説明

高周波対応フレキシブルフラットケーブル

【課題】 高速伝達に対応した高周波領域で使用する配線材においては、伝送線として丸形ケーブルを用いるのが普通であるが、丸形ケーブルは可撓性に乏しいので、これが接続されているコネクタの搭載位置の自由度が低く、省面積化を実現出来なかった。又、ノイズ対策やインピーダンス整合を考慮する必要があり、加工工程の簡略化、部品点数の低減化も実現困難であった。
【解決手段】 内部に信号線が埋め込まれている扁平帯状をなしたフレキシブルフラットケーブル本体の長手方向端部に、表面側には信号線が、裏面側には幅方向全幅にわたり導電性素材からなるグラウンド層がそれぞれ露出し、両側縁には抜け防止用の切欠き部が形成された舌片状のコネクタ嵌合片を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高周波対応の配線材、詳しくは省面積化、加工工程の簡略化等の要求に応えることが出来る高速伝送に対応した高周波領域で使用する伝送線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高速伝送に対応した高周波領域で使用する配線材においては、その伝送線として丸形ケーブルを用いるのが普通であるが、その場合は、図1及び図2に示す様に、基板(図示省略)に実装するレセプタクル1とケーブル接続するプラグ2の二種一対のコネクタを用い、ケーブル3とこれらレセプタクル1の端子部とは、圧着あるいは半田付け等によって接続していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】なし
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の伝送線として丸形ケーブルを用い、レセプタクルとプラグとにより接続を行うものは、両コネクタの構造が複雑で、部品点数も多いので、加工工程の簡略化及びコストの低減化がなかなかむずかしく、かつ丸形ケーブルはその構造上、一般的に可撓性が低いのでコネクタの設置場所も自ずと限定され、省面積化の要求にも応えられなかった。
【0006】
一方、丸形ケーブルの代わりに、高周波対応を謳ったフレキシブル基板(FPC)を使用する例も存在するが、この場合には、FPCにプラグとなるコネクタを取付けて2ピース構造とするか、信号ピンとは別構造のグラウンドピンをコネクタ本体に付与する構造にしなければならず、しかも、FPC側も、同一平面上に配列された信号線の一部をグラウンド線とするか、直接FPC外周のグラウンド層とコネクタのグラウンド層とを接触させる必要があるので、いずれにしても、省面積化、加工工程の簡略化、コストの低減化は困難であった。
【0007】
本発明者は、高速伝送に対応した高周波領域で使用するコネクタとその伝送線に関する上記従来の問題点を解決せんとして、鋭意研究を行った結果、可撓性の低い丸形ケーブルに代わり、フレキシブルフラットケーブル(FFC)を応用することにより、部品点数の低減、省面積化、加工作業の省力化、コスト削減を実現した新しい配線材を開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
内部に信号線が埋め込まれている扁平帯状をなしたフレキシブルフラットケーブル本体の長手方向端部に、表面側には信号線が、裏面側には幅方向全幅にわたり導電性素材からなるグラウンド層がそれぞれ露出し、両側縁には抜け防止用の切欠き部が形成された舌片状のコネクタ嵌合片を設けることにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る高周波対応フレキシブルフラットケーブルにおいては、フレキシブルフラットケーブル本体のコネクタ嵌合片の裏面側にグラウンド層が設けられており、コネクタ嵌合片をコネクタのシェルで挟み込むだけで、グラウンド層がシェルを介してこのコネクタが実装されている基板(図示省略)のグラウンドに接続され、これだけでインピーダンス整合が可能な構造となるため、構成部品点数や加工工程の削減が可能である。又、フレキシブルフラットケーブル本体とコネクタとの接続も、シェルの起伏運動により、ワンタッチで行うので、接続作業が容易で、作業性が著しく向上する。更に、コネクタ嵌合片の抜け防止用の切欠き部がコネクタ本体の突起部に係合する様になっているので、フレキシブルフラットケーブル本体とコネクタとの係合関係は確実に保持され、使用中にコネクタ嵌合片が抜け落ちることはなく、すぐれた信頼性を有している。
又、可撓性のあるフレキシブルフラットケーブルを用いているので、コネクタの基板上での実装位置の自由度が高く、高密度化の要求にも応えやすく、省面積化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来の丸形ケーブルを用いたレセプタクルとプラグの接続前の状態の斜視図。
【図2】同じく、その接続後の状態の斜視図。
【図3】この発明に係る高周波対応のフレキシブルフラットケーブルの実施例1の表面側から見た斜視図。
【図4】同じく、裏面側から見た斜視図。
【図5】図3における矢視A−A線断面図。
【図6】この発明に係る高周波対応のフレキシブルフラットケーブルの他の実施例の表面側から見た斜視図。
【図7】同じく、裏面側から見た斜視図。
【図8】この発明に係る高周波対応のフレキシブルフラットケーブルと接続するコネクタの斜視図。
【図9】同じく、そのシェルを引き起こした状態の斜視図。
【図10】同じく図8における矢視B−B線断面図。
【図11】同じく、図9における矢視C−C線断面図。
【図12】図9に示すコネクタに、本発明に係る高周波対応のフレキシブルフラットケーブルを装着した状態の斜視図。
【図13】同じく、コネクタのシェルを下ろし、本発明に係る高周波対応のフレキシブルフラットケーブルを挟み込んだ状態の斜視図。
【図14】同じく、図13における矢視D−D線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
内部に信号線が埋め込まれている扁平帯状をなしたフレキシブルフラットケーブル本体の長手方向端部に、表面側には信号線が、裏面側には幅方向全幅にわたり導電性素材からなるグラウンド層がそれぞれ露出し、両側縁には抜け防止用の切欠き部が形成された舌片状のコネクタ嵌合片を設けたことに最大の特徴が存する。
【実施例1】
【0012】
図3はこの発明に係る高周波対応フレキシブルフラットケーブルの実施例1の表面側から見た斜視図、図4は同じく、裏面側から見た傾斜図、図5は図3における矢視A−A線断面図である。
【0013】
図中4は、フレキシブルフラットケーブル本体であり、扁平帯状をなしたシールド部5の内部には、絶縁層22a,22bを介して扁平な信号線6が埋め込まれている。なお、このフレキシブルフラットケーブル本体自体は、FFCと称される従来から存在するフレキシブルフラットケーブルである。なお、この実施例においては、信号線6は1本であるが、複数本であっても良いことはもちろんである。
【0014】
そして、このフレキシブルフラットケーブル本体4の長手方向端部には、舌片状をなしたコネクタ嵌合片8が一体的に形成されている。このコネクタ嵌合片8においては、その表面側のシールド部5が剥ぎ取られ、フレキシブルフラットケーブル本体4から延設された信号線6が露出しており、裏面側には、その幅方向全幅にわたり、アルミ箔、銅箔などの導電性素材からなり、シールド部5と電気的に接続されたグラウンド層7が形成され、露出している。
【0015】
又、側縁には、略コ字形に切欠かれた一対の抜け防止用の切欠き部9が形成されている。なお、この実施例1においては、切欠き部9は左右対称に形成されているが、図6及び図7に示す様に、左右非対称に形成すれば、コネクタ嵌合片8をコネクタ10へ嵌合する際に、表裏を間違えた誤嵌合を防止することが出来る。
【0016】
一方、図8乃び図9は、このフレキシブルフラットケーブルのコネクタ嵌合片8を挟み込み、これと電気的に接続するコネクタ10の斜視図であり、図中12は箱形をなし、上面に前記コネクタ嵌合片8を挿入する挿入溝11が形成されたコネクタ本体を示し、このコネクタ本体12の両側面には、コネクタ嵌合片8の切欠き部9に係合する突起部13が前方寄り上部に形成され、一対の固定金具19がそれぞれ取付けられている。
【0017】
又、このコネクタ本体12の上面には、図10及び図11に示す様に、コネクタ本体12の後部寄りの部分を支点として、コネクタ本体12上を起伏し、先端側裏面で前記挿入溝11に挿入されたコネクタ嵌合片8を弾性的に挟み込む金属製のシェル14が取付けられている。なお、このシェル14は、コネクタ本体12を実装する基板(図示省略)と電気的に接続されており、インピーダンス整合が取れる様になっている。
【0018】
更に、挿入溝11の中央には、その前後方向に細長い切欠き溝15が形成されており、図14に示す様に、コネクタ本体12内の後方寄りに基部16が固定され、この基部16から弓形に屈曲しながら腕材21が延設され、この腕材21の先端頭部17の上面に、コネクタ嵌合片8の信号線6と接触する接点20を有するカンチレバー(cantilever)状の信号線端子部材18が、その頭部17を切欠き溝15から上方に露出した状態で取付けられている。
【0019】
この実施例1は、上記の通りの構成を有するものであり、図12に示す様に、コネクタ10のシェル14を引き起こした状態で、フレキシブルフラットケーブル本体4を裏返して、コネクタ嵌合片8を挿入溝11に挿入し、しかる後、シェル14を引き下ろすと、フレキシブルフラットケーブル本体4のコネクタ嵌合片8は、下からはカンチレバー状の信号線端子部材18の頭部17で、上からはシェル14の前方側裏面で押圧され、フレキシブルフラットケーブル本体4のコネクタ嵌合片8はコネクタ10に嵌合された状態で、信号線端子部材18の接点20とコネクタ嵌合片8の信号線6とが接触し、両者は電気的に接続される。
更に、この状態において、コネクタ嵌合片8の切欠き部9は、突起部13に係合される。
【0020】
又、フレキシブルフラットケーブル本体4のコネクタ嵌合片8の裏面側には、グラウンド層7が設けられているので、コネクタ嵌合片8をコネクタ10のシェル14で挟み込むだけで、グラウンド層7がシェル14を介してこのコネクタ10が実装されている基板(図示省略)のグラウンドに接続され、これだけでインピーダンス整合が可能な構造となるため、構成部品点数や加工工程の削減が可能となる。又、フレキシブルフラットケーブル本体4とコネクタ10との接続も、シェル14の起伏運動により、ワンタッチで行うことが出来るので、加工工程が簡略化でき、装着時の作業性が著しく向上する。
【0021】
更に、コネクタ嵌合片8の切欠き部9がコネクタ本体12の突起部13に係合する様になっているので、フレキシブルフラットケーブル本体とコネクタ10との係合関係は確実に保持され、使用中にコネクタ嵌合片8が抜け落ちることはなく、すぐれた信頼性を有している。
又、可撓性の低い丸形ケーブルの代わりにフレキシブルフラットケーブルを用いているので、コネクタ10の基板上での実装位置の自由度が高く、高密度化の要求にも応えやすく、省面積化が可能としている。
【産業上の利用可能性】
【0022】
無線アンテナを有する携帯情報端末や高速伝送が必要とされる情報端末など、実装面積が限られた電子機器において、特に利用価値がある。
【符号の説明】
【0023】
1.レセプタクル
2.プラグ
3.ケーブル
4.フレキシブルフラットケーブル本体
5.シールド部
6.信号線
7.グラウンド層
8.コネクタ嵌合片
9.切欠き部
10.コネクタ
11.挿入溝
12.コネクタ本体
13.突起部
14.シェル
15.切欠き溝
16.基部
17.頭部
18.信号線端子部材
19.固定金具
20.接点
21.腕材
22a.絶縁層
22b.絶縁層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に信号線が埋め込まれている扁平帯状をなしたフレキシブルフラットケーブル本体の長手方向端部に、表面側には信号線が、裏面側には幅方向全幅にわたり導電性素材からなるグラウンド層がそれぞれ露出し、両側縁には抜け防止用の切欠き部が形成された舌片状のコネクタ嵌合片を有することを特徴とする高周波対応フレキシブルフラットケーブル。
【請求項2】
切欠き部が左右非対称の位置に形成されていることを特徴とする請求項1記載の高周波対応フレキシブルフラットケーブル。
【請求項3】
内部に埋め込まれている信号線が1本であることを特徴とする請求項1又は2記載の高周波対応フレキシブルフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−249206(P2011−249206A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122664(P2010−122664)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(000115142)ユニオンマシナリ株式会社 (38)
【Fターム(参考)】