説明

高周波成分と低周波成分の分離装置

【課題】より簡素な構成を用いて、高周波成分と低周波成分を含んだ回転入力を低周波成分のみの回転出力と高周波成分のみの回転出力に分離する。
【解決手段】太陽歯車6と、遊星歯車7と、遊星歯車7を支持する遊星キャリア7aと、リング歯車8とからなる遊星歯車機構5を備え、高周波成分と低周波成分とが混在する回転入力をリング歯車8に伝達し、回転入力を低域通過ろ波器9を介して低周波回転成分を分離すると共に、低周波回転成分を太陽歯車6に伝達することで、遊星キャリア7aから高周波回転成分を分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波成分と低周波成分とが混在する回転入力を、高周波成分の回転出力と低周波成分の回転出力とに分離する高周波成分と低周波成分の分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の駆動タイヤを備えた車両であって、駆動タイヤ毎に駆動源が設けられた車両が知られている。このような車両においては、各々の駆動タイヤを独立して回転させ、路面状況に応じて駆動タイヤを駆動させることが可能である。
また、上記のような車両においては、路面からの振動を懸架装置(サスペンション装置)によって吸収することが一般的である。サスペンション装置には、受動的に振動を吸収するパッシブサスペンションが一般的であるが、能動的に振動を吸収する機構としてアクティブサスペンション装置が提唱されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、車両の走行状態を制御することを目的として、特許文献2には、駆動タイヤを駆動する駆動力の少なくとも1つの周波数領域を抽出し、駆動タイヤに振動を与えたりして、車両の走行状態を制御する制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−341585号公報
【特許文献2】特許第4145871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、能動的にサスペンション装置で振動を吸収するためには、駆動タイヤを駆動させるための駆動装置とは別に駆動源を必要とするため、これが車両のコストを増大させる要因となっていた。
また、特許文献2に記載された方法は、電子制御により車体駆動力の1つの周波数領域の変動成分を抽出し、抽出された車体駆動力の変動成分に基づいて車両の走行状態を制御する方法であるが、装置が複雑化することによってコストが嵩むという問題があった。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、より簡素な構成を用いて、高周波成分と低周波成分を含んだ回転入力を、低周波成分のみの回転出力と高周波成分のみの回転出力に分離することができる高周波成分と低周波成分の分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0008】
本発明の高周波成分と低周波成分の分離装置は、太陽歯車と、該太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、該遊星歯車を支持する遊星キャリアと、前記遊星歯車と噛み合うリング歯車とからなる遊星歯車機構を備え、高周波成分と低周波成分とが混在する回転入力を低域通過ろ波器を介して低周波回転成分を分離すると共に、前記回転入力を前記リング歯車に伝達し、かつ、前記低周波回転成分を前記太陽歯車に伝達することで、前記遊星キャリアから高周波回転成分を分離することを特徴とする。
【0009】
この発明においては、高周波成分と低周波成分を含んだ回転入力を、低周波成分のみの回転出力と高周波成分のみの回転出力に分離することができる。
【0010】
また、本発明の高周波成分と低周波成分の分離装置は、回転斜板と該回転斜板の回転により進退して作動油を排出させるピストンとを有する回転斜板式油圧ポンプと、前記回転斜板式油圧ポンプの吐出口に接続された圧力検出室と、該圧力検出室の排出口に接続されたオリフィスとからなる油圧ポンプ機構と、前記圧力検出室内の油圧を検出する圧力センサと、を備え、高周波成分と低周波成分とが混在する回転入力を低域通過ろ波器を介して低周波回転成分を分離すると共に、前記回転入力を前記回転斜板の回転軸に伝達し、前記回転斜板式油圧ポンプの吐出口から排出される作動油を前記圧力検出室及び前記オリフィスを介して排出し、前記圧力センサで前記圧力検出室内の油圧を検出し出力することで、前記回転入力を高周波成分のみを含んだ圧力信号に分離することを特徴とする。
【0011】
この発明においては、高周波成分と低周波成分を含んだ回転入力を、低周波成分のみの回転出力と高周波成分のみの圧力信号に分離することができる。
【0012】
また、本発明の高周波成分と低周波成分の分離装置は、太陽歯車と、該太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、該遊星歯車を支持する遊星キャリアと、前記遊星歯車と噛み合うリング歯車とからなる遊星歯車機構と、前記遊星キャリアに接続された回転斜板と該回転斜板の回転により進退して作動油を排出させるピストンとを有する回転斜板式油圧ポンプと、前記回転斜板式油圧ポンプの吐出口に接続された圧力検出室と、該圧力検出室の排出口に接続されたオリフィスとからなる油圧ポンプ機構と、前記圧力検出室内の油圧を検出する圧力センサと、を備え、高周波成分と低周波成分とが混在する回転入力を低域通過ろ波器を介して低周波回転成分を分離すると共に、前記回転入力を前記リング歯車に伝達し、かつ、前記低周波回転成分を前記太陽歯車に伝達することで、前記遊星キャリアを回転させ、前記遊星キャリアの回転を前記回転斜板の回転軸に伝達し、前記回転斜板式油圧ポンプの吐出口から排出される作動油を前記圧力検出室及び前記オリフィスを介して排出し、前記圧力センサで前記圧力検出室内の油圧を検出し出力することで、前記高周波回転成分を圧力信号に変換することを特徴とする。
【0013】
この発明においては、高周波成分と低周波成分を含んだ回転入力を、低周波成分のみの回転出力と高周波成分のみの圧力信号に分離することができ、かつ、ドリフト成分を含まない圧力信号を出力することができる。
【0014】
また、本発明の高周波成分と低周波成分の分離装置においては、
前記低域通過ろ波器は、入力軸と、出力軸と、前記入力軸及び前記出力軸の軸端にそれぞれ設けられ、前記入力軸と出力軸とを接続する接続板と、前記接続板と接続板の間に介在する弾性部材とから構成されていることが好ましい。
【0015】
この発明においては、簡素な構成によって、回転入力に含まれる高周波成分をカットすることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明においては、より簡素な構成を用いて、高周波成分と低周波成分を含んだ回転入力を低周波成分のみの回転出力と高周波成分のみの回転出力に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の車両の正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の分離装置を示す模式図である。
【図3】車両のサスペンション装置の側面図である。
【図4】ローパスフィルター機構の構成を示す断面図である。
【図5】図4のA−A線に沿う矢視図である。
【図6】本発明の第2実施形態の車両の正面図である。
【図7】本発明の第2実施形態の分離装置を示す模式図である。
【図8】油圧ポンプ機構の模式図である。
【図9】本発明の第3実施形態の分離装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、分離装置1は、サスペンション装置3と駆動タイヤ4を有する車両50に設けられるもので、車体51の下方にサスペンション装置3を介して取り付けられている。また、分離装置1は、モータ2とサスペンション装置3の間、及びモータ2と駆動タイヤ4との間に配されており、モータ2の駆動力をサスペンション装置及び駆動タイヤ4に伝達する装置である。
【0019】
モータ2は、出力軸2aを所定の回転数で回転させることが可能な電気モータであり、出力軸2aは低周波から高周波までの周波数成分を含んだ回転数で回転する。また、車両50には図示しない制御装置が設けられている。
【0020】
次に、分離装置1の詳細について説明する。
図2に示すように、分離装置1は、遊星歯車機構5と、モータ2の出力軸2aに取り付けられ、回転出力(以下、回転aと呼ぶ)を遊星歯車機構5のリング歯車8(内歯車とも呼ばれる)に伝達する第一歯車10と、モータ2の出力軸2aに取り付けられたローパスフィルター機構9と、ローパスフィルター機構9の出力軸9bに接続されたギアボックス22と、ギアボックス22の出力(回転c1)を遊星歯車機構5の太陽歯車6に伝達する伝達歯車11とから構成されている。
分離装置1は、モータ2の回転出力(回転a)を低周波成分のみの回転出力(回転c2)と高周波成分のみの回転出力(回転b1)に分離する装置である。
【0021】
遊星歯車機構5は、太陽歯車6(サンギア等とも呼ばれる)と、一対の遊星歯車7,7(ピニオンギア等とも呼ばれる)と、遊星歯車7,7を支持しつつ公転運動を拾う遊星キャリア7a(プラネタリキャリア等とも呼ばれる)と、リング歯車8とから構成されている。モータ2と遊星歯車機構5とは、モータ2の出力軸2aに取り付けられた第一歯車10が、遊星歯車機構5のリング歯車8の外側に形成された歯に噛み合うことで接続されている。
【0022】
さらに、モータ2の出力軸2aはローパスフィルター機構9の入力軸9aに接続されている。ローパスフィルター機構9の詳細については後述する。ローパスフィルター機構9の出力軸9bはギアボックス22に接続されている。ギアボックス22は、ローパスフィルター機構9からの出力を任意に減速又は増速した上で、第一出力軸22a及び第二出力軸22bより2つの出力(回転c1、回転c2)に分離する変速装置である。
2つの出力軸のうち、第二出力軸22bには、駆動タイヤが接続されている。つまり、モータ2の駆動力は、ローパスフィルター機構9を介して低周波成分のみの回転出力が駆動タイヤ4に伝達される。
【0023】
ギアボックス22の第一出力軸22aには、伝達歯車11を構成する入力歯車11aが取り付けられている。伝達歯車11の出力歯車11bは、入力歯車11aと同じ歯数構成であり、その中心軸は遊星歯車機構5を構成する太陽歯車6の入力軸6aに接続されている。つまり、伝達歯車11は1:1のギア比であり、モータ2の駆動力は、ローパスフィルター機構9及びギアボックス22を介して遊星歯車機構5の太陽歯車6に伝達される。
遊星歯車機構5を構成する遊星歯車7の公転運動を拾う遊星キャリア7aの中心軸7bは、サスペンション装置3に接続されている。
【0024】
次に、遊星歯車機構5、第一歯車10、及びギアボックス22の歯数構成について説明する。これらの歯数構成は、第一歯車10が回転駆動する一方、他の太陽歯車6、遊星キャリア7aは従動するものとした場合、遊星キャリア7aが静止する構成とされている。
例えば、上記した遊星歯車機構5において、リング歯車8の歯数を60、太陽歯車6の歯数を30、遊星歯車7,7の歯数を15とした上で、第一歯車10とギアボックス22の歯数構成を適宜設定することにより、リング歯車8の回転数を800rpm、太陽歯車6の回転数を1,600rpmとする。遊星歯車機構5を上記したような歯数構成としたことによって、遊星キャリア7aの回転数は0rpmとなり静止する。
【0025】
図3に示すように、サスペンション装置3は、中心軸7bを中心に回転可能に構成されたクランク板12と、クランク板12と車体51とを接続するコネクティングロッド13とを有するクランク機構を構成している。
クランク板12の外周近傍にはコネクトピン14が設けられていると共に、車体51の側面下方にもコネクトピン15が設けられている。これらコネクトピン14,15は、コネクティングロッド13によって接続されている。これにより、クランク板12を回動させることで、車体51とクランク板12との距離、つまり、車体51と駆動タイヤ4との距離を変化させることができる。または、車体51の上下運動に伴い、クランク板12が回動する。
【0026】
図4に示すように、ローパスフィルター機構9は、同一線上に設けられた入力軸9a及び出力軸9bと、互いに近接する入力軸9a及び出力軸9bの軸端に夫々設けられた第一接続板16及び第二接続板17と、第一接続板16と第二接続板17とを接続する複数のボルト18及びナット19から構成されている。
【0027】
図5に示すように、第一接続板16は、入力軸9aと出力軸9bの軸方向から見て円形状である。第一接続板16は、その中心部が入力軸9aの軸端と一体にされている。同様に、第二接続板17は、その中心部が出力軸9bの軸端と一体にされている。また、第一接続板16,第二接続板17には、表面と裏面を貫通するように、複数の取付孔20が形成されている。取付孔20は、第一接続板16,第二接続板17の外形をなす円の同心円上に、等間隔に穿設されている。各々の取付孔20の内周面には、所定の厚さのゴムブッシュ21が嵌め込まれており、ゴムブッシュ21にはボルト18の軸部が挿入されている。すなわち、ボルト18の軸部と取付孔20の内周面との間には、ゴムブッシュ21が介在している。
【0028】
次に、本実施形態の分離装置1の作用について説明する。
モータ2の駆動力(以下、回転aと呼ぶ)は、遊星歯車機構5のリング歯車8と太陽歯車6とに伝達される。
まず一方で、モータ2の駆動力(回転a)はローパスフィルター機構9の入力軸9aに伝達され、第一接続板16が、高周波成分と低周波成分を含んだ回転数で回転する。第一接続板16が回転することによって、第二接続板17が回転するが、ボルト18の軸部と第一接続板16,第二接続板17との間にゴムブッシュ21が介在していることによって、駆動力のうち高周波成分がカットされる。これにより、第二接続板17及び出力軸9bには、モータ2の駆動力のうち低周波成分のみの駆動力が伝達される。
この低周波成分のみの駆動力は、出力軸9bに接続されたギアボックス22によって分離され、一方の出力(回転c2)は駆動タイヤ4に伝達される。他方の出力(回転c1)は、伝達歯車11を介して遊星歯車機構5の太陽歯車6に伝達される。
【0029】
また他方で、モータ2の駆動力(回転a)は、第一歯車10を介して、遊星歯車機構5のリング歯車8に伝達される。つまり、遊星歯車機構5のリング歯車8には、低周波成分と高周波成分を含んだ駆動力(回転a)が伝達され、太陽歯車6には、低周波成分のみを含んだ駆動力(回転c1)が伝達される。
リング歯車8と太陽歯車6の回転により遊星歯車7が公転しつつ回転する。この回転を回転b2と呼ぶ。遊星歯車7が回転b2で回転するに伴い、遊星キャリア7aは遊星歯車7の公転運動を拾って回転する。この回転数を回転b1と呼ぶ。この回転b1は、サスペンション装置3に伝達される。
【0030】
ここで、遊星歯車機構5、第一歯車10、及びギアボックス22、及び伝達歯車11の歯数構成は、第一歯車10が回転駆動する一方、他の太陽歯車6、遊星キャリア7aは従動するものとした場合、遊星キャリア7aが静止する構成とされているため、モータ2からの駆動力が、高周波成分を有しておらず、低周波成分のみを有している場合、遊星キャリア7aは回転しない。すなわち、サスペンション装置3には駆動力が伝達されない。
【0031】
一方、モータ2の駆動力(回転a)が高周波成分を有している場合には、リング歯車8の回転数と、太陽歯車6の回転数は、高周波成分だけ異なる。これにより、遊星キャリア7aは高周波成分のみを含んだ回転b1で回転し、遊星キャリア7aの中心軸7bと接続されたサスペンション装置3には、サスペンション装置3を駆動するための駆動力が伝達される。
【0032】
上記実施形態によれば、ローパスフィルター機構9及び遊星歯車機構5を用いて高周波成分と低周波成分を含んだモータ2の駆動力を、低周波成分のみの駆動力と高周波成分のみの駆動力に分離することができる。つまり、1つのモータ2を用いて、回転数の変動が少なく低周波成分となる駆動タイヤ4の駆動力と、回転数の変動が大きく高周波成分となるサスペンション装置3の駆動力を同時に得ることができる。このため、モータ2を走行用とサスペンション用とに複数必要とせず、小型化できる。また、サスペンション用として、走行用の駆動源を利用することで高い応答性能を得られる。
【0033】
なお、伝達歯車11のギア比は1:1に限ることはなく、モータ2の出力軸2aが低周波成分のみを含む回転である場合に、遊星歯車機構5の遊星キャリア7aが停止するように、分離装置1全体の歯数構成を設定すればよい。
また、ローパスフィルター機構9は、上述したような構成に限ることはなく、高周波成分と低周波成分が混在した回転のうち、高周波成分を伝達しないような機構であればどのような機構も採用することができる。例えば、トーションバーの両端を入力軸及び出力軸としてもよい。
【0034】
(第二実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第二実施形態について説明する。この実施形態の分離装置において、モータ2の駆動力をサスペンション装置3と駆動タイヤ4に伝達する基本構造は、第1実施形態と同様であるので、同一部分に同一符号を付して説明は省略する。
本実施形態の分離装置は、第一実施形態の遊星歯車機構5の代替として、油圧ポンプ機構を採用していることを特徴としている。
【0035】
図6に示すように、分離装置1Bは、サスペンション装置3Bと駆動タイヤ4を有する車両50Bに設けられるものであり、モータ2の回転出力を低周波成分のみの回転出力と高周波成分のみの回転出力に分離する装置である。
図7に示すように、分離装置1Bは、モータ2の出力軸2aに取り付けられた第二ギアボックス35と、第二ギアボックスの第一出力軸35aに接続されたローパスフィルター機構9と、第二ギアボックスの第二出力軸35bに接続された油圧ポンプ機構23とから構成されている。第二ギアボックス35は、モータ2からの出力を任意に減速又は増速した上で、第一出力軸35a及び第二出力軸35bより2つの出力に分離する変速装置である。
【0036】
次に、油圧ポンプ機構23の詳細を説明する。
油圧ポンプ機構23は、回転斜板式油圧ポンプ24と、回転斜板式油圧ポンプ24の
吐出口31に接続された圧力検出室32と、圧力検出室32とサスペンション装置3との間に介在するオリフィス28と、サスペンション装置3と回転斜板式油圧ポンプ24の吸込口30との間に介在する圧力タンク29とから構成され、これらの構成要素は、作動油で満たされた接続管33で接続されている。また、圧力検出室32の内部には、油圧を検出する圧力センサ37が設置されている。
【0037】
回転斜板式油圧ポンプ24は、モータ2の出力軸2aと接続され、回転軸25aと一体となった回転斜板25と、回転斜板25の斜面に対向して設置されたシリンダブロック26と、シリンダブロック26に形成された2つのシリンダ穴26a,26a内で往復運動可能に収容された一対のピストン27,27とを有している。
各々のシリンダ穴26a,26aの回転斜板25とは反対側の開口端部26b,26bには、開口端部26b,26b同士が互いに接続されるように、コ字状のポンプ管34が接続されている。
【0038】
なお、開口端部26b,26bとポンプ管34とは、逆止弁36を介して接続されている。逆止弁36は、例えばボール弁と、ボール弁を所定のバネ力でシリンダブロック26向きに付勢するスプリングとから構成されたものである。従って、スプリングのバネ力に抗ってボール弁を開弁させる程度に、シリンダ穴26aの内圧が高く、かつ、ポンプ管34の内圧より高い場合に限って、ポンプ管34とシリンダ穴26aは導通する。
【0039】
回転斜板式油圧ポンプ24の2つの吸込口30,30は、ポンプ管34上の開口端部26b,26bに近接した位置に設けられている。また、吐出口31は、ポンプ管34上の開口端部26b,26bから最も離間した位置に設けられている。
【0040】
圧力検出室32は、吐出口31とオリフィス28との間に設けられ、作動油を一定容量保持可能に構成されている。オリフィス28は、圧力検出室32と油圧ポンプ機構23の排出管23aを接続する円管に設けられており、円管の径をより小径となるように絞った部位である。円管の径に対するオリフィス28の径の比(縮径比)は、モータ2の出力軸2aの低周波成分とされる回転数に応じた値に適切に調整されている。
【0041】
サスペンション装置3Bは、油圧シリンダを用いる構成であり、分離装置1Bの油圧ポンプ機構23から出力される圧力信号によって駆動する。
圧力タンク29は、サスペンション装置3Bから排出された作動油を回転斜板式油圧ポンプ24に循環させるように、サスペンション装置3Bに接続されていると共に、吸込口30,30に接続されている。
【0042】
次に、本実施形態の分離装置1Bの作用について説明する。
モータ2の駆動力(回転a)は、ローパスフィルター機構9を介して駆動タイヤ4に伝達される。この際、第1実施形態と同様の作用によって、駆動タイヤにはモータ2の駆動力のうち低周波成分のみの駆動力(回転b)が伝達され、駆動タイヤ4が駆動される。
【0043】
また、モータ2の駆動力(回転a)は、第一歯車10を介して、油圧ポンプ機構23に伝達される。回転aは、後述する油圧ポンプ機構23の作用によって、圧力信号に変換される。サスペンション装置3Bはこの圧力信号によって駆動される。
【0044】
次に、油圧ポンプ機構23の作用について説明する。
モータ2の駆動力(回転a)は回転斜板25の回転軸25aに伝達され、回転斜板25が回転し、一対のピストン27,27が交互に後退することで、圧力検出室32には、一対の吸込口30,30から供給される作動油が交互に供給される。
オリフィス28の縮径比は、想定される低周波成分の油圧の入力に対しては、流入する作動油を適切に排出して、圧力検出室32の内部の圧力が変動しないようにされている。
一方、想定される高周波成分の油圧の入力に対しては、流入する作動油が排出される圧力検出室32の内部で圧力変動として検出されるように設定されている。この圧力は圧力信号として、油圧ポンプ機構23の排出管23aから排出される。
【0045】
上記実施形態によれば、ローパスフィルター機構9及び油圧ポンプ機構23を用いて、高周波成分と低周波成分を含んだモータ2の駆動力を、低周波成分のみの駆動力と高周波成分のみの駆動力に分離することができる。
また、モータ2の回転運動を圧力信号に変換してサスペンション装置3Bを作動させるため、サスペンション装置3Bとして、油圧シリンダを採用することができる。
【0046】
(第3実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第3実施形態について説明する。この実施形態において、モータ2の駆動力をサスペンション装置3と駆動タイヤ4に伝達する基本構造は、第1実施形態及び第2実施形態と同様であるので、同一部分に同一符号を付して説明は省略する。
本実施形態の分離装置1Cは、遊星歯車機構5及び油圧ポンプ機構23の両方を用いて、駆動力を分離することを特徴としている。
【0047】
図9に示すように、本実施形態の分離装置1Cは、図2に示す第1実施形態の分離装置1の遊星歯車機構5の出力の後段階に、油圧ポンプ機構23を設けた構成である。つまり、遊星歯車機構5の遊星キャリア7aの中心軸7bが油圧ポンプ機構23の回転軸25a(図8参照)と接続されている。また、サスペンション装置3Cは、第2実施形態と同様に油圧シリンダである。
【0048】
次に、本実施形態の分離装置1Cの作用について説明する。
モータ2の駆動力(回転a)は、ローパスフィルター機構9を介して駆動タイヤ4に伝達される。この際、第1実施形態と同様の作用によって、駆動タイヤにはモータ2の駆動力のうち低周波成分のみの駆動力(回転c2)が伝達され、駆動タイヤ4が駆動される。
【0049】
また、モータ2の駆動力(回転a)は、第一歯車10を介して、遊星歯車機構5のリング歯車8に伝達される。一方、ローパスフィルター機構9からの出力は、伝達歯車11を介して遊星歯車機構5の太陽歯車6に伝達され、第一実施形態と同様の作用により、遊星キャリア7aの中心軸7bは高周波成分のみを含んだ回転b1で回転する。
中心軸7bが回転することによって、油圧ポンプ機構23の回転斜板25(図8参照)が回転し、第二実施形態と同様の作用によって、吐出口31(図8参照)から圧力信号が排出され、サスペンション装置3Cが駆動される。
【0050】
本実施形態によれば、遊星歯車機構5からの高周波成分の出力の平均値が徐々に上昇するようなドリフト成分が含まれている場合においても、油圧ポンプ機構23を介すことによってドリフト成分をカットすることができる。
【0051】
なお、上記実施形態においては、分離装置1,1B,1Cを車両に適用したが、これに限ることはなく、高周波成分と低周波成分とが混在する駆動源を有する車両以外の対象にも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:分離装置、5:遊星歯車機構、6:太陽歯車、7:遊星歯車、7a:遊星キャリア、8:リング歯車、9:ローパスフィルター機構(低域通過ろ波器)、9a:入力軸、9b出力軸、16:第一接続板(接続板)、17:第二接続板(接続板)、21:ゴムブッシュ(弾性部材)、23:油圧ポンプ機構、24:回転斜板式油圧ポンプ、25:回転斜板、25a:回転軸、27:ピストン、28:オリフィス、31:吐出し口、32:圧力検出室、32a:排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽歯車と、該太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、該遊星歯車を支持する遊星キャリアと、前記遊星歯車と噛み合うリング歯車とからなる遊星歯車機構を備え、
高周波成分と低周波成分とが混在する回転入力を低域通過ろ波器を介して低周波回転成分を分離すると共に、
前記回転入力を前記リング歯車に伝達し、かつ、前記低周波回転成分を前記太陽歯車に伝達することで、前記遊星キャリアから高周波回転成分を分離することを特徴とする高周波成分と低周波成分の分離装置。
【請求項2】
回転斜板と該回転斜板の回転により進退して作動油を排出させるピストンとを有する回転斜板式油圧ポンプと、前記回転斜板式油圧ポンプの吐出口に接続された圧力検出室と、該圧力検出室の排出口に接続されたオリフィスとからなる油圧ポンプ機構と、
前記圧力検出室内の油圧を検出する圧力センサと、を備え、
高周波成分と低周波成分とが混在する回転入力を低域通過ろ波器を介して低周波回転成分を分離すると共に、
前記回転入力を前記回転斜板の回転軸に伝達し、前記回転斜板式油圧ポンプの吐出口から排出される作動油を前記圧力検出室及び前記オリフィスを介して排出し、前記圧力センサで前記圧力検出室内の油圧を検出し出力することで、前記回転入力を高周波成分のみを含んだ圧力信号に分離することを特徴とする高周波成分と低周波成分の分離装置。
【請求項3】
太陽歯車と、該太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、該遊星歯車を支持する遊星キャリアと、前記遊星歯車と噛み合うリング歯車とからなる遊星歯車機構と、
前記遊星キャリアに接続された回転斜板と該回転斜板の回転により進退して作動油を排出させるピストンとを有する回転斜板式油圧ポンプと、前記回転斜板式油圧ポンプの吐出口に接続された圧力検出室と、該圧力検出室の排出口に接続されたオリフィスとからなる油圧ポンプ機構と、
前記圧力検出室内の油圧を検出する圧力センサと、を備え、
高周波成分と低周波成分とが混在する回転入力を低域通過ろ波器を介して低周波回転成分を分離すると共に、
前記回転入力を前記リング歯車に伝達し、かつ、前記低周波回転成分を前記太陽歯車に伝達することで、前記遊星キャリアを回転させ、
前記遊星キャリアの回転を前記回転斜板の回転軸に伝達し、前記回転斜板式油圧ポンプの吐出口から排出される作動油を前記圧力検出室及び前記オリフィスを介して排出し、前記圧力センサで前記圧力検出室内の油圧を検出し出力することで、前記高周波回転成分を圧力信号に変換することを特徴とする高周波成分と低周波成分の分離装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の分離装置において、
前記低域通過ろ波器は、前記回転入力が入力される入力軸と、分離された前記低周波成分を出力する出力軸と、前記入力軸及び前記出力軸の軸端にそれぞれ設けられ、前記入力軸と出力軸とを接続する接続板と、前記接続板と接続板の間に介在する弾性部材とから構成されていることを特徴とする高周波成分と低周波成分の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−180912(P2012−180912A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45019(P2011−45019)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】