説明

高圧流体用ロジックプレート

【課題】 圧力が20〜30MPaにも達する高圧流体の制御に用いる場合に、流体通路の通路断面積を十分に確保しながら、流体の漏洩を完全に防止することができるロジックプレートを提供すること。
【解決手段】 溝を有する溝板部材と該溝を覆って閉塞通路を形成する蓋板部材とを備えたロジックプレートにおいて、前記蓋板部材を前記溝板部材の溝に沿って接合し、該蓋板部材の上面に補強部材を連結手段で取付けて高圧流体用のロジックプレートを構成した。また、溝を有する溝板部材と該溝を覆って閉塞通路を形成する蓋板部材とを備えたロジックプレートの蓋板部材同士を合わせて連結することにより2層の高圧流体用の2層ロジックプレートを得る。さらに該2層ロジックプレートの溝板部材の背面に溝を有する溝板部材と該溝を覆って閉塞通路を形成する蓋板部材とを備えたロジックプレートの蓋板部材を合わせて連結することにより補強板部材を設けることなく高圧流体用の多層ロジックプレートを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロジックプレートに関し、特に高圧流体用のロジックプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流れを制御する装置においては、一般に電気や流体圧力等の信号を受けて作動する弁類と管路を組み合わせて複雑な制御回路が構成されていた。その場合、管路の接合や弁類の取付けを間違いなく行い、接合部における流体の漏洩を防止するには慎重な作業が要求されていた。そして従来では、それらの作業の容易化を図り、合わせて管路構成の小型化や保守の容易化を図るために、流体通路を内臓した回路部材に弁類を取り付けて流体制御装置を一体化する傾向にあった。しかしながら、複雑な流体通路を内臓した回路部材を高度の鋳造技術で注意深く鋳造しても、鋳巣、亀裂、気泡等ができて通路間が連通したり、また通路内の砂落しを完全に行なうことが困難なために弁や流体機器に故障を齎す虞があった。
【0003】
これらを解決する手段として、板部材に流体通路となる溝を設け、該板部材に蓋板部材をネジ締めして溝を覆うことによって流体通路を形成し、板部材及び蓋板部材に前記流体通路に所要の箇所で連通する穴を設け、これらの穴に通じる各種弁類及び流体の流出用の管継ぎ手を設けた構成が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、複雑な形状の溝を設けた溝板部材部材と該溝板部材部材に蓋板部材部材を接着剤で接着して溝を覆うことによって流体通路を形成したものを積層して3次元の流体回路を形成する等の技術も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
また、溝を設けた溝板部材部材と蓋板部材部材との接合を強固なものとするとともに、溝板部材部材の溝と蓋板部材部材で形成された流体通路のシール性を確実にするために、前記溝に沿って蓋板部材部材を接合する方法が開示され、接合方法として摩擦攪拌接合方法を効果的に用いる方法が開示されている(例えば、特許文献3。)。
さらに、ロジックプレートを非金属材料で構成することによって、腐食性流体による流路の腐食や電食を防止することが提案されており、その場合、非金属材料の強度不足を補うために、金属材料或は剛性を保持できる非金属材料製の支持板を蓋板部材部材或は溝を設けた板板部材の背面にネジ締めする技術も開示されている(例えば、特許文献4。)。
【0005】
【特許文献1】特公昭49−13651号公報
【特許文献2】特開2002−305010号公報
【特許文献3】特許第3564430号公報
【特許文献4】特開2004−316663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなロジックプレートは、例えば鉄道車両用エアブレーキ装置、多くの配管を有する装置、電磁弁ユニット、クーリング或はホットプレート、空圧・油圧・蒸気配管、薄型圧力容器、車載用・定置型燃料電池等々、広い範囲の装置に用いられ、或は用いられようとしている。
【0007】
しかしながら、圧力20〜30MPaにも達する高圧流体の制御用に用いようとする場合、特許文献1に開示されたものは、そのような高圧に耐えるように構成することは可能ではあるが、溝板部材部材と蓋板部材部材をネジ締めするので、複雑で長い流路となる流体通路の全長に亘って高圧流体の漏出を完全に防止するように構成することは容易ではない。また、特許文献2に開示されたものは、溝板部材部材と蓋板部材部材とが接着剤で接合されており、高圧や高温に耐えることはできない。
【0008】
特許文献3に記述されているように、蓋板部材部材を溝板部材部材の溝に沿って摩擦攪拌接合すれば、かなりの高圧や高温の流体に対して流体通路を通る流体の漏出を防止することは可能であるが、摩擦攪拌接合が可能な蓋板部材部材の厚さは4mm前後以下に限られるので、溝幅が大きい場合は蓋板部材に掛かる流体圧による力が大きくなって蓋板部材部材の接合部や蓋板部材部材そのものの強度が不足することになる。溝幅を小さくすれば前記流体圧による力を低減することができるが、その場合流体通路の必要な通路面積を確保するためには溝の深さを増大する必要が生じ、そうすると溝板部材部材の厚さが増大することとなり、ロジックプレートが分厚いものとなり重量も増大する。特許文献4に開示されたものは、耐食性向上のために溝板部材部材と蓋板部材部材を非金属材で構成したもので、前記のような高圧に耐え得るように構成されるものではない。
【0009】
したがって本発明の目的は、圧力が20〜30MPaにも達する高圧流体の制御に用いる場合に、流体通路の通路断面積を十分に確保しながら、流体の漏洩を完全に防止することができるロジックプレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、溝を有する溝板部材部材と該溝を覆って閉塞通路を形成する蓋板部材部材とを備えたロジックプレートにおいて、前記蓋板部材を前記溝板部材の溝に沿って接合し、該蓋板部材の上面に補強部材を連結手段で取付けたことを特徴とするロジックプレートを提案する。
前記蓋板部材の前記溝板部材の溝に沿う接合は摩擦攪拌接合により接合するのがよい。
摩擦攪拌接合はアルミ系材料の接合に用いられるが、このように構成すれば、比較的薄厚の蓋板部材を摩擦攪拌接合により安価、容易に接合して溝板部材の溝とそれを覆う蓋板部材で形成される流体通路を通る流体の漏洩を完全に防止することができ、比較的薄厚で強度を十分に確保できないアルミ材の蓋板部材の強度不足は前記補強部材で補うことができるので、前記溝板部材の溝幅を十分に大きくし溝深さは程ほどに抑えることができ、流路断面積を確保するための溝深さ増大に伴う溝板部材の厚さの増大を抑えることができる。また、一般に深い溝よりも浅い溝の方が加工は容易であり、加工費の低減も図れる。
【0011】
また、前記補強部材は前記蓋板部材の全面を覆うようにするのもよい。これにより、ロジックプレートを単純な合成板状に形成することができ、外観がシンプルで、輸送、保管、取り扱い上も好都合となる。
【0012】
本発明は、また、溝を有する溝板部材に該溝を覆って閉塞通路を形成するように蓋板部材を前記溝に沿って摩擦攪拌接合して構成されたロジックプレート2個を前記蓋板部材の表面を互いに合わせて連結手段で連結して構成した2層ロジックプレートユニットを提案する。
このように構成すると、蓋板部材が2枚重なるので流路における蓋板部材部分の強度は2倍と成り、前記補強部材を要することなく流体の高圧に耐えるように構成されたロジックプレートユニットを得ることができる。この場合、流路はいわゆる3次元構成となる。
【0013】
前記のように2枚のロジックプレートの蓋板部材同士を合わせてなる2層ロジックプレートユニットの溝板部材に、さらに溝を有する溝板部材に該溝を覆って閉塞通路を形成するように蓋板部材を前記溝に沿って摩擦攪拌接合して構成されたロジックプレートの蓋板部材を合わせ、それらを連結手段で連結して構成することにより、3個或は4個のロジックプレートからなるロジックプレートユニットを、補強部材を設けることなく流体の高圧に耐えるように構成することができる。さらに溝を有する溝板部材に該溝を覆って閉塞通路を形成するように蓋板部材を前記溝に沿って摩擦攪拌接合して構成されたロジックプレートの蓋板部材を前段の溝板部材に合わせて積層すれば、補強部材を設けることなく積層されたロジックプレートユニットを構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
溝板部材と内部通路のシールを確実に行なう蓋板部材と該蓋板部材を支える補強部材を具備することによって、流体通路の幅を十分確保しながら圧力20〜30MPaにも達する高圧流体の制御用に用いることができるロジックプレートを提供できる。さらにロジックプレートを積層する場合には、補強部材を設けることなく流体の高圧に耐えることができるロジックプレートユニットを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特に特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0016】
図1は、本発明の実施例に係わる高圧流体用ロジックプレート10に機器類51および53が取り付けられた状態の部分断面を示す。同図において1は溝板部材、2は蓋板部材、3は補強板部材である。前記溝板部材1には流体通路となる溝1a、1bが設けられている。これらの溝は蓋板部材2によって覆われ、該蓋板部材2は接合、特に摩擦攪拌接合により符号4で示すように前記溝板部材1に接合されている。1cは溝1aに連通する溝板部材1に設けられた連通孔であり、2a、3aは溝1bに連通するそれぞれ蓋板部材2及び補強板部材3に設けられた連通孔である。前記補強板部材3は前記蓋板部材2の上にボルト5、5で前記溝板部材に締め付けられている。機器51が前記溝板部材1に、機器53が前記補強板部材に、それぞれ連通孔1c及び連通孔2a、3aに対してそれぞれOリング12、14でシールされて取り付けられている。これらはOリングに代えてパッキングとしてもよいことは勿論である。機器53を補強板部材3に取り付ける場合は、連通孔2a、3aにおける蓋板部材2と補強板部材3の接合部で流体の漏洩が生じないように、蓋板部材2と補強板部材3の間には接着剤或はパッキング剤を塗布或はパッキングを敷くことが望ましい。
【0017】
図1においては、補強板部材3は蓋板部材の上面に押しボルトで溝板部材1に締め付けているが、通しボルトとナットで結合してもよい。溝1aを通る高圧流体の圧力により蓋板部材2前記溝1aに面する部分には上向きの力が作用して、その部分は上方に変形しようとするが、補強板部材3で押えられているので、力は蓋板部材2とともに補強板部材3を変形させようとする。溝1bについても同様であり、溝から蓋板部材2に作用する力の大きさは、溝幅と溝長さの積の総和と流体圧力との積である。この力のうち、一部は溝に沿って摩擦攪拌接合された蓋板部材で担われ残りが補強板部材に作用することになる。補強部材はボルトでこの力に対抗できるように蓋板部材を挟んで溝板部材に結合される。
【0018】
なお、図において符号51、53は図示しないボルトで取り付けてある機器、或は弁類であり、或は圧力流体の入口、出口コネクターである。52、54はそれぞれ連通炉1c、3aと機器51、53との間をシールするOリングであるが、これらはパッキングであってもよい。復雑な回路構成においては、前記の機器、弁類、出入り口コネクターは多数配設されることになる。なお、蓋板部材2と補強板部材3との接合面は接合、特に摩擦攪拌接合であり、溝1a、1bを通る流体は完全にシールされる。このように、流路のシール機能は蓋板部材の接合部で果たし、補強部材で蓋板部材を補強することで、流路を形成する溝板部材の溝深さを深くしなくても蓋板部材側の強度を確保することができるので、溝深さを深くして蓋板部材に掛かる負荷を減じる場合に較べればロジックプレートユニットの厚さを薄型に構成することができ、重量も軽減することができる。
【0019】
図2は、溝板部材21の溝21a、21bに沿って摩擦攪拌接合されて構成されたロジックプレート20と溝板部材31の溝31a、31bに沿って摩擦攪拌接合されて構成されたロジックプレート30を互いに蓋板部材21、31を合わせて通しボルト、ナット25a、25bで連結したロジックプレートユニット100の部分断面を示す。このような構成は、流体回路が1平面ではなく2平面に形成された所謂3次元回路をなすものである。この構成は、流路が複雑に交錯して1平面で構成することができない場合に有効である。この構成ではロジックプレート20の蓋板部材22はその上に積層されるロジックプレート30で補強されることになるので、図1のように補強部材を特に設けないでも各ロジックプレート20、30は流路(溝21a、31a、21b、31b)を通る流体の高圧力に耐えることができる。図では蓋板部材22及び32の溝21aと31aが連通孔22a、32aで連結されており、流路断面積が溝21a或は31aのみでは不足の場合に流体を溝21aと31aに分けて流すことにより大きな流路断面積を確保することができる。特にこのような場合には、溝21aと31aを流れる流体の圧力は互いに均衡するので、蓋板部材22、32のこの部分は高圧流体により変形を受けることがなくなる。溝21b、31bは連通されることなく別々の流路に構成されている。溝21b、31bが蓋板部材を隔てて重なっている場合は流体圧力による蓋板部材22、32のその部分に掛かる力は減殺され、重なっていない場合はそれぞれ対面するロジカルプレートの蓋板部材及び溝板部材により支えられることのなり、高圧に耐えることができる。図2においても、ロジックプレートユニット100の溝板部材21及び/或は溝板部材31には図示しない機器或は弁類或は流路入口や出口のコネクタが配設される。
【0020】
図3にはロジックプレートを3個積層したロジックプレートユニット200の部分断面が示されている。この場合、溝板部材41と蓋板部材42からなる最上部のロジックプレート40はその蓋板部材42が下段のロジックプレート30の溝板部材31に合わせて通しボルト、ナット35a、35bで連結されている。図示しないが、ロジックプレート20の下側に他のロジックプレートの蓋板部材を合わせて連結すれば4層の積層ロジックプレートユニットが構成できる。このように次々と積層して多層のロジックプレートを構成することができる。そしてこのように2層以上の積層ロジックプレートユニットを構成する際には、図1で設けたような補強部材は設けなくても流体の高圧に耐えることができるロジックプレートを構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
圧力20〜30MPaにも達する高圧流体の制御用に用いることができるロジックプレートを構成することができ、高圧流体の制御装置を小型、安価で、組付け容易に構成することができる。また、高圧流体のシールは接合部で行なわれるので、高温に対しても確実なシール機能が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係わる高圧流体用ロジックプレートの構成と該ロジックプレートに機器類が装着着された状態を示す部分断面図である。
【図2】本発明の他の実施例に係わる2層積層のロジックプレートユニットの構成を示す部分断面図である。
【図3】本発明のさらに他の実施例に係わる3層積層のロジックプレートユニットの構成を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 溝板部材
1a、1b 溝
1c 連通孔
2 蓋板部材
2a 連通孔
3 補強板部材
3a 連通孔
4 摩擦攪拌接合部
5 ボルト
10 ロジックプレート
20、30、40 ロジックプレート
21、31、41 溝板部材
22、32、42 蓋板部材
21a、21b、31a、31b 溝
22a、32a 連通孔
25a、35a 通しボルト
25b、35b ナット
51、53 機器
52、54 Oリング
100、200 ロジックプレートユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝を有する溝板部材と該溝を覆って閉塞通路を形成する蓋板部材とを備えたロジックプレートにおいて、前記蓋板部材を前記溝板部材の溝に沿って接合し、該蓋板部材の上面に補強部材を前記蓋板部材を挟んで前記溝板部材に連結手段で取付けたことを特徴とする高温流体用ロジックプレート。
【請求項2】
前記蓋板部材の前記溝板部材の溝に沿う接合は摩擦攪拌接合により接合されたことを特徴とする請求項1記載のロジックプレート。
【請求項3】
前記補強部材は前記蓋板部材の表面全体を覆う補強板部材であることを特徴とする請求項2記載のロジックプレート。
【請求項4】
溝を有する溝板部材に該溝を覆って閉塞通路を形成するように蓋板部材を前記溝に沿って摩擦攪拌接合して構成されたロジックプレート2個を前記蓋板部材の表面を互いに合わせて連結手段で連結して構成したことを特徴とする2層ロジックプレートユニット。
【請求項5】
請求項4記載のロジックプレートユニットの溝板部材の表面に、溝を有する溝板部材に該溝を覆って閉塞通路を形成するように蓋板部材を前記溝に沿って摩擦攪拌接合してなるロジックプレートの蓋板部材を合わせ、それらを連結手段で連結して構成したことを特徴とする3層或は4層のロジックプレートユニット。
【請求項6】
請求項4記載のロジックプレートユニットの溝板部材の表面に、溝を有する溝板部材に該溝を覆って閉塞通路を形成するように蓋板部材を前記溝に沿って摩擦攪拌接合してなるロジックプレートの蓋板部材を合わせる方式で5個以上の該ロジックプレートを積層し、それらを連結手段で連結して構成したことを特徴とする多層ロジックプレートユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate