説明

高品位なN(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミドの製造方法

【課題】N(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミド類を製造する際、反応中間体より容易に反応触媒と不純物を除去する方法の提供。
【解決手段】アクリル酸エステルの2重結合を保護した3−アルコキシプロピオン酸アルキルエステルやノルボルナ-5-エン-2-カルボン酸メチル等を、塩基性金属アルコキシド触媒下、対応するアミンをアミド化反応させ、続いて反応液を強酸性イオン交換樹脂に接触させて、不純物を除去後、熱分解を行い高品位N(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミドを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品位なN(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミド類の製造方法に関する
。さらに詳しくは、アクリル酸エステルのβ位を保護した後、エステル交換反応に用いる
アミンを塩基性金属アルコキシド触媒下でアミド化反応させ、反応終了液から触媒と共に
微量不純物を効率よく除去した後、熱分解させて生成物を得る、高品位なN(N,N)−モノ
(ジ)アルキルアクリルアミドの製造法に関する物である。

【背景技術】
【0002】
高純度の品質が要求される分野でも使用可能である、アミン系不純物の含有量が極めて低
い、アクリルアミドの効率的な工業的製法方法を提供することを目的とする。
【0003】
一般に、N(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミドは、他のモノマ−やオリゴマ−と
共重合を行うため、重合によって得られる製品の品質に悪影響を及ぼす不純物が少ない高
純度のものが要求される。その中でもアミン系不純物は重合時に影響を与えることが多く
、重合促進剤として働き重合挙動を変化させることがある。それを防止するために、場合
によっては重合開始前にpH調整が必要になるなど、煩雑なプロセスが発生することもある
。また、アミン自体が酸化することにより着色が促進されることもあり、製品の品質保持
からの面からいってもアミン系不純物が含有することが好ましいことではない。従って、
上述のような影響を極力無くすためN(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミド系モノ
マ−中のアミン系不純物を削減する必要があった。
【0004】
通常、工業的に高純度のN(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミド系モノマ−を得る
ためには、一般的に蒸留法により精製される。しかしながら、N(N,N)−モノ(ジ)アル
キルアクリルアミドは、蒸留中に極めて重合し易く、特に、凝縮液の滞留する還流部や充
填塔内で発生した重合物は釜へ落下し、釜液中での重合物増加を引き起こし、製品の得量
を低下させるという問題がある。また、高純度の製品を得る為に還流を強化した際には、
いかなる溶媒にも溶解しない架橋ポリマ−(ポップコーンポリマー)を生成する場合もあ
る。架橋ポリマ−が生成すると塔内が閉塞し運転が不能となり、十分な品質の製品が得ら
れないという問題がある。
【0005】
ここで発生するアミン系不純物とは、N(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミド系モ
ノマ−を合成するに当たり、アクリル酸エステルとアミンを出発物質として製造する際の
中間体である、β位を保護したアミドエステルを合成する際に反応不純物として発生する
。即ち、アクリル酸エステルのβ位を、特許文献1及び2記載の通りアルコールやシクロ
ペンタジエン等で保護した後、塩基性金属アルコキシド触媒存在下対応するアミンを用い
てエステル交換(アミド化反応)させる際に、反応時の僅かな平衡反応のずれによって発
生する、β−アルキルアミノ−N(N,N)−モノ(ジ)アルキルプロピオンアミドやβ−ア
ルキルアミノプロピオン酸アルキルエステル等のアミン系の不純物である。
【0006】
例えば、アクリル酸メチルの二重結合部分をメタノールにより保護し、3−メトキシプロ
ピオン酸メチルを合成した後、ジメチルアミンを塩基性金属アルコキシド触媒存在下でア
ミド化反応をさせ、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミドを合成する際には、
β−ジメチルアミノ−N(N,N)−ジメチルプロピオンアミドやβ−ジメチルアミノプロピ
オン酸メチル等のアミン系の不純物が発生する。これらの不純物はN,N−ジメチル−β−
メトキシプロピオンアミドを熱分解させてN,N-ジメチルアクリルアミドを得る際にも不純
物として製品中へ僅かに残存する。これらのアミン系不純物は臭気物質であるため、工業
的な用途で取り扱う際、作業環境的に不向きである事は勿論、更には上述の通り重合性の
変化や、長期保存下での色相変化等の様々な影響が予測されるため、使用範囲が限定され
る。特に重合時に於いてはこれらのアミン系不純物が、ごく僅かな量混入していても顕著
に影響が出るため、製品中から完全に排除することが課題であった。
【0007】
従来は、アクリル酸エステルの2重結合部分の保護基にアルコールを用いた中間体である
β−アルコキシ−N(N,N)−モノ(ジ)アルキルプロピオンアミドを合成する際、塩基性
金属アルコキシド触媒下にβ−アルコキシプロピオン酸アルキルエステルと対応するアミ
ンをアミド化反応させ、酸を用いて触媒を中和し、発生した塩を濾過や薄膜蒸発機を用い
て除去した後、熱分解させてN(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミド得ていた。高
品位のN(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミドを得るためには、アミド化反応時に
発生するアミン系の不純物を除去する必要があり、通常は多段の蒸留塔に分離精製を行い
高品位のN(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミドを得ることができるが、N(N,N)
−モノ(ジ)アルキルアクリルアミドと先述のアミン系不純物の蒸気圧が近接する場合は
困難を極める。
【0008】
仮に多段の精密蒸留により分離できたとしても、蒸留時の温度や滞留時間が長くなること
で凝縮液の滞留する還流部や充填塔内で発生した重合物は釜へ落下し、釜液中での重合物
増加を引き起こし、製品の得量を低下させるという問題がある。また、高純度の製品を得
る為に還流を強化した際には、いかなる溶媒にも溶解しない架橋ポリマ−(ポップコーン
ポリマー)を生成する場合もある。架橋ポリマ−が生成すると塔内が閉塞し運転が不能と
なり、十分な品質の製品が得られず、収率も低下するという問題がある。
【0009】
尚、これはシクロペンタジエン等を用いたDiels-Alder反応によるアクリル酸エステルの
2重結合部分を保護した後の、アミド化反応により得られる中間体においても同様であり
、反応に於いてアミン系不純物が発生し、中間体であるN(N,N)-モノ(ジ)アルキルノル
ボルナ-5-エン-2-カルボキサミド等を熱分解させた後の精製工程に於いても同様の現象が
発生する。
よって、アミン系の不純物を著しく低減した、簡便な製造方法で高品位のN(N,N)−モノ
(ジ)アルキルアクリルアミドの製造方法が望まれていた。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭49−66623号公報
【特許文献2】特開昭49−66625号公報
【特許文献3】特開平2−48559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、N(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミドを合成するに当たり、アクリル
酸エステルを出発物質として、アクリル酸エステルの2重結合部分をアルコールやシクロ
ペンタジエン等で保護された、3−アルコキシプロピオン酸アルキルエステルやノルボル
ナ-5-エン-2-カルボン酸メチルをアルカリ金属等の塩基性金属アルコキシド触媒を用いて
対応するアミンを反応させβ−アルコキシ−N(N,N)−モノ(ジ)アルキルプロピオンア
ミドやN(N,N)-モノ(ジ)アルキルノルボルナ-5-エン-2-カルボキサミドの中間体を合成
する際に、中間体中のアミン不純物を簡便に除去する事で、β−アルコキシ−N(N,N)−
モノ(ジ)アルキルプロピオンアミドやN(N,N)-モノ(ジ)アルキルノルボルナ-5-エン-2
-カルボキサミドを熱分解した際に、高品位なN(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルア
ミドを得る事ができる方法である。即ち、上記の問題を解決し得られた中間体の反応液か
ら容易に触媒と発生する微量な不純物を除去し、且つ効率よく高品位な製品の取得が出来
るN(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミドの製造方法を提供するものである。

【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は下記一般式(1)(式中、R1 は炭素数1〜4の低級アルキル基を示す)で表され
るアルコールや1,3-シクロペンタジエンと、


下記一般式(2)(式中、R1は上記と同じ、R2 はメチル基または水素原子を示す)で表さ
れるアクリル酸エステルを反応させ二重結合部分を保護した

下記一般式(4)(式中、R1 、R2は上記と同じ)で表される3−アルコキシプロピ
オン酸アルキルエステルやノルボルナ-5-エン-2-カルボン酸メチルを


アルカリ金属等の塩基性金属アルコキシドを触媒として反応させて下記一般式(3)(式中
、R1 、R2は上記と同じ、R3 、R4は水素原子若しくは炭素数1〜4の低級アルキル基を示
す)で表されるβ−アルコキシ−N(N,N)−モノ(ジ)アルキルプロピオンアミドやN(N,
N)-モノ(ジ)アルキルノルボルナ-5-エン-2-カルボキサミドを得た後、


反応後の溶液を強酸性陽イオン交換樹脂と接触させて触媒及び不純物を除去させた後、熱
分解させることを特徴とする高品位N(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミドの製造
法を提供するものである。

【発明の効果】
【0013】
N(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミド等を合成する際に、中間体であるβ−アル
コキシ−N(N,N)−モノ(ジ)アルキルプロピオンアミドやN(N,N)-モノ(ジ)アルキル
ノルボルナ-5-エン-2-カルボキサミドを合成する際、つまり、アルコールやシクロペンタ
ジエン等でアクリル酸エステルの2重結合を保護した後、アルカリ金属等の塩基性金属ア
ルコキシド触媒を用いて3−アルコキシプロピオン酸アルキルエステルやノルボルナ-5-
エン-2-カルボン酸メチルに対応するアミンを反応させる際に、反応時の僅かな平衡反応
のずれにより、発生するβ−アルキルアミノ−N(N,N)−モノ(ジ)アルキルプロピオン
アミドやβ−アルキルアミノプロピオン酸エステル等のアミン系の不純物と触媒を除去す
るために、反応後の溶液を強酸性陽イオン交換樹脂と接触させ、β−アルコキシ−N(N,N
)−モノ(ジ)アルキルプロピオンアミドやN(N,N)-モノ(ジ)アルキルノルボルナ-5-エ
ン-2-カルボキサミドを熱分解させて、簡単な蒸留をすることで高品位なN(N,N)−モノ
(ジ)アルキルアクリルアミドを得ることが出来る。これにより、塩基性金属アルコキシ
ド触媒中和の為に酸を使用しなくて良いため芒硝、硫カリ等の塩が発生することは回避さ
れる。よって、中和後の脱塩処理、即ち薄膜蒸発機や濾過等の処理が無くなり、熱分解工
程で発生するロスも殆ど無く製品を取得することが出来る。
【0014】
この製法の優位な点は特に、蒸留精製時においてN(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリル
アミドが、塩基性金属アルコキシド触媒下、3−アルコキシプロピオン酸アルキルエステ
ルやノルボルナ-5-エン-2-カルボン酸メチルに対応するアミンを用いてアミド化反応をす
る際に発生する不純物、即ちβ−アルキルアミノ−N(N,N)−モノ(ジ)アルキルプロピ
オンアミドやβ−アルキルアミノ−プロピオン酸アルキルエステル等のアミン系不純物と
非常に近い蒸気圧を有している場合には特に有効であり、β−アルコキシ−N(N,N)−モ
ノ(ジ)アルキルプロピオンアミドやN(N,N)-モノ(ジ)アルキルノルボルナ-5-エン-2-
カルボキサミドの熱分解を実施した場合、効率よく高品位なN(N,N)−モノ(ジ)アルキ
ルアクリルアミドを回収することができる。尚、ここで得られる中間体のβ−アルコキシ
−N(N,N)−モノ(ジ)アルキルプロピオンアミドやN(N,N)-モノ(ジ)アルキルノルボ
ルナ-5-エン-2-カルボキサミドは強酸性陽イオン交換樹脂と接触させることで、熱分解後
に得られる最終組成物であるN(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミドはいうまでも
なく金属フリーにもなる。


【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に使用されるアクリル酸エステルの二重結合保護に用いるアルコールは特に限定し
ないがアミド化反応に於ける立体障害の観点から、1級アルコールが好ましく、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールが挙げられる。更に用いるア
クリル酸エステルのエステル部分のアルキル基と対応するアルコールを用いることが望ま
しい。また、Diels-Alder反応によりアクリル酸エステルの二重結合保護に用いるジエン
はシクロペンタジエンやフラン、N-メチルピロール、チオフェン等が挙げられる。
【0016】
また、本発明に使用されるアミド化反応用のアミンは1級アミン、2級アミンが好ましく
、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、
ジメチルアミン、ジエチルアミン、モルホリン等が挙げられる。アミド化反応に使用され
るアミンは3−アルコキシプロピオン酸エステル及びノルボルナ-5-エン-2-カルボン酸メ
チル等の1モルに対し、1.0〜10.0モル用いられる。
【0017】
使用される触媒の塩基性金属アルコキシドは、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアル
カリ金属のアルコキシドであり、炭素数が1〜4の1級〜2級アルコールのアルコキシドが
好ましく、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキ
シド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等が挙げられる
。また、不純物発生防止の観点から、アクリル酸エステルは二重結合保護用にアルコール
を用いる場合は、用いられるアルコールと同一のエステルが好ましく、更に塩基性金属ア
ルコキシドにおいては対応するエステルと同一のアルコールからの金属アルコキシドを用
いることがさらに好ましい。
【0018】
この中で通常市販されていない塩基性金属アルコキシドに関しては、アルコールの沸点差
を利用して調整することが望ましい。例えば、出発物質のアクリル酸エステルをアクリル
酸ブチルとした場合、アルコールにて2重結合を保護する場合、n-ブタノールを使用する
ことが望ましく、その際使用する塩基性金属アルコキシド触媒も、n-ナトリウムブトキシ
ドやn-カリウムブトキシド等が好適である。しかし、触媒自体が高価である事から、安価
なナトリウムメトキシドにブタノールを添加し、蒸留にてメタノールを留去させることに
より簡単にナトリウムブトキシドを得たのちに反応を実施することが望ましい。尚、これ
ら触媒の添加量は、2重結合部分が保護されたアルキルエステルに対し、0.1〜5.0モル%
が好ましい。
【0019】
反応は、通常、所定量の原料および触媒を仕込み、回分式で行われるが、連続式で行うこ
ともできる。反応温度は室温〜120℃程度で、反応時間は1〜48時間の範囲である。反応終
了後、反応液は必要に応じ、室温程度まで冷却して強酸性陽イオン交換樹脂の接触処理に
供する。
【0020】
このとき、触媒の除去のみならず、塩基性金属アルコキシド触媒下、3−アルコキシプロ
ピオン酸アルキルエステルやノルボルナ-5-エン-2-カルボン酸メチル等に対応するアミン
をアミド化反応する際に発生する微量不純物、即ちβ−アルキルアミノ−N(N,N)−モノ
(ジ)アルキルプロピオンアミドやβ−アルキルアミノプロピオン酸アルキルエステルの
アミン系不純物を除去することが出来、効率よく高純度のβ−アルコキシ−N(N,N)−モ
ノ(ジ)アルキルプロピオンアミドやN(N,N)-モノ(ジ)アルキルノルボルナ-5-エン-2-
カルボキサミド等を得ることが出来る。その結果、強酸性陽イオン交換樹脂にて触媒及び
アミン不純物を除去したβ−アルコキシ−N(N,N)−モノ(ジ)アルキルプロピオンアミ
ドやN(N,N)-モノ(ジ)アルキルノルボルナ-5-エン-2-カルボキサミド等を熱分解させる
ことにより、アミン不純物のない高純度のN(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミド
を得ることが出来る。
【0021】
強酸性陽イオン交換樹脂と接触させるに際し、反応液中の触媒濃度が高過ぎると、白濁、
ゲル状物質を生じるおそれがあるので、必要に応じ触媒の重量濃度が1%以下になるように
調製するのが好ましい。この場合、反応に使用したアクリル酸エステルに対応するアルコ
ールで希釈して用いることが好ましい。
【0022】
強酸性陽イオン交換樹脂は公知で一般に入手できるものが使用可能であるが、好ましくは
スルホン酸基を有するものが使用される。交換容量は1.0meq/ml以上、粒度範囲は200〜12
00μmのものが好ましく、例えば三菱化成社製SKシリーズ、UBKシリーズ、PKシリーズ、オ
ルガノ社製アンバーライトIRシリーズ、1006HF、200CT、252、アンバーリスト15、16、31
、35等が挙げられる。これらのイオン交換樹脂は酸型で使用する。尚、Na型の場合は塩酸
等の酸で処理し、酸型として使用する。
【0023】
通常、これらのイオン交換樹脂は含水状態で市販されているので、本発明の接触処理にそ
のまま用いてもよいが、樹脂内水分によるβ−アルコキシ−N(N,N)−モノ(ジ)アルキ
ルプロピオンアミドやN(N,N)-モノ(ジ)アルキルノルボルナ-5-エン-2-カルボキサミド
等加水分解防止の観点から、処理に先立ち、反応に用いたアルコールと同一のアルコール
を樹脂の2〜5容量倍用いて溶媒置換して使用するのが好ましい。樹脂の使用量は、β−ア
ルコキシ−N(N,N)−モノ(ジ)アルキルプロピオンアミドやN(N,N)-モノ(ジ)アルキ
ルノルボルナ-5-エン-2-カルボキサミド等生成反応に用いた触媒と発生するアミン系不純
物の合計に対して1当量以上、好ましくは1〜10当量の交換容量を有すればよい。
【0024】
強酸性陽イオン交換樹脂と反応液の接触法は、反応液中に樹脂を拡散させ、必要に応じ、
攪拌、混合し、0.5〜10時間接触処理した後、樹脂を濾別する回分式方法、または樹脂を
充填したカラムに反応液を通液する連続式方法のいずれでもよい。接触処理の温度は、室
温〜使用するイオン交換樹脂の耐熱温度以下の範囲である。連続式方法においては、反応
液をLHSV=20Hr-1以下の流速で処理することが好ましい。 また、使用したイオン交換樹脂
は酸処理等の方法により再生して再使用可能である。
【0025】
これらのイオン交換樹脂処理後の、液から常圧若しくは減圧でアミド化反応副生成物のア
ルコールを蒸留留去した後、アミン系不純物の除去されたβ−アルコキシ−N(N,N)−モ
ノ(ジ)アルキルプロピオンアミドやN(N,N)-モノ(ジ)アルキルノルボルナ-5-エン-2-
カルボキサミドの熱分解を行い、還流を掛けない簡単な蒸留を行うことで高品位のN(N,N
)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミドを得ることができる。
【0026】
この製法の優位な点は特に、アミド化反応により発生するアミン系不純物が対応するN(N
,N)−モノ(ジ)アルキルプロピオンアミドと非常に近い蒸気圧を有している場合は特に
有効である。即ち、アクリル酸エステルを出発物質として2重結合を保護した、3−アル
コキシプロピオン酸アルキルエステルやノルボルナ-5-エン-2-カルボン酸メチル等を、塩
基性金属アルコキシド触媒下、対応するアミンをアミド化反応させる際に、反応時の僅か
な平衡反応のずれにより、発生するβ−アルキルアミノ−N(N,N)−モノ(ジ)アルキル
プロピオンアミドやβ−アルキルアミノプロピオン酸エステル等のアミン系の不純物が、
アミド化反応後の中間体であるβ−アルコキシ−N(N,N)−モノ(ジ)アルキルプロピオ
ンアミドやN(N,N)-モノ(ジ)アルキルノルボルナ-5-エン-2-カルボキサミドを熱分解し
て得られるN(N,N)−モノ(ジ)アルキルプロピオンアミドと非常に近い蒸気圧を有して
いる場合には特に有効であり、効率よくアミン系不純物のない高品位な(N,N)−モノ(
ジ)アルキルアクリルアミドを得ることができる。

【実施例】
【0027】
以下、本発明を実験例により詳細に説明する。
実施例1
温度計、攪拌機および冷却器の付いた500mlの三つ口フラスコ内にメタノール96.1g(3mol
)を投入し、ナトリウムメトキシド1.62g(30mmol)を溶解させた後、アクリル酸メチル
258.3g(3mol)を加えて、50℃で2時間反応させ3−メトキシプロピオン酸メチルを得た
。その後、ジメチルアミン135.2g(3mol)を液状化させて仕込み、50℃で5時間反応させ、
3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミドを得た。反応率は90%で進行し、アミン系
の不純物としてβ−ジメチルアミノ−N,N−ジメチルプロピオンアミドが1.45%、β−ジメ
チルアミノプロピオン酸メチルが0.32%検出された。
未反応のジメチルアミンを減圧蒸留にて留去した後、反応液を室温程度まで冷却し、強酸
性陽イオン交換樹脂PK216(三菱化学社製)20mlを直径2cmのカラム管に充填し、メタノー
ル40mlを流して溶媒置換した。この樹脂床に上述の反応液をLHSV=10Hr-1で通液し、無色
透明な溶液を得た。
【0028】
得られた溶液よりメタノールを減圧留去し、釜温140〜143℃、真空度53kPaにて2時間液
相熱分解し、水凝縮器にて純度94%の粗N,N−ジメチルアクリルアミド236.7gを得た。尚
、この粗N,N−ジメチルアクリルアミド中の不純物は未分解の3−メトキシ−N,N−ジメ
チルプロピオンアミドのみで、アミン由来の不純物は検出されなかった。
【0029】
この、粗N,N−ジメチルアクリルアミドを減圧可能な真空ポンプを備えた蒸留段数5段、
還留分配器付きのバッチ式蒸留装置に仕込んで、還流をかけることなく59〜61℃/0.13kPa
の留分として、ガスクロマトグラフィーで純度99.94%のN,N−ジメチルアクリルアミド20
0.2g(2.02mol)を得た。このときアミン系不純物であるβ−ジメチルアミノ−N,N−ジメ
チルプロピオンアミドやβ−ジメチルアミノプロピオン酸メチルはガスクロマトグラフィ
ー上では確認されなかった。
【0030】
実施例2
温度計、攪拌機および冷却器の付いた500mlの三つ口フラスコ内にアクリル酸メチル258.3
g(3mol)とシクロペンタジエン198.3g(3mol)を加えて、Diels-Alder反応によりアクリ
ル酸エステルの二重結合保護した、ノルボルナ5-エン-2-カルボン酸メチルを得た。この
溶液にナトリウムメトキシド1.62g(30mmol)を溶解させた後、ジメチルアミン135.2g(3
mol)を液状化させて仕込み、50℃で5時間反応させ、N,N-ジメチルノルボルナ-5-エン-2-
カルボキサミドを得た。反応率は98%で進行し、アミン系の不純物としてβ−ジメチルア
ミノ−N,N−ジメチルプロピオンアミドが0.71%、β−ジメチルアミノプロピオン酸メチル
が0.02%検出された。
未反応のジメチルアミンを減圧蒸留にて留去した後、反応液を室温程度まで冷却し、強酸
性陽イオン交換樹脂PK216(三菱化学社製)20mlを直径2cmのカラム管に充填し、メタノー
ル40mlを流して溶媒置換した。この樹脂床に上述の反応液をLHSV=10Hr-1で通液し、無色
透明な溶液を得た。
【0031】
イオン交換樹脂通液後の溶液よりメタノールを減圧留去し、真空度53kPaの減圧下、400℃
にて加熱された熱分解塔にて気相熱分解を行った。水凝縮器にて得られた純度98%の粗N,
N−ジメチルアクリルアミドは221.2gであった。尚、この粗N,N−ジメチルアクリルアミ
ド中の不純物は未分解のN,N-ジメチルノルボルナ-5-エン-2-カルボキサミドのみで、アミ
ン由来の不純物は検出されなかった。
【0032】
この、粗N,N−ジメチルアクリルアミドを減圧可能な真空ポンプを備えた蒸留段数5段、
還留分配器付きのバッチ式蒸留装置に仕込んで、59〜61℃/0.13kPaの留分として、ガスク
ロマトグラフィーで純度99.90%のN,N−ジメチルアクリルアミド168.2g(1.70mol)を得
た。このときアミン系不純物であるβ−ジメチルアミノ−N,N−ジメチルプロピオンアミ
ドやβ−ジメチルアミノプロピオン酸メチルはガスクロマトグラフィー上では確認されな
かった。


【0033】
比較例1
上記実施例1と同様に反応を行い3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミドを合成
した後、得られた反応溶液を濃硫酸1.47g(15mmol)にて中和した。そして、常圧にて過剰
のメタノールを留去した。以下実施例1に従い液相にて熱分解を実施した後、得られた溶
液を、減圧可能な真空ポンプを備えた蒸留段数10段、還留分配器付きのバッチ式蒸留装
置に仕込んで、還流を掛けながら59〜61℃/0.13kPaの留分として、ガスクロマトグラフィ
ーで純度99.67%のβ−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド150.7g(1.52mol)を得
た。このときアミン系不純物であるβ−ジメチルアミノ−N,N−ジメチルプロピオンアミ
ドの含有量は2200ppmであった。

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明でN,N-ジメチルアクリルアミドを製造する際に、アミン系不純物を除去することで
、工業的な用途で取り扱う際、作業環境的に満足出来、重合性の変化や長期保存下での色
相変化等の様々な影響が回避され工業的な使用用途が広がると考えられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)(式中、R1 は炭素数1〜4の低級アルキル基を示す)で表されるアルコ
ールと、

下記一般式(4)(式中、R1 、R2は上記と同じ)で表される3−アルコキシプロピオン
酸アルキルエステルやノルボルナ-5-エン-2-カルボン酸メチルを

アルカリ金属等の塩基性金属アルコキシドを触媒として反応させて下記一般式(3)(式中
、R1 、R2、R3 、R4 は上記と同じ)で表されるβ−アルコキシ−N(N,N)−モノ(ジ)アルキルプロピオンアミドを得た後、

反応後の溶液を強酸性陽イオン交換樹脂と接触させた後、熱分解させることを特徴とする
高品位N(N,N)−モノ(ジ)アルキルアクリルアミドの製造方法。


【公開番号】特開2011−168514(P2011−168514A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32513(P2010−32513)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】