説明

高圧放電ランプ、ランプユニットおよび投射型画像表示装置

【課題】本発明に係る高圧放電ランプ、ランプユニットおよび投射型画像表示装置は、高圧放電ランプの破裂を防止しつつ安全に動作を停止させることを目的とするものである。
【解決手段】本発明に係る高圧放電ランプは、発光物質が封入され、かつ内部に一対の電極101が対向して配置された発光部102と、発光部102の両端部に形成され、かつ一端部が一対の電極101に接続され、かつ他端部がリード線103に接続された金属箔104が封止された封止部105とを備え、少なくとも一方の金属箔104の一端部と他端部との間には、部材106が配置され、金属箔104の長手方向において、部材106とリード線103との間の長さLにより、動作停止時間が規定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電ランプ、ランプユニットおよび投射型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の投射型画像表示装置の構成を示すブロック図を図7に示す。従来の投射型画像表示装置(以下、「投射型画像表示装置1」という。)は、光学エンジン2と、投射レンズ3と、電源4と、電源回路5と、バラスト回路6と、電気コネクタ7,10と、着脱式ランプユニット8と、記憶回路9と、メイン回路11とを筺体12内に収容して構成されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
投射型画像表示装置のスイッチ(図示せず)がONされると、メイン回路11は着脱式ランプユニット8内に実装した記憶回路9から前回点灯時までのランプユニット8内のランプ13の使用時間を読込む。
【0004】
記憶回路9から読込まれた使用時間は、メイン回路11に予め記憶されたランプ13の交換時間と比較され、使用時間がランプ13の交換時間よりも短ければ、ランプ13を発光させる。これに対して、使用時間がランプ13の交換時間よりも長ければ、ランプ13の交換を促す表示を行った後、ランプ13を発光させる。これにより、ランプ13の交換の時期を使用者に正確に知らせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−330112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ランプ13の交換時期を過ぎたとしても、しばらくはランプ13が点灯しているために、投射型画像表示装置1の使用者が、ランプ13の交換を促す表示に気づかなければ、ランプ13が交換されないまま継続して使用されることとなる。
【0007】
この場合、寿命を過ぎたランプ13を使用し続けてしまうと、ランプ13の発光部が熱によって結晶化して失透し、大きく膨らんだ後に破裂してしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明に係る高圧放電ランプ、ランプユニットおよび投射型画像表示装置は、高圧放電ランプの破裂を防止しつつ安全に動作を停止させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る高圧放電ランプは、発光物質が封入され、かつ内部に一対の電極が対向して配置された発光部と、前記発光部の両端部に形成され、かつ一端部が前記一対の電極に接続され、かつ他端部がリード線に接続された金属箔が封止された封止部とを備え、少なくとも一方の前記金属箔の一端部と他端部との間には、部材が配置され、前記金属箔の長手方向において、前記部材と前記リード線との間の長さLにより、動作停止時間が規定されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る高圧放電ランプは、前記金属箔の長手方向において、前記部材と前記電極との間の長さMが、前記Lよりも長いことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る高圧放電ランプは、前記部材は、前記金属箔の短手方向において、略中央部に配置されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る高圧放電ランプは、前記部材は、棒状であることが好ましい。
【0013】
本発明に係るランプユニットは、前記高圧放電ランプと、前記高圧放電ランプからの射出光が前記反射面によって反射されるように前記高圧放電ランプが内部に取り付けられた、凹状の反射面を有する反射鏡とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る投射型画像表示装置は、前記ランプユニットと、前記ランプユニットからの照明光が変調して光学像を形成する光学ユニットと、前記光学像を拡大投射する投射装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る高圧放電ランプ、ランプユニットおよび投射型画像表示装置は、高圧放電ランプの発光部の破裂を防止しつつ安全に動作を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る高圧放電ランプの管軸を含む断面図
【図2】封止部温度とLとの関係を示す図
【図3】(a)本発明の第2の実施形態に係る高圧放電ランプの変形例の管軸を含む正面断面図、(b)同じく高圧放電ランプの変形例の管軸を含む側面断面図
【図4】本発明の第3の実施形態に係るランプユニットの一部切欠斜視図
【図5】本発明の第4の実施形態に係る投射型画像表示装置の斜視図
【図6】本発明の第5の実施形態に係る投射型画像表示装置の斜視図
【図7】従来の投射型画像表示装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る高圧放電ランプの構成を図1に示す。本発明の第1の実施形態に係る高圧放電ランプ(以下、「高圧放電ランプ100」という。)は、発光物質が封入され、かつ、内部に一対の電極101が対向して配置された発光部102と、発光部102の両端部に形成され、かつ、一端部が一対の電極101に接続され他端部がリード線103に接続された金属箔104が封止された封止部105とを備える。なお、図1においては、図示の便宜上、電極101、リード線103、金属箔104および後述する部材106は、断面で切らずに図示している。
【0018】
発光部102は、放電空間が形成される部分であり、透光性材料である石英ガラスで形成された球状体または楕円球状体の部材である。発光部102の形状は、例えば、外径が約9.0[mm]、内径が約4.0[mm]の略球状であって、内部に内容積が約0.065[cm3]の放電空間を有する。なお、発光部102の外径、内径、および放電空間の内容積等は特に限定されず、高圧放電ランプ100の仕様によって適宜設計変更してよい。また、本実施形態では、両端が封止されているダブルエンド型の高圧放電ランプを示したが、封止の形態は特に限定されず、例えば、シングルエンド型であってもよい。
【0019】
発光部102の内部には、発光物質である水銀(Hg)、始動補助用の希ガス、およびハロゲン物質がそれぞれ所定量封入されている。
【0020】
容量が0.065[cm3]程度の発光部102の中に、発光物質として約0.2[mg/mm3]の水銀と、始動補助用として約30[kPa]の希ガスと、ハロゲン物質として約10-7[μmol/mm3]〜10-2[μmol/mm3]程度の臭素を封入すれば、ランプ点灯中の水銀蒸気圧は200気圧程度になる。
【0021】
希ガスは、例えばアルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)のいずれか、またはそれらの中から少なくとも2種以上の混合ガス等を用いることができる。ハロゲン物質は、例えばヨウ素(I)、臭素(Br)、塩素(Cl)のいずれか、またはそれらの少なくとも2種以上の混合物質等を用いることができる。また、本発明の高圧放電ランプ点灯中の水銀蒸気圧は200気圧程度に限定されず、発光部に封入する水銀の量などを適宜変更することにより、任意に調整してもよい。
【0022】
封止部105は、石英ガラスを溶融状態で圧着することにより形成された略円柱形状であり、発光部102を気密に封止する。封止部105を形成する方法は、例えば、公知のシュリンクシール法などが挙げられるが、特に限定されない。封止部105の外径、長さ、形状等も特に限定されず、高圧放電ランプ100の仕様に応じて適宜変更してもよい。
【0023】
発光部102の内部には、例えばタングステンで形成された一対の電極101が対向して配置されている。電極101は、本体部101aと棒状部101bとを有する。電極101は、本体部101a側の一端部が放電空間の内部に位置し、かつ棒状部101b側の他端部が後述する金属箔104と例えば溶接によって接続された状態で封止部105に封止されるように配置されている。
【0024】
棒状部101bは、その横断面の形状が例えば、略円形をした略円柱体であって、タングステン等で形成された金属部材である。高輝度化等の観点から、一対の電極101間の距離eは、例えば、ショートアーク型の高圧放電ランプの場合、点光源に近づけるために、0.5[mm]以上2.0[mm]以下の範囲内で適宜調整されることが好ましい。
【0025】
本体部101aは、例えば棒状部101bの一端部にタングステン製のコイルを巻きつけることにより形成されている。
【0026】
なお、本体部101aおよび棒状部101bは、タングステン製コイルと金属棒とに限らず、例えば、タングステン製の金属棒を、本体部101aの径が棒状部101bの径よりも大きくなるように切削して形成されていてもよい。
【0027】
金属箔104は、例えば、略長方形状であって、モリブデン等の金属製である。金属箔104は、発光部102側の一端部が棒状部101bの端部と重ねられた状態で封止部105に埋設されており、他端部がリード線103の一端部に接続されている。なお、接続は、レーザー溶接や抵抗溶接等を用いることができる。このように棒状部101bと金属箔104とを接合した状態で封止部105に埋設すると、放電空間の気密性が向上するため好ましい。なお、棒状部101bと金属箔104とが接続される箇所は、特に限定されるものではないが、接続部分の長さ、すなわち金属箔104の電極101側の端部から棒状部101bの金属箔104側の端部までの最短距離dを、1.0[mm]以上1.5[mm]以下の範囲内で適宜調整することが好ましい。
【0028】
図1に示すように、少なくとも一方の金属箔104の一端部と他端部との間には、部材106が配置され、金属箔104の長手方向において、部材106とリード線103との間の長さLにより、動作停止時間が規定されている。
【0029】
部材106は、例えば棒状で、モリブデン製である。なお、部材106は、モリブデン製に限らず、セラミックスや金属製であってもよい。さらに、部材106は、金属棒であることが好ましい。この場合、金属箔104に溶接で接続させやすくすることができる。具体的には、例えばモリブデン、タングステン、ニオビウム、タンタルのいずれか1種以上等を用いることが好ましい。
【0030】
また、部材106は、棒状に限らず、例えばコイル形状、箔形状、板形状等であってもよい。
【0031】
高圧放電ランプ100は、点灯時間の経過とともに、その封止部105におけるリード線103側の端部から発光部102側に向かって酸化が進行する。少なくとも一方の金属箔104の一端部と他端部との間に部材106が配置されていることで、部材106のリード線103側の端部まで酸化が進行した時点において、一気に部材106の電極101側の端部まで酸化を進行させることができる。そして、酸化の程度が大きくなった金属箔104における発光部102側の端部において酸化を原因とする断線が発生する。これにより、電極101への電力供給を強制的に停止させることで、高圧放電ランプ100の動作を停止することができる。すなわち、Lの長さによって、高圧放電ランプ100の動作停止時間を規定することができる。よって、Lを短くすれば高圧放電ランプ100の動作停止時間を短くすることができ、Lを長くすれば高圧放電ランプ100の動作停止時間を長くすることができる。
【0032】
なお、部材106と電極101との間の長さMが、部材106とリード線103との間の長さLよりも長いことが好ましい。
【0033】
この場合、部材106における発光部102側の端部において、発光部102側への酸化の進行を抑制しやすく、酸化の程度が大きくなった金属箔104における発光部102側の端部において酸化を原因とする断線を発生させやすくすることができる。
【0034】
(実験)
発明者らは、封止部105の温度ごとにLの長さを変化させて、定格寿命を経過した後に高圧放電ランプ100を破裂させずに動作停止できるかどうかの確認を行った。なお、部材106と電極101との間の長さMが高圧放電ランプ100の動作停止に影響するかどうかを確認するために、Mの長さを変化させて、定格寿命を経過した後に高圧放電ランプを破裂させずに動作停止できるかどうかの確認を行った。
【0035】
なお、「封止部の温度」とは、部材106が設けられている側の封止部105の外表面におけるリード線103と金属箔104との接続部の温度である。
【0036】
実験には、以下の構成を共通の構成とし、封止部の温度、LおよびMの条件を変化させたものを用いた。
【0037】
発光部の中央部における内径φai:4[mm]
外径φao:9[mm]
発光部の内容積:0.065[cm3
電極間距離e:1.2[mm]
水銀封入量:0.20[mg/mm3
アルゴンガス封入量:30[kPa](25[℃])
臭素封入量:0.5×10-3[μmol]
具体的には、封止部の温度が330[℃]、Lが1.0[mm]、Mが1.5[mm]を条件1とした。また、封止部の温度が330[℃]、Lが1.5[mm]、Mが1.5[mm]を条件2とした。また、封止部の温度が330[℃]、Lが2.0[mm]、Mが1.5[mm]を条件3とした。また、封止部の温度が330[℃]、Lが1.0[mm]、Mが2.0[mm]を条件4とした。また、封止部の温度が330[℃]、Lが1.5[mm]、Mが2.0[mm]を条件5とした。また、封止部の温度が330[℃]、Lが2.0[mm]、Mが2.0[mm]を条件6とした。また、封止部の温度が350[℃]、Lが1.0[mm]、Mが1.5[mm]を条件7とした。また、封止部の温度が350[℃]、Lが1.5[mm]、Mが1.5[mm]を条件8とした。また、封止部の温度が350[℃]、Lが2.0[mm]、Mが1.5[mm]を条件9とした。また、封止部の温度が350[℃]、Lが1.0[mm]、Mが2.0[mm]を条件10とした。また、封止部の温度が350[℃]、Lが1.5[mm]、Mが2.0[mm]を条件11とした。また、封止部の温度が350[℃]、Lが2.0[mm]、Mが2.0[mm]を条件12とした。また、封止部の温度が390[℃]、Lが1.0[mm]、Mが1.5[mm]を条件13とした。また、封止部の温度が390[℃]、Lが1.5[mm]、Mが1.5[mm]を条件14とした。また、封止部の温度が390[℃]、Lが2.0[mm]、Mが1.5[mm]を条件15とした。また、封止部の温度が390[℃]、Lが1.0[mm]、Mが2.0[mm]を条件16とした。また、封止部の温度が390[℃]、Lが1.5[mm]、Mが2.0[mm]を条件17とした。また、封止部の温度が390[℃]、Lが2.0[mm]、Mが2.0[mm]を条件18とした。また、封止部の温度が450[℃]、Lが1.0[mm]、Mが1.5[mm]を条件19とした。また、封止部の温度が450[℃]、Lが1.5[mm]、Mが1.5[mm]を条件20とした。また、封止部の温度が450[℃]、Lが2.0[mm]、Mが1.5[mm]を条件21とした。また、封止部の温度が450[℃]、Lが1.0[mm]、Mが2.0[mm]を条件22とした。また、封止部の温度が450[℃]、Lが1.5[mm]、Mが2.0[mm]を条件23とした。また、封止部の温度が450[℃]、Lが2.0[mm]、Mが2.0[mm]を条件24とした。また、封止部の温度が510[℃]、Lが1.0[mm]、Mが1.5[mm]を条件25とした。また、封止部の温度が510[℃]、Lが1.5[mm]、Mが1.5[mm]を条件26とした。また、封止部の温度が510[℃]、Lが2.0[mm]、Mが1.5[mm]を条件27とした。また、封止部の温度が510[℃]、Lが1.0[mm]、Mが2.0[mm]を条件28とした。また、封止部の温度が510[℃]、Lが1.5[mm]、Mが2.0[mm]を条件29とした。また、封止部の温度が510[℃]、Lが2.0[mm]、Mが2.0[mm]を条件30とした。
【0038】
実験は、各条件1〜30の高圧放電ランプをそれぞれ3[本]ずつ作製し、120[W]で点灯させ、3[本]のうち1[本]でも破裂が発生したものは、破裂有と評価し、3[本]のうち1[本]も破裂が発生しなかったものは、破裂無と評価した。さらに、3[本]の高圧放電ランプの動作停止時間の平均値を求めた。
【0039】
実験結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示すように、各封止部の温度において、それぞれ定格寿命を経過した後にほとんどの高圧放電ランプ(条件1、2、4、5、7,8、10、11および13〜30)が破裂せずに動作停止している。しかしながら、封止部の温度が330[℃]および350[℃]の場合に、Lの長さが2.0[mm]の場合(条件3、6、9および12)には、破裂が発生している。発明者らがこの破裂の原因を調査したところ、封止部の温度が低い場合には、Lの長さを長くし過ぎると、封止部105の酸化が進行するのに時間がかかり過ぎてしまうことに起因していることがわかった。
【0042】
すなわち、実験により、封止部の温度によって、適切なLの範囲が異なることがわかった。
【0043】
よって、高圧放電ランプ100が定格寿命を過ぎても点灯し続け、発光部102が熱によって結晶化して失透し、大きく膨らんだ後に破裂してしまうのを防止し、高圧放電ランプ100を安全に停止させることができる。
【0044】
実験結果より求められる封止部の温度とLとの関係を図2に示す。図2に示すように、Lは、図2中の斜線部分の範囲内に規定されることが好ましい。具体的には、Lは、X軸を封止部温度[℃]とし、Y軸をL[mm]とした状態において、点A(330,1)、点B(330,1.5)、点C(390,2)、点D(510,2)および点E(510,1)で囲まれる部分の範囲内(隣り合う各点を結ぶ線上を含む。)に規定されることが好ましい。この場合、高圧放電ランプの破裂を防止して安全に動作を停止させることができる。
【0045】
さらに、封止部の温度が330[℃]以上390[℃]以下の範囲内の場合には、Lの長さを1.5[mm]以下とすることが好ましい。この場合、高圧放電ランプ100の破裂をより確実に防止して安全に動作を停止させることができる。
【0046】
なお、部材106の金属箔104の面に対して略垂直な方向の長さは、金属箔104の厚みよりも厚いことが好ましい。この場合、溶接等により、部材106を金属箔104に配置しやすくすることができる。
【0047】
また、部材106は、金属箔104の面に対して、リード線103と同じ側に配置されていることが好ましい。この場合、リード線103側からの酸化が部材106に進行しやすくすることができる。
【0048】
なお、部材106における金属箔104の長手方向に対して略垂直に切った断面は、表面に凹凸を有していることが好ましい。この場合、部材106の一端部と他端部とが連通しやすく、高圧放電ランプ100の動作停止をスムーズに行うことができる。さらには、部材106における金属箔104の長手方向に対して略垂直に切った断面において、部材106の表面の中心線平均粗さRaは、0.1[μm]以上であることが好ましい。この場合、部材106の一端部と他端部とをさらに連通させやすく、高圧放電ランプ100の動作停止をスムーズに行うことができる。また、部材106における金属箔104の長手方向に対して略垂直に切った断面において、部材106の表面の中心線平均粗さRaは、0.1以上50[μm]以下の範囲内であることがより好ましい。この場合、金属箔の長手方向に適度な凹凸が形成されるため、封止部105の封着性を維持しつつ、高圧放電ランプの動作停止の効果を高めることができる。さらには、部材106における金属箔104の長手方向に対して略垂直に切った断面において、部材106の表面の中心線平均粗さRaは、0.2[μm]以上10[μm]以下の範囲内であることがさらにより好ましい。
【0049】
また、部材106は、金属箔104の短手方向において、略中央部に配置されていることが好ましい。この場合、部材106が設けられている側の金属箔104の封止部105への密着度を向上させ、封止をしやすくすることができる。
【0050】
(高圧放電ランプの製造方法)
高圧放電ランプ100の製造方法を以下に説明する。高圧放電ランプ100の製造方法は、以下の工程を有することを特徴とする。
【0051】
(a)放電空間を形成するための発光部、および前記発光部の両端から延在する円筒状の細管部を有する石英ガラス製の容器を準備する工程
(b)電極と、リード線と、一端部が前記電極に接続され他端部がリード線に接続された金属箔とを準備する工程
(c)金属箔に部材を配置する工程
(d)前記電極の本体部が前記発光部の内部に突出するように、前記細管部に対して前記電極棒を挿入する工程
(e)前記細管部を加熱溶解させた状態で圧接することにより、前記電極棒を封止する工程
先ず、(a)の工程では、放電空間を形成するための発光部102および、この発光部102から延在する管状部を含むガラス製の発光管(図示せず)を準備する。本発明において容器とは、封止部105が形成されて発光部102が気密封止される前の高圧放電ランプ100の前駆体をいう。
【0052】
次に、(b)の工程において、電極101と、リード線103と、一端部が電極101に接続され他端部がリード線103に接続された金属箔104とを準備する。具体的には、電極101と金属箔104の一端部とを溶接等により接続し、リード線103と金属箔104の他端部とを溶接等により接続する。なお、電極101と金属箔104、リード線103と金属箔104の各接続の順番はどちらを先に行ってもよい。
【0053】
続いて、(c)の工程において、金属箔104に部材106を配置する。なお、金属箔104への部材106の配置は、例えば、部材106と金属箔104とを溶接等で接続することにより行うことができる。
【0054】
さらに、(d)の工程では、電極101の本体部101aが発光部102の内部に突出するように、細管部に対して電極101を挿入する。
【0055】
そして、(e)の工程では、前記細管部を加熱溶解させて電極100を封止する。封止は、バーナーによって加熱してもよいし、レーザー(例えば、CO2可変レーザー)によって加熱してもよい。なお、バーナーとレーザーとを併用してもよい。
【0056】
以上の工程を経ることにより、高圧放電ランプ100が完成される。
【0057】
上記のとおり、本発明に係る高圧放電ランプ100は、発光部102の破裂を防止しつつ安全に動作を停止させることができる。
【0058】
(第2の実施形態)
本発明に係る第2の実施形態に係る高圧放電ランプの管軸を含む正面断面図を図3(a)に、その側面断面図を図3(b)にそれぞれ示す。本発明に係る高圧放電ランプの変形例(以下、「高圧放電ランプ200」という。)は、部材106の設けられている側の封止部105にキャビティ201が形成され、その外部にアンテナ202が設けられている点を除いては、高圧放電ランプ100と実質的に同じ構成を有する。よって、キャビティ201およびアンテナ202について詳細に説明し、その他の点については説明を省略する。なお、図3(a)および(b)においては、図示の便宜上、電極101、リード線103、金属箔104、部材106およびアンテナ202は、断面で切らずに図示している。
【0059】
部材106の設けられている側の封止部105には、キャビティ201が形成されている。キャビティ201の内部には、少なくとも希ガスが封入されている。なお、発光部102の内部と同様のガス(例えば、希ガスおよび水銀)が封入されていてもよい。また、キャビティ201の内部に酸化バリウムやトリウムタングステンを配置してもよい。この場合、酸化バリウムやトリウムタングステンが電子を放出しやすいため、金属箔104とアンテナ202との間の放電を容易に起こすことができる。さらに、部材106の少なくともキャビティ201の内部に露出している部分がトリウムタングステン製であることが好ましい。この場合、簡易な構成で金属箔104とアンテナ202との放電を容易に起こすことができ、高圧放電ランプ200の始動性を向上することができる。
【0060】
キャビティ201が位置する封止部105の外周には、アンテナ202が設けられている。アンテナ202は、例えば鉄とクロムとの合金製で、一端部側が封止部の外周に3ターン巻きつけられ、他端部側が外部リード線103に接続されている。なお、アンテナ202は、鉄とクロムとの合金製に限らず、例えばモリブデンやタングステン等の金属線も用いることができる。
【0061】
また、いわゆるトリガー線の役割を果たす第2のアンテナ(図示せず。)が、封止部105における発光部102側の端部(おおよそ、電極101が埋め込まれている封止部105の外周)に設けられていてもよい。
【0062】
高圧放電ランプ200の場合、その封止部105におけるリード線103側の端部から発光部102側に向かって酸化が進行する。そして、高圧放電ランプの定格寿命を過ぎた後に、キャビティ201が設けられている側の封止部105では、酸化がキャビティ201の部分まで進行し、キャビティ201が外部空間と連通されることになる。よって、キャビティ201の部分において、放電を生起することができなくなってしまい、高圧放電ランプ200の動作が停止される。
【0063】
したがって、高圧放電ランプ200は、発光部102の破裂を防止しつつ安全に動作を停止させることができる。
【0064】
上記のとおり、本発明に係る高圧放電ランプ200は、始動性を向上しつつ、発光部102の破裂を防止しつつ安全に動作を停止させることができる。
【0065】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るランプユニットの一部切欠斜視図を図4に示す。本発明の第3の実施形態に係るランプユニット(以下、「ランプユニット300」という。)は、本発明の第1の実施形態に係る高圧放電ランプ100を備える。
【0066】
図4に示すように、ランプユニット300は、高圧放電ランプ100と、高圧放電ランプからの射出光が反射面301によって反射されるように高圧放電ランプ100が内部に取り付けられた、凹状の反射面301を有する反射鏡302とを備える。
【0067】
反射鏡302の内面には、凹面の反射面301が形成されており、反射面301によって高圧放電ランプ100からの射出光を反射させる。また、反射鏡302は、反射鏡302による高圧放電ランプ100の集光効率を高めるために、高圧放電ランプ100の長手方向の中心軸Xと反射鏡302の光軸Yとが略一致するように高圧放電ランプ100と組み合わされている。なお、反射面301は、例えば回転楕円体面や回転放物体面からなり、多層干渉膜等が蒸着されたものが一般的に使用されるが、本発明では特に限定されない。
【0068】
反射鏡302のネック部303側に位置する封止部105は、口金304に挿入され、反射鏡302に対して固定されている。口金304は、例えば、円筒形であって、反射鏡302に対して接着剤305等を介して固着されている。また、この口金304には、電源接続用端子306が付設されている。
【0069】
また、高圧放電ランプ100のうち、口金304とは反対側のリード線103は、電力供給線307に接続されており、電力供給線307は、反射鏡302に設けられた貫通孔308に挿通されている。
【0070】
なお、図4では、部材106が配置されている側の封止部105は、ネック部303の反対側となるように高圧放電ランプ100が反射鏡302に取り付けられているが、部材106が配置されている側の封止部105がネック部303側となるように反射鏡302に取り付けられれていてもよい。
また、図4では、高圧放電ランプ100を用いたが、高圧放電ランプ200を用いることもできる。
【0071】
上記のとおり、本願の第3の実施形態に係るランプユニット300の構成によれば、高圧放電ランプ100、200の発光部102の破裂を防止しつつ安全に動作を停止させることができる。
【0072】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る投射型画像表示装置の斜視図を図5に示す。本発明の第4の実施形態に係る投射型画像表示装置(以下、「画像表示装置400」という。)は、その前方に設置したスクリーン(図示しない)に向けて画像を投影するタイプのプロジェクタである。
【0073】
投射型画像表示装置400は、ランプユニット300と、ランプユニットからの照明光が変調して光学像を形成する光学ユニット402と、光学像を拡大投射する投射装置404とを備える。
【0074】
具体的には、筐体401と、筐体401に収納されたランプユニット300と、光学ユニット402と、制御ユニット403と、投射装置404と、冷却ファンユニット405と、電源ユニット406とを備える。
【0075】
電源ユニット406は、DC電源回路と高圧放電ランプ点灯装置(いずれも図示しない)を含み、商用電源から供給される電力を、制御ユニット403、ランプユニット300、および冷却ファンユニット405に適した電力に変換してそれぞれ供給する。なお、図5は、投射型画像表示装置400の構成を見易くするため、筐体401の天板が取り除かれた状態で示されている。
【0076】
上記のとおり、本願の第4の実施形態に係る投射型画像表示装置400の構成によれば、高圧放電ランプ100、200の発光部102の破裂を防止しつつ安全に動作を停止させることができる。
【0077】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る投射型画像表示装置の斜視図を図6に示す。本発明の第5の実施形態に係る投射型画像表示装置(以下、「画像表示装置500」という。)は、リアプロジェクタであって、高圧放電ランプが組み込まれたランプユニット300と、光学ユニット、投射装置およびミラー(いずれも図示せず。)等が収納された筐体501とを有する。
【0078】
画像表示装置500は、投射レンズ(図示せず。)から投射され、ミラー(図示せず。)で反射された画像が、筐体501の開口部に設けられた透過式スクリーン502の裏側から投影されて画像表示される。
【0079】
上記のとおり、本願の第5の実施形態に係る投射型画像表示装置500の構成によれば、高圧放電ランプ100、200の発光部102の破裂を防止しつつ安全に動作を停止させることができる。
【0080】
<変形例>
以上、本発明を上記した各実施形態に示した具体例に基づいて説明したが、本発明の内容が各実施形態に示した具体例に限定されないことは勿論であり、種々の高圧放電ランプ、ランプユニットおよび投射型画像表示装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、高圧放電ランプ、ランプユニットおよび投射型画像表示装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
100、200 高圧放電ランプ
101 電極
102 発光部
103 リード線
104 金属箔
105 封止部
106 部材
300 ランプユニット
301 反射面
302 反射鏡
400、500 投射型画像表示装置
402 光学ユニット
404 投射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光物質が封入され、かつ内部に一対の電極が対向して配置された発光部と、前記発光部の両端部に形成され、かつ、一端部が前記一対の電極に接続され他端部がリード線に接続された金属箔が封止された封止部とを備え、
少なくとも一方の前記金属箔の一端部と他端部との間には、部材が配置され、
前記金属箔の長手方向において、前記部材と前記リード線との間の長さLにより、動作停止時間が規定されていることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
前記金属箔の長手方向において、前記部材と前記電極との間の長さMが、前記Lよりも長いことを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項3】
前記部材は、前記金属箔の短手方向において、略中央部に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高圧放電ランプ。
【請求項4】
前記部材は、棒状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高圧放電ランプ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の高圧放電ランプと、前記高圧放電ランプからの射出光が反射面によって反射されるように前記高圧放電ランプが内部に取り付けられた、凹状の前記反射面を有する反射鏡とを備えることを特徴とするランプユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のランプユニットと、前記ランプユニットからの照明光が変調して光学像を形成する光学ユニットと、前記光学像を拡大投射する投射装置とを備えることを特徴とする投射型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−96373(P2011−96373A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246172(P2009−246172)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】