説明

高周波発生装置

【課題】振動が多い環境に設置される高周波発生装置において、高周波発生装置の温度を適切に調節するとともに、この高周波発生装置に作用する振動を低減する。
【解決手段】マグネトロン30の本体部31の周囲に設けられ、柔軟な材料からなる中空部材60と、中空部材60の中空部61に冷却水(熱媒体)を導入する導入口70と、中空部材60の中空部61から冷却水を排出する排出口80とを備え、中空部材60が、導入口70から中空部材60の中空部61に導入された冷却水とマグネトロン30の本体部31とを熱交換させる一方、中空部材60が、マグネトロン30に働く振動に対して弾性変形して、振動を吸収可能にマグネトロン30を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネトロンなどの高周波発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、マグネトロンなどの高周波発生装置において発熱部などの温度を調節することが行われている。例えば、特許文献1の図4には、マグネトロンのアノードを冷却するための冷却チューブが記載されている。冷却チューブは、アノードに巻き付けられ、入口チューブと出口チューブとの間に並列に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−73456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のマグネトロンでは、エンジンが搭載された乗物で使用するなど、振動が多い環境に設置する場合には、この振動により、作動が不安定になったり、マグネトロンが損傷し、寿命が短くなったりするという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、振動が多い環境に設置される高周波発生装置において、高周波発生装置の温度を適切に調節するとともに、この高周波発生装置に作用する振動を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明は、高周波を発生させる高周波発生装置を対象とする。この高周波発生装置は、上記高周波を発生させる本体部と、本体部の周囲に設けられ、柔軟な材料からなる中空部材と、上記中空部材の中空部に熱媒体を導入する導入口と、上記中空部材の中空部から熱媒体を排出する排出口とを備えている。そして、上記中空部材が、上記導入口から上記中空部材の中空部に導入された上記熱媒体と上記本体部とを熱交換させる一方、上記中空部材が、上記高周波発生装置に働く振動に対して弾性変形して、振動を吸収可能に上記本体部を保持する。
【0007】
第1発明では、中空部材において、中空部に導入された熱媒体と本体部とが熱交換する。一方、中空部材が、高周波発生装置に働く振動に対して弾性変形して振動を吸収しながら高周波発生装置を保持する。
【0008】
第2発明は、第1の発明において、上記高周波発生装置は、移動体に搭載されるものであり、上記中空部材は、上記移動体に設けられた支持部材に係合する係合部を備えている。
【0009】
第2発明では、中空部材が、係合部を介して移動体に支持され、中空部材が、自在に変形して移動体の振動を吸収しながら高周波発生装置を保持する。
【0010】
第3発明は、第2の発明において、上記係合部は上記中空部材と一体に成型されている。
【0011】
第3発明では、中空部材を移動体に支持する係合部が中空部材と一体に成型されている。
【0012】
第4発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、上記高周波発生装置は、マグネトロンであり、上記中空部材は、上記マグネトロンの陽極部を保持している。
【0013】
第4発明では、特に、マグネトロンの陽極部が中空部材に保持される。
【0014】
第5発明は、第4の発明において、上記中空部材は、内部に上記中空部が形成されて上記陽極部を保持する筒状保持部と、該筒状保持部の両端に、それぞれ連続して上記筒状保持部から離れるに従って窄まる一対のテーパー部とを備えている。
【0015】
第5発明では、中空部材の筒状保持部が陽極部を保持するだけでなく、一対のテーパー部が、筒状保持部から離れるに従って窄まっているので、マグネトロンの本体部の抜け出しを防止しながら筒状保持部の内部にマグネトロンの本体部を収納する。
【0016】
第6発明は、第5の発明において、上記中空部材は、上記各テーパー部の小径側に一体化されて上記本体部を締め付ける環状の締結部材を備えている。
【0017】
第6発明では、各テーパー部の小径側の環状の締結部材が、本体部を締め付ける。その結果、本体部が確実に締結部材に保持される。
【0018】
第7発明は、第4乃至第6の何れか1つの発明において、上記マグネトロンの陽極部と上記中空部材との間に設けられて、上記陽極部を腐食から保護する耐腐食性の保護部材を備えている。
【0019】
第7発明では、マグネトロンの陽極部と中空部材との間の保護部材が、マグネトロンの陽極部を腐食から保護する。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、中空部材において、熱媒体と本体部とが熱交換するので、熱媒体の温度、流量を適切に設定することにより、高周波発生装置の温度を適切に調節することができる。
【0021】
一方、中空部材が、高周波発生装置に働く振動に対して弾性変形して振動を吸収しながら本体部を保持するので高周波発生装置に作用する振動を低減できる。
【0022】
第2発明では、中空部材が、中空部材に設けられた係合部を介して移動体に支持され、中空部材が、自在に変形して移動体の振動を吸収しながら高周波発生装置を保持するので、高周波発生装置に作用する移動体の振動を低減することができる。
【0023】
第3発明では、係合部が中空部材と一体に成型されているので高周波発生装置の支持にかかる部品を省略することができ、温度調節システムの製作が容易になる。
【0024】
第4発明では、マグネトロンの陽極部が中空部材に保持されるので、特にマグネトロンの発熱源である陽極部と中空部に導入された熱媒体との熱交換が行われる。また、マグネトロンの陽極部に働く振動を低減することができる。
【0025】
第5発明では、筒状保持部が陽極部を保持するだけでなく、一対のテーパー部が、筒状保持部から離れるに従って窄まっているので、マグネトロンの本体部の抜け出しを防止しながら筒状保持部の内部にマグネトロンの本体部を収納する。その結果、マグネトロンの本体部をより安定的に保持することができる。
【0026】
第6発明では、各テーパー部の小径側に一体化された環状の締結部材が、本体部を締め付けるので、本体部が確実に締結部材に保持される。
【0027】
第7発明では、マグネトロンの陽極部を腐食から保護する保護部材が、マグネトロンの陽極部と中空部材との間に設けられているので、マグネトロンの寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、実施形態1の高周波発生装置の温度調節システムの概略構成図である。
【図2】図2は、実施形態1の高周波発生装置の概略斜視図である。
【図3】図3は、実施形態1の高周波発生装置の概略断面図である。
【図4】図4は、点火システム及び燃焼支援システムのブロック図である。
【図5】図5は、実施形態2の高周波発生装置の概略断面図である。
【図6】図6は、実施形態3の高周波発生装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《実施形態1》
【0030】
本実施形態1は、車(移動体)のエンジン18の冷却システムを利用した高周波発生装置H1である。本実施形態1は本発明の一例である。本実施形態1では、図1、図2に示すように、エンジン18の冷却システムに高周波発生装置H1が取り付けられている。ここで、高周波発生装置H1としては、半導体を用いた発信器などのソリッドステート発振器やマグネトロンを用いたものなど、さまざまな高周波発生手段が採用可能であるが、実施形態1では、一例として、マイクロ波を発生させるマグネトロン30について説明する。
【0031】
本実施形態1のマグネトロン30は、図3に示すように、マイクロ波を発生させる本体部31と、本体部31で発生したマイクロ波を外部に出力するアンテナ47とを備え、本体部31は、陽極部32と陰極部33と磁気部34と、電力を供給する入力部38と、アンテナ47に接続される導波管48とを備えている。
【0032】
陽極部32は、銅からなる円筒状の陽極円筒36と、陽極円筒36内において放射状に配置された複数枚の陽極ベイン40とを備えている。各陽極ベイン40は、その外端が陽極円筒36の内面に固定され、その内端が後述するフィラメント41と間隔を隔てて対面している。陽極円筒36内は、真空状態になっており、複数枚の陽極ベイン40により共振空洞器が形成されている。陽極ベイン40からはアンテナ47が導出されている。
【0033】
陰極部33は、陽極円筒36の軸心に沿って配置されたフィラメント41と、フィラメント41の両端にそれぞれ設けられた一対のエンドハット42とを備えている。フィラメント41は、リード43、LCフィルター回路(図示省略)を介して外部電源に接続される。
【0034】
磁気部34は、陽極円筒36の両端にそれぞれ設けられた一対のポールピース46と、各ポールピース46の外側にそれぞれ設けられた円環状の永久磁石45とを備えている。永久磁石45は、フィラメント41と陽極ベイン40との間に、フィラメント41から放出された熱電子を旋回させる磁界を形成する。
【0035】
マグネトロン30では、フィラメント41と陽極ベイン40との間に高電圧が印加されると、フィラメント41から熱電子が放出される。熱電子は、磁気部34により形成された磁界により旋回運動する。その際、熱電子の運動エネルギーが高周波エネルギーに変換され、マイクロ波が陽極ベイン40を介してアンテナ47から出力される。マグネトロン30では、このような作動中には、本体部31の温度が上昇するので、この本体部31の冷却が必要となる。
【0036】
そのため、このマグネトロン30は、本体部31の周囲に設けられ、ゴムなどの柔軟な材料からなる中空部材60と、中空部材60の中空部61に熱媒体の流体である冷却水を導入する導入口70と、中空部材60の中空部61から冷却水を排出する排出口80とを備えている。
【0037】
ここで、導入口70と、排出口80とは、それぞれ中空部材60と同様のゴムなどの柔軟な材料で構成され、中空部材60と一体に成型されている。
【0038】
本実施形態1では、中空部材60の中空部61が、図1に示すように流体回路20において低温側回路22に接続されている。
【0039】
具体的には、低温側回路22は、主回路51と、該主回路51に並列に接続された並列回路52とを備えており、中空部材60の中空部61は、並列回路52に挿入されている。
【0040】
そして、中空部材60の中空部61は、中空部材60の内部の環状の空隙として、マグネトロン30の本体部31の周囲を取り囲むように設けられている。そして、この中空部61に、エンジン18を冷却するための流体である冷却水が導入され、中空部61の中を循環するように構成されている。また、この中空部材60は、中空部材60に設けられた支持構造(図示省略)により車に支持されている。
【0041】
ここで、中空部材60は、内部に中空部61が形成されて陽極部32を保持する筒状保持部68と、この筒状保持部68の両端に、それぞれ連続して筒状保持部68から離れるに従って窄まる一対のテーパー部62a、62bとを備えている。
【0042】
また、中空部材60は、各テーパー部62a、62bの小径側に一体化されて上記本体部を締め付ける環状の締結部材63a、63bを備えている。この両方の締結部材63a、63bは、中空部材60と同様、ゴムなどの柔軟な材料からなる変形可能な材料で構成されており、その外周面で中空部材60に連結されながら内周面でマグネトロン30を弾力的に保持している。すなわち、締結部材63aが、縮径することによりマグネトロン30の導波管48を、また、締結部材63bが、縮径することによりマグネトロン30の入力部38を保持している。
【0043】
また、中空部材60の内面には、マグネトロン30の外面に沿って設けられる内面部64が設けられている。そして、この内面部64が、マグネトロン30の外面と熱の授受を行うことにより、冷却水とマグネトロン30の本体部31とが中空部材を介して熱交換する。
【0044】
この時、内面部64とマグネトロン30の外面との熱伝導を良好なものにするため、熱伝導グリスが内面部64と本体部31の外面との間に塗布される。
【0045】
このように、導入口70から中空部材60の中空部61に導入された冷却水とマグネトロン30の本体部31とが熱交換する。また、中空部材60が、マグネトロン30に働く振動に対して弾性変形して振動を吸収可能に、本体部31を保持する。
【0046】
マグネトロン30は、例えば、エンジン18の燃焼を支援する燃焼支援システム100に用いられる。図4に示すように、燃焼支援システム100は、車のバッテリー101(12Vのバッテリー)に接続された点火コイル102と、点火コイル102からの高電圧パルスが印加されるとエンジン18の燃焼室においてスパーク放電を生じさせるスパークプラグ105とを有するエンジン18の点火システム107に接続されている。
【0047】
燃焼支援システム100は、マグネトロン30に加えて、マグネトロン30を駆動するパルス電源104と、点火コイル102から出力された高電圧パルスにマグネトロン30から出力されたマイクロ波を混合するミキサー回路103とを備えている。パルス電源104は、バッテリー101に接続されている。パルス電源104は、エンジン18の制御装置106(ECU)から制御信号が入力されると、マグネトロン30に電力を供給する。一方、ミキサー回路103は、点火コイル102に接続される第1入力部と、マグネトロン30に接続される第2入力部と、スパークプラグ105の中心電極に接続される出力部とを備えている。ミキサー回路103では、第1入力部から延びる伝送ラインと、第2入力部から延びる伝送ラインとが接続され、その接続箇所と出力部とが伝送ラインで結ばれている。
【0048】
なお、マグネトロン30からミキサー回路103を経てスパークプラグ105に至るまでの伝送ラインは、同軸線路を構成している。同軸線路は、エンジン18の上部に接続されている。マグネトロン30は、同軸線路を介してエンジン18の燃焼室へマイクロ波を供給する。
【0049】
点火システム107と燃焼支援システム100の動作について説明する。
【0050】
高電圧パルスの出力を指示する放電信号が制御装置106から点火コイル102に入力されると、点火コイル102からミキサー回路103へ高電圧パルスが出力される。また、マイクロ波の発振を指示する照射信号が制御装置106からパルス電源104に入力されると、パルス電源104からマグネトロン30へ電力が供給され、マグネトロン30からミキサー回路103へマイクロ波が出力される。高電圧パルスとマイクロ波は、ミキサー回路103で混合されて、スパークプラグ105に供給される。その結果、エンジン18の燃焼室では、スパークプラグ105の放電電極と接地電極との間でスパーク放電が生じ、小規模のプラズマが形成される。そして、その小規模のプラズマに、スパークプラグ105の放電電極からマイクロ波が照射される。小規模のプラズマは、マイクロ波のエネルギーを吸収して拡大する。スパークプラグ105の放電電極は、マイクロ波用のアンテナとして機能する。
−高周波発生装置H1の温度調節システム−
【0051】
高周波発生装置H1の温度調節システム10は、エンジン18の冷却システムにより構成されている。温度調節システム10は、図1に示すように、ウォータージャケット11とラジエーター12とサーモスタット13とウォーターポンプ14とが設けられた流体回路20とを備えている。流体回路20には、エンジン18を冷却するための冷却水が充填されている。流体回路20は、ウォータージャケット11からラジエーター12へ向かう冷却水が流れる高温側回路21と、ラジエーター12からウォータージャケット11へ向かう冷却水が流れる低温側回路22と、ラジエーター12をバイパスして高温側回路21から低温側回路22に接続するバイパス回路23とを備えている。流体回路20では、ウォーターポンプ14が作動すると冷却水が循環する。
【0052】
ウォータージャケット11は、エンジン18のシリンダブロック及びシリンダヘッドに設けられた水路である。ウォータージャケット11では、エンジン18の燃焼室で発生した熱が冷却水に奪われる。ウォータージャケット11は、冷却水が加熱される加熱部を構成している。ウォータージャケット11の入口には、ウォーターポンプ14が接続されている。ウォータージャケット11の出口には、高温側回路21が接続されている。
【0053】
ラジエーター12は、ウォータージャケット11で加熱された冷却水を空気と熱交換させる熱交換器である。ラジエーター12は、冷却水が冷却される冷却部を構成している。ラジエーター12は、冷却水を空気と熱交換させるラジエーターコア15と、ラジエーターコア15の入口側に設けられたアッパータンク16と、ラジエーターコア15の出口側に設けられたロアタンク17とを備えている。ラジエーターコア15は、所定の間隔を隔ててラジエーター12の長手方向(ラジエーター12の設置状態では水平方向)に配列された複数のチューブと、チューブ間に接続された冷却フィン(図示省略)とを備えている。アッパータンク16には、高温側回路21が接続されている。ロアタンク17には、低温側回路22が接続されている。ラジエーター12では、アッパータンク16に冷却水が流入し、冷却水がラジエーターコア15の各チューブに分配される。各チューブでは、空気により冷却水が冷却される。そして、各チューブを通過した冷却水がロアタンク17で合流してラジエーター12から流出する。
【0054】
なお、ラジエーター12の近傍には、ラジエーター12に空気を送るラジエーターファン19が設けられている。ラジエーターファン19は、ウォータージャケット11の出口における冷却水の温度が所定の判定温度を超える場合にだけ作動する。
【0055】
サーモスタット13は、内部を流通する冷却水の温度に応じて、ウォータージャケット11から流出した冷却水の流路をラジエーター12とバイパス回路23との間で切り替える弁であり、切替手段を構成している。サーモスタット13は、第1の入口が低温側回路22に接続され、第2の入口がバイパス回路23に接続され、出口がウォーターポンプ14に接続されている。サーモスタット13の内部には、第1の入口と出口を連通させる第1連通孔と、第2の入口と出口を連通させる第2連通孔と、第1連通孔及び第2連通孔を開閉する弁機構とが設けられている。弁機構は、サーモスタット13の内部を流れる冷却水の温度が所定値になるまでは、第1連通孔及び第2連通孔のうち第2連通孔だけを開状態にする。そして、弁機構は、サーモスタット13の内部を流れる冷却水の温度が所定値を超えると、温度の上昇に伴って第1連通孔の開度を大きくすると共に、第2連通孔の開度を小さくし、最終的に、第1連通孔だけを開状態にする。弁機構が作動する温度は、エンジン18の熱効率を考慮して設定されている。
【0056】
ウォーターポンプ14は、流体回路20において冷却水を循環させるポンプである。ウォーターポンプ14の回転軸は、エンジン18のクランクシャフトに連結されている。ウォーターポンプ14は、エンジン18の運転中は、サーモスタット13から冷却水を吸入してウォータージャケット11に吐出する。
【0057】
上記構成より、温度調節システム10では、サーモスタット13の内部を流れる冷却水の温度が所定値を超えると、ラジエーター12に冷却水が流通する。その結果、並列回路52を介してラジエーターコア15から中空部材60の中空部61に流入した冷却水により、マグネトロン30の本体部31が冷却される。
−実施形態1の効果−
【0058】
中空部材60において、熱媒体である冷却水とマグネトロン30の本体部31とが熱交換されるので、熱媒体の温度、流量を適切に設定することにより、マグネトロン30の温度を適切に調節することができる。
【0059】
一方、中空部材60が、マグネトロン30に働く振動に対して弾性変形して振動を吸収しながらマグネトロン30の本体部31を保持するので、マグネトロン30に作用する振動を低減できる。
【0060】
また、マグネトロン30の陽極部32が中空部材60に保持されるので、特にマグネトロン30の発熱源である陽極部32と中空部61に導入された熱媒体との熱交換が行われる。また、マグネトロン30の陽極部32に働く振動を低減することができる。
【0061】
また、筒状保持部68が陽極部32を保持するだけでなく、一対のテーパー部62a、62bが、筒状保持部68から離れるに従って窄まっているので、マグネトロン30の本体部31の抜け出しを防止しながら筒状保持部68の内部にマグネトロン30の本体部31を収納する。その結果、マグネトロン30の本体部31をより安定的に保持することができる。
【0062】
また、各テーパー部62a、62bの小径側に一体化された環状の締結部材63a、63bが、本体部31を締め付けるので、本体部31が確実に締結部材に保持される。
【0063】
また、中空部材60の内面部64が、マグネトロン30の外面と熱の授受を行うので、伝熱面積を広くすることができる結果、効率良く熱媒体とマグネトロン30の本体部31とを熱交換させることができる。
【0064】
特に、実施形態1では締結部材63a、63bが、マグネトロン30の本体部31の上下を保持するので、本体部31が確実に締結部材63a、63bに保持される結果、本体部31の姿勢が安定した状態に維持される。
【0065】
また、締結部材63a、63bが、弾性変形可能な環状の部材からなり、縮径することによりマグネトロン30の本体部31の上下を保持するので、締結部材63a、63bを拡径させることにより、マグネトロン30の本体部31を中空部材60の内部に挿通させることができる。また、弾性的に本体部31の上下を保持することができ、マグネトロン30に働く振動をより吸収することができる。
【0066】
さらに、マグネトロン30のためにわざわざ冷却水循環システムを設ける必要がないので、部品を省略することができ、温度調節システムの製作が容易になる。
−実施形態2−
【0067】
実施形態2について説明する。この実施形態2では、図5に示すように、高周波発生装置H2において、マグネトロン30の陽極部32と中空部材60との間には例えばステンレスなどの耐腐食性の材料からなり陽極部32を腐食から保護する保護部材65が設けられている。
【0068】
このように実施形態2では、陽極部32を腐食から保護する保護部材65がマグネトロンの陽極部と中空部材との間に設けられているので、腐食しやすい銅からなる陽極部32が腐食しにくくなる結果、マグネトロン30の寿命を長くすることができる。
−実施形態3−
【0069】
実施形態3について説明する。この実施形態3では、図6に示すように、高周波発生装置H3において、中空部材60は、中空部材60に設けられた係合部66を介して車(図示省略)のシャーシ91の支持部材92に支持されている。この係合部66は、中空部材60と同様、ゴムなどの柔軟な材料で構成されており、中空部材60の周囲に中空部材60と一体に成型されている。ここでは、中空部材60の係合部66に設けられた係合凸部67と、シャーシ91の支持部材92に設けられた係止凹部93とが嵌め合った状態で接着剤により接着され、中空部材60がシャーシ91に支持されている。
【0070】
このように実施形態3では、中空部材60が、中空部材60に設けられた係合部66を介して車に支持され、中空部材60が、自在に変形して車の振動を吸収しながらマグネトロン30を保持するので、マグネトロン30に作用する車の振動を低減できる。
【0071】
また、係合部66が、中空部材60と一体に成型されているので、マグネトロン30の支持にかかる部品を省略することができ、マグネトロン30の製作が容易になる。
《その他の実施形態》
【0072】
上記実施形態は、以下のように構成してもよい。
【0073】
また、中空部材60は、柔軟な材料からなる変形自在な中空であれば、ゴムに限らない。種々の材料が採用可能である。
【0074】
また、中空部材60の形状は、図示の形状に限らず、種々の設計変更が可能である。例えば、上記実施形態では陽極の全周囲に設けられているが、必ずしも全周囲でなくともよい。一部を囲むような構成でも採用可能である。
【0075】
また、中空部材60と車との間の支持構造は、必ずしも図6の係合部66を用いた構成に限定されない。種々の支持構造が採用可能である。
【0076】
また、中空部材60の内面部64とマグネトロン30の外面との間に用いられる熱伝導グリスは必ずしも必須ではない。省略可能である。
【0077】
また、上記実施形態において、マグネトロン30から出力されたマイクロ波をエンジン18の排気管に供給してもよい。例えば、エンジン18の排気管において、マイクロ波プラズマを発生させる排ガス処理装置にマグネトロン30を使用してもよい。また、排気管に設けられた触媒の昇温にマグネトロン30を使用してもよい。
【0078】
なお、高周波発生装置としては、マグネトロンに限定されない。半導体を用いた発信器などのソリッドステート発振器やマグネトロンを用いたものなど、さまざまな高周波発生手段が採用可能である。そして、ソリッドステート発振器の場合では、増幅器が発熱するので、このような増幅器を冷却可能な高周波発生装置としても適用可能である。
【0079】
また、高周波発生装置はマイクロ波などの電磁波の高周波を発生させるものに限らない。例えば高周波の交流電流など、電場の高周波を発生させるものにも適用可能である。また、このような高周波発生装置では、交流を高電圧に昇圧する昇圧回路が発熱するので、このような昇圧回路を冷却可能な高周波発生装置としても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上説明したように、本発明は、マグネトロンなどの高周波発生装置の温度を適切に調節することができるだけでなく、高周波発生装置に作用する振動を低減できる。
【符号の説明】
【0081】
H1、H2、H3 高周波発生装置
18 エンジン
30 マグネトロン
31 本体部
60 中空部材
61 中空部
62a,62b テーパー部
63a,63b 締結部材
65 保護部材
66 係合部
68 筒状保持部
70 導入口
80 排出口
92 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波を発生させる高周波発生装置であって、
上記高周波を発生させる本体部と、
上記本体部の周囲に設けられ、柔軟な材料からなる中空部材と、
上記中空部材の中空部に熱媒体を導入する導入口と、
上記中空部材の中空部から熱媒体を排出する排出口とを備え、
上記中空部材が、上記導入口から上記中空部材の中空部に導入された上記熱媒体と上記本体部とを熱交換させる一方、
上記中空部材が、上記高周波発生装置に働く振動に対して弾性変形して、振動を吸収可能に上記本体部を保持することを特徴とする高周波発生装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記高周波発生装置は、移動体に搭載されるものであり、
上記中空部材は、上記移動体に設けられた支持部材に係合する係合部を備えていることを特徴とする高周波発生装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記係合部は上記中空部材と一体に成型されていることを特徴とする高周波発生装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つにおいて、
上記高周波発生装置は、マグネトロンであり、
上記中空部材は、上記マグネトロンの陽極部を保持していることを特徴とする高周波発生装置。
【請求項5】
請求項4において、
上記中空部材は、内部に上記中空部が形成されて上記陽極部を保持する筒状保持部と、
該筒状保持部の両端に、それぞれ連続して上記筒状保持部から離れるに従って窄まる一対のテーパー部とを備えていることを特徴とする高周波発生装置。
【請求項6】
請求項5において、
上記中空部材は、上記各テーパー部の小径側に一体化されて上記本体部を締め付ける環状の締結部材を備えていることを特徴とする高周波発生装置。
【請求項7】
請求項4乃至6の何れか1つにおいて、
上記マグネトロンの陽極部と上記中空部材とに間に設けられて、上記陽極部を腐食から保護する耐腐食性の保護部材を備えていることを特徴とする高周波発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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