説明

高圧引下線用碍子

【課題】高圧線からの引下線の引き下げ作業の容易化を図る。
【解決手段】ポリマーによって一体成形された複数個の碍子122が一列に連なるポリマー碍子121の両端を保持したアーム131を、電柱の腕金に固定可能な基部111に回転自在に連結し、その回転を固定及び固定解除可能とする。電柱の腕金に基部111を固定した状態で、基部111に対するアーム131の回転を固定解除するとアーム131がポリマー碍子121と共に回転自在となり、基部111に対するアーム131の回転を固定するとアーム131及びポリマー碍子121の回転位置が定められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧線から引き下げられた電線を支持するために用いられる高圧引下線用碍子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電柱の一番高い位置に懸架されているのは三本の高圧線である。このため、高圧線によって運ばれる電気を利用するには、高圧線を流れる電気を引下線によって引き下げなければならない。この場合、単に高圧線から引下線を引き下げるのではなく、途中で引下線を支持する必要がある。これに利用するのが、高圧引下線用碍子である。
【0003】
高圧引下線用碍子として、従来、茶台碍子を用いたものが広く普及している。このような高圧引下線用碍子は、一例として、三個の茶台碍子を一本の棒状部材で串刺しにし、この棒状部材の両端をアームで支持するようにしている。設置に際しては、一対の高圧引下線用碍子を用意し、一方を高圧線の直下に設置した腕金に固定し、もう一方をその下方に設置した腕金に固定する。そして、三本の高圧線からの引下線を上方に位置する高圧引下線用碍子にそれぞれ支持させ、これを垂直に引き下げて下方に位置する高圧引下線用碍子にそれぞれ支持させる。高圧引下線用碍子に引下線を支持させるには、引下線を茶台碍子に巻き付け、これを手巻きバインドによって固定するのが一般的である。
【0004】
なお、碍子として、ポリマーを用いたポリマー碍子が従来から知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−289626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高圧線から引下線を引き下げる作業に際して、間接活線工法を用いることがある。この場合、予め決められた距離だけ充電部からの離隔距離を確保しなければならない。ところが、上記の茶台碍子を用いた高圧引下線用碍子は、腕金に対する取り付け角度が一律に決められている。このため、高圧引下線用碍子と作業員との間の位置関係によっては、どうしても規定の離隔距離を確保しながらの作業が困難な場合が発生する。
【0007】
また、高圧引下線用碍子に引下線を支持させるには、前述したように、引下線を茶台碍子に巻き付け、これを手巻きバインドによって固定するのが一般的である。ところが、このような作業に際しては支持対象である引下線の位置が拘束されていないので、作業性が良好ではない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、高圧線からの引下線の引き下げ作業の容易化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電柱から水平方向に延びる腕金に固定可能な基部と、ポリマーによって一体成形されて複数個の碍子が一列に連なるポリマー碍子と、前記ポリマー碍子の両端を保持するアームと、前記基部に対して水平面内で回転自在に前記アームを連結する連結部と、外部に露出する操作部の操作に応じて前記基部に対する前記アームの回転を固定及び固定解除するロック機構と、を備える高圧引下線用碍子である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電柱の腕金に基部を固定した状態で、基部に対するアームの回転を固定解除するとアームがポリマー碍子と共に回転自在となり、基部に対するアームの回転を固定するとその位置が定められるので、作業者は充電部との間に必要な離隔距離を確保できる位置に容易にポリマー碍子の位置を定めることができ、この際、ポリマーによって一体成形されているポリマー碍子が軽量であることからその作業が容易であり、したがって、高圧線からの引下線の引き下げ作業の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の一形態として、電柱への設置の一例を示す斜視図である。
【図2】全体の斜視図である。
【図3】グリップを一部省略し、(a)は基部に対するアームの回転が固定解除されてアームがポリマー碍子と共に回転自在な状態、(b)は基部に対するアームの回転が固定された状態をそれぞれ示す全体の正面図である。
【図4】グリップの正面図である。
【図5】連結部の横断平面図である。
【図6】(a)は、基部に対するアームの回転が固定解除されてアームがポリマー碍子と共に回転自在な状態での連結部及びロック機構の縦断正面図、(b)は、基部に対するアームの回転が固定された状態での連結部及びロック機構の縦断正面図である。
【図7】ロック機構の一部をなすスライダを示す斜視図である。
【図8】アームにロック機構の一部をなす従動円板が連結固定された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の一形態を図1ないし図8に基づいて説明する。
【0013】
図1は、電柱11への設置の一例を示す斜視図である。電柱11には、その最上部から下方に向けて、第1の腕金21、第2の腕金31、そして第3の腕金41が固定されている。これらの第1〜第3の腕金21、31、41は、電柱11から水平方向に延びている。
【0014】
第1の腕金21には、三本の高圧線12がピン碍子13によって取り付けられている。電柱11の中間位置である第3の腕金41の近傍には、変圧器51が取り付けられている。図1に示す一例は、高圧線12から引き下げられた引下線61を変圧器51に接続している一例である。そのための構造として、本実施の形態では、第2の腕金31と第3の腕金41とのそれぞれに、高圧引下線用碍子101を取り付けている。これらの二つの高圧引下線用碍子101は同一の構造物であり、それぞれ天地逆転した状態で配置されている。
【0015】
高圧引下線用碍子101は、第2の腕金31及び第3の腕金41に固定可能な基部111に、ポリマー碍子121の両端を保持するアーム131を連結部141によって連結している。第2の腕金31に固定されている上方に位置する高圧引下線用碍子101は、そのポリマー碍子121を下方に向け、第3の腕金41に固定されている下方に位置する高圧引下線用碍子101は、そのポリマー碍子121を上方に向けて、それぞれ第2及び第3の腕金31、41に取り付けられている。
【0016】
上方の高圧引下線用碍子101は、高圧線12から引き下げられた引下線61を下方の高圧引下線用碍子101に中継する役割を果たしている。下方の高圧引下線用碍子101は、引下線61を変圧器51に中継する役割を果たしている。
【0017】
図2は、高圧引下線用碍子101の全体の斜視図である。図3(a)、(b)は、高圧引下線用碍子101の正面図である。高圧引下線用碍子101は、その連結部141により、基部111に対して水平面内で回転自在にアーム131を連結する。そこで、高圧引下線用碍子101は、基部111に対するアーム131の回転を固定及び固定解除するためのロック機構151(図5〜図8参照)を必要とする。ロック機構151については後述する。
【0018】
もっとも、図2及び図3中にもロック機構151の一部が示されている。操作部152である。図2に示すように、操作部152は、連結部141の正面から水平方向に突出している。操作部152は、手前に引いたり押し込んだりすることが可能である。操作部152を手前に引くと、基部111に対するアーム131の回転が固定解除される。図3(a)は、基部111に対するアーム131の回転が固定解除されてアーム131がポリマー碍子121と共に回転自在な状態を示している。この状態では、連結部141の下面からアーム131の上面が離反し、アーム131は連結部141による回転規制力から開放されて自由に回転可能となる。その状態から操作部152を押し込むと、基部111に対するアーム131の回転が固定される。図3(b)は、基部111に対するアーム131の回転が固定された状態を示している。この状態では、連結部141の下面に対してアーム131の上面が接合し、アーム131は連結部141との間の摩擦力を受けてその回転が規制される。後述するロック機構151(図5〜図8参照)は、操作部152の上記引き出し及び押し込み動作に応じてアーム131に図3(a)、(b)に示す変化を生じさせる機構である。このような操作部152の操作は、例えば共用操作棒の先端に取り付けた絶縁ヤットコ(図示せず)によって操作部152を把持した状態でも可能となっている。そのために、操作部152は、その上下面あるいは一面に滑止部152aを有している。滑止部152aは、一例として、ギザギザの山形を連続させて形成されている。
【0019】
基部111は、四角筒形状を備え、筒内に腕金(第2の腕金31、第3の腕金41)の差し込みを許容する腕金孔112を有する断面ロの字形状の基体113を主体に形成されている。基体113は、一例として、一枚の板金を四角筒形状に折り曲げ加工して端部を溶接することによって形成されている。そして、基体113の下角内部にはL字形状の座金114が溶接されている。座金114は、基体113よりも高剛性の部材によって形成されている。基体113は、その座金114が裏打ちされた部分の側面及び底面に複数個の切欠部115を有しており、これらの切欠部115において座金114を外部に露出させている。座金114は、切欠部115を介して露出した複数部分に螺旋孔(図示せず)を有しており、これらの螺旋孔には螺旋部116が螺合している。これらの螺旋部116は、一例としてIボルトであり、締め付けることによって先端部が腕金孔112内まで突き出る。そこで、腕金(第2の腕金31、第3の腕金41)を腕金孔112に差し込んで基体113をそれらの腕金(第2の腕金31、第3の腕金41)に装着した状態で、Iボルトである螺旋部116を締め付ける。すると、螺旋部116の先端部が腕金(第2の腕金31、第3の腕金41)に当接し、基部111の主体をなす基体113が腕金(第2の腕金31、第3の腕金41)に強固に固定される。
【0020】
ポリマー碍子121は、三個の碍子122が一列に連なった形状を有している。このようなポリマー碍子121は、ポリマーによって一体成形されている。三個の碍子122は、いずれも中央部が両端側よりも徐々に小径となる堤形状を有している。
【0021】
アーム131は、図3に示すように、あたかも人間の肩から上腕部にかけてのシルエットに近似したような形状を有している。このようなアーム131は、一例として板金の折り曲げ加工によって形成されており、最上部に連結部141の下面と接離する接離部132を有している。そして、接離部132の両端からなだらかに直線傾斜して下方に向かうのが開拡部133、これらの開拡部133の端部から垂直に下方に落ち込んでいるのが一対の保持部134である。これらの保持部134は相対向しており、ポリマー碍子121を取り付けるための取付孔(図示せず)を有している。ポリマー碍子121は、一方の保持部134に形成されている取付孔に一方の端部を挿入した後、一対の開拡部133を押し拡げるようにして一対の保持部134の間の距離を拡げ、もう一方の保持部134に形成されている取付孔にポリマー碍子121のもう一方の端部を挿入することによって、アーム131に取り付けられる。アーム131は、ある程度の弾性復元力を有しており、一対の開拡部133をある程度拡げたとしても、元の形状に復元する。そして、アーム131に取り付けられたポリマー碍子121は、左右両端に取り付けられたEリング135によってアーム131から脱落しないようになっている。ポリマー碍子121は、一対の保持部134の外面側丁度の位置に、Eリング135を装着するためのリング溝(図示せず)を形成している。Eリング135は、それらのリング溝に嵌り込み、脱落することなくポリマー碍子121に装着されている。
【0022】
連結部141は、平べったい箱形の連結基体142の内部に機構部を内蔵している。外見上、連結基体142は、その正面から前述した操作部152を外部に露出させている。連結基体142の上面には四角筒形状の連結柱143が溶接固定され、この連結柱143は基部111における基体113の下面に固定されており、こうして基部111に連結部141が連結固定されている。連結基体142と連結柱143との固定及び連結柱143と基体113との固定は、一例として溶接固定による。勿論、他の固定手法を採用しても良い。
【0023】
図3(a)に僅かに示すように、連結部141は、連結基体142の内部に回転軸144を回転自在に内蔵している。回転軸144は、連結基体142の下面に形成された挿通孔142a(図6(a)、(b)参照)を挿通して外部に飛び出し、その下端がアーム131の接離部132にボルト止めされている。そこで、連結基体142の内部で回転軸144が回転することで、基部111に対してアーム131がポリマー碍子121と共に回転する。
【0024】
図4は、グリップ161の正面図である。本実施の形態の高圧引下線用碍子101は、ポリマー碍子121に装着されたグリップ161を有している(図2も参照のこと)。グリップ161は、ポリマー碍子121が有する碍子122の部分に着脱自在に取り付けられて、ポリマー碍子121に支持される引下線61を巻き付け固定するための線状部材であり、導電性及び弾性復元力を有する。このようなグリップ161は、ポリマー碍子121が有する碍子122の部分を挟み込むリング状の挟持基部162から一対の巻付部163が二方向に開拡して波状に延出した形状を有している。挟持基部162は、一対の巻付部163の根元部分において接離可能であり、一対の巻付部163を更に拡げることによって離反し、弾性復元力によって元のリング形状に復元する。そこで、一対の巻付部163を更に拡げてそれらの根元部分における挟持基部162の一部を離反させ、この部分にポリマー碍子121が有する碍子122の中央小径部分を差し込む。これにより、それらの碍子122にグリップ161が装着される。図2に示すように、グリップ161は、ポリマー碍子121に装着されると、一対の巻付部163がポリマー碍子121から互いに徐々に離反する二方向に拡がっていく。
【0025】
図5は、連結部141の横断平面図である。図6(a)は、基部111に対するアーム131の回転が固定解除されてアーム131がポリマー碍子121と共に回転自在な状態での連結部141及びロック機構151の縦断正面図である。図6(b)は、基部111に対するアーム131の回転が固定された状態での連結部141及びロック機構151の縦断正面図である。
【0026】
連結部141は、その連結基体142にロック機構151を内蔵している。ロック機構151は、前述したように、操作部152の引き出し及び押し込み動作に応じてアーム131に図3(a)、(b)に示す変化(図6(a)、(b)も参照のこと)を生じさせる機構である。ロック機構151は、そのための構造として、直動カム機構を採用している。直動カム機構の原動節となるのは、操作部152に連続して連結部141の連結基体142に収納されているスライダ153である。直動カム機構の従動節となるのは、アーム131の回転軸144の上部に設けられた従動円板145である。
【0027】
図7は、ロック機構151の一部をなすスライダ153を示す斜視図である。図7に示すように、スライダ153の先端側上面には直動カムをなすカム154が形成されている。カム154は、スライダ153の先端側で高さが低く、後端側に向かうに従い徐々に高さが高くなるプロファイルを有している。また、スライダ153は、その先端に長孔U字形状に切り欠かれた干渉回避溝155を有し、その先端両側面に一対の軌条156を形成している。図7に示すように、操作部152が形成されているのはスライダ153の後端側である。
【0028】
図8は、アーム131にロック機構151の一部をなす従動円板145が連結固定された状態を示す斜視図である。アーム131にボルト止めされた回転軸144の上部には従動円板145が設けられている。従動円板145は、回転軸144と一体に形成されている。このようなアーム131と回転軸144と従動円板145とについては、図6(a)、(b)を参照することによってより一層明らかとなる。つまり、回転軸144及び従動円板145は、その中心位置に軸孔146を有している。そして、アーム131の接離部132と回転軸144とにはそれぞれ取付孔132a、144aが形成されている。そこで、アーム131と回転軸144とは、回転軸144の軸孔146の側からワッシャW1を介して取付孔144a、132aを挿通した螺旋ボルト147に対して接離部132の裏面側でワッシャW2を介してボルト148を螺合させ、これらの螺旋ボルト147とボルト148とを締め付けることで連結固定されている。
【0029】
以上、ロック機構151が採用する直動カム機構の原動節をなすスライダ153と従動節をなす従動円板145との構造が明らかになったところで、これらの構造的関連性について明らかにしていく。
【0030】
図5及び図6(a)、(b)に示すように、連結基体142の内部両側には、スライダ153を支持する一対のレール部材157が設けられている。これらのレール部材157は、スライダ153の両端に形成されている一対の軌条156が嵌合するレール溝158を有している。そこで、スライダ153は、その軌条156がレール溝158に沿ってスライド移動する範囲で連結部141に対してスライド移動する。この際、スライダ153は、アーム131に固定された回転軸144を干渉回避溝155内に位置させ、回転軸144との干渉を回避している。そして、回転軸144の上部に形成されている従動円板145は、スライダ153の上面に形成されているカム154に載置されている。操作部152によってスライダ153が引き出された状態では、カム154の高さが低い位置に従動円板145が載置されている(図5、図6(a)参照)。このとき、連結部141が有する連結基体142の下面からアーム131が有する接離部132の上面が離反し、アーム131は連結部141による回転規制力から開放されて自由に回転可能となる。これに対して、操作部152によってスライダ153が押し込まれた状態では、カム154の高さが高い位置に従動円板145が載置される(図6(b)参照)。このとき、連結部141が有する連結基体142の下面に対してアーム131が有する接離部132の上面が接合し、アーム131は連結部141との間の摩擦力を受けてその回転が規制される。
【0031】
以上より、ロック機構151は、基部111側の部材である連結基体142の下面とアーム131側の部材である接離部132の上面との連結を所定方向であるアーム131の上下方向の変位によって固定及び固定解除する作用部として、従動円板145を有している。そして、ロック機構151は、スライダ153のスライド移動を作用部である従動円板145の上下方向の変位に変換する変換機構として、カム154を有している。ロック機構151は、このような変位機構としてのカム154によって、作用部としての従動円板145を上下方向に変位させ、これによって、基部111側の部材である連結基体142の下面とアーム131側の部材である接離部132の上面との連結を固定及び固定解除するわけである。
【0032】
このような構成において、高圧線12から引下線61を引き下げるには、第2の腕金31と第3の腕金41とにそれぞれ高圧引下線用碍子101を装着する。図1に示すように、第2の腕金31に対しては、ポリマー碍子121が下方を向くようにして高圧引下線用碍子101を取り付ける。第3の腕金41に対しては、ポリマー碍子121が上方を向くようにして高圧引下線用碍子101を取り付ける。第2及び第3の腕金31、41に対して高圧引下線用碍子101を装着するには、高圧引下線用碍子101の基部111に形成されている腕金孔112に腕金(第2の腕金31、第3の腕金41)を通す。そして、基部111の二面に設けられている複数個の螺旋部116を締め付ける。これにより、腕金(第2の腕金31、第3の腕金41)に対して高圧引下線用碍子101が強固に固定されている。
【0033】
次いで、上下一対の高圧引下線用碍子101のポリマー碍子121に装着されている上下一対のグリップ161の一方の巻付部163に引下線61を巻き付けて接続する。この際、下方に位置する高圧引下線用碍子101については、そのグリップ161のもう一方の巻付部163に巻き付けた引下線61を変圧器51に接続する。このような作業を、三系統の引下線61のそれぞれについて実施する。そして、高圧線12から引き下げられている引下線61を上方に位置する高圧引下線用碍子101のポリマー碍子121に装着されているグリップ161のもう一方の巻付部163に巻き付ける。こうして、高圧線12から引き下げられる引下線61の引き下げ作業が完了する。この際、引下線61を手巻きバインドによって固定するという従来工法に比して、本実施の形態の高圧引下線用碍子101では引下線61をグリップ161に巻き付けるだけなので、その作業性が極めて良好であり、作業の容易化が図られる。
【0034】
以上説明した作業に際して、作業者は、高圧引下線用碍子101が有しているポリマー碍子121の回転角度を自由に設定することができる。つまり、操作部152を例えば絶縁ヤットコ等で把持して引き出すと、アーム131がポリマー碍子121と共に回転自在となる。そこで、作業者は、ポリマー碍子121を回転自在な状態にしておいて、所望の角度に調節し、再び操作部152を絶縁ヤットコ等で操作し、今度は押し込む。これにより、アーム131と一体的であるポリマー碍子121の回転角度が、その調節された角度で固定される。これにより、作業者は、間接活線工法による作業をする場合に要求される充電部との規定の離隔距離を容易に確保することができる。しかも、ポリマー碍子121は軽量であることから、腕金(第2の腕金31、第3の腕金41)に対する高圧引下線用碍子101の装着作業はいうまでもなく、ポリマー碍子121の回転角度調節処理に際しても、その作業の容易化を図ることができる。
【0035】
したがって、本実施の形態の高圧引下線用碍子101を採用することで、作業者は、高圧線12からの引下線61の引き下げ作業を極めて容易に完遂することができる。これに伴い、作業の信頼性及び安全性の向上も図られる。
【符号の説明】
【0036】
11 電柱
31 第2の腕金(腕金)
41 第3の腕金(腕金)
61 引下線
111 基部
113 基体
114 座金
116 螺旋部
121 ポリマー碍子
122 碍子
131 アーム
141 連結部
145 従動円板(作用部)
151 ロック機構
152 操作部
153 スライダ
154 カム(変換機構)
161 グリップ
162 挟持基部
163 巻付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱から水平方向に延びる腕金に固定可能な基部と、
ポリマーによって一体成形されて複数個の碍子が一列に連なるポリマー碍子と、
前記ポリマー碍子の両端を保持するアームと、
前記基部に対して水平面内で回転自在に前記アームを連結する連結部と、
外部に露出する操作部の操作に応じて前記基部に対する前記アームの回転を固定及び固定解除するロック機構と、
を備える高圧引下線用碍子。
【請求項2】
前記基部は、
四角筒形状を有して筒内に前記腕金の差し込みを許容する腕金孔を有する基体と、
前記基体の外面から捩じ込まれて前記腕金孔に先端部が突き出る複数個の螺旋部と、
を備える請求項1記載の高圧引下線用碍子。
【請求項3】
前記基体は、前記螺旋部の装着位置に座金を固定した板金によって形成されている請求項2記載の高圧引下線用碍子。
【請求項4】
前記ポリマー碍子の前記碍子の部分に着脱自在に取り付けられて、当該ポリマー碍子に支持される引下線を巻き付け固定するための導電性を有するグリップを備える請求項1ないし3のいずれか一記載の高圧引下線用碍子。
【請求項5】
前記グリップは、
前記ポリマー碍子の前記碍子の部分を挟み込む挟持基部と、
前記挟持基部から二方向に開拡して波状に延出する一対の巻付部と、
を備える請求項4記載の高圧引下線用碍子。
【請求項6】
前記ロック機構は、
前記操作部の引き出し及び押し込み操作に応じてスライド移動自在のスライダと、
前記基部側の部材と前記アーム側の部材との連結を所定方向の変位によって固定及び固定解除する作用部と、
前記スライダのスライド移動を前記作用部の前記所定方向の変位に変換する変換機構と、
を備える請求項1ないし5のいずれか一記載の高圧引下線用碍子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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