挟む。また、患部が肩や腰の場合は、局面に沿うように電極連結部を屈曲させ、ベルトで当該電極を人体患部に固定する。ここに、導子が有する電極は略正方形のものが例示されており、面積同一の1対が使用される。
【特許文献1】特開2001−46520号公報(図3、段落0013)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に開示された高周波加熱治療装置用導子では、導子の面積は同一であるため、手の裏表、腰の左右などで患部の大きさが異なる場合は、治療しなくてもよい部分まで高周波加熱が行なわれ、電力利用効率が低くなる。また、一方、小面積の電極により局部的な治療を集中的に行なうとともに、大面積の電極で大面積の患部を治療したい場合がある。
【0004】
一方、電極面積の異なる導子(電極)で人体に容量結合させると、小さい側の導子で温感が弱く感じる傾向があるため、被治療者に不快感を与えかねない。また、電極間のバランスが崩れ、コモンモードノイズが発生し、周辺の電気製品に影響を与える虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、小面積の患部と大面積の患部を同じ温感で同時に温熱治療することができる高周波加熱治療装置を提供することを目的とする。また、本発明は、小面積の患部と大面積の患部をそれぞれ最適な温度で同時に温熱治療することができる高周波加熱治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明の高周波加熱治療装置では、患部に接触する1対の電極により患部を高周波加熱治療する場合において、一方又は双方の電極表面と患部表面との間に絶縁材を挿入し、小面積の患部と大面積の患部を、それぞれ等温又は最適な温度に加熱する。
【0007】
具体的には、本発明の高周波加熱治療装置は、高周波信号を電力増幅する高周波電力増幅器と、前記高周波電力増幅器の出力により患部を加熱する1対の導子電極と、少なくとも一方の導子電極とこれにより加熱される患部表面との間に挿入される絶縁材とを備え、前記導子電極同士の面積は異ならせる。その場合、前記一方の導子電極の面積は、面積が大きい方の電極であってもよい。
【0008】
なお、絶縁材は、双方の導子電極とこれらの患部表面との間に挿入してもよい。その場合、双方の絶縁材の誘電率は等しく、一方の導子電極は面積が大きい方の電極であり、これにより加熱される患部表面との間に挿入される絶縁材の厚さは大きく、前記他方の導子電極は面積が小さい方の電極であり、これにより加熱される患部表部との間に挿入される絶縁材の厚さは小さくしてもよい。
【0009】
さらに、本発明の高周波加熱治療装置は、前記高周波電力増幅器の出力に接続されるとともに、前記1対の導子電極に接続される可変インピーダンス回路と、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを、前記1対の導子電極、前記絶縁材及び前記双方の患部で構成される被治療電気回路のインピーダンスに整合させるインピーダンス制御手段と、前記1対の電極の面積、及び、前記絶縁材誘電率並びに厚さで定まる被治療電気回路のインピーダンスを記憶するメモリと、それぞれの電極の面積、及び、絶縁材の誘電率並びに厚さを入力する入力部とをさらに備え、前記入力部への入力と前記メモリの出力とに基づいて、前記制御回路を制御してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小面積の患部と大面積の患部を、それぞれ等温で、又は最適な温度で、同時に温熱治療することができる高周波加熱治療装置を提供することができる。また、本発明によれば、小面積の患部と大面積の患部をそれぞれ最適な温度で同時に温熱治療することができる高周波加熱治療装置を提供することができる。特に、大面積電極側と小面積電極側とで温感をバランスさせることにより、コモンモードノイズを抑制し、周辺の電気製品への影響を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の高周波加熱治療装置のブロック図である。高周波加熱治療装置は、高周波信号を電力増幅する高周波電力増幅器10と、前記高周波電力増幅器の出力により患部を加熱する1対の導子電極14a、14b、又は14cと、少なくとも一方の導子電極とこれにより加熱される患部表面との間に挿入される図示しない絶縁材とを備える。導子電極は、金属の平板や網等であり、絶縁材は、絶縁体の平板や網・布等、具体的にはフェルトやゴム等である。
【0013】
さらに、高周波加熱治療装置は、前記高周波電力増幅器10の出力に接続されるとともに前記1対の導子電極14a、14b、又は14cに接続される可変インピーダンス回路12と、前記可変インピーダンス回路12のインピーダンスを、前記1対の導子電極14a、14b、又は14c、前記絶縁材及び前記双方の患部で構成される被治療電気回路のインピーダンスに整合させるインピーダンス制御手段12と、前記導子電極の面積、及び、前記絶縁材誘電率並びに厚さで定まる被治療電気回路のインピーダンスを記憶するメモリ18と、導子電極の面積、及び、絶縁材の誘電率並びに厚さを入力する入力部20とを備えてもよい。
【0014】
高周波電力増幅器10は、高周波利用医療機器に割り当てられた周波数、例えば、13.56MHz、27.12MHz、40.68MHz、2.45GHzなどの高周波信号を電力増幅する。
【0015】
可変インピーダンス回路12は、高周波電力増幅器10の出力を導子電極14a、14b、又は14cに出力する。高周波電力増幅器10の出力は高周波であるため、絶縁材及び前記双方の患部で構成される被治療電気回路のインピーダンスに整合させる必要がある。
ここに、被治療電気回路のインピーダンスは、人体各部の電気抵抗、誘電率、誘電損失、導子電極面積、絶縁材の誘電率及び厚さによって定まる。そこで、可変インピーダンス回路12は、抵抗、キャパシタ、コイルから構成され、被治療電気回路のインピーダンスに応じて、抵抗値、キャパシタンス、インダクタンスを変化させ、インピーダンスマッチングを行なう。
【0016】
インピーダンス制御手段16は、可変インピーダンス回路12の抵抗値、キャパシタンス、インダクタンス抵抗、キャパシタ、コイルの値を変化させることにより、インピーダンスマッチングを行なう。
【0017】
可変インピーダンス回路12の回路定数は、例えば、可変抵抗、容量可変コンデンサ、ローラインダクタ等の定数を手動で変更することによって実現できる。インピーダンスマッチングが実現される回路定数は、治療部位、導子電極、絶縁材毎に、予め経験的に定めておけばよい。この場合、インピーダンス制御手段16は、可変抵抗、容量可変コンデンサ、ローラインダクタ等の定数を手動で変更するためのつまみや切替スイッチ等からなる。
可変インピーダンス回路12の回路定数は、自動的に変更することもできる。そのため、入力手段20と、メモリ18を使用する。入力手段20は、例えばテンキーであり、治療部位、導子電極、絶縁材、インピーダンス整合値の入力を受け、入力値がメモリ18に格納される。なお、治療部位、導子電極、絶縁材に替えて、治療部位、導子電極、絶縁材により導子の種類番号を定め、導子番号とそれに対応するインピーダンス整合値を入力してもよい。数種類の導子の中から治療時に使用する導子が決まると、入力手段20に、例えば導子番号が入力され、さらに導子番号はインピーダンス制御手段16に入力される。インピーダンス制御手段16は、導子番号に基づいて、メモリ18を検索し、対応するインピーダンス整合値とこれを実現する回路定数を求める。そして、可変インピーダンス回路12の回路定数をメモリ18から読み出した回路定数に変更する。この場合、インピーダンス制御手段16は、可変抵抗、容量可変コンデンサ、ローラインダクタ等の定数をコンピュータプログラムによって制御するマイクロコンピュータ等が使用される。
【0018】
図2は、治療態様を示す断面図である。図2(A)では、手・足等の患部24を電極対21、23で挟んでいる。図2(A)では、肩・腰等の患部24の同一面上に電極対21、23を配置している。図2(A)、図2(B)のいずれも、絶縁材22は大面積電極側21だけに設けられ、大面積電極側で生じる温感を緩和し、小面積電極側で生じる温感と等しくしている。なお、絶縁材は、双方の電極と患部表面の間に配置してもよく、それらの厚さ、誘電率を、各種選択し、治療目的に応じて、大面積患部側での温度が、小面積患部側の温度と等しくなるように、又は、小面積患部側の温度と低く若しくは高くなるように調節する。
【0019】
図3は、導子電極(左右電極部)、絶縁材を含む導子の一例の平面図である。左電極部31と右電極部32は、導子電極14a、14b、又は14c(図1)を構成し、各電極部31、32には、上述したとおり、それぞれ絶縁材が配置されることがある。カバー30は、絶縁性の布等であり、左電極部31と右電極部32を包み込む。ベルト35は、ベルト支持部材36によって支持され、導子電極14a、14b、又は14c(図1)を人体に固定する。コード33はプラグ34によって可変インピーダンス回路12に接続され、1対の導子電極14a、14b、又は14c(図1)に高周波電力を供給する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】高周波加熱治療装置のブロック図である。
【図2】治療態様を示す断面図である。
【図3】導子の一例の平面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 高周波電力増幅器
12 可変インピーダンス回路
14a、14b、14c 導子電極
16 インピーダンス制御手段
18 メモリ
20 入力手段
31 左電極部
32 右電極部
33 コード
34 プラグ
35 ベルト
36 ベルト支持部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を電力増幅する高周波電力増幅器と、
前記高周波電力増幅器の出力により患部を加熱する1対の導子電極と、
少なくとも一方の導子電極とこれにより加熱される患部表面との間に挿入される絶縁材とを備え、
前記導子電極同士の面積は異なることを特徴とする高周波加熱治療装置。
【請求項2】
請求項1において、
双方の導子電極とこれらの患部表面との間に挿入される絶縁材を備え、
一方の導子電極とこれにより加熱される患部表面との間に挿入される絶縁材の厚さと、他方の導子電極とこれにより加熱される患部表部との間に挿入される絶縁材の厚さとは異なることを特徴とする高周波加熱治療装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記一方の導子電極の面積は、面積が大きい方の電極であることを特徴とする高周波加熱治療装置。
【請求項4】
請求項2において、
双方の絶縁材の誘電率は等しく、
前記一方の導子電極は面積が大きい方の電極であり、これにより加熱される患部表面との間に挿入される絶縁材の厚さは大きく、
前記他方の導子電極は面積が小さい方の電極であり、これにより加熱される患部表部との間に挿入される絶縁材の厚さは小さいことを特徴とする高周波加熱治療装置。
【請求項5】
請求項1又は2において、
前記高周波電力増幅器の出力に接続されるとともに、前記1対の導子電極に接続される可変インピーダンス回路と、
前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを、前記1対の導子電極、前記絶縁材及び前記双方の患部で構成される被治療電気回路のインピーダンスに整合させるインピーダンス制御手段と、
前記1対の電極の面積、及び、前記絶縁材誘電率並びに厚さで定まる被治療電気回路のインピーダンスを記憶するメモリと、
それぞれの電極の面積、及び、絶縁材の誘電率並びに厚さを入力する入力部とをさらに備え、
前記入力部への入力と前記メモリの出力とに基づいて、前記制御回路を制御することを特徴とする高周波加熱治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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