説明

高周波回路

【課題】部品点数を低減することが可能な高周波回路を提供すること。
【解決手段】本実施形態による高周波回路は、板状の第1の誘電体基板11と、第1の誘電体基板11の表面に形成された、コンデンサ用の複数の表面電極13と、第1の誘電体基板11の裏面に形成された、コンデンサ用の裏面電極14と、第1の誘電体基板11上に積層され、複数の表面電極13が露出する開口部15を有する第2の誘電体基板12と、第2の誘電体基板12の表面に形成され、複数の表面電極13が並列に複数の導体線17により接続される伝送線路16と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波パッケージ等の高周波半導体装置は、FET等の高周波半導体素子、および整合回路を有している。
【0003】
整合回路は、整合回路用の伝送線路および複数のチップコンデンサを有する。伝送線路は誘電体基板の表面に設けられており、チップコンデンサは、他の誘電体基板と、この誘電体基板の表面および裏面にそれぞれ設けられた電極と、により構成される。そして、これらを一枚の金属プレート上に搭載し、伝送線路と各チップコンデンサとを、電気的に接続することにより、整合回路が構成される。なお、伝送線路が形成された誘電体基板、およびチップコンデンサは、金スズ(AuSn)により、金属プレート上に搭載される。
【0004】
しかし、このような整合回路は、伝送線路が形成された誘電体基板とコンデンサとがそれぞれ別部品であるため、整合回路を構成するために必要な部品点数が多いという問題がある。
【0005】
整合回路を構成する部品点数が多い場合、整合回路の製造時間が長くなる問題がある。すなわち、金スズ(AuSn)は、半田リフロー工程において各部品を仮固定するために用いられる接着剤よりも融点が高い。従って、複数の部品を半田リフローにより一括して金属プレート上に搭載することはできない。このため、複数の部品は、一つずつ別々に金属プレート上に搭載される必要がある。従って、整合回路の製造時間が長くなる。
【0006】
なお、整合回路以外であっても、誘電体基板の表面に設けられた伝送線路と、複数のチップコンデンサと、を有する従来の高周波回路においては、部品点数が多いため、同様の問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−135011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、この問題に鑑みてなされたものであり、部品点数を低減することが可能な高周波回路を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る高周波回路は、板状の第1の誘電体基板と、この第1の誘電体基板の表面に形成された、コンデンサ用の複数の表面電極と、前記第1の誘電体基板の裏面に形成された、コンデンサ用の裏面電極と、前記第1の誘電体基板上に積層され、前記複数の表面電極が露出する開口部を有する第2の誘電体基板と、この第2の誘電体基板の表面に形成された、前記複数の表面電極が並列に電気的に接続される伝送線路と、を具備することを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る整合回路を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1の整合回路の製造方法を説明するための斜視図であって、複数のコンデンサを形成する工程を示す図である。
【図3】同じく、図1の整合回路の製造方法を説明するための斜視図であって、伝送線路を形成する工程を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る整合回路を模式的に示す斜視図である。
【図5】図4の整合回路の製造方法を説明するための斜視図であって、第1の誘電体基板上に第2の誘電体基板を積層する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係る高周波回路について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては、高周波回路の一例として、整合回路について説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る整合回路を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態にかかる整合回路は、第1の誘電体基板11と、この基板11上に積層された第2の誘電体基板12と、を有する。
【0013】
第1の誘電体基板11は、方形板状の誘電体からなる。この第1の誘電体基板11の表面には、コンデンサ用の複数の表面電極13が、互いに離間した位置に形成されている。また、第1の誘電体基板11の裏面全面には、コンデンサ用の裏面電極14が形成されている。
【0014】
コンデンサは、表面電極13、裏面電極14、およびこれらの電極13、14間の第1の誘電体基板11、によって構成される。すなわち、板状の第1の誘電体基板11の表面に、複数の表面電極13を互いに離間した位置に形成するとともに、第1の誘電体基板11の裏面に裏面電極14を形成することにより、複数のコンデンサが一体化される。
【0015】
ここで、第1の誘電体基板11は、できるだけ高い誘電率を有する誘電体により構成することが好ましい。これにより、各コンデンサの容量を大きくすることができる。若しくは、所望の容量を有するコンデンサを小型化することができる。
【0016】
なお、このように複数のコンデンサを一体化するためには、第1の誘電体基板11の裏面のうち、表面電極13の下方に対応する位置に、表面電極13の面積と同一の面積を有する複数の裏面電極(図示せず)が形成されてもよい。
【0017】
一方で、第2の誘電体基板12は、方形板状の誘電体の所望の位置に、方形の開口部15が形成されたものである。この第2の誘電体基板12は、コンデンサ用の複数の表面電極13が開口部15から露出するようにして、第1の誘電体基板11の上に積層されている。なお、第2の誘電体基板12は、第1の誘電体基板11上に、半田、接着剤等(図示せず)により固定されることにより積層されている。
【0018】
この第2の誘電体基板12の表面には、高周波用の伝送線路16が形成されている。この伝送線路16は、第1の伝送線路16−1、第2の伝送線路16−2、および第3の伝送線路16−3、からなるH状の伝送線路である。
【0019】
第1の伝送線路16−1は、第2の誘電体基板12の一辺から、この一辺に対向する他の一辺に至るまで、第2の誘電体基板12の表面を横切るように形成されている。
【0020】
第2の伝送線路16−2は、一端が第1の伝送線路16−1に接し、他端が第3の伝送線路16−3に接するように、第1の伝送線路16−1に対して垂直に形成されている。
【0021】
第3の伝送線路16−3は、第2の誘電体基板12に設けられた方形の開口部15の近傍に、開口部15の一辺に沿うように、かつ第1の伝送線路16−1に対して略平行に形成されている。
【0022】
ここで、第2の誘電体基板12は、できるだけ低い誘電率、例えば第1の誘電体基板11の誘電率より低い誘電率を有する誘電体により構成することが好ましい。これにより、伝送線路16のインピーダンスを低下させることができる。若しくは、所望のインピーダンスを有する伝送線路16の線路幅を、広くすることができる。
【0023】
このような第2の誘電体基板12の表面に形成された第3の伝送線路16−3と、第1の誘電体基板11の表面に形成されたそれぞれのコンデンサ用の表面電極13とは、それぞれのコンデンサが第3の伝送線路16−3に対して並列に電気的に接続されるように、複数の導体線17により接続されている。これらの導体線17は、例えば金ワイヤである。
【0024】
このような整合回路は、例えば高周波パッケージの一部を構成する金属プレート上に、例えばFETチップ等とともに金スズ(AuSn)により搭載され、FETチップの入力整合回路、またはFETチップの出力整合回路、として使用される。この場合、整合回路とFETチップとは、FETチップの電極(ゲート電極またはドレイン電極)と、第1の伝送線路16−1の一端と、の間を、導体線によって接続することにより、電気的に接続される。
【0025】
なお、上述の整合回路を、このようにFETチップの入力整合回路若しくは出力整合回路として使用する場合、整合回路は、各コンデンサの容量、および伝送線路16のインピーダンス、コンデンサと伝送線路16とを接続する複数の導体線17のインダクタンスにより決定される整合回路の特性インピーダンスが、FETチップの特性インピーダンスに整合するように形成される。
【0026】
次に、図1に示す第1の実施形態に係る整合回路の製造方法について、図2、図3を参照して説明する。図2は、第1の実施形態に係る整合回路の製造方法を説明するための斜視図であって、複数のコンデンサを形成する工程を示す図である。また、図3は、同じく、第1の実施形態に係る整合回路の製造方法を説明するための斜視図であって、伝送線路を形成する工程を示す図である。
【0027】
まず、図2に示すように、方形板状の第1の誘電体基板11の表面に、コンデンサ用の複数の表面電極13を形成するとともに、第1の誘電体基板11の裏面に、コンデンサ用の裏面電極14を形成する。
【0028】
複数の表面電極13、および裏面電極14は、例えば蒸着、スパッタリング等の方法により形成される。なお、裏面電極14が、表面電極13と同様に複数形成される場合にであっても、同様の方法により形成される。
【0029】
一方で、方形板状の第2の誘電体基板12には、予め方形の開口部15を設けておき、このような第2の誘電体基板12の表面に、H状の伝送線路16を形成する。
【0030】
伝送線路16も同様に、例えば蒸着、スパッタリング等の方法により形成される。
【0031】
次に、第1の誘電体基板11上に第2の誘電体基板12を積層し、固定する。この際、第2の誘電体基板12は、この基板12の開口部15から、第1の誘電体基板11に形成された複数の表面電極13が露出するように積層され、固定される。なお、第1の誘電体基板11と第2の誘電体基板12とは、例えば半田、接着剤等(図示せず)、または焼結により固定される。
【0032】
最後に、第2の誘電体基板12の表面に形成された第3の伝送線路16−3と、第1の誘電体基板11の表面に形成されたそれぞれのコンデンサ用の各表面電極13とを、それぞれのコンデンサが第3の伝送線路16−3に対して並列に電気的に接続されるように、複数の導体線17により接続する。
【0033】
以上のようにして、図1に示す整合回路が製造される。
【0034】
以上に示す第1の実施形態に係る整合回路は、伝送線路16と複数のコンデンサとが一体化されている。従って、整合回路を構成する部品点数を従来よりも低減することができる。これにより、金属プレート上に整合回路を、金スズ(AuSn)を用いて一度に搭載することができる。
【0035】
さらに、従来の整合回路は、複数の部品を1つずつ搭載することにより形成していた。従って、伝送線路に対する各コンデンサの位置、およびあるコンデンサに対する他のコンデンサの位置(コンデンサ間の位置)は、各部品の搭載精度に依存してばらついていた。これに対して本実施形態に係る整合回路によれば、伝送線路16に対する各コンデンサ(各コンデンサの表面電極13)の位置、および各コンデンサ間(各コンデンサの表面電極13間)の位置のばらつきは、伝送線路16およびコンデンサの表面電極13を形成する際の位置精度に依存する。通常、部品の搭載精度と比較して、例えば蒸着またはスパッタリング等のパターニングの精度は高い。従って、本実施形態に係る整合回路は、従来の整合回路と比較して、伝送線路16対する各コンデンサ(各コンデンサの表面電極13)の位置、および各コンデンサ間(各コンデンサの表面電極13間)の位置のばらつきが抑制される。
【0036】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る整合回路を模式的に示す斜視図である。図4に示すように、第2の実施形態に係る整合回路は、第1の実施形態に係る整合回路と比較して、第3の伝送線路16−3と各コンデンサの表面電極13との電気的な接続方法が異なっている。
【0037】
すなわち、第2の実施形態に係る整合回路において、第3の伝送線路16−3と各コンデンサの表面電極13とは、それぞれ接続用の金属薄膜18により接続されている。この接続用の金属薄膜18は、第1の誘電体基板11の表面、第2の誘電体基板12の開口部15の側壁、および第2の誘電体基板12の表面に接するように形成されている。
【0038】
なお、図4において、この接続用の金属薄膜18は、第3の伝送線路16−3を含む伝送線路16、およびコンデンサ用の複数の表面電極13と一体的に形成された一枚の金属薄膜からなる。しかし、伝送線路16、各表面電極13、および接続用の金属薄膜18は、それぞれ異なる金属薄膜であってもよい。
【0039】
なお、このような整合回路を、第1の実施形態に係る整合回路と同様に、FETチップの入力整合回路若しくは出力整合回路として使用する場合、整合回路は、各コンデンサの容量、伝送線路16のインピーダンス、および接続用の金属薄膜18のインダクタンスにより決定される整合回路の特性インピーダンスが、FETチップの特性インピーダンスに整合するように形成される。
【0040】
次に、図4に示す第2の実施形態に係る整合回路の製造方法について、図5を参照して説明する。図5は、第2の実施形態に係る整合回路の製造方法を説明するための斜視図であって、第1の誘電体基板上に第2の誘電体基板を積層する工程を示す図である。
【0041】
まず、図5に示すように、予め裏面に裏面電極14が設けられた方形板状の第1の誘電体基板11上に、予め方形の開口部15が形成された方形板状の第2の誘電体基板12を積層し、固定する。
【0042】
次に、第1の誘電体基板11上に第2の誘電体基板12が積層された誘電体上に、伝送線路16、コンデンサ用の複数の表面電極13、およびこれらをそれぞれ電気的に接続する接続用の金属薄膜18を、例えばメタライズにより一括して形成する。
【0043】
以上のようにして、図4に示す整合回路が製造される。
【0044】
以上に示す第2の実施形態に係る整合回路も、第1の実施形態に係る整合回路と同様に、伝送線路16と複数のコンデンサとが一体化されている。従って、整合回路を構成する部品点数を従来よりも低減することができる。これにより、金属プレート上に整合回路を一度に搭載することができる。
【0045】
また、第2の実施形態に係る整合回路は、第1の実施形態に係る整合回路と同様に、伝送線路16対する各コンデンサ(各コンデンサの表面電極13)の位置、およびコンデンサ間(コンデンサの表面電極13間)の位置のばらつきが抑制される。
【0046】
さらに、第2の実施形態に係る整合回路においては、伝送線路16、コンデンサ用の複数の表面電極13、および複数の接続用金属薄膜18が、一括して形成される。したがって、第2の実施形態に係る整合回路は、第1の実施形態に係る整合回路と比較して、より短時間で製造することが可能である。
【0047】
さらに、第2の実施形態に係る整合回路によれば、第1の実施形態に係る整合回路と比較して、伝送線路16に対するコンデンサ(コンデンサの表面電極13)全体の位置精度も向上する。
【0048】
以上に、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0049】
例えば、上述の各実施形態に係る高周波回路として、整合回路を説明したが、本願発明は、伝送線路16およびコンデンサを有する高周波回路であれば、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
11・・・第1の誘電体基板
12・・・第2の誘電体基板
13・・・表面電極
14・・・裏面電極
15・・・開口部
16・・・伝送線路
16−1・・・第1の伝送線路
16−2・・・第2の伝送線路
16−3・・・第3の伝送線路
17・・・導体線
18・・・金属薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の第1の誘電体基板と、
この第1の誘電体基板の表面に形成された、コンデンサ用の複数の表面電極と、
前記第1の誘電体基板の裏面に形成された、コンデンサ用の裏面電極と、
前記第1の誘電体基板上に積層され、前記複数の表面電極が露出する開口部を有する第2の誘電体基板と、
この第2の誘電体基板の表面に形成された、前記複数の表面電極が並列に電気的に接続される伝送線路と、
を具備することを特徴とする高周波回路。
【請求項2】
前記第1の誘電体基板は、前記第2の誘電体基板の誘電率よりも低い誘電率を有する誘電体からなる基板であることを特徴とする請求項1に記載の高周波回路。
【請求項3】
前記複数の表面電極と前記伝送線路とは、それぞれ導体線により電気的に接続されたことを特徴とする請求項1または2に記載の高周波回路。
【請求項4】
前記複数の表面電極と前記伝送線路とは、それぞれ金属薄膜により電気的に接続されたことを特徴とする請求項1または2に記載の高周波回路。
【請求項5】
前記複数の表面電極、前記伝送線路、および前記金属薄膜は、一体的に形成された一枚の金属薄膜からなることを特徴とする請求項4に記載の高周波回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−109502(P2012−109502A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259005(P2010−259005)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】